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特開2023-58100伝動装置の異常検出方法及び異常検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058100
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】伝動装置の異常検出方法及び異常検出装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20230418BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20230418BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230418BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230418BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
H02P29/00
B25J19/06
G01H17/00 A
G01M99/00 A
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167875
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】桃澤 義秋
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3C707
5F131
5H501
【Fターム(参考)】
2G024AB01
2G024AD03
2G024BA11
2G024BA27
2G024CA13
2G024FA01
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
3C707BS15
3C707BS26
3C707CX01
3C707CX03
3C707DS05
3C707HS27
3C707KS21
3C707KS24
3C707KX10
3C707MS14
3C707MS15
3C707MS24
3C707MT03
3C707MT04
3C707NS12
5F131DB02
5F131DB58
5F131DB62
5F131DB72
5F131DB93
5F131KA28
5F131KA45
5H501AA22
5H501BB08
5H501DD01
5H501GG01
5H501JJ03
5H501JJ26
5H501LL07
5H501LL35
5H501LL51
5H501MM09
5H501PP02
(57)【要約】
【課題】ロボットなどに設けられる、減速機や走行駆動ユニットなどの伝動装置における異常の発生を小さな演算量で確実に検出する。
【解決手段】モータ36によって駆動される例えば減速機38などの伝動装置における異常を検出する異常検出装置は、モータ36の速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行うバンドパスフィルタ44と、バンドパスフィルタ処理によって得られる信号に基づいて伝動装置における異常の発生の有無を判定する判定手段(コンパレータ46)と、を有する。バンドパスフィルタ44と判定手段との間に、バンドパスフィルタ44から出力される信号の二乗平均平方根(RMS)値を求めるRMS演算部45が設けられていてもよい。バンドパスフィルタ44は、例えば5次のバタワースフィルタである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動される伝動装置における異常を検出する異常検出方法であって、
前記モータの速度を検出し、
前記速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行い、
前記バンドパスフィルタ処理によって得られる信号に基づいて、前記伝動装置における異常の発生の有無を判定する、異常検出方法。
【請求項2】
前記バンドパスフィルタ処理は、5次のバタワースフィルタによるバンドパスフィルタ処理である、請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記バンドパスフィルタ処理によって得られる信号に対し、前記信号の二乗平均または二乗平均平方根を求めて閾値と比較することにより、前記異常の発生の有無を判定する、請求項1または2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
前記モータに接続されたエンコーダから得られる信号から前記モータの速度を検出する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の異常検出方法。
【請求項5】
モータによって駆動される伝動装置における異常を検出する異常検出装置であって、
前記モータの速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行うバンドパスフィルタと、
前記バンドパスフィルタから出力される信号に基づいて前記伝動装置における異常の発生の有無を判定する判定手段と、
を有する、異常検出装置。
【請求項6】
前記バンドパスフィルタは、5次のバタワースフィルタである、請求項5に記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記バンドパスフィルタから出力される信号の二乗平均または二乗平均平方根を求める演算手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記演算手段によって得られた値と閾値と比較することにより、前記異常の発生の有無を判定する、請求項5または6に記載の異常検出装置。
【請求項8】
前記モータに接続されたエンコーダから得られる信号から前記モータの速度を検出する速度演算手段をさらに有する、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の異常検出装置。
【請求項9】
前記異常検出装置は、外部から与えられる指令値に基づいて前記モータのサーボ制御を実行する制御装置の内部に設けられている、請求項5乃至8のいずれか1項に記載の異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータからの回転を負荷などに伝達するために用いられる減速機や走行駆動ユニットなどの伝動装置における異常を検出する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットにおいては軸ごとにサーボモータが設けられており、各軸はサーボモータに取り付けられた減速機を介して駆動力が伝達されて駆動される。ロボットを床面上などで水平方向に直線移動させるために、ラック・アンド・ピニオン構造などを有する走行駆動ユニットが用いられ、走行駆動ユニットもサーボモータによって駆動される。減速機も走行駆動ユニットも、サーボモータからの駆動力を対象物に伝達する伝動装置である。伝動装置は例えば歯車などを組み合わせて構成されるものであり、歯車を軸に固定するボルトの緩みや歯の欠けなどが異常が発生した場合には、高速回転時に振動が発生したり、ロボットへの応用においては位置決め精度の低下などが起こることがある。したがって、伝動装置における異常の発生を早期に検出できることが求められている。
【0003】
特許文献1は、減速機の異常を判定する技術として、減速機の動作時における複数の動作データを現在の動作データとして取得し、減速機の異常の形態を示す異常モードでの過去の動作データと現在の動作データとの相関係数を求め、異常の有無と異常の原因とを判定することを開示している。動作データとしては、例えば、サーボモータへの指令電流値の平均値、最大値、振幅及び標準偏差や、モータの回転数及び回転角などが用いられる。この方法では、十分な判定精度を得るためには多種多様な多数の動作データを取得した上で統計処理を行う必要があり、全体としての計算量が多くなる。また、異常モードでの過去の動作データの収集にも労力を有する。
【0004】
特許文献2は、ロボットなどにおける減速機における故障の兆候の有無を判定する技術として、サーボモータの加減速期間においてモータ電流における特定の周波数帯域の周波数成分の振幅のピーク値を求め、このピーク値に基づいて故障の兆候の有無を判定することを開示している。判定に用いる特定の周波数帯域は、ロボットにおける複数の機械的な固有振動数のうちの、減速機の歯車が噛み合う方向にロボットを共振によって振れさせる固有振動数に応じて定められる。特定の周波数帯域の周波数成分の抽出には、FFT(高速フーリエ変換)演算あるいはバンドパスフィルタが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-18270号公報
【特許文献2】特開2021-9041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された方法は、加減速時におけるモータ電流に基づいて減速機における異常の有無を検出するものであるので、その検出感度がサーボゲインの設定値に左右されやすいというという課題を有する。また、特定の周波数帯域の周波数成分の抽出にFFT演算を用いた場合には、計算量が多くなる。特定の周波数帯域の周波数成分の抽出にバンドパスフィルタを用いた場合には、バンドパスフィルタの構成によって検出感度などが変化することが予想される。例えばバンドパスフィルタの次数が低い場合には、位置指令値の直流成分による影響を十分には除去できなくなる。しかしながら特許文献2では、減速機での異常の検出に適したバンドパスフィルタの構成が明らかにはなっていない。
【0007】
本発明の目的は、ロボットなどに設けられる伝動装置における異常の発生を小さな演算量で確実に検出できる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の異常検出方法は、モータによって駆動される伝動装置における異常を検出する異常検出方法であって、モータの速度を検出し、速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行い、バンドパスフィルタ処理によって得られる信号に基づいて、伝動装置における異常の発生の有無を判定する。本発明の異常検出方法では、モータの速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行うことにより、後述するように、伝動装置における異常の発生をより確実に検出できる。本発明において伝動装置は、例えば、モータに接続する減速機あるいは走行駆動ユニットである。
【0009】
本発明の異常検出方法では、バンドパスフィルタ処理は、5次のバタワースフィルタによるバンドパスフィルタ処理であることが好ましい。3次のバタワースフィルタを用いたときには不要な周波数成分の影響を受けやすくなり、7次以上のバタワースフィルタを用いるときは、その実装が難しくなり、また、演算量が大きくなる。したがって、5次のバタワースフィルタを用いるバンドパスフィルタ処理が最適なものである。
【0010】
本発明の異常検出方法では、バンドパスフィルタ処理によって得られる信号に対し、その信号の二乗平均または二乗平均平方根を求めて閾値と比較することにより、異常の発生の有無を判定することが好ましい。このように判定を行うことにより、判定に必要な演算量を削減しつつ、異常を確実に検出できるようになる。
【0011】
本発明の異常検出方法では、モータの速度は、モータに接続されたエンコーダから得られる信号から検出することができる。サーボ制御の対象となっているモータであれば、そのモータにはそのモータの位置を検出するエンコーダが取り付けられていることが一般的であるから、エンコーダからの信号に対して例えば微分処理を行うことにより、モータの速度を簡単に得ることができる。
【0012】
本発明の異常検出装置は、モータによって駆動される伝動装置における異常を検出する異常検出装置であって、モータの速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行うバンドパスフィルタと、バンドパスフィルタから出力される信号に基づいて伝動装置における異常の発生の有無を判定する判定手段と、を有する。本発明の異常検出装置では、バンドパスフィルタを設けてモータの速度の検出値に対してバンドパスフィルタ処理を行うことにより、後述するように、伝動装置における異常の発生をより確実に検出できる。
【0013】
本発明の異常検出装置において、バンドパスフィルタは、5次のバタワースフィルタからなるバンドパスフィルタである。3次のバタワースフィルタを用いたときには不要な周波数成分の影響を受けやすくなり、7次以上のバタワースフィルタを用いるときは、その実装が難しくなり、また、演算量が大きくなる。したがって、5次のバタワースフィルタからなるバンドパスフィルタが最適なものである。
【0014】
本発明の異常検出装置においては、バンドパスフィルタから出力される信号の二乗平均または二乗平均平方根を求める演算手段をさらに設け、演算手段によって得られた値と閾値と比較することにより判定手段が異常の発生の有無を判定することが好ましい。二乗平均または二乗平均平方根と閾値との比較を行うことにより、異常の発生の有無の判定に必要な演算量を削減しつつ、異常を確実に検出できる。
【0015】
本発明の異常検出装置では、モータに接続されたエンコーダから得られる信号からモータの速度を検出する速度演算手段がさらに設けられていてもよい。モータがサーボ制御の対象となっているものであれば、そのモータにはそのモータの位置を検出するエンコーダが取り付けられていることが一般的であるから、エンコーダからの信号に対して例えば微分処理を行うように速度演算手段を設けることにより、モータの速度を簡単に得ることができる。
【0016】
本発明の異常検出装置は、外部から与えられる指令値に基づいてモータのサーボ制御を実行する、例えばロボットコントローラなどの制御装置の内部に設けられてもよい。制御装置の内部に異常検出装置を設けることにより、制御装置によるモータのサーボ制御と連動する形態で、伝動装置における異常の発生の有無を検出できるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロボットなどに設けられる伝動装置における異常の発生を小さな演算量で確実に検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】(a)は、本発明に基づく異常検出方法が適用されるロボットの全体構成を示す概略図であり、(b)はロボットの正面図であある。
図2】(a),(b)はそれぞれロボットの側面図と平面図である。
図3】本発明の実施の一形態の異常検出装置を備える制御装置の構成を示すブロック図である。
図4】減速機における異常の検出を説明する波形図である。
図5】減速機における異常の検出を説明する波形図である。
図6】走行駆動ユニットにおける異常の検出を説明する波形図である。
図7】走行駆動ユニットにおける異常の検出を説明する波形図である。
図8】走行駆動ユニットにおける異常の検出を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本発明は、モータによって駆動される伝動装置における異常の検出に関するものである。伝動装置は、例えば、減速機や走行駆動ユニットであって、産業用ロボットに組み込まれる。そこでまず、伝動装置が組み込まれる機器の一例であるロボットについて、図1及び図2を用いて説明する。図1において(a)はロボット10の全体構成を示す概略図であり、(b)はロボット10の正面図である。図2において(a)及び(b)は、それぞれ、ロボット10の側面図及び平面図である。
【0020】
図示されるロボット10は、ガラス基板などのワーク50を搬送することを目的とするものであって、水平多関節ロボットとして構成されている。特にこのロボット10は、ワーク50(図1には不図示)をそれぞれ保持する2つのハンド13A,13Bを備えるいわゆるダブル・ハンド・ロボットとして構成されている。ロボット10には、ロボット10に対する動作指令が外部から入力し、この動作指令に基づいてロボット10を駆動し制御する制御装置(ロボットコントローラ)40が、ケーブルによって電気的に接続されている。後述するように制御装置40には、ロボット10内の伝動装置の異常を検出する異常検出装置42(図3参照)が設けられている。なお図1(a)は、ロボット10において水平多関節機構が上昇した状態を示しているのに対し、図1(b)、図2(a),(b)は、水平多関節機構が下降した状態を示している。
【0021】
ロボット10は、床面FL(図1(b)参照)において直線状に設けられた相互に平行な1対のレール21上を移動可能な基台22と、基台22の上に設けられて回転軸31の周りで水平面内で回転する回転台23と、回転台23に対して直立するように設けられた昇降機構24を備えている。レール21は、例えばラックレールであり、基台22に設けられたピニオンと噛み合う。ピニオンは基台22内に設けられた走行用モータに機械的に接続しており、走行用モータを駆動することによってピニオンが回転し、ロボット10がレール21に沿って水平方向に移動する。走行用モータとピニオンとの間に駆動力伝達用の歯車が設けられていてもよく、これらの歯車とピニオンとによって、ロボット10の走行駆動ユニットが構成される。レール21にはそれを覆うカバー25が取り付けられている。
【0022】
基台22に対して回転軸31の周りで回転台23を回転させるために、基台22には走行用モータとは別に、θ軸モータとも呼ばれるモータが設けられている。θ軸モータには減速機が取り付けられ、θ軸モータに対する負荷である回転台23は、減速機を介してθ軸モータによって駆動される。昇降機構24は、回転台23に取り付けられている固定部24Aと、モータによって固定部24Aに対して昇降する移動部24Bとを備えている。移動部24Bを昇降させるモータは、固定部24Aに設けられており、このモータにも減速機が取り付けられており、移動部24Bは、減速機を介して昇降用のモータによって駆動されて昇降する。
【0023】
移動部24Bには水平多関節機構を保持するアーム支持部26A,26Bが水平方向に延びるように設けられており、アーム支持部26A,26Bの先端にはそれぞれ水平多関節機構が取り付けられている。上側の水平多関節機構は、アーム支持部26Aに取り付けられて共通軸32の周りで水平面内を回転可能な第1アーム11Aと、第1アーム11Aの先端に取り付けられて軸33Aの周りで水平面内を回転可能な第2アーム12Aを備えており、第2アーム12Aの先端にハンド13Aが取り付けられている。同様に下側の水平多関節機構は、アーム支持部26Bに取り付けられて共通軸32の周りで水平面内を回転可能な第1アーム11Bと、第1アーム11Bの先端に取り付けられて軸33Bの周りで水平面内を回転可能な第2アーム12Bを備えており、第2アーム12Bの先端にハンド13Bが取り付けられている。
【0024】
ハンド13A,13Bは、下から保持することによって板状のワーク50を水平状態に保ったまま搬送できるように、複数の棒状部材を平行に配置したフォーク状の形状となっている。すなわちハンド13A,13Bは、ワーク50をそのハンド13A,13Bの上に保持する形式のものである。ハンド13A,13Bは、ロードロック室やカセットなどに収納されているワーク50を取り出してハンド13A,13B上に保持したり、保持しているワーク50をロードロック室内などに収納するときにワーク50に対して前進または後退するが、このハンド13A,13Bの前進したり後退する方向は、棒状部材の延びる方向と平行な方向とされる。
【0025】
このロボットにおいて水平多関節機構は、第1アーム11A,11Bと第2アーム12A,12Bとに組み込まれたリンク機構により、アーム支持部26が延びる方向とは直交する方向で直線運動でハンド13A,13Bが前進及び後退運動を行うように構成されている。すなわち両方のハンド13A,13Bは同一方向に前進及び後退を行う。中心軸32に対してハンド13A,13Bの先端が遠ざかる動きが前進運動であり、前進運動とは反対方向の動きが後退運動である。第1アーム11A,11Bと第2アーム12A,12Bとは全体して屈曲運動を行い、それにも関わらず水平面内でのハンド13A,13Bの向きを一定とするために、ハンド13A,13Bは、それぞれ、第2アーム12A,12Bの先端の位置で手首軸34A,34Bの周りで水平面内を回転可能に取り付けられている。上側の水平多関節機構では、アーム支持部26に設けられたモータから減速機を介して駆動されることによって、第1アーム11A及び第2アーム12Aが動き、ハンド13Aはその向きを保ったまま、アーム支持部26の延びる方向とは直交する方向に移動する。同様に下側の水平多関節機構では、アーム支持部26に設けられたモータから減速機を介して駆動されることによって、第1アーム11B及び第2アーム12Bが動き、ハンド13Bはその向きを保ったまま、アーム支持部26の延びる方向とは直交する方向に移動する。このロボットでは、ハンド13Aとハンド13Bとを独立して前進及び後退させることができる。以下の説明において、第1アーム11A,11Bと第2アーム12A,12Bとに組み込まれたリンク機構によりハンド13A,13Bが前進及び後退運動をすることをアームの伸縮運動と呼ぶ。
【0026】
結局、ロボット10での動きは、レール21に沿った水平方向の移動(これをX軸あるいは走行軸の動きとする)と、回転軸31の周りでの基台22に対する昇降機構24の旋回(これをθ軸あるいは旋回軸の動きとする)と、ハンド13A,13Bの前進及び後退運動、すなわちアーム伸縮運動(これをR軸の動きとする)と、昇降機構24によるアーム支持部26の昇降(これをZ軸の動きとする)とに分けることができ、これらは、それぞれロボット10に設けられている軸ごとのモータによって駆動される。ロボット10は、移動動作に対応する指令に応じた制御装置40からの駆動制御により、これらの各軸のうちの1つの軸だけを動かす動作や、2以上の軸を同時に動かす動作とを実行する。
【0027】
ロボット10を用いたガラス基板などのワーク50の搬送について説明する。ここではレール21に沿って2つのロードロック室が設けられており、これらのロードロック室の間でワーク50を搬送する場合を考える。まず、ハンド13A,13Bがいずれも後退して第1アーム11A,11Bと第2アーム12A,12Bとが折り畳まれた状態、すなわちアームが縮んだ状態で、搬出側のロードロック室に向き合う位置にまでレール21に沿ってロボット10を移動させ、同時に、ハンド13Aの高さをロードロック室に対応する高さとなるように、昇降機構24によって昇降させる。そして、アームを伸ばすことによりハンド13Aを前進させて搬出側のロードロック室内にハンド13Aを進入させ、わずかにハンド13Aを上昇させることによってハンド13A上にワーク50を載置する。その後、アームを縮めることによりハンド13Aを後退させてワーク50ごとハンド13Aをロードロック室から引き出す。次に、ワーク50を搭載した状態で搬入側のロードロック室に向き合う位置にまでレール21に沿ってロボット部10を移動させ、同時にハンド13Aの高さがロードロック室に対応する高さとなるように、昇降機構24によってアーム支持部26Aを昇降させる。そして、ワーク50を載せたままハンド13Aを前進させて第2のカセット内にハンド13Aを進入させ、わずかにハンド13Aを下降させることによって搬入側のロードロック室にワーク50を載置し、ハンド13Aを後退させてロードロック室からハンド13Aを引き出す。以上の動作によって、ワーク50が搬送されたことになる。レール21を挟んで一方の側に搬出側のロードロック室が配置し、他方の側に搬入側のロードロック室が配置する場合は、上記の動作に加え、回転軸31の周りでの旋回の動作が実行される。
【0028】
上述したロボット10では、θ軸モータや各水平多関節機構のモータには減速機が取り付けられており、これらの軸は減速機を介してモータによって駆動される。走行用モータには走行駆動ユニットが接続しており、走行用モータを駆動することによってロボット10はレール21に沿って移動する。減速機や走行駆動ユニットは、モータに接続する伝動装置である。以下、ロボット10に設けられる伝動装置10における異常の発生を検出するための機構について説明する。図3は、ロボット10に接続する制御装置40の構成を示すブロック図である。
【0029】
制御装置40は、入力する指令値、例えば位置指令値に基づいてロボット10の各軸のモータ36を駆動し制御する。モータ36には、そのモータ36の回転位置を検出するエンコーダ37が取り付けられている。モータ36の回転軸には減速機38が取り付けられており、減速機38を介して負荷39がモータ36に機械的に接続する。減速機38の代わりに走行駆動ユニットが用いられてもよい。制御装置40には、モータ36の位置を示す信号がエンコーダ37からフィードバックされてモータ36をサーボ制御する制御部41と、伝動装置における異常の発生を検出する、本発明の実施の一形態の異常検出装置42とが設けられている。図では、モータ36、制御部41及び異常検出装置42が1つずつ描かれているが、ロボット10には複数のモータ36が設けられるので、制御装置40では、その制御するモータ36ごとに制御部41と異常検出装置42が設けられる。したがって制御装置40では、モータ36の駆動及び制御と、減速機38での異常の発生の検出とが、軸ごとに実行される。制御部41としては、産業用ロボットの各軸のモータを制御するための標準的なサーボ制御機構が使用される。
【0030】
異常検出装置42は、モータ36の位置を示す信号がエンコーダ37から供給されてその信号に対して微分演算を行ってモータ36の速度を連続的に算出する速度演算部43と、速度演算部43で算出された速度値を示す信号に対してバンドパスフィルタ処理を行うバンドパスフィルタ44と、バンドパスフィルタ処理後の速度値から二乗平均平方根(RMS;Root Mean Square)値を算出するRMS演算部45とを備えている。さらに異常検出装置42は、RMS演算部45において算出されたRMS値と閾値とを比較するコンパレータ46と、RMS値が閾値を上回るときに、減速機38に異常が発生したと判断して警報を出力する警報処理部47とを備えている。ロボットの制御に用いられる制御装置は、一般に、ソフトウェアによって動作するマイクロプロセッサなどによって実現されるので、本実施形態においても異常検出装置42は、例えばマイクロプロセッサなどを用いたデジタル信号処理技術を用いて実現される。
【0031】
バンドパスフィルタ44は、例えばローパスフィルタ44Lとハイパスフィルタ44Hとをカスケード接続して構成されている。バンドパスフィルタ44の通過帯域は、モータ36や減速機38さらにはロボット10自体の大きさや構成などによって最適なものが異なるが、例えば、3~10Hzとされる。この場合、ローパスフィルタ44Lの遮断周波数を10Hzとし、ハイパスフィルタ44Hの遮断周波数を3Hzとする。ローパスフィルタ44L及びハイパスフィルタ44Hはいずれも5次のバタワースフィルタであることが好ましく、その場合、バンドパスフィルタ44も5次のバタワースフィルタとして構成されることになる。伝動装置がランクアンドピニオン型の走行駆動ユニットである場合には、通過帯域が例えば3~20Hzであるバンドパスフィルタ44が使用され、この場合もバンドパスフィルタ44は5次のバタワースフィルタであることが好ましい。
【0032】
RMS演算部45は、バンドパスフィルタ44で処理された速度値を二乗する二乗演算部(Sq)45Aと、二乗演算部45で算出された値を所定の長さの期間にわたって積算する積算部(Sum)45Aと、積算部45で積算された値の平方根を求める平方根演算部(Sqrt)45Cとを備えている。ここではデジタル信号処理を前提としているので、積算部45は、信号の各サンプリング周期ごとに、直前の所定の数のサンプリング周期において二乗演算部45で算出された値を積算し、その値をRMS値として出力する。
【0033】
以下、本実施形態の異常検出装置42による減速機38での異常の検出を、図4を用いて実例に基づいて説明する。図1及び図2を用いて説明したロボット10を使用し、θ軸のモータ36に接続する減速機38が正常である場合(正常品)と異常である場合(異常品)の両方について、モータ36を駆動して回転軸31の周りで回転台23を旋回させた。図4において(a-1)は、正常品について検出されたモータ36の速度を示し、(b-1)は、異常品について検出されたモータ36の速度を示している。モータ36に対する速度指令では、ロボット10においてθ軸に対して規定されている最大の速度でモータ36を駆動するようにした。図4及びそれ以降の図において、速度は、制御装置40において内部的に使用されている速度の単位で示されている。このようにして得られた速度値のデータに対し、通過帯域が3~10Hzであるバンドフィルタ44を用いてバンドパフフィルタ処理を行った。正常品に対する結果が(a-2)及び(a-3)に示されている。(a-2)は3次のバタワースフィルタで処理した結果を示し、(a-3)は5次のバタワースフィルタで処理した結果を示している。同様に、異常品に関し、(b-2)は3次のバタワースフィルタで処理した結果を示し、(b-3)は5次のバタワースフィルタで処理した結果を示している。これらの図において、「FILTERED」で示される灰色の線は、バンドパスフィルタ44で処理して得られた値を示し、「RMS」で示される黒色の線は、さらにRMS処理部45によって処理して得られた結果、すなわちRMS値を示している。
【0034】
図4に示す結果から、モータ36の速度そのもののデータでは減速機が正常なときと異常なときとを事実上見分けることができないが、バンドパスフィルタ処理を行うことによって、両者の差が明確になり、異常品の方が振幅、特に最大振幅が大きくなった。RMS値で比較すると、ピーク値は、異常品の方が大きかった。正常時のRMS値を考慮して閾値を定めることにより、減速機38における異常の発生を検出することができることが分かる。正常品について検討すると、バンドパスフィルタ処理後の値の振幅もRMS値のピーク値も5次のバンドパスフィルタを用いたときの方が小さかった。このことから、減速機38の異常の検出には3次よりも5次のバタワースフィルタを用いることが好ましいといえる。7次あるいはそれよりも高次のバタワースフィルタの使用も考えられるが、オーバーシュートの増加、実装上のコストの増加、計算誤差による精度の悪化が生じて現実的ではなくなる。
【0035】
バンドパスフィルタ44についてさらに検討する。モータ36の速度における変動成分を調べるためには速度を示す信号に対してFFT(高速フーリエ変換)を行えばよいが、速度を示す信号をそのまま用いたのでは波形が非常に見にくくなる。そこで、通過地域が2~20Hzであって5次のバタワースフィルタであるバンドパスフィルタによって速度信号を処理し、フィルタ処理後の速度信号に対してFFTを行ってスペクトラムを得た。図5において(a-1)及び(a-2)は、それぞれ、正常品におけるフィルタ処理後の速度値及びFFTによって得たスペクトラムを示している。同様に図5の(b-1)及び(b-2)は、それぞれ、異常品におけるフィルタ処理後の速度値及びスペクトラムを結果を示している。正常品では2Hz以上の周波数成分の強度は小さい。これに対し異常品では、4Hzより若干低い周波数から5Hzをやや超える周波数までの領域とそれの2次高調波に対応する8~10kHzの領域にピークが見られた。これらのピークは異常品に特有の周波数成分を表していると考えられ、このロボット10の減速機38での異常の発生の有無を検出するためには、通過帯域が3~10Hzであるバンドパスフィルタ44を用いればよいことが分かる。
【0036】
さらに、異常品について、図4の(b-2)及び(b-3)に示されるバンドパスフィルタ処理後の速度値に対してFFTを適用して図5の(c-1)及び(c-2)のそれぞれ示されるスペクトラムを得た。図5(c-1)は、3次のバタワースフィルタで処理した結果から得られたスペクトラムを示しているが、このスペクトラムでは、異常品に特有なピークのほかに、2Hz以下の領域に不要な周波数成分によるピークが存在する。これに対し、図5(c-2)に示す、5次のバタワースフィルタで処理した結果から得られたスペクトラムには、2Hz以下の領域に位置する不要な周波数成分のピークは見られなかった。このことから、不要な週はす成分によるピークの影響を防ぐためにも、バンドパスフィルタ44として3次よりも5次のバタワースフィルタを用いることが好ましいことが分かる。なお、図4の(b-2)に示す、異常品での3次のバタワースフィルタを用いたときのフィルタ処理後の速度値やRMS値結果において、時刻が約1秒から約3秒までの期間に不自然な変動が見られるが、これも、バンドパスフィルタ処理では取り切れなかった上述した不要な周波数成分の影響であると考えられる。最近のロボットでは、マニピュレータの振動抑制を目的としてジャーク(躍度あるいは加加速度ともいう)を制限するといった処理を行うことがあり、その場合には低次のバンドパスフィルタではジャークの直流成分を除去できないと考えられる。この除去できなかった直流成分が、3次のバタワースフィルタから得られるスペクトラムにおける不要な周波数成分になったものと考えられる。
【0037】
図1及び図2に示すロボット10は、基台22に組み込まれたピニオンを含む走行駆動ユニットにより、レール21に沿って水平方向に移動する。そこで、図1及び図2に示すロボット10をレール21に沿って往復移動させ、そのときにロボット10の走行駆動ユニットの異常を、本実施形態の異常検出装置42を用いて検出した例を説明する。この場合、図4に示すブロック図では、減速機38の代わりに走行駆動ユニットが設けられたことになる。異常品としては、走行駆動ユニットにおいてギアを固定するボルトに緩みのあるものを使用した。バンドパスフィルタ44として、通過帯域が3~20Hzである5次のバタワースフィルタを使用した。結果を図6に示す。図6は、図4の(a-3)あるいは(b-3)に示すものと同様に、バンドパスフィルタ処理後の速度値と、バンドパスフィルタ処理後の速度値に対してRMS処理部45によって処理して得られるRMS値を示している。図6において、(a)は正常品に対する結果を示し、(b)は異常品に対する結果を示している。
【0038】
走行駆動ユニットによりレール21に沿ってロボット10を往復移動させるとき、ロボット10は一方向に加速されて所定の速さに到達してそれからは定速で移動し、その後、減速されて停止し、次に逆方向に加速されて所定の速さに到達して低速で移動し、再び減速されて停止する、という動作を実行する。このときの所定の速さが、ロボット10においてその水平移動に関して定められている最高速度のどの程度のものであるかをSP値で表すこととする。SP=100%であれば、往復移動のときの所定の速さが規定された最高速度と一致し、SP=50%であれば、往復移動の時の所定の速さが規定された最高速度の50%であることを意味する。図6は、異なるSP値によりロボット10を水平移動させた場合の各々について、結果を示している。
【0039】
図6から、正常品では、バンドパスフィルタ処理後の速度値におけるピーク値は小さく、SP値によらずにRMS値は0の近傍で小さく変動するだけである。これに対し異常品では、バンドパスフィルタ処理後の速度値は大きく変動し、RMS値は脈動し、RMS値のピークはSP値が大きいほど大きくなった。このことから、本実施形態の異常検出装置42によれば、走行駆動ユニットの異常も検出できること、異常の検出のためには、その走行用モータで駆動される走行駆動ユニットを、その走行駆動ユニットにおいて規定されている最高速度の範囲でできるだけ高速で駆動することが好ましいことが分かった。走行駆動ユニットではなくロボットの各軸の減速機の異常を検出するときも、その軸について規定されている最高速度の範囲内でできるだけ高速でその軸を駆動することが好ましいと考えられる。
【0040】
以上説明した図6は、走行用モータの速度に基づいて走行駆動ユニットの異常を検出した例を示している。ここで比較のため、モータの速度以外の量を用いて伝動装置の異常を検出した場合を説明する。図7は、図1及び図2に示すロボット10に走行駆動ユニットについて、走行用モータに対するトルク指令値に基づいて異常を検出したときの結果を示している。トルク指令値は、制御装置40の制御部41から得ることができる。図7に示す結果は、速度の代わりにトルク指令値が異常検出装置42のバンドパスフィルタ44に入力するようにしたこと以外は図6の場合と同様にして得られた結果である。トルク指令値は、制御装置40の内部で使用される単位によって示されている。走行用モータに対するトルク指令値は、走行用モータに供給される電流と比例する。図においては、バンドパスフィルタ処理後のトルク指令値に関して代表的な点でのXY座標値(Xは時刻、Yはトルク指令値)が示されている。図7に示した結果においても、バンドパスフィルタ処理後のトルク指令値の振幅は異常品の方が大きく、異常品においてはRMS値に脈動が観察された。しかしながら正常品においてもSP値が大きい場合(例えばSP=100%)に、RMS値に脈動が観察され、このことから、トルク指令値に基づいて異常の有無の判定を行おうとすると、速度に基づいて異常の有無の判定を行う場合に比べ、判定のための閾値の設定が難しくなり、誤判定のおそれが上昇するものと考えられる。
【0041】
図8は、図1及び図2に示すロボット10に走行駆動ユニットについて、走行用モータにおける位置偏差に基づいて異常を検出したときの結果を示している。位置偏差は、制御装置40に与えられる位置指令値とエンコーダ38で得たモータ36の実際の位置との偏差であって、制御部41から得ることができる。図8に示す結果は、速度の代わりに位置偏差が異常検出装置42のバンドパスフィルタ44に入力するようにしたこと以外は図6の場合と同様にして得られた結果である。位置偏差値は、制御装置40の内部で使用される単位によって示されている。図においては、バンドパスフィルタ処理後の位置偏差の値に関して代表的な点でのXY座標値(Xは時刻、Yは位置偏差)が示されている。図8に示した結果においても異常品においてRMS値に脈動が観察された。しかしながら正常品においてもSP値が大きい場合(例えばSP=100%)に、RMS値に脈動が観察され、このことから、位置偏差に基づいて異常の有無の判定を行おうとすると、速度に基づいて異常の有無の判定を行う場合に比べ、判定のための閾値の設定が難しくなり、誤判定のおそれが上昇するものと考えられる。以上の結果は走行駆動ユニットに関するものであるが、減速機に関しても、モータの速度値に対してハンドパスフィルタ処理を行うことにより、モータに対するトルク指令値あるいはモータでの位置偏差に対してバンドパスフィルタ処理を行う場合に比べ、異常をより正確に検出できるようになると考えられる。
【0042】
以上説明した実施形態では、伝動装置を駆動するモータの速度を求め、モータ速度値に対してバンドパスフィルタ処理を行うことにより、伝送装置における異常、例えば故障などを確実に検出できるようになる。さらに、RMS処理などを行うことにより、閾値を設定するだけで簡単に異常を検出できるようになる。加速度センサなどを用いて伝動装置における異常の検出することも可能であるが、本実施形態では、加速度センサなどを用いることなくモータのサーボ制御時に得られる値に基づいて異常の検出を行うので、加速度センサなどを設ける分のコストを削減することができる。本実施形態の異常検出装置42は、マイクロプロセッサが実行するソフトウェアによって実現できるので、同じくソフトウェアをマイクロプロセッサに実行させることによって実現される一般的なロボットコントローラ(すなわち制御装置40)との親和性が高く、ソフトウェアの改修だけで既存の制御装置40に容易に組み込むことができる。また、そのようなロボットコントローラ(制御装置40)では、エンコーダ38の出力信号からモータ36の速度を算出する機構やアルゴリズムが既に備えられていることが多く、そのような場合には、異常検出装置42において速度演算部43を別途設ける必要はなく、既存の機構あるいはアルゴリズムからモータ速度を取得するようにすることができる。
【0043】
以上の説明において、異常検出装置42では、速度値のバンドパスフィルタ処理を行った後に速度値のRMS(二乗平均平方根)値を求めて閾値を比較し、RMS値と閾値との大小関係で異常の有無を判定している。閾値との比較による異常の有無の判定だけであれば、RMS演算部45の平方根演算部45Cは必ずしも必要ではなく、積算部45Bの出力と閾値とを比較するような構成とすることもできる。この場合は、速度値の二乗平均と閾値とを比較していることになり、このとき用いる閾値は、RMS値用のものではなくて二乗平均値用のものとされる。すなわち異常検出装置42では、バンドパスフィルタ処理によって得られる信号から二乗平均または二乗平均平方根を求めて閾値と比較することにより、伝動装置での異常の発生の有無を判定することができる。
【符号の説明】
【0044】
10…ロボット;11A,11B…第1アーム;12A,12B…第2アーム;13A,13B…ハンド;21…レール;22…基台;23…回転台;24…昇降機構;24A…固定部;24B…移動部;25…カバー;26A,26B…アーム支持部;31…回転軸;32…共通軸;33A,33B…軸;34A,34B…手首軸;36…モータ;37エンコーダ;38…減速機;39…負荷;40…制御装置;41…制御部;42…異常検出装置;43…速度演算部;44…バンドパスフィルタ;44L…ローパスフィルタ;44H…ハイパスフィルタ;45…RMS演算部;45A…二乗演算部;45B…積算部;45C…平方根演算部;46…コンパレータ;47…警報処理部;50…ワーク。
図1
図2
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図4
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図7
図8