(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057847
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】中空糸膜中間体、該中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物、及び中空糸膜を含む織編物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 69/08 20060101AFI20230417BHJP
B01D 71/56 20060101ALI20230417BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20230417BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20230417BHJP
B01D 71/38 20060101ALI20230417BHJP
B01D 65/10 20060101ALI20230417BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20230417BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20230417BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20230417BHJP
C08J 9/42 20060101ALI20230417BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
B01D69/08
B01D71/56
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/38
B01D65/10
B01D71/40
B01D69/02
B01D63/02
C08J9/42 CFG
D06M15/333
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167550
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小野 貴博
(72)【発明者】
【氏名】安藤 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】新谷 瑞希
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
4L033
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA07
4D006GA41
4D006HA02
4D006HA09
4D006JA02B
4D006JB02
4D006LA06
4D006MA01
4D006MA09
4D006MB02
4D006MB16
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC27
4D006MC29
4D006MC33
4D006MC36
4D006MC39
4D006MC40
4D006MC55
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC63
4D006MC88
4D006NA50
4D006NA54
4D006NA61
4D006NA64
4F074AA24
4F074AA38
4F074AA71
4F074CE15
4F074CE54
4F074DA03
4F074DA43
4F074DA44
4L033AA06
4L033AB01
4L033AC15
4L033CA28
(57)【要約】
【課題】 中空糸膜の機械的強度を高めて織編物の織成又は編成に供することを可能とする中空糸膜中間体に関する技術の提供、該中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物の提供、及び中空糸膜を含む織編物の製造方法の提供を主な課題とする。
【解決手段】 中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、当該中空糸膜中間体の引張強度変化率が10~200%である中空糸膜中間体。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、下記方法にて測定される当該中空糸膜中間体の引張強度変化率が10~200%である中空糸膜中間体。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを10本用意する。
(2)10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(3)(2)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(4)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷する。
(5)上記(2)~(4)の処理をおこなった中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度A)及び上記(2)~(4)の処理を行っていない中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度B)を、引張試験機にて、チャック間距離50mm、引張速さ500mm/分、測定環境:温度20℃、湿度60%にて求める。
(6)下記式(I)により、引張強度変化率を求める。
式(I)・・・強度変化率(%)=(強度B-強度A)/強度A×100
【請求項2】
前記中空糸膜基材の複数の細孔の少なくとも一部が前記水溶性高分子によって閉塞されており、当該中空糸膜中間体の透水量変化率が0~60%である、請求項1に記載の中空糸膜中間体。
【請求項3】
前記水溶性高分子が、少なくともポリビニルアルコール又はポリアクリル酸系ポリマーを含む、請求項1又は2に記載の中空糸膜中間体。
【請求項4】
前記中空糸膜基材がポリアミドにより形成された、請求項1~3のいずれか1項に記載の中空糸膜中間体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の中空糸膜中間体の製造方法であって、
中空糸膜基材に対して水溶性高分子を含む溶液を付与する工程を含み、
当該水溶性高分子が少なくともポリビニルアルコール又はポリアクリル酸系ポリマーを含み、
当該水溶性高分子を含む溶液における当該水溶性高分子の濃度が5~60質量%である、中空糸膜中間体の製造方法。
【請求項7】
請求項5に記載の織編物を、前記水溶性高分子が溶解する溶媒に浸漬及び/又は該溶媒を前記中空糸膜中間体の中空部に通液することにより、前記水溶性高分子の一部または全部を除去する工程を含む、中空糸膜を含む織編物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜中間体、該中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物、及び中空糸膜を含む織編物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜は、複数の細孔を備える多孔質構造を有する。そして、中空糸膜は、中空糸膜の外側表面から中空部側表面に向かって、又は中空部側表面から外側表面に向かって分離対象の液体又は気体を通液又は通気することにより、該液体又は気体中に存在する所定のサイズの粒子、溶存物質、ガス等を分離することができる。従って、中空糸膜は、水処理分野、医療・製薬分野、食品製造分野、電子部品製造分野、化学工業分野等様々な分野において使用されている。
【0003】
中空糸膜は、単糸や糸束全体が空気中に露出した状態としては使用されず、ケースやハウジングに収納された状態、つまり中空糸膜モジュールに加工されて使用される。従来、中空糸膜モジュールに加工する方法として、(1)収納される中空糸膜同士が密着しないようにする、(2)分離対象の液体や気体の流れを制御する、(3)ウレタンやエポキシによる端部の封止(ポッティング)をしやすくする、等の目的で、中空糸膜を織成又は編成した織編物として収容することが知られている。
【0004】
上記織編物として、例えば、中空糸膜を緯糸に用いた織編物であって、該織編物の耳部において中空糸膜が切断されることなく折り返されてなる中空糸膜織編物が知られている(例えば、特許文献1参照)。該織編物によれば、取扱いが容易であり、モジュール形状の多様化が図れる等の利点が生じるとされている。
【0005】
また、(a)水と混和する非水溶媒を約1重量%から約5重量%含む中空糸膜を織機に供給し、前記中空糸膜を緯糸として前記織機上で経糸とともに織り、織ったファイバー膜のウェッブを形成し、(b)前記ウェッブを抽出用水浴に通して前記中空糸膜中の非水溶媒の含有量を約0.5重量%未満にまで低下させ、前記水浴から出てきた前記ウェッブを乾燥させて全ての液体を取り除き、(c)このように乾燥させたウェッブを巻いて束を作り、この束を腔中側と外側にポートを含むケースに収めて中空糸膜モジュールを形成する工程を含み、(a)から(c)工程を連続フローで行う中空糸膜モジュールを形成する方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。該方法によれば、本発明の連続処理によって、全体として性能が改善されたファイバーを有し、気体分離の効果も高いモジュールを製造できるとされている。
【0006】
また、複数本の中空糸膜によって形成される中空糸膜束と、該中空糸膜束を収容するケースと、を備え、中空糸膜の中空内部を通る第1経路と、中空糸膜の外壁面側を通る第2経路と、を形成して、中空糸膜の膜分離によって水分の分離を行う膜モジュールであって、前記ケース内の空間部を仕切る一対の第1仕切り板及び第2仕切り板を設け、これら第1仕切り板と第2仕切り板との間に前記中空糸膜束を配設する構成とすると共に、前記ケースにおける前記第1仕切り板に対向する面のうち前記中空糸膜束の一端側に設けられ、前記第2経路の一部を構成する第1開口部と、前記ケースにおける前記第2仕切り板に対向する面のうち前記中空糸膜束の他端側に設けられ、前記第2経路の一部を構成する第2開口部と、前記第1仕切り板における前記他端側に設けられ、前記第2経路の一部を構成する第3開口部と、前記第2仕切り板における前記一端側に設けられ、前記第2経路の一部を構成する第4開口部と、を備えることを特徴とする膜モジュールであって、複数本の中空糸膜が並べてすだれ織りとされ、すだれ織りとされたのが幾重にも折り畳まれて前記中空糸膜束が構成されている膜モジュールが知られている(例えば、特許文献3参照。)。該構成とすれば、中空糸膜同士が整列し、充填しやすく、また、中空糸膜強度を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62-57965号公報
【特許文献2】特開平9-117648号公報
【特許文献3】特開2004-202478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、本発明者等が検討したところ、中空糸膜は液体やガスを効率よく透過させるため、空隙を多く含んだ多孔質構造になっている。従って、中空糸膜は引張強力等機械的強度が弱く、中空糸膜を織成又は編成をする際には低い機械的強度に起因する糸切れ等が頻繁に発生する問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、中空糸膜の機械的強度を高めて織編物の織成又は編成に供することを可能とする中空糸膜中間体に関する技術の提供、該中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物の提供、及び中空糸膜を含む織編物の製造方法の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討し、中空糸膜基材を製造した後、当該中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を備えさせて機械的強度を高めた中空糸膜中間体とし、当該中空糸膜中間体を用いて織編物とすることに着目した。そして、本発明者等は、水溶性高分子は水等により容易に溶解、除去することができることから、織成または編成する際には中空糸膜基材の機械的強度を高めて糸切れや潰れ等を防ぎ、織編物とした後には水溶性高分子を除去することで、中空糸膜基材の性能をできるだけ保持したまま歩留まりよく中空糸膜からなる織編物を得られると考えた。
【0011】
そして本発明者等がさらに検討を重ね、純水に浸漬、乾燥する特定条件の試験前後の引張強度変化率が10~200%とした中空糸膜中間体は、中空糸膜基材となる中空糸膜の機械的強度を高めることができ、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物とすることができることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、下記方法にて測定される当該中空糸膜中間体の引張強度変化率が10~200%である中空糸膜中間体。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを10本用意する。
(2)10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(3)(2)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(4)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷する。
(5)上記(2)~(4)の処理をおこなった中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度A)及び上記(2)~(4)の処理を行っていない中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度B)を、引張試験機にて、チャック間距離50mm、引張速さ500mm/分、測定環境:温度20℃、湿度60%にて求める。
(6)下記式(I)により、引張強度変化率を求める。
式(I)・・・強度変化率(%)=(強度B-強度A)/強度A×100
項2.前記中空糸膜基材の複数の細孔の少なくとも一部が前記水溶性高分子によって閉塞されており、当該中空糸膜中間体の透水量変化率が0~60%である、項1に記載の中空糸膜中間体。
項3.前記水溶性高分子が、少なくともポリビニルアルコール又はポリアクリル酸系ポリマーを含む、項1又は2に記載の中空糸膜中間体。
項4.前記中空糸膜基材がポリアミドにより形成された、項1~3のいずれか1項に記載の中空糸膜中間体。
項5.項1~4のいずれか1項に記載の中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物。
項6.項1~4のいずれか1項に記載の中空糸膜中間体の製造方法であって、中空糸膜基材に対して水溶性高分子を含む溶液を付与する工程を含み、当該水溶性高分子が少なくともポリビニルアルコール又はポリアクリル酸系ポリマーを含み、当該水溶性高分子を含む溶液における当該水溶性高分子の濃度が5~60質量%である、中空糸膜中間体の製造方法。
項7.項5に記載の織編物を、前記水溶性高分子が溶解する溶媒に浸漬及び/又は該溶媒を前記中空糸膜中間体の中空部に通液することにより、前記水溶性高分子の一部または全部を除去する工程を含む、中空糸膜を含む織編物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の中空糸膜中間体によれば、中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、当該中空糸膜中間体の特定の引張強度変化率が10~200%であることから、中空糸膜の機械的強度を高めることが可能となり、織編物の織成又は編成に供することに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】aは透水量の測定時に使用するモジュールの模式図であり、bは透水量の測定に使用する装置の模式図である。
【
図2】実施例1及び2の中空糸膜中間体の、評価方法1の評価における、浸漬時間と透水量及び透水量回復率の関係を示すグラフである。
【
図3】実施例1及び2の中空糸膜中間体の、評価方法2の評価における、通液時間と透水量及び透水量回復率の関係を示すグラフである。
【
図4】試験例4で製造した中空糸膜を含む織編物の外観を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[中空糸膜中間体]
本発明の中空糸膜中間体は、中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、下記方法にて測定される当該中空糸膜中間体の引張強度変化率が10~200%である。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを10本用意する。
(2)10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(3)(1)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(4)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。
(5)その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷し、引張試験機により、(4)で乾燥した中空糸膜中間体5本の引張強度(強度A)及び(2)~(4)の処理を行っていない中空糸膜中間体5本の引張強度(強度B)を、試料のチャック間距離50mm、引張速さ500mm/分、試験点数N=5、測定環境:温度20℃、湿度60%にて引張強度を測定する。
(6)下記式(I)により、引張強度変化率を求める。
式(I)・・・強度変化率(%)=(強度B-強度A)/強度A×100
以下、本発明の中空糸膜中間体について詳述する。
【0016】
1.中空糸膜基材
本発明において、中空糸膜基材は中空糸膜からなり、中空糸膜中間体の基材となるものである。すなわち、中空糸膜基材は、中空部を有するストロー状の繊維であって、繊維内側(内表面)及び/又は繊維外側(外表面)に複数の細孔を備える多孔質構造を有し、繊維外側から内側、又は繊維内側から外側に向かって当該細孔を通じて流体を流すことにより、当該流体から対象となる物質を除去することができるものである。中空糸膜中間体を構成する中空糸膜基材の構成素材としては特に限定されず、高分子素材が挙げられる。かかる高分子素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドMXD6、ポリアミド10T等のポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテルラフルオロエチレン(PTFE)等の含ハロゲン樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン等のスルホン系樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド等のイミド系樹脂、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリアリレート、シリコーン、ウレタン樹脂などが挙げられ、これらは単独で構成されていても複数を組み合わせて構成されていても良い。また、フィラーが含有されていても架橋処理がされていても良い。これらの中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルスルホン、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。
【0017】
また、中空糸膜基材には、細孔径制御や膜性能の向上等のために、必要に応じて、増粘剤、酸化防止剤、表面改質剤、滑剤、界面活性剤等の添加剤が含まれていてもよい。
【0018】
中空糸膜基材は、どのような細孔径を持ち、どのような用途で使用されるものでもよい。例えば、ガス分離膜、除湿膜、加湿膜、精密濾過膜(MF膜)、限外濾過膜(UF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)、正浸透膜(FO膜)のいずれであってもよく、好ましくはMF膜、UF膜である。これらMF膜、UF膜の細孔径は水溶性高分子溶液が浸透しやすく、強度向上効果が得やすい。通常、MF膜の孔径は阻止可能な粒子の大きさで表され、UF膜の孔径は分画分子量と言われ阻止可能な分子の分子量で表される。本発明のMF膜の孔径は1nm~5μmであり、好ましくは2nm~1μmであり、さらに好ましくは2nm~100nmである。市販されるMF膜の孔径は「公称孔径」で記載されることが多く、各メーカーによってその評価方法は異なるが、例えば、所定の大きさのポリスチレンユニフォームラテックス粒子分散液や、所定の大きさの金ナノコロイド分散液を膜に透過させ、阻止率が90%以上となるものを規定することがある。本発明のUF膜の分画分子量は200~150,000であり、好ましくは1,000~100,000であり、さらに好ましくは6,000~60,000である。分画分子量も各メーカーによってその評価方法は異なるが、例えば、所定の分子量のタンパク質の水溶液を膜に透過させ、阻止率が90%以上となるものを規定したり、所定の分子量のポリエチレングリコール、デキストラン等の水溶液を膜に透過させ、阻止率が90%以上となるものを規定することがある。
【0019】
中空糸膜基材の外径(繊維外径)については、中空糸膜としたときの用途、備えさせる液体透過性等に応じて適宜設定されるが、モジュールに充填した際の有効膜面積、膜強度、中空部を流れる流体の圧損、座屈圧との関係を鑑みた場合、中空糸膜基材の外径として、100μm以上、好ましくは100~3000μm、より好ましくは200~2000μm、さらに好ましくは300~1500μmが挙げられる。また、中空糸膜基材の内径(繊維内径、中空部の直径)については、特に制限されないが、例えば、50μm以上、好ましくは50~2000μm、より好ましくは100~1500μm、さらに好ましくは200~1000μmが挙げられる。本発明において中空糸膜基材、中空糸膜中間体又は中空糸膜の外径及び内径は、5本の中空糸膜基材、5本の中空糸膜中間体又は5本の中空糸膜をサンプルとして光学顕微鏡にて倍率200倍で観察し、下記式により各サンプル5本の外径及び内径を求め、当該5本の平均値を算出することにより求められる値である。
(式)
内径(mm)=(内長径+内短径)/2
外径(mm)=(外長径+外短径)/2
【0020】
中空糸膜基材の膜厚については、中空糸膜としたときの用途や形状、備えさせる液体透過性等に応じて適宜設定されるが、例えば、20~600μm、好ましくは200~500μm、より好ましくは30~400μmが挙げられる。本発明において中空糸膜基材、中空糸膜中間体又は中空糸膜の膜厚は、前述した外径から前述した内径を引いた値を2で除することにより算出される値である。
【0021】
2.水溶性高分子
本発明の中空糸膜中間体は、中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む。水溶性高分子とは、水に溶解可能な高分子を指す。ここでいう溶解とは、溶質でありながら高分子が溶媒である水に分子鎖レベルで分散して均一系をなしている状態が挙げられる。より詳しくは、高分子鎖の分子鎖間の分子間力に比べ水分子との分子間力が強くなり、高分子鎖の絡み合いが解かれ、水に均一に分散している状態が挙げられる。
【0022】
水溶性高分子としては、後述する中空糸膜中間体の引張強度変化率を特定範囲によりしやすくするという観点から、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系ポリマーを含むものが挙げられ、ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0023】
水溶性高分子をポリビニルアルコールを含むものとする場合、ポリビニルアルコールとしては完全けん化ポリビニルアルコール、中間けん化ポリビニルアルコール、部分けん化ポリビニルアルコールが挙げられ、水への溶解性の観点から部分けん化ポリビニルアルコールとすることが好ましい。ポリビニルアルコールのけん化度としては特に制限されないが、例えば80%~99%が挙げられ、水への溶解性の観点から、85~95%が好ましく、85~92%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K 6726:1994 3.5けん化度に準じて測定する。
【0024】
水溶性高分子をポリビニルアルコールを含むものとする場合、ポリビニルアルコールの平均重合度としては特に制限されないが、例えば200~3000が挙げられ、中空糸膜中間体の機械的強度を高めることと、水溶性高分子の溶解性とを両立させる観点から、200~2000が好ましく、200~800がより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K 6726:1994 3.7平均重合度に準じて測定する。
【0025】
また、ポリアクリル酸系ポリマーとは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはそのエステル、塩およびそれらの共重合体を指す。具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、水溶性アクリル樹脂、アクリルエマルションなどが挙げられる。
【0026】
中空糸膜中間体における、下記方法により測定される水溶性高分子の付着量としては、5~40質量%が挙げられ、15~30質量%が好ましく挙げられ、20~30質量%がより好ましく挙げられる。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを用意しサンプルとする。
(2)当該サンプルを熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥し、その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷し、電子天秤を用い小数第4位(0.0001g単位)まで秤量する。このとき秤量した質量を質量Bとする。
(3)次に、秤量したサンプルを40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(4)(3)で浸漬したサンプルについて、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(5)3回浸漬処理を施したサンプルを熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥し、その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷し、電子天秤を用い小数第4位(0.0001g単位)まで秤量する。このとき秤量した質量を質量Aとする。
(6)サンプルの付着量について、下記式(II)に従い算出する。
(式II)・・・サンプルの付着量(質量%)=(質量B-質量A)/質量B×100
(7)これを合計5本のサンプルについておこない、当該5本のサンプルの付着量の平均値を水溶性高分子の付着量とする。
【0027】
3.中空糸膜中間体
本発明の中空糸膜中間体は、中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、下記方法にて測定される当該中空糸膜中間体の引張強度変化率が10~200%である。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを10本用意する。
(2)10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(3)(2)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(4)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷する。
(5)上記(2)~(4)の処理をおこなった中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度A)及び上記(2)~(4)の処理を行っていない中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度B)を、引張試験機にて、チャック間距離50mm、引張速さ500mm/分、測定環境:温度20℃、湿度60%にて求める。
(6)下記式(I)により、引張強度変化率を求める。
式(I)・・・強度変化率(%)=(強度B-強度A)/強度A×100
【0028】
上記引張強度変化率とすることにより、中空糸膜中間体の機械的強度を高めることができ、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物とすることができる。当該引張強度変化率は、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物とすることと、水溶性高分子を除去しやすくすることとをより両立させる観点から、10~130%が好ましく、20~50%がより好ましく、25~33%がさらに好ましい。
【0029】
なお、上記引張強度変化率の測定において求める強度A及び強度Bは、予め5本のサンプルそれぞれについて前述の方法にて内径及び外径を求め、当該内径及び外径をもとに中空糸膜中間体の断面積(mm2)を求め、5本の断面積の平均値を求める。そして、前述した引張試験機による試験により得られる5本の破断強力(N)の平均値(以下、強度Bの測定における5本の当該破断強力の平均値を強力Bと示し、強度Aの測定における5本の当該破断強力の平均値を強力Aと示すことがある。)を、当該断面積の平均値で除することにより求めることができる。
【0030】
中空糸膜中間体の強度(前述した強度B)としては、例えば3MPa以上が挙げられ、3~100MPaが好ましく挙げられ、15~30MPaがより好ましく挙げられ、18~20MPaがさらに好ましく挙げられる。また、当該強度Bの測定の際に測定される破断伸度B(強度Bを測定する際に測定される破断伸度)としては、10~500%が挙げられ、30~300%が好ましく挙げられ、150~250%がより好ましく挙げられ、180~220%がさらに好ましく挙げられる。また、前述した強度Aとしては、例えば、2MPa以上が挙げられ、2~100MPaが好ましく挙げられ、10~25MPaがより好ましく挙げられる。また、当該強度Aの測定の際に測定される破断伸度A(強度Aを測定する際に測定される破断伸度)としては、10~500%が挙げられ、30~300%が好ましく挙げられ、180~280%がより好ましく挙げられる。なお、上記破断伸度は、次の式(III)により算出される。
式(III)・・・破断伸度(%)=(L1-L0)/L0×100
(ここで、L1は破断時の長さ、L0はチャック間距離(50mm))
【0031】
中空糸膜中間体の破断強力(前述した強力B)としては、2N以上が挙げられ、2~20Nが好ましく挙げられ、3~10Nがより好ましく挙げられ、4.2~4.6Nがさらに好ましく挙げられる。また、中空糸膜中間体の前述した強力Aとしては、0.5N以上が挙げられ、0.5~10Nが好ましく挙げられ、1~5Nがより好ましく挙げられる。
【0032】
本発明の中空糸膜中間体は、中空糸膜基材の複数の細孔の少なくとも一部が前記水溶性高分子によって閉塞されており、下記方法にて測定される当該中空糸膜中間体の透水量変化率が0~60%であることが好ましく、0~20%がより好ましく、0~10%がより好ましい。本発明の中空糸膜中間体は、このような構成とすることにより、より効率的に中空糸膜中間体の強度を高めやすくなる。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ50cmにカットしたものを10本用意し、10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(2)(1)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(3)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷する。
(4)上記(1)~(3)の処理をおこなった中空糸膜中間体5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製する。具体的には、先ず、当該中空糸膜中間体5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合する。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填する。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜中間体を、中空糸膜中間体の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させる。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜の両端部の中空部が開口したモジュールを作製する。次に、
図1のbに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸膜中間体の内側に一定時間流し、中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って透水量A(L/(m
2・bar・h))を算出する。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜中間体の内径(m)×3.14×中空糸膜中間体の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
(5)次に、上記(1)~(3)の処理をおこなわなかった中空糸膜中間体5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製する。具体的には、先ず、当該中空糸膜中間体5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合する。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填する。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜中間体を、中空糸膜中間体の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させる。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜中間体の両端部の中空部が開口したモジュールを作製する。次に、
図1のbに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸中間体の内側に一定時間流し、中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って透水量B(L/(m
2・bar・h))を算出する。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜中間体の内径(m)×3.14×中空糸膜中間体の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
(6)下記式(V)により、中空糸膜中間体の透水量変化率を求める。
式(V)・・・透水量変化率(%)=(透水量A-透水量B)/透水量A×100
【0033】
本発明の中空糸膜中間体の備える透水量(透水量B)としては、例えば、0~600(L/(m2・bar・h))が挙げられ、5~300(L/(m2・bar・h))が好ましく挙げられ、0~200(L/(m2・bar・h))がより好ましく挙げられ、0~100(L/(m2・bar・h))がさらに好ましく挙げられる。また、前述した透水量Aとしては、例えば、150~5000(L/(m2・bar・h))が挙げられ、300~3000(L/(m2・bar・h))が好ましく挙げられ、300~1000(L/(m2・bar・h))がさらに好ましく挙げられる。
【0034】
本発明の中空糸膜中間体の外径については、中空糸膜としたときの用途、備えさせる液体透過性等に応じて適宜設定されるが、モジュールに充填した際の有効膜面積、膜強度、中空部を流れる流体の圧損、座屈圧との関係を鑑みた場合、中空糸膜中間体の外径として、100μm以上、好ましくは100~3000μm、より好ましくは200~2000μm、さらに好ましくは300~1500μmが挙げられる。また、中空糸膜中間体の内径(繊維内径、中空部の直径)については、特に制限されないが、例えば、50μm以上、好ましくは50~2000μm、より好ましくは100~1500μm、さらに好ましくは200~1000μmが挙げられる。
【0035】
中空糸膜中間体の膜厚については、中空糸膜としたときの用途や形状、備えさせる液体透過性等に応じて適宜設定されるが、例えば、20~600μm、好ましくは200~500μm、より好ましくは30~400μmが挙げられる。当該膜厚は、前述した外径から前述した内径を引いた値を2で除することにより算出される値である。
【0036】
[中空糸膜中間体の製造方法]
本発明の中空糸膜中間体の製造方法としては、中空糸膜基材に対して水溶性高分子を含む溶液を付与する工程を含み、当該水溶性高分子が少なくともポリビニルアルコール又はポリアクリル酸系ポリマーを含み、当該水溶性高分子を含む溶液における当該水溶性高分子の濃度が5~60質量%であることが好ましい。
【0037】
中空糸膜基材に対して水溶性高分子を含む溶液を付与する工程において、準備する当該中空糸膜基材については前述のとおりである。
【0038】
水溶性高分子としては、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物とすることと、水溶性高分子を除去しやすくすることとをより両立させる観点から、少なくともポリビニルアルコール又はポリアクリル酸系ポリマーを含むことが好ましい。これらを含むことにより、中空糸膜中間体の引張強度変化率を特定範囲によりしやすくなる。
【0039】
水溶性高分子を含む溶液における当該水溶性高分子の濃度は、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物とすることと、水溶性高分子を除去しやすくすることとをより両立させる観点から、5~60質量%であることが好ましく、5~40質量%がより好ましい。
【0040】
水溶性高分子を含む溶液の温度としては特に制限されないが、20~100℃程度が挙げられる。
【0041】
水溶性高分子を含む溶液を中空糸膜基材に付与する方法としては特に制限されないが、例えば、ローラー法、ガイド法、スプレー法、ディップ法等、公知の方法を用いることができる。中でも、中空糸膜基材の複数の細孔の少なくとも一部が前記水溶性高分子によって閉塞されている状態とする場合には、ディップ法が好ましい。
【0042】
中空糸膜基材に水溶性高分子を含む溶液を付与した後、当該溶液を乾燥させることにより、中空糸膜基材に水溶性高分子を備えさせることができる。乾燥温度、乾燥時間としては用いる中空糸膜基材の構成素材等に応じて適宜選択すればよい。
【0043】
[中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物]
本発明の織編物は、前述した本発明の中空糸膜中間体によって織成又は編成されてなる。本発明の織編物は、前述した本発明の中空糸膜中間体によって織成又は編成されていることから、糸切れや潰れ等が低減された織編物とすることができる。そして、得られた上記織編物を水溶性高分子が溶解する溶媒に浸漬及び/又は該溶媒を前記中空糸膜中間体の中空部に通液することにより、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物を得ることができる。
【0044】
中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物の、織編組織としては特に制限されない。織物の場合、例えば、平織、綾織、朱子織、すだれ織り、畳織り等が挙げられる。また、編物の場合、経編物としては、例えば、デンビー編、コード編、アトラス編等が挙げられ、緯編物としては、例えば、平編、ゴム編、パール編、スムース編等が挙げられる。中でも、平織、綾織、すだれ織り、畳織りが好ましい。
【0045】
本発明の織編物は、中空糸膜中間体以外の他の繊維を混用することができる。織物の場合は、経糸又は緯糸の少なくとも一方に当該他の繊維を混用することができ、経糸を当該他の繊維、緯糸を中空糸膜中間体とすることが好ましい。
【0046】
混用する他の繊維の種類としては特に制限されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン繊維、ポリカーボネート繊維、ポリスチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、ポリメチルメタクリレート繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ガラス繊維等が挙げられ、強度、耐溶剤性、価格の観点から、ポリエステル繊維が好ましく挙げられる。
【0047】
本発明の織編物における中空糸膜中間体の混用率としては特に制限されないが、10~100質量%が挙げられ、50~99質量%が好ましく挙げられ、70~99質量%がより好ましく挙げられる。本発明において、混用率は、JIS L 1030-2:2012に準じて測定される。
【0048】
本発明の織編物の質量としては特に制限されないが、例えば、50~500g/m2が挙げられ、100~400g/m2が好ましく挙げられる。織編物の質量は、JIS L 1096:2010 8.3.2A法によって測定される値である。
【0049】
本発明の中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物の製造方法としては特に制限されず、公知の方法によって織成又は編成することができる。織物の場合の一例としては、前述した中空糸膜中間体以外の他の繊維を整経し経糸とする。そして、準備した当該経糸と、緯糸として前述した本発明の中空糸膜中間体を緯糸とし、織機により製織する。織機としては、有杼織機、グリッパー織機、レピア織機、ウォータージェット織機、エアージェット織機等が挙げられる。また、編物の場合の一例としては、編機として丸編機、緯編機、経編機等を用い、公知の方法により編成することが挙げられる。
【0050】
[中空糸膜を含む織編物の製造方法]
本発明の、中空糸膜を含む織編物の製造方法は、前述した中空糸膜中間体によって織成又は編成された織編物を、水溶性高分子が溶解する溶媒に浸漬及び/又は該溶媒を前記中空糸膜中間体の中空部に通液することにより、前記水溶性高分子の一部または全部を除去する工程を含むことが好ましい。これにより、糸切れや潰れ等が低減された中空糸膜織編物を得ることができる。
【0051】
上記製造方法において、水溶性高分子が溶解する溶媒としては、水溶性高分子が溶解するものであれば特に制限されないが、例えば、水、アルコール類、ケトン類などの、乾燥により揮発させやすい溶媒が好ましく、水がより好ましい。また、中空糸膜中間体における中空糸膜基材の細孔内部にもより浸透しやすくする観点から、当該溶媒には界面活性剤を含有させてもよい。
【0052】
上記製造方法では、水溶性高分子が溶解する溶媒に浸漬及び/又は該溶媒を前記中空糸膜中間体の中空部に通液することが好ましく、水溶性高分子が溶解する溶媒を前記中空糸膜中間体の中空部に通液することがより好ましい。通液する場合の当該溶媒の圧力としては、中空糸膜基材の引張強度、細孔径等に応じて適宜選択でき、例えば、0.01~10MPaが好ましく挙げられ、0.1~0.5MPaがより好ましく挙げられる。また、水溶性高分子が溶解する溶媒の温度としては特に制限されないが、例えば、20℃以上当該溶媒の沸点以下が挙げられ、20~50℃が好ましく挙げられる。
【実施例0053】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0054】
[評価方法]
1.中空糸膜基材及び中空糸膜中間体の外径、内径及び膜厚(μm)
中空糸膜基材、中空糸膜中間体又は中空糸膜の外径及び内径は、5本の中空糸膜基材、5本の中空糸膜中間体又は5本の中空糸膜をサンプルとして光学顕微鏡にて倍率200倍で観察し、下記式により各サンプル5本の外径及び内径を求め、当該5本の平均値を算出することにより求めた。
(式)
内径(mm)=(内長径+内短径)/2
外径(mm)=(外長径+外短径)/2
【0055】
2.ポリビニルアルコール(PVA)のけん化度(%)
JIS K 6726:1994 3.5けん化度に準じて測定した。
【0056】
3.ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度
JIS K 6726:1994 3.7平均重合度に準じて測定した。
【0057】
4.中空糸膜中間体における水溶性高分子の付着量(質量%)
下記方法により測定した。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを用意しサンプルとする。
(2)当該サンプルを熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥し、その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷し、電子天秤を用い小数第4位(0.0001g単位)まで秤量する。このとき秤量した質量を質量Bとする。
(3)次に、秤量したサンプルを40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(4)(3)で浸漬したサンプルについて、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(5)3回浸漬処理を施したサンプルを熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥し、その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷し、電子天秤を用い小数第4位(0.0001g単位)まで秤量する。このとき秤量した質量を質量Aとする。
(6)サンプルの付着量について、下記式(II)に従い算出する。
(式II)・・・サンプルの付着量(質量%)=(質量B-質量A)/質量B×100
(7)これを合計5本のサンプルについておこない、当該5本のサンプルの付着量の平均値を水溶性高分子の付着量とする。
【0058】
5.中空糸膜中間体の強力A(N)、強力B(N)、強度A(MPa)、強度B(MPa)、破断伸度A(%)、破断伸度B(%)及び引張強度変化率(%)
下記方法により評価した。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ15cmにカットしたものを10本用意する。
(2)10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(3)(2)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(4)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷する。
(5)上記(2)~(4)の処理をおこなった中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度A)及び上記(2)~(4)の処理を行っていない中空糸膜中間体5本の引張強度の平均値(強度B)を、引張試験機にて、チャック間距離50mm、引張速さ500mm/分、測定環境:温度20℃、湿度60%にて求める。
(6)下記式(I)により、引張強度変化率を求める。
式(I)・・・強度変化率(%)=(強度B-強度A)/強度A×100
なお、上記引張強度変化率の測定において求める強度A及び強度Bは、予め5本のサンプルそれぞれについて前述の方法にて内径及び外径を求め、当該内径及び外径をもとに中空糸膜中間体の断面積(mm2)を求め、5本の断面積の平均値を求める。そして、前述した引張試験機による試験により得られる5本の破断強力(N)の平均値(以下、強度Bの測定における5本の当該破断強力の平均値を強力Bと示し、強度Aの測定における5本の当該破断強力の平均値を強力Aと示すことがある。)を、当該断面積の平均値で除することにより求めることができる。また、上記破断伸度は、次の式(III)により算出される。
式(III)・・・破断伸度(%)=(L1-L0)/L0×100
(ここで、L1は破断時の長さ、L0はチャック間距離(50mm))
【0059】
6.透水量B及び透水量A(L/(m
2・bar・h))並びに透水量変化率(%)
下記方法により評価した。
<方法>
(1)中空糸膜中間体を長さ50cmにカットしたものを10本用意し、10本のうち5本を、40℃の純水1L中に1時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬する。
(2)(1)で浸漬した5本について、40℃の純水を新しいものに変え、さらに1時間浸漬する。この操作をさらにもう1回繰り返す。
(3)上記3回浸漬処理を施した中空糸膜中間体を熱風乾燥機内に入れ50℃1時間乾燥する。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷する。
(4)上記(1)~(3)の処理をおこなった中空糸膜中間体5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製する。具体的には、先ず、当該中空糸膜中間体5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合する。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填する。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜中間体を、中空糸膜中間体の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させる。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜の両端部の中空部が開口したモジュールを作製する。次に、
図1のbに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸膜中間体の内側に一定時間流し、中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って透水量A(L/(m
2・bar・h))を算出する。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜中間体の内径(m)×3.14×中空糸膜中間体の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
(5)次に、上記(1)~(3)の処理をおこなわなかった中空糸膜中間体5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製する。具体的には、先ず、当該中空糸膜中間体5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合する。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をする。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填する。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜中間体を、中空糸膜中間体の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させる。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜中間体の両端部の中空部が開口したモジュールを作製する。次に、
図1のbに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸中間体の内側に一定時間流し、中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って透水量B(L/(m
2・bar・h))を算出する。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜中間体の内径(m)×3.14×中空糸膜中間体の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
(6)下記式(V)により、中空糸膜中間体の透水量変化率を求める。
式(V)・・・透水量変化率(%)=(透水量A-透水量B)/透水量A×100
【0060】
7.中空糸膜中間体によって織成又は編成された織物における中空糸膜中間体の混用率(質量%)
JIS L 1030-2:2012に準じて測定した。
【0061】
8.中空糸膜中間体によって織成又は編成された織物の織密度(本/25mm)
JIS L 1096:2010 8.6.2によって測定した。
【0062】
9.中空糸膜中間体によって織成又は編成された織物の質量(g/m2)
JIS L 1096:2010 8.3.2A法によって測定した。
【0063】
試験例1
<実施例1>
(1)中空糸膜基材の準備
中空糸膜基材として、構成素材がポリアミド6であり、外径540μm、内径280μm、公称孔径10nmである市販の中空糸膜(外形は円形)を準備した。
【0064】
(2)水溶性高分子を含む溶液の準備
水溶性高分子として日本酢ビ・ポバール株式会社製のポリビニルアルコール(商品名JポバールJP-05(けん化度88%、平均重合度500))を準備し、これを純水に溶解させ水溶性高分子の濃度が15質量%の溶液を準備した。
【0065】
(3)中空糸膜中間体の製造
前記準備した溶液の温度20℃として、当該溶液中に前記中空糸膜基材を10分間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬させた。その後浸漬した中空糸膜基材を溶液から取り出し、熱風乾燥機に入れ雰囲気温度50℃、時間30分の条件で乾燥し、その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷し、実施例1の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0066】
<実施例2>
水溶性高分子の濃度を10質量%とした以外は実施例1と同様にして実施例2の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例3>
中空糸膜基材として、構成素材がポリアミド6であり、外径540μm、内径280μm、公称孔径40nmである市販の中空糸膜(外形は円形)を用いた以外は実施例1と同様にして実施例3の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
<実施例4>
水溶性高分子として日本酢ビ・ポバール株式会社製のポリビニルアルコール(商品名JポバールJP-03(けん化度88%、平均重合度300))を準備し、これを純水に溶解させ水溶性高分子の濃度が30質量%の溶液を準備した以外は実施例3と同様にして実施例4の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
<実施例5>
水溶性高分子として日本酢ビ・ポバール株式会社製のポリビニルアルコール(商品名JポバールJP-18(けん化度88%、平均重合度1800))を準備した以外は実施例1と同様にして実施例5の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
<実施例6>
中空糸膜基材として、構成素材がポリプロピレンであり、外径420μm、内径330μm、公称孔径0.1μmである市販の中空糸膜(外形は円形)を準備した以外は実施例1と同様にして実施例6の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0071】
<実施例7>
中空糸膜基材として、構成素材がポリフッ化ビニリデンであり、外径1300μm、内径700μm、公称孔径40nmである市販の中空糸膜(外形は円形)を準備した以外は実施例1と同様にして実施例7の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0072】
<実施例8>
(1)中空糸膜基材の準備
中空糸膜基材として、構成素材がポリアミド6であり、外径540μm、内径280μm、公称孔径10nmである市販の中空糸膜(外形は円形)であって、当該中空糸膜の長さが1kmであり、当該中空糸膜がボビンに巻かれた状態である中空糸膜を準備した。
【0073】
(2)水溶性高分子を含む溶液の準備
水溶性高分子として日本酢ビ・ポバール株式会社製のポリビニルアルコール(商品名JポバールJP-05(けん化度88%、平均重合度500))を準備し、これを純水に溶解させ水溶性高分子の濃度が10質量%の溶液を準備し、当該溶液を容器に入れてコーティング槽とした。
【0074】
(3)中空糸膜中間体の製造
準備した中空糸膜を一定張力、一定速度でボビンから繰り出し、溶液に浸漬する時間が1秒間となるようにコーティング槽を通過させ、次いで雰囲気温度120℃の乾燥庫を通過時間が30秒となるように通過させ、巻取機にセットしたボビンに一定張力で巻取り、長さ1kmの中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。また、当該中空糸膜中間体を用いて、前述した中空糸膜中間体における水溶性高分子の付着量を評価したところ、当該付着量は23質量%であった。
【0075】
<比較例1>
水溶性高分子として、東京化成工業株式会社製のポリビニルピロリドンK-90を準備し、これを純水に溶解させ水溶性高分子の濃度が15質量%の溶液を準備した以外は実施例1と同様にして比較例1の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
<比較例2>
水溶性高分子として、シグマアルドリッチ社製のポリエチレンオキサイド(平均分子量100,000)を準備し、これを純水に溶解させ水溶性高分子の濃度が10質量%の溶液を準備した以外は実施例1と同様にして比較例2の中空糸膜中間体(外形は円形)を得た。当該中空膜中間体を用いて、中空糸膜中間体の外径、内径、膜厚、断面積、強力A、強度A、破断伸度A、強力B、強度B、破断伸度B及び引張強度変化率を評価した。結果を表1に示す。
【0076】
【0077】
<試験例1の考察>
表1から、実施例1~8の中空糸膜中間体は、中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、特定の方法にて測定される当該中空糸膜中間体の引張強度変化率が10~200%であることから、中空糸膜基材とした中空糸膜の機械的強度を高めることができた。従って、中空糸膜織編物とするときの糸切れ等の低減に寄与することが可能となるものであった。
【0078】
一方、比較例1及び2の中空糸膜中間体は、上記引張強度変化率が10%未満であったことから、中空糸膜基材とした中空糸膜の機械的強度を高めることができなかった。従って、中空糸膜織編物とするときの糸切れ等の低減に寄与することができないものであった。
【0079】
試験例2
試験例1の実施例1及び2で得られた中空糸膜中間体を用いて、前述した中空糸膜中間体の透水量B、透水量A及び透水量変化率の評価をおこなった。結果を表2に示す。
【0080】
【0081】
試験例3
試験例1の実施例1及び2で得られた中空糸膜中間体を用いて、透水性の回復性能について評価方法1及び2により評価した。
【0082】
(1)評価方法1
まず、試験例1の実施例1及び2で用いた中空糸膜基材(水溶性高分子を付与する前の市販の中空糸膜)を長さ50cmにカットしたものを5本準備した。
【0083】
次に、当該中空糸膜基材5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製した。具体的には、先ず、当該中空糸膜基材5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合した。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填した。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜基材を、中空糸膜基材の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させた。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜基材の両端部の中空部が開口したモジュールを作製した。次に、
図1bに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸基材の内側に一定時間流し、中空糸膜基材の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って中空糸膜基材の透水量(L/(m
2・bar・h))を算出した。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜基材の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜基材の内径(m)×3.14×中空糸膜基材の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
その結果、中空糸膜基材の透水量は649(L/(m
2・bar・h))であった。
【0084】
次に、実施例1及び2で得られた中空糸膜中間体を準備し、それぞれ長さ15cmにカットしたサンプルを複数準備した。そして、複数のサンプルを温度20℃の純水に所定時間中空糸膜中間体が完全に浸かるようにして浸漬させ、表3に記載の所定時間毎に前記複数のサンプルのうち5本ずつ取り出し、熱風乾燥機内に入れ50℃で30分間乾燥させた。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷した。
【0085】
表3に記載の所定時間毎に、上記純水から取り出して乾燥及び放冷した中空糸膜中間体5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製した。具体的には、先ず、当該中空糸膜中間体5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合した。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填した。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜中間体を、中空糸膜中間体の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させた。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜中間体の両端部の中空部が開口したモジュールを作製した。
【0086】
次に、
図1のbに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸中間体の内側に一定時間流し、中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って透水量(L/(m
2・bar・h))を算出した。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜中間体の内径(m)×3.14×中空糸膜中間体の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
【0087】
前記得られた中空糸膜基材の透水量及び前記各所定時間純水に浸漬させた中空糸膜中間体の透水量から、当該中空糸膜基材の透水量に対する当該各所定時間純水に浸漬させた中空糸膜中間体の透水量の比率(=各所定時間純水に浸漬させた中空糸膜中間体の透水量/中空糸膜基材の透水量×100)を算出し、これを透水量回復率として評価した。実施例1及び2の中空糸膜中間体の、評価方法1の評価における、浸漬時間と透水量及び透水量回復率の関係について表3及び
図2に示す。
【0088】
【0089】
(2)評価方法2
まず、試験例1の実施例1及び2で用いた中空糸膜基材(水溶性高分子を付与する前の市販の中空糸膜)を長さ50cmにカットしたものを5本準備した。
【0090】
次に、当該中空糸膜基材5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製した。具体的には、先ず、当該中空糸膜基材5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合した。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填した。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜基材を、中空糸膜基材の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させた。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜基材の両端部の中空部が開口したモジュールを作製した。次に、
図1bに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸基材の内側に一定時間流し、中空糸膜基材の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って中空糸膜基材の透水量(L/(m
2・bar・h))を算出した。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜基材の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜基材の内径(m)×3.14×中空糸膜基材の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
その結果、中空糸膜基材の透水量は649(L/(m
2・bar・h))であった。
【0091】
次に、実施例1及び2で得られた中空糸膜中間体を準備し、それぞれ長さ15cmにカットしたサンプルを5本×8セット(計40本)準備した。1セット毎に、表4に記載の所定時間、温度20℃の純水を圧力が0.2MPaの条件で中空糸膜中間体の中空部に一方の端部から他方の端部に向かって通液させた。各所定時間通液させたサンプル1セット5本を、熱風乾燥機内に入れ50℃で30分間乾燥させた。その後デシケータに入れ温度20℃の条件で30分間放冷した。
【0092】
表3に記載の所定時間通液、乾燥及び放冷した上記中空糸膜中間体5本を用いて、
図1のaに示すモジュールを作製した。具体的には、先ず、当該中空糸膜中間体5本を20cm長に切断し、これらを揃えて束ねたものをU字型に折り曲げ、端部も揃えて当該端部から5mmの部分にかけてヒートシーラーで熱圧着することで封止及び接合した。次に、外径8mm、内径6mm、長さ60mmのナイロン硬質チューブを準備し、当該チューブの一方の端部開口から、長さ20mm程度のシリコーンゴム製のゴム栓を挿入し、当該一方の端部開口の栓をした。次に、当該チューブの、ゴム栓をした方とは反対側の開口部に2液混合型で室温硬化型のウレタン樹脂を挿入しチューブ内側空間を当該ウレタン樹脂で充填した。その後、
図1aに示すように、前記準備したU字型に折り曲げた中空糸膜中間体を、中空糸膜中間体の両端部側(すなわち、ヒートシーラーで熱圧着した側)から、前記ウレタン樹脂で充填されたチューブ内に、当該端部先端がゴム栓に触れるまで挿入し、そのままの状態でウレタン樹脂を硬化させた。次いで、硬化したウレタン樹脂部分のゴム栓側の領域をチューブごと切断することにより、中空糸膜中間体の両端部の中空部が開口したモジュールを作製した。
【0093】
次に、
図1のbに示す装置に前記モジュールをセットし、約0.1MPaの圧力をかけて25℃の純水を前記モジュールの中空糸中間体の内側に一定時間流し、中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量を求め、下記式(IV)に従って透水量(L/(m
2・bar・h))を算出した。
式(IV)・・・透水量=中空糸膜中間体の外側に透過した純水の容量(L)/[中空糸膜中間体の内径(m)×3.14×中空糸膜中間体の有効濾過長さ(m)×5(本)×{(圧力(bar)}×時間(h)]
【0094】
前記得られた中空糸膜基材の透水量及び前記各所定時間純水を通液させた中空糸膜中間体の透水量から、当該中空糸膜基材の透水量に対する当該各所定時間純水を通液させた中空糸膜中間体の透水量の比率(=各所定時間純水を通液させた中空糸膜中間体の透水量/中空糸膜基材の透水量×100)を算出し、これを透水量回復率として評価した。実施例1及び2の中空糸膜中間体の、評価方法2の評価における、通液時間と透水量及び透水量回復率の関係について表4及び
図3に示す。
【0095】
【0096】
試験例4
緯糸として試験例1の実施例8で得られたボビンに巻き取った中空糸膜中間体、及び経糸としてポリエステルマルチフィラメントを準備した。
【0097】
上記ポリエステルマルチフィラメントを経糸、上記中空糸膜中間体を緯糸として、織機としてレピア式織機を用い、経糸密度12本/25mm、緯糸密度42本/25mmの平織組織の、中空糸膜中間体によって織成された織物を得た。当該織物における、中空糸膜中間体の混用率は85質量%であった。また、当該織物の質量は250g/m2であった。織物は、幅1200mmであった。
【0098】
当該織物の写真を
図4に示す。なお、
図4において紙面横方向が緯糸方向である。得られた中空糸膜織編物を観察したところ、糸切れ、潰れが認められなかった。このことから、本発明の中空糸膜中間体によれば、中空糸膜基材の外表面又は内表面の少なくとも一部に水溶性高分子を含む中空糸膜中間体であって、当該中空糸膜中間体の特定の引張強度変化率が10~200%であることから、中空糸膜の機械的強度を高めることが可能となり、織編物の織成又は編成に供することに寄与することができることがより明らかとなった。