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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058064
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】鋼管杭の接続方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 5/24 20060101AFI20230418BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
E02D5/24 102
E02D7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167801
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521450160
【氏名又は名称】三伸工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100173668
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 吉之助
(72)【発明者】
【氏名】米沢 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】坂田 充義
(72)【発明者】
【氏名】中田 範俊
(72)【発明者】
【氏名】加地 重久
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041DB02
2D041DB11
2D050AA06
2D050EE05
2D050EE11
(57)【要約】
【目的】溶接台車の安定した状態での走行が可能であり、均質な溶接品質を得ることができる鋼管杭の接続方法を提供する。
【構成】第一の鋼管杭と第二の鋼管杭との継ぎ目を、鋼管杭の外周を円周方向に移動する溶接装置を用いて溶接する鋼管杭の接続方法において、
継ぎ目の下方の近傍位置である第一の鋼管杭の上端近傍部分の外周を囲むように全周に亘ってドーナツ状の走行ガイド板を水平状態で取付け、
特定構成の溶接台車を、継ぎ目より上方の前記第二の鋼管杭の外周面に磁力吸着しながら該外周面を円周方向に走行させると共に、走行ガイド板の上面にガイドローラ部のローラを当接させて位置確認を行いながら溶接台車を走行させて溶接を行うこと、
を特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の鋼管杭と、該第一の鋼管杭の上に接続する第二の鋼管杭と、の継ぎ目を、鋼管杭の外周を円周方向に移動する溶接装置を用いて溶接する鋼管杭の接続方法において、
前記継ぎ目の下方の近傍位置である前記第一の鋼管杭の上端近傍部分の外周を囲むように全周に亘ってドーナツ状の走行ガイド板を水平状態で取付け、
下記構成を有する溶接台車を、前記継ぎ目より上方の前記第二の鋼管杭の外周面に磁力吸着しながら該外周面を円周方向に走行させると共に、前記走行ガイド板の上面にガイドローラ部のローラを当接させて位置確認を行いながら前記溶接台車を走行させて溶接を行うこと、
を特徴とする鋼管杭の接続方法。
「溶接台車の構成」
主として磁石体から形成されており該磁石体によって第二の鋼管杭の外周面に磁力吸着しながら走行回転する複数の車輪部と、該車輪部を走行回転させる駆動機構と、溶接個所である継ぎ目を溶接する溶接トーチ部と、前記走行ガイド板に遊動走行するローラを当接させて溶接線倣いを行うガイドローラ部と、を有して成る構成。
【請求項2】
ローラが2つ設けられ、この2つのローラが円周方向に間隔を設けた2箇所において走行ガイド板に当接する構成であると共に、ローラが当接する2箇所の間の位置において溶接トーチ部による溶接が行われる構成であることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭の接続方法。
【請求項3】
ローラの走行ガイド板への当接位置が、該走行ガイド板のドーナツ状の内周近傍位置である鋼管杭の外周面に近接した位置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼管杭の接続方法。
【請求項4】
溶接台車が前記ガイドローラ部とは別なる外周ガイドローラ部を有し、該外周ガイドローラ部の外周ローラが走行ガイド板のドーナツ状の外周方向位置に当接して遊動走行する構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【請求項5】
走行ガイド板が、一対の半割ドーナツ状の2枚構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【請求項6】
ドーナツ状の走行ガイド板の取付構成が、
複数個の上下逆L字状部材の各々のL字縦線部を、彎曲可能な長尺帯状プレートに任意の間隔で取付け固定し、複数個の上下逆L字状部材の各々のL字横線部が外向きに且つ水平性を維持するように前記長尺帯状プレートを前記第一の鋼管杭の外周面に巻き付けて固定した後、複数個の上下逆L字状部材の各L字横線部の上にドーナツ状の走行ガイド板を載置し固定する構成であること、
を特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【請求項7】
第一の鋼管杭の外周面に長尺帯状プレートを巻き付け、更にその長尺帯状プレートの外周面、又は、複数個の上下逆L字状部材のL字縦線部の外側、に緊締部材を巻き付けて緊締固定することを特徴とする請求項6に記載の鋼管杭の接続方法。
【請求項8】
ドーナツ状の走行ガイド板の取付構成が、
複数個のL型鋼材を各々のL字横線部が外向きに且つ水平性を維持するように第一の鋼管杭の外周面に固定し、L字横線部の上にドーナツ状の走行ガイド板を載置し固定する構成であること、
を特徴とする請求項1~7のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋼管杭の接続方法に関し、詳しくは立杭配管の継ぎ足しに際して鋼管杭の外周を円周方向に移動する溶接台車を用いて継ぎ目を溶接する接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
立杭配管の埋設工事等においては、複数本の鋼管を現場に用意し、順次、溶接により縦継ぎしながら施工を進めている。
鋼管杭の溶接接続は、下杭となる第一の鋼管杭の上端と、上杭となる第二の鋼管杭の下端と、を突き合せた状態で、その突き合わせ部位である継ぎ目を円周溶接する。
この円周溶接の際、鋼管杭の外周に走行レールを取り付けて、この走行レール上を溶接台車を走行させながら継ぎ目の溶接を行うことが行われている(例えば、特許文献1~3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-281483号
【特許文献2】特開2005-334916号
【特許文献3】特許第4040076号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3の技術は、鋼管の外周に外周面から離した状態で円環状の走行レールを取り付けて、この走行レール上を溶接台車を走行させながら該溶接台車に配設された溶接トーチにより継ぎ目の溶接が行われる構成である。
【0005】
しかし、特許文献1~3の技術では、溶接台車の重量及び走行時の荷重が全て掛かってしまうため、走行状態の溶接台車の重量及び荷重に耐え得るだけの高強度の走行レール構成が必要であるだけでなく、鋼管杭への走行レールの取付強度も必要である。これら強度条件の内、一つでも不充分であった場合には溶接台車の走行軌跡が安定せずブレが生じて、継ぎ目に対する溶接トーチによる溶接が不安定になってしまうため、溶接品質が不安定と成るだけでなく溶接不良が生じる場合もあるという問題点を有している。
【0006】
そこで本発明の課題は、溶接台車の安定した状態での走行が可能であり、均質な溶接品質を得ることができる鋼管杭の接続方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0008】
1.第一の鋼管杭と、該第一の鋼管杭の上に接続する第二の鋼管杭と、の継ぎ目を、鋼管杭の外周を円周方向に移動する溶接装置を用いて溶接する鋼管杭の接続方法において、
前記継ぎ目の下方の近傍位置である前記第一の鋼管杭の上端近傍部分の外周を囲むように全周に亘ってドーナツ状の走行ガイド板を水平状態で取付け、
下記構成を有する溶接台車を、前記継ぎ目より上方の前記第二の鋼管杭の外周面に磁力吸着しながら該外周面を円周方向に走行させると共に、前記走行ガイド板の上面にガイドローラ部のローラを当接させて位置確認を行いながら前記溶接台車を走行させて溶接を行うこと、
を特徴とする鋼管杭の接続方法。
「溶接台車の構成」
主として磁石体から形成されており該磁石体によって第二の鋼管杭の外周面に磁力吸着しながら走行回転する複数の車輪部と、該車輪部を走行回転させる駆動機構と、溶接個所である継ぎ目を溶接する溶接トーチ部と、前記走行ガイド板に遊動走行するローラを当接させて溶接線倣いを行うガイドローラ部と、を有して成る構成。
【0009】
2.ローラが2つ設けられ、この2つのローラが円周方向に間隔を設けた2箇所において走行ガイド板に当接する構成であると共に、ローラが当接する2箇所の間の位置において溶接トーチ部による溶接が行われる構成であることを特徴とする上記1に記載の鋼管杭の接続方法。
【0010】
3.ローラの走行ガイド板への当接位置が、該走行ガイド板のドーナツ状の内周近傍位置である鋼管杭の外周面に近接した位置であることを特徴とする上記1又は2に記載の鋼管杭の接続方法。
【0011】
4.溶接台車が前記ガイドローラ部とは別なる外周ガイドローラ部を有し、該外周ガイドローラ部の外周ローラが走行ガイド板のドーナツ状の外周方向位置に当接して遊動走行する構成であることを特徴とする上記1~3のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【0012】
5.走行ガイド板が、一対の半割ドーナツ状の2枚構成であることを特徴とする上記1~4のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【0013】
6.ドーナツ状の走行ガイド板の取付構成が、
複数個の上下逆L字状部材の各々のL字縦線部を、彎曲可能な長尺帯状プレートに任意の間隔で取付け固定し、複数個の上下逆L字状部材の各々のL字横線部が外向きに且つ水平性を維持するように前記長尺帯状プレートを前記第一の鋼管杭の外周面に巻き付けて固定した後、複数個の上下逆L字状部材の各L字横線部の上にドーナツ状の走行ガイド板を載置し固定する構成であること、
を特徴とする上記1~5のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【0014】
7.第一の鋼管杭の外周面に長尺帯状プレートを巻き付け、更にその長尺帯状プレートの外周面、又は、複数個の上下逆L字状部材のL字縦線部の外側、に緊締部材を巻き付けて緊締固定することを特徴とする上記6に記載の鋼管杭の接続方法。
【0015】
8.ドーナツ状の走行ガイド板の取付構成が、
複数個のL型鋼材を各々のL字横線部が外向きに且つ水平性を維持するように第一の鋼管杭の外周面に固定し、L字横線部の上にドーナツ状の走行ガイド板を載置し固定する構成であること、
を特徴とする上記1~7のいずれかに記載の鋼管杭の接続方法。
【0016】
尚、本明細書において、「第一の鋼管杭」とは接続される2本の鋼管杭の内、下方に位置する下杭の鋼管杭を言い、この下方の鋼管杭の上端に下端が接続される上方に位置する上杭の鋼管杭を「第二の鋼管杭」と言う。従って、この2本の接続が終わった後、更に第二の鋼管杭の上部に次なる鋼管杭を接続する場合、先の第二の鋼管杭が下立となるため「第一の鋼管杭」と言い換え、次なる鋼管杭が上杭となるため「第二の鋼管杭」と言い換えることになる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に示す発明によれば、溶接台車の安定した状態での走行が可能であり、均質な溶接品質を得ることができる鋼管杭の接続方法を提供することができる。
【0018】
特に、溶接台車は磁石体から形成された車輪部の磁力吸着によって立杭配管の外周面に磁力吸着した状態で走行する構成であることから、溶接台車の重量及び走行時の荷重は走行ガイド板に掛かることがないため、前記した特許文献1~3のような高強度の走行レール及び取付構成が不要である。
また、鋼管杭の外周面に取付けられた走行ガイド板に、溶接台車のガイドローラ部のローラを当接させて遊動走行させることによって溶接線倣いを行う構成により、溶接台車を位置確認を行いながら正確に走行させることができるので、安定した状態で正確且つ均質な溶接品質を得ることができる。
更に、ガイドローラ部のローラ、該ローラが当接する走行ガイド板、溶接する継ぎ目、継ぎ目を溶接する溶接トーチ部、これらの位置が近接しているため、これらの位置が離れている構成に比して夫々の位置精度のブレを著しく小さくすることができる。
更に、走行ガイド板は、溶接台車の重量及び走行時の荷重が掛かることがないため、該走行ガイド板の構成及び鋼管杭への取付け構成は簡易な構成で充分であるので、建設現場等で容易に入手・調達可能な部材・端材を低コストで利用することもできる。
更にまた、走行ガイド板の構成及び鋼管杭への取付け構成が簡易なもので充分であることから、第一の鋼管杭と第二の鋼管杭との継ぎ目の溶接が終了し、第二の鋼管杭の上部に次なる鋼管杭を接続する場合の走行ガイド板の移設が容易となる。
【0019】
請求項2に示す発明によれば、走行ガイド板の2箇所にガイドローラ部のローラが当接し、この2箇所の間において溶接が行われる構成により、溶接台車の走行軌跡がブレることなく安定するので、継ぎ目に対する溶接トーチ部による溶接が安定し、安定した溶接品質を得ることができる。
【0020】
請求項3に示す発明によれば、ガイドローラ部のローラが当接する走行ガイド板の内周近傍位置に当接する構成により、溶接する継ぎ目と近接するため、溶接台車の継ぎ目に対する位置精度が高い。
【0021】
請求項4に示す発明によれば、溶接台車の走行位置の確認を走行ガイド板の外周方向位置からも行うことができるため、より正確に走行させることができる。従って、より安定した状態で正確且つ均質な溶接品質を得ることができる。
更に、磁石体の磁力低下や振動、その他の要因によって溶接台車の磁力吸着力が弱まる等によって脱輪のおそれが生じた場合であっても、走行ガイド板の外周方向位置から外周ローラが溶接台車を支持した状態となっているので脱輪を防止乃至は抑制することができる。
【0022】
請求項5に示す発明によれば、走行ガイド板が一対の半割ドーナツ状であるため、建設現場等で容易に入手・調達可能な板材を用いて形成することができるので低コスト且つ容易である。
【0023】
請求項6に示す発明によれば、走行ガイド板が、上下逆L字状部材、彎曲可能な長尺帯状プレートという建設現場等で容易に入手・調達可能な部材・端材を用いて形成されているので低コスト且つ容易に製作することができる。
【0024】
請求項7に示す発明によれば、鋼管杭への走行ガイド板の取付けに際しては建設現場等で容易に入手・調達可能なチェーンブロックの如き緊締部材を用いて行うことができるので低コスト且つ容易である。
【0025】
請求項8に示す発明によれば、走行ガイド板が、L型鋼材という建設現場等で容易に入手・調達可能な部材・端材を用いて形成されているので低コスト且つ容易に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る鋼管杭の接続方法の一実施例を示す概略正面図
図2図1の概略左側面図
図3】本発明に用いられる走行ガイド板の構造を説明する概略斜視図
図4】鋼管杭への走行ガイド板の取付構成の一例を説明する概略平面図(その1)
図5】鋼管杭への走行ガイド板の取付構成の一例を説明する概略平面図(その2)
図6】鋼管杭への走行ガイド板の取付構成の一例を説明する概略平面図(その3)
図7】鋼管杭への走行ガイド板の取付構成の一例を説明する概略平面図(その4)
図8図7の概略正面図
図9】鋼管杭への走行ガイド板の取付構成の他の例を説明する概略側面図
図10】他の構成の溶接台車を用いた本発明に係る鋼管杭の接続方法の他の実施例を示す概略左側面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、添付図面に従って本発明の鋼管杭の接続方法について詳細に説明する。
【0028】
本発明の鋼管杭の接続方法は、立杭配管の埋設工事等において複数本の鋼管を溶接により縦継ぎしながら埋設施工を進める際に、下杭となる第一の鋼管杭の上端と、上杭となる第二の鋼管杭の下端と、を突き合せた状態で、その突き合わせ部位である継ぎ目を円周溶接するものである。この円周溶接は、種々の溶接装置を用いて行うが、本発明においては溶接台車を継ぎ目近傍の鋼管杭の外周面を円周方向に走行させて行う構成である。
【0029】
本発明の鋼管杭の接続方法の具体的構成としては、図1及び図2に示すように、
第一の鋼管杭1と、該第一の鋼管杭1の上に接続する第二の鋼管杭2と、の継ぎ目3を溶接台車4により溶接する構成において、
前記継ぎ目3の下方の近傍位置である前記第一の鋼管杭1の上端近傍部分の外周を囲むように全周に亘ってドーナツ状の走行ガイド板5を水平状態で取付け、
下記構成を有する溶接台車4を、前記継ぎ目3より上方の前記第二の鋼管杭2の外周面に磁力吸着しながら該外周面を円周方向に走行させると共に、前記走行ガイド板5の上面にガイドローラ部のローラを当接させて位置確認を行いながら前記溶接台車を走行させて溶接を行うこと、
を主構成とするものである。
【0030】
溶接台車4の構成としては、主として磁石体から形成されており該磁石体によって第二の鋼管杭2の外周面に磁力吸着しながら走行回転する複数の車輪部41と、該車輪部41を走行回転させる駆動機構(図示を省略)と、溶接個所である継ぎ目3を溶接する溶接トーチ部42と、前記走行ガイド板5に遊動走行するローラ43Aを当接させて溶接線倣いを行うガイドローラ部43と、を有して成る構成であり、継ぎ目3の溶接の際は、第二の鋼管杭2の外周面を円周方向に走行する構成である。
【0031】
前記溶接台車4は、例えば、鋼管杭1・2として一般的である直径90cm程度の鋼管杭1・2の継ぎ目3を溶接接続する場合に用いられるものとして、具体的には、重量5kg程度、牽引力11kg程度、本体の大きさが幅250mm程度、長さが200mm程度、高さが230mm程度であり、走行速度が100~550mm/min程度の構成のものを好ましく挙げることができる。尚、本実施例に示す図では溶接台車4に接続する種々電源コード等は図示を省略している。
【0032】
また、車輪部41は主として磁石体から形成されており、鋼管杭1・2が一般的には鉄系鋼板から形成されているため、走行安定性等を考慮して車輪の数は6つであること、更にこの6つの車輪がゴム系素材で走行面が被覆されていることが好ましい。
鋼管杭2に磁力吸着するための車輪部41の磁石体の吸着力は、前記した構成の本実施例の溶接台車4の場合、複数(本実施例では6つ)の車輪部41の合計で概ね25~30kg程度であることが好ましい。
【0033】
溶接トーチ部42は、溶接個所である継ぎ目3に対する角度(水平角度、前進角/後退角等)や距離の調整が可能となるように溶接台車4の本体にアーム部等を介して取り付けられる構成であることが好ましい。これらの調整は、鋼管杭2への溶接台車4の磁力吸着走行位置と、継ぎ目3の位置と、の距離に応じて溶接トーチ部42を調整することによって該溶接トーチ部43を継ぎ目3に対して適切且つ正確な位置に保つことができるので安定した溶接品質を得ることができる。
【0034】
また、溶接トーチ部42による溶接構成としては、この種の鋼管杭の接続方法に用いられる溶接手段として公知公用の溶接方法を特別の制限なく用いることができ、中でも一般的なアーク溶接を好ましく用いることができる。
【0035】
ガイドローラ部43は、ローラ43Aが2つ設けられ、この2つのローラ43Aが円周方向に間隔を設けた2箇所において走行ガイド板5に当接する構成であると共に、ローラ43Aが当接する2箇所の間の位置において溶接トーチ部42による溶接が行われる構成であることが好ましい。かかる構成によれば、走行ガイド板5の2箇所にガイドローラ部43のローラ43Aが当接し、この2箇所の間において溶接が行われる構成により、溶接台車4の走行軌跡がブレることなく安定するので、継ぎ目3に対する溶接トーチ部42による溶接が安定し、安定した溶接品質を得ることができる。
【0036】
また、ガイドローラ部43のローラ43Aの走行ガイド板5への当接位置は、該走行ガイド板5のドーナツ状の内周近傍位置である第一の鋼管杭1の外周面に近接した位置であることが好ましい。第一の鋼管杭1の外周面からローラ43Aの当接位置までの具体的な距離としては3~105mm程度が好ましく、5~20mm程度であることがより好ましい
【0037】
更に、ガイドローラ部43は、鋼管杭2への溶接台車4の磁力吸着走行位置、走行ガイド板5の取付位置、等の距離に応じてガイドローラ部43の延伸具合や、鋼管杭2の外周面からの距離の調整が可能となるように溶接台車4の本体にアーム部等を介して取り付けられる構成であることが好ましい。かかる構成によれば、ガイドローラ部43のローラ43Aを適切且つ正確な状態で走行ガイド板5の上面に当接させることができる。
【0038】
尚、上記構成を有する溶接台車4としては、例えば、市販の溶接台車 小池酸素工業社製 WEL-HANDY COMPACTをそのままの状態で、或いは部分的に改造する等により用いることが可能である。本実施例においては主として磁石体から形成された車輪部41の車輪の数を4つから2つ増設して計6つとすることにより磁力吸着力を1.5倍に増加させると共に、磁力吸着箇所が4つから6つになることにより脱輪リスクをも軽減する構成に改造している。
更に、増設した2つの車輪部41は、元の4つの車輪部41のうち継ぎ目3から離れた側の2つの車輪部41よりも更に継ぎ目3から離れた位置に増設した構成としたので、溶接によって高熱となる継ぎ目3から、より離れた位置において増加した磁力吸着力が発揮されるため、溶接時の熱影響による磁力低下を著しく防ぐことができる。従って、溶接台車4をより安定した状態で鋼管杭2の外周面に磁力吸着させた状態で走行させることができる。
【0039】
次に、溶接台車4のガイドローラ部43のローラ43Aが遊動走行しながら当接して溶接線倣いを行う走行ガイド板5について説明する。
【0040】
走行ガイド板5は、図6及び図7に示すように一対の半割ドーナツ状の2枚構成であることが好ましい。走行ガイド板5は、図3図6及び図8に示すガイド板取付部材6によって第一の鋼管杭1の上端近傍部分の外周を囲むように全周に亘って取り付けられる。走行ガイド板5としては、建設現場等で容易に入手・調達可能な板材、特に現場で容易に入手可能な部材・端材である公判を用いることが低コストで好ましい。
【0041】
ガイド板取付部材6は、図3に示すように複数個(本実施例では8個)の上下逆L字状部材61の各々の縦線部61Aを彎曲可能な長尺帯状プレート62に任意の間隔(本実施例では等間隔)で固定取付けし、図4~及び図5に示すように複数個の上下逆L字状部材61の各々の横線部61Bが外向きに且つ水平性を維持するように前記長尺帯状プレート62を前記第一の鋼管杭1の外周面に巻き付けて固定した後、図6図8に示すように複数個の上下逆L字状部材61の各々の横線部61Bの上にドーナツ状の走行ガイド板5を載置し固定する構成である。
ガイド取付部材6を第一の鋼管杭1に取付固定し、更に走行ガイド板5を載置した状態で、水平器でレベルを確認し、水平が出ていない場合はガイド取付部材6の取付位置を調整する。
【0042】
ガイド板取付部材6を構成する上下逆L字状部材61としては、この種の鋼材建設現場等で一般的に用いられている鋼材や鋼材の端材を用いることができるので、極めて容易に入手・調達可能であるため低コスト且つ容易に製作することができる。また、上下逆L字状部材6は、一体成形構成に限らず、2つの部材、例えばフラットバー(平板)にアングル等を取り付けてL字状に構成したもの等であってもよい。
長尺帯状プレート62についても、この種の鋼材建設現場等で一般的に用いられている鋼材や鋼材の端材を用いることができるので、極めて容易に入手・調達可能であるため低コスト且つ容易に製作することができる。
【0043】
長尺帯状プレート62への縦線部61Aの固定手段としては、溶接、係合、挟着、ボルト止め、接着等の様々な手段を採ることができるが溶接が好ましい。
横線部61Bの上に載置した走行ガイド板5の固定手段としては、溶接、係合、挟着、ボルト止め、接着等の様々な手段を採ることができるが溶接が好ましい。
【0044】
長尺帯状プレート62を第一の鋼管杭1の外周面に巻き付けて固定するには、溶接等の固着手段を採ることもできるが、第一の鋼管杭1の上端に第二の鋼管杭2の下端を接続した後は取り外す必要があるだけでなく、第二の鋼管杭2の上端に図示しない次なる鋼管杭の下端を接続する等のように接続が更に続く場合には速やかに再利用できるようにするために、第一の鋼管杭1の外周面に長尺帯状プレート62を巻き付けた後、更にその長尺帯状プレート62の上方位置において複数個の上下逆L字状部材61のL字縦線部61Aの外側にチェーンブロックの如き緊締部材7を巻き付けてジャッキ等を用いて緊締固定することが好ましい。チェーンブロックの如き緊締部材7は、容易に且つ強固に緊締固定することができ、しかも取り外しも容易であり、建設現場等で容易に入手・調達可能であるため低コストである。
尚、緊締部材7の巻き付ける位置としては、長尺帯状プレート62の外周面であってもよい。
【0045】
上記構成を有する溶接台車4を、継ぎ目3より上方の第二の鋼管杭2の外周面に磁力吸着しながら該外周面を円周方向に走行させると共に、上記構成を有する走行ガイド板5の上面にガイドローラ部43のローラ43Aを当接させて溶接線倣いを行いながら溶接する構成によれば、溶接台車4は磁力吸着によって第二の立杭配管2の外周面に磁力吸着した状態で走行することから、該溶接台車4の重量及び走行時の荷重は走行ガイド板5に掛かることがないため、上記した特許文献1~3に示す技術において用いられていた強度の高い走行レール、及び強度の高い走行レールの取付け構成が不要である。
【0046】
また、第一の鋼管杭1の外周面に取付けられた走行ガイド板5に、溶接台車4のガイドローラ部43のローラ43Aを当接させて遊動走行させることによって溶接線倣いを行う構成により、走行台車4の走行軌跡の位置確認を行いながら正確に走行させることができるので、安定した状態で正確且つ均質な溶接品質を得ることができる。
【0047】
更に、ガイドローラ部43のローラ43A、該ローラ43Aが当接する走行ガイド板5、溶接する継ぎ目3、継ぎ目3を溶接する溶接トーチ部42、これらの位置が近接しているため、これらの位置が離れている構成に比して夫々の位置精度のブレを著しく小さくすることができる。
【0048】
更に、走行ガイド板5は、溶接台車4の重量及び走行時の荷重が掛かることがないため、該走行ガイド板4の構成及び第一の鋼管杭1への取付け構成は簡易な構成で充分であるので、建設現場等で容易に入手・調達可能な部材・端材を低コストで利用することもできる。
更にまた、走行ガイド板5の構成及び第一の鋼管杭1への取付け構成が簡易なもので充分であることから、第一の鋼管杭1と第二の鋼管杭2との継ぎ目3の溶接が終了し、次なる鋼管杭を接続する場合の走行ガイド板5の移設が容易となる。
【0049】
上記構成を有する本発明の接続方法によって鋼管杭の接続を行う際には、第一の鋼管杭1と第二の鋼管杭2との継ぎ目3の内側には接続の位置ズレ等を防止するために環状鋼板等の裏当て材を予め溶接したり、第一の鋼管杭1の上端と、第二の鋼管杭2の下端との継ぎ目3の突き合わせ部分の溶接裏波を出すための下準備として継ぎ目3の隙間間隔分のプレートを引いて仮溶接し、その後、このプレートを抜く等の作業を行う等、この種の鋼管杭の接続方法において公知公用のその他の作業工程について特別の制限なく本発明においても採られることは勿論である。
【0050】
以上、本発明に係る鋼管杭の接続方法の実施例について説明したが、本発明は上記構成に限定されず本発明の範囲内において他の態様を採ることもできる。
【0051】
例えば、ドーナツ状の走行ガイド板5の取付構成は上記した実施例の構成に限定されず、図9に示すように、複数個のL型鋼材63を各々のL字横線部63Bが外向きに且つ水平性を維持するように第一の鋼管杭1の外周面に仮突起部材64を介して固定し、L字横線部63Bの上にドーナツ状の走行ガイド板を載置し固定する構成とすることもできる。
かかる構成によれば、走行ガイド板5が、L型鋼材63という建設現場等で容易に入手・調達可能な部材・端材を用いて形成されているので低コスト且つ容易に製作することができる。
尚、2枚の走行ガイド板5の円周方向端部同士の突き合わせ部分については、1枚のL字横線部63Bが突き合わせ部分の下方を跨った状態で支持する構成であることが好ましい。
【0052】
また、図10に示すように、溶接台車4がガイドローラ部43とは別なる外周ガイドローラ部44を有し、該外周ガイドローラ部44の外周ローラ44Aが走行ガイド板5のドーナツ状の外周方向位置に当接して遊動走行する構成とすることもできる。
かかる構成によれば、溶接台車4の走行位置の確認を走行ガイド板5の外周方向位置からも行うことができるため、より正確に走行させることができる。従って、より安定した状態で正確且つ均質な溶接品質を得ることができる。
更に、車輪部41を構成する磁石体の磁力低下や走行時の振動、その他の要因によって溶接台車4の磁力吸着力が弱まる等によって脱輪のおそれが生じた場合であっても、走行ガイド板5の外周方向位置から外周ガイドローラ部44が溶接台車4を支持した状態となるので脱輪を防止乃至は抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 第一の鋼管杭
2 第二の鋼管杭
3 継ぎ目
4 溶接台車
41 車輪部
42 溶接トーチ部
43 ガイドローラ部
43A ローラ
44 外周ガイドローラ部
44A 外周ローラ
5 走行ガイド板
6 ガイド板取付部材
61 上下逆L字状部材
61A 縦線部
61B 横線部
62 長尺帯状プレート
63 L型鋼材
63B 横線部
64 仮突起部材
7 チェーンブロックの如き緊締部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10