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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023057993
(43)【公開日】2023-04-24
(54)【発明の名称】口腔内送液・吸引装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 17/10 20060101AFI20230417BHJP
   A61C 17/06 20060101ALI20230417BHJP
【FI】
A61C17/10
A61C17/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】44
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022068280
(22)【出願日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】63/254,932
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/301,799
(32)【優先日】2022-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/328,612
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522156601
【氏名又は名称】スウィフトシュア イノベーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】マッカーシー ディアネ
(72)【発明者】
【氏名】ギレスピー クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】アトウェル キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】アイロンストーン ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】アッセリン マシュー
(72)【発明者】
【氏名】タッチェル ロリー
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ アンジー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者の口腔を適切かつ簡易に送液・吸引する機器を提供する。
【解決手段】この医療機器は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部、及び口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を有する吸引要素と、口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置される第2のプレート、及び口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を有する送液要素と、吸引要素に流体的に結合され、使用時に口腔の吸引を提供する吸引ポートと、送液要素に流体的に結合され、使用時に口腔への送液を提供する送液ポートと、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、
前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部を備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、
前記口腔の第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置される第2のプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、
前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、
前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、
を備える医療機器。
【請求項2】
患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、
前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、前記口腔の一側で上下の歯部の間に配置される第1のプレート、及び患者の頬部と上下の歯部との間に配置されるパドルを備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、
前記口腔の第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置される第2のプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、
前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、
前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、
を備える医療機器。
【請求項3】
前記吸引要素を前記送液要素に結合するように適合されるブリッジを備える、請求項1又は2に記載の機器。
【請求項4】
前記ブリッジは上縁と下縁とを備え、前記上縁は前記下縁に向かって先細りとなっている、請求項3に記載の機器。
【請求項5】
前記ブリッジの前記下縁は前記上縁に向かって先細りとなっている、請求項4に記載の機器。
【請求項6】
前記ブリッジは低いプロファイルを有する、請求項3に記載の機器。
【請求項7】
前記ブリッジは、実質的に平坦で、かつ、前記吸引要素から前記送液要素まで横方向に同一距離だけ互いに離間した、上面及び下面を備える、請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記吸引ポート及び前記送液ポートは、前記ブリッジ上に位置するか又は前記ブリッジから横方向にオフセットされて、使用時に前記口腔の外部へ延びるように構成される、請求項1~7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項9】
前記吸引要素のパドルは、長尺腕部と、拡大ヘッドとを備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項10】
前記吸引要素のパドルは、長尺腕部を備える、請求項2~7のいずれか1項に記載の機器。
【請求項11】
前記吸引要素は、前記長尺腕部上に形成され、前記吸引要素の遠位端付近に配置された、パドルを備える、請求項1に記載の機器。
【請求項12】
前記パドルは、前記吸引要素の内面上に隆起面を有する、請求項2~11のいずれか1項に記載の機器。
【請求項13】
少なくとも1つの吸引入口が前記吸引要素の前記隆起面の遠位端に位置している、請求項12に記載の機器。
【請求項14】
前記パドルは、前記パドルの内面に位置する円板を備え、前記円板は少なくとも1つの吸引入口を含む、請求項2~11のいずれか1項に記載の機器。
【請求項15】
使用時に前記吸引ポートと前記送液ポート及び前記口腔の外部に解放可能に結合されるように適合されるクリップを更に備え、前記クリップは、前記機器が前記口腔の内部に配置されたときに、前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を制御するように構成される、請求項1~14のいずれか1項に記載の機器。
【請求項16】
前記クリップは、前記吸引ポートを受容するように構成される第1のスロットと、気管内チューブ、歯科用器具又は他の医療器具を受容するように構成される第2のスロットと、前記送液ポートを受容するように構成される第3のスロットとを備える、請求項15に記載の機器。
【請求項17】
前記吸引ポート及び前記送液ポートは各々、前記ブリッジの前面からある距離だけ離れた位置にあり、前記クリップを解放可能に受容する位置決めスロットを備え、前記クリップの前記第1のスロット及び第3のスロットは、前記クリップが前記位置決めスロットに配置されたときに、前記吸引ポート及び前記送液ポートがともに移動することを許容するように配置され、これにより前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を広げる、請求項15又は16に記載の機器。
【請求項18】
吸引ラインが前記吸引ポートに流体的に結合されている、請求項1~17のいずれか1項に記載の機器。
【請求項19】
送液ラインが前記送液ポートに流体的に結合されている、請求項1~18のいずれか1項に記載の機器。
【請求項20】
前記送液ラインは、外部の送液機器に流体的に結合する先端コネクタを備える、請求項19に記載の機器。
【請求項21】
前記吸引ラインは、外部の吸引機器に流体的に結合する先端コネクタを備える、請求項19~20のいずれか1項に記載の機器。
【請求項22】
前記送液要素の前記第2のプレートは、上面と、下面と、この上面及び下面の外縁を回る縁とを備え、前記送液出口は、前記送液要素の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の縁の近傍に位置する、請求項1~21のいずれか1項に記載の機器。
【請求項23】
前記送液要素の前記第2のプレートは、上面と、下面と、この上面及び下面の外縁を回る縁とを備え、前記送液出口は、前記送液要素の前記上面及び前記下面の少なくとも一方上に位置する、請求項1~21のいずれか1項に記載の機器。
【請求項24】
前記送液要素の内部に配置され、前記送液ポートに流体的に結合された第1の端部と、前記1つ以上の送液出口に流体的に結合された第2の端部とを有する、送液流路を備える、請求項22又は23に記載の機器。
【請求項25】
前記吸引要素内の吸引流路は、前記吸引ポートに流体的に結合された第1の端部と、前記少なくとも1つの吸引入口に流体的に結合された第2の端部とを有する、請求項1~24のいずれか1項に記載の機器。
【請求項26】
患者の口腔の送液のためのキットであって、
請求項1~25又は38~44のいずれか1項に記載の医療機器と、
患者の口腔の内部に配置される医療器具と、
を備えるキット。
【請求項27】
前記医療器具は、気管内チューブ、歯科用器具、又は使い捨て口腔ケア製品である、請求項26に記載のキット。
【請求項28】
患者の口腔に送液する方法であって、
請求項1~25又は38~44のいずれか1項に記載の医療機器を、患者の口腔の内部に配置することと、
前記医療機器の前記送液要素を用いて送られた流体を前記口腔に送液することと、
前記医療機器の前記吸引要素を用いて流体又は他の任意の液体を前記口腔から吸引することと、
を含む方法。
【請求項29】
前記医療機器の前記ブリッジにおいて気管内チューブを受容することを更に含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記医療機器を前記口腔の内部に配置するときに前記吸引要素と前記送液要素との間の距離をクリップが制御するように構成するために、前記医療機器の前記吸引ポートと前記送液ポートとを解放可能に結合することを更に含む、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記吸引ポートを吸引ラインに流体的に結合することを更に含む、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
先端コネクタにより、前記吸引ラインを外部の吸引機器に流体的に結合することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記送液ポートを送液ラインに流体的に結合することを更に含む、請求項28~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
先端コネクタにより、前記送液ラインを外部の送液機器に、又は重力によって流体を提供するように適合されるか又は加圧システムに結合されている流体封入袋に、流体的に結合することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
送液を提供する前に、患者の頭が患者の足に対してより下方に位置するように患者を位置決めすることを更に含む、請求項28~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
送液を提供する前に、前記吸引要素が前記口腔の最低位置に位置する頬側ポケットに配置される側に患者の胴体を位置決めすることを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
患者の鼻孔に流体を注入することを更に含む、請求項28~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、
前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部を備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、
前記口腔の第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置されるプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、
前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、
前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、
使用時に前記吸引ポートと前記送液ポート及び前記口腔の外部に解放可能に結合されるように適合される係止機構であって、係止機構は、少なくとも1つのクリップを有する第1の腕部と、少なくとも1つの隆起部を有する第2の腕部と、を備え、前記少なくとも1つの隆起部は、前記少なくとも1つのクリップにより解放可能に係合され、前記機器が口腔内に配置されたときに、前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を制御するように構成される、係止機構と、
を備える医療機器。
【請求項39】
前記係止機構は、前記第1の腕部上の前記少なくとも1つのクリップにより解放可能に係合するための3つの隆起部を前記第2の腕部上に備え、第1の隆起部は、前記クリップが前記第1の隆起部に配置されたときに前記吸引ポートと前記送液ポートとが離れ動くことを可能にして、これにより前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を狭め、第3の隆起部は、前記クリップが前記第3の隆起部に配置されたときに前記吸引ポートと前記送液ポートとが一緒に動くことを可能にして、これにより前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を広げる、請求項38に記載の医療機器。
【請求項40】
患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、
前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部を備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、
前記口腔の前記第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置されるプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、
前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、
前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、
使用時に前記吸引ポートと前記送液ポート及び前記口腔の外部に解放可能に結合されるように適合されるハンドル機構であって、前記ハンドル機構は、雄コネクタと雌コネクタとを備える、ハンドル機構と、
を備える医療機器。
【請求項41】
前記雄コネクタ及び前記雌コネクタは、それぞれ第1のタブ及び第2のタブであり、前記第1のタブ及び前記第2のタブは、押圧されたときに解放可能に一緒に係合して、前記機器が前記口腔の内部に配置されたときに前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を制御する、請求項40に記載の医療機器。
【請求項42】
前記雌コネクタは、前記雄コネクタのポストを収容するような大きさ及び形状のスロットを含み、使用時に、前記雄コネクタを前記雌コネクタへとスライドさせると、前記雄コネクタと前記雌コネクタとが解放可能に係合して前記吸引要素と前記送液要素とを接続する、請求項40に記載の医療機器。
【請求項43】
前記雄コネクタ及び前記雌コネクタは、それぞれ、ボタンスナップ、バックル、ベルクロ、両面接着剤、ネジ又はピンによって前記吸引要素と前記送液要素とを接続するように構成される、第1のタブ及び第2のタブである、請求項40に記載の医療機器。
【請求項44】
少なくとも1つの吸引要素は、矩形状のスロット、円錐形状のスロット、楕円形状のスロット、半円形状のスロット、アーモンド形状のスロット、湾曲したスロット、又は湾曲したスリットを含む、請求項1~25又は38~43のいずれか1項に記載の医療機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、患者の口腔の吸引(suction)及び送液(irrigation)を行う医療機器(medical device)について、種々の実施形態を説明する。
【背景技術】
【0002】
以下、背景技術について説明する。しかしながら、その議論が従来技術又は当業者の知識の一部であると自認するものではない。
【0003】
機械的人工呼吸患者(mechanically ventilated patient)には、人工呼吸器が肺に酸素を送ることができるように、気管内に挿入するチューブを必要とする。チューブは、気管内チューブ(endotracheal tube)であってもよいし、気管切開部(tracheostomy)を介して導入されたチューブであってもよい。チューブは、患者の口の外側にある近位端が、患者の肺に空気を受け渡すことができるように、人工呼吸器に取り付けられた配管に結合され、遠位端が患者の気管が気管支に分岐する声門(glottis)に配置される。チューブ上のカフが、一般的には患者の気管壁と係合するように拡張して、流体(fluid)等の物質が肺に吸入されることを防止しつつ人工呼吸を許容するシールを形成する。
【0004】
機械的人工呼吸患者は、細菌の口腔内増殖を防止するために、定期的な口腔ケアを必要とする。また、緩和ケア、急性期ケア、その他のケア環境における患者も、口腔ケアの提供が完全に介護者に依存している。これは、患者の口に流体を分配させて吸引処理により除去する送液処理により行ってもよい。そのため、患者の口腔を適切かつ簡易に送液・吸引する機器(device)が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は一般的に、患者の口腔内に挿入して、簡易に送液・吸引することを可能にする機器の種々の構成、及びこの機器の1つ又は複数の使用方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本明細書の教示によれば、患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器(medical device for suction and irrigation of an oral cavity in a patient)であって、前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部を備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、前記口腔の第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置される第2のプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、を備える医療機器の少なくとも一実施形態を提供する。
【0007】
他の態様において、本明細書の教示によれば、患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、前記口腔の一側で上下の歯部の間に配置される第1のプレート、及び患者の頬部と上下の歯部との間に配置されるパドルを備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、前記口腔の第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置される第2のプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、を備える医療機器の少なくとも一実施形態を提供する。
【0008】
少なくとも一実施形態では、機器は、前記吸引要素を前記送液要素に結合するように適合されるブリッジを備える。
【0009】
少なくとも一実施形態では、ブリッジは上縁と下縁とを備え、上縁は下縁に向かって先細りとなっている。
【0010】
少なくとも一実施形態では、ブリッジの下縁は上縁に向かって先細りとなっている。
【0011】
少なくとも一実施形態では、前記ブリッジは低背化(low profile)されている。
【0012】
少なくとも一実施形態では、前記ブリッジは、実質的に平坦で、かつ、前記吸引要素から前記送液要素まで横方向に同一距離だけ互いに離間した、上面及び下面を備える。
【0013】
少なくとも一実施形態では、前記吸引ポート及び前記送液ポートは、前記ブリッジ上に位置するか又は前記ブリッジから横方向にオフセットされて、使用時に前記口腔の外部へ延びるように構成される。
【0014】
少なくとも一実施形態では、前記吸引要素のパドルは、長尺腕部と、拡大ヘッドとを備える。
【0015】
少なくとも一実施形態では、前記吸引要素のパドルは、長尺腕部を備える。
【0016】
少なくとも一実施形態では、前記吸引要素は、前記長尺腕部上に形成され、前記吸引要素の遠位端付近に配置された、パドルを備える。
【0017】
少なくとも一実施形態では、前記パドルは、前記吸引要素の内面上に隆起面を有する。
【0018】
少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの吸引入口が前記吸引要素の前記隆起面の遠位端に位置している。
【0019】
少なくとも一実施形態では、前記パドルは、前記パドルの内面に位置する円板を備え、前記円板は少なくとも1つの吸引入口を含む。
【0020】
少なくとも一実施形態では、機器は、使用時に前記吸引ポートと前記送液ポート及び前記口腔の外部に解放可能に結合されるように適合されるクリップを更に備え、クリップは、前記機器が前記口腔の内部に配置されたときに、前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を制御するように構成される。
【0021】
少なくとも一実施形態では、前記クリップは、前記吸引ポートを受容するように構成される第1のスロットと、気管内チューブ、歯科用器具又は他の医療器具を受容するように構成される第2のスロットと、前記送液ポートを受容するように構成される第3のスロットとを備える。
【0022】
少なくとも一実施形態では、前記吸引ポート及び前記送液ポートは各々、前記ブリッジの前面からある距離だけ離れた位置にあり、前記クリップを解放可能に受容する位置決めスロットを備え、前記クリップの前記第1のスロット及び第3のスロットは、前記クリップが前記位置決めスロットに配置されたときに、前記吸引ポート及び前記送液ポートがともに移動することを許容するように配置され、これにより前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を広げる。
【0023】
少なくとも一実施形態では、吸引ラインが前記吸引ポートに流体的に結合されている。
【0024】
少なくとも一実施形態では、送液ラインが前記送液ポートに流体的に結合されている。
【0025】
少なくとも一実施形態では、前記送液ラインは、外部の送液機器に流体的に結合する先端コネクタを備える。
【0026】
少なくとも一実施形態では、前記吸引ラインは、外部の吸引機器に流体的に結合する先端コネクタを備える。
【0027】
少なくとも一実施形態では、前記送液要素の前記第2のプレートは、上面と、下面と、この上面及び下面の外縁を回る縁とを備え、前記送液出口は、前記送液要素の前記上面及び前記下面の少なくとも一方の縁の近傍に位置する。
【0028】
少なくとも一実施形態では、前記送液要素の前記第2のプレートは、上面と、下面と、この上面及び下面の外縁を回る縁とを備え、前記送液出口は、前記送液要素の前記上面及び前記下面の少なくとも一方上に位置する。
【0029】
少なくとも一実施形態では、前記送液要素の内部に配置され、前記送液ポートに流体的に結合された第1の端部と、前記1つ以上の送液出口に流体的に結合された第2の端部とを有する、送液流路を備える。
【0030】
少なくとも一実施形態では、前記吸引要素内の吸引流路は、前記吸引ポートに流体的に結合された第1の端部と、前記少なくとも1つの吸引入口に流体的に結合された第2の端部とを有する。
【0031】
他の態様において、本明細書の教示によれば、患者の口腔の送液のためのキットであって、本明細書に記載のいずれか一実施形態に記載の医療機器と、患者の口腔の内部に配置される医療器具と、を備えるキットの少なくとも一実施形態を提供する。
【0032】
少なくとも一実施形態では、前記医療器具は、気管内チューブ、歯科用器具、又は使い捨て口腔ケア製品である。
【0033】
他の態様において、本明細書の教示によれば、患者の口腔に送液する方法であって、本明細書に記載のいずれか一実施形態に記載の医療機器を、患者の口腔の内部に配置することと、前記医療機器の前記送液要素を用いて送られた流体を前記口腔に送液することと、前記医療機器の前記吸引要素を用いて流体又は他の任意の液体を前記口腔から吸引することと、を含む方法の少なくとも一実施形態を提供する。
【0034】
少なくとも一実施形態では、方法は、前記医療機器の前記ブリッジにおいて気管内チューブを受容することを更に含む。
【0035】
少なくとも一実施形態では、方法は、前記医療機器を前記口腔の内部に配置するときに前記吸引要素と前記送液要素との間の距離をクリップが制御するように構成するために、前記医療機器の前記吸引ポートと前記送液ポートとを解放可能に結合することを更に含む。
【0036】
少なくとも一実施形態では、方法は、前記吸引ポートを吸引ラインに流体的に結合することを更に含む。
【0037】
少なくとも一実施形態では、方法は、先端コネクタにより、前記吸引ラインを外部の吸引機器に流体的に結合することを更に含む。
【0038】
少なくとも一実施形態では、方法は、前記送液ポートを送液ラインに流体的に結合することを更に含む。
【0039】
少なくとも一実施形態では、方法は、先端コネクタにより、前記送液ラインを外部の送液機器に、又は重力によって流体を提供するように適合されるか又は加圧システムに結合されている流体封入袋に、流体的に結合することを更に含む。
【0040】
少なくとも一実施形態では、方法は、送液を提供する前に、患者の頭が患者の足に対してより下方に位置するように患者を位置決めすることを更に含む。
【0041】
少なくとも一実施形態では、方法は、送液を提供する前に、前記吸引要素が前記口腔の最低位置に位置する頬側ポケット(buccal pocket)に配置される側に患者の胴体を位置決めすることを更に含む。
【0042】
少なくとも一実施形態では、方法は、患者の鼻孔(nostril)に流体を注入すること(instilling)を更に含む。
【0043】
他の態様において、本明細書の教示によれば、患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部を備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、前記口腔の第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置されるプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、使用時に前記吸引ポートと前記送液ポート及び前記口腔の外部に解放可能に結合されるように適合される係止機構であって、係止機構は、少なくとも1つのクリップを有する第1の腕部と、少なくとも1つの隆起部を有する第2の腕部と、を備え、前記少なくとも1つの隆起部は、前記少なくとも1つのクリップにより解放可能に係合され、前記機器が口腔内に配置されたときに、前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を制御するように構成される、係止機構と、を備える医療機器の少なくとも一実施形態を提供する。
【0044】
少なくとも一実施形態では、前記係止機構は、前記第1の腕部上の前記少なくとも1つのクリップにより解放可能に係合するための3つの隆起部を前記第2の腕部上に備え、第1の隆起部は、前記クリップが前記第1の隆起部に配置されたときに前記吸引ポートと前記送液ポートとが離れ動くことを可能にして、これにより前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を狭め、第3の隆起部は、前記クリップが前記第3の隆起部に配置されたときに前記吸引ポートと前記送液ポートとが一緒に動くことを可能にして、これにより前記吸引要素と前記送液要素との間の距離を広げる。
【0045】
他の態様において、本明細書の教示によれば、患者の口腔の吸引及び送液のための医療機器であって、前記口腔の一側に配置されるように構成される吸引要素であって、前記吸引要素は、患者の頬部と上下の歯部との間に配置される長尺腕部を備え、前記吸引要素は、前記口腔から流体を吸引するように構成される少なくとも1つの吸引入口を更に備える、吸引要素と、前記口腔の前記第2の側に配置されるように構成される送液要素であって、前記送液要素は、前記口腔の第2の側の上下の歯部の間に配置されるプレート、及び前記口腔に流体を送液するように構成される1つ以上の送液出口を備える、送液要素と、前記吸引要素に流体的に結合され、使用時に前記吸引要素に負圧を供給して前記口腔を吸引する吸引ポートと、前記送液要素に流体的に結合され、使用時に前記送液要素に流体を供給して前記口腔に送液する送液ポートと、使用時に前記吸引ポートと前記送液ポート及び前記口腔の外部に解放可能に結合されるように適合されるハンドル機構であって、前記ハンドル機構は、雄コネクタと雌コネクタとを備える、ハンドル機構と、を備える医療機器の少なくとも一実施形態を提供する。
【0046】
少なくとも一実施形態では、前記雌コネクタは、前記雄コネクタのポストを収容するような大きさ及び形状のスロットを含み、使用時に、前記雄コネクタを前記雌コネクタへとスライドさせると、前記雄コネクタと前記雌コネクタとが解放可能に係合して前記吸引要素と前記送液要素とを接続する。
【0047】
少なくとも一実施形態では、前記雄コネクタ及び前記雌コネクタは、それぞれ、ボタンスナップ、バックル、ベルクロ(登録商標)、両面接着剤、ネジ又はピンによって前記吸引要素と前記送液要素とを接続するように構成される。
【0048】
本明細書に記載の医療機器の少なくとも一実施形態では、少なくとも1つの吸引要素は、矩形状のスロット、円錐形状のスロット、楕円形状のスロット、半円形状のスロット、アーモンド形状のスロット、湾曲したスロット、又は湾曲したスリットを含む。
【0049】
本出願のその他の特徴及び利点は、添付図面と共に以下の詳細な説明から明らかになるであろう。ただし、本出願の好ましい実施形態を示す詳細な説明及び具体例は、あくまでも例示であって、この明細書から当業者には、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び変更が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本明細書に記載の各種の実施形態をより明確に理解させ、これらの種々の実施形態がどのように実施されるかを示すために、一例であって、次に単に例示目的で、本発明の実施形態の少なくとも1つを示す添付図面について記述する。なお、図面は本発明の範囲を限定するものではない。
【0051】
図1図1は、口腔の吸引及び送液のための医療機器の一実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1の医療機器の上面図である。
図3図3は、図1の医療機器の下面図である。
図4A図4Aは、図1の医療機器の右側面図であり、送液要素及び吸引要素を示す。
図4B図4Bは、図1の医療機器の左側面図であり、吸引要素の外側を示す。
図5図5は、結合解放可能なクリップを有する医療機器の別の実施形態を示す前方斜視図である。
図6図6は、図1図5の医療機器の吸引要素の部分上面斜視図である。
図7A図7Aは、図1図6の医療機器に用い得る送液要素の一実施形態を示す部分上面図である。
図7B図7Bは、図7Aの送液要素の部分右側面図であり、送液出口からの流体の流出方向を示す。
図8A図8Aは、図1図7Bの医療機器に用いられるクリップの一実施形態の前方斜視図を示す。
図8B図8Bは、図1図7Bの医療機器に用いられるクリップの一実施形態の正面図を示す。
図8C図8Cは、図1図7Bの医療機器に用いられるクリップの一実施形態の上面図を示す。
図9A図9Aは、図8Aのクリップの実施形態の正面図を示す。
図9B図9Bは、図8Bのクリップの実施形態の正面図を示す。
図9C図9Cは、図8Cのクリップの実施形態の正面図を示す。
図10図10は、クリップを用いずに本発明の医療機器を用いた患者の正面図を示す。
図11図11は、クリップを用いずに本発明の医療機器を用いた患者の側面図を示す。
図12図12は、クリップを用いて本発明の医療機器を用いた患者の正面図を示す。
図13図13は、クリップを用いて本発明の医療機器を用いた患者の側面図を示す。
図14図14は、医療機器の動きを制御する係止機構を含むクリップを有する医療機器の別の実施形態の上面斜視図である。
図15図15は、医療機器の動きを制御する係止機構を含むクリップを有する医療機器の別の実施形態の部分上面図である。
図16図16は、医療機器の動きを制御する別の係止機構を有する医療機器の別の実施形態の部分上面斜視図である。
図17A図17Aは、係止機構を異なる位置に移動させた状態の図16の医療機器の部分上面斜視図である。
図17B図17Bは、係止機構を異なる位置に移動させた状態の図16の医療機器の部分上面斜視図である。
図18図18は、医療機器の動きを制御する別の係止機構を有する別の実施形態の部分上面斜視図である。
図19A図19Aは、係止機構を異なる位置に移動させた状態の図18の医療機器の部分上面図である。
図19B図19Bは、係止機構を異なる位置に移動させた状態の図18の医療機器の部分上面図である。
図20図20は、口腔の吸引及び送液のための医療機器の他の実施形態を示す前面斜視図である。
図21A図21Aは、図20の医療機器の吸引要素の部分上面図である。
図21B図21Bは、図20の医療機器の吸引要素の断面部分右側面図である。
図22図22は、口腔の吸引及び送液のための医療機器の他の実施形態を示す斜視図である。
図23A図23Aは、図22の医療機器の前方と後方の側面図であり、吸引ポート及び送液ポートを示す。
図23B図23Bは、図22の医療機器の前方と後方の側面図であり、吸引要素及び送液要素を示す。
図24A図24Aは、図22の医療機器の右側面図であり、送液要素及び吸引要素を示す。
図24B図24Bは、図22の医療機器の左側面図であり、吸引要素の外側を示す。
図25図25は、図22の医療機器の上面図を示す。
図26図26は、口腔の吸引及び送液のための医療機器の他の実施形態を示す斜視図である。
図27A図27Aは、図26の医療機器の前方側面図であり、吸引ライン及び送液ラインを示す。
図27B図27Bは、図26の医療機器の後方側面図であり、吸引要素及び送液要素を示す。
図28A図28Aは、図26の医療機器の右側面図であり、送液要素及び吸引要素を示す。
図28B図28Bは、図26の医療機器の左側面図であり、吸引要素の外側を示す。
図29A図29Aは、図26の医療機器の吸引要素の部分上面図である。
図29B図29Bは、図26の医療機器の吸引要素の断面部分右側面図である。
図30図30は、口腔の吸引及び送液のための医療機器の他の実施形態を示す斜視図である。
図31図31は、医療機器の動きを制御する係止機構を備えた口腔の吸引及び送液のための医療機器の他の実施形態を示す斜視図である。
図32A図32Aは、解放及び係止された構成における、図31の係止機構を備えた医療機器の部分斜視図である。
図32B図32Bは、解放及び係止された構成における、図31の係止機構を備えた医療機器の部分斜視図である。
【0052】
なお、本明細書に記載の実施形態の更に他の態様及び特徴は、以下の説明から添付の図面とともに明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本明細書に記載された発明の見出し及び要約は、説明の便宜上のものであり、発明の範囲又は意味を解釈するものではない。
【0054】
以下、本明細書の種々の実施形態について説明して、特許請求の範囲に記載の発明の少なくとも一実施形態の例を挙げる。なお、本明細書に記載の実施形態は、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、特許請求の範囲に記載の発明は、下記の機器、システム、方法のすべての特徴を有する機器、システム、方法、又は本明細書に記載のすべての機器、システム、方法の一部又は全部に共通する特徴を有するものに限定されるものではない。本明細書に記載の機器、システム、方法は、特許請求の範囲に記載の発明の実施形態でなくてもよい。本明細書に記載の、特許請求の範囲としていない事項は、例えば継続特許出願などの他の保護手段の主題であってもよく、出願人、発明者、権利所有者は、本文献に開示されているいずれかの発明を放棄、否認、又は開放することを意図していない。
【0055】
なお、説明の簡易化と明確化のため、適宜、各図面において対応又は類似する部材に同一の符号を付することがある。また、本明細書に記載の実施形態の詳細な理解を容易にするために、多くの具体的な内容が記載されている。しかしながら、これらの具体的内容なしに本明細書に記載の実施形態を実施することがあることは、当業者には理解されるであろう。この他、本明細書に記載の実施形態を損なわないため、公知の方法、手順、及び構成要素については詳細に説明されていない。また、このような記載は本明細書に記載の実施形態の範囲を限定するものではない。
【0056】
なお、本明細書において、「結合される(coupled)」又は「結合する(coupling)」とは、これらの用語を用いる文脈に応じて、いくつかの異なる意味を有することができる。例えば、「結合される」又は「結合する」とは、機械的、構造的又は流体的な意味を有することができる。例えば、本明細書において、「結合される」又は「結合する」とは、特定の文脈によって、2つの部材又は装置が直接的に接続されること又は、機械要素、構造要素、気流又は流体の流れを介して1又は複数の中間要素又は装置を通して接続されることを表すことができる。
【0057】
本明細書及び特許請求の範囲において、特に言及しない限り、特許請求の範囲及びその変形例において、「備える(comprise)」との文言及び「備え(comprises)」又は「備えている(comprising)」のようなその変体は、開放的かつ包括的に、すなわち、「含むがそれに限定されない」と解釈すべきである。
【0058】
なお、本明細書において、「及び/又は(and/or)」とは、包含的離接を意図するものである。すなわち、「X及び/又はY」は、例えば、X、Y、又はその両方を意味する。更なる例として、「X、Y、及び/又はZ」は、X、Y、Z、又はその任意の組み合わせを意味する。
【0059】
なお、本明細書において、「実質的に(substantially)」、「約(about)」、「略(approximately)」等の度合いの用語は、修飾する用語のずれ量が結果を大きく変化させないような合理的な量を意味する。これらの度合いの用語は、例えば、修飾する用語の意味を否定するものではない限り、例えば、1%、2%、5%、10%、15%、20%などの修飾する用語のずれを含むものと解釈してもよい。
【0060】
また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に収まっている全ての数値及び分数を含む(例えば、1~5は1、1.5、2、2.75、3、3.90、4、5を含む)。また、例えば、1%、2%、5%、10%、15%、20%等、有意に変化していない限り、基準となる数の一定量までの変化を意味する「約」という用語は、全ての数字及び分数を修飾すると推測される。
【0061】
本明細書において、「一実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「少なくとも一実施形態(at least one embodiment)」又は「一部の実施形態(some embodiments)」とは、特に組み合わせできないか、又は代替案であると明示した場合を除き、一又は複数の実施形態では、一又は複数の特定の特徴、構造又は特性を、任意の適切な方式で組み合わせてもよいことを意味する。
【0062】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、内容が明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。なお、「又は」とは、広義の意味で使用されるものであり、特にそうでないと明示した場合等を除き、実質的に「及び/又は」の意味で使用されるものとする。
【0063】
上記のように、機械的人工呼吸患者(mechanically ventilated patient)には、人工呼吸器が肺に酸素を送り込むことができるように、チューブを気管に挿入する必要がある。チューブは一般に、気管内チューブ(endotracheal tube)であってもよいし、気管切開部(tracheostomy)を介して導入されたチューブであってもよい。チューブは、近位端が肺に空気を受け渡すことができるように、人工呼吸器に取り付けられた配管に結合され、遠位端が声門(glottis)の下から気管支に配置される。
【0064】
本明細書の教示によれば、病原体のリザーバとなりうる領域を日常的に洗浄するために使用可能な医療機器の種々の実施形態を提供し、病原微生物を含む生体膜の形成を防止又は飛躍的に緩慢にすることができる。
【0065】
優れた口腔ケアを提供する各種機器及び関連する方法を提供することは有利である。本明細書に記載の各種機器は、機械的人工呼吸の長さを短くするために用いられてもよい。本明細書に記載の各種機器は、さまざまな病原体の2つの主なリザーバである、細菌と有機物の破片を口腔から除去するために用いられてもよい。これらの各種機器は、外部吸引カテーテルを用いることなく送液流体の送液及び吸引を行うことができ、粘膜の損傷のリスクを低減し、粘膜の健全化を促進させることができる。また、滞留時間を要することなく送液することができるので、溶液を患者の口腔内に導入し、同時に吸引することができる。このような機器及び方法は、コスト効果的・効率的であり、かつ使い易いため、頻繁な介入を可能とする。
【0066】
図1を参照すると、本明細書の教示による医療機器100の一実施形態の上面斜視図を示す。医療機器(medical device)100は、患者の口腔内送液・吸引用の気管内チューブ(図示せず)と併用してもよい。医療機器100は、吸引要素(suction element)102を含む第1の部分と、送液要素(irrigation element)104を含む第2の部分との2つの部分を含む。吸引要素102及び送液要素104は、ブリッジ106によって接続されている。要素102、104の各々は、患者の口腔の側部内に配置されるように設計される。例えば、吸引要素102を患者の口腔の右側内に配置し、送液要素104を左側内に配置するように構成してもよい。他の実施形態では、吸引要素102を患者の口腔の左側内に配置し、送液要素104を右側内に配置するように構成してもよい。他の実施形態では、医療機器100は、医療機器100を容易に反転させることができるように、そして吸引要素102が口腔内の左右いずれかの側に配置されるように構成されてもよい。
【0067】
少なくとも一実施形態では、図1に示すように、吸引要素102は、第1のプレート108と、パドル(paddle)(又は側壁)110とを備えてもよい。第1のプレート108は、平坦でもよいし、多少の湾曲又は曲率(contour or curvature)を有してもよい。パドル110は、長尺腕部(elongated arm)112と、拡大ヘッド(enlarged head)114とを備える。しかしながら、少なくとも1つの他の実施形態では、吸引要素は拡大ヘッド114を用いず、より均一な形状の長尺腕部である。また、吸引要素102の第1のプレート108は、患者の口の一側における上下の歯の間に配置されるように用いられてもよい。第1のプレート108は、長方形、正方形、角丸長方形、長円形、円形、又は患者の上下の歯の間に適合するように患者の口に配置可能な任意の形状であってもよい。また、パドル110は、パドル110の長尺腕部112及び拡大ヘッド114が患者の上下の歯の外面と患者の口腔の頬の内面との間に位置するように、患者の上下の歯の外側に配置されてもよい。パドル110は、長方形、正方形、角丸長方形、楕円形、円形、又は患者の歯と頬との間に適合するように患者の口に配置可能な任意の形状であってもよい。
【0068】
吸引要素102は、少なくとも1つの吸引入口(suction inlet)116を有する。吸引入口116は、口腔から流体を吸引するためのものである。図6で更に説明するように、パドル110の拡大ヘッド114は、その内面に円板(disk)118を有してもよいし、隆起面(raised surface)を有してもよい。円板118は、拡大ヘッド114の内面から離れるように内側に延在する。円板118は、パドル110の表面から隆起して、パドル110がユーザの頬組織に接触するバッフル(すなわち、吸引要素102上の一点)と吸引入口116との間の空間を確保してもよい。吸引要素102の吸引入口116は、円板118の上部に形成された開口によって画定されてもよい。他の実施形態では、吸引要素102に含まれる吸引入口116が複数であってもよいし、円板118の他の一部に吸引入口が形成されてもよい。種々の実施形態では、吸引入口は、吸引要素に沿って任意の形状、大きさ、位置、数を有してもよい。
【0069】
吸引要素102は、吸引要素102の外面から突出する吸引ポート(suction port)120を更に有する。少なくとも一実施形態では、吸引ポート120は、医療機器100の使用時に患者の口の外側に位置し得る吸引要素102の略前方に位置している。少なくとも一実施形態では、吸引ポート120は、ブリッジ106上に配置されるか、又はブリッジ106から横方向にずれて配置されてもよい。吸引ポート120は、吸引要素102から任意の適切な距離だけ突出してもよい。
【0070】
医療機器100の送液要素104は、第2のプレート122を備える。第2のプレート122は、口腔の反対側に配置され、吸引要素102の第1のプレート108とは反対側で、患者の歯の間及び/又は頬に位置してもよい。第2のプレート122は、平坦であってもよいし、多少の湾曲又は曲率(contour or curvature)を有してもよい。第2のプレート122は、長方形、正方形、角丸長方形、楕円形、円形、又は患者の歯の間を摺動可能又は歯の内部に配置可能な任意の形状であってもよい。送液要素104の第2のプレート122は、1以上の送液出口(irrigation outlet)124を備える。送液出口124は、口腔内に流体(fluid)を直接吐出又は送液させる。送液出口124について、図7A、7Bを参照して更に説明する。送液要素104は、使用時に患者の口の外部にありうる送液要素104の外表面から突出する送液ポート(irrigation port)126を更に備える。少なくとも一実施形態では、送液ポート126は、送液要素104の略前方に位置する。少なくとも一実施形態では、送液ポート126は、ブリッジ106上に配置されるか、又はブリッジ106から横方向にずれて配置されてもよい。送液ポート126は、送液要素104から任意の適切な距離だけ突出してもよい。
【0071】
医療機器100の吸引要素102と送液要素104とは、ブリッジ106によって接続されている。図1に示すように、吸引要素102と送液要素104とを接続するブリッジ106は、途中で先細りとなってもよい。少なくとも一実施形態では、ブリッジ106の上縁は、医療機器100の上縁に対して先細りとなって、気管内チューブ(endotracheal tube)が医療機器100に妨げられないように受容してもよい。少なくとも一実施形態では、ブリッジ106の下縁は、医療機器100の下縁から上方に向かって先細りとなって、患者の下唇の内面に配置され易くなってもよい。少なくとも一実施形態では、医療機器100は、患者の口腔内で容易に反転できるように構成され、口の両側の吸引を可能としてもよい。このように、ブリッジ106は、上縁及び下縁が先細りとなって、気管内チューブを医療機器100の向きに拘らずに適宜に配置することを可能としてもよい。
【0072】
少なくとも一実施形態では、医療機器100の吸引ポート120の一端が、吸引ライン128に流体的に結合されている。吸引ポート120の他端が、吸引要素102の内部に形成された内部吸引流路(interior suction channel)に流体的に結合されている。吸引ライン128は、壁装着型の吸引機器等の外部吸引機器(external suction device)に流体的に結合される第1の先端コネクタ130を更に備えてもよい。吸引ライン128の第1の先端コネクタ130をスイッチ又は親指で操作して吸引を行ってもよい。少なくとも一実施形態では、送液ポート126の第1の端部が、送液ライン132に流体的に結合されている。送液ポート126の第2の端部が、送液要素104の内部に形成された内部送液流路に流体的に結合されている。送液ライン132は、患者の口腔に送液するために用いられる、シリンジ、圧力袋内の生理食塩水の袋などの外部の送液機器に流体的に結合される第2の先端コネクタ134を更に備えてもよい。少なくとも一実施形態では、送液ラインは、重力によって流体を提供するか又は加圧系に接続されている流体封入袋に接続されてもよい。
【0073】
他の実施形態では、吸引ポート120及び送液ポート126は、単一のポートであってもよい。この単一のポートは、医療機器100の任意の面に沿って配置されてもよい。このような実施形態では、口腔に送液する流体は、吸引されるのと同じポートを介して口腔内に導入されてもよい。この実施形態では、この単一のポートは、送液用及び吸引用の流体ラインに流体的に結合されてもよい。流体ラインは、送液流体を順次供給可能な機器に遠位的に接続された後、吸引を行うことにより、患者の口腔から流体を除去することができる。
【0074】
少なくとも一実施形態では、医療機器100は、クリップ150(図8A図9C参照)を更に備えてもよい。クリップ150は、吸引ポート120及び送液ポート126に解放可能に結合されてもよい。クリップ150は、患者の口腔外に配置するように構成されてもよい。クリップ150は、患者の下(上)歯の2つの象限が互いにより離間した大サイズの口に対応(適合)するために、患者の口に配置されるときに吸引要素102と送液要素104とを互いに離間する方向、又は接近する方向に付勢するものであってもよい。
【0075】
医療機器100は、シリコーン、ポリウレタン、他の公知の材料など、柔らかく弾力性のある任意の数の素材で形成することができる。例えば、医療機器100は、可撓性を有する材料で形成され、医療機器100の吸引要素102及び送液要素104がブリッジ106に対して移動可能とされてもよい。材料の可撓性により、医療機器100が横方向に狭くなって、吸引要素102及び送液要素104が互いに近づいて、口腔内への挿入を容易にするので、医療機器100を患者の口に挿入しやすくすることができる。医療機器100が患者の口腔に挿入されると、医療機器100は拡張して、吸引要素102と送液要素104とが互いに離間するような使用前の初期構成に戻ってもよい。少なくとも一実施形態では、吸引要素102及び送液要素104は非可撓性(すなわち、硬質)の材料で形成され、ブリッジ106は可撓性を有する材料で形成されてもよい。吸引要素102と送液要素104との剛性により医療機器100の構造を保持しつつ、ブリッジ106の可撓性によって医療機器100を患者の口に挿入しやすくすることができる。少なくとも一実施形態では、医療機器100は、非可撓性(硬質)の材料及び/又は可撓性の材料の任意の組み合わせで構成されてもよい。
【0076】
少なくとも一実施形態では、医療機器100は、深さが約40mmであり、この深さは、医療機器100のブリッジ106から吸引要素102及び送液要素104の端部(すなわち、吸引要素102及び送液要素104のうち患者の口腔に最も深くまで至る端部)までの距離によって定義することができる。あるいは、少なくとも一実施形態では、口腔が小さい患者のために、医療機器100は40mm未満の深さを有してもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、口腔が大きい患者のために、医療機器は40mmを超える深さを有してもよい。
【0077】
少なくとも一実施形態では、医療機器100は、幅が約85mmであり、この幅は、ブリッジ106に対する吸引要素102の最外縁から、ブリッジ106に対する送液要素104の最外縁までの距離によって定義することができる。少なくとも一実施形態では、口腔が小さい患者のために、医療機器100は85mm未満の幅を有してもよい。少なくとも一実施形態では、口腔が大きい患者のために、医療機器100は85mmを超える幅を有してもよい。本開示のいずれの実施形態でも、医療機器100は、例えば15mm程度の一定量だけ横方向に圧縮可能である。
【0078】
少なくとも一実施形態では、第1のプレート及び前記第2のプレートは、幅が狭く、この幅はプレートの外縁からプレートの内縁までの距離によって定義することができる。この狭い幅は、子供又は顎が解剖学的に小さい人の使用に向けた小型の実施形態に有用である。少なくとも一実施形態では、上記第1及び第2のプレートは、幅が広くてもよい。この広い幅は、大人又は顎が解剖学的に大きい人の使用に向けた大型の実施形態に有用である。少なくとも一実施形態では、吸引入口は、患者の頬組織と接触するバッフル(すなわち、吸引要素上の一点)から少なくとも3mmの距離をおいて配置される。
【0079】
図2図5では、吸引ポート120が吸引ライン128に流体的に結合され、かつ、送液ポート126が送液ライン132に流体的に結合されている。図2及び図3では、吸引要素102の一実施形態が示されており、吸引入口116は、パドル110の拡大ヘッド114の内面に沿って円板118上に配置されてもよい。本実施形態では、吸引要素102は、円板118の上部に位置する一方の吸引入口116と、円板118の下部に位置する他方の吸引入口116とを有している。図2及び図3は、送液要素104の第2のプレート122の外縁、後端及び内縁又はいずれかの縁から離れた内側領域に沿って送液出口124が配置された、送液要素104の実施形態を示す。
【0080】
図5は、本実施形態のクリップ150を示す図である。クリップ150は、吸引ポート120の一部を解放可能に受容する第1のスロット152と、気管内チューブの一部を解放可能に受容する第2のスロット154と、送液ポート126の一部を解放可能に受容する第3のスロット156とを備える。図5に示すように、クリップ150の第2のスロット154と、医療機器100のブリッジ106のテーパは、正面方向に並んでいてもよい。挿管中の患者の口に機器100が挿入されている場合に、クリップ150の第2のスロット154とブリッジ106の上縁テーパとは整列して、気管内チューブの妨げされない経路を作ってもよい。気管内チューブは、医療機器100の挿入前に使用されてもよいし、医療機器100が口腔に挿入された後に患者に挿入されてもよい。
【0081】
図6図1図5の医療機器100の吸引要素102の部分上面斜視図である。図6には、吸引要素102のパドル110の拡大ヘッド114の内面に沿った円板118が示されている。円板118上には、少なくとも1つの吸引入口116が設けられている。少なくとも一実施形態では、複数の吸引入口116が円板118に沿って配置されている。少なくとも一実施形態では、吸引入口116は、図6に示すように、円板118の上側に配置されているとともに、図4Bに示すように、円板118の下側にも配置されている。あるいは、少なくとも一実施形態では、パドル110は、円板118を備えておらず、少なくとも1つの吸引入口116は、吸引要素102の第1のプレート108に設けられている。このような実施形態では、第1のプレート108の外周には、任意の大きさの吸引入口が複数設けられてもよい。少なくとも一実施形態では、この少なくとも1つの吸引要素116は、吸引要素102のパドル110上に配置されてもよい。この実施形態では、パドル110の長尺腕部112又は拡大ヘッド114には、任意の大きさの吸引入口116が複数設けられてもよい。
【0082】
吸引要素102の吸引入口116は、吸引流路によって吸引ポート120に流体的に結合されている。この吸引流路により、例えば、患者の口腔から吸引された流体を、吸引ポート120及び吸引ライン128を介して壁装着型の吸引機器に容易に且つ容易に除去・廃棄することができる。
【0083】
少なくとも一実施形態では、患者が横になって口腔内の低点(low point)を作ることにより、送液流体が溜めることを可能にしてもよい。医療機器100は、吸引要素102が患者の歯と頬との間の頬側ポケット(buccal pocket)内に収まるように口腔内に配置されてもよい。口腔内の低点も、頬側ポケット内にあってもよい。これにより、口腔から送液流体を容易に吸引することができる。吸引要素102の円板118を用いて、粘膜が吸引入口116に嵌入することを防止してもよい。例えば、吸引要素102のパドル110の拡大ヘッド114が患者の口腔粘膜(mucous membrane of the oral cavity)に接触してもよい。吸引入口116が拡大ヘッド114の内面の円板118上に設けられることにより、吸引入口116から患者の粘膜を分離する保護部材がある。円板118は、粘膜が吸引を妨げたり患者に損傷を与えたりすることなく口腔内で吸引することを可能とする。
【0084】
次に、図7A、7Bを参照すると、図1図5の医療機器100の送液出口124の実施形態の部分図が示されている。図7Aは、第2のプレート122を有する送液要素104の部分上面図である。図7Bは、送液要素104の部分右側面図である。第2のプレート122は、上面136と、下面138と、上面136の外縁の周囲に形成された先細り縁部140とを有する。図7Aに示すように、少なくとも一実施形態では、送液出口124は、第2のプレート122の先細り縁部140の周囲の上面136に配置されてもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、図7Bに示すように、送液出口124は、上面136側及び下面138側の両方において、第2のプレート122の先細り縁部140に沿って配置されてもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、送液出口124は、上面136の全域にわたって散在してもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、送液出口124は、下面138の全域にわたって散在してもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、送液出口124は、上面136と下面138との両方の全域にわたって散在してもよい。上述したいずれの実施形態でも、送液出口124は、送液流体が患者の歯の外面に沿って、又は歯と頬の内面との間に、又は患者の歯の内面に沿って、又は歯と舌との間に配置されるように配置されてもよい。図7Bには、送液出口124からの流体の流れ方向(矢印で示す)が更に示されている。
【0085】
送液要素104の送液出口124は、流体流路によって送液ポート126に流体的に結合されている。流体流路は、例えばシリンジ等の分注機器(fluid dispersing device)からの流体を患者の口腔に導入するためのものである。少なくとも一実施形態では、送液ポート126の内縁からそれぞれ各送液出口124に向かう複数の小型の流体流路があってもよい。他の実施形態では、流路は、例えば、送液要素104の先細り縁部140の周囲を走る、各送液出口124への流体流路を含んでもよく、流路は、各送液出口124において、流体を患者の口腔内に吐出させる開窓部をそれぞれ有してもよい。
【0086】
吸引入口116及び送液出口124は、患者の口への流体の導入と、患者の口からの流体の除去とを同時に行うことにより、患者の口における流体の滞留時間を短縮してもよい。吸引すると同時に流体を導入することにより、無限量の流体を送液した後、患者の口から吸引することができる。患者の口腔から咽喉まで流体を通過させることなく、口から大量の流体を洗い流すことができる。
【0087】
次に、図8A~8Cを参照すると、図8Aはクリップ150の斜視図を示し、図8Bはクリップ150の正面図を示し、図8Cはクリップ150の上面図を示す。上述したように、クリップ150は、吸引ポート120を受容する第1のスロット152と、気管内チューブ及び/又は歯科用器具などの医療器具を受容する第2のスロット154と、送液ポート126を受容する第3のスロット156とを備えてもよい。
【0088】
少なくとも一実施形態では、クリップ150は、図1図5の医療機器100の吸引ポート120及び送液ポート126に解放可能に結合されている。クリップ150は、患者の口の外面に位置してもよい。クリップ150は、患者の口腔内に位置すると、医療機器100の吸引要素102と送液要素104との内縁の間の距離を制御するために用いられてもよい。クリップ150は、患者の顎径の解剖学的変化に対応するように口金の直径を変更してもよい。クリップ150が対応する幅の調整により、吸引要素102の外縁と、送液要素104の外縁とが、患者の口腔内の頬に接触する適切な位置にあることが保証される。
【0089】
少なくとも一実施形態では、吸引ポート120及び送液ポート126は、クリップ150を載置する凹部(indentation)(例えば、溝(groove))をそれぞれ備える。これらの凹部にクリップ150を挿入してもよい。この凹部は、医療機器100の吸引要素102及び送液要素104から任意の距離に配置され、患者に適切な大きさにすることができる。一実施形態では、クリップ150を受容する凹部は、吸引要素102及び送液要素104に近い位置に配置されてもよい。この実施形態では、クリップ150を凹部に挿入する場合、吸引要素102と送液要素104との間の距離を僅かに増加させてもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、クリップ150を受容する凹部は、吸引要素102及び送液要素104から離れた位置に配置されてもよい。この実施形態では、クリップ150を凹部に挿入する場合、吸引要素102と送液要素104との間の距離を大きく増加させてもよい。このような実施形態は、口が大きい患者に対して本開示の医療機器100を設置するように使用することができる。
【0090】
少なくとも一実施形態では、吸引ポート120及び送液ポート126は、凹部を有さなくてもよい。この実施形態では、クリップ150は、吸引ポート120及び送液ポート126に沿って摺動可能であるとともに、これらのポートに密着して配置されてもよい。このように、患者の外口(outside mouth)(すなわち、唇の外面)からクリップ150をスライドさせることにつれて、医療機器100の吸引要素102と送液要素104とを更に離間させることができる。本明細書に開示される各実施形態では、クリップ150は吸引ポート120及び送液ポート126に留まって、医療機器100が患者の口腔内に挿入された後に患者の口腔内に位置するように確保してもよい。
【0091】
他の実施形態では、クリップ150は、患者の口の外面(すなわち、唇)に直接接触してもよい。クリップ150は、患者の口の外側に当接する位置に留まることにより、口から飛散する体液への被曝を低減することに加えて、病原体又はエアロゾルが逸脱したり患者の口に侵入したりする可能性を回避又は解消することができる。
【0092】
次に、図9A~9Cを参照すると、図1図5に示すように、医療機器100の吸引ポート120及び送液ポート126に解放可能に結合されるクリップ150a~150cのいくつかの実施形態を示す。一実施形態では、図9Aに示すように、第1のスロット152aと第3のスロット156aとは、図8A~8Cに示す実施形態よりも遠い距離で配置されている。クリップ150aは、医療機器100の吸引ポート120及び送液ポート126に結合されると、吸引要素102と送液要素104との間の距離を減少させてもよい。距離を減少させることにより、機器100は口腔の小さい患者に使用することができる。図9Bは、第1のスロット152bと第3のスロット156bとが中距離に配置されたクリップ150bの第2の実施形態を示す。図9Cは、第1のスロット152cと第3のスロット156cとが、図8A、8Bに示す実施形態よりも遠い距離で配置されたクリップ150cの第3の実施形態を示す。クリップ150cは、医療機器100の吸引ポート120及び送液ポート126に結合されると、吸引要素102と送液要素104との間の距離を増加させてもよい。距離を増加させることにより、機器は口腔の大きい患者に使用することができる。
【0093】
更なる実施形態(図示せず)が、口腔の大きさが異なる患者に対応するために、第1のスロット152と第3のスロット156が図9A~9Cに示すものよりも遠いか又は近い距離で配置されてもよい。
【0094】
次に、図10図11を参照すると、図1図5の医療機器100の一実施形態が挿入された患者の装着状態を示す正面図及び側面図である。図示するように、医療機器100は、患者の口の内部に配置され、気管内チューブ170は、患者の口の内部に位置し、医療機器100の上方に位置してもよい。医療機器100と気管内チューブ170とは、互いに解放可能に結合されてもよい。少なくとも一実施形態では、医療機器100と気管内チューブ170とは、キット内に併設されてもよい。
【0095】
次に、図12図13を参照すると、図1図5の医療機器100の一実施形態を図8A図9Cのクリップ150と組み合わせた患者の装着状態を示す正面図及び側面図を示す。図示するように、クリップ150は、患者の口の外側に位置している。気管内チューブ170は、患者の口の内部であって、医療機器100の上方に位置するとともに、クリップ150の第2のスロット154の上方に位置している。少なくとも一実施形態では、医療機器100と、クリップ150と、気管内チューブ170とは、キット内に併設されてもよい。
【0096】
少なくとも一実施形態では、医療機器100及び/又はクリップ150は、使い捨て口腔ケア製品を備えて、キットを構成してもよい。この使い捨て口腔ケア製品は、電動歯ブラシ、非発泡歯磨剤などの使い捨て口腔ケア製品を含むことができる。
【0097】
次に、図14図15を参照すると、本発明の医療機器200の他の実施形態を示す上面斜視図及び部分上面図を示す。医療機器200は、医療機器100と同様であるが、クリップ150に代えて係止機構(locking mechanism)250を備える。係止機構250は、吸引要素202と送液要素204との間の距離を変更するために用いられてもよい。係止機構250は、ラチェット252を備えている。医療機器200は、第1の口金部(first mouthpiece component)254と、第2の口金部(second mouthpiece component)256とを備えてもよい。ラチェット252(例えば、第1の腕部)は、一部が吸引ポート220に接続され、他の一部(例えば、第2の腕部)が医療機器200の送液ポート226に接続されている。ラチェット252は、一部がクリップ又はフックを備え、他の一部がクリップが係合・解放可能な隆起部又は歯を備える。ラチェット252は、ラチェット252に含まれる隆起部又は歯の数に基づいて、第1の位置258(図15参照)から第2の位置260、第3の位置262等に調整されてもよい。ラチェット252は、歯に係合する位置を任意の数だけ備えても良い。また、ラチェット252は、隆起部又は歯を任意の数だけ有してもよい。隆起部又は歯は、任意の形状であり、ラチェット252の任意の対応位置に係止可能であってもよい。ラチェットの一方の腕部のクリップが、機器200の一方のポート220又は226に対する他方の腕部の結合に対してラチェットの他方の腕部の最も遠く位置した隆起部又は歯に係合する、第1の位置258にあるとき、ラチェット252は、第1の量だけ吸引要素202と送液要素204との間の距離を増加させてもよい。クリップが最も近く位置した隆起部/歯と係合する第3の位置262において、ラチェット252は、吸引要素202と送液要素204との間の距離を、第1の量よりも大きい第2の量だけ増加させてもよい。
【0098】
第1の口金部254及び第2の口金部256は、機器200の使用時に患者の口の外側に配置されてもよい。第1の及び第2の口金部254、256は、ユーザが機器を患者の口に対して適切に配置及び取り外しを行うように容易に把持して取り扱うことを可能とする。
【0099】
少なくとも一実施形態では、係止機構250は、吸引ポート220及び送液ポート226に解放可能に接続されてもよい。例えば、ラチェットの各腕部は、ポート220、226を解放可能に係合するクリップ又はフックを備えてもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、係止機構250は、吸引ポート220及び送液ポート226に永久的に接続されてもよい。
【0100】
次に、図16図17A、17Bを参照すると、図16は本発明の医療機器300の他の実施形態を示す上面斜視図を示す。図17Aは、医療機器300の幅広係止位置における上面斜視図を示す。図17Bは、医療機器300の幅狭係止位置における上面斜視図を示す。医療機器300は、本明細書に記載の他の実施形態で説明したように、送液出口及び吸引入口を備える。
【0101】
医療機器300は、吸引ポート320及び送液ポート326に接続されるハンドル組立体(handle assembly)380を任意に備える。ハンドル組立体380は、吸引ポート320に接続された第1のタブ382と、送液ポート326に接続された第2のタブ384とを有する。第1のタブ382及び第2のタブ384は、それぞれ雄コネクタ及び雌コネクタと称してもよい。第1のタブ382と第2のタブ384とは、ユーザの親指と人差し指で挟持され合う。第1のタブ382及び第2のタブ284は更に、患者の口腔内に配置する際にユーザによって口金部を押圧しながら保持する位置として利用されてもよい。
【0102】
図17Aに示すように、ユーザによって第1のタブ382及び第2のタブ384の底部を押圧することにより、吸引ポート320及び送液ポート326は押され合い、押圧位置になってもよい。機器300を患者の口に挿入した後に、第1のタブ382と第2のタブ384とは押圧されると互いに係止され、吸引ポート320及び送液ポート326の位置を、吸引要素302と送液要素304との間の距離を増加させた押圧位置に保持することにより、機器300を口腔の大きい患者により強固に適合させることができる。
【0103】
図17Bに示すように、吸引ポート320及び送液ポート326は、ユーザによって拡張位置に引き離されてもよい。これは、ユーザが第1のタブ382及び第2のタブ384を押圧することによって行われてもよい。第1のタブ382及び第2のタブ384は、下方に押圧されて互いに係止され、吸引ポート320及び送液ポート326の位置を拡大位置に保持してもよい。この実施形態では、患者の口に機器300が挿入されているときに、吸引要素302と送液要素304との間の距離は患者の口腔内に収まるように減少する。
【0104】
次に、図18図19A、19Bを参照すると、図18は本発明の医療機器300の他の実施形態を示す上面斜視図を示す。図19Aは、医療機器300の幅広係止位置(wide locked position)における上面図を示す。図19Bは、医療機器300の幅狭係止位置(narrow locked position)における上面図を示す。
【0105】
医療機器300は、吸引ポート320及び送液ポート326に接続されるハンドル組立体380を備える。ハンドル組立体380は、吸引ポート320に接続された第1のタブ382と、送液ポート326に接続された第2のタブ384とを有する。ハンドル組立体は、第1のタブ382に、例えばピン又はリベット等のファスナー386を更に備えてもよい。ハンドル組立体380の第2のタブ384は、ファスナー386を受容する1つ以上のスロット、孔などの受容部を更に備えてもよい。第1のタブ382と第2のタブ384とは、ユーザの親指と人差し指で挟持され合う。ファスナー386は、ユーザによって押下されて、第2のタブ384の一方の受容部に接続されて、ハンドル組立体380を係止してもよい。第1のタブ382及び第2のタブ284は更に、患者の口腔内に配置する際にユーザによって口金部を押圧しながら保持する位置として利用されてもよい。
【0106】
図19Aに示すように、ユーザによって第1のタブ382及び第2のタブ384の底部を押圧することにより、吸引ポート320及び送液ポート326は押され合い、押圧位置になってもよい。機器300を患者の口に挿入した後に、ファスナー386は、一方の受容部に押圧されると互いに係止され、吸引ポート320及び送液ポート326の位置を、吸引要素302と送液要素304との間の距離を増加させた押圧位置に保持することにより、機器300を口腔の大きい患者により強固に適合させることができる。
【0107】
図19Bに示すように、吸引ポート320及び送液ポート326は、ユーザによって拡張位置に引き離されてもよい。これは、ユーザが第1のタブ382及び第2のタブ384を押圧することによって行われてもよい。ファスナー386は、下方に押圧されると一方の受容部に係止され、吸引ポート320及び送液ポート326の位置を拡大位置に保持してもよい。この実施形態では、患者の口に機器300が挿入されているときに、吸引要素302と送液要素304との間の距離は患者の口腔内に収まるように減少する。
【0108】
次に、図20を参照すると、本発明の医療機器400の他の実施形態を示す斜視図を示す。医療機器400は、吸引要素402と、送液要素404とを備える。医療機器100の送液要素104について説明した属性、特徴及び機能は、送液要素404に適用してもよい。吸引要素402は、パドル410と、少なくとも1つの吸引入口420とを有している。吸引要素402は、プレート(バイトプレート、バイトウィングとも呼ばれる)を備えていない。パドル410は、均一な構造の長尺腕部(すなわち、腕部の全長に渡って高さが同じである)を備えてもよい。他の実施形態では、パドル410は、遠位端が拡大され、ブリッジ406に近づくにつれて高さが低くなる腕部を備えて、涙滴と同様の形状を形成してもよい(図21B参照)。また、パドル410は、患者の上下の歯の外面と患者の口腔の頬の内面との間に位置するように、患者の上下の歯の外側に配置されてもよい。
【0109】
次に、図21A、21Bを参照すると、図20の医療機器400の吸引要素402の実施形態の部分図が示されている。図21Aは、医療機器400の上面図を示す。図21Bは、医療機器400の吸引要素402の断面右側面図を示す。
【0110】
吸引要素402は、口腔内の流体を吸引する吸引入口416を少なくとも1つ有する。パドル410は、内面に隆起面417を有してもよい。吸引要素402の吸引入口416は、隆起面417の先端に形成された開口によって画定されてもよい。他の実施形態では、吸引要素402に含まれる吸引入口416が複数であってもよいし、隆起面417の他の一部に吸引入口が形成されてもよい。他の実施形態では、パドル410は、隆起面417を有していなくてもよい。吸引要素402に含まれる1つ以上の吸引入口416は、パドル410のいずれかの部分に形成されてもよい。あるいは、少なくとも一実施形態では、図21Bに示すように、パドル410の遠位端に複数の吸引入口416が設けられてもよい。図21Bには、吸引入口416への流体の流れ方向(矢印で示す)が更に示されている。線A-Aは口腔内の頬の組織を示し、図21Bに示される。図示のように、吸引入口416は、パドル410の縁から僅かに離れている。このように、吸引入口416から吸入した流体は、粘膜組織に接触するパドル410の縁によって阻まれて、閉塞の発生を最小限に抑えることができる。
【0111】
医療機器400のその他の特徴は、医療機器100の属性、特性及び機能と同じであってもよい。例えば、医療機器400は、図示の実施形態のように、図16図17A、17Bに示すようなハンドル組立体380を備えてもよい。他の実施形態では、医療機器400は、図14及び図15に示すように、係止機構を備えてもよい。他の実施形態では、医療機器400は、図14図17Bの係止機構に代えて、図8A図9Cに示すようにクリップを備えてもよい。
【0112】
次に、図22図25を参照すると、本発明の医療機器500の他の実施形態を示す斜視図を示す。医療機器500は、吸引要素502と、送液要素504とを備える。医療機器100の送液要素104について説明した属性、特徴及び機能は、送液要素504に適用してもよい。医療機器400の吸引要素402について説明した属性、特徴及び機能は、一般的に吸引要素502に適用してもよい。ただし、以下に説明するように、吸引要素502及び送液要素504は、それぞれ吸引要素402及び送液要素104と比較して、特定の態様で変形されている。
【0113】
次に、図23A、23Bを参照すると、医療機器500の正面図及び背面図が示されている。図23Aは、医療機器500の正面図であり、特に、吸引ポート520、送液ポート526及びブリッジ506の配置の一例を示す。図23Bは、吸引要素502のパドル510に吸引入口516が表示された状態の吸引要素502及び送液要素504の背面図を示す。
【0114】
吸引要素502と送液要素504とを接続する医療機器500のブリッジ506は、上下面が平坦であり、かつ、本明細書に記載の上記医療機器のブリッジよりも薄型化又は低背化された(thinner or lower in profile)、比較的平坦な部分で構成されてもよい。ブリッジ506の上縁は、吸引要素502の上縁よりも低くて平坦であってもよく、少なくとも一実施形態では、患者の口内の気管内チューブの横位置に関わらず、気管内チューブが医療機器500に妨げられないように位置するように受容することができる。本明細書の実施形態による上記の医療機器に比べて、気管内チューブは、患者の口内にブリッジ506の上側を、横方向により大きく移動させることができるので、医療従事者が、医療機器500のブリッジ506に妨害されずに気管内チューブの位置を移動させることができる。ブリッジ506の幅を細くすることで、少なくとも一実施形態では、医療機器500は患者の口腔内で反転でき、口の両側の吸引を可能としてもよい。このように、ブリッジ506を吸引要素502に比べて相対的に低くかつ平坦に維持することにより、気管内チューブは医療機器500の姿勢によらず(すなわち、医療機器500が図23A、23Bに示す向きにあるか、図23A、23Bに示す向きに対して180度回転しているかに関わらず)に適切に配置・移動できる。
【0115】
次に、図24A、24Bを参照すると、医療機器500の右側面図及び左側面図が示されている。特に、図24Aは、送液要素502及び吸引要素504を示し、図24Bは、吸引要素502の外側を示す。
【0116】
吸引要素502は、全ての縁に沿って湾曲しており、鋭い部分を除去している。これにより、医療機器500は、患者の口腔粘膜に接触した際の怪我又は損傷を防止することができる。例えば、吸引要素502の平滑な縁は、患者の口への挿入及び取り外し時の組織損傷の可能性を低減する。
【0117】
医療機器500の吸引要素502は、口腔から流体を吸引する吸引入口516を少なくとも1つ備えてもよい。吸引要素502の吸引入口516は、図24Aに示すのと同様な配置で、吸引要素502の内側に形成された開口によって画定されてもよい。吸引入口516は、楕円形、半円形、又は、アーモンド形であってもよい。少なくとも一実施形態では、吸引入口516は、曲率が滑らかな形状であればよい。少なくとも一実施形態では、図24Aに示すように、吸引入口516は2つであってもよい。図示のように、吸引入口516は、パドル510の縁から僅かに離れている。このように、吸引入口516から吸入した流体は、粘膜組織(mucosal tissue)に接触するパドル510の縁によって阻まれて、閉塞の発生を最小限に抑えることができる。少なくとも一実施形態では、この吸引入口516は、吸引要素502のパドル510上に配置すればよい。少なくとも一実施形態では、吸引入口516は、内側に沿って吸引要素502の上縁から吸引要素502の下縁まで達する大きさに形成されてもよい。他の実施形態では、吸引入口は2つより多くてもよい。
【0118】
医療機器500のその他の特徴は、医療機器100の属性、特性及び機能と同じであってもよい。例えば、医療機器500は、図示の実施形態のように、図16図17A、17Bに示すようなハンドル組立体380を備えてもよい。他の実施形態では、医療機器500は、図14及び図15に示すように、係止機構を備えてもよい。他の実施形態では、医療機器500は、図14図17Bの係止機構に代えて、図8A図9Cに示すようにクリップを備えてもよい。
【0119】
次に、図26を参照すると、本発明の医療機器600の他の実施形態を示す斜視図を示す。医療機器600は、吸引要素602と、送液要素604とを備える。医療機器500の吸引要素502及び送液要素504について説明した属性、特徴及び機能は、一般的に医療機器600の吸引要素602及び送液要素604にそれぞれ適用してもよい。ただし、以下に説明するように、吸引要素602は、吸引要素502と比較して、特定の態様で変形されている。
【0120】
次に、図27A、27Bを参照すると、医療機器600の正面図及び背面図が示されている。図27Aは、医療機器600の正面図であり、特に、送液ポート626、吸引ライン628及び送液ライン632の配置の一例を示す。図27Bは、吸引要素602のパドル610に吸引入口616が表示された状態の吸引要素602及び送液要素604の背面図、及びブリッジ606の形状を示す。
【0121】
吸引要素602と送液要素604とを接続する医療機器600のブリッジ606は、上下面が平坦であり、かつ、医療機器500のブリッジ506に記載したのと同様に薄型化かつ低背化された(thinner or lower in profile)、比較的平坦な部分で構成されてもよい。例えば、ブリッジ606の厚さは、送液要素604の厚さと実質的に同様か、又は同じであってもよい。次に、図29Aを参照すると、ブリッジ606は、本明細書に記載の医療機器の上記実施形態のブリッジに比べて、軸線B-Bに沿ってより大きな厚さを有してもよい。これにより、軸線B-Bに沿った厚さを大きくすることで、使用時に破損しにくい製品を作成することができるとともに、製造の簡易性を向上させることができる。例えば、少なくとも一実施形態では、ブリッジ606の厚さを大きくすることで、医療機器500のブリッジ506と同様の低いプロファイル(lower profile)によるメリット(すなわち、口腔内の反転、気管内チューブの移動の簡易性)を維持しつつ、製品の本体が大きくなるので、ブリッジ606をより容易に製造することができる。
【0122】
次に、図28A、28Bを参照すると、医療機器600の右側面図及び左側面図が示されている。特に、図28Aは、送液要素602(内面)及び吸引要素604を示し、図28Bは、吸引要素602の外側を示す。医療機器600の吸引要素602は、口腔から流体を吸引する吸引入口616を少なくとも1つ備えてもよい。吸引要素602の吸引入口616は、図24Aに示すのと同様な配置で、吸引要素602の内側に形成された開口によって画定されてもよい。ただし、吸引入口616は、図28Aに示すように、右側から見てスリット状に形成された曲線状の長円形の開口を有してもよい。この実施形態では、吸引要素602の隆起した外形により吸引入口616に深部を形成することで、吸引入口616から流体を適切に流すことができる。吸引入口616の開口形状は、上記の実施形態に示すように、角部又は鋭い縁をすべて除去し、医療機器600が口に置かれた際に患者の不快感を低減することができる。少なくとも一実施形態では、図28Aに示すように、吸引入口616は例えば2つあってもよい。少なくとも一実施形態では、この吸引入口616は、吸引要素602のパドル610上に配置すればよい。例えば、少なくとも一実施形態では、吸引入口616は、内側に沿って吸引要素602の上縁の近くから吸引要素602の下縁の近くまで達する大きさに形成されてもよい(例えば、一本のスリット状の入口であってもよいし、上入口と下入口616の組み合わせであってもよい)。他の実施形態では、図28Aにおいて、吸引入口616の右側に隣接して配置された上下の吸引入口が2つ以上設けられてもよい。
【0123】
次に、図29A、29Bを参照すると、図26の医療機器600の吸引要素602の実施形態の部分図が示されている。図29Aは、医療機器600の上面図を示す。図29Bは、医療機器600の吸引要素602及び吸引入口616の断面右側面図を示す。吸引要素602の吸引入口616は、パドル610の先端に形成された開口によって画定されてもよい。吸引入口616は、矩形状であってもよいし、円錐状であってもよい。吸引入口616は、図28Aに関して説明したように、湾曲した細長い長円形状を有してもよいが、図29Bの角度は、吸引要素602の外形に沿った吸引入口616の深さを示す。他の実施形態では、吸引要素602に含まれる吸引入口616は、(図示のように)2つ設けられてもよいし、2つよりも多く設けられてもよい。吸引要素602に含まれる1つ以上の吸引入口616は、パドル610のいずれかの部分に形成されてもよい。図29Bには、吸引入口616への流体の流れ方向(矢印で示す)が更に示されている。線C-Cは、機器600の使用時の口腔内の頬の組織を示し、図29Bに示されている。図示のように、吸引入口616は、パドル610の上下の縁から僅かに離れており、吸引要素602の遠位端から内側に向けて設定されている。例えば、吸引入口616の、吸引要素602の遠位端からの距離は、吸引入口616の幅とほぼ同様であってもよいし、同じであってもよい。このように、吸引入口616から吸入した流体は、粘膜組織に接触するパドル610の縁によって阻まれて、閉塞の発生を最小限に抑えることができる。
【0124】
医療機器600のその他の特徴は、医療機器100の属性、特性及び機能と同じであってもよい。例えば、医療機器600は、図示の実施形態のように、図16図17A、17Bに示すようなハンドル組立体380を備えてもよい。他の実施形態では、医療機器600は、図14及び図15に示すように、係止機構を備えてもよい。他の実施形態では、医療機器600は、図14図17Bの係止機構に代えて、図8A図9Cに示すようにクリップを備えてもよい。
【0125】
次に、図30を参照すると、本発明の医療機器700の他の実施形態を示す上面図を示す。医療機器700は、吸引要素702と、送液要素704とを備える。医療機器600の吸引要素602及び送液要素604について説明した属性、特徴及び機能は、一般的に医療機器700の吸引要素702及び送液要素704にそれぞれ適用してもよい。ただし、以下に説明するように、医療機器700は、医療機器600と比較して、特定の態様で変形されている。
【0126】
吸引要素702及び送液要素704は、医療機器700とは別体である。したがって、医療機器700は、患者の口内に各部を1つずつ設置するように設計されてもよい。例えば、送液要素704は、患者の口内に配置されて口腔に送液した後に除去されてもよい。そして、吸引要素702を口腔内に配置して流体を吸引した後に除去されてもよい。別の例では、送液要素704及び吸引要素702の両方を同時に口腔内に配置してもよい。送液要素704及び吸引要素702の両方を口腔内に配置する場合には、ユーザが使用時に医療機器700のこれらの各部を保持して患者の口腔内の適切な位置に維持する必要がある。医療機器700のこの2部構成は、本明細書に記載の医療機器の他の実施形態に適用されてもよい。
【0127】
吸引ポート720及び送液ポート726は、どのような長さであってもよい。例えば、図30に示すように、吸引ポート720及び送液ポート726の長さは、本明細書に記載の上記医療機器の実施形態よりも短い。しかしながら、他の実施形態では、吸引ポート720及び送液ポート726の長さを長くして、ユーザの操作性を向上させてもよい。他の実施形態では、吸引ポート720及び送液ポート726は、任意の長さの棒、吸引機器、又は他の口腔内の送液・吸引用の機器に接続されてもよい。少なくとも一実施形態では、送液ポート726は、流体が充填されたシリンジ790に接続されており、シリンジ790のプランジャーが患者の口に送液するように押されてもよい。
【0128】
次に、図31を参照すると、本発明の医療機器800の他の実施形態を示す斜視図を示す。医療機器800は、医療機器600、700と同様に、医療機器800が2つの別体の部材として維持されてもよいが、医療機器800はまた、吸引要素802と送液要素804とを解放可能に接続するためのハンドル組立体880を備えている。
【0129】
医療機器800のハンドル組立体880は、吸引ポート820に接続された雄コネクタ882と、送液ポート826に接続された雌コネクタ884とを備えてもよい。雄コネクタ882は、低背のポスト(low profile post)又はボス状の僅かな突起を有し、雌コネクタ884は、雄コネクタ882のポスト及びタブ又は平坦部を解放可能に受容する形状及び大きさの開口及びスロットを有している。他の実施形態では、雄コネクタ882及び雌コネクタ824の位置は、それぞれ送液ポート826及び吸引ポート820にあってもよい。吸引ポート820及び送液ポート826は、図31に示すように、雌コネクタ884の開口に雄コネクタ882のポストを挿入することで接続することができる。雄コネクタ882及び雌コネクタ884は、吸引要素802と送液要素804とを接続して、患者の口腔内における医療機器800の位置を維持するために用いられてもよい。ハンドル組立体880は更に、患者の口腔内に配置する際に口金部を構成しつつ、ユーザが把持する場所として利用されてもよい。
【0130】
別の実施形態では、ユーザの親指と人差し指で雄コネクタ882と雌コネクタ884をつまみ合って、吸引要素802と送液要素804とを接続して係止してもよい。他の実施形態では、雄コネクタ882及び雌コネクタ884は、図14及び図15に示すように、ラチェット252などのラチェットを用いて互いに接続されてもよい。他の実施形態では、雄コネクタ882と雌コネクタ884とを、ボタンスナップ、バックル、ベルクロ(登録商標)、両面接着剤、ネジ、ピンなどの機構を用いて接続して係止し、2つの部材を接続して係止するようにしてもよい。
【0131】
次に、患者の口腔内に送液する方法について説明する。この方法は、本明細書に記載の、医療機器100~800のいずれか1つを、患者の口腔の内部に配置することと、医療機器の送液要素104~804を用いて送られた流体を口腔に送液することと、吸引要素102~802を用いて流体を口腔から吸引することとを備える。医療機器100~800の吸引ライン128及び送液ライン132の遠位端は、それぞれ壁装着型の吸引機器及びシリンジに接続されてもよい。少なくとも一実施形態では、患者は、患者の頭部及び口腔が患者の足に対して下側に位置するように位置決めされてもよい(すなわち、トレンデレンブルグ体位(Trendelenburg position))。患者のこの位置は、流体が口腔から消化管内に侵入するリスクを緩和することができる。その後、患者を横にさせて、吸引要素102~802を患者の口腔の最低位置に位置する頬側ポケットに配置してもよい。
【0132】
本明細書に記載の医療機器は、口腔に送液して、送液流体を吸引することにより、患者の口腔を洗浄消毒するために使用することができる。この流体は、水、生理食塩水等の流体であってもよいし、防腐剤、抗生物質、潤滑剤等、任意の種類の流体であってもよい。歯磨き又は口腔をブラシで磨くなどの追加的な洗浄工程又は、先に説明した他の洗浄工程のいずれかを、この機器を使用する前など、この機器と併用してもよい。
【0133】
本方法は、医療機器と併用する鼻腔送液(nasal irrigation)を更に含んでもよい。このような治療では、口腔送液と同時に、又は吸引を行っている間に、患者の鼻孔に流体を滴下してもよい。
【0134】
また、本明細書で示した医療機器の実施形態は、人工呼吸患者に使用されるものであるが、これに限定されない。例えば、本明細書に記載の医療機器は、歯科業界に使用されてもよく、歯科治療時の送液及び吸引の支援に用いられてもよい。このような用途では、気管内チューブを収容する医療機器の一部が、特定の歯科治療の性能のために、特定の歯科用器具の配置に用いてもよい。他の実施形態では、上記した医療機器は、患者がスタッフ及び/又は口腔介護者に頼る病院環境であれば使用可能である。
【0135】
また、各吸引工程は、患者の口内の組織を吸引入口に引かれて障害を発生させることなく、250mmHgまで真空を加えうる高真空吸引(例えば、高負圧、高真空)を用いて行ってもよい。
【0136】
また、各送液工程は、低圧送液、中圧送液、及び高圧送液により行われてもよい。高圧送液は、必要の洗浄量と使用中の吸引量とに基づいて、適宜、250mL/分以上の流体を使用することができる。
【0137】
本明細書に開示される機器及び方法の種々の実施形態は、口腔衛生の維持に加えて、ウイルス等の病原体を含みうるエアロゾルの発生を防止又は抑制することにより、COVID19ウイルス等の他の病原体に対する付加的な保護を提供することができる。本明細書に記載のクリップ及び送液/洗浄・衛生化手順を用いることで、開放された気道の吸入を回避することができるとともに、病原体のエアロゾル化を抑制又は防止することができる。これは、クリップを用いることで、患者の口からの漏れが軽減又は防止されて、機器が患者の口腔内により強固に係合されるからである。また、本明細書に記載の機器を用いて可能となる口腔内の送液/洗浄・衛生化を向上させることで、エアロゾルを低減し、最前線の重要なケアスタッフに追加的な保護を与えることができる。
【0138】
本明細書に記載の出願人の教示は、説明のために種々の実施形態と併記されているが、本明細書に記載の実施形態は例示であり、出願人の教示をかかる実施形態に限定するものではない。一方、本明細書に記載・図示する出願人の教示は種々の代替例、変形例、対等例を含むが、これらは本明細書に記載の実施形態から逸脱することなく、その一般的な範囲は特許請求の範囲に定義される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図29A
図29B
図30
図31
図32A
図32B
【外国語明細書】