(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005786
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20230111BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 653A
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 652D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107965
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 侑佑
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 順
(57)【要約】
【課題】電界シールド領域からのキャリア注入を抑える技術を提供する。
【解決手段】半導体装置の半導体層は、ボディ領域の下面から深部に向けて伸びており、トレンチゲートから離れて配置されているp型の電界シールド領域を有している。半導体層を平面視したときに、電界シールド領域は、ボディ領域のコンタクト部が存在する範囲には配置されていない。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と第2主面を有する半導体層と、
前記半導体層の第1主面を被覆するように設けられているドレイン電極と、
前記半導体層の第2主面を被覆するように設けられているソース電極と、
前記半導体層の前記第2主面から深部に向けて伸びているトレンチゲートと、を備えており、
前記半導体層は、
第1導電型のドリフト領域と、
前記ドリフト領域上に設けられているボディ領域であって、前記トレンチゲートの側面に対向する位置に配置されているチャネル部と、前記第2主面に露出する位置に配置されているとともに前記ソース電極に接しているコンタクト部と、を有する第2導電型のボディ領域と、
前記ボディ領域上に設けられており、前記トレンチゲートの側面に対向する位置に配置されているとともに前記ソース電極に接している第1導電型のソース領域と、
前記ボディ領域の下面から深部に向けて伸びており、前記トレンチゲートから離れて配置されている第2導電型の電界シールド領域と、を有しており、
前記半導体層を平面視したときに、前記電界シールド領域は、前記コンタクト部が存在する範囲には配置されていない、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層を平面視したときに、前記電界シールド領域は、前記ソース領域が存在する範囲に配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記コンタクト部は、前記チャネル部よりも第2導電型不純物の濃度が濃い、請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記半導体層はさらに、前記トレンチゲートの前記底面に対向する位置に配置されている第2導電型の底部領域、を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記底部領域は、前記トレンチゲートの底面から離れて配置されており、
前記底部領域と前記トレンチゲートの底面の間の距離は、ビルトインポテンシャルによって前記底部領域から伸びる空乏層の長さ以下である、請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記電界シールド領域の最大深さは、前記トレンチゲートよりも浅い、請求項4又は5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層は、炭化珪素である、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トレンチゲートを備えた半導体装置の開発が進められている。トレンチゲートの底部の電界を緩和するために、ボディ領域の下面から深部に向けて伸びているp型の電界シールド領域を備えた半導体装置が提案されており、その一例が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電界シールド領域が設けられていると、逆バイアスが印加されたときに電界シールド領域から多量のキャリアがドリフト領域に注入される。このような多量のキャリア注入によって半導体装置の電気的特性が劣化する虞がある。本明細書は、電界シールド領域からのキャリア注入を抑える技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する半導体装置の一実施形態は、第1主面と第2主面を有する半導体層と、前記半導体層の第1主面を被覆するように設けられているドレイン電極と、前記半導体層の第2主面を被覆するように設けられているソース電極と、前記半導体層の前記第2主面から深部に向けて伸びているトレンチゲートと、を備えることができる。前記半導体層は、第1導電型のドリフト領域と、第2導電型のボディ領域と、第1導電型のソース領域と、第2導電型の電界シールド領域と、を有することができる。前記ボディ領域は、前記ドリフト領域上に設けられている。前記ボディ領域は、前記トレンチゲートの側面に対向する位置に配置されているチャネル部と、前記第2主面に露出する位置に配置されているとともに前記ソース電極に接しているコンタクト部と、を有している。前記ソース領域は、前記ボディ領域上に設けられており、前記トレンチゲートの側面に対向する位置に配置されているとともに前記ソース電極に接している。前記電界シールド領域は、前記ボディ領域の下面から深部に向けて伸びており、前記トレンチゲートから離れて配置されている。前記半導体層を平面視したときに、前記電界シールド領域は、前記コンタクト部が存在する範囲には配置されていない。例えば、前記半導体層を平面視したときに、前記電界シールド領域は、前記ソース領域が存在する範囲に配置されていてもよい。この半導体装置では、キャリアの供給源となる前記コンタクト部の下方に前記電界シールド領域が配置されていないので、前記電界シールド領域からのキャリア注入が抑えられる。
【0006】
上記実施形態の半導体装置では、前記コンタクト部が、前記チャネル部よりも第2導電型不純物の濃度が濃くてもよい。この半導体装置では、前記コンタクト部の濃度が濃い場合であっても、前記電界シールド領域が前記コンタクト部の下方に配置されていないので、前記電界シールド領域からのキャリア注入が抑えられる。
【0007】
上記実施形態の半導体装置では、前記半導体層はさらに、前記トレンチゲートの前記底面に対向する位置に配置されている第2導電型の底部領域を有していてもよい。この半導体装置では、前記トレンチゲートの底部の電界を緩和される。
【0008】
上記実施形態の半導体装置では、前記底部領域が、前記トレンチゲートの底面から離れて配置されていてもよい。この場合、前記底部領域と前記トレンチゲートの底面の間の距離は、ビルトインポテンシャルによって前記底部領域から伸びる空乏層の長さ以下である。この半導体装置では、前記底部領域が前記トレンチゲートの底面から離れて配置されているので、前記底部領域を設けたことによるオン抵抗の増大を抑えることができる。さらに、この半導体装置では、前記底部領域を前記トレンチゲートの底面から離したとしても、帰還容量の増加を抑えることができる。
【0009】
上記実施形態の半導体装置では、前記電界シールド領域の最大深さが、前記トレンチゲートよりも浅くてもよい。この半導体装置では、前記電界シールド領域を設けたことによるオン抵抗の増大が抑えられる。
【0010】
上記実施形態の半導体装置では、前記半導体層が炭化珪素であってもよい。前記半導体層が炭化珪素の場合、多量のキャリア注入によって結晶の転移の成長が懸念される。上記実施形態の半導体装置は、キャリア注入を抑えることができるので、このような懸念に対処することができる。即ち、上記実施形態の半導体装置は、前記半導体層が炭化珪素の場合に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の半導体装置の要部斜視図であり、ソース電極及び層間絶縁膜を除去した斜視図を模式的に示す。
【
図2】第1実施形態の半導体装置の要部断面図であり、
図1のII-II線に対応した断面図を模式的に示す。
【
図3】第1実施形態の半導体装置の要部断面図であり、
図1のIII-III線に対応した断面図を模式的に示す。
【
図4】第1実施形態の半導体装置の要部断面図であり、
図1のIV-IV線に対応した断面図を模式的に示す。
【
図5】比較例1の半導体装置の要部斜視図を模式的に示す。
【
図6】比較例2の半導体装置の要部斜視図を模式的に示す。
【
図7】本実施形態の半導体装置と比較例1と比較例2の各々について、オンからオフへの過渡期間におけるドレイン領域とドリフト領域の界面の正孔濃度を計算した結果を示す。
【
図8】本実施形態の半導体装置と比較例1と比較例2の各々について、内蔵のpnダイオードのリカバリ特性を計算した結果を示す。
【
図9】変形例の半導体装置の要部斜視図を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~4に示されるように、半導体装置1は、縦型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と称される種類の半導体装置であり、半導体層10と、半導体層10の裏面を被覆するように設けられているドレイン電極22と、半導体層10の表面を被覆するように設けられているソース電極24と、半導体層10の表層部に設けられている複数のトレンチゲート30と、を備えている。以下では、半導体層10の厚み方向をz方向といい、半導体層10の表面に平行な一方向(z方向に直交する一方向)をx方向といい、x方向及びz方向に直交する方向をy方向という。この例では、複数のトレンチゲート30はストライプ状に配置されており、各トレンチゲート30がy方向に沿って伸びている。
【0013】
半導体層10は、炭化珪素(SiC)を材料とする半導体層であり、n+型のドレイン領域11と、n型のドリフト領域12と、p型のボディ領域13と、n+型のソース領域14と、p型の電界シールド領域16と、p型の底部領域17と、を有している。
【0014】
ドレイン領域11は、半導体層10の裏層部に配置されており、半導体層10の裏面に露出する位置に配置されている。ドレイン領域11は、ドリフト領域12がエピタキシャル成長するための下地基板でもある。ドレイン領域11は、半導体層10の裏面を被膜するドレイン電極22にオーミック接触している。ドレイン領域11は、特に限定されるものではないが、例えば厚みが約100~300μmであり、n型不純物の濃度が約1×1018~1×1023cm-3であってもよい。
【0015】
ドリフト領域12は、ドレイン領域11上に設けられている。ドリフト領域12は、エピタキシャル成長技術を利用して、ドレイン領域11の表面から結晶成長して形成される。ドリフト領域12は、特に限定されるものではないが、例えば厚みが約5~20μmであり、n型不純物の濃度が約1×1013~1×1017cm-3であってもよい。
【0016】
ボディ領域13は、ドリフト領域12上に設けられており、半導体層10の表層部に配置されている。ボディ領域13は、チャネル部13aと、コンタクト部13bと、を有している。ボディ領域13は、特に限定されるものではないが、チャネル部13aとコンタクト部13bを含む厚みが約1~5μmであってもよい。
【0017】
チャネル部13aは、ドリフト領域12とソース領域14の間に配置されており、ドリフト領域12とソース領域14を隔てている。チャネル部13aは、トレンチゲート30の側面に対向する位置に配置されている。この例では、チャネル部13aは、トレンチゲート30の側面に接している。チャネル部13aは、特に限定されるものではないが、例えばエピタキシャル成長技術を利用して、ドリフト領域12の表面から結晶成長して形成されてもよい。チャネル部13aは、特に限定されるものではないが、p型不純物の濃度が約1×1016~1×1018cm-3であってもよい。
【0018】
コンタクト部13bは、チャネル部13a上に設けられており、半導体層10の表面に露出する位置に配置されている。コンタクト部13bは、半導体層10を平面視したときに、隣り合うトレンチゲート30の間に配置されており、y方向においてソース領域14に隣接している。換言すると、コンタクト部13bとソース領域14は、半導体層10を平面視したときに、隣り合うトレンチゲート30の間において、y方向に沿って交互に繰り返し配置されている。コンタクト部13bは、チャネル部13aよりもp型不純物の濃度が濃い。コンタクト部13bは、半導体層10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触している。コンタクト部13bは、特に限定されるものではないが、例えばイオン注入技術を利用して、半導体層10の表面に向けてアルミニウム又はボロンをイオン注入して形成されてもよい。コンタクト部13bは、特に限定されるものではないが、例えば厚みが0.1~2μmであり、p型不純物の濃度が約1×1020~1×1023cm-3であってもよい。
【0019】
ソース領域14は、ボディ領域13のチャネル部13a上に設けられており、半導体層10の表面に露出する位置に配置されている。ソース領域14は、トレンチゲート30の側面に対向する位置に配置されている。この例では、ソース領域14は、トレンチゲート30の側面に接している。ソース領域14は、半導体層10の表面を被膜するソース電極24にオーミック接触している。ソース領域14は、特に限定されるものではないが、例えばイオン注入技術を利用して、半導体層10の表面に向けて窒素又はリンをイオン注入して形成されてもよい。ソース領域14は、特に限定されるものではないが、例えば厚みが0.1~2μmであり、n型不純物の濃度が約1×1020~1×1023cm-3であってもよい。
【0020】
電界シールド領域16は、ボディ領域13のチャネル部13aの下面から深部に向けて、即ち、z方向に沿って伸びている。電界シールド領域16は、トレンチゲート30の側面から離れて配置されている。このため、電界シールド領域16とトレンチゲート30の側面の間にドリフト領域12の一部が設けられており、このドリフト領域12の一部をJFET領域12aという。なお、JFET領域12aは、電界シールド領域16と底部領域17の間の領域も含む。電界シールド領域16は、半導体層10を平面視したときに、ボディ領域13のコンタクト部13bが存在する範囲には配置されていない。即ち、電界シールド領域16は、ボディ領域13のコンタクト部13bの下方に配置されていない。電界シールド領域16は、半導体層10を平面視したときに、ソース領域14が存在する範囲に配置されている。即ち、電界シールド領域16は、ソース領域14の下方に配置されている。電界シールド領域16は、特に限定されるものではないが、例えばイオン注入技術を利用して、半導体層10の表面に向けてアルミニウム又はボロンをイオン注入して形成されてもよい。電界シールド領域16は、特に限定されるものではないが、例えば厚みが0.1~2μmであり、p型不純物の濃度が約1×1017~1×1018cm-3であってもよい。
【0021】
底部領域17は、トレンチゲート30の底面に対向する位置に設けられている。この例では、底部領域17は、トレンチゲート30の底面から離れて配置されている。底部領域17とトレンチゲート30の底面の間の距離は、ビルトインポテンシャルによって底部領域17から伸びる空乏層の長さ以下である。底部領域17は、半導体層10を平面視したときに、トレンチゲート30に沿って伸びており、トレンチゲート30の一方の端部から他方の端部まで伸びている。底部領域17は、図示省略のp型の接続領域を介してボディ領域13に電気的に接続されている。このような接続領域は、トレンチゲート30の側面に接するように設けられており、トレンチゲート30の長手方向において分散して設けられていてもよい。底部領域17は、特に限定されるものではないが、例えばトレンチゲート30を形成するためのトレンチを形成した後に、イオン注入技術を利用して、そのトレンチの底面に向けてアルミニウム又はボロンを注入して形成されてもよい。底部領域17は、特に限定されるものではないが、例えば厚みが0.1~2μmであり、p型不純物の濃度が約1×1017~1×1018cm-3であってもよい。
【0022】
トレンチゲート30は、半導体層10の表面から深部に向けて伸びており、ゲート電極32及びゲート絶縁膜34を有している。トレンチゲート30は、ソース領域14及びボディ領域13のチャネル部13aを貫通してドリフト領域12の一部に侵入するように設けられている。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜34によって半導体層10から絶縁されている。ゲート電極32は、ゲート絶縁膜34を介してボディ領域13のチャネル部13aに対向している。ゲート絶縁膜34は、特に限定されるものではないが、例えば半導体層10の表層部にトレンチを形成した後に、CVD(Chemical Vapor Deposition)技術を利用して、そのトレンチの側壁に酸化シリコンを堆積することで形成されてもよい。ゲート電極32は、特に限定されるものではないが、例えば、トレンチの側壁にゲート絶縁膜34を形成した後に、CVD技術を利用して、トレンチ内にポリシリコンを充填することで形成されてもよい。
【0023】
次に、半導体装置1の動作を説明する。ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地され、トレンチゲート30のゲート電極32にソース電極24よりも正となる電圧が印加されると、ボディ領域13のチャネル部13aのうちのトレンチゲート30の側面に対向する部分に反転層が形成される。これにより、ソース領域14と反転層とドリフト領域12とドレイン領域11を介してソース電極24からドレイン電極22に電子が流れることができる。これにより、半導体装置1は、ドレイン電極22とソース電極24の間に電流が流れ、オンすることができる。
【0024】
ドレイン電極22に正電圧が印加され、ソース電極24が接地され、トレンチゲート30のゲート電極32が接地されると、ボディ領域13のチャネル部13aのうちのトレンチゲート30の側面に対向する部分に反転層が形成されない。これにより、半導体装置1は、ドレイン電極22とソース電極24の間に電流が流れず、オフすることができる。このように、半導体装置1は、ゲート電極32に印加する電圧に基づいてドレイン電極22とソース電極24の間を流れる電流を制御することができる。
【0025】
半導体装置1のソース電極24に正電圧が印加されると、p型のボディ領域13とn型のドリフト領域12で構成される内蔵のpnダイオードが動作する。この内蔵のpnダイオードの動作について、
図5及び
図6に示す比較例と対比して半導体装置1の特徴を説明する。なお、
図5及び
図6に示す比較例において、本実施形態の半導体装置1と共通する構成要素には共通の符号を付す。
図5に示す比較例1は、半導体層10を平面視したときに、ボディ領域13のコンタクト部13bの存在する範囲に電界シールド領域16が配置されている例である。即ち、
図5に示す比較例1は、コンタクト部13bの下方に電界シールド領域16が配置されている例である。
図6に示す比較例2は、電界シールド領域16が設けられていない例である。
【0026】
図7は、本実施形態の半導体装置1と比較例1と比較例2の各々について、動作中の内蔵のpnダイオードにおけるドレイン領域11とドリフト領域12の界面の正孔濃度と導通電流の関係を計算した結果を示す。比較例1では、電界シールド領域16がコンタクト部13bの下方に配置されているので、電界シールド領域16から多量の正孔が注入される。このため、比較例1では、ドレイン領域11とドリフト領域12の界面の正孔濃度が高い。このような高濃度の正孔は、ドレイン領域11とドリフト領域12の界面に存在する転位を成長させ、内蔵のpnダイオードの順方向電圧を悪化させてしまう。一方、本実施形態の半導体装置1では、電界シールド領域16がコンタクト部13bの下方に配置されていないので、電界シールド領域16から多量の正孔が注入されることが抑えられている。このため、本実施形態の半導体装置1では、ドレイン領域11とドリフト領域12の界面の正孔濃度が低い。
【0027】
図8は、本実施形態の半導体装置1と比較例1と比較例2の各々について、内蔵のpnダイオードのリカバリ特性を計算した結果を示す。比較例2では、電界シールド領域16が設けられていないので、ボディ領域13のチャネル部13aに電界が伸展し、ショートチャネル効果によってゲート閾値が低下し、MOSが動作する。このため、比較例2では、電子電流が増加して大きなリカバリ電流が流れている。このような大きなリカバリ電流は、エネルギ損失を増大させてしまう。一方、本実施形態の半導体装置1では、電界シールド領域16が設けられているので、ボディ領域13のチャネル部13aに電界が伸展するのが抑えられているので、ショートチャネル効果が抑制され、リカバリ電流も抑えられている。
【0028】
上記したように、本実施形態の半導体装置1では、電界シールド領域16がコンタクト部13bの下方に配置されていないので、ドレイン領域11とドリフト領域12の界面における低い正孔濃度と、小さいリカバリ電流と、を両立させることができる。
【0029】
また、半導体装置1では、電界シールド領域16及び底部領域17が設けられていることにより、オフのときにトレンチゲート30の底部に集中する電界を緩和することができる。このため、半導体装置1は、高耐圧な特性を有することができる。
【0030】
また、底部領域17は、トレンチゲート30の底面から離れて配置されている。さらに、底部領域17とトレンチゲート30の底面の間の距離は、ビルトインポテンシャルによって底部領域17から伸びる空乏層の長さ以下である。底部領域17がトレンチゲート30の底面に接していると、底部領域17とボディ領域13の間のJFET領域12aに空乏層が進展し、オン抵抗の増加が懸念される。一方、底部領域17がトレンチゲート30の底面から離れると、帰還容量が増大し、スイッチング損失の増大が懸念される。本実施形態の半導体装置1では、底部領域17とトレンチゲート30の底面の間の距離が、ビルトインポテンシャルによって底部領域17から伸びる空乏層の長さ以下であることから、帰還容量の増加が抑えられてる。一方、底部領域17がトレンチゲート30の底面から離れて配置されているので、底部領域17を設けたことによるオン抵抗の増大が抑えられている。半導体装置1では、底部領域17を設けたとしても、オン抵抗の増加と帰還容量の増加を抑えることができる。
【0031】
図9に、変形例の半導体装置2を示す。半導体装置2では、電界シールド領域16の最大深さが、トレンチゲート30よりも浅い。換言すると、電界シールド領域16と底部領域17が面方向、即ち、xy平面方向において対向していない。半導体装置2では、JFET領域12aの長さが短くなるので、半導体装置1よりもオン抵抗が低い。
【0032】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
1、2 :半導体装置
10 :半導体層
11 :ドレイン領域
12 :ドリフト領域
12a :JFET領域
13 :ボディ領域
13a :チャネル部
13b :コンタクト部
14 :ソース領域
16 :電界シールド領域
17 :底部領域
22 :ドレイン電極
24 :ソース電極
30 :トレンチゲート
32 :ゲート電極
34 :ゲート絶縁膜