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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058226
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】置換空調方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20230418BHJP
   F24F 7/10 20060101ALI20230418BHJP
   F24F 13/26 20060101ALI20230418BHJP
   F24F 13/06 20060101ALI20230418BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20230418BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20230418BHJP
【FI】
F24F7/06 C
F24F7/10 Z
F24F13/26
F24F13/06 Z
F24F7/007 101
F24F11/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168099
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 匠
(72)【発明者】
【氏名】下川 良二
(72)【発明者】
【氏名】栗山 学
(72)【発明者】
【氏名】神谷 松雄
(72)【発明者】
【氏名】末松 孝章
(72)【発明者】
【氏名】本村 敏之
(72)【発明者】
【氏名】南 佑樹
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
3L080
3L260
【Fターム(参考)】
3L056BG03
3L058BE08
3L058BF01
3L058BG04
3L080BE11
3L260AA06
3L260BA02
3L260CA12
3L260CA17
3L260FA07
(57)【要約】
【課題】作業員の快適性を向上させると共に、装置類に対し安定した温度等の環境を与える置換空調方法を提供する。
【解決手段】本開示の空調方法は、空調対象空間11の下部に、床面1bから所定高さまで形成される空調対象域10を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、空調空気を給気口25から、空調対象空間11の下方に向けて給気するにあたり、給気口25を空調対象空間11を形成する側壁1aから所定距離Lだけ離隔して給気する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調対象空間の下部に、床面から所定高さまで形成される空調対象域を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、
空調空気を給気口から、前記空調対象空間の下方に向けて給気するにあたり、
前記給気口を前記空調対象空間を形成する側壁から所定距離だけ離隔して給気する
ことを特徴とする置換空調方法。
【請求項2】
前記空調対象空間には、空調空気を供給するとともに前記給気口を備える空調装置が設置され、
前記空調装置は、更に、
前記空調対象空間の空気を吸気する吸込口と、
吸い込まれた前記空調対象空間の空気を冷却する冷却機構と、
を備えて構成され、
前記給気口は、前記冷却機構により調整された空調空気を、前記空調装置の下方に向けて給気する
ことを特徴とする請求項1に記載の置換空調方法。
【請求項3】
前記所定距離は、前記給気口から給気される空調空気による周囲の空気の誘引を生じ易い距離である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項4】
前記側壁と、前記給気口を備える空調装置の側壁と、の間に備えられた、下方への気流を生じさせる送風ファンを駆動させる
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の置換空調方法。
【請求項5】
前記空調対象域の温度に基づき、前記送風ファンの給気風量を制御する風量制御機構により、前記送風ファンの給気風量を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の置換空調方法。
【請求項6】
前記空調対象域の清浄度に基づき、前記送風ファンの給気風量を制御する風量制御機構により、前記送風ファンの給気風量を制御する
ことを特徴とする請求項4に記載の置換空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は置換空調方法に関する。
【背景技術】
【0002】
置換空調に関する技術として、特許文献1には、「温度制御し、フィルタを通過させて浄化した空気を、クリーンルーム天井面からクリーンルーム内に給気する給気開口部と、クリーンルーム内の空気を還気として吸い込む吸い込み開口部と、を有し、前記給気開口部からクリーンルーム内に給気される清浄空気の風速が1m/s以下であることを特徴とするクリーンルーム用空調システム。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-219219号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の置換空調方法は、置換空調が行われる空調対象空間の下部に、作業員が作業する領域及び装置類が占有する領域の空調対象域が存在し、温度に起因する密度差を利用して温度成層化することで、下部のみを空調するものである。
【0005】
特許文献1に記載の技術では、クリーンルームの天井面に形成された給気開口部から風速1m/s以下で清浄空気が吹き出され、置換空調が行われる(請求項1、段落0022)。しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の技術では、作業領域での作業員の足元が冷たく、上部上半身(頭等)が暖かくなることがあり、作業員が不快に感じることがあった。
本開示が解決しようとする課題は、作業員の快適性を向上させると共に、装置類に対し安定した温度等の環境を与える置換空調方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空調方法は、空調対象空間の下部に、床面から所定高さまで形成される空調対象域を所定の環境に維持するための置換空調方法であって、空調空気を給気口から、前記空調対象空間の下方に向けて給気するにあたり、前記給気口を前記空調対象空間を形成する側壁から所定距離だけ離隔して給気する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、作業員の快適性を向上させると共に、装置類に対し安定した温度等の環境を与える置換空調方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の空調システムの模式図である。
図2】給気口から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、所定距離Lがある場合である。
図3】給気口から給気された空調空気Acの流れ方を説明する図であり、所定距離Lが無い場合である。
図4】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
図5】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
図6】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
図7】別の一実施形態の空調システムの模式図である。
図8】離隔空間に設置した送風ファンを用いた、温度制御を実行する装置構成を示す模式図である。
図9】離隔空間に設置した送風ファンを用いた、温度制御を示すフローチャートである。
図10】清浄度制御を実行する別な装置構成を示す模式図である。
図11】清浄度制御を示す別なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更したり、図面間で一部の部材の図示を省略したり変形したりすることがある。
【0010】
図1は、本開示に係る置換空調方法を実現する第1実施形態の空調システム100(置換空調システム)の模式図である。本開示の置換空調方法は、空調対象空間11の下部に、床面1bから所定高さまで形成される空調対象域10を所定の環境に維持するための方法である。ここでいう下部は、空調対象室1の内側全体を占める空調対象空間11の下部である。空調システム100では、空調対象室1はクリーンルームであり、その上部に、空調装置2が備えられる。空調対象室1の内部には空調対象空間11が形成され、図示の例では、空調対象空間11は、クリーンルームの内部空間である。空調対象域10は、空調対象空間11内にあって、その下部の領域である。空調装置2は、空調対象空間11に設置される。空調装置2は、空調空気Acを供給するとともに給気口25を備えるものである。
【0011】
空調対象室1には、発熱負荷源及び発塵源となる装置類3と作業員4が存在する。
【0012】
また、空調対象室1では、空調装置2の動作とは別に、空調対象室1外の汚染空気が空調対象室1に流入しないように、室内を陽圧に維持するために必要な外気が外調機5で調整される。そして、調整後の外気が、ダクト6a及び第1導入口7を介し供給され、排気口8、ダクト6bから余剰空気が空調対象室1の系外に排気される。
【0013】
図1中の一点鎖線は、空調対象室1で、温度管理及び清浄度管理が求められる空調対象域10の上限を示す仮想のライン9であり天井等の間仕切りが存在する訳ではない。このライン9の高さ以下が、空調対象室1の空調対象域10となる。
空調対象域10の高さは、装置類3の高さ及び作業員4の身長を超える高さに設定され、一般的には2m程度であるが、装置類3の高さによっては3m~4mに設定される場合もある。
【0014】
空調装置2は、空調対象空間11の空気を吸気する吸込口21、吸い込まれた空調対象空間11の空気を冷却する冷却機構22、及び給気口25を備えて構成される。給気口25は、冷却機構22により調整された空調空気Acを、空調装置2の下方に向けて給気する。ただし、空調対象室1がクリーンルームとしての実施例であることから、冷却機構22と給気口25との間に、送風ファン23、フィルタとして高性能除塵フィルタ24を備えて、実施例の内容を説明する。
【0015】
空調装置2は、送風ファン23の動作により空調対象室1内の空気を吸気し、冷却機構22を通過する際に空気を冷却する。更に、空調装置2は、塵埃を除去する高性能除塵フィルタ24(フィルタの一例)を備え、高性能除塵フィルタ24によって空気中の塵埃を除去する。そして、空調装置2は、高性能除塵フィルタ24を通過した空気が給気口25を通じて給気されるように構成される。即ち、空調装置2は、給気口25を介して空調及び除塵された空気(空調空気Ac)を空調対象室1に対し、下方に向けて吹き出し供給する。
【0016】
給気口25から下方に向け吹出された、空調空気Acは、周囲の空気(周囲空気Aa)を誘引及び混合しながら下方に向かう。このとき、誘引及び混合する空気量に応じて、下降風速は減衰するとともに、同伴して下方に移動する空気量が増大する。また同時に、下方に移動する空気の温度は、誘引及び混合する周囲空気Aaの量に応じて、給気口25から吹出された、空調空気Acの温度よりも高い温度になる。
これら一連の動作により、空調対象域10に到達する、空調空気Acの温度は、給気口25から吹出された、空調空気Acの吹出し時の温度よりも高くなり、空調対象域10の上下温度差が小さくなるように機能する。また、空調対象域10には、空調装置2で空調空気Acが供給されるため、空調対象域10の塵埃数は一定値以下に保たれる。
【0017】
ここに、空調装置2の給気口25は、空調対象室1の内側の側壁1a(空調対象空間11を形成する側壁の一例)と給気口25とが所定距離Lを有して離隔するように設置される。従って、本開示の置換空調方法では、空調空気Acを給気口25から、空調対象空間11の下方に向けて給気するにあたり、空調空気Acは、給気口25を側壁1aから所定距離だけ離隔して給気される。
【0018】
図2及び図3は、空調装置2の給気口25から給気された、空調空気Acの流れ方を説明する図である。図2は所定距離Lがある場合、即ち、側壁1aと空調装置2及び給気口25とが離隔する場合を示す。図3は、側壁1aと空調装置2及び給気口25とが離隔せず接触している場合、即ち所定距離Lが無い場合を示す。
【0019】
図3に示すように、空調装置2が側壁1aと接触設置される場合、給気口25から下向きに給気された空気は側壁1a側からは周囲空気Aaを誘引できない。一方、図2に示すように、空調装置2と側壁1aが離隔している場合には、空調対象室1の部屋内側からの誘引に加えて、側壁1a側からも周囲空気Aaの誘引も可能となる。
これにより、空調空気Acへの周囲空気Aaの誘引及び混合する空気量が増え、空調対象域10での上下温度差が小さくなる効果を促進する。
【0020】
この所定距離Lは、例えば、給気口25から給気される空調空気Acによる周囲空気Aaの誘引を生じ易い距離である。所定距離Lは、誘引を阻害しない点で広い(長い)方が好ましいが、例えば、シミュレーション等によって決定でき、具体的には例えば600mm以上であるが、この数値範囲に限定されない。
【0021】
図4は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。空調対象空間11には、第1導入口7が配置される。第1導入口7は、空調対象室1外の汚染空気が空調対象室1に流入しないよう、空調対象室1を室外に対し陽圧に維持するための、外調機5により空調された外気をダクト6aを介して空調対象空間11に導入するものである。
【0022】
空調装置2と第1導入口7とが近傍に配置されることが好ましく、具体的には、第1導入口7と空調装置2の吸込口21とは近傍に備えられることが好ましい。ここでいう近傍は例えば1m以内である。外気を導入する第1導入口7と吸込口21が近傍に設置されることで、外調機5により温湿度が調整され、かつ、清浄度も整えられた調整後の外気は、空調対象室1の上部の空気とほとんど混合せず、速やかに吸込口21から空調装置2に導入される。これにより、空調された外気を効率よく利用できるようになる。
【0023】
図5は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。図5に示す例では、空調装置2は、外調機5により空調された外気をダクト6aを介して空調装置2に直接導入する第2導入口7aを備える。
【0024】
このように、外調機5により空調された外気をダクト6a、第2導入口7aを介して、空調装置2に直接導入することで、外調機5によって温湿度が調整され、かつ、清浄度も整えられた調整後の外気は、空調対象室1の上部の空気と全く混合せず、空調装置2に導入される。このようにしても、空調された外気を効率よく利用できる。
【0025】
図6は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。図6に示す例では、空調システム100は、空調対象室1の内部である空調対象空間11の塵埃を吸い込んで除去する除塵装置26a,26bを備え、除塵装置26a,26bは空調対象空間11(具体的には空調対象域10)に配置される。
【0026】
このような除塵装置26a,26bを備えるのは、空調対象室1又は空調対象域10の発熱負荷源の熱処理に必要な空調風量(A)と、要求される清浄度を基準として必要となる空調風量(B)との差異が大きく、A<Bとなる場合である。
【0027】
除塵装置26a,26bは、除塵機能を有する高性能除塵フィルタ24aと、送風ファン23aと、ケーシング27aとを備える。
【0028】
また、熱処理機能と除塵機能とを分離する場合には、空調装置2の高性能除塵フィルタ24を備えなくとも良い。
【0029】
除塵装置26の設置位置、設置台数は、図6に限定されず、必要な向き及び位置に、必要な台数を設置して良い。
【0030】
図7は、別の一実施形態の空調システム100の模式図である。図7に示す例では、空調装置2と空調対象室1の側壁1aとの間に、下方への気流を生じさせる送風ファン23bが備えられる。本開示の置換空調方法は、送風ファン23bを駆動させる。送風ファン23bを備えることで、空調装置2と側壁1aとの間の空間を介して、空調対象室1の上部の空気を下方に導入し、給気口25から給気される低温空気と確実に誘引及び混合することが可能となる。また、所定距離Lが短く(狭く)、空調空気Acが周囲空気Aa(図2)を誘引し難い場合でも、空調装置2と側壁1aとの間に強制的な気流を生じさせて誘引及び混合を促進できる。
【0031】
図8は、離隔空間に設置した送風ファン23bを用いた、温度制御を実行する装置構成を示す模式図である。送風ファン23bはケーシング27bに収容される。ケーシング27bは、給気口27cと、給気口27cよりも高い位置に配置された吸込口27dとを備える。図示の例では、給気口27cは、ケーシング27の下部(送風ファン23bの下方)に備えられ、吸込口27dは、ケーシング27の上部(送風ファン23bの上方)に備えられる。送風ファン23bの駆動により、空調対象室1の空気(空調対象空間11の上方に存在する空気)が吸込口27dを通じて吸い込まれ、給気口27cを通じて下方に給気される。図示の例では、吸込口27dは、ケーシング27の上部(送風ファン23bの上方)に備えられるが、これに限るものではなく、ケーシング27と同じ高さ位置でも、それより低くてもよい。場合によっては、空調対象域10上部から吸い込んでもよい。
【0032】
離隔空間に設置した送風ファン23bによる温度制御は、温度センサ28と、制御装置29と、風量制御機構30によって実行される。温度センサ28は、空調対象域10に設置される。制御装置29は、温度センサ28により測定される空調対象域10の温度Tに基づき、送風ファン23bの運転信号を出力するものである。風量制御機構30は、制御装置29の運転信号に基づいて、送風ファン23bの給気風量を制御するものである。送風ファン23bは、風量制御機構30としてのインバータによって回転数を制御される。温度センサ28、制御装置29、風量制御機構30及び送風ファン23bは、破線で示す電気信号線により接続される。
【0033】
図9は、離隔空間に設置した送風ファン23bを用いた、温度制御を示すフローチャートである。本開示の置換空調方法では、空調対象域10の温度に基づき、風量制御機構30により、送風ファン23bの給気風量が制御される。具体的には、まず、制御装置29は、温度センサ28により測定された空調対象域10の温度T(ステップS11)が設定温度よりも低いか否かを判断する(ステップS12)。
【0034】
測定した温度Tが設定温度よりも低い場合(Yes)、制御装置29は、風量制御機構30を制御して、誘引空気量を増やすよう送風ファン23bの回転数を速くして、送風ファン23bを介した風量を上げる(ステップS13)。一方、ステップS12において、測定された温度Tが設定温度以上の場合(No)、制御装置29は誘引空気量を減らすべく、送風ファン23bの回転数を遅くして、送風ファン23bを介した風量を下げる(ステップS14)。これらの動作を一定の時間ステップにより実行することにより空調対象域10の温度Tが制御される。
【0035】
なお、ステップS12において、設定温度±数℃以内のような範囲を不感温度帯として、風量制御機構30にて送風ファン23bの回転数を現状の状態に保持してもよい。
【0036】
なお、本開示に係る上記の空調対象域10の温度制御は、空調装置2における給気温度を変化させることによる空調対象域10の温度制御と組み合わせて実施してもよい。
【0037】
図10は、離隔空間に設置した送風ファン23bを用いた清浄度制御を実行する装置構成を示す模式図である。送風ファン23bによる清浄度制御は、風量制御機構30と、清浄度センサ31と、制御装置29とによって実行される。清浄度センサ31は、空調対象域10の清浄度(例えば塵埃濃度C)を測定するものである。制御装置29は、清浄度センサ31により測定される空調対象域10の空気中に含まれる塵埃濃度Cに基づき風量制御機構30に制御信号を出力するものである。清浄度センサ31、制御装置29、風量制御機構30は、破線で示す電気信号線により接続される。
【0038】
図11は、離隔空間に設置した送風ファン23bを用いた、清浄度制御を示すフローチャートである。本開示の置換空調方法では、空調対象域10の清浄度に基づき、風量制御機構30により、送風ファン23bの給気風量が制御される。具体的には、まず、制御装置29は、清浄度センサ31により計測された空調対象域10の清浄度に係る塵埃濃度C(ステップS21)が規定清浄度に係る塵埃濃度よりも多いか否かを判断する(ステップS22)。
【0039】
計測された塵埃濃度Cが規定清浄度に係る塵埃濃度より多い場合(Yes)、制御装置29は、風量制御機構30を制御して誘引空気量を減らすよう送風ファン23bの回転数を遅くして、送風ファン23bを介した給気風量を下げる(ステップS23)。これは、空調対象空間11への置換空調により、空調対象空間11の下方よりも、上方である吸込口27dの周辺に、塵埃が多く存在しているためである。ここで、清浄度センサ31は、吸込口27d及び給気口27cよりも下方に配置される。そして、この位置に配置された清浄度センサ31により塵埃濃度Cが多く計測された場合、上部に存在する塵埃を多く含む空気の吸込み量を減らすために、送風ファン23bの回転数が遅く制御される。
【0040】
一方、ステップS22において、測定された塵埃濃度Cが規定清浄度に係る塵埃濃度以下の場合(No)、制御装置29は風量制御機構30を制御して送風ファン23bの回転数を速くして、送風ファン23bを介した給気風量を上げる(ステップS24)。これは、下部の環境が規定清浄度を満足していると判断され、上下温度差の抑制に寄与する誘引及び混合を促進させるため、送風ファン23bの回転数が速く制御される。これらの動作を一定の時間ステップにより実行することにより空調対象域10の清浄度が制御される。
【0041】
なお、ステップS22において、規定塵埃濃度±不感帯塵埃濃度以内のような範囲を不感塵埃濃度帯として、風量制御機構30にて送風ファン23bの回転数を現状の状態に保持してもよい。
【0042】
なお、制御装置29は、何れも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成される。制御装置29は、ROMに格納されている所定のプログラム(制御プログラム)がRAMに展開され、CPUによって実行されることにより具現化される。ここでいうプログラムは、コンピュータに上記の空調システム100を実行させるためのものである。
【0043】
これまで示した図示の例では、空調対象空間11はクリーンルームの内部空間であるが、例えば、工場、ホール、その他の用途の部屋等の各空間に適用してもよい
【0044】
本開示の置換空調方法によれば、空調装置2を側壁1aから離隔設置することにより、良好な誘引状態を創出するとともに、空調対象域10の環境を種々方法で制御できる。このため、作業員4の快適性の阻害要因となる低温空気が空調対象域10に供給されることを抑制して上下温度差が軽減され、快適性が向上するとともに、装置類3に対しても安定した温度環境を提供できる。
【0045】
置換空調が行われる空調対象空間11を形成する空調対象室1の下部にある空調対象域10に空調空気Acを供給することで、空調対象室1全体を混合して空調する方式に比べ、少風量で効率良く空調でき、エネルギ削減にも貢献できる。
また、空調対象室1に配置される空調装置2を介して室内空気を循環処理するため、空調対象室1の外部にダクトを介して室内空気を搬送し、外調機5等に戻す必要がなくなる。このため、空気搬送に係るエネルギの削減も可能となる。
【0046】
更に、空調装置2を空調対象域10よりも高い位置に設置することが可能であり、空調対象室1内のフットプリントが改善され、装置類3の設置の自由度も向上する。これとともに、空調対象室1のレイアウト変更への対応も容易となる。
【符号の説明】
【0047】
1 空調対象室
10 空調対象域
100 空調システム
11 空調対象空間
1a 側壁
1b 床面
2 空調装置
21 吸込口
22 冷却機構
23 送風ファン
23a 送風ファン
23b 送風ファン
24 高性能除塵フィルタ
24a 高性能除塵フィルタ
25 給気口
26 除塵装置
26a 除塵装置
26b 除塵装置
27 ケーシング
27a ケーシング
27b ケーシング
27c 給気口
27d 吸込口
28 温度センサ
29 制御装置
3 装置類
30 風量制御機構
31 清浄度センサ
4 作業員
5 外調機
6a ダクト
6b ダクト
7 第1導入口
7a 第2導入口
8 排気口
9 ライン
A 空調風量
Aa 周囲空気
Ac 空調空気
B 空調風量
C 塵埃濃度
L 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11