(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058368
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】歩行者装置、移動体装置、測位システム、および測位方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20230418BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
G01C21/26 P
G09B29/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168364
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 剛
(72)【発明者】
【氏名】村松 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】沈 陽平
(72)【発明者】
【氏名】林 俊光
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2C032HB22
2C032HC08
2F129AA02
2F129BB02
2F129BB03
2F129BB15
2F129BB21
2F129BB22
2F129BB26
2F129FF02
2F129GG17
2F129GG18
2F129HH15
(57)【要約】
【課題】ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図る。
【解決手段】歩行者端末1は、歩行者の周囲を撮影するカメラ12と、歩行者の状態を検出する状態センサ13と、歩行者の周辺環境に関する周辺環境情報DBの登録情報を記憶するメモリ17と、プロセッサ18と、を備え、プロセッサは、常時、衛星測位を実施して歩行者の位置情報を取得し、状態センサの検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には、カメラの撮影画像と、周辺環境情報DBに登録された候補画像とを照合して、歩行者の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、ビジュアル測位の実施タイミングに応じて、カメラのオンオフを制御する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者の周囲の物体を検出する外界センサと、
歩行者の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
標準測位を実施して歩行者の位置情報を取得し、
特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して歩行者の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、
前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行うことを特徴とする歩行者装置。
【請求項2】
前記外界センサは、カメラおよびLIDARのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の歩行者装置。
【請求項3】
歩行者の状態を検出する状態センサを備え、
前記プロセッサは、
前記状態センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項1に記載の歩行者装置。
【請求項4】
前記状態センサは、加速度センサであり、
前記プロセッサは、
前記加速度センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者の移動速度に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項5】
前記状態センサは、方位センサであり、
前記プロセッサは、
前記方位センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者の方位に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項6】
歩行者の視線を検出する視線センサを備え、
前記プロセッサは、
前記視線センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者の視線に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
複数の前記状態センサの各検出結果に基づいて、前記ビジュアル測位の実施が必要な前記特定事象を検知することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記標準測位としての衛星測位を実施し、
前記衛星測位により取得した位置情報に基づいて歩行者の軌跡を取得し、前記特定事象として、前記軌跡に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項1に記載の歩行者装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記標準測位としての衛星測位を実施し、
前記特定事象として、衛星電波に所定の不良が現れる状況である場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項1に記載の歩行者装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
地図情報と、歩行者の位置情報とに基づいて、前記地図情報に登録された衛星電波不良エリアに自装置が進入した場合に、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項9に記載の歩行者装置。
【請求項11】
歩行者の足元の路面を撮影する足元カメラを備え、
前記プロセッサは、
前記ビジュアル測位として、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合する第1の照合処理と、前記足元カメラの撮影画像と前記周辺環境情報とを照合する第2の照合処理とを実行し、前記第1の照合処理および前記第2の照合処理の各照合結果に基づいて、歩行者の現在位置を推定することを特徴とする請求項1に記載の歩行者装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記歩行者状態に所定の変化が現れない場合でも、歩行者の移動速度が所定値以上速い場合には、前記外界センサの各時刻の検出画像の変化に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する画像相対測位を、所定間隔で実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項13】
前記プロセッサは、
前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超える場合には、前記ビジュアル測位を実施し、
前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超えない場合には、前記外界センサの各時刻の検出画像の変化に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する画像相対測位を実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項14】
前記プロセッサは、
前記歩行者状態に所定の変化が現れない場合には、前記状態センサの検出結果に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する非画像相対測位を実施することを特徴とする請求項13に記載の歩行者装置。
【請求項15】
前記プロセッサは、
前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超える場合には、前記ビジュアル測位を実施し、
前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超えない場合には、歩行者の直前の軌跡に基づいて歩行者の経路パターンを判別して歩行者の現在位置を推定する経路推定測位を実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記歩行者状態に所定の変化が現れない場合でも、歩行者が所定の安全エリアに近接した場合には、前記ビジュアル測位を実施することを特徴とする請求項3に記載の歩行者装置。
【請求項17】
移動体の周囲の物体を検出する外界センサと、
移動体の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリと、
プロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、
特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、
前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行うことを特徴とする移動体装置。
【請求項18】
移動体装置において移動体の位置情報を取得する処理を実行する1つ以上のコンピュータで構成される測位システムであって、
移動体装置に設けられ、移動体の周囲の物体を検出する外界センサを備え、
前記コンピュータは、
移動体の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリを有し、
標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、
特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、
前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行うことを特徴とする測位システム。
【請求項19】
移動体装置において移動体の位置情報を取得する処理を1つ以上のコンピュータで実行する測位方法であって、
前記コンピュータは、
標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、
特定事象が発生すると、移動体の周囲の物体を検出する外界センサの検出画像と、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、
前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行うことを特徴とする測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者に保持されて歩行者の現在位置を測定する測位を行う歩行者装置、歩行者や車両などの移動体に保持されて移動体の現在位置を測定する測位を行う移動体装置、測位システム、および測位方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムでは、車両の位置情報を、車載端末同士で交換することで、車両同士の事故を回避し、また、車両や歩行者の位置情報を、車載端末と歩行者端末との間で交換することで、車両と歩行者との事故を回避する。
【0003】
車載端末や歩行者端末では、主に衛星測位により車両や歩行者の位置情報を取得するが、PDR(歩行者自律航法:Pedestrian Dead Reckoning)を利用した測位など、様々な測位方法を採用することができる。このとき、交通事故を防止する上で、高精度な測位技術を採用することが望まれる。
【0004】
このような高精度な測位技術として、ビジュアル測位、例えばVPS(Visual Positioning Service)と呼称される技術が知られている(特許文献1参照)。この技術では、測位装置が、カメラからリアルタイムに出力される撮影画像と、データベースに登録された候補画像とを照合して、両者が一致すると、候補画像に対応付けられた位置情報を、移動体の現在地の位置情報として取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衛星測位では、歩行者が建築物の影に入ることによる衛星電波の遮蔽やマルチパスの影響により測位精度が低下する。一方、ビジュアル測位では、高い精度を確保することができるが、カメラを動作させる上に照合処理の負荷が大きいため、消費電力が大きい。このため、ビジュアル測位が頻繁に実施されると、歩行者端末を長時間連続して使用できないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる歩行者装置、測位システム、および測位方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の歩行者装置は、歩行者の周囲の物体を検出する外界センサと、歩行者の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、標準測位を実施して歩行者の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して歩行者の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0009】
また、本発明の移動体装置は、移動体の周囲の物体を検出する外界センサと、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0010】
また、本発明の測位システムは、移動体装置において移動体の位置情報を取得する処理を実行する1つ以上のコンピュータで構成される測位システムであって、移動体装置に設けられ、移動体の周囲の物体を検出する外界センサを備え、前記コンピュータは、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリを有し、標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0011】
また、本発明の測位方法は、移動体装置において移動体の位置情報を取得する処理を1つ以上のコンピュータで実行する測位方法であって、前記コンピュータは、標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、移動体の周囲の物体を検出する外界センサの検出画像と、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る交通安全支援システムの全体構成図
【
図2】第1実施形態に係る歩行者端末で行われるビジュアル測位の概要を示す説明図
【
図3】第1実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図4】第1実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図5】第1実施形態に係る路側機の概略構成を示すブロック図
【
図6】第1実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図7】第1実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図8】第1実施形態に係る車載端末の動作手順を示すフロー図
【
図9】第1実施形態に係る路側機の動作手順を示すフロー図
【
図10】第1実施形態に係る歩行者端末で行われるビジュアル測位の手順を示すフロー図
【
図11】第1実施形態の変形例に係る歩行者端末で行われる足下画像照合処理の概要を示す説明図
【
図12】第1実施形態の変形例に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図13】第2実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図14】第2実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図15】第2実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図16】第3実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図17】第3実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図18】第3実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図19】第4実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図20】第4実施形態に係る歩行者端末で行われる画像相対測位の概要を示す説明図
【
図21】第4実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図22】第4実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図23】第5実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図24】第5実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図25】第5実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図26】第6実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図27】第6実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図28】第6実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【
図29】第7実施形態に係る歩行者端末で行われる測位制御の概要を示す説明図
【
図30】第7実施形態に係る歩行者端末の概略構成を示すブロック図
【
図31】第7実施形態に係る歩行者端末の動作手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0014】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、歩行者の周囲の物体を検出する外界センサと、歩行者の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、標準測位を実施して歩行者の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して歩行者の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0015】
これによると、ビジュアル測位が、高い測位精度が望まれる状況でのみ実施されるため、ビジュアル測位の頻度が少なくなるため、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる。また、歩行者にとって危険な状態に推移する可能性が高い状況で、精度の高いビジュアル測位が実施されることで、精度の高い危険判定が実現されるため、歩行者の安全性を高めることができる。なお、標準測位は、到来電波に基づいて位置情報を取得する電波測位、例えば、測位衛星からの電波に基づいて位置情報を取得する衛星測位などである。
【0016】
また、第2の発明は、前記外界センサは、カメラおよびLIDARのいずれかである構成とする。
【0017】
これによると、歩行者の周囲の物体を精度よく検出することができる。なお、外界センサはカメラおよびLIDARに限定されない。例えば、外界センサはレーダーであってもよい。
【0018】
また、第3の発明は、歩行者の状態を検出する状態センサを備え、前記プロセッサは、前記状態センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0019】
これによると、高い測位精度が求められる状況で適切にビジュアル測位を実施することができる。
【0020】
また、第4の発明は、前記状態センサは、加速度センサであり、前記プロセッサは、前記加速度センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者の移動速度に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0021】
これによると、例えば歩行者が急に走り出したり急に立ち止まったりした場合、歩行者にとって危険な物体(例えば車両など)や、歩行者が高い関心を示す物体(知人)を、歩行者が見つけたものと推測され、直後に歩行者が飛び出しなどの急な行動をとる可能性が高く、高い測位精度が求められる状況である。したがって、このようなタイミングでビジュアル測位が実施されることで、歩行者の安全性を高めることができる。
【0022】
また、第5の発明は、前記状態センサは、方位センサであり、前記プロセッサは、前記方位センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者の方位に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0023】
これによると、例えば歩行者が急に方位(進行方向や顔の向き)を変えた場合、歩行者にとって危険な物体(例えば車両など)や、歩行者が高い関心を示す物体(知人)を、歩行者が見つけたものと推測され、直後に歩行者が飛び出しなどの急な行動をとる可能性が高く、高い測位精度が求められる状況である。したがって、このようなタイミングでビジュアル測位が実施されることで、歩行者の安全性を高めることができる。なお、方位センサは、具体的にはジャイロセンサや地磁気センサである。
【0024】
また、第6の発明は、歩行者の視線を検出する視線センサを備え、前記プロセッサは、前記視線センサの検出結果に基づいて、前記特定事象として、歩行者の視線に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0025】
これによると、例えば歩行者が視線を大きく変化させた場合、歩行者にとって危険な物体(例えば車両など)や、歩行者が高い関心を示す物体(知人)を、歩行者が見つけたものと推測され、直後に歩行者が飛び出しなどの急な行動をとる可能性が高く、高い測位精度が求められる状況である。したがって、このようなタイミングでビジュアル測位が実施されることで、歩行者の安全性を高めることができる。
【0026】
また、第7の発明は、前記プロセッサは、複数の前記状態センサの各検出結果に基づいて、前記ビジュアル測位の実施が必要な前記特定事象を検知する構成とする。
【0027】
これによると、複数の状態センサの検出結果を組み合わせることで、歩行者の飛び出しなどの急な行動の予兆を検知して、ビジュアル測位の実施の必要性を適切に判定することができる。
【0028】
また、第8の発明は、前記プロセッサは、前記標準測位としての衛星測位を実施し、前記衛星測位により取得した位置情報に基づいて歩行者の軌跡を取得し、前記特定事象として、前記軌跡に所定の変化が現れた場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0029】
これによると、歩行者の軌跡に特異な変化が現れた場合、すなわち、歩行者自体が異常な行動をとった場合や、測位誤差により異常な軌跡が現れた場合に、ビジュアル測位を実施して精度の高い位置情報を取得することで、歩行者の安全性を高めることができる。
【0030】
また、第9の発明は、前記プロセッサは、前記標準測位としての衛星測位を実施し、前記特定事象として、衛星電波に所定の不良が現れる状況である場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0031】
これによると、衛星測位の精度が低下したタイミングで適切にビジュアル測位を実施することができる。
【0032】
また、第10の発明は、前記プロセッサは、地図情報と、歩行者の位置情報とに基づいて、前記地図情報に登録された衛星電波不良エリアに自装置が進入した場合に、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0033】
これによると、衛星電波に所定の不良が現れる状況であることを簡単に判定することができる。
【0034】
また、第11の発明は、歩行者の足元の路面を撮影する足元カメラを備え、前記プロセッサは、前記ビジュアル測位として、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合する第1の照合処理と、前記足元カメラの撮影画像と前記周辺環境情報とを照合する第2の照合処理とを実行し、前記第1の照合処理および前記第2の照合処理の各照合結果に基づいて、歩行者の現在位置を推定する構成とする。
【0035】
これによると、測位精度を向上させることができる。
【0036】
また、第12の発明は、前記プロセッサは、前記歩行者状態に所定の変化が現れない場合でも、歩行者の移動速度が所定値以上速い場合には、前記外界センサの各時刻の検出画像の変化に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する画像相対測位を、所定間隔で実施する構成とする。
【0037】
これによると、画像相対測位が、歩行者の移動速度が速い場合に実施され、さらに、画像相対測位が間欠的に実施されるため、消費電力を抑えることができる。なお、画像相対測位は、画像照合が行われるビジュアル測位(画像絶対測位)より処理負荷が小さく消費電力が小さいが、外界センサを利用することから、継続して実施されると消費電力が大きくなる。
【0038】
また、第13の発明は、前記プロセッサは、前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超える場合には、前記ビジュアル測位を実施し、前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超えない場合には、前記外界センサの各時刻の検出画像の変化に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する画像相対測位を実施する構成とする。
【0039】
これによると、画像相対測位では、画像照合のような負荷の大きい処理が行われないため、消費電力を抑えることができる。
【0040】
また、第14の発明は、前記プロセッサは、前記歩行者状態に所定の変化が現れない場合には、前記状態センサの検出結果に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する非画像相対測位を実施する構成とする。
【0041】
これによると、非画像相対測位では、外界センサが用いられず、また、画像照合のような負荷の大きい処理も行われないため、消費電力を抑えることができる。
【0042】
また、第15の発明は、前記プロセッサは、前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超える場合には、前記ビジュアル測位を実施し、前記歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超えない場合には、歩行者の直前の軌跡に基づいて歩行者の経路パターンを判別して歩行者の現在位置を推定する経路推定測位を実施する構成とする。
【0043】
これによると、歩行者状態に所定の変化が現れた場合でも、その変化度合が小さい場合には、ビジュアル測位は実施されず、代わりに経路推定測位が実施される。この経路推定測位では、外界センサが用いられず、また、画像照合のような負荷の大きい処理も行われないため、消費電力を抑えることができる。
【0044】
また、第16の発明は、前記プロセッサは、前記歩行者状態に所定の変化が現れない場合でも、歩行者が所定の安全エリアに近接した場合には、前記ビジュアル測位を実施する構成とする。
【0045】
これによると、歩行者が安全エリアに進入する直前にビジュアル測位を実施することで、歩行者が確実に安全エリアに進入することを確認することができる。
【0046】
また、第17の発明は、移動体の周囲の物体を検出する外界センサと、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリと、プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0047】
これによると、第1の発明と同様に、ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる。
【0048】
また、第18の発明は、移動体装置において移動体の位置情報を取得する処理を実行する1つ以上のコンピュータで構成される測位システムであって、移動体装置に設けられ、移動体の周囲の物体を検出する外界センサを備え、前記コンピュータは、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報を記憶するメモリを有し、標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、前記外界センサの検出画像と前記周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0049】
これによると、第1の発明と同様に、ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる。
【0050】
また、第19の発明は、移動体装置において移動体の位置情報を取得する処理を1つ以上のコンピュータで実行する測位方法であって、前記コンピュータは、標準測位を実施して移動体の位置情報を取得し、特定事象が発生すると、移動体の周囲の物体を検出する外界センサの検出画像と、移動体の周辺環境に関する周辺環境情報とを照合して移動体の現在位置を推定するビジュアル測位を実施すると共に、前記ビジュアル測位の実施時には前記外界センサをオンとし、それ以外では前記外界センサをオフとする制御を行う構成とする。
【0051】
これによると、第1の発明と同様に、ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる。
【0052】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0053】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る交通安全支援システムの全体構成図である。
【0054】
この交通安全支援システムは、歩行者及び車両の交通安全を支援するものであり、歩行者端末1(歩行者装置、移動体装置、コンピュータ)と、車載端末2(車載装置)と、路側機3(路側装置)と、を備えている。
【0055】
歩行者端末1、車載端末2、および路側機3の間ではITS通信が行われる。このITS通信は、ITS(Intelligent Transport System:高度道路交通システム)を利用した安全運転支援無線システムで採用されている周波数帯(例えば700MHz帯や5.8GHz帯)を利用した無線通信である。なお、本実施形態では、適宜に歩行者端末1と車載端末2との間でのITS通信を歩車間通信と呼称し、歩行者端末1と路側機3との間でのITS通信を路歩間通信と呼称し、車載端末2と路側機3との間でのITS通信を路車間通信と呼称する。また、車載端末2同士の間でもITS通信が行われ、このITS通信は車車間通信と呼称する。
【0056】
歩行者端末1は、歩行者に所持される。この歩行者端末1では、ITS通信(歩車間通信)により車載端末2との間で、位置情報などを含むメッセージを送受信して、歩行者と車両との衝突の危険性を判定し、衝突の危険性がある場合には、歩行者に対する注意喚起動作を行う。歩行者端末1は、歩行者の身体に装着されるウェアラブルデバイス、特に歩行者の頭部に装着されるウェアラブルデバイス、いわゆるヘッドマウントデバイスやスマートグラスと呼称される装置であり、AR(拡張現実:Augmented Reality)を実現する機能を備えている。
【0057】
車載端末2は、車両に搭載される。この車載端末2では、ITS通信(歩車間通信)により歩行者端末1との間で、位置情報などを含むメッセージを送受信して、歩行者と車両との衝突の危険性を判定し、衝突の危険性がある場合には、運転者に対する注意喚起動作を行う。なお、注意喚起動作は、例えばカーナビゲーション装置などを用いて行われるとよい。
【0058】
路側機3は、道路の交差点などに設置される。この路側機3では、ITS通信(路歩間通信、路車間通信)により、歩行者端末1及び車載端末2に対して、交通情報などの各種の情報を配信する。また、路側機3は、ITS通信(路車間通信、路歩間通信)により、自装置の周辺に位置する車両や歩行者の存在を、車載端末2や歩行者端末1に通知する。これにより、見通し外の交差点における衝突を防止することができる。
【0059】
ここで、歩行者端末1では、歩行者の現在地の位置情報を取得するために標準測位として衛星測位が常時実施される。衛星測位は、測位衛星からの電波に基づいて位置情報を取得する。なお、標準測位は、到来電波に基づいて位置情報を取得する電波測位、例えば地上の基地局からの電波に基づいて位置情報を取得する測位でもよい。また、標準測位は、PDR(歩行者自律航法:Pedestrian Dead-Reckoning)による測位でもよい。このPDRによる測位では、歩行者端末1が、ジャイロセンサや加速度センサなどの検出結果に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する。
【0060】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1で行われるビジュアル測位について説明する。
図2は、歩行者端末1で行われるビジュアル測位の概要を示す説明図である。
【0061】
歩行者端末1では、歩行者の周囲を撮影するカメラ12の撮影画像を用いて歩行者の現在地の位置情報を取得するビジュアル測位が行われる。ビジュアル測位では、カメラ12からリアルタイムに出力される撮影画像(以下、適宜に「リアルタイムの撮影画像」と呼称する。)と、周辺環境DB(周辺環境データベース)に登録された候補画像とを照合して、照合が成功した候補画像に対応する位置情報を、歩行者の現在地の位置情報として取得する。
【0062】
周辺環境DBには、歩行者の周辺環境に関する情報(周辺環境情報)が登録されている。具体的には、歩行者が通行する道路において、歩行者が前方を見る視線に対応する撮影方向で撮影された撮影画像が、その撮影地点の位置情報と対応付けて、周辺環境DBに登録される。なお、撮影画像そのものでなく、撮影画像から抽出された特徴情報(特徴点の情報)が周辺環境DBに登録されてもよい。
【0063】
また、周辺環境DBには、三次元地図情報(環境地図情報)が登録されてもよい。三次元地図情報は、歩行者から見える景色の中に存在する物体、具体的には、道路や、その周辺の建築物などの定着物に関する三次元の情報である。この三次元地図情報は、例えば、歩行者が通行する道路を含む対象空間を種々の方向から撮影した撮影画像などに基づいて生成される。
【0064】
なお、路側機3は、自装置の周辺の所定範囲に関する周辺環境DBの登録情報を保持する。路側機3は、自装置に歩行者端末1に近づくと、自装置の周辺環境DBの登録情報を歩行者端末1に配信する。
【0065】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御について説明する。
図3は、歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
【0066】
衛星測位では、歩行者が建築物の影に入ることによる衛星電波の遮蔽やマルチパスの影響により測位精度が低下する。一方、ビジュアル測位では、高い精度を確保できるが、カメラを動作させる上に照合処理の負荷が大きいため、消費電力が大きい。このため、ビジュアル測位が頻繁に実行されると、歩行者端末1を長時間連続して使用できないという問題があった。このため、消費電力を抑制して省電力化を図ることが望まれる。
【0067】
そこで、本実施形態では、歩行者端末1において、常時、衛星測位が実施されると共に、高い測位精度が求められる特定事象が発生した場合にのみビジュアル測位が実施される。これにより、ビジュアル測位が、高い測位精度が望まれる状況でのみ実施され、ビジュアル測位の頻度が低くなるため、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる。また、歩行者にとって危険な状態に推移する可能性が高い状況で、精度の高いビジュアル測位が実施されることで、精度の高い危険判定が実現されるため、歩行者の安全性を高めることができる。
【0068】
特に本実施形態では、歩行者端末1において、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位が実施される。具体的には、歩行者状態として、移動速度、方位(進行方向や顔の向き)、および視線が検出され、これらのいずれかに所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位が実施される。
【0069】
ここで、例えば、歩行者が急に走り出したり急に立ち止まったりした場合や、歩行者が急に進行方向や顔の向きを変えた場合や、歩行者が視線を大きく変化させた場合、歩行者にとって危険な物体(例えば車両など)や、歩行者が高い関心を示す物体(知人)を、歩行者が見つけたものと推測される。このような行動を歩行者がとると、直後に歩行者が飛び出しなどの急な行動をとることで危険な状態に推移する可能性が高いため、高い測位精度が求められる。したがって、このようなタイミングでビジュアル測位を実施することで、歩行者の安全性を高めることができる。
【0070】
図3(A)に示す例では、歩行者が急に走り出したため、歩行者状態に所定の変化が現れたものと判定されて、ビジュアル測位が実施される。一方、
図3(B)に示す例では、歩行者が概ね一定速度で歩いているため、歩行者状態に所定の変化が現れていないと判定されて、ビジュアル測位が実施されない。
【0071】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図4は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0072】
歩行者端末1は、衛星測位部11と、カメラ12(外界センサ)と、状態センサ13と、ARディスプレイ14と、ITS通信部15と、無線通信部16と、メモリ17と、プロセッサ18と、を備えている。
【0073】
衛星測位部11は、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)などの衛星測位システムにより自装置の位置を測定して、自装置の位置情報(緯度経度)を取得する。
【0074】
カメラ12は、歩行者の前方を撮影する。
【0075】
状態センサ13は、歩行者の状態を検出する。本実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13として、加速度センサ21と、ジャイロセンサ22(角速度センサ)と、地磁気センサ23と、視線センサ24とを備えている。加速度センサ21は、歩行者の身体に発生する加速度を検出する。ジャイロセンサ22は、歩行者の身体に発生する角速度を検出する。地磁気センサ23は、地磁気方位を検出する。視線センサ24(視線カメラ)は、歩行者の左右の眼球を撮影する。
【0076】
ARディスプレイ14は、歩行者の現実の視界に入る実空間上に仮想オブジェクトを重畳表示して、AR(拡張現実:Augmented Reality)を実現する。
【0077】
ITS通信部15は、ITS通信(歩車間通信、路歩間通信)により、メッセージをブロードキャストで車載端末2や路側機3に送信し、また、車載端末2や路側機3から送信されるメッセージを受信する。
【0078】
無線通信部16は、例えばWiFi(登録商標)などの無線通信により、メッセージを路側機3に送信し、また、路側機3から送信されるメッセージを受信する。
【0079】
メモリ17は、地図情報や、プロセッサ18で実行されるプログラムなどを記憶する。また、メモリ17は、周辺環境DBの登録情報(候補画像及び位置情報)を記憶する。なお、本実施形態では、歩行者端末1が、交差点に近づいた際に、その交差点に設置された路側機3から、交差点の周辺エリアに関する周辺環境DBの登録情報を取得する。また、周辺環境DBには、候補画像そのものではなく、候補画像から抽出された特徴情報(複数の特徴点の情報)が登録されてもよい。
【0080】
プロセッサ18は、メモリ17に記憶されたプログラムを実行することで各種の処理を行う。本実施形態では、プロセッサ18が、メッセージ制御処理P1と、衝突判定処理P2と、注意喚起制御処理P3と、状態情報取得処理P4と、歩行者状態判定処理P5と、測位制御処理P6と、カメラ制御処理P7と、ビジュアル測位処理P8とを行う。
【0081】
メッセージ制御処理P1では、プロセッサ18が、車載端末2及び路側機3との間でのITS通信のメッセージの送受信を制御する。また、プロセッサ18が、路側機3との間での無線通信のメッセージの送受信を制御する。
【0082】
衝突判定処理P2では、プロセッサ18が、車載端末2から取得した車両情報に含まれる車両の位置情報、及び衛星測位部11で取得した歩行者の位置情報などに基づいて、歩行者に車両が衝突する危険性があるか否かを判定する。
【0083】
注意喚起制御処理P3では、プロセッサ18が、衝突判定処理P2で衝突の危険性があると判定された場合に、歩行者に対する所定の注意喚起動作(例えば音声出力や振動など)を行うように制御する。
【0084】
状態情報取得処理P4では、プロセッサ18が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者の状態を表す状態情報を取得する。
【0085】
具体的には、プロセッサ18が、加速度センサ21の検出結果に基づいて、歩行者の移動速度を測定する。歩行者が歩行すると、歩行者の身体に加速度が発生し、この加速度の変化状況に基づいて、歩行者の歩行ピッチが求められる。また、歩行ピッチと歩幅から速度が算出される。なお、歩幅は、歩行者端末1に登録された歩行者の属性(大人、子供など)に基づいて設定されるようにしてもよい。
【0086】
また、プロセッサ18が、ジャイロセンサ22および地磁気センサ23の検出結果に基づいて、歩行者端末1が装着された歩行者の頭部の方位(顔の向き)および歩行者の進行方向を測定する。
【0087】
また、プロセッサ18が、視線センサ24の検出結果(撮影画像)に基づいて、歩行者の視線方向(視点)を測定する(視線センシング)。具体的には、歩行者の視点の位置情報、すなわち、歩行者の視界の座標系における視点の座標値を取得する。
【0088】
歩行者状態判定処理P5では、プロセッサ18が、状態情報取得処理P4で取得した状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かを判定する。このとき、歩行者状態の標準状態からの変化量や、歩行者状態の変化率(単位時間あたりの変化量)が所定のしきい値と比較されて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かが判定される。すなわち、歩行者状態が大きく変化して、標準状態からの変化量が所定のしきい値以上になる場合や、歩行者状態が急に変化して、変化率が所定のしきい値以上となる場合に、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。
【0089】
具体的には、歩行者の移動速度に関して、例えば歩行者が走り出した場合、すなわち、歩行時の標準的な速度からの変化量が所定のしきい値以上になると、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。また、例えば歩行者が急に走り出した場合(急な加速)や、急に立ち止まった場合(急な停止)、すなわち、速度の変化率が所定のしきい値以上になると、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。
【0090】
また、歩行者の方位(進行方向や顔の向き)に関して、例えば歩行者が進行方向や顔の向きを大きく変えた場合、すなわち、前を向いた標準状態からの方位の変化量が所定のしきい値以上になると、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。また、例えば歩行者が急に進行方向や顔の向きを変えた場合、すなわち、方位の変化率が所定のしきい値以上になると、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。
【0091】
また、歩行者の視線方向(視点)に関して、例えば歩行者の視線方向が大きく変化した場合、すなわち、前を向いた標準状態からの視線方向の変化量が所定のしきい値以上になると、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。また、例えば歩行者の視線方向が急に変化した場合、すなわち、視線方向の変化率が所定のしきい値以上になると、歩行者状態に所定の変化が現れたと判定される。
【0092】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、歩行者状態判定処理P5での判定結果として、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位処理P8の実行を指示する。
【0093】
カメラ制御処理P7では、プロセッサ18が、カメラ12を必要とするビジュアル測位の実施タイミングに応じて、カメラ12のオンオフを制御する。すなわち、ビジュアル測位を行う場合にはカメラ12をオン状態とし、ビジュアル測位を行わない場合にはカメラ12をオフ状態とする。なお、カメラ12のオンオフ制御では、カメラ12の撮像素子および信号処理回路などの部品に対する給電が制御されるが、カメラ12の一部の部品に対する給電が制御されてもよい。
【0094】
ビジュアル測位処理P8では、プロセッサ18が、カメラ12からリアルタイムに出力される撮影画像と、自装置の周辺環境DBから抽出された候補画像とを照合して歩行者の現在位置を推定する。このビジュアル測位処理P8では、照合対象抽出処理P9と、画像照合処理P10と、位置情報取得処理P11とが行われる。
【0095】
照合対象抽出処理P9では、プロセッサ18が、自装置の周辺環境DBから、照合対象となる候補画像を抽出する。
【0096】
画像照合処理P10では、プロセッサ18が、カメラ12からリアルタイムに出力される撮影画像と、照合対象抽出処理P9で抽出した候補画像とを照合する。このとき、プロセッサ18が、撮影画像及び候補画像からそれぞれ特徴情報(複数の特徴点の情報)を抽出して、各々の特徴情報を比較することで、画像照合が行われる。
【0097】
位置情報取得処理P11では、プロセッサ18が、画像照合処理P10で照合が成功した候補画像に対応付けられた位置情報を、歩行者の現在地の位置情報として取得する。
【0098】
なお、車載端末2も、プロセッサおよびメモリ(図示せず)を搭載し、メモリに記憶されたプログラムを実行することで、メッセージ制御処理、衝突判定処理、および注意喚起制御処理などを行うことができる。
【0099】
また、本実施形態では、歩行者端末1が、高い測位精度が求められる特定事象が発生した場合、すなわち、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する構成としたが、同様の構成が車載端末2で行われてもよい。すなわち、車載端末2が、特定事象が発生した場合、例えば車両状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する構成であってもよい。
【0100】
ところで、本実施形態では、歩行者端末1が、歩行者の周囲の物体を検出する外界センサとしてカメラ12を備えているが、外界センサはカメラ12に限定されない。例えば、外界センサは、レーザー光を用いて物体を検出するLIDAR(Light Detection and Ranging)であってもよい。また、外界センサは、電波を用いて物体を検出するレーダーであってもよい。また、外界センサは、深度、すなわち、外界センサから物体までの距離(深度)を計測する機能(深度予測機能)を有するもの、例えばデプスカメラであってもよい。ビジュアル測位では、このような外界センサからリアルタイムに出力される検出画像と、周辺環境DBに登録された候補画像とが照合される。なお、本実施形態における画像は、2次元情報だけでなく、例えばデプスカメラにより取得される距離画像のような3次元情報を含むものでもよい。また、画像照合処理P10で行われる処理は、2次元情報同士の照合や、3次元情報同士の照合の他に、2次元情報と3次元情報との照合でもよい。
【0101】
また、本実施形態では、カメラ12が、歩行者の前方を撮影する構成としたが、カメラ12は、歩行者の周囲のいずれかの方向、例えば後方を撮影する構成や、歩行者の周囲の広範囲を撮影する構成でもよい。
【0102】
次に、路側機3の概略構成について説明する。
図5は、路側機3の概略構成を示すブロック図である。
【0103】
路側機3は、ITS通信部31と、無線通信部32と、メモリ33と、プロセッサ34と、を備えている。
【0104】
ITS通信部31は、ITS通信(路歩間通信、路車間通信)により、メッセージをブロードキャストで歩行者端末1や車載端末2に送信し、また、歩行者端末1や車載端末2から送信されるメッセージを受信する。
【0105】
無線通信部32は、例えばWiFi(登録商標)などの無線通信により、メッセージを歩行者端末1に送信し、また、歩行者端末1から送信されるメッセージを受信する。
【0106】
メモリ33は、プロセッサ34で実行されるプログラムなどを記憶する。また、本実施形態では、メモリ33が、周辺環境DBの登録情報を記憶する。
【0107】
プロセッサ34は、メモリ33に記憶されたプログラムを実行することで各種の処理を行う。本実施形態では、プロセッサ34が、メッセージ制御処理と、周辺環境DB管理処理と、を行う。
【0108】
メッセージ制御処理では、プロセッサ34が、歩行者端末1及び車載端末2との間でのITS通信のメッセージの送受信を制御する。また、プロセッサ34が、歩行者端末1との間での無線通信のメッセージの送受信を制御する。
【0109】
周辺環境DB管理処理では、プロセッサ34が、周辺環境DBを管理する。具体的には、プロセッサ34が、歩行者端末1からの要求に応じて、周辺環境DBの登録情報を無線通信部32から歩行者端末1に配信する。
【0110】
ところで、路側機3の機能がクラウドコンピュータに設けられてもよい。例えば、本実施形態では、周辺環境DBが路側機3に設けられたが、周辺環境DBがクラウドコンピュータに設けられてもよい。この場合、歩行者端末1は、路側機3を経由してクラウドコンピュータと通信を行うことで、周辺環境DBの登録情報をダウンロードする構成としてもよい。また、歩行者端末1は、5Gなどの高速なセルラー通信の機能を備え、セルラー通信網などを介してクラウドコンピュータと通信を行うことで、周辺環境DBの登録情報をダウンロードする構成としてもよい。このとき、歩行者端末1が、自装置の位置情報をクラウドコンピュータに通知することで、クラウドコンピュータが、歩行者端末1の周辺の所要の範囲の周辺環境DBの登録情報を歩行者端末1に配信する構成としてもよい。
【0111】
また、歩行者端末1の機能がクラウドコンピュータに設けられてもよい。例えば、第1実施形態では、歩行者端末1が、歩行者状態判定、およびビジュアル測位などの処理を行うが、これらの処理がクラウドコンピュータで行われてもよい。
【0112】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1、車載端末2、及び路側機3の動作手順について説明する。
図6,
図7は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。
図8は、車載端末2の動作手順を示すフロー図である。
図9は、路側機3の動作手順を示すフロー図である。なお、
図6(A),(B),(C)、
図8、および
図9(A),(B)に示す各処理は所定の間隔で行われる。すなわち、これらの処理は一旦終了しても繰り返し実行される。
【0113】
図6(A)に示すように、歩行者端末1では、まず、衛星測位部11が、歩行者の位置情報を取得する(ST101)。次に、プロセッサ18が、歩行者の位置情報に基づいて、歩行者情報を送信する状況か否か、具体的には歩行者が危険エリア(例えば交差点)に進入したか否かを判定する(ST102)。
【0114】
ここで、歩行者情報を送信する状況であれば(ST102でYes)、プロセッサ18の送信指示に応じて、ITS通信部15が、歩行者情報(歩行者ID及び位置情報など)を含むITS通信のメッセージを、車載端末2及び路側機3に送信する(ST103)。
【0115】
図8に示すように、車載端末2では、歩行者端末1からのITS通信(歩車間通信)のメッセージを受信すると(ST201でYes)、メッセージに含まれる車両の位置情報などに基づいて、自車両が歩行者に衝突する危険性があるか否かの衝突判定を行う(ST202)。
【0116】
ここで、自車両が歩行者に衝突する危険性がある場合には(ST202でYes)、運転者に対する所定の注意喚起動作を行う(ST203)。具体的には、注意喚起動作として、カーナビゲーション装置に注意喚起動作(例えば音声出力や画面表示など)を行わせる。なお、自車両が自動運転車両である場合には、自動運転ECU(走行制御装置)に対して、所定の衝突回避動作を行うように指示する。
【0117】
図9(A)に示すように、路側機3では、ITS通信部31が、歩行者端末1からのITS通信(歩車間通信)のメッセージを受信すると(ST301でYes)、プロセッサ34が、受信したメッセージに含まれる歩行者端末1の端末IDと位置情報とを取得する(ST302)。次に、プロセッサ34が、歩行者の位置情報に基づいて、歩行者端末1が、周辺環境DBの登録情報の対象エリアの周辺(対象エリアの内部または近傍)に位置するか否かを判定する(ST303)。
【0118】
ここで、歩行者端末1が対象エリアの周辺に位置する場合には(ST303でYes)、プロセッサ34の送信指示に応じて、ITS通信部31が、歩行者端末1が自装置の周辺環境DBの登録情報を利用できる旨のDB利用情報を含むITS通信のメッセージを歩行者端末1に送信する(ST304)。
【0119】
図6(B)に示すように、歩行者端末1では、ITS通信部15が、路側機3から、DB利用情報を含むITS通信のメッセージを受信すると(ST111でYes)、プロセッサ18の送信指示に応じて、無線通信部16が、DB登録情報(周辺環境DBの登録情報)を要求する無線通信のメッセージを路側機3に送信する(ST112)。
【0120】
図9(B)に示すように、路側機3では、無線通信部32が、歩行者端末1から、DB登録情報を要求する無線通信のメッセージを受信すると(ST311でYes)、プロセッサ34の送信指示に応じて、無線通信部32が、DB登録情報(周辺環境DBの登録情報)を含む無線通信のメッセージを歩行者端末1に送信する(ST312)。
【0121】
このとき、路側機3の周辺環境DBの全ての登録情報が歩行者端末1に送信されるようにしてもよいが、歩行者端末1が利用する可能性が高い一部の登録情報のみが歩行者端末1に送信されるようにしてもよい。具体的には、歩行者端末1の周辺の所定範囲内、特に歩行者の進行方向に位置する所定範囲内の登録情報が歩行者端末1に送信されるようにしてもよい。
【0122】
図6(C)に示すように、歩行者端末1では、無線通信部16が、路側機3から、DB登録情報を含む無線通信のメッセージを受信すると(ST121でYes)、プロセッサ18が、受信したメッセージに含まれるDB登録情報(周辺環境DBの登録情報)を、自装置の周辺環境DBに登録する(ST122)。
【0123】
次に、
図7に示すように、歩行者端末1では、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得する(ST131)。
【0124】
次に、プロセッサ18が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者の状態情報を取得する(ST132)。具体的には、プロセッサ18が、加速度センサ21の検出結果に基づいて、歩行者の移動速度を測定する。また、プロセッサ18が、ジャイロセンサ22および地磁気センサ23の検出結果に基づいて、歩行者の進行方向(顔の向き)を測定する。また、プロセッサ18が、視線センサ24の検出結果に基づいて、歩行者の視線方向を測定する。
【0125】
次に、プロセッサ18が、歩行者の状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かを判定する(ST133)。
【0126】
ここで、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には(ST133でYes)、次に、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態とする(ST134)。このとき、プロセッサ18は、カメラ12がオフ状態であればカメラ12を起動し、カメラ12が既にオン状態であれば特に制御を行わない。次に、プロセッサ18が、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0127】
一方、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には(ST133でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態とする(ST136)。このとき、プロセッサ18は、カメラ12がオン状態であればカメラ12を停止し、カメラ12が既にオフ状態であれば特に制御を行わない。この場合、衛星測位の測位結果が歩行者の位置情報として採用される。
【0128】
次に、第1実施形態に係る歩行者端末1で行われるビジュアル測位(
図7のST135)の手順について説明する。
図10は、歩行者端末1で行われるビジュアル測位の手順を示すフロー図である。
【0129】
歩行者端末1では、まず、プロセッサ18が、カメラ12からリアルタイムの撮影画像を取得する(ST401)。
【0130】
次に、プロセッサ18が、照合対象抽出処理P9として、自装置の周辺環境DBから、照合対象となる候補画像を抽出する(ST402)。
【0131】
次に、プロセッサ18が、画像照合処理P10として、自装置の周辺環境DBから抽出した候補画像と、リアルタイムの撮影画像とを照合する(ST403)。
【0132】
この画像照合で照合が成功する、すなわち、候補画像と撮影画像とが一致する場合には(ST404でYes)、プロセッサ18が、位置情報取得処理P11として、照合が成功した候補画像に対応付けられた位置情報を、歩行者の現在地の位置情報として取得する(ST405)。
【0133】
ところで、歩行者状態判定処理P5では、プロセッサ18が、複数の状態センサ13の各検出結果に基づく複数の状態情報(移動速度、方位、視線方向)を組み合わせて、ビジュアル測位の実施が必要な特定事象を検知してもよい。
【0134】
例えば、加速度センサ21の検出結果による歩行者の移動速度と、ジャイロセンサ22または地磁気センサ23の検出結果による歩行者の顔の向きとを組み合わせることで、例えば、歩行者が急に立ち止まって振り向く状態を検知することができる。また、プロセッサ18が、加速度センサ21の検出結果に基づく歩行者の移動速度と、視線センサ24の検出結果に基づく歩行者の視線方向とを組み合わせて、例えば、歩行者が視線を大きくまたは急に変化させた後に走り出す状態を、歩行者の危険な行動の予兆として検知してもよい。
【0135】
このような場合、直後に歩行者が飛び出しなどの急な行動をとる可能性が高く、このような状態を歩行者の危険な行動の予兆として検知することで、ビジュアル測位の実施の必要性を適切に判定することができる。
【0136】
(第1実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図11は、第1実施形態の変形例に係る歩行者端末1で行われる足下画像照合処理の概要を示す説明図である。
図12は、第1実施形態の変形例に係る歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0137】
第1実施形態では、歩行者の前方を撮影するカメラ12による撮影画像を利用したビジュアル測位が行われる。一方、本変形例では、歩行者の前方を撮影した前方画像と、歩行者の足下を撮影した足下画像とを利用したビジュアル測位が行われる。
【0138】
本変形例では、歩行者端末1が、歩行者の前方を撮影する前方カメラ25と、歩行者の足下を撮影する足下カメラ26とを備えている(
図12参照)。なお、1つのカメラが、歩行者の前方および足下を含む広範囲を撮影できるように広い画角を有する構成であってもよい。
【0139】
道路の路面は次第に経年劣化する。例えば、道路の路面には、専用塗料(トラフィックペイント)で白線などの路面標示が描かれている。この路面標示にはひび割れなどの劣化が発生する。また、アスファルト舗装材にも欠損などの劣化が発生する。このような路面の劣化状態は、地点ごとの固有の特徴を有している。このため、路面の特徴に基づいて、足下画像が撮影された地点を特定することができる。
【0140】
そこで、本変形例では、予め登録地点の路面を撮影した撮影画像が、足下画像照合用として、登録地点の位置情報と対応付けて、周辺環境DBに登録される。また、第1実施形態と同様に、歩行者が前方を見る視線に対応する撮影方向で撮影された撮影画像が、前方画像照合用として、登録地点の位置情報と対応付けて、周辺環境DBに登録される。
【0141】
一方、歩行者端末1では、前方カメラ25が、歩行者の前方を撮影した前方画像をリアルタイムに出力する。プロセッサ18は、ビジュアル測位処理P8として、周辺環境DBに登録された前方画像照合用の候補画像(登録地点の撮影画像)を抽出し(前方照合対象抽出処理P12)、その前方画像照合用の候補画像と、前方カメラ25からリアルタイムに出力される前方画像とを照合する(前方画像照合処理P13、第1の照合処理)。
【0142】
また、歩行者端末1では、足下カメラ26が、歩行者の足元の路面を撮影した足下画像をリアルタイムに出力する。プロセッサ18は、ビジュアル測位処理P8として、周辺環境DBに登録された足下画像照合用の候補画像(登録地点の撮影画像)を抽出し(足下照合対象抽出処理P14)、その足下画像照合用の候補画像と、足下カメラ26からリアルタイムに出力される足下画像とを照合する(足下画像照合処理P15、第2の照合処理)。
【0143】
次に、プロセッサ18は、前方画像照合処理P13において照合が成功した候補画像に対応する位置情報と、足下画像照合処理P15において照合が成功した候補画像に対応する位置情報とに基づいて、歩行者の現在地の位置情報を取得する(位置情報取得処理P11)。このとき、前方画像照合処理P13に基づく位置情報と足下画像照合処理P15に基づく位置情報とに対して適宜な統計処理(平均)を行うことで、歩行者の現在地の位置情報を取得してもよい。
【0144】
また、足下画像照合処理P15に基づく位置情報が、前方画像照合処理P13に基づく位置情報より精度が高いことから、前方画像照合処理P13を仮測位とし、足下画像照合処理P15を本測位として、足下画像照合処理P15での候補画像を、前方画像照合処理P13の照合結果を利用して絞り込んでもよい。具体的には、前方画像照合処理P13に基づく歩行者の位置を、歩行者の暫定的な位置として、その暫定的な位置の周辺の所定範囲に含まれる足下画像照合用の候補画像を周辺環境DBから抽出して、足下画像照合処理P15を実施する。これにより、画像照合の処理負荷を軽減できる。
【0145】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図13は、第2実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
【0146】
第1実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13により取得した状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。一方、本実施形態では、歩行者端末1が、衛星測位により取得した位置情報に基づいて、歩行者の軌跡に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。
【0147】
ここで、歩行者が体調不良などにより異常な行動をとった場合に、歩行者が車両と衝突する危険性が高く、高い測位精度が求められる。また、衛星測位では、歩行者が建築物の影に入ることによる衛星電波の遮蔽やマルチパスの影響により測位精度が低下すると、測位誤差により適切な衝突判定ができなくなるため、高精度な測位が求められる。
【0148】
一方、歩行者自体が異常な行動をとった場合や(
図13(A)参照)、衛星測位の精度が低下して大きな測位誤差が現れた場合には(
図13(B)参照)、歩行者の軌跡に異常な変化が現れる。そこで、本実施形態では、歩行者の軌跡に異常な変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施して精度の高い位置情報を取得することで、歩行者の安全性を高めることができる。
【0149】
次に、第2実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図14は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。なお、路側機3の概略構成は第1実施形態(
図5参照)と同様である。
【0150】
本実施形態では、歩行者端末1のプロセッサ18が、軌跡判定処理P21を行う。その他は第1実施形態(
図4参照)と略同様である。
【0151】
軌跡判定処理P21では、プロセッサ18が、各時刻の歩行者の位置情報に基づいて、歩行者の軌跡に所定の変化が現れたか否かを判定する。このとき、例えば、衛星測位による歩行者の位置が、正常な状態では現れないような大きな変化や急な変化を示した場合、歩行者の軌跡に所定の変化が現れたものと判定する。
【0152】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、軌跡判定処理P21の判定結果として、歩行者の軌跡に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位処理P8の実行を指示する。
【0153】
なお、本実施形態では、第1実施形態において歩行者端末1に設けられた状態センサ13が省略されているが、歩行者端末1が、状態センサ13を備え、歩行者状態判定処理P5と軌跡判定処理P21との両方を実施する構成でもよい。
【0154】
次に、第2実施形態に係る歩行者端末1の動作手順について説明する。
図15は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。なお、歩行者端末1では、第1実施形態(
図6(A),(B),(C)参照)と同様の処理が行われる。また、路側機3の動作手順は第1実施形態(
図9参照)と同様である。
【0155】
歩行者端末1では、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得する(ST131)。次に、プロセッサ18が、各時刻の歩行者の位置情報に基づいて、歩行者の軌跡に所定の変化が現れたか否かを判定する(ST141)。
【0156】
ここで、歩行者の軌跡に所定の変化が現れた場合には(ST141でYes)、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態として(ST134)、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0157】
一方、歩行者の軌跡に所定の変化が現れない場合には(ST141でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態とする(ST136)。この場合、衛星測位の測位結果が歩行者の位置情報として採用される。
【0158】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図16は、第3実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
【0159】
第1実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。一方、本実施形態では、歩行者端末1が、衛星電波に所定の不良が現れる状況である場合に、ビジュアル測位を実施する。
【0160】
具体的には、歩行者端末1が、高層ビル街などの衛星電波不良エリアに歩行者が進入した場合に(
図16(A)参照)、衛星電波に所定の不良が現れる状況であると判定して、ビジュアル測位を実施する。また、歩行者端末1が、必要数(必要な精度を確保できる数)の測位衛星が観測できない場合に(
図16(B)参照)、衛星電波に所定の不良が現れる状況であると判定して、ビジュアル測位を実施する。
【0161】
このように本実施形態では、衛星電波に不良が現れる状況で衛星測位の精度が低下したタイミングで適切にビジュアル測位を実施することができる。特に、衛星電波不良エリアへの進入や観測された測位衛星の数に基づく判定により、衛星電波に所定の不良が現れる状況であることを簡単に判定することができる。
【0162】
次に、第3実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図17は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。なお、路側機3の概略構成は第1実施形態(
図5参照)と同様である。
【0163】
本実施形態では、歩行者端末1のプロセッサ18が、衛星電波不良判定処理P31を行う。その他は第1実施形態(
図4参照)と略同様である。
【0164】
衛星電波不良判定処理P31では、プロセッサ18が、衛星電波に所定の不良が現れる状況であるか否かを判定する。
【0165】
具体的には、プロセッサ18が、地図情報と、歩行者の位置情報とに基づいて、歩行者が衛星電波不良エリアに進入か否かを判定する。すなわち、地図情報に登録された衛星電波不良エリアの位置情報と、衛星測位により取得した歩行者の現在地の位置情報とに基づいて、歩行者が衛星電波不良エリアに進入か否かを判定する(エリア進入判定処理)。
【0166】
また、プロセッサ18が、観測された測位衛星(利用可能な測位衛星)の情報を衛星測位部11から取得し、必要数(必要な精度を確保できる数)の測位衛星が観測できないか否かを判定する(衛星数判定処理)。
【0167】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、衛星電波不良判定処理P31の判定結果として、衛星電波に所定の不良が現れる状況である場合、すなわち、歩行者が衛星電波不良エリアに進入した場合や、必要数の測位衛星が観測できない場合に、ビジュアル測位処理の実行を指示する。
【0168】
次に、第3実施形態に係る歩行者端末1の動作手順について説明する。
図18は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。なお、歩行者端末1では、第1実施形態(
図6(A),(B),(C)参照)と同様の処理が行われる。また、路側機3の動作手順は第1実施形態(
図9参照)と同様である。
【0169】
歩行者端末1では、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得する(ST131)。次に、プロセッサ18が、衛星電波に所定の不良が現れる状況であるか否かを判定する(ST151)。このとき、歩行者が衛星電波不良エリアに進入したか否かを判定する(エリア進入判定処理)。また、必要数(必要な精度を確保できる数)の測位衛星が観測できないか否かを判定する(衛星数判定処理)。
【0170】
ここで、衛星電波に所定の不良が現れる状況である場合、すなわち、歩行者が衛星電波不良エリアに進入した場合や、必要数の測位衛星が観測できない場合には(ST151でYes)、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態として(ST134)、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0171】
一方、衛星電波に所定の不良が現れる状況でない場合、すなわち、歩行者が衛星電波不良エリアに進入していない場合や、必要数の測位衛星が観測できる場合には(ST151でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態とする(ST136)。この場合、衛星測位の測位結果が歩行者の位置情報として採用される。
【0172】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図19は、第4実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
図20は、歩行者端末1で行われる画像相対測位の概要を示す説明図である。
【0173】
第1実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。一方、本実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施すると共に、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には、歩行者の移動速度が所定値以上速い場合に、画像相対測位を所定間隔で定期的に実施する(
図19参照)。
【0174】
画像相対測位では、カメラ12による撮影画像の変化状況、具体的には、各時刻の撮影画像から抽出される特徴点の変化状況に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して(自己移動量推定)、歩行者の現在位置を相対的に推定する(
図20参照)。具体的には、前回の撮影画像から抽出された特徴点と、今回の撮影画像から抽出された特徴点とを比較して、前回の撮影画像と今回の撮影画像とで互いに対応する特徴点の変化量を取得して、その特徴点の変化量に基づいて、前回の測位で取得した位置からの相対的な移動量を算出して、今回の位置を取得する。なお。この画像相対測位は、例えばVisual SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)(登録商標)で採用される測位技術である。
【0175】
ここで、ビジュアル測位では、カメラ12の撮影画像と周辺環境DBの候補画像とを照合して、照合が成功した候補画像に対応する位置情報を歩行者の現在地の位置情報として取得するため、絶対位置測位となる。このビジュアル測位では、画像照合が行われることから、プロセッサ18の処理負荷が大きいため、消費電力が大きくなる。一方、画像相対測位では、ビジュアル測位のような画像照合が行われないため、ビジュアル測位より、プロセッサ18の処理負荷が小さく消費電力が小さくなる。
【0176】
また、画像相対測位では、カメラ12がオン状態となるため、衛星測位より消費電力が大きくなるが、本実施形態では、画像相対測位が所定間隔で定期的に実施される。すなわち、画像相対測位が、継続して実施されず、間欠的に実施される。このため、消費電力を抑えることができる。
【0177】
また、
図19(B)に示すように、歩行者が一定の速度で走っている状態では、歩行者状態に大きな変化が現れないが、歩行者の移動速度が速くなるため、画像相対測位が実施される。一方、歩行者が一定の速度で走っている状態では、画像相対測位の処理負荷が高くなり、かつ移動方向に大きな変化はないため、画像相対測位が間欠的に実施されることで、消費電力を抑え、ある程度の位置精度を確保することができる。
【0178】
次に、第4実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図21は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0179】
本実施形態では、歩行者端末1のプロセッサ18が、画像相対測位処理P41を行う。その他は第1実施形態(
図4参照)と略同様である。
【0180】
画像相対測位処理P41では、プロセッサ18が、カメラ12による撮影画像の変化状況、具体的には、各時刻の撮影画像から抽出される特徴点の変化状況に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して(自己移動量推定)、歩行者の現在位置を相対的に推定する。
【0181】
一方、歩行者状態判定処理P5では、第1実施形態と同様に、プロセッサ18が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かを判定する。また、本実施形態では、歩行者状態に所定の変化が現れない場合に、プロセッサ18が、歩行者の移動速度が所定値以上速いか否かを判定する(速度判定処理)。
【0182】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位処理P8の実行を指示する。また、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れない場合で、歩行者の移動速度が所定値以上速い場合には、画像相対測位処理P41の実行を指示する。このとき、前回の画像相対測位処理P41の実行タイミングからの経過時間が所定時間に達したか否かを判定し(経過時間判定処理)、経過時間が所定時間に達していない場合には、画像相対測位処理P41の実行を指示しない。これにより、画像相対測位処理P41が所定間隔で間欠的に実行される。
【0183】
次に、第4実施形態に係る歩行者端末1の動作手順について説明する。
図22は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。なお、歩行者端末1では、第1実施形態(
図6(A),(B),(C)参照)と同様の処理が行われる。また、路側機3の動作手順は第1実施形態(
図9参照)と同様である。
【0184】
歩行者端末1では、第1実施形態(
図7参照)と同様に、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得してから、プロセッサ18が、歩行者の状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かに関する判定までの処理(ST131~ST133)を行う。また、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には(ST133でYes)、第1実施形態と同様に、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態として(ST134)、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0185】
一方、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には(ST133でNo)、次に、プロセッサ18が、歩行者の移動速度が所定値以上か否かを判定する(ST161)。
【0186】
ここで、歩行者の移動速度が所定値以上である場合には(ST161でYes)、次に、前回の画像相対測位から所定時間が経過したか否かを判定する(ST162)。
【0187】
ここで、前回の画像相対測位から所定時間が経過した場合には(ST162でYes)、次に、カメラ12をオン状態として(ST163)、画像相対測位を実施する(ST164)。
【0188】
一方、歩行者の移動速度が所定値未満である場合や(ST161でNo)、前回の画像相対測位から所定時間が経過していない場合には(ST162でNo)、次に、カメラ12をオフ状態とする(ST136)。この場合、衛星測位の測位結果が歩行者の位置情報として採用される。
【0189】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図23は、第5実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
【0190】
第1実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。一方、本実施形態では、歩行者端末1が、歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超える場合には、ビジュアル測位を実施し、歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超えない場合には、画像相対測位を実施し、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には、非画像相対測位を実施する。
【0191】
例えば、歩行者の方位(進行方向)の変化が所定のしきい値(例えば90度)以上である場合には(
図23(A)参照)、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えたと判定されて、ビジュアル測位が実施される。一方、歩行者の方位の変化がしきい値未満である場合には(
図23(B)参照)、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えないと判定されて、画像相対測位が実施される。また、歩行者の方位にわずかな変化しかない場合には(
図23(C)参照)、歩行者状態に所定の変化が現れないと判定されて、非画像相対測位が実施される。
【0192】
画像相対測位では、第4実施形態と同様に、カメラ12による各時刻の撮影画像の変化状況に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する。なお、この画像相対測位は、例えばVisual SLAM(登録商標)で採用される測位技術である。
【0193】
非画像相対測位では、状態センサ13(ジャイロセンサ22や加速度センサ21など)の検出結果に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して、歩行者の現在位置を相対的に推定する。なお、この非画像相対測位は、例えばPDR(歩行者自律航法:Pedestrian Dead-Reckoning)で採用される測位技術である。
【0194】
このように本実施形態では、歩行者状態に所定の変化が現れた場合でも、その変化度合が小さい場合には、ビジュアル測位は実施されず、代わりに画像相対測位が実施され、この画像相対測位では、画像照合のような負荷の大きい処理が行われないため、消費電力を抑えることができる。
【0195】
また、本実施形態では、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には、非画像相対測位が実施されることで、位置情報の精度が向上する場合があり、また、非画像相対測位では、状態センサ13が用いられるが、カメラ12が用いられず、また、画像照合のような負荷の大きい処理も行われないため、消費電力を抑えることができる。
【0196】
なお、本実施形態では、歩行者状態に所定の変化が現れない場合に、非画像相対測位が実施されるが、非画像相対測位が実施されずに、衛星測位による位置情報が、歩行者の現在地の位置情報に採用されてもよい。
【0197】
次に、第5実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図24は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。なお、路側機3の概略構成は第1実施形態(
図5参照)と同様である。
【0198】
本実施形態では、歩行者端末1のプロセッサ18が、非画像相対測位処理P51を行う。その他は第4実施形態(
図21参照)と略同様である。
【0199】
非画像相対測位処理P51では、プロセッサ18が、状態センサ13(ジャイロセンサ22や加速度センサ21など)の検出結果に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して(自己移動量推定)、歩行者の現在位置を相対的に推定する。
【0200】
画像相対測位処理P41では、プロセッサ18が、第4実施形態と同様に、カメラ12による各時刻の撮影画像の変化状況に基づいて、前回の位置からの歩行者の相対的な移動量を推定して(自己移動量推定)、歩行者の現在位置を相対的に推定する。
【0201】
一方、歩行者状態判定処理P5では、第1実施形態と同様に、プロセッサ18が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かを判定する。また、本実施形態では、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には、プロセッサ18が、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えたか否かを判定する。
【0202】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れ、かつ、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えた場合には、ビジュアル測位処理P8の実行を指示する。また、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れ、かつ、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えない場合には、画像相対測位処理P41の実行を指示する。また、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には、非画像相対測位処理P51の実行を指示する。
【0203】
次に、第5実施形態に係る歩行者端末1の動作手順について説明する。
図25は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。なお、歩行者端末1では、第1実施形態(
図6(A),(B),(C)参照)と同様の処理が行われる。また、路側機3の動作手順は第1実施形態(
図9参照)と同様である。
【0204】
歩行者端末1では、第1実施形態(
図7参照)と同様に、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得してから、プロセッサ18が、歩行者の状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かに関する判定までの処理(ST131~ST133)を行う。
【0205】
ここで、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には(ST133でYes)、次に、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態とする(ST134)。次に、プロセッサ18が、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えるか否かを判定する(ST171)。
【0206】
ここで、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超える場合には(ST171でYes)、プロセッサ18が、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0207】
一方、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えない場合には(ST171でNo)、プロセッサ18が、画像相対測位を行う(ST163)。
【0208】
また、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には(ST133でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態として(ST136)、非画像相対測位を行う(ST151)。
【0209】
なお、歩行者状態に所定の変化が現れるか否かの判定(ST133)では、プロセッサ18が、歩行者状態の変化量や変化率に関する所定のしきい値を用いて判定を行えばよい。一方、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えるか否かの判定(ST171)では、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れるか否かの判定(ST133)で用いられるしきい値より大きなしきい値を用いて判定を行えばよい。
【0210】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図26は、第6実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
【0211】
第1実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。一方、本実施形態では、歩行者端末1が、歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超える場合には、ビジュアル測位を実施し、歩行者状態に所定の変化が現れ、且つ、その変化度合が所定の範囲を超えない場合には、経路推定測位を実施する。
【0212】
経路推定測位では、歩行者の直前の軌跡、すなわち、歩行者の直前の各時刻の位置情報に基づいて、歩行者が実際に通行しているものと想定される経路が、経路パターンの候補のいずれに該当するかを判別し、該当する経路パターンに基づいて歩行者の現在位置を推定する。
【0213】
経路パターンの候補は、ディープラーニングなどの機械学習により構築される経路パターン認識用の機械学習モデルを用いて取得される。学習時には、各歩行者が過去に通行した際の軌跡の情報、すなわち、各歩行者端末1での過去の測位で取得した各歩行者の各時刻の測位結果である位置情報(測位履歴情報)が収集され、それを学習データとしてパターン認識用の機械学習モデルが構築される。なお、各歩行者の軌跡は、実際に歩行者が通行可能な道路の構成に基づいて定まり、相応の数の経路パターンに分類され得る。
【0214】
このとき、衛星測位で取得した位置情報の他に、非画像相対測位(PDRなど)で取得した位置情報が学習データに用いられる。また、ビジュアル測位で取得した位置情報が学習データに用いられてもよい。また、画像相対測位(Visual SLAM(登録商標)など)で取得した位置情報が学習データに用いられてもよい。
【0215】
また、標準測位としての衛星測位以外の測位(非画像相対測位、ビジュアル測位、画像相対測位)が実行されたときの測位結果としての位置情報と、そのときの衛星測位の測位結果としての位置情報とを対応付けた情報が、学習データに用いられてもよい。
【0216】
次に、第6実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図27は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。
【0217】
本実施形態では、歩行者端末1のプロセッサ18が、経路推定測位処理P61を行う。その他は第1実施形態(
図4参照)と略同様である。
【0218】
経路推定測位処理P61では、歩行者の直前の軌跡、すなわち、歩行者の直前の各時刻の位置情報に基づいて、歩行者の経路パターンを判別して歩行者の現在位置を推定する。
【0219】
一方、歩行者状態判定処理P5では、第5実施形態と同様に、プロセッサ18が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かを判定する。また、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には、プロセッサ18が、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えたか否かを判定する。
【0220】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れ、かつ、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えた場合には、ビジュアル測位処理P8の実行を指示する。また、プロセッサ18が、歩行者状態に所定の変化が現れ、かつ、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えない場合には、経路推定測位処理P61の実行を指示する。
【0221】
次に、第6実施形態に係る歩行者端末1の動作手順について説明する。
図28は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。なお、歩行者端末1では、第1実施形態(
図6(A),(B),(C)参照)と同様の処理が行われる。また、路側機3の動作手順は第1実施形態(
図9参照)と同様である。
【0222】
歩行者端末1では、第1実施形態(
図7参照)と同様に、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得してから、プロセッサ18が、歩行者の状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かに関する判定までの処理(ST131~ST133)を行う。
【0223】
また、歩行者の状態に所定の変化が現れた場合には(ST133でYes)、プロセッサ18が、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えるか否かの判定を行い(ST171)、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超える場合には(ST171でYes)、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態として(ST134)、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0224】
一方、歩行者状態の変化度合が所定の範囲を超えない場合には(ST171でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態として(ST163)、経路推定測位を行う(ST181)。
【0225】
また、歩行者の状態に所定の変化が現れない場合には(ST133でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態とする(ST136)。
【0226】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。なお、ここで特に言及しない点は前記の実施形態と同様である。
図29は、第7実施形態に係る歩行者端末1で行われる測位制御の概要を示す説明図である。
【0227】
第1実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施する。一方、本実施形態では、歩行者端末1が、状態センサ13の検出結果に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れた場合に、ビジュアル測位を実施すると共に、歩行者状態に所定の変化が現れない場合でも、歩行者が所定の安全エリアに近接した場合には、ビジュアル測位を実施する。
【0228】
ここで、安全エリアは、歩行者が車両と衝突する危険性が低く、高い測位精度を確保する必要性が比較的低い場所である。具体的には、例えば、車両の内部(車内)(
図29(A)参照)、建築物の内部(屋内)(
図29(B)参照)、および歩道橋やペデストリアンデッキなどの歩行者専用通路の建造物(
図29(C)参照)などが安全エリアとなる。
【0229】
また、本実施形態では、歩行者端末1が、歩行者が安全エリアに近接したタイミング、すなわち、安全エリアに進入する直前のタイミングで、ビジュアル測位を実施して、精度の高い位置情報を取得する。これにより、歩行者端末1は、歩行者が安全エリアに確実に進入することを確認できる。
【0230】
このとき、例えば、安全エリアが車内である場合、歩行者が車両に近づいたタイミングでビジュアル測位が実施される。安全エリアが屋内である場合、歩行者が建築物の入口に近づいたタイミングでビジュアル測位が実施される。安全エリアが歩道橋などの建造物である場合、歩行者が建造物の入口に近づいたタイミングでビジュアル測位が実施される。
【0231】
また、本実施形態では、歩行者が安全エリアに近づいてから安全エリアに進入するまでの期間、ビジュアル測位が継続される。一方、周辺環境DBには、安全エリアの内部の一般的な撮影画像が候補画像して登録されている。ビジュアル測位では、周辺環境DBから安全エリアの内部の一般的な撮影画像が照合対象として抽出されて、画像照合が成功することで、歩行者が安全エリア内に滞在していることが確認される。
【0232】
なお、歩行者端末1は、ビジュアル測位を実施した後は、例えば歩行者が安全エリアに滞在している間は、屋外であれば、衛星測位で歩行者の位置情報を取得すればよく、また、屋内であれば、PDRなどの屋内測位で歩行者の位置情報を取得すればよい。
【0233】
次に、第7実施形態に係る歩行者端末1の概略構成について説明する。
図30は、歩行者端末1の概略構成を示すブロック図である。なお、路側機3の概略構成は第1実施形態(
図5参照)と同様である。
【0234】
本実施形態では、歩行者端末1のプロセッサ18が、エリア近接判定処理P71を行う。その他は第1実施形態(
図4参照)と略同様である。
【0235】
エリア近接判定処理P71では、プロセッサ18が、地図情報に基づいて、歩行者が所定の安全エリアに近接したか否かを判定する。具体的には、地図情報に登録された安全エリアの位置情報や、衛星測位により取得した歩行者の現在地の位置情報などに基づいて、歩行者が安全エリアから所定距離以内に位置し、かつ、安全エリアに近づく向きに移動している場合に、歩行者が安全エリアに近接すると判定される。
【0236】
このとき、安全エリアが屋内である場合、地図情報に含まれる建築物の位置情報を用いて、歩行者が安全エリアに近接したか否かの判定が行われる。また、この場合、ビジュアル測位において、周辺環境DBから一般的な屋内の撮影画像(候補画像)が照合対象として抽出されて、画像照合が成功することで、歩行者が屋内に滞在していることが確認される。
【0237】
また、安全エリアが歩道橋などの建造物(定着物)の内部である場合、地図情報に含まれる建造物の位置情報を用いて、歩行者が安全エリアに近接したか否かの判定が行われる。また、この場合、ビジュアル測位において、周辺環境DBから一般的な建造物の内部の撮影画像(候補画像)が照合対象として抽出されて、画像照合が成功することで、歩行者が建造物上に滞在していることが確認される。
【0238】
また、安全エリアが車内である場合、歩車間通信で車載端末2から受信した車両情報に含まれる車両の位置情報を用いて、歩行者が安全エリアに近接したか否かの判定が行われる。また、この場合、ビジュアル測位において、周辺環境DBから一般的な車内の撮影画像(候補画像)が照合対象として抽出されて、画像照合が成功することで、歩行者が車内に滞在していることが確認される。また、この場合、歩行者の現在位置は、車両の現在位置とすればよい。
【0239】
測位制御処理P6では、プロセッサ18が、エリア近接判定処理P71の判定結果として、歩行者が所定の安全エリアに近接した場合に、ビジュアル測位処理P8の実行を指示する。
【0240】
次に、第7実施形態に係る歩行者端末1の動作手順について説明する。
図31は、歩行者端末1の動作手順を示すフロー図である。なお、歩行者端末1では、第1実施形態(
図6(A),(B),(C)参照)と同様の処理が行われる。また、路側機3の動作手順は第1実施形態(
図9参照)と同様である。
【0241】
歩行者端末1では、第1実施形態(
図7参照)と同様に、プロセッサ18が、衛星測位部11による歩行者の位置情報を取得してから、プロセッサ18が、歩行者の状態情報に基づいて、歩行者状態に所定の変化が現れたか否かに関する判定までの処理(ST131~ST133)を行う。また、歩行者状態に所定の変化が現れた場合には(ST133でYes)、第1実施形態と同様に、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態として(ST134)、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0242】
一方、歩行者状態に所定の変化が現れない場合には(ST133でNo)、次に、プロセッサ18が、歩行者が安全エリアに近接したか否かを判定する(ST191)。
【0243】
ここで、歩行者が安全エリアに近接した場合には(ST191でYes)、プロセッサ18が、カメラ12をオン状態として(ST134)、ビジュアル測位を行う(ST135)。
【0244】
一方、歩行者が安全エリアに近接していない場合には(ST191でNo)、プロセッサ18が、カメラ12をオフ状態とする(ST136)。
【0245】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施形態にも適用できる。また、上記の実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施形態とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0246】
本発明に係る歩行者装置、移動体装置、測位システム、および測位方法は、ビジュアル測位を実施して高精度な位置情報を取得すると共に、消費電力を抑制して省電力化を図ることができる効果を有し、歩行者に保持されて歩行者の現在位置を測定する測位を行う歩行者装置、歩行者や車両などの移動体に保持されて移動体の現在位置を測定する測位を行う移動体装置、測位システム、および測位方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0247】
1 歩行者端末(歩行者装置、移動体装置、コンピュータ)
2 車載端末
3 路側機
11 衛星測位部
12 カメラ
13 状態センサ
17 メモリ
18 プロセッサ
21 加速度センサ
22 ジャイロセンサ
23 地磁気センサ
24 視線センサ
25 前方カメラ
26 足下カメラ