(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058410
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】CD47およびCD24を標的とする組換え融合タンパク質、調製物、ならびにそれの使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230418BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230418BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230418BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230418BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230418BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230418BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230418BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230418BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230418BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230418BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230418BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230418BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K47/68
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61K38/17
C07K16/28
C12N15/12
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021195587
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】202111195248.4
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517342693
【氏名又は名称】イミューンオンコ バイオファーマシューティカルズ (シャンハイ) インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジ ティアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン リ
(72)【発明者】
【氏名】ディアンゼ チェン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
4B065AA57X
4B065AA57Y
4B065AA72X
4B065AA72Y
4B065AA83X
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4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
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4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
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4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA41
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4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA14
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4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】CD47、CD24、および/またはFcRを標的とする組換え融合タンパク質、ならびにその調製物およびそれの使用を提供する。
【解決手段】本願は、抗CD24抗体またはそれの抗体断片を含み、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の少なくとも1つのパラトープは、そのパラトープを構成する重鎖または軽鎖のN末端でシグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメインにリンカを介して連結された、組換え融合タンパク質であって、CD47、CD24、およびFcRに同時に結合し得る、組換え融合タンパク質を提供する。本願はまた、組換え融合タンパク質をエンコードする核酸分子、核酸分子を含む発現ベクタ、組換え融合タンパク質を生成するための方法、ならびに組換え融合タンパク質を使用してCD47および/またはCD24の過剰発現と関連付けられる疾患を処置するための方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗CD24抗体またはそれの抗体断片と、CD47結合ペプチドとを備え、
前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片は、重鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖可変領域を有し、前記重鎖可変領域は、配列識別番号7、8、および9に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、重鎖可変CDR1(HV-CDR1)、HV-CDR2、およびHV-CDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、配列識別番号10、11、および12に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、軽鎖可変CDR1(LV-CDR1)、LV-CDR2、およびLV-CDR3を含み、前記重鎖定常領域は、FcR結合親和性を有し、前記重鎖可変領域のC末端に連結され、
前記CD47結合ペプチドは、配列識別番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、シグナル調節タンパク質(SIRP)細胞外ドメインを有し、
前記CD47結合ペプチドは、前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片に連結された、
組換え融合タンパク質。
【請求項2】
前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片の少なくとも1つのパラトープは、前記パラトープを構成する前記重鎖可変領域または前記軽鎖可変領域のN末端にて前記CD47結合ペプチドに連結された、請求項1に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項3】
前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、前記パラトープを構成する前記重鎖可変領域または前記軽鎖可変領域のN末端にて前記CD47結合ペプチドに連結された、請求項2に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項4】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、i)それぞれ配列識別番号2および3、ii)それぞれ配列識別番号2および4、またはiii)それぞれ配列識別番号5および6に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項5】
前記重鎖定常領域は、配列識別番号13の前記アミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項6】
前記軽鎖可変領域の前記C末端に連結された、配列識別番号14の前記アミノ酸配列を有する軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項7】
前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片は、リンカを介して前記CD47結合ペプチドに連結された、請求項1~6のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項8】
前記リンカは、-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3-(配列識別番号15)、-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)2-(配列識別番号16)、または-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)4-(配列識別番号17)である、請求項7に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項9】
i)配列識別番号18の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号20の前記アミノ酸配列を有する抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片、
ii)配列識別番号18の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号22の前記アミノ酸配列を有する抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片、
iii)配列識別番号24の前記アミノ酸配列を有する抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号26の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片、または
iv)配列識別番号28の前記アミノ酸配列を有する抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号30の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片
を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質をエンコードする核酸分子。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸分子を含む発現ベクタ。
【請求項12】
請求項11に記載の発現ベクタを含む宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質と、少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項14】
それを必要とする対象の、CD47および/またはCD24の過剰発現と関連付けられる疾患の処置における使用のための、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記疾患は、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、乳癌、膵臓癌、腎細胞癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃腺癌、および神経膠芽腫からなる群より選択される、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願および参照による引用]
本願は、2021年10月13日に出願された中国特許出願第202111195248.4号の優先権を主張する。
【0002】
前述の出願、およびそれにおいてまたはその出願手続き中に引用されるすべての文献(「出願で引用される文献」)、ならびに本明細書において引用される、または参照されるすべての文献(限定することなく、本明細書において引用されるすべての論文文献、特許、公開特許出願を含む)(「本明細書において引用される文献」)、ならびに本明細書において引用される文献において引用されるまたは参照されるすべての文献は、本明細書において、または本明細書において参照により引用される任意の文献において言及される、任意の製造業者の取扱説明書、説明、製品仕様書、および任意の製品のための製品書と共に、ここで、参照により本明細書に引用され、本発明の実施において採用されることがある。より具体的には、すべての参照される文献は、各個別の文献が具体的にかつ個別に参照により引用されることを示された場合と同じ程度に、参照により引用される。本開示において言及される任意のジェンバンク配列は、本開示の最も早い有効出願日のものであるジェンバンク配列と共に、参照により引用される。
【0003】
本願は、CD47、CD24、および/またはFcRを標的とする組換え融合タンパク質、ならびにその調製物およびそれの使用、特に腫瘍治療におけるそれの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
がん細胞は、1)マクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球、およびナチュラルキラー(NK)細胞による免疫監視を回避するために、Siglec-10受容体を免疫細胞上に結合させる膜CD24タンパク質を高度に発現して免疫活性化を阻害すること、2)マクロファージ表面上のシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)に結合するCD47を高いレベルで発現し、マクロファージによるがん細胞の貪食作用を阻害する阻害シグナルを誘導することを含む、宿主の免疫監視を回避するためのいくつかの機構を発達させてきた。がん細胞は極めて「スマート」であり、その発達した回避機構に依存して迅速に再生することがわかる。したがって、がん細胞を殺傷するための有効な抗がん剤の開発は、これらの機構を標的とすることに焦点を当てることがある。
【0005】
SIRPおよびCD47
シグナル調節タンパク質(SIRP)は、3つのファミリメンバ、SIRPα(CD172a)、SIRPβ(CD172b)、およびSIRPγ(CD172g)を有する膜貫通型の糖タンパク質である。3つのタンパク質は、同様の細胞外領域を含むが、異なる細胞内ドメインを含む。細胞外領域は、3つの免疫グロブリン様ドメイン、1つのIgVの組みおよび2つのIgCの組みのドメインを含む。SIRPα(CD172a)の細胞内ドメインは、シグナル伝達および対応する細胞機能を阻害することができる2つの阻害シグナル伝達領域を含む。SIRPβ(CD172b)およびSIRPγ(CD172g)は、いかなるシグナル伝達ドメインも有しない大変短い細胞内領域を有する。しかしながら、SIRPβ(CD172b)は、アダプタタンパク質、例えばDAP12を介して、シグナル伝達のために機能することがある。SIRPは、マクロファージ(Mφ)、樹状細胞(DC)、およびニューロン上に主に発現される。
【0006】
CD47は、免疫グロブリンスーパーファミリに属する膜貫通糖タンパク質であり、赤血球を含むすべての細胞型の表面上に発現される。CD47のためのリガンドは、インテグリン、トロンボスポンジン-1、およびSIRPを含む。CD47は、SIRPαと相互作用して「自分を食べるな」というシグナルを発することによって、マクロファージによる貪食作用を阻害することができ、したがって、血液細胞などの細胞を、マクロファージによって攻撃されることから防護する。
【0007】
研究により、多くの腫瘍またはがん細胞がCD47を過剰発現し、このことによってマクロファージによるそれらへの貪食作用を阻止することが示されている。そのようながん細胞は、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、乳癌、および膵臓癌の細胞を含む。CD47のSIRPαへの結合をブロックするCD47特異的抗体の注入により、担腫瘍のマウスにおける腫瘍成長を著しく阻害することができると報告されている。ヒト白血病細胞を持つマウスに同じ抗体を注入した場合、腫瘍またはがん細胞は、完全に取り除かれた(Theocharides APAら、2012年)。
【0008】
CD24およびSiglec-10
シアル酸結合免疫グロブリン(Ig)様レクチン(Siglec)は、免疫グロブリン様I型膜貫通タンパク質である。Siglecファミリメンバおよび阻害受容体であるSiglec-10は、マクロファージ、B細胞、NK細胞、および活性化T細胞などの免疫細胞上で広範にわたって発現される。Siglec-10は、5つの細胞外Ig様ドメイン、膜貫通領域、および細胞質尾部を有する。Siglec-10のIgV構造ドメインは、シアル酸の認識と関係する、重要なアルギニン残基を含む(Yinら、2020年)。T細胞上のSiglec-10の発現は、T細胞主要組織適合性複合体クラスI(MHC-I)ペプチド複合体の形成、ならびにT細胞受容体関連キナーゼ、LckおよびZAP-70のリン酸化を阻害することによってT細胞の活性化に干渉することが公知である(Yinら、2020年)。B細胞およびNK細胞上のSiglec-10の発現はそれぞれ、BCR媒介およびNK細胞受容体媒介シグナル伝達を阻害する(Yinら、2020年)。
【0009】
CD24は、発達中のTリンパ球およびほとんどのBリンパ球の表面上に見出されるグリコシル-ホスファチジルイノシトールアンカ型タンパク質である(Yinら、2020年)。卵巣癌、乳癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、胆管癌、膀胱癌、膵臓癌、胃腺癌、および神経膠芽腫を含む様々ながん細胞において高度に発現される(Barkalら、2019年、Liuら、2013年)。腫瘍細胞上のCD24は、免疫細胞上のSiglec-10と相互作用して、免疫を回避し腫瘍細胞を免疫攻撃から保護するために「私を食べるな」というシグナルを生成する。
【0010】
CD24の発現は、膀胱腫瘍の再発と著しく関連付けられる(Liuら、2013年)。卵巣癌を有する患者においては、CD24の発現はまた、全生存期間の独立予測因子であり、腫瘍病期分類ならびに腹膜およびリンパ節転移と相関関係にあることが見出されたのであり、CD24陽性細胞は、増強した増殖、極めて浸潤性の表現型を有し、卵巣癌細胞におけるシスプラチン耐性と関連付けられる(Nakamuraら2017年)。
【0011】
抗CD24モノクローナル抗体は、肺転移を低減し、膀胱癌および三種陰性乳癌のマウスモデルにおいて全生存期間を延長することが報告されている。論文では、抗体によるCD24-Siglec-10相互作用のブロックは、マクロファージ依存の腫瘍成長低減、および担腫瘍マウスの生存期間の延長をもらしたことも明らかにされた(Barkalら、2019年、Chanら、2019年、Overdevestら、2011年)。
【0012】
加えて、先の研究では、抗CD47/CD24二重抗体処置により、脳における骨髄性免疫が有効に活性化されたことが実証された(Wu Hら、2021年)。そして、そのような二重処置は、ヒト卵巣癌細胞に対する貪食作用を増すことが明らかとなっている(Barkalら、2019年)。Barakalらは、いずれかの処置単独と比較して、CD24抗体とセツキシマブとの併用処置が、膵臓腺癌細胞の貪食作用をさらに増強することも見出した。これらすべては、CD24中和を伴う併用療法が相乗的な抗腫瘍効果を生むことができることを示す。
【0013】
FcおよびFcR
断片結晶化可能領域(Fc領域)は、抗体の尾領域であり、抗体のエフェクタ機能、すなわち、どのように抗体が特定の細胞受容体または他の防御タンパク質と結合するかを決定するドメインである。
【0014】
Fc受容体(FcR)は、Bリンパ球、濾胞性樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、およびマスト細胞を含む、ある特定の細胞の表面上に見られるタンパク質である。これらの細胞は、免疫系の防護機能に寄与する。
【0015】
Fc領域は、Fc受容体、および補体系のいくつかのタンパク質と相互作用し、免疫系を活性化し得る。
【0016】
治療用の二重特異性または多特異性融合タンパク質/抗体
単一の腫瘍関連抗原を標的とする抗体は、治療効率を限定することが見出されている。例えば、承認されている抗PD-L1抗体、アベルマブ(BAVENCIO)の全奏効率はわずか33%である。近年、二重または三重特異性融合タンパク質は、開発されており、事前臨床および臨床試験において期待がもてる効果を示している。
【0017】
従来の抗体に追加の結合部分を付着させることは概念的に簡単明瞭であるように思われるが、そのような改変は、抗体の構造を著しく変更させ、互いの親和性および/または有効性を損なうおそれがある(Wang Sら、2021年)。in vivo有効性および薬学的特性を最適化するために、綿密な設計および工学が、主要および付加の結合部分(配列)、標的への平均のとれた親和性、付着の部位(N-またはC-末端、重鎖または軽鎖)、構造的安定性、リンカの長さおよび/または配列の選択に与えられるべきである(Shim H。2020年)。
【0018】
US10,800,821B2は、CD47およびFcRの両方を標的とする、約90kDaの組換え二機能性融合タンパク質を開示しており、当該タンパク質が、HL細胞を持つBalb/cヌードマウスを処置するために使用され、抗腫瘍効果の増強が観察された。
【0019】
本願におけるいかなる文献の引用または特定は、そのような文献が、本開示に対する先行技術として利用可能であることを認めるものではない。
【発明の概要】
【0020】
本願は、抗CD24抗体またはそれの抗体断片と、CD47に特異的に結合するペプチドとを含む組換え融合タンパク質を開示する。そのような組換え融合タンパク質は、CD47結合ペプチドと抗CD24抗体の併用より良好なin vivo抗腫瘍効果を示す。
【0021】
具体的には、本願は、抗CD24抗体、またはCD24を特異的に結合するそれの抗体断片と、CD47に特異的に結合するCD47結合ペプチドとを含み、CD47結合ペプチドは抗CD24抗体またはそれの抗体断片に連結される、組換え融合タンパク質を開示する。抗CD24抗体またはそれの抗体断片は、重鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖可変領域を含み、重鎖可変領域は、配列識別番号7、8、および9に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、重鎖可変CDR1(HV-CDR1)、重鎖可変CDR2(HV-CDR2)、および重鎖可変CDR3(HV-CDR3)を含み、軽鎖可変領域は、配列識別番号10、11、および12に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、軽鎖可変CDR1(LV-CDR1)、軽鎖可変CDR2(LV-CDR2)、および軽鎖可変CDR3(LV-CDR3)を含み、重鎖定常領域は、FcR結合親和性を有し、重鎖可変領域のC末端に連結される。CD47結合ペプチドは、配列識別番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、突然変異されたシグナル調節タンパク質(SIRP)細胞外ドメインを含む。CD47結合ペプチドは、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の重鎖可変領域または軽鎖可変領域のN末端に連結されてもよい。本開示の組換え融合タンパク質は、CD47、CD24、およびFcRを同時に結合することができる。
【0022】
本開示の抗CD24抗体またはそれの抗体断片の重鎖可変領域は、配列識別番号2または5に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、重鎖可変領域は、配列識別番号2または5のアミノ酸配列を含んでもよい。抗CD24抗体またはそれの抗体断片の軽鎖可変領域は、配列識別番号3、4または6に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、軽鎖可変領域は、配列識別番号3、4または6のアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、i)それぞれ配列識別番号2および3、ii)それぞれ配列識別番号2および4、またはiii)それぞれ配列識別番号5および6に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、i)それぞれ配列識別番号2および3、ii)それぞれ配列識別番号2および4、またはiii)それぞれ配列識別番号5および6に記載されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0023】
FcR結合親和性を有する重鎖定常領域は、天然に存在する、もしくは人工的に操作されたヒトIgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4重鎖定常領域、またはそれの機能性断片であってもよい。特定の実施形態において、FcR結合親和性を有する重鎖定常領域は、ヒトIgG1重鎖定常領域、またはそれの機能性断片であってもよい。特定の実施形態において、FcR結合親和性を有する重鎖定常領域は、配列識別番号13のアミノ酸配列を含む。
【0024】
抗CD24抗体またはそれの抗体断片は、軽鎖可変領域のC末端に連結された、ヒトカッパ軽鎖定常領域、またはそれの機能性断片などの軽鎖定常領域を含んでもよい。特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片は、配列識別番号14のアミノ酸配列を含んでもよい。
【0025】
特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の少なくとも1つのパラトープは、パラトープを構成する重鎖可変領域または軽鎖可変領域のN末端にてCD47結合ペプチドに連結される。特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、パラトープを構成する重鎖可変領域または軽鎖可変領域のN末端にてCD47結合ペプチドに連結される。特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、パラトープを構成する重鎖可変領域のN末端にてCD47結合ペプチドに連結される。特定の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、パラトープを構成する軽鎖可変領域のN末端にてCD47結合ペプチドに連結される。
【0026】
抗CD24抗体またはそれの抗体断片は、リンカを介してCD47結合ペプチドに連結されてもよい。リンカは、5~30、10~30、10~20、または15アミノ酸でできているペプチドリンカであってもよい。リンカは、例えば、-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)2-(配列識別番号16)、-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3-(配列識別番号15)、または-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)4-(配列識別番号17)であってもよい。特定の実施形態において、リンカは、-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3-(配列識別番号15)である。
【0027】
本開示の組換え融合タンパク質は、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖断片および抗CD24軽鎖を含んでもよく、ここで、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖断片は、配列識別番号18に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、抗CD24軽鎖は、配列識別番号20または22に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、本開示の組換え融合タンパク質は、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖断片および抗CD24軽鎖を含んでもよく、ここで、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖断片は、配列識別番号18のアミノ酸配列を含んでもよく、抗CD24軽鎖は、配列識別番号20または22のアミノ酸配列を含んでもよい。配列識別番号18、20、および22のアミノ酸配列は、それぞれ、配列識別番号19、21、および23のヌクレオチド配列によってエンコードされてもよい。
【0028】
本開示の組換え融合タンパク質は、抗CD24重鎖およびCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片を含んでもよく、ここで、抗CD24重鎖は、配列識別番号24に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片は、配列識別番号26に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、本開示の組換え融合タンパク質は、抗CD24重鎖およびCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片を含んでもよく、ここで、抗CD24重鎖は、配列識別番号24のアミノ酸配列を含んでもよく、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片は、配列識別番号26のアミノ酸配列を含んでもよい。本開示の組換え融合タンパク質は、抗CD24重鎖およびCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片を含んでもよく、ここで、抗CD24重鎖は、配列識別番号28に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片は、配列識別番号30に対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよい。特定の実施形態において、本開示の組換え融合タンパク質は、抗CD24重鎖およびCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片を含んでもよく、ここで、抗CD24重鎖は、配列識別番号28のアミノ酸配列を含んでもよく、CD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖断片は、配列識別番号30のアミノ酸配列を含んでもよい。配列識別番号24、26、28、および30のアミノ酸配列は、それぞれ、配列識別番号25、27、29、および31のヌクレオチド配列によってエンコードされてもよい。
【0029】
本願はまた、本開示の組換え融合タンパク質をエンコードする核酸分子、ならびにそのような核酸分子を含む発現ベクタ、およびそのような発現ベクタを含む宿主細胞を提供する。本開示の宿主細胞を使用して組換え融合タンパク質を調製するための方法が提供され、当該方法は、(i)宿主細胞において組換え融合タンパク質を発現させるステップ、および(ii)宿主細胞またはその細胞培養物から組換え融合タンパク質を単離するステップを含む。
【0030】
本願は、本開示の組換え融合タンパク質、核酸分子、発現ベクタ、または宿主細胞、および少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい医薬組成物をさらに提供する。特定の実施形態において、医薬組成物は少なくとも1種の薬学的に許容されるアジュバントを含む。
【0031】
本開示の組換え融合タンパク質または医薬組成物は、CD47および/またはCD24の過剰発現と関連付けられる疾患の処置において、または当該疾患を処置するための薬剤の調製において、使用されてもよい。
【0032】
一態様において、本願は、それを必要とする対象の、CD47および/またはCD24の過剰発現と関連付けられる疾患を処置する、または軽減するための方法を提供し、当該方法は、本開示の医薬組成物を治療有効量で対象に投与することを含む。
【0033】
CD47および/またはCD24の過剰発現と関連付けられる疾患は、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、乳癌、膵臓癌、腎細胞癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃腺癌、および神経膠芽腫であってもよい。
【0034】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および例から明らかとなり、これらの詳細な説明および例は限定するものと解釈されるべきではない。本願にわたって引用されるすべての参考文献、ジェンバンクのデータ、特許および公開特許出願の内容は、参照により本明細書において明確に引用される。
【0035】
したがって、出願人が、権利を保有し、あらゆる従来から公知の製造物、プロセス、または方法の放棄をここに開示するような、あらゆる従来から公知の製造物、製造物を作製するプロセス、または製造物を使用する方法を本願内に包含しないことは本願の目的である。本願は、本願の範囲内に、出願人が、権利を保有し、あらゆる先に説明された製造物、製造物を作製するプロセス、または製造物を使用する方法の放棄をここに開示するような、USPTO(米国特許法§112、第1パラグラフ)またはEPO(EPC第83条)の明細書記載要件および実施可能性要件に適合しない、あらゆる製造物、製造物を作製するプロセス、または製造物を使用する方法を包含することを意図しないことがさらに留意される。EPC第53条(c)およびEPC規則第28条(b)および(c)に準拠することが、本願の実施において有利であり得る。本願の系統において、または任意の他の系統において、または任意の第三者の任意の先に出願された出願において、出願人の任意の登録特許の主題であるいかなる実施形態も明示的に放棄するすべての権利が明示的に保有される。本明細書におけるなにものも、誓約として解釈されるべきではない。
【0036】
本開示において、特に特許請求の範囲および/または段落において、「comprises(含む)」、「comprised(含まれる)」および「comprising(含む)」などの用語は、米国特許法においてそれに帰される意味を有し得る、例えば、それらは、「includes(含む)」、「included(含まれる)」、および「including(含む)」などを意味し得ること、ならびに「consisting essentially of(本質的に、からなる)」および「consists essentially of(本質的に、からなる)」などの用語は、米国特許法においてそれに帰される意味を有する、例えば、それらは、明示的に詳述されない要素を可能にするが、先行技術に見出される、または本願の基本的なまたは新規の特徴に影響を及ぼす、要素を除外することが留意される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下の詳細な説明は、例として与えられるが、説明される特定の実施形態のみに本願を限定することは意図されておらず、添付の図面と併せると最も良好に理解することができる。
【0038】
【
図1】本願の組換え融合タンパク質、IMM4701C、IMM4701、IMM4702C、およびIMM4702Hの構造の概略図である。円形の「SIRPαD1」ドメインは、SIRPアルファタンパク質の突然変異された細胞外ドメイン1(SIRPαD1)を表し、配列識別番号1に記載されるアミノ酸配列を有する。IMM4701Cにおいて、突然変異されたSIRPαD1は、リンカペプチドを介して抗CD24抗体IMM47Cの重鎖のN末端に連結されており、ここで、IMM47Cは、マウス重鎖可変領域およびマウス軽鎖可変領域を有するIgG抗体である。リンカは、配列識別番号15のアミノ酸配列を有する。IMM47Cは、配列識別番号2の重鎖可変領域、配列識別番号13の重鎖定常領域、配列識別番号4の軽鎖可変領域、および配列識別番号14の軽鎖定常領域を含む。IMM4701において、突然変異されたSIRPαD1は、リンカペプチドを介して抗CD24抗体IMM47の重鎖のN末端に連結されており、ここで、IMM47は、マウス重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を有するIgG抗体である。IMM47は、配列識別番号2の重鎖可変領域、配列識別番号13の重鎖定常領域、配列識別番号3の軽鎖可変領域、および配列識別番号14の軽鎖定常領域を含む。IMM4702Cにおいて、突然変異されたSIRPαD1は、リンカペプチドを介してIMM47Cの軽鎖のN末端に連結される。IMM4702Hにおいて、突然変異されたSIRPαD1は、リンカペプチドを介してIMM47Hの軽鎖のN末端に連結されており、ここで、IMM47Hは、ヒト化重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を有するIgG抗体である。IMM47Hは、配列識別番号5の重鎖可変領域、配列識別番号13の重鎖定常領域、配列識別番号6の軽鎖可変領域、および配列識別番号14の軽鎖定常領域を含む。
【0039】
【
図2A】IMM4701C、IMM4702C(A)、およびIMM4702Hの、ジャーカットヒトT細胞白血病細胞上のCD47への結合活性を示す。
【
図2B】IMM4701CおよびIMM4701の、ジャーカットヒトT細胞白血病細胞上のCD47への結合活性を示す。陽性対照として使用されるIMM01は、US2021/0024598A1に記載されたのであり、Fc二量体断片に連結された2つの突然変異されたSIRPαD1(配列識別番号1)を含み、その単量体はそれぞれ、配列識別番号33の核酸配列および配列識別番号32のアミノ酸配列を有する。抗CD24抗体IMM47を陰性対照として使用した。
【0040】
【
図3A】IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hの、CD47
+CD24
+MCF-7ヒト乳癌細胞への結合活性を示す。
【
図3B】IMM4701CおよびIMM4701の、CD47
+CD24
+MCF-7ヒト乳癌細胞への結合活性を示す。IMM01およびIMM47Hを陽性対照として使用し、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。
【0041】
【
図4】IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hの、CD47
+CD24
+ REHヒト急性リンパ球性白血病細胞への結合活性を示す。IMM01およびIMM47Hを陽性対照として使用し、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。
【0042】
【
図5】IMM4701、IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hが、SIRPα-FcとMCF-7ヒト乳癌細胞上のCD47との結合をブロックする能力を示す。IMM01を陽性対照として使用し、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。
【0043】
【
図6】IMM4701CおよびIMM4701が、CD47
+CD24
+MCF-7ヒト乳癌細胞に対して抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力を示す。ADCC活性を有するIMM47Cを陽性対照として使用し、hIgG1-Fcを陰性対照として使用した。
【0044】
【
図7】IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hが、CD47
+CD24
+REHヒト急性リンパ球性白血病細胞に対して抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力を示す。ADCC活性を有するIMM47Cを陽性対照として使用し、ADCC活性をほとんど有しないhIgG1-FcおよびIMM01を陰性対照として使用した。
【0045】
【
図8】IMM4701CおよびIMM4701が、ヒトCD24を発現するように操作されたMC38-hCD24マウスの大腸腺癌細胞に対して抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する能力を示す。ADCC活性を有するIMM47を陽性対照として使用し、hIgG1-Fcを陰性対照として使用した。
【0046】
【
図9】CD24
+CD47
+MCF-7ヒト乳癌細胞由来異種移植片を担持するCB17-SCIDマウスにおけるIMM4701Cのin vivo抗腫瘍効果を示す。DPBSをビヒクル対照として使用し、IMM47CおよびIMM01を陽性対照として使用した。
【発明を実施するための形態】
【0047】
主に、腫瘍成長の2つ以上の薬理学的標的を標的とすることへの異なるアプローチは3つある。最も一般的には、患者は2つ以上の薬剤の異なるカクテルを与えられ得る。この選択肢では、可能な薬剤の組み合わせ、および異なる投与量に関して最大限の柔軟性が可能になるものの、(a)服薬錠数の増加、および個別の薬剤のための異なる投薬スケジュールを理由とする、患者の処置に対する不良なアドヒアランスの可能性、(b)薬剤間相互作用を理由とする不適合性の可能性、ならびに(c)薬剤の副作用のリスクの増大が問題である。これらの課題により、治療の有効性が低減し、処置目標の達成を、特にがんなどの慢性疾患の管理において妨げるおそれがある。
【0048】
第2のアプローチは、単回投与形態における薬剤の固定用量併用薬の使用に依拠する。このアプローチは服薬錠数を低減し、患者コンプライアンスの向上をもたらす。固定用量併用薬の不利点は主として、活性成分間の可能な投与量比の選択肢が限定されることであり、このことにより、最小の副作用で最大の効力を得るように個々の患者について適切に調整することがより困難になる。加えて、併用薬における成分の異なる薬物動態学的特性は、薬力学的効果における複雑な時間的ミスマッチを個別の標的においてもたらす可能性があり、それによって全体的な有効性が損なわれる。
【0049】
第3のアプローチは、2つ以上の薬効を単一の化合物において混ぜ合わせる多機能性薬剤の使用である。そのような多機能性分子の設計および妥当性確認はより複雑であり、分子における標的活性の最適比について多くの調査を必要とするが、統合薬物動態学は、分子標的での整合された薬力学的活性をもたらし得る。多機能性分子はまた、他の薬物との固定用量併用薬に適し、それによって3つまたはさらには4つの薬効を単一の錠剤において混ぜ合わせて、有効性のさらなる増大をもたらし得る。
【0050】
本発明者は入念な実験作業を通じて、3つの作用機構、1つは、CD24-Siglec-10媒介免疫抑制作用を解除すること、1つは、SIRP媒介阻害シグナルによるマクロファージに対するブレーキを解除すること、3つ目としてNK細胞および/またはマクロファージによるがん細胞殺傷を刺激することによって、腫瘍を攻撃することができる、新規の組換え多機能性融合タンパク質を発明した。
【0051】
本願の組換え融合タンパク質は、抗CD24抗体またはそれの抗体断片を含み、抗体または抗体断片の少なくとも1つのパラトープが、パラトープを構成する重鎖可変領域または軽鎖可変領域のN末端でシグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメインにリンカを介して連結される。組換えタンパク質は、CD47、CD24、およびFcRに同時に結合でき、i)がん細胞上のCD24と免疫細胞上のSiglec-10との相互作用をブロックし、これにより、CD24-Siglec-10媒介免疫抑制作用を解除し、ii)がん細胞上のCD47とマクロファージ上のSIRPとの相互作用をブロックし、これにより、SIRP媒介阻害シグナルによるマクロファージに対するブレーキを解除し、(iii)NK細胞および/またはマクロファージ上のFcRに抗体のFc部を結合させて、NK細胞および/またはマクロファージによるがん細胞殺傷を刺激する。一実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の1つのパラトープは、パラトープを構成する重鎖可変領域または軽鎖可変領域のN末端にて、シグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメインにリンカを介して連結される。別の実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、パラトープを構成する重鎖可変領域または軽鎖可変領域のN末端にて、シグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメインにリンカを介して連結される。一実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、パラトープを構成する重鎖可変領域のN末端にて、シグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメインにリンカを介して連結される。一実施形態において、抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、パラトープを構成する軽鎖可変領域のN末端にて、シグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメインにリンカを介して連結される。本願の組換え融合タンパク質は、サイズが小さく(150~180kDa)、5~10日の長い半減期を有する。
【0052】
本願の組換え融合タンパク質に含まれる3つの主成分は、シグナル調節タンパク質(SIRP)の細胞外Ig様ドメイン、リンカ、および抗CD24抗体である。当業者であれば、上の3つの成分を選択するための設計の選択肢が多くあることを認識するであろう。非ヒト動物由来のタンパク質またはペプチドの強い免疫原性はアレルギおよびその他の副作用を引き起こすことがあるため、好ましくは、ヒト由来配列がヒトのがん療法において使用される。しかしながら、異なる応用の目的に基づいて、他の動物タンパク質またはペプチドも、必要に応じてヒト化されて本願において使用されてもよい。
【0053】
CD47と結合可能な任意のSIPR(SIRPα、SIRPβ、およびSIRPγ)の任意の細胞外Ig様ドメインが組換え融合タンパク質の構築のために選択されてもよい。一実施形態において、組換え融合タンパク質におけるシグナル調節タンパク質はSIRPαであり、シグナル調節タンパク質の細胞外Ig様ドメインはSIRPαの第1の細胞外Ig様ドメインである(SIRPαD1)。特定の実施形態において、SIRPαD1は、配列識別番号1の位置80に、グリコシル化部位を除去するためのN→A突然変異を含むSIRPαD1変異体である。
【0054】
一実施形態において、組換え融合タンパク質は、配列識別番号1において記載されるアミノ酸配列を有するSIRPαD1を含んでもよい。別の実施形態において、SIRPαD1は、配列識別番号1に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、SIRPαD1は、がん/腫瘍細胞の細胞表面上のCD47に結合して、CD47とマクロファージの細胞表面上のSIRPとの相互作用をブロックすることができる。
【0055】
リンカは主に、SIRPの細胞外Ig様ドメインと、抗CD24抗体の重鎖または軽鎖のN末端との間のスペーサとして機能する。リンカは、ペプチド結合によって連結された、好ましくは5~30アミノ酸の、10~30アミノ酸の、10~20アミノ酸の、または15アミノ酸のペプチド結合によって共に連結されたアミノ酸から作られていてもよく、ここで、アミノ酸は、天然に存在する20アミノ酸から選択される。当業者であれば理解できるように、これらのアミノ酸のうちの1つまたは複数は、グリコシル化または脱グリコシルされてもよい。一実施形態において、5~30アミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、セリン、およびリシンから選択されてもよい。一実施形態において、リンカの大部分は、グリシンおよびアラニンなどの、立体障害のないアミノ酸から作られる。例示的なリンカは、ポリグリシン、特にGlys、poly(Gly-Ala)、およびポリアラニンである。下の実施例に示されるように好適なリンカの一例は、-(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)3-(配列識別番号15)などの、-(Gly-Ser)n-である。
【0056】
リンカは非ペプチドリンカでもよい。例えば、‐NH‐、-(CH2)s-C(O)-などのアルキルリンカ(式中、s=2~20)を使用することができる。これらのアルキルリンカはさらに、例えば、低級アルキル(例えばC1~4)、低級アシル、ハロゲン(例えばCI、Br)、CN、NH2、フェニルなどの、任意の非立体障害基によって置換されてもよい。
【0057】
特定の実施形態において、抗CD24抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む、単離されたモノクローナルIgG抗体であってもよく、ここで、各重鎖は、重鎖可変領域および重鎖定常領域を含んでもよく、各軽鎖は、軽鎖可変領域および任意選択で軽鎖定常領域を含んでもよい。抗CD24抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、i)それぞれ配列識別番号2および3、ii)それぞれ配列識別番号2および4、またはiii)それぞれ配列識別番号5および6に記載されるアミノ酸配列を含んでもよい。重鎖定常領域は、配列識別番号13のアミノ酸配列を含んでもよい。軽鎖定常領域は、配列識別番号14のアミノ酸配列を含んでもよい。抗CD24抗体のFab部分(またはパラトープ)は、がん/腫瘍細胞の細胞表面上のCD24に結合して、CD24と、T細胞などの免疫細胞の細胞表面上のSiglec-10との相互作用をブロックすることができ、これにより、CD24-Siglec-10免疫抑制作用を解除し、その一方で、抗CD24抗体のFc部は、NK細胞またはマクロファージの細胞表面上のFcRに結合して、NK細胞またはマクロファージによるがん細胞殺傷を刺激し得る。特定の実施形態において、重鎖可変領域は、配列識別番号2または5に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、重鎖定常領域は、配列識別番号13に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、抗CD24抗体は、がん/腫瘍細胞上のCD24に結合し、CD24と、T細胞などの免疫細胞上のSiglec-10との相互作用をブロックすることができ、また、NK細胞またはマクロファージ上のFcRに結合し、これにより、NK細胞またはマクロファージを活性化してがん細胞を殺傷することができる。特定の実施形態において、軽鎖可変領域は、配列識別番号3、4、または6に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含んでもよく、ここで、抗CD24抗体は、がん/腫瘍細胞上のCD24に結合し、CD24と、T細胞などの免疫細胞上のSiglec-10との相互作用をブロックすることができる。
【0058】
本明細書において言及される「抗体」という用語は、例えばIgG、IgA、IgD、IgE、およびIgMの全抗体、およびそれらの任意の抗原結合断片(すなわち「抗原結合部分」)または単鎖を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメイン、CLで構成される。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分することができ、その領域にはフレームワーク領域(FR)と称される、より保存的な領域が点在する。各VHおよびVLは、3つのCDRおよび4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端まで、以下の順序、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0059】
本明細書における「抗体断片」という用語は、CD24に特異的に結合する能力、および任意選択でFc受容体を結合する能力を保持する、本開示の抗CD24抗体の断片の部分を指す。
【0060】
本開示の抗体またはそれの抗体断片における重鎖可変領域CDRおよび軽鎖可変領域CDRは、IMGTナンバリングシステムによって定義されている。しかしながら、当技術分野で周知であるように、CDR領域は、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいた、Chothia、Kabat、AbM、またはContactナンバリングシステム/法などの他のシステムによって決定することもできる。
【0061】
本明細書で用いられる「マウス抗体」という用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図されている。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もマウス生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のマウス抗体は、マウス生殖系列免疫グロブリン配列によってエンコードされていないアミノ酸残基(例えば、in vitroのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoの体細胞突然変異によって導入される突然変異)を含むことができる。しかしながら、本明細書で用いられる「マウス抗体」という用語は、別の哺乳類種の生殖系列に由来するCDR配列がマウスフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されていない。
【0062】
本明細書で用いられる「ヒト化抗体」という用語は、ヒトにおいて天然に産生される抗体バリアントとの類似性を高めるようにそのタンパク質配列が改変されている非ヒト種由来の抗体を指す。
【0063】
「抗体依存性細胞傷害」、「抗体依存性細胞媒介細胞傷害」、または「ADCC」という用語は、細胞媒介性の免疫防御機構を指し、これにより、抗CD24抗体などの抗体およびSIRPα含有分子によって結合されている標的細胞を免疫系のエフェクタ細胞が活発に溶解する。
【0064】
「対象」という用語は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、および爬虫類などの、哺乳類および非哺乳類を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどの哺乳類が好ましい。
【0065】
本明細書で用いられる「配列同一性」は、配列間で最大パーセント配列同一性を達成するために、配列をアラインメントさせ、必要であればギャップを導入した後、参照配列におけるヌクレオチド/アミノ酸残基と同一である、主題の配列におけるヌクレオチド/アミノ酸残基のパーセントを指す。2つ以上のアミノ酸または核酸配列間のパーセント配列同一性を決定することを目的とした、ペアワイズおよび多重配列アラインメントは、当業者に公知の様々なやり方で、例えば、ClustalOmega、T-coffee、Kalign、およびMAFFTなどの公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。そのようなソフトウェアを使用する際は、例えばギャップペナルティおよび拡張ペナルティに関する、デフォルトのパラメータが使用されることが好ましい。
【0066】
また、本願は、組換え融合タンパク質をエンコードするポリヌクレオチド分子、および組換え二機能性融合タンパク質を発現する発現ベクタを提供する。ベクタの例としては、プラスミド、ウイルスベクタ、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、形質転換可能人工染色体(TAC)、哺乳類人工染色体(MAC)、およびヒト人工エピソーム染色体(HAEC)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
本願は、上の発現ベクタを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、発現ベクタを用いて形質転換またはトランスフェクトされてもよい。好適な宿主細胞は、大腸菌、酵母および他の真核生物を含む。好ましくは、大腸菌、酵母、または哺乳類の細胞株(COSまたはCHOなど)が使用される。
【0068】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される賦形剤または薬学的に許容されるアジュバントと一緒に製剤化された本願の組換え融合タンパク質を含む医薬組成物を提供する。組成物は、別の抗体または薬剤などの、1つまたは複数の追加の薬学的に活性な成分を任意選択で含有してもよい。本願の医薬組成物はまた、例えば、別の免疫刺激剤、抗がん剤、抗ウイルス剤、またはワクチンとの併用療法において投与することができる。
【0069】
医薬組成物は任意の数の賦形剤を含むことができる。使用できる賦形剤は、担体、界面活性剤、増粘または乳化剤、固形結合剤、分散または懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、保存料、等張剤、およびそれらの組み合わせを含む。好適な賦形剤の選択および使用は、Gennaro,ed.、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、20th Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 2003年)において教示されており、その開示は参照により本明細書に引用される。
【0070】
医薬組成物における主要なビヒクルまたは担体は、本質的に水性でも非水性でもよい。例えば、好適なビヒクルまたは担体は、注射において一般的な他の物質が場合によっては添加されている、注射、生理食塩水、または人工脳脊髄液のための水であってもよい。例えば、ビヒクルまたは担体は、中性緩衝生理食塩水、または血清アルブミンと混合された生理食塩水であってもよい。他の例示的な医薬組成物は、ソルビトールまたはそれの好適な置換をさらに含み得るTris緩衝液、または酢酸塩緩衝液を含む。本願の一実施形態において、組成物は、凍結乾燥ケーキまたは水溶液の形態で、所望の純度を有する選択された組成物を任意選択の製剤化剤(Remington's Pharmaceutical Sciences,supra)と混合することによって、保管のために調製されてもよい。さらに、治療用組成物は、スクロースなどの適切な賦形剤を使用して、凍結乾燥物として製剤化されてもよい。
【0071】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または上皮投与(例えば、注射または点滴によって)に好適である。投与の経路に応じて、活性分子は、活性成分を失活させる場合がある酸の作用および他の天然条件から保護するための材料でコーティングすることができる。本明細書で用いられる「非経口投与」という語句は、経腸および局所投与以外の通常注射による投与様式を意味し、限定することなく、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内の注射ならびに点滴を含む。代替的には、本願の抗体は、例えば、鼻腔内に、経口的に、経膣的に、直腸に、舌下で、または局所的に、局所、上皮、または粘膜投与経路などの、非経口ではない経路を介して投与することができる。
【0072】
医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液の形態であってもよい。医薬組成物はまた、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬物濃度に好適な他の規則構造において製剤化され得る。
【0073】
単回投与形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分量は、処置される対象および特定の投与様式に依存して異なることになり、一般に、治療効果を生む組成物量となる。一般に、この量は、100パーセント中、薬学的に許容される担体と組み合わせて約0.01%から約99%までの活性成分の範囲となる。
【0074】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)が得られるように調整される。例えば、分割用量を経時的に数回投与することができる、または治療状況の切迫した要件に従って用量を低減させるか、または増加させることができる。投与を容易にし、投与量を統一するために、投与単位形態で非経口組成物を製剤化することは特に有利である。本明細書で用いられる投与単位形態は、処置される対象に対する単位投与量として好適な、物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬品担体と共同して、所望の治療効果を生むように計算された活性化合物の所定の量を含有する。代替的には、融合タンパク質は、徐放性製剤として投与することができ、その場合、必要とされる投与頻度はより少ない。
【0075】
融合タンパク質の投与に関して、投与量は、宿主の体重の約0.0001~100mg/kgまでの範囲である。例示的な処置体制は、週2回の投与を必要とする。
【0076】
本願の組換え融合タンパク質の「治療効果のある投与量」は、好ましくは、疾患症状の重症度の低下、疾患症状がない期間の頻度および長さの増大、または疾患の苦痛による機能障害または能力障害の予防をもたらす。例えば、担腫瘍の対象の処置に関して、「治療効果のある投与量」は、好ましくは、無処置の対象と比べて、少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約80%、なおより好ましくは少なくとも約99%、腫瘍成長を阻害する。本願の組換え融合タンパク質の治療効果のある量は、典型的にはヒトであるか、もしくは別の哺乳類であり得る対象の、腫瘍サイズを低減することができるか、そうでない場合は症状を寛解することができる。
【0077】
医薬組成物は、植込錠、経皮パッチ、マイクロカプセル化送達システムを含む、放出制御製剤であり得る。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの、生分解性、生体適合性ポリマを使用することができる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J.R.Robinson,ed.、Marcel Dekker、Inc.、New York、1978年を参照されたい。
【0078】
治療用組成物は、(1)無針皮下注射装置(例えば、米国特許第5,399,163号明細書、同第5,383,851号明細書、同第5,312,335号明細書、同第5,064,413号明細書、同第4,941,880号明細書、同第4,790,824号明細書、および同第4,596,556号明細書)、(2)マイクロ注入ポンプ(米国特許第4,487,603号明細書)、(3)経皮性装置(米国特許第4,486,194号明細書)、(4)注入機器(米国特許第4,447,233号明細書および同第4,447,224号明細書)ならびに(5)浸透圧装置(米国特許第4,439,196号明細書および同第4,475,196号明細書)などの医療用装置を介して投与することができ、これらの開示は、参照により本明細書に引用される。
【0079】
特定の実施形態において、本願の融合タンパク質は、in vivoでの適切な分布を確実にするように製剤化することができる。例えば、本願の治療用融合タンパク質が確実に血液脳関門を超えるために、治療用融合タンパク質をリポソームに入れて製剤化することができ、リポソームは、特定の細胞または器官への選択的輸送を増強するための標的化部分をさらに含んでもよい。例えば、米国特許第4,522,811号明細書、同第5,374,548号明細書、同第5,416,016号明細書、および同第5,399,331号明細書を参照されたい。
【0080】
本願の組換え融合タンパク質エンコードする核酸分子またはそれの誘導体が対象に直接導入されるin vivo遺伝子療法も考えられる。例えば、本願の組換え融合タンパク質をエンコードする核酸配列が、アデノ随伴ウイルスベクタなどの適切な送達ベクタを用いて、または用いず、核酸コンストラクトの局所注射によって標的細胞に導入される。代替的なウイルスベクタは、レトロウイルス、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、乳頭腫ウイルスベクタを含むが、これらに限定されない。ウイルスベクタの物理的移入は、所望の核酸コンストラクト、または所望の核酸配列を含む他の適切な送達ベクタの局所注射、リポソーム媒介移入、直接注射(ネイキッドDNA)、または微粒子ボンバードメント(遺伝子ガン)によってin vivoで達成されてもよい。
【0081】
本開示の組成物は、単独で、または、その治療効果を強化するために、もしくは潜在的な副作用を低減するために、他の治療剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0082】
本願の別の目的は、上の組換え融合タンパク質、および、それを含む医薬組成物を調製するための方法を提供することである。一実施形態において、方法は、(1)ポリヌクレオチド分子をエンコードするタンパク質を提供すること、(2)(1)のポリヌクレオチド分子を含む発現ベクタを構築すること、(3)(2)の発現ベクタで好適な宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換し、宿主細胞を培養してタンパク質を発現させること、(4)タンパク質を精製することを含む。調製は、当業者によって、周知の技術を用いて実行されてもよい。
【0083】
本願の別の目的は、前述の医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者または対象に投与することを含む、本願の医薬組成物を使用してがんを処置する方法を提供することである。一実施形態において、医薬組成物を使用して、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、乳癌、膵臓癌、腎細胞癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃腺癌、および神経膠芽腫を含むが、これらに限定されないCD47および/またはCD24過剰発現腫瘍またはがんを処置する。
【0084】
一実施形態において、CD47および/またはCD24の過剰発現に関連する疾患は、クローン病、アレルギ性喘息、関節リウマチを含むが、これらに限定されない。
【0085】
以下では非限定的な例を用いて、本願をさらに説明する。
【実施例0086】
構造が
図1に示される本開示の例示的な組換えタンパク質および抗CD24抗体を、さらに詳細に以下に説明する。
【0087】
IMM47Cは、配列識別番号2の重鎖可変領域、配列識別番号13の重鎖定常領域、配列識別番号4の軽鎖可変領域、および配列識別番号14の軽鎖定常領域を含むIgG抗体である。
【0088】
IMM47は、配列識別番号2の重鎖可変領域、配列識別番号13の重鎖定常領域、配列識別番号3の軽鎖可変領域、および配列識別番号14の軽鎖定常領域を含むIgG抗体である。
【0089】
IMM47Hは、配列識別番号5の重鎖可変領域、配列識別番号13の重鎖定常領域、配列識別番号6の軽鎖可変領域、および配列識別番号14の軽鎖定常領域を含むIgG抗体である。
【0090】
IMM4701Cは、リンカ(配列識別番号15)を介してIMM47Cの各重鎖のN末端に連結された、突然変異されたSIRPαD1(配列識別番号1)を含む。
【0091】
IMM4701は、リンカ(配列識別番号15)を介してIMM47の各重鎖のN末端に連結された、突然変異されたSIRPαD1(配列識別番号1)を含む。
【0092】
IMM4702Cは、リンカ(配列識別番号15)を介してIMM47Cの各軽鎖のN末端に連結された、突然変異されたSIRPαD1(配列識別番号1)を含む。
【0093】
IMM4702Hは、リンカ(配列識別番号15)を介してIMM47Hの各軽鎖のN末端に連結された、突然変異されたSIRPαD1(配列識別番号1)を含む。
【0094】
US2021/0024598A1に記載されるようなIMM01は、Fc二量体に連結された2つの突然変異されたSIRPαD1(配列識別番号1)を含み、その単量体は、配列識別番号33に記載される核酸配列および配列識別番号32に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0095】
実施例1
ベクタ構築およびタンパク質発現
IMM4701、IMM4701C、IMM4702C、IMM4702H、IMM47、IMM47C、およびIMM47Hの構造を
図1に示し、組換え融合タンパク質の完全長コード配列を人工的に設計した。
【0096】
具体的には、IMM4701Cの長鎖に関して、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列識別番号34)を、SIRPαD1-リンカ-抗CD24重鎖のコード配列(配列識別番号19)の5'末端に加え、コザック配列(配列識別番号35)を、シグナルペプチド配列の5'末端に加えた。最後に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。IMM4701Cの短鎖に関して、同じシグナル配列、およびコザック配列を、抗CD24軽鎖コード配列(配列識別番号21)の5'末端に加え、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。配列はGenScriptによって合成され、それぞれpMac-HおよびpMac-Lにクローニングされた。
【0097】
IMM4701の長鎖に関して、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列識別番号34)を、SIRPαD1-リンカ-抗CD24重鎖のコード配列(配列識別番号19)の5'末端に加え、コザック配列(配列識別番号35)を、シグナルペプチド配列の5'末端に加えた。最後に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。IMM4701の短鎖に関して、同じシグナル配列、およびコザック配列を、抗CD24軽鎖コード配列(配列識別番号23)の5'末端に加え、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。配列はGenScriptによって合成され、それぞれpMac-HおよびpMac-Lにクローニングされた。
【0098】
IMM4702Cの長鎖に関して、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列識別番号34)を、抗CD24重鎖のコード配列(配列識別番号25)の5'末端に加え、コザック配列(配列識別番号35)を、シグナルペプチド配列の5'末端に加えた。最後に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。IMM4702Cの短鎖に関して、同じシグナル配列、およびコザック配列を、SIRPαD1-リンカ-抗CD24軽鎖コード配列(配列識別番号27)の5'末端に加え、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。配列はGenScriptによって合成され、それぞれpMac-HおよびpMac-Lにクローニングされた。
【0099】
IMM4702Hの長鎖に関して、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列識別番号34)を、抗CD24重鎖のコード配列(配列識別番号29)の5'末端に加え、コザック配列(配列識別番号35)を、シグナルペプチド配列の5'末端に加えた。最後に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。IMM4702Hの短鎖に関して、同じシグナル配列、およびコザック配列を、SIRPαD1-リンカ-抗CD24軽鎖コード配列(配列識別番号31)の5'末端に加え、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ、得られた配列の5'および3'末端に加えた。配列はGenScriptによって合成され、それぞれpMac-HおよびpMac-Lにクローニングされた。
【0100】
本開示のこれらの組換え融合タンパク質、および抗CD24抗体を、CHO-S細胞を使用して発現させた。簡潔には、一過性トランスフェクションの1日前に、6mMグルタミンを含有するTransFx-CTMCHO一過性トランスフェクション培地(Hyclone)に、1×106cells/mlの密度でCHO-S細胞を播種した。1:1の質量比および1μg/mlの全DNA量の重/長鎖および軽/短鎖発現ベクタを、使用されたTransFx-CTMCHO一過性トランスフェクション培地の体積の1/20の体積を有するOPTI-MEM培地(Gibco)に加えた。1mg/mlのPEI(ポリエチレンイミン、MW40,000、polysciences)を、使用されたTransFx-CTMCHO一過性トランスフェクション培地の体積の1/20の体積を有するOPTI-MEM培地(Gibco)に加えた。PEI希釈液をゆっくりと加えて混合し、希釈したDNAと共に4:1のPEI:DNA質量比で、室温にて20分間インキュベートした。次いで、DNA/PEI混合物を細胞培養物に加え、110rpmで振盪させながら、37℃で5%CO2の細胞培養インキュベータ中で細胞をインキュベートした。2日後、トランスフェクションエンハンサ(1mM酪酸ナトリウム、0.25%V/V DMSO)を加え、温度を33℃に低下させた。細胞生存率がおよそ50%に減少した際、3000rpmで5分間遠心分離することによってバイオリアクタから細胞培養物上清を回収し、プロテインAクロマトグラフィを用いたタンパク質精製に供した。
【0101】
実施例2
ジャーカット細胞上のCD47に結合された例示的な組換え融合タンパク質
1×106/mlの細胞密度で100μlのジャーカット細胞(CD47を天然に発現している)を、100μlの連続希釈したIMM4701、IMM4701C、IMM4702C、IMM4702H、IMM01、およびIMM47(3倍希釈、30μg/mlで開始する)それぞれと共に、4℃で1時間インキュベートした。細胞を、冷たいPBSで2回洗浄し、次いで、ヒトIgG-Fc(Cat#F9512、Sigma)に対する100μlのFITC結合二次抗体と共に45分間インキュベートした。細胞を、2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁させた。次いで、細胞を、フローサイトメータ(Merck Millipore、Guava(登録商標)easyCyte 5HT)を用いてFACS分析に供した。
【0102】
図2Aおよび
図2Bに示すように、ジャーカット細胞上のCD47に結合されたIMM4701、IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hは、単一特異性のCD47結合分子IMM01よりわずかに劣る活性を有する。
【0103】
実施例3
CD24+CD47+MCF-7細胞に結合された例示的な組換え融合タンパク質
1×106/mlの細胞密度で100μlのCD24+CD47+MCF-7細胞を、100μlの連続希釈したIMM4701、IMM4701C、IMM4702C、IMM4702H、IMM01、およびIMM47H(3倍希釈、30μg/mlで開始する)それぞれと共に、4℃で1時間インキュベートし、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。細胞を、冷たいPBSで2回洗浄し、次いで、ヒトIgG-Fc(Cat#F9512、Sigma)に対する100μlのFITC結合二次抗体と共に45分間インキュベートした。細胞を、2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁させた。次いで、細胞を、フローサイトメータ(Merck Millipore、Guava(登録商標)easyCyte 5HT)を用いてFACS分析に供した。
【0104】
図3Aおよび
図3Bに示すように、CD24
+CD47
+MCF-7細胞に対するIMM4701、IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hの結合能力は、抗CD24抗体IMM47Hの結合能力と同等であり、IMM01の結合能力よりわずかに高い。
【0105】
実施例4
CD24+CD47+REH細胞に結合された例示的な組換え融合タンパク質
1×106/mlの細胞密度で100μlのCD24+CD47+REH細胞を、100μlの連続希釈したIMM4701C、IMM4702C、IMM4702H、IMM01、およびIMM47H(3倍希釈、30μg/mlで開始する)それぞれと共に、4℃で1時間インキュベートし、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。細胞を、冷たいPBSで2回洗浄し、次いで、ヒトIgG-Fc(Cat#F9512、Sigma)に対する100μlのFITC結合二次抗体と共に45分間インキュベートした。細胞を、2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁させた。次いで、細胞を、フローサイトメータ(Merck Millipore、Guava(登録商標)easyCyte 5HT)を用いてFACS分析に供した。
【0106】
図4に示すように、CD24
+CD47
+REH細胞に対するIMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hの結合能力は、IMM47Hの結合能力と同等であり、IMM01の結合能力よりわずかにより良好である。
【0107】
実施例5
例示的な組換え融合タンパク質により阻害されるCD47-SIRPα相互作用
3μg/mlで50μlのSIRPα-mFc(マウスIgG1 Fcと結合された野性型ヒトSIRPα、配列識別番号36)を、50μlの連続希釈したIMM4701、IMM4701C、IMM4702C、IMM4702H、およびIMM01(3倍希釈、30μg/mlで開始する)それぞれと共に混合し、hIgG1-Fcを陰性対照として使用した。得られた混合物を、96ウェルプレートの、それぞれ1×106/mlのCD47+CD24+MCF-7細胞を50μl含有するウェルに加え、プレートを4℃で45分間インキュベートした。細胞を、PBSで洗浄し、マウスIgG-Fc(Cat#405307、Biolegend)に対する100μlのPE結合二次抗体と共に45分間インキュベートした。細胞を、2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁させ、FACS分析に供した。
【0108】
図5に示すように、CD24およびCD47の両方に対する二重特異性分子、すなわちIMM4701、IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702Hは、CD24
+CD47
+細胞と共にインキュベートされた場合、SIRPα-CD47相互作用に対してIMM01より高い阻害効果を示した。
【0109】
実施例6
例示的組換え融合タンパク質により誘導される、CD24+CD47+MCF-7細胞に対する高い抗体依存性細胞媒介細胞傷害性(ADCC)
1mMのCFSE(Cat#21888-25mg、Sigma)を1:500で希釈し、MCF-7細胞を標識するために使用した。
【0110】
標的細胞として、6×105/mlで50μlのCFSE標識MCF-7細胞と、エフェクタ細胞として、FcγRIIIa(158V)を安定的に発現する、6×105/mlで100μlのNK92MI細胞とを、2:1のエフェクタ:標的比で混合した。混合細胞を、50μlの連続希釈したIMM47C、IMM4701、およびIMM4701C(3倍希釈、1000ng/mlで開始する)それぞれと共に、5%CO2下、37℃で4時間培養し、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。次いで、細胞培養物を、5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(PI)(Cat#P4170、Sigma)に加え、次いでPIシグナルのためにFACS分析に供した。以下の式、
%溶解=(%IMM47C、IMM4701、またはIMM4701Cで処置したPI陽性標的細胞-%陰性対照で処置したPI陽性標的細胞)/(100-%陰性対照で処置したPI陽性標的細胞)×100
に基づいて、ADCCによって引き起こされた細胞溶解の百分率を算出した。
【0111】
図6によれば、IMM4701およびIMM4701Cは、CD24
+CD47
+MCF-7細胞に対して、IMM47Cより高いADCCを誘導した。
【0112】
実施例7
例示的組換え融合タンパク質により誘導される、CD24+CD47+REH細胞に対する高い抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)
1mMのCFSE(Cat#21888-25mg、Sigma)を1:500で希釈し、REH細胞を標識するために使用した。
【0113】
標的細胞として、6×105/mlで50μlのCFSE標識REH細胞と、エフェクタ細胞として、FcγRIIIa(158V)を安定的に発現する、6×105/mlで100μlのNK92MI細胞とを、2:1のエフェクタ:標的比で混合した。混合細胞を、50μlの連続希釈したIMM47C、IMM4701C、IMM4702C、およびIMM4702H(3倍希釈、1000ng/mlで開始する)それぞれと共に、5%CO2下、37℃で4時間培養し、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。次いで、細胞培養物を、5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(PI)(Cat#P4170、Sigma)に加え、次いでPIシグナルのためにFACS分析に供した。以下の式、
%溶解=(%IMM47C、IMM4701C、IMM4702C、またはIMM4702Hで処置したPI陽性標的細胞-%陰性対照で処置したPI陽性標的細胞)/(100-%陰性対照で処置したPI陽性標的細胞)×100
に基づいて、ADCCによって引き起こされた細胞溶解の百分率を算出した。
【0114】
図7によれば、IMM4701Cは、CD24
+CD47
+REH細胞に対して、IMM47Cより高いADCCを誘導した。
【0115】
実施例8。
例示的組換え融合タンパク質により誘導される、CD24+MC38-hCD24細胞に対する高い抗体依存性細胞媒介細胞傷害(ADCC)
1mMのCFSE(Cat#21888-25mg、Sigma)を1:500で希釈し、MC38-hCD24細胞を標識するために使用した。
【0116】
標的細胞として、6×105/mlで50μlのCFSE標識MC38-hCD24細胞と、エフェクタ細胞として、FcγRIIIa(158V)を安定的に発現する、6×105/mlで100μlのNK92MI細胞とを、2:1のエフェクタ:標的比で混合した。混合細胞を、50μlの連続希釈したIMM47、IMM4701C、およびIMM4701(3倍希釈、1000ng/mlで開始する)それぞれと共に、5%CO2下、37℃で4時間培養し、hIgG-Fcを陰性対照として使用した。次いで、細胞培養物を、5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(PI)(Cat#P4170、Sigma)に加え、次いでPIシグナルのためにFACS分析に供した。以下の式、
%溶解=(%IMM4701C、IMM4701で処置したPI陽性標的細胞-%陰性対照で処置したPI陽性標的細胞)/(100-%陰性対照で処置したPI陽性標的細胞)×100
に基づいて、ADCCによって引き起こされた細胞溶解の百分率を算出した。
【0117】
図8によれば、IMM4701CおよびIMM4701は、ヒトCD24発現MC38-hCD24細胞に対して、抗CD24抗体IMM47より高いADCCを誘導した。
【0118】
実施例9。
例示的な組換え融合タンパク質により示される強力な抗腫瘍活性
40匹の6~8週令のSCIDマウスそれぞれの左背中に、0.36mgのベータ-エストラジオール遅延放出錠を埋め込み、3日後にマウス1匹当たり1×107cellのMCF-7ヒト乳癌細胞を右の側腹部に皮下注射した。腫瘍体積が100~150mm3に達した際、マウスを1つの群に8匹ずつ、5つの群にランダムに分け、この日を0日目とした。その日から、マウスそれぞれに、PBS、IMM47C(2.5mg/kg)、IMM01(2.5mg/kg)、IMM4701C(3mg/kg)、およびIMM01+IMM47C(2.5mg/kg+2.5mg/kg)の腹腔内注射を週2回、4週間与えた。4週目の終わりに投与を停止し、PBS群における平均腫瘍体積が3000mm3に達して実験を終了するまでマウスを観察した。
腫瘍サイズおよび体重を3~4日毎に測定した。
【0119】
腫瘍体積(V)を(長さ×幅2)/2として算出した。式:TGI(%)=(1-投与群における腫瘍体積変化分/ビヒクル対照群における腫瘍体積変化分)×100%によって腫瘍成長阻害率(TGI)を算出した。
【0120】
【0121】
28日目に、群1(PBS)におけるマウスの平均腫瘍体積は646.87mm3であった。ビヒクル対照群と比較して、IMM47CおよびIMM01処置の両方は、腫瘍成長率を減速したが、有意な腫瘍抑制効果は示さなかった。28日目に、これらの2つの群はそれぞれ、463.26mm3(T/C=71.60%、TGI=37.30%、p=0.009)、および562.24 mm3(T/C=86.92%、TGI=17.19%、p=0.375)の平均腫瘍サイズを有した。IMM4701CおよびIMM47C+IMM01の投与は、有意な腫瘍抑制効果を示し、28日目に、2つの群におけるマウスはそれぞれ、44.61mm3(T/C=6.89%、TGI=122.32%、p=0.001)、および192.63mm3(T/C=29.81%、TGI=92.22%、p=0.001)の腫瘍サイズをそれぞれ有した。
【0122】
表1および
図9から、IMM4701Cは効率的かつ効果的なやり方で機能し、より大きいin vivo抗腫瘍効果を生じ、全体的な腫瘍阻害効果は、IMM47CとIMM01との併用処置よりさらに良好であったことを見ることができる。
【表2】
【0123】
本願では、1つまたは複数の実施形態に関連して上に説明してきたが、本願はそれらの実施形態に限定されるものではないことが理解されるべきであり、説明はすべての代替、改変、および均等物を包含することを意図するものであり、それらは添付した請求項の趣旨および範囲内に含まれる場合がある。本明細書において言及されるすべての参考文献は、その全体が参照によりさらに引用される。
参考文献1.Barkal,A.A.、Brewer,R.E.、Markovic,M.、Kowarsky,M.、Barkal,S.A.、Zaro,B.W.、Krishnan,V.、Hatakeyama,J.、Dorigo,O.、Barkal,L.J.、ら(2019年)。CD24 signalling through macrophage Siglec-10 is a target for cancer immunotherapy.Nature 572(7769)、392-3962.Chan,S.H.、Tsai,K.W.、Chiu,S.Y.、Kuo,W.H.、Chen,H.Y.、Jiang,S.S.、Chang,K.J.、Hung,W.C.、およびWang,L.H.(2019年)。Identification of the Novel Role of CD24 as an Oncogenesis Regulator and Therapeutic Target for Triple-Negative Breast Cancer.Mol Cancer Ther 18(1)、147-1613.Wang S、Chen K、Lei Q、Ma P、Yuan AQ、Zhao Y、Jiang Y、Fang H、Xing S、Fang Y、Jiang N、Miao H、Zhang M、Sun S、Yu Z、Tao W、Zhu Q、Nie Y、Li N。The state of the art of bispecific antibodies for treating human malignancies.EMBO Mol Med.2021年Aug24:e14291.doi:10.15252/emmm.2021142914.Yin,S.S.、およびGao,F.H.(2020年)。Molecular Mechanism of Tumor Cell Immune Escape Mediated by CD24/Siglec-10.Front Immunol 11、13245.Gardai SJ、McPhillips KA、Frasch SC、Janssen WJ、Starefeldt A、Murphy-Ullrich JE、Bratton DL、Oldenborg PA、Michalak M、Henson PM。Cell-surface calreticulin initiates clearance of viable or apoptotic cells through trans-activation of LRP on the phagocyte.Cell.2005年;123:321-3346.Gennaro、ed.、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、20th Ed.、Lippincott Williams&Wilkins 2003年7.J.R.Robinson、ed.、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978年8.Lee WY、Weber DA、Laur O、Severson EA、McCall I、Jen RP、Chin AC、Wu T、Gernert KM、Parkos CA..Novel Structural Determinants on SIRPa that Mediate Binding to CD47.J Immunol.2007年、179:7741-77509.Liu,C.、Zheng,S.、Shen,H.、Xu,K.、Chen,J.、Li,H.、Xu,Y.、Xu,A.、Chen,B.、Kaku,H.、ら(2013年)。Clinical significance of CD24 as a predictor of bladder cancer recurrence.Oncol Lett 6(1)、96-10010.
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前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片の少なくとも1つのパラトープは、前記パラトープを構成する前記重鎖可変領域または前記軽鎖可変領域のN末端にて前記CD47結合ペプチドに連結された、請求項1に記載の組換え融合タンパク質。
前記抗CD24抗体またはそれの抗体断片の各パラトープは、前記パラトープを構成する前記重鎖可変領域または前記軽鎖可変領域のN末端にて前記CD47結合ペプチドに連結された、請求項2に記載の組換え融合タンパク質。
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、i)それぞれ配列識別番号2および3、ii)それぞれ配列識別番号2および4、またはiii)それぞれ配列識別番号5および6に記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
前記軽鎖可変領域の前記C末端に連結された、配列識別番号14の前記アミノ酸配列を有する軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
i)配列識別番号18の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号20の前記アミノ酸配列を有する抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片、
ii)配列識別番号18の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号22の前記アミノ酸配列を有する抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片、
iii)配列識別番号24の前記アミノ酸配列を有する抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号26の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片、または
iv)配列識別番号28の前記アミノ酸配列を有する抗CD24重鎖可変領域-重鎖定常領域断片、および配列識別番号30の前記アミノ酸配列を有するCD47結合ペプチド-リンカ-抗CD24軽鎖可変領域-軽鎖定常領域断片
を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の組換え融合タンパク質。
前記疾患は、急性骨髄球性白血病(AML)、慢性骨髄球性白血病(CML)、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫(MM)、膀胱癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、大腸癌、乳癌、膵臓癌、腎細胞癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、胆管癌、胃腺癌、および神経膠芽腫からなる群より選択される、請求項14に記載の使用のための医薬組成物。