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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058242
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】水耕栽培トレイ
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20230418BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
A01G31/00 609
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168137
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】小笹 稔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 健喜
(72)【発明者】
【氏名】山内 正二
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314NA01
2B314ND06
2B314ND07
2B314ND14
2B314ND27
2B314ND37
2B314PB02
2B314PB37
2B314PB41
2B314PB44
2B314PB47
(57)【要約】
【課題】 養液が入った状態で漏水なく搬送が可能な水耕栽培トレイを提供する。
【解決手段】 水耕栽培における養液を溜める水耕栽培トレイ4であって、水耕栽培トレイ内部空間を矩形形状に区切る仕切り部材4bを水耕栽培トレイ4内に有した構成である。その仕切り部材4bの底辺に流路用切欠き部5が形成されている。
【選択図】 図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕栽培における養液を溜める水耕栽培トレイであって、
水耕栽培トレイ内部空間を矩形形状に区切る仕切り部材を前記水耕栽培トレイ内に有した構成であり、その仕切り部材の底辺に流路用切欠き部が形成されている、水耕栽培トレイ。
【請求項2】
前記仕切り部材の高さが50mm以上80mm以下の寸法で、前記水耕栽培トレイ内部を区切る一辺の寸法が75mm以上410mm以下の前記仕切り部材を有する請求項1に記載の水耕栽培トレイ。
【請求項3】
前記仕切り部材の前記流路用切欠き部は、前記仕切り部材の底辺に、切欠き形状が高さ1mm以上5mm以下、幅10mm以上50mm以下で形成される請求項1または請求項2のいずれか一項に記載の水耕栽培トレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物工場における水耕栽培の水耕栽培トレイに関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界的な異常気象又は自然災害による農産物の収穫量変動に伴い、限られた耕作地の中で高効率かつ安定的に農産物を生産するための技術として植物工場が注目されている。
工場内の環境条件を人工的に制御し、季節及び場所によらず安定生産を実現することができる一方、低収益構造が問題となっている。
【0003】
植物工場の大半が低収益構造となるのは、自動化が進まず、人件費が嵩むからである。
【0004】
自動化が進まないのは、高層多段構造体内の大型栽培槽が大規模な養液給排水システムと接続され、常時養液を循環させているため、容易に移動できないというシステムの構造的理由がある。
【0005】
また、大型栽培槽に入った栽培プレート又はそれに植えられている植物の根に多量に付着する養液が周辺設備等に降り掛かるため、周辺装置等に防水対策する必要があり、自動化の難易度が飛躍的に上がり、導入を断念するという設備起因の理由がある。
【0006】
更に、手動による大型栽培槽の清掃不足に加え、栽培槽から栽培プレートなどの出し入れで発生する養液の滴り又は繁吹きによる周辺部材の腐食又は生菌数増加による植物の腐食を進行させるという栽培工程での不衛生な課題もある。
【0007】
従来の自動化課題及び不衛生課題の解消手法として、養液をこぼさずに1株ずつ個別に設置して苗を搬送できる苗の搬送装置(独立した栽培槽)がある(特許文献1参照)。
【0008】
図10は特許文献1に記載された従来の苗の搬送装置101を示す図である。この搬送装置101は、水耕栽培における苗107が入ったチップ状基材106の搬送装置101であって、水または養液が入れられる箱型容器102と、複数の穴104が穿けられた該容器102の蓋103と、該苗107が入ったチップ状基材106を保持し、該穴104に出し入れ自在に差し込まれる筒状の受け具105とからなり、該箱型容器102の蓋103の穴104に受け具105が差し込まれて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-33637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の従来例の独立した栽培槽の搬送装置101で搬送の自動化は容易となるが、養液が入った搬送装置101の搬送中に起こる振動又は加減速で発生する波の高さを抑制するものが全く無く、蓋103の密閉作業が不確実な場合、又は、繰返し使用又は経年劣化による変形で蓋103の密閉性が不安定になった場合、養液が搬送装置101の外に零れる課題がある。
【0011】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、養液が入った状態で漏水なく搬送が可能な水耕栽培トレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の1つの態様にかかる水耕栽培トレイは、水耕栽培における養液を溜める水耕栽培トレイ4であって、
水耕栽培トレイ内部空間を矩形形状に区切る仕切り部材4bを水耕栽培トレイ内に有した構成であり、その仕切り部材の底辺に流路用切欠き部5が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の前記態様にかかる水耕栽培トレイによれば、養液が入った水耕栽培トレイの搬送中に起こる振動又は加減速で発生する波の高さを仕切り部材で抑制することで、水耕栽培トレイから養液をこぼすことなく、手動又は自動で搬送できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係る固体培地の一例を模式的に示した図
図2A】実施の形態に係る固体培地を保持する固定具の一例とその断面を模式的に示した斜視図
図2B】固定具に固体培地を入れた断面を模式的に表した図
図3A】実施の形態に係る固定具を保持する栽培プレートの一例の斜視図
図3B】実施の形態に係る固定具を保持する栽培プレートの断面を模式的に示した図
図4A】実施の形態に係る前記水耕栽培トレイの一例の斜視図
図4B】実施の形態に係る前記水耕栽培トレイの仕切り部材を模式的に示す図4Aの部分拡大図
図5】最大区画寸法ごとにおける各初期水深に対応する最大波高を比較する図
図6】最大区画寸法ごとにおける最大波高の一次近似式の係数と切片の数値を比較する図
図7】初期水深と最大区画寸法に対応する予測波高の一例を示す図
図8A】実施の形態に係る栽培プレートを上面から見た一例を模式的に示した図
図8B】実施の形態に係る水耕栽培トレイを上面から見た一例を模式的に示した図
図9】実施例2におけるリーフレタスの平均重量及び、生理障害が発生した株数割合、トレイの外観写真を比較する説明図
図10】特許文献1に記載の苗の搬送装置の一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
以下に示す各実施の形態は、あくまでも例示に過ぎず、以下の各実施の形態で明示しない種々の変形又は技術の適用を排除するものではない。また、各実施の形態の各構成は、それらの種々を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに、各実施の形態の各構成は、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0017】
本発明の実施の形態に係る水耕栽培トレイ4は、水耕栽培における養液を溜める水耕栽培トレイ4であって、少なくとも、水耕栽培トレイ4の内部空間を、平面的に見て矩形形状の区画4cに区切る仕切り部材4bを水耕栽培トレイ4内に有した構成である。その仕切り部材4bの底辺に流路用切欠き部5が形成されている。以下、これについて詳しく説明する。
【0018】
本発明の実施の形態に係る水耕栽培トレイ4は、種を播く工程(以下、播種とする)後の1度目の移植後の工程から収穫までの工程で使用される。栽培される植物の種類の例として、フリルレタス、リーフレタス、ロメインレタス、結球レタス、ホウレンソウ、又は、ミズナ等の葉菜類が挙げられる。ただし、栽培され得る植物種類は、これに限定されるものではない。
【0019】
本明細書における養液とは、植物の栽培に必要な栄養成分(窒素、リン、又は/及び、カリウムなど)を成分とする培養液、もしくは水のみの場合もある。
【0020】
本明細書における固体培地1とは、一例として、立方体又は直方体で構成され、植物の栽培に必要な栄養成分(窒素、リン、又は/及び、カリウムなど)を成分とする培養液を保水性素材の担体へ浸透させたものを指す。前記担体の保水性の素材は、例えば、スポンジ、発泡体、又は、繊維マットなどの多孔質素材から構成されている。多孔質素材の材料は、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、又は、ポリスチレン樹脂などの発泡樹脂、ロックウール、又は、ココマットなどの繊維材料であってもよい。
【0021】
図1の固体培地1は、前記固体培地の一例を模式的に表した図である。固体培地1は、栄養成分および水分を植物に保持供給する機能を有する。
【0022】
本明細書における栽培固定具(以下、固定具とする)2とは、一例として、上から下に向かうに従い内径が小さい3段の円筒部2a、2b、2cを有しかつ3段目の最小の円筒部2cに穴空きの底面2dを有する。2段目の円筒部2bと3段目の円筒部2cとの間には円錐傾斜面部2eを有している。固定具2は、例えば円錐傾斜面部2eと3段目の円筒部2cとの内部に保持した固体培地1で育成した植物を既定の位置に固定し、植物の姿勢を固定化するものを指す。耐水性のある固定具2であれば限定はない。固体培地1を保持する形状自由度の確保、光の反射率及び透過率が調整可能な観点から、固定具2の材質は樹脂製が好ましい。樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、又は、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックが挙げられる。固定具2の大きさに限定はなく、人が緊急時に手動で移植することも考慮し、植物が成長した状態で固体培地1を保持でき、取り扱いやすい大きさが好ましい。固定具2の形状も限定はなく、成型金型の製造性、固定具2の成型性と移植作業時の固定具2の挿入性と安定性を考慮し、横断面形状が円形状又は矩形状のものが固定具2としては好ましい。
【0023】
図2Aは、固定具2の一例の斜視図である。図2Bは、固定具2に固体培地1を入れた断面を模式的に表した図である。
【0024】
本明細書における栽培プレート(以下、プレートとする。)3とは、適正な間隔で植物を移植可能にする固定具用の切欠き穴3aが複数開けられている平面板状、例えば矩形板状のものを指す。固定具用の切欠き穴3aは、例えば、プレート3の長手方向沿いと幅方向沿いとにそれぞれ所定間隔で配置されている。耐水性のあるプレート3であれば限定はない。プレート3は、形状設計の自由度と強度とを考慮し、プレート3の材質は樹脂製が好ましい。樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、又は、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックが挙げられる。プレート3の大きさは、人が緊急時に手動で移動することも考慮し、水耕栽培トレイ4のサイズに合わせてあり、人が運搬できる大きさが好ましい。プレート3の形状も限定はなく、搬送性を考慮し、植物が成長した状態で固定具2が容易にプレート3から外れ、落下することなく保持できる形状が好ましい。プレート3の自重と栽培する植物の重量による変形の抑制を考慮し、縦断面形状が矩形状のものが好ましい。
【0025】
図3Aは、固定具2を入れた栽培プレート3の一例の斜視図である。図3Bは、固定具2を入れた栽培プレート3の断面を模式的に表した図である。
【0026】
本実施の形態の水耕栽培トレイ4は、養液が入れられる例えば直方形状の箱型容器4aと、流路用切欠き部5を底辺の一部に有する例えば矩形板状の縦と横との仕切り部材4bとを備えている。
【0027】
本実施の形態における水耕栽培トレイ4の箱型容器4aは、養液が入り耐水性のある箱型の容器であれば限定はない。箱型容器4aは、形状設計の自由度と耐食性と強度とを考慮し、材質は樹脂製が好ましい。樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル、又は、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックが挙げられる。水耕栽培トレイ4の大きさに限定はなく、人が緊急時に手動で運搬することも考慮し、人が運搬できる大きさが好ましい。水耕栽培トレイ4の形状も限定はなく、横断面形状が円形状又は矩形状のものが成型金型の製造性と水耕栽培トレイ4の成形性とから好ましい。
【0028】
図4Aは、本発明の実施の形態に係る水耕栽培トレイ4の一例を示す斜視図である。図4Bは、仕切り部材4bを示す図4Aの部分拡大図である。
【0029】
仕切り部材4bは水耕栽培トレイ4の箱型容器4aの大きさに合わせて作られるものである。耐水性のある仕切り部材4bであれば限定はない。仕切り部材4bは、形状設計の自由度、耐食性と強度を考慮し、材質は樹脂製もしくはステンレス製が好ましい。後述する仕切り部材4bであれば、水耕栽培トレイ4と分離又は一体化の限定はない。また、仕切り部材4bが組立部品で構成されるか、又は、一体化成型かの限定はない。仕切り部材4bは養液が入った水耕栽培トレイ4の内部に設置され、固定の限定は無い。但し、養液が入った状態で仕切り部材4bが浮遊しないで配置位置に位置されたものが、養液が入った水耕栽培トレイ4の搬送中に起こる振動又は加減速で発生する波の高さを抑制し、漏水防止できる観点から好ましい。
【0030】
図4Aでは、箱型容器4aの幅方向の中央に配置された、長手方向沿いの1つの縦の仕切り部材4bと、箱型容器4aの幅方向沿いに配置された4つの横の仕切り部材4bとを箱型容器4a内に備えている。1つの縦の仕切り部材4bに対して4つの横の仕切り部材4bが所定間隔をあけて十字をなすように組付けられている。
【0031】
仕切り部材4bの各寸法は、水耕栽培設備仕様と、植物を移植した栽培プレート3を養液が入った水耕栽培トレイ4に設置したときの養液の水深(以下、初期水深)に対応した仕切り部材4bの高さと、仕切り部材4bで仕切られる矩形の区画4cのうちの最大区画寸法とで決定される。ここで、最大区画寸法は、仕切り部材4bで仕切られる矩形の区画4cの縦横寸法のうち、より長い方の1辺の寸法を指す。
【0032】
一例として、仕切り部材4bの高さが50mm以上80mm以下の寸法で、水耕栽培トレイ3の内部を区切る区画4cの一辺の寸法が75mm以上410mm以下の仕切り部材4bを使用することができる。ここで、過去の知見より、栽培時の根への水分補給のためには、30mm以上の水深が必要となるため、仕切り部材4bの高さは50mm以上とする。また、水耕栽培トレイ3の搬送には、自動搬送以外に、水耕栽培トレイ3を手で搬送する場合もあることから、仕切り部材4bの高さは、実用上80mm以下とする。また、区画4cの一辺の寸法が75mm以上とするのは、植物の最小設置間隔の75mm以上を確保するためである。また、自動搬送以外に、水耕栽培トレイ3を手で搬送する場合もあることから、区画4cの一辺の寸法は実用上410mm以下が好ましい。
【0033】
図4Bに、本実施の形態における仕切り部材4bの拡大例を示したが、この仕切り部材4bは養液の流路用切欠き部5を底辺に有している。
【0034】
流路用切欠き部5は、仕切り部材4bで仕切られた1区画の二辺又は三辺のそれぞれの底辺の中央部に、横に細長い矩形状に形成されている。この中央部に配置された流路用切欠き部5のうち、横の仕切り部材4bに形成された流路用切欠き部5は、箱型容器4aの長手方向沿いの位置がほぼ同じ位置に配置されている。
【0035】
また、縦と横の仕切り部材4bとが互いに交差するように十字に組付けられた位置の縦と横の仕切り部材4bのそれぞれの底辺にも、流路用切欠き部5が配置されている。横の仕切り部材4bに形成された流路用切欠き部5は、箱型容器4aの長手方向沿いの位置がほぼ同じ位置に配置されていることにより、養液攪拌の波及範囲を増加させることができる。このような配置とは異なり、もし流路用切欠き部5の箱型容器4aの長手方向沿いの位置が互い違いに配置されていると、攪拌効果が減少し、植物の成長鈍化要因となる。流路用切欠き部5の配置目的は、養液の攪拌と水位の均一化とである。
【0036】
一方で、仕切り部材4bの平面に対して垂直方向のトレイ移動時に、本来であれば水面上部方向に発生する波の一部が、流路用切欠き部5の開口部へ流水し、上部へ発生する波高Hを抑制していると思われる。言い換えれば、流路用切欠き部5の配置が、上部へ発生する波高Hの抑制にも寄与していると思われる。但し、開口部が大きすぎると、流水が多くなり、仕切り部材4bの隣の区画4cの波高Hへ加算されることとなるため、流路用切欠き部5は、一例として、5mm以下の高さが適切である。同様に、十字に組付けられた仕切り部材4bの隅の部分へ集中する波の高さも、底辺に流路用切欠き部5を配置することで波の高さの抑制に寄与していると考えられる。
【0037】
また、十字に組付けられた位置の縦と横の仕切り部材4bのそれぞれの底辺にも、流路用切欠き部5が配置されていることにより、後述するようにポンプでの攪拌を考慮した際に、ポンプ吐出水流の向きを斜め方向に出して、攪拌の効果を効率的に波及させることができる。
【0038】
もし、比較例としてこの流路用切欠き部がない仕切り部材を有した水耕栽培トレイに養液を供給する場合には、仕切り部材で完全に仕切られた1区画ごとに養液の供給が必要となり、作業の手間が増える。
【0039】
これに対して、仕切り部材4bに流路用切欠き部5を有することで隣接する区画4c同士が連通可能となり、1か所の給水点から流路用切欠き部5を通して水耕栽培トレイ全体に均一に養液を供給することが可能となる。
【0040】
このように、本実施の形態では、少なくとも流路用切欠き部5を仕切り部材4bの底辺に設け、養液の均一供給性を確保するようにもしている。
【0041】
また、波高Hへの影響を大きくせずに波の高さを抑制するために、切欠き部5の切欠き高さを1mm以上5mm以下で、切欠き幅を10mm以上50mm以下として、切欠き部5を配置することが望ましい。
【0042】
ここで、養液の均一供給性を最低限確保するため、切欠き高さを1mm以上とする。切欠き高さを5mm以下とするのは、以下の理由による。もし切欠き高さが5mmを越える場合、水耕栽培トレイ3の移動時における加速等の影響で発生する波高Hが高くなるため、水耕栽培トレイ3の深さを大きくして養液漏れに対応することになるが、固定具2が養液面から離れすぎてしまい、栽培時に植物の根が養液に触れず、栽培できなくなる。
【0043】
切欠き幅を10mm以上とするのは、以下の理由による。もし養液攪拌用の切欠き幅を10mm未満にすると、攪拌機能の能力を上げて、攪拌効果を確保することになるが、切り欠き部5から養液が流れず抵抗となり、攪拌機能のある区画で波を発生させてしまい、水耕栽培トレイ3から養液が漏れてしまうことになる。
【0044】
切欠き幅を50mm以下とするのは以下の理由による。もし切欠き幅が50mmを越える場合、水耕栽培トレイ3の移動時における加速等の影響で発生する波高Hが高くなるため、水耕栽培トレイ3の深さを大きくして養液漏れに対応することになるが、固定具2が養液面から離れすぎてしまい、栽培時に植物の根が養液に触れず、栽培できなくなる。
【0045】
前記構成において、水耕栽培トレイ4は、以下のように使用される。
【0046】
固体培地1を入れた固定具2をプレート3の切欠き穴3aにそれぞれ入れて、固定具2を切欠き穴3aに位置決めする。
【0047】
次いで、そのプレート3を、養液が入った水耕栽培トレイ4に載せる。このとき、固定具2の下面に合わせて設置された固体培地1に、水耕栽培トレイ4内の養液を給水させる必要がある。そのために、固定具2の下面が養液に浸かるようにする。
【0048】
実際の使用例については、後述する実施例で詳細に説明する。
【0049】
次に、水耕栽培トレイ4の漏水評価について説明する。
【0050】
水耕栽培トレイ4を自動的に搬送可能な市販されている自動搬送装置の移動速度は、装置仕様で60m/分から72m/分に設定されているものが一般的である。
【0051】
本実施の形態の水耕栽培トレイ4の漏水評価の最大速度は、5%の上限バラつきを考慮して75m/分と設定し、加速度を1.25m/s2とした。
【0052】
水耕栽培トレイ4内の初期水深が10mm、20mm、35mmにおいて、前述の加速度を付加すると、水耕栽培トレイ4の養液が入る箇所の最大区画寸法ごとの最大波高は、図5に示す数値が得られた。
【0053】
図5の各数値から、最大区画寸法ごとの初期水深に対する波高Hの1次近似式について算出した。近似式の係数βと切片γより、初期水深h[mm]とすると、波高Hの近似式は、
H[mm]=β×h+γ[mm] (1)
で表され、図6に算出した係数βと切片γ[mm]の各々の数値を示す。
【0054】
次に、係数βと切片γについて、図6の数値から最大区画寸法Lとその絶対値L1に対しての1次近似式を算出すると、
β=1.711×10-4×L1+0.258 (2)
γ[mm]=2.962×10-4×L-7.249[mm] (3)
で表され、波高Hは初期水深hと最大区画寸法Lとによって表現可能となる。
【0055】
上記から予測される波高Hの例を図7に示す。
【0056】
この波高Hに対応した仕様の仕切り部材4bを搭載した実際の水耕栽培トレイ4を前述の加速度で移動させても、水耕栽培トレイ4から水があふれ出ることは無かった。また、繰返し加速減速しても、水耕栽培トレイ4から水があふれ出ることも無かった。
【0057】
前記実施の形態によれば、養液が入った水耕栽培トレイ4の搬送中に起こる振動又は加減速で波が水耕栽培トレイ4の区画4c内で発生しても、波は仕切り部材4bに衝突する。このことにより、波の高さを仕切り部材4bで抑制することができ、水耕栽培トレイ4から養液をこぼすことなく、手動又は自動で搬送できる。また、仕切り部材4bで仕切られた区画4cにおいて、仕切り部材4bの底辺に流路用切欠き部5を有するため、隣接する区画4c内の養液が流路用切欠き部5を介して互いに混ざり合うように流れることが可能となる。この結果、植物の根の近傍に絶えず、養分又は酸素が豊富な養液が供給可能となり、根の近傍の養分又は酸素が減少した古い養液が滞留しなくなり、植物は根から適量の養分等を吸収可能となる。よって、生理障害を発現させること無く成長することが可能になり、成長が促進可能となる。言い換えると、前記実施の形態によれば、流路用切欠き部5を介して植物成長に必要な養液の流路を確保し、成長速度の改善をさせることで、収穫量が増加するとともに生理障害の発生を抑制することができる。
【0058】
なお、本実施の形態による水耕栽培トレイ4は、水耕栽培トレイ4内に入れた養液を一定期間貯め置き、植物を栽培することができる。しかし、養液を貯め置きで植物を栽培すると、植物の根から養液中の酸素又は栄養素の吸収が鈍化し、収量が下がるという課題が生じる場合がある。
【0059】
この不具合は、根の界面に流れがない場合、根の栄養素吸収により、根の界面では栄養素がない薄い層ができ、栄養素が植物に十分に吸収されなくなり、成長速度の遅延や生理障害の発生が生じている。一方で根の界面に多少でも養液の流れがあれば、根の界面の層を形成せず、常時栄養素が根の界面付近に供給される。
【0060】
その養液の流れを作る手段として、この水耕栽培トレイ4に水中ポンプ、水中スクリュー、又は、攪拌子などの攪拌機能を付加すること、もしくは外部から同様の攪拌機能をトレイに貯め置いた養液に投入し、攪拌することで発生させた液体流が流路用切欠き部5を介して、水耕栽培トレイ4内全体を攪拌することが可能となる。
【0061】
同一の栽培環境下において生理障害を防止し、植物の収量が貯め置きで撹拌しない水耕栽培トレイと比較し、この攪拌機能による液体流の効果により、成長速度の改善し、収量を改善できる。
【実施例0062】
以下、実施例にて本開示の水耕栽培トレイ4の漏水評価と栽培方法について具体的に説明するが、本開示は以下の実施例のみに何ら限定されるものではない。
【0063】
以下の実施例では、本開示に係る水耕栽培トレイ4を使用する栽培方法に基づいてリーフレタスの栽培試験を行なった結果を示している。
【0064】
実施例1では、本開示の水耕栽培トレイ4の仕切り部材4bによる漏水抑制効果を示している。
【0065】
実施例2では、水耕栽培トレイ4と攪拌機能を用いることによるリーフレタスの成長促進効果と収穫量の増収効果とを示している。
【0066】
以下、実施例1について説明する。
【0067】
大型栽培槽での植物の栽培において水深50mmでの栽培が標準であったため、水耕栽培トレイ4での植物の栽培についても初期水深を50mmと設定する。
【0068】
栽培設備の仕様上、水耕栽培トレイ4の最大高さは80mm以下に設定する必要がある。
【0069】
固体培地1を入れた固定具2をプレート3に入れ、切欠き穴3aに位置決めする。そのプレート3を水耕栽培トレイ4に載せた際に固定具2の下面に合わせて設置された固体培地1に養液を給水させる必要がある。そのために、固定具2の下面が養液に浸かるかかり代を5mmとした。固体培地1の高さは約30mmのため、水耕栽培トレイ4に必要な高さは、
水深50mm+固体培地高さ30mm-かかり代5mm=75mm
となる。トレイ4の高さは75mmから80mmで設定する必要があり、部品の肉厚も考慮して80mmと設定した。プレート3と固定具2の形状を鑑みると、仕切り部材4bの高さは最大70mmとなる。
【0070】
水耕栽培トレイ成型時の高さ方向変形を±0.3mm、仕切り部材成型時の高さ方向変形を±0.3mm、水耕栽培トレイ底面の経年時の変形を±3mm、後述の評価での水深読み取り誤差±1mm、後述の評価での水深のバラツキ±2mmとすると、許容可能な波高の最大値は、初期水深50mmを除外して、
70mm-50mm-0.3mm-0.3mm-3mm-1mm-2mm=13.4mm
と、算出される。
【0071】
波高の最大値と式(1)~(3)より、最大区画寸法Lは200mmとなる。従って、この実施例1では、区画寸法は200mm四方以下に設定する必要がある。この区画寸法は、植物の成長における葉の展開又は葉の面積によって変化する配置間隔からも制約を受ける。
【0072】
図8Aは栽培プレート3の上面図であり、本発明の実施の形態に係る栽培プレート3上の植物の配置の一例を示す図である。図8Bは水耕栽培トレイ4の上面図であり、本発明の実施の形態に係る水耕栽培トレイ4に組付けた仕切り部材4bの一例を示す図である。
【0073】
水耕栽培トレイ4における植物の最小配置間隔を、過去の知見より、縦87.5mm×横75mmと設定した。移植する度にそれぞれの間隔を整数倍して配置間隔を拡大して栽培する。仕切り部材4bを植物の配置間隔の中央に配置する必要があることと、上記の区画寸法以下に設定することを考慮して、栽培期間において最大の配置間隔となる3回目の移植後の縦横の寸法は175mm(植物配置縦間隔6)×300mm(植物配置縦間隔7)となり、区画寸法は仕切り部材4bの肉厚を考慮して、170mm(区画縦寸法8)×200mm(区画縦寸法9)となる。
【0074】
上記を実現する水耕栽培トレイ寸法を縦880mm×横450mm×高さ80mmとした。
【0075】
また、仕切り部材4bの底辺側に縦5mm×横50mmの矩形の切欠き部5を75mmの一定間隔に配置している。
【0076】
上記の仕切り部材4bを取り付けた水耕栽培トレイ4に水深が50mmになるように水を入れて、加速度1.25m/s2を水耕栽培トレイ4に付加したときの水耕栽培トレイ4からの漏水評価を行った。
【0077】
評価に用いたのは、水耕栽培トレイ4、プレート3、台車、フォースゲージである。
【0078】
各重量は次のとおりである。水耕栽培トレイ4は2.5kg、プレート3は1.5kg、水は16kg、台車は20kgである。
【0079】
床と台車の車輪の摩擦係数を1とすると、運動の法則より、
F=M×α (4)
加速度αは1.25m/s2であり、台車の総重量Mは40kgなので、必要な力Fは50Nである。50Nで台車を引っ張っても漏水することは無かった。
【0080】
合わせて繰返し加減速を台車に付加しても漏水することも無かった。
【0081】
以下、実施例2について説明する。
【0082】
固体培地1として、ポリウレタン製のウレタンスポンジ製品(株式会社エム式水耕研究所)を用いた。植物体一株毎に分割できる寸法の縦2.3cm、横2.3cm、高さ2.8cmのセルが平面状に12個×25個、300個連結されている。
【0083】
次に、固体培地1の洗浄を行なった。洗浄は、専用の洗浄治具に入れた水道水へ固体培地1を投入し、水中で手作業にて洗浄治具を動かし、担体の圧縮・解放を物理的に繰り返した。圧縮解放を繰り返す過程で、固体培地1から抜ける気泡が目視にて確認できなくなったら、水中から固体培地1を取り出し、固体培地1から抜ける水道水が目視にて確認できなくなるまで、十分に絞った。
【0084】
次に、担体を培養液へ投入し、培養液の浸透を行なった。
【0085】
培養液は、市販の水耕栽培向け化学肥料の原液を水道水で希釈し、電気伝導率2.0ds/mになるように希釈調整したものを3L用意した。固体培地1を入れるための容器として発泡スチロール製の育苗箱(株式会社エム式水耕研究所)を用いた。前述の培養液を育苗箱に入れ、固体培地1を投入し、培養液中で手作業にて固体培地1の圧縮を固体培地1から抜ける気泡が目視にて確認できなくなるまで行なった。
【0086】
以上の手順で、育苗箱へ固体培地1を収めた。
【0087】
次に、固体培地1に播種を行ない、発芽から移植1回目までの手順を説明する。
【0088】
固体培地1が1セル毎に有する全ての窪みに1粒ずつグリーンジャケット(タキイ種苗)のコ―ト種子を収め、播種を行なった。その後、育苗箱ごと発芽工程用栽培装置へ移動した。
【0089】
発芽工程用栽培装置下で播種直後からLEDを光源とする光を固体培地表面に光量子束密度を330[μmоL/m2・s]にて照射し、温度は24±2℃、湿度は70±10%を維持するように管理し、栽培を行なった。
【0090】
移植1回目の直前に栽培装置から育苗箱を取り出し、300個の固体培地を1個ずつ切り離す。固定具用の切欠き穴3aが縦87.5mm×横75mmの間隔で縦9列×横5列、計45個、開けられた栽培プレート3を用意する。固定具2の下面と固体培地1の下面が合うように固体培地1を固定具2に差し込む。その固定具2を栽培プレート3の切欠き穴3aすべてに差し込む。そのプレート3を2枚用意する。
【0091】
一方で水耕栽培トレイ4を2種類用意する。まず、水耕栽培トレイ4の各々に電気伝導率2.0ds/mになるように希釈調整した養液を水深50mmになるように注ぎ込む。2つの水耕栽培トレイ4のうち1つには養液の攪拌用で水中ポンプ(Rio+180 神畑養魚株式会社製)を投入する。
【0092】
吐出口から出る流速は0.7m/sである。この水流が仕切り部材4bに設けられた切欠き部5を介して水耕栽培トレイ全体に広がり、養液を攪拌する。それぞれの水耕栽培トレイ4に前述のプレート3を載せ、育苗工程用栽培装置に移動した。
【0093】
次に、移植1回目から2回目までの手順を説明する。
【0094】
育苗工程用栽培装置下で移動直後からLEDを光源とする光を固体培地表面に光量子束密度を220[μmоL/m2・s]にて照射し、温度は21±2℃、湿度は70±10%を維持するように管理し、栽培を行なった。各々のトレイ4にて移植1回目から2回目までの期間の中間日に養液をすべて廃棄し、電気伝導率2.0ds/mになるように希釈調整した養液を水深50mmになるように注ぎ込んだ。
【0095】
移植2回目の直前に育苗工程用栽培装置から水耕栽培トレイ4を取り出す。2種類の水耕栽培トレイ4から栽培プレート3を外す。次に固定具用の切欠き穴3aが縦175mm×横150mmの間隔で縦5列×横3列、計15個、開けられた栽培プレート3を用意する。
【0096】
移植1回目から育苗工程を経たプレート3から各々45株の平均重量に近い15株を選別し、固定具2を2枚の栽培プレート3の切欠き穴3aすべてに差し込む。
【0097】
移植1回目後に水中ポンプの入っていない水耕栽培トレイ4で栽培した株を移植したプレート3は引き続き、水中ポンプの入っていない水耕栽培トレイ4に載せる。
【0098】
同様に移植1回目後に水中ポンプが入ったトレイ4で栽培した株を移植したプレート3は引き続き、水中ポンプの入ったトレイ4に載せ、育苗工程用栽培装置に移動した。
【0099】
次に、移植2回目から移植3回目までの手順を説明する。
【0100】
育苗工程用栽培装置下で移動直後からLEDを光源とする光を固体培地表面に光量子束密度を150[μmоL/m2・s]にて照射し、温度は21±2℃、湿度は70±10%を維持するように管理し、栽培を行なった。
【0101】
各々のトレイ4にて移植2回目から3回目までの期間の中間日に養液をすべて廃棄し、電気伝導率2.0ds/mになるように希釈調整した養液を水深50mmになるように注ぎ込んだ。
【0102】
移植3回目の直前に育苗工程用栽培装置から水耕栽培トレイ4を取り出す。2種類の水耕栽培トレイ4から栽培プレート3を外す。
【0103】
次に固定具用の切欠き穴3aが縦175mm×横300mmの間隔で縦5列×横2列、計10個、開けられた栽培プレート3を用意する。
【0104】
移植2回目から育苗工程を経たプレート3から各々の15株の平均重量に近い10株を選別し、固定具2を2枚の栽培プレート3の切欠き穴3aすべてに差し込む。
【0105】
移植2回目後に水中ポンプの入っていない水耕栽培トレイ4で栽培した株を移植したプレート3は引き続き、水中ポンプの入っていない水耕栽培トレイ4に載せる。同様に移植2回目後に水中ポンプが入った水耕栽培トレイ4で栽培した株を移植したプレート3は引き続き、水中ポンプの入った水耕栽培トレイ4に載せ、育苗工程用栽培装置に移動した。
【0106】
次に、移植3回目から収穫までの手順を説明する。
【0107】
育苗工程用栽培装置下で移動直後からLEDを光源とする光を固体培地表面に光量子束密度を150[μmоL/m2・s]にて照射し、温度は21±2℃、湿度は70±10%を維持するように管理し、栽培を行なった。
【0108】
各々の水耕栽培トレイ4にて移植3回目から収穫までの期間の中間日に養液をすべて廃棄し、電気伝導率2.0ds/mになるように希釈調整した養液を水深50mmになるように注ぎ込んだ。
【0109】
収穫直前に育苗工程用栽培装置から水耕栽培トレイ4を取り出す。取り出した水耕栽培トレイ4からプレート3を外し、更に固定具2を外し、最後に植物から固定具2を外し、それぞれ栽培した10株の植物の株当りの平均重量を算出し、植物の葉の生理障害発現率を評価した。
【0110】
以下、結果を示す。
【0111】
測定結果から算出した植物の平均重量と生理障害発現率、プレート上部からの外観写真を従来の養液循環型大型栽培槽での評価結果と合わせて図9に示す。
【0112】
植物の重量は、水中ポンプを水耕栽培トレイに入れず、養液を攪拌しない水耕栽培トレイでは平均154g/株となったのに対し、水中ポンプを水耕栽培トレイに入れ、養液を攪拌した水耕栽培トレイでは平均221g/株となった。この重量は、前述の養液循環させた大型栽培槽で栽培した植物の重量の平均200g/株より10%重くなった。
【0113】
図9の外観写真でも、養液を攪拌した水耕栽培トレイで栽培した植物の成長改善を確認できた。
【0114】
これは、従来の養液循環型の大型栽培槽は、栽培槽が巨大であり、養液循環させている水流では十分な撹拌ができていなく、成長速度を鈍化させていたと考えられる。本実施の形態の水耕栽培トレイ4は仕切り部材4bに流路用切欠き部5により従来の大型栽培槽より満遍なく撹拌できたことで成長速度の改善が図れ、収量の増加になったと考えられる。
【0115】
また、水中ポンプを水耕栽培トレイ4に入れず、養液を攪拌しない水耕栽培トレイ4では植物の葉に生理障害の一種である黄色の斑点が外葉に発現した。その発現率は100%であった。一方で、水中ポンプを水耕栽培トレイ4に入れ、養液を攪拌した水耕栽培トレイ4では黄色の斑点含めた生理障害の発現率は0%であった。
【0116】
仕切り部材4bに設けた流路用切欠き部5を介した養液攪拌により、植物の根の近傍に絶えず、養分又は酸素が豊富な養液が供給されることで根の近傍の養分又は酸素が減少した古い養液が滞留しなくなり、植物は根から適量の養分等を吸収することができたと考えられる。
【0117】
従って、生理障害を発現させること無く成長することになり、成長が促進されたと考えられる。
【0118】
以上のことから、本実施の形態の水耕栽培トレイ4によって初期水深に応じて求められる仕切り部材4bの寸法構成で漏水なく移動させることが可能となり、その仕切り部材4bに流路用切欠き部を付加することで養液攪拌の効果が水耕栽培トレイ4内に波及し、植物の成長を改善できることを確認できた。
【0119】
また、従来の養液循環型の大型栽培槽との収量比較においても、収量が10%増加し、成長速度の改善ができた。
【0120】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の前記態様にかかる水耕栽培トレイによれば、搬送時の波の発生による水耕栽培トレイ内部の急激な水位変動の抑制ができ、漏水なく、手動又は自動で搬送ができる。また、前記態様にかかる水耕栽培トレイによれば、植物成長に必要な養液の流路を確保し、成長速度の改善をさせることで、収穫量が増加するとともに生理障害の発生を抑制することができる。この結果、植物工場等の水耕栽培する農業産業において、工場運営の自動化と工場収支の改善が見込まれる。
【符号の説明】
【0122】
1 固体培地
2 固定具
3 栽培プレート
3a 切欠き穴
4 水耕栽培トレイ
4a 箱型容器
4b 仕切り部材
4c 区画
5 流路用切欠き部
6 植物配置縦間隔
7 植物配置横間隔
8 区画縦寸法
9 区画横寸法
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10