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▶ イミューンオンコ バイオファーマシューティカルズ (シャンハイ) カンパニー リミテッドの特許一覧

特開2023-58416CD24に結合する抗体、その調製および使用
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  • 特開-CD24に結合する抗体、その調製および使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058416
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】CD24に結合する抗体、その調製および使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230418BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230418BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230418BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230418BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230418BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230418BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20230418BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230418BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K35/76
A61K35/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
A61P19/02
A61P1/16
A61P3/10
A61P25/00
A61P31/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019864
(22)【出願日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】202111195246.5
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517342693
【氏名又は名称】イミューンオンコ バイオファーマシューティカルズ (シャンハイ) インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェンジ ティアン
(72)【発明者】
【氏名】ソン リ
(72)【発明者】
【氏名】ディアンゼ チェン
(72)【発明者】
【氏名】フイチン グオ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085CC05
4C085DD62
4C085DD63
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA75
4C086ZB07
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB35
4C086ZC35
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA02
4C087ZA75
4C087ZB07
4C087ZB15
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZB35
4C087ZC35
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CD24に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分、および、該抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】CD24に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、一実施形態として、特定のアミノ酸配列を含むHV-CDR1、HV-CDR2およびHV-CDR3を有する重鎖可変領域と、特定のアミノ酸配列を含むLV-CDR1、LV-CDR2およびLV-CDR3を有する軽鎖可変領域とを備える、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分、および、該抗体またはその抗原結合部分を含む医薬組成物である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD24に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、
i)重鎖可変領域であって、配列番号1、2および3にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域CDR-1(HV-CDR1)、HV-CDR2およびHV-CDR3を有する重鎖可変領域と、
ii)軽鎖可変領域であって、配列番号4、5および6にそれぞれ記載されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域CDR-1(LV-CDR1)、LV-CDR2およびLV-CDR3を有する軽鎖可変領域と
を備える、単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域は、配列番号7または10に対して少なくとも90%または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域は、配列番号8、9または11に対して少なくとも90%または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
前記重鎖可変領域および前記軽鎖可変領域は、i)それぞれ配列番号7および8、ii)それぞれ配列番号7および9、またはiii)それぞれ配列番号10および11に対して、少なくとも90%または95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプである、請求項1から4のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
それぞれ配列番号12および13のアミノ酸配列を有する、重鎖定常領域および軽鎖定常領域を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
マウス、キメラ、またはヒト化型である、請求項1から6のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分をエンコードする核酸分子。
【請求項9】
請求項8に記載の核酸分子を備える発現ベクター。
【請求項10】
請求項8に記載の核酸分子または請求項9に記載の発現ベクターを備える宿主細胞。
【請求項11】
治療有効量の、請求項1から7のいずれか1項に記載の単離モノクローナル抗体もしくはその抗原結合部分、請求項8に記載の核酸分子、請求項9に記載の発現ベクター、または請求項10に記載の宿主細胞、および薬学的に許容されるキャリアを備える、医薬組成物。
【請求項12】
CD24に関連する疾患の治療を必要とする対象において前記疾患を治療するのに使用するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記疾患は癌である、請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記癌は、卵巣癌、乳癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、急性リンパ性白血病(ALL)、胆管癌、肺癌、膀胱癌、膵臓癌、胃腺癌、膵臓腺癌、神経膠芽腫、および大腸癌から成る群から選択される固形癌または血液癌である、請求項13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記疾患は、急性移植片対宿主病、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、代謝関連脂肪肝疾患、真性糖尿病、多発性硬化症、または敗血症である、請求項12に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の参照による組み込み]
本出願は、2021年10月13日に出願された中国特許出願第202111195246.5号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
前述の出願、および同出願中またはその出願手続きにおいて引用された全ての文献(「出願引用文献」)、および本明細書において引用または参照される全ての文献(本明細書において引用される全ての文献文書、特許、公開特許出願を含むがこれらに限定されない)(「本明細書引用文献」)、および本明細書引用文献において引用または参照される全ての文献は、本明細書または参照により本明細書に組み込まれるあらゆる文献において言及される、あらゆる製品に関する、あらゆる製造元の説明書、説明、製品仕様、および製品シートと共に、本明細書において参照することにより本明細書に組み込まれ、本発明の実践において利用され得る。より具体的に述べると、全ての参考文献は、各個々の文献が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ範囲まで、参照により組み込まれる。本開示において言及されるあらゆるGenbank配列は、本開示の最先の有効出願日時点でのGenbank配列を参照して組み込まれる。
【0003】
本出願は、CD24に特異的に結合するモノクローナル抗体またはその抗原結合部分、ならびにその調製および使用、特に、腫瘍の治療における使用に関する。
【背景技術】
【0004】
癌細胞は、1)免疫細胞上のSiglecに結合し得るCD24タンパク質を高度に発現して、抗腫瘍免疫反応を阻害すること、2)ナチュラルキラー(NK)細胞表面上のNKG2Dタンパク質に結合するMICA/MICBの癌細胞膜からの脱離を促進し、NK細胞によるMICA/MICB癌細胞の殺滅をブロックすること、および3)マクロファージ表面上のシグナル調節タンパク質アルファ(SIRPα)に結合するCD47を高レベルで発現し、マクロファージによる癌細胞の食作用を阻害する阻害シグナルを誘導することを含め、宿主の免疫監視を回避するためのいくつかのメカニズムを発達させている。癌細胞が非常に「スマート」であり、それらの発達した回避メカニズムに応じて急速に再生することが分かる。従って、癌細胞を殺滅するための効果的な抗癌薬の開発において、これらのメカニズムを標的とすることが重視され得る。
[CD24]
【0005】
CD24は、免疫系の多くの細胞にあるグリコシルホスファチジルイノシトールアンカータンパク質である。これは、T細胞の共刺激性分子および自己免疫の調節因子として機能する。またCD24は、卵巣癌、乳癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、急性リンパ性白血病(ALL)、胆管癌、膀胱癌、膵臓癌、胃腺癌、および神経膠芽腫の細胞を含む様々な癌細胞において高度に発現され(Barkal et al., 2019、Liu et al., 2013)、癌細胞の遊走、浸潤および増殖を調節する。
【0006】
CD24は、活性化内皮細胞および活性化血小板の表面上で細胞接着分子として機能する膜貫通タンパク質であるPセレクチンのリガンドである。CD24とPセレクチンの相互作用は、腫瘍転移を増大させ得る(Friederichs J et al., 2000)。CD24は、免疫細胞で発現されるシアル酸結合受容体であるSiglectにも結合する。とりわけ、Siglec-5およびSiglec-10は、単球、顆粒球、およびリンパ球上の重要な阻害性受容体である。T細胞におけるSiglec-10の発現は、T細胞主要組織適合抗原複合体クラスI(MHC-I)ペプチド複合体の形成ならびにT細胞受容体関連キナーゼLckおよびZAP-70のリン酸化を阻害することにより、T細胞活性化に干渉することが知られている(Yin, et al., 2020)。B細胞およびNK細胞におけるSiglec-10の発現は、それぞれ、BCR媒介性シグナル伝達およびNK細胞受容体媒介性シグナル伝達を阻害することができる(Yin, et al., 2020)。腫瘍細胞は、免疫攻撃から保護されるように、CD24を利用して、Siglec-10と共に「don't eat me」シグナルを生成し得る。
【0007】
従って、CD24は、予後不良のバイオマーカーと考えられている。CD24の発現は、膀胱腫瘍の再発と有意に関連している(Liu et al., 2013)。卵巣癌患者において、CD24の発現は、腫瘍病期ならびに腹膜およびリンパ節への転移と相関することが見出された。更に、CD24陽性細胞は、浸潤性の高い表現型である増殖の増大を示し、卵巣癌細胞におけるシスプラチン抵抗性と関連することが報告された(Nakamura et al. 2017)。
【0008】
複数の研究が示すところによれば、抗CD24モノクローナル抗体は、膀胱癌およびトリプルネガティブ乳癌のマウスモデルにおいて、肺転移を低減し、全体的な生存期間を延長させることができる。また、CD24とSiglec-10の相互作用の抗体による遮断が、担腫瘍マウスにおいて、腫瘍増殖のマクロファージ依存性低減および生存期間の延長をもたらしたことも、文献で明らかにされた(Barkal, et al., 2019、Chan et al., 2019、Overdevest et al., 2011)。加えて、以前の研究により、抗CD47/CD24二重抗体治療が脳内で骨髄系免疫を効果的に活性化できたことが実証された(Wu H, et al, 2021)。そしてこのような二重治療は、ヒト卵巣癌細胞に対する食作用を増強することが明らかにされた(Barkal et al., 2019)。また、Barakalらは、CD24抗体とセツキシマブ(Erbitux)との併用療法が、いずれか単独による治療と比較して、膵臓腺癌細胞の食作用を更に増大させたことを見出した。
【0009】
また、CD24の上方制御は、移植片対宿主病(GVHD)(Toubai, T., et al.,2014)、代謝関連脂肪肝疾患(Fairbridge, N.A., et al., 2015)、1型真性糖尿病(El-Mokhtar, M.A., et al., 2020)、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(Tan, Y., et al., 2016)、および敗血症(Chen, G.Y., et al., 2011)に関与し得る(参考文献7~15)。
【0010】
優れた特性を有する、より多くの抗CD24抗体が必要である。
【0011】
本出願における、いかなる文献の引用または特定も、このような文献が本開示の先行技術として利用可能であることを認めるものではない。
【発明の概要】
【0012】
本出願は、CD24細胞に結合して、CD24細胞に対する抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を誘導し得る、新規の抗CD24抗体またはその抗原結合部分を開示する。本開示の抗体またはその抗原結合部分は、強力なin vivo抗腫瘍効果も示した。特に、本開示の抗CD24抗体またはその抗原結合部分を特定の用量で投与すると、動物における腫瘍が完全に消失し得、これらの動物において抗体またはその抗原結合部分の投与を止めても、腫瘍細胞の再移植が腫瘍の形成または増殖をもたらすことはない。
【0013】
具体的に述べると、一態様において、本出願は、i)重鎖可変領域CDR1(VH-CDR1)、VH-CDR2、およびVH-CDR3を有し得る重鎖可変領域であって、VH-CDR1、VH-CDR2、およびVH-CDR3は、それぞれ配列番号1、2、および3に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る重鎖可変領域、ならびに/またはii)軽鎖可変領域CDR1(VL-CDR1)、VL-CDR2、およびVL-CDR3を有し得る軽鎖可変領域であって、VL-CDR1、VL-CDR2、およびVL-CDR3は、それぞれ配列番号4、5、および6に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る軽鎖可変領域を備え得る、CD24に結合する単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分を開示する。
【0014】
本開示の重鎖可変領域は、配列番号7または10に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0015】
本開示の軽鎖可変領域は、配列番号8、9または11に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0016】
本開示の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、(1)それぞれ配列番号7および8、(2)それぞれ配列番号7および9、または(3)それぞれ配列番号10および11に対して、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を備え得る。
【0017】
本開示の単離モノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、重鎖定常領域および/または軽鎖定常領域を備え得る。重鎖定常領域は、FcRおよび/または補体系タンパク質(C1q等)の結合親和性を有する、または有するように操作されている、IgG1、IgG2、IgG3もしくはIgG4重鎖定常領域、またはその機能的断片であり得る。特定の実施形態において、重鎖定常領域は、例えば、配列番号12に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒトIgG1重鎖定常領域であり得る。軽鎖定常領域は、例えば、配列番号13に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、ヒトカッパ軽鎖定常領域等のカッパ軽鎖定常領域であり得る。重鎖定常領域のN末端は、重鎖可変領域のC末端に連結しており、軽鎖定常領域のN末端は、軽鎖可変領域のC末端に連結している。
【0018】
特定の実施形態において、本開示の抗体は、ジスルフィド結合によって接続された2つの重鎖および2つの軽鎖を含むかまたはそれらから成るIgG抗体であり得、ここで、各重鎖は、上記で言及した重鎖定常領域、重鎖可変領域、および/またはCDR配列を含み得、各軽鎖は、上記で言及した軽鎖定常領域、軽鎖可変領域、および/またはCDR配列を含み得る。
【0019】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、マウス、キメラ、ヒト、またはヒト化型であり得る。
【0020】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、CD24に結合し、例えば、Siglec-10に対するCD24の結合をブロックし、CD24細胞に対するADCCを誘導し、強力なin vivo抗腫瘍効果を示し得る。
【0021】
本開示は、細胞毒または抗癌剤等の治療剤に連結した、抗体またはその抗原結合部分を備える、免疫コンジュゲートも提供する。本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合部分とは異なる結合特異性を有する第2の機能的部分(例えば、第2の抗体)に連結した、本開示の抗体またはその抗原結合部分を備える、二重特異性分子も提供する。別の態様において、本開示の抗体またはその抗原結合部分は、キメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)の一部にすることができる。本開示は、本開示のCARまたはTCRを含む、T細胞およびNK細胞等の免疫細胞を更に提供する。
【0022】
本開示は、本開示の抗体またはその抗原結合部分をエンコードする核酸分子、ならびにこのような核酸分子を備える発現ベクター、およびこのような発現ベクターを備える宿主細胞を更に提供する。本開示の宿主細胞を使用して抗CD24抗体またはその抗原結合部分を調製する方法であって、(i)抗体またはその抗原結合部分を宿主細胞において発現させる段階と、(ii)抗体またはその抗原結合部分を宿主細胞またはその細胞培養物から単離する段階とを備える方法が提供される。
【0023】
本開示は、本開示の、抗体もしくはその抗原結合部分、免疫コンジュゲート、二重特異性分子、免疫細胞、核酸分子、発現ベクター、または宿主細胞、および薬学的に許容されるキャリアを備える、医薬組成物を提供する。本開示の医薬組成物は、SIRPアルファD1-Fc融合タンパク質等の抗腫瘍剤、または抗炎症剤を更に備え得る。
【0024】
別の態様において、本開示は、CD24(例えば、CD24の過剰発現またはシグナル伝達)に関連する疾患の治療または緩和を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本開示の医薬組成物を治療有効量で対象に投与する段階を含む方法を提供する。
【0025】
疾患は癌であり得る。癌は、卵巣癌、乳癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、急性リンパ性白血病(ALL)、膵臓腺癌、胆管癌、膀胱癌、膵臓癌、胃腺癌、神経膠芽腫、および大腸癌を含むがこれらに限定されない固形癌または血液癌であり得る。特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、CD47を標的とするタンパク質といった、少なくとも1つの抗腫瘍剤と共に投与され得る。CD47を標的とするタンパク質は、配列番号19に対して少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するSIRPアルファD1-Fc融合タンパク質であり得、配列番号19のアミノ酸配列は、配列番号20のヌクレオチド配列によってエンコードされ得る。配列番号19の80位には、グリコシル化部位を除去するN→A変異が含まれる。
【0026】
特定の実施形態において、疾患は、急性移植片対宿主病、関節リウマチ、および全身性エリテマトーデスを含むがこれらに限定されない炎症性疾患であり得る。
【0027】
疾患は、代謝関連脂肪肝疾患、真性糖尿病、多発性硬化症、および敗血症を更に含むが、これらに限定されない。
【0028】
本開示の抗体またはその抗原結合部分は、CD24タンパク質のin vitro検出にも使用され得る。
【0029】
本開示の他の特徴および特長は、限定と解釈されるべきではない下記の詳細な説明および例から明らかになるであろう。本出願の随所で引用される全ての参考文献、GenBankエントリー、特許、および公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0030】
従って、本出願の目的は、以前から知られている製品、過程、または方法の権利を出願者が留保し、権利放棄を本明細書によって開示するように、以前から知られている製品、製品を作製する過程、または製品を使用する方法を本出願に包含することではない。更に、本出願は、以前に説明されている製品、製品を作製する過程、または製品を使用する方法の権利を出願者が留保し、権利放棄を本明細書によって開示するように、USPTO(米国特許法第112条、第1段落)またはEPO(EPCの第83条)の記述要件および実施可能要件を満たさない製品、過程、または製品の作製もしくは製品を使用する方法を出願の範囲に包含することを意図するものではないことを注記する。本出願の実践においては、EPC第53条(c)ならびにEPC規則28(b)および(c)に準拠することが有利であり得る。本出願の系統もしくは任意の他の系統における、または第三者が先に出願した出願における、出願者の取得済み特許の対象である任意の実施形態を明示的に放棄する全ての権利は、明示的に留保される。本明細書におけるいずれの内容も、保証と解釈されてはならない。
【0031】
本開示において、特に特許請求の範囲および/または段落において、「備える(comprises)」、「備えた(comprised)」、「備える(comprising)」などといった用語は、米国特許法においてこれに与えられた意味を有し得ること、例えば、これらは「含む(includes)」、「含んだ(included)」、「含む(including)」などを意味し得ること、そして「から本質的に成る(consisting essentially of)」および「から本質的に成る(consists essentially of)」等の用語は、米国特許法においてこれらに付与された意味を有すること、例えば、これらは明示的に列挙されていない要素を許容するが、先行技術において見出される、または出願の基本もしくは新規の特性に影響する要素を除外することを注記する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
下記の詳細な説明は、例として供与されるが、説明される特定の実施形態だけに本出願を限定することを意図するものではなく、添付図面と併せて最も良好に理解され得る。
【0033】
図1】本開示の抗CD24抗体である、IMM47C、IMM47およびIMM47Hの構造の概略図である。IMM47Cは、配列番号7、12、8、および13に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、マウス重鎖可変領域、重鎖定常領域、マウス軽鎖可変領域、および軽鎖定常領域を備える、IgG抗体である。IMM47は、配列番号7、12、9、および13に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、マウス重鎖可変領域、重鎖定常領域、ヒト化軽鎖可変領域、および軽鎖定常領域を備える、IgG抗体である。IMM47Hは、配列番号10、12、11、および13に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有する、ヒト化重鎖可変領域、重鎖定常領域、ヒト化軽鎖可変領域、および軽鎖定常領域を備える、IgG抗体である。
【0034】
図2】hIgG-Fcを陰性対照として使用した、CD24MCF-7細胞に対するIMM47Hの結合活性を示す。
【0035】
図3】IMM01(SIRPアルファD1-F1、配列番号19)およびhIgG-Fcを対照として使用した、CD47CD24REH細胞に対するIMM47Hの結合活性を示す。
【0036】
図4】hIgG1-Fcを陰性対照として使用した、CD24MCF-7細胞に対する抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導するIMM47Cの能力を示す。
【0037】
図5】hIgG1-FcおよびIMM01を対照として使用した、CD47CD24REH細胞に対する抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導するIMM47Cの能力を示す。
【0038】
図6】hIgG1-Fcを陰性対照として使用した、ヒトCD24を発現するよう操作されたMC38細胞に対する抗体依存性細胞毒性(ADCC)を誘導するIMM47の能力を示す。
【0039】
図7】CD24CD47MCF-7細胞が移植されたCB17-SCIDマウスにおける、IMM47CおよびIMM47C+IMM01の組み合わせのin vivo抗腫瘍有効性を示す。
【0040】
図8A】MC38-hCD24細胞が移植されたB6トランスジェニックマウス(ヒトSiglec10を発現するよう操作された)における、各群での平均腫瘍サイズ(A)および個々の腫瘍サイズ(B)によって明らかにされた、IMM47HおよびIMM47Cの抗腫瘍有効性を示す。
【0041】
図8B】MC38-hCD24細胞が移植されたB6トランスジェニックマウス(ヒトSiglec10を発現するよう操作された)における、各群での平均腫瘍サイズ(A)および個々の腫瘍サイズ(B)によって明らかにされた、IMM47HおよびIMM47Cの抗腫瘍有効性を示す。
【0042】
図9】MC38-hCD24細胞が移植されたB6-Siglec10トランスジェニックマウスにおける、IMM47C、IMM47およびIMM47Hの抗腫瘍効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示がより容易に理解され得ることを確実にするために、特定の用語をまず定義する。追加の定義は、詳細な説明の随所に記載される。
【0044】
「CD24」という用語は、分化クラスター24を指す。「CD24」という用語は、バリアント、アイソフォーム、ホモログ、オーソログ、およびパラログを含む。
【0045】
本明細書において言及される「抗体」という用語は、例えば、IgG、IgA、IgD、IgEおよびIgMの全抗体、ならびにその任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)または一本鎖を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を備える糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略す)および重鎖定常領域(C)で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、Cで構成される。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される保存性の高い領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性領域へと更に細分され得る。VおよびVは各々、アミノ末端からカルボキシ末端へと、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順序で配置された、3つのCDRおよび4つのFRから構成されている。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。重鎖定常領域の「機能的断片」は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介して、例えば、ADCC、CDC、ADCPなどを開始する能力を保持する定常領域の一部を指す。
【0046】
抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)という用語は、本明細書において使用される場合、抗原(例えば、CD24タンパク質)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1または複数の断片を指す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって果たされ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合断片の例は、(i)V、V、CおよびCH1ドメインから成る一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を備え得る二価断片であるF(ab')断片、(iii)VドメインおよびCH1ドメインから成るFd断片、(iv)抗体の単一アームのVドメインおよびVドメインから成るFv断片、(v)Vドメインから成るdAb断片(Ward et al., (1989) Nature 341:544-546)、(vi)単離された相補性決定領域(CDR)、ならびに(viii)単一の可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域であるナノボディを含む。更に、Fv断片の2つのドメインであるVおよびVは、別個の遺伝子によってコードされるが、組換え法を使用すると、V領域およびV領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al., (1988) Science 242:423-426、およびHuston et al., (1988) Proc.Natl. Acad.Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)になることを可能にする合成リンカーにより、これらを接合させることができる。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるよう意図される。これらの抗体断片は、当業者に知られる従来技術を使用して取得され、インタクト抗体と同じ方式で、有用性について断片がスクリーニングされる。
【0047】
本明細書において使用される「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、CD24タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、CD24タンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトCD24タンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種のCD24タンパク質といった他の抗原との交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0048】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。
【0049】
本明細書において使用される「マウス抗体」という用語は、フレームワーク領域とCDR領域の両方がマウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むよう意図される。更に、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もマウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のマウス抗体は、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってエンコードされないアミノ酸残基(例えば、in vitroでランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoで体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「マウス抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がマウスのフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図するものではない。
【0050】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト起源の遺伝物質をヒトの遺伝物質と組み合わせることによって作製された抗体を指す。またはより一般的に言えば、キメラ抗体は、特定の種の遺伝物質を、別の種の遺伝物質と共に有する抗体である。
【0051】
本明細書において使用される「ヒト化抗体」という用語は、ヒトにおいて天然に生成される抗体バリアントとの類似性を増加させるようタンパク質配列が改変されている非ヒト種の抗体を指す。
【0052】
本開示の抗体またはその抗原結合部分における重鎖可変領域CDRおよび軽鎖可変領域CDRは、IMGTナンバリングシステムによって定義されている。しかしながら、本技術分野において周知であるように、CDR領域は、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいて、Chothia、Kabat、AbM、またはContactのナンバリングシステム/方法等、他のシステムによって決定されてもよい。
【0053】
「抗体依存性細胞毒性」、「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」、または「ADCC」という用語は、例えば抗CD24抗体が結合した標的細胞を、免疫系のエフェクター細胞が能動的に溶解する、細胞媒介性免疫防御のメカニズムを指す。
【0054】
半数効果濃度としても知られる「EC50」という用語は、ベースラインと、規定の曝露時間後の最大値との中間の応答を誘導する、抗体またはその抗原結合部分の濃度を指す。
【0055】
半数阻害濃度としても知られる「IC50」という用語は、抗体またはその抗原結合部分が存在しない場合に比して、特定の生物学的または生化学的機能を50%阻害する、抗体またはその抗原結合部分の濃度を指す。
【0056】
「対象」という用語は、あらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生動物、および爬虫類動物等、哺乳動物および非哺乳動物を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、およびウマ等の哺乳動物が好ましい。
【0057】
本明細書において使用される場合、「配列同一性」とは、対象配列と参照配列をアラインし、配列間で最大の配列同一性パーセントを達成するために、必要に応じてギャップを導入した後に、参照配列におけるヌクレオチド/アミノ酸残基と同一である、対象配列におけるヌクレオチド/アミノ酸残基のパーセントを指す。2つ以上のアミノ酸または核酸配列の間の配列同一性パーセントを決定することを目的とするペアワイズ配列アラインメントおよび多重配列アラインメントは、当業者に知られている様々なやり方で、例えば、ClustalOmega、T-coffee、Kalign、およびMAFFT等の公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。このようなソフトウェアを使用する場合、例えば、ギャップペナルティおよび延長ペナルティには、既定のパラメータを使用することが好ましい。
【0058】
「治療有効量」という用語は、疾患もしくは病状(炎症性疾患等)に関連する症状の予防もしくは寛解および/または疾患もしくは病状の重症度の軽減に十分である、本開示の抗体またはその抗原結合部分の量を意味する。治療有効量は、治療されている病状の文脈において理解され、実際の有効量は、当業者には容易に識別される。
【0059】
一実施形態において、本開示の抗体は、本開示の抗CD24抗体のものとは1または複数の保存的修飾によって異なる、CDR1、CDR2およびCDR3配列の重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む。本技術分野では、抗原結合を除去しない特定の保存的配列修飾が行われ得ることが理解されている。
【0060】
本明細書において使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体またはその抗原結合部分の結合特性に著しく影響することも、結合特性を著しく変化させることもないアミノ酸修飾を指すことが意図される。このような保存的修飾は、アミノ酸の置換、付加、および欠失を含む。修飾は、部位指向性変異誘発およびPCR媒介性変異誘発といった、本技術分野で知られる標準的な技法により、本開示の抗体またはその抗原結合部分に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、本技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。よって、本開示の抗体またはその抗原結合部分のCDR領域内の1または複数のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置き換えてもよく、変化した抗体を、保持された機能(すなわち、上記の機能)について、本明細書に記載の機能アッセイを使用して試験してもよい。
【0061】
本開示の抗体は、改変された抗体を操作するために、本開示の抗CD24抗体のV/V配列のうちの1または複数を有する抗体を出発物質として使用して、調製することができる。抗体は、一方または両方の可変領域(すなわち、Vおよび/またはV)内の、例えば、1または複数のCDR領域内および/または1または複数のフレームワーク領域内の、1または複数の残基を修飾することにより、操作することができる。追加で、または代替的に、抗体またはその抗原結合部分は、例えば抗体のエフェクター機能を変化させるように定常領域内の残基を修飾することにより、操作することができる。
【0062】
特定の実施形態において、CDRグラフティングを使用して抗体の可変領域を操作することができる。抗体は、主に、重鎖および軽鎖の6つの相補性決定領域(CDR)内に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間で、CDRの外の配列よりも多様性が高い。CDR配列はほとんどの抗体-抗原相互作用を担うので、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク配列にグラフトされた、天然に存在する特定の抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、天然に存在する特定の抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である。
【0063】
従って、本開示の別の実施形態は、上述の本開示の配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を有する重鎖可変領域、ならびに/または上述の本開示の配列を含むCDR1、CDR2、およびCDR3配列を有する軽鎖可変領域を備える、単離モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分に関連する。これらの抗体は、本開示のモノクローナル抗体のVおよびVのCDR配列を含むが、異なるフレームワーク配列を含んでもよい。このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは公開されている参考文献から取得することができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、ヒト生殖細胞系列配列のデータベースである「VBase」(インターネットでwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseにて利用可能)に見出すことができる。別の例として、ヒト重鎖および軽鎖の可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースに見出すことができる。本開示の抗体で使用するための好ましいフレームワーク配列は、本開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似するものである。フレームワーク配列の由来元である生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子に見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域に、VのCDR1、CDR2、およびCDR3配列をグラフトしてもよく、あるいは、生殖細胞系列配列と比較して1または複数の変異を含むフレームワーク領域に、CDR配列をグラフトしてもよい。例えば、特定の例において、抗体の抗原結合能力を維持または増大するように、フレームワーク領域内の残基を変異させるのが有益であることが見出されている。
【0064】
別のタイプの可変領域修飾は、Vおよび/またはVのCDR1、CDR2、および/またはCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることであり、これによって目的の抗体の1または複数の結合特性(例えば、親和性)が改善する。部位指向性変異誘発またはPCR媒介性変異誘発を実行して、変異を導入することができ、抗体結合または他の目的の機能的特性に対する効果を、本技術分野で知られるin vitroまたはin vivoのアッセイで評価することができる。好ましくは、保存的修飾(本技術分野で知られているとおり)が導入される。変異は、アミノ酸の置換、付加、または欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、通常、CDR領域内の1、2、3、4、または5つ以下の残基が変化する。
【0065】
本開示の操作された抗体は、例えば、抗体の特性を改善するように、Vおよび/またはV内のフレームワーク残基に修飾が行われているものを含む。通常、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を減少させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1または複数のフレームワーク残基を、対応する生殖細胞系列配列に「復帰変異」させることである。より具体的に述べると、体細胞変異を経ている抗体は、抗体の由来元である生殖細胞系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体の由来元である生殖細胞系列配列と比較することによって特定することができる。
【0066】
別のタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内、または更には1または複数のCDR領域内の、1または複数の残基を変異させて、T細胞エピトープを除去することによって、抗体の潜在的な免疫原性を低減することを伴う。
【0067】
フレームワークまたはCDR領域内で行われる修飾に加えて、またはその代替として、本開示の抗体は、通常、血清半減期、補体固定、Fc受容体結合、および/または抗原依存性細胞毒性といった、抗体の1または複数の機能的特性を変化させるために、Fc領域内に修飾を含むよう操作され得る。更に、本開示の抗体を、化学修飾してもよく(例えば、1または複数の化学部分を抗体に結合させてもよい)、または、そのグリコシル化を変化させて、やはり抗体の1または複数の機能的特性を変化させるように修飾してもよい。
【0068】
一実施形態において、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変化する、例えば、増加または減少するように、CH1領域とCH2領域との間のヒンジ領域を修飾する。ヒンジ領域内のシステイン残基の数を変化させるのは、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリを容易にするため、または抗体の安定性を増加もしくは減少させるためである。
【0069】
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域を変異させて、抗体の生物学的半減期を増加または減少させる。より具体的に述べると、抗体のブドウ球菌プロテインA(SpA)結合性が、天然Fc-ヒンジドメインSpA結合性に比して低下するように、1または複数のアミノ酸変異を、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に導入する。
【0070】
更に別の実施形態では、抗体のグリコシル化が修飾される。例えば、グリコシル化抗体が作製され得る(すなわち、抗体からグリコシル化が欠如している)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増加させるように変化させることができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1または複数のグリコシル化部位を変化させることによって達成され得る。例えば、1または複数の可変領域フレームワークグリコシル化部位の消失をもたらす、1または複数のアミノ酸置換を行い、これによって、その部位におけるグリコシル化を消失させることができる。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増加させ得る。追加で、または代替的に、フコシル残基の量が低減している低フコシル化抗体、または二分GlcNac構造が増加している抗体といった、グリコシル化のタイプが変化している抗体を作製することができる。このような変化したグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増加させることが実証されている。このような炭化水素修飾は、例えば、変化したグリコシル化機構をもつ宿主細胞において抗体を発現させることによって達成することができる。変化したグリコシル化機構をもつ細胞は、本技術分野において説明されており、本開示の組換え抗体を発現させる宿主細胞として使用することによって、グリコシル化が変化している抗体を生成することができる。
【0071】
本開示のモノクローナル抗体(mAb)は、Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495で周知の体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技法を使用して生成することができる。モノクローナル抗体を生成するための他の実施形態は、Bリンパ球のウイルス性または発癌性の形質転換、およびファージディスプレイ技法を含む。キメラ抗体またはヒト化抗体も、本技術分野では周知である。
【0072】
本開示の抗体は、例えば、本技術分野(例えば、Morrison, S. (1985) Science 229:1202)において周知であるような、組換えDNA技法および遺伝子トランスフェクション法の組み合わせを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて生成することもできる。一実施形態において、遺伝子が転写調節配列および翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、標準的な分子生物学技法によって取得される部分的または完全長の軽鎖および重鎖をエンコードするDNAが、1または複数の発現ベクターに挿入される。この文脈において、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写制御配列および翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写および翻訳を調節するという意図される機能を果たすように、抗体遺伝子がベクターにライゲーションされることを意味するよう意図される。
【0073】
「調節配列」という用語は、抗体遺伝子の転写または翻訳を制御する、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むよう意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990))によって説明されている。哺乳動物宿主細胞での発現のために好ましい調節配列は、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)、およびポリオーマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーといった、哺乳動物細胞において高レベルのタンパク質発現を誘導するウイルス性要素を含む。代替的に、ユビキチンプロモーターまたはβグロビンプロモーター等の非ウイルス性調節配列を使用してもよい。また更に、SV40初期プロモーターの配列およびヒトT細胞白血病ウイルス1型の末端反復配列を含むSRαプロモーターシステム(Takebe et al., (1988) Mol.Cell. Biol.8:466-472)といった、起源の異なる配列から構成された調節要素を使用してもよい。発現ベクターおよび発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0074】
抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、同じ発現ベクターに挿入してもよく、別個の発現ベクターに挿入してもよい。好ましい実施形態では、可変領域は、ベクター内でVセグメントがCセグメントに作動可能に連結され、ベクター内でVセグメントがCセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域を既にエンコードしている発現ベクターに挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を作出するために使用される。追加で、または代替的に、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促すシグナルペプチドをエンコードすることができる。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質のシグナルペプチド)であり得る。
【0075】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)といった追加の配列、および選択可能マーカー遺伝子を保有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、および同第5,179,017号を参照されたい)。
【0076】
軽鎖および重鎖の発現のために、重鎖および軽鎖をエンコードする発現ベクターが、標準的な技法により、宿主細胞にトランスフェクトされる。様々な形態の「トランスフェクション」という用語は、原核生物または真核生物の宿主細胞に外因性DNAを導入するために一般的に使用される様々な技法、例えば、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含するよう意図される。原核生物または真核生物のいずれの宿主細胞においても本開示の抗体を発現させることは理論的に可能であるが、真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。なぜなら、このような真核細胞、特に哺乳動物細胞は、適切にフォールディングし免疫学的に活性のある抗体をアセンブルして分泌する可能性が原核細胞よりも高いからである。
【0077】
本開示の組換え抗体を発現させるのに好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞、およびSP2細胞を含む。抗体遺伝子をエンコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入されると、宿主細胞における抗体の発現、またはより好ましくは、宿主細胞を増殖させる培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたり、宿主細胞を培養することによって、抗体が生成される。抗体は、標準的なタンパク質精製法を使用して培養培地から取り出され得る。
【0078】
本開示の抗体を治療剤とコンジュゲートして、抗体薬物コンジュゲート(ADC)等のイムノコンジュゲートを形成することができる。好適な治療剤は、細胞毒、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNAインターカレーター、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIまたはII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質、および有糸分裂阻害剤を含む。ADCにおいて、抗体および治療剤は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィド、またはヒドラゾンリンカーといった切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。より好ましくは、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser、またはGlu等のペプチジルリンカーである。
【0079】
別の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を生成するよう、少なくとも1つの他の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質(例えば、別の抗体または受容体リガンド)に連結した本開示の1または複数の抗体を備える、二重特異性分子を特徴とする。よって、本明細書において使用される場合、「二重特異性分子」は、3つ以上の特異性を有する分子を含む。一実施形態において、二重特異性分子は、抗Fc結合特異性および抗CD24結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、CD24免疫細胞といった他のCD24細胞をリリースしながら、腫瘍細胞をより正確に標的とするように、CD47に対するものであり得る。
【0080】
二重特異性分子は、多くの異なるフォーマットおよびサイズであり得る。サイズスペクトルの一端にある二重特異性分子は、同一の特異性をもつ2つの結合アームを有する代わりに、各々が異なる特異性を有する2つの結合アームを有することを除いては、従来型の抗体フォーマットを保持する。もう一端にあるのは、ペプチド鎖によって連結された2つの一本鎖抗体断片(scFv)から成る二重特異性分子、いわゆるBs(scFv)構築物である。中間サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結された2つの異なるF(ab)断片を含む。これらおよび他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子工学、体細胞ハイブリダイゼーション、または化学的方法によって調製することができる。
【0081】
本明細書では、抗CD24 scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)も提供され、この抗CD24 scFvは、本明細書に記載のCDRおよび重鎖/軽鎖可変領域を備える。
【0082】
抗CD24 CARは、(a)抗CD24 scFvを含む細胞外抗原結合ドメイン、(b)膜貫通ドメイン、および(c)細胞内シグナル伝達ドメインを備え得る。
【0083】
別の態様において、本開示は、本開示の抗体の、重鎖および/または軽鎖可変領域、またはCDRをエンコードする、核酸分子を提供する。核酸は、全細胞中に、細胞可溶化物中に、または部分的に精製された形態もしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸が「単離される」または「実質的に純粋にされる」のは、他の細胞成分または他の混入物、例えば、他の細胞核酸またはタンパク質から、標準的な技法によって精製されたときである。本開示の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり得、イントロン配列を含んでも含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0084】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技法を使用して取得され得る。ハイブリドーマ(例えば、下記で更に説明するような、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体の場合、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖および重鎖をエンコードするcDNAは、標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技法によって取得され得る。免疫グロブリン遺伝子ライブラリから(例えば、ファージディスプレイ技法を使用して)取得される抗体の場合、このような抗体をエンコードする核酸は、遺伝子ライブラリから取り出され得る。
【0085】
本開示の好ましい核酸分子は、抗CD24モノクローナル抗体のV配列およびV配列またはCDRをエンコードするものを含む。VセグメントおよびVセグメントをエンコードするDNA断片が取得されたら、これらのDNA断片を、標準的な組換えDNA技法によって更に操作して、例えば、可変領域遺伝子を、完全長抗体鎖遺伝子に、Fab断片遺伝子に、またはscFv遺伝子に変換することができる。これらの操作において、VまたはVをエンコードするDNA断片は、抗体定常領域または可動性リンカーといった別のタンパク質をエンコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。この文脈で使用される「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNA断片によってエンコードされるアミノ酸配列がインフレームに留まるように、2つのDNA断片が接合されることを意味するよう意図される。
【0086】
領域をエンコードする単離DNAは、VをエンコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2、およびCH3)をエンコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術分野では知られており、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得され得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM、またはIgDの定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1またはIgG2の定常領域である。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VをエンコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをエンコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0087】
領域をエンコードする単離DNAは、VをエンコードするDNAを、軽鎖定常領域Cをエンコードする別のDNA分子に作動可能に連結することにより、完全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、本技術分野では知られており、これらの領域を包含するDNA断片は、標準的なPCR増幅によって取得され得る。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、カッパ定常領域またはラムダ定常領域であり得る。
【0088】
scFv遺伝子を作出するには、V領域およびV領域が可動性リンカーによって接合されて連続した一本鎖タンパク質としてV配列およびV配列が発現され得るように、VおよびVをエンコードするDNA断片を、可動性リンカーをエンコードする別の断片に作動可能に連結する。
【0089】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容されるキャリアと共に製剤化された、本開示の1または複数の抗体もしくはその抗原結合部分、イムノコンジュゲート、二重特異性物、CAR発現免疫細胞、核酸分子、発現ベクター、あるいは宿主細胞を含み得る、医薬組成物を提供する。組成物は、場合により、SIRPアルファD1-Fc融合タンパク質であるIMM01等の抗腫瘍剤といった、1または複数の追加の薬学的有効成分を含み得る。
【0090】
医薬組成物は、任意の数の賦形剤を含み得る。使用され得る賦形剤は、キャリア、界面活性剤、増粘剤または乳化剤、固体結合剤、分散助剤または懸濁助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、防腐剤、等張剤、およびこれらの組み合わせを含む。
【0091】
医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄、または上皮への投与(例えば、注射または注入)に好適であり得る。有効成分は、投与経路に応じて、有効成分を不活性化し得る酸および他の天然条件の作用から有効成分を保護する材料でコーティングされてもよい。本明細書において使用される「非経口投与」という語句は、経腸投与および局所投与以外の、通常は注射による投与形式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸腔内への注射および注入を含むが、これらに限定されない。代替的に、本開示の医薬組成物は、局所、上皮または経粘膜の投与経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下、または局所といった、非経口ではない経路を介して投与され得る。
【0092】
医薬組成物は、無菌水溶液または分散液の形態であり得る。高い薬物濃度に好適なマイクロエマルション、リポソーム、または他の秩序構造で製剤化されてもよい。
【0093】
単一剤形を生成するためにキャリア材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療されている対象および特定の投与形式に応じて変わり、一般に、治療効果をもたらす組成物の量である。一般に、100パーセントのうち、この量は、薬学的に許容されるキャリアとの組み合わせにおいて、有効成分約0.01%~約99%の範囲である。
【0094】
投与計画は、最適な所望の応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよく、または治療状況の緊急性が示すのに比例して用量を低減もしくは増加させてもよい。投与の容易さおよび投与量の均一性のために、非経口組成物を単位用量形態で製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される単位用量形態とは、治療される対象のための単位用量として適した、物理的に分かれた単位を指し、各単位が、必要な薬学的キャリアとの関連で所望の治療効果をもたらすよう算出された所定量の有効成分を含む。代替的に、抗体は、持続放出製剤として投与されてもよく、この場合には、より低頻度の投与が必要とされる。
【0095】
抗体またはその抗原結合部分の投与において、投与量は、約0.0001~100mg/kgの範囲であり得る。
【0096】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、徐放性製剤とすることができる。エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸といった、生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0097】
治療用組成物は、(1)無針皮下注射デバイス(例えば、米国特許第5,399,163号、同第5,383,851号、同第5,312,335号、同第5,064,413号、同第4,941,880号、同第4,790,824号、および同第4,596,556号)、(2)微量注入ポンプ(米国特許第4,487,603号)、(3)経皮デバイス(米国特許第4,486,194号)、(4)注入装置(米国特許第4,447,233号および同第4,447,224号)、および(5)浸透圧デバイス(米国特許第4,439,196号および同第4,475,196号)等の医療デバイスを介して投与され得る。これらの開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0098】
特定の実施形態において、本開示のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分は、in vivoで適切な分布を確実にするように製剤化され得る。例えば、本開示の治療用抗体またはその抗原結合部分は、血液脳関門を確実に通過するように、特定の細胞または器官への選択的輸送を増大する標的化部分を追加で含んでもよいリポソームにおいて製剤化され得る。
【0099】
本開示の医薬組成物は、in vitroおよびin vivoで複数の用途を有し得る。例えば、医薬組成物は、腫瘍を治療するために、またはより一般的に言うと、腫瘍患者における免疫反応を増大させるために使用され得る。医薬組成物は、例えば、腫瘍増殖を阻害するために、ヒト対象に投与され得る。
【0100】
腫瘍細胞の増殖および生存を阻害する医薬組成物の能力を所与として、本出願は、腫瘍細胞の増殖の阻害を必要とする対象においてそれを行う方法であって、腫瘍増殖が対象において阻害されるように、本開示の医薬組成物を対象に投与する段階を備える方法を提供する。本開示の医薬組成物によって治療され得る腫瘍は、卵巣癌、乳癌、子宮頚癌、子宮内膜癌、急性リンパ性白血病(ALL)、膵臓腺癌、胆管癌、膀胱癌、膵臓癌、胃腺癌、神経膠芽腫、および大腸癌を含むがこれらに限定されない、原発性または転移性の固形腫瘍または血腫であり得る。本開示の医薬組成物は、CD47およびFcRに結合し、良好な抗腫瘍有効性を示すSIRPアルファ-Fc融合タンパク質であるIMM01といった、追加の抗腫瘍剤と共に投与されてもよい。
【0101】
更に、CD24と炎症性疾患との間の相関を所与として、本出願は、炎症性疾患の治療または寛解を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本開示の医薬組成物を対象に投与する段階を備える方法を提供する。炎症性疾患は、急性移植片対宿主病、関節リウマチ、または全身性エリテマトーデスであり得る。
【0102】
本開示の医薬組成物によって治療され得るCD24関連疾患は、代謝関連脂肪肝疾患、真性糖尿病、多発性硬化症、および敗血症を更に含むが、これらに限定されない。
【0103】
本開示の医薬組成物は、対象における腫瘍増殖を効果的に阻害することまたは炎症を低減/消失させることができる、1または複数の追加の薬剤と共に投与されてもよい。特定の実施形態において、本出願は、腫瘍増殖の阻害を必要とする対象においてそれを行う方法であって、本開示の医薬組成物と、SIRPアルファD1-Fc融合タンパク質であるIMM01とを対象に投与する段階を備える方法を提供する。
【0104】
本明細書で説明される治療剤を組み合わせて、薬学的に許容されるキャリア中の単一の組成物として同時に投与するか、または薬学的に許容されるキャリアに各薬剤を含む別個の組成物として同時に投与してもよい。別の実施形態では、治療剤の組み合わせを連続的に投与してもよい。
【0105】
更に、1用量を超える併用療法が連続的に投与される場合、連続投与の順序は、投与の各時点で逆転しても同じ順序のままでもよく、連続投与を同時投与と組み合わせるか、またはそれらの任意の組み合わせでもよい。
【0106】
ここで、下記の非限定的な例を用い、本出願を更に説明する。
[実施例]
【0107】
本開示の例示的な抗CD24抗体であるIMM47C、IMM47、およびIMM47Hの構造を図1に示し、下記で更に詳細に説明する。
【0108】
IMM47Cは、配列番号7、12、8、および13のアミノ酸配列をそれぞれ有する、マウス重鎖可変領域、ヒトIgG1定常領域、マウス軽鎖可変領域、およびヒトカッパ定常領域を備える、IgG抗体である。
【0109】
IMM47は、配列番号7、12、9、および13のアミノ酸配列をそれぞれ有する、マウス重鎖可変領域、ヒトIgG1定常領域、ヒト化軽鎖可変領域、およびヒトカッパ定常領域を備える、IgG抗体である。
【0110】
IMM47Hは、配列番号10、12、11、および13のアミノ酸配列をそれぞれ有する、ヒト化重鎖可変領域、ヒトIgG1定常領域、ヒト化軽鎖可変領域、およびヒトカッパ定常領域を備える、IgG抗体である。
【0111】
IMM01は、US2021/0024598A1に開示されているように、CD47に結合するSIRPαD1-Fc融合タンパク質であり、2つのFc断片に連結した2つのSIRPαD1変異体を備え、形成された二量体の各単量体は、配列番号19のアミノ酸配列を有する。IMM01のSIRPαD1変異体は、グリコシル化部位を除去するN80A変異を配列番号19に含む。
[実施例1] 抗CD24抗体の生成およびヒト化、ならびに抗体発現のためのベクター構築
【0112】
マウスをヒトCD24タンパク質で免疫し、良好な力価を有するものを抗体調製のために選択した。簡潔に述べると、選択されたマウスの脾臓細胞を骨髄腫細胞と融合させ、高いCD24結合能力を有する抗CD24抗体を分泌したハイブリドーマコロニーを選定し、限界希釈によってサブクローニングした。モノクローナル抗体を生成してシーケンシングした。IMM47Cと呼ばれる1つの抗体は、配列番号7および8にそれぞれ記載されるアミノ酸配列をもつ重鎖可変領域および軽鎖可変領域を有していた。
【0113】
その後、十分に確立されたCDRグラフティング法を使用して、IMM47Cをヒト化した。例示的な部分ヒト化抗体IMM47および例示的なヒト化抗体IMM47Hを取得した。IMM47は、配列番号7および9に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有するマウス重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を備え、IMM47Hは、配列番号10および11に記載されるアミノ酸配列をそれぞれ有するヒト化重鎖可変領域およびヒト化軽鎖可変領域を備えていた。
【0114】
例示的な抗体の完全長コード配列を人工的に設計した。
【0115】
具体的に述べると、IMM47Cの重鎖には、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列番号21)を、IMM47Cの重鎖可変領域と定常領域とのコード配列(配列番号14)の5'末端に付加し、Kozak配列(配列番号22)をシグナルペプチド配列の5'末端に付加した。最後に、結果として生じた配列の5'末端および3'末端に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ付加した。IMM47Cの軽鎖には、同じシグナル配列ならびにKozak配列を、IMM47Cの軽鎖可変領域と定常領域とのコード配列(配列番号15)の5'末端に付加し、結果として生じた配列の5'末端および3'末端に、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ付加した。GenScriptによって配列を合成し、それぞれpMac-HベクターおよびpMac-Lベクター中にクローニングした。
【0116】
IMM47の重鎖には、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列番号21)を、IMM47の重鎖可変領域と定常領域とのコード配列(配列番号14)の5'末端に付加し、Kozak配列(配列番号22)をシグナルペプチド配列の5'末端に付加した。最後に、結果として生じた配列の5'末端および3'末端に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ付加した。IMM47の軽鎖には、同じシグナル配列ならびにKozak配列を、IMM47の軽鎖可変領域と定常領域とのコード配列(配列番号16)の5'末端に付加し、結果として生じた配列の5'末端および3'末端に、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ付加した。GenScriptによって配列を合成し、それぞれpMac-HベクターおよびpMac-Lベクター中にクローニングした。
【0117】
IMM47Hの重鎖には、マウスIgG1重鎖のシグナルペプチドをエンコードする57ヌクレオチド(配列番号21)を、IMM47Hの重鎖可変領域と定常領域とのコード配列(配列番号17)の5'末端に付加し、Kozak配列(配列番号22)をシグナルペプチド配列の5'末端に付加した。最後に、結果として生じた配列の5'末端および3'末端に、HindIIIおよびNheI制限部位をそれぞれ付加した。IMM47Hの軽鎖には、同じシグナル配列ならびにKozak配列を、IMM47Hの軽鎖可変領域と定常領域とのコード配列(配列番号18)の5'末端に付加し、結果として生じた配列の5'末端および3'末端に、HindIIIおよびXbaI制限部位をそれぞれ付加した。GenScriptによって配列を合成し、それぞれpMac-HベクターおよびpMac-Lベクター中にクローニングした。
【0118】
これらの本開示の抗体は、上記で構築したベクターを含むCHO-S細胞を使用して発現させた。簡潔に述べると、CHO-S細胞を、6mMグルタミンを含むTransFx-CTMCHO一過性トランスフェクション培地(Hyclone)中、1×10細胞/mlの密度で、一過性トランスフェクションの1日前に播種した。1μg/mlの総DNA量と1:1の質量比における重鎖および軽鎖の発現ベクターを、使用したTransFx-CTMCHO一過性トランスフェクション培地の1/20の体積のOPTI-MEM培地(Gibco)に添加した。1mg/mlのPEI(ポリエチレンイミン、分子量47,000、カタログ番号24765-1、polysciences)を、使用したTransFx-CTMCHO一過性トランスフェクション培地の1/20の体積のOPTI-MEM培地(Gibco)に添加した。PEI希釈物を、希釈したDNAに、4:1のPEI:DNA質量比でゆっくり添加し、混合し、室温で20分間インキュベートした。次に、DNA/PEI混合物を細胞培養物に添加し、37℃および5%COの細胞培養インキュベータで細胞を110rpmで振盪しながらインキュベートした。トランスフェクションエンハンサー(1mM酪酸ナトリウム、0.25%V/V DMSO)を2日後に添加し、温度を33℃に低下させた。細胞生存率が約50%に低下したとき、3000rpmで5分間の遠心分離によって細胞培養上清を採取し、プロテインAクロマトグラフィを使用したタンパク質精製に供した。
[実施例2]例示的な抗体は、CD24MCF-7細胞に結合した
【0119】
100μlの培養培地中で1×10/mlの細胞密度のCD24MCF-7細胞を、4℃で1時間、IMM47HおよびhIgG-Fcの連続希釈物それぞれ100μl(30μg/mlから開始した3倍希釈物)と共にインキュベートした。細胞を冷PBSで2回洗浄し、次に、ヒトIgG-Fcに対する100μlのFITC標識二次抗体(カタログ番号F9512、Sigma)と共に45分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁した。次に、フローサイトメーター(Merck Millipore、Guava(登録商標)easyCyte 5HT)を使用し、細胞をFACS解析に供した。
【0120】
図2に示すように、抗CD24抗体は、IMM47Hを含め、CD24MCF-7細胞に特異的に結合した。
[実施例3]例示的な抗体は、CD24REH細胞に結合した
【0121】
100μlの培養培地中で1×10/mlの細胞密度のCD24CD47REH細胞を、4℃で1時間、IMM47H、IMM01、およびhIgG-Fcの連続希釈物それぞれ100μl(30μg/mlから開始した3倍希釈物)と共にインキュベートした。細胞を冷PBSで2回洗浄し、次に、ヒトIgG-Fcに対する100μlのFITC標識二次抗体(カタログ番号F9512、Sigma)と共に45分間インキュベートした。細胞を2回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁した。次に、フローサイトメーター(Merck Millipore、Guava(登録商標)easyCyte 5HT)を使用し、細胞をFACS解析に供した。
【0122】
図3に示すように、IMM47Hの結合能力は、CD47結合タンパク質であるIMM01よりもわずかに高かった。
[実施例4]例示的な抗体は、CD24MCF-7細胞に対する高い抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を誘導した
【0123】
1mMのCFSE(カタログ番号21888-25mg、Sigma)を1:500に希釈し、MCF-7細胞を標識するために使用した。
【0124】
標的細胞である、6×10/mlのCFSE標識MCF-7細胞50μlを、エフェクター細胞である、FcγRIIIa(158V)を安定的に発現する6×10/mlのNK92MI細胞100μlと、2:1のエフェクター:標的比で混合した。混合した細胞を、37℃で4時間、5%CO下で、IMM47CおよびhIgG-Fcの連続希釈物それぞれ50μl(1000ng/mlから開始した3倍希釈物)と共に培養した。次に、細胞培養物に5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(PI)(カタログ番号P4170、Sigma)を添加し、次に、PIシグナルについてのFACS解析に供した。ADCCにより引き起こされた細胞溶解パーセントを、次式に基づいて算出した:
溶解%=(IMM47Cで処置したPI陽性標的細胞の%-陰性対照で処置したPI陽性標的細胞の%)/(100-陰性対照で処置したPI陽性標的細胞の%)*100
【0125】
図4によると、IMM47Cは、CD24MCF-7細胞に対する高いADCCを誘導した。
[実施例5]例示的な抗体は、CD24REH細胞に対する高い抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を誘導した
【0126】
1mMのCFSE(カタログ番号21888-25mg、Sigma)を1:500に希釈し、CD24CD47REH細胞を標識するために使用した。
【0127】
標的細胞である、6×10/mlのCFSE標識REH細胞50μlを、エフェクター細胞である、FcγRIIIa(158V)を安定的に発現する6×10/mlのNK92MI細胞100μlと、2:1のエフェクター:標的比で混合した。混合した細胞を、37℃で4時間、5%CO下で、IMM47C、IMM01、およびhIgG-Fcの連続希釈物それぞれ50μl(1000ng/mlから開始した3倍希釈物)と共に培養した。次に、細胞培養物に5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(PI)(カタログ番号P4170、Sigma)を添加し、次に、PIシグナルについてのFACS解析に供した。
【0128】
図5によると、IMM47Cは、CD24REH細胞に対する高いADCCを誘導した。
[実施例6]例示的な抗体は、CD24MC38-hCD24細胞に対する高い抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)を誘導した
【0129】
1mMのCFSE(カタログ番号21888-25mg、Sigma)を1:500に希釈し、ヒトCD24タンパク質を発現するMC38細胞を標識するために使用した。
【0130】
標的細胞である、6×10/mlのCFSE標識MC38-hCD24細胞50μlを、エフェクター細胞である、FcγRIIIa(158V)を安定的に発現する6×10/mlのNK92MI細胞100μlと、2:1のエフェクター:標的比で混合した。混合した細胞を、37℃で4時間、5%CO下で、IMM47およびhIgG-Fcの連続希釈物それぞれ50μl(1000ng/mlから開始した3倍希釈物)と共に培養した。次に、細胞培養物に5μg/mlの濃度のヨウ化プロピジウム(PI)(カタログ番号P4170、Sigma)を添加し、次に、PIシグナルについてのFACS解析に供した。
【0131】
図6によると、IMM47は、MC38-hCD24細胞に対する高いADCCを誘導した。
[実施例7]例示的な抗体は、乳癌モデルで強力な抗腫瘍活性を示した
【0132】
6~8週齢のSCIDマウス32匹各々の背部左側に0.36mgベータ-エストラジオール遅延放出錠を埋め込み、3日後、マウス1匹当たり1×10細胞でMCF-7細胞を右腋窩に皮下注射した。腫瘍サイズが100~150mmに達したら、1群当たりマウス8匹の4群にマウスを無作為に割り付け、この日を0日目と指定した。この日以降、マウスそれぞれに、PBS、IMM47C(2.5mg/kg)、IMM01(2.5mg/kg)、およびIMM01+IMM47C(2.5mg/kg+2.5mg/kg)の腹腔内注射を、4週間にわたり、週2回与えた。4週目の終わりに投与を停止し、PBS群の平均腫瘍体積が3000mmに達したときに実験を終了するまでマウスを観察した。腫瘍サイズおよび体重は3~4日毎に測定した。
【0133】
腫瘍体積(V)は、(長さ×幅)/2として算出した。腫瘍増殖阻害率(TGI)は、次式によって算出した:TGI(%)=(1-投与群における腫瘍体積の変化/ビヒクル対照群における腫瘍体積の変化)×100%。
【0134】
この試験体制および結果を表1にまとめた。
表1.IMM47Cおよび他の薬剤の抗腫瘍効果
【表1】
【0135】
28日目において、第1群(PBS)のマウスの平均腫瘍サイズは646.87mmであった。ビヒクル対照群と比較して、IMM47CおよびIMM01による処置はいずれも、腫瘍増殖速度を緩徐化した。28日目において、これら2群は、それぞれ、463.26mm(T/C=71.60%、TGI=37.30%、p=0.009)および562.24mm(T/C=86.92%、TGI=17.19%、p=0.375)の平均腫瘍サイズを有していた。IMM47C+IMM01の投与が最も良好な腫瘍抑制効果を示し、28日目において、この群のマウスは、192.63mm(T/C=29.81%、TGI=92.22%、p=0.001)の平均腫瘍サイズを有していた。
【0136】
IMM47が、強力な抗腫瘍効果を有し、IMM01と相乗作用して、IMM47単独およびIMM01単独よりも遥かに良好な抗腫瘍効果をもたらしたことが、表1および図7から分かる。
[実施例8]例示的な抗体は、大腸癌モデルで強力な抗腫瘍活性を示した
【0137】
雄のB6トランスジェニックマウス(ヒトSiglec10を発現するよう操作された)の各々の右腋窩に、1.0×10/mlのMC38-hCD24細胞100μlを注射した。腫瘍サイズが約100mmに達したら、1群当たりマウス10匹の3群にマウスを無作為に割り付け、この日を0日目と指定した。この日以降、マウスそれぞれに、PBS、IMM47H(10mg/kg)、およびIMM47C(10mg/kg)の腹腔内注射を、週2回与えた。4回投与後、7匹のマウスを各群から無作為に選定し、再度1.0×10個のMC38-hCD24細胞を左腋窩に注射し、抗体処置の投与を止めた。マウスの健康状態および腫瘍増殖を週2回観察した。サイズが3000mmを超える腫瘍を有するマウスは試験から除外し、安楽死の対象とした。
【0138】
この試験体制を表2および図8Bにまとめた。
表2.IMM47H、IMM47C、および他の薬剤の抗腫瘍効果
【表2】
【0139】
表2および図8A~8Bに示すように、IMM47HまたはIMM47Cの4回投与後、マウスの腫瘍は完全に消失したが、ビヒクル対照群は969.92±143.93mmの平均腫瘍サイズを有していた。18日目のMC38-hCD24細胞の2回目の注射後、PBS群では7匹中5匹のマウスにおいて新たな腫瘍が生じたが、IMM47H群またはIMM47C群のマウスでは、腫瘍は生じなかった。
【0140】
IMM47CおよびIMM47Hは、MC38-hCD24細胞が移植されたB6-Siglec10トランスジェニックマウスにおいて腫瘍増殖を著しく抑制することができ、IMM47H処置群およびIMM47C処置群のマウスに腫瘍細胞の2回目の注射を与えたとき、適応免疫反応が誘発され得ることが、データにより示唆された。
[実施例9]例示的な抗体は、大腸癌モデルで強力な抗腫瘍活性を示した
【0141】
24匹の雄のB6トランスジェニックマウス(ヒトSiglec10を発現するよう操作された)の各々の右腋窩に、1.0×10/mlのMC38-hCD24細胞100μlを注射した。腫瘍サイズが約100mmに達したら、1群当たりマウス6匹の4群にマウスを無作為に割り付け、この日を0日目と指定した。この日以降、マウスそれぞれに、PBS、IMM47(3mg/kg)、IMM47H(3mg/kg)、およびIMM47C(3mg/kg)の腹腔内注射を、4週間にわたり、週2回与えた。
【0142】
21日目に一部のマウスの腫瘍サイズが既定の閾値を超えたので、0日目~21日目のデータを解析に使用した。
【0143】
この試験体制および結果を表3および図9にまとめた。
表3.IMM47、IMM47H、IMM47C、および他の薬剤の抗腫瘍効果
【表3】
【0144】
表3および図9に示すように、IMM47、IMM47C、およびIMM47Hは、MC38-hCD24細胞が移植されたB6-Siglec10トランスジェニックマウスにおいて腫瘍増殖を著しく抑制することができる。具体的に述べると、3mg/kgの用量において、IMM47C群のマウス全6匹、IMM47群の4匹、およびIMM47H群の5匹から腫瘍が完全に除去され、IMM47群のマウス2匹では、腫瘍がゆっくり増殖した。
【0145】
本出願の配列を以下に記載した。
【表4】
【0146】
本出願を1または複数の実施形態との関連で上述したが、本出願はこれらの実施形態に限定されず、説明は、添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれ得るものとして全ての代替物、改変物、および均等物をカバーするよう意図されることが理解されるべきである。本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの全体において参照により更に組み込まれる。
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https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03960541?term=CD24&draw=2&rank=2
9. Metabolic Associated Fatty Liver Disease:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04720560?term=CD24&draw=4&rank=23
10. Type 1 Diabetes:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02801942?term=CD24&draw=4&rank=25
11. Type 2 Diabetes Mellitus and Cardiovascular Diseases:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02694575?term=CD24&draw=5&rank=34
12. Rheumatoid Arthritis:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03793270?term=CD24&draw=4&rank=24
13. Systemic Lupus Erythematosus:
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03178721?term=CD24&draw=5&rank=32
14. Multiple Sclerosis
https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03257358?term=CD24&draw=5&rank=35
15. Sepsis:
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図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
【配列表】
2023058416000001.app
【外国語明細書】