(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058167
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】三次元造形方法及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B22F 10/40 20210101AFI20230418BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20230418BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20230418BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20230418BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20230418BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20230418BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230418BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20230418BHJP
【FI】
B22F10/40
B22F3/105
B22F3/16
B22F10/28
B29C64/268
B29C64/153
B33Y10/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167977
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】静谷 健
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL43
4F213WL76
4F213WL78
4K018AA06
4K018AA08
4K018AA14
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】造形対象部の変形を抑制すると共に造形支持部を容易に除去することができる三次元造形方法及び三次元造形装置を提供する。
【解決手段】三次元造形方法は、粉末層5を形成する形成工程と、粉末層5の表面5aのうち、造形対象部41に対応する造形領域6及び造形対象部41を支持するための造形支持部42に対応する支持領域7に対してエネルギビームEを照射する造形工程と、を備えている。造形工程では、支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、第1方向に沿って延在し、且つエネルギビームEの幅よりも大きい幅を有している。造形工程では、造形支持部42のうち造形対象部41と接続する接続部分が造形対象部41と部分的に接続されるように、エネルギビームEを照射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末層を形成する形成工程と、
前記粉末層の表面のうち、造形物の造形対象部に対応する造形領域及び前記造形対象部を支持するために前記造形対象部と共に造形される造形支持部に対応する支持領域に対してエネルギビームを照射する造形工程と、を備え、
前記造形工程では、前記支持領域は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記表面に垂直な方向に対して交差する第1方向に沿って延在し、且つ前記エネルギビームの幅よりも大きい幅を有し、
前記造形工程では、前記造形支持部のうち前記造形対象部と接続する接続部分が前記造形対象部と部分的に接続されるように、前記エネルギビームを照射する、三次元造形方法。
【請求項2】
前記形成工程は、第1表面を有する第1粉末層を形成する第1形成工程と、第2表面を有する第2粉末層を前記第1表面上に形成する第2形成工程と、を含み、
前記造形工程は、前記第1表面のうち、前記造形対象部に対応する第1造形領域及び前記造形支持部に対応する第1支持領域に対して前記エネルギビームを照射する第1造形工程と、前記第2表面のうち、前記造形対象部に対応する第2造形領域に対して前記エネルギビームを照射する第2造形工程と、を含み、
前記第1造形工程では、前記第1支持領域は、前記第1表面に垂直な方向から見た場合に、前記第1方向において互いに離れた複数の分離領域によって構成され、
前記第2造形工程では、前記第2造形領域は、前記第2表面に垂直な方向から見た場合に、前記第1支持領域と重なるように連続的に延在している、請求項1に記載の三次元造形方法。
【請求項3】
前記形成工程は、第3表面を有する第3粉末層を形成する第3形成工程と、第4表面を有する第4粉末層を前記第3表面上に形成する第4形成工程と、を含み、
前記造形工程は、前記第3表面のうち、前記造形対象部に対応する第3造形領域及び前記造形支持部に対応する第3支持領域に対して前記エネルギビームを照射する第3造形工程と、前記第4表面のうち、前記造形対象部に対応する第4造形領域及び前記造形支持部に対応する第4支持領域に対して前記エネルギビームを照射する第4造形工程と、を含み、
前記第3造形工程では、前記第3支持領域は、前記第3表面に垂直な方向から見た場合に、前記第3造形領域と連通しており、
前記第4造形工程では、前記第4支持領域は、前記第4表面に垂直な方向から見た場合に、前記第4造形領域から離れている、請求項1又は2に記載の三次元造形方法。
【請求項4】
前記造形工程では、前記支持領域は、複数の支持領域のそれぞれであり、
前記造形工程では、前記複数の支持領域のそれぞれは、前記粉末層の前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記第1方向に交差する第2方向において互いに離れている、請求項1~3のいずれか一項に記載の三次元造形方法。
【請求項5】
テーブルの主面上に粉末を供給することで、粉末層を形成する供給ユニットと、
前記粉末層の表面に対してエネルギビームを照射する照射ユニットと、
前記供給ユニットによる前記粉末の供給及び前記照射ユニットによる前記エネルギビームの照射を制御する制御ユニットと、を備え、
前記制御ユニットは、前記表面において、造形物の造形対象部に対応する造形領域を設定すると共に、前記造形対象部を支持するために前記造形対象部と共に造形される造形支持部に対応する支持領域を設定し、
前記制御ユニットは、前記造形支持部のうち前記造形対象部と接続する接続部分が前記造形対象部と部分的に接続されるように、前記供給ユニットによる前記粉末の供給、並びに前記造形領域及び前記支持領域に対する前記エネルギビームの照射を実行し、
前記支持領域は、前記表面に垂直な方向から見た場合に、前記表面に垂直な方向に対して交差する第1方向に沿って延在し、且つ前記エネルギビームの幅よりも大きい幅を有している、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形方法及び三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
造形物を造形する三次元造形方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような三次元造形方法では、オーバーハング部を含む造形対象部、及び造形対象部を支持するための造形支持部を造形している。造形対象部及び造形支持部の造形が終了した後、造形対象部から造形支持部が除去されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような三次元造形方法では、造形支持部を除去しやすくするためには、造形支持部の厚さを小さくすることが考えられる。しかし、造形支持部の厚さが小さくなると、造形支持部による造形対象部の支持が不十分となる結果、造形対象部の変形が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、造形対象部の変形を抑制すると共に造形支持部を容易に除去することができる三次元造形方法及び三次元造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三次元造形方法は、粉末層を形成する形成工程と、粉末層の表面のうち、造形物の造形対象部に対応する造形領域及び造形対象部を支持するために造形対象部と共に造形される造形支持部に対応する支持領域に対してエネルギビームを照射する造形工程と、を備え、造形工程では、支持領域は、表面に垂直な方向から見た場合に、前記表面に垂直な方向に対して交差する第1方向に沿って延在し、且つエネルギビームの幅よりも大きい幅を有し、造形工程では、造形支持部のうち造形対象部と接続する接続部分が造形対象部と部分的に接続されるように、エネルギビームを照射する。
【0007】
この三次元造形方法では、造形工程では、粉末層の表面に垂直な方向から見た場合に、第1方向に沿って延在し且つエネルギビームの幅よりも大きい幅を有する支持領域に対してエネルギビームを照射している。これにより、板状を呈し且つエネルギビームの幅よりも大きい厚さを有する造形支持部を造形することができる。そのため、造形対象部を確実に支持することができ、造形対象部の変形を抑制することができる。しかも、造形工程では、造形支持部のうち造形対象部と接続する接続部分が造形対象部と部分的に接続されるように、エネルギビームを照射している。これにより、造形支持部の接続部分が造形対象部と部分的に接続されるため、造形対象部から造形支持部を容易に除去することができる。以上により、この三次元造形方法によれば、造形対象部の変形を抑制すると共に造形支持部を容易に除去することができる。
【0008】
形成工程は、第1表面を有する第1粉末層を形成する第1形成工程と、第2表面を有する第2粉末層を第1表面上に形成する第2形成工程と、を含み、造形工程は、第1表面のうち、造形対象部に対応する第1造形領域及び造形支持部に対応する第1支持領域に対してエネルギビームを照射する第1造形工程と、第2表面のうち、造形対象部に対応する第2造形領域に対してエネルギビームを照射する第2造形工程と、を含み、第1造形工程では、第1支持領域は、第1表面に垂直な方向から見た場合に、第1方向において互いに離れた複数の分離領域によって構成され、第2造形工程では、第2造形領域は、第2表面に垂直な方向から見た場合に、第1支持領域と重なるように連続的に延在していてもよい。この場合、第1造形工程では、第1表面に垂直な方向から見た場合に、第1方向において互いに離れた複数の分離領域によって構成された第1支持領域に対してエネルギビームを照射している。これにより、互いに離れた複数の分離領域のそれぞれに対応する複数の造形支持部分を造形することができる。また、第2造形工程では、第2表面に垂直な方向から見た場合に、第1支持領域と重なるように連続的に延在している第2造形領域に対してエネルギビームを照射している。これにより、互いに離れた複数の造形支持部分の上に造形対象部を造形することができる。したがって、造形支持部の接続部分を造形対象部に部分的に接続させることができる。よって、造形対象部から造形支持部を容易に除去することができる。
【0009】
形成工程は、第3表面を有する第3粉末層を形成する第3形成工程と、第4表面を有する第4粉末層を第3表面上に形成する第4形成工程と、を含み、造形工程は、第3表面のうち、造形対象部に対応する第3造形領域及び造形支持部に対応する第3支持領域に対してエネルギビームを照射する第3造形工程と、第4表面のうち、造形対象部に対応する第4造形領域及び造形支持部に対応する第4支持領域に対してエネルギビームを照射する第4造形工程と、を含み、第3造形工程では、第3支持領域は、第3表面に垂直な方向から見た場合に、第3造形領域と連通しており、第4造形工程では、第4支持領域は、第4表面に垂直な方向から見た場合に、第4造形領域から離れていてもよい。この場合、造形支持部の接続部分を造形対象部に部分的に接続させることができる。これにより、造形対象部から造形支持部を容易に除去することができる。
【0010】
造形工程では、支持領域は、複数の支持領域のそれぞれであり、造形工程では、複数の支持領域のそれぞれは、粉末層の表面に垂直な方向から見た場合に、第1方向に交差する第2方向において互いに離れていてもよい。この場合、複数の造形支持部を造形することができる。これにより、造形対象部をより確実に支持することができ、造形対象部の変形をより確実に抑制することができる。また、第1方向に沿って延在する板状を呈し且つ第1方向に交差する第2方向において互いに離れている複数の造形支持部を造形することができる。そのため、複数の造形支持部の間に存在する粉末を容易に除去することができる。
【0011】
本発明の三次元造形装置は、テーブルの主面上に粉末を供給することで、粉末層を形成する供給ユニットと、粉末層の表面に対してエネルギビームを照射する照射ユニットと、供給ユニットによる粉末の供給及び照射ユニットによるエネルギビームの照射を制御する制御ユニットと、を備え、制御ユニットは、表面において、造形物の造形対象部に対応する造形領域を設定すると共に、造形対象部を支持するために造形対象部と共に造形される造形支持部に対応する支持領域を設定し、制御ユニットは、造形支持部のうち造形対象部と接続する接続部分が造形対象部と部分的に接続されるように、供給ユニットによる粉末の供給、並びに造形領域及び支持領域に対するエネルギビームの照射を実行し、支持領域は、表面に垂直な方向から見た場合に、表面に垂直な方向に対して交差する第1方向に沿って延在し、且つエネルギビームの幅よりも大きい幅を有している。
【0012】
この三次元造形装置では、制御ユニットは、粉末層の表面に垂直な方向から見た場合に、第1方向に延在し且つエネルギビームの幅よりも大きい幅を有する支持領域に対してエネルギビームの照射を実行している。これにより、板状を呈し且つエネルギビームの幅よりも大きい厚さを有する造形支持部を造形することができる。そのため、造形対象部を確実に支持することができ、造形対象部の変形を抑制することができる。しかも、制御ユニットは、造形支持部のうち造形対象部と接続する接続部分が造形対象部と部分的に接続されるように、供給ユニットによる粉末の供給、並びに造形領域及び支持領域に対するエネルギビームの照射を実行している。これにより、造形支持部の接続部分が造形対象部と部分的に接続されるため、造形対象部から造形支持部を容易に除去することができる。以上により、この三次元造形装置によれば、造形対象部の変形を抑制すると共に造形支持部を容易に除去することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、造形対象部の変形を抑制すると共に造形支持部を容易に除去することができる三次元造形方法及び三次元造形装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態に係る三次元造形装置の概略図である。
【
図2】
図1に示される三次元造形装置によって造形された造形物の断面斜視図である。
【
図3】
図1に示される三次元造形装置によって造形された造形物の断面斜視図である。
【
図4】
図1に示される三次元造形装置によって造形された造形物の断面図である。
【
図7】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図8】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図9】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図10】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図11】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図12】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図13】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図14】
図1に示される三次元造形装置を用いた三次元造形を示す図である。
【
図15】一実施形態に係る三次元製造方法のフロー図である。
【
図16】一実施形態に係る三次元製造方法のフロー図である。
【
図17】一実施形態に係る三次元製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるように、本実施形態に係る三次元造形装置(以下、「造形装置」という)1は、造形ユニット10と、照射ユニット20と、制御ユニット30と、を備えている。造形装置1は、いわゆる3Dプリンタである。造形ユニット10は、チャンバ11と、造形タンク12と、テーブル13と、昇降ステージ14と、昇降機15と、ホッパ16と、リコータ(供給ユニット)17と、を有している。
【0017】
チャンバ11は、造形空間Sを形成している。造形空間Sには、造形タンク12、テーブル13、昇降ステージ14、昇降機15、ホッパ16及びリコータ17が収容されている。造形空間Sは、減圧可能な気密空間である。造形空間Sは、造形処理中においては真空状態にある。造形タンク12は、例えば円筒状を呈している。造形タンク12の中心軸は、Z軸方向に沿って延びている。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向である。
【0018】
テーブル13は、例えば円板状を呈している。テーブル13の中心軸は、造形タンク12の中心軸と略一致している。テーブル13の直径は、造形タンク12の内径よりも小さい。テーブル13は、造形タンク12の内側において、Z軸方向に沿って移動可能である。テーブル13は、Z軸方向に垂直な主面13aを有している。テーブル13は、後述する粉末P及び造形物4を支持する。
【0019】
昇降ステージ14は、テーブル13の主面13aとは反対側においてテーブル13を支持している。昇降ステージ14は、造形タンク12の内側に配置されている。昇降ステージ14は、例えば円板状を呈している。昇降ステージ14は、Z軸方向に沿って移動可能である。昇降ステージ14がZ軸方向に沿って移動すると、テーブル13も昇降ステージ14の従って移動する。
【0020】
昇降ステージ14の直径は、造形タンク12の内径よりも僅かに小さい。昇降ステージ14は、造形タンク12の内壁面と接触している。これにより、粉末Pが昇降ステージ14の下方へ漏れることが抑制される。また、昇降ステージ14の外縁部には例えばシール材が設けられていてもよい。これにより、粉末Pが昇降ステージ35の下方へ漏れることがより確実に抑制される。
【0021】
昇降機15は、昇降ステージ14を移動させる駆動機構である。昇降機15は、造形タンク12の内側に配置されている。昇降機15は、制御ユニット30と通信可能である。昇降機15は、制御ユニット30からの制御信号に基づいて動作する。
【0022】
造形ユニット10は、複数のホッパ16を備えている。本実施形態では、造形ユニット10は、2つのホッパ16を備えている。ホッパ16は、テーブル13に対して昇降ステージ14とは反対側に配置されている。ホッパ16は、造形タンク12よりも上方に配置されている。ホッパ16には、粉末Pが収容されている。ホッパ16は、粉末Pを排出させるための排出口16aを有している。
【0023】
粉末Pは、後述するエネルギビームEの照射によって溶融する。粉末Pの材料は、金属である。粉末Pは、例えば、チタン系金属粉末、インコネル粉末又はアルミニウム粉末等である。粉末Pの材料は、金属に限定されない。粉末Pは、例えば、炭素繊維及び樹脂を含む粉末等であってもよい。粉末Pは、例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)等であってもよい。
【0024】
リコータ17は、粉末Pによって構成された粉末層を形成する。具体的には、リコータ17は、例えば棒状又は板状を呈している。リコータ17は、テーブル13の主面13a上においてZ軸方向に垂直な方向(水平方向)に沿って移動可能である。本実施形態では、リコータ17は、X軸方向に沿って移動する。リコータ17は、テーブル13を跨って往復移動可能である。
【0025】
リコータ17は、主面13a上において往復移動することで、ホッパ16の排出口16aから放出された粉末Pを主面13a上に供給する。リコータ17は、粉末層の表面を均す。リコータ17は、アクチュエータ等の駆動機構よって駆動される。当該駆動機構は、制御ユニット30と通信可能である。当該駆動機構は、制御ユニット30からの制御信号に基づいて動作する。
【0026】
照射ユニット20は、主面13a上に形成された粉末層の表面に対してエネルギビームEを照射する。エネルギビームEは、例えば電子ビーム等である。電子ビームは、荷電粒子である電子の直線的な運動により形成される荷電粒子ビームである。照射ユニット20は、粉末層の表面に対してエネルギビームEを照射することで、粉末層の予備加熱を行った後、粉末層を溶融させる。
【0027】
照射ユニット20は、電子銃21と、収差コイル22と、フォーカスコイル23と、偏向コイル24と、コラム26と、を有している。電子銃21は、制御ユニット30と通信可能である。電子銃21は、制御ユニット30からの制御信号に基づいて、テーブル13に向けてエネルギビームEを出射する。
【0028】
収差コイル22は、電子銃21から出射されるエネルギビームEの周囲に設けられている。収差コイル22は、制御ユニット30と通信可能である。収差コイル22は、制御ユニット30からの制御信号に基づいて、エネルギビームEの収差を補正する。なお、照射ユニット20は、収差コイル22を有していなくてもよい。
【0029】
フォーカスコイル23は、電子銃21から出射されるエネルギビームEの周囲に設けられている。フォーカスコイル23は、制御ユニット30と通信可能である。フォーカスコイル23は、制御ユニット30からの制御信号に基づいて、エネルギビームEを収束させる。これにより、フォーカスコイル23は、エネルギビームEの照射位置におけるフォーカス状態を調整する。
【0030】
偏向コイル24は、電子銃21から出射されるエネルギビームEの周囲に設けられている。偏向コイル24は、制御ユニット30と通信可能である。偏向コイル24は、制御ユニット30からの制御信号に基づいて、エネルギビームEの照射位置を調整する。偏向コイル24は、電磁的なビーム偏向を行う。これにより、機械的なビーム偏向に比べ、エネルギビームEの走査速度を高めることができる。
【0031】
コラム26は、例えば筒状を呈している。コラム26は、造形ユニット10のチャンバ11に連結されている。コラム26の内部空間は、チャンバ11の造形空間Sと連通している。コラム26は、電子銃21、収差コイル22、フォーカスコイル23及び偏向コイル24を収容している。
【0032】
制御ユニット30は、造形装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。制御ユニット30は、例えばCPU、ROM、RAM等を有している。制御ユニット30は、リコータ17による粉末Pの供給、及び、照射ユニット20によるエネルギビームEの照射を制御する。具体的には、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、テーブル13の主面13a上に粉末層を形成させる。制御ユニット30は、電子銃21を制御することで、粉末層の表面に対してエネルギビームEを出射させる。制御ユニット30は、偏向コイル24を制御することで、エネルギビームEの照射位置を調整させる。制御ユニット30は、偏向コイル24を制御することで、エネルギビームEを走査させる。粉末層の表面の所定の領域にエネルギビームEが照射されると、粉末Pは溶融する。溶融した粉末Pが凝固すると造形物の一部が形成される。
【0033】
制御ユニット30は、昇降機15を制御することで、テーブル13を下降させる。制御ユニット30は、再びリコータ17を制御することで、エネルギビームEが照射された粉末層上に新たな粉末層を形成させる。制御ユニット30は、再び電子銃21を制御することで、新たな粉末層の表面に対してエネルギビームEを出射させる。制御ユニット30は、再び偏向コイル24を制御することで、エネルギビームEの照射位置を調整させる。制御ユニット30は、偏向コイル24を制御することで、エネルギビームEを走査させる。新たな粉末層の表面の所定の領域にエネルギビームEが照射されると、粉末Pは溶融する。溶融した粉末Pが凝固すると造形物の一部が形成される。制御ユニット30は、このような制御を繰り返し実行することで、造形物を造形する。
【0034】
制御ユニット30は、造形物の三次元CAD(Computer-Aided Design)データに基づいて、造形物を造形する。造形物の三次元CADデータは、制御ユニット30に予め入力される。制御ユニット30は、三次元CADデータに基づいて複数の二次元スライスデータを生成する。三次元CADデータは、複数の二次元スライスデータの集合体である。二次元スライスデータは、造形物の水平断面(本実施形態では、XY面)に対応するデータである。制御ユニット30は、二次元スライスデータに基づいて、エネルギビームEの照射領域を設定する。
【0035】
次に、本実施形態に係る造形物について説明する。
図2及び
図3に示されるように、造形物4は、造形対象部41と、複数の造形支持部42と、を含んでいる。造形対象部41は、本体部43と、突出部44と、を含んでいる。本体部43は、例えば円筒状を呈している。本体部43の中心軸は、Z軸方向に沿って延びている。
【0036】
突出部44は、いわゆるオーバーハング部である。突出部44は、Z軸方向における本体部43の一端に位置している。突出部44は、本体部43の上端に位置している。突出部44は、例えば板状を呈している。突出部44は、Z軸方向に垂直な面内において延在している。突出部44は、Z軸方向から見た場合に、例えば円環状を呈している。突出部44の中心軸は、本体部43の中心軸と略一致している。Z軸方向から見た場合に、突出部44の内縁は、本体部43の内縁と一致している。Z軸方向から見た場合に、突出部44の外縁は、本体部43の外縁よりも外側に位置している。つまり、突出部44は、本体部43の外側面43aから突出している。突出部44の厚さは、本体部43の厚さと略同じである。
【0037】
造形支持部42は、いわゆるサポートである。造形支持部42は、板状を呈している。造形支持部42は、Z軸方向から見た場合に、本体部43の径方向に沿って延在している。本実施形態では、造形支持部42は、直線状に延在している。複数の造形支持部42は、Z軸方向から見た場合に、本体部43の周方向において並んでいる。各造形支持部42は、Z軸方向から見た場合に、本体部43の周方向において互いに離れている。複数の造形支持部42は、Z軸方向から見た場合に、放射状を呈している。造形支持部42は、造形支持部42の厚さ方向から見た場合に、例えば三角形状の外形を有している。
【0038】
造形支持部42の厚さは、エネルギビームEの幅よりも大きい。造形支持部42の厚さは、エネルギビームEの幅の1.5倍よりも大きい。造形支持部42の厚さは、エネルギビームEの幅の2倍よりも大きい。造形支持部42の厚さは、エネルギビームEの幅の3倍よりも大きい。造形支持部42の厚さは、エネルギビームEの幅の5倍~10倍程度である。本実施形態では、造形支持部42の厚さは、エネルギビームEの幅の約5倍程度である。
【0039】
造形支持部42は、本体部43及び突出部44に接続されている。具体的には、
図4に示されるように、造形支持部42の第1辺部42aは、本体部43の外側面43aに接続されている。第1辺部42aは、造形支持部42のうち、本体部43と接続する接続部分である。造形支持部42の第2辺部42bは、突出部44の表面44aに接続されている。第2辺部42bは、造形支持部42のうち、突出部44と接続する接続部分である。造形支持部42の第3辺部42cは、露出している。つまり、第3辺部42cは、本体部43及び突出部44のいずれにも接続されていない。本体部43及び突出部44は、複数の造形支持部42によって支持されている。第3辺部42cと本体部43の外側面43aとが成す角度は、造形支持部42のみで本体部43及び突出部44を支持することができる程度に設定されてもよい。つまり、第3辺部42cと外側面43aとが成す角度は、造形支持部42を支持するための新たな造形支持部を要しないように設定されてもよい。
【0040】
図5に示されるように、第1辺部42aは、本体部43と部分的に接続されている。換言すると、第1辺部42aは、本体部43と接続されている部分と、本体部43から離れている部分と、を含んでいる。具体的には、第1辺部42aは、波状を呈している。第1辺部42aは、Z軸方向において並んでいる複数の凸部45を含んでいる。各凸部45の間には、隙間46が形成されている。凸部45は、造形支持部42の厚さ方向から見た場合に、例えば三角形状を呈している。凸部45の頂部45aは、本体部43の外側面43aと接続されている。つまり、凸部45は、外側面43aと線接触している。第1辺部42aは、隙間46においては、外側面43aから離れている。
【0041】
図6に示されるように、第2辺部42bは、突出部44と部分的に接続されている。換言すると、第2辺部42bは、突出部44と接続されている部分と、突出部44から離れている部分と、を含んでいる。具体的には、第2辺部42bは、波状を呈している。第2辺部42bは、X軸方向において並んでいる複数の凸部47を含んでいる。各凸部47の間には、隙間48が形成されている。凸部47は、造形支持部42の厚さ方向から見た場合に、例えば三角形状を呈している。凸部47の頂部47aは、突出部44の表面44aと接続されている。つまり、凸部47は、表面44aと線接触している。第2辺部42bは、隙間48においては、表面44aから離れている。
【0042】
図4に示されるように、造形支持部42には、貫通孔49が形成されている。貫通孔49は、第1辺部42aの一部に至っている。つまり、造形支持部42は、貫通孔49が形成されている領域においては、本体部43と接続されていない。造形支持部42は、貫通孔49が形成されている領域においては、本体部43から離れている。これにより、例えば、比較例として造形支持部の第1辺部の全体が本体部43と接続されている場合に比べ、造形支持部42を容易に除去することができる。
【0043】
貫通孔49は、造形支持部42の厚さ方向から見た場合に、例えば三角形状を呈している。貫通孔49の第1辺は、造形支持部42の第1辺部42aと平行である。貫通孔49の第2辺は、造形支持部42の第2辺部42bにおける本体部43側の端部に至っている。貫通孔49の第3辺は、造形支持部42の第3辺部42cと平行である。貫通孔49の形状及び位置は、限定されない。貫通孔49の形状及び位置は、造形物4の形状又は材料等に基づいて、定められてもよい。なお、造形支持部42には、貫通孔49とは異なるその他の貫通孔が形成されていてもよい。これらの貫通孔は、造形支持部42のいずれの辺部にも至っていなくてもよい。造形支持部42に貫通孔を形成することで、造形支持部42を造形するための粉末Pの量を削減することができる。
【0044】
次に、造形装置1を用いた造形物4の造形について説明する。
図7に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、テーブル13の主面13a上に粉末層5を形成させる。制御ユニット30は、粉末層5の表面5aにおいて、造形領域6を設定する。造形領域6は、本体部43に対応する領域である。造形領域6は、円環状を呈している。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、造形領域6に対してエネルギビームEの照射を実行する。これにより、造形領域6における粉末Pが溶融した後に固化した結果、本体部43の一部が造形される。
【0045】
制御ユニット30は、昇降機15を制御することで、テーブル13を下降させる。
図8に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、テーブル13の主面13a上に、新たな粉末層5を形成させる。「テーブルの主面上に粉末層を形成する」は、主面に粉末層を形成する態様、及び、主面の上方に粉末層を形成する態様を含む。例えば、粉末層5を主面13aに直接形成する場合、及び、新たな粉末層5を主面13aに形成された粉末層5の表面5aに直接形成する場合のいずれも、テーブル13の主面13a上に粉末層5を形成するといえる。
【0046】
制御ユニット30は、新たな粉末層5の表面5aにおいて、新たな造形領域6及び複数の支持領域7を設定する。造形領域6は、例えば円環状を呈している。支持領域7は、造形支持部42に対応する領域である。造形支持部42は、造形物4の造形工程において造形対象部41を支持する。
【0047】
支持領域7は、Z軸方向(表面5aに垂直な方向)から見た場合に、第1方向(本実施形態では、造形領域6の径方向)に沿って延在している。本実施形態では、支持領域7は、直線状に延在している。複数の支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、第1方向に交差する第2方向(本実施形態では、造形領域6の周方向)において並んでいる。各支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、第2方向において互いに離れている。複数の支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、放射状を呈している。
【0048】
支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、エネルギビームEの幅よりも大きい幅を有している。支持領域7の幅は、エネルギビームEの幅の1.5倍よりも大きい。支持領域7の幅は、エネルギビームEの幅の2倍よりも大きい。支持領域7の幅は、エネルギビームEの幅の3倍よりも大きい。支持領域7の幅は、エネルギビームEの幅の5倍~10倍程度である。本実施形態では、支持領域7の幅は、エネルギビームEの幅の約5倍程度である。
【0049】
制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、新たな造形領域6及び支持領域7に対してエネルギビームEの照射を実行する。これにより、造形領域6及び支持領域7における粉末Pが溶融した後に固化した結果、本体部43の一部及び造形支持部42の一部が造形される。
【0050】
制御ユニット30は、昇降機15を制御することで、テーブル13を下降させる。
図9に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、テーブル13の主面13a上に、新たな粉末層5を形成させる。制御ユニット30は、新たな粉末層5の表面5aにおいて、突出部44に対応する新たな造形領域6を設定する。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、新たな造形領域6に対してエネルギビームEの照射を実行する。これにより、新たな造形領域6における粉末Pが溶融した後に固化した結果、突出部44の一部が造形される。制御ユニット30は、上述したような制御を繰り返し実行することで、造形物4を造形する。
【0051】
制御ユニット30は、造形支持部42のうち造形対象部41と接続する接続部分(第1辺部42a又は第2辺部42b)が造形対象部41と部分的に接続されるように、リコータ17による粉末Pの供給、並びに造形領域6及び支持領域7に対するエネルギビームEの照射を実行する。具体的には、制御ユニット30は、複数の凸部45及び複数の凸部47を造形する。
【0052】
凸部45の造形について説明する。
図10に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、主面13a上に粉末層(第3粉末層)51を形成させる。その後、制御ユニット30は、粉末層51の表面(第3表面)51aにおいて、造形領域(第3造形領域)61及び複数の支持領域(第3支持領域)71を設定する。支持領域71は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61と連通している。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、造形領域61及び支持領域71に対してエネルギビームEの照射を実行する。支持領域71における造形領域61と連通している部分が、凸部45の頂部45aに対応する。
【0053】
図11に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、粉末層51の表面51a(主面13a上)に粉末層(第4粉末層)52を形成させる。その後、制御ユニット30は、粉末層52の表面(第4表面)52aにおいて、造形領域(第4造形領域)62及び複数の支持領域(第4支持領域)72を設定する。造形領域62は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61と重なっている。支持領域72は、Z軸方向から見た場合に、支持領域71と重なっている。支持領域72は、Z軸方向から見た場合に、造形領域62から離れている。つまり、支持領域72は、造形領域62と連通していない。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、造形領域62及び支持領域72に対してエネルギビームEの照射を実行する。支持領域72と造形領域62との間の領域が、各凸部45の間の隙間46に対応する。
【0054】
図12に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、粉末層52の表面52a(主面13a上)に粉末層53を形成させる。その後、制御ユニット30は、粉末層53の表面53aにおいて、造形領域63及び複数の支持領域73を設定する。造形領域63は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61,62と重なっている。支持領域73は、Z軸方向から見た場合に、支持領域71,72と重なっている。支持領域73は、Z軸方向から見た場合に、造形領域63と連通している。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、造形領域63及び支持領域73に対してエネルギビームEの照射を実行する。支持領域73における造形領域63と連通している部分が、凸部45の頂部45aに対応する。制御ユニット30は、このような制御を繰り返し実行することで、複数の凸部45を造形し、これにより、造形支持部42を本体部43に部分的に接続させている。
【0055】
凸部47の造形について説明する。
図13に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、主面13a上に粉末層(第1粉末層)54を形成させる。その後、制御ユニット30は、粉末層54の表面(第1表面)54aにおいて、造形領域(第1造形領域)64及び複数の支持領域(第1支持領域)74を設定する。造形領域64は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61,62,63と重なっている。支持領域74は、Z軸方向から見た場合に、支持領域71,72,73と重なっている。
【0056】
支持領域74は、Z軸方向から見た場合に、第1方向において互いに離れた複数の分離領域74aによって構成されている。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、造形領域64及び支持領域74(複数の分離領域74a)に対してエネルギビームEの照射を実行する。分離領域74aが凸部47に対応し、各分離領域74aの間の部分が隙間48に対応する。制御ユニット30は、凸部47の頂部47a(
図14参照)が現れるまで、このような制御を繰り返し実行することで、複数の凸部47を造形する。
【0057】
図14に示されるように、制御ユニット30は、リコータ17の移動を制御することで、粉末層54の表面54a(主面13a上)に粉末層(第2粉末層)55を形成させる。その後、制御ユニット30は、粉末層55の表面(第2表面)55aにおいて、造形領域(第2造形領域)65を設定する。造形領域65は、突出部44に対応する領域である。造形領域65は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61,62,63,64及び支持領域71,72,73,74と重なるように連続的に延在している。「連続的に延在している」とは、途切れることなく繋がっていることをいう。本実施形態では、造形領域65は、Z軸方向から見た場合に、互いに離れている各分離領域74aを含むように広がっている。造形領域65は、Z軸方向から見た場合に、各分離領域74aの間と重なっている。造形領域65は、Z軸方向から見た場合に、円環状を呈している。造形領域65の中心は、造形領域64の中心と略一致している。
【0058】
Z軸方向から見た場合に、造形領域65の内縁は、造形領域64の内縁と一致している。Z軸方向から見た場合に、造形領域65の外縁は、造形領域64の外縁よりも外側に位置している。つまり、造形領域65は、造形領域64の外縁から突出している。制御ユニット30は、照射ユニット20を制御することで、造形領域65に対してエネルギビームEの照射を実行する。制御ユニット30は、このような制御を実行することで、複数の凸部47を突出部44に接続させ、これにより、造形支持部42を突出部44に部分的に接続させている。
【0059】
以上説明したように、造形装置1では、制御ユニット30は、Z軸方向から見た場合に、第1方向に延在し且つエネルギビームEの幅よりも大きい幅を有する支持領域7に対してエネルギビームEの照射を実行している。これにより、板状を呈し且つエネルギビームEの幅よりも大きい厚さを有する造形支持部42を造形することができる。そのため、造形対象部41を確実に支持することができ、造形対象部41の変形を抑制することができる。しかも、制御ユニット30は、造形支持部42のうち造形対象部41と接続する接続部分が造形対象部41と部分的に接続されるように、リコータ17による粉末Pの供給、並びに造形領域6及び支持領域7に対するエネルギビームEの照射を実行している。これにより、造形支持部42の接続部分が造形対象部41と部分的に接続されるため、造形対象部41から造形支持部42を容易に除去することができる。以上により、造形装置1によれば、造形対象部41の変形を抑制すると共に造形支持部42を容易に除去することができる。
【0060】
造形物4の造形工程において、粉末Pの溶融及び固化が繰り返されると、造形物4に残留応力が生じる結果、造形物4が変形してしまう場合がある。本実施形態では、例えば、突出部44がZ軸方向において本体部43とは反対側に向かって反ってしまう場合がある。本実施形態では、複数の造形支持部42が本体部43及び突出部44に接続されているため、突出部44の反りを抑制することができる。しかも、造形支持部42が板状を呈しているため、例えば造形支持部がワイヤ状を呈している場合に比べ、突出部44の反りをより確実に抑制することができる。具体的には、突出部44の外縁部の反りが突出部44の内縁部の反りよりも大きくなる傾向にある。すなわち、突出部44は、本体部43から離れるに従って反りが大きくなる傾向にある。このような本体部43及び突出部44が、互いに独立した複数のワイヤ状の造形支持部によって支持されている場合には、突出部44の外縁部を支持する造形支持部が先に破損してしまうおそれがある。本実施形態では、造形支持部42が、本体部43の径方向に沿って延在する板状を呈しているため、突出部44の外縁部が造形支持部42の全体によって支持されている。したがって、造形支持部42が破損し難くなり、その結果、突出部44の反りが確実に抑制される。
【0061】
また、突出部44が反ってしまうと、リコータ17が突出部44に接触した結果、リコータ17が部分的に欠損する場合がある。換言すると、リコータ17が突出部44によって部分的に削られる場合がある。そのため、粉末層5の表面5aが不均一となる結果、造形装置1の稼働が停止するおそれがある。本実施形態では、上述したように、突出部44の反りが確実に抑制されているため、リコータ17の部分的な欠損が抑制され、造形装置1の稼働の停止が抑制される。
【0062】
また、造形対象部から造形支持部を除去しやすくするためには、造形支持部の厚さ(幅)を最小限に設定することが考えられる。その場合、造形支持部の厚さを例えばエネルギビームの幅と同程度に設定することが考えられる。しかし、造形支持部の厚さが小さくなると、造形物の変形を抑制することが困難となるおそれがある。つまり、造形物の変形の抑制及び造形支持部の除去の両立が困難となるおそれがある。本実施形態では、造形支持部42の厚さをエネルギビームEの幅よりも大きくすることで、造形物4の変形を確実に抑制しつつ、造形支持部42を造形対象部41に部分的に接続させることで、造形支持部42の除去を容易にしている。つまり、本実施形態では、造形物4の変形の抑制及び造形支持部42の除去の両立を実現した。
【0063】
次に、本実施形態に係る三次元造形方法(以下、「造形方法」という)について説明する。
図15に示されるように、まず、テーブル13の主面13a上に粉末層5が形成される(ステップS10)。続いて、粉末層5の表面5aにおいて、造形領域6が設定される(ステップS20)。続いて、粉末層5の表面5aのうち、造形領域6に対してエネルギビームEが照射される(ステップS30)。これにより、造形領域6における粉末Pが溶融した後固化する結果、本体部43の一部が造形される。
【0064】
続いて、テーブル13の主面13a上に新たな粉末層5が形成される(形成工程、ステップS40)。続いて、新たな粉末層5の表面5aにおいて、新たな造形領域6及び複数の支持領域7が設定される(設定工程、ステップS50)。支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、第1方向に沿って延在している。支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、エネルギビームEの幅よりも大きい幅を有している。複数の支持領域7は、Z軸方向から見た場合に、第2方向において互いに離れている。続いて、新たな粉末層5の表面5aのうち、造形領域6及び支持領域7に対してエネルギビームEが照射される(造形工程、ステップS60)。これにより、造形領域6及び支持領域7における粉末Pが溶融した後固化する結果、本体部43の一部及び造形支持部42の一部が造形される。
【0065】
続いて、粉末層5の表面5a上に、新たな粉末層5が形成される(ステップS70)。続いて、新たな粉末層5の表面5aにおいて、新たな造形領域6が設定される(ステップS80)。続いて、新たな造形領域6に対してエネルギビームEが照射される(ステップS90)。これにより、新たな造形領域6における粉末Pが溶融した後固化する結果、突出部44の一部が造形される。本実施形態の造形方法では、このような工程が繰り返されることで、造形物4が造形される。
【0066】
造形工程では、造形支持部42のうち造形対象部41と接続する接続部分(第1辺部42a又は第2辺部42b)が造形対象部41と部分的に接続されるように、エネルギビームEが照射される。具体的には、造形工程では、複数の凸部45及び複数の凸部47が造形される。
【0067】
凸部45の造形について説明する。
図16に示されるように、まず、粉末層(第3粉末層)51が形成される(第3形成工程、ステップS41)。続いて、粉末層51の表面(第3表面)51aにおいて、造形領域(第3造形領域)61及び複数の支持領域(第3支持領域)71が設定される(第3設定工程、ステップS51)。支持領域71は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61と連通している。続いて、表面51aのうち、造形領域61及び支持領域71に対してエネルギビームEが照射される(第3造形工程、ステップS61)。
【0068】
続いて、粉末層51の表面51a上に粉末層(第4粉末層)52が形成される(第4形成工程、ステップS42)。続いて、粉末層52の表面(第4表面)52aにおいて、造形領域(第4造形領域)62及び複数の支持領域(第4支持領域)72が設定される(第4設定工程、ステップS52)。支持領域72は、Z軸方向から見た場合に、造形領域62から離れている。つまり、支持領域72は、造形領域62と連通していない。続いて、表面52aのうち、造形領域62及び支持領域72に対してエネルギビームEが照射される(第4造形工程、ステップS62)。
【0069】
続いて、粉末層52の表面52a上に粉末層53が形成される(ステップS43)。続いて、粉末層53の表面53aにおいて、造形領域63及び複数の支持領域73が設定される(ステップS53)。支持領域73は、Z軸方向から見た場合に、造形領域63と連通している。続いて、粉末層53の表面53aのうち、造形領域63及び支持領域73に対してエネルギビームEが照射される(ステップS63)。本実施形態の造形方法では、このような工程が繰り返されることで、複数の凸部45が造形される。これにより、造形支持部42が本体部43に部分的に接続される。形成工程は、複数の第3形成工程と、複数の第4形成工程と、を含んでおり、設定工程は、複数の第3設定工程と、複数の第4設定工程と、を含んでおり、造形工程は、複数の第3造形工程と、複数の第4造形工程と、を含んでいる。
【0070】
凸部47の造形について説明する。
図17に示されるように、まず、粉末層(第1粉末層)54が形成される(第1形成工程、ステップS44)。続いて、粉末層54の表面(第1表面)54aにおいて、造形領域(第1造形領域)64及び複数の支持領域(第1支持領域)74が設定される(第1設定ステップ、ステップS54)。支持領域74は、Z軸方向から見た場合に、第1方向において互いに離れた複数の分離領域74aによって構成されている。続いて、粉末層54の表面54aのうち、造形領域64及び支持領域74(複数の分離領域74a)に対してエネルギビームEが照射される(第1造形工程、ステップS64)。本実施形態の造形方法では、凸部47の頂部47aが現れるまで、このような工程が繰り返されることで、複数の凸部47を造形される。
【0071】
続いて、粉末層54の表面54a上に粉末層(第2粉末層)55が形成される(第2形成工程、ステップS45)。続いて、粉末層55の表面(第2表面)55aにおいて、造形領域(第2造形領域)65が設定される(第2設定工程、ステップS55)。造形領域65は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61,62,63,64及び支持領域71,72,73,74と重なるように連続的に延在している。続いて、粉末層55の表面55aのうち、造形領域65に対してエネルギビームEが照射される(第2造形工程、ステップS65)。本実施形態の造形方法では、このような工程が繰り返されることで、複数の凸部47が突出部44に接続され、これにより、造形支持部42が突出部44に部分的に接続される。形成工程は、複数の第1形成工程と、複数の第2形成工程と、を含んでおり、設定工程は、複数の第1設定工程と、複数の第2設定工程と、を含んでおり、造形工程は、複数の第1造形工程と、複数の第2造形工程と、を含んでいる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の造形方法では、造形工程では、Z軸方向から見た場合に、第1方向に沿って延在し且つエネルギビームEの幅よりも大きい幅を有する支持領域7に対してエネルギビームEを照射している。これにより、板状を呈し且つエネルギビームEの幅よりも大きい厚さを有する造形支持部42を造形することができる。そのため、造形対象部41を確実に支持することができ、造形対象部41の変形を抑制することができる。しかも、造形工程では、造形支持部42のうち造形対象部41と接続する接続部分が造形対象部41と部分的に接続されるように、エネルギビームEを照射している。これにより、造形支持部42の接続部分が造形対象部41と部分的に接続されるため、造形対象部41から造形支持部42を容易に除去することができる。以上により、この造形方法によれば、造形対象部41の変形を抑制すると共に造形支持部42を容易に除去することができる。
【0073】
形成工程は、粉末層54を形成するステップS44(第1形成工程)と、粉末層54の表面54a上に粉末層55を形成するステップS45(第2形成工程)と、を含んでいる。造形工程は、表面54aのうち、造形対象部41に対応する造形領域64及び造形支持部42に対応する支持領域74に対してエネルギビームEを照射するステップS64(第1造形工程)と、表面55aのうち、造形対象部41に対応する造形領域65に対してエネルギビームEを照射するステップS65(第2造形工程)と、を含んでいる。ステップS64では、支持領域74は、Z軸方向から見た場合に、第1方向において互いに離れた複数の分離領域74aによって構成されている。ステップS65では、造形領域65は、Z軸方向から見た場合に、支持領域74と重なるように連続的に延在している。この場合、ステップS64では、Z軸方向から見た場合に、第1方向において互いに離れた複数の分離領域74aによって構成された支持領域74に対してエネルギビームEを照射している。これにより、互いに離れた複数の分離領域74aのそれぞれに対応する複数の造形支持部分(凸部47)を造形することができる。また、ステップS65では、Z軸方向から見た場合に、支持領域74と重なるように連続的に延在している造形領域65に対してエネルギビームEを照射している。これにより、互いに離れた複数の造形支持部分(凸部47)の上に突出部44を造形することができる。したがって、造形支持部42の接続部分を突出部44に部分的に接続させることができる。よって、突出部44から造形支持部42を容易に除去することができる。
【0074】
形成工程は、粉末層51を形成するステップS41(第3形成工程)と、粉末層51の表面51a上に粉末層52を形成するステップS42(第4形成工程)と、を含んでいる。造形工程は、表面51aのうち、造形対象部41に対応する造形領域61及び造形支持部42に対応する支持領域71に対してエネルギビームEを照射するステップS61(第3造形工程)と、表面52aのうち、造形対象部41に対応する造形領域62及び造形支持部42に対応する支持領域72に対してエネルギビームEを照射するステップS62(第4造形工程)と、を含んでいる。ステップS61では、支持領域71は、Z軸方向から見た場合に、造形領域61と連通している。ステップS62では、支持領域72は、Z軸方向から見た場合に、造形領域62から離れている。この場合、造形支持部42の接続部分を本体部43に部分的に接続させることができる。これにより、本体部43から造形支持部42を容易に除去することができる。
【0075】
複数の支持領域7のそれぞれは、Z軸方向から見た場合に、第1方向に交差する第2方向において互いに離れている。この場合、複数の造形支持部42を造形することができる。これにより、造形対象部41をより確実に支持することができ、造形対象部41の変形をより確実に抑制することができる。また、第1方向に沿って延在する板状を呈し且つ第1方向に交差する第2方向において互いに離れている複数の造形支持部42を造形することができる。そのため、複数の造形支持部42の間に存在する粉末Pを容易に除去することができる。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0077】
リコータ17がテーブル13を跨って往復移動する例を示したが、リコータ17は、テーブル13に対して回転してもよい。
【0078】
粉末Pが、エネルギビームEの照射によって溶融した後に固化する例を示したが、粉末Pは、エネルギビームEの照射によって焼結されてもよい。
【0079】
凸部45,47が、造形支持部42の厚さ方向から見た場合に、例えば三角形状を呈している例を示したが、凸部45,47は、造形支持部42の厚さ方向から見た場合に、台形状を呈していてもよい。造形支持部42の接続部分(第1辺部42a又は第2辺部42B)が造形対象部41と部分的に接続されていれば、凸部45,47は、様々な形状を呈していてもよい。
【0080】
造形支持部42は、凸部45及び凸部47のいずれか一方のみを含んでいてもよい。つまり、造形支持部42は、本体部43及び突出部44のいずれか一方のみと部分的に接続されていてもよい。制御ユニット30は、造形支持部42が本体部43及び突出部44のいずれか一方のみと部分的に接続されるように、リコータ17による粉末Pの供給、並びに造形領域6及び支持領域7に対するエネルギビームEの照射を実行してもよい。造形工程では、造形支持部42が本体部43及び突出部44のいずれか一方のみと部分的に接続されるように、エネルギビームEを照射してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 造形装置
5 粉末層
5a 表面
6 造形領域
7 支持領域
13 テーブル
13a 主面
17 リコータ(供給ユニット)
20 照射ユニット
30 制御ユニット
41 造形対象部
42 造形支持部
51 第3粉末層
51a 第3表面
52 第4粉末層
52a 第4表面
54 第1粉末層
54a 第1表面
55 第2粉末層
55a 第2表面
61 第3造形領域
62 第4造形領域
64 第1造形領域
65 第2造形領域
71 第3支持領域
72 第4支持領域
74 第1支持領域
74a 分離領域
E エネルギビーム
P 粉末