(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058362
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230418BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230418BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101C
H01L21/68 R
H05H1/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168353
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針貝 篤史
(72)【発明者】
【氏名】置田 尚吾
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F131
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084BB14
2G084BB21
2G084CC13
2G084CC33
2G084DD03
2G084DD38
2G084FF07
2G084HH11
2G084HH30
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB29
5F004BC06
5F004CA04
5F004CA06
5F004DA00
5F004DA18
5F004DB01
5F004EA28
5F131AA02
5F131BA19
5F131BA52
5F131CA06
5F131CA09
5F131CA32
5F131EA03
5F131EB14
5F131EB32
5F131EB81
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】保持シートに保持された基板をプラズマ処理する際に、製品の歩留まりを向上させる。
【解決手段】チャンバと、チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、チャンバ内に設けられ、搬送キャリア10が載置されるステージ111と、ステージに載置された搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバー124と、カバー124とステージ111との相対的な距離を、第1距離と、第1距離よりも小さな第2距離とに変更可能な相対位置変更部と、搬送キャリア10の載置状態の良否を判定する判定部と、制御部と、を備え、判定部は、カバー124とステージ111との距離が第1距離である状態で、載置状態の良否を判定し、カバー124とステージ111との距離が第2距離である状態で、プラズマ処理が施される、プラズマ処理装置。
【選択図】
図4E
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと保持シートとを備える搬送キャリアに保持された基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
チャンバと、
前記チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
前記チャンバ内に設けられ、前記搬送キャリアが載置されるステージと、
前記ステージに載置された前記搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーと前記ステージとの相対的な距離を、第1距離と、前記第1距離よりも小さな第2距離とに変更可能な相対位置変更部と、
前記搬送キャリアの載置状態を判定する判定部と、
前記プラズマ発生部と前記相対位置変更部とを制御する制御部と、を備え、
前記判定部は、前記カバーと前記ステージとの距離が前記第1距離である状態で、前記載置状態を判定し、
前記カバーと前記ステージとの距離が前記第2距離である状態で、前記プラズマ処理が施される、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記ステージに載置された前記搬送キャリアを撮像する撮像部をさらに備え、
前記判定部は、前記カバーと前記ステージとの距離が第1距離である状態で前記撮像部により撮像された撮像データに基づき、前記載置状態を判定する、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記撮像データにおける前記フレームの内周側壁の状態に基づき、前記載置状態を判定する、請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記判定部により前記載置状態が第1状態と判定された場合、
前記制御部は、前記相対位置変更部によって前記カバーと前記ステージとの距離を前記第2距離に変更させてから、前記プラズマ発生部により前記プラズマを発生させる、請求項1~3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記判定部により前記載置状態が第2状態と判定された場合、
前記制御部は、前記カバーと前記ステージとの距離が前記第2距離よりも大きい状態で、前記搬送キャリアの前記ステージへの載置を再度行わせる、請求項1~4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
フレームと保持シートとを備える搬送キャリアに保持された基板を、チャンバと、前記チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記チャンバ内に設けられ、前記搬送キャリアが載置されるステージと、前記搬送キャリアが前記ステージに載置された状態で前記搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバーと、を備えるプラズマ処理装置の前記ステージに載置する載置工程と、
前記カバーと前記ステージとの距離が第1距離である状態で、前記搬送キャリアの載置状態を判定する判定工程と、を備え、
前記判定工程において前記載置状態が第1状態と判定された場合、
前記カバーと前記ステージとの距離を前記第1距離よりも小さな第2距離に変更してから、前記チャンバ内にプラズマを発生させ、発生させた前記プラズマを前記基板に照射してプラズマ処理を行う、プラズマ処理方法。
【請求項7】
前記判定工程は、前記カバーと前記ステージとの距離が前記第1距離である状態で、前記ステージに載置された前記搬送キャリアを撮像する撮像工程を含み、
前記撮像工程で撮像された撮像データに基づき、前記載置状態を判定する、請求項6に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記判定工程では、前記撮像データにおける前記フレームの内周側壁の状態に基づき、前記載置状態を判定する、請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関し、特に、保持シートに保持された基板をプラズマ処理するためのプラズマ処理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板をダイシングする方法として、レジストマスクを形成した基板(ウエハ)にプラズマエッチングを施して個々のチップに分割するプラズマダイシングが知られている。
【0003】
特許文献1は、基板をプラズマ・ダイシングする方法であって、処理チャンバ内に加工物支持部を供給するステップと、基板をキャリア支持部上に配置して加工物を形成するステップと、加工物を加工物支持部上へロードするステップと、加工物の上方に配置されたカバー・リングを設けるステップと、プラズマ源によってプラズマを生成するステップと、生成されたプラズマによって加工物をエッチングするステップと、を含む方法を開示している。
【0004】
基板は、通常、基板を固定するための接着剤が一面に設けられた保持シートに接着固定される。保持シートは、ダイシングテープとも呼ばれる。基板は、ハンドリング性向上のため、保持シートと保持シートの外周部に配置されたフレームとを備える搬送キャリア(キャリア支持部)に保持させた状態で、プラズマ処理装置内のステージに載置され、プラズマ処理が行われる。搬送キャリアがプラズマに直接晒され、ダメージを受けるのを抑制するために、誘電体製の保護カバーが、フレームおよび保持シートの露出部分を覆っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保護カバーと搬送キャリアとの間の離間距離が大きいほど、保護カバーと保持シートとの間の空間で放電が発生し易く、テープダメージが発生し易くなる。このため、保護カバーは、搬送キャリアに近接して配置される。保護カバーと保持シートとの間の距離は、例えば、2mm程度である。
【0007】
一方で、搬送キャリアをステージに固定する際に、基板または保持シートの一部が浮き上がり、あるいはしわが寄った状態でステージに固定される場合がある。基板または保持シートが浮いた状態で保護カバーを下降させると、保護カバーが保持シートと接触し、テープがダメージを受ける場合がある。また、基板が浮いた状態でプラズマ処理が実施されることで、基板がステージにより十分冷却されず高温になったり、ウエハが破損したりする場合がある。また、プラズマエッチングが不均一になり、加工ばらつきが大きくなる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面は、フレームと保持シートとを備える搬送キャリアに保持された基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、チャンバと、前記チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記チャンバ内に設けられ、前記搬送キャリアが載置されるステージと、前記ステージに載置された前記搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバーと、前記カバーと前記ステージとの相対的な距離を、第1距離と、前記第1距離よりも小さな第2距離とに変更可能な相対位置変更部と、前記搬送キャリアの載置状態を判定する判定部と、前記プラズマ発生部と前記相対位置変更部とを制御する制御部と、を備え、前記判定部は、前記カバーと前記ステージとの距離が前記第1距離である状態で、前記載置状態を判定し、前記カバーと前記ステージとの距離が前記第2距離である状態で、前記プラズマ処理が施される、プラズマ処理装置に関する。
【0009】
本発明の他の一局面は、フレームと保持シートとを備える搬送キャリアに保持された基板を、チャンバと、前記チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記チャンバ内に設けられ、前記搬送キャリアが載置されるステージと、前記搬送キャリアが前記ステージに載置された状態で前記搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバーと、を備えるプラズマ処理装置の前記ステージに載置する載置工程と、前記カバーと前記ステージとの距離が第1距離である状態で、前記搬送キャリアの載置状態を判定する判定工程と、を備え、前記判定工程において前記載置状態が第1状態と判定された場合、前記カバーと前記ステージとの距離を前記第1距離よりも小さな第2距離に変更してから、前記チャンバ内にプラズマを発生させ、発生させた前記プラズマを前記基板に照射してプラズマ処理を行う、プラズマ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基板または保持シートの一部がステージから浮き上がった状態でプラズマ処理が実施されることを抑制でき、基板の歩留まりおよび生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る基板を保持した搬送キャリアを概略的に示す上面図(a)およびそのB-B線での断面図(b)である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置の基本的な構造を断面で示す概念図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法の一部の工程を示すフローチャートである。
【
図4A】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。
【
図4B】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。
【
図4C】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。
【
図4D】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。
【
図4E】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。
【
図4F】本発明の実施形態に係るプラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係るプラズマ処理装置は、フレームと保持シートとを備える搬送キャリアに保持された基板にプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、チャンバと、チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、チャンバ内に設けられ、搬送キャリアが載置されるステージと、ステージに載置された搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバーと、を備える。プラズマ処理装置は、さらに、カバーとステージとの相対的な距離を、第1距離と、第1距離よりも小さな第2距離とに変更可能な相対位置変更部と、搬送キャリアの載置状態を判定する判定部と、プラズマ発生部と相対位置変更部とを制御する制御部と、を備える。
【0013】
判定部は、カバーとステージとの距離が第1距離である状態で、搬送キャリアの載置状態を判定する。一方で、カバーとステージとの距離が第2距離である状態で、プラズマ処理が施される。すなわち、判定部による搬送キャリアの載置状態の判定は、カバーとステージとの距離がプラズマ処理を行う状態よりも大きな状態で、すなわち搬送キャリアに対してカバーが十分に離間した状態で行われる。これにより、載置状態が不良であることにより発生するその後の処理エラーの発生を未然に防止できる。例えば、載置状態が不良であった場合の搬出においてカバーとの接触による搬送エラーを回避できる。結果、基板の歩留まりおよび生産効率が向上する。
判定部は、搬送キャリアの載置状態が第1状態または第2状態のいずれかに該当するかを判定する。第1状態は載置が良好な場合であり、第2状態は載置不良がある場合である。
【0014】
判定部による搬送キャリアの載置状態の判定は、搬送キャリアのステージへの載置状態を撮像した撮像データに基づき行ってもよい。好ましくは、プラズマ処理装置は、ステージに載置された搬送キャリアを撮像する撮像部をさらに備える。判定部は、カバーとステージとの距離が第1距離である状態で撮像部により撮像された撮像データに基づき、載置状態を判定することができる。
【0015】
この場合、載置状態の判定を、搬送キャリアのフレームの内周側壁の状態に基づき行ってもよい。例えば、撮像部は、搬送キャリアの載置面(基板の主面)から僅かに傾いた方向から、フレームの内周側壁を含む搬送キャリアの載置状態を撮像する。フレームの材質が金属材料である場合、光を反射するため、撮像データから画像解析によりフレームと基板または保持シートとを識別することは容易である。ここで、基板または保持シートの一部がステージから浮き上がっている場合、基板の主面から僅かに傾いた方向から見ると、フレームの内周側壁は浮き上がった基板または保持シートの影に隠れてしまい、撮像データにおいてフレームを識別し難くなる。よって、撮像データにおけるフレームの内周側壁の状態に基づき、搬送キャリアの載置状態を容易に判定することができる。
【0016】
判定部により載置状態が第1状態(良好)と判定された場合、制御部は、相対位置変更部にカバーとステージとの距離を第2距離に変更させてから、プラズマ発生部によりプラズマを発生させる。発生したプラズマを用いて、プラズマ処理が実施される。一方、判定部により載置状態が第2状態(不良)と判定された場合、制御部は、搬送キャリアとカバーとの距離を第2距離に変更させず、カバーとステージとの距離が第2距離よりも大きい状態で、搬送キャリアのステージへの載置を再度行わせる。この場合、搬送キャリアとカバーとが十分に離間した状態で載置工程がリトライされるため、リトライ処理の際に搬送キャリアがカバーに接触することによるエラーの発生を回避できる。
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明で使用される搬送キャリアの一実施形態について、
図1(a)および(b)を参照しながら説明する。
図1(a)は、基板1とこれを保持する搬送キャリア10とを概略的に示す上面図であり、
図1(b)は、基板1および搬送キャリア10の
図1(a)に示すB-B線での断面図である。
図1(a)に示すように、搬送キャリア10は、フレーム2および保持シート3を備えている。保持シート3は、その外周部がフレーム2に固定されている。基板1は、保持シート3に貼着されて、搬送キャリア10に保持される。なお、
図1では、フレーム2および基板1が共に略円形である場合について図示するが、これに限定されるものではない。
【0019】
(基板)
基板1は、プラズマ処理の対象物である。基板1は、例えば、本体部の一方の表面に、半導体回路、電子部品素子、MEMS等の回路層を形成した後、回路層とは反対側である本体部の裏面を研削し、厚みを薄くすることにより作製される。基板1を個片化することにより、上記回路層を有する電子部品(図示せず)が得られる。
【0020】
基板1の大きさは特に限定されず、例えば、最大径50mm~300mm程度である。基板1の厚みは、通常、25~150μm程度と、非常に薄い。そのため、基板1自体は、剛性(自己支持性)をほとんど有さない。そこで、ほぼ平坦なフレーム2に保持シート3の外周部を固定し、この保持シート3に基板1を貼着する。これにより、基板1の搬送等の取り扱いが容易となる。基板1の形状も特に限定されず、例えば、円形、角型である。また、基板1には、オリエンテーションフラット(オリフラ)、ノッチ等の切欠き(いずれも図示せず)が設けられていてもよい。
【0021】
基板の本体部の材質も特に限定されず、例えば、半導体、誘電体、金属、あるいはこれらの積層体等が挙げられる。半導体としては、シリコン(Si)、ガリウム砒素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)などが例示できる。誘電体としては、ポリイミドなどの樹脂膜、低誘電率膜(Low-k膜)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(Si3N4)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)などが例示できる。
【0022】
基板1の保持シート3に貼着していない面には、所望の形状にマスクが形成されている(図示せず)。マスクが形成されている部分は、プラズマによるエッチングから保護される。マスクが形成されていない部分は、その表面から裏面までがプラズマによりエッチングされ得る。マスクとしては、例えば、レジスト膜を露光および現像することにより形成されるレジストマスクを用いることができる。また、マスクは、例えば、基板1の表面に形成された樹脂膜あるいは樹脂フィルムをレーザスクライブにより開口して、形成されてもよい。
【0023】
(フレーム)
フレーム2は、基板1の全体と同じかそれ以上の面積の開口を有した枠体であり、所定の幅および略一定の薄い厚みを有している。フレーム2は、保持シート3および基板1を保持した状態で搬送できる程度の剛性を有している。
【0024】
フレーム2の開口の形状は特に限定されないが、例えば、円形や、矩形、六角形など多角形であってもよい。フレーム2には、位置決めのためのノッチ2aやコーナーカット2bが設けられていてもよい。フレーム2の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属や、樹脂等が挙げられる。フレーム2の一方の面には、保持シート3の一方の面の外周縁付近が貼着される。
【0025】
(保持シート)
保持シート3は、例えば、粘着剤を有する面(粘着面3a)と粘着剤を有しない面(非粘着面3b)とを備えている。粘着面3aの外周縁は、フレーム2の一方の面に貼着しており、フレーム2の開口を覆っている。また、粘着面3aのフレーム2の開口から露出した部分には、基板1が貼着される。
【0026】
粘着面3aは、紫外線(UV)の照射によって粘着力が減少する粘着成分からなることが好ましい。ダイシング後に紫外線照射を行うことにより、個片化された基板(電子部品)が粘着面3aから容易に剥離され、ピックアップされ易いためである。例えば、保持シート3は、フィルム状の基材の片面にUV硬化型アクリル粘着剤を、5~20μmの厚みに塗布することにより得られる。
【0027】
フィルム状の基材の材質は特に限定されず、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル等の熱可塑性樹脂が挙げられる。基材には、伸縮性を付加するためのゴム成分(例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等)、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、導電性材料等の各種添加剤が配合されていても良い。また、上記熱可塑性樹脂は、アクリル基等の光重合反応を示す官能基を有していてもよい。基材の厚みは、例えば、50~150μmである。プラズマ処理の際、搬送キャリア10は、ステージと非粘着面3bとが接するように、ステージに載置される。
【0028】
(プラズマ処理装置)
次に、
図2を参照しながら、本発明の実施形態に係るプラズマ処理装置100の基本構造を説明する。
図2は、プラズマ処理装置100の基本構造の断面を概略的に示している。
【0029】
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備えている。搬送キャリア10は、保持シート3の基板1を保持している面が上方を向くように、ステージ111に搭載される。ステージ111は、搬送キャリア10の全体を載置できる程度の大きさを備える。ステージ111の上方には、フレーム2および保持シート3の少なくとも一部を覆うとともに、基板1の少なくとも一部を露出させるための窓部124Wを有するカバー124が配置されている。
【0030】
ステージ111およびカバー124は、処理室(真空チャンバ103)内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状であり、上部開口は蓋体である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al2O3)、石英(SiO2)等の誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としてのアンテナ109が配置されている。アンテナ109は、第1高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。
【0031】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが接続されている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガスの供給源であるプロセスガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられており、排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。
【0032】
搬送キャリア10の側方において、真空チャンバ103の側面には窓130が設けられている。窓130は、例えば透明なガラス製であり、窓130を介して、搬送キャリア10がステージ111に載置された状態を視認可能である。
【0033】
撮像部131は、真空チャンバ103の窓130に近接して配置されている。撮像部131は、例えばCCDカメラである。撮像部131は、窓130を介して、搬送キャリア10(例えば、フレーム2の内周側壁を含む領域)を撮像し、撮像データを取得する。撮像部131による撮像データを画像解析することにより、搬送キャリア10のステージ111への載置状態の良否を判定することができる。載置状態の良否判定は、後述する制御部内に設けられた判定部により行われ得る。
【0034】
ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116および基台117を取り囲む外周部118とを備える。外周部118は導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されており、電極層115、金属層116および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0035】
電極層115の内部には、静電吸着機構を構成するESC電極119と、第2高周波電源110Bに電気的に接続された高周波電極部120とが配置されている。ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。静電吸着機構は、ESC電極119および直流電源126により構成されている。静電吸着機構によって、保持シート3はステージ111に押し付けられて固定される。以下、保持シート3をステージ111に固定する固定機構として、静電吸着機構を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。保持シート3のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0036】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127は、ステージ111を冷却する。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載された保持シート3が冷却されるとともに、ステージ111にその一部が接触しているカバー124も冷却される。これにより、基板1や保持シート3が、プラズマ処理中に加熱されることによって損傷されることが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0037】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、昇降機構123Aにより昇降駆動される。搬送キャリア10が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122は、搬送キャリア10のフレーム2を支持する。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア10は、ステージ111の所定の位置に搭載される。
【0038】
カバー124の端部には、複数の昇降ロッド121が連結しており、カバー124を昇降可能にしている。昇降ロッド121は、昇降機構123Bにより昇降駆動される。昇降機構123Bによるカバー124の昇降の動作は、昇降機構123Aとは独立して行うことができる。
【0039】
昇降ロッド121および昇降機構123Bは、相対位置変更部を構成し、カバー124とステージ111との相対的な距離を、第1距離と、第1距離よりも小さな第2距離との間で変更する。しかしながら、相対位置変更部による距離の変更方法については、昇降ロッド121を用いる方法に限定されるものではない。
カバー124とステージ111との距離が第1距離d1の状態で、搬送キャリア10のステージ111への載置状態が判定される。判定の結果、載置状態が第1状態(良好)と判定された場合には、相対位置変更部は、カバー124を下降させることにより、カバー124とステージ111との距離を第2距離d2に変更する。その後、カバー124とステージ111との距離が第2距離d2の状態で、プラズマ処理が行われる。
【0040】
誘電体部材108、アンテナ109、第1高周波電源110A、第2高周波電源110B、プロセスガス源112、減圧機構114、および、高周波電極部120は、プラズマ発生部を構成する。
【0041】
制御装置128は、第1高周波電源110A、第2高周波電源110B、プロセスガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、昇降機構123A、昇降機構123Bおよび静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100を構成する要素の動作を制御する。制御装置128は、また、判定部を有し、撮像部131が取得した撮像データに基づき、搬送キャリア10のステージ111への載置状態の良否を判定する。
【0042】
(プラズマ処理方法)
次に、本実施形態に係るプラズマ処理方法の基本的な工程について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
図3は、プラズマ処理方法の一部の工程を示すフローチャートである。
【0043】
図4A~
図4Fは、プラズマ処理方法における各工程において、カバーとステージの位置関係を示す概念図である。なお、
図4A~
図4Fでは、発明の理解を容易とするため、外周部118、外周リング129、およびガス導入経路などの記載を省略している。
【0044】
本発明の一実施形態に係るプラズマ処理方法は、フレームと保持シートとを備える搬送キャリアに保持された基板を、チャンバと、チャンバ内にプラズマを発生させるプラズマ発生部と、チャンバ内に設けられ、搬送キャリアが載置されるステージと、搬送キャリアがステージに載置された状態で搬送キャリアの少なくとも一部を覆うカバーと、を備えるプラズマ処理装置のステージに載置する載置工程と、カバーとステージとの距離が第1距離である状態で、前記搬送キャリアの載置状態を判定する判定工程と、を備える。判定工程において載置状態が第1状態(良好)と判定された場合、カバーとステージとの距離を第1距離よりも小さな第2距離に変更してから、チャンバ内にプラズマを発生させ、発生させたプラズマを基板に照射してプラズマ処理を行う。
【0045】
(1)準備工程
まず、搬送キャリア10を準備する。搬送キャリア10は、保持シート3をフレーム2の一方の面に貼着し、固定することにより得られる。このとき、
図1(b)に示すように、保持シート3の粘着面3aをフレームに対向させる。次いで、保持シート3の粘着面3aに基板1を貼着することにより、基板1を搬送キャリア10に保持させる。
【0046】
(2)搬入工程
次に、基板1が保持された搬送キャリア10を真空チャンバ103内に搬入する。
【0047】
図4Aは、搬送キャリアを搬入する前のカバー124とステージ111の位置関係を示している。
図4Aに示すように、昇降ロッド121および支持部122は下降した位置にある。
【0048】
昇降ロッド121および支持部122を駆動させ、真空チャンバ103内においてカバー124を所定の位置まで上昇させるとともに、支持部122を上昇した状態で待機させる。
図4Bは、このときのカバー124とステージ111の位置関係を示している。このとき、カバー124とステージ111との距離は、第1距離d1である。
【0049】
続いて、図示しないシャッターを開き、搬送アームを介して、搬送アームに保持された搬送キャリア10が真空チャンバ103内に搬入される。搬送キャリア10がステージ111上方の所定の位置に到達すると、支持部122に搬送キャリア10が受け渡される。搬送キャリア10は、保持シート3の基板1を保持している面が上方を向くように、支持部122の上端面に載置される。
図4Cは、このときのカバー124とステージ111の位置関係を示している。
【0050】
(3)載置工程
搬送キャリア10が支持部122に受け渡されると、搬送アーム221を退出させて、シャッターを閉じ、真空チャンバ103を密閉状態とする。その後、支持部122を降下させる。支持部122の上端面が、ステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、搬送キャリア10は、ステージ111に載置される。
図4Dは、このときのカバー124とステージ111の位置関係を示している。カバー124は下降させていないので、カバー124とステージ111との距離は、第1距離d1のままである。
【0051】
続いて、ステージ111に載置された搬送キャリア10をステージ111上に固定する。ステージ111がESC電極119を備える場合、ESC電極119に電圧を印加することにより、搬送キャリア10の保持シート3とステージ111との間に吸着力を発生させ、保持シート3、ひいては搬送キャリア10を、ステージ111に固定することができる。
【0052】
ESC電極119は、単極型と双極型の2つの型式に大別される。
単極型のESC電極119は、少なくとも1つの電極を含む。単極型のESC電極119に2以上の電極が含まれる場合、いずれにも同じ極性の電圧が印加される。単極型のESC電極119を備える静電吸着機構は、吸着メカニズムとしてクーロン力を利用する。ESC電極119に電圧を印加することにより、誘電体からなるステージ111の表面に誘電分極による電荷を誘起させるとともに、ステージ111の上に載置された保持シート3を帯電させる。その結果、ステージ111の表面に誘起された電荷と帯電した保持シート3との間でクーロン力が働き、搬送キャリア10がステージ111に吸着される。なお、保持シート3を帯電させるためには、真空チャンバ103内でプラズマを発生させ、発生したプラズマに保持シート3を曝せばよい。
【0053】
一方、双極型のESC電極119は、正極および負極を備え、正極および負極にそれぞれ極性の異なる電圧が印加される。双極型のESC電極119としては、例えば、櫛形電極が用いられる。正極には、直流電源126からV1の電圧が印加され、負極には、直流電源126から-V1の電圧が印加される。
【0054】
双極型のESC電極119を備える静電吸着機構の吸着メカニズムとしては、クーロン力を利用する場合と、ジョンソン・ラーベック力を利用する場合とがある。吸着メカニズムに応じて、ESC電極119の構造やESC電極119を構成する材料(例えば、セラミックス)が適宜選択される。いずれの吸着メカニズムの場合も、正極および負極にそれぞれ極性の異なる電圧を印加することにより、ESC電極と保持シート3との間に吸着力が生じ、搬送キャリア10をステージ111に吸着させることができる。なお、双極型の場合は、単極型の場合と異なり、吸着させるために保持シート3を帯電させる必要はない。
【0055】
双極型のESC電極は、正極と負極への電圧の印加の方法によって、単極型として機能させることもできる。具体的には、正極と負極に同一極性の電圧を印加することにより、単極型のESC電極として利用できる。
【0056】
ESC電極119が双極型である場合、搬送キャリア10が支持部122に受け渡された後、直流電源126からESC電極119に電圧を印加する。これにより、保持シート3がステージ111に接触すると同時にステージ111に吸着されて、保持シート3はステージ111に固定される。なお、ESC電極119への電圧の印加は、保持シート3がステージ111に載置された後(接触した後)に、開始されてもよい。
【0057】
(4)判定工程
載置工程の後、搬送キャリアの載置状態を判定する判定工程が行われる。ここでは、窓130を介して、真空チャンバ103内の搬送キャリア10の載置状態を撮像部131を用いて撮影し、撮像データを画像解析する。これにより、保持シート3のステージ111への載置状態、ひいては、保持シート3を介した基板1のステージ111への載置状態を判定する。
【0058】
例えば、
図4Dに示すように、撮像部131は、ステージ111に載置された状態で搬送キャリア10の側方となる位置に配置され、搬送キャリアの載置面(基板1の主面)から僅かに傾いた角度から、搬送キャリア10を撮影する。撮像部131は、特に、搬送キャリア10のフレーム2の内周側壁を含む領域を撮影する。撮像データにフレームの内周側壁が含まれるように、撮像部131の撮像の角度および撮像範囲が調整される。
【0059】
基板または保持シートにおいてステージ111からの浮き上がりがなく、搬送キャリアの載置状態が良好である場合、撮像データにはフレーム2の内周側壁の情報が含まれる。しかしながら、例えば
図4Eに示すように、一部領域において保持シートがステージ111から浮き上がっている場合、浮き上がり部分によってフレームの内周側壁の少なくとも一部が隠れ、撮像データに現れなくなる。よって、撮像データからフレームの内周側壁に相当する領域を画像解析により求めることで、搬送キャリアの載置状態を判定できる。例えば、撮像データにおけるフレームの内周側壁に相当する領域の面積を求め、面積が所定値以上であれば載置状態は第1状態(良好)であり、所定値未満であれば載置状態は第2状態(不良)であると判定すればよい。
【0060】
しかしながら、搬送キャリアの載置状態の判定方法については、上記の撮像部131を用いた方法に限られるものではない。例えば、保持シート3に対向するステージ111の表面に判定用ガス孔を設ける方法、あるいは、変位センサまたは温度センサを設けることにより、搬送キャリアの載置状態の良否を判定してもよい。
【0061】
判定用ガス孔を設ける方法では、判定用ガス孔を介して判定用ガスを導入する際のガス圧力の時間変化に基づき、搬送キャリアの載置状態の良否を判定することができる。保持シート3がステージ111から浮き上がっている場合、保持シート3とステージ111との間に隙間が生じる。これに対し、搬送キャリアの載置状態が良好である場合、保持シート3はステージ111と密着しており、判定用ガス孔は保持シート3で塞がれている。よって、例えば判定用ガスを一定流量で判定用ガス孔から導入する場合、保持シート3とステージ111との間に隙間があると、圧力が所定値に到達するまでに時間を要する。よって、圧力が所定値に達するまでの時間(あるいは、判定用ガスを導入してから所定期間経過後のガス圧力)を測定することで、搬送キャリアの載置状態を判定することができる。
【0062】
変位センサを用いる場合、変位センサは、搬送アームに取り付けられた状態で、ステージ111の上方を移動し、搬送キャリアがステージに載置された状態における基板の高さを測定する。変位センサとしては、特に限定されないが、非接触式が好ましい、非接触式の変位センサとしては、光学式(レーザ式)、渦電流式、超音波式などが挙げられる。温度センサを用いる場合、ステージを所定温度(例えば、-10℃以下)に冷却し、ステージに載置された基板1の表面の温度を測定する。搬送キャリアの載置状態が第1状態(良好)である場合、基板1の表面温度は一様に低いが、保持シート3がステージ111から浮き上がった部分がある(第2状態)と、その部分の温度が高くなる。温度センサとしては、特に限定されないが、非接触式が好ましい、非接触式の温度センサとしては、赤外線放射エネルギーを測定する放射温度計が挙げられる。放射温度計は、例えば、真空チャンバ103の上方に設けられた覗き窓に対向するように、真空チャンバ103の外側に設置される。
【0063】
搬送キャリア10のステージ111への載置状態が第1状態(良好)であると判定された場合、後述するプラズマエッチング工程に進む。一方、搬送キャリア10のステージ111への載置状態が第2状態(不良)であると判定されると、搬送キャリア10は真空チャンバ103から搬出され、その後、載置工程が再度試みられる。あるいは、再び支持部122を上昇させ、搬送キャリア10がステージ111から離間した状態から、載置工程が再度試みられる。リトライにおいて、支持部122を上昇あるいは降下させる間に、支持部122を小さく昇降させてもよい。これにより、保持シート3のシワが解消され、保持シートの浮き上がりが解消され易くなる。
【0064】
(5)プラズマ処理工程
判定工程において、上記の載置状態が良好であると判定されると、昇降ロッド121を駆動させ、カバー124を所定の位置にまで降下させる。これにより、カバー124とステージ111との距離は、第1距離d1よりも小さな第2距離d2に変更される。
図4Fは、このときのカバー124とステージ111の位置関係を示している。第2距離d2は、カバー124が保持シート3に接触することなくフレーム2を覆うことができる距離に調節されている。これにより、フレーム2および保持シート3の基板1を保持していない部分の一部は、カバー124によって覆われ、基板1はカバー124の窓部124Wから露出する。第2距離d2は特に限定されないが、例えば、0.5mm~1.5mm程度である。第2距離d2は、カバー124の一部であって、ステージ111に載置された搬送キャリアの保持シートに対向する部分と、ステージ111と、の最短距離である。
【0065】
カバー124は、例えば、略円形の外形輪郭を有したドーナツ形であり、一定の幅および薄い厚みを備えている。カバー124の内径(窓部124Wの直径)はフレーム2の内径よりも小さく、カバー124の外径はフレーム2の外径よりも大きい。したがって、搬送キャリア10をステージの所定の位置に搭載し、カバー124を降下させると、カバー124は、フレーム2と保持シート3の少なくとも一部を覆うことができる。窓部124Wからは、基板1の少なくとも一部が露出する。カバー124は、例えば、セラミックス(例えば、アルミナ、窒化アルミニウムなど)や石英などの誘電体や、アルミニウムあるいは表面がアルマイト処理されたアルミニウムなどの金属で構成される。
【0066】
支持部122およびカバー124が所定の位置に配置されると、プロセスガス源112からガス導入口103aを通って、プロセスガスが真空チャンバ103内部に導入される。一方、減圧機構114は、真空チャンバ103内のガスを排気口103bから排気し、真空チャンバ103内を所定の圧力に維持する。続いて、アンテナ109に第1高周波電源110Aから高周波電力を投入し、真空チャンバ103内にプラズマPを発生させる。発生したプラズマPは、イオン、電子、ラジカルなどから構成される。基板1に形成されたレジストマスクから露出した部分の表面から裏面までが、発生したプラズマPとの物理化学的反応によって除去(エッチング)され、基板1は個片化される。
【0067】
ここで、第2高周波電源110Bから高周波電極部120に、例えば100kHz以上の高周波電力を投入してもよい。イオンの基板1への入射エネルギーは、第2高周波電源110Bから高周波電極部120に印加された高周波電力によって制御することができる。高周波電極部120に高周波電力が投入されることにより、ステージ111の表面にバイアス電圧が発生し、このバイアス電圧によって基板1に入射するイオンが加速され、エッチング速度が増加する。
【0068】
エッチングの条件(プラズマを発生させる条件)は、基板1の材質などに応じて設定される。例えば、基板1がSiの場合、真空チャンバ103内に、六フッ化硫黄(SF6)などを原料とするプラズマを発生させることにより、基板1はエッチングされる。この場合、例えば、プロセスガス源112から、SF6ガスを100~800sccmで供給しながら、減圧機構114により真空チャンバ103の圧力を10~50Paに制御する。このとき、アンテナ109に1000~5000Wの周波数13.56MHzの高周波電力を供給するとともに、高周波電極部120に50~1000Wの100kHz以上(例えば、400~500kHz、あるいは、13.56MHz)の高周波電力を供給する。
【0069】
エッチング中の搬送キャリア10の温度上昇を抑えるため、冷媒循環装置125により、ステージ111内に循環させる冷媒の温度を-20から20℃に設定することが好ましい。これにより、保持シート3とステージ111との接触状態が良好であれば、プラズマ処理中の保持シート3の温度は、例えば60℃以下に制御される。そのため、保持シート3の熱的ダメージが抑制される。
【0070】
プラズマダイシングの場合、レジストマスクから露出した基板1の表面は、垂直にエッチングされることが望ましい。この場合、上記のように、SF6などのフッ素系ガスのプラズマによるエッチングステップと、パーフルオロシクロブタン(C4F8)などのフッ化炭素ガスのプラズマによる保護膜堆積ステップとを、交互に繰り返してもよい。
【0071】
エッチングによって基板1が個片化された後、アッシングが実行される。アッシング用のプロセスガス(例えば、酸素ガスや、酸素ガスとフッ素を含むガスとの混合ガス等)を、アッシングガス源113から真空チャンバ103内に導入する。一方、減圧機構114による排気を行い、真空チャンバ103内を所定の圧力に維持する。第1高周波電源110Aからの高周波電力の投入により、真空チャンバ103内には酸素プラズマが発生し、カバー124の窓部124Wから露出している個片化された基板1(電子部品)の表面のレジストマスクが完全に除去される。
【0072】
(6)搬出工程
アッシングが終了すると、真空チャンバ103内のガスが排出され、シャッターを開いて、個片化された基板1を保持する搬送キャリア10が、搬送アーム221によって、プラズマ処理装置100から搬出される。搬送キャリア10の搬出プロセスは、上記のような基板1をステージ111に搭載する手順とは逆の手順で行われても良い。すなわち、カバー124を所定の位置にまで上昇させた後、ESC電極119への印加電圧をゼロにして、搬送キャリア10のステージ111への吸着を解除し、支持部122を上昇させる。支持部122が所定の位置まで上昇した後、搬送キャリア10は搬出される。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のプラズマ処理方法は、ステージの上方にカバーを備えるプラズマ処理装置を用いてプラズマ処理を行う場合に有用である。
【符号の説明】
【0074】
1:基板、1A:外周部、1B:中央部
2:フレーム、2a:ノッチ、2b:コーナーカット
3:保持シート、3a:粘着面、3b:非粘着面
10:搬送キャリア
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ、103a:ガス導入口、103b:排気口、108:誘電体部材、109:アンテナ、110A:第1高周波電源、110B:第2高周波電源、111:ステージ、112:プロセスガス源、113:アッシングガス源、114:減圧機構、115:電極層、116:金属層、117:基台、118:外周部、119:ESC電極、120:高周波電極部、121:昇降ロッド、122:支持部、123A、123B:昇降機構、124:カバー、124W:窓部、125:冷媒循環装置、126:直流電源、127:冷媒流路、128:制御装置、129:外周リング
130:窓、131:撮像部