(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005817
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】絞り弁装置及び絞り弁装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F02D 9/10 20060101AFI20230111BHJP
F02D 9/02 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
F02D9/10 H
F02D9/10 A
F02D9/10 C
F02D9/02 351M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108007
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】595054589
【氏名又は名称】株式会社デンソーダイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 宏太
(72)【発明者】
【氏名】清水 泰
(72)【発明者】
【氏名】長坂 敏
(72)【発明者】
【氏名】▲斎▼藤 克尚
【テーマコード(参考)】
3G065
【Fターム(参考)】
3G065CA26
3G065DA04
3G065HA05
3G065HA15
(57)【要約】
【課題】スリットの形状に工夫を加え、バルブとスリットとの間からの漏れを抑えつつ、同時にスリット周囲のバリの発生も抑える。
【解決手段】バルブの外径は円筒状通路の内径とは略同一であり、スリットの幅はバルブの肉厚と略同一であり、スリットのシャフトの軸方向長さは一面側の方が他面側より短く、スリット少なくとも一端側で一面側にはスリットのシャフトの径方向の幅と同等以上かつ30%程度以下大きい端部丸孔がシャフトの一面側からシャフトの径方向にスリットと接する位置以上の深さで形成され、スリットのシャフトの一端側では端部丸孔との間の角度が所定角度としている。端部丸孔を形成して、特に、端部丸孔との間の角度を100度~150度程度とすれば、シャフトの一端側で一面側でのバリ形成は抑制できる。加えて、端部丸孔はボデーにより覆われるので、端部丸孔を形成してもその端部丸孔からの漏れも抑制できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状通路及びモータ空間を有するボデー(300)と、
このボデーの前記円筒状通路に直交配置されるシャフト(430)と、
このシャフトの中心軸位置に一面側から他面側に亘って貫通形成されたスリット(431)と、
前記ボデーの前記円筒状通路の両側で、前記スリットの一端側及び他端側の外方に配置され、前記シャフトを回転自在に支持する一対の軸受と、
前記シャフトにこのスリットと直交方向に形成されたネジ通し穴と、
前記シャフトの前記スリットに挿入され、前記ネジ通し穴を介して前記シャフトにねじ止めされ、前記シャフトとともに回動して前記円筒状通路を開閉する円盤状のバルブ(400)と、
前記ボデーの前記モータ空間に保持され電気信号に応じて回転し、減速機構を介して前記シャフトを回動するモータとを備え、
前記バルブの外径は、前記円筒状通路の内径とは略同一であり、
前記スリットの幅は、前記バルブの肉厚と略同一であり、
前記スリットの前記シャフトの軸方向長さは一面側の方が他面側より短く、
前記スリットの少なくとも一端側で一面側には、端部丸孔が形成される
ことを特徴とする絞り弁装置。
【請求項2】
前記スリットの一端側では、前記スリットと前記端部丸孔との間の角度が100度~150度程度である
ことを特徴とする請求項1に記載の絞り弁装置。
【請求項3】
前記端部丸孔は、その径が前記スリットの幅と同等以上かつ30%程度以下大きく、その深さが前記シャフトの一面側から前記シャフトの径方向に前記スリットと接する位置以上に深く形成されている
ことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の絞り弁装置。
【請求項4】
前記端部丸孔は、少なくともその一部が前記ボデーにより覆われる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の絞り弁装置。
【請求項5】
前記スリットの一端側の前記端部丸孔との間の角度は、120度程度以上である
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の絞り弁装置。
【請求項6】
前記シャフトの一端側及び他端側のいずれかで、前記軸受の更に外方には、前記減速機構の回転を前記シャフトに伝達するレバーが固定される
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の絞り弁装置。
【請求項7】
円筒状通路及びモータ空間を有するボデーと、
このボデーの前記円筒状通路に直交配置されるシャフトと、
このシャフトの中心軸位置に一面側から他面側に亘って貫通形成されたスリットと、
前記ボデーの前記円筒状通路の両側で、前記スリットの一端側及び他端側の外方に配置され、前記シャフトを回転自在に支持する一対の軸受と、
前記シャフトの前記スリットに挿入され、前記シャフトとともに回動して前記円筒状通路を開閉する円盤状のバルブと、
前記ボデーの前記モータ空間に保持され電気信号に応じて回転し、減速機構を介して前記シャフトを回動するモータとを備える絞り弁装置の製造方法であって、
前記シャフトの前記軸受の内方の少なくとも一端側で一面側に、前記スリットの幅と同等以上かつ30%程度以下大きい端部丸孔を、前記シャフトの一面側から前記シャフトの径方向に前記スリットと接する位置以上の深さで形成し、
次いで、前記シャフトの他面側から、直径が前記バルブの直径より10%~40%程度大きい円盤状カッターを、切削刃が前記シャフトの一端側から他端側に向かう方向に回転させつつ他面側から一面側に移動させて、幅が前記ボデーの肉厚と略同一で前記端部丸孔との間の角度が所定角度となるように前記スリットを形成し、
次いで、前記軸受及び前記シャフトを前記ボデーに、前記端部丸孔が前記ボデーにより少なくともその一部が覆われるように、組付け、
次いで、前記スリットに前記ボデーを挿入し、
次いで、前記ボデーを前記シャフトにねじ止めし、
次いで、前記モータ及び前記減速機構を前記ボデーに組み込む
ことを特徴とする絞り弁装置の製造方法。
【請求項8】
前記ボデーを前記シャフトにねじ止めした後で、前記モータを前記ボデーに組み込む前に、前記シャフトの一端側及び他端側のいずれかで前記軸受の更に外方に、前記減速機構の回転を前記シャフトに伝達するレバーを固定する
ことを特徴とする請求項7に記載の絞り弁装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絞り弁装置及び絞り弁装置の製造方法に関する。本開示に係る絞り弁装置は、エンジンの吸気をコントロールする電子スロットル装置、排気ガス循環システムに用いられるEGRバルブ、ディーゼルエンジンの吸気通路圧力制御弁、燃料電池の水素濃度を制御するための負圧制御バルブ等の用途がある。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に記載の電子スロットル装置では、モータの固定構造等には工夫が図られている。しかし、バルブとシャフトとの組付けは、単にバルブをシャフトに形成されたスリット内に差し込んだ状態でねじ止めするとしているのみである。これは、バルブは吸入空気の流量を調整する上で重要な部品であるため、バルブとスリットとの間から吸入空気が漏れるのを防止しなければならないとしていたからである。そのため、スリットの形状はバルブの外形と略同一であることを前提としており、スリットの形状に変更を加えることは想定していなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本件開示は、スリットの形状に工夫を加えることで、スリット周囲のバリの発生を抑えつつ、同時にバルブとスリットとの間からの漏れも抑えることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1は、円筒状通路及びモータ空間を有するボデーと、このボデーの円筒状通路に直交配置されるシャフトと、このシャフトの中心軸位置に一面側から他面側に亘って貫通形成されたスリットと、ボデーの円筒状通路の両側でスリットの一端側及び他端側の外方に配置されシャフトを回転自在に支持する一対の軸受と、シャフトにこのスリットと直交方向に形成されたネジ通し穴と、シャフトのスリットに挿入されネジ通し穴を介してシャフトにねじ止めされシャフトとともに回動して円筒状通路を開閉する円盤状のバルブと、ボデーのモータ空間に保持され電気信号に応じて回転し減速機構を介してシャフトを回動するモータとを備える絞り弁装置である。
【0006】
そして、本開示の第1は、バルブの外径は円筒状通路の内径とは略同一であり、スリットの幅はバルブの肉厚と略同一であり、スリットのシャフトの軸方向長さは一面側の方が他面側より短く、スリットの少なくとも一端側で一面側には端部丸孔が形成される絞り弁装置である。
【0007】
本開示の第1では、端部丸孔を形成しているので、スリットの少なくとも一端側で一面側にバリが形成されるのが抑制できる。即ち、スリットの一端側では、スリットと端部丸孔との間に所定の角度があるので、シャフトの少なくとも一端側で一面側でのバリ形成は抑制できる。 本開示の第2は、スリットの一端側では、スリットと端部丸孔との間の角度が100度~150度程度である。角度を100度~150度程度とすることで、バリの形成を効果的に抑制できる。
【0008】
本開示の第3は、端部丸孔は、その径がスリットの幅と同等以上でかつ30%程度以下大きく、その深さがシャフトの一面側からシャフトの径方向にスリットと接する位置以上に深く形成されている。この大きさとすることで、バリの形成を効果的に抑制できている。
【0009】
本開示の第4は、端部丸孔の少なくとも一部がボデーに覆われている。ボデーに覆われる結果、端部丸孔からの漏れが抑制できる。
【0010】
本開示の第5は、スリットの一端側の端部丸孔との間の角度は120度程度以上である。スリットの一端側の端部丸孔との間の角度を120度程度以上とすることで、バリの発生を実質的に無くしている。
【0011】
本開示の第6は、シャフトの一端側で、軸受の更に外方には、減速機構の回転をシャフトに伝達するレバーが固定されている。レバーの固定は、圧入若しくは挿入後のカシメ等により行われる。その際に応力がスリットに加わるが、端部丸孔により、応力集中を防ぐことができる。
【0012】
本開示の第7は、円筒状通路及びモータ空間を有するボデーと、このボデーの円筒状通路に直交配置されるシャフトと、このシャフトの中心軸位置に一面側から他面側に貫通形成されたスリットと、ボデーの円筒状通路の両側でスリットの一端側及び他端側の外方に配置されシャフトを回転自在に支持する一対の軸受と、シャフトのスリットに挿入されシャフトとともに回動して円筒状通路を開閉する円盤状のバルブと、ボデーのモータ空間に保持され電気信号に応じて回転し減速機構を介してシャフトを回動するモータとを備える絞り弁装置の製造方法である。
【0013】
そして、本開示の第7は、シャフトの少なくとも一端側で軸受の内方の一面側にスリットの幅と同等以上かつ30%程度以下大きい円筒状の端部丸孔を、シャフトの一面側からシャフトの径方向にスリットと接する位置以上の深さで形成し、次いで、シャフトの他面側から直径がボデーの直径より10%~40%大きい円盤状カッターを、切削刃がシャフトの一端側から他端側に向かう方向に回転させつつ他面側から一面側に移動させて、幅がバルブの肉厚と略同一で、端部丸孔との間の角度が所定角度となるようにスリットを形成し、次いで、軸受及びシャフトをボデーに端部丸孔がボデーにより少なくともその一部が覆われるように組付け、次いで、スリットにボデーを挿入し、次いで、ボデーをシャフトにねじ止めし、次いで、モータ及び減速機構をボデーに組み込む絞り弁装置の製造方法である。
【0014】
本開示の第7は、シャフトの少なくとも一端側で軸受の内方の一面側に円筒状の端部丸孔を形成してから、円盤状カッターでスリットを形成する。特に、端部丸孔の径を、スリットの幅と同等以上かつ30%程度以下大きくし、端部丸孔の深さを、シャフトの一面側からシャフトの径方向にスリットと接する位置以上の深さとしている。その上で、円盤状カッターの直径をボデーの直径より10%~40%大きくし、かつ、円盤状カッターの回転方向を切削刃がシャフトの一端側から他端側に向かう方向としつつ、円盤状カッターの移動方向を他面側から一面側に向かう方向としている。そして、円盤状カッターは、端部丸孔との間の角度が所定角度程度となるようにスリットを形成している。これらの組み合わせにより、シャフトの少なくとも一端側で軸受の内方の一面側にバリが発生するのを抑制しつつスリットを形成することができる。これにより、高さの高いバリの発生を抑制することができる。
【0015】
本開示の第7は、軸受及びシャフトをボデーに組付けるのに際し、端部丸孔の少なくともその一部がボデーにより覆われるようにしている。これにより、端部丸孔を形成してもその端部丸孔からの漏れが抑制できる。
【0016】
本開示の第8は、ボデーをシャフトにねじ止めした後で、モータをボデーに組み込む前に、シャフトの一端側及び他端側のいずれかで軸受の更に外方に、減速機構の回転をシャフトに伝達するレバーを固定する工程を加えている。上記の通り、レバーの固定は、圧入若しくは挿入後のカシメ等により行われるので、レバーの圧入工程等で応力がスリットに加わるが、端部丸孔により、応力集中を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、電子スロットル装置の断面図である。
【
図2】
図2は、電子スロットル装置の正面図である。
【
図4】
図4は、減速機構を外したボデーの側面図である。
【
図5】
図5は、コイルスプリング、第1ガイド、第2ガイドを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、スリット成形工程を示す説明図である。
【
図9】
図9は、スリット成形工程の比較例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、カッター切削面の面取り角度を示す説明図である。
【
図11】
図11は、面取り角度とバリ高さとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本開示の絞り弁装置を電子スロットル装置に用いた実施形態を、図に基づいて説明する。なお、本開示の絞り弁装置は、上述の通り、EGRバルブ、ディーゼルエンジン吸気通路圧力制御弁、燃料電池用負圧制御バルブ等、絞り弁装置として幅広く利用可能である。従って、スロットルシャフトやスロットルバルブ等の名称は本開示を電子スロットル装置に用いた場合の例で、シャフトやバルブの用途はスロットルに限定されるものではない。
【0019】
図1は電子スロットル装置1の縦断面図で、この
図1に基づいて電子スロットル装置1の概要を説明する。電子スロットル装置1はエンジンルームに配置され、エンジンに吸入される吸気の流量を制御する。ドライバーのアクセルペダル操作や、エンジンの回転状態等に応じて、図示しないエンジンコントロールユニットが最適な吸気量を演算して、演算結果に応じた回転量をモータ100に出力する。
【0020】
アルミニウム若しくはアルミニウム合金製のボデー300のモータ空間330にモータ100が配置される。モータ100の回転は、モータシャフト101(
図3図示)に圧入固定されたモータピニオン102から、減速機構200に伝達される。減速機構200は、
図3に示すように、モータピニオン102、中間ギヤ201及びバルブギヤ210により形成される。
【0021】
中間ギヤ201の大径歯車202は、モータピニオン102と歯合する。中間ギヤ201は中間シャフト203を中心として回転自在に保持されている。中間シャフト203は、ステンレス製でボデー300の嵌合穴301に圧入固定されている。
【0022】
中間ギヤ201の小径歯車204が、バルブギヤ210の外周に円弧状に形成された歯部211と歯合しており、モータピニオン102の回転は中間ギヤ201を介してバルブギヤ210に伝達される。減速割合は、凡そモータシャフト101が28回転する毎にバルブギヤ210の1歯部211が時計回り若しくは反時計回りに進むこととなる。
【0023】
バルブギヤ210のコップ状中心部212の内周には、半円弧状の磁石220及び221が配置され、磁石220、221により磁気回路が形成される。バルブギヤ210のコップ状中心部212の奥部(
図1の下方)には円盤状のレバー401が配置されている。そして、磁石220、221とレバー401はバルブギヤ210にインサート成形されている。
【0024】
レバー401はスロットルシャフト430の端面に固定される。固定は、圧入若しくは挿入後のカシメにより行う。従って、バルブギヤ210は、レバー401を介してスロットルシャフト430に連結し、バルブギヤ210の回転がスロットルシャフト430に伝達される。スロットルシャフト430には、円盤状のスロットルバルブ400がネジ403により固定されている。スロットルバルブ400は、その回動に応じてボデー300に円筒状に形成された吸気通路320の開口面積を増減させる。電子スロットル装置1の場合には、吸気通路320が円筒状通路に対応する。なお、スロットルシャフト430はステンレス製であり、スロットルバルブ400はアルミニウム若しくはアルミニウム合金製である。
【0025】
ボデー300の開口端303(
図1の上側、
図3の正面)は、カバー500によって覆われている。カバー500は、ポリブチルテレフタレートPBTなどの樹脂で成形されており、所定部位にリブを形成して強度を得ている。
図2の501はコネクタで、モータ100への電力供給線や、回転角センサ510への電力線及び信号線が配置されている。502は、カバー500をボデー300に固定するネジである。
【0026】
カバー500のうち、スロットルシャフト430の軸線407に対応する位置には、ホールICからなる一対の回転角センサ510が配置されている。回転角センサ510はカバー500に固定されているが、その外周にバルブギヤ210にインサート成形された一対の円弧状をした磁石220、221が配置されている。そして、磁石220、221はスロットルシャフト430の回動に応じて軸線407周りを回動するので、磁気回路はスロットルバルブ400の回転角に応じた位置に変化する。回転角センサ510は、この磁気回路の位置変化に起因する磁力の変化を検知して、スロットルバルブ400の開度を検出する。そして、検出した位置情報を、図示しないエンジンコントロールユニットにフィードバックする。
【0027】
スロットルシャフト430はスロットルバルブ400を挟んで両側に配置された軸受405、406によって、ボデー300に回転自在に支持されている。軸受405は滑り軸受であり、軸受406はボールベアリングである。ボデー300の開口部302は、軸受405を挿入するための開口で、プラグ310によって覆われている。
【0028】
ボデー300にはバルブギヤ210を収容する空間321が形成されており、この空間321にはスロットルシャフト430をバネ力で付勢するコイルスプリング450が配置されている。コイルスプリング450は、バネ鋼製で、
図5に示すように、直径が15ミリメートル程度の円筒状をしている。そして、一端側スプリング端451、及び他端側スプリング端452が径方向外側に折れ曲がって5ミリメートル程度外方に突出している。
【0029】
コイルスプリング450の一面側端面453は第1ガイド460により覆われている。また、コイルスプリング450の他面側端面454は第2ガイド461により覆われている。第1ガイド460も第2ガイド461も共に66ナイロン樹脂製である。以下、第1ガイド460に付いて説明する。
【0030】
第1ガイド460には、円筒状をしたコイルスプリング450の一面側端面453を覆う円盤部462が形成されている。そして、この円盤部462にコイルスプリング450の一面側端面453が収納される。第1ガイド460は、円盤部462の中心部にハブ463を形成し、ハブ463の中心穴464内にスロットルシャフト430が遊嵌入される。換言すれば、第1ガイド460はスロットルシャフト430の周りに回転自在に配置される。
【0031】
第1ガイド460の円盤部462からは、ガイドフック468が径方向に突出形成されている。以上は、第1ガイド460に関して説明したが、第2ガイド461は第1ガイド460と同一形状をしており、第1ガイド460に関する説明は第2ガイド461にも適用できる。
【0032】
このように、第1ガイド460と第2ガイド461とを同一形状とすることで、組付け時に第1ガイド460と第2ガイド461との層別を行う必要がなくなり、組み付け時間の短縮が図れる。加えて、同一形状とすることで、組み付け設備のコストも低減でき、かつ、部品コストも低減できる。
【0033】
第1ガイド460、コイルスプリング450及び第2ガイド461は、
図1に示すように、バルブギヤ210の背面(
図1の下方)でスロットルシャフト430の周囲に配置される。配置された状態で、第1ガイド460のハブ463は金属製のレバー401に当接し、第2ガイド461のハブ463はボールベアリング(軸受406)のインナーレースと当接している。
【0034】
図4に示すように、ボデー300には第1ガイド460のガイドフック468と当接するボデーフック305と、第2ガイド461のガイドフック468と当接するボデーフック307が形成されている。そして、ガイドフック468がボデーフック305及び307に当接した状態では、コイルスプリング450の付勢力によって、スロットルバルブ400は吸気通路320をバルブ中間開度に保持する。このバルブ中間開度は閉位置ではあるが、故障時の退避走行が可能なように、スロットルバルブ400は吸気通路320を全閉にすることはなく、所定量の吸気は流入できるように多少開いた位置となっている。
【0035】
このスロットルバルブ400の開閉をコイルスプリング450の挙動と共に説明する。エンジンの回転数を上昇させるためにスロットルバルブ400が吸気通路320を開く場合、コイルスプリング450の他端側スプリング端452はボデーフック307と当接してその位置を保持する。一方、一端側スプリング端451はバルブギヤ210に形成されたバルブギヤフック213が当接し、バルブギヤ210(スロットルシャフト430)の回動に応じて移動する。この移動に応じ、コイルスプリング450はスロットルシャフト430やバルブギヤ210、ひいてはモータ100にリターン側の付勢力を付加する。
【0036】
一方で、アイドリング状態とすべく、スロットルバルブ400が吸気通路320を閉じる場合には、スロットルシャフト430はバルブ中間開度から全閉位置に回動する。その場合には、全開方向とは逆に、コイルスプリング450の一端側スプリング端451はボデーフック305と当接してその位置を保持する。そして、他端側スプリング端452がバルブギヤフック213と当接して、スロットルシャフト430の回動に応じて移動する。なお、
図1はスロットルバルブ400が吸気通路320を閉じた状態を示し、
図2はスロットルバルブ400が吸気通路320を開いた状態を示している。
【0037】
次に、上記構成の電子スロットル装置1の製造方法(製造工程)を説明する。ボデー300はアルミニウム若しくはアルミニウム合金をダイキャスト成形する。スロットルシャフト430はステンレスを切削して棒形状とする。中間シャフト203もステンレスを切削して棒形状とする。
【0038】
図6及び
図7に示すように、スロットルシャフト430に、スロットルバルブ400を収容するスリット431を形成する。このスリット431の幅はスロットルバルブ400の肉厚と略同一である。例えば、スロットルバルブ400の肉厚が1.6ミリメートル程度の場合、スリット431の幅は1.7ミリメートル程度である。従って、本開示におけるスリット431の幅とスロットルバルブ400の肉厚とが略同一であるとの意味は、スリット431にスロットルバルブ400が挿入できるような隙間を設けるとの意味合いである。この隙間の大きさは公差以上とし、スロットルバルブ400が確実にスリット431に挿入できるようにしている。
【0039】
スリット431は、スロットルシャフト430の一面側432(
図6の上側)から他面側433(
図6の下側)に亘って貫通している。
図6及び
図7の左側を一端側434、左側を他端側435とした場合、本開示ではスリット431の成形に先立ち、スロットルシャフト430の一端側434の一面側432に端部丸孔436をドリルで切削形成する。端部丸孔436の孔径はスリット431の幅と同じか、若干大きい。例えば、スリット431の幅が1.7ミリメートル程度の場合、端部丸孔436の径は2ミリメートル程度としている。スリット431の大きさによっても異なるが、端部丸孔436の径はスリット431の幅と同等か30%程度以下大きくしている。また、端部丸孔436の深さは2.5ミリメートル程度である。
【0040】
図8に示すように、端部丸孔436を形成した後、スロットルシャフト430を固定し、カッター440でスリット431を切削形成する。カッター440は超鋼合金製で、円盤形状をしており、外周に多数の切削刃を備えている。毎分700~800程度回転し、切削部分には切削油を供給している。
【0041】
カッター440は、スロットルシャフト430の他面側433から一面側432に向かって移動しながら回転し、スリット431を切削形成する。また、回転方向は、
図8において時計回りであり、スロットルシャフト430との関係では、一端側434から他端側435へ刃(
図10図示)が移動する方向での切削となる。
【0042】
カッター440の径は、中心軸441がスロットルシャフト430と干渉しないよう、スロットルバルブ400の径より大きくなっている。例えば、スロットルバルブ400の径が45ミリメートル程度の場合、カッター440の径は58ミリメートルである。ここで、スリット431の形状のうちスロットルシャフト430の軸方向の長さをスリット431の軸方向の長さと呼ぶ。上記の通り、カッター440が円盤形状をしているため、スリット431の軸方向の長さは、他面側433の方が一面側432に比べて長くなる。
【0043】
そのため、カッター440の径をスロットルバルブ400の径に比べて大きくし過ぎると、スリット431の軸方向の長さが他面側433が一面側432に比べて長くなりすぎて、望ましくない。逆に、カッター440の径をスロットルバルブ400の径に近づけすぎると、中心軸441がスロットルシャフト430と干渉することとなり、やはり望ましくない。そのため、本開示ではカッター440の径をスロットルバルブ400の径より10%~40%大きくしている。上記の例では、カッター440の径はスロットルバルブ400の径より約30%大きい。
【0044】
図9は、端部丸孔436を設けない場合の比較例であるが、端部丸孔436を設けないとスリット431の切削成形の終了時での、スリット431とスロットルシャフト430の一面側432との面取角Aが鋭角となり、スリット431の一面側432にバリ442が発生する。
【0045】
それに対し、本開示では端部丸孔436を設けているので、切削成形の終了時での、スリット431とスロットルシャフト430の一面側432との面取角Aは鈍角となる。
図10は、カッター440の刃443の回転方向と面取角Aとの関係を説明している。この面取角Aとバリ442の高さBを、実機で確認した例を
図11に示す。
【0046】
図11は横軸に面取角A、縦軸にバリ442の高さBとしている。この
図11に示すように、面取角Aが直角の場合は1.4ミリメートル程度の高さBのバリ442が発生していた。それに対し、面取角Aを鈍角とすれば、100度であっても、バリ442の高さBを0.3ミリメートル程度に低下させることができる。面取角Aを110度とすれば、バリ442の高さBは0.1ミリメートル程度まで低下する。そして、面取角Aを120度以上とすれば、バリ442は殆ど発生しない。
【0047】
この実機での測定例より、面取角Aは100度以上であればよく、110度を超えれば実用上問題とならない程度にバリ442の高さBを抑えることができ望ましい。更に、望ましいのは、面取角Aを120度以上にすることである。
【0048】
上述の通り、スリット431の形状はカッター440の径により定まるので、面取角Aの大きさは、端部丸孔436の形状に応じて定まることとなる。まず、端部丸孔の深さをスリット431と接する位置以上に深くする必要がある。その上で、スリット431との面取角Aを所定角度以上とする深さが求められる。端部丸孔436をスロットルシャフト430の一面側432から他面側433まで貫通させれば面取角Aは180度となる。ただ、端部丸孔436をスロットルシャフト430の一面側432から他面側433まで貫通させることは、切削工程を徒に伸ばすこととなり実用的ではない。
【0049】
ここで、面取角Aの上限は端部丸孔436の深さ、軸方向位置、径により定まる。そのため本開示では、端部丸孔436の径を2ミリメートル程度スリット431の幅を1.7ミリメートル程度とした場合、深さはスロットルシャフト430の径の半分以下とし、望ましくは40%以下としている。端部丸孔436の深さを、スロットルシャフト430の径の半分とした際には、面取角Aは150度程度となっている。なお、上述の例示の深さ2.5ミリメートル程度では、面取角Aが120度程度である。
【0050】
このように、端部丸孔436は、その深さをスリット431と接する位置以上に深くすることを前提として、その上で、所定の面取角Aを得るように定める。具体的には、端部丸孔436の深さ、軸方向位置、径は、スロットルバルブ400の径を起点として、カッター440の径を定め、次いで、面取角Aを定めることで決定できる。換言すれば、面取角Aを100度以上として、必要以上の深さに端部丸孔436形成工程を行わないようして、端部丸孔436の深さ、軸方向位置、径を定める。端部丸孔436の深さは、スロットルシャフト430の一面側432から径方向の10%~50%で形成すればよい。上記の通り、端部丸孔436の深さは短い方が加工しやすいので、40%以下とする方が望ましい。本例では、スロットルシャフト430の径が8ミリメートル程度であるので、端部丸孔436の深さは、30%程度である。
【0051】
以上の工程で、スロットルシャフト430に端部丸孔436とスリット431を形成し、次いで、ネジ通し穴437をドリルで切削形成する。ネジ通し穴437はスリット431とは直交する方向に形成する。尤も、ネジ通し穴437を、端部丸孔436やスリット431より、先に形成することも可能である。また、スリット431を形成してから端部丸孔436を形成しても良い。
【0052】
なお、端部丸孔436と軸受405(軸受406)との位置関係は、端部丸孔436が軸受405(軸受406)と接しない位置としている。
【0053】
スロットルシャフト430を加工した状態での電子スロットル装置1の組付け工程を次に説明する。まず、ボデー300に中間シャフト203と滑り軸受405とを圧入して組付ける。また、スロットルシャフト430にボールベアリング側の軸受406を組付ける。そして、軸受406を組付けた状態でスロットルシャフト430をボデー300に組付ける。組付けた状態では、スロットルシャフト430の一端側434は滑り軸受405に回転支持される。また、軸受406はボデー300に支持される。
【0054】
その状態で、スロットルバルブ400をスリット431に挿入する。スロットルバルブ400の肉厚はスリット431と略同一であるが、上述のように、公差以上の隙間があるので挿入はスムーズに行うことができる。スロットルバルブ400をスリット431に挿入した状態で、ネジ403によりスロットルバルブ400とスリット431とを固定する。ここで、スロットルバルブ400の外径は、ボデー300に形成された吸気通路320の内径と略同一である。ただ、上述の通り、略同一とは公差以上吸気通路320の内径の方が、スロットルバルブ400の外径より大きい。また、スリット431に挿入するため、スリット431の軸方向の長さもスロットルバルブ400の外径より大きくなっている。
【0055】
そのため、このスロットルバルブ400の組付けられた状態では、端部丸孔436は、少なくともその一部がボデー300により覆われている。端部丸孔436は内径がスリット431(スロットルバルブ400)の幅より大きいので、端部丸孔436とスリット431を介して吸入空気が漏れる可能性もあるが、本開示では端部丸孔436がボデー300により覆われることで、吸入空気の漏れを抑制することができている。
【0056】
次に、コイルスプリング450と第1ガイド460及び第2ガイド461を組付ける。コイルスプリング450にプリロードの掛かっていない状態では、第1ガイド460と第2ガイド461との間は、コイルスプリング450により大きく離れている。尤も、この状態でも、第1ガイド460の円盤部462がコイルスプリング450の一面側端面453を収納しつつ、ガイドフック468が一端側スプリング端451を保持している。また、第2ガイド461の円盤部462がコイルスプリング450の他面側端面454を収納しつつ、ガイドフック468が他端側スプリング端452を保持している。
【0057】
この状態から、コイルスプリング450にプリロードを加えて、第1ガイド460のガイドフック468をバルブギヤ210のバネ受けに当接させ、一方、第2ガイド461のガイドフック468をボデー300のボデーフック305、307に当接させる。次いで、第1ガイド460及び第2ガイド461のガイドフック468の間に、バルブギヤ210のバルブギヤフック213(
図5図示)を配置する。
【0058】
その後、スロットルシャフト430の他端側435にレバー401を固定する。固定は、他端側435にレバー401を圧入することで行うが、圧入に代えて、挿入後のカシメにより固定しても良い。このレバー401の圧入やカシメ時にスロットルシャフト430には応力が生じる。そして、応力は角部に集中する傾向がある。ただ、本開示では端部丸孔436を形成して、少なくとも一端側434の一面側432ではスリット431の端部の形状を円形としている。そのため、端部丸孔436により応力集中を防止することができている。
【0059】
スロットルシャフト430側の組付けが終了すると、モータ空間330にモータ100を配置する。次いで、中間シャフト203に中間ギヤ201を挿入する。その後、予め回転角センサ510を組み込んだカバー500でボデー300の開口端303を塞ぎ、カバー500をボデー300にネジ502(
図2図示)で固定する。その後、各種の性能検査を行い、次いで、ボデー300の開口部302をプラグ310で閉じる。
【0060】
以上のように組付けられた電子スロットル装置1は、上述の通り、エンジンの吸入空気量の制御を行う。その際、スロットルバルブ400には吸入空気の圧力が加わる。より具体的には、上流の大気圧と下流の負圧との差圧がスロットルバルブ400に加わる。このスロットルバルブ400に加わる差圧は、スロットルシャフト430のスリット431で受け止められる。そのため、スリット431の角部には応力が集中することとなるが、本開示では端部丸孔436を設けているため、少なくとも一端側434の一面側432では応力の集中は緩和される。
【0061】
なお、本開示では端部丸孔436を一端側434の一面側432に形成しているが、ここで、一端側434と他端側435との関係、及び一面側432と他面側433との関係は、
図8に示すカッター440との関係で定まる。即ち、カッター440が切削を開始する側が他面側433で、カッター440の切削終了時軸方向の長さが短い側が一面側432である。そして、一面側432で、カッター440の刃443の移動方向後側が一端側434で、刃443の移動方向側が他端側435となる。
【0062】
換言すれば、
図9の状態でバリ442が発生する部位がスリット431の一端側434の一面側432となる。
図9の例では、カッター440が時計方向に回転するため、スロットルシャフト430の左側が一端側434となっている。ただ、カッター440が反時計方向に回転すれば、スロットルシャフト430の右側が一端側434となる。
【0063】
図1の例では、一端側434に軸受405を配置し、他端側435にレバー401を配置しているが、これは、
図9の状態でカッター440が時計方向に回転していたためである。
図9の状態でカッター440が反時計方向に回転すれば、一端側434にレバー401が配置され、他端側435に軸受405が配置されることとなる。
【0064】
本開示で必須とするのは、スリット431の一端側434の一面側432に端部丸孔436を形成することである。ただ、それ以外の端部に丸孔を設けることを否定するものではない。
図12及び
図13に示す例では、スリット431の一端側434の一面側432に形成した端部丸孔436の他に、他端側435の一面側432に第2端部丸孔4361、他端側435の他面側433に第3端部丸孔4362、一端側434の他面側433に第4端部丸孔4363を設けている。
【0065】
第2端部丸孔4361と第4端部丸孔4363は、それぞれカッター440の刃443の切削開始位置であるので、バリ442が発生することは無い。また、第3端部丸孔4362は、刃443が離れる部位であるが、面取角Aが鈍角であるので、バリ442の高さBは小さくなっている。従って、第2端部丸孔4361、第3端部丸孔4362及び第4端部丸孔4363は、バリ442の高さBを抑える機能は無い。ただ、スリット431の軸方向の端部に丸孔を形成することで、組付け時や使用時の応力を緩和することができる。
【0066】
また、第2端部丸孔4361、第3端部丸孔4362及び第4端部丸孔4363は、端部丸孔436と同様、組付けられた状態では、ボデー300に覆われている。そのため、スリット431の端部に丸孔を形成しても、その部位より吸入空気が漏れる恐れは効果的に抑制できている。
【0067】
なお、上述のスロットルバルブ400やスロットルシャフト430の寸法は、一例であり、電子スロットル装置1に要求される性能に応じで、より大きな形状としたり小型化したりするものである。スロットルバルブ400やスロットルシャフト430以外でも、上述の材料や寸法は一例であり、電子スロットル装置1に求められる要請に応じて適宜選択することが可能である。
【0068】
上述の通り、本件開示の絞り弁装置は、エンジンの吸気量を制御する電子スロットル装置や、排気ガス循環量を制御するEGRバルブ、ディーゼルエンジンの吸気を制御する吸気通路圧力制御弁、燃料電池の水素濃度を制御する負圧制御バルブ等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 電子スロットル装置
100 モータ
200 減速機構
400 スロットルバルブ
401 レバー
405 軸受
406 軸受
430 スロットルシャフト
431 スリット
500 カバー