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  • 特開-力率改善方法及び力率改善システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058406
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】力率改善方法及び力率改善システム
(51)【国際特許分類】
   B63J 3/02 20060101AFI20230418BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20230418BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20230418BHJP
【FI】
B63J3/02 A
H02J3/18 135
H02J3/18 185
B63J99/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021168456
(22)【出願日】2021-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】519043718
【氏名又は名称】石川電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134533
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 夏香
(74)【代理人】
【識別番号】100186451
【弁理士】
【氏名又は名称】梅森 嘉匡
(72)【発明者】
【氏名】石川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】石川 勇人
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066EA05
5G066FA01
(57)【要約】
【課題】メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現する。
【解決手段】コントローラ110が、電源が入っている大負荷6に対応するコンデンサ131をデータベース111から抽出し、抽出したコンデンサ131それぞれの積算運転時間を検知し当該積算運転時間とデータベース111に記憶されたそれぞれの許容運転時間とを比較し積算運転時間が許容運転時間を超えないコンデンサ131を投入する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機を搭載した船舶内におけるコントローラを用いた力率改善方法であって、
前記コントローラが、所定以上の消費電力である大負荷と前記大負荷に対応する大容量コンデンサと前記大容量コンデンサの許容運転時間Tcとを関連づけて記憶するデータベースを有し、
前記コントローラが、陸上電源から船内母線に電力供給がないことと、前記発電機が前記船内母線に電力供給中であることと、前記大負荷のうち1又は複数が作動中であることとを検知しているときに、
前記コントローラが、作動中の大負荷に対応する大容量コンデンサを前記データベースから抽出するコンデンサ抽出ステップと、
前記コントローラが、抽出した大容量コンデンサそれぞれの積算運転時間Qcを検知し、当該積算運転時間Qcと、前記データベースに記憶されたそれぞれの許容運転時間Tcとを比較し、積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えない大容量コンデンサを投入する投入ステップと、
を実行することを含み、かつ、
前記コントローラが、中小容量コンデンサを制御し前記発電機の力率を算出する力率調整装置から、前記力率を取得し、前記大容量コンデンサの作動中に前記力率が所定値を超えたことを検知した場合は、投入中の大容量コンデンサのうち最大容量のコンデンサを停止させることを特徴とする力率改善方法。
【請求項2】
前記データベースは、予備コンデンサと前記予備コンデンサの許容運転時間Trとを関連づけて記憶しており、
前記投入ステップにおいて、さらに、
前記コントローラが、前記抽出した大容量コンデンサのうち積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えたコンデンサについては投入を保留し、前記データベースから予備コンデンサを抽出する予備抽出ステップと、
前記コントローラが、前記予備コンデンサの積算運転時間Qrを検知し、当該積算運転時間Qrと前記データベースに記憶された前記予備コンデンサの許容運転時間Trとを比較し、積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えない場合は前記予備コンデンサを投入する予備投入ステップと、
前記コントローラが、前記予備コンデンサの積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えた場合は、前記予備抽出ステップで電源投入を保留したコンデンサの積算運転時間Qcと、前記予備コンデンサの積算運転時間Qrとを比較し、積算運転時間の少ない方のコンデンサを選択して投入するコンデンサ選択ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1記載の力率改善方法。
【請求項3】
前記コントローラが、前記陸上電源から前記船内母線に電力供給されていることを検知した場合は、前記大容量コンデンサ及び前記中小容量コンデンサが作動しないようにインターロックすることを特徴とする請求項1又は2記載の力率改善方法。
【請求項4】
コントローラと前記コントローラに接続された力率調整装置とを備える制御盤を有し、
(A)前記力率調整装置が、
(ア)船内母線を介して、中小負荷と、発電機とに接続され、
(イ)前記発電機の力率を算出し、
(ウ)中小容量コンデンサを制御するものであって、
(B)前記コントローラが、
(ア)所定以上の消費電力である大負荷と、前記大負荷に対応する大容量コンデンサと、前記大容量コンデンサの許容運転時間Tcと、を関連づけて記憶するデータベースを有し、
(イ)前記船内母線を介して、前記大負荷と、前記発電機とに接続され、それぞれの作動状況を取得する機能と、
(ウ)陸上電源のブレーカーと、発電機の遮断器とに接続され、それぞれの作動状況を取得する機能と、
(エ)前記力率調整装置から前記力率を取得する機能と、
(オ)前記大負荷に対応する大容量コンデンサに接続され、前記陸上電源から前記船内母線に電力供給がないことと、前記発電機が前記船内母線に電力供給中であることと、前記大負荷のうち1又は複数が作動中であることとを検知しているときに、前記大容量コンデンサを、前記許容運転時間Tcと積算運転時間Qcとに基づいて制御する機能と、
を有することを特徴とする力率改善システム。
【請求項5】
前記大負荷の消費電力が、前記発電機の供給可能電力の10%以上であることを特徴とする請求項4記載の力率改善システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍機やポンプ等の負荷を搭載する船舶において使用する、力率改善方法及び力率改善システムに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、港湾での停泊中は陸上電源から電力の供給を受けることができるが、航海中は外部から電力を供給できないので、船舶に搭載した燃料タンクの燃料を用いた発電機で自己発電し、船舶内の冷凍機やポンプ等の負荷に電力を供給する。
【0003】
しかし、船舶では、使用している負荷の運転状況により消費電力が変動するため、発電機の力率も安定しない。船内発電機で発電した出力電力を負荷に供給する際に、コンデンサを用いて力率制御を行う方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-208028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長い航海を行う船舶では、長期間にわたり力率改善を行うことになる。したがって、航海中に、コンデンサの使用時間が許容時間を超過することにより、メンテナンスを要する事態が起こりうる。しかし、上述した従来の船舶における力率制御では、メンテナンスについて考慮されていない。
【0006】
進相コンデンサのメンテナンスについては、船員では判断や作業がしにくいため、航海中にメンテナンスを要する事態が生じると、効果的な力率改善が十分発揮できず、船舶に搭載されたエンジンで消費されるエネルギーの省エネを図れないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、発電機を搭載した船舶内におけるコントローラを用いた力率改善方法であって、
前記コントローラが、所定以上の消費電力である大負荷と前記大負荷に対応する大容量コンデンサと前記大容量コンデンサの許容運転時間Tcとを関連づけて記憶するデータベースを有し、
前記コントローラが、陸上電源から船内母線に電力供給がないことと、前記発電機が前記船内母線に電力供給中であることと、前記大負荷のうち1又は複数が作動中であることとを検知しているときに、
前記コントローラが、作動中の大負荷に対応する大容量コンデンサを前記データベースから抽出するコンデンサ抽出ステップと、
前記コントローラが、抽出した大容量コンデンサそれぞれの積算運転時間Qcを検知し、当該積算運転時間Qcと、前記データベースに記憶されたそれぞれの許容運転時間Tcとを比較し、積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えない大容量コンデンサを投入する投入ステップと、
を実行することを含み、かつ、
前記コントローラが、中小容量コンデンサを制御し前記発電機の力率を算出する力率調整装置から、前記力率を取得し、前記大容量コンデンサの作動中に前記力率が所定値を超えたことを検知した場合は、投入中の大容量コンデンサのうち最大容量のコンデンサを停止させることを特徴とする力率改善方法を提供する。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、船舶内の力率改善を実現でき、位相の進みすぎを防止することができ、また、メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現することができる。さらに、力率改善のために航海中の安全を犠牲にするおそれがない。
【0010】
また、本発明の第1の態様の力率改善方法は、前記データベースは、予備コンデンサと前記予備コンデンサの許容運転時間Trとを関連づけて記憶しており、
前記投入ステップにおいて、さらに、
前記コントローラが、前記抽出した大容量コンデンサのうち積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えたコンデンサについては投入を保留し、前記データベースから予備コンデンサを抽出する予備抽出ステップと、
前記コントローラが、前記予備コンデンサの積算運転時間Qrを検知し、当該積算運転時間Qrと前記データベースに記憶された前記予備コンデンサの許容運転時間Trとを比較し、積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えない場合は前記予備コンデンサを投入する予備投入ステップと、
前記コントローラが、前記予備コンデンサの積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えた場合は、前記予備抽出ステップで電源投入を保留したコンデンサの積算運転時間Qcと、前記予備コンデンサの積算運転時間Qrとを比較し、積算運転時間の少ない方のコンデンサを選択して投入するコンデンサ選択ステップと、
を含むことが好ましい。
【0011】
メンテナンスがしにくい状況でも、即座に力率改善の効率向上を持続させることができ、より効率よく省エネを実現できる。
【0012】
また、本発明の第1の態様の力率改善方法は、さらに、前記コントローラが、前記陸上電源から前記船内母線に電力供給されていることを検知した場合は、前記大容量コンデンサ及び前記中小容量コンデンサが作動しないようにインターロックすることが好ましい。
【0013】
陸上電源からの電力供給中にコンデンサが投入されることによる陸上電源設備の故障を防止できる。
【0014】
また、本発明の第2の態様は、コントローラと前記コントローラに接続された力率調整装置とを備える制御盤を有し、
(A)前記力率調整装置が、
(ア)船内母線を介して、中小負荷と、発電機とに接続され、
(イ)前記発電機の力率を算出し、
(ウ)中小容量コンデンサを制御するものであって、
(B)前記コントローラが、
(ア)所定以上の消費電力である大負荷と、前記大負荷に対応する大容量コンデンサと、前記大容量コンデンサの許容運転時間Tcと、を関連づけて記憶するデータベースを有し、
(イ)前記船内母線を介して、前記大負荷と、前記発電機とに接続され、それぞれの作動状況を取得する機能と、
(ウ)陸上電源のブレーカーと、発電機の遮断器とに接続され、それぞれの作動状況を取得する機能と、
(エ)前記力率調整装置から前記力率を取得する機能と、
(オ)前記大負荷に対応する大容量コンデンサに接続され、前記陸上電源から前記船内母線に電力供給がないことと、前記発電機が前記船内母線に電力供給中であることと、前記大負荷のうち1又は複数が作動中であることとを検知しているときに、前記大容量コンデンサを、前記許容運転時間Tcと積算運転時間Qcとに基づいて制御する機能と、
を有するための力率改善システムを提供する。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、船舶内の力率改善を実現でき、位相の進みすぎを防止することができ、また、メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現することができる。
【0016】
また、本発明の第2の態様の力率改善システムは、前記大負荷の消費電力が、前記発電機の供給可能電力の10%以上であることが好ましい。
【0017】
航海中に、負荷の大きい機器は対応するコンデンサと予備コンデンサで力率を制御し、負荷が小さい機器はコンデンサ群でサイクリックに力率を制御することができ、より効率的な力率改善を実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現することを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の力率改善方法の実施例1を実行する力率改善システムを含む主な回路構成を示すブロック図である。
図2】本発明の力率改善方法の実施例1のフロー図である。
図3】本発明の力率改善方法の実施例1における制御関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の力率改善方法及び力率改善システムについて、添付図面を参照して実施例を用いて本発明の好適な実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0021】
{構成}
図1は、本発明の力率改善方法の実施例1を実行する力率改善システムを含む主な回路構成を示すブロック図である。本実施例の力率改善システムは、船舶に搭載して、船体内の発電機(GEN)2から船内の負荷(例えば、冷凍機、ポンプ、送風機、ウィンドラス、キャプスタン等の電動機や、電灯等)に供給する電力のコントロールを行う。発電機2は本実施例では2台であるが、1台でも3台以上でもよい。本実施例の力率改善システムは、プログラムリレーを有するコントローラ110と、コントローラ110に接続された力率調整装置120とを備える、力率改善装置1内の制御盤101を有する。力率改善装置1は、制御盤(C.O.P)101と、コンデンサ盤(C.P)102とを有する。コントローラ110と力率調整装置120は、力率改善装置1の制御盤101内に設置され、互いに接続してある。
【0022】
船体に搭載された燃料タンク3は、燃料移送ポンプ301を介して、駆動用エンジン4a、bに燃料を供給し、それぞれのエンジンに接続された発電機2a、bにおいて電気エネルギーに変換し、主配電盤(M.S.B)5の母線501を介して船内の負荷(大負荷:冷凍機(M1~4)6a~d、中小負荷:中小電動機(P5~v)7a~j)に電力を供給する。
【0023】
本実施例では、船内の負荷について、必要に応じて、消費電力が大きい負荷を大負荷、消費電力の小さい負荷を中負荷・小負荷合わせて中小負荷、として区別して説明する。
【0024】
本実施例では、冷凍機6a~dの4台を、所定以上の消費電力である大負荷の例として示すが、台数は4台に限定されず、船体に搭載し稼働させる発電機の供給可能電力に対して、消費電力が大きければ他の電動機でもよい。本実施例では、大負荷である冷凍機6a~dの消費電力は全て、船内で稼働させる全ての発電機2の供給可能電力(発電機が複数ある場合(図1では発電機2a、bの2台で例示)は、合計の供給可能電力)から計算して所定以上(本実施例では、10%以上)の消費電力である。本実施例では、発電機全ての供給可能電力の10%としたが、10%とする代わりに8~15%の任意の割合としてもよい。1つの発電機に接続される大負荷の台数は、1~5程度が好ましい。航海前に、どの負荷を大負荷としてコントローラでの制御対象とするかを決めておく。
【0025】
また、本実施例では、中小電動機7a~jを、中小負荷(P5~v)の例として示す。本実施例では中小電動機の数を10とするが、中小容量コンデンサ12個(本実施例の場合。他の力率調整装置では、その装置に接続可能なコンデンサ数:コンデンサバンク)以内で制御可能な台数内であれば、10台に限定されない。中小電動機としては、ポンプ、送風機、ウィンドラス、キャプスタン等が挙げられるが、船体に搭載し稼働させる発電機に対して、消費電力が小さければ他の電動機でもよい。本実施例では、中小負荷である中小電動機7a~jは全て、発電機全ての供給可能電力の10%未満の消費電力であるが、大負荷よりも消費電力が大きくなければ、消費電力が、発電機全ての供給可能電力の10%を超える負荷が含まれていてもよい。
【0026】
力率調整装置120としては、市販の力率調整装置を用いることができ、本実施例では、三菱電機社製の自動力率調整装置VAR-12Aを用いるが、これに限定されない。力率調整装置120は、中小負荷(中小電動機7a~j)と発電機とに接続され、中小容量コンデンサの制御機能と、力率計算機能と、力率等の表示機能を有する。力率調整装置120は、発電機2から送出する電流値・電圧値を測定して皮相電力を算出し、船内母線501における有効電力を測定し、これらの値から力率を算出する。
【0027】
コントローラ110では、コンデンサ盤102内に搭載された大容量コンデンサ(C1~C4)131a~dと予備コンデンサ(Cr)132の投入・遮断の制御を行う。大容量コンデンサ(C1~C4)131a~dと予備コンデンサ(Cr)132のマグネットスイッチ(MS)は制御盤101内に設置されている(図示省略)。コンデンサ盤102内のコンデンサはいずれも進相コンデンサである。進相コンデンサのうち、少なくとも、大容量コンデンサ(予備コンデンサを含む)は、積算運転時間を記憶しており、記憶された積算運転時間のデータをコントローラ110に送出することによりメンテナンスに活用する。
【0028】
一方、力率調整装置120では、コンデンサ盤102内に搭載された中小容量コンデンサ(C5~Cx)133a~lの投入・遮断の制御を行う。中小容量コンデンサ(C5~Cx)133a~lのマグネットスイッチは制御盤101内に設置されている。本実施例では、中小容量コンデンサは12個であるが、力率調整装置の制御可能数内であれば個数は限定されない。
【0029】
本実施例では力率調整装置120のコンデンサバンク数は12であるが、これに限定されない。船内力率が悪いと負荷電流が大きくなり、発電機回転子が高温となるため、絶縁低下等で発電機事故のリスクが増加する。力率改善することにより、実負荷に対しての電流値が低下し、無効電流が減少するので発電機効率が増加し、燃料消費量の軽減が図れ、発電機事故等のリスクを軽減し、また、機関室内温度を下げる効果も期待できる。
【0030】
船舶では、電動機負荷が大きなウェイトを占めるため、力率が低くなることが多い。力率低下の対策として進相コンデンサを備えることが挙げられる。しかし、力率調整装置だけでは、メンテナンスリスク等が軽減できない。
【0031】
コントローラ110は、所定以上の消費電力である大負荷である冷凍機6a~dと、大負荷に対応するコンデンサである大容量コンデンサ131a~dと、大容量コンデンサ131a~dの許容運転時間Tc1~4と、を関連づけて記憶し、かつ、予備コンデンサ132と予備コンデンサ132の許容運転時間Trとを関連づけて記憶するデータベース111を有する。
【0032】
データベース111において、例えば、大負荷である冷凍機6aの識別子M1と、冷凍機6aに対応する大容量コンデンサ131aの識別子C1と、大容量コンデンサ131aの許容運転時間Tcとが関連付けられて記憶されており、冷凍機6aの作動を検知すると、関連付けられて記憶されている大容量コンデンサ131aが抽出され、大容量コンデンサ131aから積算運転時間Qcを検知して表示し、関連付けられて記憶されている許容運転時間Tcが抽出される。QcとTcとどちらが大きいかをコントローラ110が比較する。
【0033】
大負荷のマグネットスイッチ(MS1~4)502a~dからの運転信号はコントローラ110に送信される。なお、中小負荷のマグネットスイッチ(MS5~v)502e~vは、本実施例では10個(MSv=MS14)であるが、10個に限らず、したがって、MSvのvは任意の数である。
【0034】
大負荷(冷凍機6a~d)に対応する大容量コンデンサ(131a~d)は、事前に決めて、データベース111に、各大負荷(M1~4)と対応するコンデンサ(C1~C4)とが互いに関連づけて記憶させてある。また、本実施例では、大容量コンデンサの他に予備コンデンサもデータベース111に記憶し、コンデンサ毎にそれぞれの許容運転時間(Tc1~4、Tr)も関連づけてデータベース111に記憶してある。
【0035】
コントローラ110は、母線501を介して、大負荷(冷凍機6a~d)と、発電機2と、に接続され、また運転信号を得るために、陸上電源のブレーカー(MCB)503と、発電機2a、bの遮断器(ACB)504a、bとに接続されている。
【0036】
陸上受電のブレーカー503は、船内の主配電盤5内に配置され、陸上電源の陸上配電盤(SCB)8に接続されている。陸上配電盤(SCB)8は船内に配置され、港湾等に停泊中に船舶の電力供給源として、陸上電源が陸上配電盤を経由して接続され、母線に陸上電源から電力が供給されている状態では、ブレーカー503は「通電」となっており、航海中等で陸上電源が陸上配電盤(SCB)8に接続されていない状態では、ブレーカー503は「遮断」となっている。ブレーカー503が「遮断」の状態で、陸上電源から船内母線に電力供給がない状態となる。コントローラ110は、接点(SC)で、陸上電源から船内母線への電流の有無を検知することによって、ブレーカー503からON(通電)・OFF(遮断)の信号を取得する。
【0037】
発電機2の遮断器504は、主配電盤5内に配置され、発電機2に接続されている。発電機2の電源が投入されると、遮断器504は、発電機2から船内母線501へ通電状態とする。遮断器が「通電」の状態で、発電機が船内母線に電力供給中となる。コントローラ110は、接点で、発電機2から母線への電流の有無を検知することによって、遮断器504からON(通電)・OFF(遮断)の信号を取得する。
【0038】
本実施例では、主配電盤5には、母線501、マグネットスイッチ502a~v、ブレーカー503、遮断器504a、bを含む。
【0039】
コントローラ110は、大負荷(冷凍機6a~d)に対応する大容量コンデンサ(131a~d)と、予備コンデンサ132と、力率調整装置120と、非常停止ボタン9とに接続されている。
【0040】
コントローラ110は、力率調整装置120から力率データを随時取得する。
【0041】
不測の事態等が生じて船員等によって非常停止ボタン9が押下されると、非常停止ボタン9に接続されたコントローラ110は、非常停止信号を受信する。非常停止ボタン9が押下されると、非常停止中の状態となり、一度非常停止ボタン9が押されると、非常停止解除の動作がされない限り継続する。非常停止ボタン9はコントローラ110に接続されており、非常停止ボタン9が押されると、コントローラ110によって全ての大容量コンデンサ131の作動を停止し、コントローラ110から力率調整装置120を通じて中小容量コンデンサ133の作動を停止する。非常停止信号を受信すると、解除されるまで力率改善は中止となる。
【0042】
コントローラ110は、大負荷に対応する大容量コンデンサ131a~dと、予備コンデンサ132を制御する。具体的には、運転している大負荷に関連づけられた大容量コンデンサを、積算運転時間が許容運転時間を超えないように制御することによって、コンデンサのメンテナンスが必要なトラブルをできるだけ回避しながら力率改善を行う。
【0043】
コントローラ110は、検知した積算運転時間の表示機能を有する。積算運転時間を表示できるので、メンテナンス計画を立てやすくなる。
【0044】
予備コンデンサ132の容量は、大容量コンデンサ131a~dの中で最も小さい容量のコンデンサの容量以下である。予備コンデンサ132は大容量コンデンサ131a~dの予備であるところ、予備コンデンサ132を代替として使用したときに代替前と比べて位相が進みすぎないという効果がある。なお、本実施例では、予備コンデンサは1つであるが複数あってもよい。
【0045】
大容量コンデンサ131a~dと予備コンデンサ132は、積算運転時間のデータをコントローラ110に随時送信する。コントローラ110は、接点を介して、当該データを受信する。
【0046】
コントローラ110は、大容量コンデンサ131a~dを、大負荷(冷凍機6a~d)の運転状況と、上述した力率と、許容運転時間Tc1~4、Trと、積算運転時間Qc1~4、Qrと、陸上電源及び発電機2a、b及び非常停止ボタン9の作動状況と、に基づいて制御する機能を有する。
【0047】
コントローラ110は、陸上電源から船内母線501に電力供給がないことと、発電機2が船内母線501に電力供給中であることと、大負荷のうち1又は複数が作動中であることとを検知しているとき、大容量コンデンサを制御して力率改善を行う。力率が所定値(本実施例では0.95)に近づくように制御するが、大容量コンデンサの使いすぎによるメンテナンスリスクを回避するため、許容運転時間Tcと積算運転時間Qcとに基づいて作動の可否を判断して制御する。
【0048】
また、コントローラ110は、陸上電源から船内母線501に電力供給されていることを検知した場合は、大容量コンデンサ131及び中小容量コンデンサ133が作動しないようにインターロックする機能を有する。これにより、陸上電源供給側の故障を防止できる。
【0049】
さらに、コントローラ110は、陸上電源から船内母線501に電力供給されていることを検知した場合は、発電機2が船内母線501に電力供給しないようにインターロックする機能を有する。これにより、二重の電力供給を防止できる。
【0050】
一方、力率調整装置120は、母線501を介して所定以下の消費電力である中小負荷(中小電動機(P)7a~j)と、発電機2とに接続され、発電機2の力率を測定する。そして、中小負荷用コンデンサ群(中小容量コンデンサ(C5~Cx)133a~l)を制御するものである。
【0051】
力率調整装置120は、中小容量コンデンサ(C5~Cx)133a~lをサイクリック制御して各コンデンサをできるだけ均等に使用しながら力率改善を行う。中小容量コンデンサは、本実施例では、100μF、250μFの組み合わせである。
【0052】
例えば、冷凍機6a~dがいずれも消費電力が60kwであった場合、大容量コンデンサ131a~dはいずれも900μFの容量のコンデンサとし、冷凍機の消費電力が2倍であれば対応するコンデンサの容量も2倍とする。コンデンサ盤内の全てのコンデンサの容量の合計が、発電機の定格電流値の一定値以下となるように算出し、その値から大容量コンデンサの容量の合計量を差し引いた容量を、力率調整装置でサイクリック制御する中小容量コンデンサの容量の合計とする。
【0053】
大容量コンデンサの容量は、500μF~2000μFが好ましいが、これに限定されない。中小容量コンデンサの容量は、5~500μFが好ましいが、これに限定されない。
【0054】
{効果}
本実施例の力率改善システムによれば、メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現することができる。
【0055】
本実施例の力率改善システムによれば、航海中に、使用中の進相コンデンサのメンテナンスを要する事態となったとき、自動的に予備コンデンサがサポートするので、効果的な力率改善が十分発揮でき、船舶に搭載されたエンジンで消費されるエネルギーの省力化ができる。したがって、船員が急いでメンテナンスについて判断や作業する必要なく、利便性が高い。
【0056】
また、本実施例の力率改善システムによれば、力率が一定値以上になった場合は、一定のコンデンサを停止させるので、長い航海を行う船舶でメンテナンスがしにくい状況でも、位相の進みすぎを防止し、長期間にわたり船舶内の力率改善を効率よく行うことができる。したがって、消費エネルギーの削減ができる。例えば、遠洋鮪延縄漁船発電機関で燃料消費が一航海平均1.1kl/日の船では、300日航海で約13klの燃料削減が可能となる。
【0057】
位相が進みすぎた場合にコンデンサを停止させることで、力率が低くなった状態でも負荷の運転を停止せずに運航できるので、力率改善のために航海中の安全を犠牲にするおそれがない。
【0058】
{処理プロセス}
図2は、本発明の力率改善方法の実施例1のフロー図である。本実施例の力率改善方法は、船舶内の電力供給における力率改善方法であって、上述したコントローラ110、すなわち、所定以上の消費電力である大負荷(本実施例では、冷凍機6a~d)と大負荷に対応するコンデンサ(本実施例では、大容量コンデンサ131a~d)とコンデンサの許容運転時間(Tc1~4)とを関連づけて記憶するデータベースを有するコントローラ110を使用して行う。
【0059】
本実施例の力率改善方法は、コントローラ110が、陸上電源のブレーカー503からの信号により陸上電源から船内母線501に電力供給がないことを検知し、船舶に搭載された発電機2の遮断器504からの信号により発電機2が船内母線501に電力供給中であることを検知し、大負荷である冷凍機6a~dのマグネットスイッチ502a~dからの信号により大負荷のうち1又は複数が作動中であることを検知しているときに、(Step100)コントローラ110が、作動中の大負荷(冷凍機6)に対応するコンデンサ(大容量コンデンサ131)をデータベース111から抽出するコンデンサ抽出ステップと、(Step200)コントローラ110が、抽出した大容量コンデンサそれぞれの積算運転時間Qcを検知し、積算運転時間Qcと、データベース111に記憶されたそれぞれの許容運転時間Tcとを比較し、積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えない大容量コンデンサを投入する投入ステップと、を実行することを含むものである。
【0060】
本実施例の力率改善方法は、さらに、(Step300)コントローラ110が、中小容量コンデンサ(中小容量コンデンサ133a~l)を制御し発電機2の力率を算出する力率調整装置120から、力率データを取得し、大容量コンデンサの作動中に、力率が所定値(本実施例では0.95)を超えたことを検知した場合は、投入中のコンデンサのうち最大容量のコンデンサを停止させる停止ステップを含む。
【0061】
本実施例の力率改善方法では、データベース111に、さらに予備コンデンサ132と予備コンデンサの許容運転時間Trとを関連づけて記憶されており、(Step200)投入ステップにおいて、さらに、(Step210)コントローラ110が、抽出したコンデンサ(大容量コンデンサ131)のうち積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えたコンデンサについては投入を保留し、データベース111から予備コンデンサ132を抽出する予備抽出ステップと、(Step220)コントローラ110が、予備コンデンサ132の積算運転時間Qrを検知し、積算運転時間Qrとデータベース111に記憶された予備コンデンサ132の許容運転時間Trとを比較し、積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えない場合は予備コンデンサ132を投入する予備投入ステップと、(Step230)コントローラ110が、予備コンデンサの積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えた場合は、予備抽出ステップで電源投入を保留したコンデンサの積算運転時間Qcと予備コンデンサの積算運転時間Qrとを比較し、積算運転時間の少ない方を選択して投入するコンデンサ選択ステップと、を含む。予備コンデンサを使用しない場合は、これらのステップを要しない。
【0062】
図3は、本発明の力率改善方法の実施例1における制御関係を示す説明図である。
【0063】
(Step10)初期確認ステップ
コントローラ110は、陸上電源のブレーカー503に接続し、ブレーカー503から、常時、陸上電源から船内母線501への電力供給がされていないか監視する。また、コントローラ110は、発電機2の遮断器504に接続し、遮断器504から、常時、発電機2から船内母線501への電力供給がされているか監視する。さらに、コントローラ110は、非常停止ボタン9に接続し、非常停止ボタン9から、常時、非常停止ボタンが押されていないか(一度押された場合は、非常停止中の状態が解除されているか)監視する。また、さらに、コントローラ110は、大負荷である大容量コンデンサ131のマグネットスイッチ502に接続し、マグネットスイッチ502から、常時、大容量コンデンサ131が作動中であるか監視する。
【0064】
コントローラ110は、陸上電源から船内母線501に電力供給がないことと、船舶に搭載された発電機2が船内母線501に電力供給中であることと、大負荷のうち1又は複数が作動中であることとを検知しているときに、以下に述べる、コンデンサ抽出ステップと、投入ステップ(予備コンデンサ抽出ステップと予備投入ステップとコンデンサ選択ステップを含む)と、を実行する。非常停止中である場合は下記ステップを実行しない。
【0065】
検知は常時行い、例えば、大負荷が作動していないときは、コントローラ110で行う力率改善は中止し、力率調整装置120により中小負荷のみで力率改善が適用される。
【0066】
陸上電源からの電力供給がされているときは、インターロックにより発電機の電源をOFFにする。陸上電源からの電力供給中は、供給側の電力が大きく、供給側の大元に接続される負荷多数であるため、力率改善を行っても送電ロスを防ぐ等の効果しかないので、本発明の力率改善システムは稼働させない。また、さらに、陸上電源からの電力供給がされているときは、インターロックにより、進相コンデンサであるコンデンサ131、132、133を運転させない。
【0067】
陸上電源からの電力供給がされていない状態で、発電機の電源をONにすることができる。発電機の電源をONにすると、発電機に接続されている冷凍機等の負荷の大きい電動機と小容量ポンプや送風機等の負荷の小さい電動機に発電機からの電力が供給される。コントローラ110及び力率調整装置120にも電力が供給される。
【0068】
(Step100)コンデンサ抽出ステップ
コントローラ110が、作動中の冷凍機6に対応するコンデンサ(大容量コンデンサ131)をデータベース111から抽出する。例えば、冷凍機6a、b、cが稼働中であることを、マグネットスイッチ(MS1~3)502a、b、cで運転信号を受信すると、各負荷に予め関連づけてデータベース111に記憶されている大容量コンデンサ(C1~3)131a、b、cを、コントローラ110が抽出する。
【0069】
(Step200)投入ステップ
コントローラ110が、抽出した大容量コンデンサそれぞれの積算運転時間Qcを検知する。図2においては、抽出したコンデンサを対応C(コンデンサ)として表示する。冷凍機6a、b、cが稼働中である場合、大容量コンデンサ(C1~3)131a、b、cに積算運転時間Qc1~3のデータを要求する。検知した積算運転時間Qcは、コントローラ110上に表示させる。積算運転時間を作業者が確認することができるので、メンテナンスの計画を立てやすく、利便性が高い。
【0070】
次に、コントローラ110が、検知した積算運転時間Qc1~3と、データベース111に記憶されたそれぞれの許容運転時間Tc1~3とを比較する。大容量コンデンサ(C1~3)131a、b、cから得られた各積算運転時間Qc、Qc、Qcと、データベース111に記憶された許容運転時間Tc、Tc、Tcと、を比較する。
【0071】
次に、コントローラ110が、積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えない大容量コンデンサを投入する。積算運転時間が許容運転時間内であれば、コンデンサのトラブルは生じにくい。したがって、対応するコンデンサが許容運転時間内であればこれを使用する。航海中は負荷が決まっているので、力率に影響を与えやすい負荷、すなわち、消費電力の大きい負荷については、サイクリックで制御するよりも対応するコンデンサで力率調整した方が安定する。また、メンテナンス作業の発生率も低減でき、船員の負担を軽減することができる。また、負荷に対しコンデンサが決まっているので、メンテナンスの必要が発生したときも、原因の特定等がしやすく、メンテナンスもしやすい。
【0072】
(Step210)予備抽出ステップ
コントローラ110が、抽出したコンデンサ(大容量コンデンサ131)のうち積算運転時間Qcが許容運転時間Tcを超えたコンデンサについては投入を保留する。予備コンデンサを搭載している場合は、データベースで関連づけられているコンデンサの投入を行わない。これにより、長時間使用され劣化しているおそれのあるコンデンサのトラブルを、未然に防ぐことができる。
【0073】
コントローラ110が、データベース111から予備コンデンサ132を抽出する。例えば、大容量コンデンサ131aが許容運転時間Tcを超過していた場合、冷凍機6aに対し、大容量コンデンサ131aを使用せず、コンデンサ132を使用して力率改善を行うデータベースで関連づけられているコンデンサを無理に使わず、予備のコンデンサCrを使用して、より効率的な力率改善をすることが可能となる。
【0074】
(Step220)予備投入ステップ
コントローラ110が、予備コンデンサ132の積算運転時間Qrを検知する。具体的には、予備コンデンサ(Cr)132に積算運転時間Qrのデータを要求して検知する。
【0075】
次に、コントローラ110が、検知した積算運転時間Qrとデータベース111に記憶された予備コンデンサ132の許容運転時間Trとを比較する。予備コンデンサ(Cr)132から得られた積算運転時間Qrと、データベース111に記憶された許容運転時間Trとを比較する。
【0076】
次に、コントローラ110が、積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えない場合は予備コンデンサ132を投入する。積算運転時間が許容運転時間内であれば、コンデンサのトラブルは生じにくい。したがって、予備コンデンサが許容運転時間内であればこれを使用する。
【0077】
(Step230)コンデンサ選択ステップ
コントローラ110が、予備コンデンサの積算運転時間Qrが許容運転時間Trを超えた場合は、予備抽出ステップで電源投入を保留したコンデンサの積算運転時間Qcと予備コンデンサの積算運転時間Qrとを比較する。大容量コンデンサ131a(図2では対応Cと表示)も予備コンデンサ132も、積算運転時間Qが許容運転時間Tを超えている場合、次善の策として、どちらを使用すべきかを判断することになる。そのときの判断基準として、積算運転時間Qを用いる。
【0078】
次に、積算運転時間Qの少ない方を選択して投入する。例えば、大容量コンデンサ131aと予備コンデンサ132のうち、大容量コンデンサ131aの方が、積算運転時間Qが短いか同じであれば、大容量コンデンサ131aに運転要求する。大容量コンデンサ131aの方が、積算運転時間Qが長ければ、予備コンデンサ132に運転要求する。
【0079】
(Step300)停止ステップ
コントローラ110は、力率調整装置120から、大容量コンデンサ132の作動中は常時、力率データを取得する。力率調整装置120は、所定以下の消費電力である中小負荷(中小電動機7a~j)と中小負荷用コンデンサ群(中小容量コンデンサ133a~l)とに接続して中小負荷用コンデンサ群を制御する装置である。力率調整装置120は、発電機2a、bの電流電圧値データを常時取得し、力率を算出している。進相コンデンサにより力率改善がされると力率は1.0に近づく。
【0080】
コントローラ110が、大容量コンデンサ132の作動中に、力率が0.95を超えたことを検知した場合は、投入中のコンデンサのうち最大容量のコンデンサを停止させる。力率は0.95を目標として改善する。力率が1.0を超える(位相が進みすぎる)ことがないように、0.95を超えたら、異常が発生したと判断し、投入中のコンデンサの中で最も容量が大きいコンデンサ1つを遮断して運転停止とする。位相が進みすぎると電圧制御不能のリスクが生じるためである。より力率改善を優先したい場合は、0.95から0.98まで制限値を上げてもよい。運転を停止したコンデンサについては、異常発生の原因究明・改善までは、安全のため使用を見合わせる。航海中に船員が原因究明を即座に行うことは困難であるためと、力率改善よりも航海の安全を優先するためである。
【0081】
{効果}
本実施例の力率改善方法によれば、メンテナンスがしにくい状況でも船舶上の力率改善の効率を向上させることができ、省エネを実現することができる。
【0082】
本実施例の力率改善方法によれば、航海中に、使用中の進相コンデンサのメンテナンスを要する事態となったとき、自動的に予備コンデンサがサポートするので、効果的な力率改善が十分発揮でき、船舶に搭載されたエンジンで消費されるエネルギーの省力化ができる。したがって、船員が急いでメンテナンスについて判断や作業する必要なく、利便性が高い。
【0083】
また、本実施例の力率改善方法によれば、力率が一定値以上になった場合は、一定のコンデンサを停止させるので、長い航海を行う船舶でメンテナンスがしにくい状況でも、位相の進みすぎを防止し、長期間にわたり船舶内の力率改善を効率よく行うことができる。したがって、消費エネルギーの削減ができる。
【0084】
位相が進みすぎた場合にコンデンサを停止させることで、力率が低くなった状態でも負荷の運転を停止せずに運航できるので、力率改善のために航海中の安全を犠牲にするおそれがない。
【符号の説明】
【0085】
1 力率改善装置
101 制御盤
102 コンデンサ盤
110 コントローラ
111 データベース
120 力率調整装置
131 大容量コンデンサ
132 予備コンデンサ
133 中小容量コンデンサ
2 発電機
3 燃料タンク
301 燃料移送ポンプ
4 駆動用エンジン
5 主配電盤
501 船内母線
502 マグネットスイッチ
503 ブレーカー
504 遮断器
6 冷凍機
7 中小電動機
8 陸上配電盤
9 非常停止ボタン

図1
図2
図3