(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057940
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】小型生物捕獲器及びその設置方法
(51)【国際特許分類】
A01M 23/00 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
A01M23/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167703
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】591262827
【氏名又は名称】株式会社シー・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 英武
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA02
2B121BA03
2B121BA05
2B121BA09
2B121BA12
2B121BA41
2B121BA47
2B121BA51
2B121BA58
2B121EA24
(57)【要約】
【課題】小型生物捕獲器とその設置方法を提供する。
【解決手段】この小型生物捕獲器100は、生分解性の材料からなるシートで形成され、底壁203と覆い壁204とを有する枠状をなし、両端部が開口して小型生物入口をなすハウス状本体枠201と、前記ハウス状本体枠の内面に、直接又は粘着シートを介して形成された、小型生物捕獲用の粘着層とを有する捕獲器本体200a、200bを複数備え、前記複数の捕獲器本体200a、200bが、生分解性の材料からなる所定長さの連結紐300で連結されている小型生物捕獲器である。また、この小型生物捕獲器の設置方法は、空中から落下させ、前記連結紐を前記小型生物が生息する木の枝にひっかけることにより、前記小型生物捕獲器を設置する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性の材料からなるシートで形成され、底壁と覆い壁とを有する枠状をなし、両端部が開口して小型生物入口をなすハウス状本体枠と、
前記ハウス状本体枠の内面に、直接又は粘着シートを介して形成された、小型生物捕獲用の粘着層とを有する捕獲器本体を複数備え、
前記複数の捕獲器本体が、生分解性の材料からなる所定長さの連結紐で連結されていることを特徴とする小型生物捕獲器。
【請求項2】
前記ハウス状本体枠は、1枚の前記シートに、折り曲げ部を介して形成された、前記底壁と、前記底壁の一側から延出された前記覆い壁とを有し、前記底壁の他側と、前記覆い壁の延出方向先端部との間に設けられたスリット及び差し込み片からなる係合構造により連結され、前記覆い壁が前記底壁に対して湾曲して枠状に形成されたものからなる、請求項1記載の小型生物捕獲器。
【請求項3】
前記シートに切り込み又はスリットが形成され、この切り込み又はスリットに前記連結紐が係合して連結されている、請求項1又は2記載の小型生物捕獲器。
【請求項4】
前記複数の捕獲器本体を連結する前記連結紐の連結部の長さは、5~200cmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の小型生物捕獲器。
【請求項5】
前記生分解性の材料からなるシートは、生分解性プラスチック、紙、天然繊維、バイオマスプラスチックその他天然由来の素材から選ばれた材料からなる、請求項1~4のいずれか1項に記載の小型生物捕獲器。
【請求項6】
前記生分解性の材料からなる連結紐は、天然繊維からなる紐類、生分解性プラスチックで形成された鎖類、生分解性プラスチックで形成されたワイヤー、木のつる、絹、麻、天然ゴムから選ばれたものからなる、請求項1~5のいずれか1項に記載の小型生物捕獲器。
【請求項7】
前記粘着層は、生分解性の材料からなる、請求項1~6のいずれか1項に記載の小型生物捕獲器。
【請求項8】
前記粘着層は、バイオマス接着剤,天然系接着剤,にかわ、カゼイン、澱粉、天然ゴム、漆から選ばれたものである、請求項7に記載の小型生物捕獲器。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の小型生物捕獲器を空中から落下させ、前記連結紐を前記小型生物が生息する木の枝にひっかけることにより、前記小型生物捕獲器を設置することを特徴とする小型生物捕獲器の設置方法。
【請求項10】
前記小型生物捕獲器を無人航空機に乗せて、空中に搬送して落下させる、請求項9記載の小型生物捕獲器の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹上などに生息するグリーンアノールなどの小型生物捕獲器及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小笠原諸島や、沖縄島などでは、グリーンアノールというトカゲが、ペットとしてあるいは物資輸送に随伴して海外から移入され、繁殖して、在来昆虫の捕食、在来トカゲとの競合が起こり、例えばオガサワラシジミ、オガサワライトトンボ、オガサワラトンボ、シマアカネなどの在来生物が絶滅したりする問題が生じている。
【0003】
グリーンアノールは、樹上に広く分散して生息するため、効率よく駆除することが困難であり、多くの昆虫を絶滅から救うために、その対応策が検討されている。
【0004】
このような小型生物捕獲器の一つとして、下記特許文献1には、1枚のシートの所定の配置に折り曲げ線と切込み線を形成し、折り曲げ線と切込み線を介して折り曲げて底板と両天井板を形成し、ハウス状に組み立ててなる小型生物捕獲器が記載されている。具体的には、折り曲げて形成した底板内面に中間を回避して左右に複数枚積層した粘着したシートを2組設け、底板内面の中間部に粘着シートを取り付けない部分を設け、その部分に結束紐を挿通する孔を穿設する。また、天井板のどちらか一方に係合片、他方に切れ込み部を設けて、係合片、切れ込み部を係合させて、ハウス状の本体枠を形成する。ハウス状本体の両端には、小型生物入口となる開放口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の小型生物捕獲器は、底板の孔に挿通された紐を介して、樹木等に縛り付けて用いられるようになっているが、人が立ち入ることが困難な場所に設置することは出来なかった。例えば、小笠原諸島では、切り立った崖や、道などがない森林など、人が立ち入れない場所や、生態系に悪影響を及ぼすため安易に人が立ち入れない場所も多く存在する。このため、グリーアノールなどの樹上に広く分散して生息する有害生物を駆除することは困難を極めていた。
【0007】
したがって、本発明の目的は、人が立ち入ることが困難な場所でも設置できる小型生物捕獲器及びその設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第一は、生分解性の材料からなるシートで形成され、底壁と覆い壁とを有する枠状をなし、両端部が開口して小型生物入口をなすハウス状本体枠と、ハウス状本体枠の内面に、直接又は粘着シートを介して形成された、小型生物捕獲用の粘着層とを有する捕獲器本体を複数備え、生分解性の材料からなる所定長さの連結紐で連結されていることを特徴とする小型生物捕獲器を提供するものである。
【0009】
本発明の小型生物捕獲器において、前記ハウス状本体枠は、1枚の前記シートに、折り曲げ部を介して形成された、前記底壁と、前記底壁の一側から延出された前記覆い壁とを有し、前記底壁の他側と、前記覆い壁の延出方向先端部との間に設けられたスリット及び差し込み片からなる係合構造により連結され、前記覆い壁が前記底壁に対して湾曲して枠状に形成されたものからなるのが好ましい。
【0010】
また、前記シートに切り込み又はスリットが形成され、この切り込み又はスリットに前記連結紐が係合して連結されていることが好ましい。
【0011】
更に、複数の捕獲器本体を連結する前記連結紐の連結部の長さは、10~100cmであることが好ましい。
【0012】
更に、生分解性の材料からなるシートは、生分解性プラスチック、紙、天然繊維、バイオマスプラスチックから選ばれた材料からなることが好ましい。
【0013】
更にまた、生分解性の材料からなる連結紐は、天然繊維からなる紐類、生分解性プラスチックで形成された鎖類、生分解性プラスチックで形成されたワイヤー、木のつる、絹、麻、天然ゴムから選ばれたものであることが好ましい。
【0014】
更にまた、前記粘着層は、生分解性の材料からなることが好ましい。
【0015】
上記生分解性の材料からなる粘着層は,バイオマス接着剤、天然系接着剤、にかわ、カゼイン、澱粉、天然ゴム、漆から選ばれたものであることが好ましい。
【0016】
本発明の第二は、小型生物捕獲器を空中から落下させ、前記連結紐を前記小型生物が生息する木の枝にひっかけることにより、前記小型生物捕獲器を設置することを特徴とする小型生物捕獲器の設置方法を提供するものである。
【0017】
本発明の小型生物捕獲器の設置方法においては、前記小型生物捕獲器を無人航空機に乗せて、空中に搬送して落下させることが好ましい。また、小型生物捕獲器を空中から落下させる方法としては、崖上から散布する方法も採用できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の捕獲器本体が所定長さの連結紐で連結されているので、例えば林や森の上空から小型生物捕獲器を落下させることによって、連結紐が木の枝に引っ掛かり、小型生物捕獲器を林や森の木の枝に設置することができる。その結果、切り立った崖や、道がない森林など、人が立ち入れない場所でも設置することが可能となる。
【0019】
そして、林や森の木の枝を這い上がる小型生物は、捕獲器本体の小型生物入口からハウス状本体枠に進入し、ハウス状本体枠内の粘着層に粘着して捕獲される。
【0020】
また、ハウス状本体枠及び連結紐は、生分解性の材料からなるので、そのまま放置しても、微生物により分解されて土に帰るので、自然環境に負担をかけにくい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の小型生物捕獲器の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】同小型生物捕獲器のハウス状本体枠のシートを展開した状態で、底壁と覆い壁を示す説明図である。
【
図3】同小型生物捕獲器を底壁側より見た斜視図である。
【
図4】ドローンによって
図1の小型生物捕獲器を運搬する態様を示す説明図である。
【
図5】
図1の小型生物捕獲器を空中から落下させ樹木に引っ掛けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1~3には、本発明の小型生物捕獲器の一実施形態が示されている。
【0023】
図1に示すように、本発明の小型生物捕獲器100は、2つの捕獲器本体200a、200bと、当該2つの捕獲器本体200a、200bを連結する連結紐300とを備えている。捕獲器本体200a、200bは、外枠を構成するハウス状本体枠201を有している。
【0024】
図2を併せて参照すると、ハウス状本体枠201は、この実施形態では、略長方形状をなす1枚のシートで形成されている。このシートには、長辺に対して直角に形成された折り曲げ部202と、折り曲げ部202を境にして一方の領域に形成された底壁203と、他方の領域に形成された覆い壁204とが設けられている。
【0025】
底壁203の長辺方向に沿った長さAは、覆い壁204の長辺方向に沿った長さBよりも短くされており、それによって組み上げた時の開口部209の高さ(
図1のC参照)が、好ましくは3~30mm、より好ましくは10~20mmとなるようにされている。
【0026】
また、シートの長辺方向の長さ(A+B)は、10~30cmが好ましく、15~20cmがより好ましい。更に、シートの短辺方向の長さCは、3~20cmが好ましく、7~15cmがより好ましい。
【0027】
また、覆い壁204は、折り曲げ部202に対向する一辺から突出している略台形状の差し込み片206を有している。底壁203は、折り曲げ部202に対向する、上記一辺対して反対側に位置する他辺と平行に、所定の長さで形成されたスリット205を有している。そして、覆い壁204が折り曲げ部202において底壁203に対して折り曲げられ、かつ、
図3に示されているように、その差し込み片206が底壁203のスリット205に差し込まれて、底壁203に連結される。これにより、
図1及び
図3に示されているように、略半楕円筒状(かまぼこ形)のハウス状本体枠201が構成され、その両端には小型生物が通過できるような、略半楕円状(楕円を長軸に沿って2分割した形状)の開口部209が形成されるようになっている。
【0028】
このように、1枚のシートによって、底壁203と、覆い壁204とで囲まれ、両端に開口部209を有するハウス状本体枠201を簡単に形成することができ、組み立て作業性を向上させることができる。
【0029】
また、開口部209を上記のような形状とすることにより、グリーアノールのような小型生物は進入できるが、鳥などの少し大きな生物は進入できないようにして、保護すべき生物まで捕獲されてしまうことを防止できる。このような目的から、開口部209の底壁203に対する最大高さC(
図1参照)は、3~30mmが好ましく、10~20mmがより好ましい。
【0030】
再び
図2を参照すると、底壁203には、ハウス状本体枠201の一対の開口部209のそれぞれの縁を構成する箇所から始まる一対の略L字状のスリット210a、210bが形成されている。
図2において、一方のスリット210aは、一方の開口部209の底壁203の端縁中央から折り曲げ部202と平行に所定長さ切り込まれた部分211と、その先端からほぼ直角に曲がって折り曲げ部202方向に更に所定長さ切り込まれた部分212と、その先端に形成された嵌合孔213とで構成され、全体としてL字状をなすように形成されている。同様に、他方のスリット210bは、他方の開口部209の底壁203の端縁のやや折り曲げ部202側に偏心位置から、折り曲げ部202と平行に所定長さ切り込まれた部分211と、その先端からほぼ直角に曲がって折り曲げ部202とは反対方向に更に所定長さ切り込まれた部分212と、その先端に形成された嵌合孔213とで構成され、同じく全体としてL字状をなすように形成されている。
【0031】
図2,3に示すように、連結紐300は、両端部に結び目301が設けられており、それぞれの端部を、対応する捕獲器本体200a、200bの一方のスリット210aに外側から挿入され、結び目301を嵌合孔213に係止されている。また、嵌合孔213から引き出された端部は、底面203の外側を通って他方のスリット210bに挿入され、該スリット210bの嵌合孔213を通して開口部209から引き出されている。このような態様で、連結紐300の一方の端部に一方の捕獲器本体200aが連結され、他方の端部に他方の捕獲器本体200bが連結されている。このように、スリット210a、210bに連結紐300を挿入して係止させるだけで連結紐300を連結できるので、組み立て作業性を向上させることができる。
【0032】
なお、スリット210a、210bの形状は、L字型に限らず、途中に曲折部を有する形状であればよい。曲折部によって、連結紐300が抜けにくくすることができる。
【0033】
また、捕獲器200a、200bを連結する連結紐300の連結部の長さ(捕獲器200a、200bどうしの間を結ぶ長さ)は、5~200cmであることが好ましく、20~60cmであることが更に好ましい。このような長さとすることにより、後述するように、小型生物捕獲器100を空中から落下させたとき、木の枝等に連結紐300が引っ掛かりやすくすると共に、小動物が連結紐300を伝って、小型生物入口からハウス状本体枠に侵入しやすくすることができる。
【0034】
なお、連結紐300が短すぎる場合には、引っ掛かる木の枝が限定されるので、木の枝に引っ掛からないで落下してしまう可能性がある。また、連結紐300が長すぎる場合には、無人飛行機で運搬する際に連結紐が絡まりやすくなり、小型生物捕獲器を木に設置した後も、連結紐が切れやすくなったり、小型生物捕獲器が風に飛ばされやすくなったりすることがある。連結紐300の長さは、設置する方法により適した長さを用いる。
【0035】
再び
図2を参照すると、ハウス状本体枠201を構成するシートの内面中央部には、粘着層207が設けられている。この実施形態では、粘着層207は、シートの内面に粘着材を直接塗布して形成されており、シートの外周から所定距離を設けて、底壁203から覆い壁204に亘る長方形の領域に設けられている。粘着層207は、小型生物が侵入して粘着層207に接触すると、小型生物が粘着層207にくっついて動けなくなるような粘着力を有している。この実施形態では、粘着層207は、底壁203から覆い壁204に亘る長方形の領域に設けられているが、例えば底壁203にのみ設けられていても良いく、粘着層207を設ける領域は、ハウス状本体枠201内面の小型生物が接触しやすい位置にあれば、特に限定されない。
【0036】
粘着層207は、使用前の状態で、その表面全体に剥離可能に付着している剥離シート208によって、保護されている。使用時に、剥離シート208を粘着層207から剥離することにより、粘着層207が露出し、後述するようにハウス状本体枠207に進入した小型生物の身体が付着して捕獲できるようになっている。
【0037】
なお、粘着層207は、ハウス状本体枠201を構成するシートの内面に直接塗布して形成されているが、基材シートの両面に粘着層が設けられた両面粘着シートを貼り付けて粘着層207を形成してもよい。その場合も、使用前には、粘着層207を剥離シート208で保護することが好ましい。
【0038】
ハウス状本体枠201を構成するシートは、例えば、生分解性プラスチック、紙、天然繊維で形成されシート、バイオマスプラスチック、その他の天然由来の素材などから選ばれた生分解性の材料からなる。これによって、必要とされる強度及び耐久性を付与すると共に、小型生物捕獲器100を設置してから所定期間が経過したら土に帰りやすくすることができ、回収作業を省略することができる。
【0039】
また、連結紐300としては、例えば、麻紐、綿紐、絹紐等の天然繊維からなる紐類、生分解性プラスチックで形成されたローラーチェーンやボールチェーンなどの鎖類、ワイヤー、木のつる、天然ゴムなどを用いることができる。これによって、必要とされる強度及び耐久性と、木の枝等に引っ掛かりやすい柔軟性を付与すると共に、所定期間が経過したら土に帰りやすくすることができ、ハウス状本体枠201と共に回収作業を省略することができる。
【0040】
更に、粘着層207は、生分解性の材料からなることが好ましく、例えば、バイオマス接着剤,天然系接着剤,にかわ、カゼイン、澱粉、天然ゴム、漆から選ばれたものであることが好ましい。
【0041】
次に、この小型生物捕獲器100の使用方法及び設置方法の一実施形態について、
図4、5を併せて参照しながら説明する。
【0042】
この小型生物捕獲器100は、
図2に示すように、ハウス状本体枠201をシート状に展開し、積み重ねた状態で搬送し、保管することができる。連結紐300は、ハウス状本体枠201のシートとは別にして搬送し、保管してもよいが、予め、ハウス状本体枠201に連結した状態で搬送し、保管してもよい。
【0043】
そして、小型生物捕獲器100を使用する際には、前述したように、ハウス状本体枠201を構成するシートに設けられた粘着層207の剥離シート208を剥がし、覆い壁204を折り曲げ部202で底壁203に対して折り曲げ、
図3に示すように、差し込み片206を底壁203のスリット205に差し込んで、覆い壁204の端部を底壁203に連結する。これにより、
図1及び
図3に示すように、略半楕円筒状(かまぼこ形)のハウス状本体枠201が構成され、その両端には小型生物が通過できるような、略半楕円状(楕円を長軸に沿って2分割した形状)の開口部209が形成される。
【0044】
次いで、この実施形態の場合は、2つの捕獲器本体200a、200bのスリット210a、210bに、連結紐300の両端部を前述した方法で挿入して係止させることにより、2つの捕獲器本体200a、200bを連結紐300で連結して、小型生物捕獲器100を組み立てることができる。
【0045】
図4には、この小型生物捕獲器100を空中に搬送するための無人航空機400の一例が示されている。この無人航空機400は、いわゆるドローンと呼ばれているもので、本体401と、4本のアーム402,403、404、405と、それぞれのアーム402,403、404、405に装着された、合計4つのプロペラ406とを有している。また、本体401には、この小型生物捕獲器100の連結紐300を開放可能に保持する保持部407が設けられている。4本のアームは、本体401の前部から右斜め前方及び左斜め前方のそれぞれに延出している2つのアーム402、403と、本体401の後部から右斜め後方及び左斜め後方のそれぞれに延出している2つのアーム404、405と、により構成されている。4つのプロペラ406のそれぞれは、各々のアームの先端部に設けられているモーターにより回転駆動され、これにより無人航空機400は飛行することができる。連結部407は、本体401の下部において前後方向に延在して設けられており、その基端部が回転可能な連結部を介して本体401に連結され、略水平な姿勢と略垂直な姿勢との間で回動するように構成されている。
【0046】
小型生物捕獲器100の連結紐300を無人航空機400の保持部407上部に引っ掛けることで、小型生物捕獲器100は、連結紐300を介して、無人航空機400に吊り下げ支持される。こうして小型生物捕獲器100を搭載した無人航空機400は、遠隔操作によって小型生物が多く生息する場所(以下捕獲ポイントとする)の上空に飛行する。捕獲ポイントの上空にて、図示しないアクチュエータを駆動させると連結部300が、前述した回動を行い、小型生物捕獲器100の連結紐300が保持部407から解放されて無人飛行機400から離れ、小型生物捕獲器100は上空から落ちる。
【0047】
図5に示されているように、小型生物捕獲器100を上空から落とすと、小型生物捕獲器100の連結紐300が、樹木500の枝に引っ掛かることで、捕獲ポイントに設置される。小型生物は、連結紐300を伝って、捕獲器本体200a、200bのハウス状本体枠201の開口部209から内部に進入し、身体の一部が粘着層207と接触することで、粘着層207に貼り付いて捕獲される。
【0048】
本発明の小型生物捕獲器の対象生物は、木を登り這い回るような小型生物、例えば、トカゲ、カナヘビ、ヤモリ、グリーンアノールなどが好適であり、特に、在来生物を減らして生物環境に変化を与えることが問題となっているグリーンアノールなどの捕獲に好適である。また、連結紐を木の幹や枝に引っ掛けることで、樹上の生物を捕獲するのに適するが、覆い壁があるため、鳥などの上空から木にとまるような生物が内部の粘着層に触れることは防止できる。また、トカゲ、カナヘビ、ヤモリ、グリーンアノールなどは変温動物であり、体温調節のために風通しの良い日陰を利用することがある。本発明の小型生物捕獲器は解放された開口部を持つので風通しも良く、覆い壁を有するので日陰もあり、該小型生物を捕獲するのに好ましい形態である。
【0049】
このように、小型生物捕獲器100を上空から落とすことにより、連結紐300を木の枝などに引っ掛けて設置することができるので、切り立った崖や、道がない森林など、人が立ち入れない場所でも設置することが可能となる。
【0050】
また、ハウス状本体枠201及び連結紐300は、生分解性の材料からなるので、そのまま放置しても、いずれは微生物により分解されて土に帰るので、自然環境を汚すことが防止できる。
【0051】
(本発明の他の実施形態)
本発明の小型生物捕獲器100において、ハウス状本体枠201は、小型生物が侵入する開口部を有する枠状をなすものであればよく、その形状や構造は特に限定されない。例えば、枠状にするために底壁と覆い壁とを連結する手段としては、粘着剤やホッチキスのようなもので連結してもよい。また、前記特許文献1のように、シートに2つの折り曲げ部を設け、底壁の両側を折り曲げて覆い壁とし、2つの覆い壁の端部どうしを連結することにより枠状にすることもできる。更に、一見すると底壁と覆い壁が区別できないような略円筒状のハウス状本体枠を形成しても良いし、底壁と両側壁と天井壁とで囲まれた略直方体状のハウス状本体枠を形成しても良い。また、ハウス状本体枠の一端が小型生物の入り口でもう一方の先端が閉じた袋状のハウス状本体枠を形成しても良い。
【符号の説明】
【0052】
100:小型生物捕獲器
200a、200b:捕獲器本体
300:連結紐
201:ハウス状本体枠
202:折り曲げ部
203:底壁
204:覆い壁
205:スリット
206:差し込み片
208:剥離シート
209:開口部
210a、210b:スリット
300:連結紐
301:結び目
400:無人飛行機
401:本体
402~405:アーム
406:プロペラ