(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057971
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】活線の誤切断防止方法及び活線の誤切断防止センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 19/155 20060101AFI20230417BHJP
G01R 15/06 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
G01R19/155
G01R15/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167760
(22)【出願日】2021-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(71)【出願人】
【識別番号】500285727
【氏名又は名称】三和電気計器株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597019609
【氏名又は名称】株式会社 シーディエヌ
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】大浦 洋治
(72)【発明者】
【氏名】田中 真秀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真克
(72)【発明者】
【氏名】野田 龍三
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和顕
【テーマコード(参考)】
2G025
2G035
【Fターム(参考)】
2G025AB07
2G025AC01
2G035AB08
2G035AC13
2G035AD20
2G035AD23
2G035AD38
2G035AD56
2G035AD64
(57)【要約】
【課題】電線を切断する際に、誤って活線を切断してしまうことを防止することができる活線の誤切断防止方法及び活線の誤切断防止センサを提供することを目的とする。
【解決手段】活線の誤切断を防止する方法において、検出回路4の第1電極1で活線の接近によって人体Hに誘起された電圧を測定し、同回路の第2電極2で大地に対する電圧を測定し、これらの第1電極1の電位と第2電極2の電位の差により流れる電流を検出回路4で捉えて、大地から絶縁された人体Hが前記活線に接近した際検出回路4から信号を出力する構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活線の誤切断を防止する方法において、検出回路の第1電極で活線の接近によって人体に誘起された電圧を測定し、同回路の第2電極で大地に対する電圧を測定し、
これらの第1電極の電位と第2電極の電位の差により流れる電流を前記検出回路で捉えて、
大地から絶縁された人体が前記活線に接近した際前記検出回路から信号を出力することを特徴とする、活線の誤切断防止方法。
【請求項2】
活線の誤切断を防止する誤切断防止センサにおいて、検出回路は活線の接近によって人体に誘起された電圧を測定対象とした第1電極と、大地に対する電圧を測定対象とした第2電極とを有し、さらに、前記活線に人体が接近した際前記検出回路から信号を出力させる回路を備え、
前記検出回路が、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位の差により流れる電流を捉えることを特徴とする、活線の誤切断防止センサ。
【請求項3】
前記第1電極は、人体との間に誘電体を介して一定面積を有する板からなり、前記第2電極は、前記第1電極に対する垂直投影面積を小さくし、かつ、大地に対する面積を大きくした形状としたことを特徴とする、請求項2に記載の活線の誤切断防止センサ。
【請求項4】
前記人体との間に介在する誘電体は、前記第1電極及び前記第2電極を収納する絶縁容器、あるいは、当該絶縁容器と、作業服、ヘルメット、靴、ベルトの何れかの組み合わせであることを特徴とする、請求項3に記載の活線の誤切断防止センサ。
【請求項5】
前記第1電極は平板とし、前記第2電極は前記第1電極の平板の上に起立したポール形状であることを特徴とする、請求項2~4のいずれかに記載の活線の誤切断防止センサ。
【請求項6】
前記第1電極は平板とし、前記第2電極は前記第1電極の平板の上に起立した円筒形状であることを特徴とする、請求項2~4のいずれかに記載の活線の誤切断防止センサ。
【請求項7】
前記第1電極、前記第2電極及び前記検出回路が、前記絶縁容器に収容されていることを特徴とする、請求項4~6のいずれかに記載の活線の誤切断防止センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業員等のユーザが、誤って活線(≒電圧が印加されている電線)を切断してしまうのを防ぐために、活線の切断に対し注意喚起を行う活線の誤切断防止方法及び活線の誤切断防止センサに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気設備の改修工事、点検作業等の際には、電線を切断する必要が生じる場合がある。
【0003】
作業員等のユーザが、電線を切断する場合には、その前に、当該電線に電圧が印加されていないこと、即ち、活線ではないことを確認した上で、切断作業を行う。
【0004】
当該電線が活線ではないことを確認する際には、一般的に、検知部を接触させ、当該電線に電圧が印加されていないこと(≒停電していること、活線ではないこと)を確認する検電器を用いる。
【0005】
このような電気工事に用いられる検電器は、種々の形態が知られており、例えば、以下の特許文献に記載されているように、検知器単体で用いられる形式やペンチ等の工具に装着する形式がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-148287号公報
【特許文献2】特開平11-33920号公報
【特許文献3】特許第6467447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のように検知器単体で用いる形式の場合、作業員等のユーザは、電気工事の際に、検知器以外に多くの機器や工具を持ち歩くため、運搬が煩雑となる。また、電線の検電作業と切断作業を別個に行う必要があるため、作業工程が煩雑となる。更に、切断作業を行う前に、検電作業を行う必要があるが、検電作業を失念してしまう可能性もある。
【0008】
また、特許文献2及び3のように工具に装着する形式の場合、全ての切断工具に検電器を装着しておくことは、物理的にも経済的にも困難な場合が多いため、作業者等のユーザは、用いる切断工具によっては、切断の際に検電器を当該切断工具に装着する必要が生じ、作業が煩雑となる。また、そもそも装着作業を失念してしまう可能性もある。
【0009】
そこで本発明は、上記問題点に対処するため、電線を切断する際に、誤って活線を切断してしまうことを防止することができる活線の誤切断防止方法及び活線の誤切断防止センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
活線の誤切断を防止する方法において、検出回路の第1電極で活線の接近によって人体に誘起された電圧を測定し、同回路の第2電極で大地に対する電圧を測定し、
これらの第1電極の電位と第2電極の電位の差により流れる電流を前記検出回路で捉えて、
大地から絶縁された人体が前記活線に接近した際前記検出回路から信号を出力する、活線の誤切断防止方法とした。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、
活線の誤切断を防止する誤切断防止センサにおいて、検出回路は活線の接近によって人体に誘起された電圧を測定対象とした第1電極と、大地に対する電圧を測定対象とした第2電極とを有し、さらに、前記活線に人体が接近した際前記検出回路から信号を出力させる回路を備え、
前記検出回路が、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位の差により流れる電流を捉える、活線の誤切断防止センサとした。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、
前記第1電極は、人体との間に誘電体を介して一定面積を有する板からなり、前記第2電極は、前記第1電極に対する垂直投影面積を小さくし、かつ、大地に対する面積を大きくした形状とした、請求項2に記載の活線の誤切断防止センサとした。
【0013】
また、請求項4に係る発明は、
前記人体との間に介在する誘電体は、前記第1電極及び前記第2電極を収納する絶縁容器、あるいは、当該絶縁容器と、作業服、ヘルメット、靴、ベルトの何れかの組み合わせである、請求項3に記載の活線の誤切断防止センサとした。
【0014】
また、請求項5に係る発明は、
前記第1電極は平板とし、前記第2電極は前記第1電極の平板の上に起立したポール形状である、請求項2~4のいずれかに記載の活線の誤切断防止センサとした。
【0015】
また、請求項6に係る発明は、
前記第1電極は平板とし、前記第2電極は前記第1電極の平板の上に起立した円筒形状である、請求項2~4のいずれかに記載の活線の誤切断防止センサとした。
【0016】
また、請求項7に係る発明は、
前記第1電極、前記第2電極及び前記検出回路が、前記絶縁容器に収容されている、請求項4~6のいずれかに記載の活線の誤切断防止センサとした。
【発明の効果】
【0017】
請求項1~7に係る発明によれば、作業員等のユーザの人体のどこかに装着しておくことにより、作業員等のユーザが、切断工具で活線を切断しようとすると、信号を出力する。従って、電気工事等において、作業者等のユーザが誤って活線を切断しようとした場合に、注意喚起が可能となり、活線の誤切断を未然に防ぐことができ、便宜である。
【0018】
また、請求項5及び6の発明によれば、第1電極と第2電極との間に発生する電圧が大きくなり、人体に誘起される電圧を確実に捉えることができ、便宜である。
【0019】
更に、請求項7の発明によれば、活線の誤切断防止センサが、前記絶縁容器に収容されているため、当該絶縁容器を作業者等のユーザに容易に装着することができ、便宜である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】活線に人体が接近した際の人体に流れる電流及び人体から電流が生じることを示す原理説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態例1の人体に誘起される電圧に関する主回路の原理概略図である。
【
図3】(a)図は、本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの検出回路の原理を示す概略構成図であって、(b)図は、同等価回路図である。
【
図4】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの外観を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの構造を示す概略縦断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの他の例を示す概略縦断面図である。
【
図7】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの他の例の電極を示す概略縦断面図である。
【
図8】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの他の例を示す概略縦断面図である。
【
図9】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの他の例の電極を示す概略縦断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサを作業者等のユーザのヘルメットに装着した状態を示す側面図であり、(a)図はクリップ留め、(b)図はバンド留めの図である。
【
図11】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサを作業靴に装着した状態を示す側面図であり、(a)図は活線の誤切断防止センサをかかとにクリップで留めた図、(b)図は活線の誤切断防止センサをつま先にバンドで留めた図である。
【
図12】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの検出回路の構成図である。
【
図13】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサを作業員等のユーザが手首に装着して、電線の切断作業を行っている状態を示す説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止センサを作業員等のユーザが手首に装着して、電線の切断作業を行っている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。ただし、この実施の形態例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
<実施の形態例1>
まず、この発明の実施の形態例1の活線の誤切断防止方法及び活線の誤切断防止センサを図に基づいて説明する前に、人体の各部の電位を測定した。なお、実施の形態例1の活線の誤切断防止センサの主回路では、電圧や静電容量を示す場合にVやCに「0」を入れて表示するが、検出回路ではVやCに「0」を入れないで表示する。
【0023】
まず、人体の電位分布がどのようになっているかを検討した。これには、
図1に示すように、AC電位無線測定器(図示省略)を用いて、活線状態のAC電線Wに近づいた人体Hの両手首、両足首、頭部の電位を測った。
【0024】
その測定結果により、AC電線W側に伸ばした手に電位が生じるのは当然の結果であるが、反対側の手にも電位が生じていることが確認できた。また、AC電線W側に伸ばした手よりも、足側の電位が大きい体位が多くあった。これにより、人体H全体で電位が生じていること(≒電圧が誘起されていること)が分かった。また、人体Hは大地Gから浮いた、大地Gとは異なる電位になっており、また、その電位は人体H各部で異なっているということが分かった。
【0025】
しかし、人体Hは数kΩの導体であり、AC電線Wや大地Gからは数MΩ以上のインピーダンスで隔離されていることを考慮すると、人体H内でAC電位無線測定器が動作するような、数十V以上の電位差が生じることは考えられない。
【0026】
検討の結果、AC電位無線測定器は大地Gからの電極電位を検知しているのではなく、電極を通過する電流レベル(≒電流の大きさ)を検知していることが分かった。また、人体Hの電位は大地Gから浮いた、大地Gとは異なる電位になっている。しかし本来は、人体H全体は、同電位の状態であり、周辺のインピーダンスに応じて人体Hの各部を流れる電流値に大小が生じており、その電流値に応じてAC電位無線測定器の測定値が変化していることが分かった。
【0027】
図1に示すように、人体Hが、活線状態の100VのAC電線Wに近づくと、腕、胴体、頭を通じてAC電線Wからi1、i2、i3の電流が人体Hに流れ込む。この電流によって人体Hは大地GからAC電圧を持った状態になる。
図1に示す例では、発生した人体Hの電位に係るAC電圧は30Vである。そして、その人体Hの電位によって、人体Hと大地G間容量を通じてAC電線Wと逆側の腕、両足、頭を通じて電流i4、電流i5、電流i6、電流i7が流れ出す。
【0028】
その電流比率は、AC電線Wと人体Hと大地Gの関係によって大きく変動するが、片手をAC電線Wに近づけてAC電線Wの反対側に壁が有る環境では、
図1に示したような電流値になった。即ち、i1=0.1μA、i2=0.2μA、i3=0.1μA、i4=0.02μA、i5=0.18μA、i6=0.18μA、i7=0.02μAである。この結果、AC電線Wと反対側の腕に測定器を持っても測定を行うことができ、さらにその腕よりも足の方が、感度が良い状態で測定できることが分かった。
【0029】
従来の一般の測定器や検電器では、AC電線に近づいた場合に、当該電線からの電流i1、i2レベルの、0.1~0.2μA程度の測定値を検知するように設定されているため、電流i4、i7の様な0.02μA程度の低レベルの人体からの流出電流を検知できない。また、「人体電位=大地電位」を前提として設定されているため、電流レベルが比較的大きい、0.18μA程度の電流i5、i6の流れを利用できていない。なお、
図1では代表的な人体Hの部位での電流分布を示した。実際にはもっと多様な人体Hの部位で電流の入出力が生じているのが現実である。
【0030】
また、人体Hの絶縁状態が悪く、人体Hが大地Gと同電位になるような状況では電流i1、i2、i3の流入電流しか利用できないため、人体Hの電位を検知することはできない。実際に裸足で、人体Hを大地Gと同電位にして測定したところ、AC電線Wと反対側の測定器は反応しなかった。
【0031】
この様に、人体Hが活線状態のAC電線Wに近づくと、腕、胴体、頭を通じて電圧源から電流が人体Hに流れ込み、この電流によって人体Hは大地GからAC電位を持った状態になり、その人体Hの電位によって人体Hと大地G間容量を通じて電圧源と逆側の腕、両足、頭を通じて電流が流れ出すことが分かった。
【0032】
この原理に基づいてこの発明はなされたものである。
図2に示す、活線状態のAC電線Wから人体Hを通って大地Gに流れる閉回路(以下、主回路と言う)の合成容量(C
01とC
02の直列接続)C
0は、次の数1、数2となる。なお、V
0はAC電線Wの大地Gに対する電位、V
01はAC電線Wと人体Hとの間の静電容量C
01による電位、V
02は人体Hの大地Gに対する静電容量C
02による電位を示す。
【0033】
【0034】
【0035】
よって、数3及び数4となり、人体Hは大地Gに対して電位(V02)を有することが分かる。
【0036】
【0037】
【0038】
また、数5、数6であるから、人体Hが活線に近づく程(C01のdが小さくなり、C01が大きくなるため)V02が大きくなる。これにより、V02を検出できれば、「人(人体H)が、切断しようとしているAC電線Wが活線であるか否か」を検出できる。また、数5、数6であるから、人体Hが充電部に近づく程(C01のdが小さくなり、C01が大きくなる)V02が大きくなる。これにより、V02を検出できれば、「人(人体H)が充電部に近づくこと」を検出できる。
【0039】
【0040】
【0041】
また、
図3の(a)図は、
図2のA部、即ち本実施の形態例1に係る活線の誤切断防止センサAの検出原理を示す概略構成図である。この活線の誤切断防止センサAは人体Hの手首に巻き付ける腕時計型であり、主として、活線状態のAC電線Wへの接近によって人体に誘起される電圧を測定対象とした第1電極1と、大地Gに対する電圧を測定対象とした第2電極2により構成されている。ここでC
1は人体Hと第1電極1間の静電容量、C
21は第1電極1と第2電極2間の静電容量、C
22は人体Hと第2電極2間の静電容量、C
31は第1電極1と大地G間の静電容量、C
32は第2電極2と大地G間の静電容量である。
【0042】
また、第1電極1と第2電極2の間に検出回路4が設けられている。
【0043】
腕時計型の活線の誤切断防止センサAの構成について、詳しく説明する。
図4に示すように、活線の誤切断防止センサAは、帯状体5の略中央部に丸い箱型の絶縁ケース(≒容器)15が設けられ、腕時計型に構成されている。そして、
図5に示すように、絶縁ケース15の内部に円板からなる第1電極1が収納され、当該第1電極1の一面中央部に、垂直に棒状の第2電極2が設けられ、さらに、これらの第1電極1及び第2電極2の間に、検出回路4が設けられている。そして、
図4に示すように、帯状体5の一端部に設けたバックル5aと他端部に設けた複数の貫通孔5bによって、作業者等のユーザの手首に装着できるようになっている。なお、絶縁ケース15は、作業者等のユーザに係る人体との間に介在する誘電体の役割を果たす。
【0044】
この活線の誤切断防止センサAの全体の合成容量は、次の数7となることが予想される。また、第1電極1と第2電極2の間に発生する電圧VC2は数8となる。このVC2が検出を可能にする電圧である。
【0045】
【0046】
【0047】
上記数8から、C1を大きくし、かつ、C21を小さくすれば、VC2が大きくなり、検出に有効なVC2を得ることが出来る。また、C32が大きければ、さらに有効なVC2を得られる。また、C22が小さければ、検出回路4に流れる電流を大きくすることができ、検出に有利となる。
【0048】
そこで、C=εS/dの「S」を大きくし、かつ、「d」を小さくすることにより前記C
1を大きくする。このため第1電極1を、大きな面積を有し、第2電極2と接する電極形状を細くすることでC=εS/dの「S」を小さくし、前記C
21を小さくした。本実施の形態例1に係る活線の誤切断防止センサAでは、
図5に示すように、このため第1電極1は、円板状で大きな面積を有するものとした。
【0049】
一方、第2電極2は、第1電極1に対する垂直投影面積を小さくして上記「S」を小さくし、前記C
21を小さくする必要がある。また、人体に対する垂直面積を小さくして上記「S」を小さくし、前記C
22を小さくする必要がある。更に、空間(大地)に対する面積(側面積)を確保し、これによってC
32を大きくする必要がある。そのため、
図5に示す第2電極2は、ポール(円柱)形状、あるいは中空の円筒形状とし、前記第1電極1の略中央部から起立させた状態で設けられる構成とした。
【0050】
これらの構成によって、第1電極1と第2電極2の間に発生する電圧VC2を大きくし、検出回路4による検出を可能にしている。
【0051】
なお、活線の誤切断防止センサAの構成は、
図4及び
図5に示すものに限定されない。例えば、
図6及び
図7に示すように、箱型の絶縁ケース16の内部に第1電極1が収納され、当該第1電極1の一面中央部に、垂直にポール(円柱)形状の第2電極2が設けられ、さらに、これらの第1電極1及び第2電極2の間に、検出回路4が設けられている構成の活線の誤切断防止センサBとしても良い。なお、絶縁ケース16の側面には、クリップ16aが設けられている。
【0052】
また、
図8及び
図9に示すように、箱型の絶縁ケース16の内部に第1電極1が収納され、当該第1電極1の一面中央部に、垂直に円筒状の第2電極17が設けられ、さらに、これらの第1電極1及び第2電極17の間に、検出回路4が設けられている構成の活線の誤切断防止センサCとしても良い。なお、絶縁ケース16の側面には、クリップ16aが設けられている。
【0053】
そして、これらの活線の誤切断防止センサB及びCは、
図10(a)図に示すように、絶縁ケース16がクリップ16aにより作業用ヘルメット18の後部に取り付けられる。なお、この
図10(a)図のクリップ16aは、前記
図6及び
図8の構成とは多少異なるクリップであるが、把持機能は同じである。また、
図10(b)図に示すように、絶縁ケース16がバンド19により作業用ヘルメット18に取り付けられる場合もある。また、
図11(a)図に示すように、作業靴20のかかとに、絶縁ケース16をクリップ16aにより取り付けることもできる。また、
図11(b)図に示すように、作業靴20のつま先の甲側にバンド21により絶縁ケース16を取り付けることもできる。なお、これらの場合、絶縁ケース16と、作業用ヘルメット18及び作業靴20のいずれかは、作業者等のユーザに係る人体との間に介在する誘電体の役割を果たす。
【0054】
また、前記検出回路4の構成は、
図12に示すように、前記第1電極1と第2電極2間のC
21に流れる電流信号によって生じた電圧V
C2を増幅する増幅回路6、基準電圧発生回路7が夫々設けられ、前記増幅回路6の出力信号と前記基準電圧発生回路7の出力信号とを比較する比較回路8により、信号が出力された場合にのみ音声発生回路9及び点灯表示回路10が作動する。また、当該検出回路4は電源11を備えており、当該電源11のスイッチ12をオンにすることにより各回路に電源が供給される。
【0055】
<活線の誤切断防止センサAの動作方法>
当該活線の誤切断防止センサAを装着した作業者等のユーザは、作業に際して、まず、検出回路4のスイッチ12をオンにする。そして、当該ユーザが、
図13に示すように、当該活線の誤切断防止センサAを装着した左手で電線22を持ちながら、右手でペンチ等の手動の切断工具23を使って電線22を切断しようとした場合、当該電線22が、電圧が印加されている電線であれば、左手を通じて当該ユーザに微小電流が流入する。すると、
図3(b)に示すように、この電流により当該ユーザの人体HはV
02の電位となる(≒電圧が誘起される)。第1電極1は電位V
02から静電容量C
1を経由して分圧されて電位V
2となる。第2電極2は、電位V
2により流出する電流iがC
21とC
32によって分圧された電位となる。この流出電流iによって生じた静電容量C
21の電位差V
C2を検出回路4が検知し、増幅回路6によって増幅されたV
C2に係る出力信号が、基準電圧より大きければ、音声発生回路9から警告音が発せられ、点灯表示回路10が警告点灯する。これにより、当該ユーザは、注意喚起され、電線22が活線であり、切断対象を誤っていることが分かる。なお、前記スイッチ12がオン状態で、作業者等のユーザが、電圧が印加されていない電線22を手に持って切断しようとしても、前記音声発生回路9及び点灯表示回路10は作動しない。
【0056】
なお、上記の説明では、ペンチ等の手動の切断工具23を使って電線22を切断しようとする場合で説明したが、
図14に示すように、活線の誤切断防止センサAは、電動カッター等の電動の切断工具24であっても、同様に動作することは、言うまでもない。
【0057】
また、上記実施の形態例1では、活線の誤切断防止センサAに音声発生回路9及び点灯表示回路10を設ける構成を示したが、音声発生回路9と点灯表示回路10のいずれかを活線の誤切断防止センサAに設ける構成としても良い。あるいは、これらの回路を設けずに、比較回路8からの出力信号を送信部(図示省略)で受信して、外部に無線信号等で出力し、活線の誤切断防止センサAとは別に設けた通信機器や端末機器でこれを受信し、当該機器で警告を発報したり、表示したりする構成としても良い。即ち、第1電極1と第2電極2間のC21に流れる電流信号によって生じた電圧VC2が所定の値を超えている、あるいは所定の値以上の場合には、検出回路4から信号を出力する構成であれば良い。
【0058】
また、上記実施の形態例1では、腕時計型の活線の誤切断防止センサAを人体Hの手首に巻き付ける使用例を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、作業服の上から手首に巻き付けて使用しても良いし、作業員等のユーザのベルトに巻き付けて使用しても良い。これらの場合、作業服やベルトも誘電体としての役割を果たす。
【符号の説明】
【0059】
A 活線の誤切断防止センサ B 活線の誤切断防止センサ
C 活線の誤切断防止センサ G 大地
H 人体 W AC電線
1 第1電極 2 第2電極
4 検出回路 5 帯状体
5a バックル 5b 貫通孔
6 増幅回路 7 基準電圧発生回路
8 比較回路 9 音声発生回路
10 点灯表示回路 11 電源
12 スイッチ 15 絶縁ケース
16 絶縁ケース 16a クリップ
17 第2電極 18 作業用ヘルメット
19 バンド 20 作業靴
21 バンド 22 電線
23 手動の切断工具 24 電動の切断工具