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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058265
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】締固め方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/026 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
E02D3/026
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168176
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000231198
【氏名又は名称】日本国土開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100136261
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 俊成
(72)【発明者】
【氏名】細井 泰行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CB01
(57)【要約】
【課題】複数種類の重機を用いて、締固め領域を適切な締固めに締め固められるようにする。
【解決手段】所定の締固め領域と同じ土質の試験領域にて第1重機の締固め回数と締固め度との第1直線近似を求め、前記試験領域にて前記第1重機とは異なる種類の第2重機の締固め回数と締固め度との第2直線近似を求め、前記第1直線近似の相関係数に応じて前記第1重機の第1締固めレベルを決定するとともに、前記第2直線近似の相関係数に応じて前記第2重機の第2締固めレベルを決定する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の締固め領域と同じ土質の試験領域にて第1重機の締固め回数と締固め度との第1直線近似を求め、
前記試験領域にて前記第1重機とは異なる種類の第2重機の締固め回数と締固め度との第2直線近似を求め、
前記第1直線近似の相関係数に応じて前記第1重機の第1締固めレベルを決定するとともに、前記第2直線近似の相関係数に応じて前記第2重機の第2締固めレベルを決定する締固め方法。
【請求項2】
前記第1重機と前記第2重機とが前記所定の締固め領域を走行したときに、前記第1締固めレベルと前記第2締固めレベルとを加算して、前記所定の締固め領域の締固めレベルを更新する請求項1記載の締固め方法。
【請求項3】
前記第1直線近似を求める範囲は、前記第1重機による前記試験領域の締固め開始から、前記締固め回数の増加に応じて前記締固め度が略直線的に増加する範囲であり、
前記第2直線近似を求める範囲は、前記第2重機による前記試験領域の締固め開始から、前記締固め回数の増加に応じて前記締固め度が略直線的に増加する範囲である、請求項1又は請求項2に記載の締固め方法。
【請求項4】
前記第1締固めレベルは、前記第1直線近似を求めた範囲の締固め回数の逆数であり、
前記第2締固めレベルは、前記第2直線近似を求めた範囲の締固め回数の逆数である、請求項3に記載の締固め方法。
【請求項5】
前記試験領域は敷き均しが行われている請求項1から請求項4のいずれか一項記載の締固め方法。
【請求項6】
前記第1直線近似の相関係数および前記第2直線近似の相関係数は、0.85以上1.0以下である請求項1から請求項5のいずれか一項記載の締固め方法。
【請求項7】
所定の締固め領域と同じ土質の試験領域にて第1重機の締固め回数と締固めによる表面沈下量との第1直線近似を求め、
前記試験領域にて前記第1重機とは異なる種類の第2重機の締固め回数と締固めによる表面沈下量との第2直線近似を求め、
前記第1直線近似の相関係数に応じて前記第1重機の第1締固めレベルを決定するとともに、前記第2直線近似の相関係数に応じて前記第2重機の第2締固めレベルを決定する締固め方法。
【請求項8】
前記第1直線近似は、前記第1重機の締固め回数と前記締固めによる表面沈下量の変曲点とに基づいて求められ、
前記第2直線近似は、前記第2重機の締固め回数と前記締固めによる表面沈下量の変曲点とに基づいて求められる請求項7記載の締固め方法。
【請求項9】
前記第1締固めレベルは、前記第1直線近似を求めた変曲点に対応する締固め回数の逆数であり、
前記第2締固めレベルは、前記第2直線近似を求めた変曲点に対応する締固め回数の逆数である、請求項8に記載の締固め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、盛土材料を締固める際に、盛土施工範囲の全面にわたって試験施工で決定した締固め回数を確保するために、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)を用いて締固め回数を管理する管理方法が知られている(例えば、非特許文献1等参照)。
【0003】
この管理方法では、試験施工で用いた機械(重機)に搭載されたPC(Personal Computer)のモニタに締固め回数分布図を表示する。そして、作業者は、表示された締固め回数分布図を確認しながら重機を操作し、施工範囲の管理ブロックの全てが規定回数だけ締固めたことを示す色になるまで締固めを行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」国土交通省 令和2年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1の技術では、1つの盛土施工範囲を締め固める際に、複数種類の機械(重機)を用いることについては想定されていない。
【0006】
そこで、本発明は、複数種類の重機を用いて、締固め領域が適切な状態となるように締め固めることが可能な締固め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1の締固め方法は、所定の締固め領域と同じ土質の試験領域にて第1重機の締固め回数と締固め度との第1直線近似を求め、前記試験領域にて前記第1重機とは異なる種類の第2重機の締固め回数と締固め度との第2直線近似を求め、前記第1直線近似の相関係数に応じて前記第1重機の第1締固めレベルを決定するとともに、前記第2直線近似の相関係数に応じて前記第2重機の第2締固めレベルを決定する方法である。
【0008】
本発明に係る第2の締固め方法は、所定の締固め領域と同じ土質の試験領域にて第1重機の締固め回数と締固めによる表面沈下量との第1直線近似を求め、前記試験領域にて前記第1重機とは異なる種類の第2重機の締固め回数と締固めによる表面沈下量との第2直線近似を求め、前記第1直線近似の相関係数に応じて前記第1重機の第1締固めレベルを決定するとともに、前記第2直線近似の相関係数に応じて前記第2重機の第2締固めレベルを決定する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数種類の重機を用いて、締固め領域が適切な状態となるように締め固めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】締固め管理システムの構成を示す図である。
図2】管理装置と重機用車載器のハードウェア構成を示す図である。
図3】管理装置と重機用車載器の機能ブロック図である。
図4】締固め位置テーブルを示す図である。
図5図5(a)、図5(b)は、ブルドーザAを示す図であり、図5(c)、図5(d)は、振動ローラAを示す図であり、図5(e)、図5(f)は、スクレーパAを示す図である。
図6】締固めレベルテーブルを示す図である。
図7図7(a)~図7(c)は、試験施工の結果の一例を示すグラフである。
図8】管理装置の処理を示すフローチャートである。
図9】画面例を示す図(その1)である。
図10】画面例を示す図(その2)である。
図11】岩塊材料の試験施工の結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態に係る締固め管理システムについて、詳細に説明する。
【0012】
図1には、一実施形態に係る締固め管理システム100の構成が概略的に示されている。図1に示すように、締固め管理システム100は、管理装置10と、複数の重機用車載器(図1では、ブルドーザ用車載器70、振動ローラ用車載器72、スクレーパ用車載器74)と、を備える。管理装置10と、重機用車載器70、72、74との間はインターネットなどのネットワーク80により接続されている。管理装置10は、例えば、盛土施工を行う現場で利用されるPC(Personal Computer)などの情報処理装置である。重機用車載器70、72、74は、重機(ブルドーザ、振動ローラ、スクレーパ等)に搭載される装置である。ブルドーザは、主に土砂のかきおこしや盛土、整地に用いる建設機械であり、振動ローラは、盛土の締固めに用いる建設機械であり、スクレーパは、土を削り取り運搬するために用いる建設機械である。
【0013】
図2には、管理装置10と重機用車載器のハードウェア構成が示されている。図2に示すように、管理装置10は、CPU(Central Processing Unit)90、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)94、記憶部(HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等)96、通信部97、表示部93、入力部95、及び可搬型記憶媒体用ドライブ99等を備えている。表示部93は、液晶ディスプレイ等であり、入力部95は、キーボードやマウス、タッチパネル等である。これら管理装置10の構成各部は、バス98に接続されている。管理装置10では、ROM92あるいは記憶部96に格納されているプログラム、或いは可搬型記憶媒体用ドライブ99が可搬型記憶媒体91から読み取ったプログラムをCPU90が実行することにより、図3に示す各部の機能が実現される。なお、図3の各部の機能は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。なお、図3の各部の詳細については、後述する。
【0014】
ブルドーザ用車載器70は、CPU190、ROM192、RAM194、記憶部(HDDやSSD等)196、通信部197、GNSS装置189、表示部193、及び入力部195等を備えている。GNSS装置189は、ブルドーザの位置情報(三次元座標)を検出する装置である。これらブルドーザ用車載器70の構成各部は、バス198に接続されている。ブルドーザ用車載器70では、ROM192あるいは記憶部196に格納されているプログラムをCPU190が実行することにより、図3に示す各部の機能が実現される。なお、振動ローラ用車載器72、スクレーパ用車載器74のハードウェア構成についても、ブルドーザ用車載器70と同様となっている。
【0015】
図3には、管理装置10、ブルドーザ用車載器70、振動ローラ用車載器72、スクレーパ用車載器74の機能ブロック図が示されている。
【0016】
管理装置10は、CPU90がプログラムを実行することにより、入力情報取得部20、走行軌跡取得部22、締固めレベル更新部24、画面生成・出力部26、として機能する。
【0017】
入力情報取得部20は、作業者が重機用車載器70、72、74のいずれかの入力部195を介して入力した情報を取得する。
【0018】
走行軌跡取得部22は、各重機用車載器70、72、74の位置情報(三次元座標)を取得し、当該位置情報に基づいて、各重機の走行軌跡を取得する。走行軌跡取得部22は、走行軌跡を取得する際に、締固め位置テーブル30を用いる。ここで、締固め位置テーブル30は、各重機の位置情報から、各重機が締め固めを行った箇所(範囲)を特定するために必要な情報を格納するテーブルである。具体的には、締固め位置テーブル30においては、図4に示すように、重機の種類に関連付けて、オフセット(前後方向、左右方向、高さ方向)と、転圧幅の情報が管理されている。
【0019】
図5(a)には、ブルドーザAを後方から見た状態が示されており、図5(b)には、ブルドーザAを上方から見た状態が示されている。ブルドーザAの運転席には、GNSS装置189が設けられている。ここで、GNSS装置189の位置とブルドーザAの無限軌道の位置は一致していない。したがって、締固め位置テーブル30においては、GNSS装置189の中心位置と締固め箇所(無限軌道の後端とする)の位置誤差(オフセット)を管理するとともに、締固め範囲(無限軌道の幅)の情報を、管理している。なお、図5(a)、図5(b)のブルドーザAの場合、締固め箇所は2か所あるため、2つの締固め範囲(幅H1a)の情報が締固め位置テーブル30に格納されている。
【0020】
また、図5(c)には、振動ローラAを側方から見た状態が示されており、図5(d)には、振動ローラAを上方から見た状態が示されている。振動ローラAの運転席には、GNSS装置189が設けられている。この場合も、GNSS装置189の位置と振動ローラAの締固め箇所(ローラの接地位置)とは一致していない。したがって、締固め位置テーブル30においては、GNSS装置189とローラの接地位置の中心位置の位置誤差(オフセット)を管理するとともに、ローラの幅(締固め範囲)の情報を、管理している。なお、GNSS装置189は、ブルドーザAや、振動ローラAの運転席以外に設けてもよい。例えばブルドーザAの場合には、GNSS装置189を排土板などに設けてもよい。
【0021】
図5(e)には、スクレーパAを側方から見た状態が示されており、図5(f)には、後輪とGNSS装置189を後方から見た状態が模式的に示されている。スクレーパAの一部には、GNSS装置189が設けられている。この場合も、GNSS装置189の位置とスクレーパAの締固め箇所(後輪の接地位置とする)は一致していない。したがって、締固め位置テーブル30においては、GNSS装置189と各後輪の接地位置の中心との位置誤差(オフセット)を管理するとともに、各後輪の幅(締固め範囲)の情報を、管理している。なお、図5(e)、図5(f)の場合、締固め範囲は4か所あるため、4つの締固め範囲(幅H3a)の情報が締固め位置テーブル30に格納されている。なお、スクレーパAにおけるGNSS装置189の設置位置は適宜変更してもよい。
【0022】
図3に戻り、締固めレベル更新部24は、盛土施工範囲を多数のブロック(正方形の分割領域)に分割し(図9図10参照)、各ブロックのうち、重機が走行して締め固めたブロックの締固めレベルを、締固めレベルテーブル32に基づいて更新する。ここで、締固めレベルテーブル32は、事前に行われる試験施工により得られるデータを格納するテーブルであり、図6に示すようなデータを管理している。締固めレベルテーブル32の詳細については後述するが、締固めレベル更新部24は、各重機が締固めた位置に対応するブロックの締固めレベルに、締固めレベルテーブル32に格納されている締固めを行った重機の締固めレベルを加算することにより各ブロックの締固めレベルを更新する。なお、本実施形態において、各ブロックの締固めレベルとは、各ブロックの目標の締固め度に対する現在の締固め度の割合のことをいう。また、締固め度とは、試験に用いた試料と同じ土(または路盤材)であるという前提で、盛土時の締固めの程度を示す値であり、RI計器による現場密度試験から乾燥密度を求め、その値が室内締固め試験(JIS A 1210A・B法又はJIS A 1210C・D・E法)で得られた最大乾燥密度の何%に相当するかを示すものである。
【0023】
画面生成・出力部26は、締固めレベル更新部24が更新した各ブロックの締固めレベルを表示する画面を生成し、各重機用車載器70、72、74の表示処理部42に対して送信(出力)する。すなわち、画面生成・出力部26は、生成した画面を重機用車載器70、72、74に送信することで、重機用車載器70、72、74の表示部193に生成した画面を表示させる。
【0024】
ブルドーザ用車載器70、振動ローラ用車載器72、スクレーパ用車載器74は、CPU190がプログラムを実行することにより、位置情報取得部40、表示処理部42、入力処理部44、として機能する。
【0025】
位置情報取得部40は、GNSS装置189から位置情報(三次元座標)を取得し、管理装置10の走行軌跡取得部22に送信する。
【0026】
表示処理部42は、管理装置10の画面生成・出力部26が生成した画面を取得し、表示部193上に表示する。
【0027】
入力処理部44は、作業者が入力部195を介して入力した情報を取得し、管理装置10の入力情報取得部20に送信する。
【0028】
(管理装置10の処理について)
次に、管理装置10の処理について、図8のフローチャートに沿って、その他図面を適宜参照しつつ詳細に説明する。なお、図8の処理が開始される前提として、作業者は、施工仕様(重機の種類ごとの締固め1回による締固めレベル、重機の種類ごとの過転圧レベル)を決定するため、現場を走行する各重機を用いて、盛土の締固めに関する試験施工(転圧試験)を実施しておく。この試験施工は、実際の締固めのときと同一の条件(土質や敷き均し厚さ)で行う。このとき、試験施工を実施するヤード(試験領域)の設定に関しては、試験方法、盛土材料の土質、転圧に使用する機械の寸法等を考慮して、適切な幅と長さで設定する。なお、現場の土質や天候などの条件によっては、過転圧が生じることがないので、過転圧レベルを決定しなくてもよい。
【0029】
試験施工においては、作業者は各重機を運転して、設定したヤード上を繰り返し走行し、締固め回数と締固め度との関係を取得する(図7(a)~図7(c)参照)。
【0030】
ここで、所定の(目標の)締固め度が安定して得られるような締固め回数を規定締固め回数nとする。例えば、所定の締固め度が管理基準値(例えば92%)である場合には、締固め度が管理基準値を超え、それ以上締固めを行っても締固め度がほとんど変化しなくなる締固め回数を規定締固め回数nとする。
【0031】
また、締固め回数0回から規定締固め回数n回までの締固め回数と締固め度との間に近似的に直線関係が認められる場合に、規定締固め回数nにおける締固め度に対して締固めレベル=1.0とする。なお、締固め回数と締固め度との間に近似的に直線関係が認められる場合とは、例えば、直線近似したときの相関係数が基準範囲(0.85以上1.0以下、好ましくは0.9以上1.0以下)に含まれる場合である。このとき、各重機の締固め1回による締固めレベルは、次式(1)を用いて求めることができる。
締固め1回による締固めレベル=1.0/n …(1)
【0032】
図7(a)~図7(c)には、試験施工の結果の一例として、日本国土開発株式会社の北茨城MS(メガソーラ)作業所において行った試験施工の結果が示されている。
【0033】
図7(a)は、試験領域において、土質が粘性土(粘土)である盛土材料を敷き均した後に、振動ローラ(10t級振動ローラ(無振動))を用いて試験施工を行ったときの締固め回数と締固め度との関係を示すグラフである。この図7(a)のグラフからは、管理基準値を超えて締固め度が安定する規定締固め回数nは4回となる。また、締固め回数0回から規定締固め回数n回までの締固め回数と締固め度との間の近似直線(y=2.21x+86.4)は、相関係数Rが0.9261であり、近似的に直線関係が認められる。したがって、締固め1回による締固めレベルは、1.0/4=0.25と求められる。
【0034】
図7(b)は、試験領域において、土質が礫質土である盛土材料を敷き均した後に、振動ローラ(10t級振動ローラ(強振動))を用いて試験施工を行ったときの締固め回数と締固め度との関係を示すグラフである。この図7(b)のグラフからは、管理基準値を超えて締固め度が安定する規定締固め回数nは4回となる。また、締固め回数0回から規定締固め回数n回までの締固め回数と締固め度との間の近似直線(y=3.12x+87.7)は、相関係数Rが0.9712であり、近似的に直線関係が認められる。したがって、締固め1回による締固めレベルは、1.0/4=0.25と求められる。
【0035】
図7(c)は、試験領域において、土質が礫質土である盛土材料を敷き均した後に、スクレーパを用いて試験施工を行ったときの締固め回数と締固め度との関係を示すグラフである。この図7(c)のグラフからは、管理基準値を超えて締固め度が安定する規定締固め回数nは4回となる。また、締固め回数0回から規定締固め回数n回までの締固め回数と締固め度との間の近似直線(y=4.29x+86.0)は、相関係数Rが0.9554であり、近似的に直線関係が認められる。したがって、締固め1回による締固めレベルは、1.0/4=0.25と求められる。
【0036】
なお、管理基準値を超えて締固め度が安定する規定締固め回数nは、作業者が判断してもよいが、機械学習を用いて判断することとしてもよい。後者の場合、情報処理装置に対して、過去の締固め回数と締固め度との関係を示すグラフと、そのグラフから作業者が判断した規定締固め回数nと、を学習データとして入力し、機械学習させることで、新たに得られたグラフから規定締固め回数nを自動的に判断することが可能となる。
【0037】
上述のように、本実施形態においては、実際の締固めのときと同一の条件に設定された試験領域において重機の種類ごとに(第1重機、第2重機…ごとに)締固め回数と締固め度との直線近似(第1直線近似、第2直線近似…)を求め、直線近似の相関係数に応じて各重機の締固めレベルを決定する。これにより、各重機の締固めレベルを精度よく求めることができる。なお、直線近似の相関係数が基準範囲に含まれない重機については、図8の処理(複数種類の重機を用いた締固め)には適さないと判断し、締固めに利用しないようにしてもよい。なお、本実施形態では、直線近似を求める範囲は、重機による試験領域の締固め開始から、締固め回数の増加に応じて締固め度が略直線的に増加する範囲(締固め度が安定するまでの範囲)としている。これにより、相関係数が基準範囲に含まれる可能性の高い範囲で直線近似を行うことができ、各重機の締固めレベルを精度よく求めることができる。
【0038】
また、試験施工においては、過転圧が発生するまでに要した各重機の締固め回数(過転圧回数m)を取得する。そして、過転圧レベルを、次式(2)を用いて、過転圧回数mから算出する。
過転圧レベル=締固め1回による締固めレベル×m …(2)
【0039】
例えば、図6に示すブルドーザAであれば、締固め回数nが10回であったため、締固め1回による締固めレベルは、1.0/10=0.10となる。また、ブルドーザAの過転圧回数mは14回であったため、過転圧レベルは、0.10×14=1.4となる。
【0040】
図8の処理が開始されると、まず、ステップS12において、入力情報取得部20は、作業者が、重機用車載器70、72、74の入力部195や管理装置10の入力部95を介して、盛土施工範囲等を入力するまで待機する。作業者は、例えば、管理装置10の表示部93にマップを表示させた状態で、締固めを行う範囲(締固め領域)の外周ラインを盛土施工範囲として入力する。また、作業者は、現在、現場において利用されている重機の種類(盛土施工範囲を走行する可能性のある重機の種類)を入力する。なお、作業者が入力した重機が、以降の処理において管理装置10によるモニタリング対象となる。また、この段階で、締固めレベル更新部24は、締固めレベルテーブル32(図6)を参照して、作業者が入力した重機の過転圧レベルのうち最も小さい値を、盛土施工範囲の過転圧レベルに設定する。例えば、ブルドーザA、振動ローラA、スクレーパAが入力された場合には、これらの重機の過転圧レベルのうち最も小さい値(1.3)が盛土施工範囲の過転圧レベルとなる。なお、ユーザが入力した重機の情報が締固めレベルテーブル32に含まれていなかった場合には、当該重機についての試験施工が必要である旨を通知してもよい。
【0041】
ステップS12において、作業者から入力があると、ステップS14に移行し、入力情報取得部20は、盛土施工範囲の敷き均し厚さが所定値になるまで待機する。ここで、所定値は、試験施工を行った時の敷き均し厚さと同程度の値である。なお、ステップS14では、入力情報取得部20は、作業者が管理装置10の入力部95やブルドーザ用車載器70の入力部195を介して、敷き均し厚さが所定値になったことを入力するまで待機してもよいし、ステップS12以降において、スクレーパやブルドーザの位置や動作を監視し、機械学習等を利用して、盛土施工範囲の敷き均し厚さが所定値になったことを推定してもよい。
【0042】
ステップS14の判断が肯定されると、ステップS16に移行し、走行軌跡取得部22は、盛土施工範囲の締固め管理を開始する。すなわち、これ以降に盛土施工範囲を重機が走行した場合には、盛土施工範囲内の締固めレベルを更新することとする。なお、この段階では、画面生成・出力部26は、図9に示すような画面を生成し、各重機用車載器70、72、74の表示処理部42に出力している。これにより、各重機用車載器70、72、74の表示部193には、図9の画面が表示される。図9の画面は、盛土施工範囲を多数のブロックに分けて、各ブロックの締固めレベルを色分け表示する画面であるが、この段階では、全ブロックの締固めレベルは0となっている。
【0043】
次いで、ステップS18では、走行軌跡取得部22が、各重機の走行軌跡を取得する。具体的には、走行軌跡取得部22は、各重機用車載器70、72、74の位置情報取得部40から送信されてくる位置情報(三次元座標)及び時刻等の情報を取得する。
【0044】
次いで、ステップS19では、走行軌跡取得部22が、締固めされた箇所を特定する。具体的には、走行軌跡取得部22は、締固め位置テーブル30に格納されている情報に基づいて、取得した重機(GNSS装置189)の位置情報から、締固めされた箇所(ブロック)を特定する。
【0045】
次いで、ステップS20では、締固めレベル更新部24が、盛土施工範囲が締め固められたか否かを判断する。このステップS20の判断が否定された場合には、ステップS18に戻るが、肯定された場合には、ステップS22に移行する。
【0046】
ステップS22に移行すると、締固めレベル更新部24が、締固めを行った重機に対応する締固め1回による締固めレベルで、各重機によって締固めされた箇所(ブロック)の締固めレベルを更新する。例えば、ブルドーザA(締固め1回による締固めレベル=0.1)により、締固めレベル=0のブロックが締固められた場合には、そのブロックの締固めレベルを0+0.1=0.1と更新する。また、例えば、振動ローラA(締固め1回による締固めレベル=0.17)により、締固めレベル=0.5のブロックが締固められた場合には、そのブロックの締固めレベルを0.5+0.17=0.67と更新する。本実施形態においては、締固めのために盛土施工範囲を走行する重機(例えば振動ローラ)だけでなく、盛土施工範囲を通過する重機(例えば、盛土施工範囲を通って、別の箇所まで土砂を運ぶスクレーパやダンプトラックなど)による締固めも締固めレベルに反映させることができる。これにより、各ブロックの締固めレベルを精度よく管理することができる。また、本実施形態においては、締固めが進んでいるか否かを、各ブロックを締固めした各重機の締固め1回による締固めレベルの積算値で表現するため、同一の重機による締固め回数で表現する場合とは異なり、複数種類の重機を用いた締固めを管理することが可能となる。また、1つの盛土施工範囲において、複数種類の重機を同時に走行させても、管理が可能である。このため、複数重機による並行作業により、締固めに要する時間を短縮することができる。また、現場において利用予定のない重機を締固めに転用することができるため、重機の効率的な利用を図ることができる。
【0047】
次いで、ステップS23では、画面生成・出力部26が、更新後の締固めレベルで画面を更新し、更新後の画面を各重機用車載器70、72、74の表示処理部42に出力する。これにより、各重機用車載器70、72、74の表示部193に表示されている画面が更新される。図10には、締固め途中の画面の一例が示されている。図10の画面には、重機の位置も表示されているため、作業者は、自己が運転する重機が盛土施工範囲のどの位置にあり、次にどの範囲を締固めすればよいのかを容易に確認することができる。また、過転圧になりそうな箇所も容易に確認することができるため、作業者は、そのような箇所を走行しないようにすることができる。なお、画面生成・出力部26は、過転圧になりそうな箇所に重機が近づいている場合に、警告を画面や音声から出力するようにしてもよい。
【0048】
次いで、ステップS24では、締固めレベル更新部24が、盛土施工範囲全体の締固めレベルが所定値(例えば、1.0)以上となったか否かを判断する。このステップS24の判断が否定された場合には、ステップS18に戻り、上述したステップS18からステップS24までの処理を繰り返し実行する。一方、ステップS24の判断が肯定されると、ステップS26に移行する。
【0049】
ステップS26に移行すると、画面生成・出力部26は、締固め終了を通知するための画面を生成し、生成した画面を各重機用車載器70、72、74の表示処理部42に出力する。これにより、各重機用車載器70、72、74の表示部193に締固め終了を通知する画面が表示される。作業者は、締固め終了を通知する画面を確認することで、次の盛土施工範囲の締固め作業に移行することができる。
【0050】
以上により、図8の全処理が終了する。
【0051】
以上、詳細に説明したように、本実施形態によると、走行軌跡取得部22が、重機ごとに走行軌跡を取得するとともに、締固め箇所を特定する。そして、締固めレベル更新部24は、重機が盛土施工範囲を走行したときに(S20:肯定)、各重機の締固め1回による締固めレベルを管理する締固めレベルテーブル32に基づいて、締固めレベルを更新する。これにより、盛土施工範囲を複数種類の重機が走行する場合であっても、盛土施工範囲の部分ごと(ブロックごと)に締固めが完了したか否かを適切に判断することができるようになる。したがって、複数種類の重機を用いて、盛土施工範囲を適切な締固めレベルになるように締め固めることができる。また、複数種類の重機を用いることができるため、現場に存在する重機(例えば本来、締固めには用いない重機)を有効利用することができる。更に、1つの盛土施工範囲において、複数台の重機(同一種類、異なる種類を問わない)を同時に走行させることができるため、締固めに要する時間を短縮することができる。
【0052】
また、本実施形態では、画面生成・出力部26は、盛土施工範囲を分割した多数のブロック毎に締固めレベルを表示するため、重機を操作する作業者は、盛土施工範囲のどこを走行すべきか又はどこを走行すべきでないかを詳細に確認することができる。
【0053】
また、本実施形態では、図10等の画面において、多数のブロックのうち過転圧になりそうなブロックが識別可能に表示されるので、重機を操作する作業者は、過転圧の箇所を避けて走行することができる。
【0054】
また、本実施形態では、各重機の締固め1回による締固めレベルを、試験施工において決定するので、実際の締固めの条件と同一の条件下で試験施工を行うことにより、締固め1回による締固めレベルを適切な値とすることができる。この試験施工においては、実際の締固めのときと同一の条件である試験領域において重機の種類ごとに締固め回数と締固め度との直線近似を求め、直線近似の相関係数に応じて各重機の締固めレベルを決定する。これにより、各重機の締固めレベルを精度よく求めることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、重機の走行軌跡に応じて、盛土施工範囲の締固めレベルを更新し、画面表示する場合について説明したが、これに限らず、盛土施工範囲に隣接する領域(隣接領域)の締固めレベルについても更新し、画面表示してもよい。例えば、盛土施工範囲の隣接領域が、締固めが完了した領域である場合には、重機が更に走行することで過転圧になるおそれがあるため、締固めが完了した隣接領域の締固めレベルを締固め後も管理し、画面表示することで、作業者は、過転圧になりそうな箇所を避けて走行することができる。
【0056】
なお、上記実施形態では、重機用車載器70、72、74のみならず、管理装置10もGNSS装置を有していてもよい。この場合、管理装置10のGNSS装置から得られる位置情報に基づいて、重機用車載器70、72、74の位置情報を補正するようにしてもよい。なお、重機用車載器70、72、74の位置情報を取得する装置は、GNSS装置189でなくてもよい。例えば、Wi-Fiなどを用いて、重機用車載器70、72、74と管理装置10の位置関係を把握し、当該位置関係と管理装置10のGNSS装置から得られる位置情報(三次元座標)とから、重機用車載器70、72、74の位置を検出するようにしてもよい。
【0057】
なお、上記実施形態では、作業者が表示部193を確認しながら重機を運転する場合について説明したが、これに限らず、盛土施工範囲の各ブロックの締固めレベルに基づいて、重機の少なくとも一部を自動運転制御するようにしてもよい。また、盛土材の土質によっては、締固め度の他に、盛土材の飽和度、盛土材の空気間隙率といった物性で締固めレベルを管理してもよい。
【0058】
(変形例)
なお、上記実施形態では、盛土材料が締固め度で管理できるような土質である場合の例について説明した。しかしながら、盛土材料としては、岩塊材料のように締固め度で管理できないような土質が利用される場合もある。
【0059】
以下、盛土材料として岩塊材料を利用する場合の締固め方法について説明する。
【0060】
締固め度で管理できない岩塊材料の場合、実際に締固めを行う現場と同じ土質の試験領域において、重機の種類毎に試験施工を行い、締固め回数と締固めによる表面沈下量の関係を得る。例えば、図11に示すような締固め回数と表面沈下量との関係を示すグラフが得られる。ここで、上記非特許文献1(「TS・GNSSを用いた盛土の締固め管理要領」国土交通省 令和2年3月 P25)に記載されているように、岩塊材料の場合、規定締固め回数nは、表面沈下量の変曲点(沈下量が収束した点付近)に対応する締固め回数とするのが一般的である。
【0061】
したがって、本変形例では、締固め開始から表面沈下量の変曲点に対応する締固め回数(規定締固め回数n)までの間における、締固め回数と表面沈下量との関係を直線近似する。そして、締固め回数0回から規定締固め回数n回までの締固め回数と表面沈下量との間に近似的に直線関係が認められる場合、すなわち直線近似の相関係数が基準範囲(0.85以上1.0以下、好ましくは0.9以上1.0以下)に含まれる場合に、規定締固め回数nにおける締固め度に対して締固めレベル=1.0とする。このとき、各重機の締固め1回による締固めレベルは、上式(1)(締固め1回による締固めレベル=1.0/n)を用いて求めることができる。
【0062】
例えば、図11のグラフの場合には、変曲点に対応する締固め回数(規定締固め回数n)が8回である。また、締固め回数0回から規定締固め回数8回までの締固め回数と表面沈下量との間の近似直線(y=0.535x)は、相関係数Rが0.9973であり、近似的に直線関係が認められる。したがって、締固め1回による締固めレベルは、1.0/8=0.125と求められる。
【0063】
このように、本変形例においては、実際の締固めのときと同一の条件に設定された試験領域において重機の種類ごと(第1重機、第2重機…)に締固め回数と締固めによる表面沈下量との直線近似(第1直線近似、第2直線近似…)を求め、直線近似の相関係数に応じて各重機の締固め1回による締固めレベルを求める。これにより、締固め度で管理できない土質(岩塊材料等)の盛土材料であっても、各重機の締固め1回による締固めレベルを精度よく求めることができる。したがって、岩塊材料の場合であっても、各重機の締固め1回による締固めレベルを用いて、図8と同様の処理(複数種類の重機を用いた締固め)を行うことができる。なお、岩塊材料の場合には、過転圧が生じることが無いため、過転圧レベルの管理は行わないものとする。
【0064】
なお、図11のグラフの変曲点がどこにあるかについては、作業者が判断してもよいが、機械学習を用いて判断することとしてもよい。後者の場合、情報処理装置に対して、過去のグラフと、そのグラフから作業者が判断した変曲点と、を学習データとして入力し、機械学習させることで、新たに得られたグラフから変曲点を自動的に判断することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態及び本変形例では、図8のステップS14における所定値(本施工の敷き均し厚さ)は次のように設定する。
(a)試験施工における敷き均し厚さを予め測定しておく。
(b)規定締固め回数nにおける表面沈下量から求められる仕上がり厚を測定する。
(c)次式(3)から本施工における敷き均し厚さ(所定値)を設定する。
本施工の敷き均し厚さ
=所定の仕上がり厚×(試験施工の敷き均し厚/試験施工の仕上がり厚)
…(3)
なお、所定の仕上がり厚さは、例えば、築堤の盛土工、路体盛土工であれば30cm以下、路床盛土工であれば20cm以下である。
【0066】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 管理装置
22 走行軌跡取得部
24 締固めレベル更新部
26 画面生成・出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11