(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058173
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】レトルトパウチ成形食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/126 20160101AFI20230418BHJP
A23L 3/00 20060101ALN20230418BHJP
A23L 7/10 20160101ALN20230418BHJP
【FI】
A23L7/126
A23L3/00 101C
A23L7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021167993
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】北中 進介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 亜衣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 潔
(72)【発明者】
【氏名】長田 健二
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【テーマコード(参考)】
4B021
4B023
4B025
【Fターム(参考)】
4B021LA05
4B021LP01
4B021LP07
4B021LW09
4B023LG05
4B023LK12
4B023LP07
4B023LP19
4B023LP20
4B023LQ01
4B025LB01
4B025LB13
4B025LE07
4B025LG03
4B025LG11
4B025LG45
4B025LK01
4B025LP10
4B025LP16
4B025LP20
(57)【要約】
【課題】栄養価の高いオーツ麦を、そのまますぐに袋から直接食べられるように成形されたオートミールポリッジのような食感を有するレトルトパウチ成形食品及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】オーツ麦及びサイリウムを含有したレトルトパウチ成形食品であって、一塊の状態でレトルトパウチから取り出してそのまま食べることができるレトルトパウチ成形食品。前記レトルトパウチ成形食品は、オーツ麦粒とサイリウムとを50℃以下の水に分散させて、オーツ麦粒が分散された粘性液を得、この粘性液をパウチに充填して、パウチに入った粘性液をレトルト殺菌することにより一塊に固化させて製造することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーツ麦及びサイリウムを含有したレトルトパウチ成形食品であって、一塊の状態でレトルトパウチから取り出してそのまま食べることができるレトルトパウチ成形食品。
【請求項2】
オーツ麦を10~40重量%、サイリウムを0.1~2重量%、及び水を60~80重量%含有する請求項1に記載のレトルトパウチ成形食品。
【請求項3】
油脂を0.1~5重量%含有する、請求項1又は2に記載のレトルトパウチ成形食品。
【請求項4】
オーツ麦粒とサイリウムとを50℃以下の温度の水に分散させて粘性液を得る第一工程、
前記粘性液をパウチに充填する第二工程、
前記パウチに入った粘性液をレトルト殺菌することにより一塊に固化させる第三工程、
を含むレトルトパウチ成形食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーツ麦とサイリウムを主原料とした食物繊維豊富なレトルトパウチ成形食品及びその製造方法に関する。より詳細には、オーツ麦とサイリウムを主原料とし、常温でそのまま食べられる成形されたレトルトパウチ成形食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーツ麦(燕麦(エンバク)、カラスムギとも言う)を原料とし、水や牛乳にふやかして食べるオートミールは、腹持ちも良く、低カロリーで食物繊維等の栄養価の高い食品として知られている。その調理法としては、水を加えて煮込むか、もしくは水に浸けて一晩冷蔵庫に置いておく方法が一般的であり、「オートミールポリッジ(お粥)」と言われている。しかしいずれの方法も調理に手間がかかるため、忙しい朝の朝食としては取り入れにくいものとなっている。
【0003】
これまでに、レトルト調理により簡単で手軽に食べることができるオートミール包装体が提案されており、その中には粥状だけでなく、水分値を調整することでもち状に固めたものも挙げられている(特許文献1)。しかし、粥状の場合は食器が必要であり簡便なものではなく、もち状の場合、べとべとしてレトルトパウチから取り出しにくく、レトルトパウチから直接食べるには適していなかった。
また、皮部を有する穀物粒と、食用油脂と乳化安定剤を含み、残りが水からなるO/Wエマルジョンとを包装容器内に収容し、レトルト処理した穀物粒包装食品も提案されている(特許文献2)。他にも、大麦種子を含む穀類とキサンタンガム及びグアガムを水に溶解させた粘性溶液とを混合してレトルト処理する提案もなされている(特許文献3)。また、食用油脂及び乳化剤から得た水中油型乳化物を有効成分とするレトルト穀物食品用バラケ剤も提案されている(特許文献4)。
しかしながら、いずれも、レトルトパウチから取り出して別の容器に移してから食べる食品であり、レトルトパウチ内の食品はバラバラとばらけたものであり、そのまま一塊の状態で袋から直接食べるものとして言及・示唆されているものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-128154号公報
【特許文献2】特許第3027435号公報
【特許文献3】特許第6645827号公報
【特許文献4】特開平6-276938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、栄養価の高いオーツ麦を、そのまますぐに袋から直接食べられるように成形されたオートミールポリッジのような食感を有するレトルトパウチ成形食品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、サイリウムを含有する水にオーツ麦を配合してレトルト加熱することによって、一塊状に成形されてレトルトパウチからきれいに取り出せるようになり、さらに驚くべきことに、得られた成形物は、穀物粒の軟化(粒の形状が崩れて、粒の食感がなくなること)が抑制され、オートミールポリッジのような食感を長期間維持することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、
(1)オーツ麦及びサイリウムを含有したレトルトパウチ成形食品であって、一塊の状態でレトルトパウチから取り出してそのまま食べることができるレトルトパウチ成形食品、
(2)オーツ麦を10~40重量%、サイリウムを0.1~2重量%、及び水を60~80重量%含有する前記(1)に記載のレトルトパウチ成形食品、
(3)油脂を0.1~5重量%含有する、前記(1)又は(2)に記載のレトルトパウチ成形食品、
(4)オーツ麦粒とサイリウムとを50℃以下の温度の水に分散させて粘性液を得る第一工程、
前記粘性液をパウチに充填する第二工程、
前記パウチに入った粘性液をレトルト殺菌することにより一塊に固化させる第三工程、
を含むレトルトパウチ成形食品の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のレトルトパウチ成形食品は、レトルトパウチから一塊状にきれいに取り出せてそのまますぐに食べられる成形食品である。また、レトルト加熱によるオーツ麦の軟化を抑えることで粒の食感が残り、オートミールポリッジのような食感を有し、さらにその食感を長期間維持するため保存食としても利用できる。また、製造時の沈殿及び粘度上昇を抑制して、レトルトパウチへの充填時の滑りもよいため、効率的に製造することができ、またレトルト加熱後の取り出し時もレトルトパウチに対する付着が抑えられた食品である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例1で得られたレトルトパウチ成形食品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のレトルトパウチ成形食品について詳述する。
【0011】
本発明のレトルトパウチ成形食品は、「レトルトパウチ食品品質表示基準(消費者庁告示)」にてレトルトパウチ食品として定義される「プラスチックフィルム若しくは金属はく又はこれらを多層に合わせたものを袋状その他の形状に成形した容器(気密性及び遮光性を有するものに限る。)に調製した食品を詰め、熱溶融により密封し、加圧加熱殺菌したもの」を指す。
また、本発明において、パウチとは、前記容器をいい、レトルトパウチとは加圧加熱殺菌できるパウチをいう。
【0012】
本発明のレトルトパウチ成形食品は、前記のようにレトルト加工により成形された成形物である。本発明において「成形物」とは、具体的にはオーツ麦粒どうしが結着し、オートミールポリッジのように一塊の状態になっているものを指す。
【0013】
本発明のレトルトパウチ成形食品は、(a)オーツ麦、(b)サイリウム及び(c)水を含有する。
【0014】
(a)オーツ麦
本発明で用いるオーツ麦とは、粒状のオーツ麦であればどのようなものでもよく、例えば、もみ殻を取り除いただけの「オートグローツ」、オートグローツを細かく割った「スティールカットオーツ」、オートグローツを蒸して圧扁し乾燥させた「ロールドオーツ」、ロールドオーツを細かくした「クイックオーツ」、ロールドオーツを一度加熱し乾燥させた「インスタントオーツ」等が挙げられる。中でも、オートグローツ、スティールカットオーツ、ロールドオーツがオートミールポリッジのような食感を得やすく、製造時の物性の点で好ましい。
【0015】
本発明のレトルトパウチ成形食品において、オーツ麦の含有量は、得られるレトルトパウチ成形食品が一塊状の状態になりやすく、オートミールポリッジのような食感が得やすい観点から、固形重量として10~40重量%が好ましく、20~40重量%がより好ましい。
【0016】
(b)サイリウム
サイリウムとは、オオバコ科の植物(Plantago ovata)の種子の外皮から得られる天然植物ガムのことであり、例えば、サイリウム種皮、サイリウムハスク、サイリウム又はイサゴールとも呼ばれている食物繊維である。サイリウム中の成分のほとんどは非セルロース多糖類であり、キシランを主鎖として高度に分岐した構造を持ち、側鎖は、アラビノース、キシロース、ガラクツロン酸、ラムノース等から成り立っている。本発明で使用するサイリウムとしては、未精製のサイリウム種皮の粉砕品でも、サイリウム種皮から抽出・精製されたものでも、特に限定なく使用できる。
【0017】
本発明のレトルトパウチ成形食品において、サイリウムの含有量は、レトルトパウチへの付着性が抑えられ、オートミールポリッジのような食感が出しやすく、パウチ充填前の粘性液の粘性が抑えられてかつオーツ麦粒の沈降も抑えられ、製造時の物性が好ましくなり、また、レトルトパウチ成形食品中に含まれる食物繊維量を高めることができる観点から、固形重量として0.1~2重量%が好ましく、0.2~1重量%がより好ましい。
【0018】
(c)水
本発明のレトルトパウチ成形食品は、製造適正に応じた粘度となり易く、オートミールポリッジのような食感を得やすい観点から、水を60~80重量%、好ましくは70~80重量%含有することが望ましい。
前記の水の含有量とは、添加する水の量だけでなく、オーツ麦及びその他任意成分由来の水も合わせた合計の水分量を指す。
前記水分量を調べる手段としては、各原料の水分量から計算する計算法や、減圧乾燥法、カールフィッシャー法、赤外線吸収法等を用いればよい。
【0019】
(d)その他任意成分
本発明のレトルトパウチ成形食品には、前記(a)~(c)に記載の成分の他に、その他の穀物類、豆類、種実類、イモ類、肉類、魚介類、果物類、野菜類、乳製品、植物又は動物由来のエキス類、糖質、食物繊維、油脂、食塩、スパイス、ハーブ、調味料、酸味料、香料、着色料、甘味料、増粘剤、ゲル化剤等の任意成分を含有してもよい。これらの任意成分を適宜選択して物性や風味を調整することで、前記レトルトパウチ成形食品に幅広い嗜好性を付与することができる。
なお、前記任意成分は、嗜好性や物理化学的安定性に悪影響を与えない範囲で使用すればよく、含有量については特に限定はない。
【0020】
前記任意成分の中でも、本発明のレトルトパウチ成形食品には、油脂を0.1~5重量%含有することが好ましい。
本発明のレトルトパウチ成形食品が前記所定量の油脂を含有すると、レトルトパウチからの剥がれが良くなり、かつ充填前の粘性液の粘度が下がり、好ましい。
前記油脂としては、食品に使用できるものであれば特に限定はないが、例えば、菜種油等の植物性油脂、ラード等の動物性油脂、加工油脂、中鎖脂肪酸油等が挙げられる。
【0021】
本発明のレトルトパウチ成形食品は、レトルトパウチに封入されて、加圧加熱されることで、成形物となっている。
前記成形物は、オーツ麦粒どうしが結着されて、全体として一塊状になっている状態であればよい。成形物の形状については、特に限定はなく、レトルトパウチの内部形状に合わせて、四面以上の立方体状、略球状、略楕円球状、略円柱状、略三角錐状、略角柱状、板状、略角柱状、棒状、略楕円球状等が挙げられる。
【0022】
なお、前記成形物でのオーツ麦粒どうしの結着の強さは、レトルトパウチから所定の形状を有する成形物を取り出した場合に、前記形状が一塊状のまま崩壊しない程度であればよい。
上記のように、オーツ麦粒どうしが結着されて一塊状になっていることで、本発明のレトルトパウチ成形食品は、レトルトパウチから取り出しても崩れることなく、オートミールポリッジのような食感を維持しながらそのまま食べることができる。
【0023】
本発明のレトルトパウチ成形食品の製造方法としては、
オーツ麦粒とサイリウムとを50℃以下の温度の水に分散させて粘性液を得る第一工程、
前記粘性液をパウチに充填する第二工程、
前記パウチに入った粘性液をレトルト殺菌することにより一塊に固化させる第三工程、
を含む製造方法が挙げられる。
【0024】
本発明に使用するパウチとしては、プラスチックフィルム若しくは金属はく又はこれらを多層に合わせたものを袋状その他の形状に成形した容器であればよく、例えば、平袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。
【0025】
第一工程では、例えば、攪拌羽根のついたタンク等に水を入れ、そこにオーツ麦、サイリウム等の原料を投入し、混合する。第一工程における、オーツ麦、サイリウム及び水を混合する際の温度は、50℃以下に調整することが好ましく、30℃以下の室温下で行うことがより好ましい。水の温度が50℃を超える場合、オーツ麦のα化(糊化)によって粘性が上がり、その後のパウチへの充填適正が悪くなる傾向がある。
【0026】
第二工程では、第一工程で得られた粘性液をパウチに充填する。前記粘性液としては、粘度が7Pa・s以下であることが好ましく、かつ静置してもオーツ麦が沈降せずに均一に分散した状態を保つものであればよい。前記粘性液の粘度が高い場合、充填量が安定せず、また、液だれが起きてパウチの熱圧着部に粘性液が付着する等の問題が生じる。また、オーツ麦の沈降が起きると、パウチ毎にオーツ麦の多いもの、少ないものという個体差が発生しやすく、品質にばらつきが生じてしまう。
【0027】
前記粘性液は、流動状態となっており、これを前記パウチに公知の方法で充填して封入する。パウチの封入方法としては、例えば、パウチの開口部を開き、所定量の粘性液を充填し、パウチの開口部を閉じて熱圧着し、密封する方法等が挙げられる。
【0028】
第三工程では、前記パウチに入った粘性液をレトルト殺菌する。前記レトルト殺菌には、レトルト食品の製造で公知の加圧加熱処理方法を用いればよく、例えば、粘性液を充填して封入したパウチを加圧加熱釜に入れて100℃以上の蒸気や加圧熱水により加熱する方法が挙げられる。また、加熱温度としては、例えば、110~130℃で10~60分加熱することが挙げられる。そして、その後、室温で冷ますことで、オーツ麦粒どうしが結着されて一塊の状態に固化される。
【0029】
以上のようにして得られたレトルトパウチ成形食品は、オーツ麦粒どうしが結着された一塊の状態でレトルトパウチから取り出して常温でそのまま食べられる、携帯性・利便性に優れた栄養価の高い食品であり、オートミールポリッジのような食感を長期間維持した食品である。
【実施例0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0031】
(実施例1~5)
表1に示す配合(数値は重量%を示す)の通り、オーツ麦としてロールドオーツ(水分値8重量%、日本食品製造合資会社、以下同じ)、サイリウム(商品名:「ヘルシーガム」、DSP五協フード&ケミカル株式会社製、以下同じ)、水、その他任意成分を室温で混合・分散して粘性液を作製し、この粘性液を100mm×130mmのサイズの平袋のパウチに65g充填し、封入した後、120℃30分間加圧加熱してレトルト殺菌することによりレトルトパウチ成形食品を得た。
【0032】
(比較例1)
サイリウムを使用しない以外は、実施例1と同様にして、レトルトパウチ成形食品を得た。
【0033】
(比較例2~4)
表1に示す配合(数値は重量%を示す)の通り、サイリウムのかわりに、こんにゃく粉、寒天等を用いた以外は、実施例1と同様にして、レトルトパウチ成形食品を得た。
【0034】
(参考例1)オートミールポリッジの作製
クイックオーツ(日本食品製造合資会社製)100重量部と水200重量部を混ぜ、電子レンジ(500W)で2.5分加熱し、室温に冷ましてオートミールポリッジを得た。
【0035】
[試験例1]官能評価
実施例1~5、比較例1~4で得られたレトルトパウチ成形食品を喫食し、下記の評価基準に基づいて食感、取り出しやすさ、分散性に関して官能評価をした。官能評価方法としては、3名のパネリストによる合議制とした。
【0036】
「食感」
〇:参考例1のオートミールポリッジと同様の食感である。
△:粒が軟化しすぎて粒の食感がない、べたつきや弾力、粘着性、水っぽさ等の好ましくない要素がある。
【0037】
「取り出しやすさ」
〇:パウチから取り出しやすい
△:パウチへの付着や保形性の悪さにより、パウチから取り出しにくい
【0038】
[試験例2]製造適正評価
原料を混合し、1時間静置させた後の粘性液の物性を下記の通り評価した。得られた結果を表1に示す。
【0039】
「分散性」
〇:オーツ麦が沈降せずに均一に分散している。
△:オーツ麦がやや沈降し、粘性液上部にオーツ麦の存在しない層がわずかに見られる。
×:オーツ麦が沈降し、粘性液下部に溜まっている。
【0040】
「粘度」
原料を混合し、1時間静置させた後、もう一度混合し、その際の粘性液粘度をB型粘度計にて測定した。
ここで、粘性液粘度に関しては、回転数50rpmの条件で、B型粘度計(商品名「VISCOMETER TVB-10」東機産業社製)を用いて、25℃における粘度を測定した。なお、表中の単位は「Pa・s」である。
【0041】
【0042】
表1に示す結果より、実施例1~5のレトルトパウチ成形食品は、いずれも参考例1のオートミールポリッジと同様の食感を有し、レトルトパウチからきれいに取り出して簡便に食べられるものであった。一方、比較例1~4のレトルトパウチ成形食品は、食感もしくは取り出しやすさに問題があるものとなった。
また、充填前の粘性液の物性に関しても、実施例1~5の粘性液は、オーツ麦が均一に分散しており、かつ、粘度が低く、機械での連続大量生産が可能であることがわかる。
一方で、比較例1、3、4に関しては、粘性液の粘度は低いものの、静置するとオーツ麦が沈降していくため、パウチ毎の個体差が発生しやすく量産には適していないものであった。
中でも、オーツ麦、菜種油及び水を含有する比較例1では、オーツ麦が沈殿し易く、分散性は非常に悪かった。
また、比較例2については粘性が高く、機械を用いた充填は困難であった。
また、実施例1~5で得られたレトルトパウチ成形食品を、製造から半年以上長期保存後に、上記のようにして食感を評価したところ、オートミールポリッジのような食感を維持しており、保存性にも優れたものであることを確認した。
【0043】
(比較例5)
実施例1のオーツ麦のかわりに大麦を使用し、実施例1と同様にして、レトルトパウチ成形食品を得た。得られたレトルトパウチ成形食品は一塊状になっておらず、きれいにレトルトパウチから取り出せるものではなかった。
【0044】
(比較例6)
実施例2のサイリウムのかわりに、キサンタンガム(商品名:モナートガムHP、DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を使用し、実施例2と同様にしてレトルトパウチ成形食品の製造を試みたところ、オーツ麦の沈降は起きないものの、1時間後の粘度が9.9Pa・sとなり、粘性が高く充填が困難なものとなった。
【0045】
(比較例7)
比較例6のキサンタンガムの配合量を0.1重量%に減らし、比較例6と同様にしてレトルトパウチ成形食品の製造を試みたところ、粘度は4.4Pa・sに抑えられたものの、1時間静置するとオーツ麦が沈降していくため、パウチ毎の品質差が発生しやすく量産には適していないものであった。