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特開2023-5799活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005799
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20230111BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20230111BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/38
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107985
(22)【出願日】2021-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
(72)【発明者】
【氏名】明瀬 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】川端 潤
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AC00
4J039AD09
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE16
4J039BE22
4J039BE27
4J039BE28
4J039CA02
4J039EA04
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】マイグレーションを少なくするためのインクジェット用インク組成物は知られているが、それに加えて、樹脂フィルムへの十分な密着性と優れたLED硬化性を備えた上で、より厳しい性質が求められる食品包装の用途のフィルムに対して印刷を行うこと。
【解決手段】 下記(A)~(E)の要件を全て満たす活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
(A)ヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレートを全重合性成分の合計量中20.0~60.0質量%含有する
(B)エーテル結合を有する多官能モノマーを含有する
(C)アミン変性オリゴマーを全重合性成分の合計量中10.0~50.0質量%含有する
(D)重合開始剤として、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルを含有する
(E)高分子増感剤を含有する
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)~(E)の要件を全て満たす活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
(A)ヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレートを全重合性成分の合計量中20.0~60.0質量%含有する
(B)エーテル結合を有する多官能モノマーを含有する
(C)アミン変性オリゴマーを全重合性成分の合計量中10.0~50.0質量%含有する
(D)重合開始剤として、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルを含有する
(E)高分子増感剤を含有する
【請求項2】
(E)高分子増感剤がチオキサントン系化合物である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項3】
さらに、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドを、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して1.0~10.0質量部含有する請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項4】
フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルを、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して、1.0~10.0質量部含有する請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項5】
(E)高分子増感剤が(2-カルボキシメトキシチオキサントン)-(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステルである請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項6】
(F)45℃における粘度が38.0cps以上であり、かつ80℃における粘度が15cps以下である請求項1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【請求項7】
エーテル結合を有しない多官能モノマー、及び/又は、単官能アルキル(メタ)アクリレートを含有する請求項1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、アシルホスフィン構造を有する高分子開始剤、重合性化合物、着色剤を含有する、マイグレーションが少ないインクジェット用インク組成物は知られている。
そして、増感剤としてOMNIPOL TXを含有できること、重合性化合物としてトリプロピレングリコールジアクリレートやEO変性トリメチロールプロパントリアクリレートを使用できることも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-185319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献に記載のように、マイグレーションを少なくするためのインクジェット用インク組成物は知られているが、それに加えて、樹脂フィルムへの十分な密着性と優れたLED硬化性を備えた上で、より厳しい性質が求められる食品包装の用途のフィルムに対して印刷を行うまでには至っていない。インクジェット用インク組成物に限らず、インク組成物を食品包装材料に使用する場合、食品に対してインク組成物が移行(マイグレーション)することが懸念される。そして、紫外線等による硬化型インク組成物で印刷してなる印刷物では、未反応モノマーは光重合開始剤が移行する場合がある。
マイグレーションしにくい材料として高分子開始剤や一部のモノマー、オリゴマーがあるが、インクジェット用ヘッドで吐出できる粘度範囲に調整することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定の組成を有する活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物とすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
1.下記(A)~(E)の要件を全て満たす活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
(A)ヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレートを全重合性成分の合計量中20.0~60.0質量%含有する
(B)エーテル結合を有する多官能モノマーを含有する
(C)アミン変性オリゴマーを全重合性成分の合計量中10.0~50.0質量%含有する
(D)重合開始剤として、フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルを含有する
(E)高分子増感剤を含有する
2.(E)高分子増感剤がチオキサントン系化合物である1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
3.さらに、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドを、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して1.0~10.0質量部含有する1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
4.フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルを、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して、1.0~10.0質量部含有する1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
5.(E)高分子増感剤が(2-カルボキシメトキシチオキサントン)-(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステルである1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
6.(F)45℃における粘度が38.0cps以上であり、かつ80℃における粘度が15cps以下である1~5のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
7.エーテル結合を有しない多官能モノマー、及び/又は、単官能アルキル(メタ)アクリレートを含有する1~6のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、食品包装用途にも十分に使用可能な優れたマイグレーション防止性を有し、かつ樹脂フィルムへの優れた密着性とLED硬化性を備えるものである。特に、加熱した状態でインクジェット印刷を行うことができ、適切な粘度範囲に調整でき、硬化性が良好で各種基材への接着性に優れる。さらに、加熱した状態で印刷を行っても、印刷部にマイグレーションの発生を防止できるという効果を奏する。
なお活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を印刷し硬化して形成した印刷部において、未重合成分や開始剤断片含め、エタノール水溶液で抽出される成分をすべてマイグレーション成分という。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物(以下場合により単に「インク組成物」という)について、以下に説明する。なお、仮に、下記の(A)~(C)の要件の各成分のうちの複数に該当する化合物がある場合には、その化合物は、該当する全てに参入される。
また、本発明中の全重合性成分は、インク組成物が含有する各モノマー及びオリゴマーであり、硬化時において互いに反応して重合する全ての成分である。
【0008】
(A)ヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレート
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物にヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレートを含有する。その、ヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート等が挙げられる。
【0009】
そして、本発明ではこの(A)ヒドロキシ基含有単官能(メタ)アクリレートを、全重合性成分の合計量中20.0~60.0質量%含有する。そして好ましくは25.0質量%以上、更に好ましくは30.0質量%以上、より好ましくは35.0質量%以上、最も好ましくは38.0質量%以上である。また好ましくは58.0質量%以下、より好ましくは55.0質量%以下、更に好ましくは53.0質量%以下、最も好ましくは50.0質量%以下である。15.0質量%未満であると十分な硬化性や密着性を発揮できず、60.0質量%を超えると十分な硬化性を発揮できない。
【0010】
(B)エーテル結合を有する多官能モノマー
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物はエーテル結合を有する多官能モノマーを含有する。
そして、エーテル結合を有する多官能モノマーは、以下に示すように、エーテル基含有ポリ(メタ)アクリレート系化合物、エーテル基含有ポリビニル系化合物、及びビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物を包含する。
(エーテル基含有ポリ(メタ)アクリレート系化合物)
ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート((PO)NPGDA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、EO(10モル又は20モル)変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(30)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、チオビスフェノールのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、臭素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート等のビスフェノールアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート等のポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(DPGDA)、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート((PO)NPGDA)、アルコキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートやジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等が好ましい。
【0011】
(エーテル基含有ポリビニル系化合物)
ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル等が挙げられる。
【0012】
(ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物)
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、1-メチル-3-ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ビニロキシメチルプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-3-ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、1-メチル-2-ビニロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ビニロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5-ビニロキシペンチル(メタ)アクリレート、6-ビニロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ビニロキシアルキル、p-ビニロキシメチルフェニルメチル(メタ)アクリレート、m-ビニロキシメチルフェニルメチル(メタ)アクリレート、o-ビニロキシメチルフェニルメチル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
(エーテル結合を有する多官能モノマー)
そして、本発明ではこのエーテル結合を有する多官能モノマーとして、エーテル基含有ポリ(メタ)アクリレート系化合物を採用することが好ましい。
全重合性成分の合計量中の、エーテル結合を有する多官能モノマーの含有量は、好ましくは5.0質量%以上、更に好ましくは10.0質量%以上、より好ましくは13.0質量%以上、最も好ましくは15.0質量%以上である。また好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは55.0質量%以下、更に好ましくは50.0質量%以下、最も好ましくは45.0質量%以下である。
【0014】
(C)アミン変性オリゴマー
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に、光重合性化合物としてアミン変性オリゴマーを含有する。そのアミン変性オリゴマー、分子中に、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するアミン変性オリゴマーであれば特に制限されない。
そして、前記アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーが分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数は、2つ以上である多官能アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーであれば特に制限されないが、2つ以上6つ以下であることが好ましく、2つ以上4つ以下であることがより好ましい。(メタ)アクリロイル基の数が2つ以上6つ以下であると、多官能アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーが重合性化合物と反応しやすくなり、また、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の粘度が適度な範囲になりやすい。
【0015】
多官能アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、所望のモノマーを重合した合成品であってもよく、市販品であってもよい。例えば、GENOMER5161、GENOMER5275(RAHN社)、CN371、CN371NS、CN373、CN383、CN384、CN386、CN501、CN503、CN550、CN551(サートマー社)、EBECRYL80、EBECRYL81、EBECRYL83、EBECRYL7100、EBECRYL84、EBECRYLP115(ダイセル・オルネクス社)、LAROMER PO 83F、LAROMER PO 84F、Laromer LR8946、Laromer LR8956、Laromer LR8996、Laromer LR8894、(BASF社)、AgiSyn001、AgiSyn002、Agisyn003、Agisyn008(DSM Coating Resin社)、Photomer4771、Photomer4775、Photomer4967、Photomer5096、Photomer5662、Photomer5930(コグニス社)、DoublecureEPD、DoublecureOPD、Doublecure115、Doublecure225、Doublecure645、PolyQ222、PolyQ226、PolyQ224、PolyQ101(DoubleBondChemicals社)が挙げられる。なかでも、分子内に2個の光重合性官能基を有するオリゴマーが好ましく、光重合性官能基が(メタ)アクリロイル基であることがより好ましい。
【0016】
本発明中にて使用できる多官能アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量中10.0~50.0質量%含有する。そして好ましくは12.0質量%以上、更に好ましくは15.0質量%以上、より好ましくは18.0質量%以上、最も好ましくは20.0質量%以上である。また好ましくは45.0質量%以下、より好ましくは42.0質量%以下、更に好ましくは40.0質量%以下、最も好ましくは38.0質量%以下である。10.0質量%未満であると十分な硬化性を発揮できず、かつ活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を適切な粘度範囲にすることが困難であり、50.0質量%を超えると十分な硬化性を発揮できない。
【0017】
上記の(A)~(C)以外の光重合性成分であって、本発明による効果を毀損しない範囲にて含有可能な成分について以下に説明する。特に低分子量のものを多量に含有させるほど、印刷後においてマイグレーションを発生させやすい。
(その他の単官能光重合性成分)
その他の単官能光重合性成分としては、例えば以下のものが挙げられる。
(単官能アルキル(メタ)アクリレート)
単官能アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチルアクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、等の環状炭化水素基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
そして、本発明ではこの単官能アルキル(メタ)アクリレートを、全重合性成分の合計量中に、12.0質量%以下含有してもよい。中でも好ましくは5.0質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0018】
(エーテル結合を有する単官能(メタ)アクリレート)
エチルカルビトール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート。
2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノアリールエーテルの(メタ)アクリル酸エステル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマール(メタ)アクリレート等の複素環構造を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシフェニル(メタ)アクリレート(EO2モル)、エトキシフェニル(メタ)アクリレート(EO1モル)、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0019】
(その他の単官能光重合性モノマー)
アクリロイルモルフォリン、N-ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルジアミド、ジ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、ジ(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジ(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-アルキロール(C1~5)(メタ)アクリルアミド、及びこれらN-アルキロール(C1~5)(メタ)アクリルアミドの、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの1~3モル付加物等のアミド構造を有する単官能モノマー、アクリロニトリル、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、ビニルメチルオキサゾリジノン、(メタ)アクリロイルピロリジン、(メタ)アクリロイルピペリジン、ラクトン変性可とう性アクリレート等の窒素含有モノマー。スチレン、(メタ)アクリル酸、酢酸ビニル、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等の化合物等が挙げられる。
【0020】
(その他の多官能光重合性成分)
(エーテル結合を有しない多官能モノマー)
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート等のアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノベンゾエート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2-ヒドロキシ-1,3-ジ(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のアルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等のエーテル基を含有しない多官能(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられる。中でもアルキレンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0021】
(アミン変性ではないオリゴマー)
アミン変性ではないオリゴマーとしては、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含有してもよい。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、所望のモノマーを重合した合成品であってもよく、市販品であってもよい。例えば、EBECRYL3708、EBECRYL1606(ダイセル・サイテック社)、CN116、CN120B60、CN120M50、CN131B、CN132、CN137、CN152、CN153、CN2102E、CN2003(サートマー社)が挙げられる。
【0022】
(D)重合開始剤
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に、光重合開始剤としてフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル(TPO-L)を含有する。そして、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して、1.0~10.0質量部となるように含有することが好ましい。
これに加えて、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(Omnirad819)を含有させることができる。そして、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して、1.0~10.0質量部となるように含有することが好ましい。
また、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(TPO)を含有させても良く、させなくても良い。
【0023】
(その他の光重合開始剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、本発明による効果を毀損しない範囲で、上記以外の光重合開始剤を含有しても良い。その光重合開始剤は、活性エネルギー線を受けて重合を開始させるものであれば特に制限されず、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に使用される光重合開始剤を用いることができる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、発光ダイオード(LED)光に対する硬化性が良好である観点から、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキシド系光重合開始剤が好ましい。前記光重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
このような光重合開始剤としては、例えば、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0025】
(E)高分子増感剤
本発明においては高分子増感剤を使用する。チオキサントン系高分子増感剤やアシルフォスフィン系高分子増感剤として、Omnipol-TX((2-カルボキシメトキシチオキサントン)-(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル)(数平均分子量:660)(IGM Resins B.V.社製)、及び、SpeedCure 7010(分子量1839)(ランブソン社製)や、Genopol TX-1(数平均分子量:820)(RaHN社製)等、さらに、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパン)(Lamberti社製、「ESACURE KIP 150」、「ESACURE1」)、ポリエチレングリコール200-ジ(β-4(4-(2-ジメチルアミノ-2-ベンジル)ブタノニルフェニル)ピペラジン)(IGM社製、「Omnipol 910」)、(2-カルボキシメトキシチオキサントン)-(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol TX」)、(カルボキシメトキシメトキシベンゾフェノン)-(ポリエチレングリコール250)ジエステル(IGM社製、「Omnipol BP」)等があげられる。これらは単独で用いても、複数組み合わせて用いてもよい。
本発明において高分子増感剤を含有させることにより、硬化性を向上させると共に、マイグレーションしにくい高分子増感剤にすることにより、硬化後に残留する揮発性成分やマイグレーション成分を削減できる。
活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の全重合性成分の合計量100質量部に対して、高分子増感剤を0.5~10.0質量部となるように含有することが好ましい。そして、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上、最も好ましくは2.0質量部以上であり、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下、最も好ましくは3.5質量部以下である。
【0026】
(その他の増感剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、本発明による効果を毀損しない範囲において、硬化性を向上させる観点から、その他の増感剤を含んでいてもよい。前記増感剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
その他の増感剤は特に限定されないが、チオキサントン系、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、アントラキノン系、クマリン系などが挙げられる。これらの中でも、特に2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物や、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセンなどのアントラセン系化合物、ミヒラーケトン、4,4´-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなど4,4’-ジアルキルアミノベンゾフェノン類等が挙げられる。
【0027】
(顔料)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、任意の顔料を含有できる。
その顔料としては、インクジェット用インク組成物に使用される、各種の有機顔料及び無機顔料である。
前記有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジコ系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、アントラキノン系顔料、フラバンスロン系顔料、キノフタロン系顔料、ピランスロン系顔料、インダンスロン系顔料などが挙げられる。また、前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、亜鉛華、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。前記顔料は、公知の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。
【0028】
前記顔料の代表的な色相ごとの具体例としては、以下のものが挙げられる。
イエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213などが挙げられる。
【0029】
マゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270などが挙げられる。
【0030】
シアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60などが挙げられる。
【0031】
オレンジ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Orange 1、2、3、4、5、13、15、16、17、19、24、31、34、36、38、40、43、46、48、49、51、60、61、62、64、65、66、67、68、69、71、72、73、74、81などが挙げられる。
【0032】
バイオレット顔料としては、例えば、C.I.Pigment Violet 1、2、3、3:1、3:3、5:1、13、17、19、23、25、27、29、31、32、36、37、38、42、50などが挙げられる。
【0033】
ブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)などが挙げられる。
【0034】
ホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウムなどが挙げられ、これらはアルミナ、シリカなどの種々の材料で表面処理されていてもよい。
【0035】
(顔料分散剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物において、顔料分散剤を使用することが好ましい。
前記顔料分散剤は、顔料の分散性、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の保存安定性を向上させるために使用するもので、従来から使用されているものを特に制限なく使用できるが、その中でも高分子顔料分散剤を使用することが好ましい。前記顔料分散剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
前記高分子顔料分散剤としては、例えば、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤などが挙げられる。
そのような高分子顔料分散剤としては、BYKJET-9150、BYKJET-9151、BYKJET-9170、DISPERBYK-168、DISPERBYK-190、DISPERBYK-198、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2012、DISPERBYK-2015(ビックケミー社)、SMA1440、SMA2625、SMA17352、SMA3840、SMA1000、SMA2000、
SMA3000(CrayValley社)、JONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL680、JONCRYL682、JONCRYL690、JONCRYL819、JONCRYL-JDX5050、EFKA4550、EFKA4560、EFKA4585、EFKA4701、EFKA5220、EFKA6230(BASF社)、SOLSPERSE20000、SOLSPERSE27000、SOLSPERSE36000、SOLSPERSE41000、SOLSPERSE41090、SOLSPERSE43000、SOLSPERSE44000、SOLSPERSE46000、SOLSPERSE47000、SOLSPERSE54000、SOLSPERSE56000(ルーブリゾール社)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881(味の素ファインテクノ社)等が挙げられる。
【0037】
顔料分散剤の含有量は、顔料の分散性及び活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の貯蔵安定性を高める観点から、顔料合計質量に対して、1.0質量%以上であることが好ましく、5.0質量%以上であることがより好ましく、また、100質量%以下であることが好ましく、60.0質量%以下であることがより好ましい。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、その他の成分として、界面活性剤、有機溶剤、重合禁止剤、保存性向上剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤等の各種添加剤を含有してもよい。
【0039】
(界面活性剤)
本発明の光硬化型インクジェット用インク組成物には、使用するインクジェットヘッドに応じて、光硬化型インクジェット用インク組成物に使用される公知の界面活性剤が特に制限なく使用でき、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤などが挙げられる。前記界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
前記シリコーン系界面活性剤としては、BYK-307、BYK-315N、BYK-331、BYK-333、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-3455(ビックケミー社)などが挙げられる。
【0041】
前記フッ素系界面活性剤としては、F-410、F-444、F-553(DIC社)、FS-65、FS-34、FS-35、FS-31、FS-30(デュポン社)などが挙げられる。
【0042】
前記アセチレン系界面活性剤としては、ダイノール607、ダイノール609、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300(日信化学社)、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465(EVONIK社)などが挙げられる。
【0043】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物中、前記界面活性剤の割合は、インク組成物の表面張力を低下させ、インクジェットヘッドからの吐出安定性を高める観点から、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、そして、配合中に発生するインク組成物中の泡を抑制し、吐出安定性を高める観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
(溶剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は無溶剤であるが、必要に応じ、溶剤を配合することができる。前記溶剤としては、エステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤などが挙げられる。また、前記溶剤としては、1気圧下における沸点が150~220℃であるものが挙げられる。前記溶剤は、インク組成物の硬化性、環境問題などの観点から、極力使用されないことが好ましい。前記溶剤の割合は、インク組成物中、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0045】
<添加剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物には、必要に応じて種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤を添加することができる。具体的には、表面調整剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、表面処理剤、保存性向上剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等が挙げられる。また、ビヒクルとして機能するが硬化性ではない樹脂を配合しても良く、配合しなくても良い。また、溶媒を含有させても良いが、含有しなくても良い。
【0046】
(表面調整剤)
表面調整剤が含有される場合において、表面調整剤の含有量は特に限定されず、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の表面張力が22.0~30.0mN/mとなる含有量であることが好ましく、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物中に0.10~1.50質量%であることがより好ましい。
【0047】
(保存性向上剤)
保存性向上剤として、N-CH3タイプ、N-Hタイプ、N-ORタイプ等のヒンダードアミンを使用できる。
【0048】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等である。
【0049】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等である。
【0050】
(消泡剤)
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック(登録商標)系消泡剤等である。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の、45℃における粘度は、30.0cps以上が好ましく、35.0cps以上がより好ましく、40.0cps以上が更に好ましく、50.0cps以上が最も好ましい。また、1000.0cps以下が好ましく、100.0cps以下がより好ましく、80.0cps以下が更に好ましく60.0cps以下が最も好ましい。
また、80℃における粘度は、6.0cps以上が好ましく、6.5cps以上がより好ましく、7.0cps以上が更に好ましく、7.5cps以上が最も好ましい。また、15.0cps以下が好ましく、12.0cps以下がより好ましく、11.0cps以下が更に好ましく、10.0cps以下が最も好ましい。
そして、インク組成物は、必要に応じて粘度調整剤等が配合される。なお、本願明細書に記載の粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業(株)製)を用いて、45℃及び80℃、20rpmの条件で測定した粘度である。
【0052】
<活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の調製方法>
次に、これらの材料を用いて本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を製造する方法について説明する。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して各成分を分散混合し、必要により活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物の粘度を調整して得ることができる。なお、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物は、顔料と上記顔料分散剤及び上記光重合性モノマーを混合することにより、予めベースインク組成物を得て、そこに所望の組成となるよう上記の成分の残余の分を添加して調製してもよい。
【0053】
<印刷方法>
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物による印刷方法を説明する。
使用するインクジェット印刷装置は、インク組成物を所定の温度に加熱する機構を有するものであれば特に限定されない。活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を、インクジェット記録方式用プリンター装置のプリンターヘッドに供給し、このプリンターヘッドからインク組成物を印刷対象の基材に吐出した後、基材に着弾したインク組成物を活性エネルギー線で露光し硬化させる方法などが挙げられる。活性エネルギー線としては、発光ダイオード(LED)や各種ランプや電極から照射される紫外線、電子線、可視光線等が挙げられる。特に発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性に優れる。
印刷時において、上記の加熱する機構によりインク組成物の加熱温度としては50~90℃が好ましい。
インクジェット印刷装置を用い、ヘッド吐出時に高温で吐出することにより、マイグレーションしにくい材料(=分子量が高い、または極性基によって相互作用しやすい材料)を選定できる。
また基材も特に限定されず、従来公知のエネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物が適用可能な基材であれば特に限定されず、前記基材としては、例えば、プラスチック、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布などが挙げられる。また、前記プラスチックとしては、例えば、ポリカーボネート、硬質塩化ビニル、軟質塩化ビニル、ABS、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリスチレンなどが挙げられる。
【0054】
本発明のインク組成物を印字、硬化する方法として、具体的には、本発明のインク組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明のインク組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用プリンターの加熱装置を介して用いてプリンターヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンターヘッドから吐出することにより行うことができる。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明のインク組成物の塗膜に光を照射することにより行うことができる。
本発明のインク組成物を印字するインクジェット記録方式用プリンター装置としては、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置が利用できる。なお、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式用プリンター装置を用いる場合は、本発明のインク組成物に更に導電性付与剤を加え電導度の調節をする。
上記塗膜の硬化における光源としては、紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができ、環境面から好ましくは発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)である。
【実施例0055】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
下記表1に記載の各実施例及び各比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を調製し、それぞれの活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物に関する試験結果性質を表1に記載した。
P.Y.150 : ピグメントイエロー150
P.R.122 : ピグメントレッド122
P.R.254 : ピグメントレッド254
P.B.15:4 : ピグメントブルー15:4
P.Bk.7 : カーボンブラック
S56000 : 水溶性高分子分散剤(ソルスパーズS56000、日本ルーブリゾール社)
BYKJET9151 : 水溶性高分子分散剤(BYKJET-9151、BYK
社)
S36000 : 水溶性高分子分散剤(ソルスパーズS36000、日本ルーブリゾール社)
CN371NS : アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー(「Sartomer CN371NS」、サートマーアルケマ社)
CN373 : アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー(サートマーアルケマ社)
Agisyn008 : アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー(DSM-Agi社)
Agisyn003 : アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマー(DSM-Agi社)
(PO)NPGDA : ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート
DPGDA : ジプロピレングリコールジアクリレート
TPO : 光重合開始剤 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド
TPO-L : 光重合開始剤 フェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチル
Omnirad819 : 光重合開始剤 ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェノキシホスフィンオキサイド (IGM Resins B.V.社)
Omnipol TX : 高分子増感剤 (2-カルボキシメトキシチオキサントン)-(ポリテトラメチレングリコール250)ジエステル (IGM Resins B.V.社)
UV22 : キノン系重合禁止剤(BASF社)
BYK-377 : シリコン系表面調整剤(ビックケミー社)
【0056】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物をE型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度45℃及び80℃で、ローター回転速度20rpmの条件で、粘度(cps)を測定した。
【0057】
(密着性)
実施例及び比較例で得た活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(ルミラー(東レ社))及びPP(ポリプロピレン)フィルム(ユポ80(UV)PA-T1(ユポ社))に#4のバーコーターを用いて、25℃の条件下で塗布し、フォセオン・テクノロジー社製UV-LED光ランプにて、ランプとインクの塗布面との距離2cm、1回当たりの照射時間1秒の照射条件(1秒間当たりのUV積算光量60mJ/cm)下で、2回の照射をして、硬化塗膜を形成した。
得られた硬化塗膜表面に、カッターナイフでクロスカットし、100個正方形の小片の硬化塗膜とした。このカットした部分にセロハンテープ(ニチバン社製商品名セロテープ(登録商標))を貼り、これを引き剥がして、セロハンテープに粘着して剥離せずに、基材上に残った正方形の小片の数を数えた。例えば、100/100は1つも剥離せずに全ての小片が基材に残ったものであり、20/100は20個の小片が基材上に残り、80個の小片がセロハンテープに粘着して剥離したことを示す。
【0058】
(LED硬化性)
25℃の雰囲気温度下に、インクジェット記録装置と、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物とを24時間置き、インクジェット記録装置及びインク組成物の温度を25℃とした。その後、25℃で、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物をPVC80(リンテック社製)上に塗布した。
次いで、フォセオン・テクノロジー社製UV-LED光ランプにて、ランプとインクの塗布面との距離2cm、1回当たりの照射時間1秒の照射条件(1秒間当たりのUV積算光量60mJ/cm)下で、表面のタックがなくなるまでの照射回数にて評価した。
その照射回数を表1に示す。
【0059】
(マイグレーション試験)
印刷条件:シングルパスプリンターでPPフィルム(商品名「P-2161」、東洋紡社)に印刷速度48m/minで印刷し、次いでLED照射(照射エネルギー500mJ)して硬化した。得られた印刷物を13mm×13mmにカットした。
このフィルムを、200mL程度の50%エタノール水溶液中に入れて、40℃、10日間放置した。
放置後、エタノール水溶液を回収し、内部標準溶液を添加した。
回収したエタノール水溶液を固相抽出カートリッジに通し、メタノール1mlで保持された成分を溶出させる (200倍に濃縮される)
得られた溶液をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)による分析により、塗膜マイグレーションした量を測定した。この量を測定することにより、マイグレーションの発生の傾向を確認できる。
【0060】
【表1】
【0061】
本発明に沿った例である各実施例によれば、活性エネルギー線硬化型インクジェット用インク組成物として、80℃において適切な範囲の粘度であり、各種基材への密着性及びLED硬化性に優れていた。更に、塗膜のマイグレーション量は極めて少なかった。
これに対して、(B)エーテル結合を有する多官能モノマーを含有しない比較例1、2及びフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸エチルを含有しない比較例5によれば、塗膜のマイグレーション量が極めて多量であった。
また、イソボルニルアクリレート又はベンジルアクリレートを含有した比較例3及び4によっても、多量のマイグレーション量が生じた。
高分子増感剤を含有しない比較例6及びアミン変性オリゴマーの含有量が少ない比較例7によれば、LED硬化性に劣っていた。