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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058190
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】鉄道車両及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/04 20060101AFI20230418BHJP
   B61D 17/10 20060101ALI20230418BHJP
   B61D 17/08 20060101ALI20230418BHJP
   B61D 17/12 20060101ALI20230418BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20230418BHJP
   B23K 9/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B61D17/04
B61D17/10
B61D17/08
B61D17/12
B61D17/00 C
B23K9/00 501C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168029
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市位 卓久
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関 竜司
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081YC00
(57)【要約】
【課題】簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造をダブルスキン形材の側縁部に備え、側縁部同士の溶接接合を限定又は不要とし製作コストと熱歪を低減できるダブルスキン形材の構体を備えた鉄道車両を提供する。
【解決手段】中空断面を形成する複数のダブルスキン形材1が、その側縁部14に形成された嵌合構造2によって互いに連結された構体10Kを備えた鉄道車両10である。嵌合構造には、一方のダブルスキン形材の側縁部に外板及び内板と面一状に形成され先端部に中空断面内方へ突出した第1嵌合爪22を有する一対のメス形突片2Fと、他方のダブルスキン形材の側縁部に形成されメス形突片の内側へ突設され先端部に中空断面外方へ突出し第1嵌合爪と嵌合可能に形成された第2嵌合爪24を有する一対のオス形突片2Mと、を備え、オス形突片は、嵌合状態の第1嵌合爪と第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成された。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板と内板とが幅板によって連結され中空断面を形成する複数のダブルスキン形材が、当該ダブルスキン形材の側縁部に形成された嵌合構造によって互いに連結された構体を備えた鉄道車両であって、
前記嵌合構造には、一方の前記ダブルスキン形材の側縁部に前記外板及び前記内板と面一状に形成され先端部に中空断面内方へ突出した第1嵌合爪を有する一対のメス形突片と、
他方の前記ダブルスキン形材の側縁部に形成され前記メス形突片の内側へ突設され先端部に中空断面外方へ突出し前記第1嵌合爪と嵌合可能に形成された第2嵌合爪を有する一対のオス形突片と、を備え、
前記オス形突片は、嵌合状態の前記第1嵌合爪と前記第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両において、
前記第1嵌合爪には、前記第1嵌合爪と前記第2嵌合爪とを嵌合させる際に、前記第2嵌合爪と当接して前記オス形突片を中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部が形成され、
前記第2嵌合爪は、前記ガイド部から離間したとき、前記オス形突片が弾性復帰して前記第1嵌合爪と嵌合することを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項2に記載された鉄道車両において、
前記ガイド部が前記外板及び前記内板に対して傾斜する傾斜角は、15度以上で45度より小さく形成され、前記第1嵌合爪と前記第2嵌合爪とが嵌合状態にて当接する嵌合壁が前記外板及び前記内板に対して傾斜する傾斜角は、90度以下で45度より大きく形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記メス形突片には、先端部に前記第1嵌合爪が形成された板状の第1腕部を備え、前記オス形突片には、先端部に前記第2嵌合爪が形成された板状の第2腕部を備え、
前記第2腕部の板厚は、前記第1腕部の板厚より小さく形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記嵌合構造には、他方の前記ダブルスキン形材の側縁部と前記メス形突片と前記オス形突片とに囲まれた溝部を外板側と内板側の少なくとも一方に備え、
前記溝部には、弾性体からなるシール部材が装着されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記構体は、レール上を走行する台車に搭載された台枠であること、
前記ダブルスキン形材は、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように前記台枠の側梁と枕梁の間に配列され、前記ダブルスキン形材における貫通方向端部が前記側梁に溶接接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項6に記載された鉄道車両において、
前記台枠には、枕木方向の中央部にレール方向へ延設された中梁を備え、
前記ダブルスキン形材の枕木方向の中央部は、前記中梁と溶接接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項8】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記構体は、レール上を走行する台車に搭載された台枠であること、
前記ダブルスキン形材は、中空断面の貫通方向がレール方向になるように前記台枠の側梁と枕梁の間に配列され、前記ダブルスキン形材における貫通方向端部が前記枕梁に溶接接合されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項9】
請求項8に記載された鉄道車両において、
前記側梁と前記ダブルスキン形材の側縁部とが、レール方向に延設された第2の嵌合構造によって連結されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項10】
請求項9に記載された鉄道車両において、
前記第2の嵌合構造には、前記側梁の側壁から水平状に突設され先端部に中空断面内方へ突出し前記オス形突片の前記第2嵌合爪と嵌合可能に形成された第3嵌合爪を有する一対の第2のメス形突片を備え、
前記オス形突片は、嵌合状態の前記第3嵌合爪と前記第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか1項に記載された鉄道車両において、
前記ダブルスキン形材の内板と客室用床部材を支持する床支持中空形材とが、レール方向に延設された第3の嵌合構造によって連結されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項12】
請求項11に記載された鉄道車両において、
前記第3の嵌合構造には、前記ダブルスキン形材の内板から上方へ突設され先端部に前記床支持中空形材の中空断面内方へ突出した第4嵌合爪を有する一対の第3のメス形突片と、
前記床支持中空形材の下端部から前記第3のメス形突片の内側へ弾性変形可能に突設され先端部に前記床支持中空形材の中空断面外方へ突出し前記第4嵌合爪と嵌合可能に形成された第5嵌合爪を有する一対の第2のオス形突片と、を備え、
前記第2のオス形突片は、嵌合状態の前記第4嵌合爪と前記第5嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で前記床支持中空形材の中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項13】
請求項6又は請求項7に記載された鉄道車両の製造方法であって、
前記ダブルスキン形材を所定の長さに切断する切断工程と、前記切断工程にて切断した前記ダブルスキン形材の前記側縁部同士を前記嵌合構造によって連結しながら中空断面の貫通方向を枕木方向へ向けて前記側梁と前記枕梁の間に前記ダブルスキン形材を配列する配列工程と、前記配列工程にて配列した前記ダブルスキン形材の前記貫通方向端部を前記側梁に溶接接合する溶接工程とを備えたことを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【請求項14】
請求項8乃至請求項12のいずれか1項に記載された鉄道車両の製造方法であって、
前記ダブルスキン形材を所定の長さに切断する切断工程と、前記切断工程にて切断した前記ダブルスキン形材の前記側縁部同士を前記嵌合構造によって連結しながら中空断面の貫通方向をレール方向へ向けて前記側梁と前記枕梁の間に前記ダブルスキン形材を配列する配列工程と、前記配列工程にて配列した前記ダブルスキン形材の前記貫通方向端部を前記枕梁に溶接接合する溶接工程とを備えたことを特徴とする鉄道車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両及びその製造方法に関し、詳しくは、構体を構成する複数のダブルスキン形材が側縁部に形成された嵌合構造によって互いに連結された鉄道車両及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車体を軽量化して消費電力の節減等を図るために、アルミニウム系の軽合金から成るダブルスキン形材を溶接接合して形成した構体を備えた鉄道車両が、開発されている。例えば、特許文献1には、図21に示すように、複数種類の中空断面に形成された軽合金形材(ダブルスキン形材)の側縁部同士を車両長手方向に沿って溶接接合して、構体100K全体をダブルスキン形材のみで構成すると共に、該構体の窓104及び出入口等の開口部105配設部分を切除した構体100Kを備えた鉄道車両100が開示されている。
【0003】
すなわち、上記鉄道車両100の構体100Kは、図21に示すように、側構体101に相当する部分を窓部形材101aと腰板形材101bで、屋根構体102に相当する部分を屋根形材102aと軒桁形材102bで、台枠103に相当する部分を床形材103aと側梁形材103bで、夫々必要に応じて適宜数組合わせて構成されている。また、図22に示すように、例えば、腰板形材101bの幅板101bcには、内板101ba及び外板101bbと面一のメス形突片101bd、101bdが、夫々突出形成されている。また、窓部形材101aの幅板101acには、前記メス形突片101bd、101bdの内側に嵌合されるオス形突片101ad、101adが、夫々突出形成されている。そして、オス形突片101ad、101adをメス形突片101bd、101bdに嵌合した後、メス形突片101bd、101bdの先端縁を、窓部形材101aの内板101aa及び外板101abに車両の長手方向に沿って連続溶接して接合される。
【0004】
しかし、1つ1つのダブルスキン形材は、押出し成形設備における成形能力等の制約により、大型化に一定の限界があった。上記鉄道車両100の構体100Kのように、構体全体をダブルスキン形材で構成するためには、数多くのダブルスキン形材を用い、ダブルスキン形材同士を溶接接合する必要があった。そして、ダブルスキン形材の幅板に突出形成したメス形突片101bd、101bdの先端縁を車両の長手方向に沿って連続溶接するので、溶接接合の多用により構体の製作コストが増大し、溶接接合時の熱歪により構体100Kの品質低下も懸念されていた。
【0005】
一方、特許文献2には、図23(A)、(B)に示すように、アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対201、202の側縁201a、202a間において、内面板201c、202c同士の突き合せ部と、外面板201b、202b同士の突き合わせ部とを、溶接して接合し構体200を形成するのに、一方の構体材201の側縁201aの外面板201bおよび内面板201cと、他方の構体材202の側縁202aの外面板202bおよび内面板202cとが、嵌合または上乗せにより重なる重なり域を有して外面板201b、202b同士、内面板201c、202c同士を突き合せて溶接のグルーブ203、204を形成し、重なり板部201e、202eがなす重なり境界面に凸部201f、202fを形成し、当て板部201d、202dがなす重なり境界面に形成しておいた凹部201g、202gに前記凸部201f、202fを嵌め合せて、前記突合せ部を溶接し接合する鉄道車両の構体200が開示されている。
【0006】
上記特許文献2に記載された鉄道車両の構体200では、重なり板部201e、202eがなす重なり境界面に凸部201f、202fを形成し、当て板部201d、202dがなす重なり境界面に形成しておいた凹部201g、202gに凸部201f、202fを嵌め合せて、前記突合せ部を溶接し接合するので、凸部201f、202fと凹部201g、202gの嵌め合い部の引っ掛かりによって、突合せ部の溶接接合時における熱歪による構体200の品質低下をある程度抑制することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2-246863号公報
【特許文献2】特開2007-167924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載された鉄道車両の構体200は、アルミニウム系の押出し形材よりなりダブルスキン構造を有した構体材対201、202の側縁201a、202a間において、内面板201c、202c同士の突き合せ部と、外面板201b、202b同士の突き合わせ部とを、溶接して接合し構体200を形成する点で、ダブルスキン形材の幅板に突出形成したメス形突片の先端縁を車両の長手方向に沿って連続溶接する特許文献1に記載された鉄道車両100の構体100Kと共通しているので、溶接接合の多用により構体200の製作コストが増大するという問題は、解決することができない。
【0009】
この問題を解決すべく、特許文献2に記載された鉄道車両の構体200において、突合せ部の溶接接合を一部に限定又は不要とするためには、凸部201f、202fと凹部201g、202gの嵌め合い部が簡単に離脱しないことが必要であるが、その場合、凸部201f、202fと凹部201g、202gの嵌め合い荷重が大きくならざるを得ない。そのため、ダブルスキン構造を有した構体材同士201、202を嵌合させる嵌合作業の負荷が増大し、構体200を製造するときの生産性が低下するという問題が生じる。
【0010】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造をダブルスキン形材の側縁部に備え、側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とし製作コストとダブルスキン形材の熱歪とを低減することができるダブルスキン形材の構体を備えた鉄道車両及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両及びその製造方法は、以下の構成を備えている。
(1)外板と内板とが幅板によって連結され中空断面を形成する複数のダブルスキン形材が、当該ダブルスキン形材の側縁部に形成された嵌合構造によって互いに連結された構体を備えた鉄道車両であって、
前記嵌合構造には、一方の前記ダブルスキン形材の側縁部に前記外板及び前記内板と面一状に形成され先端部に中空断面内方へ突出した第1嵌合爪を有する一対のメス形突片と、
他方の前記ダブルスキン形材の側縁部に形成され前記メス形突片の内側へ突設され先端部に中空断面外方へ突出し前記第1嵌合爪と嵌合可能に形成された第2嵌合爪を有する一対のオス形突片と、を備え、
前記オス形突片は、嵌合状態の前記第1嵌合爪と前記第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、嵌合構造には、一方のダブルスキン形材の側縁部に外板及び内板と面一状に形成され先端部に中空断面内方へ突出した第1嵌合爪を有する一対のメス形突片と、他方のダブルスキン形材の側縁部に形成されメス形突片の内側へ突設され先端部に中空断面外方へ突出し第1嵌合爪と嵌合可能に形成された第2嵌合爪を有する一対のオス形突片と、を備え、オス形突片は、嵌合状態の第1嵌合爪と第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されているので、一方のダブルスキン形材のメス形突片に対して、他方のダブルスキン形材のオス形突片を、オス形突片が中空断面内方へ弾性変形しうる程度の小さい荷重で、近接させることによって、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを簡単に嵌合させることができる。
【0013】
すなわち、一方のダブルスキン形材のメス形突片と他方のダブルスキン形材のオス形突片とを、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させ得る程度の荷重で近接させるだけで、中空断面内方へ突出した第1嵌合爪が中空断面外方へ突出した第2嵌合爪に当接してオス形突片を中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪に対して第2嵌合爪を乗り越えさせたとき、オス形突片が中空断面外方へ自動的に弾性復帰して、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合する。そのため、ダブルスキン形材の第1嵌合爪と第2嵌合爪とを嵌合させる作業負荷を軽減でき、構体を製造するときの生産性を向上できる。
【0014】
一方、嵌合状態の第1嵌合爪と第2嵌合爪とを離脱させる荷重は、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが互いに反対方向へ押し合う荷重によって打ち消され、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合された嵌合状態では、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させて第1嵌合爪に対して第2嵌合爪を離脱させることは容易ではなく、第1嵌合爪と第2嵌合爪との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材の側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、ダブルスキン形材の側縁部に形成された嵌合構造によって互いに連結された構体において、製作コストとダブルスキン形材の熱歪とを低減することができる。
【0015】
よって、本発明によれば、簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造をダブルスキン形材の側縁部に備え、側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とし製作コストとダブルスキン形材の熱歪とを低減することができるダブルスキン形材の構体を備えた鉄道車両を提供することができる。
【0016】
(2)(1)に記載された鉄道車両において、
前記第1嵌合爪には、前記第1嵌合爪と前記第2嵌合爪とを嵌合させる際に、前記第2嵌合爪と当接して前記オス形突片を中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部が形成され、
前記第2嵌合爪は、前記ガイド部から離間したとき、前記オス形突片が弾性復帰して前記第1嵌合爪と嵌合可能に形成されていることを特徴とする。
【0017】
本発明においては、第1嵌合爪には、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを嵌合させる際に、第2嵌合爪と当接してオス形突片を中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部が形成され、第2嵌合爪は、ガイド部から離間したとき、オス形突片が弾性復帰して第1嵌合爪と嵌合可能に形成されているので、一方のダブルスキン形材のメス形突片と他方のダブルスキン形材のオス形突片とを、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させ得る程度の荷重で近接させるだけで、ガイド部が第2嵌合爪に当接してオス形突片を中空断面内方へ徐々に弾性変形させて、第1嵌合爪に対して第2嵌合爪を乗り越えさせ、ガイド部が第2嵌合爪から離間したとき、オス形突片が中空断面外方へ自動的に弾性復帰して、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを嵌合させることができる。そのため、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪に対して第2嵌合爪を乗り越えさせる作業負荷を傾斜状のガイド部によって軽減でき、構体を製造するときの生産性を向上できる。
【0018】
一方、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合された嵌合状態では、ガイド部が第2嵌合爪から離間しており、ガイド部を介してオス形突片を中空断面内方へ弾性変形させることはできない。そのため、第1嵌合爪に対して第2嵌合爪を乗り越えさせことは容易ではなく、第1嵌合爪と第2嵌合爪との嵌合状態を簡単に解除することができない。したがって、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材同士の連結強度を高めることができる。その結果、より簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造をダブルスキン形材の側縁部に備え、側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0019】
(3)(2)に記載された鉄道車両において、
前記ガイド部が前記外板及び前記内板に対して傾斜する傾斜角は、15度以上で45度より小さく形成され、前記第1嵌合爪と前記第2嵌合爪とが嵌合状態にて当接する嵌合壁が前記外板及び前記内板に対して傾斜する傾斜角は、90度以下で45度より大きく形成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明においては、ガイド部が外板及び内板に対して傾斜する傾斜角(内角)は、15度以上で45度より小さく形成され、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合状態にて当接する嵌合壁が外板及び内板に対して傾斜する傾斜角(内角)は、90度以下で45度より大きく形成されているので、ダブルスキン形材の側縁部同士を近接させて、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを嵌合させる際に、ガイド部から第2嵌合爪が受ける反力の内、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させる分力を、ダブルスキン形材の側縁部同士を離間させる方向に作用する分力より大きくさせることができ、また、嵌合状態の第1嵌合爪と第2嵌合爪とを離脱させる際に、第1嵌合爪の嵌合壁から第2嵌合爪が受ける反力の内、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させる分力を、ダブルスキン形材の側縁部同士を近接させる方向に作用する分力より小さくさせることができる。そのため、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを、より一層嵌合させ易くすると共に、より一層離脱させ難くすることができる。その結果、ダブルスキン形材の嵌合構造における嵌合作業の負荷をより一層軽減できると同時に、嵌合構造における連結強度をより一層向上させて、ダブルスキン形材の側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0021】
(4)(1)乃至(3)いずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記メス形突片には、先端部に前記第1嵌合爪が形成された板状の第1腕部を備え、前記オス形突片には、先端部に前記第2嵌合爪が形成された板状の第2腕部を備え、
前記第2腕部の板厚は、前記第1腕部の板厚より小さく形成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、メス形突片には、先端部に第1嵌合爪が形成された板状の第1腕部を備え、オス形突片には、先端部に第2嵌合爪が形成された板状の第2腕部を備え、第2腕部の板厚は、第1腕部の板厚より小さく形成されているので、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを嵌合させる際、より一層小さい荷重で第2腕部を撓ませ、中空断面内方へ弾性変形させることができる。そのため、第1嵌合爪と第2嵌合爪とをより一層簡単に嵌合させることができる。その結果、ダブルスキン形材の嵌合構造における嵌合作業の負荷をより一層軽減でき、構体を製造するときの生産性を向上できる。
【0023】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記嵌合構造には、他方の前記ダブルスキン形材の側縁部と前記メス形突片と前記オス形突片とに囲まれた溝部を外板側又は内板側の少なくとも一方に備え、
前記溝部には、弾性体からなるシール部材が装着されていることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、他方のダブルスキン形材の側縁部とメス形突片とオス形突片とに囲まれた溝部を外板側と内板側の少なくとも一方に備え、溝部には、弾性体からなるシール部材が装着されているので、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合した嵌合状態において、メス形突片とオス形突片との間に生じる微小な隙間を、溝部内に装着された弾性体から成るシール部材によって簡単に塞ぐことができる。また、溝部内に装着されたシール部材の弾性力によって、第1嵌合爪と第2嵌合爪との嵌合を密着させることができる。そのため、ダブルスキン形材の側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とした場合においても、第1嵌合爪と第2嵌合爪との嵌合を密着させつつ異音を防止し、ダブルスキン形材の側縁部同士の水密性、気密性を弾性体からなるシール部材によって簡単に確保させることができる。
【0025】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記構体は、レール上を走行する台車に搭載された台枠であること、
前記ダブルスキン形材は、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように前記台枠の側梁と枕梁の間に配列され、前記ダブルスキン形材における貫通方向端部が前記側梁に溶接接合されていることを特徴とする。
【0026】
本発明においては、構体は、レール上を走行する台車に搭載された台枠であり、ダブルスキン形材は、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように台枠の側梁と枕梁の間に配列され、ダブルスキン形材における貫通方向端部が側梁に溶接接合されているので、ダブルスキン形材を中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列された従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、1つ1つのダブルスキン形材の側縁部の長さを短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材の側縁部同士を近接させて、第1嵌合爪と第2嵌合爪とを嵌合させる嵌合時の荷重を軽減でき、台枠を製造するときの生産性を向上できる。
【0027】
また、ダブルスキン形材における貫通方向端部が台枠の側梁に溶接接合によって固定されているので、ダブルスキン形材の側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とした場合でも、隣接するダブルスキン形材同士のレール方向におけるガタツキや軋みを抑制できる。また、ダブルスキン形材の貫通方向端部を側梁に溶接固定したことによって、台枠に対するレール方向及び枕木方向の耐荷重を向上させることができる。
【0028】
(7)(6)に記載された鉄道車両において、
前記台枠には、枕木方向の中央部にレール方向へ延設された中梁を備え、
前記ダブルスキン形材の枕木方向の中央部は、前記中梁と溶接接合されていることを特徴とする。
【0029】
本発明においては、台枠には、枕木方向の中央部にレール方向へ延設された中梁を備え、ダブルスキン形材の枕木方向の中央部は、中梁と溶接接合されているので、ダブルスキン形材に対するレール方向の荷重を左右の側梁と中央部の中梁とに分散して受け止めることができる。そのため、ダブルスキン形材の側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とした場合でも、隣接するダブルスキン形材同士のガタツキや軋みをより一層抑制でき、また、台枠に対する耐衝突荷重をより一層向上させることができる。
【0030】
(8)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記構体は、レール上を走行する台車に搭載された台枠であること、
前記ダブルスキン形材は、中空断面の貫通方向がレール方向になるように前記台枠の側梁と枕梁の間に配列され、前記ダブルスキン形材における貫通方向端部が前記枕梁に溶接接合されていることを特徴とする。
【0031】
本発明においては、構体は、レール上を走行する台車に搭載された台枠であり、ダブルスキン形材は、中空断面の貫通方向がレール方向になるように台枠の側梁と枕梁の間に配列され、ダブルスキン形材における貫通方向端部が枕梁に溶接接合されているので、ダブルスキン形材の中空断面の貫通方向における長さが大きくなり、使用するブルスキン形材の数量を低減させることができる。そのため、ダブルスキン形材の側縁部に形成された嵌合構造を嵌合させる嵌合時の荷重は増大するものの、その嵌合回数を低減させることができる。その結果、ダブルスキン形材の側縁部同士を連続溶接する従来例(特許文献1、2を参照)の作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができ、台枠を製造するときの生産性を向上できる。
【0032】
一方、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合され、ダブルスキン形材における貫通方向端部が台枠の枕梁に溶接接合された状態では、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させて第1嵌合爪に対して第2嵌合爪を乗り越えさせることが容易ではなく、第1嵌合爪と第2嵌合爪との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第1嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材の側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0033】
(9)(8)に記載された鉄道車両において、
前記側梁と前記ダブルスキン形材の側縁部とが、レール方向に延設された第2の嵌合構造によって連結されていることを特徴とする。
【0034】
本発明においては、側梁とダブルスキン形材の側縁部とが、レール方向に延設された第2の嵌合構造によって連結されているので、側梁の側縁部とダブルスキン形材の側縁部とをレール方向へ溶接するような従来の溶接施工の手間を掛けることなく、側梁とダブルスキン形材の側縁部とを第2の嵌合構造を介して簡単に連結し、台枠を製造するときの生産性を向上できる。
【0035】
(10)(9)に記載された鉄道車両において、
前記第2の嵌合構造には、前記側梁の側壁から水平状に突設され先端部に中空断面内方へ突出し前記オス形突片の前記第2嵌合爪と嵌合可能に形成された第3嵌合爪を有する一対の第2のメス形突片を備え、
前記オス形突片は、嵌合状態の前記第3嵌合爪と前記第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることを特徴とする。
【0036】
本発明においては、第2の嵌合構造には、側梁の側壁から水平状に突設され先端部に中空断面内方へ突出しオス形突片の第2嵌合爪と嵌合可能に形成された第3嵌合爪を有する一対の第2のメス形突片を備え、オス形突片は、嵌合状態の第3嵌合爪と第2嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されているので、側梁に形成された第2のメス形突片と、ダブルスキン形材の側縁部に形成されたオス形突片とを嵌合させる場合も、ダブルスキン形材の側縁部同士の間に形成された嵌合構造を嵌合させる場合と同様に、嵌合時の荷重が増大するものの、嵌合させる回数を低減させることができる。そのため、側梁にダブルスキン形材の側縁部を溶接接合する作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。
【0037】
一方、第3嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合され、ダブルスキン形材における貫通方向端部が台枠の枕梁に溶接接合された状態では、オス形突片を中空断面内方へ弾性変形させて第3嵌合爪に対して第2嵌合爪を乗り越えさせることが容易ではなく、第3嵌合爪と第2嵌合爪との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第3嵌合爪と第2嵌合爪とが嵌合された嵌合状態にて、側梁とダブルスキン形材との連結強度を高めることができ、側梁とダブルスキン形材の側縁部との溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0038】
(11)(8)乃至(10)のいずれか1つに記載された鉄道車両において、
前記ダブルスキン形材の内板と客室用床部材を支持する床支持中空形材とが、レール方向に延設された第3の嵌合構造によって連結されていることを特徴とする。
【0039】
本発明においては、ダブルスキン形材の内板と客室用床部材を支持する床支持中空形材とが、レール方向に延設された第3の嵌合構造によって連結されているので、客室用床部材と台枠との間に床支持形材をレール方向へ溶接するような従来の溶接施工の手間を掛けることなく、客室用床部材を支持する床支持中空形材と台枠とを第3の嵌合構造を介して簡単に連結し、例えば空調用ダクトの配設スペースを簡単に設けることができる。
【0040】
(12)(11)に記載された鉄道車両において、
前記第3の嵌合構造には、前記ダブルスキン形材の内板から上方へ突設され先端部に前記床支持中空形材の中空断面内方へ突出した第4嵌合爪を有する一対の第3のメス形突片と、
前記床支持中空形材の下端部から前記第3のメス形突片の内側へ弾性変形可能に突設され先端部に前記床支持中空形材の中空断面外方へ突出し前記第4嵌合爪と嵌合可能に形成された第5嵌合爪を有する一対の第2のオス形突片と、を備え、
前記第2のオス形突片は、嵌合状態の前記第4嵌合爪と前記第5嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で前記床支持中空形材の中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることを特徴とする。
【0041】
本発明においては、第3の嵌合構造には、ダブルスキン形材の内板から上方へ突設され先端部に床支持中空形材の中空断面内方へ突出した第4嵌合爪を有する一対の第3のメス形突片と、床支持中空形材の下端部から第3のメス形突片の内側へ弾性変形可能に突設され先端部に床支持中空形材の中空断面外方へ突出し第4嵌合爪と嵌合可能に形成された第5嵌合爪を有する一対の第2のオス形突片と、を備え、第2のオス形突片は、嵌合状態の第4嵌合爪と第5嵌合爪とを離脱させる荷重より小さい荷重で床支持中空形材の中空断面内方へ弾性変形可能に形成されているので、ダブルスキン形材の内板に形成された第3のメス形突片と、床支持中空形材の下端部に形成された第2のオス形突片とを嵌合させる場合も、ダブルスキン形材の側縁部同士の間に形成された嵌合構造を嵌合させる場合と同様に、嵌合時の荷重が増大するものの、嵌合させる回数を低減させることができる。そのため、ダブルスキン形材の内板に床支持中空形材を溶接接合する作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。
【0042】
一方、第4嵌合爪と第5嵌合爪とが嵌合された状態では、第2のオス形突片を中空断面内方へ弾性変形させて第4嵌合爪に対して第5嵌合爪を乗り越えさせることが容易ではなく、第4嵌合爪と第5嵌合爪との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第4嵌合爪と第5嵌合爪とが嵌合された嵌合状態にて床支持中空形材とダブルスキン形材との連結強度を高めることができ、床支持中空形材とダブルスキン形材の内板との溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、客室用床部材と台枠との間に、例えば空調用ダクトの配設スペースをより一層簡単に設けることができる。
【0043】
(13)(6)又は(7)に記載された鉄道車両の製造方法であって、
前記ダブルスキン形材を所定の長さに切断する切断工程と、前記切断工程にて切断した前記ダブルスキン形材の前記側縁部同士を前記嵌合構造によって連結しながら中空断面の貫通方向を枕木方向へ向けて前記側梁と前記枕梁の間に前記ダブルスキン形材を配列する配列工程と、前記配列工程にて配列した前記ダブルスキン形材の前記貫通方向端部を前記側梁に溶接接合する溶接工程とを備えたことを特徴とする。
【0044】
本発明においては、ダブルスキン形材を所定の長さに切断する切断工程と、切断工程にて切断したダブルスキン形材の側縁部同士を嵌合構造によって連結しながら中空断面の貫通方向を枕木方向へ向けて側梁と枕梁の間にダブルスキン形材を配列する配列工程と、配列工程にて配列したダブルスキン形材の貫通方向端部を側梁に溶接接合する溶接工程とを備えたので、ダブルスキン形材を中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列されダブルスキン形材の側縁部同士を連続溶接した従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材の溶接長を短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材の溶接接合に伴う熱歪を低減して品質向上に寄与できると共に、溶接時間を短縮して、台枠を製造するときの生産性を向上できる。
【0045】
(14)(8)乃至(12)のいずれか1つに記載された鉄道車両の製造方法であって、
前記ダブルスキン形材を所定の長さに切断する切断工程と、前記切断工程にて切断した前記ダブルスキン形材の前記側縁部同士を前記嵌合構造によって連結しながら中空断面の貫通方向をレール方向へ向けて前記側梁と前記枕梁の間に前記ダブルスキン形材を配列する配列工程と、前記配列工程にて配列した前記ダブルスキン形材の前記貫通方向端部を前記枕梁に溶接接合する溶接工程とを備えたことを特徴とする。
【0046】
本発明においては、ダブルスキン形材を所定の長さに切断する切断工程と、切断工程にて切断したダブルスキン形材の側縁部同士を嵌合構造によって連結しながら側梁と枕梁の間にダブルスキン形材を配列する配列工程と、配列工程にて配列したダブルスキン形材の貫通方向端部を枕梁に溶接接合する溶接工程とを備えたので、ダブルスキン形材を中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列されダブルスキン形材の側縁部同士を連続溶接した従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材の溶接長を短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材の溶接接合に伴う熱歪を低減して品質向上に寄与できると共に、溶接時間を短縮して、台枠を製造するときの生産性を向上できる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造をダブルスキン形材の側縁部に備え、側縁部同士の溶接接合を一部に限定又は不要とし製作コストとダブルスキン形材の熱歪を低減することができるダブルスキン形材の構体を備えた鉄道車両及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態の一態様(第1実施例)に係る鉄道車両の概略断面図である。
図2図1に示す鉄道車両におけるA矢視平面図である。
図3図2に示すB‐B断面図である。
図4図3に示すD部(嵌合構造)の詳細断面図である。
図5図4に示す嵌合構造の動作説明図であって、(A)は嵌合途中の断面図を示し、(B)は嵌合完了時の断面図を示す。
図6図4に示す嵌合構造において、オス形突片に対して嵌合途中に作用する反力と嵌合完了時に作用する反力の動作説明図である。
図7図2に示すC-C断面図である。
図8】本発明の実施形態の一態様(第2実施例)に係る鉄道車両の概略断面図である。
図9図8に示すE矢視平面図である。
図10図8に示す第2実施例の変形例に係る鉄道車両の概略断面図である。
図11図10に示すF矢視平面図である。
図12】本発明の実施形態の一態様(第3実施例)に係る鉄道車両の概略断面図である。
図13図12に示す鉄道車両におけるG矢視平面図である。
図14図13に示すH‐H断面図である。
図15図12に示す第3実施例の変形例に係る鉄道車両の概略断面図である。
図16図15に示すI部(嵌合構造)の詳細断面図である。
図17】本発明の実施形態の一態様(第1~3実施例)に係る鉄道車両の製造方法に対するフローチャート図である。
図18図4に示す嵌合構造の溝部に対する変形例の断面図であって、(A)はV字断面溝部を示し、(B)は円弧断面溝部を示し、(C)は角型末広断面溝部を示し、(D)は台形型末広断面溝部を示す。
図19図4に示す嵌合構造の溝部を廃止する変形例の断面図であって、(A)は傾斜接合部を示し、(B)は垂直接合部を示し、(C)はリベット接合部を示す。
図20図4に示す嵌合構造の変形例における動作説明図であって、(A)は嵌合途中の断面図を示し、(B)は嵌合完了時の断面図を示す。
図21】特許文献1に開示された鉄道車両における構体の概略斜視図である。
図22図21に示す鉄道車両における窓部形材と腰板形材との接合状態を示す断面図である。
図23】特許文献2に開示された鉄道車両の構体の断面図であって、(A)はダブルスキン構造を有した構体材の断面図を示し、(B)は(A)に示すX部の詳細断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
次に、本発明の実施形態の一態様(第1~3実施例)に係る鉄道車両及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態の一態様(第1~3実施例)に係る鉄道車両の構成及び動作方法を詳細に説明した上で、他の実施形態に係る本鉄道車両の製造方法について詳細に説明する。
【0050】
<本鉄道車両の構成及び動作方法>
(第1実施例)
まず、第1実施例に係る本鉄道車両の構成及び動作方法について、図1図7を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態の一態様(第1実施例)に係る鉄道車両の概略断面図を示す。図2に、図1に示す鉄道車両におけるA矢視平面図を示す。図3に、図2に示すB‐B断面図を示す。図4に、図3に示すD部(嵌合構造)の詳細断面図を示す。図5に、図4に示す嵌合構造の動作説明図であって、(A)は嵌合途中の断面図を示し、(B)は嵌合完了時の断面図を示す。図6に、図4に示す嵌合構造において、オス形突片に対して嵌合途中に作用する反力と嵌合完了時に作用する反力の動作説明図を示す。図7に、図2に示すC-C断面図を示す。
【0051】
図1図7に示すように、第1実施例に係る本鉄道車両10は、外板11(11a、11b)と内板12(12a、12b)とが幅板13(13a、13b)によって連結され中空断面を形成する複数のダブルスキン形材1(1a、1b)が、当該ダブルスキン形材1(1a、1b)の側縁部14(14a、14b)に形成された嵌合構造2によって互いに連結された構体10Kを備えた鉄道車両10である。ここでは、構体10Kは、レールRL上を走行する台車DSに搭載された台枠10K1であるが、必ずしも、台枠10K1に限る必要はない。例えば、車両側端に配置される側構体や、車両前端又は車両後端に配置される妻構体、車両上端に配置される屋根構体等でも良い。なお、ダブルスキン形材1は、アルミニウム系の軽量形材で、押出し成形によって形成される。そのため、嵌合構造2は、ダブルスキン形材1の押出し方向(中空断面の貫通方向)に沿って同一の断面形状で形成されている。
【0052】
また、図3図4に示すように、嵌合構造2には、一方のダブルスキン形材1(1a)の側縁部14(14a)に外板11(11a)及び内板12(12a)と面一状に形成され先端部に中空断面内方へ突出した第1嵌合爪22を有する一対のメス形突片2Fと、他方のダブルスキン形材1(1b)の側縁部14(14b)に形成されメス形突片2Fの内側へ突設され先端部に中空断面外方へ突出し第1嵌合爪22と嵌合可能に形成された第2嵌合爪24を有する一対のオス形突片2Mと、を備えている。
【0053】
そして、図5に示すように、オス形突片2Mは、嵌合状態の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させる荷重Q3より小さい荷重Q2で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されている。そのため、一方のダブルスキン形材1aのメス形突片2Fに対して、他方のダブルスキン形材1bのオス形突片2Mを、オス形突片2Mが中空断面内方へ弾性変形しうる程度の小さい荷重Q1で、近接させることによって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを簡単に嵌合させることができる。
【0054】
すなわち、一方のダブルスキン形材1aのメス形突片2Fと他方のダブルスキン形材1bのオス形突片2Mとを、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させ得る程度の荷重Q1で近接させるだけで、中空断面内方へ突出した第1嵌合爪22が中空断面外方へ突出した第2嵌合爪24に当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせたとき、オス形突片2Mが中空断面外方へ自動的に弾性復帰して、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合する。そのため、ダブルスキン形材1a、1bの第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる作業負荷を軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0055】
一方、嵌合状態の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させる荷重Q3は、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが互いに反対方向へ押し合う荷重Q4によって打ち消され、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を離脱させることは容易ではなく、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材1a、1b同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材1a、1bの側縁部14a、14b同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、ダブルスキン形材1の側縁部14に形成された嵌合構造2によって互いに連結された構体10Kにおいて、製作コストとダブルスキン形材1の熱歪とを低減することができる。
【0056】
よって、第1実施例に係る本鉄道車両10によれば、簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造2をダブルスキン形材1の側縁部14に備え、側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とし製作コストとダブルスキン形材の熱歪を低減することができるダブルスキン形材1の構体10K(台枠10K1)を備えた鉄道車両10を提供することができる。
【0057】
また、図4図5に示すように、第1嵌合爪22には、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる際に、第2嵌合爪24と当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部GBが形成され、第2嵌合爪24は、ガイド部GBから離間したとき、オス形突片2Mが弾性復帰して第1嵌合爪22と嵌合可能に形成されていることが好ましい。ここでは、第1嵌合爪22は、頂点が中空断面内方に位置する略直角三角形の断面形状に形成されている。また、ガイド部GBは、略直角三角形の斜辺部221に沿って形成されている。また、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて当接する嵌合壁222、242は、外板11及び内板12に対して略垂直状に起立して形成されている。第2嵌合爪24は、水平壁241と嵌合壁242とから成る略四角形の断面形状に形成されている。ガイド部GBに当接する第2嵌合爪24の角部は円弧状に形成されている。
【0058】
この場合、一方のダブルスキン形材1aのメス形突片2Fと他方のダブルスキン形材1bのオス形突片2Mとを、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させ得る程度の荷重Q1で近接させるだけで、ガイド部GBが第2嵌合爪24に当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ徐々に弾性変形させて、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせ、ガイド部GBが第2嵌合爪24から離間したとき、オス形突片2Mが中空断面外方へ自動的に弾性復帰して、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合する。そのため、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせる作業負荷を傾斜状のガイド部GBによって軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0059】
一方、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態では、ガイド部GBが第2嵌合爪24から離間しており、ガイド部GBを介してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させることはできない。そのため、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせることは容易ではなく、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。したがって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材1a、1b同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材1a、1bの側縁部14a、14b同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、より簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造2をダブルスキン形材1の側縁部14に備え、側縁部14同士の溶接接合に伴う製作コストとダブルスキン形材1の熱歪とを低減することができる。
【0060】
また、図4に示すように、ガイド部GB(斜辺部221)が外板11及び内板12に対して傾斜する傾斜角(内角)θ1は、15度以上で45度より小さく形成され、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合状態にて当接する嵌合壁222、242が外板11及び内板12に対して傾斜する傾斜角(内角)θ2は、90度以下で45度より大きく形成されていることが好ましい。ここで、外板11及び内板12に対するガイド部GBの傾斜角(内角)θ1は、20~30度程度がより好ましい。また、外板11及び内板12に対する嵌合壁222、242の傾斜角(内角)θ2は、80~90度程度がより好ましい。
【0061】
この場合、図6に示すように、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させるため、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を近接させる際に、第2嵌合爪24は、ガイド部GBに当接し、ガイド部GBから法線方向の反力F1を受ける。この反力F1の内、メス形突片2Fに対してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させる分力F12は、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を離間させる方向に作用する分力F11より大きくなる。そのため、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を小さな力で近接させるだけで、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを簡単に嵌合させることができる。
【0062】
一方、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合した嵌合状態では、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を離間させる際に、第2嵌合爪24は、第1嵌合爪22の嵌合壁222から法線方向の反力F2を受ける。この反力F2の内、メス形突片2Fに対してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させる分力F22は、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を近接させる方向に作用する分力F21より小さくなる。そのため、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を相当大きな力で離間させなければ、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させることができない。
【0063】
したがって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを、より一層嵌合させ易くすると共に、より一層離脱させ難くすることができる。その結果、ダブルスキン形材1の嵌合構造2における嵌合作業の負荷をより一層軽減できると同時に、嵌合構造2にける連結強度をより一層向上させて、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とし製作コストとダブルスキン形材1の熱歪とを低減することができる。
【0064】
また、図4図5に示すように、メス形突片2Fには、先端部に第1嵌合爪22が形成された板状の第1腕部21を備え、オス形突片2Mには、先端部に第2嵌合爪24が形成された板状の第2腕部23を備え、第2腕部23の板厚t2は、第1腕部21の板厚t1より小さく形成されていることが好ましい。なお、第1腕部21は、外板11a及び内板12aと面一で直線状に形成され、第2腕部23は、第2嵌合爪24が形成された先端側がガイド部GBに沿って傾斜状に形成され、他方のダブルスキン形材1bの側縁部14bに形成された幅板13bと連結された基端部231との交差部232にてへの字状に屈曲するように形成されている。第2腕部23は、オス形突片2Mの弾性変形する領域23Kに相当する。
【0065】
この場合、第1嵌合爪22を支持する第1腕部21の強度より、第2嵌合爪24を支持する第2腕部23の強度の方が弱く、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる際、より一層小さい荷重Q2で第2腕部23を撓ませ、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させることができる。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とをより一層簡単に嵌合させることができる。その結果、ダブルスキン形材1の嵌合構造2における嵌合作業の負荷をより一層軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0066】
また、他方のダブルスキン形材1bの側縁部14bとメス形突片2Fとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15を外板側と内板側の少なくとも一方に備え、溝部15bには、弾性体からなるシール部材3が装着されていることが好ましい。ここでは、溝部15を外板側と内板側の両側に備え、シール部材3は、内板側の溝部15bのみに装着されているが、外板側の溝部15aのみに装着しても良いし、両方の溝部15a、15bに装着しても良い。
【0067】
この場合、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合した嵌合状態において、メス形突片2Fとオス形突片2Mとの間に生じる微小な隙間を、溝部15b内に装着された弾性体から成るシール部材3によって簡単に塞ぐことができる。また、溝部15b内に装着されたシール部材3の弾性力によって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合を密着させることができる。そのため、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とした場合においても、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合を密着させつつ異音を防止し、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の水密性、気密性を弾性体からなるシール部材3によって簡単に確保させることができる。なお、シール部材3を装着しない箇所で、ダブルスキン形材1の外板11又は内板12に熱歪を生じさせない範囲に限定して、溝部15を部分的に溶接接合(肉盛溶接)することによって、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の連結強度を、更に高めることができる。
【0068】
また、図1図3図7に示すように、構体10Kは、レールRL上を走行する台車DSに搭載された台枠10K1であり、ダブルスキン形材1は、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように台枠10K1の側梁4の間に配列され、ダブルスキン形材1における貫通方向端部16が側梁4に溶接接合されていることが好ましい。ここで、図1に示すように、ダブルスキン形材1における貫通方向端部16は、側梁4の側壁にアーク溶接等によって、直接、溶接接合されても良いが、図7に示すように、貫通方向端部16を挿入可能な平行な側縁フランジ部41を側壁に備えた側梁4をレール方向に貫通する中空断面を有するダブルスキン形材として形成し、側縁フランジ部41間に挿入されたダブルスキン形材1の貫通方向端部16において外板11と内板12とが、側縁フランジ部41の端縁と溶接接合されていても良い。
【0069】
なお、図2に示すように、台枠10K1には、レール方向に延設された左右の側梁4と、側梁4のレール方向端部同士を連結する端梁6と、左右の側梁4と連結され台車DSに搭載される枕梁5と、枕木方向の中央部で端梁6と枕梁5とを連結する中梁7と、を備えている。枕梁5は、レール方向前方及びレール方向後方に形成されている。ここでは、ダブルスキン形材1は、レール方向前方の枕梁5とレール方向後方の枕梁5との間で、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように平行に配列され、貫通方向端部16が左右の側梁4に溶接接合されているが、枕梁5と端梁6との間で、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように平行に配列され、貫通方向端部16が左右の側梁4に溶接接合されていても良い。
【0070】
この場合、ダブルスキン形材1を中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列された従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、1つ1つのダブルスキン形材1における側縁部14の長さを短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を近接させて、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる嵌合時の荷重を軽減でき、構体10K(台枠10K1)を製造するときの生産性を向上できる。
【0071】
また、ダブルスキン形材1における貫通方向端部16が台枠10K1の側梁4に溶接接合によって固定されているので、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の溶接接合を略不要とすることができ、溶接に伴う製作コストを大幅に低減できる。また、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の溶接接合を略不要とした場合でも、隣接するダブルスキン形材1同士のレール方向におけるガタツキや軋みを、貫通方向端部16が台枠10K1の側梁4に溶接固定されたことによって、大幅に抑制できる。また、ダブルスキン形材1の側縁部14同士が嵌合構造2によって連結され、ダブルスキン形材1の貫通方向端部16を側梁4に溶接固定されたことによって、台枠10K1に対するレール方向及び枕木方向の耐荷重を向上させることができる。
【0072】
(第2実施例)
次に、第2実施例に係る本鉄道車両の構成及び動作方法について、図3図8図11を用いて説明する。図8に、本発明の実施形態の一態様(第2実施例)に係る鉄道車両の概略断面図を示す。図9に、図8に示すE矢視平面図を示す。図10に、図8に示す第2実施例の変形例に係る鉄道車両の概略断面図を示す。図11に、図10に示すF矢視平面図を示す。
【0073】
図3図8図11に示すように、第2実施例に係る本鉄道車両10B、10Cは、外板11と内板12とが幅板13によって連結され中空断面を形成する複数のダブルスキン形材1、1Cが、当該ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14に形成された嵌合構造2によって互いに連結された構体10Kを備えた鉄道車両10B、10Cである。また、構体10Kは、レールRL上を走行する台車DSに搭載された台枠10K2、10K3であり、ダブルスキン形材1、1Cは、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように台枠10K2、10K3の側梁4と枕梁5の間に配列され、ダブルスキン形材1、1Cにおける貫通方向端部16、16Cが側梁4に溶接接合されている。以上の点は、第1実施例と共通するので、第1実施例と共通する構成(嵌合構造等)については共通の符号を付して、これらに関する詳細な説明は割愛する。
【0074】
第2実施例に係る本鉄道車両10B、10Cは、図8図11に示すように、台枠10K2、10K3には、レール方向前方の枕梁5とレール方向後方の枕梁5との間で、枕木方向の中央部にレール方向へ延設された中梁7B、7Cを備え、ダブルスキン形材1、1Cの枕木方向の中央部1Tは、中梁7B、7Cと溶接接合されている点が、第1実施例と相違する。
【0075】
上記相違点によって、ダブルスキン形材1、1Cに対するレール方向の荷重を左右の側梁4と中央部の中梁7B、7Cとに分散して受け止めることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士の溶接接合を略不要とした場合でも、隣接するダブルスキン形材1、1C同士のガタツキや軋みをより一層抑制でき、また、台枠10K2、10K3に対する耐衝突荷重をより一層向上させることができる。
【0076】
なお、図8に示すように、ダブルスキン形材1の枕木方向の中央部1Tが中梁7Bの上端(又は下端)に溶接接合された台枠10K2でも良いし、図10に示すように、ダブルスキン形材1の枕木方向の中央部1Tが中梁7Cの側壁に溶接接合された台枠10K3でも良い。また、図示していないが、ダブルスキン形材1は、枕梁5と端梁6との間で、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように平行に配列され、貫通方向端部16が左右の側梁4に溶接接合され、ダブルスキン形材1の枕木方向の中央部1Tは、枕梁5と端梁6との間で枕木方向の中央部にレール方向へ延設された中梁7と溶接接合されていても良い。
【0077】
(第3実施例)
次に、第3実施例に係る本鉄道車両の構成及び動作方法について、図12図16を用いて説明する。図12に、本発明の実施形態の一態様(第3実施例)に係る鉄道車両の概略断面図を示す。図13に、図12に示す鉄道車両におけるG矢視平面図を示す。図14に、図13に示すH‐H断面図を示す。図15に、図12に示す第3実施例の変形例に係る鉄道車両の概略断面図を示す。図16に、図15に示すI部(嵌合構造)の詳細断面図を示す。
【0078】
図12図16に示すように、第3実施例に係る本鉄道車両10D、10Eは、外板11と内板12とが幅板13によって連結され中空断面を形成する複数のダブルスキン形材1、1Eが、当該ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14に形成された嵌合構造2によって互いに連結された構体10Kを備えた鉄道車両10D、10Eである。また、構体10Kは、レールRL上を走行する台車DSに搭載された台枠10K4、10K5である。以上の点は、第1実施例と共通するので、第1実施例と共通する構成(嵌合構造等)については共通の符号を付して、これらに関する詳細な説明は割愛する。
【0079】
第3実施例に係る本鉄道車両10D、10Eは、図12図16に示すように、ダブルスキン形材1、1Eは、中空断面の貫通方向がレール方向になるように台枠10K4、10K5の側梁4Dと枕梁5の間に配列され、ダブルスキン形材1、1Eにおける貫通方向端部16が台枠10K4、10K5の枕梁5に溶接接合されている点が、第1実施例と相違する。
【0080】
上記相違点によって、ダブルスキン形材1、1Eの中空断面の貫通方向における長さが大きくなり、使用するブルスキン形材1、1Eの数量を低減させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14に形成された嵌合構造2を嵌合させる嵌合時の荷重は増大するものの、その嵌合回数を低減させることができる。したがって、従来例(特許文献1、2を参照)のように、ダブルスキン形材1の側縁部14同士を溶接接合する作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。その結果、台枠10K4、10K5を製造するときの生産性を向上でき、台枠10K4、10K5の製作コストを低減できる。
【0081】
一方、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合され、ダブルスキン形材1、1Eにおける貫通方向端部16が台枠10K4、10K5の枕梁5に溶接接合された状態では、メス形突片2Fに対してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせることが容易ではなく、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、台枠10K4、10K5の製作コストとダブルスキン形材1、1Eの熱歪とを低減することができる。
【0082】
また、図12図14に示すように、側梁4Dとダブルスキン形材1の側縁部14とが、レール方向に延設された第2の嵌合構造2Dによって連結されていることが好ましい。この場合、側梁4Dの側壁4D1とダブルスキン形材1の側縁部14とをレール方向へ溶接するような従来の溶接施工の手間を掛けることなく、側梁4Dとダブルスキン形材1の側縁部14とを第2の嵌合構造2Dを介して簡単に連結し、台枠10K4、10K5を製造するときの生産性を向上できる。
【0083】
また、図12図14に示すように、第2の嵌合構造2Dには、側梁4Dの側壁4D1から水平状に突設され先端部に中空断面内方へ突出しオス形突片2Mの第2嵌合爪24と嵌合可能に形成された第3嵌合爪42Dを有する一対の第2のメス形突片2DFを備え、オス形突片2Mは、嵌合状態の第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることが好ましい。
【0084】
また、第3嵌合爪42Dには、第2嵌合爪24の嵌合壁242と当接する嵌合壁422Dが、外板11及び内板12に対して略垂直状に起立して形成されている。また、第3嵌合爪42Dには、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とを嵌合させる際に、第2嵌合爪24と当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部2GBが形成され、第2嵌合爪24は、ガイド部2GBから離間したとき、オス形突片2Mが弾性復帰して第3嵌合爪42Dと嵌合可能に形成されていることが好ましい。ここでは、第3嵌合爪42Dは、頂点が中空断面内方に位置する略直角三角形の断面形状に形成されている。また、ガイド部2GBは、略直角三角形の斜辺部421Dに沿って形成されている。また、第2のメス形突片2DFには、先端部に第3嵌合爪42Dが形成された板状の第3腕部41Dを備え、第2腕部23の板厚は、第3腕部41Dの板厚より小さく形成されていることが好ましい。
【0085】
この場合、側梁4Dに形成された第2のメス形突片2DFと、ダブルスキン形材1の側縁部14に形成されたオス形突片2Mとを嵌合させる場合も、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士の間に形成された嵌合構造2を嵌合させる場合と同様に、嵌合時の荷重が増大するものの、嵌合させる回数を低減させることができる。そのため、側梁4Dにダブルスキン形材1の側縁部14を溶接接合する作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。
【0086】
一方、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とが嵌合され、ダブルスキン形材1、1Eにおける貫通方向端部16が台枠10K4、10K5の枕梁5に溶接接合された状態では、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて第3嵌合爪42Dに対して第2嵌合爪24を乗り越えさせることが容易ではなく、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、側梁4Dとダブルスキン形材1との連結強度を高めることができ、側梁4Dとダブルスキン形材1の側縁部14との溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、台枠10K4、10K5の製作コストとダブルスキン形材1の熱歪とを低減することができる。
【0087】
また、ダブルスキン形材1の側縁部14と第2のメス形突片2DFとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15Dを外板側と内板側の少なくとも一方に備え、溝部15Dには、弾性体からなるシール部材3が装着されていることが好ましい。ここでは、溝部15Dを外板側と内板側の両側に備え、シール部材3は、内板側の溝部15Dのみに装着されているが、外板側の溝部15Dのみに装着しても良いし、両方の溝部15Dに装着しても良い。この場合、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とが嵌合した嵌合状態において、第2のメス形突片2DFとオス形突片2Mとの間に生じる微小な隙間を、溝部15D内に装着された弾性体から成るシール部材3によって簡単に塞ぐことができる。また、溝部15D内に装着されたシール部材3の弾性力によって、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24との嵌合を密着させることができる。
【0088】
また、図15図16に示すように、ダブルスキン形材1Eの内板12Eと客室用床部材8Yを支持する床支持中空形材8とが、レール方向に延設された第3の嵌合構造2Eによって連結されていることが好ましい。この場合、客室用床部材8Yと台枠10K5との間に床支持形材をレール方向へ溶接するような従来の溶接施工の手間を掛けることなく、客室用床部材8Yを支持する床支持中空形材8と台枠10K5とを第3の嵌合構造2Eを介して簡単に連結し、客室用床部材8Yと台枠10K5との間に、例えば、図示しない空調用ダクトの配設スペースを簡単に設けることができる。図15では、1つの床支持中空形材8が図示されているが、床支持中空形材8は、枕木方向で所定の間隔を設けて複数設置され、各床支持中空形材8と台枠10K5とが第3の嵌合構造2Eを介して連結されている。
【0089】
なお、第3の嵌合構造2Eによって連結されたダブルスキン形材1Eには、第1実施例と同様に、隣接するダブルスキン形材1の側縁部14に形成されたオス形突片2M(又はメス形突片2F)と嵌合するメス形突片2F(又はオス形突片2M)を備え、オス形突片2Mには、メス形突片2Fの第1嵌合爪22と嵌合する第2嵌合爪24を備えている。また、当該オス形突片2Mは、嵌合状態の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されている。
【0090】
また、第3の嵌合構造2Eには、図16に示すように、ダブルスキン形材1Eの内板12Eから第4腕部21Eが上方へ突設されその先端部に床支持中空形材8の中空断面内方へ突出した第4嵌合爪22Eを有する一対の第3のメス形突片2EFと、床支持中空形材8の幅板83の下端部84から第3のメス形突片2EFの内側へ弾性変形可能に突設されたへの字状腕部23Eの先端部に床支持中空形材8の中空断面外方へ突出し第4嵌合爪22Eと嵌合可能に形成された第5嵌合爪24Eを有する一対の第2のオス形突片2EMと、を備え、第2のオス形突片2EMは、嵌合状態の第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとを離脱させる荷重より小さい荷重で床支持中空形材8の中空断面内方へ弾性変形可能に形成されていることが好ましい。
【0091】
また、第4嵌合爪22Eには、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとを嵌合させる際に、第5嵌合爪24Eと当接して第2のオス形突片2EMを床支持中空形材8の中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部3GBが形成され、第5嵌合爪24Eは、ガイド部3GBから離間したとき、第2のオス形突片2EMが弾性復帰して第4嵌合爪22Eと嵌合可能に形成されていることが好ましい。ここでは、第4嵌合爪22Eは、頂点が中空断面内方に位置する略直角三角形の断面形状に形成されている。また、ガイド部3GBは、略直角三角形の斜辺部221Eに沿って形成されている。また、第5嵌合爪24Eには、第3のメス形突片2EFの第4腕部21Eと平行な立壁241Eと直交し、第4嵌合爪22Eの嵌合壁222Eと当接する嵌合壁242Eが水平状に形成されている。
【0092】
この場合、ダブルスキン形材1Eの内板12Eに形成された第3のメス形突片2EFと、床支持中空形材8の下端部84に形成された第2のオス形突片2EMとを嵌合させる場合も、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の間に形成された嵌合構造2を嵌合させる場合と同様に、嵌合時の荷重が増大するものの、嵌合させる回数を低減させることができる。そのため、ダブルスキン形材1Eの内板12Eに床支持中空形材8を溶接接合する作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。
【0093】
一方、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとが嵌合された状態では、第2のオス形突片2EMを中空断面内方へ弾性変形させて第4嵌合爪22Eに対して第5嵌合爪24Eを乗り越えさせることが容易ではなく、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとの嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとが嵌合された嵌合状態にて床支持中空形材8とダブルスキン形材1Eとの連結強度を高めることができ、床支持中空形材8とダブルスキン形材1Eの内板12Eとの溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、台枠10K5の製作コストとダブルスキン形材1Eの熱歪とを低減させつつ、客室用床部材8Yと台枠10K5との間に、例えば空調用ダクトの配設スペースをより一層簡単に設けることができる。
【0094】
なお、第3の嵌合構造2Eにおいて、床支持中空形材8の下端部84と第3のメス形突片2EFと第2のオス形突片2EMとに囲まれた溝部15Eを備え、溝部15Eには、弾性体からなるシール部材3が装着されていることが好ましい。ここでは、シール部材3は、枕木方向の両側(海側と山側)の溝部15Eに装着されているが、一方の溝部15Eに装着しても良い。
【0095】
この場合、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとが嵌合した嵌合状態において、第3のメス形突片2EFと第2のオス形突片2EMとの間に生じる微小な隙間を、溝部15E内に装着された弾性体から成るシール部材3によって簡単に塞ぐことができる。また、溝部15E内に装着されたシール部材3の弾性力によって、第5嵌合爪24Eの先端部243Eと内板12Eとの密着を回避させることができる。そのため、床支持中空形材8の下端部84とダブルスキン形材1Eの内板12Eとの溶接接合を一部に限定又は不要とした場合においても、第5嵌合爪24Eと内板12Eとの密着に伴う異音を防止させることができる。
【0096】
<本鉄道車両の製造方法>
次に、他の実施形態に係る本鉄道車両の製造方法について、図17図18を用いて説明する。図17に、本発明の実施形態の一態様(第1~3実施例)に係る鉄道車両の製造方法に対するフローチャート図を示す。図18に、図4に示す嵌合構造の溝部に対する変形例の断面図であって、(A)はV字断面溝部を示し、(B)は円弧断面溝部を示し、(C)は角型末広断面溝部を示し、(D)は台形型末広断面溝部を示す。
【0097】
他の実施形態に係る本鉄道車両10、10B、10Cの製造方法は、ダブルスキン形材1、1Cを所定の長さに切断する切断工程S1と、切断工程S1にて切断したダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士を嵌合構造2によって連結しながら中空断面の貫通方向を枕木方向へ向けて側梁4と枕梁5の間にダブルスキン形材1、1Cを配列する配列工程S2と、配列工程S2にて配列したダブルスキン形材1、1Cの貫通方向端部16、16Cを側梁4に溶接接合する溶接工程S3とを備えた製造方法である。
【0098】
上記製造方法によれば、ダブルスキン形材1を中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列されダブルスキン形材1の側縁部14同士を溶接接合した従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材1、1Cの溶接長を短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Cの溶接接合に伴う熱歪を低減して品質向上に寄与できると共に、溶接時間を短縮して、台枠10K1、10K2、10K3を製造するときの生産性を向上でき、台枠10K1、10K2、10K3の製作コストを低減できる。
【0099】
なお、第1実施例及び第2実施例に係る鉄道車両10、10Bの切断工程S1では、ダブルスキン形材1を中空断面の貫通方向の長さが左右の側梁4の隙間に挿入できる長さになるように切断し、第2実施例の変形例に係る鉄道車両10Cの切断工程S1では、ダブルスキン形材1Cを中空断面の貫通方向の長さが側梁4と中梁7Cとの隙間に挿入できる長さになるように切断する。
【0100】
また、第1実施例と第2実施例に係る鉄道車両10、10Bの配列工程S2では、所定の長さに切断したダブルスキン形材1を左右の側梁4の隙間に挿入し、第2実施例の変形例に係る鉄道車両10Cの配列工程S2では、所定の長さに切断したダブルスキン形材1Cを側梁4と中梁7Cとの隙間に挿入しながら、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14に形成された嵌合構造2の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる。
【0101】
また、第1実施例に係る鉄道車両10の溶接工程S3では、ダブルスキン形材1の貫通方向端部16を左右の側梁4の側壁又は側縁フランジ部41に溶接接合する。また、第2実施例に係る鉄道車両10Bの溶接工程S3では、ダブルスキン形材1の貫通方向端部16を左右の側梁4の側壁又は側縁フランジ部41に溶接接合した上で、ダブルスキン形材1の枕木方向の中央部1Tを中梁7Bの上端(又は下端)に溶接接合する。また、第2実施例の変形例に係る鉄道車両10Cの溶接工程S3では、ダブルスキン形材1Cの貫通方向端部16Cを左右の側梁4の側壁又は側縁フランジ部41に溶接接合した上で、ダブルスキン形材1Cの枕木方向の中央部1Tを中梁7Cの側壁に溶接接合する。
【0102】
また、上記各溶接工程S3の後に、ダブルスキン形材1の側縁部14とメス形突片2Fとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15に弾性体からなるシール部材3を装着するシール工程S4を備えたことが好ましい。なお、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14の熱歪を生じない程度であれば、上記各溶接工程S3にて、シール部材3が装着されていない範囲で、溝部15の一部を部分的に溶接接合して補強しても良い。
【0103】
また、この溝部15は、図18(A)~(D)に示すように、用途に応じて各種の断面形状に形成することができる。例えば、図18(A)に示すV字断面溝部15Aと、図18(B)に示す円弧断面溝部15Bは、溶接棒を用いたアーク溶接(MIG)等を行う場合に適している、また、図18(C)に示す角型末広断面溝部15Cと、図18(D)に示す台形型末広断面溝部15Dは、溝部15C、15Dの開口部の幅が狭くなっているので、シール部材3を外れ難くする場合に適している。
【0104】
また、他の実施形態に係る本鉄道車両10D、10Eの製造方法は、ダブルスキン形材1、1Eを所定の長さに切断する切断工程T1と、切断工程T1にて切断したダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士を嵌合構造2によって連結しながら側梁4と枕梁5の間に配列する配列工程T2と、配列工程T2にて配列したダブルスキン形材1、1Eの貫通方向端部16を枕梁5に溶接接合する溶接工程T3とを備えた製造方法である。
【0105】
上記製造方法によれば、ダブルスキン形材1を中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列されダブルスキン形材1の側縁部14同士を連続溶接した従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材1、1Eの溶接長を短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Eの溶接接合に伴う熱歪を低減して品質向上に寄与できると共に、溶接時間を短縮して、台枠10K4、10K5を製造するときの生産性を向上できる。
【0106】
なお、第3実施例及び第3実施例の変形例に係る鉄道車両10D、10Eの切断工程T1では、ダブルスキン形材1、1Eを中空断面の貫通方向の長さが前後の枕梁5の隙間に挿入できる長さになるように切断する。また、第3実施例の変形例に係る鉄道車両10Eの切断工程T1では、床支持中空形材8を中空断面の貫通方向の長さが前後の枕梁5の隙間に挿入できる長さになるように切断する。
【0107】
また、第3実施例及び第3実施例の変形例に係る鉄道車両10D、10Eの配列工程T2では、所定の長さに切断したダブルスキン形材1、1Eを、左右の側梁4の間で、前後の枕梁5の隙間に挿入しながら、嵌合構造2における第1嵌合爪22と第2嵌合爪24と嵌合する。また、側梁4Dに形成された第2の嵌合構造2Dにおける第2のメス形突片2DFの第3嵌合爪42Dと、ダブルスキン形材1の側縁部14に形成されたオス形突片2Mの第2嵌合爪24とを嵌合させる。また、第3実施例の変形例に係る鉄道車両10Eの配列工程T2では、所定の長さに切断したダブルスキン形材1Eと床支持中空形材8とを、前後の枕梁5の隙間に挿入しながら、第3の嵌合構造2Eにおける第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとを嵌合させる。
【0108】
また、第3実施例及び第3実施例の変形例に係る鉄道車両10D、10Eの溶接工程T3では、ダブルスキン形材1、1Eの貫通方向端部16を前後の枕梁5の側壁又は側縁フランジ部に溶接接合する。また、上記各溶接工程T3の後に、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14とメス形突片2Fとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15及びダブルスキン形材1の側縁部14と第2のメス形突片2DFとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15Dに弾性体からなるシール部材3を装着するシール工程T4を備えたことが好ましい。また、第3実施例の変形例に係る鉄道車両10Eのシール工程T4では、床支持中空形材8の下端部84と第3のメス形突片2EFと第2のオス形突片2EMとに囲まれた溝部15E内に弾性体から成るシール部材3を装着することが好ましい。なお、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14の熱歪を生じない程度であれば、上記溶接工程T3にて、シール部材3が装着されていない範囲で、溝部15、15D、15Eの一部を部分的に溶接接合して補強しても良い。
【0109】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両10、10B、10C、10D、10Eによれば、嵌合構造2には、一方のダブルスキン形材1aの側縁部14aに外板11a及び内板12aと面一状に形成され先端部に中空断面内方へ突出した第1嵌合爪22を有する一対のメス形突片2Fと、他方のダブルスキン形材1bの側縁部14bに形成されメス形突片2Fの内側へ突設され先端部に中空断面外方へ突出し第1嵌合爪22と嵌合可能に形成された第2嵌合爪24を有する一対のオス形突片2Mと、を備え、オス形突片2Mは、嵌合状態の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させる荷重Q3より小さい荷重Q2で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されているので、一方のダブルスキン形材1aのメス形突片2Fに対して、他方のダブルスキン形材1bのオス形突片2Mを、オス形突片2Mが中空断面内方へ弾性変形しうる程度の小さい荷重Q1で近接させることによって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを簡単に嵌合させることができる。
【0110】
すなわち、一方のダブルスキン形材1aのメス形突片2Fと他方のダブルスキン形材1bのオス形突片2Mとを、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させ得る程度の荷重Q1で近接させるだけで、中空断面内方へ突出した第1嵌合爪22が中空断面外方へ突出した第2嵌合爪24に当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせたとき、オス形突片2Mが中空断面外方へ自動的に弾性復帰して、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させることができる。そのため、ダブルスキン形材1a、1bの第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる作業負荷を軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0111】
一方、嵌合状態の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させる荷重Q3は、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが互いに反対方向へ押し合う荷重Q4によって打ち消され、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態では、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を離脱させることは容易ではなく、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材1a、1b同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材1a、1bの側縁部14a、14b同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14に形成された嵌合構造2によって互いに連結された構体10Kにおいて、製作コストとダブルスキン形材1、1C、1Eの熱歪とを低減することができる。
【0112】
よって、本実施形態によれば、簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造2をダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14に備え、側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とし製作コストとダブルスキン形材1、1C、1Eの熱歪とを低減することができるダブルスキン形材1、1C、1Eの構体10Kを備えた鉄道車両10、10B、10C、10D、10Eを提供することができる。
【0113】
また、本実施形態によれば、第1嵌合爪22には、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる際に、第2嵌合爪24と当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ徐々に弾性変形させる傾斜状のガイド部GBが形成され、第2嵌合爪24は、ガイド部GBから離間したとき、オス形突片2Mが弾性復帰して第1嵌合爪22と嵌合可能に形成されているので、一方のダブルスキン形材1aのメス形突片2Fと他方のダブルスキン形材1bのオス形突片2Mとを、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させ得る程度の荷重Q1で近接させるだけで、ガイド部GBが第2嵌合爪24に当接してオス形突片2Mを中空断面内方へ徐々に弾性変形させて、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせ、ガイド部GBが第2嵌合爪24から離間したとき、オス形突片2Mが中空断面外方へ自動的に弾性復帰して、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合する。そのため、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせる作業負荷を傾斜状のガイド部GBによって軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0114】
一方、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態では、ガイド部GBが第2嵌合爪24から離間しており、ガイド部GBを介してオス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させることはできない。そのため、第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせことは容易ではなく、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。したがって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材1a、1b同士の連結強度を高めることができる。その結果、より簡単に嵌合でき離脱しにくい嵌合構造2をダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14に備え、側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0115】
また、本実施形態によれば、ガイド部GBが外板11及び内板12に対して傾斜する傾斜角(内角)θ1は、15度以上で45度より小さく形成され、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合状態にて当接する嵌合壁222、242が外板11及び内板12に対して傾斜する傾斜角(内角)θ2は、90度以下で45度より大きく形成されているので、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14同士を近接させて、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる際に、ガイド部GBから第2嵌合爪24が受ける反力F1の内、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させる分力F12を、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14同士を離間させる方向に作用する分力F11より大きくさせることができ、また、嵌合状態の第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを離脱させる際に、第1嵌合爪22の嵌合壁222から第2嵌合爪24が受ける反力F2の内、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させる分力F22を、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14同士を近接させる方向に作用する分力F21より小さくさせることができる。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを、より一層嵌合させ易くすると共に、より一層離脱させ難くすることができる。その結果、ダブルスキン形材1、1C、1Eの嵌合構造2における嵌合作業の負荷をより一層軽減できると同時に、嵌合構造2にける連結強度をより一層向上させて、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0116】
また、本実施形態によれば、メス形突片2Fには、先端部に第1嵌合爪22が形成された板状の第1腕部21を備え、オス形突片2Mには、先端部に第2嵌合爪24が形成された板状の第2腕部23を備え、第2腕部23の板厚t2は、第1腕部21の板厚t1より小さく形成されているので、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる際、より一層小さい荷重で第2腕部23を撓ませ、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させることができる。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とをより一層簡単に嵌合させることができる。その結果、ダブルスキン形材1、1C、1Eの嵌合構造2における嵌合作業の負荷をより一層軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0117】
また、本実施形態によれば、他方のダブルスキン形材1bの側縁部14bとメス形突片2Fとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15(15a、15b)を外板側と内板側の少なくとも一方に備え、溝部15bには、弾性体からなるシール部材3が装着されているので、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合した嵌合状態において、メス形突片2Fとオス形突片2Mとの間に生じる微小な隙間を、溝部15b内に装着された弾性体から成るシール部材3によって簡単に塞ぐことができる。また、溝部15b内に装着されたシール部材3の弾性力によって、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合を密着させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とした場合においても、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合を密着させつつ異音を防止し、ダブルスキン形材1、1C、1Eの側縁部14同士の水密性、気密性を弾性体からなるシール部材3によって簡単に確保させることができる。
【0118】
また、本実施形態によれば、構体10Kは、レールRL上を走行する台車DSに搭載された台枠10K1、10K2、10K3であり、ダブルスキン形材1、1Cは、中空断面の貫通方向が枕木方向になるように台枠10K1、10K2、10K3の側梁4と枕梁5の間に配列され、ダブルスキン形材1、1Cにおける貫通方向端部16、16Cが側梁4に溶接接合されているので、ダブルスキン形材1、1Cを中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列された従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14の長さを短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士を近接させて、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とを嵌合させる嵌合時の荷重を軽減でき、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0119】
また、ダブルスキン形材1、1Cにおける貫通方向端部16、16Cが台枠10K1、10K2、10K3の側梁4に溶接接合によって固定されているので、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士の溶接接合を略不要とした場合でも、隣接するダブルスキン形材1、1C同士のレール方向におけるガタツキや軋みを抑制できる。また、ダブルスキン形材1、1Cの貫通方向端部16、16Cを側梁4に溶接固定したことによって、台枠10K1、10K2、10K3に対するレール方向及び枕木方向の耐荷重を向上させることができる。
【0120】
また、本実施形態によれば、台枠10K2、10K3には、枕木方向の中央部にレール方向へ延設された中梁7B、7Cを備え、ダブルスキン形材1、1Cの枕木方向の中央部1Tは、中梁7B、7Cと溶接接合されているので、ダブルスキン形材1、1Cに対するレール方向の荷重を左右の側梁4と中央部の中梁7B、7Cとに分散して受け止めることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士の溶接接合を略不要とした場合でも、隣接するダブルスキン形材1、1C同士のガタツキや軋みをより一層抑制でき、また、台枠10K2、10K3に対する耐衝突荷重をより一層向上させることができる。
【0121】
また、本実施形態によれば、構体10Kは、レールRL上を走行する台車DSに搭載された台枠10K4、10K5であり、ダブルスキン形材1、1Eは、中空断面の貫通方向がレール方向になるように台枠10K4、10K5の側梁4Dと枕梁5の間に配列され、ダブルスキン形材1、1Eにおける貫通方向端部16が台枠10K4、10K5の枕梁5に溶接接合されているので、ダブルスキン形材1、1Eの中空断面の貫通方向における長さが大きくなり、使用するブルスキン形材1、1Eの数量を低減させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14に形成された嵌合構造2を嵌合させる嵌合時の荷重は増大するものの、その嵌合回数を低減させることができる。その結果、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士を連続溶接する従来例(特許文献1、2を参照)の作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができ、構体10Kを製造するときの生産性を向上できる。
【0122】
一方、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合され、ダブルスキン形材1、1Eにおける貫通方向端部16が台枠10K4、10K5の枕梁5に溶接接合された状態では、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて第1嵌合爪22に対して第2嵌合爪24を乗り越えさせることが容易ではなく、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、ダブルスキン形材1、1E同士の連結強度を高めることができ、ダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士の溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0123】
また、本実施形態によれば、側梁4Dとダブルスキン形材1の側縁部14とが、レール方向に延設された第2の嵌合構造2Dによって連結されているので、側梁4Dの側壁4D1とダブルスキン形材1の側縁部14とをレール方向へ溶接するような従来の溶接施工の手間を掛けることなく、側梁4Dとダブルスキン形材1の側縁部14とを第2の嵌合構造2Dを介して簡単に連結し、台枠10K4、10K5を製造するときの生産性を向上できる。
【0124】
また、本実施形態によれば、第2の嵌合構造2Dには、側梁4Dの側壁4D1から水平状に突設され先端部に中空断面内方へ突出しオス形突片2Mの第2嵌合爪24と嵌合可能に形成された第3嵌合爪42Dを有する一対の第2のメス形突片2DFを備え、オス形突片2Mは、嵌合状態の第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とを離脱させる荷重より小さい荷重で中空断面内方へ弾性変形可能に形成されているので、側梁4Dに形成された第2のメス形突片2DFと、ダブルスキン形材1の側縁部14に形成されたオス形突片2Mとを嵌合させる場合も、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の間に形成された嵌合構造2を嵌合させる場合と同様に、嵌合時の荷重が増大するものの、嵌合させる回数を低減させることができる。そのため、側梁4Dにダブルスキン形材1の側縁部14を溶接接合する作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。
【0125】
一方、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とが嵌合され、ダブルスキン形材1における貫通方向端部16が台枠10K4、10K5の枕梁5に溶接接合された状態では、オス形突片2Mを中空断面内方へ弾性変形させて第3嵌合爪42Dに対して第2嵌合爪24を乗り越えさせることが容易ではなく、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24との嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第3嵌合爪42Dと第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて、側梁4Dとダブルスキン形材1との連結強度を高めることができ、側梁4Dとダブルスキン形材1の側縁部14との溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。
【0126】
また、本実施形態によれば、ダブルスキン形材1Eの内板12Eと客室用床部材8Yを支持する床支持中空形材8とが、レール方向に延設された第3の嵌合構造2Eによって連結されているので、客室用床部材8Yと台枠10K5との間に床支持中空形材8をレール方向へ溶接するような従来の溶接施工の手間を掛けることなく、客室用床部材8Yを支持する床支持中空形材8と台枠10K5とを第3の嵌合構造2Eを介して簡単に連結し、客室用床部材8Yと台枠10K5との間に、例えば空調用ダクトの配設スペースを簡単に設けることができる。
【0127】
また、本実施形態によれば、第3の嵌合構造2Eには、ダブルスキン形材1Eの内板12Eから上方へ突設され先端部に床支持中空形材8の中空断面内方へ突出した第4嵌合爪22Eを有する一対の第3のメス形突片2EFと、床支持中空形材8の下端部84から第3のメス形突片2EFの内側へ弾性変形可能に突設され先端部に床支持中空形材8の中空断面外方へ突出し第4嵌合爪22Eと嵌合可能に形成された第5嵌合爪24Eを有する一対の第2のオス形突片2EMと、を備え、第2のオス形突片2EMは、嵌合状態の第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとを離脱させる荷重より小さい荷重で床支持中空形材8の中空断面内方へ弾性変形可能に形成されているので、ダブルスキン形材1Eの内板12Eに形成された第3のメス形突片2EFと、床支持中空形材8の下端部84に形成された第2のオス形突片2EMとを嵌合させる場合も、ダブルスキン形材1の側縁部14同士の間に形成された嵌合構造2を嵌合させる場合と同様に、嵌合時の荷重が増大するものの、嵌合させる回数を低減させることができる。そのため、ダブルスキン形材1の内板12に床支持中空形材8を溶接接合する従来の作業時間に比較して、全体として嵌合に必要な作業時間を短縮させることができる。
【0128】
一方、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとが嵌合された状態では、第2のオス形突片2EMを中空断面内方へ弾性変形させて第4嵌合爪22Eに対して第5嵌合爪24Eを乗り越えさせることが容易ではなく、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとの嵌合状態を簡単に解除することができない。そのため、第4嵌合爪22Eと第5嵌合爪24Eとが嵌合された嵌合状態にて床支持中空形材8とダブルスキン形材1Eとの連結強度を高めることができ、床支持中空形材8とダブルスキン形材1Eの内板12Eとの溶接接合を一部に限定又は不要とすることができる。その結果、客室用床部材8Yと台枠10K5との間に、例えば空調用ダクトの配設スペースをより一層簡単に設けることができる。
【0129】
また、本他の実施形態に係る鉄道車両10、10B、10Cの製造方法によれば、ダブルスキン形材1、1Cを所定の長さに切断する切断工程S1と、切断工程S1にて切断したダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士を嵌合構造2によって連結しながら中空断面の貫通方向を枕木方向へ向けて側梁4と枕梁5の間にダブルスキン形材1、1Cを配列する配列工程S2と、配列工程S2にて配列したダブルスキン形材1、1Cの貫通方向端部16、16Cを側梁4に溶接接合する溶接工程S3とを備えたので、ダブルスキン形材1、1Cを中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列されダブルスキン形材1、1Cの側縁部14同士を連続溶接した従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材1、1Cの溶接長を短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Cの溶接接合に伴う熱歪を低減して品質向上に寄与できると共に、溶接時間を短縮して、台枠10K1、10K2、10K3を製造するときの生産性を向上できる。
【0130】
また、本他の実施形態に係る鉄道車両10D、10Eの製造方法によれば、ダブルスキン形材1、1Eを所定の長さに切断する切断工程T1と、切断工程T1にて切断したダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士を嵌合構造2によって連結しながら側梁4Dと枕梁5の間にダブルスキン形材1、1Eを配列する配列工程T2と、配列工程T2にて配列したダブルスキン形材1、1Eの貫通方向端部16を枕梁5に溶接接合する溶接工程T3とを備えたので、ダブルスキン形材1、1Eを中空断面の貫通方向がレール方向になるように配列されダブルスキン形材1、1Eの側縁部14同士を連続溶接した従来例(特許文献1、2を参照)に比較して、ダブルスキン形材1、1Eの溶接長を短縮させることができる。そのため、ダブルスキン形材1、1Eの溶接接合に伴う熱歪を低減して品質向上に寄与できると共に、溶接時間を短縮して、台枠10K4、10K5を製造するときの生産性を向上できる。
【0131】
<変形例>
以上、本実施形態に係る鉄道車両10、10B、10C、10D、10E及びその製造方法を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態によれば、他方のダブルスキン形材1bの側縁部14bとメス形突片2Fとオス形突片2Mとに囲まれた溝部15を外板側と内板側の少なくとも一方に備えているが、必ずしも溝部15を備えなくても良い。例えば、図19(A)、(B)に示すように、メス形突片2Fにおける第1腕部21の先端部211Aと側縁部14Aとを外板11及び内板12に対して傾斜状又は垂直状に当接させ、必要に応じて当接部を摩擦撹拌溶接等によって溶接接合しても良い。また、図19(C)に示すように、メス形突片2Fにおける第1腕部21の先端部211Cと側縁部14Cとを外板11及び内板12に対して垂直状に当接させ、リベットRV等にて固定しても良い。
【0132】
また、本実施形態によれば、図4に示すように、第1嵌合爪22と第2嵌合爪24とが嵌合された嵌合状態にて当接する嵌合壁222、242は、外板11及び内板12に対して略垂直状に起立して形成されている。しかし、必ずしも、これに限る必要はない。例えば、図20に示すように、第1腕部21の先端部に形成された第1嵌合爪22Qと第2腕部23の先端部に形成された第2嵌合爪24Qとが嵌合状態にて当接する嵌合壁222Q、242Qが外板11及び内板12に対して傾斜する傾斜角(内角)θ2は、90度以下で45度より大きく形成されていれば良い。なお、外板11及び内板12に対する図4のガイド部GBに相当する斜辺部221Qの傾斜角(内角)θ1は、20~30度程度がより好ましい。この場合、図20に示すように、第2腕部23の弾性復帰する復元力P2が、嵌合壁222Q、242Q同士を互いに引き寄せる力P3として作用して、第1嵌合爪22Qと第2嵌合爪24Qとを嵌合させる荷重P1を低減させることができる。なお、第1嵌合爪22Qと第2嵌合爪24Qとが嵌合した状態で、第2嵌合爪24Qの水平壁241Qと直交する前端部243Qに幅板13が当接し、幅板13から第2嵌合爪24Qに押圧力P4が作用することが好ましい。この場合、第1嵌合爪22Qと第2嵌合爪24Qとを離脱させる荷重P5を、幅板13の第2嵌合爪24Qの前端部243Qに対する摩擦力によって増加させることができる。
【0133】
また、本実施形態では、構体10Kがアルミニウム合金で形成された例で説明したが、例えば、マグネシウム合金やリチウム合金、リチウム・アルミニウム合金等の他の軽合金を用いた構体にも適用できる。また、本実施形態では、外板11と内板12とを幅板13が垂直状に連結する所謂ハモニカ構造のダブルスキン形材1、1C、1Eを用いて説明したが、外板11と内板12とを幅板13が傾斜状に連結する所謂トラス構造、又はこれらを組み合わせた複合型のダブルスキン形材1、1C、1Eでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明は、構体を構成する複数のダブルスキン形材が側縁部に形成された嵌合構造によって互いに連結された鉄道車両及びその製造方法として利用できる。
【符号の説明】
【0135】
1、1C、1E ダブルスキン形材
1T 中央部
2、2D、2E 嵌合構造
2F、2DF、2EF メス形突片
2M、2EM オス形突片
3 シール部材
4、4D 側梁
4D1 側壁
5 枕梁
6 端梁
7、7B、7C 中梁
8 床支持中空形材
8Y 客室用床部材
10、10B、10C 鉄道車両
10D、10E 鉄道車両
10K 構体
10K1、10K2、10K3 台枠
10K4、10K5 台枠
11 外板
12、12E 内板
13 幅板
14 側縁部
15、15D、15E 溝部
16、16C 貫通方向端部
21 第1腕部
22 第1嵌合爪
22E 第4嵌合爪
23 第2腕部
24 第2嵌合爪
24E 第5嵌合爪
42D 第3嵌合爪
84 下端部
222、242 嵌合壁
DS 台車
GB、2GB、3GB ガイド部
S1、T1 切断工程
S2、T2 配列工程
S3、T3 溶接工程
θ1、θ2 傾斜角
t1、t2 板厚
図1
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