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特開2023-57830熱可塑性エラストマー組成物および成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057830
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/16 20060101AFI20230417BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20230417BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20230417BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20230417BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K5/14
C08L23/08
C08L23/10
C08L61/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167522
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】依田 勇佑
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002BB052
4J002BB113
4J002BB123
4J002BB151
4J002BB153
4J002BB172
4J002BP024
4J002CC035
4J002CC055
4J002DE109
4J002EA017
4J002EA048
4J002EK006
4J002EK036
4J002FD027
4J002FD145
4J002FD146
4J002FD158
4J002FD209
4J002GJ02
(57)【要約】
【課題】低硬度でありながら、流動性、機械強度、耐油性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)とを含むポリオレフィン系ゴム(A)100質量部と、結晶性プロピレン系重合体(B)10~60質量部とを含み、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)と前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量の合計100質量%に対し、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の含有量が、0質量%を超え40質量%未満であり、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量が、60質量%を超え、100質量%未満であり、有機過酸化物系架橋剤(C)およびフェノール樹脂系架橋剤(D)により、少なくとも一部が架橋された熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)とを含むポリオレフィン系ゴム(A)100質量部と、
結晶性プロピレン系重合体(B)10~60質量部と
を含み、
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)と前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量の合計100質量%に対し、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の含有量が、0質量%を超え40質量%未満であり、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量が、60質量%を超え、100質量%未満であり、
有機過酸化物系架橋剤(C)およびフェノール樹脂系架橋剤(D)により、少なくとも一部が架橋された熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
さらに軟化剤(E)100~300質量部を含む、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量と、前記フェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量との比(D/A2)が、0.01~1.00である、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記有機過酸化物系架橋剤(C)と前記フェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量の比(C/D)が0を超え、0.5以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系ゴム(A)100質量部に対して、前記有機過酸化物系架橋剤(C)の含有量が0.2~2.0質量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
下記要件(1)および(2)を満たす、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
(1)ASTM D-1238に準拠して230℃、10kg荷重で測定したメルトフローレートが、3~100g/10分である。
(2)JIS K 6253に準拠して測定したショアA硬度(瞬間値)が、30~70である。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体。
【請求項8】
前記成形体が自動車部品である請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
シール部材である請求項7または8に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物およびそれを含む成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンにオレフィン系共重合体ゴムを混合した組成物は、熱可塑性エラストマーとして自動車部品、家電部品、医療用機器部品、電線、および雑貨等の分野で使用されている。熱可塑性エラストマーは架橋構造を形成することによって圧縮永久歪が小さくなり、耐油性等の性能が向上することが知られている。架橋構造を有する熱可塑性エラストマーは、オレフィン系共重合体ゴムとポリプロピレンとの混合物を架橋剤の存在下で動的熱的処理することによって得られる。
【0003】
例えば、フェノール樹脂架橋剤を用い、動的熱処理により熱可塑性エラストマー組成物を製造する方法も提案されている(例えば、特許文献1)。さらに、複数の架橋剤の併用も提案されている。例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーを有機過酸化物で予備架橋した後に、フェノール樹脂架橋剤により架橋する方法が提案されている(例えば、特許文献2)。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーをフェノール樹脂架橋剤で予備架橋した後に、有機過酸化物により架橋する方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-36143号公報
【特許文献2】特開2004-137352号公報
【特許文献3】特開2014-24929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車部品などの分野では、耐油性と機械強度とに優れるとともに、硬度が低い熱可塑性エラストマーが求められることがある。しかしながら、特許文献1~3に記載のいずれの熱可塑性エラストマーも、硬度が高く、そのような市場の要求を満たしていない。また、架橋剤としてフェノール樹脂架橋剤を用いた場合に、熱可塑性エラストマーのメルトフローレート(MFR)が低下して加工性が悪くなる傾向がある。
本発明は、低硬度でありながら、流動性、機械強度、耐油性に優れる熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が研究を進めた結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出した。本発明の構成例は、以下の通りである。
なお、本明細書では、数値範囲を示す「A~B」は、A以上B以下を示す。
【0007】
[1] エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)とを含むポリオレフィン系ゴム(A)100質量部と、
結晶性プロピレン系重合体(B)10~60質量部と
を含み、
前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)と前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量の合計100質量%に対し、前記エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の含有量が、0質量%を超え40質量%未満であり、前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量が、60質量%を超え、100質量%未満であり、
有機過酸化物系架橋剤(C)およびフェノール樹脂系架橋剤(D)により、少なくとも一部が架橋された熱可塑性エラストマー組成物。
【0008】
[2] さらに軟化剤(E)100~300質量部を含む、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0009】
[3] 前記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量と、前記フェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量との比(D/A2)が、0.01~1.00である、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0010】
[4] 前記有機過酸化物系架橋剤(C)と前記フェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量の比(C/D)が0を超え、0.5以下である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0011】
[5] 前記ポリオレフィン系ゴム(A)100質量部に対して、前記有機過酸化物系架橋剤(C)の含有量が0.2~2.0質量部である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0012】
[6] 下記要件(1)および(2)を満たす、[1]~[5]のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
(1)ASTM D-1238に準拠して230℃、10kg荷重で測定したメルトフローレートが、3~100g/10分である。
(2)JIS K 6253に準拠して測定したショアA硬度(瞬間値)が、30~70である。
【0013】
[7] [1]~[6]のいずれか1つに記載の熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体。
【0014】
[8] 前記成形体が自動車部品である[7]に記載の成形体。
【0015】
[9] シール部材である[7]または[8]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、低硬度でありながら、流動性、機械強度、耐油性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
≪熱可塑性エラストマー組成物≫
本発明に係る熱可塑性エラストマー組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)とを含むポリオレフィン系ゴム(A)100質量部と、結晶性プロピレン系重合体(B)10~60質量部とを含み、有機過酸化物系架橋剤(C)およびフェノール樹脂系架橋剤(D)により、少なくとも一部が架橋されている。
【0018】
<ポリオレフィン系ゴム(A)>
ポリオレフィン系ゴム(A)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)と、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)とを含む。
【0019】
ポリオレフィン系ゴム(A)は、本組成物中において、少なくとも一部が架橋しており、完全に架橋していてもよい。ポリオレフィン系ゴム(A)の架橋のタイミングは特に制限されない。例えば、結晶性プロピレン系重合体(B)と混合する前に、ポリオレフィン系ゴム(A)の少なくとも一部を(動的)架橋してもよく、結晶性プロピレン系重合体(B)と混合した後または混合しながら、ポリオレフィン系ゴム(A)の少なくとも一部を(動的)架橋してもよい。ポリオレフィン系ゴム(A)の架橋度が高いと、本組成物の硬度が低くても、本組成物から得られる成形体の耐油性およびゴム弾性が良好になる。
なお、ポリオレフィン系ゴム(A)の架橋度が高くなるにつれて、本組成物から製造された成形体の圧縮永久歪が低くなる傾向にある。従って、ポリオレフィン系ゴム(A)の架橋度の高低は、本組成物から製造された成形体の圧縮永久歪から推測できる。
【0020】
本組成物中のポリオレフィン系ゴム(A)の含有量(ポリオレフィン系ゴム(A)、結晶性プロピレン系重合体(B)、有機過酸化物系架橋剤(C)およびフェノール樹脂系架橋剤(D)の合計を100質量%とした場合)は、本組成物が成形性に優れ、得られる成形体が低硬度でありながら機械強度に優れたものになる等の点から、好ましくは62.5~91質量%、より好ましくは65~84質量%、さらに好ましくは67~80質量%、特に好ましくは68.5~75質量%である。
【0021】
〔エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)〕
エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)は、エチレン由来の構成単位、およびα-オレフィン由来の構成単位を含めば特に制限されない。エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)として、例えば、エチレンとα-オレフィンとを共重合する従来公知の方法で合成したものを用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。
本組成物に含まれるエチレン・α-オレフィン共重合体(A1)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0022】
前記α-オレフィンとしては特に制限されないが、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらのα-オレフィンのうち、架橋度およびプロピレン系重合体との分散性の点から、プロピレン、1-ブテン、および1-オクテンが好ましく、特に1-オクテンが好ましい。すなわち、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、およびエチレン・オクテン共重合体が好ましく、エチレン・オクテン共重合体が最も好ましい。
【0023】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の密度は、本組成物の架橋度の観点から、好ましくは0.84~0.88g/cm3、より好ましくは0.84~0.87g/cm3、さらに好ましくは0.84~0.86g/cm3である。また、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)中のα-オレフィン由来の構成単位の含有量は、好ましくは1~60wt%、より好ましくは10~50wt%、さらに好ましくは20~45wt%である。
エチレン由来の構成単位の含有量、および、α-オレフィン由来の構成単位の含有量は、13C-NMRによる測定で求めることができる。エチレン・α-オレフィン共重合体の密度はASTM D792に記載されている方法で測定することが出来る。
【0024】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)は、本組成物の流動性を良好にできる点から、ASTM D-1238の測定方法に準拠して、190℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(以下「MFR」ともいう。)が、好ましくは0.05~50g/10分であり、より好ましくは0.1~20g/10分である。
【0025】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)は、有機過酸化物系架橋剤(C)によって架橋構造が形成されるが、フェノール樹脂系架橋剤(D)によっては架橋構造が形成されない。また、ポリオレフィン系ゴム(A)中の架橋構造が少ないと、本組成物の溶融流動性が低下しにくい傾向がある。そこで、本組成物から得られる成形体の機械強度が低くなりすぎない範囲でポリオレフィン系ゴム(A)中の架橋構造を減らし、本組成物の溶融流動性を確保するために、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の含有量が調整され得る。
エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の量は、ポリオレフィン系ゴム(A)に含まれるエチレン・α-オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)との合計量を100質量%とすると、0質量%を超え、40質量%未満であり、好ましくは5~35質量%、より好ましくは10~30質量%である。エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の量が上記範囲にあると、本組成物が成形性に優れ、かつ、得られる成形体の耐油性と機械強度とが優れたものになる。また、ポリオレフィン系ゴム(A)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)およびエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)以外のポリオレフィン系ゴムを含んでもよいが、その場合、ポリオレフィン系ゴム(A)100質量%に占めるエチレン・α-オレフィン共重合体(A1)の量は、本組成物が成形性に優れ、かつ、得られる成形体の耐油性と機械強度とが優れたものになる等の点から、好ましくは0質量%を超え、40質量%未満であり、より好ましくは5~35質量%、さらに好ましくは10~30質量%である。
【0026】
〔エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)〕
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)は、エチレン由来の構成単位、α-オレフィン由来の構成単位、および、非共役ポリエン由来の構成単位を含めば特に制限されず、例えば、エチレン、α-オレフィンおよび非共役ポリエンを共重合する従来公知の方法で合成してもよく、また、市販品を用いてもよい。
本組成物に含まれるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0027】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の構成単位となるα-オレフィンは特に制限されないが、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましい。炭素数3~20のα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのα-オレフィンは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらのα-オレフィンのうち、原料コストが比較的安価であり、優れた機械的性質を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)が得られ、該エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)を含む本組成物を成形するとゴム弾性に優れた成形体を得ることができる点から、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、プロピレン、1-ブテンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。すなわち、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)としては、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体およびエチレン・1-ブテン・非共役ポリエン共重合体が好ましく、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体が最も好ましい。
【0028】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の構成単位となる非共役ポリエンとしては、環状および鎖状の非共役ポリエンが挙げられる。環状非共役ポリエンとしては、例えば5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどが挙げられる。鎖状の非共役ポリエンとしては、例えば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどが挙げられる。
これらの非共役ポリエンは1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。これらの非共役ポリエンのうち、本組成物の架橋度の観点から、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネンおよび5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネンがさらに好ましい。すなわち、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)としては、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン共重合体が好ましい。
【0029】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)は、エチレン/α-オレフィン比を、エチレン由来の構造単位[A]の質量WAと、α-オレフィンに由来する構造単位[B]の質量WBとの比[WA/WB]で表すと、[WA/WB]が、40/60~90/10の範囲にあることが好ましい。[WA/WB]は、より好ましくは45/55~80/20、さらに好ましくは50/50~75/25、特に好ましくは、55/45~70/30、最も好ましくは55/45~68/32である。
エチレン由来の構成単位の含有量、α-オレフィン由来の構成単位の含有量、および非共役ポリエン由来の構成単位の含有量は、13C-NMRによる測定結果に基づいて計算することにより求めることができる。
【0030】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)中の非共役ポリエン由来の構成単位の含有量は、ヨウ素価が、好ましくは1~25、より好ましくは5~20、特に好ましくは5~15となる量である。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)のヨウ素価が前記範囲にあると、本組成物のゴム弾性および耐油性が良好になる傾向がある。
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)では、非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が、[A]、[B]および[C]の構造単位の合計100質量%に対して、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは1.0~8.0質量%、更に好ましくは2.0~6.0質量%、特に好ましくは3.0~5.0質量%の範囲にある。非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が前記範囲にあると、十分な架橋性、及び柔軟性を有するエチレン系共重合体が得られる傾向にある。すなわち、非共役ポリエンに由来する構造単位[C]の含有量が前記範囲にあると、十分な架橋性、および柔軟性を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)が得られるため、本組成物のゴム弾性および耐油性が良好になる傾向にある。
【0031】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)は、本組成物の機械強度および耐油性が良好になりやすい点から、135℃デカリン(デカヒドロナフタレン)中で測定した極限粘度[η]が好ましくは2.0~7.0dl/g、より好ましくは3.0~7.0dl/g、さらに好ましくは3.3~7.0dl/gである。なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)が下記軟化剤(E)等の油展剤を用いて油展されている場合は、極限粘度[η]の測定前に脱脂し、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)のみの状態で測定を実施する。
【0032】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の密度は、好ましくは0.80~0.89g/cm3であり、より好ましくは0.83~0.89g/cm3であり、さらに好ましくは0.83~0.88g/cm3である。なお、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の密度の測定の際にも、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)が油展されている場合は、測定前に脱脂を行うことにより、測定対象はエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)のみとする。
【0033】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)は、有機過酸化物系架橋剤(C)とフェノール樹脂系架橋剤(D)との両方によって、架橋構造が形成される。フェノール樹脂系架橋剤(D)によって形成される架橋構造を含有すると、組成物の耐油性と機械強度とが良好になる傾向がある。
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の量は、ポリオレフィン系ゴム(A)に含まれるエチレン・α-オレフィン共重合体(A1)とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)との合計量を100質量%とすると、60質量%を超え、100質量%未満であり、好ましくは65~95質量%、より好ましくは70~90質量%である。エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の量が上記範囲にあると、本組成物が成形性に優れ、かつ、得られる成形体の耐油性と機械強度とが優れたものになる。また、ポリオレフィン系ゴム(A)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)およびエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)以外のポリオレフィン系ゴムを含んでもよいが、その場合、ポリオレフィン系ゴム(A)100質量%に占めるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の量は、本組成物が成形性に優れ、かつ、得られる成形体の耐油性と機械強度とが優れたものになる等の点から、好ましくは60質量%を超え、100質量%未満であり、より好ましくは65~95質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
【0034】
<結晶性プロピレン系重合体(B)>
結晶性プロピレン系重合体(B)はポリオレフィン系ゴム(A)以外の重合体である。なお、「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、融点(Tm)が観測されることを意味する。
【0035】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンとプロピレン以外のコモノマーとの共重合体であってもよい。また、結晶性プロピレン系重合体(B)の構造は特に制限されず、例えば、プロピレン由来の構成単位部分は、アイソタクチック構造でも、シンジオタクチック構造でも、アタクチック構造でもよい。また、前記共重合体の場合、ランダム型、ブロック型、グラフト型のいずれであってもよい。
結晶性プロピレン系重合体(B)が共重合体である場合、本組成物の耐油性および機械強度が良好になりやすい点から、該重合体を構成する構成単位のうちのプロピレンに由来する構成単位の含有量は、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。
【0036】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、本組成物の耐油性および機械強度が良好になりやすい点から、好ましくは、プロピレンの単独重合体、または、ブロック型共重合体である。また、本組成物の耐油性および機械強度の点から、プロピレンの単独重合体とブロック型共重合体の混合物を結晶性プロピレン系重合体(B)として用いてもよい。プロピレンの単独重合体とブロック型共重合体の混合物を結晶性プロピレン系重合体(B)として用いる場合、結晶性プロピレン系重合体(B)に占めるプロピレンの単独重合体の割合は、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは5~50質量%であり、さらに好ましくは5~40質量%である。一方、結晶性プロピレン系重合体(B)に占めるブロック型共重合体の割合は、好ましくは1~90質量%であり、より好ましくは5~90質量%であり、さらに好ましくは10~90質量%である。
【0037】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、従来公知の方法で合成してもよく、市販品を用いてもよい。また、本組成物に含まれる結晶性プロピレン系重合体(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0038】
結晶性プロピレン系重合体(B)が共重合体である場合、前記コモノマーは、プロピレンと共重合可能な他のモノマーであればよいが、炭素数2または4~12のα-オレフィンが好ましい。具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンなどが挙げられ、これらの中でも、エチレン、1-ブテン、1-オクテンが好ましい。コモノマーは、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記共重合体中のコモノマー由来の構成単位の含有量は、本組成物の耐油性の点から、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%である。
【0039】
JIS K 7121の測定方法に準拠して測定した結晶性プロピレン系重合体(B)の融点は、好ましくは50~170℃、より好ましくは70~167℃である。結晶性プロピレン系重合体(B)の融点が前記範囲にあると、得られる組成物が耐熱性に優れる。
【0040】
結晶性プロピレン系重合体(B)は、流動性の点から、ASTM D-1238の測定方法に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは0.1~50g/10分であり、より好ましくは0.5~30g/10分である。結晶性プロピレン系重合体(B)のMFRが前記範囲にあると、得られる組成物が流動性に優れるため好ましい。
【0041】
本組成物中の結晶性プロピレン系重合体(B)の含有量は、ポリオレフィン系ゴム(A)100質量部に対し、10~60質量部であり、好ましくは20~50質量部、より好ましくは25~45質量部、特に好ましくは30~40質量部である。
本組成物中の結晶性プロピレン系重合体(B)の含有量が前記範囲にあると、得られる組成物の硬度が低くなるので好ましい。結晶性プロピレン系重合体(B)としては、例えば、プライムポリマー社製のプライムポリプロ(商品名)、日本ポリプロ社製ノバテックPP(商品名)、サンアロマー社製ポリプロピレン、LyondellBasell社製ポリプロピレン、Braskem社製ポリプロピレン、SCG Chemicals社製ポリプロピレンが挙げられる。
【0042】
<有機過酸化物系架橋剤(C)>
有機過酸化物系架橋剤(C)は、芳香族系および脂肪族系のいずれであってもよい。また、本組成物に含まれる有機過酸化物架橋剤(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。有機過酸化物系架橋剤(C)の例としては、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3等のパーオキシエステル類;ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類等が挙げられる。これらの中では、得られる組成物の架橋度の観点から、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が好ましい。
【0043】
有機過酸化物系架橋剤(C)は、得られる組成物の架橋度および、分散性が良好になりやすいという観点から、1分半減期温度が140~230℃であることが好ましい。有機過酸化物でこの条件を満たすものは、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3等である。
【0044】
本組成物中の有機過酸化物系架橋剤(C)の含有量は、ポリオレフィン系ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは0.2~2.0質量部であり、より好ましくは0.3~1.8質量部であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量部である。有機過酸化物系架橋剤(C)の含有量が前記範囲にあると、本組成物が架橋度と機械強度のバランスに優れるため好ましい。
【0045】
本組成物中の有機過酸化物系架橋剤(C)の含有量とフェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量との比率(C/D)は、好ましくは0を超えて、0.5以下であり、より好ましくは0.10~0.40であり、さらに好ましくは0.15~0.30である。有機過酸化物系架橋剤(C)の含有量とフェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量との比率が前記範囲にあると、本組成物が架橋度と流動性のバランスに優れるため好ましい。なお、本組成物では、(C/D)が大きいほどMFRの値が大きくなりやすい傾向にあり、流動性に優れる傾向がみられる。
【0046】
<フェノール樹脂系架橋剤(D)>
フェノール樹脂系架橋剤(D)は、熱架橋性フェノール系樹脂である。フェノール樹脂系架橋剤としては、例えば、置換フェノールまたは未置換フェノールとアルデヒドとの縮合により製造されるフェノール系樹脂、二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造されるフェノール系樹脂、ハロゲン化フェノール樹脂などを挙げることができる。置換フェノールは炭素数1~10のアルキル基置換体が好ましい。また、置換フェノールまたは未置換フェノールとの縮合に使用されるアルデヒドは、好ましくはホルムアルデヒドである。
【0047】
フェノール樹脂系架橋剤(D)については、米国特許第3287440号、第3709840号および第4311628号の記載を参照することができる。
【0048】
フェノール樹脂系架橋剤(D)として、市販されているフェノール系樹脂を適宜選択して使用することもできる。フェノール樹脂系架橋剤(D)として使用することができる市販品の例としては、タッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール250-I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、タッキロール250-III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業(株)社製)、PR-4507(群栄化学工業(株)社製)、Vulkaresat510E(Hoechst社製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、VulkaresenE(Hoechst社製)、Vulkaresen 105E(Hoechst社製)、Vulkaresen 130E(Hoechst社製)、Vulkaresol 315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジンPR-22193(住友デュレズ(株)社製)、Symphorm-C-100(Anchor Chem.社製)、Symphorm-C-1001(Anchor Chem.社製)、タマノル531(荒川化学(株)社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(SchenectadyChem.社製)、CRR-0803( U.C.C社製)、Schenectady SP-1055(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP-1056(Schenectady Chem.社製)、CRM-0803(昭和ユニオン合成(株)社製)、Vulkadu r A(Bayer社製)などを挙げることができる。これらの中でも、架橋度の点から、臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0049】
本組成物中のフェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量は、ポリオレフィン系ゴム(A)100質量部に対して、好ましくは1~10質量部であり、より好ましくは2~8質量部であり、さらに好ましくは3~6質量部である。フェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量が前記範囲にあると、得られる組成物が耐油性およびゴム弾性に優れるので好ましい。
【0050】
本組成物中のフェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量との比率(D/A2)は、好ましくは0.01~1.00であり、より好ましくは0.01~0.2であり、さらに好ましくは0.02~0.08であり、特に好ましくは0.03~0.06である。ここで、(D/A2)は、フェノール樹脂系架橋剤(D)で架橋されたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の割合に近似できる。フェノール樹脂系架橋剤(D)の含有量とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)の含有量との比率が前記範囲にあると、得られる組成物が耐油性およびゴム弾性に優れるので好ましい。
【0051】
<その他の添加物>
本組成物は、本発明の目的を損ねない範囲であれば、他のポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂(ただし、ポリオレフィン系ゴム(A)および結晶性プロピレン系重合体(B)を除く)、架橋助剤、フェノール樹脂系架橋剤(D)の活性剤、および、樹脂用添加剤(例えば、スリップ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、分散剤、難燃剤、防菌剤、受酸剤、軟化剤(E)、充填材、着色剤、熱伝導性充填材など)を含有してもよい。これらのその他の添加剤はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0052】
上記その他の添加物が含まれる場合、本組成物中の上記その他の添加物の合計量は、ポリオレフィン系ゴム(A)と結晶性プロピレン系重合体(B)の合計100質量%に対して、通常10質量%以下であり、好ましくは9質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下である。
【0053】
[架橋助剤]
有機過酸化物系架橋剤(C)による架橋反応を均一にする等の観点から、架橋助剤を使用することもできる。架橋助剤の具体的なものとしては、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;p-キノンジオキシム、p,p’ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム化合物;N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、ニトロソベンゼン等のニトロソ化合物;トリメチロールプロパン-N,N’-m-フェニレンジマレイミド等のマレイミド化合物;その他イオウ、ジフェニルグアニジン、トリアリルシアヌレートなどがあげられる。その他にも架橋助剤として、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレート等の多官能性メタクリレートモノマー;ビニルブチラート、ビニルステアレート等の多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0054】
[フェノール樹脂系架橋剤(D)の活性剤]
フェノール樹脂系架橋剤(D)がハロゲン化されていない場合、フェノール樹脂系架橋剤(D)は活性剤と共に使用され得る。活性剤としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレンのようなハロゲン供与体が用いられ得る。なお、フェノール樹脂系架橋剤(D)がハロゲン化されている場合にはハロゲン供与体は用いなくてもよい。
フェノール樹脂系架橋剤(D)とともに活性剤としてハロゲン供与体が添加される場合、ハロゲン供与体の添加量は、フェノール樹脂系架橋剤(D)のハロゲン供与体に対する量((D)/(ハロゲン供与体))が、好ましくは1~100となる量、より好ましくは2~50となる量である。
【0055】
[受酸剤]
受酸剤として、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛などが用いられ得る。受酸剤が用いられる場合、受酸剤の添加量は、フェノール樹脂系架橋剤(D)の受酸剤に対する量((D)/(受酸剤))が、好ましくは1~100となる量、より好ましくは2~50となる量である。
【0056】
[軟化剤(E)]
本組成物は、流動性や硬度の調整等を目的として、軟化剤(E)を用いることが好ましい。
軟化剤(E)の具体例としては、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、石油アスファルト、ワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、コールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、椰子油等の脂肪油系軟化剤;トール油;サブ(ファクチス);蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛等の脂肪酸または脂肪酸塩;ナフテン酸;パイン油、ロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子系軟化剤;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン、末端変性ポリイソプレン、水添末端変性ポリイソプレン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油が挙げられる。
これらの中でも、プロセスオイルが好ましい。
【0057】
軟化剤(E)は、前述のように、例えば、ポリオレフィン系ゴム(A)と予め混合(油展)したものを用いてもよく、本組成物を調製する際に用いてもよく、本組成物に配合する各成分を動的に熱処理する際に後添加してもよい。
【0058】
本組成物が軟化剤(E)を含有する場合、本組成物中の軟化剤の含有量は、ポリオレフィン系ゴム(A)100質量部に対し、好ましくは100~300質量部、より好ましくは120~250質量部、さらに好ましくは140~200質量部である。
軟化剤(E)の含有量が前記範囲にあると、得られた組成物が高流動かつ低硬度になりやすいので好ましい。
【0059】
<本組成物の製造方法>
本組成物は、ポリオレフィン系ゴム(A)、結晶性プロピレン系重合体(B)、有機過酸化物系架橋剤(C)およびフェノール樹脂系架橋剤(D)と、必要により前述のその他の添加剤とを混合し、動的架橋することで製造できる。本明細書において「動的架橋」とは、ポリオレフィン系ゴム(A)などの必要な成分を含む混合物を、剪断力を加えながら溶融混練することにより、ポリオレフィン系ゴム(A)の少なくとも一部に架橋構造を形成する処理を指す。
【0060】
溶融混練の際には、バンバリーミキサー、ミキシングロール、ヘンシェルミキサー、ニーダー、一軸または二軸押出機等の従来公知の混合・混練装置を使用することが好ましい。混合・混練の際の際の各成分の添加順序は、有機過酸化物系架橋剤(C)とフェノール樹脂系架橋剤(D)とが同時に添加されれば、特に制限されない。
【0061】
なお、本明細書において「同時に添加」とは、有機過酸化物系架橋剤(C)またはフェノール樹脂系架橋剤(D)による架橋反応が単独では実質的に発生していないタイミングで両者が添加されることを意味する。すなわち、「同時に添加」とは、フェノール樹脂系架橋剤(D)による架橋反応が始まってから有機過酸化物系架橋剤(C)を添加する場合、および、有機過酸化物系架橋剤(C)による架橋反応が始まってからフェノール樹脂系架橋剤(D)を添加する場合を含まない。有機過酸化物系架橋剤(C)またはフェノール樹脂系架橋剤(D)による架橋反応が始まっていないことは、混合物の溶融粘度が実質的に増加していないことで確認することができる。
【0062】
動的架橋によって、ポリオレフィン系ゴム(A)の少なくとも一部が架橋した状態の成分を含む組成物を得ることができる。本明細書において「少なくとも一部が架橋された」とは、ゲル含量が30~100質量%、好ましくは40~100質量%の範囲内にある場合のことをいう。
【0063】
動的架橋は、非開放型の装置中で行うことが好ましく、また、窒素、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
動的架橋における加熱温度は、通常125~280℃、好ましくは145~240℃であり、混合・混練時間は、通常1~30分間、好ましくは3~20分間である。
また、前記混合・混練の際に加えられる剪断力としては、最高剪断速度が、例えば10~100,000sec-1、好ましくは100~50,000sec-1、より好ましくは1,000~10,000sec-1、さらに好ましくは2,000~7,000sec-1となるような剪断力が挙げられる。
【0064】
以上のように、有機過酸化物系架橋剤(C)とフェノール樹脂系架橋剤(D)とを同時に添加して動的架橋することにより、本組成物が低硬度であり、かつ、流動性、機械強度、耐油性の全てに優れる組成物となる。
【0065】
<本組成物の物性>
[ショアA硬度]
本組成物は、JIS K 6253に準拠して測定したショアA硬度(瞬間値)が、好ましくは30~70であり、より好ましくは40~60であり、さらに好ましくは45~55である。
本組成物のショアA硬度(瞬間値)が前記範囲にあると、市場で求められている低硬度の熱可塑性エラストマー組成物となる。本組成物は、シール材、ホースなどの低硬度が要求される用途に好適に使用することができる。
前記ショアA硬度(瞬間値)は具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0066】
[MFR]
本組成物は、ASTM D-1238に準拠して、230℃、10kg荷重で測定したMFRが、好ましくは3~100g/10分であり、より好ましくは5~80g/10分であり、さらに好ましくは8~45g/10分である。本組成物のMFRが前記範囲にあると、成形性が良好であるので好ましい。
【0067】
[引張破断強度(TB)]
本組成物は、JIS K 6301に準拠して23℃において測定した引張破断強度(TB)が、好ましくは1.0MPa以上であり、より好ましくは1.5MPa以上であり、さらに好ましくは2.0MPa以上である。引張破断強度(TB)は高い方が好ましいため上限は限定されないが、通常40MPa以下である。
本組成物の引張破断強度が前記範囲にあると、本組成物から得られる成形品の機械特性が良好であるので好ましい。
前記引張破断強度は具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0068】
[引張破断伸び(EB)]
本組成物は、JIS K 6301に準拠して23℃において測定した引張破断伸び(EB)が、好ましくは200%以上であり、より好ましくは300%以上であり、さらに好ましくは350%以上である。引張破断伸び(EB)は高い方が好ましいため上限は特に限定されないが、通常1500%以下である。
本組成物の引張破断伸びが前記範囲にあると、本組成物から得られる成形品の機械特性が良好であるので好ましい。
前記引張破断伸びは具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0069】
[圧縮永久歪(CS)]
本組成物は、JIS K 6250に準拠して積層したプレスシートを用いて、JIS K 6262に準拠して測定した圧縮永久歪(CS)が、好ましくは50%以下であり、より好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。圧縮永久歪(CS)は低い方が好ましいため下限は特に限定されないが、通常5%以上である。
本組成物の圧縮永久歪が前記範囲にあると、本組成物から得られる成形品のシール性が良好であるので好ましい。
前記圧縮永久歪は具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0070】
[耐油性(試験油に浸漬したときの体積変化率)]
本組成物は、JIS K 6301に準拠し125℃のIRM903オイルに72時間浸漬した場合の体積変化率が、好ましくは170%以下であり、より好ましくは160%以下であり、さらに好ましくは150%以下である。体積変化率は低い方が好ましいため下限は特に限定されないが、通常10%以上である。
本組成物の体積変化率が前記範囲にあると、本組成物から得られる成形品の耐油性が良好であるので好ましい。
前記体積変化率は具体的には、下記実施例に記載の方法で測定できる。
【0071】
≪成形体≫
本発明に係る成形体は、本組成物を含めば特に制限されず、用途に応じて、任意の既知の成形法を用いて成形された成形体である。成形法の例としては、例えば、プレス成形、射出成形法、押出成形法、カレンダー成形法、中空成形法、真空成形法、圧縮成形法が挙げられる。
【0072】
前記成形体は、低硬度、機械強度、耐油性が求められる用途に使用され、例えば、エンジン回りのシール材、ホース等の部品に好適に使用される。前記成形体は、自動車部品などの乗り物用部品に好適に使用されるが、乗り物部品以外にも、例えば、機械部品用途や建材用途等に使用可能である。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0074】
<原材料>
以下の実施例および比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
【0075】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(A1)]
・「共重合体(A1-1)」:非油展エチレン・オクテン共重合体ゴム、MFR(190℃、2.16kg荷重):1g/10分、密度:0.86g/cm3
【0076】
[エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)]
・「共重合体(A2-1)」:油展エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン含量=63質量%、プロピレン含量=32.5質量%、非共役ジエン種:5-エチリデン-2-ノルボルネン、非共役ジエン含量=4.5質量%、非共役ジエン含量(ヨウ素価)=13、極限粘度[η]=3.4(dl/g)、ゴム成分100質量部に対する油展量=40(PHR))
なお、下記表1中の共重合体(A2-1)の数値は、油展量を除いたゴム成分のみの配合量を示す。共重合体(A2-1)の油展には、下記軟化剤(E―1)を用いた。
【0077】
[結晶性プロピレン系重合体(B)]
・「プロピレン系重合体(B-1)」:プロピレン・エチレンブロック共重合体、MFR(230℃、2.16kg荷重)=9g/10分)、DSCで測定した融点160℃)
・「プロピレン系重合体(B-2)」:プロピレンホモポリマー、MFR(230℃、2.16kg荷重)=12g/10分)、DSCで測定した融点:165℃)
【0078】
[有機過酸化物系架橋剤(C)]
・「架橋剤(C-1)」:有機ペルオキシド(2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、商品名:パーヘキサ25B、日油(株)製)
【0079】
[フェノール樹脂系架橋剤(D)]
・「架橋剤(D-1)」:臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂(商品名:SP-1055F、Schenectady社製)
【0080】
[軟化剤(E)]
・「軟化剤(E-1)」:パラフィン系プロセスオイル(商品名:ダイアナプロセスオイル(登録商標) PW-100、出光興産(株)製)
【0081】
[その他の添加物]
・「架橋助剤」:ジビニルベンゼン DVB-810(新日鉄住金化学(株)製)
・「受酸剤」:酸化亜鉛(酸化亜鉛2種、ハクスイテック社製)
【0082】
実施例および比較例で使用した各成分の組成や物性は、以下の方法により測定した。
【0083】
<構成単位の質量分率>
前記共重合体(A2-1)中に含まれる各構成単位の質量分率(質量%)は、13C-NMRによる測定値により求めた。具体的には、ECX400P型核磁気共鳴装置(日本電子(株)製)を用いて、測定温度:120℃、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン=4/1(体積比)、積算回数:8000回の条件で得られた共重合体(A2-1)の13C-NMRのスペクトルから算出した。
【0084】
<メルトフローレート(MFR)>
共重合体(A1-1)のMFRは、ASTM D-1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
プロピレン系重合体(B-1)および(B-2)のMFRは、ASTM D-1238に準拠し、230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0085】
<極限粘度>
共重合体(A2-1)の極限粘度[η](dl/g)は、(株)離合社製全自動極限粘度計を用いて、温度:135℃、測定溶媒:デカリンにて測定した。
【0086】
<融点>
前記プロピレン系重合体(B-1)の融点は、JIS K 7121に準拠して示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した。具体的には、プロピレン系重合体(B-1)のペレットを、230℃で10分間加熱し、次いで、30℃まで10℃/分の速度で降温した後1分間保持し、その後、10℃/分の速度で昇温した。この際のDSC曲線において、吸収熱量が最大の温度を融点とした。プロピレン系重合体(B-2)についても同様に融点を測定した。
【0087】
<密度>
共重合体(A1-1)の密度は、ASTM D1505に準拠して測定した。
【0088】
[実施例1]
共重合体(A1-1)20質量部と共重合体(A2-1)80質量部、プロピレン系重合体(B-1)25質量部、プロピレン系重合体(B-2)7質量部、有機過酸化物架橋剤(C)として架橋剤(C-1)0.7質量部、フェノール樹脂系架橋剤(D)として架橋剤(D-1)4質量部、軟化剤(E)160.7質量部を配合し、さらに、その他の添加物として、架橋助剤0.5質量部、受酸剤1質量部を配合し、原料とした。
【0089】
原料の全量を押出機(品番 KTX-30、(株)神戸製鋼所製、シリンダー温度:C1=50℃、C2=90℃、C3=100℃、C4=120℃、C5=180℃、C6=200℃、C7~C14=200℃、ダイス温度:200℃、スクリュー回転数:500rpm、押出量:40kg/h)を用いて、混練しながら動的架橋させ、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
【0090】
[実施例2~6および比較例1~3]
用いる原材料の種類および量を表1に示す通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。表1中の配合の欄の数値は質量部を示す。
【0091】
<熱可塑性エラストマー組成物のMFR>
JIS K 7210に準拠して230℃、10kg荷重で、実施例および比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のメルトフローレートを測定した。結果を表1に示す。
【0092】
<プレスシートの作製と試験片の作成>
実施例または比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物の各々についてペレットを、100t電熱自動プレス(ショージ社製)を用いて、230℃で6分間プレス成形し、その後、室温で5分間冷却プレスして厚さ2mmの平板のプレスシートを得た。
その後、得られたプレスシートから3号ダンベル片を打ち抜いて、厚さ2mmの試験片を作製した。
【0093】
<ショアA硬度>
JIS K 6253に準拠して、前述の方法で作製した厚さ2mmのプレスシートを3枚重ねてサンプルとして用い、デュロメータを用いてショアA硬度(瞬間値)を求めた。結果を表1に示す。
【0094】
<引張特性>
前述の方法で作成したダンベル状3号形試験片に対して、JIS K 6301に準拠して引張試験(引張速度:500mm/分、測定温度:23℃)を行い、引張破断強度(TB)および引張破断伸び(EB)を測定した。結果を表1に示す。
【0095】
<圧縮永久歪(CS)>
JIS K 6250に準拠して、厚さ2mmのプレスシートを6枚重ねて厚み12mmの積層シートとした。得られた積層シートに対して、JIS K 6262に準拠して、70℃で22時間長さ方向に25%圧縮した後、圧縮装置から取り出して30分後の成形体の長さを測定し、圧縮永久歪を計算した。結果を表1に示す。
【0096】
<耐油試験(試験油に浸漬したときの体積変化率)>
試験前のプレスシート(2mm厚さ)を10cm角に切り出し、JIS K6258に従い、プレスシートを125℃のIRM903オイル中に72時間浸漬させた後、耐油性として膨潤度(ΔV)(体積%)を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1~6のいずれでも、フェノール樹脂系架橋剤(D)のみで架橋処理を起こった比較例1と同等の硬度、耐油性、引張破断強度、圧縮永久歪を有しつつ、MFRが比較例1よりも大幅に大きくなった。また、実施例1~6のいずれも、有機過酸化物系架橋剤(C)のみで架橋処理を起こった比較例2よりも圧縮永久歪が小さい。この結果から、実施例1~6の組成物では、フェノール樹脂系架橋剤(D)由来の架橋構造を有しているため、有機過酸化物系架橋剤(C)のみで架橋処理を行った組成物に比べて耐油性、引張破断強度、圧縮永久歪の全てが良好になった、と推測される。
【0099】
実施例1、5、6を比較すると、共重合体(A1-1)の配合量が多くなる順(実施例5<実施例1<実施例6)に、得られる組成物のMFRが大きくなっている。この結果から、ポリオレフィン系ゴム(A)の一部を、フェノール樹脂系架橋剤(D)で架橋されないエチレン・α-オレフィン共重合体(A1)としたことにより、本組成物の溶融流動性が改善した、と推測される。
【0100】
また、共重合体(A1-1)および共重合体(A2-1)の合計100質量%に対して、共重合体(A1-1)の量が40質量%未満である実施例2では、共重合体(A1-1)の割合がより多い比較例3に比べて耐油性が良好であった。
以上述べたように、実施例1~6のいずれにおいても、低硬度でありながら、流動性、機械強度、耐油性に優れる熱可塑性エラストマー組成物が得られた。