(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058302
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230418BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168237
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004411
【氏名又は名称】日揮ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】高木 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真二
(72)【発明者】
【氏名】谷川 圭史
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力価格変動や電力使用量制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプの熱回収効率を改善する制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置1において、取得部11は、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動するヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得する。第1算出部14は、取得された排熱予測情報に基づいて、ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出する。第2算出部15は、取得された電力制約情報に基づいて、ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出する。シフト候補抽出部16は、算出された第1電力消費計画と、算出された第2電力消費計画との比較結果に基づいて、処理に関し、処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得する取得部と、
取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出する第1算出部と、
取得された前記電力制約情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出する第2算出部と、
算出された前記第1電力消費計画と、算出された前記第2電力消費計画との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出するシフト候補抽出部と、
を備える、制御装置。
【請求項2】
前記シフト候補抽出部は、前記第1電力消費計画と、前記第2電力消費計画との差を小さくする前記シフト候補を抽出する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
抽出された前記シフト候補を、ユーザに提示するシフト候補提示部をさらに備える、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記シフト候補提示部は、過去の採用実績に基づいて前記シフト候補に優先順位を設定し、設定された前記優先順位に従って前記シフト候補を前記ユーザに提示する、
請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記シフト候補抽出部は、前記シフト候補をシフトさせたときの効果を算出し、
前記シフト候補提示部は、前記シフト候補とともに算出された前記効果を前記ユーザに提示する、
請求項3または4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記シフト候補抽出部は、前記熱利用設備の稼働情報と、前記排熱予測情報及び前記シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第1機械学習モデルを用いて、前記排熱予測情報を予測及び前記シフト候補を抽出し、
前記シフト候補提示部は、予測された前記排熱予測情報の信頼度が高い時間帯に対応する前記シフト候補を優先して提示する、
請求項3から5のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記取得部は、前記ユーザによる前記シフト候補の決定指示を受け付けた場合、前記シフト候補をシフトさせることにより更新された前記排熱予測情報を取得し、
更新された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプの動作に関する制御を行う運転制御部をさらに備える、
請求項3から6のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記シフト候補抽出部は、前記熱利用設備の稼働情報、前記排熱予測情報、及び前記電力制約情報の少なくとも1つと、前記シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第2機械学習モデルを用いて、前記シフト候補を抽出する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記シフト候補抽出部は、前記熱利用設備の稼働情報、前記排熱予測情報、及び前記電力制約情報の少なくとも1つ、並びに前記シフト候補の過去の採用実績と、前記シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第3機械学習モデルを用いて、前記シフト候補を抽出する、
請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記シフト候補抽出部は、製造スケジュール生成システムから受け取ったスケジュールデータから前記排熱予測情報及び前記電力制約情報の少なくとも一つを算出し、前記ヒートポンプにおける電力コストを下げる、または前記ヒートポンプにおける熱回収効率を改善するシフト候補を抽出及び効果を算出し、更新した前記スケジュールデータを、前記製造スケジュール生成システムに出力する、
請求項1から9のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記電力制約情報は、前記ヒートポンプが利用可能な電力の電力価格または電力量を示す情報である、
請求項1から10のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項12】
熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報を取得する取得部と、
取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された前記入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出するシフト候補抽出部と、
を備える、制御装置。
【請求項13】
コンピュータが、
熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得し、
取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出し、
取得された前記電力制約情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出し、
算出された前記第1電力消費計画と、算出された前記第2電力消費計画との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出する、
制御方法。
【請求項14】
コンピュータが、
熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報を取得し、
取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された前記入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出する、
制御方法。
【請求項15】
コンピュータに、
熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得させ、
取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出させ、
取得された前記電力制約情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出させ、
算出された前記第1電力消費計画と、算出された前記第2電力消費計画との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出させる、
プログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報を取得させ、
取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された前記入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等に熱供給設備を設け、工場内の各種設備に所望の熱エネルギーを供給するシステムが知られている。熱供給設備の熱源としては、例えば、ボイラ、ヒートポンプ等が利用されている。近年では環境への影響を配慮し、低炭素化や、ゼロエミッションを実現可能な熱供給設備の研究が進められている。このため、燃料を用いるボイラの利用頻度を下げ、電力と排熱を利用して熱を発生させるヒートポンプを優先的に利用したいといった要望が生まれつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
社会の電力需給(電力会社により供給される電力価格の変動)に応じてヒートポンプにより使用される電力使用量を調整することにより電力コストを抑えようとした場合に、この電力使用量は社会の電力需給とは独立した工場内の利用可能な排熱の制約を受ける。このため、電力価格の変動に合わせて、ヒートポンプの電力使用量を調整することに制約が生じる。また、工場内の他の電力ユーザの電力消費量増大や工場外からの電力使用量調整要請に応じてヒートポンプの電力使用量を調整する場合に、ヒートポンプにおける熱回収効率が低下することがある。また、ヒートポンプの運転は、汲み上げることが可能な熱量の制約を受けるので、ヒートポンプが効率の良いレンジを維持できるようにヒートポンプの負荷を調整することに制約が生じる。例えば、特許文献1には、ヒートポンプの利用効率を高めるために気象データに基づいて熱需要を予測する技術が開示されているが、ヒートポンプの電力使用量という観点で制御を行うことは考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することが可能な制御装置、制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得する取得部と、取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出する第1算出部と、取得された前記電力制約情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出する第2算出部と、算出された前記第1電力消費計画と、算出された前記第2電力消費計画との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出するシフト候補抽出部と、を備える、制御装置である。
【0007】
本発明の一態様によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0008】
本発明の一態様において、前記シフト候補抽出部は、前記第1電力消費計画と、前記第2電力消費計画との差を小さくする前記シフト候補を抽出してよい。
【0009】
本発明の一態様によれば、電力コストを抑えることが可能なシフト候補を抽出することができる。
【0010】
本発明の一態様は、抽出された前記シフト候補を、ユーザに提示するシフト候補提示部をさらに備えてよい。
【0011】
本発明の一態様によれば、シフト候補のユーザによる確認を可能にすることができる。
【0012】
本発明の一態様において、前記シフト候補提示部は、過去の採用実績に基づいて前記シフト候補に優先順位を設定し、設定された前記優先順位に従って前記シフト候補を前記ユーザに提示してよい。
【0013】
本発明の一態様によれば、採用される可能性が高いシフト候補をユーザに優先的に提示し、ユーザの確認の負荷を軽減することができる。
【0014】
本発明の一態様において、前記シフト候補抽出部は、前記シフト候補をシフトさせたときの効果を算出し、前記シフト候補提示部は、前記シフト候補とともに算出された前記効果を前記ユーザに提示してよい。
【0015】
本発明の一態様によれば、効果を提示することで、ユーザによるシフト候補の決定を支援する情報を提供することができる。
【0016】
本発明の一態様において、前記シフト候補抽出部は、前記熱利用設備の稼働情報と、前記排熱予測情報及び前記シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第1機械学習モデルを用いて、前記排熱予測情報を予測及び前記シフト候補を抽出し、前記シフト候補提示部は、予測された前記排熱予測情報の信頼度が高い時間帯に対応する前記シフト候補を優先して提示してよい。
【0017】
本発明の一態様によれば、ユーザに提示するシフト候補の信頼度を高めることができる。
【0018】
本発明の一態様において、前記取得部は、前記ユーザによる前記シフト候補の決定指示を受け付けた場合、前記シフト候補をシフトさせることにより更新された前記排熱予測情報を取得し、更新された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプの動作に関する制御を行う運転制御部をさらに備えてよい。
【0019】
本発明の一態様によれば、ユーザにシフト候補を選択する自由度を与えた上で、ヒートポンプの熱回収効率を改善することができる。
【0020】
本発明の一態様において、前記シフト候補抽出部は、前記熱利用設備の稼働情報、前記排熱予測情報、及び前記電力制約情報の少なくとも1つと、前記シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第2機械学習モデルを用いて、前記シフト候補を抽出してよい。
【0021】
本発明の一態様によれば、シフト候補の抽出の精度を高めることができる。
【0022】
本発明の一態様において、前記シフト候補抽出部は、前記熱利用設備の稼働情報、前記排熱予測情報、及び前記電力制約情報の少なくとも1つ、並びに前記シフト候補の過去の採用実績と、前記シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第3機械学習モデルを用いて、前記シフト候補を抽出してよい。
【0023】
本発明の一態様によれば、シフト候補の抽出の精度を高めることができる。
【0024】
本発明の一態様において、前記シフト候補抽出部は、製造スケジュール生成システムから受け取ったスケジュールデータから前記排熱予測情報及び前記電力制約情報の少なくとも一つを算出し、前記ヒートポンプにおける電力コストを下げる、または前記ヒートポンプにおける熱回収効率を改善するシフト候補を抽出及び効果を算出し、更新した前記スケジュールデータを、前記製造スケジュール生成システムに出力してよい。
【0025】
本発明の一態様によれば、製造スケジュール生成システムから受け取ったスケジュールデータに対しても、シフト候補の抽出機能を提供することができる。
【0026】
本発明の一態様において、前記電力制約情報は、前記ヒートポンプが利用可能な電力の電力価格または電力量を示す情報であってよい。
【0027】
本発明の一態様によれば、ヒートポンプが使用可能な電力量の制約を考慮した上で、シフト候補を抽出することができる。
【0028】
本発明の他の態様は、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報を取得する取得部と、取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された前記入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出するシフト候補抽出部と、を備える、制御装置である。
【0029】
本発明の他の態様によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0030】
本発明の他の態様は、コンピュータが、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得し、取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出し、取得された前記電力制約情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出し、算出された前記第1電力消費計画と、算出された前記第2電力消費計画との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出する、制御方法である。
【0031】
本発明の他の態様によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0032】
本発明の他の態様は、コンピュータが、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報を取得し、取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された前記入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出する、制御方法である。
【0033】
本発明の他の態様によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0034】
本発明の他の態様は、コンピュータに、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得させ、取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第1電力消費計画を算出させ、取得された前記電力制約情報に基づいて、前記ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出させ、算出された前記第1電力消費計画と、算出された前記第2電力消費計画との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出させる、プログラムである。
【0035】
本発明の他の態様によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0036】
本発明の他の態様は、コンピュータに、熱利用設備における処理に伴って出力されヒートポンプに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報を取得させ、取得された前記排熱予測情報に基づいて、前記ヒートポンプにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された前記入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、前記処理に関し、前記処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出させる、プログラムである。
【0037】
本発明の他の態様によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】実施形態に係る制御装置1の使用環境の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る熱源系210の構成の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る制御装置1の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】実施形態に係る排熱制約と電力制約との比較に基づく第1制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態に係る第1電力消費計画P
q(t)と第2電力消費計画P
p(t)との比較結果の一例を示すである。
【
図6】実施形態に係るシフト候補履歴情報Dの一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係るシフト候補提示画面P1の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係るシフト後の第1電力消費計画P
q(t)の一例を示すである。
【
図9】実施形態に係るヒートポンプ入熱制約に基づく第2制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態に係るHP入熱計画の一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係るシフト後のHP入熱計画の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る制御装置、制御方法、及びプログラムについて説明する。
【0041】
実施形態に係る制御装置は、例えば、工場等に設けられた各種設備から出力される排熱の予測情報に基づいて、ヒートポンプによる電力消費計画が最適化されるように各種設備の稼働スケジュールの調整を行う。これにより、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0042】
[全体構成]
図1は、実施形態に係る制御装置1の使用環境の一例を示す図である。制御装置1は、例えば、熱エネルギーを利用する任意の設備で使用される。この設備には、例えば、製品の生産、製造、点検、整備等を行う工場が含まれる。
図1では、製品を製造する工場Fを例に挙げて説明する。制御装置1は、工場F内に位置するコンピュータであってもよいし、工場Fとは離れた場所に位置しネットワーク(例えば、WAN(Wide Area Network)やLAN(Local Area Network)、インターネット、専用回線等)を介して工場F内の各種機器と通信を行うコンピュータであってもよい。制御装置1は、工場F内または工場F外に設置される据置型のコンピュータであってもよいし、ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン等の可搬型のコンピュータであってもよい。
【0043】
工場Fには、例えば、熱供給源100と、熱供給ユーティリティ200と、熱利用設備300とが設けられる。熱供給源100は、熱利用設備300に対して供給する熱を生成する。熱供給源100は、例えば、ボイラBと、ヒートポンプHPとを備える。ボイラBは、例えば、燃料及び水を用いて、熱(温水や蒸気)を生成する。ボイラBは、例えば、ガスボイラである。ヒートポンプHPは、電力会社から供給される電力や再生可能エネルギーから生成される電力と、熱利用設備300から出力される排熱とを用いて、熱(温水や蒸気)を生成する。
【0044】
熱供給ユーティリティ200は、熱供給源100と、熱利用設備300との間に設けられる各種処理を行う機器群である。熱供給ユーティリティ200は、例えば、熱源系210と、加熱系220と、変換装置230とを備える。熱源系210は、熱利用設備300から出力されてヒートポンプHPに入力される排熱を一定期間保持するための機器を含む。
【0045】
図2は、実施形態に係る熱源系210の構成の一例を示す図である。熱源系210は、例えば、タンクTaと、ポンプPと、バルブVaとを備える。タンクTaは、バッファとして熱利用設備300から出力された排熱(温水等)を蓄える。タンクTaは、ボイラBにより生成された供給熱の一部を蓄えるようにしてもよい。ポンプPは、タンクTaに蓄えられた排熱を汲み上げてヒートポンプHPに供給する。バルブVaは、熱源系210に保持される熱の一部を外部に出力する(水処理設備に出力或いは排水として出力)。
【0046】
図1に戻り、加熱系220は、ヒートポンプHPにより生成されて熱利用設備300に供給される熱(以下「供給熱」と呼ぶ)を一定期間保持するための機器を含んでもよい。
【0047】
変換装置230は、熱供給源100により生成された供給熱を、熱利用設備300の要求に応じた温度及び状態(液体、気体)に変換して、熱利用設備300に供給する。
【0048】
熱利用設備300は、熱供給ユーティリティ200から供給された供給熱を利用する機器群である。熱利用設備300は、供給熱を利用する機器として、例えば、第1熱ユーザU1、第2熱ユーザU2、及び第3熱ユーザU3を備える。これらの熱ユーザU1-U3の各々は、例えば、供給熱を利用して製品製造を行う際に利用される。これらの熱ユーザU1-U3の各々は、例えば、製品製造の工程において、供給熱を利用して材料を加熱する加熱器、供給熱を利用して材料の乾燥を行う乾燥機等である。これらの熱ユーザU1-U3の各々は、例えば、工場F内の所定の空間の温度調整を行う空調装置等であってもよい。尚、
図1では3つの熱ユーザを示しているが、熱ユーザの数は任意である。また、工場F内には、熱ユーザU1―U3以外に他の熱ユーザが存在してもよく、その他の熱ユーザからの排熱は必ずしも熱源系210に入力されなくてもよい。尚、熱利用設備300は、図示されていない燃焼設備から出力される排ガスから熱を回収して利用する設備であってもよい。
【0049】
熱ユーザU1-U3の各々は、その稼働に伴って内部で発生した熱を、排熱として出力する。熱ユーザU1-U3の各々から出力される排熱は、熱源系210に入力されて、ヒートポンプHPにおける熱生成処理に利用される。また、熱利用設備300が、燃焼設備から出力される排ガスから熱を回収して利用する設備である場合、上記排熱は、この設備で生成される温水であってもよい。
【0050】
[制御装置]
図3は、実施形態に係る制御装置1の構成の一例を示す機能ブロック図である。制御装置1は、例えば、制御部10と、入力インタフェース20と、表示部30と、記憶部40と、通信部50とを備える。制御部10は、例えば、取得部11と、シミュレーション部13と、第1算出部14と、第2算出部15と、シフト候補抽出部16と、シフト候補提示部17と、運転制御部18と、表示制御部19とを備える。取得部11は、例えば、排熱予測部12を備える。制御装置1は、熱利用設備300から出力される排熱をヒートポンプHPに入力する熱源系210の制御を行う。
【0051】
制御部10の各機能部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサが、記憶部40に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。また、制御部10の各機能部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。また、上記のプログラムは、予め記憶部40に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、この記憶媒体が制御装置1のドライブ装置に装着されることで記憶部40にインストールされてもよい。
【0052】
取得部11は、熱利用設備300により出力される排熱を予測するための各種情報を取得する。取得部11は、例えば、熱利用設備300における熱ユーザU1-U3の各々の稼働情報を取得する。稼働情報とは、例えば、熱ユーザU1-U3の各々に備えられる熱利用機器(排熱を出力する機器)のオンオフ情報、排熱用のバルブの開け閉めの情報、熱ユーザU1-U3の稼働スケジュール情報等である。取得部11の排熱予測部12は、取得した稼働情報に基づいて、一定期間後(例えば、3時間後)までの熱ユーザU1-U3の各々により出力される排熱を予測し、排熱の予測情報(以下、「排熱予測情報」と呼ぶ)を取得する。
【0053】
排熱予測部12は、排熱予測情報として、例えば、第1熱ユーザU1から出力される排熱の熱量Q
in_1、温度T
in_1、及び流量F
in_1、第2熱ユーザU2から出力される排熱の熱量Q
in_2、温度T
in_2、及び流量F
in_2、第3熱ユーザU3から出力される排熱の熱量Q
in_3、温度T
in_3、及び流量F
in_3を予測する。また、排熱予測部12は、排熱予測情報として、例えば、熱ユーザU1-U3の各々から出力される排熱を合算した排熱の熱量Q
in、温度T
in、及び流量F
inを予測する(
図2参照)。尚、排熱予測部12は、熱ユーザU1-U3の各々の稼働情報(入力データ)と、排熱の予測値(出力データ)との関係を機械学習することにより生成された機械学習モデル1を用いることで、排熱予測情報を取得するようにしてもよい。
【0054】
或いは、取得部11は、熱利用設備300における熱ユーザU1-U3の各々から、排熱予測情報を取得してもよい。取得部11は、熱利用設備300における熱ユーザU1-U3の排熱予測情報を、外部装置から取得してもよい。この場合、取得部11は、排熱予測部12を備えなくてもよい。
【0055】
また、取得部11は、電力会社から提供される電力の価格情報(以下、「電力価格情報」と呼ぶ)を取得する。例えば、取得部11は、電力会社や、外部の電力価格情報(電力価格予測情報)を提供する会社から、電力価格情報を取得する。この電力価格情報は、例えば、時間帯ごとの電力の単価情報を含む(例えば、1kWあたりの価格情報)。
【0056】
また、取得部11は、ヒートポンプHPが使用する電力量制約(以下、「電力量制約情報」と呼ぶ)を取得してもよい。例えば、工場Fには、工場全体で利用可能な電力の上限(瞬時値、所定期間における合計値)に制限が設けられている場合がある。この場合、電力量制約情報は、工場全体で利用可能な電力の上限から工場F内の電力ユーザの電力消費予測を減算することで、ヒートポンプHPの電力量制約を算出する。または電力量制約情報は外部装置により当該ヒートポンプHPが消費する電力を指定されるものを含む。取得部11は、例えば、工場F内の電力ユーザの各々の稼働情報を取得する。或いは、取得部11は、電力ユーザの各々から、使用される電力量のスケジュール情報を取得してもよい。取得部11は、電力ユーザの各々の電力消費予測を、外部装置から取得してもよい。
【0057】
また、取得部11は、熱源系210に入力される排熱の温度Tin及び流量Finの実測値、熱源系210からヒートポンプHPに入力される排熱の温度T1及び流量F1の実測値、熱源系210から外部に出力される排熱の流量Foutの実測値等を取得してもよい。
【0058】
取得部11は、「取得部」の一例である。すなわち、取得部11は、熱利用設備300における処理に伴って出力されヒートポンプHPに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動するヒートポンプHPが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得する。電力価格情報および電力量制約情報の各々は、「電力制約情報」の一例である。
【0059】
シミュレーション部13は、排熱予測情報に基づいて、熱源系210の動作をシミュレーションし、一定期間後(例えば、3時間後)までの熱源系210の運転パラメータを算出する。運転パラメータは、例えば、熱保持量Qinv(t)、ヒートポンプHPに入力される排熱の温度T1(t)(以下、「熱源入口温度」と呼ぶ)、ヒートポンプHPに入力される排熱の流量F1(t)(以下、「熱源入口流量」と呼ぶ)、ヒートポンプHPにより汲み上げられる熱量Qhp(t)(以下、「HP入熱」と呼ぶ)、熱源系210から外部に排出される排熱量(流量Fout)等を含む。シミュレーション部13は、例えば、熱源系210の機器構成に基づいて準備された物理モデル(シミュレーションモデル)を用いることで、上記の運転パラメータを算出する。或いは、シミュレーション部13は、排熱予測情報(入力データ)と、運転パラメータ(出力データ)との関係を機械学習することにより生成された機械学習モデル2Aを用いることで、上記の運転パラメータを算出してもよい。
【0060】
第1算出部14は、排熱予測情報に基づいて算出された運転パラメータを用いてヒートポンプHPを動作させた場合に、ヒートポンプHPにより消費される電力の計画(以下、「第1電力消費計画Pq(t)」と呼ぶ)を算出する。第1算出部14は、「第1算出部」の一例である。すなわち、第1算出部14は、取得された排熱予測情報に基づいて、ヒートポンプHPにより消費される電力の第1電力消費計画Pq(t)を算出する。第1算出部14の処理の詳細については後述する。
【0061】
第2算出部15は、電力価格情報に基づいて、電力コストが可能な限り低くなるように(最適化されるように)ヒートポンプHPを動作させた場合に、ヒートポンプHPにより消費される電力の計画(以下、「第2電力消費計画Pp(t)」と呼ぶ)を算出する。第2算出部15は、「第2算出部」の一例である。すなわち、第2算出部15は、取得された電力制約情報に基づいて、ヒートポンプにより消費される電力の第2電力消費計画を算出する。第2算出部15の処理の詳細については後述する。
【0062】
シフト候補抽出部16は、第1電力消費計画Pq(t)と、第2電力消費計画Pp(t)との差を小さくする少なくとも1つのシフト候補を抽出する。シフト候補とは、熱利用設備300の熱ユーザの各々によって実施される熱消費処理(熱需要処理)のうち、処理の実施のタイミングをずらす(排熱のタイミングをずらす)または処理の量を変更する(排熱の量を変化させる)候補となる処理を言う。シフト候補抽出部16は、「シフト候補抽出部」の一例である。すなわち、シフト候補抽出部16は、算出された第1電力消費計画Pq(t)と、算出された第2電力消費計画Pp(t)との比較結果に基づいて、処理に関し、処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出する。
【0063】
シフト候補抽出部16は、熱利用設備300の稼働情報、排熱予測情報、電力制約情報、シフト候補の過去の採用実績の少なくとも1つと、シフト候補との関係を機械学習することにより生成された機械学習モデル3(機械学習モデル3A、3B、3Cの少なくとも1つ)を用いて、シフト候補を抽出してもよい。シフト候補抽出部16は、排熱予測情報及びシフト候補の過去の採用実績と、シフト候補との関係を機械学習することにより生成された機械学習モデル3を用いて、シフト候補を抽出してもよい。シフト候補抽出部16は、取得された排熱予測情報に基づいて、ヒートポンプHPにより汲み上げられる熱量の入熱計画を算出し、算出された入熱計画と、予め定められた閾値との比較結果に基づいて、処理に関し、処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出してもよい。シフト候補抽出部16の処理の詳細については後述する。
【0064】
シフト候補提示部17は、シフト候補抽出部16により抽出されたシフト候補を、ユーザに提示する。ユーザとは、例えば、シフト候補の提示を受け、シフト候補を承認するか否か(処理の実施のタイミングをシフトするか否か)を判定する権限を有する者をいう。
図1に示すように、ユーザは、工場Fの管理室に在席している管理者M、熱利用設備300に対して現場作業を行うオペレータFO1、FO2等を含む。シフト候補提示部17は、通信部50を介して、管理者Mが使用する端末装置(コンピュータA1)に対して、シフト候補の情報を送信する。シフト候補提示部17は、通信部50を介して、オペレータFO1及びF2が使用する端末装置(タブレット端末A2及びA3)に対して、シフト候補の情報を送信する。シフト候補提示部17は、「シフト候補提示部」の一例である。
【0065】
運転制御部18は、熱源系210の動作を制御する。運転制御部18は、例えば、バルブVa(
図2参照)の開度を変更することで、熱源系210から外部に排出される排熱量(流量F
out)を調整し、熱源系210の熱保持量Q
inv(t)を制御する。また、運転制御部18は、例えば、HP入熱Q
hpの設定を変更することで、熱源系210の熱保持量Q
inv(t)を制御する。また、運転制御部18は、例えば、ヒートポンプHPに入力される排熱の熱源入口流量F
1を変更することで、熱源系210の熱保持量Q
inv(t)を制御する。その他、運転制御部18は、例えば、タンクTaの液面の高さを変更することで、熱源系210の熱保持量Q
inv(t)を制御する。運転制御部18は、「運転制御部」の一例である。運転制御部18は、ヒートポンプHPの動作に関する制御を行う。
【0066】
運転制御部18は、運転パラメータの少なくとも1つ(入力データ)と、各種制御値(バルブVaの開度、HP入熱Qhpの設定等)(出力データ)との関係を機械学習することにより生成された機械学習モデル2Bを用いることで、熱源系210の動作を制御してもよい。
【0067】
運転制御部18は、熱源系210から外部に排出される排熱の温度が高い場合には、排熱量(流量Fout)を減らし、熱源系210の熱保持量Qinv(t)を増やす。運転制御部18は、熱源入口温度T1(t)と熱源系210のQinv(t)の時系列データを用いて、ヒートポンプHPによる熱回収が最大になるように排熱量(流量Fout)を調整する。
【0068】
また、運転制御部18は、電力価格のガス価格に対する比率が一定値より小さい場合に、ヒートポンプHPの負荷を上げたいが、排熱が不足するためヒートポンプHPの負荷を上げることができないことがあり得る。このような場合、排熱予測情報及び電力価格の予測データを用いて、不足する排熱を算出し、ボイラB等からその熱を熱源系210へ補充する。
【0069】
表示制御部19は、表示部30に表示させる表示内容を制御する。表示制御部19は、表示部30に、例えば、排熱予測情報、熱源系210の各運転パラメータ等の情報を、表示部30に表示させる。
【0070】
入力インタフェース20は、制御装置1の操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して制御部10に出力する。例えば、入力インタフェース20は、マウス、キーボード、タッチパネル等を含む。入力インタフェース20がタッチパネルである場合、入力インタフェース20は、表示部30の表示機能を兼ね備えるものであってもよい。
【0071】
表示部30は、各種情報を表示する。表示部30は、例えば、制御部10によって生成された処理結果を示す画像や、操作者からの各種の入力操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。表示部30は、例えば、ディスプレイ、タッチパネル等である。
【0072】
記憶部40は、制御部10の各種処理に必要な情報や、制御部10の処理結果等を記憶する。記憶部40は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等である。記憶部40は、NASや外部のストレージサーバ等、制御装置1がアクセス可能な外部装置であってもよい。記憶部40は、例えば、シフト候補履歴情報D、各種モデル(シミュレーションモデルM1、機械学習モデルM2)を記憶する。
【0073】
通信部50は、ネットワークNWにアクセスするためのネットワークカードなどの通信インタフェースである。ネットワークNWは、例えば、WANやLAN、インターネット、専用回線等を含む。通信部50は、ネットワークNWを介して、管理者Mが使用する端末装置(パーソナルコンピュータA1)、オペレータFO1及びF2が使用する端末装置(タブレット端末A2及びA3)等と通信を行う。
【0074】
[処理フロー]
次に、制御装置1の処理フローについて説明する。まず、排熱制約と電力制約との比較に基づく第1制御処理について説明し、その後、ヒートポンプ入熱制約に基づく第2制御処理について説明する。第1制御処理及び第2制御処理は、何れか一方の処理のみが実行されてもよいし、両方が並行して実行されてもよい。第1制御処理及び第2制御処理は、例えば、所定の時間間隔で実行される。
【0075】
(第1制御処理)
図4は、実施形態に係る排熱制約と電力制約との比較に基づく第1制御処理の一例を示すフローチャートである。ヒートポンプHPの電力使用量は、社会の電力需給(電力価格変動)と独立した工場F内の利用可能な排熱の制約を受けるので、電力価格変動に合わせてヒートポンプHPの電力使用量を調整することに制約が生じる。このため、排熱の制約を受けるヒートポンプHPの運転点をより目標とする指標(電力価格予想に基づき計算された電力コスト)が向上する運転点へ近づけるために、工場F内の熱ユーザに対して、熱を利用する処理の実施のタイミングや処理量(熱需要)をシフトする候補(シフト候補)を立案し、その効果と合わせて、ユーザ(管理者やオペレータ)へ自動的に提示する。
【0076】
まず、制御部10の取得部11は、熱利用設備300により出力される排熱の排熱予測情報を取得する(ステップS101)。取得部11は、例えば、熱利用設備300における熱ユーザU1-U3の各々の稼働情報を取得し、取得したこれらの稼働情報に基づいて、排熱を予測することで、排熱予測情報を取得する。或いは、取得部11は、熱ユーザU1-U3の各々から、排熱予測情報を取得してもよい。
【0077】
次に、制御部10のシミュレーション部13は、取得した排熱予測情報に基づいて、熱源系210の動作をシミュレーションし、熱源系210の運転パラメータを算出する(ステップS103)。ここで算出される運転パラメータは、所定時間後(例えば、3時間後)までの時間変化を示すものである。
【0078】
次に、制御部10の第1算出部14は、排熱予測情報に基づいて算出された運転パラメータを用いてヒートポンプHPを動作させた場合に、ヒートポンプHPにより消費される電力の第1電力消費計画Pq(t)を算出する(ステップS105)。この第1電力消費計画Pq(t)は、排熱の制約に基づいて算出された電力消費計画と言える。例えば、第1算出部14は、h時間後までの第1電力消費計画Pq(t)を算出する。
【0079】
次に、制御部10の第2算出部15は、電力価格情報に基づいて、必要となる電力価格の合計が可能な限り低くなるようにヒートポンプHPを動作させた場合に、ヒートポンプHPにより消費される電力の第2電力消費計画Pp(t)を算出する(ステップS107)。この第2電力消費計画Pp(t)は、電力価格の制約に基づいて算出された電力消費計画と言える。例えば、第2算出部15は、h時間後までの第2電力消費計画Pp(t)を算出する。この場合、h時間後まので第1電力消費計画Pq(t)の電力消費の総量と、h時間後までの第2電力消費計画Pp(t)の電力消費の総量とが等しくなるように算出される。すなわち、第1電力消費計画Pq(t)と、第2電力消費計画Pp(t)とは、以下の式1を満たすように算出される。
【0080】
【0081】
図5は、実施形態に係る第1電力消費計画P
q(t)と第2電力消費計画P
p(t)との比較結果の一例を示すである。
図5(a)に示す第1電力消費計画P
q(t)(排熱制約)では、消費電力が、時間t0~t1は高く、時間t1~t3は低く、時間t3以降は再び高くなる例を示している。この消費電力の時間変化は、排熱量の時間変化と連動している。すなわち、消費電力が高い時間t0~t1は、熱利用設備300からの排熱量が多く、この排熱を効率的に利用するためにヒートポンプHPを高負荷で動作させることを示している。
【0082】
一方、
図5(b)に示す第2電力消費計画P
p(t)(電力制約)では、消費電力が、時間t0~t1は低く、時間t1~t2は高く、時間t2以降は再び低くなる例を示している。この消費電力の時間変化は、電力価格の時間変化と連動している。すなわち、例えば、消費電力が低い時間t0~t1は、電力価格が高く、電力コストが可能な限り低くなるように最適化された結果、ヒートポンプHPを低負荷で動作させることを示している。
【0083】
尚、第2算出部15は、取得部11により取得された電力量制約情報を適用して、一定期間後までのヒートポンプHPが利用することが可能な電力量の制約値(以下、「電力量制約」と呼ぶ)を予測し、この電力量制約から第2電力消費計画Pp(t)を算出してもよい。
【0084】
図4に戻り、制御部10のシフト候補抽出部16は、第1電力消費計画P
q(t)と、第2電力消費計画P
p(t)との差が少なくなるように、少なくとも1つのシフト候補を抽出する(ステップS109)。例えば、
図5に示す例では、第1電力消費計画P
q(t)(排熱制約)において時間t0~t1の消費電力が高く、一方、第2電力消費計画P
p(t)(電力制約)において時間t0~t1の消費電力が低くなっており、両者の差が大きい。シフト候補抽出部16は、例えば、このような両者の差が大きい時間帯に着目し、シフト候補を抽出する。
【0085】
例えば、シフト候補抽出部16は、取得部11により取得された熱ユーザU1-U3の各々の稼働情報及び/または排熱予測情報に基づいてこの時間t0~t1の間に実行される処理を推定し、推定された処理をシフト候補として抽出する。この時間t0~t1の間に実行される処理の実行タイミングを、この時間t0~t1の前後にシフトさせることができれば、第1電力消費計画Pq(t)(排熱制約)において時間t0~t1の電力コストを低下させることができる。
【0086】
シフト候補またはシフト候補の組み合わせが複数存在する場合には、記憶部40に記憶されたシフト候補履歴情報Dを参照して、過去に採用された実績の多い処理を優先的に抽出するようにしてもよい。
図6は、実施形態に係るシフト候補履歴情報Dの一例を示す図である。
図6に示すシフト候補履歴情報Dでは、「熱ユーザ名」、「処理名」、「シフトによる効果」、及び「シフト実績」の欄を含む。「シフトによる効果」は、過去にシフト候補となり実際に実施タイミングのシフトが行われたときの効果の実績値(平均値等)を示している。「シフト実績」は、過去にシフト候補となり実際に実施タイミングのシフトが行われた頻度(確率)を示している。この例では、「シフト実績」の高い処理が優先的に抽出されるようにしてよい。
【0087】
また、シフト候補抽出部16は、機械学習により生成された機械学習モデル3A(「第2機械学習モデル」の一例)を用いて、シフト候補を抽出するようにしてもよい。各熱ユーザの稼働情報や排熱予測情報や電力価格予測を入力として、機械学習によりシフト候補とその効果を推論してよい。教師データを生成するために、一定期間排熱予測情報などの入力値に対する熟練運転員のシフト実績を記録し、それを用いて機械学習モデル3Aを構築しても良いが、教師データに含まれないパターンの入力データに対してシフト候補の教師データを追加する必要がある。例えば、この教師データをシミュレーション部13に入力し、シフトによる効果が不足している入力パターンを提示する機能を有する。熟練運転員がこれを確認し、シフト候補を追加して、教師データを補強してもよい。
【0088】
また、シフト候補またはシフト候補の組み合わせが複数存在する場合には、優先的に計算するケースを抽出する必要がある。この場合、過去のシフト採否実績データ(「シフト実績」)をこの優先順位付けで使用する場合に、シフト実績の採否判断を数式で再現することが難しいことがある。このような場合に、シフト実績を機械学習モデル3Aの入力データに加えた機械学習モデル3B(「第3機械学習モデル」の一例)を用い、採用の見込まれるシフト候補を優先的に抽出するようにしてもよい。シフト実績のデータが少ない入力パターンを熟練運転員に提示し、シフト候補の採否データを追加することにより、教師データを補強しても良い。また、排熱予測情報などの入力値を機械学習で求める場合、その精度(信頼性)にばらつきが生じうる。このため、この信頼性が高い時間で、且つ上記の「シフト実績」の高い処理が優先的に抽出されるようにしてよい。
【0089】
すなわち、シフト候補抽出部16は、熱利用設備300の稼働情報、排熱予測情報、及び電力制約情報の少なくとも1つと、シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第2機械学習モデルを用いて、シフト候補を抽出してよい。また、シフト候補抽出部16は、熱利用設備300の稼働情報、排熱予測情報、及び電力制約情報の少なくとも1つ、並びにシフト候補の過去の採用実績と、シフト候補との関係を機械学習することにより生成された第3機械学習モデルを用いて、シフト候補を抽出してよい。
【0090】
図4に戻り、シフト候補抽出部16は、抽出したシフト候補の各々について、シフトによる効果を算出する(ステップS111)。例えば、シフト候補抽出部16は、抽出したシフト候補による消費電力と、電力価格情報とに基づいて、コスト効果を算出する。例えば、シフト前の時間帯の電力価格の単価が10円/kWhであり、シフト後の時間帯の電力価格の単価が8円/kWhであり、シフト候補の消費電力が50kWであれば、50(10-8)=100円が効果として算出される。
【0091】
次に、制御部10のシフト候補提示部17は、抽出されたシフト候補を、ユーザに提示する(ステップS113)。
図7は、実施形態に係るシフト候補提示画面P1の一例を示す図である。
図7に示す例では、3つのシフト候補(候補No.1~3)が提示されている。各シフト候補について、「熱ユーザ名」、「処理名」、「シフト先」、「シフトによる効果」、「シフト可否」が示されている。「シフト先」は、実施タイミングのシフト先の時間帯を示している。「シフトによる効果」は、シフト候補抽出部16により算出された効果、または
図6に示すシフト候補履歴情報Dから抽出されたシフトによる効果が示されている。「シフト可否」は、各シフト候補の実施タイミングまたは処理量のシフト可否に関するユーザの指示を受け付ける(例えば、「可」「不可」のラジオボタン)。ユーザは、このシフト候補提示画面P1を参照し、「シフト可否」の指示を入力して、「シフト対象の決定」ボタンを押下することで、シフト対象を決定することができる。尚、シフト候補の実施タイミングまたは処理量をシフトするのではなく、実施をキャンセルするような指示を受け付けるようにしてもよい。シフト候補提示部17は、過去の採用実績に基づいてシフト候補に優先順位を設定し、設定された優先順位に従ってシフト候補をユーザに提示してもよい。
【0092】
シフト候補提示部17により提示されたシフト候補のシフトがユーザにより承認された場合(ステップS115;YES)、取得部11は、シフト候補がシフト先にシフトされた条件下で、再度、排熱予測情報を取得し、さらに、シミュレーション部13は、取得した排熱予測情報に基づいて、熱源系210の動作をシミュレーションし、熱源系210の運転パラメータを算出する(ステップS117)。
図8は、実施形態に係るシフト後の第1電力消費計画P
q(t)の一例を示すである。シフト前の第1電力消費計画P
q(t)(
図5(a))と比較して、シフト後の第1電力消費計画P
q(t)は、時間t0~t1の消費電力が低下し、時間t1~t2の消費電力が上昇している。この結果、変更後の第1電力消費計画P
q(t)(
図8)と、第2電力消費計画P
p(t)(
図5(b))との差が小さくなっている。この結果、第1電力消費計画P
q(t)が電力コストを考慮した計画に変更される。
【0093】
尚、シフト候補抽出部16は、熱利用設備300の稼働情報と、排熱予測情報及びシフト候補との関係を機械学習することにより生成された機械学習モデル3C(「第1機械学習モデル」の一例)を用いて、排熱予測情報を予測及びシフト候補を抽出してもよい。この場合、シフト候補提示部17は、予測された排熱予測情報の信頼度が高い時間帯に対応するシフト候補を優先して提示してよい。こうすることで、熱回収効率改善の効果がより高い確度で見込めるシフトが採用されやすくなる。
【0094】
次に、制御部10の運転制御部18は、シフト後に算出された熱源系210の運転パラメータに基づいて、熱源系210の動作を制御する(ステップS119)。尚、シフト候補提示部17により提示されたシフト候補のシフトがユーザにより承認されなかった場合(ステップS115;NO)、運転制御部18は、当初の熱源系210の運転パラメータに基づいて、熱源系210の動作を制御する(ステップS119)。
【0095】
すなわち、取得部11は、ユーザによるシフト候補の決定指示を受け付けた場合、シフト候補をシフトさせることにより更新された排熱予測情報を取得し、運転制御部18は、更新された排熱予測情報に基づいて、ヒートポンプHPの動作に関する制御を行う。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0096】
上記の実施形態では、シフト候補をユーザに提示する場合を例に挙げて説明したがこれに限られない。例えば、予め定めたシフト候補については、ユーザに提示して承認を得ずに、実施タイミングを自動的にシフトするようにしてもよい。
【0097】
(第2制御処理)
図9は、実施形態に係るヒートポンプ入熱制約に基づく第2制御処理の一例を示すフローチャートである。ヒートポンプHPの運転は、汲み上げることができるHP入熱Q
hp(t)の制約を受けるので、ヒートポンプHPが効率の良いレンジを維持できるようにヒートポンプHPの負荷を調整することに制約が生じる。このため、排熱の制約を受けるヒートポンプHPの運転点をより目標とする指標(排熱予測情報から算出されたヒートポンプHPの生成熱量)が向上する運転点へ近づけるために、工場F内の熱ユーザに対して、熱を利用する処理の実施のタイミングや処理量(熱需要)をシフトする(シフト候補)を立案し、その効果と合わせて、ユーザ(管理者やオペレータ)へ自動的に提示する。
【0098】
まず、制御部10の取得部11は、熱利用設備300により出力される排熱の排熱予測情報を取得する(ステップS201)。取得部11は、例えば、熱利用設備300における熱ユーザU1-U3の各々の稼働情報を取得し、取得したこれらの稼働情報に基づいて、排熱を予測することで、排熱予測情報を取得する。或いは、取得部11は、熱ユーザU1-U3の各々から、排熱予測情報を取得してもよい。
【0099】
次に、制御部10のシミュレーション部13は、取得した排熱予測情報に基づいて、熱源系210の動作をシミュレーションし、熱源系210の運転パラメータを算出する(ステップS203)。ここで算出される運転パラメータは、所定時間後(例えば、3時間後)までの時間変化を示すものである。
【0100】
次に、制御部10のシフト候補抽出部16は、算出された運転パラメータに含まれるHP入熱Q
hp(t)が、予め定められた閾値C1未満であるか否かを判定する(ステップS205)。閾値C1は、例えば、ヒートポンプHPが効率の良いレンジを維持できる値が設定される。シフト候補抽出部16は、所定時間後までのHP入熱Q
hp(t)が、閾値C1未満となるタイミングが存在するか否かを判定する。
図10は、実施形態に係るHP入熱計画の一例を示す図である。
図10の例では、時間t1~t4の区間において、HP入熱Q
hp(t)が閾値C1未満となっている。この場合、シフト候補抽出部16は、HP入熱Q
hp(t)が、閾値C1未満であると判定する。尚、シフト候補抽出部16は、算出されたHP入熱Q
hp(t)が閾値C1以下であるか否かを判定してもよい。
【0101】
シフト候補抽出部16は、HP入熱Q
hp(t)が閾値C1未満であると判定した場合(ステップS205;YES)、HP入熱Q
hp(t)が閾値C1となる期間が無くなるように、少なくとも1つのシフト候補を抽出する(ステップS207)。例えば、
図10に示す例では、時間t1~t4の区間において、HP入熱Q
hp(t)が閾値C1未満となっているため、この区間のHP入熱Q
hp(t)を増大させるような(すなわち、排熱量を増大させるような)、シフト候補を抽出する。
【0102】
例えば、シフト候補抽出部16は、取得部11により取得された熱ユーザU1-U3の各々の稼働情報または排熱予測情報に基づいて時間t0~t1、及び時間t4以降に実行される処理を推定し、推定された処理をシフト候補として抽出する。この時間t0~t1、及び時間t4以降に実行される処理の実施タイミングを、この時間t1~t4にシフトさせることができれば、この区間のHP入熱Qhp(t)を増大させることができる。
【0103】
シフト候補またはシフト候補の組み合わせが複数存在する場合には、記憶部40に記憶されたシフト候補履歴情報D(
図6)を参照して、過去に採用された実績の多い処理を優先的に抽出するようにしてもよい。
【0104】
また、シフト候補抽出部16は、機械学習により生成された機械学習モデル4A(「第2機械学習モデル」の一例)を用いて、シフト候補を抽出するようにしてもよい。各熱ユーザの稼働情報や排熱予測情報を入力として、機械学習によりシフト候補とその効果を推論してよい。教師データを生成するために、一定期間排熱予測情報などの入力値に対する熟練運転員のシフト実績を記録し、それを用いて機械学習モデル4Aを構築しても良いが、教師データに含まれないパターンの入力データに対してシフト候補の教師データを追加する必要がある。例えば、この教師データをシミュレーション部13に入力し、シフトによる効果が不足している入力パターンを提示する機能を有する。熟練運転員がこれを確認し、シフト候補を追加して、教師データを補強してもよい。
【0105】
また、シフト候補またはシフト候補の組み合わせが複数存在する場合には、優先的に計算するケースを抽出する必要がある。この場合、過去のシフト採否実績データ(「シフト実績」)をこの優先順位付けで使用する場合に、シフト実績の採否判断を数式で再現することが難しいことがある。このような場合に、シフト実績を機械学習モデル4B(「第3機械学習モデル」の一例)の入力データに加え、採用の見込まれるシフト候補を優先的に抽出するようにしてもよい。シフト実績のデータが少ない入力パターンを熟練運転員に提示し、シフト候補の採否データを追加することにより、教師データを補強しても良い。また、排熱予測情報などの入力値を機械学習で求める場合、その精度(信頼性)にばらつきが生じうる。このため、この信頼性が高い時間で、且つ上記の「シフト実績」の高い処理が優先的に抽出されるようにしてよい。
【0106】
図9に戻り、シフト候補抽出部16は、抽出したシフト候補の各々について、シフトによる効果を算出する(ステップS209)。例えば、シフト候補抽出部16は、抽出したシフト候補によるヒートポンプHPによる熱回収効率の改善の効果を算出する。
【0107】
次に、制御部10のシフト候補提示部17は、抽出されたシフト候補を、ユーザに提示する(ステップS211)。シフト候補提示部17は、
図7に示すようなシフト候補提示画面P1をユーザに提示する。ユーザは、このシフト候補提示画面P1を参照し、「シフト可否」の指示を入力して、「シフト対象の決定」ボタンを押下することで、シフト対象を決定することができる。尚、シフト候補の実施タイミングまたは処理量をシフトするのではなく、実施をキャンセルするような指示を受け付けるようにしてもよい。
【0108】
シフト候補提示部17により提示されたシフト候補のシフトがユーザにより承認された場合(ステップS213;YES)、取得部11は、シフト候補がシフト先にシフトされた条件下で、再度、排熱予測情報を取得し、さらに、シミュレーション部13は、取得した排熱予測情報に基づいて、熱源系210の動作をシミュレーションし、熱源系210の運転パラメータを算出する(ステップS215)。
図11は、実施形態に係るシフト後のHP入熱計画の一例を示す図である。シフト前のHP入熱計画(
図10)と比較して、シフト後のHP入熱計画は、時間t1~t4のHP入熱Q
hp(t)が増大している。この結果、HP入熱Q
hp(t)が閾値C1未満となる期間が無くなっている。
【0109】
次に、制御部10の運転制御部18は、シフト後に算出された熱源系210の運転パラメータに基づいて、熱源系210の動作を制御する(ステップS217)。尚、HP入熱Qhp(t)が閾値C1未満ではないと判定された場合(ステップS205;NO)、またはシフト候補提示部17により提示されたシフト候補のシフトがユーザにより承認されなかった場合(ステップS213;NO)、運転制御部18は、当初の熱源系210の運転パラメータに基づいて、熱源系210の動作を制御する(ステップS217)。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0110】
上記の実施形態では、シフト候補をユーザに提示する場合を例に挙げて説明したがこれに限られない。例えば、予め定めたシフト候補については、ユーザに提示して承認を得ずに、実施タイミングを自動的に変更するようにしてもよい。
【0111】
尚、制御装置1のシフト候補抽出部16は、製造スケジュール生成システム(不図示)から受け取ったスケジュールデータから排熱予測情報及び電力制約情報の少なくとも一つを算出し、ヒートポンプHPにおける電力コストを下げる、またはヒートポンプHPにおける熱回収効率を改善するシフト候補を抽出効果を算出し、更新したスケジュールデータを、製造スケジュール生成システムに出力する機能を備えてもよい。
【0112】
上述した実施形態によれば、熱利用設備300における処理に伴って出力されヒートポンプHPに入力される排熱の予測値を含む排熱予測情報と、時間とともに変動する前記ヒートポンプが使用可能な電力に関する電力制約情報とを取得する取得部11と、取得された排熱予測情報に基づいて、ヒートポンプHPにより消費される電力の第1電力消費計画を算出する第1算出部14と、取得された電力制約情報に基づいて、ヒートポンプHPにより消費される電力の第2電力消費計画を算出する第2算出部15と、算出された第1電力消費計画と、算出された第2電力消費計画との比較結果に基づいて、処理に関し、処理の実施のタイミングと処理量との少なくとも一方をシフトさせるシフト候補を抽出するシフト候補抽出部16と、を備えることで、電力価格の変動や電力使用量の制約により生じるヒートポンプが使用可能な電力に関する制約下で、ヒートポンプにおける熱回収効率を改善することができる。
【0113】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0114】
1…制御装置
10…制御部
11…取得部
12…排熱予測部
13…シミュレーション部
14…第1算出部
15…第2算出部
16…シフト候補抽出部
17…シフト候補提示部
18…運転制御部
19…表示制御部
20…入力インタフェース
30…表示部
40…記憶部
50…通信部
100…熱供給源
200…熱供給ユーティリティ
210…熱源系
220…加熱系
230…変換装置
300…熱利用設備
A1,A2,A3…端末装置
F…工場
B…ボイラ
HP…ヒートポンプ
U1…第1熱ユーザ
U2…第2熱ユーザ
U3…第3熱ユーザ