(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058225
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】置換空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20230418BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20230418BHJP
F24F 7/003 20210101ALI20230418BHJP
F24F 7/08 20060101ALI20230418BHJP
F24F 13/06 20060101ALI20230418BHJP
F24F 13/26 20060101ALI20230418BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20230418BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20230418BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/10 Z
F24F7/003
F24F7/08 A
F24F13/06 Z
F24F13/26
F24F11/80
F24F11/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168098
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 匠
(72)【発明者】
【氏名】下川 良二
(72)【発明者】
【氏名】栗山 学
(72)【発明者】
【氏名】神谷 松雄
(72)【発明者】
【氏名】末松 孝章
(72)【発明者】
【氏名】本村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】南 佑樹
【テーマコード(参考)】
3L058
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L058BE08
3L058BF01
3L058BF09
3L058BG03
3L058BG04
3L080BE11
3L260AA06
3L260AB06
3L260BA02
3L260CA12
3L260CA17
3L260FA03
3L260FA07
3L260FB25
3L260FB30
(57)【要約】
【課題】作業員の快適性を向上させると共に、装置類に対し安定した温度等の環境を与える置換空調方法を提供する。
【解決手段】本開示の置換空調方法は、空調対象空間11の下部に、床面1aから所定高さまで形成される空調対象域10を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、空調空気Acを給気口25から、空調対象空間11の下方に向けて給気するにあたり、床面1aから給気口25までの距離Lに応じた所定風速で給気する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の下部に、床面から所定高さまで形成される空調対象域を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、
空調空気を給気口から、前記空調対象空間の下方に向けて給気するにあたり、
前記床面から前記給気口までの距離に応じた所定風速で給気する
ことを特徴とする置換空調方法。
【請求項2】
前記空調対象空間には、空調空気を供給するとともに前記給気口を備える空調装置が設置され、
前記空調装置は、更に、
前記空調対象空間の空気を吸気する吸込口と、
吸い込まれた前記空調対象空間の空気を冷却する冷却機構と、
を備えて構成され、
前記給気口は、前記冷却機構により調整された空調空気を、前記空調装置の下方に向けて給気する
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項3】
前記所定風速は、
前記給気口から給気された空調空気が周囲の空気を誘引する風速であり、
下限値を有する所定風速範囲により規定され、前記距離が長いほど下限値が小さくなる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項4】
前記空調対象空間に、空調された外気を導入する第1導入口が備えられ、
前記給気口を備える空調装置と前記第1導入口とが近傍に配置され、
前記空調装置は、更に、前記空調対象空間の空気を吸気する吸込口を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項5】
前記給気口を備える空調装置は、更に、
前記空調対象空間の空気を吸気する吸込口と、
空調された外気を導入する第2導入口と、
を備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項6】
前記空調対象空間はクリーンルームの内部空間であり、
前記給気口を備える空調装置は、塵埃を除去するフィルタを備え、前記フィルタを通過した空気が前記給気口を通じて給気されるように構成される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項7】
前記空調対象空間はクリーンルームの内部空間であり、
前記空調対象空間には、前記空調対象空間の塵埃を吸い込んで除去する除塵装置が配置される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項8】
前記給気口を備える空調装置は、前記給気口を通じた給気の温度制御機構を備え、
前記空調対象域の温度に基づき、前記温度制御機構により前記給気口を通じた給気の温度を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項9】
前記給気口を備える空調装置は、前記給気口からの給気風量を制御する風量制御機構を備え、
前記空調対象域の清浄度に基づき、前記風量制御機構により前記給気口からの給気風量を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は置換空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換空調に関する技術として、特許文献1には、「温度制御し、フィルタを通過させて浄化した空気を、クリーンルーム天井面からクリーンルーム内に給気する給気開口部と、クリーンルーム内の空気を還気として吸い込む吸い込み開口部と、を有し、前記給気開口部からクリーンルーム内に給気される清浄空気の風速が1m/s以下であることを特徴とするクリーンルーム用空調システム。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-219219号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の置換空調方法は、置換空調が行われる空調対象空間の下部に、作業員が作業する領域及び装置類が占有する領域の空調対象域が存在し、温度に起因する密度差を利用して温度成層化することで、下部のみを空調するものである。
【0005】
特許文献1に記載の技術では、クリーンルームの天井面に形成された給気開口部から風速1m/s以下で清浄空気が吹き出され、置換空調が行われる(請求項1、段落0022)。しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の技術では、空調対象での作業員の足元が冷たく、上部上半身(頭等)が暖かくなることがあり、作業員が不快に感じることがあった。
本開示が解決しようとする課題は、作業員の快適性を向上させると共に、装置類に対し安定した温度等の環境を与える置換空調方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の置換空調方法は、空調対象空間の下部に、床面から所定高さまで形成される空調対象域を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、空調空気を給気口から、前記空調対象空間の下方に向けて給気するにあたり、前記床面から前記給気口までの距離に応じた所定風速で給気する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作業員の快適性を向上させると共に、装置類に対し安定した温度等の環境を与える置換空調方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】給気口から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が遅く、距離Lが短い場合である。
【
図3】給気口から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が速く、距離Lが短い場合である。
【
図4】給気口から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が遅く、距離Lが長い場合である。
【
図5】給気口から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、風速が速く、距離Lが長い場合である。
【
図6】床面から給気口までの距離と空調塵空気Acの所定風速との関係を示す表である。
【
図7】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図8】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図9】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
【
図10】温度制御を実行する装置構成を示す模式図である。
【
図12】清浄度制御を実行する装置構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0010】
図1は、本発明に係る置換空調方法を実現する第1実施形態の空調システム100(置換空調システム)の模式図である。本開示の置換空調方法は、空調対象空間11の下部に、床面1aから所定高さまで形成される空調対象域10を所定の環境に維持するための方法である。ここでいう下部は、空調対象室1の内側全体を占める空調対象空間11の下部である。空調システム100では、空調対象室1はクリーンルームであり、その上部に、空調装置2が備えられる。空調対象室1の内部には空調対象空間11が形成され、図示の例では、空調対象空間11は、クリーンルームの内部空間である。空調対象域10は、空調対象空間11内にあって、その下部の領域である。空調装置2は、空調対象空間11に設置される。空調装置2は、空調空気Acを供給するとともに給気口25を備えるものである。
【0011】
空調対象室1には、発熱負荷源及び発塵源となる装置類3と作業員4が存在する。
【0012】
また、空調対象室1では、空調装置2の動作とは別に、空調対象室1外の汚染空気が空調対象室1に流入しないように、室内を陽圧に維持するために必要な外気が外調機5で調整される。そして、調整後の外気が、ダクト6a及び第1導入口7を介し供給され、排気口8、ダクト6bから余剰空気が空調対象室1の系外に排気される。
【0013】
図1中の一点鎖線は、空調対象室1で、温度管理及び清浄度管理が求められる空調対象域10の上限を示す仮想のライン9であり天井等の間仕切りが存在する訳ではない。このライン9の高さ以下が、空調対象室1の空調対象域10となる。
空調対象域10の高さは、装置類3の高さ及び作業員4の身長を超える高さに設定され、一般的には2m程度であるが、装置類3の高さによっては3m~4mに設定される場合もある。
【0014】
空調装置2は、空調対象空間11の空気を吸気する吸込口21、吸い込まれた空調対象空間11の空気を冷却する冷却機構22、及び給気口25を備えて構成される。給気口25は、冷却機構22により調整された空調空気Acを、空調装置2の下方に向けて給気する。ただし、空調対象室1がクリーンルームとしての実施例であることから、冷却機構22と給気口25との間に、送風ファン23、フィルタとして高性能除塵フィルタ24を備えて、実施例の内容を説明する。
【0015】
空調装置2は、送風ファン23の動作により空調対象室1内の空気を吸気し、冷却機構22を通過する際に空気を冷却する。更に、空調装置2は、塵埃を除去する高性能除塵フィルタ24(フィルタの一例)を備え、高性能除塵フィルタ24によって空気中の塵埃を除去する。そして、空調装置2は、高性能除塵フィルタ24を通過した空気が給気口25を通じて給気されるように構成される。即ち、空調装置2は、給気口25を介して空調及び除塵された空気(空調空気Ac)を空調対象室1に対し、下方に向けて吹き出し供給する。
【0016】
このとき、
図1中に示す距離Lは、空調対象室1の床面1aから空調装置2の給気口25までの距離(高さ)である。
【0017】
給気口25から下方に向け吹出された、空調空気Acは、周囲の空気(周囲空気Aa)を誘引及び混合しながら下方に向かう。このとき、誘引及び混合する空気量に応じて、下降風速は減衰するとともに、同伴して下方に移動する空気量が増大する。また同時に、下方に移動する空気の温度は、誘引及び混合する周囲空気Aaの量に応じて、給気口25から吹出された、空調空気Acの温度よりも高い温度になる。
これら一連の動作により、空調対象域10に到達する、空調空気Acの温度は、給気口25から吹出された、空調空気Acの吹出し時の温度よりも高くなり、空調対象域10の上下温度差が小さくなるように機能する。また、空調対象域10には、空調装置2で空調空気Acが供給されるため、空調対象域10の塵埃数は一定値以下に保たれる。
【0018】
図2~
図5は、空調装置2の給気口25から給気された、空調空気Acの流れ方を説明する図である。一般に周囲流体との風速差(せん断力)が大きいと誘引及び混合は促進され、流れが発達する下流になるほど同伴して流れる流体の量は多く、風速は遅くなる。
図2では、風速が遅く、距離Lが短い場合、
図3では、風速が速く、距離Lが短い場合、
図4では、風速が遅く、距離Lが長い場合、
図5では、風速が速く、距離Lが長い場合の夫々の誘引状態が異なる様子をポンチ絵で示している。
図2及び
図3で距離Lは等しく、
図4及び
図5で距離Lは等しい。
【0019】
一方、空調装置2及び空調装置2の給気口25の高さは、空調対象室1の室内高さ、使用方法、機器及び設備の配置状況、空調設備の施工、メンテナンスの計画、コスト等、種々の要因で決定される。このため、空調対象室1の床面1aから空調装置2の給気口25までの距離Lは一般に計画毎(建築物毎、部屋毎)に異なる。
【0020】
本開示では、給気口25から吹出された、空調空気Acが空調対象域10に到達する間に周囲空気Aaを誘引する状態が、給気風速と、周囲空気の誘引に係る流路になる床面1aから給気口25までの距離Lに影響されることに着目した。即ち、本開示の空調システム100において行われる置換空調方法は、様々な要素から決定される給気口25の高さに対し、下限値を有する所定風速で、空調空気Acを供給するものである。
【0021】
即ち、本開示の置換空調方法では、空調空気Acを給気口25から、空調対象空間11の下方に向けて給気するにあたり、空調空気Acは、床面1aから給気口25までの距離Lに応じた所定風速で給気される。ここでいう所定風速は、給気口25から給気された空調空気Acが周囲の空気を誘引する風速であり、下限値を有する所定風速範囲により規定され、距離Lが長いほど下限値が小さくなる風速である。
【0022】
具体的には、給気口25の位置が高く床面1aとの距離Lが長い(流路が長い)場合には所定風速の下限値が小さく、距離Lが短い(流路が短い)場合には所定風速の下限値が大きく設定した。これにより、給気口25から吹出された低温で、空調空気Acが、周囲空気Aaを誘引することで相対的に温度が上昇した状態で空調対象域10に供給されるようにしている。
【0023】
図6は、本実施形態において、空調対象室1の床面1aから空調装置2の給気口25までの距離Lと、給気口25から給気される、空調空気Acの所定風速の下限値との関係を例示する表である。所定風速の下限値は、距離Lが長いほど小さくなる。図示の例では、距離Lが4m以上であれば、所定風速は0.5m/s以上の任意の風速である。距離Lが3m以上4m未満であれば、所定風速は1m/s以上、距離Lが2m以上3m未満であれば、所定風速は1.5m/s以上が好ましいことが示されている。熱負荷の変動に応じて給気口25から吹出す、空調空気Acの風量を変える場合にも、これらの所定風速の範囲内となるように変更することが好ましい。
【0024】
これらの任意の風速は、空調対象室1の設計条件に応じて適宜設定できるが、周囲空気Aaの巻き込み量を、例えば熱流体シミュレーション等を活用して、推定し、給気口25からの風速を設定することが好ましい。
【0025】
図7は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。空調対象空間11には、第1導入口7が配置される。第1導入口7は、空調対象室1外の汚染空気が空調対象室1に流入しないよう、空調対象室1を室外に対し陽圧に維持するための、外調機5により空調された外気をダクト6aを介して空調対象空間11に導入するものである。
【0026】
空調装置2と第1導入口7とが近傍に配置されることが好ましく、具体的には、第1導入口7と空調装置2の吸込口21とは近傍に備えられることが好ましい。ここでいう近傍は例えば1m以内である。外気を導入する第1導入口7と吸込口21が近傍に設置されることで、外調機5により温湿度が調整され、かつ、清浄度も整えられた調整後の外気は、空調対象室1の上部の空気とほとんど混合せず、速やかに吸込口21から空調装置2に導入される。これにより、空調された外気を効率よく利用できるようになる。
【0027】
図8は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図8に示す例では、空調装置2は、外調機5により空調された外気をダクト6aを介して空調装置2に直接導入する第2導入口7aを備える。
【0028】
このように、外調機5により空調された外気をダクト6a、第2導入口7aを介して、空調装置2に直接導入することで、外調機5によって温湿度及び清浄度も整えられた外気は、空調対象室1の上部の空気と全く混合せず、空調された外気を効率よく利用できる。
【0029】
図9は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。
図9に示す例では、空調システム100は、空調対象室1の内部である空調対象空間11の塵埃を吸い込んで除去する除塵装置26a,26bを備え、除塵装置26a,26bは空調対象空間11(具体的には空調対象域10)に配置される。
【0030】
このような除塵装置26a,26bを備えるのは、空調対象室1又は空調対象域10の発熱負荷源の熱処理に必要な空調風量(A)と、要求される清浄度を基準として必要となる空調風量(B)との差異が大きく、A<Bとなる場合である。
【0031】
除塵装置26a,26bは、除塵機能を有する高性能除塵フィルタ24aと、送風ファン23aと、ケーシング27aとを備える。
【0032】
また、熱処理機能と除塵機能とを分離する場合には、空調装置2の高性能除塵フィルタ24を備えなくとも良い。
【0033】
除塵装置26の設置位置及び設置台数は、
図9に限定されず、必要な向き及び位置に、必要な台数を設置して良い。
【0034】
図10は、空調装置2によって空調対象域10の温度制御を実行する装置構成を示す模式図である。空調装置2による空調対象域10の温度制御は、冷却機構22に供給される冷水CSの流量を調整する弁30と、空調対象域10に設置される温度センサ28と、温度センサ28により測定される空調対象域10の温度に基づき弁30の開度信号を出力する制御装置29aによって実行される。温度センサ28、制御装置29a及び弁30は、破線で示す電気信号線により接続される。弁30は、給気口25を通じた給気の温度制御機構として、空調装置2に備えられる。
【0035】
冷却機構22が例えば冷水CSを用いた熱交換器である場合、熱交換器には図示しないチラー等から冷水CSが供給され、制御装置29aからの信号に応じて弁30の開度が増減される。空調対象室1の上部から導入された空気は熱交換器を通過する際に冷却される一方で、冷水CSは昇温され還水CRとしてチラー等に戻る。
【0036】
図11は、温度制御を示すフローチャートである。
図11は、本開示の置換空調方法を示すものであり、空調対象域10の温度に基づき、弁30により給気口25を通じた給気の温度を制御するフローである。制御装置29aは、温度センサ28により測定された空調対象域10の温度T(ステップS11)が設定温度よりも低いか否かを判断する(ステップS12)。
【0037】
測定した温度Tが設定温度よりも低い場合(Yes)、弁30の開度を絞る(減らす)ことにより、冷却機構22での冷却が抑制されて、給気温度が上昇する(ステップS13)。一方、ステップS12において、測定された温度Tが設定温度よりも高い場合(No)、制御装置29aは弁30の開度を増やし、これにより、冷却機構22での冷却が促進され、給気温度が低下する(ステップS14)。この動作を一定の時間ステップにより、実行することで空調対象域10の温度が制御される。
【0038】
なお、ステップS12において、設定温度±数℃以内のような範囲を不感温度帯として、弁30の開度を現状の状態に保持してもよい。
【0039】
図12は、空調装置2によって空調対象域10の清浄度制御を実行する装置構成を示す模式図である。清浄度センサ31は、例えば塵埃濃度、塵埃数等を測定するセンサである。空調装置2による空調対象域10の清浄度制御は、清浄度センサ31と、風量制御機構32と、制御装置29bによって実行される。清浄度センサ31は、空調対象域10の清浄度を測定するものである。風量制御機構32は、送風ファン23による給気口25からの給気風量を制御するものであり、空調装置2に備えられる。制御装置29bは、清浄度センサ31により測定される空調対象域10の空気中に含まれる塵埃濃度に基づき風量制御機構32に制御信号を出力するものである。
【0040】
空調装置2に備えられる送風ファン23は、風量制御機構32としてのインバータによって回転数を制御される。清浄度センサ31、制御装置29b、風量制御機構32は、破線で示す電気信号線により接続される。
【0041】
制御装置29bは、空調対象域10の清浄度に基づき、風量制御機構32により給気口25からの給気風量を制御する。なお、風量制御機構32は、インバータに代えて、開度調整可能なダンパでもよく、例えば送風ファン23を一定速度で回転させ、ダンパの開度を調整することで、給気風量を制御することができる。
【0042】
図13は、清浄度制御を示すフローチャートである。
図13は、本開示の置換空調方法を示すものであり、空調対象域10の清浄度に基づき、風量制御機構32により給気口25の給気風量を制御するフローである。制御装置29bは、清浄度センサ31により計測された空調対象域10の清浄度に係る塵埃濃度C(ステップS21)が規定清浄度に係る塵埃濃度よりも多いか否かを判断する(ステップS22)。
【0043】
計測された塵埃濃度Cが規定清浄度に係る塵埃濃度より多い場合(Yes)、制御装置29bは、風量制御機構32を制御して送風ファン23の回転数を上げて、給気風量を上げる(ステップS23)。一方、ステップS22において、測定された清浄度に係る塵埃数Cが規定清浄度に係る塵埃数よりも少ない場合(No)、制御装置29bは風量制御機構32を制御して送風ファン23の回転数を下げて給気風量を下げる(ステップS24)。この動作を一定の時間ステップにより実行することにより空調対象域10の清浄度が制御される。
【0044】
なお、ステップS22において、設定塵埃濃度±不感帯塵埃濃度以内のような範囲を不感塵埃数帯として、風量制御機構32にて送風ファン23の回転数を現状の状態に保持してもよい。
【0045】
空調対象域10の温度制御と清浄度(塵埃数)制御を同時に行う場合は、上記2つの制御を並行して実行する。
【0046】
なお、制御装置29a,29bは、何れも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成される。制御装置29a,29bは、ROMに格納されている所定のプログラム(制御プログラム)がRAMに展開され、CPUによって実行されることにより具現化される。ここでいうプログラムは、コンピュータに上記の空調システム100を実行させるためのものである。
【0047】
これまで示した図示の例では、空調対象空間11はクリーンルームの内部空間であるが、例えば、工場、ホール、その他の用途の部屋等の各空間に適用してもよい
【0048】
本開示の置換空調方法によれば、種々要因で決定される空調装置2の給気口25の高さに応じて、良好な誘引状態を創出する給気風速を設定でき、作業員4の快適性を阻害する要因となる低温の空調空気Acが空調対象域10に供給されることを抑制できる。このため、上下温度差が軽減され、作業員4の快適性が向上するとともに、装置類3に対しても安定した温度等の環境を提供できる。
【0049】
置換空調が行われる空調対象空間11を形成する空調対象室1の下部にある空調対象域10に空調空気Acを供給することで、空調対象室1全体を混合して空調する方式に比べ、少風量で効率良く空調でき、エネルギ削減にも貢献できる。
また、空調対象室1に配置される空調装置2を介して室内空気を循環処理するため、空調対象室1の外部にダクトを介して室内空気を搬送し、外調機5等に戻す必要がなくなる。このため、空気搬送に係るエネルギの削減も可能となる。
【0050】
更に、空調装置2を空調対象域10よりも高い位置に設置することが可能であり、空調対象室1内のフットプリントが改善され、装置類3の設置の自由度も向上する。これとともに、空調対象室1のレイアウト変更への対応も容易となる。
【符号の説明】
【0051】
1 空調対象室
10 空調対象域
100 空調システム
11 空調対象空間
1a 床面
2 空調装置
21 吸込口
22 冷却機構
23 送風ファン
23a 送風ファン
24 高性能除塵フィルタ(フィルタ)
24a 高性能除塵フィルタ(フィルタ)
25 給気口
26 除塵装置
26a 除塵装置
26b 除塵装置
27a ケーシング
28 温度センサ
29 制御装置
29a 制御装置
29b 制御装置
3 装置類
30 弁(温度調整機構)
31 清浄度センサ
32 風量制御機構
4 作業員
5 外調機
6a ダクト
6b ダクト
7 第1導入口
7a 第2導入口
8 排気口
9 ライン
A 空調風量
Aa 周囲空気
Ac 空調空気
B 空調風量
C 塵埃濃度
CR 還水
CS 冷水
L 距離
T 温度