(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057992
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】銀微粒子
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20230417BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20230417BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20230417BHJP
B22F 9/14 20060101ALN20230417BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F1/05
H01L21/52 E
B22F9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022060374
(22)【出願日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2021167745
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000226954
【氏名又は名称】日清エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】末安 志織
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 周
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
5F047
【Fターム(参考)】
4K017AA03
4K017BA02
4K017CA07
4K017EF01
4K018BA01
4K018BB04
4K018KA32
5F047AA17
5F047BA00
(57)【要約】
【課題】体積収縮を抑制し、かつ導電性が高い銀微粒子を提供する。
【解決手段】銀微粒子はBET法により測定された粒径が0.1μm以上1μm以下であり、ペレットの状態で大気中において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値が10μΩ・cm以下、かつ体積収縮率が5%未満である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法により測定された粒径が0.1μm以上1μm以下であり、
ペレットの状態で大気中において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値が10μΩ・cm以下、かつ体積収縮率が5%未満である、銀微粒子。
【請求項2】
粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で40%以下である、請求項1に記載の銀微粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、高周波デバイス、発光ダイオード又は半導体レーザー等と基板等との接合、又は配線等に用いられる銀微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム、又はダイヤモンド等のワイドバンドギャップ半導体を用いたパワー半導体素子が開発されている。パワー半導体素子は、Si又はGaAsを用いた半導体素子に比べてオン抵抗が低く、高速スイッチイングさせることが可能であり、小型化もできる。しかもパワー半導体素子は、耐熱性が高く250~300℃の高温でも動作が可能である。
半導体素子と基板等との接合には、従来からはんだが利用されている。しかしながら、パワー半導体素子は、動作温度が従来の半導体素子に比べて高く、はんだを用いた接合では、はんだが融解しない温度で使用する必要がある。はんだを接合に用いた場合、パワー半導体素子は使用に制約を受ける。このように、接合材料についても高い温度で使用できることが要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、共晶AuGeはんだを用いて、SiC半導体素子を接合することが記載されている。
はんだ以外に、接合材料として、特許文献2に、低温焼結性銀微粒子及び熱硬化型バインダを含み、熱硬化型バインダが、(B1)フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル及びそれらのC1~C4アルキル置換体からなる群より選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂、並びに(B2)カチオン重合開始剤、アミン系硬化剤及び酸無水物硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤からなり、銀微粒子100質量部に対して、熱硬化型バインダが2~7質量部である熱伝導性ペーストが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5856314号公報
【特許文献2】特許第6343041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、特許文献1のようにAuGeはんだを用いた場合、熱膨張係数が大きく、パワー半導体素子の動作に伴う温度変化により体積が変動してクラック等が生じ、十分な接合が維持できない。また、AuGeはんだは、銅又は銀等に比べて融点が低く、耐熱性も十分ではない。
特許文献2のように熱硬化型バインダを含有する場合、体積収縮率は小さくできるが、体積抵抗値が大きく、導電性が十分ではない。
このように、接合材料として、耐熱性を満足しつつ、導電性に優れたものがないが現状である。
【0006】
本発明の目的は、体積収縮を抑制し、かつ導電性が高い銀微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様は、BET法により測定された粒径が0.1μm以上1μm以下であり、ペレットの状態で大気中において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値が10μΩ・cm以下、かつ体積収縮率が5%未満である、銀微粒子を提供するものである。
粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で40%以下であることが好ましい。なお、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で35%以下であることがより好ましく、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で5%以下であることがさらに好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、体積収縮を抑制し、かつ導電性が高い銀微粒子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の銀微粒子の利用形態の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の銀微粒子の製造装置の一例を示す模式図である。
【
図3】本発明の実施例1、2の銀微粒子の粒度分布を示すグラフである。
【
図4】本発明の実施例1の銀微粒子のSEM像を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施例2の銀微粒子のSEM像を示す模式図である。
【
図6】従来の銀微粒子のSEM像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の銀微粒子を詳細に説明する。
なお、以下に説明する図は、本発明を説明するための例示的なものであり、以下に示す図に本発明が限定されるものではない。
以下、銀微粒子について説明する。
【0011】
[銀微粒子]
銀微粒子は、BET法により測定された粒径が0.1μm以上1μm以下であり、ペレットの状態で大気中において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値が10μΩ・cm以下、かつ体積収縮率が5%未満である。
本発明において、大気中とは、一般に空気中と呼ばれる雰囲気のことである。大気中のことを、大気雰囲気ともいう。空気の組成は、窒素78.08体積%、酸素20.95体積%、アルゴン0.93体積%、二酸化炭素0.03体積%である。なお、空気の組成に対して一般的な測定誤差は許容される。
粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で40%以下であることが好ましい。なお、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で35%以下であることがより好ましく、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で5%以下であることがさらに好ましい。また、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合の下限値は、体積基準で0%である。
また、銀微粒子の粒径は、ペレットの状態で大気中(すなわち、空気中)において温度150℃で1時間焼成した後の体積収縮率が小さくなることから、100~400nmが好ましく、200nm~400nmがさらに好ましい。
銀微粒子のBET法により測定された粒径とは、BET法を用いて測定された平均粒子径である。BET法では、粒子が球形であることを仮定して比表面積から算出している。
銀微粒子は、溶媒内等に分散されている状態ではなく、銀微粒子単独で存在する。このため、銀微粒子を利用する場合、銀微粒子だけで焼成体を得ることができる。
また、銀微粒子を溶媒と組み合わせて使用する場合、銀微粒子と溶媒との組合せも特に限定されるものではなく、溶媒の選択の自由度が高い。
【0012】
体積抵抗値としては、9μΩ・cm以下であることが好ましく、8μΩ・cm以下であることがより好ましく、7μΩ・cm以下であることが最も好ましい。また、体積抵抗値の下限値は、1.47μΩ・cmである。
また、体積収縮率としては、3%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましく、0%であることが最も好ましい。また、体積収縮率の下限値は、0%である。
また、銀微粒子は、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で40%以下であると、焼成後にクラックが発生することが抑制されるため、好ましい。
銀微粒子において、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合は、銀微粒子のSEM(走査電子顕微鏡)像を取得し、SEM像を画像解析することによって得られた体積基準の粒度分布から求める。すなわち、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合は、銀微粒子全体の体積に対する割合として求められる。
【0013】
焼成については、銀微粒子を円筒状のペレットに成形し、ペレットを電気炉内に設置し、大気中において温度150℃で1時間焼成する。
ペレットは、銀微粒子をプレス機を用いて、圧力127MPaで10秒間保持して作製する。
体積抵抗値は、ペレットを用いて四端子法にて測定して得られた値である。例えば、測定装置には三菱化学株式会社製ロレスタEP(MCP-T360)が用いられる。焼成の前後でペレットの体積抵抗値を測定することにより、焼成後の体積抵抗値の変化を測定できる。
【0014】
体積収縮率は、銀微粒子を、上述のようにプレス機を用いて、圧力127MPaで10秒間保持して円筒状のペレットを作製し、円筒状のペレットの厚みと直径をノギスにて測定し、焼成前後のペレットの体積から算出した値である。体積収縮率は、下記式により得られる。また、ペレットの焼成には電気炉を用いる。
体積収縮率(%)=100-((焼成後の体積/焼成前の体積)×100)
【0015】
銀微粒子は、BET法により測定された粒径が0.1μm以上1μm以下であり、ペレットの状態で大気中において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値が10μΩ・cm以下、かつ体積収縮率が5%未満であることにより、体積収縮を抑制し、かつ導電性が高い。また、銀微粒子は、はんだ等に比べて融点が高く、耐熱性も優れる。このため、銀微粒子を接合材料に用いた場合、耐熱性を満足しつつ、導電性に優れたものとすることができる。
また、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合が、体積基準で40%以下であると、粒径が大きなものが揃うため、銀微粒子の焼成後に、体積が収縮することを更に抑制できるため、好ましい。
【0016】
図1は本発明の銀微粒子の利用形態の一例を示す模式図である。
銀微粒子は、例えば、
図1に示す基板50とパワー半導体素子52との接合に利用される。銀微粒子は、ダイアタッチメントに利用される。
銀微粒子は、基板50とパワー半導体素子52とを接合する接合部54を構成する。接合部54は、銀微粒子を、例えば、温度150℃で1時間、大気中で焼成することにより形成される。接合部54により、基板50とパワー半導体素子52とが接合され、基板50とパワー半導体素子52とは物理的に固定される。
銀微粒子は、融点が、はんだ及び樹脂に比して高く耐熱性が高い。また、銀微粒子は、上述のようにペレットの状態で大気中において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値が10μΩ・cm以下、かつ体積収縮率が5%未満である。このことから、パワー半導体素子52の動作に伴い温度変化が生じても接合部54は体積変動が小さく、クラックの発生等が抑制される。これにより、接合が維持され、高い耐久性も得られる。また、銀微粒子は、焼成後の体積抵抗値が低いため、熱伝導性も優れ、接合部54により、パワー半導体素子52で発生した熱を基板50に効率良く伝導できる。
基板50は、例えば、Si
3N
4等のセラミックス基板に銅配線が設けられたものである。
パワー半導体素子52は、例えば、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム、又はダイヤモンド等の半導体を用いた半導体素子である。
なお、銀微粒子は、パワー半導体素子52との接合に限定されるものではなく、高周波デバイス、発光ダイオード又は半導体レーザー等の接合にも利用できる。銀微粒子は、発熱量が多いもの、動作温度が高いものとの接合に好適である。
また、銀微粒子は、接合以外に、信号配線、及び導電配線等の各種の配線にも利用できる。
【0017】
[銀微粒子の製造方法]
次に、銀微粒子の製造方法の一例について、
図2に基づいて説明するが、本発明の銀微粒子の製造方法は、
図2に示す銀微粒子の製造装置を用いた製造方法に限定されない。
図2は本発明の銀微粒子の製造装置の一例を示す模式図である。
図2に示す銀微粒子の製造装置10(以下、単に製造装置10という)により、上述の銀微粒子を得ることができる。
【0018】
製造装置10は、熱プラズマ炎を発生させるプラズマトーチ12と、銀微粒子の原料粉末をプラズマトーチ12内へ供給する材料供給装置14と、銀の1次微粒子15を生成させるための冷却槽としての機能を有するチャンバ16と、銀の1次微粒子15から任意に規定された粒径以上の粒径を有する粗大粒子を除去するサイクロン19と、サイクロン19により分級された所望の粒径を有する銀の2次微粒子18を回収する回収部20とを有する。チャンバ16とサイクロン19とは接続管21aにより接続されている。また、サイクロン19と回収部20とは、内管19eに接続された接続管21bにより接続されている。
製造装置10は、さらに、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18に表面処理剤を供給する供給部40とを有する。
銀の1次微粒子15及び銀の2次微粒子18は、いずれも本発明の微粒子の製造途中の微粒子体である。銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18を表面処理して得られたもの、すなわち、表面処理された銀微粒子30が本発明の微粒子である。
材料供給装置14、チャンバ16、サイクロン19、回収部20については、例えば、特開2007-138287号公報の各種装置を用いることができる。
【0019】
本実施形態において、微粒子の製造には、原料として、例えば、銀の粉末が用いられる。
銀の粉末は、熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、その平均粒径が適宜設定される。銀の粉末の平均粒径は、レーザー回折法を用いて測定されたものであり、例えば、100μm以下であり、好ましくは50μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。
【0020】
プラズマトーチ12は、石英管12aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル12bとで構成されている。プラズマトーチ12の上部には微粒子の原料粉末をプラズマトーチ12内に供給するための後述する供給管14aがその中央部に設けられている。プラズマガス供給口12cが、供給管14aの周辺部(同一円周上)に形成されており、プラズマガス供給口12cはリング状である。高周波発振用コイル12bには高周波電圧を発生する電源(図示せず)が接続されている。高周波発振用コイル12bに高周波電圧が印加されると熱プラズマ炎24が発生する。熱プラズマ炎24により、原料(図示せず)が蒸発し、気相状態の混合物になる。プラズマトーチ12が、気相法を用いて原料を気相状態の混合物にする処理部である。
【0021】
プラズマガス供給部22は、プラズマガスをプラズマトーチ12内に供給するものである。プラズマガス供給部22は配管22aを介してプラズマガス供給口12cに接続されている。プラズマガス供給部22は図示はしないが供給量を調整するためのバルブ等の供給量調整部が設けられている。プラズマガスは、プラズマガス供給部22からリング状のプラズマガス供給口12cを経て、矢印Pで示す方向と矢印Sで示す方向からプラズマトーチ12内に供給される。
【0022】
プラズマガスには、例えば、水素ガスとアルゴンガスの混合ガスが用いられる。この場合、プラズマガス供給部22に、水素ガスと、アルゴンガスとが貯蔵される。プラズマガス供給部22から水素ガス、及びアルゴンガスが配管22aを介してプラズマガス供給口12cを経て、矢印Pで示す方向と矢印Sで示す方向からプラズマトーチ12内に供給される。なお、矢印Pで示す方向にはアルゴンガスだけを供給してもよい。
また、プラズマガスには、銀微粒子に応じたものが用いられるため、上述のように混合ガスを用いることは必須ではなく、プラズマガスとしては1種のガスでもよい。
高周波発振用コイル12bに高周波電圧が印加されると、プラズマトーチ12内で熱プラズマ炎24が発生する。
【0023】
熱プラズマ炎24の温度は、原料粉末の沸点よりも高い必要がある。一方、熱プラズマ炎24の温度が高いほど、容易に原料粉末が気相状態となるので好ましいが、特に温度は限定されるものではない。例えば、熱プラズマ炎24の温度を6000℃とすることもできるし、理論上は10000℃程度に達するものと考えられる。
また、プラズマトーチ12内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、0.5~100kPaである。
【0024】
なお、石英管12aの外側は、同心円状に形成された管(図示されていない)で囲まれており、この管と石英管12aとの間に冷却水を循環させて石英管12aを水冷し、プラズマトーチ12内で発生した熱プラズマ炎24により石英管12aが高温になりすぎるのを防止している。
【0025】
材料供給装置14は、供給管14aを介してプラズマトーチ12の上部に接続されている。材料供給装置14は、原料をプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給するものである。
材料供給装置14は、原料を熱プラズマ炎24中に供給することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、原料を粒子状に分散させた状態で熱プラズマ炎24中に供給する。
【0026】
原料が粉末の場合、例えば、銀の粉末を、粉末の形態で供給する材料供給装置14としては、上述のように、例えば、特開2007-138287号公報に開示されているものを用いることができる。この場合、材料供給装置14は、例えば、原料を貯蔵する貯蔵槽(図示せず)と、原料を定量搬送するスクリューフィーダ(図示せず)と、スクリューフィーダで搬送された原料が最終的に散布される前に、これを一次粒子の状態に分散させる分散部(図示せず)と、キャリアガス供給源(図示せず)とを有する。
【0027】
キャリアガス供給源から押出し圧力がかけられたキャリアガスとともに原料は供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中へ供給される。
材料供給装置14は、原料の凝集を防止し、分散状態を維持したまま、原料をプラズマトーチ12内に散布することができるものであれば、その構成は特に限定されるものではない。キャリアガスには、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。キャリアガス流量は、例えば、フロート式流量計等の流量計を用いて制御することができる。また、キャリアガスの流量値とは、流量計の目盛り値のことである。
【0028】
チャンバ16は、プラズマトーチ12の下方に隣接して設けられており、チャンバ16内で、冷却ガスを用いることなく、上述の気相状態の混合物から、微粒子体である銀の1次微粒子15が生成される。チャンバ16は冷却槽として機能するものである。なお、冷却ガスは、急冷ガスとも呼ばれるものであり、アルゴンガス等が用いられる。
【0029】
気体供給部28は、例えば、接続管21a内又は接続管21b内に、不活性ガスを含む温度調整ガスを供給するものである。気体供給部28は、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18に不活性ガスを含む温度調整ガスを供給する。
気体供給部28は、例えば、バルブ28aと、バルブ28aに接続された第1の気体供給管28bと第2の気体供給管28cとを有する。第1の気体供給管28bは接続管21aに接続され、第2の気体供給管28cは接続管21bに接続されている。
バルブ28aを切換えることにより第1の気体供給管28b又は第2の気体供給管28cのいずれかに温度調整ガスが供給され、接続管21a内又は接続管21b内に温度調整ガスが供給される。
【0030】
気体供給部28は、さらに第1の気体供給管28b又は第2の気体供給管28cに供給する温度調整ガスに押出し圧力をかけるコンプレッサ、又はブロア等の圧力付与装置(図示せず)を有する。
また、気体供給部28は、温度調整ガスを貯蔵する貯蔵部(図示せず)と、ガス供給量を制御する圧力制御弁とを有する。温度調整ガスは、例えば、アルゴンガスである。
気体供給部28から接続管21a内又は接続管21b内に供給される温度調整ガスにより、所望のガス温度に調整することができる。
【0031】
図2に示すように、チャンバ16には、銀の1次微粒子15を所望の粒径で分級するためのサイクロン19が設けられている。このサイクロン19は、チャンバ16から1次微粒子15を供給する入口管19aと、この入口管19aと接続され、サイクロン19の上部に位置する円筒形状の外筒19bと、この外筒19b下部から下側に向かって連続し、かつ、径が漸減する円錐台部19cと、この円錐台部19c下側に接続され、上述の所望の粒径以上の粒径を有する粗大粒子を回収する粗大粒子回収チャンバ19dと、後に詳述する回収部20に接続され、外筒19bに突設される内管19eとを備えている。チャンバ16と入口管19aとは接続管21aにより接続されており、1次微粒子15は接続管21aを通ってサイクロン19に移動する。接続管21aは1次微粒子15の搬送路である。
【0032】
サイクロン19の入口管19aから、1次微粒子15を含んだ気流が、外筒19b内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が
図2中に矢印Tで示すように外筒19bの内周壁から円錐台部19c方向に向かって流れることで下降する旋回流が形成される。
そして、上述の下降する旋回流が反転し、上昇流になったとき、遠心力と抗力のバランスにより、粗大粒子は、上昇流にのることができず、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。また、遠心力よりも抗力の影響をより受けた微粒子は、円錐台部19c内壁での上昇流とともに内管19e及び接続管21bを経てサイクロン19外に排出される。
【0033】
また、内管19e及び接続管21bを通して、後に詳述する回収部20から負圧(吸引力)が生じるようになっている。そして、この負圧(吸引力)によって、上述の旋回する気流から分離した微粒子が、符号Uで示すように吸引され、内管19e及び接続管21bを通して回収部20に送られるようになっている。
【0034】
サイクロン19内の気流の出口である内管19eの延長上に所望のナノメートルオーダの粒径を有する銀微粒子30を回収する回収部20が設けられている。回収部20は、回収室20aと、回収室20a内に設けられたフィルター20bと、回収室20a内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ29とを備える。サイクロン19から送られた銀微粒子30は、真空ポンプ29で吸引されることにより、回収室20a内に引き込まれ、フィルター20bの表面で留まった状態にされて回収される。
なお、上述の製造装置10において、使用するサイクロンの個数は、1つに限定されず、2つ以上でもよい。
【0035】
供給部40は、チャンバ16内、接続管21aにおける第1の気体供給管28bの下流、又は接続管21bにおける第2の気体供給管28cの下流で、銀の微粒子に表面処理剤Stを供給するものである。ここで、接続管21aに対してチャンバ16側を上流側といい、サイクロン19側を下流側という。
供給部40は、例えば、バルブ41と、バルブ41に接続された第1供給管41aと第2供給管41bと第3供給管41cとを有する。第1供給管41aがチャンバ16の側面16bに接続されている。第2供給管41bが接続管21aに第1の気体供給管28bの下流で接続され、第3供給管41cが接続管21bに第2の気体供給管28cの下流で接続されている。第1供給管41aは、例えば、チャンバ16において、接続管21aが接続された位置と同程度か、又はそれ以下の高さに接続されている。表面処理剤Stは第1供給管41aを経てチャンバ16の内側壁16aからチャンバ16内に供給される。
第2供給管41bの接続管21aにおける接続位置をP1とし、第3供給管41cの接続管21bにおける接続位置をP2とする。第3供給管41cの接続位置P2は、第2供給管41bの接続位置P1よりも下流にある。
供給部40は、チャンバ16内の銀の1次微粒子15、接続管21aを通る銀の1次微粒子15又は接続管21bを通る銀の2次微粒子18に表面処理剤Stを供給する。
供給部40は、表面処理剤Stに適する温度領域で、表面処理剤Stを供給するものである。銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18に表面処理剤Stが付着し、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18が表面処理されて、銀微粒子の融着が防止されて、銀微粒子30が得られる。
供給部40による表面処理剤Stの供給方法は、特に限定されるものではなく、例えば、表面処理剤Stを液滴化して銀の2次微粒子18に噴霧する方法が例示される。
【0036】
上述のように、表面処理剤Stは適する温度領域で供給される。適する温度領域とは、表面処理剤Stが、銀微粒子の融着を防ぐ役割を果たすことができる温度領域である。したがって、銀微粒子の融着を防ぐことができれば、表面処理剤Stが変性する温度領域から導入してもよく、表面処理剤Stが変性しない温度領域から導入してもよい。
なお、表面処理された微粒子の表面状態は、例えば、FT-IR(フーリエ変換赤外分光光度計)を用いて調べることができる。
【0037】
上述の銀微粒子の融着を防ぐ役割を果たすことができる温度領域とは1次微粒子15を表面処理剤Stの変性で生じた有機物もしくは表面処理剤Stで被覆できる温度領域である。上述の表面処理剤Stが変性しない温度領域とは、示差熱―熱重量同時測定(TG-DTA)により測定した温度を基に決定される温度領域のことである。
上述の表面処理剤Stが変性しない温度領域は、表面処理剤Stの示差熱―熱重量同時測定において、重量減少割合が50質量%以下である温度領域とする。重量減少割合は、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
なお、示差熱―熱重量同時測定には、株式会社日立ハイテクサイエンスのSTA7200(商品名)が用いられる。
【0038】
表面処理剤Stは、特に限定されるものではないが、例えば、有機酸単体及び有機酸溶液、並びにアミン基を有する有機物及びアミン基を有する有機物の溶液である。
また、有機酸が使用状態で液状であれば必ずしも水溶液のように、有機酸を溶媒に溶解させる必要はなく、有機酸を単体で使用することもできる。有機酸以外の酸性物質、塩基性物質、天然樹脂及び合成樹脂等の表面処理剤Stを使用する場合でも、有機酸と同様であり、使用状態で液状であれば単体で使用することができる。
アミン基を有する有機物は、例えば、ドデシルアミンである。
【0039】
(分散剤単体及び分散剤溶液)
分散剤は、例えば、アミン基のみを有する分散剤等が用いられる。分散剤には、以下のものを用いることができる。分散剤がアミン基を有する場合、分散剤のアミン価は、10以上100以下が好ましく、10以上60以下がより好ましい。
【0040】
アミン基のみを有する分散剤としては、例えば、DISPERBYK-102、DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2155、DISPERBYK-LPN6919、DISPERBYK-LPN21116、DISPERBYK-LPN21234、DISPERBYK-9075、DISPERBYK-9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、BASF社製);アジスパー(登録商標)PB711(味の素ファインテクノ株式会社製)等が挙げられる。
【0041】
アミン基を有する高分子分散剤としては、例えば、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2020、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-9076、Anti-Terra-205(以上、ビックケミー社製);SOLSPERSE 24000(ルーブリゾール株式会社製);アジスパー(登録商標)PB821、アジスパーPB880、アジスパーPB881(以上、味の素ファインテクノ株式会社製)等を挙げることができる。
【0042】
(有機溶媒)
有機溶媒は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。有機溶媒としては、例えば、メタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、アルキルハライド類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、酢酸エチル等のエステル類、及びエーテル類等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、2種以上のもの組み合わせてもよい。
【0043】
(有機酸単体及び有機酸溶液)
表面処理剤に酸性物質である有機酸を用いる場合、例えば、溶媒に純水を用いて水溶液として、供給部40から噴霧する。この場合、有機酸は、水溶性であり、かつ低沸点であることが好ましく、有機酸はC、O及びHだけで構成されていることが好ましい。有機酸としては、例えば、L-アスコルビン酸(C6H8O6)、ギ酸(CH2O2)、グルタル酸(C5H8O4)、コハク酸(C4H6O4)、シュウ酸(C2H2O4)、DL-酒石酸(C4H6O6)、ラクトース一水和物、マルトース一水和物、マレイン酸(C4H4O4)、D-マンニット(C6H14O6)、クエン酸(C6H8O7)、リンゴ酸(C4H6O5)、マロン酸(C3H4O4)及び脂肪族カルボン酸等を用いることができる。上述の有機酸のうち、少なくとも1種を用いることが好ましい。
有機酸の水溶液を液滴化する噴霧ガスは、例えば、アルゴンガスが用いられるが、アルゴンガスに限定されるものではなく、窒素ガス等の不活性ガスを用いることができる。
【0044】
銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18の搬送路の温度を計測するセンサ(図示せず)を有してもよい。このセンサの温度の計測結果は、表面処理剤Stに適する温度領域であるか否かの判定に利用される。この場合、温度の計測結果は、例えば、供給部40に出力される。供給部40では、センサによる、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18の搬送路の温度の計測結果に基づき、表面処理剤Stに適する温度領域であるか否かを判定することができる。銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18の搬送路の温度が、表面処理剤Stに適さない温度領域の場合、例えば、気体供給部28から供給される温度調整ガスの流量を変更する。
上述のように、センサの温度の計測結果は、表面処理剤Stに適する温度領域であるか否かの判定に用いられるため、センサは、第2供給管41bの接続管21aにおける接続位置P1よりも上流に設けることが好ましい。このため、センサは、例えば、接続管21aに設けられる。
センサは温度を計測できれば、その構成は特に限定されるものではないが、計測時間が短いことが好ましい。このため、センサには、例えば、抵抗温度計、放射温度計、赤外放射温度センサ、及びサーミスタ等を用いることができる。
【0045】
次に、上述の製造装置10を用いた銀微粒子の製造方法の一例について説明する。
まず、銀微粒子の原料粉末として、例えば、平均粒子径が15μm以下の銀の粉末を材料供給装置14に投入する。
プラズマガスに、例えば、アルゴンガス及び水素ガスを用い、高周波発振用コイル12bに高周波電圧を印加し、プラズマトーチ12内に熱プラズマ炎24を発生させる。
次に、キャリアガスとして、例えば、アルゴンガスを用いて銀の粉末を気体搬送し、供給管14aを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給する。供給された銀の粉末は、熱プラズマ炎24中で蒸発して気相状態の混合物となり、チャンバ16内で、冷却ガスを用いることなく、気相状態の混合物から銀の1次微粒子15が生成される。
【0046】
そして、チャンバ16内で得られた銀の1次微粒子15は、接続管21aを通りサイクロン19の入口管19aから、気流とともに外筒19bの内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が
図2の矢印Tに示すように外筒19bの内周壁に沿って流れることにより、旋回流を形成して下降する。そして、上述の下降する旋回流が反転し、上昇流になったとき、遠心力と抗力のバランスにより、粗大粒子は、上昇流にのることができず、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。また、遠心力よりも抗力の影響をより受けた微粒子は、円錐台部19c内壁での上昇流とともに内壁からサイクロン19外に排出される。
排出された銀の2次微粒子18は、真空ポンプ29による回収部20からの負圧(吸引力)によって、
図1中、符号Uに示す方向に吸引されて内管19e及び接続管21bを通過する。
【0047】
銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18が接続管21a内又は接続管21b内を通過する際、気体供給部28から温度調整ガスが、第1の気体供給管28b又は第2の気体供給管28cを通り接続管21a内又は接続管21b内に供給されて、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18が冷却される。温度調整ガスにより、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18を表面処理剤に適する温度領域とした後、さらに、供給部40からチャンバ16内、接続管21a内又は接続管21b内に、表面処理剤Stが銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18に、例えば、噴霧等の形態で供給されて、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18が表面処理される。
表面処理された銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18、すなわち、銀微粒子30が回収部20に送られ、回収部20のフィルター20bで銀微粒子30が回収される。このようにして、銀微粒子が得られる。
【0048】
銀微粒子30が回収部20に回収されるとき、サイクロン19内の内圧は、大気圧以下であることが好ましい。また、銀微粒子30の粒径は、目的に応じて、ナノメートルオーダの任意の粒径が規定される。
なお、本発明では、熱源に熱プラズマ炎を用いて銀の1次微粒子を形成しているが、他の気相法を用いて銀の1次微粒子を形成することもできる。このため、気相法であれば、熱プラズマ炎を用いることに限定されるものではなく、例えば、火炎法により、銀の1次微粒子を形成する製造方法でもよい。なお、熱プラズマ炎を用いた1次微粒子の製造方法を熱プラズマ法という。
【0049】
ここで、火炎法とは、火炎を熱源として用い,銀を含む原料を火炎に通すことにより微粒子を合成する方法である。火炎法では、銀を含む原料を、火炎に供給し火炎の中で銀粒子を生成させて銀粒子の成長を抑制して銀の1次微粒子15を得る。さらに、表面処理剤Stを、銀の1次微粒子15又は銀の2次微粒子18に供給して、銀微粒子を製造する。
なお、火炎法においても、表面処理剤は、上述の熱プラズマ法と同じものを用いることができる。
【0050】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の銀微粒子について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良又は変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例0051】
以下、本発明の銀微粒子について、より具体的に説明する。
本実施例においては、実施例1~3の銀微粒子及び従来の銀微粒子を製造した。実施例1~3の銀微粒子及び従来の銀微粒子の製造には
図2に示す製造装置10を用いた。以下に製造条件を示す。
【0052】
実施例1では原料粉末に、平均粒子径15μmの銀の粉末を用いた。銀の粉体の平均粒径は粒度分布計で測定した値である。粒度分布計にはマイクロトラック・ベル株式会社製MT3300を用いた。
なお、銀微粒子の製造条件は、プラズマへの入力を18kW一定として、プラズマトーチ内圧力は60kPaに固定した。
キャリアガスにアルゴンガスを用いた。アルゴンガスの流量を5リットル/分(標準状態換算)とした。
プラズマガスにアルゴンガスと水素ガスとを用いた。アルゴンガスの流量を200リットル/分(標準状態換算)とし、水素ガスの流量を5リットル/分(標準状態換算)とした。
温度調整ガスにアルゴンガスを用いた。アルゴンガスの流量を240リットル/分(標準状態換算)とした。
実施例1では、有機酸にクエン酸を用いた。溶媒に純水を用い、クエン酸を含む水溶液(クエン酸の濃度3.76W/W%)を、噴霧ガスを用いて、チャンバ16の側面16bに接続された第2供給管41b(
図2参照)から銀の1次微粒子に噴霧した。噴霧ガスにアルゴンガスを用いた。
【0053】
実施例2は、実施例1に比して、以下のこと以外は、実施例1と同じとした。
実施例2では、プラズマトーチ内圧力を85kPaに固定した。また、温度調整ガスのアルゴンガスの流量を15リットル/分(標準状態換算)とした。
【0054】
実施例3は、実施例2に比して、以下のこと以外は、実施例2と同じとした。実施例3は、温度調整ガスを用いなかった。
【0055】
従来の銀微粒子では、プラズマへの入力を14kW一定として、プラズマトーチ内圧力は40kPaに固定した。
キャリアガスにアルゴンガスを用いた。アルゴンガスの流量を5リットル/分(標準状態換算)とした。
プラズマガスにアルゴンガスと水素ガスとを用いた。アルゴンガスの流量を170リットル/分(標準状態換算)とし、水素ガスの流量を5リットル/分(標準状態換算)とした。
冷却ガスにアルゴンガスとメタンガスを用いた。アルゴンガスの流量を300リットル/分(標準状態換算)とし、メタンガスの流量を5.7リットル/分(標準状態換算)とした。
なお、従来の銀微粒子では、温度調整用ガスを供給せず、また、有機酸を用いなかった。
【0056】
実施例1~3について、得られた銀微粒子のSEM像を得た。SEM像は株式会社日立ハイテクノロジーズ製Regulus8220を用いて取得した。
実施例1~3の銀微粒子のSEM像を、それぞれ画像解析して粒度分布を算出した。その結果を
図3に示す。
図3は本発明の実施例1、2の銀微粒子の粒度分布を示すグラフである。
図3に示す銀微粒子の粒度分布は、体積基準で得られた粒度分布を示す。
図3において、符号62は実施例1の粒径の累積分布を示し、符号63は実施例1の粒径の頻度分布を示す。実施例2はBET法による粒径が192nmであった。
符号64は実施例2の粒径の累積分布を示し、符号65は実施例2の粒径の頻度分布を示す。実施例2はBET法による粒径が356nmであった。また、実施例3はBET法による粒径が386nmであった。実施例1~3の銀微粒子のBET法による粒径の測定には、株式会社マウンテック製Macsorb HM-1208を用いた。
実施例1~3の銀微粒子において、粒径が0.1μm未満の粒子の含有割合は、まず、銀微粒子のSEM像を画像解析して体積基準での粒度分布を求めた。次に、体積基準での粒度分布から、銀微粒子について、粒径が0.1μm(100nm)未満の粒子の含有割合を求めた。
図3に示すように実施例1、2は、粒径が0.1μm(100nm)未満の粒子の含有割合が少ない。なお、実施例3も、粒径が0.1μm(100nm)未満の粒子の含有割合が少ないことを確認している。
【0057】
実施例1~3及び従来の銀微粒子について、円筒状のペレットに成形して焼成前の体積抵抗値と、大気中(すなわち、空気中)において温度150℃で1時間焼成した後の体積抵抗値と体積収縮率を測定した。その結果、下記表1に示す。なお、大気(空気)の組成は、上述の通りである。
下記表1には、実施例1~3の粒径、及び粒径が0.1μm(100nm)未満の粒子の体積基準の含有割合も示す。なお、下記表1では、上述の「従来の銀微粒子」を「従来例」とした。
体積抵抗値の測定においては、まず、銀微粒子をプレス機を用いて、圧力127MPaで10秒間保持して円筒状のペレットを作製した。測定装置に三菱化学株式会社製ロレスタEP(MCP-T360)を用い、四端子法にて、焼成前後のペレットの体積抵抗値を測定した。
なお、ペレットは、電気炉内に設置し、大気中(大気雰囲気)において温度150℃で1時間焼成した。
【0058】
体積収縮率の測定においては、まず、銀微粒子をプレス機を用いて、圧力127MPaで10秒間保持して円筒状のペレットを作製した。円筒状のペレットの厚みと直径をノギスにて測定して、焼成前の体積を得た。焼成後についても、円筒状のペレットの厚みと直径をノギスにて測定して、焼成後の体積を得た。焼成前後のペレットの体積から体積収縮率を算出した。体積収縮率の算出には下記式を用いた。なお、ペレットは、電気炉内に設置し、大気中において温度150℃で1時間焼成した。
体積収縮率(%)=100-((焼成後の体積/焼成前の体積)×100)
なお、密度については、以下のようにして測定した。焼成前の円筒状のペレットの厚みと直径をノギスにて測定し、ペレットの質量を電子天秤にて測定し、円筒状のペレットの体積と質量とから、焼成前の円筒状のペレットの密度を算出した。また、焼成後の円筒状のペレットの厚みと直径をノギスにて測定し、ペレットの質量を電子天秤にて測定し、焼成後の円筒状のペレットの体積と質量とから、焼成後の円筒状のペレットの密度を算出した。
【0059】
【0060】
図4は本発明の実施例1の銀微粒子のSEM像を示す模式図であり、
図5は本発明の実施例2の銀微粒子のSEM像を示す模式図である。
図6は従来の銀微粒子のSEM像を示す模式図である。
図4~
図6に示すように、実施例1、2の銀微粒子は、従来の銀微粒子よりも粒径が大きく、かつ粒径が小さいものが少ない。なお、実施例3も、従来の銀微粒子よりも粒径が大きく、かつ粒径が小さいものが少ないことを確認している。
表1に示すように、実施例1~3の銀微粒子は、円筒状のペレットに成形して大気中において温度150℃で1時間焼成した後では、従来の銀微粒子に比して、体積抵抗値が小さく、かつ体積収縮率も小さい。