(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058070
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】法面緑化工法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
E02D17/20 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167812
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】593136203
【氏名又は名称】株式会社クスベ産業
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】楠部 勝巳
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044DA23
2D044DA27
(57)【要約】
【課題】植栽した苗木の直根による法面の強度向上を図ることができる法面緑化工法を提供すること。
【解決手段】法面Gに植栽する苗木Tに、直根Rが200mm以上の長さに生育した広葉樹の苗木Tを用い、この苗木Tを、根鉢を崩さずに法面Gに直根Rの長さ以上の深さDに削孔した穴Hに植栽する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に苗木を植栽する法面緑化工法において、前記苗木に、直根が200mm以上の長さに生育した広葉樹の苗木を用い、該苗木を、根鉢を崩さずに法面に直根の長さ以上の深さに削孔した穴に植栽することを特徴とする法面緑化工法。
【請求項2】
前記苗木が、長さ200mm以上の筒状容器で育成された実生苗からなることを特徴とする請求項1に記載の法面緑化工法。
【請求項3】
前記苗木の根鉢が、ネット部材によって保護されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の法面緑化工法。
【請求項4】
前記法面の等高線に沿って筋工を施工し、該筋工間に苗木を植栽するようにしたことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の法面緑化工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面緑化工法に関し、特に、法面に苗木を植栽する法面緑化工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、法面を緑化するために、法面の等高線に沿って丸太材等からなる筋工を施工し、筋工間に植物の種子が含まれた資材を施したり、苗木を植栽したりすることが行われている(例えば、特許文献1~2参照。)。
【0003】
ところで、植物の種子が含まれた資材を施す方式では、緑化が完成するのに年月を要するため、この期間を短縮するために、苗木を植栽する方式が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-371562号公報
【特許文献2】特開2012-162913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、苗木を植栽する方式に用いられる苗木には、通常、ポットで育成された苗木や地植えで育成された苗木を掘り起こして直根を切って根鉢を作った根巻き木が用いられる。
ポットで育成された苗木や根巻き木は、運搬や植栽作業が容易で、根鉢を崩さずにそのまま植栽することができるために苗木が枯死することが少ないという利点がある反面、例えば、アラカシやシラカシ等の常緑カシ類等の広葉樹の苗木の場合、ポットで育成された苗木や根巻き木は、直根の伸長が阻害され、根鉢から直根が伸びずに、土壌の表層に根が広がりやすく、このため、植栽した苗木の直根による法面の強度向上を期待しにくいという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の法面緑化工法における苗木を植栽する方式の有する問題点に鑑み、植栽した苗木の直根による法面の強度向上を図ることができる法面緑化工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の法面緑化工法は、法面に苗木を植栽する法面緑化工法において、前記苗木に、直根が200mm以上の長さに生育した広葉樹の苗木を用い、該苗木を、根鉢を崩さずに法面に直根の長さ以上の深さに削孔した穴に植栽することを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記苗木に、長さ200mm以上の筒状容器で育成された実生苗を用いることができる。
【0009】
また、前記苗木の根鉢が、ネット部材によって保護された苗木を用いることができる。
【0010】
また、前記法面の等高線に沿って筋工を施工し、該筋工間に苗木を植栽するようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の法面緑化工法によれば、法面に植栽する苗木に、直根が200mm以上の長さに生育した広葉樹の苗木を用い、この苗木を、根鉢を崩さずに法面に直根の長さ以上の深さに削孔した穴に植栽することにより、植栽した苗木の直根の生育が妨げられることがなく、植栽した苗木の直根による法面の強度向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の法面緑化工法に用いる苗木の育成方法の一例を示す説明図である。
【
図2】本発明の法面緑化工法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の法面緑化工法の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0014】
図1~
図2に、本発明の法面緑化工法の一実施例を示す。
本発明の法面緑化工法は、
図2に示すように、法面Gに苗木Tを植栽する法面緑化工法に関するものであって、この法面緑化工法に用いる苗木Tは、
図1に示す方法で育成することができる。
【0015】
まず、
図1(1)に示すように、内径80~100mm、長さ200mm以上、好ましくは、300mm以上(~500mm)程度の節を抜いた竹や合成樹脂製の筒状容器C1に、筒状のネット部材Nを挿入し、このネット部材Nを介して、栽培土Sを充填する。
ネット部材Nは、植栽する際に苗木Tの根鉢が崩れることを防止するためのもので、合成樹脂製のもの、特に、土中で数年程度で分解する生分解性材料製のものを好適に用いることができる。
栽培土Sには、水はけが良く、肥料を含んだ土、例えば、クスベ産業社製の「和歌山ソイル」(商品名)を用いることができる。
【0016】
次に、
図1(2)に示すように、栽培土Sを充填した筒状容器C1に、アラカシやシラカシ等の常緑カシ類等の広葉樹の種子Seを蒔き、栽培桶C2でまとめて管理、育成する。
【0017】
好ましい環境下で育成された実生苗の場合、通常、2年程度で、直根Rが200mm以上、好ましくは、300mm以上の長さに生育した(直根Rの伸長が阻害されていない)苗木Tを得ることができる。
【0018】
そして、
図1(3)に示すように、苗木Tは、筒状容器C1から取り出すことで、苗木Tの根鉢がネット部材Nによって保護された状態が維持され、そのまま法面Gに植栽することができる。
【0019】
このようにして得た直根Rが200mm以上、好ましくは、300mm以上の長さに生育した苗木Tを法面Gに植栽するに当たっては、
図2に示すように、苗木Tを、根鉢を崩さずに法面Gに直根Rの長さ以上の深さD(300mm以上、好ましくは、500mm以上、より好ましくは、1000mm以上)に削孔した穴Hに植栽するようにする。
【0020】
穴Hの直径は、苗木Tの根鉢を崩さずに収容できる内径80~120mm程度とし、空隙には、水はけが良く、肥料を含んだ栽培土S、例えば、クスベ産業社製の「和歌山ソイル」(商品名)を充填するようにする。
【0021】
この場合、法面Gには、必要に応じて、等高線に沿って丸太材等からなる筋工W(特許文献1~2参照。)を施工し、この筋工W間に苗木Tを植栽した後、植生基盤層Cを吹き
付け等により形成するようにする。
【0022】
このように、法面Gに植栽する苗木Tに、直根が200mm以上、好ましくは、300mm以上の長さに生育した(直根Rの伸長が阻害されていない)広葉樹の苗木Tを用い、この苗木Tを、根鉢を崩さずに法面Gに直根Rの長さ以上の深さに削孔した穴Hに植栽することにより、植栽した苗木Tの直根Rの生育が妨げられることがなく、植栽後1~2年程度で苗木Tの直根が1メートルを超えて生長し、苗木Tの直根Rによる法面Gの強度向上を図ることができる。
【0023】
以上、本発明の法面緑化工法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の法面緑化工法は、植栽した苗木の直根による法面の強度向上を図ることができることから、法面の等高線に沿って丸太材等からなる筋工を施工し、該筋工間に苗木を植栽する法面緑化工法の用途に好適に用いることができるほか、その他の法面緑化工法に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
G 法面
W 筋工
H 穴
C 植生基盤層
T 苗木
R 直根
Se 種子
N ネット部材
C1 筒状容器
C2 栽培桶
S 栽培土