IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シー・アイ・シーの特許一覧

特開2023-57941小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート
<>
  • 特開-小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート 図1
  • 特開-小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート 図2
  • 特開-小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート 図3
  • 特開-小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート 図4
  • 特開-小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート 図5
  • 特開-小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057941
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シート
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/00 20060101AFI20230417BHJP
【FI】
A01M23/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167704
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】591262827
【氏名又は名称】株式会社シー・アイ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 英武
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA08
2B121AA16
2B121BA05
2B121BA09
2B121BA42
2B121BA51
2B121EA24
2B121FA01
2B121FA07
(57)【要約】
【課題】小型生物捕獲器の積層粘着シートの粘着部がダレたり積層粘着シートがずれたりしにくく、更に積層粘着シートの面積が大きい小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シートを提供する。
【解決手段】本体シート101に折り曲げ部を介して底壁102と覆い壁とが形成され、底壁の上部が覆い壁で囲まれて枠状に形成されるハウス状本体枠を有し、底壁の中央部には、取付紐を挿通可能な複数の取付孔110が設けられ、底壁の取付孔の周囲を避けた部分に粘着層111が形成され、底壁の内面に粘着層を介して剥離可能に取付けられた積層粘着シート200を備える。積層粘着シートは、粘着シート201が複数枚積層されて構成され、ハウス状本体枠の底壁の粘着層が形成された部分と、取付孔が設けられた部分とを含む領域を覆う大きさとされている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚の本体シートで構成され、該本体シートには、折り曲げ部を介して底壁と覆い壁とが形成され、該本体シートの両端が着脱可能に連結されて、前記底壁の上部が、屈曲又は湾曲した前記覆い壁で囲まれた枠状に形成され、両端部が開口して小型生物入口をなし、前記底壁の中央部には、取付紐を挿通可能な複数の取付孔が設けられ、底壁の前記取付孔の周囲を避けた部分に、粘着層が形成されている、ハウス状本体枠と、
前記ハウス状本体枠の前記底壁の内面に、前記粘着層を介して、剥離可能に取付けられた積層粘着シートとを備え、
前記積層粘着シートは、基材シートと、該基材シートの片面に設けられた粘着層と、該基材シートの前記粘着層とは反対面に設けられた離型面とを有する粘着シートが、複数枚積層され、最上面の粘着層に離型シートが貼布されて構成されており、
前記基材シートは、前記ハウス状本体枠の前記底壁の前記粘着層が形成された部分と、前記取付孔が設けられた部分とを含む領域を1枚のシートで覆う大きさとされていることを特徴とする小型生物捕獲器。
【請求項2】
前記本体シートの両端が離れた自由状態で、前記本体シートの前記底壁部分は、内方に向けて盛り上がるように湾曲している、請求項1記載の小型生物捕獲器。
【請求項3】
前記小型生物は、グリーンアノールである、請求項1又は2に記載の小型生物捕獲器。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の小型生物捕獲器に用いられる積層粘着シートであって、基材シートと、該基材シートの片面に設けられた粘着層と、該基材シートの前記粘着層とは反対面に設けられた離型面とを有する粘着シートが、複数枚積層され、最上面の粘着層に離型シートが貼布されて構成されており、
前記基材シートは、前記ハウス状本体枠の前記底壁の前記粘着層が形成された部分と、前記取付孔が設けられた部分とを含む領域を1枚のシートで覆う大きさとされており、
最下部に設けられた前記粘着シートの離型面を、前記ハウス状本体枠の底面に設けられた粘着層に粘着させることにより、前記ハウス状本体枠に取付けられるように構成されていることを特徴とする積層粘着シート。
【請求項5】
前記積層粘着シートの各粘着シートに設けられた粘着層は、前記基材シートの周縁を残して中央部に形成されている、請求項4記載の積層粘着シート。
【請求項6】
前記基材シートは、不透明又は半透明の白色である、請求項4又は5記載の積層粘着シート。
【請求項7】
前記離型シートの表面に、離型シートであることを示す識別マークが付されている、請求項4~6のいずれか1項に記載の積層粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばグリーンアノールなどの小型生物を捕獲するための小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
小笠原諸島や、沖縄島などでは、グリーンアノールというトカゲが、ペットとしてあるいは物資輸送に随伴して海外から移入され、繁殖して、在来昆虫の捕食,在来トカゲとの競合が起こり、例えばオガサワラシジミ、オガサワライトトンボ,オガサワラトンボ,シマアカネなどの在来生物が絶滅したりする問題が生じている。
【0003】
グリーンアノールは、樹上に広く分散して生息するため、効率よく駆除することが困難であり、多くの昆虫を絶滅から救うために、その対応策が検討されている。
【0004】
このような小型生物捕獲器の一つとして、下記特許文献1には、1枚のシートの所定の配置に折り曲げ線と切込み線を形成し、折り曲げ線と切込み線を介して折り曲げて底板と両天井板を形成し、ハウス状に組み立ててなる小型生物捕獲器が記載されている。具体的には、折り曲げて形成した底板内面に中間を回避して左右に複数枚積層した粘着したシートを2組設け、底板内面の中間部に粘着シートを取り付けない部分を設け、その部分に結束紐を挿通する孔を穿設する。また、天井板のどちらか一方に係合片、他方に切れ込み部を設けて、係合片、切れ込み部を係合させて、ハウス状の本体枠を形成する。ハウス状本体の両端には、小型生物入口となる開放口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018―121566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、小笠原諸島のような高温多湿な気候では、小型生物捕獲器内の積層粘着シートの粘着層の粘着物質がダレることで、シートがずれてしまったり、ダレた粘着物質が下部の積層シートに染み込み下部の積層シートを剥離することが出来ないので、積層粘着シートを繰り返し使うことが出来なかったりする課題があった。また、従来技術の小型生物捕獲器は中央部を回避して左右に積層粘着シートを設けているため、積層粘着シートと小型生物との接着する面積が小さく、小型生物捕獲器の捕獲能力が低いという課題があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、小型生物捕獲器の積層粘着シートの粘着部がダレたり積層粘着シートがずれたりしにくく、更に積層粘着シートの面積が大きい小型生物捕獲器及びそれに用いる積層粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第一は、1枚の本体シートで構成され、該本体シートには、折り曲げ部を介して底壁と覆い壁とが形成され、該本体シートの両端が着脱可能に連結されて、前記底壁の上部が、屈曲又は湾曲した前記覆い壁で囲まれた枠状に形成され、両端部が開口して小型生物入口をなし、前記底壁の中央部には、取付紐を挿通可能な複数の取付孔が設けられ、底壁の前記取付孔の周囲を避けた部分に、粘着層が形成されている、ハウス状本体枠と、前記ハウス状本体枠の前記底壁の内面に、前記粘着層を介して、剥離可能に取付けられた積層粘着シートとを備え、前記積層粘着シートは、基材シートと、該基材シートの片面に設けられた粘着層と、該基材シートの前記粘着層とは反対面に設けられた離型面とを有する粘着シートが、複数枚積層され、最上面の粘着層に離型シートが貼布されて構成されており、前記基材シートは、前記ハウス状本体枠の前記底壁の前記粘着層が形成された部分と、前記取付孔が設けられた部分とを含む領域を1枚のシートで覆う大きさとされていることを特徴とする小型生物捕獲器を提供するものである。
【0009】
前記本体シートの両端が離れた自由状態で、前記本体シートの前記底壁部分は、内方に向けて盛り上がるように湾曲していることが好ましい。
【0010】
前記小型生物は、グリーンアノールであることが好ましい。
【0011】
本発明の第二発明は、前記小型生物捕獲器に用いられる積層粘着シートであって、基材シートと、該基材シートの片面に設けられた粘着層と、該基材シートの前記粘着層とは反対面に設けられた離型面とを有する粘着シートが、複数枚積層され、最上面の粘着層に離型シートが貼布されて構成されており、前記基材シートは、前記ハウス状本体枠の前記底壁の前記粘着層が形成された部分と、前記取付孔が設けられた部分とを含む領域を1枚のシートで覆う大きさとされており、最下部に設けられた前記粘着シートの離型面を、前記ハウス状本体枠の底面に設けられた粘着層に粘着させることにより、前記ハウス状本体枠に取付けられるように構成されていることを特徴とする積層粘着シートを提供するものである。
【0012】
前記積層粘着シートの各粘着シートに設けられた粘着層は、前記基材シートの周縁を残して中央部に形成されていることが好ましい。
【0013】
前記基材シートは、不透明又は半透明の白色であることが好ましい。
【0014】
前記離型シートの表面に、離型シートであることを示す識別マークが付されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ハウス状本体枠の底壁の内面に形成された粘着層を介して、積層粘着シートの最下部に設けられた粘着シートの離型面を粘着させることにより、底壁の、粘着層が形成された部分と、取付孔が設けられた部分とを含む領域を、1つの積層粘着シートで覆うことができる。積層粘着シートの粘着層は、底壁の取付孔が設けられた部分を避けることなく形成できるので、小型生物を捕獲することができる領域を広くとることができる。また、戸外に放置されて日光などに当たって高温になり、粘着層の粘着部材が軟化しても、底壁の、粘着層が形成された部分と、取付孔が設けられた部分とを含む領域を、1つの積層粘着シートで覆っているので、積層粘着シートがずれにくくなる。また、粘着部材がダレにくいので、使い終わった粘着シートをハウス状本体枠から剥離しやすくなり、繰り返し積層粘着シートを使用することができる。積層粘着シートの最下面は、最下部に設けられた粘着シートの離型面となっているので、取付孔の周囲が粘着層で覆われることがなく、取付紐が粘着層に付着することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態である小型生物捕獲器の覆い壁を開いた状態を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態である小型生物捕獲器の枠状本体枠を構成するシートの展開図である。
図3】本発明の一実施形態である積層粘着シートの部分断面図である。
図4】本発明の一実施形態である小型生物捕獲器と積層粘着シートと接着させる態様を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態である小型生物捕獲器に積層粘着シートを設置した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の一実施形態である小型生物捕獲器を組立てた状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1~6に基づいて、本発明による小型生物捕獲器の一実施形態を説明する。
【0018】
図5、6に示すように、この小型生物捕獲器100は、1枚の本体シート101で構成されたハウス状本体枠108と、このハウス状本体枠108の底壁102に剥離可能に取付けられた積層粘着シート200と、ハウス状本体枠108の底壁に後述する態様で取付けられた取付紐300とで構成されている。
【0019】
図1、2を参照して、ハウス状本体108について説明する。
【0020】
ハウス状本体枠108は、この実施形態では、1枚の本体シート101で構成され、本体シート101には、第1折り曲げ部103を介して、底壁102と、その両側に設けられた第1覆い壁104a、第2覆い壁104bと、を有する。
【0021】
当該底壁102は、略矩形状、この実施形態では長方形をなし、その長手方向の略中央には、一対の取付孔110が幅方向に所定間隔をおいて設けられている。一対の取付孔110には、取付紐300が挿通されて、その両端がハウス状本体枠108の外側に延出されており、当該取付紐300を樹木の枝や幹に結び、当該小型生物捕獲器を樹木に設置することができる。
【0022】
そして、底壁102の取付孔110を挟んで長手方向の両側には、取付孔110を避けるように、一対の粘着層111が設けられている。この実施形態において、粘着層111は、本体シート101に直接塗布されて形成されている。使用前の状態において、この粘着層111には、図示しない剥離シートが貼り付けられていて、本体シート101を重ねて保管したりする際に、不用意に付着しないようになっている。なお、粘着層111は、取付孔110を避けるように設けられていればよく、その形状や配置は、特に限定されない。粘着層111は、例えば、取付孔110を囲むように枠状に形成されていてもよい。
【0023】
また、底壁102の長手方向における、一対の粘着層111の更に外側には、幅方向中央に位置して、C字状のスリット113を介して形成された、一対の押え爪112が設けられている。一対の押え爪112は、それぞれの爪の先端を内方に向けて対向して配置されている。この押え爪112は、図5に示すように、積層粘着シート200の長手方向に対向する一対の辺の中央部を押えてズレを抑制する役割をなす。なお、図1,5に示すように、本体シート101の覆い壁104a、104bが開いた自由状態で、底壁102は、内方に向けて盛り上がるように湾曲した形状をなしている。
【0024】
図1,2に示すように、底壁102の両側には、折り曲げ部103を介して、第1覆い壁104aと、第2覆い壁104bとが設けられている。そして、第1覆い壁104aと、第2覆い壁104bとが、後述する態様で、底壁102の上部で係合されることにより、図6に示されるように、底壁102が、第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bにより、アーチ状、またはドーム状に覆われるようになっている。
【0025】
第1覆い壁104aには、コ字状のスリット120を介して形成されたフラップ121が長手方向に2つ並んで配置されている。スリット120の両端部は、底壁102から離れて配置され、折り曲げ線122で曲げられて外側に開くようになっている。フラップ121よりも更に底壁102から離れた位置には、長手方向に伸びる直線状の差し込み用スリット124が設けられている。差し込み用スリット124に対して、更に底壁102から離れた位置に、スリット125を介して係合片126が設けられている。係合片126よりも更に底壁102から離れた位置には、長手方向に伸びる略長方形の抜き孔127が形成されている。
【0026】
第2覆い壁104bには、第1覆い壁104aと同様に、コ字状のスリット120を介して形成されたフラップ121が長手方向に2つ並んで配置されている。第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bに設けられたフラップ121は、底壁102の幅方向中心を通って長手方向に伸びる中心線に対して対称な形状をなして配置されている。第2覆い壁104bの底壁102から離れた端縁中央部には、差し込み片128が突設されている。この差し込み片128を第1覆い壁104aのスリット124に第1覆い壁104aの外側から差し込むことにより、図6に示すように、底壁102がアーチ状、またはドーム状に覆われるようになっている。この状態で、第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bに設けられたフラップ121を、折り曲げ線122で折り曲げて外側に広げることにより、開口部123が形成されるようになっている。このとき、第1覆い壁104aの抜き孔127が、第2覆い壁104bの開口部123と連通し、同開口部123が塞がれないようになっている。
【0027】
また、第2覆い壁104bには、差し込み片128を第1覆い壁104aのスリット124に差し込んだ状態で、第1覆い壁104aの係合片126に整合するように、スリット125を介して同様な係合片126が形成されている。そして、上記開口部123から指を入れて、第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bの重なり合った係合片126を、内側から押し上げることにより、内側の係合片126が外側の係合片126の切欠きに係合し、強風等によって第1覆い壁104aと第2覆い壁104bとが開いてしまうことを抑制できるようになっている。なお、係合片126を外側から押し込むことにより、係合を解除することができるようになっている。
【0028】
第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bに形成される上記開口部123は、底壁102に設けられた粘着層111の上方に位置するように、各覆い壁107a、107bのスリット120は、粘着層111に対応する位置に形成されている。
【0029】
図6に示すように、ハウス状本体枠108を組立てた状態で、ハウス状本体枠108の長手方向両端に、小型生物入口129が形成される。捕獲すべき小型生物は、ハウス状本体枠108の両端に形成された上記小型生物入口129と、第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bに形成された開口部123とを通して、ハウス状本体枠108内に侵入するようになっている。
【0030】
図3に示すように、積層粘着シート200は、この実施形態の場合、3枚の粘着シート201、202、203を積層して構成されている。各粘着シート201、202、203は、基材シート204と、その片面に形成された粘着層205とで構成されている。また、各基材シート204の粘着層205が設けられている面とは反対側の面は、粘着層111や粘着層205に対して剥離可能な離型面204aをなしている。また、最上部の粘着シート201の粘着層204表面には、離型シート206が貼着されている。積層粘着シート200は、底壁102上に設けられた2つの粘着層111を覆うように、粘着層111に最下層の粘着シート203の離型面204aを貼着されて取付けられている。このとき、図5に示すように、底壁102に設けられた押え爪112を、積層粘着シート200の長手方向に対向する辺の中央部に被せて係合させることにより、積層粘着シート200の位置ずれを抑制することができる。使用を開始する際、最上層の粘着シート201から離型シート206が剥がされる。これにより、最上層の粘着シート201の粘着層204が露出した状態になる。なお、基材シート204としては、不透明又は半透明の白色のシートが好ましく採用される。
【0031】
図4に示すように、離型シート206の上面中央部には、識別マーク207が付されている。この識別マーク207は、積層シート200を本体シート101の底壁102の粘着層111に貼着するとき、上下を間違えないようにするためのものである。また、粘着層205は、基材シート204の外周から所定の距離内側、好ましくは1~15mm、より好ましくは5~10mm内側に位置する領域に形成されている。更に、粘着シート201、202、203の基材シート204は、底壁102に形成された一対の粘着層111を1枚の基材シート204で覆う大きさとされている。その結果、取付孔110が形成された部分も、最下層の粘着シート203の基材シート204で覆われることになるが、基材シート204の下面が離型面204aとなっているので、取付孔111の周縁が粘着層205に接することはない。また、最下層の粘着シート203の基材シート204は、底壁102に形成された一対の粘着層111から剥離可能である。また、積層粘着シート200の長手方向に対向する1対の辺の中央部に押え爪112が係合できるように、積層粘着シート200の大きさが設定されている。
【0032】
次に、この小型生物捕獲器100の使用方法について説明する。まず、図1に示すように、取付紐300を本体シート101の取付孔110に挿入して、取付紐300を取付け樹の幹などに固定する。次いで、予め小型生物捕獲器100にセットされている積層粘着シート200の最上面の離型シート206を剥がし、第1粘着シート201の粘着層205を露出させる。
【0033】
そして、本体シート101の第1折り曲げ部103を折り曲げて、第2覆い壁104bの差し込み片128を、第1覆い壁104aのスリット111に外側から差し込むことにより、図6に示すように、底壁102の両側から第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bが連結されて、底壁102の上方が第1覆い壁104a及び第2覆い壁104bで囲まれたハウス状本体枠108が形成される。
【0034】
このとき、フラップ121を、折り曲げ線122を介して外側に折り曲げておくことにより、開口部123を形成することができる。そして、ハウス状本体枠108の両端部には、小型生物入口129が形成される。この状態で、開口部123から指を入れて、係合片126を内側から押し上げることにより、内側の係合片126が外側の係合片126の切欠きに係合し、強風等によって第1覆い壁104aと第2覆い壁104bとが開いてしまうことを抑制することができる。なお、第1覆い壁104aに形成された抜き孔127は、第2覆い壁104bに形成される開口部123と重なる位置にあるため、開口部123が閉塞されることはない。また、係合片126を外側から押すことによって、係合片126の係合を解除して、第1覆い壁104aと第2覆い壁104bを開くことができる。
【0035】
こうして、小型生物捕獲器100は、小型生物が生息する領域にある木の枝等に取付紐300を介して縛り付けられて設置される。図1,5に示すように、本体シート101の両端が離れた自由状態で、本体シート101の底壁102は、内方に向けて盛り上がるように湾曲しているので、ハウス状本体枠108を組立てた状態で、底壁102は、平面状又は内側にやや湾曲した形状となり、木の枝等に安定して設定することができる。
【0036】
小型生物捕獲器100を設置することにより、木の枝等を這い上がる傾向のある小型生物は、ハウス状本体枠108の小型生物入口129や、開口部123から、ハウス状本体枠108内に入り、底壁102に設置された積層粘着シート200の粘着層205に付着して捕獲される。
【0037】
なお、本発明の小型生物捕獲器100の対象となる小型生物としては、特に限定されないが、例えば、トカゲ、ヤモリ、カナヘビ、グリーンアノールなどの爬虫類や、毛虫、アリ類などの昆虫類ほか、木の幹や枝をはい回るような生物が挙げられ、本発明によればこれらの小型生物を効率よく捕獲することができる。特に、小笠原諸島などで生物環境を破壊するという問題を生じているグリーンアノールに好適である。本発明の小型生物捕獲器100は、覆い壁104a、104bにより覆われることにより、鳥類やセミ、その他の飛翔動物などが誤って付着されることを防ぎ,非標的種の混獲を防止することができる。
【0038】
こうして小型生物捕獲器100を設置した後、所定期間毎に捕獲状況を観察する。このとき、基材シート204が不透明又は半透明の白色であることにより、粘着層205に付着した小動物を視認しやすくすることができる。そして、粘着層205に小型生物が多数付着して、粘着層205の有効領域が少なくなったら、最上層の第1粘着シート201を剥がして、その下層の第2粘着シート202を露出させる。これによって、新しい粘着層205が露出し、再び小型生物の捕獲が可能となる。所定期間を置いて再び捕獲状況を観察し、第2粘着シート202の粘着層205にも小型生物が多数付着して、その有効領域が少なくなったら、第2粘着シート202を剥がして、その下層の第3粘着シート203を露出させる。これによって、新しい粘着層205が露出し、再び小型生物の捕獲が可能となる。第3粘着シート203にも小型生物が多数付着して有効領域が少なくなったら、第3粘着シート203を本体シート101から剥がす。このとき、第3粘着シート203の基材シート204の下面が離型面204aとなっているので、本体シート101を粘着剤で汚すことなく、粘着層111から引き剥がすことができる。
【0039】
そして、本体シート101の底壁102に直接塗られた粘着層111が露出したときに、図4に示すように、2つの粘着層111,111を覆うように、新しい積層粘着シート200を本体シート101の111に貼着する。このとき、離型シート206の上面中央部には、識別マーク207が付されているので、識別マーク207が付された面を外側にして積層粘着シート200を設置することにより、離型シート206側を粘着層111,111に貼着してしまうことを防止できる。
【0040】
また、図5に示すように、底壁102に設けられた押え爪112を、積層粘着シート200の長手方向に対向する辺の中央部に被せて係合させることにより、積層粘着シート200の位置ずれを抑制することができる。こうして、新しい積層粘着シート200を本体シート101の粘着層111に貼着して、離型シート206を剥がすことにより、再び小型生物の捕獲が可能となる。なお、積層粘着シート200の粘着シートの積層数は、特に限定されないが、2枚以上であればよく、3枚以上5枚以下がより好ましい。
【0041】
ところで、小笠原諸島などの戸外は、直射日光により高温になりやすいため、積層粘着シート200の粘着層205が軟化して、積層粘着シート200からはみ出しやすいが、粘着層205は、基材シート204の周縁部を残して、基材シート204の外周から所定の距離内側に位置する領域に形成されているので、粘着層205のはみ出しを抑制することができる。また、基材シート204の周縁を摘まみやすくなるので、各粘着シート201、202、203を剥がしやすくすることができる。
【0042】
また、積層粘着シート200の基材シート204は、ハウス状本体枠108の底壁102の1対の粘着層111が形成された部分と、取付孔110が設けられた部分とを含む領域を1枚で覆う大きさとされ、粘着層205が露出した捕獲面を広くとることができるので、小動物を数多く捕獲することができる。また、積層粘着シートが1対の粘着層111に貼着して支持されることから、高温下において粘着層205が軟化してもずれにくくすることができる。更に、最下層の粘着シート203の基材シート204の離型面204aが底壁102に接するので、粘着層205の粘着剤が底壁102に付着することがなく、積層粘着シート200を交換して、繰り返し使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
100:小型生物捕獲器
101:本体シート
102:底壁
103:第1折り曲げ部
104a:第1覆い壁
104b:第2覆い壁
108:ハウス状本体枠
110:取付孔
111:粘着層
112:押え爪
113:スリット
120:コ字状スリット
121:フラップ
122:折り曲げ線
123:開口
124:差し込み用スリット
125:スリット
126:係合片
127:抜き孔
128:差し込み片
129:小型生物入口
200:積層粘着シート
201:第1粘着シート
202:第2粘着シート
203:第3粘着シート
204:基材シート
204a:離型面
205:粘着層
206:離型シート
207:識別マーク
300:取付紐
図1
図2
図3
図4
図5
図6