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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005832
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】計測地点判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20230111BHJP
   G01S 19/24 20100101ALI20230111BHJP
   G01S 19/14 20100101ALI20230111BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
G01S19/24
G01S19/14
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108033
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】593080294
【氏名又は名称】株式会社カンドー
(71)【出願人】
【識別番号】305040776
【氏名又は名称】株式会社CSS技術開発
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 知章
(72)【発明者】
【氏名】三輪 知広
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝博
(72)【発明者】
【氏名】北島 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】石関 貴人
(72)【発明者】
【氏名】住吉 花菜
(72)【発明者】
【氏名】月野 晃
(72)【発明者】
【氏名】山沢 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優
(72)【発明者】
【氏名】金田 誠一
(72)【発明者】
【氏名】新井 大輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 久志
(72)【発明者】
【氏名】趙 子健
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雄大
(72)【発明者】
【氏名】品川 昂平
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA09
5J062BB08
5J062CC07
(57)【要約】
【課題】市街地において衛星測位システムを用いた高精度な測量を可能とする。
【解決手段】計測地点判定方法は、衛星測位システムの測定機の測量地点について、道路又は測量地点の周囲に関する一次基準を用いて一次判定を行う。前記一次判定において前記一次基準を満たす場合に、用途区分に関する二次基準を用いて、適用可能、要追加判定、又は適用不可のいずれであるかを判定する二次判定を行う。前記二次判定において適用可能と判定した場合に、適用可能な測量地点とし、前記二次判定において要追加判定と判定した場合に、前記測量地点に関する三次基準を満たすかを前記測量地点に関する写真を用いて判定する三次判定を行う。前記三次判定において前記三次基準を満たす場合に、適用可能な測量地点とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星測位システムの測定機の測量地点について、
道路又は測量地点の周囲に関する一次基準を用いて一次判定を行い、
前記一次判定において前記一次基準を満たす場合に、用途区分に関する二次基準を用いて、適用可能、要追加判定、又は適用不可のいずれであるかを判定する二次判定を行い、
前記二次判定において適用可能と判定した場合に、適用可能な測量地点とし、
前記二次判定において要追加判定と判定した場合に、前記測量地点に関する三次基準を満たすかを前記測量地点に関する写真を用いて判定する三次判定を行い、
前記三次判定において前記三次基準を満たす場合に、適用可能な測量地点とする、
計測地点判定方法。
【請求項2】
前記一次基準は、道路の幅員に関する基準と、測量地点の周囲の障害物に関する基準とを含み、
前記一次判定においては、
前記道路の幅員に関する条件を満たす場合に前記一次基準を満たすと判定し、
前記道路の幅員に関する条件を満たさなかった場合に、前記障害物に関する基準を満たすかを判定し、前記障害物に関する基準を満たす場合に、前記一次基準を満たすと判定する請求項1に記載の計測地点判定方法。
【請求項3】
前記二次基準は、実測データをもとに用途区分を用途区分ブロック表によって区分し、前記適用可能とする第1のブロック、前記要追加判定の対象となる現地条件により適用可能な第2のブロック、前記適用不可とする第3のブロックとに分けた基準とする請求項1又は請求項2に記載の計測地点判定方法。
【請求項4】
前記三次基準として衛星補足範囲に応じた衛星捕捉率の基準を定め、
前記三次判定では、前記写真をもとに前記測量地点の衛星捕捉率を求め、前記測量地点の位置に対する前記衛星捕捉率の基準に基づいて、前記三次基準を満たすかを判定する請求項1~請求項3の何れか1項に記載の計測地点判定方法。
【請求項5】
前記測量地点及び周囲の建物の方位上の位置関係における衛星の捉えやすさに応じて、前記衛星捕捉率の基準が定められている請求項4に記載の計測地点判定方法。
【請求項6】
前記位置関係において、前記測量地点が東西方向の道路の南側であり、周囲の南側に建物があり、当該建物の高さが所定の高さ以上である場合に、適用不可とする前記衛星捕捉率の基準が定められている請求項5に記載の計測地点判定方法。
【請求項7】
前記適用可能な測量地点において、複数の補正局について段階的に、計測確認、及び精度確認を行い、測量に用いる補正局を選定する請求項1~請求項6の何れか1項に記載の計測地点判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測地点判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS等の衛星からの測位データを用いて、地形等の形状又は面積を算出する技術がある。
【0003】
例えば、GPS位置データに基づいて、圃場の形状を決定する圃場形状決定装置に関する技術がある(特許文献1参照)。
【0004】
また、測位データから、既作業地の既作業地面積と未作業地の未作業地面積とを算出する処理を行うことを含む作業管理システムに関する技術がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-206647号公報
【特許文献2】特開2020-18220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術は、もっぱら農地等の郊外を対象に作業範囲の面積を求積することを想定した技術である。ここで、市街地での面積を求めようとする場合、次のような課題がある。例えば、市街地のある工事現場の面積を測位データから求積したい場合があったとする。この場合、建物や地物等の周囲の遮蔽物によるマルチパスの影響によって、面積の求積に必要な測位データを十分に得られない場合がある。そのため、市街地においては、その地点の測位データを用いて面積が求められるのかを予め把握しておく必要が生じる。また、ある測量地点の測位データを取得し、活用する場合においても同様である。
【0007】
本発明は上記事情を鑑みてなされたものであり、市街地において衛星測位システムを用いた高精度な測量を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の計測地点判定方法は、衛星測位システムの測定機の測量地点について、道路又は測量地点の周囲に関する一次基準を用いて一次判定を行う。前記一次判定において前記一次基準を満たす場合に、用途区分に関する二次基準を用いて、適用可能、要追加判定、又は適用不可のいずれであるかを判定する二次判定を行う。前記二次判定において適用可能と判定した場合に、適用可能な測量地点とし、前記二次判定において要追加判定と判定した場合に、前記測量地点に関する三次基準を満たすかを前記測量地点に関する写真を用いて判定する三次判定を行う。前記三次判定において前記三次基準を満たす場合に、適用可能な測量地点とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、市街地において衛星測位システムを用いた高精度な測量を可能とする、という効果が得られる。また、高精度な測量をもとに、効率的な工事の作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】路線つきあたりの場合の衛星補足状況の一例を示した図である。
図2】本発明の実施形態に係る計測地点判定方法の判定フローを示す図である。
図3】用途区分ブロック表の一例を示す図である。
図4】東西方向の道路の南側の測量地点における測定ポイントの一例を示す図である。
図5】測量地点及び周囲の建物の方位上の位置関係における衛星の捉えやすさの一例を示す図である。
図6】補正局の適用フローの一例を示す図である。
図7】市街地のライフライン設備の工事の作業において、従来と本手法の適用後を比較した一覧を示す図である。
図8】従来と本手法の適用後の現場における所要時間を比較した一覧を示す図である。
図9】測量不可能点に対する対策の例を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の計測地点判定方法について説明する。まず、計測地点判定方法において前提とする背景について説明する。
【0012】
上記課題で説明したように、市街地で従来の面積の求積の手法を適用するには課題がある。従来、GNSS(Global Navigation Satellite System:衛星測位システム)による測量は、一般土木工事等に付随する各種測量業務(仮設道路の位置出し、土量計算に伴う横断測量など)の用途に使用されていた。この用途における使用環境は、更地、河川、港湾、ゴルフ場、及び圃場等の郊外での適用が想定されており、市街地への適用は想定されていなかった。
【0013】
ここで、市街地で行われる工事現場の作業として、例えば、ガス導管等のライフライン設備の道路掘削後の復旧工事の作業がある。この作業では、出来形図の作成、復旧面積の査定、出来高の請求等を行う必要がある。それに際し、現状では巻尺等を用いて現地計測と、それに伴う手書きの復旧図面作成を2名以上(通常は3名)の要員体制で行われている。しかし、このような現地計測を行う方法では、大量のデータの取り扱いに困難が伴う。データを取り扱う際のヒューマンエラーの可能性とそれを防ぐための多重チェックなどで効率が悪く、結果としてコストが高くなってしまう。そのため、精度を維持しつつ、効率よく、これらの作業を行いたいというニーズがある。
【0014】
そこで、本発明の実施形態では、GNSSによる使用目的に応じた精度を定めた上での高精度測位を市街地における測量に適用するための手法を検討した。GNSSによる測量はこれまでは郊外での適用が想定されていたが、本実施形態の計測地点判定方法によって、GNSSによる測量を市街地に適用する。
【0015】
本実施形態の計測地点判定方法では、GNSSの測位の適用の観点から導くことができる3つの判定基準(一次基準、二次基準、及び三次基準)を設け、それぞれの判定基準による判定(一次判定、二次判定、及び三次判定)を行うこととした。
【0016】
なお、本実施形態では、測位はGNSSの測定機で衛星のデータを受信することと定義し、測量は測定機で測定した測位データから面積を求めるために地表上のある地点の位置を求めること、と定義する。測定機を設置する候補とする地点を、本実施形態では測量地点と定義し、適用可否を判定する。測量地点はGNSSの測定機を設置する市街地上の施工範囲である。また本実施形態では、測位及び測量を含む概念を計測と定義する。そのため本実施形態の手法は計測地点判定方法と表している。測位及び測量の両面が考慮されるからである。
【0017】
まず、GNSSの市街地への適用可否を考える上で、測量の精度を左右する要素はGNSSの測定機から見てどれだけ衛星を捕捉できるのか、つまり空を見上げた際に上空がどれだけ開けているか、が問題となる。そこで本実施形態では、その地点で衛星を捉えられる上空の空間率のことを天空率と定義した。一般的に天空率を測定する計器はなく、設計で算出されるため、当該工事では計数化されていないが、支配的な因子としては、道路の路線のつきあたり、建築物街路樹等の周囲の障害物、及び道路の幅員などが考えられる。よって、天空率の影響がある因子から、道路幅員や高さのある障害物の有無を基準とすることが考えられる。以上の検討により、道路の幅員に関する基準、及び測量地点の周囲の障害物に関する基準を一次基準とすることにした。具体的な一次基準の例については後述する。
【0018】
また、上記課題において説明したように、市街地での測位データの利用はマルチパスの影響がある。この点について、本件の発明者らがフィールドテストの結果を分析したところ、建築基準法の用途地域区分ごとに、適用率に偏りがあることがわかった。適用率は、GNSSの実測データ(実際に計測された測位データ)を、様々な地点で収集した結果を分析して得られた基準であり、その地点がGNSSの測定機による測量地点としてどの程度適切であるかをパーセンテージで示したものである。従って、用途区分に関する二次基準として、用途地域の適用率をもとにした用途区分ブロック表を定めることにした。これにより用途地域ごとに適用可能な地域を定めることができる。具体的な二次基準の例については後述する。
【0019】
また、測量地点と周囲の建物との方位上の位置関係によっては、衛星捕捉率に違いが生じ、適用可否に影響することもフィールドテストで確認された。図1は、路線つきあたりの場合の衛星補足状況の一例を示した図である。図1に示す例では、衛星補足範囲はA1~A3に分けられる。A1の範囲は補足可能、A2の範囲は概ね補足可能、A3の範囲は補足しにくい、衛星捕捉率であることを示している。このように、現地固有の状況で天空率に影響を与える因子については個別に影響を考える必要がある。以上の結果を踏まえて、現地固有の測量地点に関する写真を用いてスクリーニングを行う判定基準(三次基準)を定めた。具体的な三次基準の例については後述する。
【0020】
上記の判定基準を用いた本実施形態の計測地点判定方法を以下に説明する。なお、以下では、計測地点判定方法を復旧工事の作業に適用する場合を例に説明する。復旧工事の作業以外の場合に適用する場合には、適宜、基準として例示している値を変更して適用してよい。
【0021】
[計測地点判定方法の判定フロー]
図2は、本発明の実施形態に係る計測地点判定方法の判定フローを示す図である。判定フローに沿って、各判定の詳細を説明していく。この判定フローは、市街地のある地域の測量地点に着目して、GNSSが適用可能な測量地点であるかについての判定を行うフローである。なお、各判定は人手により判断することを想定しているが、一部をコンピュータのプログラムにより判断させるようにしてもよい。
【0022】
(一次判定)
まず、一次判定について説明する。以下のステップS100及びステップS102が一次判定である。
【0023】
ステップS100では、道路の幅員に関する基準を満たすか否かを判定する。道路の幅員に関する基準は、例えば、復旧を行う道路の幅員が4m以上であることとする。道路の幅員に関する基準を満たす場合に、一次基準を満たすと判定して、ステップS104へ移行して次の二次判定を行う。道路の幅員に関する基準を満たさない場合に、ステップS102へ移行して一次判定の二段階目の判定を行う。
【0024】
ステップS102では、測量地点の周囲の障害物に関する基準を満たすか否かを判定する。測量地点の周囲の障害物に関する基準は、例えば、測量地点の周囲1.5m以内に測定機を超える高さの障害物がないこととする。測量地点の周囲の障害物に関する基準を満たす場合に、一次基準を満たすと判定して、ステップS104へ移行して次の二次判定を行う。測量地点の周囲の障害物に関する基準を満たさないと判定した場合に、一次基準を満たさないとして、ステップS122へ移行し、当該測量地点を適用不可と判断して判定フローを終了する。但し、後述する図9に示す方法で計測可能と推察される場合は除き、適用可能なケースもある。
【0025】
以上のように、一次判定では、道路の幅員が4m以上であること、又は道路の幅員が4m以上でない場合には、測量地点の周囲1.5m以内に測定機を超える高さの障害物がないこと、を一次基準として判定を行う。
【0026】
(二次判定)
次に、二次判定について説明する。以下のステップS104及びステップS106が二次判定である。
【0027】
二次判定は、用途区分ブロック表の区分(用途区分に関する二次基準)に従って判定を行う。用途区分ブロック表の一例を図3に示す。図3に示すように、用途区分をそれぞれブロックA、ブロックB、ブロックCの3つのブロックに区分している。区分は2020年12月から2021年3月までのフィールドテストにて得た実測データをもとにした適用率から定められている。用途区分の適用率は、例えば、工事における作業の実情等を鑑みて誤差の許容範囲を定めておき、用途区分ごとに実測データにより求めた面積と実際の面積の誤差が許容範囲に収束した割合である。その収束した割合の近似値を集約し、3つのブロックに分類した。ブロックAは、適用率75%以上であり、基本的に適用可能な地域である。ブロックBは、適用率50%以上75%未満であり、現地固有の条件によっては適用可能な地域であり、要追加判定の対象である。ブロックCは、適用率50%未満であり、原則として適用困難な地域である。測量地点が、用途区分ブロック表でブロックBの地域であれば三次判定を行う。図3の例では、各住居専用地区はブロックAとして適用可能とし、近隣商業地区、商業地区はブロックCとして適用不可とする。それ以外の地区をブロックBとして三次判定の対象とする。なお、この用途区分ブロック表は、実測データをもとに適宜変更し得る。ブロックAが本発明の第1のブロック、ブロックBが本発明の第2のブロック、ブロックCが本発明の第3のブロックに対応する。なお、このしきい値はデータの蓄積とともに適宜見直す。
【0028】
ステップS104では、測量地点が、用途区分ブロック表のブロックAであるか否かを判定する。ブロックAであると判定した場合にはステップS120へ移行して、当該測量地点を適用可能と判断して判定フローを終了する。ブロックAでないと判定した場合にはステップS106へ移行する。
【0029】
ステップS106では、測量地点が、用途区分ブロック表のブロックBであるか否かを判定する。ブロックBであると判定した場合には、要追加判定の対象とし、ステップS108へ移行して次の三次判定を行う。ブロックBでないと判定した場合には、ブロックCであるとして、ステップS122へ移行し、当該測量地点を適用不可と判断して判定フローを終了する。
【0030】
以上のように、二次判定では、測量地点が、用途区分ブロック表のブロックAであれば適用可能にし、ブロックBであれば三次判定の要追加判定とすることにし、ブロックCであれば適用不可とすることを二次基準として判定を行う。
【0031】
(三次判定)
次に、三次判定について説明する。以下のステップS108~ステップS114が三次判定である。
【0032】
ここで三次判定の前提について説明する。三次判定では、ブロックBの地区のGNSSの適用可否について、測量地点に関する写真を用いて衛星捕捉率の基準を満たすかの判定を行う。本実施形態での衛星捕捉率とは測量可能と想定される測定ポイント数を想定される総測定ポイント数で除した値をいう。図4に示す例は、東西方向の道路の南側の測量地点における測定ポイントの一例を示す図である。Hが測量地点における施工範囲であり、施工範囲内にP1~P4の測定ポイントがある。P1、P2、P3は衛星捕捉可能、すなわち測量可能と想定される測定ポイントであり、P4は障害物があり測定困難、すなわち測量が不可能と想定される測定ポイントである。この場合、総測定ポイント4点の内、測量可能と想定される測定ポイントが3ポイント(3/4:75%)、測量が不可能と想定される測定ポイントが1ポイント(1/4:25%)である。測量地点に関する写真は、測量地点となる施工範囲全域の現地写真、航空写真、及びストリートビュー等を用い、人手の目視によって衛星捕捉率を求める。なお、人手によらずに衛星捕捉率を求めてもよく、測量地点に関する写真を入力すると衛星捕捉率を出力するように機械学習したモデルを用いて、プログラムによる衛星捕捉率の出力を行ってもよい。
【0033】
本実施形態の衛星捕捉率の基準は、測量地点及び周囲の建物の方位上の位置関係における衛星の捉えやすさに応じて定めておく。衛星捕捉率の基準の考え方は、一次基準における道路の幅員が4m未満の場合の測量地点の周囲に障害物の有無と同様の考え方であるが、三次判定では、写真並びに方位を用いて判定する点異なっている。以下に、具体例を説明する。
【0034】
衛星沿捕捉可能であり、測量可能と想定される測定ポイントについて説明する。衛星には、静止衛星や準天頂衛星システム(例えば「みちびき」)など様々な衛星が想定される。また、一般的に北半球側の日本では、概して南側に衛星が位置しているケースが多くなる。例えば、準天頂衛星は参考文献1に示すように、赤道付近での滞留時間が長い。このことから、北半球側の日本では、測量地点の南側の天空の開口状況が重要な要素となり、衛星の捕捉数に大きく影響する。
[参考文献1]「準天頂軌道とは」URL:"https://www.jaxa.jp/countdown/f18/overview/orbit_j.html"
【0035】
図5は、測量地点及び周囲の建物の方位上の位置関係における衛星の捉えやすさの一例を示す図である。図5上は、南側に高層の建物がある場合を想定して、A、B、Cの測量地点で衛星のデータを測位することを想定している。図5下は、北側に高層の建物がある場合を想定して、D、E、Fの測量地点で衛星のデータを測位することを想定している。図5上の場合、衛星の捉えやすさを表す衛星捕捉範囲(角度)はB>A>Cの順で捉えやすくなっている。すなわち、道路中央>低層側>高層側の順である。この場合、特に南側の高層の建物の近傍のCは準天頂衛星及び静止衛星の利用は困難である。一方、図5下の場合、北側の高層の建物近傍のDは全球測位衛星システムの捕捉に支障があるが、準天頂衛星及び静止衛星の捕捉は良好であるため各測量地点において全体的に支障は発生しにくい。以上のような背景を踏まえて、衛星捕捉率の基準において、通常は、衛星捕捉率50%以上の場合は適用可能とする。他方で、東西方向の道路で南側の復旧工事を行う場合、すなわち道路の南側に測量地点を置く場合は、衛星捕捉率75%以上の場合を適用可能と判断する。逆に東西方向の道路の北側や、南北方向の道路は通常の基準の衛星捕捉率50%の場合を適用可能と判断する。つまり衛星捕捉率の基準には、方位上の位置関係をみて、通常の基準と、南側での基準を定めておく。衛星捕捉率の通常の基準は、測量地点が南側以外(通常)の場合に、測量地点の周囲に1.5m以内に測定機を超える高さの建物がないことなどを考慮して衛星捕捉率50%以上となるように定める。また、衛星捕捉率の南側での基準は、測量地点の周囲に1.5m以内に測定機を超える高さの建物がないことなどを考慮して衛星捕捉率75%以上になるように定める。例えば、図4に示す例は、東西方向の道路の南側の復旧工事の例であるが、道路の南側に測量が不可能なポイントが1ポイントあるものの他の3ポイントは測量可能であり、衛星捕捉率75%となるため、適用可能である。このように、通常の基準と、南側での基準とを想定することで、測量地点及び周囲の建物の方位上の位置関係における衛星の捉えやすさを考慮することができる。また、GNSS使用の判断が難しい現場でもあらかじめ判断できるように基準を設けたことで手戻りをなくすことが期待できる。
【0036】
ステップS108では、測量地点に関する写真をもとに衛星捕捉率を求める。なお、ステップS108及びS110の順番は入れ替えてもよい。
【0037】
ステップS110では、測量地点が東西方向の道路の南側に位置しているか否かを判定する。南側でない場合にはステップS112へ移行し、南側である場合にはステップS114へ移行する。
【0038】
ステップS112では、衛星捕捉率の通常の基準を用いて、衛星捕捉率が50%以上であるか否かを判定する。50%以上である場合には、ステップS120へ移行して当該測量地点が適用可能であると判断して判定フローを終了する。50%未満である場合には、ステップS122へ移行して当該測量地点が適用不可であると判断して判定フローを終了する。
【0039】
ステップS114では、衛星捕捉率の南側での基準を用いて、衛星捕捉率が75%以上であるか否かを判定する。75%以上である場合には、ステップS120へ移行して当該測量地点が適用可能であると判断して判定フローを終了する。75%未満である場合には、ステップS122へ移行して当該測量地点が適用不可であると判断して判定フローを終了する。
【0040】
以上のように、三次判定では、測量地点に関する写真をもとに衛星捕捉率を求め、衛星捕捉率の通常の基準、又は衛星捕捉率の南側での基準を三次基準として判定を行う。
【0041】
以上、説明したように、本発明の実施形態の計測地点判定方法により、測量地点の適用可否を判定することにより、市街地において衛星測位システムを用いた高精度な測量を可能とする。
【0042】
[補正局の選定]
計測地点判定方法により適用可能と判断された測量地点については、測量に用いる補正局を選定する。ここで、本実施形態では、複数の補正局について段階的に、計測確認、及び精度確認を行い、測量に用いる補正局を選定する。補正局とは、各配信事業者からインターネット経由で配信されているGNSSの座標補正情報のことであり、使用する補正局は各配信事業者が活用している補正方法や補正に使用する衛星ごとに分けている。図6に補正局の適用フローを示す。適用する補正局は三種類以上選定し、また適用順序は有効性を適宜確認し、第1設定~第3設定で決定する。以下に適用フローの用語を説明する。FIXとは衛星を有効性のある状態で捉えており、後述する精度範囲内の値に信頼性があると判定された状況を表す。フロートとは、計測不可の状態を表す。実際の測定機上に表される精度確認のHとは水平距離の誤差範囲で、Vは垂直距離の誤差範囲を表し、単位はメートルとなっている。
【0043】
[参考情報]
本発明の実施形態の参考情報として、計測地点判定方法により測量地点の適用可否を判定したことにより実現できるGNSSの活用した場合の作業ケースを挙げる。図7に、市街地のライフライン設備の工事の作業において、従来と本手法の適用後を比較した一覧を示す。現地作業の工程の効果としては、要員の削減、作業環境の改善、作業量の削減ができる。データ整理の工程の効果としては、測定の清書・精査が不要となり、作業量の削減ができる。図面化の工程の効果としては、作図時間が減少し、作業量の削減ができる。図7は、従来と本手法の適用後の現場における所要時間を比較した一覧である。例えば、所要時間は舗装復旧面積が200m2程度の場合、合計の所要時間が510分から150分と減り、約70%省力化できることがわかる。
【0044】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0045】
例えば、上述した実施形態において測量地点が適用不可となったような場合に、その測量不可能点を考慮して測量を行いたい場合がある。図9は、測量不可能点に対する対策の例を表した図である。測量不可能点(P点)から復旧箇所である測量可能範囲内にある任意の直線上の測量点を、2点(A・B点)設け、測量不可能点(P点)と任意の測量点(A点)の離隔距離の測定によって測量不可能点(P点)の座標を測量する。GNSS測定機において実施する場合、(1)座標:Pポイント(測量不可能点)から一直線上にA・Bポイント(測量可能点)を設置する。誤差低減の観点からAB間の距離はPA間の距離3倍以上とする。なお、計測はコンベックスによる。(2)コントローラーの回転機能より、PポイントとA・Bポイントの関係(角度・距離)により、Pポイントの座標を自動計算する。例えば、一次判定のステップS102において適用不可となったような測量地点であっても、本手法で考慮して測量が可能であれば適用可能とする。このように、計測不能点(P点)から計測可能範囲内への直線上にあり所定の隔離距離だけ離れた第1計測点(A点)と、当該直線上の第1計測点の延長線上にあり、所定距離以上離れた第2計測点(B点)とを計測する。直線上に第1計測点から計測不能点に対して隔離距離だけ戻した点を座標点として記録し、図面の作成に用いる。
【符号の説明】
【0046】
A1~A3 衛星補足範囲
H 測量地点(施工範囲)
P1~P4 測定ポイント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9