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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058331
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】紙用添加剤、および紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 21/22 20060101AFI20230418BHJP
   D21H 17/07 20060101ALI20230418BHJP
   D21H 17/14 20060101ALI20230418BHJP
   D21H 17/37 20060101ALI20230418BHJP
   C08F 222/38 20060101ALI20230418BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20230418BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
D21H21/22
D21H17/07
D21H17/14
D21H17/37
C08F222/38
C08L33/26
C08K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168295
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】江頭 直成
(72)【発明者】
【氏名】兼田(堀口) 萌恵
(72)【発明者】
【氏名】沖永 俊治
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4L055
【Fターム(参考)】
4J002BG131
4J002DG047
4J002EP016
4J002GK04
4J002HA07
4J100AJ01Q
4J100AM15P
4J100AM21Q
4J100AP01Q
4J100BA56Q
4J100CA04
4J100JA13
4L055AG06
4L055AG08
4L055AG16
4L055AG34
4L055AG35
4L055AG72
4L055AG99
4L055AH50
4L055EA32
4L055FA08
4L055FA16
4L055FA23
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】
本発明は、水性分散液としての安定性、紙厚向上効果と抄紙系内での発泡抑制効果に優れる紙用添加剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
脂肪酸モノアルカノールアミド(A)と、(b-1)アニオン性モノマーを特定の割合で含む(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)と、(c-1)多塩基酸、(c-2)アルカリ金属等からなる塩類(C)と水(D)を含み、(A)と(B)の質量比が(A):(B)=97~80:3~20、(C)と(D)の質量比が(C):(D)=3~25:97~75である水性分散液状の紙用添加剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(A)と下記(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)と下記塩類(C)と水(D)を含む水性分散液であり、化合物(A)と(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)の質量比が(A):(B)=97~80:3~20であり、塩類(C)と水(D)の質量比が(C):(D)=3~25:97~75であることを特徴とする紙用添加剤。
化合物(A):
下記一般式(1)で示される脂肪酸モノアルカノールアミド。
-C(=O)NH-R-OH…(1)
:炭素数7~21のアルキル基またはアルケニル基、R:炭素数2~3のアルキレン基。
(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B):
(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)(メタ)アクリルアミドとを、(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)の割合で含み、(b-3)疎水性連鎖移動剤を(b-1)と(b-2)の総和に対して0.1~3モル%含むモノマー類の重合物。
塩類(C):
(c-1)多塩基酸と、(c-2)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種のアルカリ性物質、からなる塩類
【請求項2】
(b-1)アニオン性モノマーが、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤。
【請求項3】
(c-1)多塩基酸が硫酸、リン酸、クエン酸およびコハク酸から選ばれる少なくとも1種であり、かつ(c-2)アルカリ性物質がナトリウムおよびアンモニアから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の紙用添加剤。
【請求項4】
紙厚向上剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の紙用添加剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性分散液としての安定性、紙厚向上効果と抄紙系内での発泡抑制効果に優れる紙用添加剤とそれを用いた紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の原木供給事情の悪化や地球環境保護の面から、パルプの使用量を抑えつつ従来の品質を維持した紙が求められている。しかし、紙の軽量化のために単にパルプ量を減らしただけでは、紙が薄くなり不透明度の低下を招き、印字が裏に透けてみえてしまうことがある。そこで、紙厚を保持しつつパルプ量を減少できる、すなわち、紙厚を向上させることができる薬品が求められている。
【0003】
紙厚を向上させる薬品としては、脂肪酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物とエピハロヒドリンとの反応物(例えば、特許文献1,2参照)、これらのアミド化合物を尿素架橋した化合物を含む紙用添加剤(例えば、特許文献3参照)、多価アルコールと脂肪酸のエステル反応物からなる紙用嵩高剤(例えば、特許文献4参照)、直鎖状脂肪酸モノアミドを主成分として含有する紙用嵩高剤(例えば、特許文献5参照)が公知であるが、紙厚向上効果は十分に満足できるレベルではなく、さらに抄紙系での発泡が多い、水性分散液の安定性に劣る、紙が滑りやすくなる、併用するサイズ剤の種類によっては紙のサイズ効果を著しく低下させる、等の問題があった。
【0004】
さらに、離水度が4%以上となる化合物であって、嵩、白色度、不透明度の全ての紙質向上効果をもたらす親水基と疎水基を有する化合物と、平均分子量が1000~10000万または1%水溶液の粘度が1~4000mPa・sの少なくとも何れかを満たす、ポリアクリルアミド系ポリマー及びカチオン化澱粉からなる群から選ばれる水溶性高分子とを含有する抄紙用紙質向上剤(特許文献6参照)が公知であるが、水性分散液として使用する際は、抄紙系での発泡を増加させるほか、水性分散液の粘度が経時的に増加する、水性分散液が分離する、などの問題があり、安定な水性分散液を得るには有効分濃度を下げる必要があるため好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61-252400号公報
【特許文献2】特開2000-273792号公報
【特許文献3】特開2005-60891号公報
【特許文献4】特許第2971447号明細書
【特許文献5】特開2007-231485号公報
【特許文献6】特許第3810986号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、水性分散液としての安定性、紙厚向上効果と抄紙系内での発泡抑制効果に優れる紙用添加剤とそれを用いた紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、特定の炭素数を有する脂肪酸モノアルカノールアミドと特定の組成を有するアクリルアミド及び/又はメタアクリルアミド系ポリマー、特定の塩類を含有する紙用添加剤が、安定性に優れ、パルプスラリーに添加された場合に優れた紙厚向上効果と発泡抑制効果を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
<1>下記化合物(A)と下記(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)と下記塩類(C)と水(D)を含む水性分散液であり、化合物(A)と(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)の質量比が(A):(B)=97~80:3~20であり、塩類(C)と水(D)の質量比が(C):(D)=3~25:97~75であることを特徴とする紙用添加剤。
化合物(A):
下記一般式(1)で示される脂肪酸モノアルカノールアミド。
-C(=O)NH-R-OH…(1)
:炭素数7~21のアルキル基またはアルケニル基、R:炭素数2~3のアルキレン基。
(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B):
(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)(メタ)アクリルアミドとを、(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)の割合で含み、(b-3)疎水性連鎖移動剤を(b-1)と(b-2)の総和に対して0.1~3(モル%)含むモノマー類の重合物。
塩類(C):
(c-1)多塩基酸と、(c-2)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種のアルカリ性物質、からなる塩類
<2>(b-1)アニオン性モノマーが、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする<1>に記載の紙用添加剤。
<3>(c-1)多塩基酸が硫酸、リン酸、クエン酸およびコハク酸から選ばれる少なくとも1種であり、かつ(c-2)アルカリ性物質がナトリウムおよびアンモニアから選ばれる1種以上であることを特徴とする<1>又は<2>のいずれか1項に記載の紙用添加剤。
<4>紙厚向上剤であることを特徴とする、<1>~<3>のいずれか1項に記載の紙用添加剤。
<5><1>~<4>いずれか1項に記載の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、水性分散液としての安定性に優れ、優れた紙厚向上効果と抄紙系内の発泡抑制効果を有する紙用添加剤を提供することができ、紙製品を製造する際にパルプ原料の使用量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の紙用添加剤は化合物(A)と(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)と塩類(C)と水(D)を含む。なお、本発明における「(メタ)アクリル」は「アクリルまたはメタクリル」を意味する。
【0010】
本発明の化合物(A)は、(a-1)炭素数8~22の一価脂肪酸(以下「一価脂肪酸(a-1)」と表記)と(a-2)炭素数2~3のモノアルカノールアミン(以下「モノアルカノールアミン(a-2)」と表記)の脱水縮合反応物である脂肪酸モノアルカノールアミドを主成分とする。化合物(A)の構造において、脂肪酸残基である炭素数7~21の長鎖アルキル基又はアルケニル基はパルプ繊維を疎水化する役割を担うと考えられる。またアルカノール基末端の水酸基がパルプ繊維表面との親和性を有することから、水酸基がパルプ側へ、長鎖アルキル基又はアルケニル基がパルプとは反対側へ配向することで、パルプ繊維表面をより少量で効率的に疎水化することができ、その結果優れた紙厚向上効果を示すと考えられる。
【0011】
炭素数8~22の一価脂肪酸(a-1)としては、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖であっても分岐であってもよい。具体的には、炭素数8のオクタン酸(カプリル酸)、2-エチルヘキサン酸、炭素数10のデカン酸(カプリン酸)、炭素数12のドデカン酸(ラウリン酸)、炭素数14のテトラデカン酸(ミリスチン酸)、炭素数16のヘキサデカン酸(パルミチン酸)、炭素数18のオクタデカン酸(ステアリン酸)、16-メチルヘプタデカン酸(イソステアリン酸)、cis-9-オクタデセン酸(オレイン酸)、cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸(リノール酸)、9,12,15-オクタデカントリエン酸((9,12,15)-リノレン酸)、6,9,12-オクタデカトリエン酸((6,9,12)-リノレン酸)、炭素数20のイコサン酸(アラキジン酸)、炭素数22のドコサン酸(ベヘン酸)やこれら脂肪酸のエステル化物又は酸ハロゲン化物が挙げられる。また、混合脂肪酸や硬化脂肪酸として牛脂脂肪酸、ヤシ脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸およびそれらの硬化物などが挙げられる。これらの中でも、工業的に入手しやすく紙厚向上効果がより優れる点で炭素数12~22の一価脂肪酸が好ましい。より好ましくは炭素数12~20の飽和の直鎖アルキル基を有する一価脂肪酸である。一価脂肪酸(a-1)はその1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0012】
炭素数2~3のアルキル基を有するモノアルカノールアミン(a-2)としては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンが挙げられ、これらの中でも、モノエタノールアミンが工業的に入手しやすく安価な点で好ましい。モノアルカノールアミン(a-2)はその1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0013】
炭素数8~22の一価脂肪酸(a-1)と炭素数2~3のアルキル基を有するモノアルカノールアミン(a-2)の反応物である化合物(A)は、どのような方法で製造されても構わないが、例えば、一価脂肪酸(a-1)と、モノアルカノールアミン(a-2)とを必要により公知のアミド化触媒を用いて100~200℃で0.5~10時間反応させる方法などがあげられる。他に一価脂肪酸無水物とモノアルカノールアミン(a-2)の反応、一価脂肪酸ハロゲン化物とモノアルカノールアミン(a-2)の反応、一価脂肪酸エステルとモノアルカノールアミン(a-2)との反応も例示できる。
【0014】
一価脂肪酸(a-1)とモノアルカノールアミン(a-2)との反応においては、一価脂肪酸(a-1)のカルボキシル基とモノアルカノールアミン(a-2)のアミノ基が脱水縮合した脂肪酸モノアルカノールアミドのほかに、一価脂肪酸(a-1)のカルボキシル基とモノアルカノールアミン(a-2)の水酸基の脱水縮合物であるエステル化合物が副生成物として生成する。さらにモノアルカノールアミン(a-2)のアミノ基と水酸基の両方が一価脂肪酸(a-1)のカルボキシル基と脱水縮合反応したアミド-エステル化合物も副生成物として生成する。また、一価脂肪酸(a-1)とモノアルカノールアミン(a-2)の未反応物もわずかに残留する。これらの副生成物および未反応物が化合物(A)に多量に含まれると前記化合物(A)の紙厚向上効果を阻害する恐れがあり、また、水性分散液である本紙用添加剤の乳化分散性および安定性を損なうおそれがある。そのためこれら副生成物および未反応物の含有率は少量であることが好ましく、化合物(A)に対して50質量%以下が好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。化合物(A)、副生成物、未反応物の質量比は体積排除クロマトグラフィーや核磁気共鳴法など既知の方法から算出できる。なお、本発明において前記副生成物および前記未反応物は化合物(A)の質量部に含まれるものとする。一価脂肪酸(a-1)の代わりに一価脂肪酸無水物、一価脂肪酸ハロゲン化物、一価脂肪酸エステルを使用した場合も相当する副生成物や未反応物は化合物(A)の質量部に含まれることとする。
【0015】
(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)(以下「ポリマー(B)」と表記)は(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)(メタ)アクリルアミドとを、(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)の割合で含み、(b-3)疎水性連鎖移動剤を(b-1)と(b-2)の総和に対して0.1~3(モル%)含むモノマー類の重合物である。
【0016】
本紙用添加剤は水を媒体とする水性分散液であり、ポリマー(B)は化合物(A)の乳化分散剤として機能すると考えられる。(b-1)アニオン性モノマーがポリマー(B)のポリマー鎖に導入されることにより、分散粒子間の静電反発による水性分散液の安定化に寄与し、さらに本紙用添加剤が抄紙系に添加された際にカチオン性物質である硫酸バンドや抄紙系内に存在する各種金属塩、歩留まり剤を介して本紙用添加剤がパルプ表面により効率的に定着し、紙厚向上効果、発泡抑制効果を高めることができると考えられる。また、(b-3)疎水性連鎖移動剤がポリマー(B)に導入される(理論的には主にポリマー末端に導入される)ことにより、化合物(A)との疎水-疎水相互作用による高い親和性によってポリマー(B)がより強固に化合物(A)の粒子表面に固着し、本紙用添加剤の乳化分散性(乳化時および乳化後における水性分散液中の粗大粒子の生成や粒子の凝集の抑制および凝集による沈降物、浮上物の発生の抑制)および高温保管時の経時での増粘抑制などの粘度安定性(貯蔵安定性)、ポンプ送液時の剪断力に対する機械的安定性、ポリマー(B)が粒子表面から脱離することを防ぐことで発泡抑制効果に寄与し、これら安定性の向上により本紙用添加剤の抄紙系内でのパルプ繊維への定着効率向上や抄紙機の汚染予防に寄与すると考えられる。
【0017】
アニオン性モノマーは、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種である。カルボキシル基およびスルホン酸基の塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、アルキルアミン塩等を例示でき、これらの中でも ナトリウム、カリウム、アンモニウム塩が好ましい。カルボキシル基を有するモノマー(以下「カルボン酸系モノマー」と表記)の中でも、一塩基性カルボン酸モノマーや、二塩基性カルボン酸モノマー及びその酸無水物が好ましく、具体的には、(メタ)アクリル酸などの一塩基性カルボン酸モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸等の二塩基性カルボン酸モノマー及びその酸無水物を例示できる。これらの中でも、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が好ましい。スルホン酸基を有するモノマー(以下「スルホン酸系モノマー」と表記)として、具体的にはスチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アリルスルホン酸等のスルホン酸系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルの硫酸エステル等の硫酸エステル系モノマー等が挙げられる。これらの中でも、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、メタクリル酸スルホエチル、メタリルスルホン酸が好ましい。
【0018】
(b-1)アニオン性モノマーは1種単独で、又は2種以上組み合わせて使用できるが、本発明において上記スルホン酸系モノマー類は上記カルボン酸系モノマーと比較し分散安定性に寄与する一方、水性分散液である本紙用添加剤のパルプ表面への定着についてはカルボン酸系モノマーがスルホン酸系モノマーに比較し優れることから、スルホン酸系モノマーとカルボン酸系モノマーは併用することが好ましいが、上記スルホン酸系モノマー類は上記カルボン酸系モノマーの半量以下であることが好ましい。
【0019】
(b-2)(メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミド及び/又はメタアクリルアミドである。
【0020】
(b-1)アニオン性モノマーと(b-2)(メタ)アクリルアミドの使用比率は、(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)である必要があり、(b-1):(b-2)=5~20:95~80(モル%)であることが好ましい。(b-1)アニオン性モノマーの使用量がポリマー(B)を構成する単量体の総モル和の2~30モル%の範囲にあるポリマー(B)で化合物(A)を水中に乳化分散させることで、安定性および紙厚向上効果に優れた紙用添加剤が得られる。(b-1)アニオン性モノマーの使用量が2モル%より少ない場合は、アニオン性不足に由来する粒子間の静電反発力の不足により化合物(A)を乳化分散させる能力がポリマー(B)に十分に付与されず、紙用添加剤製造時あるいは貯蔵時に分散粒子が凝集することによる異物の生成や分散粒子の浮上または紙用添加剤自身の増粘を引き起こし、紙厚向上効果の低下、製造器具、貯蔵容器、抄紙器具の汚れや送液時のポンプ負荷の増加の懸念がある。またアニオン性不足により、抄紙系に紙用添加剤が添加された際に粒子表面のポリマー(B)と硫酸バンド由来の(多価)金属との塩形成量が不足することとなり、紙用添加剤のパルプへの定着が低下し、十分な紙厚向上効果、および発泡抑制効果が得られない。逆に(b-1)アニオン性モノマーの使用量が30モル%より多い場合は、紙用添加剤製造時あるいは貯蔵時に分散粒子の浮上または紙用添加剤自身の増粘を引き起こし、抄紙系内ではポリマー(B)と硫酸バンド等に由来する多価金属塩や別途添加されるカチオン化澱粉や乾燥紙力剤などカチオン性基を有する物質が過剰な塩を形成してしまい、本紙用添加剤の分散物に凝集等が起き、紙厚向上効果が低下する。さらに、ポリマー(B)の水溶性が高まるために化合物(A)の粒子表面から脱離しやすく、脱離したポリマー(B)が抄紙系内の発泡を増加させ、抄紙時の操業性に悪影響をおよぼす。
【0021】
(b-3)疎水性連鎖移動剤として、具体的にはメルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルやメルカプトプロピオン酸n-オクチル等のメルカプトプロピオン酸エステル類、チオグリコール酸2-エチルヘキシルやチオグリコール酸n-オクチル等のチオグリコール酸エステル類、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等のメルカプタン類が挙げられる。また、α-メチルスチレンの不飽和二量体である2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンも疎水性連鎖移動剤として用いることができる。これらの中でも、メルカプトプロピオン酸エステル類、メルカプタン類が好ましく、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、メルカプトプロピオン酸n-オクチル、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタンがより好ましい。これらは1種単独または少なくとも2種以上を使用することができる。疎水性連鎖移動剤の使用量は(b-1)と(b-2)のモノマーの総モル和100モル%に対して0.1~3モル%である必要がある。0.1モル%未満ではポリマー(B)の末端への疎水性基の導入量が少なすぎてポリマー(B)の化合物(A)の粒子表面への固着が不十分となり、本紙用添加剤の安定性を損なう。また3モル%を超えると、ポリマー(B)が低分子量化しすぎるため、分散粒子の保護コロイド性を損ない、本紙用添加剤の乳化分散性や貯蔵安定性を悪化させる可能性がある。
【0022】
本願発明の効果を阻害しない限り、上記(b-1)~(b-3)の他に支障のない範囲でその他のモノマー類をポリマー(B)の共重合成分に加えることができる。その他のモノマー類としては例えば、ノニオン性モノマー、カチオン性モノマー、親水性連鎖移動剤、架橋剤が挙げられる。
【0023】
ノニオン性モノマーとして親水性であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ビニルホルムアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等、疎水性である、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等の炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等のその他(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、およびこれらの芳香環に炭素数1~4のアルキル基を有するスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびネオデカン酸ビニル等のカルボン酸の炭素数が1~20であるカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。これらは1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)と(b-2)の総モル和100モル%に対して多くても5モル%以下含むことが好ましい。
【0024】
カチオン性モノマーとしては、具体的には、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、アリルアミン、ジアリルアミン等や更にはこれらの第4級アンモニウム塩等が挙げられる。これらは1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)と(b-2)の総モル和100モル%に対して多くても5モル%以下含むことが好ましい。
【0025】
親水性連鎖移動剤として、具体的には、2-メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトグリコール、チオグリセリン、システアミン塩酸塩、メルカプトプロピオン酸及びその塩、チオグリコール酸及びその塩、チオ酢酸及びその塩などが挙げられる。これらは1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)と(b-2)のモノマーの総モル和100モル%に対して多くても3モル%以下含むことが好ましい。3モル%を超えると、ポリマー(B)が低分子量化しすぎるため、分散粒子の保護コロイド性を損ない、ポリマー(B)を含む本紙用添加剤の乳化分散性や貯蔵安定性が損なわれることがある。
【0026】
架橋剤としては、ラジカル重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーであれば特に限定されず、公知のものを使用することができ、具体的には、メチレンビスアクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミド類、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヘキサエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,3,5-トリアクロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン等の多官能(メタ)アクリレート類、ジビニルベンゼン等の芳香族ポリビニル化合物が挙げられる。これらは1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)と(b-2)の総モル和100モル%に対して多くても5モル%以下含むことが好ましい。5モル%超の架橋剤を用いることにより、分岐(架橋)構造がポリマー(B)に過剰に導入されることで、本紙用添加剤の乳化分散性や貯蔵安定性、機械的安定性、希釈安定性が損なわれることがある。
【0027】
ポリマー(B)の製造方法としては、一般的には水を媒体とする溶液重合を採用でき、前記モノマーを共重合させることにより得られる。溶液重合では、水のほかにイソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルイソブチルケトン等の溶媒をそれぞれ単独で、あるいは2種以上を混合して使用できる。また、前記重合で使用する重合開始剤としては特に限定はされず、過硫酸塩類、過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤などの各種のものを使用できる。また、pH調整剤として酸、アルカリおよび緩衝液を添加することができる。酸としては特に制限はされず、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸などの無機酸や酢酸、乳酸、クエン酸などの有機酸、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの酸性の塩等の各種のものを使用できる。アルカリとしては特に制限はされず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミン等の各種のものを使用できる。緩衝液としては特に制限はされず、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の各種のものを使用できる。酸、アルカリ、緩衝液は単独でも2種以上の組み合わせでも使用できる。ここで使用する酸、アルカリ、緩衝液は塩類(C)には含まれない。
【0028】
本発明の紙用添加剤における化合物(A)とポリマー(B)の質量比は固形分として(A):(B)=97~80:3~20である必要があり、その中でも95~85:5~15が好ましい。本紙用添加剤におけるポリマー(B)の含有量が3質量%未満では乳化分散能力が十分でなく、機械的安定性に劣る。また20質量%を超えて使用すると紙用添加剤の粘度が増加し、ポンプ送液可能な粘度にするために製品固形分を下げねばならずコストアップにつながり、さらに貯蔵安定性に劣る。また化合物(A)の分散に寄与しない余剰のポリマー(B)が抄紙系内において発泡を招く。
【0029】
塩類(C)は(c-1)多塩基酸と、(c-2)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種のアルカリ性物質、とからなる塩類である。
【0030】
塩類(C)には、水性分散液である本紙用添加剤の貯蔵時の経時的な粘度増加を著しく軽減する効果がみられた。本紙用添加剤の化合物(A)は水酸基を構造内に有しており、そのため化合物(A)を水性分散液の分散質とすると、水酸基と水分子との親和性から化合物(A)が水相に溶出しやすく、水性分散液の粘度が経時的に増加し安定性が損なわれやすい。一方、塩類(C)を水相に溶解させることで、化合物(A)の水相への溶出が大幅に抑制され、それに伴い粘度の経時的な増加も抑制されると考えられる。
【0031】
(c-1)多塩基酸は1分子で複数のプロトンを塩基に与えることができる酸であり、無機酸および有機酸のいずれも使用することができる。無機酸としては硫酸、炭酸、メタケイ酸(以上二塩基酸)、リン酸(三塩基酸)等のオキソ酸やこれらオキソ酸が脱水縮合したポリケイ酸、ポリリン酸等のポリオキソ酸等が挙げられる。有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルタミン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸(以上二塩基酸)、1,2,3-プロパントリカルボン酸、クエン酸、アコニット酸、トリメリット酸(以上三塩基酸)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、ナフタレンテトラカルボン酸(以上四塩基酸)等が挙げられる。入手しやすさから二塩基酸および三塩基酸が好ましい。化合物(A)の水相への溶出抑制効果による本紙用添加剤の貯蔵安定性に優れる点、および安価であることから硫酸、リン酸、クエン酸、コハク酸がさらに好ましい。
【0032】
(c-2)アルカリ性物質としては、酸のプロトンとの交換により塩を作る物質であり、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルキルアミン、アルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミン、アンモニアが挙げられる。塩として市販されるため入手しやすく安価であり、水に対する塩の溶解度が高いことから、アルカリ性物質としてはナトリウム、カリウム、マグネシウム、アンモニアが好ましく、化合物(A)の水相への溶出抑制効果による本紙用添加剤の貯蔵安定性に優れる点、および安価であることからナトリウム、アンモニアがさらに好ましい。
【0033】
塩類(C)は、水性分散液中で塩類自身の結晶が析出せず化合物(A)の水相への溶出抑制効果を十分に発揮できることから、20℃での水への溶解度が5g/100g-水以上であるものが好ましく、10g/100g-水以上であることがさらに好ましい。具体的には硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アンモニウム、硫酸モノエタノールアミン塩、硫酸トリエタノールアミン塩、硫酸ジメチルアミノエタノール塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三カリウム、コハク酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三アンモニウムおよびこれらの水和物などが挙げられる。これらは単独で用いても良く2種類以上を組み合わせても良い。なお、前記塩類(C)の水和物を使用する場合は水和水を除いた質量を塩類(C)の質量とする。
【0034】
本発明の紙用添加剤の水性分散液を製造するにあたり、乳化分散性および貯蔵安定性を向上させるために、公知の界面活性剤を適宜使用することができる。例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4~20である脂肪酸ソルビタンエステルや糖脂肪酸エステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、糖エステル及び各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4~20である長鎖アルキルスルホン酸塩、硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタリンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物などのアニオン性界面活性剤、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4~20である長鎖アルキルアミン塩、ポリオキシアルキレンアミン、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリウム塩、アルキルホスホニウム塩、及びアルキルスルホニウム塩等のカチオン性界面活性剤、並びに、各種ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤が挙げられる。ポリマー(B)がアニオン性であり、本紙用添加剤の粒子表面が負に帯電していることから、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤が好ましい。
【0035】
前記界面活性剤は、その1種を単独で又は2種以上を使用することができる。界面活性剤を使用する場合、その使用量としては、化合物(A)100質量%に対し、0.05~5質量%であることが、発泡性を抑えつつ、乳化分散性を高めるのに好ましく、0.1~3質量%がより好ましい。界面活性剤の質量は水(D)の質量に含めることとする。
【0036】
塩類(C)の使用量は塩類(C)と水(D)の質量比が(C):(D)=3~25:97~75である必要があり、塩類(C)の質量比が3より少ないと化合物(A)の水相への溶出抑制効果が不足するため、安定な水性分散液を得ることができない。また、塩類(C)の質量比が25より多い場合には塩によりポリマー(B)の静電反発が不足し、乳化分散性や貯蔵安定性が損なわれる可能性がある。そのなかでも(C):(D)=10~25:90~75が好ましい。ただし上記質量比の範囲内であっても、塩類(C)の水への溶解度を超えない範囲内での使用が紙用添加剤の安定性が良好となるため好ましい。
【0037】
本発明において、化合物(A)、ポリマー(B)、塩類(C)および水(D)からなる紙用添加剤を調製する方法は、特に限定されないが、例えば特公昭54-36242号公報に記載されているように、前記化合物(A)を予め油溶性の溶剤に溶かした溶液とポリマー(B)および水(D)を混合し、ホモジナイザー処理した後、溶剤を留去し、水中油型エマルションを製造するいわゆる溶剤法、特公昭53-32380号公報に記載されているように、溶融した化合物(A)を高温高圧下でポリマー(B)と水(D)とを混合し、ホモジナイザーを通して水中油型エマルションを製造するいわゆるメカニカル法、特開昭52-77206号公報に記載されているように、溶融した化合物(A)成分にポリマー(B)と一部の水とを混合した後、さらに水(D)を加えて油中水型エマルションを形成し、その後反転水(D)を添加して水中油型エマルションに相転移させるいわゆる転相法が用いられる。また、特開平10-226981号公報に記載されているような高剪断型回転式乳化分散機を用いて水中油型エマルションを形成するメカニカル法も用いられる。塩類(C)は、前記ホモジナイザーなどの機械処理工程や転相工程の前後いずれか少なくとも片方で添加することができるが、化合物(A)の水相への溶出抑制効果による乳化分散性の向上や水性分散液の安定性を考慮すると、前記機械処理工程や転相工程の前には少なくとも含有されていることが好ましい。および水(D)への添加物は、添加物の効果を消失しない条件において前記ホモジナイザーなどの機械処理工程や転相工程の前後いずれか少なくとも片方で添加することができる。
【0038】
本発明の効果を損なわず、かつ貯蔵時の安定性等に影響を与えない範囲内であれば、他に水(D)に可溶な有機溶剤、消泡剤、増粘剤、防腐剤、防錆剤、前記pH調整剤、充填剤、酸化防止剤、填料、染料等の各種添加剤を含有しても構わない。
【0039】
本発明の紙用添加剤の固形分はコスト、安定性の面から好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0040】
なお本発明における固形分とは、測定対象となるものを150℃20分加熱乾燥した後の質量の加熱乾燥前の質量に対する百分率とする。
【0041】
本発明の紙用添加剤の粘度は、低粘度である方が送液に費やすエネルギーが少量で済み、また抄紙系内に希釈添加する場合は速やかに均一な希釈液が得られる。好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以下である。本発明における粘度は、ブルックフィールド回転粘度計での測定値である。
【0042】
本発明の紙用添加剤の平均粒子径は貯蔵安定性の観点から好ましくは0.3~1.0μmである。本発明における平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2(株式会社堀場製作所製)で測定した、体積の累積度数が50%となる粒子径(D50)である。
【0043】
本発明の紙用添加剤は、紙厚向上剤として用いることができる。紙あるいは板紙の種類や求められる紙厚向上効果にもよるが、通常はパルプスラリーの乾燥質量に対して、固形分で0.1~1.5質量%添加されることで、所望の紙厚向上効果を得ることができる。また、紙の表面処理剤として使用することも可能であり、この場合は予め抄造された湿紙又は紙に噴霧、浸漬、クリアコート、ピグメントコート等の慣用方法で適用される。
【0044】
本発明の紙用添加剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、キッチンペーパーなどの家庭用薄葉紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、中芯、石膏ボード原紙等の板紙、紙器、緩衝材などのパルプモウルドが挙げられる。紙以外には改質木材、無機系建築材料が挙げられ、例えばパーティクルボード、ハードボード、インシュレーションボード、ロックウールボード等を挙げることができる。その中でも、紙厚向上効果により紙に厚さや柔軟性を付与できることから、印刷適性の向上や読み応えを向上させる各種印刷用紙や書籍用紙、耐折強度を向上させる紙器用板紙や板紙、良好な手触りを付与させる家庭用薄葉紙、衝撃に対する緩衝性が要求されるパルプモウルドが好ましい。
【0045】
本発明の紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料とポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維や再生セルロース繊維、綿などのパルプ以外のセルロース系繊維との混合物を含有してもよい。
【0046】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤、硫酸バンドなど一般的に紙を製造するにあたって使用される添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用添加剤と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0047】
填料としては、クレー、タルク、ホワイトカーボン、酸化チタン及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0048】
サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのような脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン及びロジンエステル系サイズ剤(以下「ロジンサイズ剤」と表記)、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション(以下「ASAサイズ剤」と表記)、2-オキセタノンの水性エマルション(以下「AKDサイズ剤」と表記)、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び本紙用添加剤以外の脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。これらの中で、一般的に使用されることが多いロジンサイズ剤、ASAサイズ剤、AKDサイズ剤の使用が好ましく、本発明の紙用添加剤との併用によりサイズ効果を向上させる場合があることからAKDサイズ剤の使用がさらに好ましい。
【0049】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0050】
湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアミン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。
【0051】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0052】
濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0053】
硫酸バンドは、紙中への本紙用添加剤の定着量を増加させる効果があるため、添加することが好ましい。硫酸バンドはパルプ乾燥質量に対して0.1~2質量%添加することがさらに好ましい。硫酸バンドは本発明の紙用添加剤を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【0054】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【実施例0055】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下における部及び%は特記しない限りすべて質量基準である。
【0056】
(Aの合成)
合成例1
温度計、冷却管、撹拌機を有するセパラブルフラスコに一価脂肪酸(a-1)としてステアリン酸さくら275.0g(日油株式会社製、ステアリン酸/パルミチン酸混合物、1.0モル)とアミド化触媒として75%リン酸1.3g(0.01モル)を添加し、145℃まで昇温しステアリン酸を溶解した。溶解を確認し、モノアルカノールアミン(a-2)としてモノエタノールアミン67.2g(1.1モル)を滴下し、160℃へ昇温し生成する水を除去しながら6時間反応させ、固形分100%の化合物(A)M-1を325.2g得た。
【0057】
合成例2~5および比較合成例2~4
表1に記載のように一価脂肪酸(a-1)の種類、モノアルカノールアミン(a-2)他の種類を変えた以外は合成例1と同等にして合成し、化合物(A)であるM-2~M-5、RM-2~RM-4を得た。
【0058】
比較合成例1
ステアリン酸とアンモニアの反応物であるステアリン酸アミドとして、日油株式会社製、アルフロー(登録商標)S-10をRM-1として使用した。
【0059】
【表1】
【0060】
(Bの合成)
合成例6
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えたフラスコに25℃撹拌下で窒素雰囲気下、イオン交換水199.6g、イソプロピルアルコール(IPA)367.5g、(b-1)アニオン性モノマーとしてイタコン酸(IA)62.7g(12モル%)およびナトリウム2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)25.0g(3モル%)、メタリルスルホン酸ナトリウム(SMAS)3.2g(0.5モル)、(b-2)(メタ)アクリルアミドとして50%アクリルアミド(AAm)水溶液482.6g(84.5モル%)、(b-3)疎水性連鎖移動剤としてノルマルドデシルメルカプタン(NDM)4.1g((b-1)と(b-2)の総和に対して0.5モル%)およびメルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル(MPAO)4.4g((b-1)と(b-2)の総和に対して0.5モル%)、親水性連鎖移動剤としてメルカプトエタノール(MET)3.1g((b-1)と(b-2)の総和に対して1.0モル%)、pH調整剤として25%水酸化ナトリウム水溶液11.1gを仕込み、65℃に昇温した後開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル2.8gを添加して重合反応を開始し、80℃で5時間反応させた。次いでイソプロピルアルコールを留去し、室温まで冷却することにより、固形分が35%であるポリマー(B)P-1を1000g得た。
【0061】
合成例7~22および比較合成例5~8
表2に記載のように(b-1)アニオン性モノマーの種類と量、(b-2)アクリルアミド/およびメタアクリルアミドであるアクリルアミド(AAm)の量、(b-3)疎水性連鎖移動剤の量と種類、その他連鎖移動剤、ノニオン性モノマー、疎水性モノマー、架橋剤、カチオン性モノマーの種類、量を変えた以外は合成例6と同様にして合成し、固形分が35%のポリマー(B)P-2~P-17、RP-1~RP-4を得た。
【0062】
【表2】
【0063】
表2中の記号の説明
IA:イタコン酸
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
AMPS:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
NaSS:スチレンスルホン酸ナトリウム
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
AAm:アクリルアミド
MPAO:メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル
NDM:n-ドデシルメルカプタン
tDM:tert―ドデシルメルカプタン
MET:メルカプトエタノール
HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
DPA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
HEGDA:ヘキサエチレングリコールジアクリレート
※(b-1)と(b-2)の総和に対するモル%
【0064】
(紙用添加剤の製造)
製造例1
温度計、冷却管、撹拌機を有する4口フラスコに前記で得られた化合物(A)であるM-1を200.0g仕込み、95℃まで昇温して加熱溶解した。溶融を確認後、攪拌下で固形分濃度35%のポリマー(B)であるP-1を63.4g(固形22.2g)、塩類(C)である硫酸アンモニウム81.7g、硫酸ナトリウムを35.0g、次いで90℃のイオン交換水119.9gを徐々に添加し粗分散液を作成した。作成した粗分散液を高圧乳化機(マントンゴーリン社製ホモジナイザー)を用いて乳化処理し、高温の乳化液を得た。乳化液を約10℃の水500gと徐々に混合して冷却することにより、固形分が33.7%、化合物(A)の濃度が19.8%である紙用添加剤E-1を得た。なお、紙用添加剤E-1における化合物(A)の濃度は、紙用添加剤E-1の固形分からポリマー(B)の固形分(2.2%)および塩類(C)の固形分(11.7%)を差し引くことで求めた。紙用添加剤E-1において、質量比は(A):(B)=90:10、(C):(D)=15:85となる。
【0065】
製造例2~30および比較製造例1~15
表3、表5に記載のように化合物(A)の種類と量、ポリマー(B)の種類と量、塩類(C)の種類と量を変えた以外は製造例1と同様にして製造し、紙用添加剤であるE-2~E-30、RE-1~RE-15を得た。
【0066】
製造例31
温度計、冷却管、撹拌機を有する4口フラスコに前記で得られた化合物(A)であるM-1を200.0g仕込み、95℃まで昇温して加熱溶解した。溶融を確認後、攪拌下でポリマー(B)であるP-1を63.4g(固形22.2g)、塩類(C)である硫酸アンモニウム81.7g、硫酸ナトリウムを35.0g、界面活性剤であるセルフロー120(第一工業製薬株式会社製)10.0g(固形4.0g)、次いで90℃のイオン交換水109.9gを添加し粗分散液を作成した。作成した粗分散液を高圧乳化機を用いて乳化処理し、高温の乳化液を得た。乳化液を約10℃の水500gと徐々に混合し、冷却することにより、固形分が33.9%、化合物(A)の濃度が20.0%である紙用添加剤E-31を得た。なお、紙用添加剤E-31における化合物(A)の濃度は、紙用添加剤E-31の固形分からポリマー(B)の固形分(2.2%)および塩類(C)の固形分(11.7%)、界面活性剤の固形分(0.4%)を差し引くことで求めた。紙用添加剤E-31において、質量比は(A):(B)=90:10、(C):(D)=15:85となる。
【0067】
製造例32
表3に記載のように界面活性剤の種類を変えた以外は製造例31と同様にして製造し、紙用添加剤であるE-32を得た。
【0068】
製造例1~32で得られた紙用添加剤E-1~E-32および比較製造例1~15で得られた比較例用の紙用添加剤RE-1~RE-15の固形分、粘度、平均粒子径、36℃の恒温槽中に2週間保管後の粘度(以下36℃2週間後粘度)を表4、表6に示す。固形分は、150℃の乾燥機内で20分加熱乾燥した後の質量の加熱前の質量に対する百分率を算出した。粘度はブルックフィールド回転粘度計にて25℃で測定した値であり、500mPa・s以下であれば使用可能であるが、それより高いと流動性に乏しく使用不可であることを示す。36℃2週間後粘度が500mPa・s以下であれば貯蔵安定性が良好であることを示す。平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960V2(株式会社堀場製作所製)を用いて、体積の累積度数が50%となる粒子径(D50)を測定した。平均粒子径は、0.3~1.0μmであることが乳化分散性と貯蔵安定性が良好であることを示す。
【0069】
なお比較例用の紙用添加剤RE-1、7、9~15は製造時に乳化不良により均一な水性分散液が得られなかった、もしくは得られた水性分散液の流動性がなかったため、固形分、粘度、粒子径、36℃2週間後粘度の測定を実施せず、比較例として評価していない。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】
【表5】
【0073】
【表6】
【0074】
(実施例1)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をカナディアン・スタンダード・フリーネス400mlに叩解し、パルプ濃度2.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを攪拌しながら、パルプの乾燥質量当たり、前記の紙用添加剤E-1を化合物(A)の濃度として0.4固形分質量%、硫酸バンドを1.5固形分質量%、カチオン化澱粉を0.5固形分質量%、AKDサイズ剤としてAD1614(星光PMC株式会社製)を0.1固形分質量%、軽質炭酸カルシウムを16固形分質量%となるように順次添加して紙料を調製した。なお、化合物(A)の濃度は紙用添加剤E-1全体の固形分質量よりポリマー(B)の固形分質量、塩(C)の固形分質量、添加剤の固形分質量を除いた値として算出した。この紙料を使用して、角型シートマシンにて抄紙して、坪量80g/mの手すき紙を得た。得られた手すき紙を23℃、相対湿度50%の条件下に24時間調湿した後、密度、サイズ度、比容積、比容積向上度を以下の方法により測定し、算出した。比容積向上度の値は紙厚向上効果の指標になる値であり、その値が高い程、紙厚向上効果が高い。比容積向上度とサイズ度の結果を表7に示す。
【0075】
サイズ度…JISP8122紙のステキヒトサイズ度試験方法
密度…JISP8118紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法
比容積…密度の逆数
比容積向上度…「(比容積)/(紙用添加剤無添加の場合の比容積※)×100-100」
※ 下記参考例1の比容積
発泡性試験…上記実施例1の抄紙前の紙料と同じ紙料をpH7.5の水道水でパルプ濃度0.25%に希釈し、円筒形の容器に入れた。円筒形容器内のパルプスラリーの一部をポンプで循環して1mの高さから容器中に落下させることを10分間継続して行い、10分後の液面全体に対する泡で覆われた液面面積の割合から、下記基準により判定を行った。
×:泡で覆われた液面面積が全体の50%以上であり、発泡しやすい。
△:泡で覆われた液面面積が全体の10%以上50%未満であり、やや発泡する。
○:泡で覆われた液面面積が全体の10%未満であり、発泡が抑制されている。
発泡性に関しては〇~△が実用レベルである。
【0076】
(実施例2~32、比較例2~6、8)
表7に記載のように紙用添加剤の種類を変えた以外は実施例1と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表7に示す。
【0077】
(参考例1)
実施例1において紙用添加剤を添加しない以外は実施例1と同様にして得た手すき紙について比容積とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表7に示す。
【0078】
【表7】
【0079】
製造例1~5と比較製造例1~3、実施例1~5と比較例2~3のそれぞれの対比からモノアルカノールアミンを使用しなかった場合、化合物(A)の乳化分散性に劣り、十分な紙厚向上効果が得られないことが確認できる。
【0080】
製造例1~5と比較製造例4、実施例1~5と比較例4の対比から一価脂肪酸(a-1)の炭素数が7より少ない場合、乳化性および貯蔵安定性が劣り、十分な紙厚向上効果が得られないことが確認できる。
【0081】
製造例6~17と比較製造例5、実施例6~17と比較例5の対比から、(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)(メタ)アクリルアミドとの割合が(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)の範囲より(b-1)アニオン性モノマーが少量になると、静電反発が低下することで貯蔵安定性が悪化し、抄紙系内の発泡を引き起こすことが確認できる。
【0082】
製造例6~17と比較製造例6、実施例6~17と比較例6のそれぞれの対比から、(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)(メタ)アクリルアミドとの割合が(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)の範囲より(b-1)アニオン性モノマーが多量になると、貯蔵時紙用添加剤自身の増粘を引き起こし、抄紙系内の発泡を増加させることが確認できる。
【0083】
製造例6~17と比較製造例7の対比から、ポリマー(B)に(b-3)疎水性連鎖移動剤を使用しなかった場合、疎水性が不足することから乳化分散性が著しく悪化し水性分散液が得られなかったことが確認できる。
【0084】
製造例6~17と比較製造例8、実施例6~17と比較例8のそれぞれの対比からポリマー(B)中の(b-1)アニオン性モノマーの割合が(b-1):(b-2)=2~30:98~70(モル%)の範囲より少なく、かつアニオン性モノマーの代わりにカチオン性モノマーを使用した場合、化合物(A)が水中で十分に分散安定化されず粒子が凝集し、十分な紙厚向上効果が得られず抄紙系内の発泡を引き起こすことが確認できる。
【0085】
製造例22~27と比較製造例9、製造例22~27と比較製造例10、製造例22~27と比較製造例11のそれぞれの対比から、(c-1)多塩基酸と(c-2)アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、アルキルアミン、アルカノールアミンおよびアルキルアルカノールアミンから選ばれる少なくとも1種のアルカリ性物質を含まない塩類(C)を使用した場合、乳化性の悪化および水性分散液の粘度の増加が起こり、安定な水性分散液が得られないことが確認できる。
【0086】
製造例6~17と比較製造例12の対比から、化合物(A):ポリマー(B)=97~80:3~20の範囲よりポリマー(B)が少量になると化合物(A)が水中で十分に分散安定化されず、水性分散液が得られないことが確認できる。
【0087】
製造例6~17と比較製造例13の対比から、化合物(A):ポリマー(B)=97~80:3~20の範囲よりポリマー(B)が多量になると水性分散液の粘度が増加し、安定な水性分散液として得られないことが確認できる。
【0088】
製造例28~30と比較製造例14の対比から、塩類(C)と水(D)の質量比が(C):(D)=3~25:97~75の範囲より塩類(C)が少量になると乳化性が著しく悪化し水性分散液が得られないことが分かる。
【0089】
製造例28~30と比較製造例15の対比から、塩類(C)と水(D)の質量比が(C):(D)=3~25:97~75の範囲より塩類(C)が多量になると固形分が高いために水性分散液の粘度が増加し、安定な水性分散液として得られないことが分かる。