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特開2023-58352省電力成果報酬算出方法及び省電力成果報酬算出システム
<図1>
  • 特開-省電力成果報酬算出方法及び省電力成果報酬算出システム 図1
  • 特開-省電力成果報酬算出方法及び省電力成果報酬算出システム 図2
  • 特開-省電力成果報酬算出方法及び省電力成果報酬算出システム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058352
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】省電力成果報酬算出方法及び省電力成果報酬算出システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230418BHJP
   B03C 3/40 20060101ALI20230418BHJP
   B03C 3/68 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G06Q50/06
B03C3/40 A
B03C3/68 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168326
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】596032177
【氏名又は名称】住友金属鉱山エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 正裕
(72)【発明者】
【氏名】岡田 尚之
【テーマコード(参考)】
4D054
5L049
【Fターム(参考)】
4D054AA02
4D054BA01
4D054BC31
4D054CA18
4D054EA30
5L049CC06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において得られた節電の成果を、客観性のある数値データとして省電力型電源制御装置の供給者側と需要者側の双方において共有する省電力成果報酬算出方法を提供する。
【解決手段】省電力成果報酬算出システム1において、基準使用電力記憶手段121は、基準使用電力を予め記憶させる。使用電力測定装置11は、省電力措置後使用電力を測定する。省電力成果報酬計算手段122は、基準使用電力記憶手段121に記憶されている基準使用電力と、使用電力測定装置によって測定された省電力措置後使用電力との差に、所定の係数を乗じる演算処理を行うことによって、省電力成果報酬金額を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
省電力型電源制御装置を備える工業用電気設備における省電力成果報酬算出方法であって、
基準使用電力記憶手段に、前記省電力型電源制御装置を作動させない場合における前記工業用電気設備の基準使用電力を予め記憶させる、基準使用電力記憶ステップと、
使用電力測定装置によって、前記省電力型電源制御装置を作動させた場合における前記工業用電気設備の単位時間当りの電力使用量である省電力措置後使用電力を測定する、使用電力測定ステップと、
省電力成果報酬計算手段によって、前記基準使用電力記憶手段に記憶されている前記基準使用電力と、前記使用電力測定装置によって測定された前記省電力措置後使用電力との差に、所定の係数を乗じる演算処理を行うことによって、省電力成果報酬金額を算出する、省電力成果報酬算出ステップと、を含んでなる、
省電力成果報酬算出方法。
【請求項2】
前記使用電力測定装置によって、前記省電力型電源制御装置を作動させない場合における前記工業用電気設備の単位時間当りの電力使用量を測定して前記基準使用電力を決定する、基準使用電力測定ステップを行い、
前記基準使用電力記憶ステップにおいては、前記基準使用電力測定ステップにおいて決定された前記基準使用電力を、記憶する、
請求項1に記載の省電力成果報酬算出方法。
【請求項3】
前記工業用電気設備が、直流電圧が印加され負コロナを発生させる放電極と、前記負コロナの放電によって処理対象とする排ガスに含まれる微粒子を集塵する集塵極と、を備える電気集塵装置である、
請求項1又は2に記載の省電力成果報酬算出方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載の省電力成果報酬算出方法において、
前記使用電力測定ステップと、前記省電力成果報酬算出ステップと、
を演算処理部に実行させる、
省電力成果報酬算出用のプログラム。
【請求項5】
工業用電気設備における省電力成果報酬算出システムであって、
省電力型電源制御装置と、
使用電力測定装置と、
基準使用電力記憶手段と、
省電力成果報酬計算手段と、を備え、
前記省電力成果報酬計算手段は、
予め前記基準使用電力記憶手段に記憶されている前記工業用電気設備の基準使用電力と、前記使用電力測定装置によって測定された、前記省電力型電源制御装置を作動させた場合における前記工業用電気設備の単位時間当りの電力使用量である省電力措置後使用電力との差に、所定の係数を乗じる演算処理を行うことによって、省電力成果報酬金額を算出する、
省電力成果報酬算出システム。
【請求項6】
前記基準使用電力記憶手段及び前記省電力成果報酬計算手段が、有線又は無線の電気通信回線によって通信可能に前記使用電力測定装置に接続されていて、前記工業用電気設備から離隔した他の設備内に配置されている、
請求項5に記載の省電力成果報酬算出システム。
【請求項7】
前記工業用電気設備が、直流電圧が印加され負コロナを発生させる放電極と、前記負コロナの放電によって処理対象とする排ガスに含まれる微粒子を集塵する集塵極と、を備える電気集塵装置である、
請求項5又は6に記載の省電力成果報酬算出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、省電力型電源制御装置を備える電気設備における省電力成果報酬算出方法及び省電力成果報酬算出システムに関する。本発明の適用対象となる上記の省電力型電源制御装置を備える電気設備としては、各種の工業プロセスにおいて発生する排ガスから微粒子を除去する処理を行う排ガス処理設備で用いられている電気集塵装置を挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
上述の電気集塵装置を用いて行う排ガス処理等、大量の電力を消費する工業プロセスにおいて、省電力の要請は近年益々高まっている。電気集塵装置においても、様々な省電力技術が開発されている(特許文献1参照)。
【0003】
最新の省電力技術の導入にはコストが嵩むことから、省電力技術を広く普及させるためには、省電力技術を用いた新規設備(例えば「省電力型電源制御装置」)の導入により得られた節電の成果等を、客観性のある数値データとして当該設備の供給者側と需要者側の双方において共有することにより、当該新規設備の導入によってもたらされた利益を公正に分配することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-134642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において、得られた節電の成果を、客観性のある数値データとして省電力技術を用いた新規設備(「省電力型電源制御装置」)の供給者側と需要者(使用者)側の双方において共有することにより、当該新規設備の導入によってもたらされた利益を公正に分配することを可能とする技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以下の方法、システム等によって、上記課題が解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0007】
(1) 省電力型電源制御装置を備える工業用電気設備における省電力成果報酬算出方法であって、基準使用電力記憶手段に、前記省電力型電源制御装置を作動させない場合における前記工業用電気設備の基準使用電力を予め記憶させる、基準使用電力記憶ステップと、使用電力測定装置によって、前記省電力型電源制御装置を作動させた場合における前記工業用電気設備の単位時間当りの電力使用量である省電力措置後使用電力を測定する、使用電力測定ステップと、省電力成果報酬計算手段によって、前記基準使用電力記憶手段に記憶されている前記基準使用電力と、前記使用電力測定装置によって測定された前記省電力措置後使用電力との差に、所定の係数を乗じる演算処理を行うことによって、省電力成果報酬金額を算出する、省電力成果報酬算出ステップと、を含んでなる、省電力成果報酬算出方法。
【0008】
(1)の省電力成果報酬算出方法によれば、省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において、得られた節電の成果を、客観性のある数値データとして省電力技術を用いた新規設備(「省電力型電源制御装置」)の供給者側と需要者(使用者)側の双方において共有することにより、当該新規設備の導入によってもたらされた利益を公正に分配することができるようになる。
【0009】
(2) 前記使用電力測定装置によって、前記省電力型電源制御装置を作動させない場合における前記工業用電気設備の単位時間当りの電力使用量を測定して前記基準使用電力を決定する、基準使用電力測定ステップを行い、前記基準使用電力記憶ステップにおいては、前記基準使用電力測定ステップにおいて決定された前記基準使用電力を、記憶する、(1)に記載の省電力成果報酬算出方法。
【0010】
(2)の省電力成果報酬算出方法によれば、省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において、得られた節電の成果を、個々の装置の稼働状態に即したより客観性のある数値データとして当該設備の供給者側と需要者側の双方において共有することにより、当該新規設備(「省電力型電源制御装置」)の導入によってもたらされた利益を公正に分配することができるようになる。
【0011】
(3) 前記工業用電気設備が、直流電圧が印加され負コロナを発生させる放電極と、前記負コロナの放電によって処理対象とする排ガスに含まれる微粒子を集塵する集塵極と、を備える電気集塵装置である、(1)又は(2)に記載の省電力成果報酬算出方法。
【0012】
(3)の省電力成果報酬算出方法によれば、大量の電力を消費し、且つ、電力消費量の時間毎の変動幅も大きな工業設備であり、省電力型電源制御装置の普及が特に求められる電気集塵装置の分野において、(1)又は(2)に記載の省電力成果報酬算出方法の奏する上記効果を享受して、省電力型の電気集塵装置の普及を促進させることができる。
【0013】
(4) (1)から(3)の何れかに記載の省電力成果報酬算出方法において、前記使用電力測定ステップと、前記省電力成果報酬算出ステップと、を演算処理部に実行させる、省電力成果報酬算出用のプログラム。
【0014】
(4)の省電力成果報酬算出用のプログラムによれば、省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において、得られた節電の成果を、客観性のある数値データとして省電力技術を用いた新規設備(「省電力型電源制御装置」)の供給者側と需要者(使用者)側の双方において共有することにより、当該新規設備の導入によってもたらされた利益を公正に分配することができるようになる。
【0015】
(5) 工業用電気設備における省電力成果報酬算出システムであって、省電力型電源制御装置と、使用電力測定装置と、基準使用電力記憶手段と、省電力成果報酬計算手段と、を備え、前記省電力成果報酬計算手段は、予め前記基準使用電力記憶手段に記憶されている前記工業用電気設備の基準使用電力と、前記使用電力測定装置によって測定された、前記省電力型電源制御装置を作動させた場合における前記工業用電気設備の単位時間当りの電力使用量である省電力措置後使用電力との差に、所定の係数を乗じる演算処理を行うことによって、省電力成果報酬金額を算出する、省電力成果報酬算出システム。
【0016】
(5)の省電力成果報酬算出システムによれば、省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において、得られた節電の成果を、客観性のある数値データとして省電力技術を用いた新規設備(「省電力型電源制御装置」)の供給者側と需要者(使用者)側の双方において共有することにより、当該新規設備の導入によってもたらされた利益を公正に分配することができるようになる。
【0017】
(6) 前記基準使用電力記憶手段及び前記省電力成果報酬計算手段が、有線又は無線の電気通信回線によって通信可能に前記使用電力測定装置に接続されていて、前記工業用電気設備から離隔した他の設備内に配置されている、(5)に記載の省電力成果報酬算出システム。
【0018】
(6)の省電力成果報酬算出システムによれば、(5)に記載の省電力成果報酬算出システムにおいて、例えば、遠隔地に存在する工業用電気設備における上述の節電効果の測定、成果報酬の算出を、工業用電気設備の供給者側の設備内において行うことができる。又、多数の工業用電気設備における上述の節電効果の測定、成果報酬の算出を、1か所の管理施設において効率良く行うことができる。
【0019】
(7) 前記工業用電気設備が、直流電圧が印加され負コロナを発生させる放電極と、前記負コロナの放電によって処理対象とする排ガスに含まれる微粒子を集塵する集塵極と、を備える電気集塵装置である、(5)又は(6)に記載の省電力成果報酬算出システム。
【0020】
(7)の省電力成果報酬算出システムによれば、大量の電力を消費し、且つ、電力消費量の時間毎の変動幅も大きな工業設備であり、省電力型電源制御装置の普及が特に求められる電気集塵装置の分野において、(5)又は(6)に記載の省電力成果報酬算出方法の奏する上記効果を享受して、省電力型の電気集塵装置の普及を促進させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、省電力型電源制御装置を設置した工業用電気設備において、得られた節電の成果を、客観性のある数値データとして省電力技術を用いた新規設備(「省電力型電源制御装置」)の供給者側と需要者(使用者)側の双方において共有することにより、当該新規設備の導入によってもたらされた利益を公正に分配することができるようになる。そして、これにより、省電力型の工業設備の導入を促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の省電力成果報酬算出システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の省電力成果報酬算出方法の流れを示すフロー図である。
図3】本発明の好ましい適用対象の一例である電気集塵装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について適宜図面を参照しながら説明する。
【0024】
<工業用電気設備(電気集塵装置)>
図3は、本発明の「工業用電気設備における省電力成果報酬算出システム(以下、単に「省電力成果報酬算出システム」とも言う。)」、又は、「工業用電気設備における省電力成果報酬算出方法(以下、単に「省電力成果報酬算出方法」とも言う。)」の好ましい適用対象となる工業用電気設備の一例である電気集塵装置2の構成を模式的に示す図である。
【0025】
図3に示すように、電気集塵装置2は、集塵極22と、放電極23、及び、電源装置21とを備え、各種の排ガス中に微粒子として含有される有害なダストやミストを捕集する目的で使用される装置である。電気集塵装置2においては、電源装置21から放電極23に直流電圧が印加されることにより発生する負コロナの放電によって、処理対象とする排ガスに含まれる微粒子を集塵極22に付着させることにより、処理対象の排ガス中のミストやダスト等の微粒子を集塵する。
【0026】
ここで、電気集塵装置2においては、放電極23に印加する直流電圧の電圧を高めるほど、集塵効率を高めることができる。しかしながら、処理対象とする排ガス中に含まれる微粒子の濃度にかかわらず、電力を大量に消費し続けることは経済性においては好ましくない。この問題に対して、電気集塵装置2においては、処理対象として導入される排ガス中の微粒子濃度に応じて、直流電圧値を制御するか、或いは、は印加電圧のON-OFF時間を制御することにより、高い集塵効率を維持しつつ、省電力を図ることができる。上記の荷電電圧の制御は、電気集塵装置2に投入される処理対象の排ガス中の微粒子濃度が一定濃度以下となった場合に、電気集塵装置2に対する荷電圧を低下するか、或いは、間欠荷電のON-OFF時間間隔を延長する制御方法によって行うことがより好ましい。
【0027】
本明細書における「省電力型電源制御装置」とは、一例として、上記のような動作によって、電気集塵装置2において、処理対象とする排ガスに含まれる微粒子(塵やダスト等)の濃度に応じて、電源装置21からの荷電電圧の値をリアルタイムで適切に制御することにより、電力使用量を抑える機能を発揮する電源制御装置(特許文献1参照)のことを言う。
【0028】
又、上記の電気集塵装置以外の様々な「工業用電気設備」において、同様に節電機能を発揮する各種の電源制御装置も本発明における「省電力型電源制御装置」に該当する。「省電力型電源制御装置」は、ハードウェアで構成されていてもよいし、ソフトウェアで構成されていてもよく、或いは、それらの組合せで構成されていてもよい。
【0029】
電気集塵装置2等の各種の工業用電気設備であって、「省電力型電源制御装置21A」を備える装置に、本発明の「省電力成果報酬算出システム」又は「省電力成果報酬算出方法」を適用することにより、省電力技術を用いた新規設備(「省電力型電源制御装置21A」)の導入による節電の成果を、客観性のある数値データ(「省電力成果報酬金額」)として自動的に得ることができるようになる。
【0030】
ここで、本明細書において、「省電力成果報酬金額」とは、「省電力型電源制御装置21A」の導入によって使用電力量が節減されたことにより生じた利益のうちの所定割合の金額であって、当該工業用電気設備(例えば、電気集塵装置2)の供給者側に、節電の成果報酬として分配される報酬金額のことを言う。尚、上記の所定割合は装置の供給者側と装置の需要者(使用者)側との間の合意、契約に基づき予め任意の割合に決定すればよい。尚、上記契約態様の一例として、「省電力型電源制御装置21A」の導入時に「省電力成果報酬金額」を適切に設定し、併せて、設備の供給者側が当該装置の導入コストを負担する契約とすることによって、本発明の「省電力成果報酬算出システム」の普及を経済的な面から更に促進させることもできる。
【0031】
<省電力成果報酬算出システム>
図1は、本発明の「省電力成果報酬算出システム」の一例である省電力成果報酬算出システム1の構成を示すブロック図である。以下の説明では、「省電力成果報酬算出システム」を設置する工業用電気設備が電気集塵装置である場合における「省電力成果報酬算出システム」の具体的な構成を、本発明の「省電力成果報酬算出システム」の好ましい実施形態の一例としてその詳細を説明する。
【0032】
[全体構成]
図1に示す通り、省電力成果報酬算出システム1は、使用電力測定装置11及び演算処理部12を含んで構成される。演算処理部12は、基準使用電力記憶手段121及び省電力成果報酬計算手段122を含んで構成される。
【0033】
[使用電力測定装置]
使用電力測定装置11は、電気集塵装置2の単位時間当りの電力使用量(基準使用電力及び「省電力措置後使用電力」)を測定することができる各種の電力測定機器により構成することができる。又、使用電力測定装置11は、「省電力型電源制御装置」を作動させた状態での電気集塵装置2の「運転時間」に係るデータも並行して取得可能な機器であることが好ましい。そして、測定された電力使用量に係るこれらの各データを、デジタル形式の数値データとして演算処理部12に出力する機能を有する機器であることが好ましい。これらの要求に対応可能な機器であれば、電気集塵装置に既に設置されている既設の電力使用量測定機器を、省電力成果報酬算出システム1を構成するデバイスとして好適に用いることもできる。
【0034】
ここで、本明細書における「基準使用電力」とは、例えば、電気集塵装置2において「省電力型電源制御装置21A」を作動させない場合における単位時間当りの電力使用量であることを原則とし、予め契約等により任意に設定することができる「省電力成果報酬金額」等の算出のベースとなる基準の電力量である。又、本明細書における「省電力措置後使用電力」とは、電気集塵装置2の省電力措置後、即ち、「省電力型電源制御装置21A」を作動させた場合における単位時間当りの電力使用量のことを言う。
【0035】
[演算処理部]
演算処理部12は、使用電力測定装置11から出力された電気集塵装置2における「省電力措置後使用電力」、及び、基準使用電力記憶手段121に予め記憶されている単位時間当りの「基準使用電力」を入力値とし、「省電力成果報酬金額」を出力値として算出する演算処理を行う。
【0036】
演算処理部12は、使用電力測定装置11から電力使用量に係る数値データを受信することができるように、使用電力測定装置11と接続されている。この接続は、専用の通信ケーブルを利用した有線接続、有線LANによる接続、或いは、無線LANや近距離無線通信、携帯電話回線等の各種無線通信を用いた接続とすることができる。尚、演算処理部12は、使用電力測定装置11の近傍に配置せずに、有線又は無線の電気通信回線によって両者を通信可能に接続することにより、使用電力測定装置11から離隔した、工業用電気設備の供給者側の作業エリア内や、或いは、必要に応じて他の遠隔地に配置することもできる。
【0037】
又、演算処理部12は、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートフォン等を利用して構成することができる。或いは、演算処理部12は、本発明の実施に係る動作に特化した専用装置として構成することもできる。又、演算処理部12は、以上の機能を備える情報処理装置をサーバーとしてクラウド上に構成して、これを多数のクライアントで共有する構成とすることによって、多数の工業用電気設備における上述の節電効果の測定、成果報酬の算出を、1か所の管理施設において効率良く行うことができる構成とすることもできる。
【0038】
上記の何れの構成においても、演算処理部12は、CPU、メモリ、通信部等のハードウェアを備えている。そして、このような構成からなる演算処理部12において、本発明に係るコンピュータプログラムである「省電力成果報酬算出用のプログラム」を実行することにより、以下に説明する各種動作、及び、工業用電気設備における省電力成果報酬算出方法を具体的に実行することができる。
【0039】
(基準使用電力記憶手段)
基準使用電力記憶手段121は、電気集塵装置2において「省電力型電源制御装置21A」を作動させない場合における単位時間当りの電力使用量である「基準使用電力」を予め記憶させる記憶装置である。
【0040】
(省電力成果報酬計算手段)
省電力成果報酬計算手段122は、基準使用電力記憶手段121に記憶されている工業用電気設備(電気集塵装置2)の「基準使用電力」と、使用電力測定装置11によって測定された当該工業用電気設備(電気集塵装置2)の「省電力措置後使用電力」とを入力値とし、これらの2つの電力使用量との差に、以下に詳細を説明する「所定の係数」を乗じる演算処理を行うことによって、「省電力成果報酬金額」を算出する。
【0041】
「省電力成果報酬金額」を算出するための演算処理は、具体的には、一例として、下記の表1に示すように、「使用電力単価(¥/kWh)」と、「省電力型電源制御装置」を作動させた状態での「運転時間(h)」と、装置の供給者側と装置の需要者(使用者)側との間で予め契約等により規定した「利益配分割合(%)」を「所定の係数」として行うことができる。これらの各数値を、「所定の係数」として、「基準使用電力と、単位時間当りの省電力措置後使用電力との差」に乗じる演算処理を行うことによって、表1に示す通り、実施時点における電力単価や、節電効果を享受して行われた運転時間等を加味した実質的な電気料金の節約金額に基づいた、公正な「省電力成果報酬金額」を、客観性のある数値データとして算出することができる。尚、本発明を実施するための「所定の係数」及び、それを含んでなる「省電力成果報酬金額」を算出するための演算式は、「基準使用電力」と、「省電力措置後使用電力」との差を入力値として用いることによって、任意の一定期間内における「省電力成果報酬金額」を、定量的に算出することができる数値や数式であればよく、上記において例示した特定の係数やそれらの特定の組合せのみには限定されない。
【0042】
【表1】
【0043】
<省電力成果報酬算出方法>
本発明の「省電力成果報酬算出方法」は、好ましくは、上述した本発明の「工業用電気設備における省電力成果報酬算出システム」を用いることによって実行することができるプロセスである。この「省電力成果報酬算出方法」は、図2に示すように、使用電力測定装置11において実行可能な基準使用電力測定ステップST1、基準使用電力記憶手段121において実行可能な基準使用電力記憶ステップST2、使用電力測定装置11において実行可能な使用電力測定ステップST3、及び、省電力成果報酬計算手段122において実行可能な省電力成果報酬算出ステップST4が順次行われることによって、これらの各プロセスを含む全体プロセスとして実行される。
【0044】
但し、上記各ステップのうち、基準使用電力測定ステップST1は、本発明の「省電力成果報酬算出方法」における必須の構成要件ではない。本発明の「省電力成果報酬算出方法」は、予め、基準使用電力記憶手段121に、省電力型電源制御装置21Aを作動させない場合における当該工業用電気設備の「基準使用電力」を記憶させておき、このようにして記憶されている数値データを、必要に応じて適宜演算処理に利用する実施態様とすることもできる。この場合、本発明の「省電力成果報酬算出方法」は、基準使用電力測定ステップST1を割愛したより簡易な構成のプロセスとして実施することもできる。以下においては、本発明の「省電力成果報酬算出方法」について、上記ST1~ST4の全ステップが行われる場合の実施態様について、その詳細を説明する。
【0045】
(基準使用電力測定ステップ)
基準使用電力測定ステップST1は、使用電力測定装置11によって、電気集塵装置2において「省電力型電源制御装置21A」を作動させない場合、或いは、「省電力型電源制御装置21A」導入前における単位時間当りの「基準使用電力」を測定する処理である。
【0046】
(基準使用電力記憶ステップ)
基準使用電力記憶ステップST2は、基準使用電力測定ステップST1で得た「基準使用電力」を、基準使用電力記憶手段121に記憶させる処理である。記憶された「基準使用電力」は、演算処理に供される数値データとして必要に応じて基準使用電力記憶手段121から出力されて、演算処理部12に入力される。
【0047】
(使用電力測定ステップ)
使用電力測定ステップST3は、使用電力測定装置11によって、「省電力措置後使用電力」、即ち、「省電力型電源制御装置21A」を作動させた場合における電気集塵装置2の単位時間当りの電力使用量を測定する処理である。
【0048】
(省電力成果報酬算出ステップ)
省電力成果報酬算出ステップST4は、省電力成果報酬計算手段122によって、基準使用電力記憶手段121に記憶されている「基準使用電力」と、使用電力測定装置11によって測定された「省電力措置後使用電力」との差に、「所定の係数」(一例として、上記において具体例を挙げた「使用電力単価(¥/kWh)」、「運転時間(h)」及び、「利益配分割合(%)」)を乗じる演算処理を行うことによって、省電力成果報酬金額を算出する処理である。
【0049】
省電力成果報酬算出ステップST4の実行後に、演算処理部12が、省電力成果報酬算出方法の実行を終了するか否かを判断する。例えば、処理終了の命令が入力された場合に終了と判断される。終了する場合には、省電力成果報酬算出方法の実行を終了し、それ以外の場合には、使用電力測定ステップST3へ戻り、省電力成果報酬算出方法の実行を継続する。
【符号の説明】
【0050】
1 省電力成果報酬算出システム
11 使用電力測定装置
12 演算処理部
121 基準使用電力記憶手段
122 省電力成果報酬計算手段
2 工業用電気設備(電気集塵装置)
21 電源装置
21A 省電力型電源制御装置
22 集塵極
23 放電極
ST1 基準使用電力測定ステップ
ST2 基準使用電力記憶ステップ
ST3 使用電力測定ステップ
ST4 省電力成果報酬算出ステップ

図1
図2
図3