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特開2023-58501レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールのための経皮的薬物送達システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058501
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールのための経皮的薬物送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/567 20060101AFI20230418BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230418BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230418BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20230418BHJP
   A61P 15/18 20060101ALI20230418BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/567
A61K9/70
A61K31/57
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/32
A61K47/34
A61P15/18
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005043
(22)【出願日】2023-01-17
(62)【分割の表示】P 2017568250の分割
【原出願日】2016-07-01
(31)【優先権主張番号】62/188,175
(32)【優先日】2015-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500134562
【氏名又は名称】ノーヴェン ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】クラコフスキー ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】リャオ ジュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に投与するための経皮的薬物送達システムを提供する。
【解決手段】レボノルゲストレルと、エチニルエストラジオールと、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーを含むアクリルポリマーと、保湿剤と、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートからなる群から選択される第1のエンハンサーと、第1のエンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドからなる群から選択される第2のエンハンサーとを含むポリマーマトリックスを含み、経皮的薬物送達システムが、少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを持続的に経皮送達する、経皮的薬物送達システムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用のための可撓性定形システムの形態の、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮送達するための経皮的薬物送達システムであって、レボノルゲストレルと、エチニルエストラジオールと、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーを含むアクリルポリマーと、保湿剤と、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートからなる群から選択される第1のエンハンサーと、第1のエンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドからなる群から選択される第2のエンハンサーとを含み、第1および第2のエンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドからなる群から選択される第3のエンハンサーを含んでもよいポリマーマトリックスを含む、経皮的薬物送達システム。
【請求項2】
ポリマーマトリックスが、乾燥質量%基準で、約0.1~3%のレボノルゲストレルと、約0.1~5%のエチニルエストラジオールと、約1~30%の第1、第2および任意選択の第3の透エンハンサーと、約3~10%の保湿剤と、残余のアクリルポリマーとを含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項3】
保湿剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP(クロスポビドン)およびポリビニルピロリドン/ビニルアセタート(コポビドン)からなる群から選択される、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項4】
第1および第の2エンハンサーが、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルである、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項5】
第1、第2および第3のエンハンサーが、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびグリセリルモノオレアートである、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項6】
第1および第2のエンハンサーが、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルであり、組成物が第3のエンハンサーとしてイソプロピルミリスタートをさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項7】
ポリマーマトリックスが、シリコーン感圧接着剤をさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項8】
少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりレボノルゲストレルの持続的な送達を実現するのに十分なレボノルゲストレル量を含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項9】
少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりエチニルエストラジオールの持続的な送達を実現するのに十分なエチニルエストラジオール量を含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項10】
バッキング層をさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項11】
剥離ライナーをさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項12】
ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層をさらに含む、請求項1から11までのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項13】
表面接着層が、シリコーン感圧接着剤を含む、請求項12に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項14】
ポリマーマトリックスが、第3のエンハンサーとしてイソプロピルミリスタートをさらに含む、請求項13に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項15】
レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に送達する方法であって、請求項1から10までのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システムをそれを必要とする対象の皮膚または粘膜に適用することを含み、経皮的薬物送達システムがポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよい、方法。
【請求項16】
対象がヒトの女性対象であり、方法が避妊のためである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
経皮的薬物送達システムが、最大7日間継続して適用される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールをそれを必要とする対象に経皮的に送達する場合に使用するための、経皮的薬物送達システムであって、ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよく、対象の皮膚または粘膜に適用される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項19】
それを必要とする女性対象を避妊させる場合に使用するための、経皮的薬物送達システムであって、ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよく、対象の皮膚または粘膜に適用される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項20】
それを必要とする女性対象を避妊させる医薬を調製するためのレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの使用であって、医薬が、請求項1から10までのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システムの形態であり、経皮的薬物送達システムがポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよい、使用。
【請求項21】
局所適用のための可撓性定形システムの形態でレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含む経皮的薬物送達システムを調製する方法であって、レボノルゲストレルと、エチニルエストラジオールと、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーと、保湿剤と、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートからなる群から選択される第1のエンハンサーと、第1エンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラートからなる群から選択される第の2エンハンサーとを含み、第1および第2のエンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、およびイソプロピルミリスタートからなる群から選択される第3エンハンサーを含んでもよいポリマーマトリックスを調製することを含む、方法。
【請求項22】
ポリマーマトリックスに表面接着層を適用することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、その全体の内容がその全体の参照によって本明細書に組み込まれる、2015年6月2日に出願された米国特許仮出願第62/188,175号に関する優先権を35U.S.C.§119(e)に従って請求する。
レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に送達するための組成物および方法が本明細書において記載される。該組成物および方法は、例えば、避妊薬として有用である。
【背景技術】
【0002】
剤形としての経皮的送達システム(接着パッチ)は、この25年間にわたり膨大な数の特許出願の主題であり、多数の特許を産み出したが、市販製品は少数しか産み出されていない。この分野に従事する人にとっては、市販製品の数が比較的少ないのは当然のことである。規制、経済、および市場の面での障壁が市場の製品数に制限してはいるが、医師および患者の要求を満足させる所望の物理的および薬物動態的パラメータを実現する経皮的送達システムを開発するという課題はさらに難題である。市販製品を開発する際に考慮すべきパラメータとして、薬物の溶解度、薬物の安定性(例えば、他の成分材料および/または環境との相互作用に起因する場合がある)、所期の使用期間にわたり所望の送達速度で治療量の薬物を送達すること、適用される身体部位における十分な接着、使用中と除去中および除去後のいずれにおいても不快感、刺激および増感が最小であり、かつ一体性を有すること(例えば、カール、皴、剥離および滑りが最小であること)、ならびに除去後の残留接着剤(または他の成分)が最小であることを挙げることができる。大きさもまた、製造および患者視点から、また外観も患者視点から重要である場合がある。1つを超える薬物を製剤化する場合、これらの因子はもっと複雑になってくる。
本発明は、一般には、経皮的薬物送達システムに、より詳細には、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを送達するための経皮的薬物送達システムに関する。
Climara Pro(登録商標)(Bayer)は、半透明なポリエチレンバッキングフィルム、エストラジオールとレボノルゲストレルとポリビニルピロリドン/ビニルアセタートコポリマーとを含むアクリラート接着性マトリックス、およびシリコーン化またはフッ素化いずれかのポリマーコート付ポリエステルフィルムの保護ライナーからなる三層の接着性系マトリックス経皮的パッチである。活性成分は、エストラジオールおよびレボノルゲストレルである。Climara Pro(登録商標)は、血管運動症状の治療に使用され、それには、避妊のために必要されるもののわずか約1/8の治療血中レベルが必要である。
【0003】
米国特許第7,045,145号は、バッキング層と、バッキング層に固定された接着性ポリマーマトリックスとを含む経皮的送達システムであって、接着性ポリマーマトリックスが、質量パーセンテージ基準で、(a)約0%から約10%の保湿剤/可塑剤、(b)約20%から約70%の接着性コポリマー、(c)約10%から約60%の、それぞれ約2:1:1:0.8から約6:1:1:0.8の範囲の比で存在するジメチルスルホキシド、乳酸の脂肪族(C8-C20)アルコールエステル、乳酸の低級(C1-C4)アルキルエステルおよびカプリン酸を含む混合物である皮膚浸透強化剤の組合せ、(d)プロゲスチンホルモン、およびエストロゲンホルモンを組み合わせることによって製剤化される経皮的送達システムを対象とする。
米国特許第7,384,650号は、バッキング層とバッキング層に固定された接着性ポリマーマトリックスとを含む経皮的ホルモン送達システムであって、接着性ポリマーマトリックスが、(a)接着性ポリマー、(b)保湿剤、(c)システム作製後の接着性ポリマーマトリックスの最終質量パーセンテージで、約4%から約12%のジメチルスルホキシド、約4.2%から約12.6%の乳酸の脂肪族(C8-C20)アルコールエステル、約0.7%から約2.3%の乳酸の低級(C1-C4)アルキルエステルおよび約3%から約9%のカプリン酸から本質的になる皮膚浸透強化剤の組合せ、(d)プロゲスチン、および(e)エストロゲンを含む経皮的ホルモン送達システムを対象とする。
【0004】
米国特許第8,221,785号は、バッキング層とバッキング層に固定された接着性ポリマーマトリックスとを含む避妊薬送達システムであって、接着性ポリマーマトリックスが、(a)ポリアクリラートコポリマーを含む接着性ポリマーと、(b)ポリビニルピロリドンを含む保湿剤と、(c)システム作製後の接着性ポリマーマトリックスの最終質量パーセンテージで、約4%から約12%のジメチルスルホキシド、約4.2%から約12.6%の乳酸の脂肪族(C8-C20)アルコールエステル、約0.7%から約2.3%の乳酸の低級(C1-C4)アルキルエステルおよび約3%から約9%のカプリン酸から本質的になる皮膚浸透強化剤の組合せと、(d)レボノルゲストレルと、(e)エチニルエストラジオールまたは17ベータ-エストラジオールとを含む避妊薬送達システムを対象とする。
米国特許第5,770,219号は、皮膚または粘膜領域に少なくとも1つのエストロゲンを投与するための、感圧性接着剤本体中に分散されたエストロゲンを含む経皮的薬物送達デバイスで使用するための薬物含有マトリックスであって、前記感圧性接着剤がアセタートアクリラートコポリマーと、ポリビニルピロリドンとを含み、該マトリックスが皮膚浸透エンハンサーを本質的に含まない薬物含有マトリックスを対象とする。一部の実施形態では、該マトリックスは、レボノルゲストレルをさらに含む。
米国特許出願第14/141,935号は、レボノルゲストレルと、エチニルエストラジオールと、アクリルポリマーとを含むポリマーマトリックスを含む局所適用のための可撓性定形システムの形態でレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮送達するための経皮的薬物送達システムであって、アクリルポリマーがヒドロキシ官能性アクリルポリマーを含む経皮的薬物送達システムを対象とする。一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、ポリビニルピロリドン(PVP)およびポリビニルピロリドン/ビニルアセタート(PVP/VA)を実質的に含まない。
【0005】
それでも、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの経皮的送達からは、依然として課題の提示が続いている。この特定の薬物の組合せによって提示される課題の一部として、レボノルゲストレルの高い送達速度およびパッチサイズに対するその影響;レボノルゲストレルのポリマーマトリックス中での望ましくない結晶化;および7日の期間にわたる(例えば、治療レベルでの)持続的な薬物送達を実現できる組成物を製剤化することの困難性が挙げられる。
したがって、レボノルゲストレルやエチニルエストラジオールなど特定の薬物および薬物の組合せを送達するように設計された経皮的薬物送達システムに対する必要性が依然として残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一部の実施形態によれば、局所適用のための可撓性定形システムの形態の、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮送達するための経皮的薬物送達システムであって、レボノルゲストレルと、エチニルエストラジオールと、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーを含むアクリルポリマーと、保湿剤と、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートからなる群から選択される第1のエンハンサーと、第1のエンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドからなる群から選択される第2のエンハンサーとを含み、第1および第の2エンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドからなる群から選択される第3のエンハンサーを含んでもよい、ポリマーマトリックスを含む、経皮的薬物送達システムが提供される。
一部の実施形態では、第1および第2のエンハンサーが、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルである。一部の実施形態では、第1、第2および第3のエンハンサーが、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびグリセリルモノオレアートである。一部の実施形態では、第1および第2のエンハンサーが、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルであり、組成物が第3のエンハンサーとしてイソプロピルミリスタートをさらに含む。
【0007】
一部の実施形態では、第1の浸透エンハンサーは、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートから選択される。一部の実施形態では、第2の浸透エンハンサーは、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドから選択される。一部の実施形態では、第1の浸透エンハンサーは、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートから選択され、第2の浸透エンハンサーは、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートから選択され、ポリマーマトリックスは、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびジメチルイソソルビドから選択される第3の浸透エンハンサーをさらに含んでもよい。さらなる特定の実施形態では、浸透エンハンサーは、グリセリルモノオレアートおよびジプロピレングリコール;グリセリルモノオレアートおよびメチルラウラート;グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル;グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコールおよびジメチルイソソルビド;グリセリルモノオレアート、メチルラウラートおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル;またはグリセリルモノオレアート、メチルラウラートおよびジメチルイソソルビドを含む。
【0008】
任意の実施形態に従って、保湿剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP(クロスポビドン)およびポリビニルピロリドン/ビニルアセタート(PVP/VA、コポビドン)の1つまたは複数であってよい。
任意の実施形態に従って、ポリマーマトリックスは、乾燥質量%基準で、約0.1~3%のレボノルゲストレルと、約0.1~5%のエチニルエストラジオールと、約1~30%の第1、第2および任意選択の第3の浸透エンハンサーと、約3~10%の保湿剤と、残余のアクリルポリマーとを含むことができる。
任意の実施形態に従って、経皮的薬物送達システムは、少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりレボノルゲストレルの持続的な送達を実現するのに十分なレボノルゲストレル量を含むことができる。
任意の実施形態に従って、ポリマーマトリックスは、シリコーン感圧接着剤をさらに含むことができる。
【0009】
任意の実施形態に従って、経皮的薬物送達システムは、少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりエチニルエストラジオールの持続的な送達を達成するのに十分なエチニルエストラジオール量を含むことができる。
一部の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、薬物含有ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層をさらに含む。特定の実施形態では、表面接着剤は、シリコーン感圧接着剤を含む。さらなる特定の実施形態では、ポリマーマトリックスは、エンハンサーとしてイソプロピルミリスタートを含み、シリコーン表面接着剤を含む。
任意の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、バッキング層および/または剥離ライナーをさらに含むことができる。
また、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に送達する方法であって、本明細書に記載の経皮的薬物送達システムをそれを必要とする対象の皮膚または粘膜に適用することを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、対象はヒトの女性対象である。一部の実施形態では、該方法は、避妊のためである。一部の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、最大7日間継続して適用される。
【0010】
また、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを対象に経皮的に送達する場合に使用するための、および対象を避妊させる場合に使用するための、本明細書に記載の経皮的薬物送達システムも提供される。また、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを対象に経皮的に送達する場合に使用するための、および対象を避妊させる場合に使用するための、本明細書に記載の経皮的薬物送達システム医薬の調製でのレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの使用も提供される。これらの実施形態のいずれかに従って、対象はヒトの女性対象であってよい。これらの実施形態のいずれかに従って、経皮的薬物送達システムは、最大7日間継続して適用することができる。
【0011】
また、本明細書に記載のポリマーマトリックスを調製することを含む、本明細書に記載のレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含む経皮的薬物送達システムを調製する方法も提供される。一部の実施形態では、該方法は、ポリマーマトリックスに表面接着層を適用することをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】バッキング、薬物入り接着性マトリックス層、および剥離ライナー(存在する場合)からなる本明細書に記載のモノリシック経皮的送達システムを例示する図である。
図1B】薬物入り接着性マトリックス層と剥離ライナー(存在する場合)との間に表面接着層をさらに含む本明細書に記載の経皮的送達システムを例示する図である。
図2】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。グリセリルモノオレアート(GMO)とメチルラウラート(MeLau)とを含むシステムに対する結果を示す図である。
図3】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。グリセリルモノオレアート(GMO)とジプロピレングリコール(DPG)とを含むシステムに対する結果を示す図である。
図4】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。グリセリルモノオレアート(GMO)とジプロピレングリコール(DPG)とを含み、表面接着剤を有するシステムに対する結果を示す図である。
図5】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。グリセリルモノオレアート(GMO)とメチルラウラート(MeLau)とを含み、表面接着剤を有するシステムに対する結果を示す図である。
図6】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。GMOとDPGとを含み、表面接着剤を有する場合の、および有しない場合のシステムに対する結果を直接比較する図である。
図7】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。GMOとMeLauとを含み、表面接着剤を有する場合の、および有しない場合のシステムに対する結果を直接比較する図である。
図8】それぞれClimara(登録商標)ProまたはOrthoEvra(登録商標)と比較した例3(配合20~22)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積レボノルゲストレル(LNG)およびエチニルエストラジオール(EE)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
図9A】例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)累積および平均エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
図9B】例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)累積および平均エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
図10A】例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)累積および平均エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
図10B】例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)累積および平均エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
図11A】例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)累積および平均エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
図11B】例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)累積および平均エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一部の実施形態に従って、本発明は、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に送達するための経皮的薬物送達システムを提供する。特定の実施形態では、該システムは、7日の期間にわたり使用するための製剤化を可能にすることによってなどで、所望の薬物動態的特性を示し、および/または十分なせん断特性など所望の物理的特徴を示し、および/またはレボノルゲストレルの低減されたまたは最小化された結晶化など所望の安定性特徴を示す。
レボノルゲストレルが感圧接着剤中で溶解度が低く、レボノルゲストレルの浸透性が小さいために、無理のない大きさのシステムによって7日の期間にわたりレボノルゲストレルの治療有効量の送達が可能である経皮的薬物送達システムを設計することが困難である。
驚くべきことに、本発明者らは、ヒドロキシ官能基(ビニルアセタートを含むヒドロキシル官能基などの)を含むアクリルポリマーが長期間(7日など)にわたり持続的に送達されるようにレボノルゲストレルを製剤化するのに特に適していることを発見した。詳細には、本発明者らは、特にかかるポリマーが、安定なポリマーマトリックスを提供しつつ、レボノルゲストレル(およびエチニルエストラジオール)を十分に可溶化できることを特定した。
【0014】
また驚くべきことに、本発明者らは、ジプロピレングリコール(DPG)およびジエチレングリコールモノエチルエーテルの各々(例えば、Transcutol(登録商標))が、単独で、ならびに互いとの組合せならびに/またはグリセリルモノオレアート(GMO)およびイソプロピルミリスタート(IMP)の1つまたは複数との組合せでレボノルゲストレル用の有効なエンハンサーであることも発見した。また驚くべきことに、本発明者らは、ジプロピレングリコール(DPG)、グリセリルモノオレアート(GMO)、およびメチルラウラート(MeLau)の各々が、単独で、ならびに互いとの組合せならびに/またはジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))およびジメチルイソソルビド(DMI)の1つまたは複数との組合せでレボノルゲストレル用の有効なエンハンサーであることも発見した。また驚くべきことに、本発明者らは、グリセリルモノオレアート(GMO)およびイソプロピルミリスタート(IMP)の1つまたは複数と一緒であってもよいジプロピレングリコール(DPG)とジエチレングリコールモノエチルエーテルとの組合せが、レボノルゲストレル用の有効なエンハンサーであり、ジプロピレングリコール(DPG)とジエチレングリコールモノエチルエーテルとグリセリルモノオレアート(GMO)との組合せ、またはジプロピレングリコール(DPG)とジエチレングリコールモノエチルエーテルとイソプロピルミリスタート(IMP)との組合せが、レボノルゲストレル用の特に有効なエンハンサーであることも発見した。また驚くべきことに、本発明者らは、DPG、GMOおよびMeLauの2つ以上の組合せが、レボノルゲストレル用の特に有効なエンハンサーであり、ジエチレングリコールモノエチルエーテルとDMIとの1つまたは複数と一緒になったDPG、GMOおよびMeLauの2つ以上の組合せもレボノルゲストレル用の有効なエンハンサーであることも発見した。
【0015】
また驚くべきことに、本発明者らは、レボノルゲストレルを含むポリマーマトリックス中に保湿剤(PVP、クロスポピドンおよび/またはPVP/VAなど)を含ませることが有利であることも発見した。例えば、驚くべきことに、本発明者らは、保湿剤がレボノルゲストレル(levonogestrel)の結晶化を抑制できることおよび/またはせん断など接着特性などの所望の物理特性を賦与できることを発見した。
また驚くべきことに、本発明者らは、シリコーン表面接着層などの表面接着層を使用することによって、薬物フラックスに実質的な影響を与えずに本明細書に記載のシステムの物理特性および接着特性を改善できることも発見した。
したがって、一部の態様に従って、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に送達するための経皮的薬物送達システムおよび方法が提供される。特定の実施形態では、該システムは、少なくとも3日、4日、7日またはそれ以上の期間など長期間にわたり、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの持続的な送達を示す。
【0016】
定義
本明細書で使用される技術および科学用語は、別段の定義がない限り、本発明が関連する当業者によって通常理解される意味を有する。本明細書では、当業者に公知である多様な方法が参照される。参照される公知の方法を提示する刊行物およびその他の材料は、完全に提示されたものとしてその全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者に公知である任意の適切な材料および/または方法は、本発明を実施する際に利用することができる。しかし、特定の材料および方法が記載される。以下の説明および例で参照される材料、試薬などは、別段の注記がない限り、市販の供給源から入手可能である。
本明細書では、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、単数のみを表すと明言されていない限り、単数と複数の両方を表す。
「約(about)」という用語および一般の範囲の使用は、約という用語によって限定されていてもいなくても、含まれた数は提示されたその数自体に限定されず、本発明の趣旨から逸脱しない限り、引用された範囲内に実質的に存在する範囲を指すことが意図されることを意味する。本明細書では、「約」は、当業者の理解する範囲であり、それが使用される文脈中である程度まで変化する。それが使用される文脈が与えられても、当業者に明確でない用語が使用される場合、「約」は、特定の用語の最大プラスまたはマイナス10%を意味する。
【0017】
「ポリマーマトリックスの乾燥質量に対する質量%」および「乾燥質量%」という句は、例えば、揮発性の加工用溶媒の乾燥および蒸発後の最終ポリマーマトリックス中の成分の質量を指す。
「ポリマーマトリックスの湿潤質量に対する質量%」という句および「湿潤質量%」は、ポリマーマトリックスを調製するのに使用される揮発性の加工用溶媒の質量を含めない、ポリマーマトリックス中の他の成分の質量に対する、ポリマーマトリックスを調製するのに使用される問題の成分の質量を指す。
本明細書での「実質的に含まない」という句は、記載の組成物(例えば、経皮的薬物送達システム、ポリマーマトリックスなど)が、問題の組成物の総質量に対して約5質量%未満、約3質量%未満、または約1質量%未満の排除された成分を含むことを一般に意味する。本明細書での「含まない(free of)」という句は、記載の組成物(例えば、ポリマーマトリックスなど)が、意図された成分としては排除された成分を添加することなく製剤化されるが、但し、痕跡量が他の成分中に、または副生物もしくは汚染物質として存在する場合があり、その結果該組成物が多くとも痕跡量のみの排除された成分を含むことを意味する。
【0018】
本明細書では、「対象」は、ヒトを含めて薬物療法を必要とする任意の動物を指す。例えば、対象は、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを用いて治療もしくは予防できる状態に罹患しているまたは状態を発症する危険性を有している可能性がある、または健康維持のためにレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを摂取している可能性がある。特定の実施形態では、対象は、避妊のためにレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを摂取するメスの対象である。
本明細書では、「治療有効量」および「治療レベル」という句は、かかる治療を必要とする対象に薬物が投与された場合の特定の医薬的応答を提供するそれぞれ薬物投与量、または対象中の血漿濃度を意味する。薬物の治療有効量または治療レベルは、かかる投与量が当業者によって治療有効量と見なされてはいるが、本明細書に記載の状態/疾患を治療するのに常に有効であるとは限らないことを強調しておきたい。便宜上のみではあるが、例示的な投与量、薬物送達量、治療有効量および治療レベルは、成人のヒト対象に関して以下に提供される。当業者は、特定の対象および/または状態/疾患を治療するのに必要な標準慣行に従ってかかる量を調整することができる。
【0019】
本明細書では、「活性表面積」は、経皮的薬物送達システムの薬物含有層の表面積を意味する。
本明細書では、「被覆質量」は、経皮的薬物送達システムの活性表面積の単位面積当りの薬物含有層の質量を指す。
本明細書では、「フラックス」(「浸透速度」とも呼ばれる)は、皮膚または粘膜組織を通しての薬物の吸収として定義され、Fickの拡散第一法則:
J=-D(dCm/dx)
によって記述される。
Jがg/cm2/秒で表したフラックスである場合、Dは、皮膚または粘膜を通過する薬物のcm2/秒で表した拡散係数であり、dCm/dxは、皮膚または粘膜を通過する薬物の濃度勾配である。
本明細書では、「経皮的」という用語は、皮膚または粘膜との直接接触による薬物の送達、投与または適用を指す。かかる送達、投与または適用は、また経皮的、経皮の、経粘膜的なおよび頬側のとも呼ばれる。本明細書では、「皮膚の」として、口の、頬側の、鼻の、直腸のおよび膣の粘膜が挙げられる、皮膚および粘膜が挙げられる。
【0020】
本明細書では、「経皮的薬物送達システム」は、皮膚(または上で注記した他の任意の表面)に適用した場合に薬物を放出する組成物を含むシステム(例えば、デバイス)を指す。経皮的薬物送達システムは、薬物含有層を含み、バッキング層および/または剥離ライナー層を含んでもよい。一部の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、接触する表面に合わせることができ、かかる接触を維持することによって、有害な生理応答なしで、および対象に対する局所適用中の水性接触による顕著な分解なしで局所適用を促進することができる実質的に非水性の固体形態である。多数のかかるシステムは、当技術分野で公知であり、経皮的薬物送達パッチなどとして市販されている。以下に説明されるように、一実施形態では、経皮的薬物送達システムは、感圧接着剤または生体接着剤を含む薬物含有ポリマーマトリックスを含み、使用者の(例えば、対象の)皮膚に直接適用するために採用されている。他の実施形態では、ポリマーマトリックスは、非接着性であり、使用者の皮膚に対して適用および接着するための別個の接着手段(別個の接着層など)を提供することができる。
【0021】
本明細書では、「ポリマーマトリックス」は、1つまたは複数の薬物を含むポリマー組成物を指す。一部の実施形態では、マトリックスは、感圧接着性ポリマーまたは生体接着性ポリマーを含む。他の実施形態では、マトリックスは、感圧接着剤または生体接着剤を含まない。本明細書では、ポリマーは、それが接着剤自体の特性を有する場合、またはそれが、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤または他の添加剤を添加することによって接着剤としての機能を有する場合、「接着剤」である。したがって、一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、その中に溶解されたまたは分散された薬物と共に、感圧接着性ポリマーまたは生体接着性ポリマーを含む。ポリマーマトリックスはまた、本明細書に記載の粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、エンハンサー、共溶媒、フィラー、酸化防止剤、可溶化剤、結晶化抑制剤、または他の添加剤を含むことができる。米国特許第6,024,976号には、本明細書に記載の経皮的システムに従って有用であるポリマーブレンドが記載されている。米国特許第6,024,976号の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書では、「感圧接着剤」という用語は、非常に小さい圧力を適用することによって大部分の基材に即座に接着し、永久に粘着性を保持する粘弾性材料を指す。ポリマーは、それが感圧接着剤自体の特性を有する場合、または粘性付与剤、可塑剤または他の添加剤と混合することによって感圧接着剤として機能する場合、本明細書で使用される用語の意味内の感圧接着剤である。
【0022】
感圧接着剤という用語にはまた、多様なポリマーの混合物および多様な分子量のポリイソブチレン(PIB)などのポリマーの混合物が含まれ、各生成した混合物は感圧接着剤である。最後の場合、混合物中の低分子量のポリマーは、「粘性付与剤」とは認められないが、前記用語は、添加されるポリマーと分子量以外で異なる添加剤については有効である。
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、室温で感圧接着剤であり、経皮的薬物送達システム分野で使用される接着剤に対して他の望ましい特徴を有する。かかる特徴として、皮膚に対する良好な接着性、皮膚に対する大きな外傷なしではがされる、換言すれば除去される能力、経年化しても粘着性が保持されることなどが挙げられる。一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、示差走査熱量計を使用して測定すると、約-70℃~0℃のガラス転移温度(Tg)を有する。
本明細書では、「ゴム系感圧接着剤」という用語は、感圧接着剤の特性を有し、少なくとも1つの天然または合成エラストマー性ポリマーを含む粘弾性材料を指す。
【0023】
一部の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、1つまたは複数の追加のポリマーマトリックス層、または経皮的薬物送達システムを使用者の皮膚に接着する1つもしくは複数の接着層などの1つまたは複数の追加の層を含む。特定の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、薬物含有ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含む。他の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、モノリシックであり、システムがその中に溶解または分散された薬物を有する感圧接着剤または生体接着剤を含み、速度制御メンブランまたは表面接着剤を含まない単一ポリマーマトリックス層を含むことを意味する。
経皮的薬物送達システムはまた、薬物不浸透性バッキング層またはフィルムを含むこともできる。一部の実施形態では、バッキング層は、ポリマーマトリックス層の一つの表面に隣接する。存在する場合、バッキング層は、ポリマーマトリックス層(および存在する任意の他の層)を環境から保護し、使用中の環境への薬物の損失および/または他の成分の放出を防止する。バッキング層として使用するのに適した材料は、当技術分野で周知であり、ポリエステル、ポリエチレン、ビニルアセタート樹脂、エチレン/ビニルアセタートコポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンなどのフィルム、金属ホイル、不織布、布地および市販の積層体を含むことができる。典型的なバッキング材料は、2~1000μmの範囲の厚さを有する。例えば、3MのScotchPak(商標)1012または9732バッキング材料(エチレンビニルアセタートコポリマーの熱遮断層を備えたポリエステルフィルム)は、本明細書記載の経皮的薬物送達システムで有用である。
【0024】
経皮的薬物送達システムはまた、通常、システムのバッキング層と反対の表面に隣接して位置する剥離ライナーを含むこともできる。存在する場合、剥離ライナーは、使用する前にシステムから除去されて、局所適用の前にポリマーマトリックス層および/または接着層を暴露する。剥離ライナーとして使用するのに適した材料は、当技術分野で周知であり、その材料として、Bio-Release(登録商標)ライナーおよびSyl-off(登録商標)7610(両方ともシリコーン系)と表示されたDow Corning Corporationの市販製品ならびに3Mの1020、1022、9744、9748および9749 Scotchpak(商標)(フッ素ポリマーでコートされたポリエステルフィルム)が挙げられる。
経皮的薬物送達システムは、パッケージすることもでき、また一般に経皮的薬物送達システム用の従来技術で使用されるパウチストック材料などのパッケージで提供することもできる。例えば、DuPontのSurlyn(登録商標)は、パウチストック材料で使用することができる。
本明細書では、「モノリシック」経皮的薬物送達システムは、バッキング層および/または剥離ライナーを含むことができ、パッケージで提供することができる。
【0025】
ポリマーマトリックス
一部の実施形態に従って、本明細書に記載の組成物は、レボノルゲストレル、エチニルエストラジオール、少なくとも1つのアクリルポリマー、少なくとも1つの浸透エンハンサー、および保湿剤を含む、それらから本質的になる、またはそれらからなるポリマーマトリックスを含む。この文脈では、「から本質的になる」という句は、他のポリマー成分を実質的に含まない(例えば、1つまたは複数のアクリルポリマー以外のポリマーを実質的に含まない)ことを意味するが、ポリマーマトリックスは、経皮的組成物で有用であることが公知である他の賦形剤(粘性付与剤、可塑剤、架橋剤または当技術分野公知の他の賦形剤など)を含んでもよい。但し、これらの他の賦形剤が、医薬として許容できないレベルまでは組成物の物理的なおよび/または薬物動態的な特性を低下させないことを条件とする。
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、(乾燥質量%基準で)約0.1~3%のレボノルゲストレルと、約0.1~5%のエチニルエストラジオールと、約1~30%の浸透エンハンサーと、約3~10%の保湿剤と、残余のアクリルポリマーとを含む
【0026】
レボノルゲストレル
レボノルゲストレルは、合成プロゲストゲンである。これはキラル化合物13-エチル-17-エチニル-17-ヒドロキシ-1,2,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロシクロペンタ[a]フェナントレン-3-オンの光学異性体である。
エチニルエストラジオール
エチニルエストラジオールは、化学名19-ノル-17α-プレグナ-1,3,5(10)-トリエン-20-イン-3,17-ジオールを有するエストロゲンである。
ポリマーマトリックス内に組み込まれるレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの量は、所望の治療効果およびシステムが治療を提供する時間間隔に応じて変動する。大部分の薬物では、皮膚内の薬物通過が、送達の律速段階である。システム中の薬物の最小量は、システムが治療を提供する時間間隔で皮膚を通過する薬物量に基づいて選択される。一部の実施形態では、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮的に送達するためのシステムは、約1日、約3日、約7日、またはそれ以上の期間にわたり使用される。したがって、一部の実施形態では、システムは、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、またはそれ以上を含めての1日から3日、7日、またはそれ以上までの期間にわたり薬物の治療有効量を送達するのに十分な薬物(例えば、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオール)量を含む。
【0027】
驚くべきことに、本発明者らは、レボノルゲストレルの経皮的送達に実質的に影響を与えることなく、エチニルエストラジオールの経皮的送達を選択および制御するように、エチニルエストラジオールの量を選択および制御することができることを発見した。つまり、エチニルエストラジオールのフラックスは、レボノルゲストレルの経皮的送達に実質的に影響を与えることなく、エチニルエストラジオールの相対量を増加することによって増加させることができる。
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、約1%から約10%乾燥質量など、約1%から約20%を含めて、約0.1%から約50%乾燥質量の活性薬剤を含む。一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、約1%から約5%乾燥質量など、約1%から約10%を含めて、約0.1%から約25%乾燥質量のレボノルゲストレルを含む。一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、約1%から約5%乾燥質量など、約1%から約10%を含めて、約0.1%から約25%乾燥質量のエチニルエストラジオールを含む。
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、約0.1%から3%乾燥質量または0.1%から5%乾燥質量のレボノルゲストレルを含む。一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、約0.1%から3%乾燥質量または0.1%から5%乾燥質量のエチニルエストラジオールを含む
【0028】
アクリルポリマー
「アクリルポリマー」という用語は、当技術分野と同様に「ポリアクリラート」、「ポリアクリルポリマー」、および「アクリル接着剤」と互換的に、本明細書で使用される。アクリル系ポリマーは、多様なアクリル酸またはエステルのホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどのいずれであってもよい。一部の実施形態では、アクリル系ポリマーは、接着性ポリマーである。他の実施形態では、アクリル系ポリマーは、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤または他の添加剤を添加することによって接着剤として機能する。
アクリルポリマーとして、コポリマー、ターポリマーおよびマルチポリマーを挙げることができる。例えば、アクリルポリマーは、多様なアクリル酸のホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどのいずれであってもよい。一部の実施形態では、アクリルポリマーの量および型は、使用されるレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの量に依存する。
【0029】
本発明を実施する際に有用であるアクリルポリマーとして、アクリル酸および他の共重合可能なモノマーの1つまたは複数のモノマーのポリマーが挙げられる。アクリルポリマーとしてまた、アルキルアクリラートおよび/またはメタクリラートおよび/または共重合可能な二次モノマーまたは官能基を有するモノマーのコポリマーが挙げられる。それらの官能基に基づくアクリル系ポリマーの組合せもまた企図される。官能基を有するアクリル系ポリマーとして、非官能性モノマー単位に加えて遊離官能基を有するモノマー単位をさらに含むコポリマーおよびターポリマーが挙げられる。モノマーは、単官能性であっても多官能性であってもよい。添加されるモノマーの各型の量を変化させることによって、生成したアクリルポリマーの接着特性を変化させることができるが、これは当技術分野では公知である。一部の実施形態では、アクリルポリマーは、少なくとも50質量%のアクリラートまたはアルキルアクリラートモノマー、0~20%のアクリラートと共重合可能な官能性モノマー、および0~40%の他のモノマーからなる。
【0030】
使用することができるアクリラートモノマーとして、アクリル酸およびメタクリル酸ならびにメチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、アミルアクリラート、ブチルアクリラート、ブチルメタクリラート、ヘキシルアクリラート、メチルメタクリラート、ヘキシルメタクリラート、ヘプチルアクリラート、オクチルアクリラート、ノニルアクリラート、2-エチルブチルアクリラート、2-エチルブチルメタクリラート、イソオクチルアクリラート、イソオクチルメタクリラート、2-エチルヘキシルアクリラート、2-エチルヘキシルメタクリラート、デシルアクリラート、デシルメタクリラート、ドデシルアクリラート、ドデシルメタクリラート、トリデシルアクリラート、トリデシルメタクリラート、グリシジルアクリラート、および対応するメタクリル酸エステルなどのアルキルアクリル酸またメタクリル酸エステルが挙げられる。
非官能性アクリル系ポリマーとして、遊離官能基を含まないまたは実質的に含まない任意のアクリル系ポリマーを挙げることができる。
使用することができる上記のアルキルアクリラートまたメタクリラートと共重合可能である、官能性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルアクリラート、ジメチルアミノエチルメタクリラート、tert-ブチルアミノエチルアクリラート、tert-ブチルアミノエチルメタクリラート、メトキシエチルアクリラートおよびメトキシエチルメタクリラートが挙げられる。
【0031】
本明細書では、「官能性モノマーまた基」は、アクリル系ポリマーを直接に修飾する、またはさらなる反応用の部位を提供する反応性化学基を有する、通常アクリル系ポリマー中に存在するモノマー単位である。官能基の例として、カルボキシル、エポキシ、ヒドロキシル、スルホキシル、およびアミノ基が挙げられる。官能基を有するアクリル系ポリマーは、上記の非官能性モノマー単位に加えて遊離官能基を有するモノマー単位をさらに含む。モノマーは、単官能性であっても多官能性であってもよい。これらの官能基として、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基、エポキシ基などが挙げられる。典型的なカルボキシル官能性モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、およびクロトン酸が挙げられる。典型的なヒドロキシ官能性モノマーとして、2-ヒドロキシエチルメタクリラート、2-ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシメチルアクリラート、ヒドロキシメチルメタクリラート、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、ヒドロキシブチルアクリラート、ヒドロキシブチルメタクリラート、ヒドロキシアミルアクリラート、ヒドロキシアミルメタクリラート、ヒドロキシヘキシルアクリラート、ヒドロキシヘキシルメタクリラートが挙げられる。上記したように、一部の実施形態では、アクリルポリマーは、かかる官能基を含まない。
【0032】
一部の実施形態では、アクリルポリマーは、ビニルアセタート基を有するアクリルポリマーを含めて、ヒドロキシ官能性モノマーを含む。かかるポリマーは、一般に、レボノルゲストレルに対する良好な溶解性を示し、そのために、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも7日、またはそれ以上の期間など長期間にわたり活性薬剤の治療有効量の経皮的な送達を実現するシステムを調製するために十分なレボノルゲストレルを入れることが可能である。
本発明の実施に適したアクリル接着剤のさらなる詳細および例は、Satas,“Acrylic Adhesives,” Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology,2nd ed.,p.396-456 (D.Satas,ed.),Van Nostrand Reinhold,New York (1989); “Acrylic and Methacrylic Ester Polymers,” Polymer Science and Engineering,Vol.1,2nd ed., p.234-268,John Wiley & Sons, (1984);米国特許第4,390,520号;および米国特許第4,994,267号に記載されており、これらのすべては、それらの全体が明示的に参照により組み込まれている。
【0033】
適切なアクリルポリマーはまた、商標DURO-TAK(登録商標)(DURO-TAK(登録商標)87-900A、87-2516、87-2287、-4098、-4287、-2852、-2196、-2296、-2194、-2516、-2070、-2353、-2154、-2510、-9085、-9088および73-9301など)およびGELVA(登録商標)Multipolymer Solution(GELVA(登録商標)2480、788、737、263、1430、1753、1151、2450、2495、3067、3071、3087および3235など)で両方ともがHenkel Corporation、Bridgewater、NJから販売されているアクリル系接着剤など、市販の感圧接着剤を含む。他の適切なアクリル接着剤として、商標EUDRAGIT(登録商標)でEvonik Industries AG Pharma Polymers、Darmstadt、Germanyから販売されているものが挙げられる。例えば、ポリマー鎖中に反応性の官能性OH基を有するヒドロキシ官能性接着剤を使用することができる。この型の接着剤の市販例として、限定されないが、GELVA(登録商標)737、788、および1151とDURO-TAK(登録商標)87-2287、-4287、-2510、-2516 387-2510、および387-2287の両方が挙げられる。
一部の実施形態では、アクリルポリマーは、100%を含めて、ポリマーマトリックスのポリマー含量の最大100質量%を構成する。
【0034】
シリコーンポリマー
「シリコーンポリマー」という用語は、当技術分野で公知であるように用語シロキサン、ポリシロキサンおよびシリコーンと互換的に本明細書で使用される。適切なシリコーンポリマーはまた感圧接着剤であってもよい。したがって、一部の実施形態では、シリコーン系ポリマーは接着性ポリマーである。他の実施形態では、シリコーン系ポリマーは、粘性付与剤、可塑剤、架橋剤、または他の添加剤を添加することによって接着剤として機能する。
適切なシリコーンポリマーは、2つの主成分(i)ポリマーまたはガムおよび(ii)粘性付与樹脂に基づくシリコーン感圧接着剤を含む。シリコーン感圧接着剤は、典型的には高分子量ポリジオルガノシロキサンであるガムを樹脂と架橋させて、酢酸エチルやヘプタンなどの適切な有機揮発性溶媒中の縮合反応を介して三次元シリケート構造を生成することによって調製することができる。樹脂のポリマーに対する比を調節することによってシリコーン感圧接着剤の物理特性を修正することができる。Sobieski et al.,“Silicone Pressure Sensitive Adhesives,” Handbook of Pressure-Sensitive Adhesive Technology,2nd ed., pp.508-517 (D.Satas,ed.), Van Nostrand Reinhold,New York (1989)を参照されたい。
【0035】
例示的なシリコーン感圧ポリマーは、感圧接着剤を含む接着剤(例えば、局所適用の部位に張り付くことができる)である。シラノール濃度を低減させたシリコーンポリマーの例示的な例として、その全体が参照により本明細書に組み込まれた米国特許第Re.35,474号および米国特許第6,337,086号に記載されたもの、およびBIO-PSA(登録商標)7-4100、-4200および-4300製品シリーズとしてDow Corning Corporation(Dow Corning Corporation、Medical Products、Midland、Michigan)から市販されているものなどのシリコーン系接着剤(およびキャップされたポリシロキサンの接着剤)、ならびに相溶性有機揮発性溶媒(エチルアセタートまたはヘプタンなど)を用いて生成され、BIO-PSA(登録商標)7-4400シリーズ、-4500シリーズおよび4600シリーズで市販されている非感圧性接着剤が挙げられる。
本明細書に記載の、ポリマーマトリックス、組成物および方法で有用であるシリコーン感圧性接着剤のさらなる詳細および例は、その全体が参照により本明細書にすべて明示的に組み込まれる以下の米国特許第4,591,622号、第4,584,355号、第4,585,836号、および第4,655,767号に記載されている。また、シリコーン流体が本明細書に記載のポリマーマトリックスおよび方法で使用するために企図されていることも理解されたい。
【0036】
一部の実施形態では、シリコーンポリマーは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に対して、ポリマーマトリックスの、約1%、約5%、約10%、約15%、または約25質量%を含めて、約1%~約25%を構成する。一部の実施形態では、シリコーンポリマーの量および型は、ポリマーマトリックスで使用されるアクリルポリマー(存在すれば)の量および型ならびに/または製剤化されるレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの量に依存する。例えば、一部の実施形態では、アクリルポリマーおよびシリコーンポリマーの量は、ポリマーマトリックス中の薬物の飽和濃度を修正するように調節することによってシステムからのおよび皮膚を通過する薬物の送達速度に影響を与える。
浸透エンハンサー
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、浸透エンハンサーを含む。「浸透エンハンサー」は、皮膚中の薬物送達を加速することが知られている薬剤である。これらの薬剤はまた、加速剤、アジュバントおよび収着促進剤とも呼ばれ、本明細書では集合的に「エンハンサー」と呼ばれる。このクラスの薬剤として、例えば、角質層の水分を保持する能力を変化させること、皮膚の軟化、皮膚の浸透性の改善、浸透補助剤もしくは毛包開口剤として作用すること、または境界層を含めた皮膚状態を変化させることによって、経皮吸収を改善する機能を有する薬剤を含めた広範な作用機構を有する薬剤が挙げられる。
【0037】
例示的な浸透エンハンサーとして、限定されないが、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコールなどの多価アルコール;オリーブ油、スクアレン、およびラノリンなどの油;セチルエーテルおよびオレイルエーテルなどの脂肪族エーテル;イソプロピルミリスタートなどの脂肪酸エステル;ケラチンの水分を保持する能力に影響するアラントインなどの尿素および尿素誘導体;ケラチン浸透性に影響を与える、ジメチイデシルホスホキシド、メチルオクチルスルホキシド、ジメチルラウリルアミド、ドデシルピロリドン、イソソルビトール、ジメチルアセトニド、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、およびジメチルホルムアミドなどの極性溶媒;ケラチンを軟化するサリチル酸;浸透補助剤であるアミノ酸;毛包開口剤であるベンジルニコチナート;皮膚および投与薬物の表面状態を変化させるラウリルスルファート塩などの高分子量脂肪族界面活性剤が挙げられる。他の薬剤として、オレイン酸およびリノール酸、アスコルビン酸、パンテノール、ブチル化ヒドロキシトルエン、トコフェロール、トコフェリルアセタート、トコフェリルリノレアート、プロピルオレアート、およびイソプロピルパルミタートが挙げられる。
【0038】
上記したように、本発明によって対処された一つの課題は、レボノルゲストレルの皮膚浸透性が低いことである。驚くべきことに、本発明者らは、各々のジプロピレングリコール(DPG)およびジエチレングリコールモノエチルエーテルが、単独で、ならびに互いとの組合せならびに/またはグリセリルモノオレアート(GMO)およびイソプロピルミリスタート(IMP)の1つまたは複数との組合せでレボノルゲストレル用の効果的なエンハンサーであることを発見した。また驚くべきことに、本発明者らは、グリセリルモノオレアート(GMO)およびイソプロピルミリスタート(IMP)の1つまたは複数と一緒であってもよいジプロピレングリコール(DPG)とジエチレングリコールモノエチルエーテルの組合せが、レボノルゲストレル用の効果的なエンハンサーであり、ジプロピレングリコール(DPG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびグリセリルモノオレアート(GMO)の組合せ、またはジプロピレングリコール(DPG)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびイソプロピルミリスタートの組合せがレボノルゲストレル用の特に効果的なエンハンサーであることを発見した。したがって、一部の実施形態では、浸透エンハンサーは、DPG、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびGMOの組合せ、ならびにDPG、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびIPMの組合せを含めて、DPGとジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標))とを含み、GMOおよびIPMの1つまたは複数を一緒に含んでもよい。
【0039】
また驚くべきことに、本発明者らは、各々のDPG、GMOおよびMeLauが、単独で、ならびに互いとの組合せならびに/またはジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび/またはDMIの1つまたは複数との組合せでレボノルゲストレル用の効果的なエンハンサーであり、DPG、GMOおよびMeLauの2つ以上の組合せが、単独でまたはジエチレングリコールモノエチルエーテルおよび/またはDMIの1つまたは複数とのさらなる組合せで特に有効であることを発見した。したがって、一部の実施形態では、浸透エンハンサーは、DPG、GMOおよびMeLau、または3つすべてを含めて、これらの任意の2つ以上を含む。他の実施形態では、浸透エンハンサーは、GMO、DPGおよびMeLauの1つまたは複数と、ジエチレングリコールモノエチルエーテルおよびDMIの1つまたは複数との混合物を含む。特定の実施形態では、浸透エンハンサーは、グリセリルモノオレアートおよびジプロピレングリコール;グリセリルモノオレアートおよびメチルラウラート;グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル;またはグリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコールおよびジメチルイソソルビドを含む。
驚くべきことに、これらのエンハンサーを使用することによって7日などの持続送達期間にわたり避妊に有効なレボノルゲストレルフラックスが上昇することが見出された。これらの効果は、以下の例でより詳細に議論される。(エチニルエストラジオールは、ヒドロキシル官能性アクリルポリマー中で比較的大きな溶解度を有するので、そのフラックスは、ポリマーマトリックス中のその濃度を修正することによって調整することができる。)
一部の実施形態では、浸透エンハンサーの総量は、最大30%を含めて、ポリマーマトリックスの最大約30乾燥質量%、20%を含めて、最大約20%、10%を含めて、最大約10%、または5乾燥質量%を含めて、最大約5%である。一部の実施形態では、浸透エンハンサーの総量は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、10%、15%、20%、25%、28%または30質量%を含めて、約1%から約25%である。
【0040】
エンハンサーの組合せが使用される場合、個別のエンハンサーは、ポリマーマトリックスの乾燥質量に対して、約0.05%、0.1%、0.15%、0.2%、0.25%、0.3%、0.35%、0.4%、0.45%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、11.0%、12.0%、13.0%、14.0%、15.0%、16.0%、17.05%、18.0%、19.0%および20.0質量%など多様な量で使用することができる。例えば、DPGは、約5乾燥質量%以下または約2.75乾燥質量%以下の量で使用される場合、レボノルゲストレルのフラックスを上昇させることができる。GMOは、約6.5乾燥質量%以下または約3乾燥質量%以下の量で使用される場合、レボノルゲストレルのフラックスを高めることができる。ジエチレングリコールモノエチルエーテルは、約0.5乾燥質量%以下または約0.4乾燥質量%以下または約0.3乾燥質量%以下の量で使用される場合、レボノルゲストレルのフラックスを高めることができる。DMIは、約1.5乾燥質量%以下の量で使用される場合、レボノルゲストレルのフラックスを高めることができる。IPMは、約5乾燥質量%以下の量で使用される場合、レボノルゲストレルのフラックスを高めることができる。このガイダンスを考慮することで、当業者は、エンハンサーの量を変動させた場合のレボノルゲストレルのフラックスを評価することによってなど、通例のスクリーニングによって、本明細書に記載の1つまたは複数の他のエンハンサーと組み合わせて使用される本明細書に記載の各個別のエンハンサーのフラックス上昇量を決定することができる。
【0041】
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、約2.75質量%のジプロピレングリコールと、約0.3質量%から約0.4質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル(約0.3質量%または約0.4質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含めて)と、約3質量%から約6.5質量%のグリセリルモノオレアート(約3質量%または約6.5質量%のグリセリルモノオレアートを含めて)とを含む。他の実施形態では、ポリマーマトリックスは、すべてポリマーマトリックスの乾燥質量(乾燥質量%)に対して、約5質量%のジプロピレングリコールと、約0.3%から約0.4質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテル(約0.3%または約0.4質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルを含めて)と、約5質量%のイソプロピルミリスタートとを含む。
【0042】
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、すべてポリマーマトリックスの湿潤質量(湿潤質量%)に対して、約10質量%のグリセリルモノオレアートと約10質量%のジプロピレングリコールとを;または約10質量%のグリセリルモノオレアートと約5質量%のメチルラウラートとを;または約10質量%のグリセリルモノオレアートと、約10質量%のジプロピレングリコールと、約8質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルとを;または約10質量%のグリセリルモノオレアートと、約10質量%のジプロピレングリコールと、約8質量%のジメチルイソソルビドとを含む。
他の実施形態では、ポリマーマトリックスは、すべてポリマーマトリックスの湿潤質量(湿潤質量%)に対して、約3質量%のグリセリルモノオレアートと、約6.5質量%のジプロピレングリコールと、約2.1質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルとを;または約3質量%のグリセリルモノオレアートと、約4.2質量%のジプロピレングリコールと、約2.75質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルとを;または約3質量%のグリセリルモノオレアートと約4.2質量%のジプロピレングリコールと、約4.2質量%のジメチルイソソルビドとを含む。
【0043】
他の実施形態では、ポリマーマトリックスは、すべてポリマーマトリックスの乾燥質量(乾燥質量%)に対して、3質量%のグリセリルモノオレアートと、約4.25質量%のジプロピレングリコールと、約0.3質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルとを;または約3質量%のグリセリルモノオレアートと、約2.75質量%のジプロピレングリコールと、約0.4質量%のジエチレングリコールモノエチルエーテルとを;または約3質量%のグリセリルモノオレアートと、約2.75質量%のジプロピレングリコールと、約2.5質量%のジメチルイソソルビドとを含む。
【0044】
保湿剤
一部の実施形態では、ポリマーマトリックスは、保湿剤を含む。経皮的薬物送達システムで使用するのに適した保湿剤は、公知であり、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP(クロスポビドン)およびポリビニルピロリドン/ビニルアセタート(PVP/VA、コポビドン)、ならびに任意のその2つ以上の組合せが挙げられる。
保湿剤の量は、レボノルゲストレルの結晶化を抑制するのに有効な量および/またはせん断などポリマーマトリックスの接着特性などの所望の物理的特性を賦与するのに有効な量など所望の特性に基づいて選択することができる。一部の実施形態では、保湿剤は、約3%、約5%または約10乾燥質量%を含めて、ポリマーマトリックスの最大約3%から約10乾燥質量%の量で使用される。
他の成分
ポリマーマトリックスは、多様な増粘剤、フィラーおよび経皮的薬物送達システムで使用することが公知である他の添加剤または成分をさらに含むことができる。
上記したように、ポリマーマトリックスが感圧接着剤または生体接着剤を含む実施形態では、ポリマーマトリックスは、システム(例えば、貯留デバイス)の接着部分として働くことができ、または多層システムの1つまたは複数の層として働くことができる。あるいは、その中に溶解されたまたは分散された薬物を有する感圧接着剤または生体接着剤を含むポリマーマトリックスは、モノリシックデバイスを構成することもできる。ポリマーマトリックスが接着剤を含まず、代わりに、例えば、重合性薬物貯留槽を含む実施形態では、ポリマーマトリックスは、当業者には公知であるように、1つまたは複数の接着層と組み合わせて、または周囲の接着部分と共に使用することができる。
【0045】
経皮的薬物送達システム
一部の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、ポリマーマトリックス層から本質的になる。「ポリマーマトリックス層から本質的になる」とは、該システムが、追加の表面接着層、速度制御ポリマー層、速度制御メンブラン、または薬物貯留槽など、薬物送達に影響を与える任意の他の層を含有しないことを意味する。しかし、ポリマーマトリックス層から本質的になるシステムが、バッキング層および/または剥離ライナーを含んでもよいことは理解されよう。
一部の実施形態では、経皮的薬物送達システムは、図1Bに例示されたように薬物含有ポリマー層の皮膚接触側に配置された表面接着層を含む。特定の実施形態では、表面接着剤は、シリコーン感圧接着剤などのシリコーン接着剤を含み、上に議論したようなものなどの1つまたは複数の浸透エンハンサーを含んでもよいシリコーン表面接着剤である。特定の実施形態では、表面接着剤は、乾燥質量/質量基準で、約90から約100%のシリコーン接着性ポリマーと、約0から約10%の1つまたは複数の浸透エンハンサーとを含む。表面接着層で使用するための適切な感圧接着剤として、BIO-PSA4100、4200、4300、4500、4600シリーズ中のものなどDow Corningが製造したシリコーン感圧接着剤が挙げられる。表面接着剤は、単一のシリコーン感圧接着剤または2つ以上のシリコーン感圧接着剤のブレンドからなっていてよい。特定の実施形態では、表面接着剤は、Bio PSA4502、またはBIO-PSA4502:Bio-PSA4602の比が1:1または1:3であるブレンドなどBIO-PSA5402と4602のブレンドからなる。上記し、以下の例で例示するように、驚くべきことに、本明細書に記載のシステム中の表面接着層の存在は薬物フラックスに実質的に影響を与えないことが発見された。
【0046】
該システムは、経皮的適用に適した任意の形状または大きさであってよい。本明細書に記載のポリマーマトリックスは、当技術分野で公知の方法によって調製することができる。ポリマーマトリックスは、当技術分野で公知の方法によってシステムになるように形成することができる。例えば、ポリマーマトリックス材料は、当技術分野で公知の方法によってバッキング層および剥離ライナーに適用し、使用に適した大きさおよび形状に形成することができる。例えば、ポリマーマトリックスが形成された後に、当業者に公知の任意の方式によって、剥離ライナー層またはバッキング層などの支持層と接触させることができる。かかる技法として、カレンダーコーティング、ホットメルトコーティング、溶液コーティングなどが挙げられる。表面接着層が存在する場合、システムは、バッキング材料上にポリマーマトリックスを形成し、剥離ライナー上に表面接着層を形成し、次いで表面接着層をポリマーマトリックス層に適用することによって作製することができる。
【0047】
例えば、ポリマーマトリックスは、ポリマーマトリックスの成分をブレンドし、マトリックス材料を、バッキング層や剥離ライナーなどの支持層に適用し、乾燥によってなどで、任意の残留溶媒を除去することによって調製することができる。レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールは、任意の段階で添加することができる。一実施形態では、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含めたポリマーマトリックス成分すべてが一緒にブレンドされる。別の実施形態では、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオール以外のポリマーマトリックス成分は、一緒にブレンドされ、次いでレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールが、その中に溶解または分散される。段階の順序、成分の量、ならびに撹拌または混合の量および時間は、専門家によって決定され、最適化され得る。例示的な一般の方法は、以下の通りである:
ポリマー、レボノルゲストレル、エチニルエストラジオール、エンハンサー、および有機溶媒(例えば、トルエン、または酢酸エチルおよび/もしくはイソプロピルアルコール)の適切な量が、容器中で合わされ、一緒に完全に混合される。
【0048】
次いで、配合物はコーティング操作に移され、そこで制御された特定の厚さで保護剥離ライナー上にコートされる。次いでコートされた生成物は、オーブン中を通されることによって揮発性の工程溶媒すべてが除去される。
次いで剥離ライナー上の乾燥生成物は、バッキング材料に接合され、ロールに巻かれて貯蔵される。
表面接着剤が使用される場合、適切な溶媒中に表面接着剤を含有する表面接着剤溶液は、剥離ライナー上にコートし、対流オーブン中で乾燥することができる。剥離ライナー上の乾燥表面接着剤は、調製済みの薬物入り接着性ポリマーマトリックスと積層することによって(その剥離ライナーを除去した後に)表面接着剤を有する積層体を形成することができる。
適切な大きさおよび形状の「システム」は、ロール材料から打ち抜かれ、次いで小袋に入れられる。
本明細書に記載のシステムを作製するのに適した他の製造方法は、当技術分野で公知である。
【0049】
一部の実施形態では、本明細書に記載のシステムをそれを必要とする対象の皮膚または粘膜に適用することによってレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの有効な経皮的薬物送達を実行する方法が提供される。一部の実施形態では、該システムは、1、2、3、4、5、6または7日など、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、または少なくとも約7日の期間にわたり適用される。一部の実施形態では、該方法は、適用期間中、対象内でレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの治療レベルを実現するのに有効である。
一部の実施形態では、本明細書に記載のシステムは、避妊のためなど、女性患者によって使用されるために設計される。
以下の特定の例は、本明細書に記載の経皮的薬物送達システムおよびポリマーマトリックスの例示として含まれている。これらの例は、いかなる点においても本発明の範囲を限定することを意図するものでない。本発明の他の態様は、本発明が関連する当業者には明白である。
【実施例0050】
(例1)
ヒドロキシル官能性アクリルポリマー中に0.5%のエチニルエストラジオールと1.2%のレボノルゲストレルとを含むポリマーマトリックスを、以下の成分を用いて調製し、バッキング材料に適用し、乾燥し、シリコーン感圧接着剤のブレンドを含む表面接着層を提供してもよい。せん断特性およびヒトの死体皮膚中の薬物フラックスを評価した。Climara(登録商標)Pro(レボノルゲストレル)またはOrtho Evra(エチニルエストラジオール)と比較して、せん断結果を以下の表に表示し、フラックス結果を図2~5に表示する。図6および7は、表面接着剤がある場合とない場合のシステムを使用する薬物フラックスを直接比較する。
【0051】
【0052】
せん断データから分るように、保湿剤なしで製剤化されたマトリックスは、非常に小さいせん断(および低い接着強度)を示したが、保湿剤を用いて製剤化されたマトリックスは、満足なせん断値(および満足な接着強度)を示した。図でまた分るように、また保湿剤を用いて製剤化されたマトリックスは、良好な薬物フラックスをも示した。
驚くべきことに、結果は、GMO、DPGおよびMeLauエンハンサーの多様な組合せを含む本明細書に記載のシステムが、良好なJmax値と共に良好な薬物フラックスを実現することができ、また、長期の送達期間にわたる薬物フラックスの持続を実現し、累積送達の増加を実現し、低下も比較的小さいことを示す。例えば、図2~5を参照されたい。
また驚くべきことに、結果は、表面接着剤の使用が薬物フラックスに実質的に影響を与えなかったことを示す。図6および7を参照されたい。さらに、表面接着剤を用いたシステムのせん断値は、表面接着剤を用いない対応するシステムのせん断値に匹敵した。
【0053】
(例2)
ヒドロキシ官能性アクリルポリマー中に0.5%のエチニルエストラジオールと1.2%のレボノルゲストレルとを含むポリマーマトリックスを、以下の成分を用いて調製し、バッキング材料に適用し、乾燥し、シリコーン感圧接着剤を含む表面接着層を提供してもよい。ヒトの死体皮膚中の薬物フラックスを評価し、Climara(登録商標)ProおよびエンハンサーとしてDMSOを有する別の参照システムと比較した。結果を以下の表に表示する。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
驚くべきことに、結果は、GMOおよびDPGエンハンサーを含む本明細書に記載のシステムが、避妊に有効であると報告されている参照DMSO系組成物のもの(上で報告された「比」データによって示されている)に匹敵する薬物フラックスを実現できることを示す。また驚くべきことに、結果は、エンハンサーとしてGMO、DPGおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはDMIを含む本明細書に記載のシステムが参照DMSO系組成物より大きいフラックスレベルを実現できることを示す。
例1と同様に、またこれらの結果は、表面接着剤が、薬物フラックスにマイナスの影響を与えないことを示すが、これは驚きであった。
【0058】
(例3)
ヒドロキシ官能性アクリルポリマー中に0.3%のエチニルエストラジオールと1.0%のレボノルゲストレルとを含むポリマーマトリックスを、以下の成分を用いて調製し、バッキング層に適用し、乾燥した。ヒトの死体皮膚中の薬物フラックスを評価し、Climara(登録商標)ProおよびエンハンサーとしてDMSOを有する別の参照システムと比較した。結果を以下の表および図8に表示する。
配合20(乾燥質量%):
EE=0.3%
LNG=1.0%
PVP K-30=5.0%
GMO=3.0%
DPG=4.25%
Transcutol(登録商標)=0.3%
DuroTak(登録商標)87-2516=Q.S.(約86.15%)
配合21(乾燥質量%):
EE=0.3%
LNG=1.0%
PVP K-30=5.0%
GMO=3.0%
DPG=2.75%
Transcutol(登録商標)=0.4%
DuroTak(登録商標)87-2516=Q.S.(約87.55%)
配合22(乾燥質量%):
EE=0.3%
LNG=1.0%
PVP K-30=5.0%
GMO=3.0%
DPG=2.75%
DMI=2.5%
DuroTak(登録商標)87-2516=Q.S.(約85.45%)
【0059】
【0060】
【0061】
(例4)
ポリマーマトリックスを調製して溶解度および薬物フラックスに基づいてレボノルゲストレル含量を最大化し、エチニルエストラジオール含量を変動させて避妊用に使用するのに適したエチニルエストラジオールのレボノルゲストレルに対する比を得た。マトリックスをバッキング層および剥離ライナーに適用し、それらの特性を評価して以下に要約した。
配合23(乾燥質量%)
EE=0.25%
LNG=1.0%
IPM=5%
DPG=5%
Transcutol(登録商標)=0.3%
K-30=10%
DuroTak 87-2516=Q.S.=78.45%
コート質量12.5mg/cm2で適用
シリコーン感圧接着表面接着剤(5mg/cm2
配合24(乾燥質量%)
EE=0.3%
LNG=1.0%
GMO=6.5%
DPG=2.75%
Transcutol(登録商標)=0.4%
K-30=5%
DuroTak 87-2516=Q.S.=84.05%
コート質量:12.5mg/cm2
配合25(乾燥質量%)
EE=0.3%
LNG=1.0%
GMO=3%
DPG=2.75%
Transcutol(登録商標)=0.4%
K-30=5%
Bio PSA 4502=15%
DuroTak 87-2516=Q.S.=72.55%
コート質量:12.5mg/cm2
【0062】
図9~11は、例4(配合23~25)に記載の経皮的送達システムからの経時的な(0~168時間)平均および累積エチニルエストラジオール(EE)(図9A、10A、11A)およびレボノルゲストレル(LNG)(図9B、10B、11B)フラックス(μg/cm2/時)を例示する。結果は、エンハンサーであるジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびグリセリルモノオレアートまたはイソプロピルミリスタートのいずれかを含む本明細書に記載のシステムが良好な薬物送達を実現し、また長期の送達期間にわたり持続した薬物フラックスを実現できることを示す。
【0063】
配合23~25(EEおよびLNGを含まない)の偽薬バージョンは、摩耗試験および動物刺激試験において良好な結果を示したので(データは示さず)、7日適用で使用するのに特に良好な配合であることが分った。
こうした調査の結果はまた、エンハンサーとしてのイソプロピルミリスタートとシリコーン感圧接着表面接着剤とを含むポリマーマトリックスを含む本明細書に記載のシステムが良好なフラックス特性と特に良好な7日摩耗特性との両方を示し、7日摩耗調査において接着性が優れていたことを示す。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所適用のための可撓性定形システムの形態の、レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを経皮送達するための経皮的薬物送達システムであって、レボノルゲストレルと、エチニルエストラジオールと、ヒドロキシ官能性アクリルポリマーを含むアクリルポリマーと、保湿剤と、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートからなる群から選択される第1のエンハンサーと、第1のエンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジメチルイソソルビドからなる群から選択される第2のエンハンサーとを含ポリマーマトリックスを含み、経皮的薬物送達システムが、少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを持続的に経皮送達する、経皮的薬物送達システム。
【請求項2】
ポリマーマトリックスが、乾燥質量%基準で、約0.1~3%のレボノルゲストレルと、約0.1~5%のエチニルエストラジオールと、約1~30%の第1および第2エンハンサーと、約3~10%の保湿剤と、残余のアクリルポリマーとを含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項3】
保湿剤が、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP(クロスポビドン)およびポリビニルピロリドン/ビニルアセタート(コポビドン)からなる群から選択される、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項4】
第1および第2のエンハンサーが、ジプロピレングリコールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルである、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項5】
第1および第2エンハンサーがグリセリルモノオレアートおよびメチルラウラートである、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項6】
ポリマーマトリックスが、シリコーン感圧接着剤をさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項7】
バッキング層をさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項8】
剥離ライナーをさらに含む、請求項1に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項9】
ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層をさらに含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項10】
表面接着層が、シリコーン感圧接着剤を含む、請求項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項11】
レボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールをそれを必要とする対象に経皮的に送達する場合に使用するための、経皮的薬物送達システムであって、ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよく、対象の皮膚または粘膜に適用される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項12】
それを必要とする女性対象を避妊させる場合に使用するための、経皮的薬物送達システムであって、ポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよく、対象の皮膚または粘膜に適用される、請求項1からまでのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項13】
経皮的薬物送達システムが、最大7日間継続して適用される、請求項11または12に記載の経皮的薬物送達システム。
【請求項14】
それを必要とする女性対象を避妊させる医薬を調製するためのレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールの使用であって、医薬が、請求項1からまでのいずれか1項に記載の経皮的薬物送達システムの形態であり、経皮的薬物送達システムがポリマーマトリックスの皮膚接触側に配置された表面接着層を含んでもよい、使用。
【請求項15】
局所適用のための可撓性定形システムの形態でレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを含む経皮的薬物送達システムを調製する方法であって、
乾燥質量%基準で、約0.1~3%のレボノルゲストレルと、約0.1~5%のエチニルエストラジオールと、ヒドロキシル官能性アクリルポリマーと、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP(クロスポビドン)およびポリビニルピロリドン/ビニルアセタート(コポビドン)からなる群から選択される約3~10%の保湿剤と、約1~30%の第1および第2のエンハンサーとを含むポリマーマトリックスを調製することを含み、
第1のエンハンサーが、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、およびメチルラウラートからなる群から選択され、第2のエンハンサーが、第1エンハンサーと異なり、グリセリルモノオレアート、ジプロピレングリコール、メチルラウラートからなる群から選択され
経皮的薬物送達システムが、少なくとも3日、少なくとも4日、または少なくとも7日の期間にわたりレボノルゲストレルおよびエチニルエストラジオールを持続的に経皮送達する、方法。
【請求項16】
ポリマーマトリックスに表面接着層を適用することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【外国語明細書】