(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005792
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子機器、電力伝送システム、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20230111BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230111BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/80
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107973
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河合 克敏
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中舎 朋之
(57)【要約】
【課題】無線給電において、移動する受電側に安定した電力を供給すること。
【解決手段】例えば、電子機器は、給電電波を送信する送信部と、自機に対して相対的に移動する受電装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、前記受電装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶する記憶部と、前記受電装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択する制御部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電電波を送信する送信部と、
自機に対して相対的に移動する受電装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、
前記受電装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶する記憶部と、
前記受電装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択する制御部と、を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記記憶部は、前記受電装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に受信した前記規定信号の受信応答ベクトル情報を記憶し、
前記制御部は、前記受電装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、前記送信ウェイト情報と受信した前記規定信号の前記受信応答ベクトル情報とに基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択する、電子機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子機器において、
前記送信ウェイト情報は、送電時までのタイムラグに基づいて算出された情報を含む、電子機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記受電装置の移動は、回転運動を含む、電子機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記受電装置の移動は、周期運動を含む、電子機器。
【請求項6】
請求項2に記載の電子機器において、
前記受信応答ベクトル情報は、複数のアンテナで受信した際に算出される伝搬路のチャネル特定を複数のアンテナ分並べてベクトル化したものである、電子機器。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記制御部は、前記規定信号から算出されたドップラシフトに基づいて、前記受電装置の移動速度を推定する、電子機器。
【請求項8】
電子機器と、
移動装置によって移動され、前記電子機器から受信した給電電波によって給電される受電装置と、
を備え、
前記電子機器は、
前記給電電波を送信する送信部と、
自機に対して相対的に移動する前記受電装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、
前記移動装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶する記憶部と、
前記受電装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択する制御部と、を備え、
前記受電装置は、
前記規定信号を送信しかつ前記電子機器から受信した前記給電電波を電力に変換する受電制御部と、
変換した電力によって充電するバッテリと、
を備える電力伝送システム。
【請求項9】
給電電波を送信する送信部と、
自機に対して相対的に移動する移動装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、
を備える電子機器が、
前記移動装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶部に記憶すること、
前記移動装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択すること、
を含む制御方法。
【請求項10】
給電電波を送信する送信部と、
自機に対して相対的に移動する移動装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、
を備える電子機器に、
前記移動装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶部に記憶すること、
前記移動装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択すること、
を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子機器、電力伝送システム、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、可動体によって可動する電子デバイスは、ワイヤレス給電を用いるものがある。特許文献1には、指向性アンテナを有する第1無線機と、第1無線機からの給電電波により駆動される第2無線機との間の無線給電に関する制御を行うシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術は、例えば、無線機間に存在する物体の影響によるフェージングの影響を抑制しているが、可動体に設けられた受電装置に給電する場合、受電装置に給電電波を追従させることが困難である。このため、従来技術には、無線給電において、移動する受電側に安定した電力を供給することに改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様の1つに係る電子機器は、給電電波を送信する送信部と、自機に対して相対的に移動する受電装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、前記受電装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶する記憶部と、前記受電装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択する制御部と、を備える。
【0006】
態様の1つに係る電力伝送システムは、電子機器と、移動装置によって移動され、前記電子機器から受信した給電電波によって給電される受電装置と、を備え、前記電子機器は、前記給電電波を送信する送信部と、自機に対して相対的に移動する前記受電装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、前記移動装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶する記憶部と、前記受電装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択する制御部と、を備え、前記受電装置は、前記規定信号を送信しかつ前記電子機器から受信した前記給電電波を電力に変換する受電制御部と、変換した電力によって充電するバッテリと、を備える。
【0007】
態様の1つに係る制御方法は、給電電波を送信する送信部と、自機に対して相対的に移動する移動装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、を備える電子機器が、前記移動装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶部に記憶すること、前記移動装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択すること、を含む。
【0008】
態様の1つに係る制御プログラムは、給電電波を送信する送信部と、自機に対して相対的に移動する移動装置から送信された電波に含まれる規定信号を受信する受信部と、を備える電子機器に、前記移動装置の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶部に記憶すること、前記移動装置が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている前記送信ウェイト情報に基づいて、前記給電電波の前記送信ウェイト情報を選択すること、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電子機器を利用したワイヤレス電力伝送を行うシステムの概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る送電装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る受電装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る受電装置の回転体による移動の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、受信応答ベクトルと送信ウェイト情報との関係を示すウェイトデータの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、第1回転速度で回転する受電装置の位置と送電時の電力分布との関係に対応するウェイトデータの一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2回転速度で回転する受電装置の位置と送電時の電力分布との関係に対応するウェイトデータの一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る送電装置が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、実施形態に係るシステムのシーケンスの一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係るシステムの動作の他の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願に係る電子機器、電力伝送システム、制御方法及び制御プログラム等を実施するための複数の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下の説明において、同様の構成要素について同一の符号を付すことがある。さらに、重複する説明は省略することがある。
【0011】
図1は、実施形態に係る電子機器を利用したワイヤレス電力伝送を行うシステムの概要を説明するための図である。
図1に示すシステム1は、例えば、マイクロ波伝送型(空間伝送型)のワイヤレス電力伝送が可能なワイヤレス電力伝送システムを含む。ワイヤレス電力伝送は、例えば、ケーブルやプラグを用いることなく、電力を伝送することが可能な仕組みである。マイクロ波伝送型のシステム1は、エネルギー伝送として電波(マイクロ波)を使用するため、周波数を狭帯域かつ無変調波を使用する。システム1は、例えば、複数の周波数帯で電力を伝送する。複数の周波数帯は、例えば、日本では、920MHz、2.4GHz、5.7GHz等を含む。本実施形態では、システム1は、状況に適した給電効率の向上及び安全性の確保を両立することを可能とする。システム1は、例えば、宇宙太陽光発電等に適用することができる。
【0012】
図1に示す一例では、システム1は、送電装置10と、受電装置20と、を備える。送電装置10及び受電装置20は、閉鎖空間600に設けられている。システム1を構成する送電装置10などの各装置は、本実施形態にかかる電子機器の一態様に含まれるとしてもよい。閉鎖空間600は、例えば、移動装置30が設けられた空間を含む。移動装置30は、受電装置20が設けられ、該受電装置20を移動させる装置である。
図1に示す一例では、移動装置30は、回転体31と、回転軸32を有する。回転体31は、円盤状に形成されている、回転軸32は、図示しない駆動装置によって回転されることで、一端側に固定された回転体31を回転させる。移動装置30は、回転体31を回転することで、受電装置20を回転運動させる。すなわち、移動装置30は、回転体31を回転させることで、受電装置20の位置を変化させる。システム1は、送電装置10が非回転側であり、受電装置20が回転側である。なお、システム1は、開放された空間で用いられてもよい。移動装置30としては、旋盤加工装置、ボール盤加工装置、フライス盤加工装置、マシニングセンタ(machining center)、NC工作機械、Computerized Numerical Control(CNC)工作装置などの構成要素を含むとしてもよい。
【0013】
送電装置10は、システム1において、ワイヤレスにより電力を送電する装置である。送電装置10は、給電電波を受電装置20に送電可能な装置である。送電装置10は、放射する給電電波が受電装置20の移動範囲に向かうように、閉鎖空間600に設けられている。送電装置10は、電子機器の一例である。
【0014】
受電装置20は、システム1において、給電電波を受信して電力を得る被給電装置である。受電装置20は、例えば、IoT(Internet of Things)センサ、スマートフォン、タブレット端末、ノート型パーソナル・コンピュータ、ドローン、電気自動車、電動自転車、ゲーム機等の移動装置30によって位置が変化する各種装置を含む。本実施形態では、受電装置20は、IoTセンサである場合について説明する。
【0015】
図1に示す一例では、受電装置20は、回転体31の回転によってインデックスT0、インデックスT1、インデックスT2の順序で、回転体31の縁に沿った円周軌道上を移動している。インデックスは、例えば、時間、位置、角度等を含む。
図1では、受電装置20は、インデックスT2の位置を移動しており、インデックスT0及びインデックスT1の位置が過去に存在した位置を示している。受電装置20は、送電装置10との間で定められた規定信号100を送信する。規定信号100は、例えば、ビーコン、パイロット信号等を含む。受電装置20は、例えば、予め設定された送信周期で規定信号100を送信できる。受電装置20は、規定信号100を含む電波を放射することで、規定信号100を送信できる。
【0016】
送電装置10は、回転センサ40と電気的に接続されている。回転センサ40は、例えば、回転体31の回転速度、回転量、回転の有無等を検出し、検出結果を送電装置10に供給できる。送電装置10は、回転センサ40の検出結果に基づいて、受電装置20の移動量、移動位置等を推定する。
【0017】
送電装置10は、受電装置20から規定信号100を受信すると、当該規定信号100に基づいて受電装置20の受信応答ベクトルを推定する。受信応答ベクトルは、複数のアンテナ素子11Aで受信した際に算出される伝搬路のチャネル特性を、複数のアンテナ素子11Aの数分並べてベクトル化したものであり、到来する方向や電波の反射によって異なる値になる。伝送路は、送電装置10と受電装置20との間で電波を伝送する空間を含む。送電装置10は、推定した受電装置20の受信応答ベクトルと回転体31の回転状態とに基づいて、移動した受電装置20に対する給電電波の送信ウェイト(重み係数)を選択する。送信ウェイトは、アンテナ11の指向性情報である。送信ウェイト情報は、例えば、特定の受電装置20への指向性を有する信号を生成するための送信ウェイトベクトルを示す情報である。送電装置10は、複数の送信ウェイト情報の中から受電装置20の移動速度に応じた送信ウェイト情報を選択し、該送信ウェイト情報が示す送信ウェイトに基づいて給電電波200を放射する。送電装置10は、インデックスT0、インデックスT1、インデックスT2の順序で、給電電波200を受電装置20の移動先の各々に向けて放射する。
【0018】
受電装置20は、受信した給電電波200を直流電流に変換し、この直流電流を利用して充電する。受電装置20は、充電した電力によって動作し、無線通信装置50との間で無線通信を行う。受電装置20は、情報を収集し、収集した情報を無線通信装置50に提供する。
【0019】
例えば、移動装置30が回転体31を低速回転、高速回転等の複数の異なる速度で回転(移動)する場合、送電装置10は、受電装置20からの規定信号100に応じて給電電波の指向性を制御すると、給電電波200を受電装置20に追従させることが困難である。このため、実施形態に係る送電装置10は、移動装置30によって移動される受電装置20の移動に追従して給電電波200を送電することが可能な技術を提供する。
【0020】
図2は、実施形態に係る送電装置10の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、送電装置10は、アンテナ11と、送信信号生成部12と、送信部13と、受信部14と、記憶部15と、制御部16と、を備える。制御部16は、送信信号生成部12、送信部13、受信部14、記憶部15等と電気的に接続されている。本実施形態では、送電装置10は、アンテナ11が4つのアンテナ素子11Aを備える場合について説明するが、アンテナ素子11Aの数はこれに限定されない。
【0021】
アンテナ11は、指向性制御(ビームフォーミング)が可能な構成になっている。アンテナ11は、複数のアンテナ素子11Aを備えたアンテナアレイとなっている。アンテナ11は、例えば、複数のアンテナ素子11Aのそれぞれが同じ電波を放射し、それぞれの位相と電力強度を調整することで、特定の方向では電波を強め、別の方向では打ち消し合って弱めることが可能な構成になっている。アンテナ11は、送信信号を含む電波を放射し、受電装置20からの信号を含む電波を受信する。アンテナ11は、受信した信号を受信部14に供給する。
【0022】
送信信号生成部12は、受電装置20に送電する電流を電波に変換した給電用の送信信号を生成する。送信信号は、電力を供給可能な電波を送信するための信号である。送信信号生成部12は、電力源から電流を伝送周波数の電波に変換して送信信号を生成する。電力源は、例えば、商用電源、直流電源、バッテリ等を含む。送信信号生成部12は、生成した送信信号を送信部13に供給する。
【0023】
送信部13は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aと電気的に接続されている。送信部13は、給電用の送信信号を含む電波(給電電波)等をアンテナ11から放射させる。送信部13は、複数のアンテナ素子11Aで形成可能なビームに対応したウェイトを適用することで、電波を複数のアンテナ素子11Aから特定の方向に放射させる。送信部13は、制御部16が指示したウェイトを複数のアンテナ素子11Aに適用する。
【0024】
受信部14は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aと電気的に接続されている。受信部14は、アンテナ11を介して受信した受電装置20からの電波から受信信号を抽出する。受信信号は、例えば、上述した規定信号100等を含む。受信部14は、抽出した受信信号を制御部16等に供給する。
【0025】
記憶部15は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶部15は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的な記憶媒体を含んでよい。記憶部15は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部15は、RAMなどの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0026】
記憶部15は、制御プログラム15A、ウェイトデータ15B等を記憶できる。制御プログラム15Aは、送電装置10の各種動作に関する処理を実現するための機能をそれぞれ提供できる。制御プログラム15Aは、ワイヤレス電力伝送に関する各機能を提供できる。ウェイトデータ15Bは、例えば、複数の指向性パターンごとに、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aから放射する信号の振幅と位相を調整するための複数のウェイト(重み係数)を示すデータを有する。ウェイトデータ15Bは、例えば、送信ウェイト情報、受信応答ベクトル情報等の情報を含む。送信ウェイト情報は、例えば、移動装置30の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイトを示す情報を含む。受信応答ベクトル情報は、例えば、規定信号100に基づいて推定した受電装置20の受信応答ベクトル(端末到来方向)を示す情報を含む。ウェイトデータ15Bの一例については、後述する。
【0027】
制御部16は、1又は複数の演算装置を含む。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System-on-a-Chip)、MCU(Micro Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびコプロセッサを含むが、これらに限定されない。制御部16は、制御プログラム15Aを演算装置に実行させることにより、送電装置10の各種動作に関する処理を実現する。制御部16は、制御プログラム15Aにより提供される機能の少なくとも1部を専用のIC(Integrated Circuit)により実現してもよい。
【0028】
制御部16は、制御プログラム15Aを実行することで、アンテナ指向性制御を行う。例えば、制御部16は、移動装置30の移動が所定速度以下の速度を含む場合に算出した送信ウェイト情報を記憶部15に記憶する。制御部16は、移動装置30が所定速度より大きい速度で移動している場合に、記憶されている送信ウェイト情報に基づいて、給電電波の送信ウェイト情報を選択する。制御部16は、受電装置20の移動が所定速度以下の速度を含む場合に受信した規定信号100の受信応答ベクトル情報を記憶部15に記憶する。制御部16は、規定信号100の受信応答ベクトルから送信ウェイト情報を生成する。送信ウェイト情報の生成方法は、例えば、MIMOで用いられるZF(Zero-Forcing)アルゴリズム、MMSE(Minimum Mean Square Error)アルゴリズム等を用いることができる。制御部16は、受電装置20が所定速度より大きい速度で移動している場合に、送信ウェイト情報と受信した規定信号100の受信応答ベクトルとに基づいて、給電電波の送信ウェイト情報を選択する。制御部16は、送信ウェイト情報に基づいて給電電波の指向性を制御する。
【0029】
以上、本実施形態に係る送電装置10の機能構成例について説明した。なお、
図2を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る送電装置10の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る送電装置10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0030】
図3は、実施形態に係る受電装置20の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、受電装置20は、アンテナ21A,21Bと、受電制御部22と、バッテリ23と、センサ部24と、信号送受信部25と、を備える。
【0031】
アンテナ21Aは、受電制御部22と電気的に接続されている。アンテナ21Aは、例えば、規定信号100を含む電波を放射し、送電装置10からの信号を含む電波を受信する。アンテナ21Aは、受信した電波を受電制御部22に供給する。
【0032】
アンテナ21Bは、信号送受信部25と電気的に接続されている。アンテナ21Bは、例えば、信号送受信部25の制御に応じて、センサ部24で検出した情報を含むセンサデータを送信する。アンテナ21Bは、無線通信装置50から受信した信号を信号送受信部25に供給する。
【0033】
受電制御部22は、規定信号100を生成し、該規定信号100を含む電波をアンテナ21に放射させる。受電制御部22は、所定のタイミングで規定信号100を送信させる。所定のタイミングは、例えば、一定時間が経過したタイミング、指定されたタイミング等を含む。受電制御部22は、規定信号100とは異なる信号を生成する構成としてもよい。
【0034】
受電制御部22は、バッテリ23と電気的に接続されている。受電制御部22は、例えば、無線受電装置を有する。受電制御部22は、アンテナ21Aで受信した電波を直流電流に変換し、この直流電流を利用してバッテリ23を充電する制御を行う。受電制御部22は、例えば、公知である整流回路を用いて、電波を直流電流に変換する。
【0035】
バッテリ23は、充電可能な電池を含む。バッテリ23は、例えば、Qi(ワイヤレス給電の国際標準規格)に対応したバッテリを含む。バッテリ23は、蓄電された電力を受電装置20において電力を必要とする各部等に供給できる。バッテリ23は、センサ部24及び信号送受信部25と電気的に接続されており、センサ部24及び信号送受信部25等に電力を供給する。
【0036】
センサ部24は、複数のセンサを含む。例えば、複数のセンサは、加速度センサ、方位センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含む。加速度センサは、移動装置30に働く加速度の方向及び大きさを検出できる。方位センサは、地磁気の向きを検出できる。ジャイロセンサは、移動装置30の角度及び角速度を検出できる。センサ部24は、信号送受信部25と電気的に接続されている。センサ部24は、検出結果を示す情報を信号送受信部25に供給する。
【0037】
信号送受信部25は、例えば、無線通信装置と制御装置とを有する。信号送受信部25は、センサ部24が検出した検出結果を示すセンサ信号を含む電波をアンテナ21Bに放射させる。信号送受信部25は、アンテナ21Bを介して受信した信号に基づいて、データ処理、データ取得、データ管理等を実行する。
【0038】
以上、本実施形態に係る受電装置20の機能構成例について説明した。なお、
図3を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る受電装置20の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る受電装置20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0039】
図4は、実施形態に係る無線通信装置50の構成の一例を示す図である。
図4に示すように、無線通信装置50は、アンテナ51と、通信部52と、信号処理部53と、管理部54と、を備える。
【0040】
アンテナ51は、通信部52と電気的に接続されている。アンテナ51は、例えば、受電装置20からの電波を受信し、信号処理部53からの信号を含む電波を放射する。アンテナ51は、受信した電波を通信部52に供給する。
【0041】
通信部52は、アンテナ51を介して受信した受電装置20からの電波から受信信号を抽出する。受信信号は、例えば、上述したセンサ信号等を含む。通信部52は、信号処理部53と電気的に接続されている。通信部52は、抽出した受信信号を信号処理部53に供給する。
【0042】
信号処理部53は、管理部54と電気的に接続されている。信号処理部53は、受信信号からセンサ信号を抽出し、センサ信号が示すセンサ情報を管理部54に供給する。
【0043】
管理部54は、センサ情報を受電装置20に関連付けて管理する。管理部54は、例えば、センサ情報に基づいてデータベースを構築し、該データベースに基づいて各種情報を提供する。管理部54は、例えば、受電装置20から受信したセンサ情報を、インターネットを介してサーバ装置に提供する。
【0044】
以上、本実施形態に係る無線通信装置50の機能構成例について説明した。なお、
図4を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る無線通信装置50の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る無線通信装置50の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0045】
図5は、実施形態に係る受電装置20の回転体31による移動の一例を説明するための図である。
図6は、受信応答ベクトルと送信ウェイト情報との関係を示すウェイトデータ15Bの一例を示す図である。
図7は、第1回転速度で回転する受電装置20の位置と送電時の電力分布との関係に対応するウェイトデータ15Bの一例を説明するための図である。
図8は、第2回転速度で回転する受電装置20の位置と送電時の電力分布との関係に対応するウェイトデータ15Bの一例を説明するための図である。
【0046】
図5に示すように、移動装置30は、回転軸32を回転中心として、回転体31を第1回転速度と第2回転速度とに切り替えて回転方向30Rに回転させることで、受電装置20を回転体31の円周に沿って移動させる。第1回転速度は、所定速度よりも低速の回転速度である。第1回転速度は、第2回転速度よりも低速の回転速度である。第1回転速度は、送電装置10が受信応答ベクトル、送信ウェイト等を推定可能な回転速度が設定されている。第2回転速度は、送電装置10が受信応答ベクトル、送信ウェイト等の推定が困難あるいは不能な回転速度が設定されている。第1回転速度及び第2回転速度は、任意に異なる回転速度を設定することができる。
【0047】
図5に示す一例では、受電装置20は、移動装置30の第1回転速度において、1周期(1回転)におけるインデックス(時間)T0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7のそれぞれでは、位置P0,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7に位置する。位置P0,P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7は、回転体31における受電装置20の移動軌跡を示している。
【0048】
送電装置10は、移動装置30が第1回転速度で受電装置20を回転移動させている場合、受電装置20から受信した規定信号100に基づいて受信応答ベクトルを推定する。送電装置10は、インデックスT0,T1,T2,T3,T4,T5,T6,T7のそれぞれに対応する受信応答ベクトルRV0,RV1,RV2,RV3,RV4,RV5,RV6,RV7を推定する。送電装置10は、推定した受信応答ベクトルRV0,RV1,RV2,RV3,RV4,RV5,RV6,RV7に基づいて、複数のアンテナ素子11Aに対応した送信ウェイト情報SV0,SV1,SV2,SV3,SV4,SV5,SV6,SV7を推定する。送電装置10は、例えば、公知であるパイロット信号から送信ウェイトを推定する推定方法を用いて、送信ウェイト情報を推定する。送電装置10は、自機から受電装置20までのタイムラグを考慮して、送信ウェイト情報SV0,SV1,SV2,SV3,SV4,SV5,SV6,SV7を推定できる。例えば、送電装置10は、自機から受電装置20までの距離、回転体31の回転速度、回転軸32から受電装置20までの距離等の情報に基づいて、送信ウェイト情報SV0,SV1,SV2,SV3,SV4,SV5,SV6,SV7を推定する。
【0049】
図6に示す一例では、送電装置10は、インデックスTと受信応答ベクトルRVと送信ウェイト情報SVとを関連付けたウェイトデータ15Bを記憶部15に記憶する。インデックスTは、1周期における異なるインデックス(時間)を示しており、1周期を8等分した値になっている。例えば、回転速度が一定である場合、同じインデックスTにおける規定信号100を複数回受信する。このため、送電装置10は、平均化などにより受信応答ベクトルRV及び送信ウェイトベクトルを更新することができる。また、送電装置10は、1周期分の規定信号100が所定のインデックスTの数より少ない場合、内挿補間により、不足するインデックスTを埋めてもよい。受信応答ベクトルSVは、上述した受信応答ベクトル(複数のアンテナ素子11Aで受信した際に算出される伝搬路のチャネル特性を、複数のアンテナ素子11Aの数分並べてベクトル化したもの)である。
【0050】
送電装置10は、テーブルとして1周期分のウェイトデータ15Bを用意し、逐次更新する。1周期に必要なデータ数は、送信アンテナ指向性のビーム幅を考慮して決定する。例えば、ウェイトデータ15Bは、細いビームの場合は多くのデータが必要であり、太いビームの場合は少なくてもよい。
【0051】
図7に示すように、送電装置10が規定信号100を受信したときに、受電装置20がインデックスT0の位置P0である場合、ウェイトデータ15Bは、送電装置10の給電電波の分布M0が受電装置20を含む回転体31の領域となるように、送信ウェイト情報SV0が設定されている。送電装置10が規定信号100を受信したときに、受電装置20がインデックスT1の位置P1である場合、ウェイトデータ15Bは、送電装置10の給電電波の分布M1が受電装置20を含む回転体31の領域となるように、送信ウェイト情報SV1が設定されている。送電装置10が規定信号100を受信したときに、受電装置20がインデックスT2の位置P2である場合、ウェイトデータ15Bは、送電装置10の給電電波の分布M2が受電装置20を含む回転体31の領域となるように、送信ウェイト情報SV2が設定されている。送電装置10が規定信号100を受信したときに、受電装置20がインデックスT3の位置P3である場合、ウェイトデータ15Bは、送電装置10の給電電波の分布M3が受電装置20を含む回転体31の領域となるように、送信ウェイト情報SV3が設定されている。ウェイトデータ15Bは、他のインデックスT4、T5,T6,T7についても同様に送信ウェイト情報SV4、SV5,SV6,SV7が設定されている。
【0052】
移動装置30が第2回転速度で受電装置20を回転させている場合、送電装置10は、第2回転速度よりも低速な第1回転速度に対応したウェイトデータ15Bを用いると、
図7に示す送電装置10が送電した給電電波の分布M0,M1等のように、受電装置20の位置から遅延する方向にずれた回転体31の領域になる。このため、送電装置10は、移動装置30が第2回転速度で受電装置20を回転させている場合、受信した規定信号100から受信応答ベクトルを計算し、送電時までのタイムラグを考慮して送信ウェイト情報SVをウェイトデータ15Bから選択する。これにより、送電装置10は、第1回転速度に対応したウェイトデータ15Bを用いて、第1回転速度及び第2回転速度において、安定した電力をワイヤレスで供給することができる。
【0053】
図9は、実施形態に係る送電装置10が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9に示す処理手順は、送電装置10の制御部16が制御プログラム15Aを実行することによって実現される。
図9に示す処理手順は、例えば、アンテナ11で電波を受信した場合、電波を受信するタイミング等に、制御部16によって繰り返し実行される。
【0054】
図9に示すように、送電装置10の制御部16は、受電装置20から規定信号100を受信する(ステップS101)。例えば、制御部16は、アンテナ11で受信した電波から規定信号100を取得する。制御部16は、ステップS101の処理が終了すると、処理をステップS102に進める。
【0055】
制御部16は、規定信号100に基づいて受信応答ベクトルRVを推定する(ステップS102)。例えば、制御部16は、複数のアンテナ素子11Aのそれぞれで受信された規定信号100を公知である受信ウェイトベクトル計算機に付与することで、送信時点での仮想的な受信応答ベクトルRVを推定する。制御部16は、推定した受信応答ベクトルRVを記憶部RVに記憶すると、処理をステップS103に進める。
【0056】
制御部16は、回転センサ40の検出結果を取得する(ステップS103)。例えば、制御部16は、回転センサ40の最新の検出結果を取得し、当該検出結果を受信応答ベクトルRVに関連付けて記憶部15に記憶する。制御部16は、ステップS103の処理が終了すると、処理をステップS104に進める。
【0057】
制御部16は、回転体31が第2回転速度であるか否かを判定する(ステップS104)。例えば、制御部16は、ステップS103で取得した検出結果の回転速度が判定用速度範囲内である場合に、回転体31が第2回転速度であると判定する。例えば、制御部16は、ステップS103で取得した検出結果の回転速度が判定用速度範囲よりも遅い場合に、回転体31が第2回転速度ではないと判定する。
【0058】
制御部16は、回転体31が第2回転速度であると判定した場合(ステップS104でYes)、処理をステップS105に進める。制御部16は、受信応答ベクトルRVと第2回転速度とに基づいて、ウェイトデータ15Bから送信ウェイト情報SVを選択する(ステップS105)。例えば、制御部16は、第2回転速度から送電時までのタイムラグを求め、第1回転速度のウェイトデータ15Bから送信ウェイト情報SVを選択する。例えば、制御部16は、受信応答ベクトルに対応したインデックスTからタイムラグ分だけずらしたインデックスTの送信ウェイト情報SVをウェイトデータ15Bから選択する。制御部16は、ステップS105の処理が終了すると、処理をステップS106に進める。
【0059】
制御部16は、選択した送信ウェイト情報SVに基づいて給電電波を放射する(ステップS106)。例えば、制御部16は、選択した送信ウェイト情報SVが示す送信ウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号を含む給電電波をアンテナ11から放射させる。これにより、制御部16は、給電電波を第2回転速度で回転移動する受電装置20に向けて放射する。制御部16は、ステップS106の処理が終了すると、
図9に示す処理手順を終了させる。
【0060】
また、制御部16は、回転体31が第2回転速度ではないと判定した場合(ステップS104でNo)、回転体31が第1回転速度で回転しているので、処理をステップS107に進める。制御部16は、受信応答ベクトルRVに基づいて送信ウェイト情報SVを推定する(ステップS107)。例えば、制御部16は、受信応答ベクトルRVからインデックスTを推定し、当該インデックスTに対応した自機から受電装置20までの距離、回転体31の回転速度、回転軸32から受電装置20までの距離等の情報を求め、これらの情報に基づいて送信ウェイト情報SVを推定する。制御部16は、ステップS107の処理が終了すると、処理をステップS108に進める。
【0061】
制御部16は、受信応答ベクトルRV及び送信ウェイト情報SVを更新する(ステップS108)。例えば、制御部16は、推定したインデックスTに対応したウェイトデータ15Bの推定した受信応答ベクトルRV及び送信ウェイト情報SVを、今回の処理で推定した受信応答ベクトルRV及び送信ウェイト情報SVに更新する。制御部16は、ステップS108の処理が終了すると、処理をステップS109に進める。
【0062】
制御部16は、更新した送信ウェイト情報SVに基づいて給電電波を放射する(ステップS109)。例えば、制御部16は、選択した送信ウェイト情報SVが示す送信ウェイトを送信部13に設定し、送信信号生成部12が生成した送信信号を含む給電電波をアンテナ11から放射させる。これにより、制御部16は、給電電波を第1回転速度で回転移動する受電装置20に向けて放射する。制御部16は、ステップS109の処理が終了すると、
図9に示す処理手順を終了させる。
【0063】
図10は、実施形態に係るシステム1のシーケンスの一例を示す図である。
図11は、実施形態に係るシステム1の動作の他の一例を説明するための図である。
図10では、受電装置20は移動装置30によって第1回転速度で回転移動していることを前提とする。
図11では、受電装置20は移動装置30によって第2回転速度で回転移動していることを前提とする。
【0064】
図10に示すように、受電装置20は、ワイヤレス給電の送信周期等に応じて、規定信号100を送電装置10に送信する(ステップS11)。これにより、受電装置20は、第1回転速度で回転移動した状態で、アンテナ21から規定信号100を含む電波を放射する。
【0065】
送電装置10は、有線接続された回転センサ40からの情報に基づいて受電装置20の回転速度を推定し、第1回転速度と判定する(ステップS12)。送電装置10は、アンテナ11を介して受信した規定信号100に基づいて送信ウェイト情報を推定する(ステップS13)。送電装置10は、推定結果に基づいてウェイトデータ15Bの受信応答ベクトルRV及び送信ウェイト情報SVを更新する(ステップS14)。送電装置10は、受信応答ベクトルRVに対応する送信ウェイト情報SVに基づいて、給電電波を送電する(ステップS15)。これにより、送電装置10は、給電電波をアンテナ11から第1回転速度で回転移動している受電装置20に向けて放射する。
【0066】
受電装置20は、受信した信号に基づいてバッテリ23を充電する(ステップS16)。例えば、受電装置20は、受信した信号を変換回路等で直流電流に変換し、この直流電流を用いてバッテリ23を充電する。
【0067】
移動装置30は、第1回転速度から第2回転速度に切り替えて、受電装置20の回転移動を継続させる。
【0068】
図11に示すように、受電装置20は、送信周期等に応じて、規定信号100を送電装置10に送信する(ステップS21)。これにより、受電装置20は、第2回転速度で回転移動した状態で、アンテナ21から規定信号100を含む電波を放射する。
【0069】
送電装置10は、有線接続された回転センサ40からの情報に基づいて受電装置20の回転速度を推定し、第2回転速度と判定する(ステップS22)。送電装置10は、アンテナ11を介して受信した受信応答ベクトルRV、第2回転速度及びタイムラグに基づいて、送信ウェイト情報SVをウェイトデータ15Bから選択する(ステップS23)。送電装置10は、選択した送信ウェイト情報SVに基づいて給電電波を送電する(ステップS24)。これにより、送電装置10は、給電電波をアンテナ11から第2回転速度で回転移動している受電装置20に向けて放射する。
【0070】
受電装置20は、受信した信号に基づいてバッテリ23を充電する(ステップS25)。これにより、受電装置20は、第2回転速度で回転移動していても、送電装置10からの給電電波によるバッテリ23の充電を行うことができる。
【0071】
以上のように、システム1では、受電装置20は、移動装置30によって回転した状態で利用されている。この場合、送電装置10は、回転している受電装置20から規定信号100を受信すると、回転の速度に応じた給電電波の送信ウェイト情報を選択することができる。これにより、送電装置10は、受電装置20の移動状態に応じた送信ウェイト情報を用いて給電電波の指向性を制御することができるので、給電電波を移動する受電装置20に追従させることができる。その結果、送電装置10は、無線電力伝送において、移動する受電装置20に対する給電効率を向上させることができる。
【0072】
送電装置10は、受電装置20の移動が所定速度以下の速度を含む場合に受信した規定信号100の受信応答ベクトル情報を記憶する。送電装置10は、受電装置20が所定速度より大きい速度で移動している場合に、送信ウェイト情報と受信した規定信号100の受信応答ベクトルとに基づいて、給電電波の送信ウェイト情報を選択する。これにより、送電装置10は、受電装置20が所定速度よりも大きい速度で移動している場合、所定速度以下の受信応答ベクトル、および送信ウェイト情報を用いるので、処理負担を抑制することができる。その結果、送電装置10は、給電電波を移動する受電装置20に追従させることができるので、給電効率をより一層向上させることができる。
【0073】
送電装置10は、送電時までのタイムラグに基づいて算出された情報を送信ウェイト情報に含めることができる。これにより、送電装置10は、送電時までのタイムラグを考慮することで、給電電波を移動する受電装置20により一層正確に追従させることができる。
【0074】
送電装置10は、受電装置20の移動が回転運動である場合、受電装置20の回転方向を考慮して、給電電波を受電装置20に向けて放射することができる。これにより、送電装置10は、給電電波を移動する受電装置20により一層正確に追従させることができるので、給電効率をより一層向上させることができる。
【0075】
送電装置10は、複数のアンテナで受信した際に算出される伝搬路のチャネル特定を複数のアンテナ分並べてベクトル化した受信応答ベクトルを用いることができる。これにより、送電装置10は、規定信号100が到来する方向や電波の反射によって異なるベクトルを用いることで、受電装置20の移動速度と伝搬環境とを考慮して給電電波を放射することができる。
【0076】
上述したシステム1では、送電装置10は、有線接続された回転センサ40から回転速度に関する情報を得ているが、これに限定されない。例えば、受電装置20が回転移動を続けている場合、送電装置10で受信した規定信号100は、受電装置20の移動速度に応じたドップラシフトが発生する。このため、送電装置10は、ドップラシフトによる周波数オフセットを推定することで、受電装置20の回転速度が推定できるため、回転センサ40を用いなくてもよい。
【0077】
上述したシステム1は、受電装置20が回転移動する場合について説明したが、これに限定されない。システム1は、例えば、受電装置20の移動が周期運動を含んでもよい。周期運動は、例えば、受電装置20が切削工具などに取り付けられて往復移動することを含む。この場合、送電装置10は、周期運動する受電装置20の速度に応じて、受電装置20を追従するように給電電波の指向性を制御すればよい。
【0078】
上述した実施形態では、システム1は、送電装置10が電子機器である場合について説明したが、これに限定されない。電子機器は、例えば、給電用電波を放射可能な給電装置を制御する制御装置、給電装置に内蔵されたコンピュータ等で実現してもよい。また、システム1は、ワイヤレス電力伝送システムである場合について説明したが、これに限定されない。例えば、システム1は、電波伝搬環境で無線通信を行うシステム等に適用することができる。
【0079】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 システム
10 送電装置
11 アンテナ
11A アンテナ素子
12 送信信号生成部
13 送信部
14 受信部
15 記憶部
15A 制御プログラム
15B ウェイトデータ
16 制御部
20 受電装置
21A,21B アンテナ
22 受電制御部
23 バッテリ
24 センサ部
25 信号送受信部
30 移動装置
31 回転体
32 回転軸
40 回転センサ
50 無線通信装置
200 給電電波
600 閉鎖空間