(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058351
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】身体着用品
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20230418BHJP
A41D 27/28 20060101ALI20230418BHJP
A41D 1/00 20180101ALI20230418BHJP
A45C 15/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A41D13/005 103
A41D13/005 108
A41D27/28 D
A41D1/00 E
A45C15/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168322
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】591121513
【氏名又は名称】クラレトレーディング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】鳴海 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】杉原 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】矢野 貴大
【テーマコード(参考)】
3B011
3B030
3B035
3B045
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
3B011AC21
3B030AA01
3B030AA06
3B030AB08
3B035AA01
3B035AB03
3B035AB09
3B035AC21
3B035AD16
3B045AA35
3B045AA55
3B045CA07
3B045GA02
3B045GA04
3B045LA10
3B045LB01
(57)【要約】
【課題】高い熱交換効率(冷却効率)を実現するとともに、着用感や着用時の快適性に優れる、携帯型ラジエーターを収容するための身体着用品を提供すること。
【解決手段】吸気口と、前記吸気口に対向して配置される排気口とを有する携帯型ラジエーターを収容するラジエーター収容部を備える身体着用品であって、
前記ラジエーター収容部が、身体着用品を着用した際に着用者側に配置される、前記ラジエーターを支持するための前面支持部と、前記前面支持部に対向して配置される後面支持部とを有し、
ラジエーター収容部の前記前面支持部が配置する側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第1通気性領域が存在し、ラジエーター収容部の前記後面支持部が配置する側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第2通気性領域が存在し、
身体着用品を着用する際に、前記前面支持部の着用者側に、ラジエーターへ吸気されるまたはラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が存在する、身体着用品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と、前記吸気口に対向して配置される排気口とを有する携帯型ラジエーターを収容するラジエーター収容部を備える身体着用品であって、
前記ラジエーター収容部が、身体着用品を着用した際に着用者側に配置される、前記ラジエーターを支持するための前面支持部と、前記前面支持部に対向して配置される後面支持部とを有し、
ラジエーター収容部の前記前面支持部が配置する側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第1通気性領域が存在し、ラジエーター収容部の前記後面支持部が配置する側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第2通気性領域が存在し、
身体着用品を着用する際に、前記前面支持部の着用者側に、ラジエーターへ吸気されるまたはラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が存在する、身体着用品。
【請求項2】
ラジエーター収容部が、前記前面支持部と後面支持部の側部に設けられた一対の側面支持部、および、底面支持部とをさらに有する、請求項1に記載の身体着用品。
【請求項3】
身体着用品は衣服であって、
前記衣服が着用時に着用者の胴体の背面を覆う後身頃を含んでなり、
ラジエーター収容部が、前記後身頃の着用者側に配置され、
前記ラジエーター収容部の前面支持部上端が位置する後身頃の幅が、前記後身頃の裾部の幅より長く、該衣服を着用する際に、該ラジエーター収容部に収容されるラジエーターの重みによって、着用者の身体とラジエーター収容部の前面支持部との間に、ラジエーターへ吸気される空気が流動可能な空間が生じる、請求項1または2に記載の身体着用品。
【請求項4】
身体着用品はリュックサックであって、
前記リュックサックが、着用時に着用者側に位置する背面壁、該背面壁に対向して配置される正面壁、前記背面壁と正面壁の側部に設けられた一対の側方マチ部、および、底面部を含んでなるリュックサック本体部を有し、
ラジエーター収容部が、前記リュックサック本体部の正面壁の内側に、前記リュックサック本体部の背面壁と前記ラジエーター収容部の前面支持部が対向するように配置され、
前記リュックサック本体部の側方マチ部のマチ幅が、前記ラジエーター収容部の側面支持部の奥行方向の長さより長く、前記リュックサック本体部の背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間に、ラジエーターへ吸気される空気が流動可能な空間が存在する、請求項1または2に記載の身体着用品。
【請求項5】
身体着用品は腰部に着脱可能なバッグであって、
前記バッグが、着用時に着用者側に位置する背面壁を有し、
ラジエーター収容部が、前記背面壁の着用者側とは反対側に、該背面壁と前記ラジエーター収容部の前面支持部が対向するように配置され、前記背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間に、ラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が存在する、請求項1または2に記載の身体着用品。
【請求項6】
第1通気性領域および第2通気性領域の通気度は、それぞれ、30cm3/(cm2・s)以上である、請求項1~5のいずれかに記載の身体着用品。
【請求項7】
第1通気性領域および第2通気性領域の少なくとも一部はメッシュ地から構成される、請求項1~4のいずれかに記載の身体着用品。
【請求項8】
リュックサック本体部の背面壁またはバッグの背面壁と、ラジエーター収容部の前面支持部との間に存在する空間における、前記背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間の最短距離は1cm以上である、請求項4または5に記載の身体着用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型ラジエーターを収容するための身体着用品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温環境下において作業等を行う際に熱中症予防等を目的として着用することのできる、種々の身体冷却用装置や身体冷却用衣服等が提案されている。例えば、特許文献1には、温調部、熱交換部および温調部と熱交換部との間で水を循環させるホース部を備える体温調節装置を利用する衣服であって、該体温調節装置を利用者の身体の所定位置に装着するために、前記温調部の収容部と熱交換部の収容部とを備える衣服が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるような衣服は、温調部の着脱性や熱交換部の位置安定性に優れるものの、熱交換部の収容部において、熱交換部への空気の吸込み口および吹き出し口にそれぞれ連通する通気口がL字状に配置されており、熱交換部およびその収容部における吸気と排気の効率性に劣る傾向がある。その上、作業時等に熱交換部が該衣服の着用者の背中に安定的に沿うように熱交換部の収容部が配置されており、熱交換部自体の熱が放熱し難くなることにより、熱交換効率の低下とともに、着用感や着用時の快適性の低下を生じやすいといった問題がある。
【0005】
本発明は、高い熱交換効率(冷却効率)を実現するとともに、着用感や着用時の快適性に優れる、携帯型ラジエーターを収容するための身体着用品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]吸気口と、前記吸気口に対向して配置される排気口とを有する携帯型ラジエーターを収容するラジエーター収容部を備える身体着用品であって、
前記ラジエーター収容部が、身体着用品を着用した際に着用者側に配置される、前記ラジエーターを支持するための前面支持部と、前記前面支持部に対向して配置される後面支持部とを有し、
ラジエーター収容部の前記前面支持部が配置する側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第1通気性領域が存在し、ラジエーター収容部の前記後面支持部が配置する側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第2通気性領域が存在し、
身体着用品を着用する際に、前記前面支持部の着用者側に、ラジエーターへ吸気されるまたはラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が存在する、身体着用品。
[2]ラジエーター収容部が、前記前面支持部と後面支持部の側部に設けられた一対の側面支持部、および、底面支持部とをさらに有する、前記[1]に記載の身体着用品。
[3]身体着用品は衣服であって、
前記衣服が着用時に着用者の胴体の背面を覆う後身頃を含んでなり、
ラジエーター収容部が、前記後身頃の着用者側に配置され、
前記ラジエーター収容部の前面支持部上端が位置する後身頃の幅が、前記後身頃の裾部の幅より長く、該衣服を着用する際に、該ラジエーター収容部に収容されるラジエーターの重みによって、着用者の身体とラジエーター収容部の前面支持部との間に、ラジエーターへ吸気される空気が流動可能な空間が生じる、前記[1]または[2]に記載の身体着用品。
[4]身体着用品はリュックサックであって、
前記リュックサックが、着用時に着用者側に位置する背面壁、該背面壁に対向して配置される正面壁、前記背面壁と正面壁の側部に設けられた一対の側方マチ部、および、底面部を含んでなるリュックサック本体部を有し、
ラジエーター収容部が、前記リュックサック本体部の正面壁の内側に、前記リュックサック本体部の背面壁と前記ラジエーター収容部の前面支持部が対向するように配置され、
前記リュックサック本体部の側方マチ部のマチ幅が、前記ラジエーター収容部の側面支持部の奥行方向の長さより長く、前記リュックサック本体部の背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間に、ラジエーターへ吸気される空気が流動可能な空間が存在する、前記[1]または[2]に記載の身体着用品。
[5]身体着用品は腰部に着脱可能なバッグであって、
前記バッグが、着用時に着用者側に位置する背面壁を有し、
ラジエーター収容部が、前記背面壁の着用者側とは反対側に、該背面壁と前記ラジエーター収容部の前面支持部が対向するように配置され、前記背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間に、ラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が存在する、前記[1]または[2]に記載の身体着用品。
[6]第1通気性領域および第2通気性領域の通気度は、それぞれ、30cm3/(cm2・s)以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の身体着用品。
[7]第1通気性領域および第2通気性領域の少なくとも一部はメッシュ地から構成される、前記[1]~[4]のいずれかに記載の身体着用品。
[8]リュックサック本体部の背面壁またはバッグの背面壁と、ラジエーター収容部の前面支持部との間に存在する空間における、前記背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間の最短距離は1cm以上である、前記[4]または[5]に記載の身体着用品。
なお、上記通気度の単位における「s」は「秒」であり、以下、「s」と表記する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高い熱交換効率(冷却効率)を実現するとともに、着用感や着用時の快適性に優れる、携帯型ラジエーターを収容するための身体着用品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】
図1Aは、本発明の身体着用品の一実施態様である構成を説明する図である。
【
図1B】
図1Bは、
図1Aの身体着用品に携帯型ラジエーターを挿入した構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、本発明の身体着用品の一実施態様である構成を説明する図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施態様である衣服タイプの身体着用品の内側を正面側から模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、衣服タイプの身体着用品の着用時の一態様を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施態様であるリュックサック型の身体着用品を正面壁側から模式的に示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施態様であるリュックサック型の身体着用品を側面側から模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施態様であるリュックサック型の身体着用品を正面壁側から模式的に示す斜視図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施態様であるポシェット型の身体着用品を正面壁側から模式的に示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施態様であるポシェット型の身体着用品を側面側から模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0010】
本発明の身体着用品は、携帯型ラジエーターを収容するための身体着用品であって、吸気口と、前記吸気口に対向して配置される排気口とを有する携帯型ラジエーターを収容するためのラジエーター収容部を備える。本発明の身体着用品において、前記ラジエーター収容部は、身体着用品を着用した際に着用者側に配置される、ラジエーターを支持するための前面支持部と、該前面支持部に対向して配置される後面支持部とを有する。前面支持部側および後面支持部側には、それぞれ、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする通気性領域が存在しており、身体着用品を着用する際に、前記前面支持部の着用者側に、ラジエーターへ吸気されるまたはラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が存在するよう設計されている。このような構造を有する本発明の身体着用品は、ラジエーター収容部における通気性が高く、ラジエーターへ吸気されるまたはラジエーターから排気される空気の流れを妨げず、ラジエーター収容部に熱がこもり難くなるため、ラジエーターの吸排気効率および熱交換効率が高まるとともに、着用時の良好な快適性を確保することができる。
【0011】
以下、本発明の一実施態様に係る身体着用品の構成について、図に基づいて説明する。
図1Aは、本発明の身体着用品の構成を説明する図であって、身体着用品に備わるラジエーター収容部の構成を簡易的に示す。本発明の一実施態様において、身体着用品(1)(
図1Aにおいては身体着用品の本体部の一部を図示)は、ラジエーター収容部(2)を備えており、前記ラジエーター収容部(2)は、身体着用品を着用した際に着用者側に配置される、ラジエーター(図示せず)を支持するための前面支持部(11)と、前記前面支持部(11)に対向して配置される後面支持部(12)とを有する。なお、以下、ラジエーター収容部以外の身体着用品を構成する部分を総称して、身体着用品の「本体部」ともいい、本明細書に身体着用品の具体的態様として後述する衣服、リュックサックおよびポシェットにおいても同様とする。
【0012】
図1Bに示すように、
図1Aに示す身体着用品(1)のラジエーター収容部(2)には携帯型のラジエーター(3)が収容される。身体着用品(1)は、ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)側が着用者側に位置するように着用され、着用時に前面支持部(11)と着用者との間に、ラジエーター(3)へ吸気される、または、ラジエーター(3)から排気される空気が流動可能な空間が形成される。
【0013】
ラジエーター収容部は、前面支持部および後面支持部を含んで構成され、携帯型ラジエーターを身体着用品に収容可能である限り、その形態は特に限定されるものではない。例えば、ポケット型、ベルト状の支持部材によって固定するもの等であってよい。ラジエーター収容部を構成する前面支持部および後面支持部の形状は、ラジエーター収容部の形状にあわせて、それぞれ、面状、ベルト状、帯状、ひも状等であってよい。
【0014】
ラジエーター収容部がポケット型である場合、身体着用品に対してラジエーターを収容しやすく、着用者が種々の動作や姿勢をとる場合であっても、ラジエーターを安定的に収容することができる。ポケット型のラジエーター収容部は、例えば、
図1Aおよび
図1Bに示すように、前面支持部(11)および後面支持部(12)に加えて、前記前面支持部(11)と後面支持部(12)の側部に設けられた一対の側面支持部(15)、および、ラジエーター収容部(2)の底部である底面支持部(16)とから構成され得る。また、ラジエーター収容部(2)の上面には、着用者の動き等によるラジエーターの飛出しや落下を防止するための上面支持部(18)が設けられていてもよい。後面支持部(12)は身体着用品(1)の本体部の構成(ラジエーター収納部を除く身体着用品の構成)の一部であってもよい。
【0015】
ベルト状の前面支持部によってラジエーターを固定するタイプのラジエーター収容部(2)は、例えば、
図2に示すように、ベルト状の支持部材(17)をラジエーター収容部(2)の前面側で交差するように配置することにより、ラジエーターの前面、後面および底面等においてラジエーター(3)を身体着用品(1)に固定することができる。ラジエーター(3)を収容する際に、ベルト状支持部材(17)は、収容されるラジエーターの形状に応じて前面支持部、後面支持部、側面支持部および/または底面支持部を構成し得る。
図2に示す身体着用品(1)は、ベルト状の支持部材(17)から構成される前面支持部(11)側が着用者側に位置することになり、着用時に前面支持部(11)と着用者との間に、ラジエーター(3)へ吸気される、または、ラジエーター(3)から排気される空気が流動可能な空間が形成される。
【0016】
図1Aに示すように、ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)が配置する側には、ラジエーター(3)の吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第1通気性領域(13)が存在する。また、ラジエーター収容部(2)の後面支持部(12)が配置する側には、ラジエーター(3)の吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第2通気性領域(14)が存在する。ラジエーター収容部に収容されるラジエーターの吸気口および排気口は、第1通気性領域および第2通気性領域のいずれの側に面して配置されてもよいが、第1通気性領域側にラジエーターの吸気口が面して位置する場合、通常、第2通気性領域側にラジエーターの排気口が面して配置される。
【0017】
本明細書において「前面支持部が配置される側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第1通気性領域が存在」するとは、例えば、
図1Aのように第1通気性領域(13)が前面支持部(11)の一部を構成する場合に加えて、
図2のように、ラジエーター(3)の吸気口または排気口(3a)を覆う部材が存在せず、ラジエーターの吸排気口の着用者側にラジエーターへまたはラジエーターから空気(外気)が流出入し得る空間(領域)または孔が存在している場合も含まれる。同様に、「後面支持部が配置される側に、ラジエーターの吸気口または排気口への外気の流出入を可能とする第2通気性領域が存在」するとは、例えば、
図1Aのように第2通気性領域(14)が後面支持部(12)の一部を構成する場合に加えて、
図2のようにラジエーター(3)の吸気口または排気口(3a)を覆う部材が存在せず、ラジエーターの吸排気口の着用者とは反対側にラジエーターへまたはラジエーターから空気(外気)が流出入し得る空間(領域)または孔が存在している場合も含む。
【0018】
本発明の身体着用品において、第1通気性領域と第2通気性領域とは、互いに対向する面に設けられている。第1通気性領域と第2通気性領域とが互いに対向する面に位置することで、第1通気性領域からラジエーター内に吸気された空気が、ラジエーター内を直線的に進み、第1通気性領域に対向する面に位置する第2通気性領域を介して排気される、または、第2通気性領域からラジエーター内に吸気された空気が、ラジエーター内を直線的に進み、第1通気性領域に対向する面に位置する第2通気性領域を介して排気される。このようにラジエーター内へ供給され、ラジエーターから排気される空気が直線的に流れる本発明におけるラジエーター収容部の構造は、ラジエーターへの空気の吸排気口がL字状に配置される構造(例えば、前記特許文献1)に比べて、ラジエーターにおける空気の吸排気効率が向上しやすく、ラジエーターの熱交換効率や着用時の快適性に優れる。
【0019】
第1通気性領域および第2通気性領域の通気度は、それぞれ、30cm3/(cm2・s)以上であることが好ましい。第1通気性領域および第2通気性領域の通気度がそれぞれ前記下限以上であると、ラジエーター収容部における通気性が高く、ラジエーター収容部外からラジエーター内への空気の取込み、および、ラジエーター内からラジエーター収容部外への排気における空気の流れが妨げられ難い。これにより、ラジエーター収容部に熱がこもり難くなるため、ラジエーターの吸排気効率および熱交換効率が高まるとともに、着用時の高い快適性を確保することができる。本発明において、第1通気性領域および第2通気性領域の通気度は、より好ましくは200cm3/(cm2・s)以上、さらに好ましくは400cm3/(cm2・s)以上、特に好ましくは600cm3/(cm2・s)以上である。本発明における上記通気度は、JIS L 1096 通気性A法(フラジール形法)に規定される方法に従い、測定算出することができる。詳細には、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
第1通気性領域および第2通気性領域の通気度は高いほど、ラジエーターおよびラジエーター収容部における熱放出性に優れるため、それらの上限は特にない。本発明の一実施態様において、第1通気性領域および第2通気性領域の通気度は、例えば、通気度の一般的な測定装置(フラジール形通気性試験機)における測定限界値となる700cm3/(cm2・s)程度またはそれ以上であってもよい。
【0020】
第1通気性領域および第2通気性領域は、例えば、メッシュ構造の生地(メッシュ地)、通気度の高い布地、編地等で構成されていてもよく、ラジエーターの吸排気口の位置に合わせて前面支持部および/または後面支持部の一部をくり抜いた構造などであってよい。
【0021】
第1通気性領域および第2通気性領域は、それぞれ、前面支持部または後面支持部が配置する面の全領域に設けられていても、前記支持部の一部に設けられていてもよい。第1通気性領域および第2通気性領域は、それぞれ、ラジエーターの吸気口または排気口と連通するように設けられていることが好ましく、ラジエーターの吸気口または排気口が存在する領域全体において通気性領域が連通して設けられていることがより好ましい。ラジエーターの吸排気口と第1通気性領域または第2通気性領域とが連通していると、ラジエーター収容部における通気性が良好となり、ラジエーター自身の熱が放出しやすくなる。これにより、ラジエーターの熱交換効率(冷却効率)が向上しやすくなるとともに、ラジエーターが放出する熱がラジエーター収容部にこもり難く、着用時の快適性に優れる身体着用品が得られる。第1通気性領域と第2通気性領域とは、互いに対向される面に設けられるものであるが、それらの領域の大きさや形状、構成材料等は、同一であっても異なっていてもよい。
【0022】
本発明の身体着用品においては、着用時に前面支持部と着用者との間にラジエーターへ吸気される、または、ラジエーターから排気される空気が流動可能な空間が形成されることにより、第1通気性領域を通してラジエーターへ流入する空気の流れ、または、ラジエーターから第1領域を通して排出される空気の流れを妨げない高い通気性を確保し得る。これにより、ラジエーターの熱交換効率(冷却効率)が向上しやすくなるとともに、ラジエーターが放出する熱がラジエーター収容部にこもり難く、着用時の快適性に優れる身体着用品が得られる。着用時に前面支持部と着用者との間に形成される、ラジエーターへ吸気される、または、ラジエーターから排気される空気が流動可能な空間(以下、「空間(A)」ともいう)は、着用者と前面支持部との間に最短距離として、好ましくは1cm以上、より好ましくは3cm以上、さらに好ましくは5cm以上、特に好ましくは10cm以上、とりわけ好ましくは15cm以上存在する。なお、前面支持部の着用者側に、ラジエーターへ吸気される、または、ラジエーターから排気される空気の流動を十分に可能とする空間が存在し、これにより生じる空気の流れを妨げないものである限り、前面支持部と着用者との間に身体着用品を構成する他の部材(例えば、後述する
図5における背面壁(31)、
図8における背面壁(41)など)が存在していてもよい。
【0023】
本発明の身体着用品において、ラジエーター収容部を構成する材料は特に限定されるものではく、身体着用品の用途や種類、収容するラジエーターの大きさや重さ、形状等に応じて、衣類やバッグ、袋、靴、靴下、手袋、帽子、エプロン、ハンカチ、タオル、カーテン、布団、テーブル掛け、テント、ネット、漁網などの製造に一般的に用いられている公知の繊維からなる生地、樹脂製の成型品、フィルムやシート状物等の材料から適宜選択すればよい。身体着用品におけるラジエーター収容部は、例えば、ラジエーターを支持し、空間(A)を保持し得る適度な強度を有しながら、着用者の動きを制限しないような材料からなることが好ましい。そのような材料としては、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PLA(ポリ乳酸)、アクリル、アラミドなどの合成繊維、綿、麻(亜麻、苧麻等)などの植物繊維、毛(羊毛、モヘア、アルパカ、らくだ、カシミヤ、アンゴラ等)、絹などの動物繊維、アセテート、トリアセテート、プロミックスなどの半合成繊維、レーヨン、キュプラ、ポリノジック、リヨセル、テンセルなどの再生繊維などの公知の繊維から構成される生地等が挙げられる。ラジエーター収容部を構成する前面支持部および後面支持部、必要に応じて、側面支持部、底面支持部および上面支持部は、それぞれ、同一の材料から構成されていてもよく、異なる材料から構成されていてもよい。
【0024】
本発明の身体着用品は、携帯型のラジエーター収容部を、上記特定の構造を確保し得るよう配置することができ、利用者が身に着けて使用し得るものである限り、その形態は特に限定されるものではない。本発明の身体着用品の形態としては、例えば、衣服、リュックサックやバックパック、ポシェット、ウエストポーチなどのバッグ、腰袋等が挙げられる。
以下、本発明の一実施態様としての衣服、リュックサック、および腰部に着脱可能なバッグを例示して、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明の身体着用品の構成として先に記載した各部の構成等については、その効果に影響を及ぼさない限りにおいて、以下の具体的態様においても当然に採用される。
【0025】
<衣服タイプの身体着用品>
図3は、本発明の身体着用品の一実施態様である衣服(ベスト)の構成を簡易的に示す図である。
図3は、本発明の衣服の内側(着用者側)の構成を示す。
図3に示す一実施態様において、本発明の衣服(20)は、着用時に着用者の胴体の背面を覆う後身頃(21)を含んで構成されており、該後身頃(21)の着用者側にポケット型のラジエーター収容部(2)が配置されている。
図4に示すように、本発明の衣服(20)においては、ラジエーター収容部(2)に収容されるラジエーター(3)の重みによって着用者とは反対側にラジエーターが倒れこむようなかたちで、着用者の身体とラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)との間に、ラジエーターへ吸気される空気が流動可能な空間(A)が形成される。ラジエーター収容部(2)の上面には、着用者の動き等によるラジエーターの飛出しや落下を防止するための上面支持部(18)が設けられていてもよい。
また、本発明の衣服(20)にはラジエーター収容部(2)の他に、必要に応じて、
図3に示すような、バッテリー収容部(4)、着用者の身体を冷却または加温する温調器へ冷却液等の熱媒体を移送するためのホースの収容部(5)等を有していてもよい。これらの配置は、衣服の用途、形状等に応じて適宜決定し得る。
【0026】
空間(A)が形成されることにより、ラジエーターを起動した際に、ラジエーターに十分な量の空気(外気)を継続的に供給することができる。本発明の衣服の一実施態様においては、第1通気性領域からラジエーター内に吸気された空気は、ラジエーター内を通った後に、第1通気性領域に対向する面に位置する第2通気性領域から排気される。これにより、ラジエーターの熱交換効率(冷却効率)が向上しやすくなるとともに、ラジエーターが放出する熱がラジエーター収容部にこもり難く、着用時の快適性に優れる衣服となる。
【0027】
着用時に、ラジエーターの重みによって、空気の流れをより妨げ難い空間(A)を効果的に形成するために、ラジエーター収容部は、ラジエーター収容部の前面支持部の上端部が後身頃の着丈の2/3より下側に位置するように配置されていることが好ましく、1/2より下側に位置するように配置されていることがより好ましい。また、ラジエーター収容部の前面支持部の下端部(底面支持部がある場合には底面支持部)が後身頃の着丈の1/10より上側に位置するように配置されていることが好ましく、1/8より上側に位置するように配置されていることがより好ましい。なお、前面支持部の上端部とは、ラジエーター収容部を構成する前面支持部において最も上側(衣服の首口側)に位置する端部を意味し、前面支持部の下端部とは、ラジエーター収容部を構成する前面支持部において最も下側(衣服の裾側)に位置する端部を意味する。
【0028】
図3に示すように、本発明の衣服(20)において、ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)の上端が位置する後身頃(21)の幅(X1)(以下、単に「幅(X1)」ともいう)は、後身頃(21)の裾部の幅(X2)(以下、単に「幅(X2)」ともいう)より長い。裾部の幅(X2)より前面支持部の上端部が位置する幅(X1)が長いことにより、ラジエーター収容部の備え付け部において、衣服を着用した際にラジエーターがその重みによって着用者とは反対側へ倒れこみ得る空間を形成する余裕が生じる。
【0029】
幅(X1)は、前面支持部の上端部の位置において後身頃の着丈方向に直交する幅方向に対して水平に測定される後身頃の幅(長さ)である。前面支持部の上端部が衣服の後身頃の幅方向に水平に配置されていない場合には、幅(X1)は、前面支持部の最上端の位置において後身頃の着丈方向に直交する幅方向に対して水平に測定される。また、幅(X2)は、後身頃の裾部分を幅方向に測定した後身頃の幅(長さ)である。なお、後述するように、本発明の裾部分は着用者の腰部にフィットして留まるようゴム状部材等を含み、伸縮可能に構成されている場合があるが、この場合における幅(X2)は、衣服を未着用の状態で自然放置した際(すなわち、通常、裾部分は収縮状態である)の後身頃の幅(長さ)を意味する。
【0030】
本発明の衣服においては幅(X2)が幅(X1)より短く、着用時に裾部分が着用者の腰部にフィットして留まり、すぼんだ構造となるよう設計されていることが好ましい。裾部分が腰部で留まり、幅(X1)が幅(X2)より長いことにより、後身頃の裾部分からラジエーター収容部が配置される胴/胸廻り付近にかけて着丈方向および幅方向にゆとりができ、ラジエーター収容部にラジエーターを収容した際にラジエーターがその重みによって着用者と反対側へ倒れこむことのできる空間が生じる。
【0031】
収容するラジエーターの大きさ(厚みや幅)にもよるが、本発明の衣服の一実施態様において、幅(X1)は幅(X2)の好ましくは110%以上、より好ましくは120%を超える、さらに好ましくは130%以上であり、また、好ましくは180%以下、より好ましくは170%以下、さらに好ましくは160%以下である。幅(X1)が幅(X2)に対して上記下限以上であると、ラジエーターが自重により着用者とは反対側へ倒れこむのに十分な余裕が生じるため、着用者とラジエーター収容部との間に適度な大きさの空間(A)を形成しやすい。また、幅(X1)が幅(X2)に対して上記上限以下であると、着用時の後身頃のもたつきを抑え、動きやすい衣服が得られる。なお、幅(X1)にゆとりを持たせるために、着丈(後身頃の衿付け根部から裾部までの直線長さ)が一般的な衣服における長さより長くなる場合もある。
【0032】
また、本発明の衣服において、幅(X1)と幅(X2)は、収容するラジエーターの重みにより空間(A)を生じ得る関係にあれば特に限定されるものではない。本発明の一態様において、幅(X1)と幅(X2)の長さは、衣服の用途、形態等に応じて、それぞれ、着用者と前面支持部との間に最短距離として、好ましくは1cm以上、より好ましくは5cm以上、さらに好ましくは10cm以上存在するよう適宜設計することができる。
【0033】
着用者とラジエーター収容部との間に適度な大きさの空間(A)を形成し得るよう幅(X1)および幅(X2)を適切に調整し得る限り、本発明の衣服における各部の寸法は、ラジエーター収容部を備えていない一般的な衣服の寸法に基づき、衣服の種類、用途、着用者の体型等に応じて適宜設計できる。
【0034】
本発明の衣服においては、第1通気性領域および第2通気性領域の少なくとも一部がメッシュ地から構成されていることが好ましく、少なくとも第2通気性領域の一部または全部がメッシュ地から構成されていることがより好ましい。例えば、ラジエーター収容部の後面支持部を後身頃の一部として形成し、後面支持部に対応する前記後身頃の領域をメッシュ地とすることにより、第2通気性領域を確保することができ、ラジエーターからの排気を効率的に行うことができる。
【0035】
本発明の衣服において、ラジエーター収容部を構成する材料としては、ラジエーターを支持し得る適度な強度を有しながら、着用者の動きを妨げ難い材料からなることが好ましく、ラジエーター収容部を構成し得る材料として先に挙げた材料の中から適宜選択すればよい。例えば、前面支持部、並びに、存在する場合に側面支持部および底面支持部は同じ材料から形成されていてよく、その材料としては、例えば、ポリエステルやナイロンから構成される生地が好ましい。
【0036】
本発明の衣服を構成する材料は、特に限定されるものではなく、衣服の用途、種類等に応じて衣服の製造に一般的に用いられる繊維等からなる生地などから適宜選択すればよい。衣服の裾部分は、着用時に着用者の腰部にフィットして留まるよう、伸縮可能に設計されていることが好ましい。伸縮可能な裾部分を構成し得る材料としては、例えば、ゴム状部材、ストレッチ性の高い生地等が挙げられる。衣服の裾部を伸縮性素材で構成する以外にも、裾部を絞り着用者の腰部にフィットさせるために、裾部に紐通し穴を設けて、そこに通した紐を縛り裾部の長さを調整する、裾部にスナップボタンを設けて裾部の生地の長さを調整する、裾部にアジャスターを付けて調整する、などしてもよい。伸縮性、取扱性、設計の容易性等の観点から、ゴム状部材を用いることが好ましい。
【0037】
本発明の身体着用品である衣服としては、例えば、種々の作業服、防護服、スポーツウェア、介護服、防寒着、一般カジュアル衣料、合羽、スーツ、コート、礼服等が挙げられる。
【0038】
<リュックサック型の身体着用品>
図5は、本発明の身体着用品の一実施態様であるリュックサックを正面壁側から模式的に示す斜視図であって、本発明のリュックサックの構成を簡易的に示す。
図5に示す一実施態様において、本発明のリュックサック(30)は、着用時に着用者側に位置する背面壁(31)、該背面壁(31)に対向して配置される正面壁(32)、前記背面壁(31)と正面壁(32)の側部に設けられた一対の側方マチ部(33)、底面部(34)、上面部(35)および一対の肩紐(36)を含んでなるリュックサック本体部を有している。背面壁(31)、側方マチ部(33)、底面部(34)および上面部(35)は、所望の形状となるよう互いに縫い合わされている。正面壁(32)は底面部(34)と対応する部分で底面部(34)と縫い合わされており、側方マチ部とはファスナー(図示せず)を介して開閉可能な構造となるよう縫製されている。かかる構造においては、正面壁を着用者とは反対側に開閉できる。
【0039】
リュックサック(30)には、ポケット型のラジエーター収容部(2)が、前記リュックサック本体部の正面壁(32)の内側に、前記リュックサック本体部の背面壁(31)と前記ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)が対向するように配置されている。ラジエーター収容部(2)はリュックサック本体部の正面壁(32)に接して設けられており、正面壁(32)がラジエーター収容部(2)の後面支持部を構成していてもよい。リュックサック(30)には、ラジエーター収容部(2)の他に、必要に応じて、バッテリー収容部(4)等が備えられていてもよい。これらの配置は、リュックサックの形状等に応じて適宜決定し得る。
【0040】
図6に示すように、本発明のリュックサック(30)においては、リュックサック本体部の側方マチ部(33)のマチ幅(Y1)(以下、単に「マチ幅(Y1)」ともいう)が、前記ラジエーター収容部(2)の側面支持部(15)の奥行方向の長さ(Y2)(以下、「奥行長さ(Y2)」ともいう)より長く、前記リュックサック本体部の背面壁(31)とラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)との間に、ラジエーターへ吸気される空気が流動可能な空間(A)が形成される。
【0041】
空間(A)が形成されることにより、ラジエーターを起動した際に、ラジエーターに十分な量の空気(外気)を継続的に供給することができる。本発明のリュックサックの一実施態様においては、第1通気性領域からラジエーター内に吸気された空気は、ラジエーター内を通った後に、第1通気性領域に対向する面に位置する第2通気性領域から排気される。これにより、ラジエーターの熱交換効率(冷却効率)が向上しやすくなるとともに、ラジエーターが放出する熱がラジエーター収容部にこもり難くなる。
【0042】
本明細書において、前記マチ幅(Y1)は、リュックサック本体部の側方マチ部の最小マチ部のマチ幅を意味する。また、奥行長さ(Y2)は、ラジエーター収容部の側面支持部の奥行方向における最大の長さ(すなわち、側面支持部の最大マチ幅)を意味する。マチ幅(Y1)が奥行長さ(Y2)よりも長いことにより、ラジエーター収容時にラジエーター収容部の前面支持部がリュックサック本体部の背面壁と接近または接触することなく、空間(A)を形成できる。
【0043】
着用者の姿勢や動きに関わらず、着用時に空間(A)を保持し得るよう、マチ幅(Y1)は奥行長さ(Y2)の好ましくは125%以上、より好ましくは145%以上、さらに好ましくは165%以上である。また、不必要に大きな空間(A)が生じることによる着用性の低下等を防ぐ観点から、マチ幅(Y1)は奥行長さ(Y2)の好ましくは750%以下、より好ましくは550%以下、さらに好ましくは350%以下である。
【0044】
本発明の一実施態様において、リュックサック本体部の背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間に、その最短距離で1cm以上の空間(A)が存在することが好ましい。最短距離で1cm以上の空間(A)が形成されていると、空間(A)が存在することによる本発明の効果が得られやすい。かかる効果をより一層高めるために、空間(A)における前記最短距離は、より好ましくは2cm以上、さらに好ましくは3cm以上である。なお、上記最短距離は、本発明のリュックサックを着用し、着用者が直立姿勢を取った状態で測定した場合の距離を意味する。
【0045】
ラジエーター収容部は、リュックサック本体部の正面壁の内側に、その高さ方向(底面部からみた場合の上面部方向)の下方に配置されていることが好ましい。ラジエーター収容部が正面壁側の下方に位置することにより、ラジエーターを収納した際にリュックサックにおける重心が正面壁の下方外側方向に傾くことから、空気の流れをより妨げ難い空間(A)を効果的に形成できる。ラジエーター収容部は、例えば、正面壁の高さ方向の2/3より下側にラジエーター収容部の上端部が配置されていてよく、1/2より下側に配置されていることが好ましい。
【0046】
本発明のリュックサックにおいては、第1通気性領域および第2通気性領域の少なくとも一部がメッシュ地から構成されていることが好ましく、少なくとも第2通気性領域の一部または全部がメッシュ地から構成されていることがより好ましい。例えば、ラジエーター収容部の後面支持部をリュックサック本体の正面壁の一部として形成し、後面支持部に対応する前記正面壁の領域をメッシュ地とすることにより、第2通気性領域を確保することができ、ラジエーターからの排気を効率的に行うことができる。
【0047】
本発明の一実施態様においては、ラジエーターの熱交換効率、ラジエーター収容部における熱放出性等の観点から、リュックサック本体を補強するための補強部材を配置する領域以外がメッシュ地から構成されていてもよく、本発明のリュックサック本体部の背面壁、側方マチ部および正面壁部の一部または全域がメッシュ地から構成されていることが好ましい。
【0048】
メッシュ地を構成する材料としては、例えば、ポリエステルやナイロン等が挙げられる。リュックサック本体の形状保持性の観点から、ポリエステルが好ましい。
【0049】
本発明の一実施態様において、本発明のリュックサックは、少なくとも底面部、上面部および正面壁の両側端部(
図7中のドット部)に補強部材を用いることが好ましい。底面部および上面部に補強部材を用いることにより、リュックサックのマチ方向の強度が高まり、空間(A)の保持性が向上する。また、リュックサックの正面壁の両側端部に補強部材を用いることにより、着用時に正面壁が着用者側に沈み込みにくくなり、空間(A)の保持性が向上する。補強部材としては、通常のポリエステル製バッグやナイロン製バッグなどに一般的に用いられる公知のポリエステル生地やナイロン生地等が挙げられる。
【0050】
本発明の一実施態様においては、リュックサック本体部の正面壁および背面壁の周縁部(
図7中の太線部)を、例えばテープ状の生地により補強することが好ましい。リュックサック本体部の底面部、上面部および正面壁両端部において面状に補強部材を配置するとともに、正面壁および背面壁の周縁部を補強することにより、着用者の種々の姿勢や動きに対応して空間(A)を保持し得る形状保持性がより一層向上しやすい。このような補強用生地としては、ポリエステル生地やナイロン生地等が挙げられる。
【0051】
<腰部に着脱可能なバッグ>
図8は、本発明の身体着用品の一実施態様である腰部に着脱可能なバッグ(以下、「ポシェット」ともいう)の身体着用品を正面壁側から模式的に示す斜視図であって、本発明のポシェットの構成を簡易的に示す。
図8に示す一実施態様において、本発明のポシェット(40)は、着用時に着用者側に位置する背面壁(41)を有しており、ポケット型のラジエーター収容部(2)が、前記背面壁(41)の着用者側とは反対側に、該背面壁(41)と前記ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)が対向するように配置されている。ポシェット(40)には、ラジエーター収容部(2)の他に、必要に応じて、バッテリー収容部(4)等が備えられていてもよい。これらの配置は、ポシェットの形状等に応じて適宜決定し得る。ポシェット(40)は、例えば背面壁(41)の着用者側にベルト通しを設け、着用者のベルトに装着、固定して使用することができる。
【0052】
図9に示すように、本発明のポシェット(40)においては、前記背面壁(41)とラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)との間に、ラジエーターから排気される空気が流動可能な空間(A)が存在する。空間(A)が形成されることにより、ラジエーターを起動した際に、ラジエーターから空気の流れを妨げることなく継続的に排気できる。本発明のポシェットの一実施態様においては、第1通気性領域からラジエーター内に吸気された空気は、ラジエーター内を通った後に、第1通気性領域に対向する面に位置する第2通気性領域から排気される。これにより、ラジエーターの熱交換効率(冷却効率)が向上しやすくなるとともに、ラジエーターが放出する熱がラジエーター収容部にこもり難くなる。
【0053】
本発明のポシェットにおいて、第1通気性領域および第2通気性領域は、例えば、メッシュ構造の生地(メッシュ地)、通気度の高い布地、編地等で構成されていてもよく、ラジエーターの吸排気口の位置に合わせて前面支持部および/または後面支持部の一部をくり抜いた構造であってよい。本発明の一実施態様において、ポシェットの第1通気性領域および第2通気性領域は、前面支持部または後面支持部の構成部材をラジエーターの吸排気口の配置にあわせてくり抜いた構造である。
【0054】
本発明の一実施態様において、ポシェットの背面壁とラジエーター収容部の前面支持部との間に、その最短距離で1cm以上の空間(A)が存在することが好ましい。最短距離で1cm以上の空間(A)が形成されていると、空間(A)が存在することによる本発明の効果が得られやすい。かかる効果をより一層高めるために、空間(A)における前記最短距離は、より好ましくは1cm以上、さらに好ましくは2cm以上である。なお、上記最短距離は、本発明のポシェットを着用し、着用者が直立姿勢を取った状態で測定した場合の距離を意味する。
【0055】
空間(A)を確保するため、
図8に示すように、例えばラジエーター収容部(2)がポシェット(40)の背面壁(41)に対して、背面上部部材(42)を介して前面支持部(11)側で固定されている。背面上部部材(42)は、ラジエーターの排気口に連通する第1通気性領域を塞がない位置において、ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)と固定される。前面支持部(11)に面する空間(A)の空間面を可能な限り広くするため、背面上部部材(42)はポシェット(40)の背面壁(41)のできる限り上方部に配置し、背面上部部材(42)と前面支持部(11)との接着面積は、背面壁(41)と前面支持部(11)とを固定し得る限りにおいて小さくすることが好ましい。ポシェット(40)のラジエーター収容部(2)には、
図8に示すように、ラジエーター収容部(2)に着用者の動き等によるラジエーターの飛出しや落下を防止するための上面支持部(18)が設けられていてもよい。
【0056】
さらに、背面壁(41)の下方部には、前面支持部(11)の下方部の少なくとも一部と接するように背面下部部材(43)が配置される。背面壁(41)にラジエーター収容部(2)を背面上部部材(42)のみで固定する場合、ラジエーターの重みに起因する形態変化、着用者の姿勢や動き等によって、ラジエーター収容部(2)の下方部が背面壁側に接近しやすくなり、十分な空間(A)を確保できない場合がある。背面下部部材(43)は、ラジエーター収容部(2)の下方部が背面壁側に接近するのを防ぐ役割を果たす。背面下部部材(43)は、ラジエーターの排気口に連通する第1通気性領域を塞がない位置において背面壁(41)側に固定されることが好ましい。背面下部部材(43)は背面壁(41)および前面支持部(11)の両方に対して固定されていてもよく、背面壁(41)側のみに固定されていてもよい。
【0057】
背面上部部材(42)および背面下部部材(43)の厚みは、それぞれ、所望する空間(A)の空間距離(背面壁から前面支持部までの距離)に対応する。ラジエーター収容部(2)を安定的に固定しやすいことから、背面上部部材(42)と背面下部部材(43)の厚みは、互いに同じであることが好ましい。
背面上部部材(42)および背面下部部材(43)の大きさは特に限定されるものではないが、第1通気性領域を防ぐことなく、ラジエーターから排気される空気の流れを妨げないよう設計することが好ましい。背面上部部材(42)と背面下部部材(43)の大きさは同一であっても、異なっていてもよい。
【0058】
背面上部部材(42)と背面下部部材(43)の形状は特に限定されるものでなく、直方体、立方体、円柱、角柱、角錘、円錘、角錘台、円錐台、球、半球、多面体などが挙げられる。背面上部部材(42)および背面下部部材(43)は、互いに同一の形状であっても、異なる形状であってもよい。
【0059】
背面上部部材(42)および背面下部部材(43)を構成する部材は、着用者の種々の姿勢や動きに関わらず、空間(A)を保持するための強度を有する材料から形成されることが好ましい。そのような材料としては、例えば、EVA(エチレンビニルアセタートコポリマー)樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン、コルク等が挙げられる。背面上部部材(42)および背面下部部材(43)は、それぞれ、その全領域が同じ材料、素材から形成されていてもよく、複数の異素材を組み合わせて形成されていてもよい。また、空間(A)を保持するために必要な強度を確保し得る限り、部材の内側(内部空間)が空洞であってもよい。背面上部部材(42)および背面下部部材(43)を構成する材料は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0060】
本発明のポシェットを構成する材料は特に限定されるものではなく、構成部位に応じて、一般的なかばん製造に用いられている公知の生地等から適宜選択すればよい。例えば、背面壁は、ポシェットに収容されるラジエーターやバッテリー等の重みに耐え、ポシェット全体の形状を保持し得る材料から形成されることが好ましい。そのような材料としては、例えば、本発明のリュックサックの補強部材として用い得る材料と同様のものが挙げられ、これらの材料から板状の背面壁を形成することが好ましい。また、芯材を用いてもよく、ポリエチレン発砲シート等が挙げられる。ラジエーター収容部は、ラジエーター収容部の形状を保持し得る材料であることが好ましく、本発明の身体着用品のラジエーター収容部を構成し得る材料として先に例示した材料の他、ポシェットの背面壁を構成し得る前記補強部材等を用いることができる。
【0061】
本発明の身体着用品は、例えば、着用者の身体を冷却または加温するための温調装置を使用する際に、温調装置と接続する携帯型ラジエーターやバッテリー等を収容するために好適である。本発明の身体着用品に収納して使用する携帯型ラジエーターとしては、吸気口と該吸気口に対向して配置される排気口とを備える、すなわち、吸気口と排気口とが直列的に配置されたものであればよく、例えば、吸気口と排気口との間にラジエーター内に空気を取り込み、ラジエーター外へ空気を排出するためのモータ駆動送風ファン、熱媒体としての液体を移送するためのポンプやチューブなどを備える、公知の一般的な携帯型ラジエーターを用いることができる。携帯型ラジエーターと温調装置とは、例えば、熱媒体である液体が移送されるチューブで接続できる。使用者に冷感や温感を与える温調装置も特に限定されず、例えば、特開2021-25139号公報、特許第6673556号公報等に記載されるような従来公知の温調装置を用いることができ、使用する携帯型ラジエーターや温調装置の形態や仕様にあわせて、本発明の身体着用品を構成する各部材の構成を決定することができる。
【実施例0062】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0063】
下記実施例および比較例における各種物性および特性は、それぞれ、以下の方法に従い測定、算出した。
【0064】
<通気性領域の通気度>
JIS L 1096「織物及び編物の生地試験方法」における通気性A法(フラジール形法)に準拠し、通気度[cm3/(cm2・s)]を測定した。測定装置として、「FX-3300IV通気性試験機(ラボエアー)スイス・テクステスト社製」を用いた。
【0065】
<冷感性>
10人(標準体型の男性)のパネラーによる官能試験を行い、頸部に触れている温調部が顕著に冷たさを感じるものを「冷感性に優れている」とし、優れていると判断したパネラーの人数で以下の4段階で評価した。冷感性の評価が高いほど、ラジエーターの熱交換率に優れるものであると評価できる。
◎:優れていると判断したのが9人以上
○:優れていると判断したのが7人以上8人以下
△:優れていると判断したのが5人以上6人以下
×:優れていると判断したのが4人以下
【0066】
<着用快適性>
10人(標準体型の男性)のパネラーによる官能試験を行い、着用時の着用感(動きやすさ)や着用時の快適性(ラジエーターからの放熱による熱感を感じない)を「着用快適性に優れている」とし、優れていると判断したパネラーの人数で以下の4段階で評価した。
◎:優れていると判断したのが9人以上
○:優れていると判断したのが7人以上8人以下
△:優れていると判断したのが5人以上6人以下
×:優れていると判断したのが4人以下
【0067】
(実施例1)
図3および
図4に示されている衣服タイプの身体着用品である衣服(20)(ベスト)を、前身頃にポリエステル生地を使用し、後身頃(21)にポリエステルメッシュを使用し、後身頃(21)の幅(X1)=59cm、後身頃(21)の裾部の幅(X2)=41cmで作製した。後身頃(21)の着用者側にポケット型のラジエーター収容部(2)を配置した。この際、ラジエーター収容部の上端部が後身頃の着丈の裾側から約2/5付近に、ラジエーター収容部の下端部が後身頃の着丈の裾側から約1/5付近にくるよう配置した。また、ラジエーター収容部の大きさは、収容されるラジエーターに対してジャストサイズになるよう設計した。ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)に第1通気性領域部を設け、第1通気性領域部と対向する後面支持部に第2通気性領域部を後身頃の一部として設けた。第1通気性領域部と第2通気性領域部は、いずれも通気度700cm
3/(cm
2・s)以上のポリエステルメッシュ生地で作製した。なお、作製したベストは、幅(X1)にゆとりを持たせ、幅(X2)を制御することにより裾部においてすぼまる設計とした以外は、一般的なベスト(男性用Lサイズ相当)に対応する寸法で設計した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用し、ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)と身体の最短距離を測定したところ、距離は5cmであった。この状態で、温調部を頸部に当たるよう装着したときの冷感性と着用快適性を評価した。
なお、衣服着用時におけるラジエーター収容部の前面支持部と身体との最短距離は、標準体型の男性が測定対象とする衣服を着用し、直立した状態で測定した。前記最短距離の測定は、以下の実施例2~5、比較例1および2を含め、全て同一人物により行った。
ラジエーターは、熱媒体として冷却液を送るポンプと、冷却液を冷却するための送風ファンと、直線的に配置された空気の吸気口と排気口を有する、いわゆる空冷型ラジエーターを用いた。
温調部は、ペルチェ素子が板状に形成されており、利用者と熱的に接する面と、熱媒体と熱的に接する面とを有し、利用者の頸部まわりに沿うように設けた。
【0068】
(実施例2)
後身頃(21)の幅(X1)=75cm、後身頃(21)の裾部の幅(X2)=41cmで作製した以外は、実施例1と同様に衣服を作製した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用し、ラジエーター収容部の前面支持部と身体の最短距離を測定したところ、距離は15cmであった。この状態で、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0069】
(実施例3)
後身頃(21)の幅(X1)=50cm、後身頃(21)の裾部の幅(X2)=41cmで作製した以外は、実施例1と同様に衣服を作製した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用し、ラジエーター収容部の前面支持部と身体の最短距離を測定したところ、距離は1cmであった。この状態で、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0070】
(実施例4)
ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)の第1通気性領域部と第2通気性領域部を含む後身頃に通気度400cm3/(cm2・s)のポリエステルメッシュ生地を使用した以外は、実施例1と同様に衣服を作製した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用し、ラジエーター収容部の前面支持部と身体の最短距離を測定したところ、距離は5cmであった。この状態で、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0071】
(実施例5)
ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)の第1通気性領域部と第2通気性領域部を含む後身頃に通気度30cm3/(cm2・s)のポリエステル平織生地を使用した以外は、実施例1と同様に衣服を作製した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用し、ラジエーター収容部の前面支持部と身体の最短距離を測定したところ、距離は5cmであった。この状態で、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0072】
(比較例1)
後身頃(21)の幅(X1)=49cm、後身頃(21)の裾部の幅(X2)=41cmで作製した以外は、実施例1と同様に衣服を作製した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用したところ、ラジエーター収容部の前面支持部と身体とが密着した状態(距離は0cm)であり、空間Aは形成されなかった。この状態で、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0073】
(比較例2)
ポケット型のラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)をポリエステル生地(通気度約3cm3/(cm2・s))により作製し、前面支持部(11)に第1通気性領域部を設けなかった代わりに、ラジエーター収容部(2)の側面支持部(15)に、通気度700cm3/(cm2・s)以上のポリエステルメッシュ生地で通気性領域を作製した以外は、実施例1と同様に衣服を作製した。
得られた衣服のラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で着用し、ラジエーター収容部と身体の最短距離を測定したところ、距離は5cmであった。この状態で、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
なお、ラジエーターは、熱媒体として冷却液を送るポンプと、冷却液を冷却するための送風ファンと、L字状に配置された空気の吸気口と排気口を有する、いわゆる空冷型ラジエーターを用いた。
【0074】
(実施例6)
図5、
図6および
図7に示されているリュックサック型の身体着用品であるリュックサック(30)を、背面壁(31)と正面壁(32)にポリエステルメッシュを用い、マチ部(33)、底面部(34)、上面部(35)にポリエステル生地を用い、作製した。
正面壁(21)の下方内側にポケット型のラジエーター収容部(2)を配置した。ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)に第1通気性領域を設け、第1通気性領域部と対向する後面支持部に第2通気性領域部を正面壁(32)の一部として設けた。第1通気性領域部と第2通気性領域部は、いずれも通気度700cm
3/(cm
2・s)以上のポリエステルメッシュで作製した。
得られたリュックサックのラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で、ラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)と背面壁(31)の距離を測定したところ、距離は3.5cmであった〔マチ幅(Y1)=8cm、奥行き長さ(Y2)=4.5cm〕。この状態でリュックサックを着用し、温調部を頸部に当たるよう装着し、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0075】
(実施例7)
図8および
図9に示されている腰部に着脱可能なバッグであるポシェット(40)を、背面壁(41)に、ポリエチレン発砲シートを芯材とし、表面にポリウレタン合成皮革を用いた板状材を用い、該背面壁(41)にポリエチレン発砲シートを芯材とし、表面にポリウレタン合成皮革を用いた板状材を用いたポケット型のラジエーター収容部(2)を、EVA(エチレンビニルアセタートコポリマー)樹脂を用いた背面上部部材(42)を介して固定して、作製した。ラジエーター収容部(2)と背面壁(41)との間に形成される空間を保持しやすくするため、ラジエーター収容部(2)の背面壁(41)側下方には、背面上部部材(42)と同じ材料からなる背面下部部材(43)を設けた。
ポケット型のラジエーター収容部(2)の前面支持部(11)の第1通気性領域部と後面支持部(12)の第2通気性領域部(14)は、通気性領域を覆う部材が存在せず、十分な通気を確保したくり抜き状態で作製した。
得られたポシェットのラジエーター収容部に、ラジエーターを収容し、ラジエーターに電源および、温調部と繋がった熱媒体を通すホースを繋いだ状態で、ラジエーター収容部の前面支持部と背面壁の距離を測定したところ、距離は1cmであった。この状態で、背面壁(41)の着用者側にベルト通しを設け、着用者のベルトに装着、固定して、ポシェットを着用し、実施例1と同様に冷感性と着用快適性を評価した。
【0076】
実施例および比較例における各種構成および官能試験の評価結果を表1に示す。
【0077】