(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058082
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】コアカッターを用いる穿孔方法
(51)【国際特許分類】
B23B 35/00 20060101AFI20230418BHJP
B23B 51/04 20060101ALI20230418BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B23B35/00
B23B51/04 Z
B23B47/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167840
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000137845
【氏名又は名称】株式会社ミヤナガ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮永 淳
【テーマコード(参考)】
3C036
3C037
【Fターム(参考)】
3C036AA00
3C037AA05
(57)【要約】
【課題】切削屑が穿孔作業の妨げになることを防止することが可能な、コアカッターを用いる穿孔方法を提供する。
【解決手段】コアカッターを用いる穿孔方法であって、前記コアカッターは、円筒状の基体と、前記基体の基端側に設けられる回転駆動装置側への取着部と、前記基体の先端に周方向において互いに間隔を空けて複数箇所に設けられ、少なくともその先端が前記基体の先端から突出する刃部と、複数の前記刃部のうち互いに隣接する前記刃部の間に設けられ、前記刃部で切削された切削屑を基端側へと排出する排出溝と、を有し、穿孔予定領域の外縁部である切削予定領域の一部を含むように、前記穿孔予定領域よりも小さい小孔を穿孔する第1ステップと、前記第1ステップを行った後で、複数の前記刃部で前記切削予定領域を切削することにより、前記穿孔予定領域を穿孔する第2ステップと、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアカッターを用いる穿孔方法であって、
前記コアカッターは、円筒状の基体と、前記基体の基端側に設けられる回転駆動装置側への取着部と、前記基体の先端に周方向において互いに間隔を空けて複数箇所に設けられ、少なくともその先端が前記基体の先端から突出する刃部と、複数の前記刃部のうち互いに隣接する前記刃部の間に設けられ、前記刃部で切削された切削屑を基端側へと排出する排出溝と、を有し、
穿孔予定領域の外縁部である切削予定領域の一部を含むように、前記穿孔予定領域よりも小さい小孔を穿孔する第1ステップと、
前記第1ステップを行った後で、複数の前記刃部で前記切削予定領域を切削することにより、前記穿孔予定領域を穿孔する第2ステップと、を備えることを特徴とする、穿孔方法。
【請求項2】
前記第1ステップにおいて、前記切削予定領域の一部を含む一箇所に前記小孔を穿孔する、請求項1に記載の穿孔方法。
【請求項3】
前記第1ステップにおいて、前記切削予定領域の一部を含む複数箇所に前記小孔を穿孔する、請求項1に記載の穿孔方法。
【請求項4】
前記回転駆動装置は、前記基体の内部空間を前記基体の軸線に沿って延び、前記基体の先端の開口から突出するセンターピンを有し、
前記センターピンは、その軸線方向に伸縮可能な弾性体を有し、前記軸線方向に外力が加えられることで、その先端が前記軸線方向において少なくとも前記基体の先端と同じ位置まで前記基体に対して相対的に移動し、
前記第1ステップにおいて、前記回転駆動装置および前記コアカッターとは別個に設けられる穿孔装置により前記小孔を穿孔する、請求項1ないし3のいずれかに記載の穿孔方法。
【請求項5】
複数の前記刃部は、それぞれ、その外面が前記基体の外側面よりも径方向の外側に位置する、請求項1ないし4のいずれかに記載の穿孔方法。
【請求項6】
前記穿孔予定領域は、複数の前記刃部の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであり、
前記第2ステップにおいて、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記切削予定領域を切削するとともに前記穿孔予定領域を穿孔する、請求項1ないし5のいずれかに記載の穿孔方法。
【請求項7】
前記切削予定領域は、前記小孔の少なくとも一部を含む第1切削予定領域と、前記第1切削予定領域に隣接し、前記第1切削予定領域とその一部を共有する第2切削予定領域と、前記第1切削予定領域に前記第2切削予定領域の反対側から隣接し、前記第1切削予定領域とその一部を共有する第3切削予定領域と、を含み、
前記穿孔予定領域の外縁部は、前記第1切削予定領域を外縁部とする第1穿孔予定領域と、前記第2切削予定領域を外縁部とする第2穿孔予定領域と、前記第3切削予定領域を外縁部とする第3穿孔予定領域と、を含み、前記切削予定領域は、複数の前記刃部の先端を結ぶ円よりも大きく、前記第1ないし前記第3穿孔予定領域は、それぞれ、複数の前記刃部の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであり、
前記第2ステップは、
前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第1切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第1切削予定領域を切削するとともに前記第1穿孔予定領域を穿孔する第3ステップと、
前記第3ステップを行った後で、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第2切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第2切削予定領域を切削するとともに前記第2穿孔予定領域を穿孔する第4ステップと、
前記第4ステップを行った後で、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第3切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第3切削予定領域を切削するとともに前記第3穿孔予定領域を穿孔し、前記穿孔予定領域を穿孔する第5ステップと、を含む、請求項1ないし5のいずれかに記載の穿孔方法。
【請求項8】
前記切削予定領域は、前記第2および前記第3切削予定領域のうちの少なくともいずれかに前記第1切削予定領域の反対側から隣接し、前記第2および前記第3切削予定領域のうちの少なくともいずれかとその一部を共有する第4切削予定領域をさらに含み、
前記穿孔予定領域の外縁部は、前記第4切削予定領域を外縁部とする第4穿孔予定領域をさらに含み、前記第4穿孔予定領域は、複数の前記刃部の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであり、
前記第2ステップは、前記第4ステップを行なった後で、前記第5ステップを行なう前に、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第4切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第4切削予定領域を切削するとともに前記第4穿孔予定領域を穿孔する第6ステップをさらに含む、請求項7に記載の穿孔方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コアカッターを用いる穿孔方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コアカッターを用いる穿孔方法が知られている。このような穿孔方法が、例えば、特許文献1で提案されている。特許文献1に記載されたコアカッターは、円筒状の基体と、基体の基端側に設けられる回転駆動装置側への取着部と、基体の先端に周方向において互いに間隔を空けて複数箇所に設けられ、少なくともその先端が基体の先端から突出し、その外面が基体の外側面よりも径方向の外側に位置する刃部と、複数の刃部のうち互いに隣接する刃部の間に設けられ、刃部で切削された切削屑を基端側へと排出する排出溝と、を有する。特許文献1では、回転駆動装置によりコアカッターの基体を回転させながら、複数の刃部を被切削物に押し当てることにより、被穿孔物の一部を穿孔する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、切削屑が排出溝から適切に排出されない場合があった。このような場合、切削屑が穿孔作業の妨げになる問題が生じていた。
【0005】
そこで、本開示は、切削屑が穿孔作業の妨げになることを防止することが可能な、コアカッターを用いる穿孔方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る穿孔方法は、コアカッターを用いる穿孔方法であって、前記コアカッターは、円筒状の基体と、前記基体の基端側に設けられる回転駆動装置側への取着部と、前記基体の先端に周方向において互いに間隔を空けて複数箇所に設けられ、少なくともその先端が前記基体の先端から突出する刃部と、複数の前記刃部のうち互いに隣接する前記刃部の間に設けられ、前記刃部で切削された切削屑を基端側へと排出する排出溝と、を有し、穿孔予定領域の外縁部である切削予定領域の一部を含むように、前記穿孔予定領域よりも小さい小孔を穿孔する第1ステップと、前記第1ステップを行った後で、複数の前記刃部で前記切削予定領域を切削することにより、前記穿孔予定領域を穿孔する第2ステップと、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、切削予定領域の一部を含むように穿孔した小孔により、切削屑が分断される。これにより、切削屑が排出溝から適切に排出されるので、切削屑が穿孔作業の妨げになる問題が解消される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、切削屑が穿孔作業の妨げになることを防止することが可能な、コアカッターを用いる穿孔方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1ないし第3態様に係る穿孔方法で用いるコアカッターの全体構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すコアカッターの基部の先端部および複数の刃部を拡大した斜視図である。
【
図3】
図1に示すコアカッターを先端側から見た図である。
【
図4】
図1に示すコアカッターを回転駆動装置に取着した状態を示す斜視図である。
【
図5A】本開示の第1態様に係る穿孔方法で第1ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図5B】本開示の第1態様に係る穿孔方法で第2ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図6】本開示の第1態様に係る穿孔方法のフローチャートである。
【
図7A】本開示の第2態様に係る穿孔方法で第1ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図7B】本開示の第2態様に係る穿孔方法で第2ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図8】本開示の第2態様に係る穿孔方法のフローチャートである。
【
図9A】本開示の第3態様に係る穿孔方法で第1ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図9B】本開示の第3態様に係る穿孔方法で第3ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図9C】本開示の第3態様に係る穿孔方法で第4ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図9D】本開示の第3態様に係る穿孔方法で第5ステップを行なった後の状態を示す概略図である。
【
図10】本開示の第3態様に係る穿孔方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(コアカッターの構造)
図1は、本開示の第1ないし第3態様に係る穿孔方法で用いるコアカッターの全体構造を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すコアカッターの基部の先端部および複数の刃部を拡大した斜視図である。
図3は、
図1に示すコアカッターを先端側から見た図である。
図1ないし
図3に示すように、コアカッターAは、円筒状の基体1と、基体1の基端側に設けられる回転駆動装置50(
図4参照)側への取着部1Aと、基体1の先端に周方向において互いに間隔を空けて複数箇所に設けられ、少なくともその先端が基体1の先端から突出する刃部2と、複数の刃部2のうち互いに隣接する刃部2の間に設けられ、刃部2で切削された切削屑を基端側へと排出する排出溝3と、を有する。
【0011】
取着部1Aには、部分的に面取りした形状からなる取着凹部1aが形成されており、この取着凹部1aには、回転駆動装置50に取着する際に、回転駆動装置50側に設けられている取着用の軸中心方向に向かって配設される固定ボルトの先端が当接して、該コアカッターAを回転駆動装置50側に固定するよう構成されている。この取着凹部1aに代えて、他の形式の固定手段が用いられる場合もあり、これらは専ら回転駆動装置側の取着手段の構成によって種々用意される。
【0012】
複数の刃部2は、それぞれ、その外面が基体1の外側面よりも径方向の外側に位置する。この態様では、刃部2は、周方向において均等間隔に6箇所設けられている。刃部2は、一個のチップ体によって構成されており、この態様では、該刃部2は、超硬合金を焼結することによって得ている。つまり、この刃部2は所謂焼結合金製のチップ体からなる。刃部2としては、材質的に超硬合金に限定されるものでなく、切削用の刃部として適した他の素材の金属などであっても良く、また、該刃部2の形成法も焼結法以外の加工法によって、例えば鋳造又は機械加工などによって製造されたものであっても良い。つまり、刃部2は、一体の形態を有するチップ体であれば良い。
【0013】
刃部2の回転方向(矢印R参照)における前方から基端方にかけて、該刃部2に隣接して排出溝3が形成されている。排出溝3の先端方には該排出溝3に連続して且つ該刃部2の前方に位置して、それぞれギャレット4が形成されている。排出溝3およびギャレット4は、刃部2に対応して、基体1の一部に周方向に離間するよう複数箇所に部分的に肉厚に形成された刃部形成部5間に形成されている。したがって、ギャレット4および排出溝3の回転方向前端は、回転方向前方の刃部形成部5の背面5Aと隣接している。また、排出溝3の後端の壁面3bは、刃部形成部5の前面5Bと一致する。
【0014】
図4は、
図1に示すコアカッターを回転駆動装置に取着した状態を示す斜視図である。
図4に示すように、回転駆動装置50は、コアカッターAが取着された状態において、基体1の内部空間を該基体1の軸線に沿って延び、該基体1の先端の開口から突出するセンターピン52を有する。センターピン52は、その基端側にその軸線方向に伸縮可能なバネ部材(弾性体)を有し、その軸線方向に外力が加えられることで、その先端が軸線方向において少なくとも基体1の先端と同じ位置まで基体1に対して相対的に移動する。このような構造により、回転駆動装置50およびコアカッターAを用いて被穿孔物に対して穿孔作業を行う際に、後述する穿孔予定領域DAの中心部にセンターピン52により孔が空くことはない。
【0015】
(第1態様に係る穿孔方法)
図5A-5B、6に基づき、本開示の第1態様に係る穿孔方法について説明する。
図5A-5Bは、この第1態様に係る穿孔方法で第1-第2ステップを行なった後の状態を示す概略図である。この第1態様では、
図4に示す回転駆動装置50に取着されたコアカッターAを用いて、被穿孔物(例えば、鋼板など)の一部(
図5Aに示す穿孔予定領域DA)を穿孔する。また、この第1態様では、穿孔予定領域DAは、複数の刃部2の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさである。
【0016】
まず、
図5Aに示すように、穿孔予定領域DAの外縁部である切削予定領域CAの一部を含むように、穿孔予定領域DAよりも小さい小孔SHを穿孔する(
図6において「ステップS1-1」)。この第1態様では、このステップS1-1が第1ステップに相当する。この第1態様では、
図5Aに示すように、このステップS1-1において、切削予定領域CAの一部を含む一箇所に小孔SHを穿孔する。また、この第1態様では、回転駆動装置50およびコアカッターAとは別個に設けられる穿孔装置により小孔SHを穿孔する。なお、この穿孔装置は、例えば、後述するセンタードリルを有する回転駆動装置およびコアカッターを備える構造であっても良いし、他の構造であっても良い。
【0017】
次に、
図5Bに示すように、複数の刃部2で切削予定領域CAを切削することにより、穿孔予定領域DAを穿孔する(
図6において「ステップS1-2」)。この第1態様では、このステップS1-2が第2ステップに相当する。この第1態様では、上記したように、穿孔予定領域DAが複数の刃部2の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであるので、回転駆動装置50により基体1を回転させながら、複数の刃部2を切削予定領域CAの全体に亘って押し当てることにより、切削予定領域CAを切削するとともに穿孔予定領域DAを穿孔することができる。
【0018】
(第1態様に係る穿孔方法による効果)
この第1態様に係る穿孔方法では、切削予定領域CAの一部を含むように穿孔した小孔SHにより、切削屑が分断され、排出溝3から適切に排出される。これにより、例えば、切削屑が、比較的長くなることで、排出溝3から適切に排出されず、コアカッターAに絡まり、該コアカッターAの回転動作を妨げることを防止できる。また、切削屑が排出溝3を塞ぐことを防止できるで、穿孔の際に生じる熱が排出溝3から適切に放出される。したがって、例えば、冷却油を使用できない場合でもこの第1態様に係る穿孔方法を有効に利用できる。以上の通りであるため、この第1態様に係る穿孔方法を用いることで、切削屑が穿孔作業の妨げになることを防止することが可能となる。
【0019】
この第1態様に係る穿孔方法では、切削予定領域CAの一部を含む一箇所に小孔SHを穿孔するので、ステップS1-1(第1ステップ)を簡単に行うことができる。
【0020】
(第2態様に係る穿孔方法)
図7A-7B、8に基づき、本開示の第2態様に係る穿孔方法について説明する。
図7A-7Bは、この第2態様に係る穿孔方法で第1-第2ステップを行なった後の状態を示す概略図である。この第2態様では、
図8に示すステップS2-1が、
図6に示すステップS1-1および第1ステップに相当する。また、この第2態様では、
図8に示すステップS2-2が、
図6に示すステップS1-2および第2ステップに相当する。この第2態様に係る穿孔方法は、
図7Aに示すように、ステップS2-1で3つの小孔SHを穿孔することを除き、上記した第1態様に係る穿孔方法と同じである。したがって、同一部分には同じ参照番号を付し、同様となる説明は繰り返さない。
【0021】
この第2態様では、
図5Aに示すように、ステップS2-1において、切削予定領域CAの一部を含む三箇所に小孔SHを穿孔する。3箇所の小孔SHは、切削予定領域CAの周方向において互いに等間隔に穿孔される。
【0022】
(第2態様に係る穿孔方法による効果)
この第2態様に係る穿孔方法では、切削予定領域CAの一部を含む三箇所に小孔SHを穿孔するので、上記した第1態様に係る穿孔方法と比較して、切削屑がより分断され、排出溝3からいっそう適切に排出される。他の効果は、上記した第1態様に係る穿孔方法と同じである。
【0023】
(第3態様に係る穿孔方法)
図9A-9D、10に基づき、本開示の第3態様に係る穿孔方法について説明する。
図9A-9Dは、この第3態様に係る穿孔方法で第1、第3-5ステップを行なった後の状態を示す概略図である。この第3態様では、上記した第1および第2態様と同様に、
図4に示す回転駆動装置50に取着されたコアカッターAを用いて、被穿孔物(例えば、鋼板など)の一部(
図9Aに示す穿孔予定領域DA´)を穿孔する。
【0024】
この第3態様では、切削予定領域CA´は、小孔SHの少なくとも一部を含む切削予定領域CAa(第1切削予定領域)と、切削予定領域CAaに隣接し、切削予定領域CAaとその一部を共有する切削予定領域CAb(第2切削予定領域)と、切削予定領域CAaに切削予定領域CAbの反対側から隣接し、切削予定領域CAaとその一部を共有する切削予定領域CAo(第3切削予定領域)と、を含む。この第3態様では、切削予定領域CA´は、切削予定領域CAbに切削予定領域CAaの反対側から隣接し、切削予定領域CAbとその一部を共有する切削予定領域CAc(第4切削予定領域)と、切削予定領域CAoに切削予定領域CAaの反対側から隣接し、切削予定領域CAoとその一部を共有する切削予定領域CAn(第4切削予定領域)と、をさらに含む。
【0025】
この第3態様では、切削予定領域CA´は、切削予定領域CAcに切削予定領域CAbの反対側から隣接し、切削予定領域CAcとその一部を共有する切削予定領域CAdと、切削予定領域CAnに切削予定領域CAoの反対側から隣接し、切削予定領域CAnとその一部を共有する切削予定領域CAmと、をさらに含む。この第3態様では、切削予定領域CA´は、切削予定領域CAdに切削予定領域CAcの反対側から隣接し、切削予定領域CAdとその一部を共有する切削予定領域CAeと、切削予定領域CAmに切削予定領域CAnの反対側から隣接し、切削予定領域CAmとその一部を共有するCAlと、をさらに含む。この第3態様では、切削予定領域CA´は、切削予定領域CAeに切削予定領域CAdの反対側から隣接し、切削予定領域CAeとその一部を共有する切削予定領域CAfと、切削予定領域CAlに切削予定領域CAmの反対側から隣接し、切削予定領域CAlとその一部を共有する切削予定領域CAkと、をさらに含む。
【0026】
この第3態様では、切削予定領域CA´は、切削予定領域CAfに切削予定領域CAeの反対側から隣接し、切削予定領域CAfとその一部を共有する切削予定領域CAgと、切削予定領域CAkに切削予定領域CAlの反対側から隣接し、切削予定領域CAkとその一部を共有する切削予定領域CAjと、をさらに含む。この第3態様では、切削予定領域CA´は、切削予定領域CAgに切削予定領域CAfの反対側から隣接し、切削予定領域CAgとその一部を共有する切削予定領域CAhと、切削予定領域CAjに切削予定領域CAkの反対側から隣接し、切削予定領域CAjとその一部を共有する切削予定領域CAiと、をさらに含む。切削予定領域CAiは、切削予定領域CAhに切削予定領域CAgの反対側から隣接し、切削予定領域CAhとその一部を共有する。
【0027】
この第3態様では、穿孔予定領域DA´の外縁部は、切削予定領域CAaを外縁部とする穿孔予定領域DAa(第1穿孔予定領域)と、切削予定領域CAbを外縁部とする穿孔予定領域DAb(第2穿孔予定領域)と、切削予定領域CAcを外縁部とする穿孔予定領域DAcと、を含む。また、この第3態様では、穿孔予定領域DA´の外縁部は、切削予定領域CAd-CAoを外縁部とする穿孔予定領域DAd-DAoをさらに含む。この第3態様では、穿孔予定領域DAoが第3穿孔予定領域に相当し、穿孔予定領域DAc、DAlが第4穿孔予定領域に相当する。
【0028】
この第3態様では、穿孔予定領域DA´は、複数の刃部2の先端を結ぶ円よりも大きい円状である。具体的には、
図9Aに示すように、穿孔予定領域DA´は、直径φの真円を含む円状である。
図9Aに示すように、切削予定領域CAa-CAoは、それぞれ、この真円上に並列されている。また、この第3態様では、穿孔予定領域DAa-DAoは、それぞれ、複数の刃部2の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさである。
【0029】
まず、
図9Aに示すように、穿孔予定領域DA´の外縁部である切削予定領域CA´の一部を含むように、穿孔予定領域DA´よりも小さい小孔SHを穿孔する(
図10において「ステップS3-1」)。この第3態様では、このステップS3-1が第1ステップに相当する。この第3態様では、
図9Aに示すように、このステップS3-1において、切削予定領域CA´の一部を含む一箇所に小孔SHを穿孔する。この第3態様では、回転駆動装置50およびコアカッターAとは別個に設けられる穿孔装置により直径φの真円よりも径方向の外側に小孔SHを穿孔する。
【0030】
次に、
図9Bに示すように、回転駆動装置50により基体1を回転させながら、複数の刃部2を切削予定領域CAaの全体に亘って押し当てることにより、切削予定領域CAaを切削するとともに穿孔予定領域DAaを穿孔する(
図10において「ステップS3-2」)。この第3態様では、このステップS3-2が第3ステップに相当する。
【0031】
次に、
図9Cに示すように、回転駆動装置50により基体1を回転させながら、複数の刃部2を切削予定領域CAbの全体に亘って押し当てることにより、切削予定領域CAbを切削するとともに穿孔予定領域DAbを穿孔する(
図10において「ステップS3-3」)。この第3態様では、このステップS3-3が第4ステップに相当する。
【0032】
次に、回転駆動装置50により基体1を回転させながら、複数の刃部2を切削予定領域CAcの全体に亘って押し当てることにより、切削予定領域CAcを切削するとともに穿孔予定領域DAcを穿孔する(
図10において「ステップS3-4」)。この第3態様では、このステップS3-4が第6ステップに相当する。
【0033】
次に、回転駆動装置50により基体1を回転させながら、複数の刃部2を切削予定領域CAcの全体に亘って押し当てることにより、切削予定領域CAcを切削するとともに穿孔予定領域DAcを穿孔する(
図10において「ステップS3-4」)。この第3態様では、このステップS3-4が第6ステップに相当する。
【0034】
さらに、切削予定領域DAd-DAlを順に切削することで、穿孔予定領域CAa―CAlを順に穿孔する(
図10において「ステップS3-5」ないし「ステップS3-15」。見た目の煩雑さを避けるため、これらのステップは「・・・」で示してある)。
【0035】
最後に、回転駆動装置50により基体1を回転させながら、複数の刃部2を切削予定領域CAoの全体に亘って押し当てることにより、切削予定領域CAoを切削するとともに穿孔予定領域DAcを穿孔し、穿孔予定領域DA´を穿孔する(
図10において「ステップS3-16」)。この第3態様では、このステップS3-16が第5ステップに相当する。
【0036】
(第3態様に係る穿孔方法による効果)
この第3態様に係る穿孔方法では、上記のように穿孔作業を行うことで、複数の刃部2の先端を結ぶ円と比較して、穿孔領域を大きくすることができる。他の効果は、上記した第1および第2態様に係る穿孔方法と同じである。
【0037】
(変形例)
上記の説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。したがって、上記の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0038】
上記の第1ないし第3態様に係る穿孔方法は、
図1ないし4に基づき説明したコアカッターAを用いて行なわれる場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、複数の刃部2が、それぞれ、その外面が基体1の外側面と径方向において同じ位置に配置されるなど、コアカッターAとは異なる構造のコアカッターを用いて行われても良い。
【0039】
上記の第1ないし第3態様に係る穿孔方法では、第1ステップにおいて、回転駆動装置50およびコアカッターAとは別個に設けられる穿孔装置により小孔SHを穿孔する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、回転駆動装置50がセンターピン52の代わりにセンタードリルを有している場合、このセンタードリルにより小孔SHを穿孔しても良い。ここで、センタードリルは、センターピン52とは異なり、その軸線方向に伸縮可能なバネ部材(弾性体)を有さず、その軸線方向に外力が加えられても、その軸線方向において基体1に対して相対的に移動しない。このような構造により、センタードリルを有する回転駆動装置およびコアカッターを用いて被穿孔物に対して穿孔作業を行うと、穿孔予定領域の中心部にセンタードリルにより孔が空くことになる。上記のような回転駆動装置およびコアカッターを用いて本開示に係る穿孔方法を行うことで、上記した第1および第2ステップを互いに同じ装置を用いて行えるので、利便性が向上する。
【0040】
上記の第2態様に係る穿孔方法では、第1ステップにおいて、小孔SHを三箇所に穿孔する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、被穿孔物の材質および形状などに応じて、小孔SHを二箇所または四箇所以上に穿孔しても良い。
【0041】
上記の第3態様に係る穿孔方法では、第1ステップにおいて、小孔SHを一箇所に穿孔する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、例えば、被穿孔物の材質および形状などに応じて、小孔SHを複数箇所に穿孔しても良い。また、上記の第3実施形態に係る穿孔方法では、直径φの真円よりも径方向の外側に小孔SHを穿孔する場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、直径φの真円よりも径方向の内側に小孔SHを穿孔しても良いし、直径φの真円上に小孔SHを穿孔しても良い。
【0042】
上記の第3態様に係る穿孔方法では、切削予定領域CA´が互いに並列される十五の切削予定領域CAa-CAoを含む場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、切削予定領域CA´が互いに並列される三以上十四以下または十六以上の切削予定領域を含んでも良い。
【0043】
上記の第3態様に係る穿孔方法では、穿孔予定領域DA´が円状である場合について説明した。しかし、この場合に限定されず、切削予定領域CAa-CAoの数または並列態様を適宜変更することで、穿孔予定領域DA´は、例えば、任意の多角形状、星形状、およびその他の形状であっても良い。
【0044】
(まとめ)
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る穿孔方法は、コアカッターを用いる穿孔方法であって、前記コアカッターは、円筒状の基体と、前記基体の基端側に設けられる回転駆動装置側への取着部と、前記基体の先端に周方向において互いに間隔を空けて複数箇所に設けられ、少なくともその先端が前記基体の先端から突出する刃部と、複数の前記刃部のうち互いに隣接する前記刃部の間に設けられ、前記刃部で切削された切削屑を基端側へと排出する排出溝と、を有し、穿孔予定領域の外縁部である切削予定領域の一部を含むように、前記穿孔予定領域よりも小さい小孔を穿孔する第1ステップと、前記第1ステップを行った後で、複数の前記刃部で前記切削予定領域を切削することにより、前記穿孔予定領域を穿孔する第2ステップと、を備えることを特徴とする。
【0045】
上記の構成によれば、切削予定領域の一部を含むように穿孔した小孔により、切削屑が分断される。これにより、切削屑が排出溝から適切に排出されるので、切削屑が穿孔作業の妨げになることを防止することが可能となる。
【0046】
前記第1ステップにおいて、前記切削予定領域の一部を含む一箇所に前記小孔を穿孔しても良い。
【0047】
上記の構成によれば、第1ステップを簡単に行うことができる。
【0048】
前記第1ステップにおいて、前記切削予定領域の一部を含む複数箇所に前記小孔を穿孔しても良い。
【0049】
上記の構成によれば、切削屑を排出溝からいっそう適切に排出することができる。
【0050】
前記回転駆動装置は、前記基体の内部空間を前記基体の軸線に沿って延び、前記基体の先端の開口から突出するセンターピンを有し、前記センターピンは、その軸線方向に伸縮可能な弾性体を有し、前記軸線方向に外力が加えられることで、その先端が前記軸線方向において少なくとも前記基体の先端と同じ位置まで前記基体に対して相対的に移動し、前記第1ステップにおいて、前記回転駆動装置および前記コアカッターとは別個に設けられる穿孔装置により前記小孔を穿孔する。
【0051】
例えば、複数の前記刃部は、それぞれ、その外面が前記基体の外側面よりも径方向の外側に位置しても良い。
【0052】
前記穿孔予定領域は、複数の前記刃部の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであり、前記第2ステップにおいて、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記切削予定領域を切削するとともに前記穿孔予定領域を穿孔しても良い。
【0053】
上記の構成よれば、第2ステップを簡単に行うことができる。
【0054】
前記切削予定領域は、前記小孔の少なくとも一部を含む第1切削予定領域と、前記第1切削予定領域に隣接し、前記第1切削予定領域とその一部を共有する第2切削予定領域と、前記第1切削予定領域に前記第2切削予定領域の反対側から隣接し、前記第1切削予定領域とその一部を共有する第3切削予定領域と、を含み、前記穿孔予定領域の外縁部は、前記第1切削予定領域を外縁部とする第1穿孔予定領域と、前記第2切削予定領域を外縁部とする第2穿孔予定領域と、前記第3切削予定領域を外縁部とする第3穿孔予定領域と、を含み、前記切削予定領域は、複数の前記刃部の先端を結ぶ円よりも大きく、前記第1ないし前記第3穿孔予定領域は、それぞれ、複数の前記刃部の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであり、前記第2ステップは、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第1切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第1切削予定領域を切削するとともに前記第1穿孔予定領域を穿孔する第3ステップと、前記第3ステップを行った後で、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第2切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第2切削予定領域を切削するとともに前記第2穿孔予定領域を穿孔する第4ステップと、前記第4ステップを行った後で、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第3切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第3切削予定領域を切削するとともに前記第3穿孔予定領域を穿孔し、前記穿孔予定領域を穿孔する第5ステップと、を含んでも良い。
【0055】
上記の構成によれば、複数の刃部の先端を結ぶ円と比較して、穿孔領域を大きくすることができる。
【0056】
前記切削予定領域は、前記第2および前記第3切削予定領域のうちの少なくともいずれかに前記第1切削予定領域の反対側から隣接し、前記第2および前記第3切削予定領域のうちの少なくともいずれかとその一部を共有する第4切削予定領域をさらに含み、前記穿孔予定領域の外縁部は、前記第4切削予定領域を外縁部とする第4穿孔予定領域をさらに含み、前記第4穿孔予定領域は、複数の前記刃部の先端を結ぶ円に対応した形状および大きさであり、前記第2ステップは、前記第4ステップを行なった後で、前記第5ステップを行なう前に、前記回転駆動装置により前記基体を回転させながら、複数の前記刃部を前記第4切削予定領域の全体に亘って押し当てることにより、前記第4切削予定領域を切削するとともに前記第4穿孔予定領域を穿孔する第6ステップをさらに含んでも良い。
【0057】
上記の構成によれば、複数の刃部の先端を結ぶ円と比較して、穿孔領域をいっそう大きくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
A コアカッター
1 基体
1A 取着部
1a 取着凹部
2 刃部
3 排出溝
50 回転駆動装置
52 センターピン
SH 小孔
CA、CA´、CAa-CAo 切削予定領域
DA、DA´、DAa-DAo 穿孔予定領域