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特開2023-58372工具システム及び工具システム用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058372
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】工具システム及び工具システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/142 20060101AFI20230418BHJP
   B25B 23/14 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
B25B23/142
B25B23/14 610B
B25B23/14 620A
B25B23/14 620J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168369
(22)【出願日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】000161909
【氏名又は名称】京都機械工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】芳本 悠未
(72)【発明者】
【氏名】大河 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 喜晴
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038AA01
3C038BC01
3C038CA01
3C038CA06
3C038CB02
3C038CB06
3C038CB08
3C038CC08
3C038DA00
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】制御機器及び締付工具の双方において目標トルクを設定できるようにして作業性を担保しつつ、管理性やトレーサビリティの向上をも図る。
【解決手段】締付工具10と、該締付工具10と通信可能な制御機器20とを備える工具システム100において、締付工具10及び制御機器20の双方が、締付作業時の目標トルクを設定する目標トルク設定部C2、22を備え、制御機器20が、締付工具を目標トルクの設定が可能な設定可能状態から、目標トルクの設定が不能な設定不能状態に切り替える機能ロック部24をさらに備えるようにした。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
締付工具と、該締付工具と通信可能な制御機器とを備える工具システムにおいて、
前記締付工具及び前記制御機器の双方が、締付作業時の目標トルクを設定する目標トルク設定部を備え、
前記制御機器が、前記締付工具を目標トルクの設定が可能な設定可能状態から、目標トルクの設定が不能な設定不能状態に切り替える機能ロック部をさらに備える、工具システム。
【請求項2】
前記制御機器が、
前記締付工具が前記設定不能状態である場合に、そのことを示すシンボルを表示する表示制御部を備える、請求項1記載の工具システム。
【請求項3】
前記表示制御部が、前記締付工具が前記設定可能状態である場合に、前記シンボルを非表示にする、請求項2記載の工具システム。
【請求項4】
前記締付工具及び前記制御機器の双方が、前記締付工具のヘッドの有効長を設定する有効長設定部を備え、
前記機能ロック部が、前記設定不能状態において、前記締付工具による前記有効長の設定をも不能にする、請求項1乃至3のうち何れか一項に記載の工具システム。
【請求項5】
目標トルクを設定する設定画面と、締付作業時に締付トルクが表示される測定画面とに切り替えるとともに、前記測定画面に複数の目標トルクを選択可能に表示する表示制御部を備える、請求項1乃至4のうち何れか一項に記載の工具システム。
【請求項6】
締付工具と、該締付工具と通信可能な制御機器とを備え、前記締付工具及び前記制御機器の双方が、締付作業時の目標トルクを設定する目標トルク設定部を備える工具システムに用いられるプログラムにおいて、
前記制御機器に、
前記締付工具を目標トルクの設定が可能な設定可能状態から、目標トルクの設定が不能な設定不能状態に切り替える機能ロック部としての機能を発揮させる工具システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具システム及び工具システム用プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の工具システムとしては、特許文献1に示すように、トルクレンチ等の締付工具と、この締付工具と通信可能な制御機器とを備えたものがある。
【0003】
このような工具システムにおいて、例えば複数種類のサイズのボルトを締める場合など、作業の途中で目標トルクを設定しなおさなければならないことがあり、そのたびに制御機器を操作しなければならないとあっては、作業性が損なわれる。
【0004】
そこで、使い勝手の向上を図るべく、制御機器のみならず、締付工具を操作することによっても、目標トルクを変更できるように構成されたものがある。
【0005】
しかしながら、このように締付工具側で目標トルクを変更できるようにすると、例えば使用者の誤操作などにより、不適切な目標トルクが設定されてしまう可能性がある。
【0006】
そうすると、制御機器を操作する管理者にとっては、締付工具を扱う使用者の作業を管理し難くなる恐れがあり、作業のトレーサビリティを十分に確保できなくなるといった問題が生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-49585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本願発明は、上述した問題を解決するべくなされたものであり、制御機器及び締付工具の双方において目標トルクを設定できるようにしつつも、管理性やトレーサビリティの向上を担保することのできる工具システムを提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る工具システムは、締付工具と、該締付工具と通信可能な制御機器とを備える工具システムにおいて、前記締付工具及び前記制御機器の双方が、締付作業時の目標トルクを設定する目標トルク設定部を備え、前記制御機器が、前記締付工具を目標トルクの設定が可能な設定可能状態から、目標トルクの設定が不能な設定不能状態に切り替える機能ロック部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0010】
このように構成された工具システムであれば、締付工具及び制御機器の双方において目標トルクを設定できるようにすることで使い勝手を担保しつつ、必要に応じて、制御機器の機能ロック部を介して、締付工具を設定可能状態から設定不能状態に切り替えることにより、使用者による目標トルクの設定や変更を禁止することができるので、管理性やトレーサビリティの向上を図れる。
【0011】
前記制御機器が、前記締付工具が前記設定不能状態である場合に、そのことを示すシンボルを表示する表示制御部を備えることが好ましい。
これならば、締付工具が設定不能状態であることを一目で把握することができる。
【0012】
より具体的な実施態様としては、前記表示制御部が、前記締付工具が前記設定可能状態である場合に、前記シンボルを非表示にする態様を挙げることができる。
【0013】
ところで、締付工具が例えばボルトのサイズに応じてヘッドを交換可能なものである場合、そのボルトに作用する実際の締付トルクを正確に算出するには、ヘッドの有効長を考慮した算出が必要となる。
そこで、前記締付工具及び前記制御機器の双方が、前記締付工具のヘッドの有効長を設定する有効長設定部を備え、前記機能ロック部が、前記設定不能状態において、前記締付工具による前記有効長の設定をも不能にすることが好ましい。
これならば、ヘッドの有効長を考慮して締付トルクを正確に算出することができるようにしつつ、必要に応じて、使用者による有効長の設定や変更を禁止することができるので、管理性やトレーサビリティを担保することができる。
【0014】
目標トルクを設定する設定画面と、締付作業時に締付トルクが表示される測定画面とに切り替えるとともに、前記測定画面に複数の目標トルクを選択可能に表示する表示制御部を備えることが好ましい。
これならば、測定画面に複数の目標トルクが選択可能に表示されるので、測定画面から設定画面に戻らずに目標トルクを変更することができ、作業効率のさらなる向上を図れる。
【0015】
また、本発明に係る工具システム用プログラムは、締付工具と、該締付工具と通信可能な制御機器とを備え、前記締付工具及び前記制御機器の双方が、締付作業時の目標トルクを設定する目標トルク設定部を備える工具システムに用いられるプログラムにおいて、前記制御機器に、前記締付工具を目標トルクの設定が可能な設定可能状態から、目標トルクの設定が不能な設定不能状態に切り替える機能ロック部としての機能を発揮させることを特徴とするものである。
このような工具システム用プログラムによっても、上述した工具システムと同様の作用効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0016】
このように構成された本発明によれば、制御機器及び締付工具の双方において目標トルクを設定できるようにして作業性を担保しつつ、管理性やトレーサビリティの向上をも図れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る工具システムの全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態の工具システムの機能を示す機能ブロック図。
図3】同実施形態のトルクレンチの構成を示す模式図。
図4】同実施形態の制御機器の設定画面を表す図。
図5】同実施形態の制御機器の測定画面を表す図。
図6】同実施形態の機能ロック部の機能を説明するための表示内容を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る工具システムの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
<工具システムの構成>
本実施形態の工具システム100は、ネジやボルト等の締付対象を締め付ける締付作業に用いられるものであり、図1に示すように、締付工具たるトルクレンチ10と、このトルクレンチ10と通信可能な制御機器20とを備えるものである。
【0020】
トルクレンチ10は、図1に示すように、締付作業時のトルクを検出するトルクセンサSを備える所謂デジタル式のものであり、より具体的には、ディスプレイD1と、種々の操作に供される操作ボタンBと、制御器Cとをさらに備えている。
【0021】
ディスプレイD1は、ケーシングの外周面に設けられており、例えば締付対象に作用する締付トルクが表示されるものである。
【0022】
操作ボタンBは、ケーシングの外周面の例えばディスプレイD1の近傍に設けられており、締付作業の前の設定作業時などに操作されるものであり、具体的には締付作業時の目標トルクを設定するために用いられる。
【0023】
制御器Cは、ケーシング内に収容されており、CPUやメモリ等を備えたものである。この制御器Cは、前記メモリに格納されたプログラムに基づいて、図2に示すように、工具側表示制御部C1、工具側目標トルク設定部C2、及び締付トルク算出部C3としての機能を少なくとも発揮する。
【0024】
工具側表示制御部C1は、ディスプレイD1の表示内容を制御するものであり、締付作業時には例えば締付トルク等をディスプレイD1に表示し、設定作業時には例えば目標トルク等をディスプレイD1に表示する。
【0025】
工具側目標トルク設定部C2は、上述した操作ボタンBを用いて入力されたトルク値を受け付けて、そのトルク値をその作業時の目標トルクとして設定する。
【0026】
なお、目標トルクの具体的な入力方法としては、例えば操作ボタンBのうちのプラスボタンやマイナスボタンを操作して目標トルクを増減させながら入力できるようにしても良いし、予め設定された複数の目標トルクの中から選択したものが入力されるようにしても良い。
【0027】
本実施形態の工具側目標トルク設定部C2は、目標トルクに応じた上限値及び下限値をも受け付けて設定する。具体的には、目標トルクと同様、操作ボタンを介して入力された上限値及び下限値が設定されても良いし、設定された目標トルクに連動して上限値及び下限値が自動的に設定されるようにしても良い。
【0028】
締付トルク算出部C3は、上述したトルクセンサSから出力された検出信号を取得して、この検出信号に基づいて締付トルクを算出するものである。
【0029】
ここで、本実施形態のトルクレンチ10は、図3に示すように、締付対象に係合されるヘッドHを交換可能なものであり、具体的には長さの異なる複数種類のヘッドHを締付対象に応じて適宜取り替えることができるように構成されている。なお、交換可能なヘッドHとしては、図3に示すものに限らず、スパナヘッドやクローフットタイプのレンチに用いられるヘッドであっても構わない。
【0030】
このようなヘッドHを交換可能なトルクレンチ10においては、トルクセンサSから出力される検出信号の示す検出トルクの大きさが同じであったとしても、ヘッドHの長さが異なれば、力点から作用点までの長さ(以下、有効長という)が異なるので、締付トルクの大きさが変わる。
【0031】
なお、上述した有効長は、当業者であれば当然理解できようが、別の言い方で定義すると、図3に示すように、トルクレンチ10のグリップ部に設けられた手力線から、ヘッドHに設けられた差込角の中心点までの長さとも言うことができる。
【0032】
そこで、本実施形態のトルクレンチは、図2に示すように、上述した操作ボタンBを用いて入力された有効長を受け付けて設定する工具側有効長設定部C4としての機能をさらに備えている。
【0033】
かかる構成において、上述した締付トルク算出部C3は、工具側有効長設定部C4により設定された有効長と、上述したトルクセンサSからの検出信号とを用いて締付トルクを算出する。
【0034】
なお、有効長の具体的な入力方法としては、例えば操作ボタンBのうちのプラスボタンやマイナスボタンを操作して有効長を増減させながら入力できるようにしても良いし、予め設定された複数の有効長の中から選択したものが入力されるようにしても良い。予め複数の有効長を設定しておく場合、これらの有効長を示す有効長データが、前記メモリの所定領域に設定された工具側有効長データ格納部(不図示)に格納されている態様を挙げることができる。
【0035】
上述した構成において、本実施形態の工具側表示制御部C1は、目標トルクと締付トルクとを比較するとともに、これらの値の差に応じて、例えば背景色などディスプレイD1の表示態様を変えるように構成されている。
【0036】
これにより、使用者は締付作業時に締付トルクが上限値及び下限値の間に収まっているか否かを認識しながら作業を進めることができる。
【0037】
次に制御機器20について説明する。
制御機器20は、ディスプレイD2、CPU、及びメモリ等を備えた例えばタブレット、スマートフォン、ノートパソコン等の携帯式或いは据え置き式の端末装置であり、前記メモリに格納されたプログラムに基づいて、図2に示すように、機器側表示制御部21と、機器側目標トルク設定部22としての機能を少なくとも発揮する。
【0038】
機器側表示制御部21は、ディスプレイD2の表示内容を制御するものであり、目標トルクを設定する設定画面(図4参照)と、締付作業時に締付トルクが表示される測定画面(図5参照)とを切り替えるように構成されている。
【0039】
設定画面においては、図4に示すように、機器側表示制御部21が、複数の目標トルクを示す選択肢S1を選択可能に表示するとともに、選択されている選択肢の目標トルクと、この目標トルクに対応する上限値及び下限値を表示する。
【0040】
なお、上限値及び下限値は、目標トルクとは別にタッチパネルやマウスやキーボード等の入力手段を介して入力されるようにしても良いし、設定された目標トルクに連動して、目標トルクの例えば所定割合が上限値及び下限値として自動的に設定されるようにしても良い。
【0041】
一方、測定画面においては、図5に示すように、機器側表示制御部21が、締付作業時の締付トルクをリアルタイムに表示する(なお、図5の締付トルクが0.0であるのは、図5の測定画面が締付作業前のものであるからである)。
【0042】
この締付トルクの表示態様は、図5の上段に示すように、ディスプレイD2の全体を用いて表示する全体表示と、図5の下段に示すように、ディスプレイD2の一部を用いて表示するスリム表示とに切替可能に構成してある。
なお、ここでは画面に表示された切替シンボルS2を介して、全体表示及びスリム表示を切り替えることができる。
【0043】
さらに、本実施形態の機器側表示制御部21は、図5の下段右側に示すように、測定画面に予め記憶されている複数の目標トルクを選択可能に表示するように構成されており、ここではスリム表示に締付トルクとともに複数の目標トルクが選択可能に表示される。なお、これらの選択可能に表示された目標トルクは、図5の下段左側に示すように、非表示にすることもできる。
【0044】
また、本実施形態の制御機器20は、図2に示すように、使用者により入力された有効長を受け付けて設定する機器側有効長設定部23としての機能をさらに備えている。
【0045】
なお、有効長の具体的な入力方法としては、予め設定された複数の有効長の中から選択したものが入力されるようにしても良いし、有効長として任意の値を入力できるようにしても良い。予め複数の有効長を設定しておく場合、これらの有効長を示す有効長データが、前記メモリの所定領域に設定された機器側有効長データ格納部(不図示)に格納されている態様を挙げることができる。なお、制御機器20にトルクレンチ10が接続されたことを契機に、機器側有効長データ格納部(不図示)に格納された有効長データが、トルクレンチ10に送信されて、上述した工具側有効長データ格納部(不図示)に格納されるように構成しても良い。
【0046】
機器側有効長設定部23により設定された有効長は、上述した締付トルク算出部C3に送信される。そして、締付トルク算出部C3は、この有効長及び上述したトルクセンサSからの検出信号とを用いて締付トルクを算出する。
【0047】
ここで、本実施形態の工具システム100は、上述したように工具側及び制御機器側の双方で目標トルクを設定可能に構成されている。
【0048】
かかる構成においては、トルクレンチの使用者が例えば誤操作などにより、不適切な目標トルクに設定されてしまう恐れがある。その結果、制御機器20を操作する管理者にとっては、トルクレンチ10を扱う使用者の作業を管理し難くなる恐れがあり、作業のトレーサビリティを十分に確保できなくなるといった問題が生じ得る。なお、上述した問題は、有効長についても同様である。
【0049】
そこで、本実施形態の制御機器20は、図2に示すように、トルクレンチ10を介して目標トルクを設定可能な設定可能状態から、その設定を不能にする設定不能状態に切り替える機能ロック部24をさらに有する。
【0050】
より具体的に説明すると、本実施形態の機器側表示制御部21は、図6に示すように、トルクレンチ10を選択可能状態又は選択不能状態の何れかに切り替えるためのロック設定画面を表示する。
【0051】
本実施形態の制御機器20は、このロック設定画面において、トルクレンチ10を設定可能状態又は設定不能状態に設定するための切替信号を例えばタッチパネルやマウスやキーボード等の切替信号入力部P1を介して入力できるように構成されている。
【0052】
そして、この切替信号入力部P1を介して切替信号が入力されて、トルクレンチ10が設定可能状態から設定不能状態に切り替えられると、機能ロック部24が、工具側目標トルク設定部C2による目標トルクの設定を制限して、使用者による目標トルクの設定が不能になる。なお、この状態においては、機器側表示制御部21が選択不能状態であることを示すシンボルP2をディスプレイD2に表示する。
【0053】
また、本実施形態の機能ロック部24は、この設定不能状態において、工具側有効長設定部C4による有効長の設定をも制限して、使用者による有効長の設定が不能になる。
【0054】
一方、切替信号入力部P1を介して切替信号が入力されて、トルクレンチ10が設定不能状態から設定可能状態に切り替わると、機能ロック部24が、工具側目標トルク設定部C2による目標トルクの設定を許容して、使用者による目標トルクの選択・変更が可能となる。なお、この状態においては、機器側表示制御部21が上述したシンボルを非表示にする。
【0055】
また、本実施形態の機能ロック部24は、この設定可能状態において、工具側有効長設定部C4による有効長の設定をも許容して、使用者による有効長の設定が可能になる。
【0056】
<工具システムによる作用効果>
このように構成された工具システム100によれば、トルクレンチ10及び制御機器20の双方において目標トルクを設定できるようにすることで使い勝手を担保しつつ、必要に応じて、制御機器20の機能ロック部24を介して、トルクレンチ10を設定可能状態から設定不能状態に切り替えることにより、使用者による目標トルクの設定や変更を禁止することができるので、管理性やトレーサビリティの向上を図れる。
【0057】
また、機器側表示制御部21が、トルクレンチ10が設定不能状態である場合に、そのことを示すシンボルP2を表示するので、トルクレンチ10が設定不能状態であることを一目で把握することができる。
【0058】
さらに、トルクレンチ10及び制御機器20の双方が、トルクレンチ10のヘッドHの有効長を設定する工具側有効長設定部C4及び機器側有効長設定部23を備えるので、ヘッドの有効長を考慮して締付トルクを正確に算出することができる。
【0059】
そのうえ、必要に応じて、機能ロック部24により使用者による有効長の設定や変更を禁止することができるので、管理性やトレーサビリティを担保することができる。
【0060】
加えて、機器側表示制御部21が、測定画面に複数の目標トルクを選択可能に表示するので、使用者は、測定画面から設定画面に戻らずに目標トルクを変更することができ、作業効率のさらなる向上を図れる。
【0061】
<その他の実施形態>
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではない。
【0062】
例えば、前記実施形態では、ヘッドHを交換可能なトルクレンチ10について説明したが、トルクレンチとしてはヘッドHを交換できないものであっても良い。
この場合は、工具側有効長設定部C4や機器側有効長設定部23としての機能は不要である。
【0063】
また、前記実施形態では、トルクレンチ10に締付トルク算出部C3としての機能を備えさせていたが、制御機器20が締付トルク算出部C3を備えていても良い。
【0064】
さらに、締付工具としては、さらにはトルクレンチに限らず、ドライバーなど目標トルクが設定される締付工具であれば種々のものを用いて構わない。
【0065】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
100・・・工具システム
10 ・・・トルクレンチ
S ・・・トルクセンサ
D ・・・ディスプレイ
B ・・・操作ボタン
H ・・・ヘッド
C ・・・制御器
C1 ・・・工具側表示制御部
C2 ・・・工具側目標トルク設定部
C3 ・・・締付トルク算出部
C4 ・・・工具側有効長設定部
20 ・・・制御機器
21 ・・・機器側表示制御部
22 ・・・機器側目標トルク設定部
23 ・・・機器側有効長設定部
24 ・・・機能ロック部


図1
図2
図3
図4
図5
図6