(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057888
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】プラズマによる対象物の処理方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20230417BHJP
A61L 2/14 20060101ALI20230417BHJP
A61L 2/10 20060101ALI20230417BHJP
A61L 2/08 20060101ALI20230417BHJP
B01J 19/08 20060101ALI20230417BHJP
B01J 19/12 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
H05H1/24
A61L2/14
A61L2/10
A61L2/08 106
B01J19/08 E
B01J19/12 B
B01J19/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167633
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】沖野 晃俊
(72)【発明者】
【氏名】劉 智志
(72)【発明者】
【氏名】森 結登
(72)【発明者】
【氏名】中井 一輝
【テーマコード(参考)】
2G084
4C058
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084AA25
2G084BB03
2G084BB04
2G084BB05
2G084CC03
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC15
2G084CC19
2G084CC21
2G084CC23
2G084CC34
2G084DD15
4C058BB06
4C058BB09
4C058DD07
4C058DD11
4C058KK02
4C058KK05
4C058KK06
4C058KK32
4G075AA30
4G075BA04
4G075BA05
4G075BB10
4G075CA02
4G075CA33
4G075CA34
4G075CA36
4G075CA47
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA05
4G075EB31
4G075EB41
4G075EC21
4G075FA01
4G075FB02
4G075FC11
4G075FC15
(57)【要約】
【課題】プラズマによる対象物の処理方法、およびその方法を実施するためのシステムの提供。
【解決手段】本開示は、プラズマによる対象物の処理方法を提供し、方法は、プラズマ発生装置の放電部内にガスを供給することと、放電部内でガスからプラズマを発生させるとともに、電磁波を放電部内に照射し、それによって、放電部内に配置された対象物をプラズマおよび電磁波に曝露することとを含む。放電部内で前記ガスからプラズマを発生させることは、大気圧下にある放電部内でガスからプラズマを発生させることを特徴とし得る。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマによる対象物の処理方法であって、前記方法は、
プラズマ発生装置の放電部内にガスを供給することと、
前記放電部内で前記ガスからプラズマを発生させるとともに、電磁波を前記放電部内に照射し、それによって、前記放電部内に配置された対象物を前記プラズマおよび前記電磁波に曝露することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることは、大気圧下にある前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることは、前記放電部内で誘電体バリア放電によって前記ガスから前記プラズマを発生させることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラズマ発生装置は、
対向する面状の第1の電極および面状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される少なくとも1つの誘電体部材と、
前記ガスを供給可能な入口および前記ガスを排出可能な出口とを備え、
前記放電部は、前記第1の電極と前記第2の電極との間かつ前記入口と前記出口との間に形成される空間である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の電極は、前記電磁波を通過させる部分を備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分は、導電性を有する部分であり、前記導電性を有する部分は、前記電磁波について少なくとも約10%の透過性を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の電極は、前記電磁波を通過させる部分を複数備え、前記複数の電磁波を通過させる部分は、前記第1の電極内に一様に配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記電磁波を照射することは、前記電磁波を、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の電極は、前記電磁波を通過させる部分を備え、
前記電磁波を照射することは、
前記電磁波を、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと、
前記電磁波を、前記第2の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと
を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電磁波を照射することは、
第1の波長を有する電磁波を、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと、
第2の波長を有する電磁波を、前記第2の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることは、前記第1の電極と前記第2の電極との間に約50Hz~約500kHzの周波数電圧を供給することによって前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることを特徴とする、請求項3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の電極と前記第2の電極との間の距離は、約0.1mm~約20mmである、請求項3~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも前記第1の電極は、可視光を通過させるように構成される、請求項3~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記電磁波は、レーザである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記プラズマは、オゾンを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記電磁波は、紫外線である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記紫外線は、約260~約300nmの波長を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象物の殺菌方法、表面処理方法、またはガス分解処理方法である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記電磁波は、赤外線である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記対象物の接着のための表面処理方法である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
プラズマ処理システムであって、前記システムは、
プラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記プラズマ発生部にガスを供給するガス供給部と、
電磁波を発生させる電磁波発生部と、
前記プラズマ発生部に対して前記電磁波を照射する電磁波照射部と
を備える、システム。
【請求項22】
前記プラズマ発生部は、
対向する面状の第1の電極および面状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される少なくとも1つの誘電体部材と、
前記ガスを供給可能な入口および前記ガスを排出可能な出口とを備え、
放電部が、前記第1の電極と前記第2の電極との間かつ前記入口と前記出口との間に形成され、前記放電部内で前記プラズマが発生し、
少なくとも前記第1の電極は、前記電磁波を通過させる部分を備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記電磁波照射部は、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記電磁波を前記プラズマ発生部に対して照射するように配置されていることを特徴とする、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか一項に記載の方法を実施するための請求項21~23のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマによる対象物の処理方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを用いて対象物を処理することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
対象物に対して、プラズマを活用して殺菌処理や表面処理等の任意の処理を行う新規の方法およびシステムに対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明者らは、鋭意研究した結果、プラズマと電磁波とを組み合わせて、対象物に対して効率的に処理を実施することができる新規の方法およびシステムを開発した。一つの側面において、本開示の方法は、プラズマ発生装置の放電部内にガスを供給することと、放電部内でガスからプラズマを発生させるとともに、電磁波を放電部内に照射し、それによって、放電部内に配置された対象物をプラズマおよび電磁波に曝露することとを含む。
【0005】
従って、本開示は以下を提供する。
(項目1)
プラズマによる対象物の処理方法であって、前記方法は、
プラズマ発生装置の放電部内にガスを供給することと、
前記放電部内で前記ガスからプラズマを発生させるとともに、電磁波を前記放電部内に照射し、それによって、前記放電部内に配置された対象物を前記プラズマおよび前記電磁波に曝露することと
を含む、方法。
(項目2)
前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることは、大気圧下にある前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることを特徴とする、上記項目に記載の方法。
(項目3)
前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることは、前記放電部内で誘電体バリア放電によって前記ガスから前記プラズマを発生させることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
前記プラズマ発生装置は、
対向する面状の第1の電極および面状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される少なくとも1つの誘電体部材と、
前記ガスを供給可能な入口および前記ガスを排出可能な出口とを備え、
前記放電部は、前記第1の電極と前記第2の電極との間かつ前記入口と前記出口との間に形成される空間である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
前記第1の電極は、前記電磁波を通過させる部分を備える、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分は、導電性を有する部分であり、前記導電性を有する部分は、前記電磁波について少なくとも約10%の透過性を有する、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第1の電極は、前記電磁波を通過させる部分を複数備え、前記複数の電磁波を通過させる部分は、前記第1の電極内に一様に配置される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
前記電磁波を照射することは、前記電磁波を、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記第2の電極は、前記電磁波を通過させる部分を備え、
前記電磁波を照射することは、
前記電磁波を、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと、
前記電磁波を、前記第2の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと
を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
前記電磁波を照射することは、
第1の波長を有する電磁波を、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと、
第2の波長を有する電磁波を、前記第2の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記処理物に照射することと
を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることは、前記第1の電極と前記第2の電極との間に約50Hz~約500kHzの周波数電圧を供給することによって前記放電部内で前記ガスから前記プラズマを発生させることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目12)
前記第1の電極と前記第2の電極との間の距離は、約0.1mm~約20mmである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目13)
少なくとも前記第1の電極は、可視光を通過させるように構成される、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目14)
前記電磁波は、レーザである、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目15)
前記プラズマは、オゾンを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目16)
前記電磁波は、紫外線である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目17)
前記紫外線は、約260~約300nmの波長を有する、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目18)
前記対象物の殺菌方法、表面処理方法、またはガス分解処理方法である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目19)
前記電磁波は、赤外線である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目20)
前記対象物の接着のための表面処理方法である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
プラズマ処理システムであって、前記システムは、
プラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記プラズマ発生部にガスを供給するガス供給部と、
電磁波を発生させる電磁波発生部と、
前記プラズマ発生部に対して前記電磁波を照射する電磁波照射部と
を備える、システム。
(項目22)
前記プラズマ発生部は、
対向する面状の第1の電極および面状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置される少なくとも1つの誘電体部材と、
前記ガスを供給可能な入口および前記ガスを排出可能な出口とを備え、
放電部が、前記第1の電極と前記第2の電極との間かつ前記入口と前記出口との間に形成され、前記放電部内で前記プラズマが発生し、
少なくとも前記第1の電極は、前記電磁波を通過させる部分を備える、上記項目に記載のシステム。
(項目23)
前記電磁波照射部は、前記第1の電極の前記電磁波を通過させる部分を通じて前記電磁波を前記プラズマ発生部に対して照射するように配置されていることを特徴とする、上記項目のいずれかに記載のシステム。
(項目24)
項目1~20のいずれか一項に記載の方法を実施するための上記項目のいずれかに記載のシステム。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る方法およびシステムにより、プラズマと電磁波とを使用して対象物を効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示に係るプラズマと電磁波とを使用する処理方法の概要を示す。
【
図2】
図2は、本開示に係るプラズマおよび電磁波を使用する処理システムの構成の例を示す。
【
図3】
図3は、本開示に係るプラズマによる対象物の処理方法のフローチャートを示す。
【
図4A】
図4Aは、本開示に係る例示的プラズマ発生装置の斜視図を示す。
【
図4B】
図4Bは、本開示に係る例示的プラズマ発生装置の断面図を示す。
【
図5A】
図5Aは、本開示に係る例示的プラズマ発生装置の第1の変形例を示す。
【
図5B】
図5Bは、本開示に係る例示的プラズマ発生装置の第2の変形例を示す。
【
図6】
図6は、プラズマ発生装置を使用して大気圧プラズマにより対象物を処理する方法の例示的フローチャートである。
【
図7】
図7は、プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよび紫外線を使用して対象物を処理する方法の例示的フローチャートである。
【
図8】
図8は、プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよび赤外線を使用して対象物の接着のための表面処理を実施する方法の例示的フローチャートである。
【
図9】
図9は、プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよびレーザを使用して対象物の局所的処理を実施する方法の例示的フローチャートである。
【
図10】
図10は、プラズマ発生装置においてレーザを使用してプラズマ中の活性種を測定する方法の例示的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0009】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0010】
本明細書において、プラズマを発生させる文脈における「大気圧」とは、圧力を大幅に増加または減少させるための処理を伴わないことを意味し、標準大気圧(1気圧)に限定されず、約0.5~約1.5気圧の範囲である。「大気圧プラズマ」とは、そのような大気圧下において発生するプラズマのことをいう。
【0011】
本明細書において、「略平面状」とは、完全な平面状だけでなく、概ね平面とみなせる形状(部分的に隆起や陥没や穴を含む形状)のことをいう。
【0012】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。なお、本明細書全体を通して、同一の構成要素には同一の参照数字を使用している。
【0014】
(1.処理方法の概要)
図1は、電磁波を使用してプラズマを処理する方法、ならびにプラズマおよび電磁波を使用して対象物を処理する方法の概要を示す。
【0015】
本開示に係る方法では、プラズマおよび電磁波が使用される。方法は、プラズマ発生源1から発生するプラズマと電磁波発生源2から発生する電磁波とにより実施される。
【0016】
本開示に係るプラズマ処理方法は、プラズマに対して電磁波を照射することを含む。プラズマに対して特定の波長の電磁波を照射することにより、プラズマ中の物質(分子、原子、イオン等)の状態および/または性質を変化させることができる。
【0017】
プラズマ発生源1が、プラズマを発生させる。プラズマ発生源1がプラズマを発生させる環境は、大気圧下であってもよいし、真空状態等の低気圧(例えば、約1/1000気圧)下であってもよい。好ましい実施形態において、本発明のプラズマは大気圧下で発生される大気圧プラズマであり得る。大気圧プラズマを使用することにより、減圧または高圧のためのプロセスおよび装置が不要となり、簡便にプラズマを発生させることができる。
【0018】
発生するプラズマは、高温(例えば、約5000℃)であってもよいし、低温(例えば、約-100℃~約300℃)であってもよい。好ましい実施形態においては、発生するプラズマの温度は、約10~約90℃であり得る。この温度のプラズマを発生させることによって、電極に対する物理的影響が少なくなり、電極を後述の液体電極など電磁波に対して透過性の電極を構成することが容易になり得る。
【0019】
プラズマ発生源1によるプラズマ発生方法は、当業者に公知である任意の方法であり、例えば、誘電体バリア放電、グロー放電、アーク放電、コロナ放電、ぺニング放電、高周波放電(容量結合型、誘導結合型放電)、電子サイクロトロン共鳴、直流マグネトロン放電、表面波放電、レーザーアブレーション等を含み得る。大気圧で低温プラズマを発生させることができる誘電体バリア放電であることが好ましい。
【0020】
本方法において使用されるプラズマは、任意のガスから発生する。プラズマを発生させるガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、水素、水(水蒸気)、窒素、二酸化炭素、四フッ化炭素、四塩化炭素、アンモニア、空気等を含み得る。プラズマを発生させるガスは、方法の用途に応じて選択され得る。
【0021】
本方法において発生させられるプラズマは、プラズマの源となるガスに依存して、任意の物質(原子、分子、イオン、電子等)から構成される。
【0022】
電磁波発生源2が、電磁波を発生させる。電磁波発生源2は、特定の種類の電磁波(例えば、紫外線、X線、赤外線、可視光等)を照射するように構成されてもよいし、複数の種類の電磁波にわたる波長の電磁波を照射するように構成されてもよい。電磁波発生源2は、電磁波を放射状に照射してもよいし、光学系で制御してもよいし、レーザ(指向性光)として照射してもよい。
【0023】
本方法において使用される電磁波は、任意の波長であり得る。電磁波は、例えば、紫外線、赤外線、可視光、電波(マイクロ波、ミリ波、長波、短波等)、および放射線(X線、ガンマ線等)であり得る。
【0024】
一実施形態では、電磁波は、紫外線であり得る。紫外線は、特定の物質を分解し、またはイオン化する性質を有する。紫外線をプラズマに対して照射することにより、プラズマ中の原子、分子、イオン等を分解、励起またはイオン化する等して活性化することができる。
【0025】
他の実施形態では、電磁波は、レーザであり得る。プラズマ発生源1によって発生させられるプラズマには、発光していない物質が含まれ得る。これらの物質を測定するために、プラズマに対してレーザを照射することにより、プラズマ中の活性種を励起して発光させることができる。
【0026】
本開示に係るプラズマによる対象物の処理方法は、対象物をプラズマに曝露するとともに、電磁波を、プラズマに曝露されている対象物に対して照射することを含み得る。これにより、プラズマを用いた対象物に対する殺菌処理および表面処理等の処理の性能を向上させることができる。本開示に係るプラズマと電磁波との組み合わせによる対象物の処理方法は、例えば、対象物へ電磁波を照射しても電磁波が届きにくい部分に、プラズマが接触することにより、電磁波のみによる処理の場合と比較して対象物の広い範囲を処理することができる。また、電磁波による処理はプラズマよりも強力であったり、プラズマとは異なる処理を対象物に対して行うことができたりするため、本開示に係るプラズマと電磁波との組み合わせによる対象物の処理方法は、プラズマのみによる処理の場合と比較して対象物をより効果的に処理することができる。
【0027】
本発明による対象物の処理は、対象物の状態を改変する任意の処理をいい、具体的には対象物もしくは気中の殺菌およびウイルス不活化、対象物の表面の改変(例えば、接着性向上)、表面のコーティング、排気ガス等のガスの分解、新規ガス分子の生成、新規粒子の生成が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明によって処理される対象物は、例えば、フッ素樹脂、ゴム、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、生体材料、紙、金属、半導体、ガスを含み得る。
【0029】
一実施形態では、電磁波は、紫外線であり得る。プラズマが紫外線の照射を受けると、プラズマ中の物質は、光エネルギーを吸収し、それによって励起、イオン化、解離される。これら物質は、例えば化学的反応性や運動が活発化される。このようなメカニズムにより、紫外線は、プラズマ中の物質を活性化させ、プラズマの殺菌能力を向上させることができる。従って、対象物をプラズマに曝露するとともに、紫外線を、プラズマに曝露されている対象物に対して照射することにより、対象物を、紫外線と、紫外線の照射を受けて殺菌能力が向上させられたプラズマとの双方によって、効率的に殺菌することができる。
【0030】
一実施形態では、電磁波は、赤外線であり得る。赤外線を対象物に照射することにより、対象物を加熱することができる。プラズマは、例えば、対象物の接着性を向上させるように表面処理を行うために使用される。本発明者は対象物を予め加熱しておくことにより、プラズマによる対象物の接着性がさらに向上されることを見出した。そこで、対象物をプラズマに曝露するとともに、プラズマに曝露されている対象物に対して赤外線を照射することにより、対象物の加熱と対象物のプラズマによる処理とを同時に行い、処理の効果を高め、効率的に接着性を向上できる。
【0031】
一実施形態では、電磁波は、レーザであり得る。レーザは、プラズマ中の物質にエネルギーを与えて励起することができる。従って、対象物をプラズマに曝露するとともに、プラズマに曝露されている対象物に対してレーザを照射することにより、プラズマを局所的に励起し、対象物の局所的な処理を実施することができる。
【0032】
(2.処理システム10)
図2は、本開示に係るプラズマおよび電磁波を使用する処理システム10のブロック図である。システム10は、上記のプラズマ処理方法およびプラズマによる対象物の処理方法を実施するために使用され得る。システム10は、プラズマ発生部100と、電磁波発生部200と、電磁波照射部300と、ガス供給源400と、電源500とを備える。
【0033】
システム10において、プラズマ発生源1は、プラズマ発生部100として具現化されている。プラズマ発生部100は、プラズマを発生させるように構成される。プラズマ発生部100は、当業者に公知である任意の方法でプラズマを発生させるように構成され、その方法でプラズマを発生させるために必要な構成(例えば、電極材料、電極配置、電極間距離、電極以外の部材の有無、動作温度、動作電圧、動作周波数等)を備え得る。
【0034】
一実施形態では、プラズマ発生部100は、誘電体バリア放電によってプラズマを発生させるように構成され、少なくとも2つの電極(第1の電極および第2の電極)と、少なくとも1つの誘電体部材と、ガスの入口および出口とを備え得る。そして、少なくとも2つの電極の間に放電部が形成され得、プラズマ発生部100は、この放電部内にプラズマを発生させ得る。このような構成を備えることにより、プラズマ発生部100は、低温大気圧プラズマを安定して連続的に発生させることができる。そして、このようなプラズマ発生部100と後述する電磁波発生部200および電磁波照射部とを組み合わせることにより、低温大気圧プラズマによる処理(殺菌処理、表面処理等)の効率を向上させることができる。
【0035】
一実施形態では、プラズマ発生部100は、電磁波をプラズマ発生部100内へ通過させるように構成される。これにより、プラズマ発生部100内に外部から電磁波を通過させ、プラズマの発生と同時に電磁波をプラズマおよび対象物に照射することができる。これにより、プラズマの消失を低減させながら、処理対象物を、プラズマおよび電磁波に曝露させることができ、対象物の処理効率を向上させることが可能になる。
【0036】
一例では、プラズマ発生部100の第1の電極が、電磁波を通過させる部分を備え、電磁波は、第1の電極の電磁波を通過させる部分を通じてプラズマ発生部100内に照射される。第1の電極が電磁波を通過させる部分を備えることにより、プラズマ発生部100の電極以外の部分に電磁波を通過させるための構成を設ける必要がなくなるため、プラズマ発生部100における電極の占める割合を高め、プラズマをより広い面積にわたって発生させることができる。電磁波を通過させる部分は、電極における導電性を有する部分と異なる電磁波透過性の高い材料で形成されてもよいし、第1の電極が複数の金属線材を有し、各線材が間隔を空けて網目状に配置することによって形成される空間であってもよいし、パンチングプレートのように第1の電極内を貫通する複数の孔(空間)として形成されてもよい。好ましくは、プラズマ発生部100内に均一にプラズマを発生させ、電磁波が外部からプラズマ発生部100内に一様に照射されることを可能にするように、第1の電極は、電磁波を通過させる部分を複数備え、複数の電磁波を透過させる部分が第1の電極内に一様に配置される。
【0037】
別の実施形態では、電磁波を通過させる部分は、導電性を有する部分であり、導電性を有する部分が電磁波透過性を有する材料から構成される。この場合、電磁波は、導電性を有する部分を透過させてプラズマ発生部100内に照射されることができる。これにより、第1の電極全体が導電性を有する部分で形成されることが可能となるため、第1の電極全体で放電を発生させることができ、発生するプラズマの量を増加させることができる。電磁波を通過させる部分が導電性を有する部分である場合、導電性を有する部分は、電磁波について少なくとも約10%、好ましくは約50%、最も好ましくは約90%の透過性を有し得る。
【0038】
一実施形態では、プラズマ発生部100の第1の電極および第2の電極の各々が、電磁波を通過させる部分を備える。これにより、プラズマ発生部内の放電部に2つの側面から電磁波を照射することが可能となり、プラズマと電磁波との反応、およびその反応を利用した対象物の処理の効率および効果が向上させることができる。好ましくは、各々の電極の電磁波を通過させる部分は導電性を有する部分であり、各々の電極の導電性を有する部分は、少なくとも約10%の透過性を有し得る。
【0039】
一実施形態では、第1の電極および/または第2の電極は、照射される電磁波に加えて、またはそれに代えて、可視光を通過させるように構成される。これにより、プラズマ発生部100を使用する者が、プラズマ発生部100の内部(放電部内)のプラズマの様子および対象物の配置を視認しながら処理を実施することができるため、処理の正確性および効率が向上される。
【0040】
一実施形態では、プラズマ発生部100は、2つの電極を備え、2つの電極間に約50Hz~約10kHzの周波数電圧を供給されることによってプラズマを発生させる。これにより、低温大気圧プラズマを効率的に発生させることが可能になる。
【0041】
一実施形態では、プラズマ発生部100の第1の電極と第2の電極との間の距離は、約2mm~約10mmである。電極間距離がこの範囲内に設定されることにより、十分な量のプラズマを発生させることを保証しながら、対象物を配置するための空間を最大限確保することができる。
【0042】
電磁波発生部200は、電磁波を発生させるように構成される。電磁波発生部200は、電磁波を発生させることが可能な任意の装置として構成され得、例えば、ランプ、発光ダイオード、放電灯、蛍光灯、レーザ発生装置等であり得る。電磁波発生部200が発生させる電磁波は、任意の波長の電磁波を含み、例えば、紫外線、赤外線、可視光、電波(例えば、ミリ波、マイクロ波、長波、短波等)、放射線(X線、ガンマ線等)であり得る。電磁波発生部200が発生させる電磁波は、システム10を使用して実施される処理に基づいて、かつ/またはプラズマ発生部110が使用するガスおよび発生させるプラズマ等に基づいて選択され得る。
【0043】
電磁波照射部300は、電磁波発生部200によって発生された電磁波を、プラズマ発生部100によって発生されたプラズマ発生部110において照射するように構成される。電磁波照射部300は、プラズマ発生部100の内部に存在するプラズマおよび/または対象物に電磁波を照射するように構成されてもよいし、プラズマ発生部100によって発生され、プラズマ発生部100の外部に放出されたプラズマおよび/またはプラズマ発生部110の外部に配置された対象物に電磁波を照射するように構成されてもよい。もっとも、プラズマが大気と混ざることにより消失することを防ぐために、電磁波照射部300は、プラズマ発生部100の内部(例えば、プラズマ発生部100の放電部内)に存在するプラズマに電磁波を照射するように構成されることが好ましい。一例では、電磁波照射部300は、電磁波発生部200に組み込まれ得る。別の例では、電磁波照射部300はまた、後述されるように、電磁波照射ユニットとしてプラズマ発生部110に組み込まれ得る。
【0044】
前述のように、プラズマ発生部100の電極が電磁波を通過させる部分を備える場合、電磁波照射部300は、電極の電磁波を通過させる部分を通じてプラズマ発生部100内に電磁波を照射するように構成される。この場合において、電磁波照射部300が走査型である場合、電磁波照射部300は、電極上をそれに沿って走査し、プラズマ発生部100内の所望の位置(xy平面上の位置)に電磁波を照射することができる。また、電磁波照射部300が電極全体にわたって配置され、均一な電磁波を照射する場合、電磁波照射部300は、プラズマ発生部100内に均一な処理を実施することができる。
【0045】
ガス供給源400は、プラズマ発生部100にガスを供給するように構成される。ガス供給源400からプラズマ発生部100に供給されるガスは、プラズマ化されるためのガスである。ガスは、例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン、酸素、水素、水(水蒸気)、窒素、二酸化炭素、空気等であり得る。
図2に示されるように、ガス供給源400は、プラズマ発生部100に接続され得る。ガス供給源400は、ガスを貯蔵するための1つ以上のガスタンクを備え得る。
【0046】
電源500は、プラズマ発生部100に電力を供給するように構成される。電源は、直流電源であってもよいし、交流電源であってもよいし、直流および交流の両方を供給する電源であってもよい。もっとも、プラズマ発生部100において誘電体バリア放電を実施することができるように、少なくとも交流を供給可能な電源であることが好ましい。電源500は、プラズマ発生部100の電極に接続され得る。
【0047】
(3.プラズマによる対象物の処理方法)
図3は、プラズマによる対象物の処理方法300の例示的フローチャートである。方法300は、プラズマ発生部の放電部内で実施される。方法300は、システム10によって実施され得る。
【0048】
ステップ301において、プラズマ発生部の放電部内にガスが供給される。ガスは、例えば、ガス供給部400からプラズマ発生部100の放電部内に供給され得る。
【0049】
ステップ302において、プラズマ発生部は、放電部内でガスからプラズマを発生させるとともに、電磁波を放電部内に照射し、それによって、放電部内に配置された対象物をプラズマおよび電磁波に曝露する。
【0050】
プラズマ発生部は、任意の方法で、放電部内でガスからプラズマを発生させ得る。一例では、プラズマ発生部100が、大気圧下にある放電部内でガスからプラズマを発生させる。この例では、放電部内に減圧状態も高圧状態も作り出す必要がないため、方法実施のコストが低減される。別の例では、プラズマ発生部100が、放電部内で誘電体バリア放電によってガスからプラズマを発生させる。誘電体バリア放電により、大気圧下で比較的低温のプラズマ(例えば、約-100℃~約300℃)を発生させることができる。プラズマ発生部100は、電源500から電圧を供給されることにより、放電部内でガスからプラズマを発生させる。一例では、プラズマ発生部100は、その電極に約50Hz~10kHzの周波数電圧を供給されることにより、放電部内でガスからプラズマを発生させ得る。電源500から供給される電圧の周波数は、プラズマ発生方法に応じて決定され得る。
【0051】
そして、プラズマ発生部100は、プラズマを発生させるとともに、電磁波発生部200によって発生された電磁波を、電磁波照射部300を介して電磁波を照射し得る。一例では、電磁波照射部300は、プラズマ発生部100の電極の電磁波を通過させる部分を介して、プラズマ発生部100の外部から電磁波をプラズマ発生部100の放電部内に照射され得る。
【0052】
対象物は、方法300によってプラズマおよび電磁波に曝露されることにより、種々の処理(例えば、表面処理、殺菌処理等)を実施されることができる。
【0053】
(4.プラズマ発生装置)
次に、システム10におけるプラズマ発生部100の一実施形態としての例示的プラズマ発生装置110が説明される。
図4Aは、例示的プラズマ発生装置110の斜視図を示す。
図4Bは、
図4Aに示されるA-Aに沿った例示的プラズマ発生装置110の断面図である。
【0054】
図4Aに示されるプラズマ発生装置110は、第1の電極121と、第2の電極122と、第1の誘電体部材131と、第2の誘電体部材132と、2つのスペーサ部材114とを備える。プラズマ発生装置110は、z方向において上から、第1の電極121、第1の誘電体部材131、2つのスペーサ部材114、第2の誘電体部材132、第2の電極122を積み重ねることにより形成されている。
【0055】
第1の電極121および第2の電極122は、互いに対向して配置され、互いに略平行であり得る。第1の電極121および第2の電極122の各々は、面状であり、面積を有する。電極を構成する面の形状は任意であるが、好ましくは略平面状であり得る。第1の電極121と第2の電極122との間の距離は、大気圧下でプラズマを十分に発生させることができる距離であり、少なくとも約0.1mm~約20mmであり得る。第1の電極121および第2の電極122の各々は、プラズマを発生させるための放電を実施することが可能な任意の材料であり得る。第1の電極121および第2の電極122は、電源から電圧を印加されることにより、それらの間で放電を引き起こす。
【0056】
図4Aに示されるプラズマ発生装置110では、第1の電極121は、電磁波を透過させるように構成されている。例えば、第1の電極121は、プラズマによる対象物の処理を実施するために使用される電磁波について少なくとも約10%、好ましくは約50%以上、最も好ましくは約90%以上の透過性を有し得る。これにより、電磁波照射ユニット310が、第1の電極121を通じて電磁波を放電部113内に照射することができる。さらに、第1の電極121は、対象物の処理を実施するために使用される電磁波に加え、可視光も透過させるように構成されることが好ましく、例えば、第1の電極121は、可視光について少なくとも約10%、好ましくは約50%以上、最も好ましくは約90%以上の透過性を有し得る。これにより、処理の実施者が、第1の電極121を通してプラズマ発生装置110の内部(放電部113)を視認しながら、電磁波を対象物に照射して処理を実施することができる。
【0057】
第1の電極121は、導電性であり、かつ電磁波を透過させることができる任意の固体、液体、または液体であり得る。第1の電極121は、例えば、塩化ナトリウム水溶液であり得、濃度約20%の塩化ナトリウム水溶液から構成される第1の電極121は、ガラスであり得る誘電体部材131を含めて約220nm~約950nmの範囲内の波長を有する電磁波を約80%透過させることができる。第1の電極121が液体である場合、その液体電極は、絶縁性の枠体121aによって囲われ、電極の面積が画定される。そして、電極121の下に配置される第1の誘電体部材131の上面によって、液体が枠体内121a内に保持される。別の例では、枠体121aは、凹部を有する平面状部材として具現化され得、凹部内に液体電極が充填される。この場合、凹部の底面は、放電を実施することができるような材料であり、例えば誘電体であり得る。
【0058】
第1の誘電体部材131および第2の誘電体部材132は、略平面状に成形された任意の誘電体であり得、例えば、ガラス、プラスチック、雲母、セラミック、アルミナ、ポリマフィルム等であり得る。第1の誘電体部材131および第2の誘電体部材132は、第1の電極121および第2の電極122において放電が局部的に集中することを抑制し、それによって、放電がグロー放電およびアーク放電へ発展を防止し得る。第1の誘電体部材131および第2の誘電体部材132は、約0.1ミクロン~数mmの厚さを有し得る。一実施形態では、誘電体部材は、隣接する電極上に塗布され得る。
【0059】
第1の誘電体部材131は、放電部113内に電磁波が照射されることを可能にするために、第1の電極121と同様に電磁波を透過させるように構成される。一例では、第1の電極121および第1の誘電体部材131が延在する平面(すなわち、xy平面)に対して垂直ではない角度を成して電磁波が照射されるときに、電磁波が第1の電極121と第1の誘電体部材131との間での電磁波の屈折の大きさを低減させるために、第1の誘電体部材131は、第1の電極121と同等の屈折率を有する材料から作製され得る。
【0060】
図4Aに示される例では、プラズマ発生装置110は、2つの誘電体部材を備えているが、プラズマ発生装置は、放電部の片側のみに1つの誘電体部材を備えていてもよい。第1の電極121に隣接する誘電体のみが存在してもよいし、第2の電極122に隣接する誘電体のみが存在してもよい。
【0061】
図4Aに示されるプラズマ発生装置110では、第1の誘電体部材131と第2の誘電体部材132との間に、2つのスペーサ部材114が配置されている。スペーサ部材114は、2つの誘電体部材および2つの電極を離間させてプラズマを発生させる放電部を形成するために配置される。プラズマ発生装置110が第1の電極121に隣接する1つの誘電体部材を備える場合、2つのスペーサ部材114は、誘電体部材と第2の電極122との間に配置される。プラズマ発生装置110が第2の電極122に隣接する1つの誘電体部材を備える場合、2つのスペーサ部材114は、誘電体部材と第1の電極121との間に配置される。スペーサ部材114は、絶縁性の任意の材料で形成される。一例では、スペーサ部材114は、誘電体であり得、第1の誘電体部材131および第2の誘電体部材132と一体として構成され得る。
【0062】
プラズマ発生装置110は、ガスを供給可能な入口111と、ガスを排出可能な出口112とを備える。そして、入口111と出口112との間、かつ第1の誘電体部材131と第2の誘電体部材132との間(すなわち、第1の電極121と第2の電極122との間)に、放電が実施される空間(放電部)が形成される。
図4Aおよび
図4Bに示される例では、対向する2つの電極の内側に配置される第1の誘電体部材131と第2の誘電体部材132との間に放電部113が形成されている。ガスがこの放電部113内に供給され、プラズマ発生装置110は、供給されたガスから、この放電部113内にプラズマを発生させる。放電部の厚さ(z方向の大きさ)は、大気圧においてプラズマを発生させて放電部内で対象物を処理することを可能にするように決定され得、好ましくは、約0.1mm~約20mm、最も好ましくは、約0.5mm~約5mmであり得る。放電部の厚さの上限は、プラズマを発生させるために必要な電極間距離に基づき、放電部の厚さの下限は、対象物を配置するために必要な厚さに依存し得る。
【0063】
プラズマ発生装置110は、上記構成により、誘電体バリア放電によって放電部116内にプラズマを発生させる。誘電体バリア放電を実施するためにプラズマ発生装置110に印加される電圧周波数は、好ましくは、約50Hz~約500kHz、最も好ましくは、約50Hz~約30kHzの範囲内であり得、発生させられるプラズマの温度は、約-100℃~約300℃の範囲内である。プラズマ発生装置110は、真空装置を備える必要がないため、導入および動作のコストを低減させることができる。
【0064】
プラズマ発生装置110は、さらに、電磁波照射ユニット310を備える。電磁波照射ユニット310は、上述されるシステム10における電磁波照射部300がプラズマ発生装置110に組み込まれて具現化されたものである。電磁波照射ユニット310は、プラズマ発生装置110に対して固定されてもよいし、プラズマ発生装置110に対して移動可能に構成されてもよい。電磁波照射ユニット310がプラズマ発生装置110に対して移動可能に構成されている場合、電磁波照射ユニット310は、電磁波を透過させるように構成されている第1の電極121上をそれに沿って走査し、放電部113内の所望の位置(xy平面上の位置)に電磁波を照射することができる。また、電磁波照射ユニット310が第1の電極121全体にわたって配置され、均一な電磁波を照射する場合、電磁波照射ユニット310は、放電部113内に配置された対象物に均一な処理を実施することができる。
【0065】
第1の電極121自体を電磁波を透過させるように構成し、第1の電極121を通じて電磁波をプラズマ発生装置110の放電部に照射することは、電磁波透過性を有する電極以外の部材(絶縁性部材または低導電性部材)が電極内またはその周辺に設けられ、その部材を通じて電磁波を放電部に照射する場合と比較して、プラズマ発生装置110中で広範囲にわたって均一にプラズマを発生させることができる。また、第1の電極121自体が電磁波を透過させるように構成されることにより、電極以外の部分に、別途、電磁波を透過させるための窓を設ける必要がないため、プラズマ発生装置110中に最大限の範囲にわたって電極を設けることができ、発生するプラズマの量を多くすることができる。特に、プラズマ発生装置110のような誘電体バリア放電によって大気圧下でプラズマを発生させる装置においては、放電を発生させるために電極間の距離を可能な限り小さくする必要がある。従って、装置全体の厚さ(z方向)は小さく構成されるので、電磁波を透過させるための窓を装置の厚さ方向(z方向)の表面上に設置することは困難であり、仮にそのような窓を設置した場合であっても、装置内に発生するプラズマ全体に電磁波を照射させることが困難となる。よって、プラズマ発生装置110の外部に面する表面の大部分を構成し得る電極が電磁波を透過させるように構成することにより、装置全体においてプラズマおよび電磁波の両方を使用した対象物の処理を実施することが可能となる。
【0066】
図4Aおよび
図4Bに示されるプラズマ発生装置110によると、放電部113において、静電バリア放電によって発生するプラズマおよびプラズマに曝露されている対象物に電磁波を効率的に照射させることができる。プラズマ発生装置110の放電部113は、誘電体バリア放電のために要求される電極間距離に起因して、z方向の大きさが制限される(例えば、約20mm以下)一方で、x方向およびy方向の大きさは比較的自由に設定されることができる(例えば、それぞれの方向において、数cm~数m)ので、特に、厚さが小さくかつ底面積が厚さと比較して十分に大きい平面状の対象物に対して、プラズマと電磁波とを同時に使用した処理を有利に実施することが可能である。
【0067】
(5.プラズマ発生装置の変形例)
図4Aに示される例では、第1の電極121は、電磁波に対して透過性を有し、第2の電極122は、電磁波透過性を有しない電極として構成されている。もっとも、第1の電極121および第2の電極122の両方が、電磁波透過性を有していてもよい。この場合、プラズマ発生装置110の第1の電極121の側と第2の電極122の側との両方に電磁波照射ユニットを設けることで、放電部の両側から電磁波を照射することができる。これにより、放電部内での対象物の処理効率が向上させられ得る。
【0068】
図5Aは、プラズマ発生装置110の第1の変形例である。
図5Aに示される例では、第1の電極121および第2の電極122’の両方が、電磁波に対して透過性を有する。
図5Aは、プラズマ発生装置100’のyz平面上の断面図を示している。
図5Aに示されるプラズマ発生装置は、液体である第1の電極121と、液体である第2の電極122’とを備え、第1の電極121である液体は、第1の誘電体部材131によって担持され、第2の電極122’である液体は、第2の誘電体部材132によって担持されている。
【0069】
プラズマ発生装置110’は、第1の電磁波照射ユニット310と第2の電磁波照射ユニット310’とを備え、第1の電磁波照射ユニット310は、第1の電極121を通じて電磁波を放電部内に照射し、第2の電磁波照射ユニットは、第2の電極122’を通じて電磁波を放電部内に照射する。プラズマ発生装置110’は、放電部113’の対向する2つの側面から電磁波を放電部113’内に照射することが可能であるように構成されることにより、プラズマと電磁波との反応、およびその反応を利用した対象物の処理の効率および効果が向上させられる。例えば、プラズマ発生装置110’によれば、対象物の第1の電極121の側の側面と第2の電極122’の側の側面とを同時に処理することが可能であるので、対象物のそれら2つの側面を処理するために放電部113’内に対象物が配置される向きを変える手間が省かれる。
【0070】
さらに、第1の電磁波照射ユニット310と第2の電磁波照射ユニット310’とは、同一の電磁波を照射するように構成されてもよいし、異なる電磁波を照射するように構成されてもよい。例えば、プラズマ発生装置110’において実施される対象物処理方法は、第1の電磁波照射ユニット310が第1の波長を有する電磁波(例えば、紫外線)を照射することと、第2の電磁波照射ユニット310が第2の波長を有する電磁波(例えば、赤外線)を照射することとを含み得る。例えば、紫外線と赤外線とがプラズマ発生装置110’の放電部113内に対向する側から電極を通して照射されることにより、対象物中の一部分を赤外線で加熱するとともに、紫外線により活性化させられたプラズマ中の活性種によって対象物中のその部分の表面処理を実施することができ、その結果、対象物の処理の効率および効果を増加させることができる。
【0071】
さらに、
図5Aにおける例では、第1の電極121および第2の電極122’の両方が、対象物の処理のために必要とされる電磁波透過率を有する液体で構成されており、特に、第2の電極122’は、その上面において、放電部113’に対して液体が曝露されている。このように、電極を構成する液体が放電部113’に曝露されていることにより、放電部113’内のプラズマに液体電極から水分を供給することが可能となり、このことは、プラズマ中の活性種を増加させて対象物の処理の効率および効果を増加させ得る。また、電極を構成する液体をプラズマ中の物質と反応させることにより、新たな材料を生成することや、液体電極自体を浄化処理することも可能である。
【0072】
図5Bは、プラズマ発生装置の第2の変形例110’’のyz平面状の断面図を示す。プラズマ発生装置110’’は、電磁波透過性を有する液体から成る第1の電極121と、第1の電極121の下に位置付けられた誘電体部材131と、固体金属である第2の電極122と、電磁波透過性を有する液体層142とを備える。液体層142中の液体は、第1の電極121の液体と同様に、液体層の下の部材(第2の電極122)および液体を囲む枠体によって保持される。プラズマ発生装置110’’は、プラズマ発生装置110’と同様に、放電部113’’に対して第1の電極121の側と第2の電極122の側とから電磁波照射ユニット310、310’によって電磁波を照射することが可能である。
【0073】
液体層142は、放電部113’’に面しており、液体層142の上面において、液体層142を構成する液体が、放電部113’’内のプラズマに曝露される。プラズマ発生装置110’’は、液体層142中の液体をプラズマ中の物質と反応させることにより、プラズマ発生装置110’と同様に、放電部113’内のプラズマに液体電極から水分を供給することが可能となり、このことは、プラズマ中の活性種を増加させて対象物の処理の効率および効果を増加させ得る。さらに、液体層142の液体をプラズマ中の物質と反応させることにより、新たな材料を生成すること、液体を浄化処理すること、および、プラズマ中の物質と反応させられた液体によって第2の電極122を洗浄することも可能である。さらに、液体層142は、液体供給機構および液体排出機構と接続され、プラズマ発生装置110’’の動作中に液体層142中に新たな液体を流入するように構成されてもよい。この場合、新たな液体が流入されることにより、液体とプラズマとの反応効率をさらに増加させることができる。
【0074】
(プラズマ発生装置を使用して大気圧プラズマおよび電磁波により対象物を処理する方法)
図6は、プラズマ発生装置を使用して大気圧プラズマおよび電磁波により対象物を処理する方法600の例示的フローチャートである。方法600は、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されるプラズマ発生装置110において実施され得る。
【0075】
ステップ601において、プラズマ発生装置の放電部内にガスが供給される。ガスは、プラズマ発生装置のガスの入口を通して供給され得る。
【0076】
ステップ602において、プラズマ発生装置は、誘電体バリア放電により放電部内でガスから大気圧プラズマを発生させるともに、電磁波を第1の電極121を通じて放電部内に照射し、それによって、放電部内に配置された対象物がプラズマおよび電磁波に曝露される。その結果、プラズマ中の活性種、電磁波により励起または活性化させられた活性種、および/または電磁波自体によって、対象物が処理される。
【0077】
方法600によると、プラズマの発生と電磁波の照射とが、プラズマ発生装置の放電部内でほぼ同時に実施される。従って、方法600は、対象物がプラズマおよび電磁波に時間的間隔を経て曝露される場合、ならびに、プラズマ発生装置によって発生した後外部に送達されたプラズマと、電磁波とに対象物が曝露される場合と比較して、プラズマの消失を低減させ、プラズマと電磁波とを組み合わせることによる効果を向上させることができる。これにより、効率的に対象物を処理することが可能となる。放電部内でプラズマが発生した後のガスは出口を通してプラズマ発生装置の外部に排出される。
【0078】
(プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよび紫外線を使用して対象物を処理する方法)
図7は、プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよび紫外線を使用して対象物を処理する方法700の例示的フローチャートである。方法700は、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されるプラズマ発生装置110において実施され得る。
【0079】
ステップ701において、プラズマ発生装置の放電部内にガスが供給される。ガスは、プラズマ発生装置のガスの入口を通して供給され得る。方法700において供給されるガスは、酸素、窒素、炭素等の任意の物質を含有し得る。一例では、供給されるガスは、プラズマ発生装置110内でオゾン等の活性種を発生させることができるように、酸素、空気、および/または水を含有し得る。別の例では、供給されるガスは、例えば、二酸化窒素および一酸化窒素等の活性種を発生させるように、窒素を含有し得る。さらに別の例では、供給されるガスは、オゾン、ギ酸、および過ギ酸等の活性種を発生させるように、二酸化炭素を含有し得る。
【0080】
ステップ702において、プラズマ発生装置は、誘電体バリア放電により放電部内でガスから大気圧プラズマを発生させるともに、紫外線を第1の電極を通じて放電部内に照射し、それによって、放電部内に配置された対象物がプラズマおよび紫外線に曝露される。
【0081】
ステップ703において、紫外線により活性化させられた大気圧プラズマ中の活性種によって、対象物が殺菌され、または対象物の表面が処理される。ステップ703において実施される処理は、例えば、表面硬化、表面活性化、および分子の架橋を含み得る。放電部内でプラズマが発生した後のガスは出口を通してプラズマ発生装置の外部に排出される。
【0082】
例えば、方法700において発生するプラズマは、例えば、オゾンを含み得る。特に、紫外線のうち、約260nm~約300nmの波長を有する紫外線は、オゾンを分解し、より高い酸化力を有する活性種が生成することができる。この活性種によって、プラズマのみを使用する処理より高効率かつ強力な殺菌処理および/または表面処理を実施することができる。また、上述されるように、窒素から発生する二酸化窒素および一酸化窒素、ならびに二酸化炭素から発生するギ酸および過ギ酸等によっても、対象物の殺菌処理および/または表面処理を実施することができる。
【0083】
方法700によって殺菌処理および表面処理される対象物は、特に限定されない。例えば、フッ素樹脂、ゴム、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネイト、生体材料、紙、金属、半導体、ガスであり得る。また、方法700は、プラズマ発生装置における排気ガスの分解処理と組み合わせて実施され得、この場合、排気ガスを分解して生成されたガスを使用して方法700が実施され得る。
【0084】
(プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよび赤外線を使用して対象物の接着のための表面処理を実施する方法)
図8は、プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよび赤外線を使用して対象物の接着のための表面処理を実施する方法800の例示的フローチャートである。方法800は、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されるプラズマ発生装置110において実施され得る。
【0085】
ステップ801において、プラズマ発生装置の放電部内にガスが供給される。ガスは、プラズマ発生装置のガスの入口を通して供給され得る。方法800において供給されるガスは、プラズマにより活性化されることができる任意の物質を含み、例えば、窒素および/または二酸化炭素を含有し得る。ガスはさらに、水蒸気を含有し得る。窒素および/または二酸化炭素に水蒸気を混合させたガスを使用することにより、後述されるステップ803における表面処理の効率を向上させることができる。
【0086】
ステップ802において、プラズマ発生装置は、放電部内に配置された対象物に第1の電極を通じて赤外線を照射することによって、対象物を加熱するとともに、誘電体バリア放電により放電部内でガスからプラズマを発生させ、対象物をプラズマに曝露する。
【0087】
ステップ803において、プラズマによって対象物の表面が処理される。赤外線によって対象物の表面が加熱されることにより、対象物の表面処理の効率が向上させられ、その結果、対象物の接着性をさらに向上させることができる。放電部内でプラズマが発生した後のガスは出口を通してプラズマ発生装置の外部に排出される。
【0088】
別の実施形態では、方法800は、赤外線でなくミリ波を使用して実施され得る。
【0089】
(プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよびレーザを使用して対象物の局所的処理を実施する方法)
図9は、プラズマ発生装置において大気圧プラズマおよびレーザを使用して対象物の局所的処理を実施する方法900の例示的フローチャートである。方法900は、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されるプラズマ発生装置110において実施され得る。
【0090】
ステップ901において、プラズマ発生装置の放電部内にガスが供給される。ガスは、プラズマ発生装置のガスの入口を通して供給され得る。
【0091】
ステップ902において、プラズマ発生装置は、誘電体バリア放電により放電部内でガスからプラズマを発生させるとともに、放電部内に配置された対象物の第1の部分に第1の電極を通じてレーザを照射することによって、対象物の第1の部分の表面処理を実施する。これにより、放電部内のプラズマのうちレーザが照射された第1の部分の周囲のプラズマ中の物質のみが活性化させられ、第1の部分の表面処理を高効率で実施することができる。
【0092】
ステップ903において、プラズマ発生装置のレーザ照射ユニットが、第1の電極に沿って移動させられる。これにより、レーザの照射対象が対象物の第1の部分から第2の部分に切り替えられる。
【0093】
ステップ904において、プラズマ発生装置は、誘電体バリア放電により放電部内でガスからプラズマを発生させるとともに、放電部内に配置された対象物の第2の部分に第1の電極を通じてレーザを照射することによって、対象物の第2の部分の表面処理を実施する。これにより、放電部内のプラズマのうちレーザが照射された第2の部分の周囲のプラズマ中の物質のみが活性化させられ、第2の部分の表面処理を高効率で実施することができる。
【0094】
方法900によれば、プラズマ中にレーザを照射してプラズマ中の物質を局所的に活性化させることにより、局所的な表面処理を実施することができる。これは、例えば、複雑な表面形状を有する対象物(例えば、粗い表面形状を有する対象物)または特定の部分のみの処理が要求される対象物の表面処理を行うことにおいて有利であり得る。放電部内でプラズマが発生した後のガスは出口を通してプラズマ発生装置の外部に排出される。
【0095】
なお、方法900では、ステップ903において、第1の電極に沿ってレーザ照射ユニットを移動させるように説明されたが、レーザの照射対象を対象物の第1の部分から第2の部分に切り替える方法はこれに限定されない。例えば、レーザ照射ユニットが第1の電極に対して固定され、対象物の第1の部分から第2の部分に及ぶ複数のLEDを備えるLEDアレイである場合、点灯させられるLEDを切り替えることによってステップ903が実施される。
【0096】
(プラズマ発生装置においてレーザを使用してプラズマ中の活性種を測定する方法)
本開示に係るプラズマ発生装置は、プラズマ自体を電磁波によって処理することも可能である。プラズマを電磁波によって処理する方法の一例が、以下に示される。
【0097】
図10は、プラズマ発生装置においてレーザを使用してプラズマ中の活性種を測定する方法1000の例示的フローチャートである。方法1000は、例えば、
図4Aおよび
図4Bに示されるプラズマ発生装置110において実施され得る。
【0098】
ステップ1001において、プラズマ発生装置の放電部内にガスが供給される。ガスは、プラズマ発生装置のガスの入口を通して供給され得る。
【0099】
ステップ1002において、誘電体バリア放電により放電部内でガスからプラズマを発生させるとともに、放電部内に配置された第1の電極を通じてレーザを照射することによって、プラズマ中の活性種を励起し、発光させる。プラズマ中の活性種には、プラズマ発生時には発光状態にないものも存在し得る。このような活性種にレーザを照射することにより、活性種を励起し、発光させることが可能である。
【0100】
ステップ1003において、発光した活性種が、第1の電極を通じて測定される。活性種の測定は、例えば、分光器を使用した分光分析により測定され得る。
【0101】
方法1000によれば、プラズマ発生時には発光しないプラズマ中の活性種を発光させることによって、その存在および/またはその含有量を検出することができる。
【0102】
プラズマ処理方法の別の例として、排気ガスを分解することもできる。例えば、排気ガスがプラズマ発生装置に導入され、プラズマ発生装置は、排気ガスをプラズマ発生装置の放電部においてプラズマ化する。プラズマ化された排気ガスに対してさらに紫外線を照射することにより、排気ガスを分解し、毒性が低減されたガスを生成することができる。排気ガスの例は、窒素酸化物(NOX)であり得る。排気ガスを分解して生成されたガスは、プラズマ発生装置内でさらに対象物を処理するために使用されることもできる。
【0103】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、これらの実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本開示の具体的な好ましい実施形態の記載から、本開示の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、プラズマと電磁波とを使用して対象物を効率的に処理することができる方法およびシステムを提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0105】
1 プラズマ発生源
2 電磁波発生源
10 プラズマおよび電磁波を同時に使用するためのシステム
100 プラズマ発生部
200 電磁波発生部
300 電磁波照射部
400 ガス供給源
500 電源