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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058233
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】呼吸用マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20230418BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A41D13/11 M
A41D13/11 A
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168112
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】513199992
【氏名又は名称】本地川 裕之
(71)【出願人】
【識別番号】513200184
【氏名又は名称】日興商事株式会社
(72)【発明者】
【氏名】本地川 裕之
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA04
2E185CA03
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】呼吸用マスクは呼気または吸気をフィルターする目的で使用される。そのためにフィルター素材を回避する空気流は最小化されることが望ましい。一方で呼吸用マスクが装着される顔面の立体形状は多様であり、画一的な形状の呼吸用マスクで対応するには顔面への押圧を増強する手法が一般的である。そのため時として圧迫による皮膚損傷を生じることがある。
【解決手段】本発明は顔面に接触する部分を使用者毎の顔面立体形状データを基に、顔面の凹凸に嵌合する形状に成型することで、顔面との密着性を高め、より少ない押圧で、フィルターを回避する空気流を少なくできる。また、フィルターは複数の機能素材を選択でき、混在も可能なので幅広い用途に対応できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部顔面で口および鼻を覆う呼吸用マスクであって、フレーム部材と、
前記フレーム部材と連結する顔面インターフェース部材を有し、
前記顔面インターフェース部材は使用者顔面の三次元形状に嵌合する形状であることを特徴とする呼吸用マスク。
【請求項2】
前記顔面インターフェース部材は、使用者顔面形状のデータから個別に製作、または複数種類の選択肢から適合するものを選択できることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用マスク。
【請求項3】
前記顔面インターフェース部材は、顔面上方に対応する部分は可変性が乏しく、顔面下方に対応する部分は可変性に富むことで、使用者下顎の動きに追随することを特徴とする請求項1に記載の呼吸用マスク。
【請求項4】
前記フレーム部材はフィルター部材を装着できることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用マスク。
【請求項5】
前記フレーム部材は頭部装着部材を装着できることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用マスク。
【請求項6】
前記フレーム部材は電子デバイスを内蔵可能であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用マスク。
【請求項7】
前記フィルター部材は、前記フレーム部材に1つ以上が装着可能であり、濾過以外の機能を選択でき、複数の機能が混在可能であることを特徴とする請求項1に記載の呼吸用マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
呼吸用マスクの機能改良に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特許第6549585号
【特許文献2】特願2018-532318
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の呼吸用マスクは、頭部顔面で口および鼻を覆う装置であって、フレーム部材と、
前記フレーム部材と連結する顔面インターフェース部材を有し、前記顔面インターフェース部材は使用者顔面の三次元形状に嵌合する形状であることを特徴とするものである。
【0004】
本発明の呼吸用マスクは、前記顔面インターフェース部材は、使用者顔面形状のデータから個別に製作、または複数種類の選択肢から適合するものを選択できると良い。
【0005】
本発明の呼吸用マスクは、前記顔面インターフェース部材は、顔面上方に対応する部分は可変性が乏しく、顔面下方に対応する部分は可変性に富むことで、使用者下顎の動きに追随できると良い。
【0006】
本発明の呼吸用マスクは、前記フレーム部材はフィルター部材を装着できると良い。
【0007】
本発明の呼吸用マスクは、前記フレーム部材は頭部装着部材を装着できると良い。
【0008】
本発明の呼吸用マスクは、前記フレーム部材は電子デバイスを内蔵可能であると良い。
【0009】
本発明の呼吸用マスクは、前記フィルター部材は、前記フレーム部材に1つ以上が装着可能であり、濾過以外の機能を選択でき、複数の機能が混在可能であると良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、呼吸用マスクにおいて顔面への押圧力を小さくしても、呼吸で生じる空気流が想定した流路を回避する割合を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の呼吸用マスクを装用している様子。
図2】呼吸用マスクを顔面側から見た図。顔面インターフェースの顔面接触面は鼻梁や頬骨など顔面の起伏に嵌合する形状を有する。
図3】1枚のフィルター材をフレーム部材に装着する場合の形状。概ね台形を有し、2カ所で折り曲げて使用する。
図4】3枚のフィルター材用小区画用フレームをフレーム部材に装着する様子。正面中央に装着するフィルター材用小区画用フレームでは台形のフィルター素材を挟装する様子。
図5】耳介に係止する方式の頭部装着用部材を用いて呼吸用マスクを頭部に装着した様子。この図では正面中央のフィルター材用小区画に透明素材が使用されており対話時に相手から口元が透過視認できる。また眼球防護用シールドがフレーム部材天面に装着されている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、その前提条件となる課題や目的を踏まえつつ、詳細に説明する。
【0013】
本実施形態の呼吸用マスクは、フレーム部材と、前記フレーム部材と連結する顔面インターフェース部材で構成され、前記フレーム部材は顔面下半分を覆う形状を有している。
【0014】
本実施形態では前記顔面インターフェース部材は断面が概ね矩形の中空パイプ構造を有し、一方の開口部は前記フレーム部材と嵌合し、その連結部から空気の漏れは最小であり、他方の開口部は使用者の顔面に接する。
【0015】
呼吸の出入り口である口と鼻は顔面に存在する。呼吸用マスクは、口と鼻を介して異物や病原体が侵入することを防ぐ目的で使用されることがある。逆に体内の病原体を周辺環境に拡散せず局所化する目的で呼吸用マスクが使用されることもある。
【0016】
これらの利用形態で、呼吸用マスクに要求される機能は、第一にフィルター機能であるが、呼気または吸気がフィルター部材を通過するためには、フィルター部材以外の流路を最小化する気密性が必要である。そのため一般的には呼吸用マスク装着時には顔面との間に隙間ができないように呼吸用マスクに備わる薄板状の金属パーツなどを顔面の凹凸に適合させるべく調整することが使用者に求められる。
【0017】
しかし多くの場合、呼吸用マスクフィルター面以外の上下左右の隙間から呼気の漏出は防ぎきれない。清潔のために都度廃棄交換が期待される医療用途の呼吸用マスクの場合、頻回の廃棄と交換すなわち消費が生じるのでコストの低減は重要な課題であり、呼吸用マスク自体の構造は自ずと単純なものとなる。このように呼吸用マスクにはフィルター機能と気密機能が求められるが、気密機能に関しては使用者の工夫に委ねられる要素が大きい。
【0018】
救急医療で感染対策に用いられる高機能フィルター性能を有するN95マスクは、フィルター機能を高機能素材で実現している。そのフィルター機能を無駄にしない気密性を実現するために形状は一般的な平面形状を顔面の凹凸形状の曲面に沿わせているのではなく、ある程度の剛性を有する素材が、お椀のような概ね半球形に成形されたものである。ただ、この形状の顔面への接触面は顔面の凹凸を考慮したものではなく平坦な線形なので、装着時に顔面との隙間を最小化するために顔面への押し付け圧を高めることで対応している。実際には後頭部を左右にわたる強力なゴムで顔面に押し当てることで隙間を減らす手法が用いられているが、呼吸用マスクの端面は顔面の凹凸を考慮していない平坦な線形なので、顔面の凸になった部分は他の部位に比べてより多くの押圧を受けて陥凹することになり、長時間の装用で顔面に圧痕が残ってしまう医療従事者もいる。顔面の鼻根部や頬骨部や下顎部に圧迫による創傷が後発するとされていて医療関連機器圧迫創傷 = Medical Device Related Pressure Ulcer略してMDRPUとして医療従事者にとって悩ましい問題となっている。
【0019】
すなわち、医療用サージカルマスクを含む呼吸用マスクであれ、高機能N95マスクであれ、フィルター機能で採用された素材そのものに、装着時に顔面との間隙を最小化する気密機能を担わせているために、前者では気密性が不完全になりがちであり、後者では気密性を高めようとする結果、使用者の顔面に創傷を生じてしまうことがある。
【0020】
本実施形態では従来フィルター機能部材に担わせてきた気密機能を別部材に分離することで、本来求められているフィルター機能を損なうことなく、より低い押圧で顔面との接触性を改善し、結果的により高い気密性を実現することを目指す。そうすれば呼気と吸気は予期しない別経路を経て漏出する割合が減って、想定通りフィルター部材を通過するので、フィルター部材の性能を無駄にしない。
【0021】
気密機能について考慮するべきなのは、ヒトの顔面形状は個々に異なるという現実である。ヒトの顔面は古典的写真のように2次元正射影でも個々に異なることは自明であるが、3次元的な凹凸構造はさらに変化に富んでいる。そのため単一仕様の部材を使って個々の顔面の立体構造を対象に気密性を確保するように接触面を形成するのは困難である。前記N95マスクのようにデバイス側の低い変形可能性を補うために、強い押圧でヒト顔面側の弾性に期待して顔面凸部分を圧迫しながら顔面陥凹部分への接触性を実現することは可能だが、長時間の使用では顔面凸部分に圧迫による好ましくない影響が生じかねない。別の例では人工呼吸に用いるアンビューバッグが挙げられる。アンビューバッグの顔面に密着させるマウスピースは椀状の樹脂製骨格に空気で膨らませたクッション材が付いており、このクッション材を顔面に押し当てることで気密性を実現する。自分で呼吸できない患者に体外から強制的に送気するので、マウスピースの顔面への押圧が不十分だと、押し込んだ空気は体内ではなく顔面とマウスピースの隙間から漏出してしまう。
【0022】
N95マスクの場合でも、アンビューバッグの場合でも、工業的な画一的接触面形状だけで多種多様である人の顔面立体形状に適合させる困難は回避できず、顔面に接触する素材および顔面そのものの弾性に期待して、強い押圧力を加えることで気密性を実現しようとしている。
【0023】
本実施形態では、個々のマスク使用者の顔面立体形状に適合する接触面形状を有する前記顔面インターフェースを、使用者毎に用意する。これにより本実施形態における呼吸用マスクと顔面との間の物理的接触は、より形状適合性の高いものとなり、従来の方法に比べて少ない押圧力で気密性を得ることができる。また顔面の立体形状により均等に加圧されるので、特定の凸形状部分に強い圧迫が集中することも回避できる。前記顔面インターフェースの素材には皮膚への接着性と適度な軟性が望ましい。例えばシリコンゴムはこの用途に適した素材の一つである。
【0024】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクでは、頭部顔面で口および鼻を覆う装置であって、フレーム部材と、前記フレーム部材と連結する顔面インターフェース部材を有し、前記顔面インターフェース部材は使用者顔面の三次元形状に嵌合する形状であることを特徴とするものである。
【0025】
前記顔面インターフェースは使用者の顔面の形状を型取り剤によって抽出しても良い。歯科治療で利用されるアルジネートやシリコンゴムなどの印象材で顔面の対象部位の立体形状を直接取得が可能である。シリコンゴム素材を用いた場合、前記フレーム部材との嵌合面を整えることで顔面形状に嵌合する接触面形状を有する顔面インターフェースが形成できる。
【0026】
顔面立体形状のデータとしての取得には3Dスキャニングを利用しても良い。前述の印象材の形状をスキャンすることで形成するべき顔面インターフェースの表面形状をデータとして取得することもできる。また印象材で直接に型をとるのではなく3Dスキャニングで顔面そのものの立体形状データを取得しても良い。
【0027】
前記顔面インターフェースは使用者毎の顔面立体形状データをもとに都度製作しても良い。この製作には3Dプリンターを使用しても良い。あるいは予め作成された共通形状から切削して製作しても良い。
【0028】
前記顔面インターフェースは集積したヒト顔面立体形状データを、有限種類の類型に分類し、各分類について量産品を予め用意し、新たな使用者に対しては既存の分類から適合品を選択して提供しても良い。この場合、顔面への接触面形状の個人差は必要に応じて微修正を提供しても良い。また、用意した分類に適合する選択肢がない場合には顔面立体形状データをもとに製作しても良い。
【0029】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクでは、前記顔面インターフェース部材は、使用者顔面形状のデータから個別に製作、または複数種類の選択肢から適合するものを選択できると良い。
【0030】
現実の装用使用に際して、ヒトは会話や呼吸のために口を開けることもある。口を閉じた時と開けた時では顔面縦方向の長さは変化する。そのため本実施形態では前記顔面インターフェースのヒト顔面に接する部分は開口などの顔面形状の変化に合わせて変形可能であっても良い。
【0031】
この際に開口と閉口の両状態においても鼻梁から左右頬骨を含む上顎部分は大きく形状が変わることはないので、上顎部分を含む上側はより乏しい変形性に留め、会話などで大きく動く下顎を含む下側はより変形性に富む構造にしても良い。これらの変形性の増減は素材の肉厚あるいは蛇腹などの形状によって実現できる。
【0032】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクでは、前記顔面インターフェース部材は、顔面上方に対応する部分は可変性が乏しく、顔面下方に対応する部分は可変性に富むことで、使用者下顎の動きに追随できると良い。
【0033】
さて、顔面インターフェースによって、気密性は改善できるが本来のフィルター機能も重要であることに変わりはない。フィルターは旧来用いられてきた不織布をはじめN95素材または布などが用途と求められる機能によって選択できると良い。
【0034】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクでは、前記フレーム部材はフィルター部材を装着できると良い。
【0035】
本実施形態では、前記フレーム部材のフィルター装着部を概ね台形の平面を有する3区画に分割しているが、区画の形状は台形に限定されるものではないし、区画の数は3区画に限定されたものではない。本実施形態では図3に示すような台形のフィルター材を2カ所で折り曲げて前記フレーム部材に装着して使用しても良い。
【0036】
フィルター材は前記フレーム部材の単一のフィルター材用小区画に嵌合する。図4に示すようにフィルター材の素材の性質により必要であればフィルター材を台形のフィルター材用小区画用フレームに挟装して使用しても良い。すべてのフィルター材用小区画に同一のフィルター材を装着しても良いし、異なる種類のフィルター材を混在して装着しても良い。
【0037】
また前記フレーム部材のフィルター材用小区画のすべてが空気流路として機能しても良いが、他の機能を担う部材であっても良い。例えば本実施形態で正面に向かうフィルター材用小区画を透明な素材とし、左右のフィルター材用小区画を空気濾過用のフィルター材とすると、接客などの対面時にフィルター機能と同時に話者の口元が相手から視認できるので、コミュニケーションと感染防止が両立できる。
【0038】
本実施形態では前記フレーム部材のフィルター装着用小区画は各々概ね三角形の平面形状なので、曲げ加工でヒビ割れしてしまうなど折り曲げ加工に適さない素材であっても裁断加工のみで実用化可能である。
【0039】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクでは、前記フィルター部材は、前記フレーム部材に1つ以上が装着可能であり、濾過以外の機能を選択でき、複数の機能が混在可能であると良い。
【0040】
本実施形態では前記フレーム部材を中心に個別の顔面形状に対応した前記顔面インターフェースとフィルター機能を分離して検討することが可能であるが、実使用ではこれらを使用者の頭部に装着する必要がある。従来の呼吸用マスクにおける装着方法を踏襲し、両側耳介に係止するゴム材を用いた紐状部材を使う手法、あるいは後頭部を経由するゴムまたは紐材で呼吸用マスクとともに頭部に環装する手法のどちらでも対応できるように、これら装着用部材を連結するためのフックを前記フレーム部材は左右側面に有しても良い。頭部への装着方法は使用者が利便性や快適性をもとに選択でき、新たな装着方法が考案された際にも対応が可能である。図5では耳介係止用ゴム材を用いて頭部に装着している。
【0041】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクは、前記フレーム部材は頭部装着部材を装着できると良い。
【0042】
本実施形態では口と鼻を覆う半閉鎖空間を形成するため会話時発語音声の明瞭性が損なわれる可能性がある。たとえば収音マイクを前記フレーム部材に埋め込むことで使用者の音声を機械経由ではあるが、明瞭に伝達できる可能性がある。また一般的に呼吸用マスク装着時に口と鼻の周りの空間は熱や湿気が籠りやすいために口渇感が乏しくなり全身の脱水状態自覚が遅れたり、体温調整に影響を及ぼしたりすることがある。本実施形態では前記フレーム部材にマスク内部の環境を測定する電子デバイスを内蔵することも可能である。電子デバイスにはペルチェ素子などの熱移動素子を含めても良い。
【0043】
すなわち本実施形態の呼吸用マスクでは、前記フレーム部材は電子デバイスを内蔵可能であると良い。
【0044】
本実施形態の目的は主に口と鼻という呼吸の出入り口を防護することであるが、顔面の眼球も感染経路として重要である。フェイスシールドという形で顔面全体を防護する手法が存在するが、呼吸のための口と鼻そして眼球が同じ空間に存在するために呼気中の湿気が透明なシールド材を曇らせることがある。仮に直接飛散する飛沫が直接眼球に到達するのを防ぐ事に目的を絞るならば眼球の前方に透明な遮蔽部材を設けることで対応できる可能性がある。図5に示したように本実施形態のフレーム部材の上部に自立可能な透明フィルムを設置可能にすることで、眼球を感染体直接暴露から防護することができても良い。本実施形態では顔面インターフェースから漏出する呼気は最小限にとどまるので、眼球防護用フィルムが呼気中の湿気で曇ることは大幅に軽減される。
【0045】
本実施形態では前記フレーム部材は大部分がフィルター材装着用の開放構造になっているが、全体を閉鎖構造にして、人工呼吸器やアンビューバッグの送気管装着部のみの開口としても良い。アンビューバッグは主に救急時に使用され、そもそも使用対象者に適合する前記顔面インターフェースを予め用意することは困難である。しかし、成長過程で呼吸能力が身体全体の成長に追いつかない疾患群も存在する。そのような患児にとって緊急時のアンビューバッグは手放せない道具であるが、上述のように顔面にあてるマウスピースは画一的な形状であり、個別の顔面形状を考慮したものではない。一方で呼吸困難な発作時には体外から送気する必要があるので従来型のマウスピースを顔面に強く押し当てながら使用する必要がある。本実施形態で示した個別の顔面形状に対応した前記顔面インターフェースを用いると、より少ない押圧力で、漏れのない送気を行える可能性がある。
【0046】
以上、本発明の呼吸用マスクの実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
主に医療用呼吸用マスクにおける可用性を記載してきたが、他の分野、例えば戦闘機パイロットが操縦中に装着するマスクあるいは消防士が火災現場に入る際に装着するマスクも気密性が必要で顔面との接触性は重要である。救命用アンビューバッグマウスピースと同様に使用者個別の顔面形状に対応した前記顔面インターフェースを用いれば、より小さな押圧力で従来と同様の気密性が得られる可能性がある。あるいは従来と同等の押圧力を加えるなら、より高い気密性を得られる可能性がある。
【符号の説明】
【0048】
11 フレーム部材
12 顔面インターフェース部材
13 フィルター材
21 フィルター材のうち左右のフィルター材用小区画に位置する部分
22 フィルター材のうち正面中央のフィルター材用小区画に位置する部分
31 フィルター材用小区画
32 フィルター材がフィルター材用小区画用フレームに挟装された状態
35 フィルター材用小区画用フレーム
36 フィルター素材
51 フィルター素材を挟装したフィルター材用小区画用フレーム
52 透明素材を挟装したフィルター材用小区画用フレーム
55 耳介係止用ゴム紐材
57 眼球防護用シールド
図1
図2
図3
図4
図5