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特開2023-5809コーティング層を有する銅粉及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005809
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】コーティング層を有する銅粉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/102 20220101AFI20230111BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230111BHJP
【FI】
B22F1/02 B
B22F1/00 L
B22F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021107995
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 祐補
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018BA02
4K018BB04
4K018BB05
4K018BB10
4K018BC12
4K018BC22
4K018BC28
4K018BC29
4K018BC30
4K018BD04
4K018KA33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた耐酸化性を有する銅粉及びその製造方法を提供する。
【解決手段】含窒素ヘテロ芳香族化合物と分子量が150,000以下のポリオールとを含むコーティング層を有する銅粉は優れた耐酸化性を有するため、上記課題を解決することができる。また、銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と分子量が150,000以下のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合する混合工程を含む、コーティング層を有する銅粉の製造方法により、優れた耐酸化性を有する銅粉を製造することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含窒素ヘテロ芳香族化合物と分子量が150,000以下のポリオールとを含むコーティング層を有する銅粉。
【請求項2】
銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と分子量が150,000以下のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合する混合工程を含む、コーティング層を有する銅粉の製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング層を有する銅粉及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅粉の酸化は、銅粉の製造直後から開始し、銅粉の形態で保管している間に進行するため、銅粉の酸化を防止する技術が開発されている。例えば、特許文献1には、酸化による変色が起こりにくい銅粉として、表面の明度L*が46.3以上である銅粉が提案されており、銅粉がトリアゾール化合物を含む防錆剤を有することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-183242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた耐酸化性を有する銅粉及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定のコーティング層を銅粉に形成させたところ、耐酸化性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
[1]
含窒素ヘテロ芳香族化合物と分子量が150,000以下のポリオールとを含むコーティング層を有する銅粉;
[2]
銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と分子量が150,000以下のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合する混合工程を含む、コーティング層を有する銅粉の製造方法;
等である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた耐酸化性を有する銅粉及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施の形態に係る銅粉及びその製造方法について説明する。
本発明の一実施形態は、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング層を有する銅粉である。
【0009】
<コーティング層を有する銅粉>
本発明の銅粉は、コーティング層を有する。コーティング層は、特に限定するものではないが、例えば、10~100mg/mの量で銅粉上に形成することができる。また、銅粉は、銅表面とコーティング層の間に、1又は複数の他の層を有していてもよく、有していなくてもよい。また、コーティング層の表面に1又は複数の他の層を有していてもよく、有していなくてもよい。他の層としては、酸化銅被膜層、銀やニッケル等の銅とは異なる金属層、後述する表面処理工程で形成される表面処理層等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。他の層が存在する場合、他の層は、その下層である銅表面又はコーティング層の一部を被覆していてもよく、全部を被覆していてもよい。
【0010】
<銅粉>
銅粉としては、銅を主成分とする金属粉であれば特に制限されるものではなく、例えば、純銅粉及び銅合金粉(特にCu含有量が80質量%以上の銅合金粉)を挙げることができる。銅粉は、市販のもの又は公知の手段で調製したものを使用することができる。銅粉として、湿式銅粉、電解銅粉、アトマイズ銅粉、気相還元銅粉、機械的粉砕により得られる銅粉等を用いることができる。銅粉の形状は、球状、略球状、フレーク状、葉状、樹枝状、プレート状、針状、ブドウ状等のいずれであってもよい。また、銅粉は、異なる形状の2種類以上の銅粉を混合したものであってもよい。このような銅粉は、金属粉体を取り扱うメーカーから、容易に入手可能である。さらに、上記した形状の銅粉に物理的な力を加えて、さらに形状を変形する加工をしていてもよい。銅粉のD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50は、特に限定するものではないが、例えば0.01μm~100.0μmであってよい。
【0011】
<コーティング層>
コーティング層は、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含む。コーティング層に含まれる含窒素ヘテロ芳香族化合物とポリオールとの質量比は、本発明の効果が得られる範囲内であれば特に制限されるものではないが、例えば、5:40~40:5の範囲内である。
【0012】
<含窒素ヘテロ芳香族化合物>
含窒素ヘテロ芳香族化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾールとその誘導体、トリアゾールとその誘導体、テトラゾールとその誘導体、チアゾールとその誘導体、ベンゾチアゾールとその誘導体、イミダゾールとその誘導体、およびベンズイミダゾールとその誘導体が挙げられる。
本願発明において、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、およびベンズイミダゾールの誘導体とは、これらの化合物の1又は複数の水素原子が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等を有する置換基で置換された化合物を意味する。
本願発明において、含窒素ヘテロ芳香族化合物は、後述するポリオールのヒドロキシ基と反応可能な官能基、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、スルホ基等を有してよい。
【0013】
ベンゾトリアゾールとその誘導体としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール及びそのナトリウム塩、トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、6-カルボキシベンゾトリアゾール、7-カルボキシベンゾトリアゾール、5,6-ジカルボキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2-2'-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールが挙げられる。トリアゾールとその誘導体としては、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾールが挙げられる。テトラゾールとその誘導体としては、5-アミノ-1H-テトラゾール、1-フェニル-5-メルカプト-1H-テトラゾールが挙げられる。チアゾールとその誘導体としては、2-(メチルチオ)-2-チアゾリンが挙げられる。ベンゾチアゾールとその誘導体としては、ベンゾチアゾール、2-メチルベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。イミダゾールとその誘導体としては、2-メルカプト-1-メチルイミダゾールが挙げられる。ベンズイミダゾールとその誘導体としては、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-メトキシベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-カルボキシベンズイミダゾール、1,3-ジヒドロ-1-フェニル-2H-ベンズイミダゾール-2-チオン、2-ヒドロキシベンズイミダゾール、2-ブロモベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾール-5-スルホン酸ナトリウム二水和物、1-イソプロペニルベンズイミダゾール-2-オン、1-(2-プロペニル)ベンズイミダゾール-2-オン、2-メチルベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-ニトロベンズイミダゾール、2-メルカプト-5-アミノベンズイミダゾールが挙げられる。
【0014】
<ポリオール>
ポリオールは、分子中にアルコール性ヒドロキシ基を2個以上有する有機化合物である。ポリオールとしては、ジオール(例えば、メチレングリコール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、へキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリアルキレングリコール等)、トリオール(例えばグリセリン等)、ジグリセリン、ポリグリセリン、糖類及びその誘導体(例えば、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、リボース等の単糖類、キシロビオース、トレハロース、マルトース、サッカロース等の二糖類、デキストリン、デンプン、グリコーゲン、セルロース等の多糖類等)、アルドン酸及びその塩(例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、マンノン酸、マンノヘプトン酸、ガラクトン酸、ガラクトヘプトン酸、及びこれらのナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩、アンモニウム塩等)、糖アルコール(例えば、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール等)、等が挙げられる。また、ポリアルキレングリコールとしては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリオールは、グルコース等のように、還元性を示す構造(アルデヒド基等)を有していてよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、ポリオールの分子量は、150,000以下である。ポリオールの分子量は、例えば、100,000以下、50,000以下であってよい。なお、ここで分子量とは、ポリオールがグルコースなど単一の分子から構成され分子量分布がない場合は、分子を構成する元素の原子量の合計を意味し、ポリオールが、ポリエチレングリコールなどの合成重合物やアラビアガムなどの天然高分子のように、様々な分子量を有する分子の集合体である場合、すなわち分子量分布がある場合は、数平均分子量を意味する。ここで、数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を指す。GPCの条件は以下のとおりである。
(GPC条件)
・カラム:セミミクロカラム;東ソー(株)製;2本を接続して使用
・標準試料:PStQuick B;東ソー(株)製
・移動相:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)
・検出機器:RI
【0016】
<他の成分>
コーティング層は、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオール以外に、膠、ゼラチン、カップリング剤及び/又はその縮合物、脂肪酸、脂肪族アミン等の、他の成分を含んでもよく、含まなくてもよい。また、コーティング層は、銀化合物及び/又は銀、ニッケル化合物及び/又はニッケル等の、金属化合物及び/又は金属を含んでもよく、含まなくてもよい。
カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、及びジルコネートカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、1-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、1,2-ジアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノ-1-プロぺニルトリメトキシシラン、3-アミノ-1-プロピニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物が挙げられる。チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリカプロイルチタネート、イソプロピルトリラウロイルチタネート、イソプロピルトリパルミトイルチタネート、ジイソプロピルジイソステアロイルチタネート、ジイソプロピルジラウロイルチタネート、ジイソプロピルジパルミトイルチタネート、オクタン酸トリイソプロポキシチタン、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジステアリルホスファイト)チタネート、テトライソプロピルビス(ジラウリルホスファイト)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジラウリルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジミリスチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジステアリルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、ジイソプロピルビス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ジイソプロピルビス(ジステアリルパイロホスフェート)チタネート、オクチルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ジオクチルビス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジステアリルホスフェート)チタネート、ブチルトリス(ジオクチルホスフェート)チタネート、トリス(ジオクチルリン酸)オクチルオキシチタン、イソプロピルトリス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネート、ジイソプロピルビス(ドデシルベンゼンスルフォニル)チタネートが挙げられる。
脂肪酸としては、例えば、安息香酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸が挙げられる。脂肪族アミンとしては、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、オレイルアミン、ステアリルアミンが挙げられる。
【0017】
(コーティング層を有する銅粉の製造方法)
本実施形態の銅粉は、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング層を有する。本実施形態の銅粉の製造方法は、銅粉にコーティング層を形成できる方法であれば特段限定されないが、銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合する混合工程を含む。なお、本実施形態に係る製造方法において、混合工程の前に銅粉の脱脂、酸洗等の前処理を行ってもよいし、行わなくてもよい。また、前処理を行う場合には、その後に、水洗、固液分離、乾燥等の処理を単独又は適宜組み合わせて行ってもよいし、行わなくてもよい。さらに、混合工程の後に、水洗、固液分離、乾燥を行ってもよいし、行わなくてもよい。必要に応じて、混合工程の前、最中、又は後に、カップリング剤、脂肪酸、脂肪族アミン等の成分による表面処理工程を行ってもよく、行わなくてもよい。また、必要に応じて、混合工程の前、最中、又は後に、銀で銅粉を被覆する銀被覆工程を行ってもよく、行わなくてもよい。
【0018】
<銅粉の前処理>
脱脂方法としては、金属材料の表面に付着している油脂類や汚れを除去することができればいかなる方法であってもよく、例えば、溶剤脱脂、アルカリ系又は酸系の脱脂剤等を用いた公知の方法を挙げることができる。酸洗方法としては、ギ酸、酢酸、脂肪酸等の有機酸や、硫酸、塩酸等の無機酸を使用した銅粉の酸洗浄が挙げられる。脱脂の前後及び酸洗の前後に水洗及び固液分離を行ってもよいし、行わなくてもよい。必要に応じ脱脂、酸洗及び水洗を行った銅粉は、固液分離し、コーティング組成物との混合前に乾燥してもよいし、しなくてもよい。また、銅粉を湿式法等で製造し、製造工程において銅粉が溶媒を含むスラリーの状態で得られた場合は、溶媒を完全に蒸発させることなく使用してもよい。
【0019】
<含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物の製造方法>
含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物は、例えば、溶媒に、上記含窒素ヘテロ芳香族化合物及び上記ポリオール、必要に応じて上記他の成分を混合することにより製造することができる。なお、混合順序は特に限定されないが、使用する成分によって適宜調整することができる。
溶媒としては、含窒素ヘテロ芳香族化合物とポリオールが溶解又は分散するものであればいかなる溶媒も使用することができ、水性媒体、有機溶媒を制限なく使用することができる。
水性媒体としては、水を50質量%以上含むものであれば特に制限されるものではなく、水のみからなるものであっても、水と水混和性有機溶媒とを含む混合液であってもよい。水混和性有機溶媒としては、水と混和するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;N,N’-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノへキシルエーテル等のエーテル系溶媒;1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン等のピロリドン系溶媒等が挙げられる。これらの水混和性有機溶媒は1種を水と混合させてもよいし、2種以上を水と混合させてもよい。
【0020】
<混合工程>
混合方法としては、銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合し、銅粉に組成物を接触させ、銅粉にコーティング層を形成することができればいかなる方法であってもよく、例えば、組成物中に銅粉を添加して適宜攪拌する方法を挙げることができるが、これに限定されるものではない。混合温度や混合時間は、組成物の組成や濃度によって適宜設定される。混合温度や混合時間は、通常、混合温度は40℃~90℃の範囲内であり、混合時間は1分間~30分間の範囲内であるが、これらに限定されるものではない。また、混合工程における銅粉とコーティング組成物の割合や、銅粉とコーティング組成物中の成分との割合は、銅粉の形状や比表面積によって適宜設定することができる。このように混合することにより得られる、コーティング組成物及び銅粉の混合物は、粉体ペーストとして使用することができ、抵抗器;インダクタ;キャパシタ;セラミックス基板、プリント基板、太陽電池、タッチパネルなどの配線や電極;等に有用である。
【0021】
<表面処理工程>
混合工程の前、最中、又は後に、カップリング剤、脂肪酸、脂肪族アミン等の表面処理成分による表面処理工程を行ってもよい。表面処理工程は、表面処理成分を銅粉に接触させることにより行うことができ、典型的には、表面処理成分と銅粉を水性媒体中で混合することにより行うことができる。前記混合工程の最中に表面処理を行う場合は、コーティング組成物と表面処理成分とを同時に混合物中に存在させることにより行うことができる。表面処理工程により、表面処理層が銅粉に形成される。
【0022】
<表面処理成分>
表面処理成分としては、例えば、上記<他の成分>において例示列挙した膠、ゼラチン、カップリング剤、脂肪酸、脂肪族アミン等が挙げられる。
【0023】
<銀被覆工程>
混合工程の前、最中、又は後に、銀で銅粉を被覆する銀被覆工程を行ってもよい。銀で銅粉を被覆する方法としては、銀で被覆した銅粉を得ることができればいかなる方法であってもよく、例えば銅と銀の置換反応を利用した還元法や、還元剤を用いる還元法により、銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法や、微細な銀粒子を銅粉の表面に付着させる方法などを使用することができるが、これらに限定されない。析出させる方法としては例えば、溶媒中に銅粉と銀または銀化合物を含む溶液を攪拌しながら銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法や、溶媒中に銅粉および有機物を含む溶液と溶媒中に銀または銀化合物および有機物を含む溶液とを混合して攪拌しながら銅粉の表面に銀または銀化合物を析出させる方法などを使用することができる。前記混合工程の最中に銀被覆を行う場合は、コーティング組成物と銀または銀化合物とを同時に混合物中に存在させることにより行うことができる。銀被覆工程により、銀含有層が銅粉に形成される。
【0024】
表面処理工程により銅粉に表面処理層を形成させ、次に銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合し、銅粉に組成物を接触させ、銅粉にコーティング層を形成することができる。銀被覆工程により銅粉に銀含有層を形成させ、次に銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合し、銅粉に組成物を接触させ、銅粉にコーティング層を形成することができる。銀被覆工程により銅粉に銀含有層を形成させ、次に表面処理工程により銅粉に表面処理層を形成させ、次に銅粉と、含窒素ヘテロ芳香族化合物と所定のポリオールとを含むコーティング組成物とを混合し、銅粉に組成物を接触させ、銅粉にコーティング層を形成することができる。
【0025】
混合工程を経てコーティング層が形成された銅粉は、水洗、固液分離、乾燥を行ってもよいし、行わなくてもよい。例えば、本実施形態の銅粉を導電性ペーストの原料(フィラー)として使用する場合は、混合工程の後、適宜水洗と固液分離を行い、銅粉と溶媒とを含むスラリーの状態で使用してもよく、銅粉を単離し乾燥した上で使用してもよい。
【0026】
銅粉がコーティング層を有することは、例えば、銅粉に対してXPS(X線光電子分光法)のsurvey測定を行い、含窒素ヘテロ芳香族化合物又はポリオールが有する元素が検出されることにより確認できる。XPSのsurvey測定について具体的に説明する。まず、直径0.5mmの円筒状の容器に銅粉0.5gをそれぞれ充填して、底面が隙間なく覆われるように敷きつめる。円筒容器に敷きつめられた銅粉の上面をXPS survey測定(銅粉の上半分の表面に付着した元素の半定量分析)を、以下の装置と条件で行い、銅粉表面に存在する元素を特定する。
装置:アルバックファイ社製5600MC
到達真空度:5.7×10-9Torr
励起源:単色化AlKα
出力:210W
検出面積:800μmφ
入射角、取出角:45°
中和銃使用
【0027】
<銅粉の用途>
本発明に係る銅粉は、耐酸化性が高く導電性が維持できるため、導電性ペーストなどに含有される導電フィラーとして好適に用いることができる。導電性ペーストは、樹脂系バインダと溶媒からなるビヒクル中に導電フィラーを分散させた流動性組成物であり、電気回路の形成や、セラミックコンデンサの外部電極の形成、各種導電性フィルムの形成などに広く用いられている。
【実施例0028】
本発明を実施例及び比較例を用いて更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0029】
(コーティング組成物の調製)
表1に示す含窒素ヘテロ芳香族化合物(化合物B)とエタノールとを混合した後、当該混合物と表1に示すポリオール(化合物A)を脱イオン水に混合して、表1に示す濃度のコーティング組成物No. 1~12を調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
表1中、化合物A及び化合物Bの欄における各番号の詳細は以下のとおりである。
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
(コーティング層を有する銅粉サンプルの作製)
銅粉(DOWAエレクトロニクス株式会社製、D50=1.0μm)250gと各コーティング組成物(No. 1~12)1Lとを、80℃で5分間攪拌し混合した。混合物を吸引ろ過により固液分離した後、フィルター上に残った銅粉の上から水を加え吸引して、銅粉の水洗及び固液分離を行った。固液分離された銅粉を解砕し、60℃で1時間熱風乾燥した。その後乳鉢で細かく粉砕したものを銅粉サンプル(実施例1~11及び比較例2)とした。また、未処理の銅粉サンプルを比較例1とした。
【0035】
(高温高湿下での保管試験)
銅粉サンプル(実施例1~11及び比較例1~2)を、温度85℃、相対湿度(RH)85%に設定した恒温恒湿器LHL-114(エスペック社製)中に120時間保管し、デシケーター中で室温まで放冷した。
【0036】
(銅粉サンプルの耐酸化性の評価)
銅粉サンプルの耐酸化性を評価するため、高温高湿下での保管試験前後の銅粉サンプル(実施例1~11及び比較例1~2)の導電性の評価を実施した。具体的には、粉体抵抗率測定システム(三菱化学アナリテック製)のプローブユニットに銅粉サンプル5.0gを入れ、20MPaの圧力を加えた際の体積抵抗率を測定した。体積抵抗率/Ωcmの値を以下の基準でランク付けし、銅粉サンプルの導電性を評価した。結果を表4に示す。なお、導電性の評価結果が◎、〇、△のものを合格、×のものを不合格とした。
【0037】
<評価基準>
◎:体積抵抗率が2.00×10 Ωcm未満
〇:体積抵抗率が2.00×10 Ωcm以上5.00×10 Ωcm未満
△:体積抵抗率が5.00×10 Ωcm以上1.00×10 Ωcm未満
×:体積抵抗率が1.00×10 Ωcm以上
【0038】
【表4】