(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058078
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20230418BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20230418BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20230418BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230418BHJP
G06Q 10/0639 20230101ALI20230418BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
H05K13/02 Z
G06Q50/04
G06Q10/04
G06Q10/06 332
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167830
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】佐野 玄周
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕起
(72)【発明者】
【氏名】保里 彰人
【テーマコード(参考)】
3C100
5E353
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA05
3C100AA16
3C100BB02
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB17
3C100CC02
3C100EE07
5E353AA01
5E353CC04
5E353CC16
5E353CC23
5E353DD02
5E353HH25
5E353HH71
5E353LL04
5E353QQ05
5L049AA04
5L049AA20
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができる生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムを提供する。
【解決手段】部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定方法は、部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、実装基板の構成に関する基板情報と、段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、部品実装ラインの配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する段取り作業を推定し(ST3)、複数の条件で推定された段取り作業の生産性を比較して表示部に表示する(ST4)。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定システムであって、
前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインのフロアにおける配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する前記段取り作業を推定する段取り作業推定部と、
複数の条件で推定された前記段取り作業の生産性を比較して表示する表示部と、を備える、生産能力推定システム。
【請求項2】
前記部品実装用装置には、部品を供給する複数のフィーダが配置された台車が装着され、装着される台車を交換することで生産する実装基板が変更される部品実装装置が含まれ、
推定される前記段取り作業には、前記台車を運搬する作業、前記台車を交換する作業、前記フィーダを運搬する作業、前記フィーダを交換する作業、前記フィーダが供給する部品を運搬する作業、前記フィーダが供給する部品を交換する作業、の少なくともいずれかが含まれる、請求項1に記載の生産能力推定システム。
【請求項3】
前記段取り作業推定部は、さらに、前記部品実装装置における前記台車の配置および前記部品の配置を含む生産データに基づいて、発生する前記段取り作業を推定する、請求項2に記載の生産能力推定システム。
【請求項4】
前記フロア情報には、交換される前記台車の保管位置、交換される前記フィーダの保管位置、交換される前記部品の保管位置、の少なくともいずれかが含まれる、請求項2または3に記載の生産能力推定システム。
【請求項5】
前記作業者情報には、前記作業者がそれぞれ担当する前記段取り作業の種類に関する情報が含まれる、請求項1から4のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項6】
前記段取り作業の生産性には、前記段取り作業を行う前記作業者の人数、前記作業者が前記段取り作業を実行している時間、前記作業者が前記段取り作業を実行していない時間、前記作業者の就業時間に占める前記段取り作業を実行している時間の割合、の少なくともいずれかが含まれる、請求項1から5のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項7】
前記条件には、前記部品実装ラインが備える複数の前記部品実装用装置の構成、前記フロアに配置される前記部品実装ラインの数、前記実装基板の生産順番、前記実装基板の生産時間、前記作業者の人数、の少なくともいずれかが含まれる、請求項1から6のいずれか1項に記載の生産能力推定システム。
【請求項8】
複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定方法であって、
前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインのフロアにおける配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する前記段取り作業を推定する段取り作業推定工程と、
複数の条件で推定された前記段取り作業の生産性を比較して表示部に表示する表示工程と、を含む、生産能力推定方法。
【請求項9】
複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業の推定をコンピュータにより実行させる生産能力推定プログラムであって、
前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインのフロアにおける配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する前記段取り作業を推定する段取り作業推定ステップと、
複数の条件で推定された前記段取り作業の生産性を比較して表示部に表示する表示ステップと、を含む、生産能力推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装ラインの生産能力を推定する生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
部品実装装置を含む複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインでは、基板に部品を実装した実装基板が連続して生産される。このような部品実装ラインの生産能力を推定するためには、個々の部品実装用装置の処理能力以外に、部品実装用装置への部品などの部材の補給や部品実装用装置のエラー対応などの作業者作業による部品実装用装置の一時停止なども考慮する必要がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載のシステムは、生産能力を推定する部品実装ラインの構成、部品実装用装置の情報、作業者作業の発生頻度などの予め記憶されている情報と、入力された作業者に関する情報、生産計画に基づいて、部品実装ラインの生産能力を推定することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1を含む従来技術では、部品実装ラインが実装基板を生産する生産能力を推定することはできるものの、部品実装ラインで生産する実装基板の種類を変更する段取り作業の生産性を推定することはできず、部品実装ラインの生産能力を総合的に推定するためには更なる改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができる生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の生産能力推定システムは、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定システムであって、前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインのフロアにおける配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する前記段取り作業を推定する段取り作業推定部と、複数の条件で推定された前記段取り作業の生産性を比較して表示する表示部と、を備える。
【0007】
本発明の生産能力推定方法は、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定方法であって、前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインのフロアにおける配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する前記段取り作業を推定する段取り作業推定工程と、複数の条件で推定された前記段取り作業の生産性を比較して表示部に表示する表示工程と、を含む。
【0008】
本発明の生産能力推定プログラムは、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインにより生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業の推定をコンピュータにより実行させる生産能力推定プログラムであって、前記部品実装ラインにおいて生産される実装基板の生産計画と、前記実装基板の構成に関する基板情報と、前記段取り作業を行う作業者に関する作業者情報と、前記部品実装ラインのフロアにおける配置に関するフロア情報と、に基づいて、発生する前記段取り作業を推定する段取り作業推定ステップと、複数の条件で推定された前記段取り作業の生産性を比較して表示部に表示する表示ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装システムが備える部品実装ラインの構成説明図
【
図3】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の情報処理系の構成を示すブロック図
【
図4】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)が備える表示部に表示されたシミュレーション設定画面の一例の説明図
【
図5】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の表示部が表示するシミュレーション結果(要約)表示画面の一例の説明図
【
図6】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の表示部が表示するシミュレーション結果(段取り詳細)表示画面の一例の説明図
【
図7】本発明の一実施の形態の管理コンピュータ(生産能力推定システム)の表示部が表示するシミュレーション結果(作業者詳細)表示画面の一例の説明図
【
図8】本発明の一実施の形態の生産能力推定方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装ライン、管理コンピュータ(生産能力推定システム)、部品実装装置、台車の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図2では、基板搬送方向(
図2における左右方向)において、紙面の左側を上流、右側を下流とする。また、
図2では、基板搬送方向に水平面内で直交する方向(
図2における上下方向)において、紙面の下側をフロント、上側をリアとする。
【0012】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、フロアFに配置された3本の部品実装ラインL1~L3を通信ネットワーク2によって接続し、管理コンピュータ3によって管理する構成となっている。部品実装ラインL1~L3は、フロアFに設けられた生産エリアApに配置されている。各部品実装ラインL1~L3は、後述するように部品実装装置を含む複数の部品実装用装置を連結して構成され、基板に部品を実装した実装基板を生産する機能を有している。なお、部品実装システム1が備える部品実装ラインL1~L3は3本である必要はなく、2本及び4本以上でも良い。
【0013】
フロアFに設けられた生産エリアApとは異なる準備エリアAsには、配置作業支援装置4が配置されている。配置作業支援装置4は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。配置作業支援装置4には、後述する配置作業の対象となる交換用の台車5が接続される。準備エリアAsには、配置作業の実行前、実行中、または実行後など、多様な状態の複数の台車5が保管されている。また、準備エリアAsには、フロアFに配置された部品実装用装置で共用される複数のマスク、フィーダ、実装ヘッド、吸着ノズル、リールなどの着脱可能な要素が保管されている。なお、準備エリアAsに配置される配置作業支援装置4は1台である必要はなく、2台以上でも良い。また、作業者Wは、配置作業支援装置4を使用せずに配置作業を実行してもよい。
【0014】
図1において、配置作業支援装置4に接続された台車5には、これから部品実装ラインL1~L3において生産される実装基板の種類に対応する作業指示に従った配置作業が行われる。作業者Wは配置作業として、指示された部品を供給する複数のテープフィーダ6(
図2参照)や部品が格納されたキャリアテープを巻回して収納するリールなどを台車5から外す作業、台車5の指示された位置に取り付ける作業、キャリアテープをテープフィーダ6に装着する作業などを実行する。
【0015】
言い換えると、配置作業では、配置作業支援装置4からの指示に従って、台車5に部品Dが配列される。配置作業支援装置4に接続された台車5を含む準備エリアAsにある台車5には、部品実装ラインL1~L3における実装基板の生産と並行して配置作業を実行することができる。以下、台車5に対する配置作業を含む、部品実装ラインL1~L3外での生産する実装基板の種類を切り替えるための準備作業を外段取り作業と称する。
【0016】
図1において、部品実装ラインL1~L3において生産する実装基板の種類を切り替える際、作業者Wは準備エリアAsにおいて配置作業が終了した台車5を部品実装ラインL1~L3まで運搬し、部品実装装置に装着されている台車5と交換する台車交換作業を実行する。また切替作業では、作業者Wは準備エリアAsに保管されている交換用のマスク、テープフィーダ6、トレイフィーダ、実装ヘッド、吸着ノズル、部品が格納されたキャリアテープを巻回して収納するリールなどの材料を部品実装ラインL1~L3まで運搬して交換する。
【0017】
以下、部品実装ラインL1~L3内での生産する実装基板の種類を切り替えるための準備作業を内段取り作業と称する。すなわち、内段取り作業には、台車5、フィーダ(テープフィーダ6、トレイフィーダ)、部品(キャリアテープを格納するリール)を準備エリアAsから生産エリアApに運搬する作業、部品実装装置M3~M6に装着される台車5を交換する作業、部品実装装置M3~M6に装着されている台車5に配置されたテープフィーダ6を交換する作業と、台車5に配置されているテープフィーダ6が供給する部品(キャリアテープ)を交換する作業、などが含まれている。
【0018】
次に
図2を参照して、部品実装ラインL1~L3の詳細な構成を説明する。部品実装ラインL1~L3は同様の構成をしており、以下、部品実装ラインL1について説明する。部品実装ラインL1は、基板搬送方向の上流(紙面左側)から下流(紙面右側)に向けて、はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8などの部品実装用装置を直列に連結して構成されている。なお、部品実装ラインL1は通信ネットワーク2を介して接続される部品実装用装置群であって、物理的に部品実装用装置同士が連結されていなくてもよい。
【0019】
はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7、リフロー装置M8は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。はんだ印刷装置M1は、はんだ印刷作業部によって上流から搬入された基板Eに複数の開口が形成されたマスクを介してはんだを印刷するはんだ印刷作業を実行する。生産する実装基板を切り替える内段取り作業では、作業者Wによってマスクの交換作業、はんだ印刷時に基板Eを下方から支持する下受けピンの配置変更作業などが実行される。
【0020】
図2において、印刷検査装置M2は、はんだ検査カメラを含む印刷検査作業部によって基板Eに印刷されたはんだの状態を検査する印刷検査作業を実行する。なお、はんだ印刷装置M1と並設して、もしくははんだ印刷装置M1の代わりにはんだを基板Eに塗布するはんだ塗布装置を備えてもよい。また、部品実装ラインL1は、印刷検査装置M2を備えなくてもよい。
【0021】
図2において、部品実装装置M3~M6は、コンベア、部品供給部、実装ヘッドを含む部品実装作業部によって基板Eに部品Dを実装する部品実装作業を実行する。なお、部品実装ラインL1は、部品実装装置M3~M6が4台の構成に限定されることなく、部品実装装置M3~M6が1~3台であっても5台以上であってもよい。部品供給部には、複数のテープフィーダ6が配置された台車5が装着される(矢印a)。テープフィーダ6は、部品Dを保持するキャリアテープをテープ送りして、実装ヘッドによるピックアップ位置まで部品Dを供給する。なお、部品供給部には、複数の部品Dが載置されたトレイを入れ替えながら部品Dをピックアップ位置まで供給するトレイフィーダを装着することもできる。
【0022】
実装ヘッドは部品Dを真空吸着する吸着ノズルを備え、部品供給部が供給する部品Dをピックアップし、コンベアが搬送して位置決めして保持している基板Eに移送して実装する部品実装作業を実行する。部品供給部のテープフィーダ6とトレイには、生産する実装基板の基板種に応じて所定の部品Dが供給されるように、所定の部品Dを保持するキャリアテープやトレイがセットされている(言い換えると、予め定められた位置に部品Dが配列されている)。
【0023】
段取り替え作業では、作業者Wによってキャリアテープやテープフィーダ6の交換作業、トレイフィーダのトレイの交換作業、実装ヘッドの交換作業、吸着ノズルの交換作業、部品実装時に基板Eを下方から支持する下受けピンの配置変更作業などの内段取り作業が実行される。また、外段取り作業により複数のテープフィーダ6が配置された台車5を既存の台車5と入れ替える内段取り作業も実行される。
【0024】
すなわち、部品実装装置M3~M6が生産する実装基板を変更する段取り作業には、台車5を運搬する作業、台車5を交換する作業、フィーダ(テープフィーダ6、トレイフィーダ)を運搬する作業、フィーダを交換する作業、フィーダが供給する部品Dを運搬する作業、フィーダが供給する部品D(キャリアテープ)を交換する作業、の少なくともいずれかが含まれる。このように、部品実装装置M3~M6は、部品Dを供給する複数のテープフィーダ6が配置された台車5が装着され、装着される台車5を交換することで生産する実装基板が変更される部品実装用装置である。
【0025】
図2において、実装検査装置M7は、部品検査カメラを含む実装検査作業部によって基板Eに実装された部品Dの状態を検査する実装検査作業を実行する。リフロー装置M8は、装置内に搬入された基板Eを基板加熱部によって加熱して、基板E上のはんだを硬化させ、基板Eの電極部と部品Dとを接合する基板加熱作業を実行する。なお、部品実装ラインL1は、実装検査装置M7を備えなくてもよい。
【0026】
次に
図3を参照して、管理コンピュータ3の情報処理系の構成について説明する。ここでは、管理コンピュータ3(生産能力推定システム)が備える複数の機能のち、部品実装ラインL1~L3の変更に対応して発生する段取り作業(内段取り作業、外段取り作業)を推定する機能について説明する。管理コンピュータ3は、処理部10、記憶装置である記憶部14の他、入力部21、表示部22、通信部23を備えている。
【0027】
処理部10はCPUなどのデータ処理装置であり、内部処理部として表示処理部11、最適化処理部12、段取り作業推定部13、制御部(図示せず)を備えている。なお、各内部処理部は、独立したハードウェア資産で構成しても、共通のCPUと各情報処理用のプログラムで構成してもよい。制御部は、例えばCPU(中央演算処理装置)であり、管理コンピュータ3全体を制御する。なお、管理コンピュータ3は、ひとつのコンピュータで構成する必要はなく、複数のデバイスで構成してもよい。例えば、記憶部14、管理コンピュータ3を構成するデータ処理装置の全てもしくは一部をサーバを介してクラウドに備えてもよい。
【0028】
図3において、入力部21は、キーボード、タッチパネル、マウスなどの入力装置であり、操作コマンドやデータ入力時などに用いられる。表示部22は液晶パネルなどの表示装置であり、記憶部14が記憶する各種データを表示する他、入力部21による操作のための操作画面、入力画面などの各種情報を表示する。通信部23は、通信インターフェースであり、通信ネットワーク2を介して部品実装ラインL1~L3を構成する部品実装用装置(はんだ印刷装置M1、印刷検査装置M2、部品実装装置M3~M6、実装検査装置M7など)との間でデータの送受信を行う。
【0029】
図3において、記憶部14には、生産計画情報15、基板情報16、生産データ17、作業者情報18、フロア情報19、段取り作業情報20などが記憶されている。生産計画情報15には、部品実装ラインL1~L3(またはフロアF)において生産される実装基板(基板種)の生産順番、生産開始予定時間、生産終了予定時間などを含む生産実績がある、または、これから生産される実装基板の生産計画などの複数の生産計画が記憶されている。基板情報16には、実装基板の基板種毎に、基板Eのサイズ、部品Dの実装位置と部品Dの種類などの実装基板の構成に関する情報が記憶されている。
【0030】
生産データ17には、実装基板の基板種毎に、はんだ印刷装置M1に装着されるマスクを特定する情報、下受けピンの配置情報などが記憶されている。また、生産データ17には、実装基板の基板種毎に、部品実装装置M3~M6に装着される実装ヘッド、吸着ノズルの情報、下受けピンの配置情報、部品実装装置M3~M6における台車5の配置および台車5における部品Dの配置を含む部品Dの配列情報などが記憶されている。
【0031】
図3において、作業者情報18には、能力区分毎に作業者Wに許可された作業の種類と標準作業時間を含む、段取り作業を行う作業者Wに関する情報などが記憶されている。例えば、作業者Wの能力区分は3つの能力区分A~Cに区分けされている(
図4参照)。能力区分Cは初級者であり、フロアFにおけるマスク、実装ヘッド、吸着ノズル、台車5、テープフィーダ6、トレイフィーダ、リールなどの部材を運搬する作業が許可されている。能力区分Bは中級者であり、さらに準備エリアAsにおける台車5への外段取り作業や、部品実装ラインL1~L3における内段取り作業が許可されている。能力区分Aは上級者であり、さらに部品実装ラインL1~L3で発生したエラーに対する復旧作業などが許可されている。
【0032】
また、能力区分Aの上級者の作業毎の標準作業時間は、能力区分Bの中級者の標準作業時間よりも短い。例えば、テープフィーダ6に供給されるキャリアテープを交換する部品交換作業の標準作業時間は、能力区分Aの上級者は「90秒/本」に対して、能力区分Bの中級者は「120秒/本」である。なお、能力区分の数や、各能力区分に許可された作業の種類、標準作業時間は上記に限定されることはなく、適宜、変更可能である。このように、作業者情報18には、作業者Wがそれぞれ担当する段取り作業の種類に関する情報が含まれる。
【0033】
図3において、フロア情報19には、フロアFにおける部品実装ラインL1~L3を構成する部品実装用装置(部品実装装置M3~M6)の位置、準備エリアAsの位置、準備エリアAsに設置された配置作業支援装置4の位置、台車5の保管位置、部材保管庫の位置などのフロアFにおける配置に関する座標情報が記憶されている。フロア情報19には、生産実績がある既存のフロアFの情報の他、既存のフロアFに生産能力を増強するために新規の部品実装ラインL1~L3が追加された新フロアや、部品実装ラインL1~L3に新規の部品実装用装置が追加された新フロア、準備エリアAsの配置を変更した新フロアなどの検討用の情報が含まれている。
【0034】
また、フロア情報19には、準備エリアAsに保管されている部材の情報などが記憶されている。すなわち、フロア情報19には、交換される台車5の保管位置、交換されるフィーダの保管位置、交換される部品Dの保管位置が含まれる。表示処理部11は、表示部22に後述するシミュレーション設定画面やシミュレーション結果表示画面を表示させて、管理者による部品実装ラインL1~L3で発生する段取り作業を推定するための条件設定や結果解析を支援する。
【0035】
ここで、
図4を参照して、表示処理部11が表示部22に表示させたシミュレーション設定画面30の例について説明する。シミュレーション設定画面30は、部品実装ラインL1~L3で発生する段取り作業を推定する推定シミュレーションの条件を設定する際に使用される。この例では、推定シミュレーションの対象となる部品実装ラインL1~L3を、複数の部品実装ラインL1~L3が設置されたフロアF毎に設定する例で説明する。
【0036】
シミュレーション設定画面30には、現フロア選択枠31、現フロア表示領域31a、現フロア作業者設定領域32、新フロア選択枠33、新フロア表示領域33a、新フロア作業者設定領域34、生産計画選択枠35、生産計画表示領域35a、実行ボタン36、終了ボタン37が設けられている。
【0037】
図4において、管理者が入力部21を操作して現フロア選択枠31に表示されるドロップダウンリストから比較元の一つの既存のフロアF(以下、「現フロア」と称する。)を選択すると、現フロアの概略情報が現フロア表示領域31aに表示される。表示処理部11は、現フロア選択枠31のドロップダウンリストに、フロア情報19に含まれる既存のフロアFを表示させる。また、表示処理部11は、現フロア表示領域31aにフロア情報19に含まれる選択された現フロアの情報を表示させる。
【0038】
この例では、現フロアとして「フロアF1」が選択されている。現フロア表示領域31aには、現フロアに設定された部品実装ラインL1~L4のライン名(ラインL1~ラインL4)と、各ラインが備える部品実装装置の台数が表示されている。管理者が入力部21を操作して現フロア作業者設定領域32の人数入力枠の増減ボタンを押下すると、推定シミュレーションの際に現フロアに割り当てる作業者Wの能力区分に人数が設定される。この例では、能力区分Aの上級者が2人、能力区分Bの中級者が6人、能力区分Cの初心者が1人、割り当てられている。
【0039】
図4において、新フロア選択枠33においてドロップダウンリストから比較対象の一つの新規のフロアF(以下、「新フロア」と称する。)が選択されると、新フロアの概略情報が新フロア表示領域33aに表示される。表示処理部11は、新フロア選択枠33のドロップダウンリストに、フロア情報19に含まれる新フロアのリストを表示させる。また、表示処理部11は、新フロア表示領域33aにフロア情報19に含まれる選択された新フロアの情報を表示させる。
【0040】
この例では、新フロアとして「新規ライン追加1」が選択されている。「新規ライン追加1」は、現フロアとして選択された「フロアF1」に新規のラインL5を追加して構成されている。新フロア作業者設定領域34では、新フロアに割り当てる作業者の人数が設定される。この例では、能力区分Aの上級者が2人、能力区分Bの中級者が7人、能力区分Cの初心者が1人、割り当てられている。
【0041】
図4において、生産計画選択枠35においてドロップダウンリストから一つの生産計画が選択されると、選択された生産計画の概略情報が生産計画表示領域35aに表示される。表示処理部11は、生産計画選択枠35のドロップダウンリストに、生産計画情報15に含まれる生産計画のリストを表示させる。また、表示処理部11は、生産計画表示領域35aに生産計画情報15に含まれる選択された生産計画の情報を表示させる。この例では、生産計画として「フロアF1」で生産実績がある「既存生産計画1」が選択されている。
【0042】
生産計画表示領域35aには、段取り作業の推定シミュレーションにおいて現フロアと新フロアでそれぞれ生産されると設定された実装基板の基板種と生産枚数が生産の順番で表示される。「既存生産計画1」では、実装基板X1が500枚、実装基板X2が2000枚、実装基板X3が1500枚、実装基板X4が800枚など、この順番で生産するように計画されている。
【0043】
図4において、管理者が入力部21を操作して実行ボタン36を押下すると、シミュレーション設定画面30により設定された条件により、最適化処理部12、段取り作業推定部13による段取り作業を推定する推定シミュレーションが実行される。終了ボタン37が押下されると、表示処理部11はシミュレーション設定画面30において設定された条件を破棄して、推定シミュレーション条件の設定処理を終了させる。
【0044】
図3において、最適化処理部12は、発生する段取り作業が少なくなるように、設定された現フロアの部品実装ラインと新フロアの部品実装ラインに作業者Wと実装基板をそれぞれ割り振る最適化処理を実行する。最適化処理部12は、各実装基板(基板種)の生産納期を遵守し、かつ、部品実装ラインの稼働率の偏りも少ない条件の下で、段取り作業の回数と作業者Wの稼働時間が少なくなるように、実装基板の割り振り、生産順番、作業者Wの割り振りを最適化する。また、最適化処理部12は、最適化した部品実装ラインへの実装基板の割り振りと生産順番、すなわち最適化された生産計画に基づいて、生産データ17を変更(または、新規に作成)する。
【0045】
段取り作業推定部13は、後述するように、最適化処理部12により最適化された生産計画と生産データ17、推定シミュレーション条件の設定処理により設定された現フロアと新フロアと作業者Wの割り振り、記憶部14に記憶されている基板情報16と作業者情報18とフロア情報19に基づいて、現フロアと新フロアで発生する段取り作業を推定する。すなわち、段取り作業推定部13は、現フロアと新フロアの条件の、複数の条件で段取り作業を推定する。また、現フロアと新フロアの条件には、部品実装ラインが備える複数の部品実装用装置の構成、フロアFに配置される部品実装ラインの数、実装基板の生産順番、実装基板の生産時間、作業者Wの人数などが含まれる。段取り作業推定部13により推定された段取り作業は、段取り作業情報20として記憶部14に記憶される。
【0046】
次に、
図5~
図7を参照して、表示処理部11が段取り作業推定部13による推定シミュレーションの結果を表示部22に表示させたシミュレーション結果表示画面の例について説明する。
図5は、表示処理部11が表示部22に表示させたシミュレーション結果(要約)画面40の例である。シミュレーション結果(要約)画面40は、段取り作業情報20に含まれる推定シミュレーション結果の要約を表示しており、シミュレーション設定画面30(
図4)において実行ボタン36が押下され、段取り作業推定部13により段取り作業が推定されると表示部22に表示される。
【0047】
図5において、シミュレーション結果(要約)画面40には、要約表示領域41、段取り詳細表示ボタン42、作業者詳細表示ボタン43、条件変更ボタン44、終了ボタン45が設けられている。要約表示領域41には、部品実装ラインで発生すると推定された段取り作業の推定結果のうち、段取り部品数、段取り台車数、リソース台車数、作業者人数、作業者時間を現フロアと新フロアでそれぞれ合算した結果と、現フロアが対比元で新フロアを対比対象とする比較結果が表示される。
【0048】
段取り部品数は、外段取り作業と内段取り作業において台車5に配置されたテープフィーダ6が供給する部品を交換する作業の通算回数である。段取り台車数は、外段取り作業によってテープフィーダ6が供給する部品が交換される交換用の台車5の通算台数である。リソース台車数は、部品実装ラインの部品実装装置に装着されている台車5と準備エリアAsに保管されている台車5の合計数、すなわち、フロアに配置されている台車5の合計数である。作業者人数は、フロアに割り振られた作業者Wの合計数である。作業者時間は、フロアに割り振られた作業者Wが段取り作業(内段取り作業、外段取り作業)を行っている稼働時間の合計時間である。
【0049】
図5において、現フロアの推定シミュレーション結果は、部品実装ラインが4本の現フロア(フロアF1)に作業者Wを9人割り振り、実績がある生産計画(既存生産計画1)で生産する場合の推定である。また、新フロアの推定シミュレーション結果は、部品実装ラインが5本の新フロア(新規ライン追加1)に作業者Wを10人割り振り、実績がある生産計画(既存生産計画1)で生産する場合の推定である。すなわち、新フロアの推定シミュレーションでは、4本の部品実装ラインで生産された実装基板が5本の部品実装ラインに最適化されて割り振られている。
【0050】
現フロアの推定シミュレーション結果は、段取り部品数が2271個、段取り台車数が75台、リソース台車数が57台、作業者人数が9人、作業者時間が294時間28分48秒である。新フロアの推定シミュレーション結果は、段取り部品数が2481個、段取り台車数が114台、リソース台車数が83台、作業者人数が10人、作業者時間が353時間31分12秒である。また、現フロアと新フロアの比較結果は、段取り部品数が9.2%の増加、段取り台車数が52.0%の増加、リソース台車数が45.6%の増加、作業者人数が11.1%の増加、作業者時間が20.0%の増加である。
【0051】
図5において、段取り詳細表示ボタン42が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション結果(段取り詳細)画面50(
図6)を表示させる。作業者詳細表示ボタン43が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション結果(作業者詳細)画面60(
図7)を表示させる。条件変更ボタン44が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション設定画面30(
図4)を表示させる。終了ボタン45が押下されると、表示処理部11は段取り作業の推定処理を終了させる。
【0052】
次に、
図6を参照して、表示処理部11が表示部22に表示させたシミュレーション結果(段取り詳細)画面50の例について説明する。シミュレーション結果(段取り詳細)画面50には、段取り作業情報20に含まれる推定シミュレーション結果のうち段取り作業の回数に関する情報の詳細が表示される。シミュレーション結果(段取り詳細)画面50には、要約表示領域51、要約グラフ表示領域52、台車数指定ボタン52a、部品数指定ボタン52b、現フロア詳細表示領域53、新フロア詳細表示領域54、要約表示ボタン55、作業者詳細表示ボタン56、条件変更ボタン57、終了ボタン58が設けられている。
【0053】
現フロア詳細表示領域53には、現フロアの部品実装ライン(ラインL1~ラインL4)毎に、外段取り作業の回数、段取り台車数、外段取り作業の段取り部品数、内取り作業の回数、内取り作業の段取り部品数が表示される。例えば、ラインL1に対しては、1回の外段取り作業で9台の台車5で469個の部品の交換作業が実行され、6回の内段取り作業で9個の部品の交換作業が実行される。
【0054】
図6において、また、現フロア詳細表示領域53には、部品実装ライン毎に、外段取り作業の段取り部品数と内段取り作業の段取り部品数の合計が表示される。例えば、ラインL1では、外段取り作業の段取り部品数は469個、内段取り作業の段取り部品数は9個で、合計は478個である。また、現フロア詳細表示領域53には、部品実装ライン毎の各数値を種別毎に合計した現フロアの合計数が表示されている。例えば、外段取り作業の回数は、ラインL1が1回、ラインL2が1回、ラインL3が4回、ラインL4が2回で、現フロアの合計数は8回である。新フロア詳細表示領域54には、新フロアにおける現フロア詳細表示領域53に表示される数値と同様の数値が表示され、詳細な説明は省略する。
【0055】
図6において、要約表示領域51には、現フロア詳細表示領域53と新フロア詳細表示領域54に表示される数値のうち、フロアの要約として種別毎の合計値が抜粋して表示される。すなわち、要約表示領域51には、現フロアと新フロアについて、外段取り作業の回数、内段取り作業の回数、段取り台車数、外段取り作業の段取り部品数、内取り作業の段取り部品数、外段取り作業の段取り部品数と内取り作業の段取り部品数の合計数が表示される。
【0056】
要約グラフ表示領域52には、要約表示領域51に表示される現フロアと新フロアの数値を比較するグラフが表示される。
図6では、要約グラフ表示領域52に段取り作業(外段取り作業、内段取り作業)の回数を比較するグラフが表示されている。台車数指定ボタン52aが押下されると、要約グラフ表示領域52に段取り台車数を比較するグラフが表示される。また、部品数指定ボタン52bが押下されると、要約グラフ表示領域52に段取り部品数(外段取り作業の段取り部品数、内段取り作業の段取り部品数)を比較するグラフが表示される。
【0057】
図6において、要約表示ボタン55が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション結果(要約)画面40(
図5)を表示させる。作業者詳細表示ボタン56が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション結果(作業者詳細)画面60(
図7)を表示させる。条件変更ボタン57が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション設定画面30(
図4)を表示させる。終了ボタン58が押下されると、表示処理部11は段取り作業の推定処理を終了させる。
【0058】
次に、
図7を参照して、表示処理部11が表示部22に表示させたシミュレーション結果(作業者詳細)画面60の例について説明する。シミュレーション結果(作業者詳細)画面60には、段取り作業情報20に含まれる推定シミュレーション結果のうち作業者Wの作業時間などに関する情報の詳細が表示される。シミュレーション結果(作業者詳細)画面60には、要約表示領域61、人数グラフ表示領域62、作業者稼働率グラフ表示領域63、時間詳細表示領域64、要約表示ボタン65、段取り詳細表示ボタン66、条件変更ボタン67、終了ボタン68が設けられている。
【0059】
要約表示領域61には、担当する段取り作業の種類の担当区分毎に現フロアと新フロアについて、割り振られた作業者Wの人数と作業者稼働率が表示される。また、要約表示領域61には、現フロアと新フロアの作業者Wの合計人数とその比較、現フロアと新フロアの作業者稼働率とその比較が表示される。作業者稼働率は、作業者Wの就業時間の内、段取り作業を実行している稼働時間の割合である。この例では、担当する段取り作業の種類の担当区分として、「ライン選任(各ライン毎)」「ライン(全ライン)」「外段取り」「部材運搬」「全ライン/外段取り/部材運搬」の5つに区分けされている。以下、5つの担当区分を順に担当区分P~担当区分Tと称する。
【0060】
図7において、担当区分Pの作業者Wは、ライン選任で各部品実装ラインの内段取り作業を担当する。担当区分Qの作業者Wは、現フロアまたは新フロアの全ての部品実装ラインの内段取り作業を担当する。担当区分Rの作業者Wは、準備エリアAsにおいて外段取り作業を担当する。担当区分Sの作業者Wは、準備エリアAsと部品実装ラインとの間の部材の運搬を担当する。担当区分Tの作業者Wは、全ての部品実装ラインの内段取り作業、外段取り作業、部材の運搬を担当する。なお、担当区分の数や、各担当区分の段取り作業の分担は上記に限定されることはなく、適宜、変更可能である。
【0061】
人数グラフ表示領域62には、要約表示領域61に表示される現フロアと新フロアの作業者Wの人数を比較するグラフが表示される。作業者稼働率グラフ表示領域63には、要約表示領域61に表示される現フロアと新フロアの作業者稼働率を担当区分P~T毎に比較するグラフが表示される。
【0062】
図7において、時間詳細表示領域64には、担当区分P~T毎に現フロアと新フロアについて、作業者Wの就業時間、段取り作業を実行している稼働時間、段取り作業を実行していない非稼働時間、作業者稼働率がそれぞれ表示される。また、時間詳細表示領域64には、現フロアと新フロアのそれぞれについて、就業時間、稼働時間、非稼働時間の合計、現フロアと新フロアの作業者稼働率、現フロアと新フロアのこれらの比較が表示される。
【0063】
例えば、現フロアの担当区分Pは作業者Wが4人で、就業時間は4人合計で288時間、そのうち、稼働時間が187時間12分、非稼働時間が100時間48分で、作業者稼働率が65%である。また、現フロアの稼働時間は、担当区分Pは4人で187時間12分、担当区分Qは1人で20時間9分36秒、担当区分Rは1人で24時間28分48秒、担当区分Sは1人で10時間48分、担当区分Tは2人で51時間50分24秒であり、現フロアの合計は294時間28分48秒で、作業者稼働率が45%である。また、現フロアの稼働時間の合計は9人で294時間28分48秒、新フロアの稼働時間の合計は10人で353時間31分12秒であり、新フロアの稼働時間の合計は現フロアより20.0%増加している。
【0064】
要約表示ボタン65が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション結果(要約)画面40(
図5)を表示させる。段取り詳細表示ボタン66が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション結果(段取り詳細)画面50(
図6)を表示させる。条件変更ボタン67が押下されると、表示処理部11は表示部22にシミュレーション設定画面30(
図4)を表示させる。終了ボタン68が押下されると、表示処理部11は段取り作業の推定処理を終了させる。
【0065】
このように、表示部22には、段取り作業を行う作業者Wの人数、作業者Wが段取り作業を実行している時間(稼働時間)、作業者Wが段取り作業を実行していない時間(非稼働時間)、作業者Wの就業時間に占める段取り作業を実行している時間の割合(作業者稼働率)などの推定された段取り作業の生産性が、現フロアと新フロア、すなわち複数の条件で比較して表示される。これによって、構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができる。
【0066】
次いで、
図3、
図4~
図7を参照しながら、最適化処理部12による最適化処理と段取り作業推定部13による推定シミュレーション処理の例について説明する。
図3において、最適化処理部12は、設定処理により設定された現フロアの作業者Wと新フロアの作業者Wを、5つの担当区分P~Tに割り振る最適化処理を実行する。
【0067】
ここで、
図4と
図7を参照して、作業者Wの割り振りの最適化処理を具体的に説明する。
図4において現フロアの作業者Wとして、能力区分Aの上級者が2人、能力区分Bの中級者が6人、能力区分Cの初級者が1人、それぞれ設定されている。
図7において、まず、最適化処理部12は、部材運搬のみを担当する担当区分Sに、部材運搬作業のみが許可されている初級者を1人割り当てる。次いで最適化処理部12は、作業が早い(標準作業時間が短い)上級者を、外段取り作業を担当する担当区分Rと担当区分Tに1人ずつ割り当てる。次いで最適化処理部12は、中級者を担当区分Pに4人割り当てる。すなわち、現フロアが備える4本の部品実装ラインに1人ずつ中級者を割り当てる。次いで最適化処理部12は、残り2人の中級者を担当区分Qと担当区分Tに割り当てる。
【0068】
図3において、段取り作業推定部13は、最適化処理部12によって最適化された生産計画に含まれる部品実装ライン毎の実装基板の生産順番、生産時間と、生産データ17に含まれる基板種毎の部品実装装置の部品Dの配列情報と、フロア情報19に含まれる交換用の台車5の情報に基づいて、段取り作業の回数を推定する推定シミュレーション処理を実行する。
【0069】
ここで、
図6を参照して、段取り作業の回数を推定する推定シミュレーション処理を具体的に説明する。段取り作業推定部13は、交換用の台車5の数と、各部品実装ラインが備える部品実装装置の段取り作業の前後の部品Dの配列情報の差分に基づいて、外段取り作業の回数と段取り台車数を決定する。次いで段取り作業推定部13は、交換用の台車5の外段取り作業の前後の部品Dの配列情報の差分に基づいて、外段取り作業の段取り部品数と部品D(キャリアテープ)の交換順番を決定する。次いで段取り作業推定部13は、部品実装装置に装着されて交換されない台車5の内段取り作業の前後の部品Dの配列情報の差分に基づいて、内段取り作業の回数、内段取り作業の段取り部品数と部品D(キャリアテープ)の交換順番を決定する。
【0070】
次いで段取り作業推定部13は、決定された部品D(キャリアテープ)の交換順番と、担当区分P~Tに割り振られた作業者Wの情報(
図7参照)と、作業者情報18に含まれる標準作業時間と、フロア情報19に含まれるフロアFにおける配置に関する座標情報に基づいて、段取り作業の作業時間(稼働時間)を推定する推定シミュレーション処理を実行する。具体的には、段取り作業推定部13は、作業者W毎に部品D(キャリアテープ)の交換などの作業順番毎に、移動時間、交換時間などの作業時間(稼働時間)を算出して合算する。
【0071】
例えば、段取り作業推定部13は、準備エリアAsから外段取り作業が終了した台車5を運搬する作業では、準備エリアAsから部品実装装置までの距離と作業者Wの移動速度から移動時間を算出する。また、段取り作業推定部13は、テープフィーダ6が供給する部品D(キャリアテープ)を交換する作業では、テープフィーダ6からキャリアテープを取り外す標準作業時間、テープフィーダ6にキャリアテープを取り付ける標準作業時間を合算して作業時間を算出する。
【0072】
次に、
図8のフローに沿って複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインL1~L3により生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定方法(生産能力推定プログラム)について説明する。まず、部品実装ラインL1~L3において生産される実装基板の生産計画(生産計画情報15)と、実装基板の構成に関する基板情報16と、段取り作業を行う作業者Wに関する作業者情報18と、部品実装ラインL1~L3のフロアFにおける配置に関するフロア情報19と、が取得される(ST1:情報取得工程)。
【0073】
次いで最適化処理部12は、取得された情報に基づいて、段取り作業の回数や作業者Wの稼働時間が少なくなるようにフロアFに配置された部品実装ラインL1~L3への実装基板の割り当て、生産順番、作業者Wの割り振りを最適化する(ST2:最適化工程)。次いで段取り作業推定部13は、取得された情報と最適化された情報に基づいて、部品実装ラインL1~L3で発生する段取り作業を推定する(ST3:段取り作業推定工程)。次いで表示処理部11は、複数の条件で推定された段取り作業の生産性を比較して表示部22に表示させる(ST4:表示工程)(例えば、
図5~
図7)。これによって、構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができる。
【0074】
フロアFや部品実装ラインL1~L3の構成、フロアFにおける部品実装ラインL1~L3や準備エリアAsの配置、生産計画、作業者Wの割り振りなどの条件を変更して、再度、段取り作業を推定する場合(ST5においてNo)、情報取得工程(ST1)から表示工程(ST4)が繰り返し実行される。その際、シミュレーション設定画面30(
図4)などが使用されて、推定シミュレーションの条件が入力、変更される。
【0075】
上記説明したように、本実施の形態の管理コンピュータ3は、複数の部品実装用装置で構成される部品実装ラインL1~L3において生産される実装基板の生産計画(生産計画情報15)と、実装基板の構成に関する基板情報16と、段取り作業を行う作業者Wに関する作業者情報18と、部品実装ラインL1~L3のフロアFにおける配置に関するフロア情報19と、に基づいて、発生する段取り作業を推定する段取り作業推定部13と、複数の条件で推定された段取り作業の生産性を比較して表示する表示部22と、を備え、部品実装ラインL1~L3により生産される実装基板の変更に対応して発生する段取り作業を推定する生産能力推定システムである。これによって、構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の生産能力推定システムおよび生産能力推定方法ならびに生産能力推定プログラムは、構成の異なる部品実装ラインで発生する段取り作業の生産性を簡易に比較することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0077】
3 管理コンピュータ(生産能力推定システム)
5 台車
6 テープフィーダ(フィーダ)
D 部品
L1~L3 部品実装ライン
M3~M6 部品実装装置(部品実装用装置)
W 作業者