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特開2023-58248材料選定補助装置、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058248
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】材料選定補助装置、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20230418BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168147
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】521450676
【氏名又は名称】アルファブレインコンサルツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坪井 淳
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部品として要求される特性を考慮した的確に材料を選定する材料選定補助装置、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体を提供する。
【解決手段】2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に、2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置であって、前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得部と、要求特性の各々に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出部と、部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出部と、2つ以上の候補材のうちの1の候補材についての材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、他の候補材の材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置であって、
前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得部と、
前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出部と、
前記部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出部と、
前記2つ以上の候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記2つ以上の候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成部と、
を有することを特徴とする材料選定補助装置。
【請求項2】
前記情報生成部は、前記材料品質特性を構成する各々の項目のうち、前記第1の特性値と前記第2の特性値とが閾値又は所定の割合を越えて乖離している項目について、前記1の候補材よりも前記他の候補材の方が優れているか又は劣っているかの判定を実行し、当該判定の結果を前記材料品質特性毎に示す情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の材料選定補助装置。
【請求項3】
前記判定の結果を示す情報は、前記第1の特性値と前記第2の特性値との乖離が所定の度合いよりも大きいか否かを示す情報を含むことを特徴とする請求項2に記載の材料選定補助装置。
【請求項4】
前記情報生成部は、前記材料品質特性のうち前記他の候補材の方が優れている項目の各々について、材料の当該項目が優れていることによって前記1の部品が得る利点を対応付けた情報である部品利点情報を生成することを特徴とする請求項2又は3に記載の材料選定補助装置。
【請求項5】
前記情報生成部は、前記材料品質特性のうち前記他の候補材の方が劣っている項目が原因となって前記1の部品に起こり得る故障モードを前記劣っている項目毎に示す故障モード情報を生成することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つに記載の材料選定補助装置。
【請求項6】
前記故障モード情報は、前記1の部品について前記故障モードを回避するための対策を前記劣っている項目毎に示す情報を含むことを特徴とする請求項5に記載の材料選定補助装置。
【請求項7】
2つ以上の候補材から1の部品の材料を選定する材料選定方法であって、
前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を特定する要求特性特定ステップと、
前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出ステップと、
前記部品品質特性の各々に関連する材料の物性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出ステップと、
前記候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、の知覚的な対比に基づいて材料を選定するステップと、
を有することを特徴とする材料選定方法。
【請求項8】
2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置によって実行される材料選定補助方法であって、
前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得ステップと、
前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出ステップと、
前記部品品質特性の各々に関連する材料の物性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出ステップと、
前記候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成ステップと、
を有することを特徴とする材料選定補助方法。
【請求項9】
コンピュータを備え、2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置によって実行される材料選定補助プログラムであって、前記コンピュータに、
前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得ステップと、
前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出ステップと、
前記部品品質特性の各々に関連する材料の物性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出ステップと、
前記候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成ステップと、
を実行させるための材料選定補助プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の材料選定補助プログラムを格納し、コンピュータが読取可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料選定補助装置、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体に関し、特に、自動車関連部品の材料の適切な選定に関する情報を生成する材料選定補助装置、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
部品の材料選定においては、その部品として要求される特性を満たすことのできる材料を適切に選定することが重要である。例えば、特許文献1には、材料選定処理部が、統合データベースにアクセスすることによって入力された部品名及び材料の選定条件に合致する標準規格、更に標準規格に合致する材料を抽出する材料選定方法が開示されている。特許文献1には、当該材料の選定条件は材料の種類や特性値であり、設計者によって入力されることが開示されている(段落[0014]、[0021]等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002―737442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、自動車部品の材料の適切な選定のためには、材料の特性のどのような項目に着目すべきかを的確に判断する必要があり、自動車部品に関する専門知識及び材料に関する専門知識の両方に基づく判断が必要である。そのため、自動車部品の材料選定は、極少数の経験豊富な技術者の判断に頼ることも多いのが現状である。豊富な専門知識が無くとも、自動的に的確な材料の選定が行えるような汎用性の高い材料選定の手法が望まれている。
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、部品として要求される特性を考慮した的確な材料選定を可能とする材料選定補助装置、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の材料選定補助装置は、2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置であって、前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得部と、前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出部と、前記部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出部と、前記2つ以上の候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記2つ以上の候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成部と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の材料選定方法は、2つ以上の候補材から1の部品の材料を選定する材料選定方法であって、前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を特定する要求特性特定ステップと、前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出ステップと、前記部品品質特性の各々に関連する材料の物性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出ステップと、前記候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、の知覚的な対比に基づいて材料を選定するステップと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の材料選定補助方法は、2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置によって実行される材料選定補助方法であって、前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得ステップと、前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出ステップと、前記部品品質特性の各々に関連する材料の物性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出ステップと、前記候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成ステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の材料選定補助プログラムは、コンピュータを備え、2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置によって実行される材料選定補助プログラムであって、前記コンピュータに、前記1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得ステップと、前記要求特性の各々について、前記要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出ステップと、前記部品品質特性の各々に関連する材料の物性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出ステップと、前記候補材のうちの1の候補材についての前記材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、前記候補材のうちの他の候補材の前記材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する情報生成ステップと、を実行させるための材料選定補助プログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例の材料選定補助装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施例の要求特性に関するデータベースの内容の一例を示す図である。
図3】実施例の部品品質特性に関するデータベースの内容の一例を示す図である。
図4】実施例の材料品質特性に関するデータベースの内容の一例を示す図である。
図5】実施例の材料選定補助装置によって実行される材料選定補助ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図6】実施例の材料選定補助装置の操作画面の一例を示す図である。
図7】実施例の材料選定補助装置の表示画面の一例を示す図である。
図8】実施例の材料選定補助装置の表示画面の一例を示す図である。
図9】実施例の材料選定補助装置の出力画面の一例を示す図である。
図10】実施例の材料選定補助装置の出力画面の一例を示す図である。
図11】実施例の材料選定補助装置の出力画面の一例を示す図である。
図12】実施例の材料選定補助装置の出力画面の一例を示す図である。
図13】実施例の材料選定補助装置の出力画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0012】
図面を参照しつつ、本実施例の材料選定補助方法を実行する材料選定補助装置10の構成について説明する。材料選定補助装置10は、コンピュータを備える端末装置である。本実施例において、材料選定補助装置10は、デスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピューター(以下、PCとも称する)である。材料選定補助装置10は、他の形式の端末装置であってもよく、例えば、タブレット、スマートフォン等の端末装置であってもよい。なお、材料選定補助装置10は、材料選定の補助に関する情報処理に特化した特化型コンピュータであってもよい。
【0013】
また、材料選定補助装置10は、クライアント端末に入力された情報を受信して、それに基づいて新たな情報を生成し、当該新たな情報をクライアント端末に送信するサーバ装置であってもよい。言い換えれば、材料選定補助装置10は、クラウドコンピューティングによって実現されてもよい。
【0014】
図1は、材料選定補助装置10の構成を示すブロック図である。材料選定補助装置10は、入力された情報に基づいて、材料選定に関する情報を生成してユーザに提示する装置である。図1に示すように、材料選定補助装置10は、システムバス11を介して各部が接続されて構成されている。
【0015】
入力部13は、外部の機器からデータを取得するインターフェースである。入力部13は、入力デバイス15に接続されている。入力デバイス15は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の、ユーザによる情報の入力を受け付ける機器である。
【0016】
入力部13は、入力デバイス15を介した入力を受け付けることで、材料選定に関する情報の入力を受け付ける。例えば、入力部13は、材料選定の対象となる部品の種類、現行材、候補材又は材料選定に当たり要求される特性等の情報、すなわち選定条件の入力を受け付ける。
【0017】
記憶部17は、例えば、ハードディスク装置、SSD(solid state drive)、フラッシュメモリ等により構成された記憶装置である。記憶部17は、材料選定補助装置10において実行される各種プログラムを記憶する。なお、各種プログラムは、例えば他のサーバ装置等からネットワークを介して取得されてもよく、記録媒体に記録されて各種ドライブ装置を介して読み込まれてもよい。例えば、記憶部17は、材料選定補助装置10において実行される材料選定補助プログラムを記憶する。
【0018】
また、記憶部17は、材料選定補助装置10による材料選定を補助する情報の生成のために用いられる情報が格納されている各種データベースを記憶している。
【0019】
例えば、記憶部17は、部品ごとに要求される特性である要求特性を示す要求特性情報が格納されている要求特性データベース(図面においては、要求特性DBと表記する)17Aを記憶している。
【0020】
図2は、部品ごとの要求特性が記憶されている要求特性データベース17Aの一例を示す図である。図2に示すように、要求特性データベース17Aには、部品ごとに、一次要求特性及び二次要求特性が対応付けられて記憶されている。
【0021】
本実施例において、一次要求特性とは、部品ごとに要求される特性について主観的又は抽象的に表した事項として説明する。また、本実施例において、二次要求特性とは、部品ごとに要求される特性について、一次要求特性よりも具体的に、細分化して表した事項として説明する。言い換えれば、一次要求特性及び二次要求特性は、部品ごとに要求される特性を示す事項を2つの階層に分類したものである。
【0022】
図2に示すように、一次要求特性の各々に、当該一次要求特性が具体化され、又は細分化された特性である二次要求特性が対応付けられている。
【0023】
図2に示す例においては、例えば、既存の部品であるバックミラーハウジングの一次要求特性である「綺麗な外観」について、二次要求特性として「表面がきれい」「傷がない」「変色しない」「歪んでいない」「継時劣化しない」という特性が対応付けられている。
【0024】
また、記憶部17は、例えば、要求特性の各々に関連する部品の特性である部品品質特性を示す情報が格納されている部品品質特性データベース(図1中、部品品質特性DB)17Bを記憶している。
【0025】
部品品質特性は、例えば、要求特性を満たすために、完成した部品(製品)についての着目すべき性質、又は当該完成した部品についてテストすべき項目である。
【0026】
図3は、部品品質特性データベース17Bの一例を示す図である。図3に示すように、部品品質特性データベース17Bには、二次要求特性の各々について、その二次要求特性に関連する特性であって部品としての特性である部品品質特性が関連付けられて記憶されている。
【0027】
図3に示すように、部品品質特性データベース17Bにおいて、部品品質特性は、部品の品質に関する大まかな特性を示す一次部品特性と、一次部品特性よりも詳細な特性を示す二次部品品質特性とに分けて記載されている。
【0028】
また、部品品質特性データベース17Bにおいて、要求特性と部品品質特性とは、二次要求特性の各々に関連する二次の部品品質特性を示す印を付すことによって関連付けられている。
【0029】
図3に示す例においては、各々の二次要求特性に関連する二次の部品品質特性に「〇」、当該二次要求特性に強く関連する二次の部品品質特性に「◎」を付すことによって要求特性と部品品質特性とが関連付けられている。なお、図3に示すように、1つの二次要求特性に、複数の部品品質特性が関連する場合も多い。
【0030】
また、例えば、記憶部17は、部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を示す情報が格納されている材料品質特性データベース(図1中、材料品質特性DB)17Cを記憶している。
【0031】
図4は、材料品質特性データベース17Cの一例を示す図である。図4に示すように、材料品質特性データベース17Cには、二次の部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性が対応付けられて記憶されている。
【0032】
図4に示すように、材料品質特性データベース17Cにおいて、材料品質特性は、材料の品質に関する大まかな特性を示す一次の材料品質特性と、一次の材料品質特性よりも詳細な特性を示す二次の材料品質特性とに分けて記載されている。
【0033】
また、材料品質特性データベース17Cにおいて、部品品質特性と材料品質特性とは、二次の部品品質特性の各々に関連する二次の材料品質特性を示す印を付すことによって関連付けられている。
【0034】
図4に示す例においては、各々の二次の部品品質特性に関連する二次の材料品質特性に「〇」、当該二次の部品品質特性に強く関連する二次の材料品質特性に「◎」を付すことによって部品品質特性と材料品質特性とが関連付けられている。なお、図4に示すように、1つの部品品質特性に、複数の材料品質特性が関連する場合も多い。
【0035】
また、例えば、記憶部17は、材料毎の材料品質特性の各々を示す値である特性値を示す情報が格納されている材料特性値データベース(図1中、材料特性値DB)17Dを記憶している。材料特性値データベース17Dには、例えば、強度や物理特性を示す値又は耐久性や成形性を示す値若しくは記号等の特性値を示す情報が材料毎に対応付けられて記憶されている。
【0036】
制御部19は、CPU(Central Processing Unit)19A、ROM(Read Only Memory)19B、RAM(Random Access Memory)19C等により構成され、コンピュータとして機能する。そして、CPU19Aが、ROM19Bや記憶部17に記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現する。
【0037】
制御部19は、記憶部17に記憶された材料選定補助プログラムを読み出して実行することで、材料選定の補助となり得る情報を生成する。制御部19は、例えば、2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に、当該2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する。
【0038】
例えば、当該2つ以上の候補材の1つは1の部品の現行材であり、制御部19は、1の部品の現行材と現行からの変更候補となる候補材との間で比較すべき特性を提示する情報を生成する。また、例えば、当該2つ以上の候補材は、新規部品の材料の候補となる複数の材料であってもよく、制御部19は、当該2つ以上の候補材それぞれとの間で比較すべき特性を提示する情報を生成する。
【0039】
出力部21は、ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ、スピーカー等の出力デバイス23に接続されている。出力部21は、制御部19からの命令に従って、出力デバイス23に各種情報を供給するインターフェースである。本実施例において、出力デバイス23はディスプレイである場合について説明する。
【0040】
出力部21は、例えば、材料選定を開始する際に必要となる選定条件の入力を受け付けるための入力画面を表示するための情報を出力デバイス23に供給する。
【0041】
また、出力部21は、例えば、制御部19によって生成された、材料選定の補助となり得る情報を出力デバイス23に供給する。例えば、出力部21は、2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を出力デバイス23に供給する。
【0042】
通信部25は、制御部19の指示に従って外部とのデータの送受信等の通信を行うためのNIC(Network Interface Card)等のネットワークアダプタである。
【0043】
例えば、通信部25は、材料選定補助装置10が外部のデータベース又は外部の端末装置から材料選定に必要な情報を取得する際の通信を行う。通信部25は、例えば、材料選定の対象の部品の種類等の選定条件を示す情報を外部から受信する際の通信を行う。また、通信部25は、例えば、外部のデータベース(図示せず)から候補材の物性値等の特性値を示す情報であって、材料特性値DB17Dには記憶されていない情報を受信する際の通信を行う。
【0044】
図5及び図6図13を参照しつつ、本実施例の材料選定補助装置10によって実行される材料選定に関する情報の生成について説明する。
【0045】
図5は、本実施例の材料選定補助装置10の制御部19によって実行されるルーチンの一例である材料選定補助ルーチンRT1を示すフローチャートである。制御部19は、例えば、入力部を介して材料選定の処理の開始操作を受け付けると、材料選定補助ルーチンRT1を開始する。
【0046】
制御部19は、材料選定補助ルーチンRT1を開始すると、材料選定の条件の入力を受け付ける(ステップS101)。ステップS101において、例えば、制御部19は、出力部21を介して、選定条件の入力を受け付ける入力画面を出力デバイス23に表示させる。
【0047】
図6は、ステップS101において出力デバイス23に表示される材料選定条件の入力画面の一例を示す図である。
【0048】
図6に示すように、材料選定条件の入力画面には、部品名の入力欄F1が設けられている。例えば、部品名の入力欄F1は、プルダウン機能等を使用することにより複数の部品名の中から1つの部品名を選択可能に表示されている。また、例えば、部品名の入力欄F1は、キーボード又はタッチパネルを介して部品名を入力可能に表示されていてもよい。例えば、図6に示す入力画面中の部品名については、例えば、要求特性DB(図2)に記憶されている既存の部品についてはプルダウンメニューから選択可能であり、要求特性DBに記憶されていない新規な部品については入力欄F1に入力可能としてもよい。
【0049】
また、図6に示すように、材料選定条件の入力画面には、一次要求特性の入力欄F2が設けられている。一次要求特性は、上記したように、部品ごとに要求される特性について主観的又は抽象的に表した要求事項である。
【0050】
例えば、要求特性DBに記憶されている既存の部品の場合、一次要求特性は要求特性DBにおいて部品ごとに対応付けられており、一次要求特性の入力欄F2は、上記した部品名の入力欄に部品名が入力されると、自動的に当該部品に対応付けられた一次要求特性が表示されるように構成されていてもよい。また、当該入力画面は、一次要求特性を個別に入力可能に構成されていてもよい。
【0051】
図6に示す例においては、部品名がプルダウンメニューから選択可能に表示されており、既存の自動車部品である「バックミラーハウジング」が選択されている。また、図6に示す例においては、部品名としてバックミラーハウジングが選択されたことによってバックミラーハウジングに予め対応付けられている一次要求特性が自動的に表示されている。
【0052】
さらに、図6に示すように、材料選定条件の入力画面には、材料名の入力欄F3が設けられている。材料名の入力欄F3は、材料選定補助ルーチンRT1を用いる材料選定において、材料としての特性を比較する対象となる材料を2つ以上入力可能に構成されている。
【0053】
例えば、当該材料名の入力欄F3は、部品名の入力欄F1に既存の部品が入力されている場合には、材料名の入力欄F3に現行材及び候補材が自動的に表示されてもよく、プルダウン機能を用いた選択が可能になっていてもよい。
【0054】
図6に示す例においては、本実施例の材料選定補助装置10を材料変更の際にどの材料に変更するのが適しているかを検討するために用いる場合の画面が表示されている。従って、材料名の入力欄には、現行材と材料変更の候補材とを入力するようになっている。図6に示す例においては、現行材として「X樹脂」、材料変更の候補材として「Y樹脂」が入力されている。
【0055】
本実施例の材料選定補助装置の用途は、材料変更の際の変更材の検討に限られず、新規材料の選定にも用いることができる。その場合は、例えば、現行材の欄に候補材を入力すればよい。言い換えれば、現行材も他の材料と比較されて選定の対象となる点で、候補材の1つである。
【0056】
F3に二つ以上の材料を入力して決定ボタンB1を選択するとステップS102に進行し、例えば現行材と候補材との間で、又は複数の候補材間での特性の比較を可能にするための情報の処理が進んでいく。
【0057】
制御部19は、ステップS101の実行後、ステップS101において入力された情報に基づいて、例えば記憶部17内の要求特性データベース17Aを参照し、材料選定に係る部品についての要求特性を取得する(ステップS102)。
【0058】
ステップS102では、制御部19は、本ルーチンの進行に必要となる二次要求特性を取得する。ステップS102において、例えば、制御部19は、入力された部品名に基づいて、一次要求特性及び二次要求特性を取得する。また、例えば、制御部19は、ステップS101において一次要求特性が入力された場合には、入力された一次要求特性に基づいて、二次要求特性を取得する。
【0059】
なお、ステップS102において取得された二次要求特性は、出力デバイス23に表示されてもよく、表示されなくともよい。表示された場合、本ルーチンによる材料選定のプロセスが明確にユーザに提示されることで、材料選定の補助となり得る。
【0060】
ステップS102において、制御部19は、1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報としての二次要求特性情報を取得するステップ(要求特性取得ステップ)を実行する要求特性取得部として機能する。
【0061】
ステップS102の実行後、制御部19は、ステップS102において取得された二次要求特性に基づいて、例えば部品品質特性データベース17Bを参照し、要求特性の各々について、当該要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する(ステップS103)。
【0062】
ステップS103では、制御部19は、本ルーチンの進行に必要となる二次の部品品質特性を抽出する。ステップS103において、制御部19は、部品品質特性データベース17Bに基づいて、ステップS102で取得した二次要求特性の各々に関連付けられている二次の部品品質特性を抽出する。
【0063】
図7は、ステップS103において、バックミラーハウジングについての要求特性の各々に関連する部品品質特性が抽出された結果が、出力デバイス23に表示されている状態を示している。なお、部品品質特性が抽出された結果は、表示されなくともよい。表示されれば、ユーザにとって、本ルーチンによる材料選定プロセスにおいてどのような部品品質特性が抽出されたのかが明確になることで、材料選定の補助となりうる。例えば、図7の表示画面は、確認ボタンを押すと次のステップに進むようになっていてもよい。
【0064】
ステップS103において、制御部19は、要求特性の各々について、要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出するステップ(部品特性抽出ステップ)を実行する部品特性抽出部として機能する。
【0065】
ステップS103の実行後、制御部19は、ステップS103において抽出された二次の部品品質特性に基づいて、例えば材料品質特性データベース17Cを参照し、部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を抽出する(ステップS104)。
【0066】
ステップS104では、制御部19は、本ルーチンの進行に必要となる二次の材料品質特性を抽出する。ステップS104において、制御部19は、材料品質特性データベース17Cから、ステップS103で抽出した二次の部品品質特性の各々に関連付けられている二次の材料品質特性を抽出する。
【0067】
ステップS104において抽出される材料品質特性は、部品についての着目すべき性質又はテストすべき項目に関連し、その部品の材料を選定するに当たり複数の材料間で比較すべき特性に関する項目である。
【0068】
図8は、ステップS104において、バックミラーハウジングについての部品品質特性の各々に関連する材料品質特性を抽出した結果が出力デバイス23に表示されている様子を示している。
【0069】
図8に示す例においては、例えば、部品についての応力印加時変形量は、引張弾性率及び曲げ弾性率に関連している。言い換えれば、部品の応力印加時変形量に影響する材料の特性を、複数の材料間で比較するためには、引張弾性率及び曲げ弾性率を比較すればよい。同様に、部品の落下衝撃試験の結果に影響する材料の特性は、シャルピー衝撃強さ及び引張破壊ひずみの試験結果を複数の材料間で比較すればよい。
【0070】
このように、ステップS104の実行によって部品品質特性を材料品質特性に展開することで、その部品にとって重要な材料品質特性を明らかにすることができる。部品品質特性を材料品質特性に展開するためには、部品及び材料に関する高度な専門知識が必要となる場合も多い。例えば専門家の監修の下で図4に示したような材料品質特性データベースを予め作成しておき、本実施例の材料選定補助装置10によってステップS104を実行し、部品品質特性から材料品質特性への展開を自動的に行うことができる。
【0071】
ステップS104において、制御部19は、部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を抽出するステップ(材料特性抽出ステップ)を実行する材料特性抽出部として機能する。
【0072】
ステップS104の実行後、制御部19は、2つ以上の候補材の材料品質特性の各々を示す値である材料品質特性値を材料特性値DB17Dから取得し、当該材料品質特性値を2つの候補材間で対比可能な態様の情報を生成する(ステップS105)。
【0073】
ステップS105において、制御部19は、2つ以上の候補材のうちの1の候補材についての材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、2つ以上の候補材のうちの他の候補材についての材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を知覚的に対比可能な態様の情報を生成する。
【0074】
ステップS105において、具体的には、ステップS101において入力された現行材(X樹脂)及び候補材(Y樹脂)について、ステップS104において抽出された材料品質特性の各々を示す値である材料品質特性値について、視覚的に対比可能な情報が生成される。
【0075】
図9は、ステップS105において生成されて出力デバイス23に表示された情報の一例を示す図である。図9には、二つの候補材、すなわち現行材であるX樹脂及び材料変更の候補材であるY樹脂についての材料品質特性値が知覚的に対比可能な態様で表されている。
【0076】
より詳細には、現行材であるX樹脂についての材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、材料変更の候補材であるY樹脂についての材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、が項目毎に視覚的に対比可能な態様で並べられている。
【0077】
例えば、本実施例の材料選定補助装置10のユーザは、図9に示す表示を確認し、材料品質特性値を比較することによって、現行材から候補材に変更するか否かを検討することができる。
【0078】
ステップS105において、制御部19は、第1の特性値と第2の特性値とを知覚的に対比可能な態様の情報を生成するステップ(情報生成ステップ)を実行する情報生成部として機能する。
【0079】
ステップS105の実行後、制御部19は、ステップS105で取得した材料品質特性値について、現行材よりも候補材の方が優れている材料品質特性の項目であるグッドポイント(Good point)と、現行材よりも候補材の方が劣っている材料品質特性の項目であるバッドポイント(Bad point)と、を示す情報を生成して出力する(ステップS106)。
【0080】
ステップS106において、制御部19は、材料品質特性を構成する各々の項目のうち、第1の特性値と第2の特性値とが閾値又は所定の割合を越えて乖離している項目について、1の候補材(現行材、X樹脂)よりも他の候補材(候補材、Y樹脂)の方が優れているか又は劣っているかの判定を実行し、当該判定の結果を材料品質特性毎に示す情報を生成する。
【0081】
当該判定において、現行材よりも候補材の方が優れていると判定された項目は、グッドポイントとなる。また、当該判定において、現行材よりも候補材の方が劣っていると判定された項目は、バッドポイントとなる。
【0082】
また、ステップS106において、制御部19は、第1の特性値と第2の特性値との乖離が所定の度合いよりも大きいか否かを示す情報を生成してもよい。
【0083】
図10は、材料品質特性の項目のうちのグッドポイント及びバッドポイントを示す情報が出力デバイス23に表示されている例を示している。
【0084】
図10に示す例において、第1の特性値と第2の特性値との乖離が所定の度合いよりも大きいか否かについても表示されている。図10では、当該乖離が所定の度合いよりも大きい場合に「乖離大」、当該乖離が所定の度合いを越えない場合に「乖離小」と表示されている。
【0085】
例えば、所定の度合いは、材料品質特性の項目毎に予め定められて記憶部17又は外部のデータベースに記憶されている。なお、例えば、当該乖離の度合いは、「乖離大」と「乖離小」の2段階に限られず、3つ以上の段階に分けて判断されてもよい。
【0086】
例えば、本実施例の材料選定補助装置10のユーザは、図10に示す表示を確認し、グッドポイント及びバッドポイントを考慮して材料品質特性値を比較することによって、現行材から候補材に変更するか否かを検討することができる。
【0087】
ステップS106の実行後、制御部19は、ステップS106において判定したグッドポイントを部品としてのメリットに展開する(ステップS107)。
【0088】
図11は、グッドポイントを部品としてのメリットに展開した結果の一例が出力デバイス23に表示されている様子を示す。図11に示す表には、グッドポイントと判定された材料品質特性の項目毎に、部品の材料を現行材から候補材に変更した場合の特性値の変化及び部品としてのメリットが記載されている。
【0089】
図11の表において、例えば、引張強さ、曲げ強さ、衝撃強さ及び曲げ弾性率の値が大きい場合、破損リスクが少ない、肉厚を薄くして軽量化できるというメリットが記載されている。
【0090】
ステップS107において、制御部19は、例えば、材料選定の対象となっている部品がミラーハウジングであるということ、及びグッドポイントとなった材料品質特性の項目の各々に基づいて、部品としてのメリットを材料選定補助装置10の内部又は外部のデータベースから読み出す。例えば、記憶部17又は外部のデータベースには、グッドポイントの材料品質特性の項目に関する部品のメリットが、部品ごとに記憶されていてもよい。
【0091】
言い換えれば、ステップS107において、情報生成部としての制御部19は、材料品質特性のうちグッドポイントと判定された項目の各々について、部品の材料についての当該グッドポイントの項目が優れていることによって、当該部品が得る、すなわち当該部品にもたらされる利点を対応付けた情報である部品利点情報を生成する。
【0092】
例えば、自動車部品の材料選定を行う場合、材料品質特性の値だけを見ても、自動車会社及び自動車部品メーカーのエンジニアにとってわかりづらい可能性がある。そのような場合に、図11に示したようなメリットが提示されれば、現行材から候補材に変更した場合の利点を把握し易くなる。
【0093】
ステップS107の実行後、制御部19は、ステップS106において判定したバッドポイントについてFMEA(Failure Mode and Effects Analysis)を展開する(ステップS108)。
【0094】
ステップS108において、情報生成部としての制御部19は、材料品質特性のうち他の候補材の方が劣っている項目、すなわちバッドポイントと判定した項目が原因となって、材料選定の対象の部品に起こり得る故障モード(フェーラーモード)を当該バッドポイントの項目毎に示す故障モード情報を生成する。
【0095】
また、ステップS108において、当該故障モード情報は、材料選定の対象の部品について故障モードを回避するための対策を、バッドポイントの項目毎に示す情報を含んでいてもよい。
【0096】
図12は、ステップS108において生成された情報の一例が出力デバイス23に表示されている様子を示す。図12に示す例においては、バッドポイントと判定された材料品質特性の項目毎に、現行材から候補材に変更した場合の特性値の変化及びフェーラーモードが記載されている。
【0097】
また、図12に示す例においては、フェーラーモードに対する対策を行った場合に、フェーラーモードが起こる可能性の変化が示されている。例えば、図12中のバッドポイントのうちの「耐候性」については、フェーラーモードが生じる可能性が中程度のところ、対策を行うとことで可能性は極小となることを示している。
【0098】
例えば、本実施の材料選定補助装置10のユーザは、ステップS108において生成された情報を参考にして、フェーラーモードの内容によって候補材の採用の可否を検討したり、採用困難な候補材であっても対策を行えば採用可能であるか否かを検討したりすることができる。それによって、部品の材料に関する不具合の発生を防止することが可能となる。 ステップS108の実行後、制御部19は、候補材の採用可否を判定する(ステップS109)。ステップ109において、制御部19は、ステップS105の結果又はステップS106~ステップS108のいずれかまでの結果に基づいて、候補材の採用可否を判定して出力する。ステップS109において、例えば、制御部19は、所定の判定基準を用いて候補材の採用可否を判定する。
【0099】
ステップS109において、例えば、制御部19は、現行材と候補材との間で、ステップS105で取得した材料品質特性の各々の特性値を対比して候補材の採用可否を判定して出力する。
【0100】
また、ステップS109において、例えば、制御部19は、現行材と候補材との間で、材料品質特性の各々の特性値を対比し、ステップS106で得られたグッドポイント及びバッドポイントを反映した判定基準により候補材の採用可否を判定して出力してもよい。当該判定基準は、例えば、ステップS106の実行によって得られたグッドポイントの数、重要な材料品質特性がバッドポイントになっていないこと等に基づいて設定されてもよい。例えば、グッドポイントの数が多い候補材が採用されるという判定基準が設けられていてもよい。
【0101】
さらに、ステップS109において、例えば、制御部19は、ステップS106までの結果に加えて、ステップS107で得られた部品のメリット又はステップS108で得られたフェーラーモードに関する情報を反映した判定基準により、候補材の採用可否を判定して出力してもよい。
【0102】
ステップS109において、例えば、制御部19は、現行材に対して候補材の採用可否を出力する。例えば、ステップS109において、複数の候補材の各々の採用可否が出力されてもよく、採用可能な1つの候補材が特定されて出力されてもよい。
【0103】
なお、例えば、採用可否の判定は、学習モデルを用いて行われてもよい。当該学習モデルは、ディープラーニング(深層学習)によって構築されたニューラルネットワークであり、ステップS105~ステップS108の少なくとも1つの結果を入力とし、採用可否の判定結果を出力とする。例えば、当該学習モデルに、判定対象の複数の候補材の各々の、ステップS105~ステップS108の少なくとも1つの結果を示す数値を入力すると、採用可能な候補材を示す数値が出力される。
【0104】
ステップS109の実行後、制御部19は、材料選定補助ルーチンRT1を終了する。
【0105】
なお、材料選定補助ルーチンRT1は、ステップS109を含まなくともよく、候補材の採用可否については、材料選定補助装置10のユーザが判定することとしてもよい。ユーザが採用可否を判定する際には、例えば図9~12に示したように、ステップS105~ステップS108の少なくとも1つの結果が出力デバイス23に表示され、当該表示に基づいてユーザが採用可否を判定する。
【0106】
また、材料選定補助ルーチンRT1は、ステップS105~ステップS108のいずれかで終了してもよい。
【0107】
また、本発明の材料選定方法は、材料選定補助ルーチンRT1のステップに沿って、ステップの各々について手動で実行することができる。その場合、当該材料選定方法を用いて材料を選定するユーザは、例えば、各ステップにおいて、資料やデータベースの参照、対応表の作成等を手動で行う。
【0108】
具体的には、例えば、ユーザは、ステップS101において条件を決定後、決定した条件に基づいて、図2に示したような要求特性データベース17Aを参照して、材料選定に係る部品についての要求特性を特定してもよい(要求特性特定ステップとしてのステップS102)。
【0109】
例えば、ユーザは、ステップS103において、図3に示したような部品品質特性データベース17Bを参照して、ステップS102において取得した要求特性に関連する部品品質特性を抽出してもよく、さらに図7に示したような抽出結果の表(抽出表)を作成してもよい。
【0110】
ユーザは、ステップS104において、図4に示したような材料品質特性データベース17Cを参照して、部品品質特性の各々に対応付けられている材料品質特性を抽出して抽出表を作成してもよい。
【0111】
例えば、図2~4に示したようなデータベースとして、電子化されたものに限られず、例えば紙媒体に記録されたものが用いられてもよい。
【0112】
その後、ユーザは、ステップS105において、ステップS104で抽出した材料品質特性の各々についての材料品質特性値を例えば材料特性値DB17Dから取得し、当該材料品質特性値を2つの候補材間で対比することができる。ユーザは、当該対比により材料を選定してもよい。例えば、現行材に対する候補材の採用可否、又は2つ以上の候補材の中から部品の材料としていずれの材料を採用するかを決定してもよい。
【0113】
さらに、ユーザは、ステップS106~ステップS108を適宜行った上で材料を選定してもよい。例えば、ステップS106において、ステップS105で得られた特性値に基づいて、材料品質特性の各々のグッドポイント及びバッドポイントを明らかにする。その後、例えば、グッドポイントを部品のメリットに展開し(ステップS107)、バッドポイントについてFMEAを展開し(ステップS108)、ステップS106~ステップS108の結果に基づいて材料を選定してもよい。
【0114】
図13を参照しつつ、材料選定補助ルーチンRT1のステップS105の後、ステップS106~ステップS108に代えて、又はステップS106~ステップS108と並行して実行される決定分析のステップについて説明する。このステップは、例えば、複数の候補材から採用すべき材料を絞り込んで選定する場合に特に有効である。
【0115】
図13は、制御部19が決定分析のステップを実行することによって生成される情報の一例を示す表が出力デバイス23に表示されている様子を示す。図13に示す表において、材料A~Dの4つの候補材の各々について、材料品質特性値が記載されている。
【0116】
図13に示す表に記載されている「W」は、対象となっている部品にとっての、材料品質特性の各項目間の相対的な重要度に応じて設定された重み係数を示しており、最も重要度の高いものを10として数値で表されている。例えば、部品がバックミラーハウジングの場合、図13に示す例においては、引張強さ、曲げ強さ、シャルピー衝撃強さ、曲げ弾性率、耐候性、吸水性は、相対的に重要度が高く、重み係数Wの値が10となっている。図13において、例えば、線膨張係数、MFR、及び成形収縮率については、相対的に重要度が低く、重み係数Wの値が2となっている。
【0117】
また、図13に示す表に記載されている「S」は、材料品質特性値の各々についての各候補材間の相対な優劣に基づいて付された点数(スコア)を示しており、最良のものを10として数値で表されている。
【0118】
図13中、「W*S」は数値Wと数値Sとの積を示しており、材料毎に「W*S」の総和を算出した結果が記載されている。
【0119】
制御部19は、決定分析のステップにおいて、材料特性抽出部によって抽出された材料品質特性の各々に、材料品質特性の項目間の相対的な重要度に応じて重み係数「W」を設定し、候補材毎に材料品質特性の項目の各々について、第1の特性値(1の候補材の特性値)と第2の特性値(他の候補材の特性値)との間の相対的な優劣に基づいて点数(スコア)「S」を付し、候補材毎に材料品質特性の項目の各々について当該重み係数と当該点数との積(W*S)を算出する。さらに、制御部19は、1の候補材及び他の候補材の各々について算出された積(W*S)の総和を算出し、当該算出結果を2つ以上の候補材間で知覚的に対比可能な態様の情報を生成する。このように、決定分析のステップにおいて、制御部19は、決定分析情報生成部として機能する。
【0120】
決定分析のステップが手動で行われる場合には、当該決定分析のステップは、以下のように進行される。ステップS104において材料特性抽出部によって抽出された材料品質特性の各々に、材料品質特性の項目間の相対的な重要度に応じて重み係数「W」を設定する。候補材毎に、材料品質特性の項目の各々について、1の候補材についての第1の特性値と他の候補材についての前記第2の特性値との間の相対的な優劣に基づいて点数(スコア)「S」を付す。
【0121】
続いて、候補材毎に材料品質特性の項目の各々について当該重み係数と当該点数との積(W*S)を算出する。当該算出結果を2つ以上の候補材間で対比することにより、定量的に部品の材料としての優劣を比較することができる。
【0122】
決定分析のステップによれば、材料品質特性の重要度に従って重み付けをすることで、材料品質特性の重要度を反映した比較を行うことができる。なお、図13に示す点数付与の方法は、公知のKT(Kepner-Tregoe)法の決定分析(DA:Decision Analysis)の手法を参考にしたものである。
【0123】
材料選定補助装置10の制御部19は、例えば、材料選定補助ルーチンRT1のステップS105又はステップS106の後に、図13に示す情報を生成するステップを実行して出力デバイス23に表示する。これによって、新規部品や樹脂化の開発等の、広い範囲から複数の材料を候補として絞り込む場合に、数値の比較により効率良く最適な材料を選択することができる。
【0124】
なお、図13中、実線で囲まれた値はグッドポイント、破線で囲まれた値はバッドポイントを示す。このように、決定分析の結果と併せて、ステップS106で得られたグッドポイント及びバッドポイントが明らかになるように表示することで、ユーザは、決定分析によって得られたスコアの総和と併せて、グッドポイント及びバッドポイントを材料選定の判断に用いることができる。これによって、例えば経験の少ないユーザでも、材料選定の際に着目すべき重要なポイントを容易に把握することができる。
【0125】
なお、例えば、当該グッドポイント及びバッドポイントを示す表示は、ハイライトや色分けによってなされてもよく、例えば特性値の乖離の度合い等の重要度によって色分けされてもよい。
【0126】
例えば、制御部19は、ステップS109において、候補材の採用可否の判定を行う場合、例えば決定分析により得られたスコアの総和が複数の候補材間で同等であった場合に、例えばグッドポイントの多い材料又はバッドポイントの少ない材料を採用可能と判定するという判定基準を有していてもよい。
【0127】
例えば、本発明の材料選定方法のユーザは、どの材料特性がグッドポイント又はバッドポイントとなっているか、グッドポイント又はバッドポイントの多い候補材はどれか、といった観点を考慮に入れて材料の選定を行うことができる。
【0128】
上記のステップにおいて、制御部19は、重み係数W及びスコアSを付与し、WとSとの積を算出し、当該積の総和を算出することで、採用する材料を決定するための分析を行う決定分析部として機能する。
【0129】
さらに、決定分析部としての制御部19は、WとSとの積の総和の大小に基づいて、いずれの材料を採用すべきであるかの判定を実行し、判定結果を示す情報を生成してもよい。
【0130】
本実施例の材料選定補助装置10は、材料変更の際の候補材の採用可否の検討の他に、新材料の提案、目標値の設定に役立てることができる。また、上記したように、本実施例の材料選定補助装置10は、複数の候補材から採用すべき材料を絞り込んで選定する場合にも用いることができる。
【0131】
以上、説明したように、本実施例の材料選定補助装置は、2つ以上の候補材を1の部品の材料として検討する際に前記2つ以上の候補材の間で比較すべき特性を提示する情報を生成する材料選定補助装置である。
【0132】
本実施例の材料選定補助装置は、当該1の部品に要求される特性である要求特性を示す要求特性情報を取得する要求特性取得部と、要求特性の各々について、要求特性に関連する部品の特性である部品品質特性を抽出する部品特性抽出部と、部品品質特性の各々に関連する材料の特性に関する項目である材料品質特性を抽出する材料特性抽出部と、を有する。
【0133】
また、当該材料選定補助装置は、2つ以上の候補材のうちの1の候補材についての材料品質特性の各々を示す値である第1の特性値と、当該2つ以上の候補材のうちの他の1つ以上の候補材の材料品質特性の各々を示す値である第2の特性値と、を対比可能な態様の情報を生成する情報生成部を有する。
【0134】
このような構成により、本実施例の材料選定補助装置によれば、部品として要求される特性から出発して、部品品質特性から材料品質特性へと自動的に展開することができ、その部品にとって重要な材料品質特性の値を複数の材料間で知覚的に比較可能な態様の情報を生成することができる。
【0135】
従って、部品として要求される特性を考慮した的確な材料選定を可能とする材料選定補助、材料選定方法、材料選定補助方法、材料選定補助プログラム及び記録媒体を提供することができる。
【0136】
本実施例の材料選定補助装置は、本実施例の材料選定補助プログラムを実行することで本実施例の材料選定補助方法を実行し、部品にとって重要な材料品質特性の値を複数の材料間で知覚的に比較可能な態様の情報、すなわち材料選定の補助となり得る情報を生成する。また、本実施例の材料選定方法は、手動によって進行することができる。
【0137】
上述した実施例における構成及びルーチンは例示に過ぎず、用途等に応じて適宜選択及び変更可能である。
【0138】
なお、上記の実施例において、記憶部17が要求特性DB17A、部品品質特性DB17B、材料品質特性DB17C及び材料特性値DB17Dを記憶している例について説明したが、これに限られない。例えば、これらの各種データベースの少なくとも一部は本願の材料選定装置の外部に存在してもよく、例えば材料選定の対象の部品の種類や材料の種類等の選定条件によって異なるデータベースが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0139】
10 材料選定補助装置
17 記憶部
17A 要求特性DB
17B 部品品質特性DB
17C 材料品質特性DB
17D 材料特性値DB
19 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13