(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058229
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】鉄筋の折り曲げ方法および冶具
(51)【国際特許分類】
B21D 7/024 20060101AFI20230418BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230418BHJP
B30B 1/32 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B21D7/024 C
E04G21/12 105D
B30B1/32 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168102
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】根上 茂之
(72)【発明者】
【氏名】松井 良介
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大曜
【テーマコード(参考)】
4E063
4E090
【Fターム(参考)】
4E063AA09
4E063BC11
4E063BC18
4E063CA03
4E090AA10
4E090AB01
4E090CB02
4E090HA02
(57)【要約】
【課題】簡易な方法で、打継面から延出する鉄筋を折り曲げる際の手間や時間、及び労力を軽減することのできる鉄筋の折り曲げ方法を提供する。
【解決手段】先行打設されたコンクリートの打ち継ぎ面110から延出する鉄筋100を折り曲げる鉄筋の折り曲げ方法であって、鉄筋100を把持する把持部12を有する第1冶具10と、押圧用のジャッキ50を用い、鉄筋100の所定の位置に把持部12をセットして第1冶具10を仮固定し、第1冶具10を仮固定した状態で、第1冶具10の端部をジャッキ50により押圧することを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行打設されたコンクリートの打ち継ぎ面から延出する鉄筋を折り曲げる鉄筋の折り曲げ方法であって、
前記鉄筋を把持する把持部を有する冶具と、押圧用のジャッキを用い、
前記鉄筋の所定の位置に前記把持部をセットして前記冶具を仮固定し、
前記冶具を仮固定した状態で、前記冶具の端部または、前記鉄筋を前記ジャッキにより押圧することを特徴とする鉄筋の折り曲げ方法。
【請求項2】
前記冶具は、一端に把持部、他端に押圧部を有し、
前記打ち継ぎ面上に載置した前記ジャッキにより、前記鉄筋に仮固定した前記冶具の前記押圧部を押圧することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋の折り曲げ方法。
【請求項3】
前記冶具は、両端部に把持部、中央部に前記ジャッキを収納するハウジング部を有し、
前記ジャッキを前記ハウジング部に収納した後、前記鉄筋に前記冶具を仮固定した状態で、
前記ジャッキにより前記鉄筋を交差方向に押圧することを特徴とする請求項1に記載の鉄筋の折り曲げ方法。
【請求項4】
鉄筋の折り曲げ加工に用いる冶具であって、
一端に備えられ、鉄筋を把持するU字状の凹部を備えた把持部と、
他端に備えられ、ジャッキで押される押圧部と、を有することを特徴とする冶具。
【請求項5】
前記押圧部は、所定の曲率を持った曲面で構成されていることを特徴とする請求項4に記載の冶具。
【請求項6】
鉄筋の折り曲げ加工に用いる冶具であって、
ジャッキを収納するハウジング部と、
前記ハウジング部の長手方向両端に備えられ、鉄筋を把持するU字状の凹部を備えた把持部と、を有し、
前記ハウジング部の側壁には、前記ジャッキのラムを突出させる開口部が備えられていることを特徴とする冶具。
【請求項7】
鉄筋の折り曲げ加工に用いる冶具であって、
鉄筋を把持するU字状の凹部を備えた把持部と、
前記把持部による鉄筋の把持方向と交差する方向にラムを吐出させるようにジャッキを配置するためのジャッキチェアと、
前記把持部と前記ジャッキチェアとを接続すると共に、前記ジャッキが前記鉄筋を押圧した際の反力を受ける反力受けと、を有することを特徴とする冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物の施工現場において、鉄筋コンクリート構造躯体の先打ち部に埋設された鉄筋を、延出した部分の任意の箇所で折り曲げるための曲げ加工方法とこれに用いる冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
施工中の鉄筋コンクリート構造物には、主筋や壁筋、アンカー筋、差し筋など種々の鉄筋が、先行打設したコンクリートに埋設されている。配筋が過密で太径の鉄筋が錯綜する基礎と杭の接合部では、コンクリート打ち継ぎ面から露出する鉄筋が後打ち部に配する鉄筋と干渉する場合には、杭主筋を折り曲げて位置をずらす作業が必要になる。
【0003】
このような折り曲げ作業は、通常、特許文献1に開示されているような、梃子の原理を応用した長尺の曲げ工具を利用して、鉄筋工が手作業で行うことが多い。しかし、曲げ工具を用いて人力で折り曲げる場合、狭い場所での作業が容易ではなく、太径の杭主筋や高強度の鉄筋を折り曲げるのは困難である。また、手作業で所定の曲率を確保するのも容易ではないことから、多大な手間と時間、及び労力を要することとなる。
【0004】
このような作業を軽減するために、油圧シリンダを用いた鉄筋折り曲げ装置が、特許文献2や3に開示されている。特許文献2に開示されている鉄筋折り曲げ装置は、主に主筋周りに配される補助筋(例えば肋筋)を折り曲げるための装置であり、本体フレームに形成された嵌入凹部と、駆動シリンダによって回動力を得る曲げアームを備えている。嵌入凹部に主筋を本体フレームを固定し、補助筋を配置した曲げアームを駆動シリンダを介して回動させることで容易に、主筋周りに補助筋を折り曲げ配置することが可能となる。しかし、特許文献1に開示されている鉄筋折り曲げ装置は用途が補助筋に限定されており、本体フレームを固定する対象(特許文献1では主筋)が無い場合には、使用することができない。
【0005】
また、特許文献3に開示されている鉄筋折り曲げ装置は、鉄筋の配置方向に沿って摺動する油圧ピストンと、この油圧ピストンの設置高さを調整するロッド、及び油圧ピストンの突出により回動し、鉄筋を折り曲げるベンディングアームを備える構成としている。このような構成の鉄筋折り曲げ装置によれば、ロッドにより装置自体の高さ位置が保たれると共に油圧ピストンを垂直方向に使用することができるため、作業性が良好で、作業者の労力も軽減することができる。しかし、装置本体を構成するハウジングに対してベンディングアームをシフトさせた状態で配置し、ハウジング内に収容されたピストンにより、このベンディングアームを回動させる構成としているため、構造が複雑なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平04-113112号公報
【特許文献2】特開平11-114631号公報
【特許文献3】特開平09-029345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、簡易な方法で、打継面から延出する鉄筋を折り曲げる際の手間や時間、及び労力を軽減することのできる鉄筋の折り曲げ方法、及びこれに用いる冶具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る鉄筋の折り曲げ方法は、先行打設されたコンクリートの打ち継ぎ面から延出する鉄筋を折り曲げる鉄筋の折り曲げ方法であって、前記鉄筋を把持する把持部を有する冶具と、押圧用のジャッキを用い、前記鉄筋の所定の位置に前記把持部をセットして前記冶具を仮固定し、前記冶具を仮固定した状態で、前記冶具の端部または、前記鉄筋を前記ジャッキにより押圧することを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する鉄筋の折り曲げ方法において前記冶具は、一端に把持部、他端に押圧部を有し、前記打ち継ぎ面上に載置した前記ジャッキにより、前記鉄筋に仮固定した前記冶具の前記押圧部を押圧することを特徴とする。このような方法を採用した場合、冶具とジャッキを別体とすることができるため、冶具の小型化、及び単純化を図ることができる。
【0010】
また、上記のような特徴を有する鉄筋の折り曲げ方法において前記冶具は、両端部に把持部、中央部に前記ジャッキを収納するハウジング部を有し、前記ジャッキを前記ハウジング部に収納した後、前記鉄筋に前記冶具を仮固定した状態で、前記ジャッキにより前記鉄筋を交差方向に押圧することを特徴とする。このような方法を採用した場合、ジャッキを冶具に介装することができるため、鉄筋に対する冶具の仮固定から鉄筋を曲げるまでの段取りを素早く実行することが可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するための冶具は、鉄筋の折り曲げ加工に用いる冶具であって、一端に備えられ、鉄筋を把持するU字状の凹部を備えた把持部と、他端に備えられ、ジャッキで押される押圧部と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、上記のような特徴を有する冶具において前記押圧部は、所定の曲率を持った曲面で構成されていることを特徴とする。このような特徴を有する事によれば、冶具の押圧部とジャッキのラムとの接触角度が変化しても、一定の押圧状態を得ることが可能となる。
【0013】
また、上記目的を達成するための冶具は、鉄筋の折り曲げ加工に用いる冶具であって、ジャッキを収納するハウジング部と、前記ハウジング部の長手方向両端に備えられ、鉄筋を把持するU字状の凹部を備えた把持部と、を有し、前記ハウジング部の側壁には、前記ジャッキのラムを突出させる開口部が備えられていることを特徴とする。
【0014】
さらに、上記目的を達成するための冶具は、鉄筋の折り曲げ加工に用いる冶具であって、鉄筋を把持するU字状の凹部を備えた把持部と、前記把持部による鉄筋の把持方向と交差する方向にラムを吐出させるようにジャッキを配置するためのジャッキチェアと、前記把持部と前記ジャッキチェアとを接続すると共に、前記ジャッキが前記鉄筋を押圧した際の反力を受ける反力受けと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有する鉄筋の折り曲げ方法によれば、構成が単純な冶具とジャッキによる簡易な方法で、打継面から延出する鉄筋を折り曲げることができる。また、ジャッキの力を調整するだけで鉄筋を所定の曲率で曲げることができるため、鉄筋を折り曲げる際の手間や時間、及び労力を軽減することができる。さらに、ジャッキを油圧とすることで高強度、及び太径の鉄筋の曲げにも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】折り曲げ対象とする鉄筋に第1冶具を仮固定した状態を示す図である。
【
図4】折り曲げ対象とする鉄筋に仮固定された第1冶具に対してジャッキをセットした状態を示す図である。
【
図5】ジャッキを稼働させて第1冶具を押し上げ、鉄筋を折り曲げた状態を示す図である。
【
図10】折り曲げ対象とする鉄筋に、ジャッキをセットした第2冶具を仮固定した状態を示す図である。
【
図11】第2冶具にセットされたジャッキを稼働させて鉄筋を折り曲げた状態を示す図である。
【
図14】折り曲げ対象とする鉄筋に、ジャッキをセットした第3冶具を仮固定した状態を示す図である。
【
図15】第3冶具にセットされたジャッキを稼働させて鉄筋を折り曲げた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の鉄筋の折り曲げ方法、及び冶具に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明の一部に過ぎず、その効果を奏する限りにおいて、方法の一部、および冶具の構成の一部に変更を加えたとしても、本発明の一部とみなすことができる。また、以下の実施形態で折り曲げ対象とする鉄筋は、先行打設されたコンクリートの打ち継ぎ面から延出されている鉄筋(例えば杭主筋)とする。
【0018】
[第1実施形態]
[第1冶具]
まず、
図1、
図2を参照して、第1実施形態に係る鉄筋の折り曲げ方法に使用する冶具(以下、第1冶具10と称す)の構成について説明する。なお、図面において、
図1は、第1冶具の側面構成を示す図であり、
図2は同平面構成を示す図である。第1冶具10は、一端に備えられた把持部12と、他端に備えられた押圧部14とを有する。把持部12は、折り曲げ対象とする鉄筋100を把持するための役割を担う要素であり、鉄筋100を把持する方向(鉄筋100を通す方向)に沿ってU字状の凹部12aを備えている。把持部12は、鉄筋100を安定把持するために、凹部12aの形成方向に沿って所定の長さを有する(例えば80mm~100mm程度)。
【0019】
押圧部14は、詳細を後述するジャッキ50のラム52により押圧される要素である。第1冶具10の場合、把持部12の凹部12aを構成するU字の一側壁を起点として凹部12aの延設方向と交差する方向に延設した板部材の端部に、押圧部14が設けられている。本実施形態では、把持部12に対する鉄筋100の配置方向に沿って押圧力を付与することとなる。このため押圧部14は、板部材の幅方向(矢印aで示す方向)両端に設けられている。押圧部14を両端に設ける事により、把持部12における凹部12aの向きを逆転させた場合であっても、押圧部14を打ち継ぎ面110側に配置することが可能となる。
【0020】
本実施形態では押圧部14を、所定の曲率を持った曲面で構成するようにしている。押圧部14をこのような構成とすることにより、ジャッキ50のラム52との接触が点、又は線となる。このため、押圧により鉄筋100に曲がりが生じた際に、押圧部14とラム52の接触角度が変わったとしても、両者の接触状態を一定に保つ事が可能となる。
【0021】
図1に示す形態の第1冶具10は、押圧部14を構成する板部材の板面に貫通孔14aを形成している。貫通孔14aを形成する事により、第1冶具10の軽量化を図ることができると共に、鉄筋100やジャッキ50に第1冶具10を合わせる際の持手とすることが可能となる。
【0022】
[折り曲げ方法]
次に、上記のような構成の第1冶具10を用いた鉄筋100の折り曲げ方法について説明する。まず、
図4に示すように、コンクリートの打ち継ぎ面110から延出している鉄筋100の所定の位置に第1冶具10を仮固定する。ここで、第1冶具10を仮固定する位置は、第1冶具10の下端部(押圧部14)と打ち継ぎ面110との間にジャッキ50が入る位置であって、把持部12の下端部(鉄筋100の基端部側端部)が、鉄筋100の折り曲げを望む位置よりも先端側となる位置とすれば良い。
【0023】
また、第1冶具10の仮固定とは、第1冶具10の把持部12を構成する凹部12aに沿って鉄筋100を入れ込めば良い。コンクリート構造物の補強に用いられる鉄筋100は異形棒鋼であるため、その表面には所定の間隔で凸状の節が設けられている。把持部12を構成する凹部12aの一方の側壁には押圧部14を構成する板部材が備えられているため、無負荷状態において把持部12は、押圧部14が配置されている方に傾くこととなる。このため、把持部12の端部12b2と、端部12b4が鉄筋100に接触することとなり、節に引っ掛かり、脱落が妨げられることとなる。
【0024】
次に、
図4に示すように、第1冶具10を構成する押圧部14と打ち継ぎ面110との間にジャッキ50(例えば油圧ジャッキ)を配置し、ラム52により押圧部14を押圧可能な状態とする。このような状態でジャッキ50を稼働させ、ラム52を押し上げて(突出させて)押圧部14に押圧力を付与すると、押圧部14がラム52により持ち上げられ、把持部12の端部12b1と端部12b3が鉄筋100に当接することとなる。把持部12の端部12b1と端部12b3はそれぞれ、鉄筋100の節に引っ掛かり、鉄筋100に対して第1冶具10の位置決めが成される。
【0025】
第1冶具10が位置決めされた後、ジャッキ50のラム52をさらに押し上げることで、第1冶具10の端部12b3が支点、端部12b1が作用点、押圧部14が力点となり、鉄筋100に矢印b方向の荷重を付与することとなる。
【0026】
鉄筋100が曲がるにつれて、第1冶具10の傾きも大きくなるが、押圧部14はラム52との接触面が傾斜方向に沿った曲面となるように構成されているため、ラム52との接触面(線接触)に変化は無く、所望する曲げ角度まで押圧することができる。鉄筋100に所望する曲げ角度(曲率)を付与した後、ジャッキ50と第1冶具10を鉄筋100の周囲から撤去することで鉄筋100の折り曲げが完了する。
【0027】
[効果]
このような鉄筋100の折り曲げ方法によれば、構成が単純な冶具(第1冶具10)とジャッキ50を用いるだけで鉄筋100を折り曲げることができる。よって、鉄筋100を折り曲げるための手間や時間、及び労力を軽減することができる。
【0028】
また、ジャッキ50の力を調整(ラム52の伸長度合いや荷重のかけかたの調整などを含む)するだけで、鉄筋100に対して所定の曲率を与えることができる。
【0029】
さらに、油圧を用いて曲げ荷重をかけるため、高強度、太径の鉄筋100の曲げにも対応することが可能となる。
【0030】
[応用]
上記実施形態では、ジャッキ50を打ち継ぎ面110に配置して作業を行う旨記載した。しかしながら、本発明に係る鉄筋の折り曲げ方法を実施する場合には、ジャッキ50の下端部と打ち継ぎ面110との間にコロを配置するようにしても良い(不図示)。ジャッキアップ時の荷重を受けた際、ジャッキ50自体も回動し、押圧部14とラム52との成す角を小さくすることができ、押圧部14に負荷する荷重のロスを減らすことが可能となるからである。
【0031】
また、第1冶具10は、
図6に示すように、把持部12と押圧部14との間に成す角θを形成するように傾けても良い。鉄筋100を大きく曲げたい場合に、効率的な施工が可能となるからである。
【0032】
[第2実施形態]
[第2冶具]
次に、第2実施形態に係る鉄筋の折り曲げ方法に用いる冶具について、
図7から
図9を参照して説明する。なお、図面において
図7は第2冶具の右側面の構成を示す図であり、
図8は同正面構成、
図9は同平面構成をそれぞれ示す図である。本実施形態に係る冶具(以下、第2冶具10Aと称す)は、把持部12と、ハウジング部16を有する。把持部12は、折り曲げ対象とする鉄筋100を把持するための役割を担う要素であり、詳細を後述するハウジング部16を挟み込むように、第2冶具10Aの長手方向両端部に設けられている。把持部12は、第1冶具10の把持部12と同様に、U字状の凹部12aを備えており、一対の把持部12は、凹部12aの向きを同一方向(第2冶具10Aの長手方向側方)としている。直線状に延びている鉄筋100を折り曲げる際に、対を成す凹部12aに、一定方向から入れ込むためである。
【0033】
ハウジング部16は、ジャッキ50を保持する役割を担う要素である。具体的には、角鋼管などで構成されたハウジング本体16aと、このハウジング本体16aの周囲に配置された補強部材16bとから成る。ハウジング本体16aの側面には、内部にジャッキ50を介入させるための第1開口部16a1が設けられている。また、ハウジング本体16aを起点として、把持部12が延設されている側の側面には、ジャッキ50のラム52を突出させるための第2開口部16a2が設けられている。
【0034】
なお、図面を参照すると読み取れるように、把持部12の凹部12aは、その開口方向を右側面側としているのに対し、ジャッキ50のラム52を突出させるための第2開口部16a2は、正面側に開口している。このため、ラム52により押圧される鉄筋100が、把持部12に保持された状態を保つことができる。
【0035】
[折り曲げ方法]
次に、上記のような構成の第2冶具10Aを用いた鉄筋100の折り曲げ方法について説明する。まず、
図10に示すように、ハウジング部16内(ハウジング本体16aの内部)にジャッキ50を収納する。その後、コンクリートの打ち継ぎ面110から延出している鉄筋100の所定の位置に第2冶具10Aを仮固定する。第2冶具10Aの仮固定は、第2冶具10Aに備えられた一対の把持部12の凹部12aに折り曲げ対象とする鉄筋100を入れ込み、ジャッキ50のラム52を鉄筋100の側部に当接させるようにすれば良い。
【0036】
第2冶具10Aを仮固定した後、ジャッキ50を稼働させ、ラム52を押し出すことで、鉄筋100を折り曲げることができる。この時、一対の把持部12がそれぞれ支点となり、ラム52の当接部が力点、及び作用点となる。
【0037】
[効果]
このような鉄筋100の折り曲げ方法であっても、構成が単純な冶具(第2冶具10A)とジャッキ50を用いるだけで鉄筋100を折り曲げることができ、鉄筋100を折り曲げるための手間や時間、及び労力を軽減することができる。
【0038】
また、ジャッキ50の力を調整するだけで、鉄筋100に対して所定の曲率を与えることができる。さらに、油圧を用いて曲げ荷重をかけるため、高強度、太径の鉄筋100の曲げにも対応することが可能となる。
【0039】
[第3実施形態]
[第3冶具]
次に、第3実施形態に係る鉄筋の折り曲げ方法に用いる冶具について、
図12、
図13を参照して説明する。なお、図面において
図12は第3冶具の側面構成を示す図であり、
図13は同平面構成を示す図である。第3冶具10Bは、把持部12と、反力受け18、及びジャッキチェア20とを有する。把持部12は、上述した第1冶具10、第2冶具10Aと同様に、折り曲げ対象とする鉄筋100を把持するための要素である。その構成は、第1冶具10、第2冶具10Aと同様にU字状の凹部12aを有するものであれば良い。
【0040】
反力受け18は、ジャッキ50の底部を支え、鉄筋100を押圧した際の反力を受けるための要素である。反力受け18は、把持部12を構成する凹部12aの側壁から延設されている鋼材(水平鋼材18a)と、この水平鋼材18aに直交するように設けられた鋼材(鉛直鋼材18b)とによって構成されていれば良く、
図12、
図13に示す例では、水平鋼材18a、鉛直鋼材18b共に、T字状の鋼材を採用している。
【0041】
ジャッキチェア20は、ジャッキ50による鉄筋100の押圧位置、すなわちジャッキ50の取り付け位置を調整するための要素である。本実施形態では、L字状に形成した板材により構成されており、一方の板面を反力受け18を構成する鉛直鋼材18bに当接させ、他方の板面が水平鋼材18aと平行になるように配置している。このように配置されるジャッキチェア20の他方の板面にジャッキ50を寝かせた状態配置することで、ジャッキ50は水平鋼材18aと平行にラム52を延出させることが可能となる。また、一方の板面は、鉛直鋼材18bに対して位置決めすることで、ジャッキ50の高さを調整することが可能となる。
【0042】
[折り曲げ方法]
次に、上記のような構成の第3冶具10Bを用いた鉄筋100の折り曲げ方法について説明する。まず、
図14に示すように、ジャッキ50をジャッキチェア20にセットする。次に、ジャッキ50をセットした第3冶具10Bの把持部12を折り曲げ対象とする鉄筋100にセットする。
【0043】
把持部12を鉄筋100にセットした後、
図15に示すように、ジャッキ50を稼働させてラム52を伸長させる。これにより、鉄筋100は、把持部12を介して鉄筋100に固定された状態のジャッキ50のラム52により押圧されることとなる。第3冶具10Bの反力受けの剛性が鉄筋100の曲げ強度よりも高い場合には、鉄筋がラム52に押圧され、屈曲することとなる。
【0044】
[効果]
このような鉄筋100の折り曲げ方法であっても、構成が単純な冶具(第3冶具10Bとジャッキ50を用いるだけで鉄筋100を折り曲げることができ、鉄筋100を折り曲げるための手間や時間、及び労力を軽減することができる。
【0045】
また、ジャッキ50の力を調整するだけで、鉄筋100に対して所定の曲率を与えることができる。さらに、油圧を用いて曲げ荷重をかけるため、高強度、太径の鉄筋100の曲げにも対応することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上記実施形態では、折り曲げ対象とする鉄筋100は、いずれも構造物を構成する際の打ち継ぎ面110から延出している鉄筋としているが、異形棒鋼であれば、本発明に係る鉄筋の折り曲げ方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10………第1冶具、10A………第2冶具、10B………第3冶具、12………把持部、12a………凹部、12b1,12b2,12b3,12b4………端部、14………押圧部、14a………貫通孔、16………ハウジング部、16a………ハウジング本体、16a1………第1開口部、16a2………第2開口部、16b………補強部材、18………反力受け、18a………水平鋼材、18b………鉛直鋼材、20………ジャッキチェア、50………ジャッキ、52………ラム、100………鉄筋、110………打ち継ぎ面。