(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058421
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための装置、方法及びそのためのプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 24/02 20090101AFI20230418BHJP
H04W 88/18 20090101ALI20230418BHJP
H04W 52/02 20090101ALI20230418BHJP
H04W 8/20 20090101ALI20230418BHJP
【FI】
H04W24/02
H04W88/18
H04W52/02 111
H04W8/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099701
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2021168031の分割
【原出願日】2021-10-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-28
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】515068502
【氏名又は名称】株式会社ソラコム
(74)【代理人】
【識別番号】100174078
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 寛
(72)【発明者】
【氏名】小川 宗晃
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067CC22
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
(57)【要約】
【課題】無線通信サービスの設定を管理するための方法において、低消費電力状態で用いられるパラメータの値の当該MNOにおける決定手順を判定する。
【解決手段】まず、装置200は、加入者端末210から消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値Aを受信する(S301乃至S302)。次に、装置200は、HSS230に対し、Aとは異なる第2の設定値Bを保持するための設定要求を送信した後に(S303)、MME220に対し、再アタッチの指定を含むCLRを送信する(S304)。MME220は加入者端末210にデタッチ要求を送信し、再アタッチ後その旨を通知する(S305乃至S309)。この通知には、MME220が決定した当該パラメータの第3の設定値Cが含まれる。再アタッチ完了通知を受信した装置100は、加入者端末210からCを受信し(S310乃至S314)、A、B及びCを用いて、当該決定手順を判定する(S315)。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法であって、サーバが、
加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をするステップと、
前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、
前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、
前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求するステップと、
前記第1の設定値、前記第2の設定値及び前記第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記サーバが、前記加入者端末に対し、前記第1の設定値を要求して受信するステップをさらに含む。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記第1の設定値及び前記第2の設定値は、前記MNOにおいて前記パラメータに対して事前設定された設定値と異なる。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の方法であって、
判定された決定手順のパターンと、前記MNOを識別するMNO識別子及び前記MNOにおける前記パラメータを決定するモビリティ管理設備を識別するモビリティ管理設備識別子の少なくとも一方との対応づけを記憶する。
【請求項5】
サーバに、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をするステップと、
前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、
前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、
前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求するステップと、
前記第1の設定値、前記第2の設定値及び前記第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定するステップと
を含む。
【請求項6】
MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法を実行させるための装置であって、
加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をし、
前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信して、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信し、
前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求し、
前記第1の設定値、前記第2の設定値及び前記第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための装置、方法及びそのためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまな機器をインターネット等のIPネットワークに無線で接続したいという要求の高まりから、IoT機器向けの無線アクセス技術が数多く存在する。無線通信に関する標準規格団体である3GPPでも、LTEの技術をベースとしたセルラーLPWA (Low Power Wide Area) の規格としてLTE-M、NB-IoTといった規格が策定され、商用利用が始まっている。
【0003】
IoT機器において低消費電力化が一般に望まれるところ、セルラーLPWAについて、3GPPにより、リリース12でPSM (Power Saving Mode)、リリース13でeDRX (extended Discontinuous Reception) という規格が標準化されている。
【0004】
PSMは、IoT機器の状態として、接続(RRC_CONNECTED)状態及びアイドル(RRC_IDLE)状態に加えて、休止(hibernate)状態を定義し、休止状態では、アイドル状態において行われているページングの受信、隣接セル探索等の最低限の情報収集についても行わず、RF回路、ベースバンド回路等の当該情報収集に用いられる回路の電源を止めることで消費電力を抑制する。ここでは、アイドル状態に遷移してから休止状態に遷移するまでの第1の期間Tactiveと、アイドル状態に遷移してから休止状態を脱するまでの第2の期間Tpsmが設定可能である。休止状態のIoT機器は、第2の期間Tpsmが経過した場合又は当該機器が通信を再開したい場合に、MME (Mobility Management Entity) で保持されているデバイスの位置情報を更新する手順であるTAU (Tracking Area Update) を行う。第2の期間Tpsmは、現在の仕様では最長310時間まで設定が可能である。
【0005】
eDRXは、アイドル状態において、ある時点から第1の期間Tptwを経過したらその後、当該ある時点から第2の期間Tedrxが経過するまで、RF回路、ベースバンド回路等の回路の電源を一時的に止めることで消費電力を抑制する。第2の期間Tedrxは、現在の仕様では10485.76秒まで設定が可能である。なお、Tptwの下付き文字は paging time window の頭文字である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PSM及びeDRX規格に準拠した機能を用いることで、IoT機器における消費電力は抑制可能であるところ、当該IoT機器が用いる無線通信サービスの加入者は、それぞれの必要性に応じて、所望の値を上述の各期間に対して設定したい場合がある。
【0007】
しかしながら、IoT機器に最終的に設定されるパラメータの値は、キャリア、すなわちMNO(移動体通信事業者)ごとのポリシーによって異なり、MNOが有する無線通信インフラに含まれる設備によって決定されるため、MNOが有する無線通信インフラを利用して、インターネット等のIPネットワークにアクセスするための無線通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)(
図1参照)には、当該ポリシーが不明である。MNOとMVNOの間に、MVNOが円滑な事業を行うための支援サービスを提供するMVNE(仮想移動体通信サービス提供者)が介在する場合には、MVNEには当該ポリシーが同様に不明である。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための装置、方法又はそのためのプログラムにおいて、低消費電力状態で用いられる1又は複数のパラメータの値の当該MNOにおける決定手順を判定することにある。
【0009】
なお、低消費電力化のための状態として、現在の仕様ではアイドル状態及び休止状態が挙げられ、それぞれについて2種類のパラメータの値ないしタイマー値が設定可能であるところ、今後の仕様により定義されるものを含めて、本明細書においてはより一般に「低消費電力状態」と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法であって、サーバが、加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をするステップと、前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求するステップと、前記第1の設定値、前記第2の設定値及び前記第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定するステップとを含む。
【0011】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記サーバが、前記加入者端末に対し、前記第1の設定値を要求して受信するステップをさらに含む。
【0012】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記第1の設定値及び前記第2の設定値は、前記MNOにおいて前記パラメータに対して事前設定された設定値と異なる。
【0013】
また、本発明の第4の態様は、第3の態様の方法であって、前記設定要求の前に、前記加入者端末に対し、前記第1の設定値をNullに設定するための要求を送信するステップと、前記加入者情報データベースに対し、前記第2の設定値をNullに設定するための要求を送信するステップと、前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの設定値を要求するステップと、前記設定値を前記MNOにおいて前記パラメータに対して事前設定された設定値として記憶するステップとを含む。
【0014】
また、本発明の第5の態様は、第4の態様の方法であって、前記加入者端末に対し、前記第1の設定値を前記パラメータに対して事前設定された設定値と異なる値に再設定するための要求を送信するステップをさらに含む。
【0015】
また、本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれかの態様の方法であって、前記第3の設定値の要求の後に、前記第3の設定値が前記第1の設定値に等しい場合、前記加入者端末に対し、前記第1の設定値をNullに設定するための要求を送信するステップと、前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの新たな第3の設定値を要求するステップと、前記新たな第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順をさらに判定するステップとを含む。
【0016】
また、本発明の第7の態様は、第1から第5のいずれかの態様の方法であって、前記第3の設定値の要求の後に、前記第3の設定値が前記第2の設定値に等しい場合、前記加入者情報データベースに対し、前記第2の設定値をNullに設定するための要求を送信するステップと、前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの新たな第3の設定値を要求するステップと、前記新たな第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順をさらに判定するステップとを含む。
【0017】
また、本発明の第8の態様は、第1から第7のいずれかの態様の方法であって、判定された決定手順のパターンと、前記MNOを識別するMNO識別子及び前記MNOにおける前記パラメータを決定するモビリティ管理設備を識別するモビリティ管理設備識別子の少なくとも一方との対応づけを記憶する。
【0018】
また、本発明の第9の態様は、サーバに、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をするステップと、前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求するステップと、前記第1の設定値、前記第2の設定値及び前記第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定するステップとを含む。
【0019】
また、本発明の第10の態様は、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法を実行させるための装置であって、加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をし、前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信して、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信し、前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求し、前記第1の設定値、前記第2の設定値及び前記第3の設定値を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様によれば、MNOが有する無線通信インフラに接続される加入者情報データベースに対し、SIMを有する加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値とは異なる第2の設定値を当該SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をした後に、当該加入者端末を再アタッチさせて、当該加入者端末から当該MNOを介して当該パラメータの第3の設定値を受信する。そして、第1の設定値、第2の設定値及び第3の設定値を用いることによって、当該MNOにおける、当該加入者端末に設定される当該パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】MNOが有する無線通信インフラを利用して無線通信サービスを提供するMVNOを説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかるシステムを示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる管理方法の流れを示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態にかかる決定手順の判定の一例の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0023】
図2に、本発明の一実施形態にかかるシステムを示す。当該システムに含まれる装置200は、MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための装置であり、SIMを有する加入者端末210と通信可能である。さまざまな方式が考えられるが、好ましい一例として、SMSによる通信が挙げられる。加入者端末210においては、SMSの送信元の電話番号が所定の番号である場合に装置200からの後述する要求に応答するようにすればよい。また、加入者端末210は、そのSIMを用いたセルラーLPWA等のセルラー方式による通信接続の確立のために、MNOが有する無線通信インフラに含まれる設備であるMME220と通信する。本明細書において「システム」とは、
図2に示す複数の構成要素の少なくとも一部を含む。
【0024】
より具体的には、加入者端末210は、MME220にアタッチ要求を送信し、アタッチ要求を受信したMME220は、HSS (Home Subscriber Server) 230に、アタッチ要求に含まれるIMSI等の加入者識別子を含むULR (Update Location Request) と呼ばれる要求を行う。HSS230には、加入者識別子に関連づけて加入者情報及び位置情報が記憶され、当該加入者情報には、低消費電力状態で用いられる1又は複数のパラメータの設定値が含まれることがある。HSS230からMME220には、ULRに対する応答として、ULA (Update Location Answer) が送信され、ULAに当該1又は複数のパラメータの少なくとも一部の設定値が含まれることがある。ULAを受信したMME220は、加入者端末210に対し、アタッチがなされたことの通知を送信する。当該通知には、MME220において決定した低消費電力状態で用いられる1又は複数のパラメータの設定値が含まれる。
【0025】
現在の仕様では、パラメータには4種類があるところ、以下の説明では、簡単のため、いずれか1つのパラメータに着目して記述する。また、すべてのパラメータについて、本実施形態にかかる管理方法によってMNOにおける決定手順を判定することが好ましいが、一部のパラメータのみについて推測する場合であっても、本発明の利点が享受されることを付言する。
【0026】
加入者端末210から送信されるアタッチ要求には、低消費電力状態で用いられるパラメータの設定値を含めることができ、MME220は、加入者端末210から受信した値、HSS230から受信した値、及びMME220に事前設定されている値の中から、MNOごとのポリシーに応じて、最終的に加入者端末210に対して設定する値を決定する。
【0027】
装置200は、HSS230と通信可能であり、たとえば、HTTPプロトコルに準拠して、より具体的にはREST APIを用いて通信可能である。装置200及びHSS230はともに、MNOが有する無線通信インフラを利用して無線通信サービスを提供するMVNO又はMVNEの設備とすることができる。装置200は、クラウド又はパブリッククラウド上の1又は複数のインスタンスとすることができ、HSS230についても、同一又は異なるクラウド又はパブリッククラウド上の1又は複数のインスタンスとすることができる。本明細書において「クラウド」とは、ネットワーク上で需要に応じてCPU、メモリ、ストレージ、ネットワーク帯域などのコンピューティングリソースを動的にプロビジョニングし、提供できるシステムを言う。たとえば、AWS(登録商標)等によりクラウドを利用することができる。また、「パブリッククラウド」とは、複数のテナントが利用可能なクラウドを言う。
【0028】
装置200は、通信インターフェースなどの通信部201と、プロセッサ、CPU等の処理部202と、メモリ、ハードディスク等の記憶装置又は記憶媒体を含む記憶部203とを備え、各処理を行うためのプログラムを実行することによって構成することができる。装置200は、1又は複数の装置、コンピュータ、インスタンスないしサーバを含むことがある。また、当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。当該プログラムは、記憶部203又は装置200からIPネットワークを介してアクセス可能なデータベース204等の記憶装置又は記憶媒体に記憶しておき、処理部202において実行することができる。以下で記憶部203に記憶されるものとして記述されるデータはデータベース204に記憶してもよく、またその逆も同様である。
【0029】
ここまでの説明において、4Gの技術用語である「MME」及び「HSS」を用いてきたが、5Gにおいては、前者は「AMF (Access and Mobility management Function)」、後者は「UDM (Unified Data Management)」及び「UDR (Unified Data Repository)」に対応する。以下の説明においても、MME及びHSSの用語を用いるものの、通信規格の進展によって技術用語は変わる場合があり、同等の機能を持つものを排除するものではないから、より一般に、前者は「モビリティ管理設備」、後者は「加入者情報データベース」と呼ぶことがある。
【0030】
まず、装置200は、加入者端末210に対し、加入者端末210に保持された、消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値Aを要求し(S301)、これを受信する(S302)。装置200が既に第1の設定値Aを記憶していれば、このステップは必ずしも必要ない。第1の設定値Aは、加入者端末210においてATコマンドを実行して取得することが可能である。
【0031】
次に、装置200は、HSS230に対し、当該パラメータの値として、第1の設定値Aとは異なる第2の設定値Bを加入者端末210のSIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求を送信する(S303)。HSS230では、加入者識別子をグループ単位で管理してもよく、グループ識別子を指定してグループ単位で当該パラメータの値を保持又は変更させてもよい。
【0032】
そして、装置200は、HSS230を介して、MNOが有する無線通信インフラに含まれる設備であるMME220に対し、当該SIM識別子の位置登録を解除するCLR (Cancel Location Request)を送信する(S304)。当該CLRは、位置登録の解除後に再アタッチを必要とすることの指定を含み、当該指定は、たとえば、CLR-Flagの「Reattach-Required」ビットを設定することにより与えることができる。CLRによる位置登録解除は、位置情報に加えて加入者情報を削除する。当該CLRを受信したMME220は、加入者端末210に対してデタッチ要求を送信する(S305)。当該デタッチ要求には、CLRに含まれていた指定に基づき、同様に再アタッチを必要とすることの指定が含まれる。
【0033】
加入者端末210は、その後、再アタッチ要求をMME220に送信し(S306)、MME220は、ULRをHSS230に送信する(S307)。HSS230は、MME220にULAを返して(S308)、MME220は、加入者端末210に対し、再アタッチがなされたことを通知する(S309)。この通知には、MME220が決定した当該パラメータの第3の設定値Cが含まれる。そして、加入者端末210は、MME220及びHSS230を介して、装置220に再アタッチ完了通知を送信する(S310乃至S312)。
【0034】
再アタッチ完了通知を受信した装置200は、加入者端末210に対し、当該パラメータの第3の設定値Cを要求し(S313)、これを受信する(S314)。そして、装置200は、第1の設定値A、第2の設定値B及び第3の設定値Cを用いて、MNOにおけるパラメータの値の決定手順を判定する(S315)。装置200は、以下に記述する、決定手順を判定するためのアルゴリズムの少なくとも一部を実行可能なプログラムにアクセス可能である。
【0035】
第1の設定値A、第2の設定値B及び第3の設定値Cの中から、低消費電力状態で用いるパラメータの値をいかに決定するかという手順について、以下の5通りのパターンが挙げられる。ここで、UEは、加入者端末210を表し、UE、MME及びHSSにおいて保持される設定値のいずれが優先されるかによってパターンが異なる。
【0036】
【0037】
第3の設定値Cが第1の設定値A及び第2の設定値Bと異なる場合、MME220は、パターン1を採用していると判定できる。第3の設定値Cが第1の設定値Aと等しい場合、MME220は、パターン1、パターン2又はパターン4を採用していると判定できる。第3の設定値Cが第2の設定値Bと等しい場合、MME220は、パターン1、パターン3又はパターン5を採用していると判定できる。
【0038】
第1の設定値A及び第2の設定値BをNullに設定して再アタッチを実行させれば、いずれのパターンであっても、第3の設定値CはMME220において当該パラメータに対して事前設定された設定値となる。このようにして予め保持されたMME220ないしMNOにおける事前設定値と第1の設定値A及び第2の設定値Bを異なる値に再設定しておけば、第3の設定値Cが第1の設定値Aと等しい場合、MME220は、パターン2又はパターン4を採用していると判定できる。同様に、第3の設定値Cが第2の設定値Bと等しい場合、MME220は、パターン3又はパターン5を採用していると判定できる。
【0039】
第3の設定値Cが第1の設定値Aと等しい場合、第1の設定値AをさらにNullに設定すれば、第3の設定値CはMNOにおける事前設定値か第2の設定値Bのいずれかとなり、前者であればパターン2、後者であればパターン4であると判定可能である。同様に、第3の設定値Cが第2の設定値Bと等しい場合、第2の設定値BをさらにNullに設定すれば、第3の設定値CはMNOにおける事前設定値か第1の設定値Aのいずれかとなり、前者であればパターン3、後者であればパターン5であると判定可能である。
【0040】
第1の設定値A及び第2の設定値BをNullに設定した再アタッチを事前に実行していない場合に、第3の設定値Cが第1の設定値Aと等しいときには、第1の設定値AをNullに設定すれば、第3の設定値CはMNOにおける事前設定値か第2の設定値Bのいずれかとなり、前者であればパターン1又は2、後者であればパターン4であると判定可能である。同様に、第3の設定値Cが第2の設定値Bと等しいときには、第2の設定値BをNullに設定すれば、第3の設定値CはMNOにおける事前設定値か第1の設定値Aのいずれかとなり、前者であればパターン1又は3、後者であればパターン5であると判定可能である。
【0041】
このように、第1の設定値Aと異なる第2の設定値Bを設定して一度再アタッチをさせるのみでは、いずれのパターンであるかを特定し切れないことが多いが、必要に応じて、その前又は後に第1の設定値A及び第2の設定値Bの少なくとも一方をNullに設定した上で再アタッチを行わせることで、パターンの判定が進む。
【0042】
3GPPの標準手順では、MME220が決定した設定値はHSS230に通知されないため、MNOが有する無線通信インフラを利用して無線通信サービスを提供するMVNO又はMVNEにおいては、最終的にどのような設定値で加入者端末210が動作しているかが不明であり、想定以上の電池消費又は予期せぬ不具合を引き起こす可能性がある。本実施形態にかかる方法によれば、設定値の決定手順を判定することができ、当該無線通信サービスの加入者は、より適切なデバイス管理を行えるようになる。
【0043】
図4に、上述した決定手順の判定の一例の流れを示す。まず、装置100は、第1の設定値A及び第2の設定値BをNullに設定した状態で、第3の設定値C1を取得する(S401)。このようにして取得される値C1は、MNO又は当該MNOが有する通信インフラに含まれるモビリティ管理設備に事前に設定された値である。そして、第1の設定値AをC1と異なる値に設定し、第2の設定値Bを設定された第1の設定値A及びC1と異なる値に設定した状態で、第3の設定値C2をさらに取得する(S402)。装置100は、C2がC1と等しいか否かを検証し、等しい場合にはパターン1であると判定される。等しくない場合、装置100はさらに、C2がAと等しいか否かを検証する(S404)。等しい場合には、AをNullに設定した状態で第3の設定値C3が取得され(S405)、C3がC1と等しいか否かに応じて(S406)、パターン2又はパターン4であると判定される。等しくない場合には、BをNullに設定した状態で第3の設定値C4が取得され(S407)、C4がC1と等しいか否かに応じて(S408)、パターン3又はパターン5であると判定される。
【0044】
MME220がいずれのパターンで設定値を決定しているかが判定できた場合、MNO識別子とパターンとの対応づけを装置200に記憶することが好ましい。MME220のホスト名等のモビリティ管理設備識別子がULRに含まれることから、装置200は、モビリティ管理設備識別子とパターンとの対応づけを記憶してもよい。MME220は、
図2においては単一の設備を図示しているが、MNOが有する無線通信インフラに複数のMMEが含まれることがある。たとえば、地理的冗長性を担保するために地域ごとに分散配置されたり、複数の通信キャリアが統合した後にMMEは個別に存続したりする場合である。したがって、装置200は、MNO識別子及びモビリティ管理設備識別子の両方と対応づけてパターンを記憶しておくことが好ましい。
【0045】
MNOが採用するパターンはMVNO又はMVNEに知らされずに変更されることがあることから、MNO識別子及びモビリティ管理設備識別子の少なくとも一方とパターンとの対応づけはさらに、パターンを特定した日時、当該対応づけを記憶した日時等の日時を含むことが好ましい。
【0046】
また、MNOが有する無線通信インフラを利用した無線通信サービスを提供するMVNO又はMVNEと加入者が契約しているプランに応じて、当該MNOにおける設定が異なることも想定されるため、MNO識別子及びモビリティ管理設備識別子の少なくとも一方とパターンとの対応づけはさらに、プラン名等のプランを識別するプラン識別子をさらに含んでもよい。この場合、MME220は、各プランを契約している加入者識別子の範囲を記憶しており、又は当該範囲にアクセス可能であり、加入者端末210からのアタッチ要求に含まれる加入者識別子に基づいて、プランに応じたパターンを選択し、当該パターンに従って、低消費電力状態で用いられる1又は複数のパラメータの値を決定する。
【0047】
なお、上述の説明において、ローミングについては具体的に述べていないものの、MME220が、加入者端末210のSIMを発行したMVNO又はMVNEのローミングパートナーであるMNOのモビリティ管理設備であっても、本発明は同様に適用可能である。
【0048】
また、本発明の代替形態として、HSS230がMME220に対してデタッチをするための要求としてCLRを送信するのではなく、MNOが有する通信インフラに接続されるPGW(図示せず)に対し、「Delete Bearer Request」と呼ばれるベアラ削除要求の送信要求を装置200が送信して、PGW経由でMME220に加入者端末210に対するデタッチ要求を送信させてもよい。PGWは、ベアラ削除要求の送信要求を受信した後に、MNOが有する通信インフラに含まれるSGW(図示せず)を介してMME220にベアラ削除要求を送信し、MME220は、加入者端末210に対してデタッチ要求を送信する。当該ベアラ削除要求は、ベアラ削除後の再アタッチを必要とすることの指定を含み、当該指定は、たとえばCause値「Reactivation Requested」を設定することにより与えることができる。また、当該デタッチ要求には、ベアラ削除要求に含まれていた指定に基づき、同様に再アタッチを必要とすることの指定が含まれる。このように、加入者識別子のデタッチをするための要求は、加入者端末210に向けて送信されればよく、必ずしもMME220に対して直接的に送信されるものに限られない。
【0049】
上記の説明において、4Gの技術用語である「SGW」及び「PGW」を用いたが、「SGW」及び「PGW」は「Cプレーン上の機能」及び「Uプレーン上の機能」の両方を有している。より一般にSGWのCプレーン上の機能については「MNOが有する通信インフラに含まれる、Cプレーン上のゲートウェイ」と呼び、Uプレーン上の機能については「MNOが有する通信インフラに含まれる、Uプレーン上のゲートウェイ」と呼ぶ。PGWのCプレーン上の機能については「MNOが有する通信インフラに接続される、Cプレーン上のゲートウェイ」と呼び、Uプレーン上の機能については「MNOが有する通信インフラに接続される、Uプレーン上のゲートウェイ」と呼ぶ。PGWは、MVNO又はMVNEが有する通信インフラに含まれる設備に該当する。SGWとPGWにCUPS(Control and User Plane Separation)を適用しCプレーン上のゲートウェイとUプレーン上のゲートウェイを分離して配置してもよい。5Gにおいては、「Cプレーン上のゲートウェイ」は「SMF (Session Management Function)」、「Uプレーン上のゲートウェイ」は「UPF (User Plane Function)」に対応する。
【0050】
上述の実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0051】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【符号の説明】
【0052】
200 装置
201 通信部
202 処理部
203 記憶部
204 データベース
210 加入者端末
220 MME(「モビリティ管理設備」に対応)
230 HSS(「加入者情報データベース」に対応)
【手続補正書】
【提出日】2022-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための方法であって、前記無線通信サービスを提供する事業者のサーバが、
SIMを有する加入者端末に対し、前記加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値を要求して受信するステップと、
加入者情報データベースに対し、前記第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をするステップと、
前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、
前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、
前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求するステップと、
前記第3の設定値と、前記第1の設定値及び前記第2の設定値との異同を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定するステップと
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記第1の設定値及び前記第2の設定値は、前記MNOにおいて前記パラメータに対して事前設定された設定値と異なる。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法であって、
判定された決定手順のパターンと、前記MNOを識別するMNO識別子及び前記MNOにおける前記パラメータを決定するモビリティ管理設備を識別するモビリティ管理設備識別子の少なくとも一方との対応づけを記憶する。
【請求項4】
MNOが有する無線通信インフラを利用して無線通信サービスを提供する事業者のサーバに、前記無線通信サービスの設定を管理するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
SIMを有する加入者端末に対し、前記加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値を要求して受信するステップと、
加入者情報データベースに対し、前記第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をするステップと、
前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信するステップと、
前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信するステップと、
前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求するステップと、
前記第3の設定値と、前記第1の設定値及び前記第2の設定値との異同を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定するステップと
を含む。
【請求項5】
MNOが有する無線通信インフラを利用して提供される無線通信サービスの設定を管理するための、前記無線通信サービスを提供する事業者の装置であって、
SIMを有する加入者端末に対し、前記加入者端末に保持された、低消費電力状態で用いられるパラメータの第1の設定値を要求して受信し、
加入者情報データベースに対し、前記第1の設定値とは異なる第2の設定値を前記SIMに含まれる加入者識別子に関連づけて保持するための設定要求をし、
前記加入者端末に向けて、前記加入者識別子のデタッチであって、再アタッチを必要とするデタッチをするための要求を送信して、前記MNOから前記加入者情報データベースを介して、再アタッチの完了通知を受信し、
前記加入者端末に、再アタッチ後の前記パラメータの第3の設定値を要求し、
前記第3の設定値と、前記第1の設定値及び前記第2の設定値との異同を用いて、前記MNOにおける前記パラメータの値の決定手順を少なくとも部分的に判定する。