(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058507
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】軸受要素、軸受、機械、及び車両
(51)【国際特許分類】
F16C 33/64 20060101AFI20230418BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20230418BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20230418BHJP
B21K 1/05 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F16C33/64
F16C19/06
F16C33/58
B21K1/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023005554
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2022063597の分割
【原出願日】2021-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2020117331
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森 浩平
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 瑞希
(72)【発明者】
【氏名】新藤 功
(72)【発明者】
【氏名】小山 寛
(57)【要約】
【課題】軸受要素を、低コストで製造することができる方法を実現する。
【解決手段】軸受要素の本体は、外周面と第1軸面との間の第1面取り部(2b1)と、外周面と第2軸面との間の第2面取り部(2b2)とを有する。本体のメタルフローは、第1面取り部(2b1)の表面近傍において第1面取り部(2b1)に沿って連続している第1パターン(MFP1)と、第2面取り部(2b2)の表面近傍において第2面取り部(2b2)に沿って連続している第2パターン(MFP2)と、外周面の近傍において外周面に沿って連続している第3パターン(MFP3)と、を有する。本体の軸方向の中心を通りかつ径方向に沿った直線に対して、第3パターン(MFP3)が非対称である。
【選択図】
図29
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング形状を有する本体を備え、
前記本体は、外周面と第1軸面との間の第1面取り部と、前記外周面と第2軸面との間の第2面取り部とを有し、
前記本体のメタルフローは、
前記第1面取り部の表面近傍において前記第1面取り部に沿って連続している第1パターンと、
前記第2面取り部の表面近傍において前記第2面取り部に沿って連続している第2パターンと、
前記外周面の近傍において前記外周面に沿って連続している第3パターンと、
前記第1軸面の近傍において前記第1軸面に沿って連続している第4パターンと、
前記第2軸面の近傍において前記第2軸面に沿って連続している第5パターンと、
を有し、
前記本体の軸方向の中心を通りかつ径方向に沿った直線に対して、前記第3パターンが非対称であり、
前記第4パターンにおける複数の線要素の間隔は、前記第5パターンにおける複数の線要素の間隔に比べて広く、
前記第4パターンの前記複数の線要素は、前記第1軸面と交差せず、
前記第5パターンの前記複数の線要素は、前記第2軸面と交差しない、
軸受要素。
【請求項2】
前記第3パターンにおける複数の線要素の間隔は、前記第1軸面から前記第2軸面に向かって徐々に狭くなるように変化する、請求項1に記載の軸受要素。
【請求項3】
前記第1パターンにおける複数の線要素の間隔は、前記第2パターンにおける複数の線要素の間隔に比べて広い、請求項1又は2に記載の軸受要素。
【請求項4】
前記第1パターン、前記第2パターン、前記第3パターン、前記第4パターン、及び前記第5パターンの少なくとも3つのパターンにおいて線要素が連続している、請求項1から3のいずれかに記載の軸受要素。
【請求項5】
前記第4パターン及び前記第5パターンの各々は、前記本体の内周面と交差する複数の線要素を含む、請求項1から外輪4のいずれかに記載の軸受要素。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の軸受要素を備える軸受。
【請求項7】
請求項6に記載の軸受を備える機械。
【請求項8】
請求項6に記載の軸受を備える車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受要素の製造方法及び軸受要素に関する。
本願は、2020年7月7日に出願された特願2020-117331に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
各種回転機械装置の回転部材は、例えば
図1に示すようなラジアル転がり軸受1により、ハウジング等の使用時にも回転しない部分に回転自在に支持される。図示のラジアル転がり軸受1は、単列深溝型の玉軸受であって、内周面に外輪軌道2aを有する外輪2と、外周面に内輪軌道3aを有する内輪3と、外輪軌道2aと内輪軌道3aとの間に転動自在に配置された複数個の転動体4とを備える。
【0003】
上述のようなラジアル転がり軸受1を構成する外輪2や内輪3等の軌道輪を低コストで造るために、単一の円柱状素材から直径寸法(外径寸法及び内径寸法)が互いに異なる一対の円筒部材をプレス加工により造る方法が提案されている。
図32~
図34は、特開2009-269082号公報に記載された、円筒部材の製造方法を示している。
【0004】
特開2009-269082号公報に記載の方法では、まず、
図32(A)に示すような円柱状のビレット(素材)5に、
図33(A)~(C)に示すような第1プレス加工装置6を用いて冷間による据え込み加工及び前方押出加工を施すことで、
図32(B)に示すような第1中間素材7を得る。
【0005】
第1プレス加工装置6は、パンチ6aと、カウンタパンチ6bと、フローティングダイ6cと、弾性部材6dとを備える。パンチ6aは、ビレット5の外径寸法よりも大きい外径寸法を有する。カウンタパンチ6bは、ビレット5の外径寸法よりも小さい外径寸法を有する。フローティングダイ6cは、段付円筒状の内周面を有し、かつ、弾性部材6dにより上方に向いた弾力を付与されている。
【0006】
ビレット5を第1中間素材7に加工する際には、まず、
図33(A)に示すように、ビレット5を、フローティングダイ6cの内側に挿入し、カウンタパンチ6bの上面に載置する。次いで、
図33(A)、(B)、(C)に示すように、パンチ6aを下降させ、パンチ6aの下面とカウンタパンチ6bの上面との間で、ビレット5を軸方向に押し潰す。これにより、軸方向片半部(
図32(A)の上半部)に円板状部7aを有し、かつ、軸方向他半部(
図32(B)の下半部)に小径円筒部7bを有する第1中間素材7を得る。
【0007】
次に、第1中間素材7に、
図34(A)及び(B)に示すような第2プレス加工装置8を用いて冷間による後方押出加工を施すことで、
図32(C)に示すような第2中間素材9を得る。第2中間素材9は、円板状の側板部9aと、側板部9aの軸方向片側面(
図32(C)の上側面)の径方向外側部分から軸方向片側に向けて突出する大径円筒部9bと、側板部9aの軸方向他側面(
図32(C)の下側面)の径方向中間部から軸方向他側に向けて突出する小径円筒部9cとを備える。
【0008】
第2プレス加工装置8は、ダイス8aと、パンチ8bと、マンドレル8cとを備える。ダイス8aは、軸方向片半部の大径部8a1と軸方向他半部の小径部8a2とを段差面8a3により連続してなる段付円筒状の内周面を有する。パンチ8bは、得るべき第2中間素材9の大径円筒部9bの内径寸法と等しい外径寸法を有する。マンドレル8cは、第1中間素材7の小径円筒部7b(第2中間素材9の小径円筒部9c)の内径寸法と等しい外径寸法を有し、かつ、ダイス8aに対する昇降を可能に設けられている。
【0009】
第1中間素材7を第2中間素材9に加工する際には、まず、
図34(A)に示すように、第1中間素材7の小径円筒部7bを、ダイス8aの小径部8a2とマンドレル8cの外周面との間に挿入する。次いで、
図34(A)、(B)に示すように、パンチ8bを下降させ、パンチ8bの下面により、第1中間素材7の円板状部7aの上面中央部を強く押圧する。これにより、円板状部7aが、ダイス8aの大径部8a1及び段差面8a3と、パンチ8bの外周面との間に存在するキャビティ8dに沿って塑性変形して、第2中間素材9が得られる。
【0010】
第2中間素材9をダイス8aから取り出した後、大径円筒部9bと小径円筒部9cとを分離し、かつ、小径円筒部9cから底部9d(側板部9aのうちで小径円筒部9cの内周面よりも径方向内側に位置する部分)を除去することで、直径寸法が互いに異なる一対の円筒部材を得る。このようにして得られた一対の円筒部材のそれぞれに、冷間転造加工(CRF)や切削加工、研削加工、熱処理等の必要な後処理を施すことで、外輪2と内輪3とを得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
外輪2や内輪3等の軸受要素を低コストで造るためには、工程数をできる限り少なく抑えたり、後処理における切削加工量や研削加工量を少なく抑えたりすることが望まれる。
【0013】
本発明は、軸受要素を、低コストで製造することができる方法を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様における軸受要素の製造方法は、所定形状を含む第1ピースを用意する第1工程であり、前記所定形状は軸方向に並んで配される第1リング部と第2リング部とを含み、前記第1リング部の内径及び外径は前記第2リング部の内径及び外径に比べてそれぞれ大きい、前記第1工程と、前記第1ピースを加工して第2ピースを得る第2工程であり、前記第2ピースは、前記第1リング部に対応する第3リング部と前記第2リング部に対応する第4リング部とを含む、前記第2工程と、互いに分かれた第1リング要素と第2リング要素とを得る第3工程であり、前記第1リング要素は前記第3リング部に対応し、前記第2リング要素は前記第4リング部に対応する、前記第3工程と、を備える。前記第2工程は、第1部材と、前記第1部材の内側又は外側に配された第2部材と、を含む第1セットを用意することと、第3部材と、前記第3部材の内側又は外側に配された第4部材と、を含む第2セットを用意することと、前記軸方向における前記第1セットと前記第2セットとの間に前記第1ピースが配置され、前記第1セットが前記第1ピースの第1軸面に接触し、前記第2セットが前記第1ピースの第2軸面に接触した状態で、前記第1部材に対して相対的に前記第2部材を第1軸方向に移動させて前記第1ピースを変形させるとともに、前記第3部材に対して相対的に前記第4部材を第2軸方向に移動させて前記第1ピースを変形させることと、を有する。
【0015】
本発明の一態様における軸受の製造方法は、上記の製造方法によって軸受要素を製造する工程を備える。
【0016】
本発明の一態様における機械の製造方法は、上記の製造方法によって軸受要素を製造する工程を備える。
【0017】
本発明の一態様における車両の製造方法は、上記の製造方法によって軸受要素を製造する工程を備える。
【0018】
本発明の一態様における軸受要素は、上記の軸受要素の製造方法によって製造された痕跡を有する。
【0019】
本発明の別の態様における軸受要素は、リング形状を有する本体を備え、前記本体は、外周面と第1軸面との間の第1面取り部と、前記外周面と第2軸面との間の第2面取り部とを有する。前記本体のメタルフローは、前記第1面取り部の表面近傍において前記第1面取り部に沿って連続している第1パターンと、前記第2面取り部の表面近傍において前記第2面取り部に沿って連続している第2パターンと、前記外周面の近傍において前記外周面に沿って連続している第3パターンと、を有する。前記本体の軸方向の中心を通りかつ径方向に沿った直線に対して、前記第3パターンが非対称である。
【0020】
本発明の一態様における軸受は、上記の軸受要素を備える。
【0021】
本発明の一態様における機械は、上記の軸受を備える。
【0022】
本発明の一態様における車両は、上記の軸受を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の態様によれば、軸受要素を低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、ラジアル転がり軸受の1例を示す、部分切断斜視図である。
【
図2】(A)は、外輪の内部のファイバーフローの様子を示す断面図であり、(B)は、(A)のX部拡大図である。
【
図3】
図3は、内輪の内部のファイバーフローの様子を示す、
図1のY部拡大図である。
【
図4】(A)~(H)は、第1実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施例における、第3工程を示す断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施例における、第4工程を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1実施例における、第5工程を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施例における、第6工程を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施例における、第7工程を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施例における、第8工程を示す断面図である。
【
図11】(A)は、予備素材の内部のファイバーフローの様子を示す断面図であり、(B)は、予備中間素材の内部のファイバーフローの様子を示す断面図である。
【
図12】(A)~(H)は、第2実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材と小径円筒部材とに加工する工程を順番を示す断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施例における、第4工程を示す断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施例における、第5工程を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施例における、第6工程を示す断面図である。
【
図16】(A)~(H)は、第3実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図17】
図17は、第3実施例における、第4工程を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第3実施例における、第6工程を示す断面図である。
【
図19】
図19は、第3実施例における、第7工程を示す断面図である。
【
図20】(A)~(H)は、第4実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図21】
図21は、第4実施例における、第6工程を示す断面図である。
【
図22】(A)~(H)は、第5実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図23】(A)~(G)は、第6実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図24】(A)~(H)は、第7実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図25】(A)~(H)は、第8実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図26】(A)~(G)は、第9実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図27】(A)~(I)は、第10実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図28】(A)~(J)は、第11実施例に係る製造方法により、単一の円柱状素材を、大径円筒部材及び小径円筒部材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図29】
図29は、軸受要素(第1リング要素)の軸方向断面におけるメタルフローの一例を示す模式図である。
【
図30】
図30は、軸受要素(外輪)の軸方向断面におけるメタルフローの一例を示す模式図である。
【
図31】
図31は、軸受が適用されたモータの概略構成図である。
【
図32】(A)は、ビレットを示す断面図であり、(B)は、第1中間素材を示す断面図であり、(C)は、第2中間素材を示す断面図である。
【
図33】(A)~(C)は、ビレットを第1中間素材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【
図34】(A)及び(B)は、第1中間素材を第2中間素材に加工する工程を順番に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について
図1~
図31を参照して説明する。括弧内の符号は後述する実施例の説明に示す符号に対応する。
【0026】
一実施形態において、軸受要素の製造方法は、所定形状を含む第1ピース(13、25、30、32、39)を用意する第1工程と、前記第1ピース(13、25、30、32、39)を加工して第2ピース(16、27、32、33、38、40)を得る第2工程と、互いに分かれた第1リング要素(11)と第2リング要素(12)とを得る第3工程とを備える。前記所定形状は、軸方向に並んで配される、大径部としての第1リング部(13b、25a、30a、32a、39b)と小径部としての第2リング部(13c、25b、30b、32b、39c)とを含む。前記所定形状において、前記第1リング部(13b、25a、30a、32a、39b)の内径及び外径は前記第2リング部(13c、25b、30b、32b、39c)の内径及び外径に比べてそれぞれ大きい。前記第2工程において、前記第2ピース(16、27、32、33、38、40)は、前記第1工程における前記第1リング部(13b、25a、30a、32a、39b)に対応する第3リング部(16a、27a、32a、33a、38a、40a)と、前記第1工程における前記第2リング部(13c、25b、30b、32b、39c)に対応する第4リング部(16b、27b、32b、33b、38b、40b)とを含む。前記第3工程において、大径リング要素としての前記第1リング要素(11)は、前記第2工程における前記第3リング部(16a、27a、32a、33a、38a、40a)に対応する。前記第3工程において、小径リング要素としての前記第2リング要素(12)は、前記第2工程における前記第4リング部(16b、27b、32b、33b、38b、40b)に対応する。前記第2工程は、加工ツールセットとしての第1セット(TS1)を用意することと、加工ツールセットとしての第2セット(TS2)を用意することと、前記第1セット(TS1)及び前記第2セット(TS2)を用いて前記第1ピース(13、25、30、32、39)を変形させることと、を含む。前記第1セット(TS1)は、第1部材(17c、28c、34d)と、前記第1部材(17c、28c、34d)の内側又は外側に配された第2部材(17b、28b、34e)と、を含む。前記第2セット(TS2)は、第3部材(17f、28f、34c)と、前記第3部材(17f、28f、34c)の内側又は外側に配された第4部材(17e、28e、34b)と、を含む。前記第2工程において少なくとも一時的に、(a)前記軸方向における前記第1セット(TS1)と前記第2セット(TS2)との間に前記第1ピース(13、25、30、32、39)が配置され、(b)前記第1セット(TS1)が前記第1ピース(13、25、30、32、39)の第1軸面(AF1)に接触され、(c)前記第2セット(TS2)が前記第1ピース(13、25、30、32、39)の第2軸面(AF2)に接触される。上記接触により、前記第1ピース(13、25、30、32、39)が、前記軸方向において前記第1セット(TS1)と前記第2セット(TS2)との間に保持され、前記軸方向の動きが規制される。上記(a)、(b)、及び(c)が維持された状態において、前記第1部材(17c、28c、34d)に対して相対的に前記第2部材(17b、28b、34e)を第1軸方向に移動させることにより、前記第1ピース(13、25、30、32、39)が変形される。また、上記(a)、(b)、及び(c)が維持された状態において、前記第3部材(17f、28f、34c)に対して相対的に前記第4部材(17e、28e、34b)を第2軸方向に移動させることにより、前記第1ピース(13、25、30、32、39)が変形される。前記第1軸方向と前記第2軸方向は互いに平行である。前記第2軸方向は、前記第1軸方向とは向きが逆である。前記1軸面(AF1)、及び前記第2軸面(AF2)は互いに逆方向を向いている。前記第1軸面(AF1)は、前記第1軸方向に向かって配置され、前記第2軸面(AF2)は、第2軸方向に向かって配置されている。前記第2軸面(AF2)の向きは、前記第1軸面(AF1)の向きと逆である。
【0027】
前記第1工程、前記第2工程、及び前記第3工程を含む製造方法において、従来に比べて工程数が低減され、1つの素材から、互いに独立しかつ径が異なる、2つの軸受要素(第1リング要素(11)、第2リング要素(12))が得られる。前記第2工程において、大径部としての前記第1リング部(13b、25a、30a、32a、39b)の軸方向寸法、及び小径部としての前記第2リング部(13c、25b、30b、32b、39c)の軸方向寸法が前記第1ツール(TS1)及び前記第2ツール(TS2)によって規制される。この規制は、後処理における切削加工量及び/又は研削加工量の削減に有利である。また、前記第1セット(TS1)及び前記第2セット(TS2)を同時に用いることで、加工装置から被加工物(第1ピース)を取り外すことなく、同一工程内(いわゆるワンチャック)で複数の塑性加工(プレス加工)を行うことが実現される。
【0028】
一例において、前記軸方向における前記第1セット(TS1)と前記第2セット(TS2)との間に前記第1ピース(13、25、30、32、39)が配置された状態が維持されたまま、すなわち、上記(a)、(b)、及び(c)が維持された状態において、前記第2部材(17b、28b、34e)の前記移動と前記第4部材(17e、28e、34b)の前記移動とが、順に実行される、又は、少なくとも一時的に同時に実行される。
【0029】
例えば、前記第1セット(TS1)において、前記第1部材(17c、28c、34d)の内側に前記第2部材(17b、28b、34e)が配され、前記第3部材(17f、28f、34c)の内側に前記第4部材(17e、28e、34b)が配される。例えば、前記第2部材(17b、28b、34e)の外径は、前記第4部材(17e、28e、34b)の外径と実質的に同じである。例えば、前記第1ピース(13、25、30、32、39)の軸方向両側に分けて配された、前記第2部材(17b、28b、34e)及び前記第4部材(17e、28e、34b)が、軸方向内方に向けて移動される。例えば、前記第2部材(17b、28b、34e)及び前記第4部材(17e、28e、34b)が互いに近づくように軸方向に沿って移動される。前記第2部材(17b、28b、34e)及び前記第4部材(17e、28e、34b)の軸移動によって、前記第1ピース(13、25、30、32、39)が加工され、前記第4リング部(16b、27b、32b、33b、38b、40b)の内周面の少なくとも一部が規定される。
【0030】
一例において、前記第1部材(17c、28c、34d)の前記内周面又は前記外周面に対して前記第2部材(17b、28b、34e)の前記外周面又は前記内周面がスライドする。例えば、前記第1部材(17c、28c、34d)の前記内周面又は前記外周面は、前記第2部材(17b、28b、34e)の前記外周面又は前記内周面に面している。
【0031】
一例において、前記第1部材(17c、28c、34d)及び前記第2部材(17b、28b、34e)の少なくとも1つは、前記軸方向に対して傾斜しかつ前記第1ピース(13、25、30、32、39)に押接される傾斜面(17b1、17e1、28b1、28e1、34b3)を有する。例えば、前記傾斜面(17b1、17e1、28b1、28e1、34b3)は、前記第1ピース(13、25、30、32、39)の角に当接するように配置される。例えば、前記第2部材(17b、28b、34e)及び前記第4部材(17e、28e、34b)の少なくとも1つが移動することにより、前記傾斜面(17b1、17e1、28b1、28e1、34b3)によって、前記第1ピース(13、25、30、32、39)の角が塑性加工(プレス加工)されて面取り部が形成される。
【0032】
一例において、前記第2工程において、前記第1リング部(13b、25a、30a、32a、39b)の軸方向寸法、及び前記第2リング部(13c、25b、30b、32b、39c)の軸方向寸法が前記第1ツール(TS1)及び前記第2ツール(TS2)によって規制されるともに、面取り部がプレス成形により形成される。これは、プレス荷重や工程数が増大するのを抑えつつ、後処理工程における切削加工量及び/又は研削加工量を削減するのに有利である。
【0033】
一例において、前記第1ピース(13、25、30、32、39)の前記変形は、(a)前記第1ピース(13、25、30、32、39)に孔(軸方向に沿った孔)を形成すること、(b)前記第1ピース(13、25、30、32、39)の内周面又は外周面を前記軸方向に沿ってシェービングすること、(c)前記第1ピース(13、25、30、32、39)の内周面又は外周面を加工して余肉を前記軸方向の少なくとも1箇所に集めること、及び(d)前記第1ピース(13、25、30、32、39)に面取り部を形成すること、の少なくとも1つを含む。前記第2工程(ワンチャック)において、前記第1セット(TS1)と前記第2セット(TS2)との間に前記第1ピース(13、25、30、32、39)を挟んだ状態のまま、上記のうちの2以上の加工が行われる。すなわち、加工装置から被加工物(第1ピース)を取り外すことなく、同一工程内で複数の加工が行われる。
【0034】
一実施形態において、軸受の製造方法は、上記の製造方法によって軸受要素を製造する工程を備え、これは、軸受の低コスト化に有利である。
【0035】
一実施形態において、機械の製造方法は、上記の製造方法によって軸受要素を製造する工程を備え、これは、軸受を有する機械の低コスト化に有利である。
【0036】
一実施形態において、車両の製造方法は、上記の製造方法によって軸受要素を製造する工程を備え、これは、軸受を有する車両の低コスト化に有利である。
【0037】
一実施形態において、軸受要素は、上記の軸受要素の製造方法によって製造された痕跡を有する。一例において、痕跡は、軸受要素の断面に観察されるメタルフロー(メタルファイバーフロー、繊維状金属組織)である。
図29、30は、軸受要素の軸方向断面(軸断面)におけるメタルフローの一例を示している。
【0038】
一実施形態において、
図29、30に示すように、軸受要素は、リング形状を有する本体(2、11)を備える。前記本体(2、11)は、外周面(2c、11c)と第1軸面(2f1、11a1)との間の第1面取り部(2b1)と、前記外周面(2c、11c)と第2軸面(2f2、11a2)との間の第2面取り部(2b2)とを有する。前記本体(2、11)のメタルフローは、前記第1面取り部(2b1)の表面近傍において前記第1面取り部(2b1)に沿って連続している第1パターン(MFP1)と、前記第2面取り部(2b2)の表面近傍において前記第2面取り部(2b2)に沿って連続している第2パターン(MFP2)と、前記外周面(2c、11c)の近傍において前記外周面(2c、11c)に沿って連続している第3パターン(MFP3)と、を有する。前記本体(2、11)の軸方向の中心を通りかつ径方向に沿った直線(仮想線、ACL)に対して、前記第3パターン(MFP3)が非対称(非線対称)である。例えば、前記第3パターン(MFP3)は、前記第1軸面(11a1)と前記直線(ACL)との間の領域において複数の線要素の間隔が比較的広く、前記第1軸面(11a1)と前記直線(ACL)との間の領域において比較的狭い。こうした軸受要素は、製造コストの低減に有利である。
【0039】
一例において、前記第3パターン(MFP3)における複数の線要素の間隔は、前記第1軸面(11a1)から前記第2軸面(11a2)に向かって徐々に狭くなるように変化する。例えば、第1軸面(11a1)は、軸端面である。第2軸面(11a2)は、軸端面である。第2軸面(11a1)は、第1軸面(11a2)の反対面である。
【0040】
一例において、前記第1パターン(MFP1)における複数の線要素の間隔は、前記第2パターン(MFP2)における複数の線要素の間隔に比べて広い。前記第1パターン(MFP1)における複数の線の間隔の平均値(第1平均値)は、前記第2パターン(MFP2)における複数の線の間隔の平均値(第2平均値)に比べて大きい。例えば、前記第1平均値/前記第2平均値は、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、又は3.0倍以上にできる。
【0041】
一例において、前記メタルフローは、前記第1軸面(11a1)の近傍において前記第1軸面(11a1)に沿って連続している第4パターン(MFP4)と、前記第2軸面(11a2)の近傍において前記第2軸面(11a2)に沿って連続している第5パターン(MFP5)と、をさらに有する。
【0042】
一例において、前記第4パターン(MFP4)における複数の線要素の間隔は、前記第5パターン(MFP5)における複数の線要素の間隔に比べて広い。前記第4パターン(MFP4)における複数の線の間隔の平均値(第4平均値)は、前記第5パターン(MFP5)における複数の線の間隔の平均値(第5平均値)に比べて大きい。例えば、前記第4平均値/前記第5平均値は、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、又は3.0倍以上にできる。
【0043】
一例において、前記第1パターン(MFP1)、前記第2パターン(MFP2)、前記第3パターン(MFP3)、前記第4パターン(MFP4)、及び前記第5パターン(MFP5)の少なくとも3つのパターンにおいて線要素が連続している。メタルフローの連続した線要素は、本体(2、11)の高強度化に有利である。
【0044】
一例において、前記第4パターン(MFP4)及び前記第5パターン(MFP4)の各々は、前記本体(2、11)の内周面(2a、2g、11b)と交差する複数の線要素を含む。
【0045】
一実施形態において、軸受は、上記の軸受要素を備え、これは、軸受の低コスト化に有利である。
【0046】
一実施形態において、機械は、上記の軸受を備え、これは、軸受の低コスト化に有利である。
【0047】
一実施形態において、車両は、上記の軸受を備え、これは、軸受の低コスト化に有利である。
【0048】
以上説明した軸受要素又は軸受は、例えば、
図31に示すモータ961の回転軸963を支持する軸受900A、900B等に適用できる。
【0049】
図31において、モータ961は、ブラシレスモータであって、円筒形のセンタハウジング965と、このセンタハウジング965の一方の開口端部を閉塞する略円板状のフロントハウジング967とを有する。センタハウジング965の内側には、その軸心に沿って、フロントハウジング967及びセンタハウジング965底部に配置された軸受900A、900Bを介して、回転自在な回転軸963が支持されている。回転軸963の周囲にはモータ駆動用のロータ969が設けられ、センタハウジング965の内周面にはステータ971が固定されている。
【0050】
モータ961は、一般に、機械や車両に搭載され、軸受900A、900Bにより支持された回転軸963を回転駆動する。
【0051】
軸受要素又は軸受は、回転部を有する機械、各種製造装置、例えば、ボールねじ装置等のねじ装置、及びアクチュエータ(直動案内軸受とボールねじの組合せ、XYテーブル等)等の直動装置の回転支持部に適用可能である。また、軸受要素又は軸受は、ワイパー、パワーウィンドウ、電動ドア、電動シート、ステアリングコラム(例えば、電動チルトテレスコステアリングコラム)、自在継手、中間ギア、ラックアンドピニオン、電動パワーステアリング装置、およびウォーム減速機等の操舵装置に適用可能である。さらに、軸受要素又は軸受は、自動車、オートバイ、鉄道等の各種車両に適用可能である。相対回転する箇所であれば、本構成の軸受を好適に適用でき、製品品質の向上及び低コスト化につなげることができる。
【0052】
軸受要素を備える軸受として、転がり軸受、滑り軸受等、様々な種類のものが好適に適用可能である。例えば、軸受要素は、ラジアル転がり軸受の外輪及び内輪、円筒ころ(ニードルを含む)を使用したラジアル円筒ころ軸受の外輪及び内輪、円すいころを使用したラジアル円すいころ軸受の外輪及び内輪に適用可能である。
【0053】
[第1実施例]
本発明の第1実施例について、
図1~
図11を参照して説明する。本例は、本発明を、ラジアル転がり軸受1を構成する外輪2及び内輪3の製造方法に適用した例である。ラジアル転がり軸受1は、
図1に示すように、内周面に外輪軌道2aを有する外輪2と、外周面に内輪軌道3aを有する内輪3と、外輪軌道2aと内輪軌道3aとの間に転動自在に配置された複数個の転動体4とを備える。
【0054】
なお、本例のラジアル転がり軸受1は、転動体4として玉を使用した単列深溝型の玉軸受により構成される。
【0055】
外輪2は、外周面と軸方向両側の端面との接続部に、軸方向外側に向かうほど外径寸法が小さくなる方向に傾斜した外径側面取り部2b1、2b2を有する。本例では、外径側面取り部2b1、2b2は、直線状の母線形状を有する円すい面により構成されている。ただし、外径側面取り部を、円弧形の母線形状を有する凸曲面により構成することもできる。
【0056】
なお、ラジアル転がり軸受1に関して、軸方向外側とは、ラジアル転がり軸受1の幅方向外側(両側)をいい、軸方向内側とは、ラジアル転がり軸受1の幅方向中央側をいう。
【0057】
外輪2の外周面は、外径側面取り部2b1、2b2を含む全体が、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成されている。
【0058】
内輪3は、内周面と軸方向両側の端面との接続部に、軸方向外側に向かうほど内径寸法が大きくなる方向に傾斜した内径側面取り部3b1、3b2を有する。本例では、内径側面取り部3b1、3b2は、直線状の母線形状を有する円すい面により構成されている。ただし、内径側面取り部を、円弧形の母線形状を有する凸曲面により構成することもできる。
【0059】
内輪3の内周面のうち、少なくとも内径側面取り部3b1、3b2が形成された部分は、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成されている。
【0060】
本例の外輪2及び内輪3は、単一の円柱状素材(ビレット)10に冷間で塑性加工を施すことで、互いに直径寸法が異なる大径円筒部材(第1リング要素、軸受要素)11及び小径円筒部材(第2リング要素、軸受要素)12を得、これら大径円筒部材11及び小径円筒部材12に、冷間転造加工(CRF)や切削加工、研削加工、熱処理等の必要な後処理(仕上加工)を施すことにより製造される。大径円筒部材11及び小径円筒部材12の製造方法について、
図4~
図10を用いて説明する。
【0061】
本例では、
図4(A)に示すような円柱状素材(ビレット)10に据え込み加工と前後方押出加工とを順に施して、
図4(C)に示すような予備中間素材(第1ピース)13を得、さらに、予備中間素材13に塑性加工を施すことにより、大径円筒部材11及び小径円筒部材12を得る。本例では、長尺な線材を所定長さに切断して円柱状素材10を得る工程と、円柱状素材10に据え込み加工を施して、
図4(B)に示すような予備素材14を得る工程と、予備素材14に前後方押出加工を施して予備中間素材13を得る工程とを含め、単一の円柱状素材10から大径円筒部材11及び小径円筒部材12を造る全工程の工程数を8工程としている。
【0062】
以下、各工程について、順番に説明する。
【0063】
なお、図示の例では、被加工物(円柱状素材10~大径円筒部材11及び小径円筒部材12)の軸方向を鉛直方向(上下方向)に向けて配置しているが、被加工物は、軸方向を任意の方向に向けて配置することができる。すなわち、例えば、被加工物の軸方向を水平方向に向けて配置することもできるし、鉛直方向及び水平方向に対し傾斜した方向に配置することもできる。
【0064】
又、軸方向とは、特に断らない限り、被加工物の軸方向をいい、軸方向片側とは、予備中間素材13における大径円筒部13b側をいい、軸方向他側とは、予備中間素材13における小径円筒部13c側をいう。
【0065】
まず、第1工程(切断工程)では、アンコイラから引き出した長尺な線材を所定の長さに切断することで、
図4(A)に示すような、円柱状素材10を得る。
【0066】
第2工程(据え込み工程)では、円柱状素材10を軸方向に押し潰しつつ、外径寸法を拡げて、軸方向中間部の外径寸法が軸方向両側部分の外径寸法よりも大きい、
図4(B)に示すような、厚肉円板状又はビヤ樽形の予備素材14を得る。
【0067】
第3工程(前後方押出工程)では、予備素材14に、該予備素材14の軸方向両側の端面の中央部を、軸方向に関して互いに近づく方向に押し潰しつつ、軸方向両側かつ径方向外側部分に存在する肉(金属材料)を軸方向に押し出す前後方押出加工を施して、
図4(C)に示すような、予備中間素材13を得る。予備中間素材13(第1ピース)は、円板状の側板部13aと、側板部13aの軸方向片側面(
図4(C)の上側面)の径方向外側部分から軸方向片側に向けて突出する大径円筒部(第1リング部)13bと、側板部13aの軸方向他側面(
図4(C)の下側面)の径方向中間部から軸方向他側に向けて突出する小径円筒部(第2リング部)13cとを有する。
【0068】
大径円筒部13bは、得るべき大径円筒部材11の外径寸法と等しい外径寸法を有する。なお、大径円筒部13bの内径寸法は、得るべき大径円筒部材11の内径寸法と等しい必要はなく、大径円筒部材11の内径寸法よりも小さいことが好ましい。
【0069】
小径円筒部13cは、得るべき小径円筒部材12の外径寸法と等しい外径寸法を有する。なお、小径円筒部13cの内径寸法は、得るべき小径円筒部材12の内径寸法と等しい必要はなく、小径円筒部材12の内径寸法よりも小さいことが好ましい。
【0070】
第3工程は、
図5に示すようなプレス加工装置15を用いて行う。プレス加工装置15は、ダイス15aと、マンドレル15bと、パンチ15cとを備える。
【0071】
ダイス15aは、得るべき予備中間素材13の外周面形状に沿った形状を有する内周面を備える。すなわち、ダイス15aは、軸方向片側(
図5の上側)の大径部15a1と軸方向他側(
図5の下側)の小径部15a2とを、軸方向片側を向いた段差面15a3により接続してなる、段付円筒状の内周面を有する。
【0072】
マンドレル15bは、ダイス15aの小径部15a2の中央部に配置されている。
【0073】
パンチ15cは、プレス加工装置15の支持台(図示省略)に軸方向の変位を可能に支持されている。
【0074】
プレス加工装置15により、予備素材14に前後方押出加工を施して予備中間素材13を得るためには、まず、予備素材14を、ダイス15aの段差面15a3及びマンドレル15bの先端面(軸方向片側の端面)に載置する。次に、パンチ15cを軸方向他側に向けて変位させ、パンチ15cの先端面(軸方向他側の端面)により予備素材14の中央部を押圧する。これにより、予備素材14の中央部を、パンチ15cの先端面とマンドレル15bの先端面との間で押し潰しつつ、予備素材14の径方向外側部分の肉を、マンドレル15bの外周面と小径部15a2との間部分に移動させ、かつ、予備素材14の径方向中間部の肉を、パンチ15cの外周面と大径部15a1との間部分に移動させ、予備中間素材13を得る。
【0075】
次の第4工程では、予備中間素材13に、小径円筒部13cの軸方向寸法を所定の寸法Ls(
図6参照)に規制し、かつ、小径円筒部13cの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する、小径側形状規制加工を施して、
図4(D)に示すような、第1中間素材16を得る。第1中間素材(第2ピース)16は、軸方向片側の大径円筒部(第3リング部)16aと、軸方向他側の小径円筒部(第4リング部)16bと、大径円筒部16aの軸方向他側の端部と小径円筒部16bの軸方向他側の端部とを接続する接続板部16cと、小径円筒部16bの径方向内側の軸方向片側部分を仕切る隔壁部16dとを有する。小径円筒部16bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有する。
【0076】
なお、本例では、第4工程において、予備中間素材13のうち、大径円筒部13bには、塑性加工を施さない。ただし、図示の例では、説明の便宜上、予備中間素材13の大径円筒部13bと、第1中間素材16の大径円筒部16aとで異なる符号を付している。
【0077】
第4工程は、
図6に示すようなプレス加工装置17を用いて行う。プレス加工装置17は、ダイス17aと、内側押圧パンチ(第2部材)17bと、外側押圧パンチ(第1部材)17cと、押えパンチ17dと、内側カウンタパンチ(第4部材)17eと、外側カウンタパンチ(第3部材)17fとを備える。
【0078】
ダイス17aは、得るべき第1中間素材16の外周面形状に沿った形状を有する内周面を備える。本例では、ダイス17aの内周面形状を、前後方押出加工(第3工程)で使用するダイス15aの内周面形状と同じにしている。すなわち、ダイス17aは、軸方向片側の大径部17a1と軸方向他側の小径部17a2とを、軸方向片側を向いた段差面17a3により接続してなる、段付円筒状の内周面を有する。ただし、小径側形状規制加工で使用するダイスの内周面形状を、前後方押出加工で使用するダイスの内周面形状と異ならせることもできる。
【0079】
内側押圧パンチ17bは、円柱形状を有し、ダイス17aの大径部17a1の中央部に、プレス加工装置17の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。内側押圧パンチ17bは、先端部(軸方向他側の端部、
図6の下側の端部)に、第1中間素材16の小径円筒部16bに形成される一対の内径側面取り部3b1、3b2のうち、軸方向片側の内径側面取り部3b1に沿った形状を有する面取り成形部(傾斜面)17b1を有する。すなわち、本例では、面取り成形部17b1は、直線状の母線形状を有する。
【0080】
外側押圧パンチ17cは、円筒形状を有し、内側押圧パンチ17bの周囲に、前記支持台に対する軸方向変位を可能に支持されている。
【0081】
押えパンチ17dは、円筒形状を有し、外側押圧パンチ17cの周囲に、前記支持台に対する軸方向変位を可能に支持されている。
【0082】
内側カウンタパンチ17eは、円柱形状を有し、ダイス17aの小径部17a2の中央部に、プレス加工装置17の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。内側カウンタパンチ17eは、先端部(軸方向片側の端部、
図6の上側の端部)に、第1中間素材16の小径円筒部16bに形成される一対の内径側面取り部3b1、3b2のうち、軸方向他側の内径側面取り部3b2に沿った形状を有する面取り成形部(傾斜面)17e1を有する。すなわち、本例では、面取り成形部17e1は、直線状の母線形状を有する。
【0083】
外側カウンタパンチ17fは、円筒形状を有し、前記支持台に対する軸方向変位を可能に支持されている。外側カウンタパンチ17fは、ダイス17aの小径部17a2と内側カウンタパンチ17eの外周面との間に、実質的に隙間なく(予備中間素材13を第1中間素材16に加工する際に、予備中間素材13を構成する肉が侵入する隙間を存在させることなく)挿入されている。
【0084】
プレス加工装置17により、予備中間素材13に小径側形状規制加工を施して第1中間素材16を得るためには、まず、予備中間素材13の側板部13aの軸方向他側面の径方向外側部分を、ダイス17aの段差面17a3に載置する。そして、押えパンチ17dを軸方向他側に向けて変位させ、予備中間素材13の大径円筒部13bの軸方向片側の端面を押えパンチ17dにより押え付ける(ダイス17aの段差面17a3と押えパンチ17dとの間で、大径円筒部13bを軸方向に挟持する)。
【0085】
この状態で、内側押圧パンチ17b及び外側押圧パンチ17cを軸方向他側に向けて変位させ、かつ、内側カウンタパンチ17e及び外側カウンタパンチ17fを軸方向片側に向けて変位させる。そして、内側押圧パンチ17b及び外側押圧パンチ17cと、内側カウンタパンチ17e及び外側カウンタパンチ17fとの間で、予備中間素材13の小径円筒部13cを軸方向に押し潰す。これにより、小径円筒部13cの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制すると同時に、内側カウンタパンチ17eの面取り成形部17e1及び内側押圧パンチ17bの面取り成形部17b1により、小径円筒部13cの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する。
【0086】
なお、この際、内側押圧パンチ17bの先端面により、予備中間素材13の側板部13aのうちで小径円筒部13cよりも径方向内側に位置する部分を押圧して、側板部13aの径方向外側部分に対し軸方向他側にオフセットさせる。これにより、側板部13aの径方向内側部分を隔壁部16dとし、かつ、側板部13aの径方向外側部分を接続板部16cとする。換言すれば、本例では、隔壁部16dが、後述する打ち抜き加工により打ち抜き除去される、側板部13aのうちで小径円筒部13cの内周面よりも径方向内側に位置する部分に相当する。以上のようにして、第1中間素材16を得る。
【0087】
次の第5工程では、第1中間素材16に、大径円筒部16aの軸方向寸法を所定の寸法Lb(
図7参照)に規制する大径側寸法規制加工と、大径円筒部16aの外周面と軸方向他側の端面と接続部に、軸方向他側の外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工とを施して、
図4(E)に示すような、第2中間素材18を得る。第2中間素材18は、軸方向片側の大径円筒部18aと、軸方向他側の小径円筒部18bと、大径円筒部18aの軸方向他側の端部と小径円筒部18bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部18cと、小径円筒部18bの径方向内側の軸方向片側部分を仕切る隔壁部18dとを有する。小径円筒部18bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有し、かつ、大径円筒部18aは、外周面と軸方向他側の端面と接続部に軸方向他側の外径側面取り部2b2を有する。
【0088】
なお、本例では、第5工程において、第1中間素材16のうち、大径円筒部16a以外の部分、すなわち小径円筒部16b、接続板部16c及び隔壁部16dには、塑性加工を施さない。ただし、図示の例では、説明の便宜上、第1中間素材16の小径円筒部16b、接続板部16c及び隔壁部16dと、第2中間素材18の小径円筒部18b、接続板部18c及び隔壁部18dとで異なる符号を付している。
【0089】
第5工程は、
図7に示すようなプレス加工装置19を用いて行う。プレス加工装置19は、ダイス19aと、押圧パンチ19bと、マンドレル19cと、スリーブ19dとを備える。
【0090】
ダイス19aは、軸方向片側の大径部19a1と、軸方向他側の小径部19a2と、小径部19a2の軸方向片側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、かつ、軸方向片側を向いた段差面19a3とを含む、段付円筒状の内周面を有する。段差面19a3は、径方向内側に配置され、かつ、ダイス19aの中心軸に直交する平坦面部19a3aと、径方向外側に配置され、かつ、径方向外側に向かうほど軸方向片側に向かう方向に傾斜した円すい面状の面取り成形部19a3bとを有する。
【0091】
押圧パンチ19bは、円筒形状を有し、プレス加工装置19の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。押圧パンチ19bは、ダイス19aの大径部19a1の内側に、実質的に隙間なく内嵌されている。
【0092】
マンドレル19cは、円柱形状を有し、ダイス19aの大径部19a1の内側に、前記支持台に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0093】
スリーブ19dは、円筒形状を有し、ダイス19aの小径部19a2の内側に、前記支持台に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0094】
プレス加工装置19により、第1中間素材16に大径寸法規制加工及び第1大径面取り加工を施して第2中間素材18を得るためには、まず、第1中間素材16の接続板部16cを、ダイス19aの段差面19a3に載置する。そして、マンドレル19cを軸方向他側(
図7の下側)に変位させ、マンドレル19cの先端面(軸方向他側の端面)により、第1中間素材16の小径円筒部16bの軸方向片側(
図7の上側)の端面を押え付ける。又、スリーブ19dを軸方向片側に変位させ、スリーブ19dの先端面(軸方向片側の端面)を、第1中間素材16の小径円筒部16bの軸方向他側の端面に当接又は近接対向させる。
【0095】
この状態で、押圧パンチ19bを軸方向他側に向けて変位させ、ダイス19aの段差面19a3と押圧パンチ19bの先端面(軸方向他側の端面)との間で、第1中間素材16の大径円筒部16aを軸方向に押し潰す。これにより、大径円筒部16aの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制し、かつ、面取り成形部19a3bにより、大径円筒部16aの外周面と軸方向他側の端面との接続部に外径側面取り部2b2を形成する。以上のようにして、第2中間素材18を得る。
【0096】
次の第6工程では、第2中間素材18に、隔壁部18dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工と、小径円筒部18bにシェービング加工を施す小径側シェービング加工とを施して、
図4(F)に示すような、第3中間素材20を得る。第3中間素材20は、軸方向片側の大径円筒部20aと、軸方向他側の小径円筒部20bと、大径円筒部20aの軸方向他側の端部と小径円筒部20bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部20cとを有する。小径円筒部20bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有し、かつ、大径円筒部20aは、外周面と軸方向他側の端面と接続部に、軸方向他側の外径側面取り部2b2を有する。
【0097】
なお、本例では、第6工程において、第2中間素材18のうち、大径円筒部18a及び接続板部18c、並びに、小径円筒部18bの外周面には、塑性加工を施さない。ただし、図示の例では、説明の便宜上、第2中間素材18の大径円筒部18a及び接続板部18cと、第3中間素材20の大径円筒部20a及び接続板部20cとで異なる符号を付している。
【0098】
第6工程は、
図8に示すようなプレス加工装置21を用いて行う。プレス加工装置21は、ダイス21aと、シェービングカッター21bと、押えパンチ21cとを備える。
【0099】
ダイス21aは、円筒状の内周面を有する。
【0100】
シェービングカッター21bは、円柱形状を有し、ダイス21aの軸方向他側部分(
図8の下側部分)の中央部に、プレス加工装置21の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。シェービングカッター21bは、得るべき第3中間素材20の小径円筒部20bの内径寸法と実質的に同じ外径寸法を有し、かつ、先端部(軸方向片側の端部、
図8の上側の端部)の径方向外側縁に、第2中間素材18の小径円筒部18bの内周面に、該内周面の表面をわずかに削って滑らかにするシェービング加工を施すとともに、隔壁部18dを打ち抜くための刃部21b1を有する。
【0101】
押えパンチ21cは、略円筒形状を有し、かつ、ダイス21aの軸方向片側部分(
図8の上側部分)の中央部に、前記支持台に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0102】
プレス加工装置21により、第2中間素材18に打ち抜き加工及び小径側シェービング加工を施して、第3中間素材20を得るためには、第2中間素材18をダイス21aの内側に配置し、押えパンチ21cにより、軸方向片側への変位を規制する。この状態で、シェービングカッター21bを軸方向片側に向けて変位させ、刃部21b1により、小径円筒部18bの内周面をわずかに削って滑らかにする(シェービング加工を施す)と同時に、隔壁部18dを打ち抜き、該隔壁部18dを小径円筒部18bの軸方向片側開口から抜き出して(取り出して)除去する。より具体的には、シェービングカッター21bを、小径円筒部18bの軸方向他側開口から挿入し、軸方向片側に向けて変位させることで、該小径円筒部18bの軸方向他側部分の内周面の表面をわずかに削って滑らかにする。そして、シェービングカッター21bの先端部を、隔壁部18dの軸方向他側面に突き当てる。この状態からさらに、シェービングカッター21bを軸方向片側に向けて変位させることで、隔壁部18dを打ち抜き、かつ、小径円筒部18bの内周面のうち、隔壁部18dが設けられていた部分(隔壁部18dの径方向外側の端部が接続されていた部分)の表面をわずかに削って滑らかにする。以上により、第3中間素材20を得る。
【0103】
次の第7工程では、第3中間素材20に、大径円筒部20a(及び接続板部20c)と小径円筒部20bとを分離する分離加工を施して、
図4(G)に示すような、予備大径円筒部材22及び小径円筒部材12を得る。予備大径円筒部材22は、大径円筒部22aと、大径円筒部22aの軸方向他側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった内向鍔部22bとを有する。小径円筒部材12は、予備大径円筒部材22の大径円筒部22aの内径寸法よりも小さい外径寸法を有し、かつ、軸方向両側の端面と内周面との接続部に、上述の第4工程で形成された内径側面取り部3b1、3b2を有する。
【0104】
なお、本例では、第7工程において、第3中間素材20を、大径円筒部20a及び接続板部20cと、小径円筒部20bとに分離するだけで、それぞれの形状を変形させる塑性加工は施さない。ただし、図示の例では、説明の便宜上、第3中間素材20の大径円筒部20aと、予備大径円筒部材22の大径円筒部22aとで異なる符号を付している。
【0105】
又、図示の例では、第7工程における加工前の第3中間素材20の軸方向に関する向きを、第6工程における加工後の第3中間素材20の軸方向に関する向きから反転させた状態(180度回転させた状態)で、第7工程を行う。ただし、第7工程における加工前の第3中間素材20の軸方向に関する向きを、第6工程における第3中間素材20の軸方向に関する向きと同じにしたまま、第7工程を行うこともできる。
【0106】
第7工程は、
図9に示すようなプレス加工装置23を用いて行う。プレス加工装置23は、ダイス23aと、スリーブ23bと、押えパンチ23cと、打ち抜きパンチ23dとを備える。
【0107】
ダイス23aは、円筒状の内周面を有する。
【0108】
スリーブ23bは、ダイス23aの軸方向片側部分(
図9の下側部分)に支持されている。
【0109】
押えパンチ23cは、円筒形状を有し、かつ、ダイス23aの軸方向他側部分(
図9の上側部分)の中央部に、プレス加工装置23の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0110】
打ち抜きパンチ23dは、円柱形状を有し、かつ、ダイス23aの中央部に、前記支持台に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0111】
プレス加工装置23により、第3中間素材20に分離加工を施して予備大径円筒部材22及び小径円筒部材12を得るためには、まず、第3中間素材20の大径円筒部20aの軸方向片側の端面を、ダイス23aの内側に配置されたスリーブ23bの軸方向他側の端面に載置する。そして、押えパンチ23cを軸方向片側に向けて変位(下降)させ、押えパンチ23cの先端面(軸方向片側の端面)により、第3中間素材20の大径円筒部20aの軸方向他側の端面及び接続板部20cの軸方向他側面を押え付ける。この状態で、打ち抜きパンチ23dを軸方向他側に向けて変位させることにより、第3中間素材20の小径円筒部20bを打ち抜いて、大径円筒部20a及び接続板部20cから分離する。これにより、予備大径円筒部材22と小径円筒部材12とを得る。なお、このうちの小径円筒部材12は、プレス加工装置23から取り出した後、後処理工程に送る。
【0112】
次の第8工程(最終プレス工程)では、予備大径円筒部材22の内周面にシェービング加工を施す大径側シェービング加工と、大径円筒部22aの内周面と軸方向片側の端面との接続部に軸方向片側の外径側面取り部2b1を形成する第2大径側面取り加工とを施して、
図4(H)に示すような、大径円筒部材11を得る。大径円筒部材11は、円筒形状を有し、かつ、軸方向両側の端面と外周面との接続部に、外径側面取り部2b1、2b2を有する。
【0113】
なお、第8工程においては、予備大径円筒部材22の外周面には、塑性加工を施さない。
【0114】
第8工程は、
図10に示すようなプレス加工装置24を用いて行う。プレス加工装置24は、ダイス24aと、スリーブ24bと、シェービングカッター24cとを備える。
【0115】
ダイス24aは、円筒状の内周面を有する。
【0116】
スリーブ24bは、軸方向他側の端面の径方向外側部分に、径方向外側に向かうほど軸方向他側に向かう方向に傾斜した円すい面状の面取り成形部24b1を有し、かつ、ダイス24aの軸方向片側部分(
図10の下側部分)に支持されている。
【0117】
シェービングカッター24cは、円柱形状を有し、ダイス21aの軸方向他側部分(
図10の上側部分)の中央部に、プレス加工装置24の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。シェービングカッター24cは、得るべき大径円筒部材11の内径寸法と実質的に同じ外径寸法を有し、かつ、先端部(軸方向片側の端部)の径方向外側縁に、予備大径円筒部材22の大径円筒部22aの内周面に、該内周面の表面をわずかに削って滑らかにするシェービング加工を施すための刃部24c1を有する。
【0118】
プレス加工装置24により、予備大径円筒部材22に大径側シェービング加工を施して、大径円筒部材11を得るためには、まず、予備大径円筒部材22の軸方向片側の端面を、ダイス24aの内側に配置されたスリーブ24bの軸方向他側の端面に載置する。次に、シェービングカッター24cを軸方向片側に向けて変位させる。これにより、予備大径円筒部材22の大径円筒部22aの内周面をわずかに削って滑らかにし、かつ、内向鍔部22bを打ち抜いて除去すると同時に、大径円筒部22aの外周面と軸方向片側の端面との接続部を、スリーブ24bの面取り成形部24b1に押し付けることにより、軸方向片側の外径側面取り部2b1を形成する、以上のようにして、大径円筒部材11を得る。
【0119】
大径円筒部材11は、後処理工程において、内周面に、冷間転造加工又は切削加工により、外輪軌道2aを形成するとともに、必要に応じて、シール部材を係止するための係止溝を形成する。さらに、必要に応じて、焼き入れ等の熱処理を施して外輪2を得る。ただし、本例では、大径円筒部材11の外周面には、後処理工程において、切削加工や研削加工等の機械加工を施さないようにしている。したがって、外輪2の外周面は、外径側面取り部2b1、2b2を含む全体が、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成される。
【0120】
小径円筒部材12は、後処理工程において、外周面に、冷間転造加工又は切削加工により、内輪軌道3aを形成するとともに、必要に応じて、シール部材の先端部を接触させるための凹溝を形成する。さらに、必要に応じて、焼き入れ等の熱処理を施して内輪3を得る。ただし、本例では、小径円筒部材12の内周面のうち、少なくとも軸方向両側の端部に形成された内径側面取り部3b1、3b2には、後処理工程において、切削加工や研削加工等の機械加工を施さないようにしている。したがって、内輪3の内周面のうち、少なくとも内径側面取り部3b1、3b2が形成された部分は、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成される。
【0121】
本例の製造方法では、1個の円柱状素材10にプレス加工を施して、大径円筒部材11及び小径円筒部材12に加工する過程で、大径円筒部16aの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制することで、完成後の大径円筒部材11の軸方向寸法を規制し、かつ、小径円筒部13cの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制することで、完成後の小径円筒部材12の軸方向寸法を規制している。このため、大径円筒部材11を外輪2に加工する際に、大径円筒部材11の軸方向寸法を所望の寸法に規制するために、大径円筒部材11の軸方向側面を切削若しくは研削する必要がないか、あるいは、切削量若しくは研削量を少なく抑えることができる。又、小径円筒部材12を内輪3に加工する際に、小径円筒部材12の軸方向寸法を所望の寸法に規制するために、小径円筒部材12の軸方向側面を切削若しくは研削する必要がないか、あるいは、切削量若しくは研削量を少なく抑えることができる。したがって、外輪2及び内輪3の製造コストを低減することができる。
【0122】
本例の製造方法では、円柱状素材10を大径円筒部材11及び小径円筒部材12に加工する過程で、大径円筒部材11に一対の外径側面取り部2b1、2b2をプレス加工により形成し、かつ、小径円筒部材12に一対の内径側面取り部3b1、3b2をプレス加工により形成している。したがって、外輪及び内輪の素材である大径円筒部材及び小径円筒部材を得た後で、大径円筒部材の外周面と軸方向両側の端面との接続部、及び、小径円筒部材の内周面と軸方向両側の端面との接続部に、切削加工等によって面取り部を形成する必要がない。この面からも外輪2及び内輪3の製造コストを低減することができる。
【0123】
本例の製造方法では、第6工程において、隔壁部18dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工と、小径円筒部18bにシェービング加工を施す小径側シェービング加工とを行っている。これにより、隔壁部18dを打ち抜いた後、小径円筒部18bの内周面のうちで隔壁部18dが設けられていた部分にも、シェービング加工を施している。要するに、隔壁部18dを打ち抜くことで小径円筒部18bの内周面に生じた剪断面及び破断面を、シェービング加工により滑らかにすることができる。このため、第3中間素材20の小径円筒部20bの内周面(小径円筒部材12の内周面)の寸法精度を良好に確保することができる。
【0124】
本例の製造方法では、第7工程において、大径円筒部20a(及び接続板部20c)と小径円筒部20bとを分離する分離加工を行った後、第8工程において、予備大径円筒部材22の内周面にシェービング加工を施す大径側シェービング加工を行っている。したがって、大径円筒部20a(及び接続板部20c)から小径円筒部20bを分離することで、接続板部20cの内周面に生じた剪断面及び破断面を、シェービング加工により滑らかにすることができる。このため、大径円筒部材11の内周面の寸法精度を良好に確保することができる。
【0125】
本例の製造方法では、小径円筒部13cの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制すると同時に、小径円筒部13cの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成している。このため、円柱状素材10から大径円筒部材11及び小径円筒部材12を製造する工程の工程数を削減することができる。この結果、大径円筒部材11及び小径円筒部材12の製造コスト、延いては、外輪2及び内輪3の製造コストを低減することができる。具体的には、本例の製造方法を、例えばフォーマー(多段式鍛造機械)により実施しやすくできる。
【0126】
さらに、本例の製造方法では、第5工程において、大径円筒部16aの軸方向寸法を所定の寸法に規制する大径側寸法規制加工と、大径円筒部16aに軸方向他側の外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工とを同時に行っている。又、第8工程において、予備大径円筒部材22の内周面にシェービング加工を施す大径側シェービング加工と、予備大径円筒部材22の大径円筒部22aの軸方向片側の外径側面取り部2b1を形成する第2大径側面取り加工とを同時に行っている。この面からも、円柱状素材10から大径円筒部材11及び小径円筒部材12を製造する工程の工程数を削減することができ、大径円筒部材11及び小径円筒部材12の製造コスト、延いては、外輪2及び内輪3の製造コストを低減することができる。
【0127】
本例の製造方法により得られる大径円筒部材11に後処理を施して得る外輪2では、外輪2の外周面は、外径側面取り部2b1、2b2を含む全体が、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成される。したがって、外輪2の内部のメタルフローF
outは、
図2(A)及び(B)に示すように、外径側面取り部2b1、2b2の表面近傍(外径側面取り部2b1、2b2の表面から、外輪2の外径寸法の20%~30%程度の深さまでの部分)において該外径側面取り部2b1、2b2に沿って連続している(延びている)。
【0128】
又、外輪2の内部のメタルフローF
outは、軸方向に関して外輪軌道2aから軸方向片側に外れた部分に、軸方向内側から軸方向外側に向かうにしたがって、径方向外側に向けて湾曲した後、さらに、径方向内側に向けて略180度折り返す方向に変化する屈曲部Tを有する。この理由について、
図11(A)及び(B)を用いて説明する。
【0129】
長尺な線材を所定の長さに切断して得た円柱状素材10を軸方向に押し潰すことにより、厚肉円板状又はビヤ樽形の予備素材14を得ると、予備素材14の内部のメタルフローF
14は、
図11(A)に示すように、軸方向中間部が最も径方向外側に膨出するように湾曲する。換言すれば、メタルフローF
14は、軸方向片側の端部から軸方向中間部に向かうに従って径方向外側に向かう方向に延び、軸方向中間部で径方向内側に向けて略180度折り返し、軸方向中間部から軸方向他側の端部に向かうに従って径方向内側に向かう方向に延びている。
【0130】
次に、予備素材14に前後方押出加工を施して予備中間素材13を得ると、予備中間素材13の内部のメタルフローF
13は、
図11(B)に示すような流れとなる。すなわち、大径円筒部13bの軸方向片側の端部から軸方向中間部にかけては、大径円筒部13bに沿って、予備中間素材13の中心軸と略平行な流れとなる。大径円筒部13bの軸方向他側の端部においては、径方向外側に向けて湾曲し、さらに、径方向内側に向けて略180度(略U字形又は略V字形に)折り返す方向に変化(屈曲)した流れとなる。すなわち、メタルフローF
13は、大径円筒部13bの軸方向他側の端部において、屈曲部Tを有する。
【0131】
なお、メタルフローF13は、側板部13aにおいては、(大径円筒部13b及び小径円筒部13cとの接続部を除き、)側板部13aに沿って、予備中間素材13の中心軸に略直交する方向の流れとなり、小径円筒部13cにおいては、(側板部13aとの接続部を除き、)小径円筒部13cに沿って、予備中間素材13の中心軸と略平行な流れとなる。
【0132】
本例の製造方法では、上述のような予備中間素材13に、所定の加工を施した後、大径円筒部と小径円筒部とを分離して、大径円筒部を大径円筒部材11とするため、大径円筒部材11の内部のメタルフローに屈曲部Tが残る場合がある。そして、大径円筒部材11に後処理を施して得る外輪2の内部のメタルフローにも屈曲部Tが痕跡として残る場合がある。換言すれば、外輪2の内部のメタルフローに屈曲部Tが存在すれば、外輪2は、本例の製造方法により得られた大径円筒部材から製造されたものであると推定することができる。
【0133】
又、本例の製造方法により得られる小径円筒部材12に後処理を施して得る内輪3では、内周面のうち、少なくとも内径側面取り部3b1、3b2が形成された部分、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成される。したがって、内輪3の内部のメタルフローF
inは、
図3に示すように、内径側面取り部3b1、3b2の表面近傍(内径側面取り部3b1、3b2の表面から、内輪3の内径寸法の10%~20%程度の深さまでの部分)において該内径側面取り部3b1、3b2に沿って連続している(延びている)。
【0134】
なお、本例の製造方法により得られる大径円筒部材及び小径円筒部材を、外輪及び内輪に加工し、ラジアル転がり軸受を構成する場合、ラジアル転がり軸受を構成する外輪及び内輪は、必ずしも同一の円柱状素材から得られた大径円筒部材及び小径円筒部材を加工して得る必要はない。すなわち、互いに異なる円柱状素材から得られた大径円筒部材と小径円筒部材とを組み合わせて、転がり軸受を構成することもできる。又、大径円筒部材と小径円筒部材とのうちの一方を、本例の製造方法により得て外輪又は内輪に加工したものと、大径円筒部材と小径円筒部材とのうちの他方を、別の方法により得て内輪又は外輪に加工したものとを組み合わせて、転がり軸受を構成することもできる。すなわち、大量生産する際に、不良品の発生等により、大径円筒部材の個数と小径円筒部材の個数とに差が生じた場合には、別の方法により得た大径円筒部材又は小径円筒部材から製造した外輪又は内輪と組み合わせることもできる。
【0135】
また、本例の製造方法により得られる大径円筒部材及び小径円筒部材から、直径寸法が互いに異なる一対の滑り軸受を造ることもできる。具体的には、大径円筒部材及び小径円筒部材を得た後、必要に応じて、大径円筒部材及び小径円筒部材の表面(外周面、内周面および軸方向両側の端面のうちの少なくとも1個の面)に、研削加工などの仕上加工を施すことにより、一対の滑り軸受を造る。
【0136】
なお、本例の円筒部材により得られる大径円筒部材及び小径円筒部材から造られるラジアル転がり軸受や滑り軸受は、各種回転機械装置や車両に組み込んで使用される。
【0137】
又、各工程で使用するプレス加工装置15、17、19、21、23、24は、上述した構成に限らず、各工程における加工を実施できれば、任意の構成とすることができる。
【0138】
[第2実施例]
本発明の第2実施例について、
図12~
図15を用いて説明する。本例の製造方法のうちの第1工程から第3工程、並びに、第7工程及び第8工程は、第1実施例における第1工程から第3工程、並びに、第7工程及び第8工程と同じである。以下では、本例の製造方法のうち、第4工程から第6工程について説明する。
【0139】
第4工程では、
図12(C)に示すような、予備中間素材13に、大径円筒部13bの軸方向寸法を所定の寸法Lb(
図13参照)に規制する大径側寸法規制加工と、大径円筒部13bの外周面と軸方向他側の端面と接続部に軸方向他側の外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工と、側板部13aのうちで小径円筒部13cよりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いて除去する打ち抜き加工との3つの加工を同時に施す。これにより、
図12(D)に示すような、第1中間素材25を得る。
【0140】
第1中間素材(第1ピース)25は、軸方向片側(
図12(D)の上側)の大径円筒部(第1リング部)25aと、軸方向他側(
図12(D)の下側)の小径円筒部(第2リング部)25bと、大径円筒部25aの軸方向他側の端部と小径円筒部25bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部25cとを有する。大径円筒部25aは、外周面と軸方向他側の端面との接続部に、軸方向他側の外径側面取り部2b2を有する。
【0141】
第4工程は、
図13に示すようなプレス加工装置26を用いて行う。プレス加工装置26は、ダイス26aと、押圧パンチ26bと、打ち抜きパンチ26cとを備える。
【0142】
ダイス26aは、軸方向片側(
図13の上側)の大径部26a1と、軸方向他側(
図13の下側)の小径部26a2と、小径部26a2の軸方向片側の端部から径方向外側に向けて折れ曲がり、かつ、軸方向片側を向いた段差面26a3とを含む、段付円筒状の内周面を有する。段差面26a3は、径方向内側に配置され、かつ、ダイス26aの中心軸に直交する平坦面部26a3aと、径方向外側に配置され、かつ、径方向外側に向かうほど軸方向片側に向かう方向に傾斜した円すい面状の面取り成形部26a3bとを有する。
【0143】
押圧パンチ26bは、円筒形状を有し、ダイス26aの大径部26a1の内側に、プレス加工装置26の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0144】
打ち抜きパンチ26cは、円柱形状を有し、ダイス26aの中央部に、前記支持台に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0145】
プレス加工装置26により、予備中間素材13に、大径側寸法規制加工、第1大径側面取り加工及び打ち抜き加工を施して、第1中間素材25を得るためには、まず、予備中間素材13の側板部13aの軸方向他側面をダイス26aの段差面26a3に載置する。
【0146】
この状態で、押圧パンチ26bを軸方向他側に向けて変位させ、ダイス26aの段差面26a3と押圧パンチ26bの先端面との間で、予備中間素材13の大径円筒部13bを軸方向に押し潰す。これにより、大径円筒部13bの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制すると同時に、面取り成形部26a3bにより、大径円筒部13bの外周面と軸方向他側の端面との接続部に軸方向他側の外径側面取り部2b2を形成する。さらに、打ち抜きパンチ26cを軸方向片側に向けて変位させ、側板部13aのうちで小径円筒部13cの内周面よりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いて除去する。これにより、第1中間素材25を得る。
【0147】
次の第5工程では、第1中間素材25に、小径円筒部25bの軸方向寸法を所定の寸法Ls(
図14参照)に規制し、かつ、小径円筒部25bの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する小径側形状規制加工を施して、
図12(E)に示すような、第2中間素材27を得る。第2中間素材(第2ピース)27は、軸方向片側の大径円筒部(第3リング部)27aと、軸方向他側の小径円筒部(第4リング部)27bと、大径円筒部27aの軸方向他側の端部と小径円筒部27bの軸方向他側の端部とを接続する接続板部27cとを有する。小径円筒部27bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有し、かつ、大径円筒部27aは、外周面と軸方向他側の端面との接続部に、軸方向他側の外径側面取り部2b2を有する。
【0148】
なお、本例では、第5工程において、第1中間素材25のうち、大径円筒部25a及び接続板部25cには、塑性加工を施さない。
【0149】
第5工程は、
図14に示すようなプレス加工装置28を用いて行う。プレス加工装置28は、ダイス28aと、内側押圧パンチ(第2部材)28bと、外側押圧パンチ(第1部材)28cと、押えパンチ28dと、内側カウンタパンチ(第4部材)28eと、外側カウンタパンチ(第3部材)28fとを備える。
【0150】
ダイス28aは、軸方向片側(
図14の上側)の大径部28a1と軸方向他側(
図14の下側)の小径部28a2とを、軸方向片側を向いた段差面28a3により接続してなる、段付円筒状の内周面を有する。
【0151】
内側押圧パンチ28bは、円筒形状を有し、ダイス28aの大径部28a1の中央部に、プレス加工装置28の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。内側押圧パンチ28bは、先端部(軸方向他側の端部)に、直線状の母線形状を有する面取り成形部(傾斜面)28b1を備える。
【0152】
外側押圧パンチ28cは、円筒形状を有し、内側押圧パンチ28bの周囲に、前記支持台に対する軸方向変位を可能に支持されている。
【0153】
押えパンチ28dは、円筒形状を有し、外側押圧パンチ28cの周囲に、前記支持台に対する軸方向変位を可能に支持されている。
【0154】
内側カウンタパンチ28eは、円柱形状を有し、ダイス28aの小径部28a2の中央部に、プレス加工装置28の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。内側カウンタパンチ28eは、先端部(軸方向片側の端部)外周面に、面取り成形部(傾斜面)28e1を有する。面取り成形部28e1は、径方向外側に向かうほど軸方向他側に向かう方向に傾斜した円すい面により構成されている。
【0155】
外側カウンタパンチ28fは、円筒形状を有し、前記支持台に対する軸方向変位を可能に支持されている。外側カウンタパンチ28fは、ダイス28aの小径部28a2と内側カウンタパンチ28eの外周面との間に、実質的に隙間なく挿入されている。
【0156】
プレス加工装置28により、第1中間素材25に小径側形状規制加工を施して第2中間素材27を得るためには、まず、第1中間素材25の接続板部25cの軸方向他側面を、ダイス28aの段差面28a3に載置する。そして、押えパンチ28dを軸方向他側に向けて変位させ、第1中間素材25の大径円筒部25aの軸方向片側の端面を押えパンチ28dにより押え付ける(ダイス28aの段差面28a3と押えパンチ28dとの間で、大径円筒部25aを軸方向に挟持する)。
【0157】
この状態で、内側押圧パンチ28b及び外側押圧パンチ28cを軸方向他側に向けて変位させ、かつ、内側カウンタパンチ28e及び外側カウンタパンチ28fを軸方向片側に向けて変位させる。そして、内側押圧パンチ28b及び外側押圧パンチ28cと、内側カウンタパンチ28e及び外側カウンタパンチ28fとの間で、第1中間素材25の小径円筒部25bを軸方向に押し潰す。これにより、小径円筒部25bの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制すると同時に、内側カウンタパンチ28eの面取り成形部28e1及び内側押圧パンチ28bの面取り成形部28b1により、小径円筒部25bの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する。以上のようにして、第2中間素材27を得る。
【0158】
次の第6工程では、第2中間素材27に、小径円筒部27bの内周面にシェービング加工を施す小径側シェービング加工を施して、
図12(F)に示すような、第3中間素材20を得る。第3中間素材20は、第1実施例の第6工程完了後の第3中間素材20の形状と同じ形状を有する。
【0159】
なお、本例では、第6工程において、第2中間素材27のうち、小径円筒部27bの内周面以外の部分、すなわち大径円筒部27a及び接続板部27c、並びに、小径円筒部27bの外周面には、塑性加工を施さない。
【0160】
第6工程は、
図15に示すようなプレス加工装置29を用いて行う。プレス加工装置29は、ダイス29aと、スリーブ29bと、シェービングカッター29cとを備える。
【0161】
ダイス29aは、円筒状の内周面を有する。
【0162】
スリーブ29bは、ダイス29aの軸方向他側部分(
図15の下側部分)に実質的に隙間なく内嵌される。
【0163】
シェービングカッター29cは、円柱形状を有し、ダイス29aの中央部に、プレス加工装置29の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。シェービングカッター29cは、先端部(軸方向他側の端部)の径方向外側縁に、第2中間素材27の小径円筒部27bの内周面に、該内周面の表面をわずかに削って滑らかにするシェービング加工を施すための刃部29c1を有する。
【0164】
プレス加工装置29により、第2中間素材27に打ち抜き加工を施して、第3中間素材20を得るためには、まず、第2中間素材27の大径円筒部27aの軸方向他側の端面及び接続板部27cの軸方向他側面を、スリーブ29bの軸方向片側(
図15の上側)の端面に載置する。この状態で、シェービングカッター29cを軸方向他側に向けて変位させ、刃部29c1により、小径円筒部27bの内周面をわずかに削って滑らかにする(シェービング加工を施す)。これにより、第3中間素材20を得る。
【0165】
上述のようにして得られた第3中間素材20に、第7工程において、大径円筒部20a(及び接続板部20c)と小径円筒部20bとを分離する分離加工を施して、
図12(G)に示すような、予備大径円筒部材22と小径円筒部材(第2リング要素)12とを得る。さらに、第8工程において、予備大径円筒部材22の内周面にシェービング加工を施して余肉を除去する大径側シェービング加工、及び、大径円筒部22aの内周面と軸方向片側の端面との接続部に、軸方向片側の外径側面取り部2b1を形成する第2大径側面取り加工を施して、
図12(H)に示すような、大径円筒部材(第1リング要素)11を得る。その他部分の構成及び作用効果は第1実施例と同様である。
【0166】
[第3実施例]
本発明の第3実施例について、
図16~
図19を用いて説明する。本例の製造方法のうちの第1工程から第3工程及び第8工程は、第1実施例における第1工程から第3工程及び第8工程と同じである。以下では、本例の製造方法のうち、第4工程から第7工程について説明する。
【0167】
第4工程では、
図16(C)に示すような、予備中間素材13に、側板部13aのうちで小径円筒部13cの内周面よりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いて除去する打ち抜き加工を施して、
図16(D)に示すような第1中間素材30を得る。第1中間素材(第1ピース)30は、軸方向片側(
図16(D)の上側)の大径円筒部(第1リング部)30aと、軸方向他側(
図16(D)の下側)の小径円筒部(第2リング部)30bと、大径円筒部30aの軸方向他側の端部と小径円筒部30bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部30cとを有する。
【0168】
第4工程は、
図17に示すようなプレス加工装置31を用いて行う。プレス加工装置31は、ダイス31aと、押えパンチ31bと、打ち抜きパンチ31cとを備える。
【0169】
ダイス31aは、円筒面状の内周面を有する。
【0170】
押えパンチ31bは、段付円筒形状を有する。すなわち、押えパンチ31bは、軸方向他側(
図17の下側)の小径部31b1と軸方向片側(
図17の上側)の大径部31b2とを、軸方向他側を向いた段差面31b3により接続してなる、段付円筒状の外周面を有する。
【0171】
打ち抜きパンチ31cは、円柱形状を有する。
【0172】
プレス加工装置31により、予備中間素材13に打ち抜き加工を施して、第1中間素材30を得るためには、まず、予備中間素材13の大径円筒部13bを、ダイス31aの内側にがたつきなく内嵌保持し、かつ、押えパンチ31bの小径部31b1の軸方向他側の端面を、側板部13aの軸方向片側面に当接又は対向させ、予備中間素材13の軸方向片側への変位を規制する。この状態で、打ち抜きパンチ31cを軸方向片側に向けて変位させることで、側板部13aのうちで小径円筒部13cの内周面よりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いて除去する。これにより、第1中間素材30を得る。
【0173】
次の第5工程は、第2実施例における第5工程と同じである。すなわち、第5工程では、第1中間素材30に、小径円筒部30bの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制し、かつ、小径円筒部30bの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する小径側形状規制加工を施して、
図16(E)に示すような、第2中間素材32を得る。第2中間素材(第1ピース、第2ピース)32は、軸方向片側の大径円筒部(第1リング部、第3リング部)32aと、軸方向他側の小径円筒部(第2リング部、第4リング部)32bと、大径円筒部32aの軸方向他側の端部と小径円筒部32bの軸方向他側の端部とを接続する接続板部32cとを有する。小径円筒部32bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有し、かつ、径方向中間部から径方向内側に突出した余肉部32b1を有する。
【0174】
本例の第5工程で使用するプレス加工装置は、第2実施例における第5工程で使用するプレス加工装置28(
図14参照)と略同じ構造を有する。さらに、プレス加工装置により、第1中間素材30を第2中間素材32に加工する手順についても、第2実施例の第5工程において、第1中間素材25を第2中間素材27に加工する手順と基本的に同じであるから、詳しい説明は省略する。
【0175】
次の第6工程では、第2中間素材32に、大径円筒部32aの軸方向寸法を所定の寸法Lb(
図18参照)に規制する大径側寸法規制加工、及び、大径円筒部32aの外周面と軸方向他側の端面と接続部に軸方向他側の外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工を施す。さらに、本例では、小径円筒部32bの内周面を扱いて余肉を寄せ集める扱き加工を同時に施す。これにより、
図16(F)に示すような第3中間素材33を得る。
【0176】
第3中間素材(第2ピース)33は、軸方向片側(
図16(F)の上側)の大径円筒部(第3リング部)33aと、軸方向他側(
図16(F)の下側)の小径円筒部(第4リング部)33bと、大径円筒部33aの軸方向他側の端部と小径円筒部33bの軸方向他側の端部とを接続する接続板部33cと、小径円筒部33bの軸方向中間部から径方向内側に突出した内向フランジ状の余肉部33dとを有する。大径円筒部33aは、外周面と軸方向他側の端面と接続部に軸方向他側の外径側面取り部2b2を有し、かつ、小径円筒部33bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有する。
【0177】
第6工程は、
図18に示すようなプレス加工装置34を用いて行う。プレス加工装置34は、ダイス34aと、マンドレル(第4部材)34bと、スリーブ(第3部材)34cと、押圧パンチ(第1部材)34dと、扱きパンチ(第2部材)34eとを備える。
【0178】
ダイス34aは、軸方向片側(
図18の上側)の大径部34a1と、軸方向他側(
図18の下側)の小径部34a2と、大径部34a1の軸方向他側の端部と小径部34a2の軸方向片側の端部とを接続する円すい面状の面取り成形部(傾斜面)34a3とを含む、段付円筒状の内周面を有する。
【0179】
マンドレル34bは、軸方向片側の小径部34b1と、軸方向他側の大径部34b2と、小径部34b1の軸方向他側の端部と大径部34b2の軸方向片側の端部とを接続する段差面(傾斜面)34b3とを含む、段付円筒状の外周面を有する。段差面34b3は、径方向外側に向かうほど軸方向他側に向かう方向に傾斜する円すい面により構成されている。
【0180】
スリーブ34cは、ダイス34aの小径部34a2と、マンドレル34bの大径部34b2との間に実質的に隙間なく挿入される。
【0181】
押圧パンチ34dは、円筒形状を有し、かつ、プレス加工装置34の支持台(図示省略)に対する軸方向の変位を可能に支持されている。
【0182】
扱きパンチ34eは、得るべき第3中間素材33の小径円筒部33bの内径寸法と実質的に同じ外径寸法を有し、かつ、押圧パンチ34dの内側に、該押圧パンチ34dに対する軸方向の相対変位を可能に配置される。
【0183】
プレス加工装置34により、第2中間素材32に大径側寸法規制加工、第1大径側面取り加工及び扱き加工を施して第3中間素材33を得るためには、まず、第2中間素材32の接続板部32cの軸方向他側面の径方向外側部分を、ダイス34aの面取り成形部34a3及びスリーブ34cの軸方向片側の端面に載置し、かつ、小径円筒部32bを、スリーブ34cの内周面と、マンドレル34bの小径部34b1との間に挿入する。
【0184】
この状態で、押圧パンチ34d及び扱きパンチ34eを軸方向他側に向けて変位させる。これにより、第2中間素材32の小径円筒部32bの軸方向片側部分の径方向内側に、扱きパンチ34eの先端部を軸方向片側から押し込み、小径円筒部32bの内周面の軸方向片側部分を扱きパンチ34eにより扱く。これと同時に、小径円筒部32bの軸方向他側部分の径方向内側に、マンドレル34bの小径部34b1を軸方向他側から押し込み(小径円筒部32bの軸方向他側部分を、スリーブ34cの内周面とマンドレル34bの小径部34b1との間に押し込み)、小径円筒部32bの内周面の軸方向他側部分をマンドレル34bにより扱く。これにより、小径円筒部33bの軸方向中間部から径方向内側に突出した内向フランジ状の余肉部33dを形成する。
【0185】
又、押圧パンチ34dの先端面と、ダイス34aの面取り成形部34a3及びスリーブ34cの軸方向片側の端面との間で、第2中間素材32の大径円筒部32aを軸方向に押し潰す。これにより、大径円筒部32aの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制すると同時に、面取り成形部34a3により、大径円筒部32aの外周面と軸方向他側の端面との接続部に外径側面取り部2b2を形成する。以上のようにして、第3中間素材33を得る。
【0186】
次の第7工程では、第3中間素材33に、大径円筒部33a(及び接続板部33c)と、小径円筒部33bとを分離する分離加工と、小径円筒部33bの径方向内側に存在する余肉部33dを除去する小径側シェービング加工とを施して、
図16(G)に示すような、予備大径円筒部材22と小径円筒部材12とを得る。なお、図示の例では、第7工程における加工前の第3中間素材33の軸方向に関する向きを、第6工程における加工後の第3中間素材33の軸方向に関する向きから反転させた状態(180度回転させた状態)で、第7工程を行う。
【0187】
第7工程は、
図19に示すようなプレス加工装置35を用いて行う。プレス加工装置35は、ダイス35aと、円筒状の押えパンチ35bと、円筒状の打ち抜きパンチ35cと、円柱状のシェービングカッター35dとを備える。ダイス35aは、軸方向片側(
図19の下側)の小径部35a1と、軸方向他側(
図19の上側)の大径部35a2とを、軸方向他側を向いた段差面35a3により接続してなる、段付円筒面状の内周面を有する。
【0188】
プレス加工装置35により、第3中間素材33に、分離加工及び小径側シェービング加工を施して、予備大径円筒部材22及び小径円筒部材12を得るためには、まず、第3中間素材33の大径円筒部33aの軸方向片側の端面を、ダイス35aの段差面35a3に載置する。次に、押えパンチ35bを軸方向片側に向けて変位させ、押えパンチ35bの先端面(軸方向片側の端面)により、第3中間素材33の接続板部33cの軸方向他側面を押え付ける。
【0189】
この状態で、打ち抜きパンチ35cを軸方向他側に向けて変位させることにより、第3中間素材33の小径円筒部33bを打ち抜いて、大径円筒部33a及び接続板部33cから分離する。打ち抜きパンチ35cにより小径円筒部33bを打ち抜くと同時に、あるいは、小径円筒部33bを打ち抜くと前後して、シェービングカッター35dを軸方向片側に向けて変位させることで、シェービングカッター35dにより小径円筒部33bの軸方向中間部から径方向内側に向けて突出した内向フランジ状の余肉部33dを削り取って除去する。以上のようにして、予備大径円筒部材22及び小径円筒部材(第2リング要素)12を得、このうちの小径円筒部材12を、後処理工程に送る。一方、予備大径円筒部材22には、続く第8工程において、大径側シェービング加工及び第2大径側面取り加工を施して、
図16(H)に示すような大径円筒部材(第1リング要素)11を得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例と同様である。
【0190】
[第4実施例]
本発明の第4実施例について、
図20~
図21により説明する。本例の製造方法のうちの第1工程から第5工程は、第3実施例における第1工程から第5工程と同じである。又、本例の製造方法のうちの第7工程及び第8工程は、第1実施例における第7工程及び第8工程と同じである。そこで、以下では、本例の製造方法のうち、第6工程について説明する。
【0191】
本例の第6工程では、
図20(E)に示すような、第2中間素材32に、大径円筒部32aの軸方向寸法を所定の寸法Lb(
図21参照)に規制する大径側寸法規制加工と、大径円筒部32aの外周面と軸方向他側の端面と接続部に軸方向他側の外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工と、小径円筒部33bの径方向内側に存在する余肉を除去する小径側シェービング加工との3つの加工を同時に施す。これにより、
図20(F)に示すような、第3中間素材20を得る。
【0192】
第6工程は、
図21に示すようなプレス加工装置36を用いて行う。プレス加工装置36は、ダイス36aと、円筒状の押えパンチ36bと、押えパンチ36bの周囲に配置された円筒状の押圧パンチ36cと、押えパンチ36bの内側に配置された円柱状のシェービングカッター36dと、円筒状のカウンタパンチ36eとを備える。
【0193】
ダイス36aは、軸方向片側(
図21の上側)の大径部36a1と、軸方向他側(
図21の下側)の小径部36a2とを、軸方向片側を向いた段差面36a3により接続してなる、段付円筒状の内周面を有する。段差面36a3は、径方向外側部分に、径方向外側に向かうほど軸方向片側に向かう方向に傾斜した円すい面状の面取り成形部36a3aを有する。
【0194】
プレス加工装置36により、第2中間素材32に、大径側寸法規制加工、第1大径側面取り加工及び小径側シェービング加工を施して、第3中間素材20を得るためには、まず、第2中間素材32の接続板部32cの軸方向他側面を、ダイス36aの段差面36a3に載置する。次に、押えパンチ36bを軸方向他側に向けて変位させ、押えパンチ36bの先端面(軸方向他側の端面)により、第2中間素材32の接続板部32cの軸方向他側面を押え付ける。
【0195】
この状態で、押圧パンチ36cにより、第2中間素材32の大径円筒部32aの軸方向片側の端面を軸方向他側に向けて押圧し、押圧パンチ36cの先端面とダイス36aの段差面36a3との間で、大径円筒部32aを軸方向に押し潰す。これにより、大径円筒部32aの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制すると同時に、面取り成形部36a3aにより、大径円筒部32aの外周面と軸方向他側の端面との接続部に外径側面取り部2b2を形成する。
【0196】
押圧パンチ36cにより大径円筒部32aの軸方向片側の端面を押圧するのと同時に、あるいは、大径円筒部32aの軸方向片側の端面を押圧するのと前後して、シェービングカッター36dにより、第2中間素材32の小径円筒部32bの内周面にシェービング加工を施す。以上のようにして、第3中間素材20を得る。その他の部分の構成及び作用工は、第1実施例及び第3実施例と同様である。
【0197】
[第5実施例]
本発明の第5実施例について、
図22(A)~(H)により説明する。本例の製造方法のうちの第1工程から第4工程、並びに、第7工程及び第8工程は、第1実施例における第1工程から第4工程、並びに、第7工程及び第8工程と同じである。換言すれば、本例の製造方法は、第5工程及び第6工程が、第1実施例の製造方法と異なる。
【0198】
本例の第5工程では、第1中間素材16に、隔壁部16dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工、及び、小径円筒部16bの内周面にシェービング加工を施す小径側シェービング加工を施す。これにより、
図22(E)に示すような、第2中間素材37を得る。第2中間素材37は、軸方向片側の大径円筒部37aと、軸方向他側の小径円筒部37bと、大径円筒部37aの軸方向他側の端部と小径円筒部37bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部37cとを備える。
【0199】
次の第6工程では、第2中間素材37に、大径円筒部37aの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制する大径側寸法規制加工と、大径円筒部37aの外周面と軸方向他側の端面との接続部に外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工とを同時に施す。これにより、
図22(F)に示すような、第3中間素材20を得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例と同様である。
【0200】
[第6実施例]
本発明の第6実施例について、
図23(A)~(G)により説明する。本例では、単一の円柱状素材10から大径円筒部材(第1リング要素)11及び小径円筒部材(第2リング要素)12を造る全工程の工程数を7工程としている。本例の製造方法のうちの第1工程から第5工程及び第7工程は、第1実施例における第1工程から第5工程及び第8工程と同じである。すなわち、本例の製造方法では、第1実施例における第6工程及び第7工程を、第6工程において1工程で行う。
【0201】
具体的には、本例の第6工程では、第2中間素材18に、大径円筒部18aと小径円筒部18bとを分離する分離加工と、隔壁部18dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工と、小径円筒部18bの内周面にシェービング加工を施して余肉を除去する小径側シェービング加工との3つの加工を同時に施して、
図23(F)に示すような、予備大径円筒部材22と小径円筒部材12とを得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例と同様である。
【0202】
[第7実施例]
本発明の第7実施例について、
図24(A)~(H)により説明する。本例の製造方法のうちの第1工程から第3工程、並びに、第7工程及び第8工程は、第1実施例における第1工程から第3工程、並びに、第7工程及び第8工程と同じである。又、本例の製造方法のうちの第6工程は、第5実施例における第6工程と同じである。
【0203】
本例の第4工程では、予備中間素材13に、側板部13aのうちで小径円筒部13cの内周面よりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いて除去する打ち抜き加工、及び、小径円筒部13cの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制し、かつ、小径円筒部13cの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する、小径側形状規制加工を施す。これにより、
図24(D)に示すような、第1中間素材38を得る。
【0204】
第1中間素材(第2ピース)38は、軸方向片側の大径円筒部(第3リング部)38aと、軸方向他側の小径円筒部(第4リング部)38bと、大径円筒部38aの軸方向他側の端部と小径円筒部38bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部38cとを備える。小径円筒部38bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有する。
【0205】
次の第5工程では、第1中間素材38に、小径円筒部38bの内周面にシェービング加工を施す小径側シェービング加工を施すことにより、
図24(E)に示すような、第2中間素材37を得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例及び第5実施例と同様である。
【0206】
[第8実施例]
本発明の第8実施例について、
図25(A)~(H)により説明する。本例の製造方法のうちの第1工程から第3工程、並びに、第7工程及び第8工程は、第1実施例における第1工程から第3工程、並びに、第7工程及び第8工程と同じである。
【0207】
本例の第4工程では、予備中間素材13に、大径円筒部13bの軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制する大径側寸法規制加工、及び、大径円筒部13bの外周面と軸方向他側の端面との接続部に外径側面取り部2b2を形成する第1大径側面取り加工を施す。これにより、
図25(D)に示すような、第1中間素材39を得る。
【0208】
第1中間素材(第1ピース)39は、円板状の側板部39aと、側板部39aの軸方向片側面(
図25(D)の上側面)の径方向外側部分から軸方向片側に向けて突出する大径円筒部(第1リング部)39bと、側板部39aの軸方向他側面(
図25(D)の下側面)の径方向中間部から軸方向他側に向けて突出する小径円筒部(第2リング部)39cとを有する。大径円筒部39bは、外周面と軸方向他側の端面との接続部に、外径側面取り部2b2を有する。
【0209】
次の第5工程では、第1中間素材39に、小径円筒部39cの軸方向寸法を所定の寸法Lsに規制し、かつ、小径円筒部39cの内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を形成する小径側形状規制加工を施して、
図25(E)に示すような、第2中間素材40を得る。
【0210】
第2中間素材(第2ピース)40は、軸方向片側の大径円筒部(第3リング部)40aと、軸方向他側の小径円筒部(第4リング部)40bと、大径円筒部40aの軸方向他側の端部と小径円筒部40bの軸方向他側の端部とを接続する接続板部40cと、小径円筒部40bの軸方向片側かつ径方向内側部分に形成された隔壁部40dとを有する。小径円筒部40bは、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部3b1、3b2を有する。
【0211】
次の第6工程では、第2中間素材40に、隔壁部40dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工、及び、小径円筒部40bの内周面にシェービング加工を施す小径側シェービング加工を施す。これにより、
図25(F)に示すような、第3中間素材20を得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例と同様である。
【0212】
[第9実施例]
本発明の第9実施例について、
図26(A)~(G)により説明する。本例では、単一の円柱状素材10から大径円筒部材(第1リング要素)11及び小径円筒部材(第2リング要素)12を造る全工程の工程数を7工程としている。本例の製造方法のうちの第1工程から第5工程及び第7工程は、第8実施例における第1工程から第5工程及び第8工程と同じである。すなわち、本例の製造方法では、第8実施例における第6工程及び第7工程を、第6工程において1工程で行う。
【0213】
具体的には、本例の第6工程では、第2中間素材40に、大径円筒部40aと小径円筒部40bとを分離する分離加工と、隔壁部40dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工と、小径円筒部40bの内周面にシェービング加工を施すことで余肉を除去する小径側シェービング加工との3つの加工を同時に施す。これにより、
図26(F)に示すような、予備大径円筒部材22と小径円筒部材12とを得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例及び第8実施例と同様である。
【0214】
[第10実施例]
本発明の第10実施例について、
図27(A)~(I)により説明する。本例では、単一の円柱状素材10から大径円筒部材(第1リング要素)11及び小径円筒部材(第2リング要素)12を造る全工程の工程数を9工程としている。本例の製造方法のうちの第1工程から第5工程、並びに、第8工程及び第9工程は、第1実施例における第1工程から第5工程、並びに、第7工程及び第8工程と同様である。すなわち、本例では、第1実施例の第6工程において同時に行っていた打ち抜き加工と小径側シェービング加工とを、それぞれ別の工程で行う。
【0215】
具体的には、本例の第6工程では、第2中間素材18に、隔壁部18dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工を施して、
図27(F)に示すような、第3予備中間素材41を得る。第3予備中間素材41は、軸方向片側の大径円筒部41aと、軸方向他側の小径円筒部41bと、大径円筒部41aの軸方向他側の端部と小径円筒部41bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部41cとを有する。
【0216】
次の第7工程では、第3予備中間素材41に、小径円筒部41bの内周面にシェービング加工を施すことで余肉を除去する小径側シェービング加工を施して、
図27(G)に示すような、第3中間素材20を得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例と同様である。
【0217】
[第11実施例]
本発明の第11実施例について、
図28(A)~(J)により説明する。本例では、単一の円柱状素材10から大径円筒部材(第1リング要素)11及び小径円筒部材(第2リング要素)12を造る全工程の工程数を10工程としている。本例の製造方法のうちの第1工程から第4工程は、第1実施例における第1工程から第4工程と同様である。
【0218】
本例の第5工程では、第1中間素材16に、隔壁部16dを打ち抜いて除去する打ち抜き加工を施して、
図28(E)に示すような、第2中間素材42を得る。第2中間素材42は、軸方向片側の大径円筒部42aと、軸方向他側の小径円筒部42bと、大径円筒部42aの軸方向他側の端部と小径円筒部42bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部42cとを有する。
【0219】
次の第6工程では、第2中間素材42に、小径円筒部42bの内周面にシェービング加工を施す小径側シェービング加工を施して、
図28(F)に示すような、第3中間素材43を得る。第3中間素材43は、軸方向片側の大径円筒部43aと、軸方向他側の小径円筒部43bと、大径円筒部43aの軸方向他側の端部と小径円筒部42bの軸方向片側の端部とを接続する接続板部43cとを有する。
【0220】
次の第7工程では、第3中間素材43に、大径円筒部43a(及び接続板部43c)と小径円筒部43bとを分離する分離加工を施して、
図28(G)に示すような、第1予備大径円筒部材44と小径円筒部材12とを得る。第1予備大径円筒部材44は、大径円筒部44aと、大径円筒部44aの軸方向他側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった内向鍔部44bとを有する。
【0221】
次の第8工程では、第1予備大径円筒部材44に、軸方向寸法を所定の寸法Lbに規制する大径側寸法規制加工と、外周面と軸方向他側の端面との接続部に外径側面取り部を形成する第1大径側面取り加工と、外周面と軸方向片側の端面との接続部に外径側面取り部を形成する第2大径側面取り加工とを同時に施す。これにより、
図28(H)に示すように、大径円筒部45aと、大径円筒部45aの軸方向他側の端部から径方向内側に向けて折れ曲がった内向鍔部45bとを有する第2予備大径円筒部材45を得る。大径円筒部45aは、外周面と軸方向両側の端面との接続部に、外径側面取り部2b1、2b2を有する。
【0222】
次の第9工程では、第2予備大径円筒部材45に打ち抜き加工を施して、第2予備大径円筒部材45から内向鍔部45bを除去して、
図28(I)に示すような、円筒状の第3予備大径円筒部材46を得る。
【0223】
最後に、第10工程では、第3予備大径円筒部材46に、大径側シェービング加工を施して、
図28(J)に示すような、大径円筒部材(第1リング要素)11を得る。その他の部分の構成及び作用効果は、第1実施例と同様である。
【0224】
ここで、特開2009-269082号公報に記載の従来の方法では、第2プレス加工装置8のキャビティ8dの軸方向片側(
図31(A)及び(B)の上側)の端部が開放されているため、第2中間素材9の大径円筒部9bの軸方向寸法を精度よく規制することが難しい。したがって、一対の円筒部材のうち、直径寸法が大きい大径円筒部材の軸方向寸法のばらつきが大きくなり、後処理における切削加工量や研削加工量が多くなって、コストが増大する可能性がある。
【0225】
円筒部材の製造方法について、プレス加工により、円柱状素材(ビレット)から大径円筒部材及び小径円筒部材を造る過程で、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材の軸方向寸法を規制する工程を設けることにより、後処理における切削加工量及び/又は研削加工量を削減できる。又、前記小径円筒部材の軸方向寸法を規制すると同時に、該小径円筒部材の内周面と軸方向両側の端面との接続部に面取り部をプレス成形により形成することで、プレス荷重や工程数が徒に増大するのを抑えつつ、後処理工程における切削加工量及び/又は研削加工量を削減できる。
【0226】
一実施形態において、円筒部材の製造方法は、単一の円柱状素材(ビレット)から、外周面と軸方向両側の端面との接続部に一対の外径側面取り部を有する大径円筒部材、及び、内周面と軸方向両側の端面との接続部に、一対の内径側面取り部を有する小径円筒部材をプレス加工により造る。
【0227】
まず、前記円柱状素材に据え込み加工と前後方押出加工とを順に施して、円形平板状の側板部と、該側板部の軸方向片側面の径方向外側部分から軸方向片側に向けて突出する大径円筒部と、該側板部の軸方向他側面の径方向中間部から軸方向他側に向けて突出する小径円筒部とを形成する。
【0228】
その後、
前記側板部のうちで前記小径円筒部の内周面よりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いて除去する打ち抜き加工と、
前記小径円筒部の軸方向寸法を所定の寸法に規制し、かつ、前記小径円筒部の内周面と軸方向両側の端面との接続部に前記一対の内径側面取り部を形成する小径側形状規制加工と、
前記小径円筒部の内周面にシェービング加工を施す小径側シェービング加工と、
前記大径円筒部と前記小径円筒部とを分離して、前記大径円筒部及び該大径円筒部の軸方向他側の端部から径方向内側に折れ曲がった内向鍔部を有する予備大径円筒部材と前記小径円筒部材とを得る分離加工と、
前記大径円筒部又は前記予備大径円筒部材の軸方向寸法を所定の寸法に規制する大径側寸法規制加工と、
前記大径円筒部又は前記予備大径円筒部材の外周面と軸方向他側の端面との接続部に、前記一対の外径側面取り部のうち、軸方向他側の外径側面取り部を形成する第1大径側面取り加工と、
前記大径円筒部又は前記予備大径円筒部材の外周面と軸方向片側の端面との接続部に、前記一対の外径側面取り部のうち、軸方向片側の外径側面取り部を形成する第2大径側面取り加工と、
前記予備大径円筒部材の内周面にシェービング加工を施す大径側シェービング加工と、を施すことで、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材を得る。
【0229】
前記打ち抜き加工と、前記小径側形状規制加工と、前記小径側シェービング加工と、前記分離加工と、前記大径側寸法規制加工と、前記第1大径側面取り加工と、前記第2大径側面取り加工と、前記大径側シェービング加工とは、矛盾を生じない限り、任意の順番で行ったり、同一工程内で行ったりすることができる。これらの加工は、矛盾を生じない限り、任意の順番で行ったり、2つ以上の加工を組み合わせて同時に行ったりすることができる。
【0230】
具体的には、前記円柱状素材の材質、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材の形状や大きさ、使用するプレス加工装置の加圧能力、金型や工具の耐久性等に応じて、適切な順番や組み合わせを、実験やシミュレーションにより決定する。
【0231】
ただし、前記打ち抜き加工は、前記分離加工と同時か、あるいは、前記分離加工よりも前に行う必要がある。又、前記小径側形状規制加工は、前記分離加工よりも前に行う必要があり、かつ、前記打ち抜き加工と同時か、あるいは、前記打ち抜き加工よりも前に行う必要がある。
又、前記小径側シェービング加工は、前記打ち抜き加工と同時か、あるいは、前記打ち抜き加工よりも後に行うことが好ましい。
ただし、前記小径側シェービング加工と前記打ち抜き加工とを同時に行う場合には、前記打ち抜き加工により、前記側板部のうちで前記小径円筒部の内周面よりも径方向内側に位置する部分を打ち抜いた後、当該打ち抜かれた部分の内周面に、シェービング加工を施すようにする。
【0232】
前記大径側シェービング加工は、前記分離加工よりも後で行うことができる。
【0233】
前記小径側シェービング加工は、前記打ち抜き加工と同時か、あるいは、前記打ち抜き加工よりも後で行うことができる。
【0234】
前記大径側寸法規制加工と前記第1大径側面取り加工とは同一工程内で行うことができる。
【0235】
前記第2大径側面取り加工と前記大径側シェービング加工とは同一工程内で行うことができる。
【0236】
前記打ち抜き加工と前記小径側シェービング加工とは同一工程内で行うことができる。
【0237】
前記小径側シェービング加工と前記大径側寸法規制加工とは同一工程内で行うことができる。
【0238】
前記打ち抜き加工と前記分離加工とは同一工程内で行うことができる。
【0239】
前記打ち抜き加工と前記小径側形状規制加工とは同一工程内で行うことができる。
【0240】
前記打ち抜き加工と前記大径側寸法規制加工とは同一工程内で行うことができる。
【0241】
前記小径側シェービング加工を施す以前に、前記小径円筒部の内周面に扱き加工を施して余肉を寄せ集めることができる。
【0242】
なお、本明細書において、複数の加工を同時に行うとは、複数の加工が、時間的に完全に同時に行われる必要はなく、プレス加工装置から被加工物(ワーク)を取り外すことなく、同一工程内(いわゆるワンチャック)で複数の加工を行うことを意味することができる。
【0243】
一実施形態における円筒部材の製造方法においては、長尺な線材を所定長さに切断して前記円柱状素材を得る工程と、前記円柱状素材に前記据え込み加工を施して、厚肉円板状又はビヤ樽形の予備素材を得る工程と、前記予備素材に前記前後方押出加工を施して前記予備中間素材を得る工程とを含む全工程の工程数を、10工程以下とすることが好ましく、8工程以下とすることがより好ましい。
【0244】
一実施形態において、ラジアル転がり軸受の製造方法は、内周面に外輪軌道を有し、かつ、外周面と軸方向両側の端面との接続部に一対の外径側面取り部を有する外輪と、
外周面に内輪軌道を有し、かつ、内周面と軸方向両側の端面との接続部に一対の内径側面取り部を有する内輪と、
前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に配置された複数個の転動体とを備える、ラジアル転がり軸受を対象としている。
【0245】
この製造方法は、上記の円筒部材の製造方法により、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材を造った後、
前記大径円筒部材の内周面に前記外輪軌道を形成して前記外輪を得、かつ、前記小径円筒部材の外周面に前記内輪軌道を形成して前記内輪を得る。
【0246】
一実施形態において、滑り軸受の製造方法は、単一の円柱状素材から、直径寸法が異なる一対の滑り軸受を造る。
【0247】
この製造方法は、上記の円筒部材の製造方法により、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材を得る工程を備える。なお、この製造方法では、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材を得た後、必要に応じて、前記大径円筒部材及び前記小径円筒部材の表面に、研削加工などの仕上加工を施すことにより、直径寸法が異なる一対の滑り軸受を造る。
【0248】
一実施形態において、外輪は、内周面に外輪軌道を有し、かつ、外周面と軸方向両側の端面との接続部に一対の外径側面取り部を有する。
この外輪においては、前記一対の外径側面取り部を含む外周面全体が、研削加工等の仕上加工が施されていない鍛造面により構成されている。この場合、メタルフロー(ファイバーフロー、鍛流線)が、前記一対の外径側面取り部のそれぞれの表面近傍において、該一対の外径側面取り部のそれぞれに沿って連続している。
【0249】
一実施形態において、外輪は、外周面と軸方向両側の端面との接続部に外径側面取り部をそれぞれ有することができる。この場合、外輪の内部のメタルフローは、前記外径側面取り部の表面近傍において該外径側面取り部に沿って連続している。
【0250】
前記メタルフローは、軸方向に関して前記外輪軌道から軸方向に外れた部分に、径方向外側に向けて湾曲し、さらに、径方向内側に向けて折り返す方向に変化(屈曲)する屈曲部を有することができる。
【0251】
一実施形態において、内輪は、外周面に内輪軌道を有し、かつ、内周面と軸方向両側の端面との接続部に内径側面取り部をそれぞれ有する。
この内輪においては、内輪の内部のメタルフローは、前記内径側面取り部の表面近傍において該内径側面取り部に沿って連続している。
【0252】
一実施形態において、ラジアル転がり軸受は、
内周面に外輪軌道を有し、かつ、外周面と軸方向両側の端面との接続部に一対の外径側面取り部を有する外輪と、
外周面に内輪軌道を有し、かつ、内周面と軸方向両側の端面との接続部に一対の内径側面取り部を有する内輪と、
前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に配置された複数個の転動体とを備える。
特に本発明のラジアル転がり軸受においては、
前記外輪が、本発明の外輪により構成されており、
前記内輪が、本発明の内輪により構成されている。
【0253】
一実施形態において、滑り軸受は、外周面と軸方向両側の端面との接続部又は内周面と軸方向両側の端面との接続部に、一対の面取り部を有する。
この滑り軸受においては、メタルフローが、前記一対の面取り部のそれぞれの表面近傍において該面取り部のそれぞれに沿って連続している。
【0254】
一実施形態において、回転機械装置は、軸受を有する。
この回転機械装置においては、前記軸受が、上記のラジアル転がり軸受又は上記の滑り軸受により構成されている。
【0255】
一実施形態において、車両は、軸受を有する。
特この車両においては、前記軸受が、上記のラジアル転がり軸受又は上記の滑り軸受により構成されている。
【符号の説明】
【0256】
1 ラジアル転がり軸受
2 外輪
2a 外輪軌道
2b1、2b2 外径側面取り部
3 内輪
3a 内輪軌道
3b1、3b2 内径側面取り部
4 転動体
5 ビレット
6 第1プレス加工装置
6a パンチ
6b カウンタパンチ
6c フローティングダイ
6d 弾性部材
7 第1中間素材
7a 円板状部
7b 小径円筒部
8 第2プレス加工装置
8a ダイス
8a1 大径部
8a2 小径部
8a3 段差面
8b パンチ
8c マンドレル
8d キャビティ
9 第2中間素材
9a 側板部
9b 大径円筒部
9c 小径円筒部
9d 底部
10 円柱状素材(ビレット)
11 大径円筒部材(第1リング要素)
12 小径円筒部材(第2リング要素)
13 予備中間素材(第1ピース)
13a 側板部
13b 大径円筒部(第1リング部)
13c 小径円筒部(第2リング部)
14 予備素材(第1ピース)
15 プレス加工装置
15a ダイス
15a1 大径部
15a2 小径部
15a3 段差面
15b マンドレル
15c パンチ
16 第1中間素材(第2ピース)
16a 大径円筒部(第3リング部)
16b 小径円筒部(第4リング部)
16c 接続板部
16d 隔壁部
17 プレス加工装置
17a ダイス
17a1 大径部
17a2 小径部
17a3 段差面
17b 内側押圧パンチ(第2部材)
17b1 面取り成形部
17c 外側押圧パンチ(第1部材)
17d 押えパンチ
17e 内側カウンタパンチ(第4部材)
17e1 面取り成形部
17f 外側カウンタパンチ(第3部材)
18 第2中間素材
18a 大径円筒部
18b 小径円筒部
18c 接続板部
18d 隔壁部
19 プレス加工装置
19a ダイス
19a1 大径部
19a2 小径部
19a3 段差面
19a3a 平坦面部
19a3b 面取り成形部
19b 押圧パンチ
19c マンドレル
19d スリーブ
20 第3中間素材
20a 大径円筒部
20b 小径円筒部
20c 接続板部
21 プレス加工装置
21a ダイス
21b シェービングカッター
21b1 刃部
21c 押えパンチ
22 予備大径円筒部材
22a 大径円筒部
22b 内向鍔部
23 プレス加工装置
23a ダイス
23b スリーブ
23c 押えパンチ
23d 打ち抜きパンチ
24 プレス加工装置
24a ダイス
24b スリーブ
24b1 面取り成形部
24c シェービングカッター
24c1 刃部
25 第1中間素材(第1ピース)
25a 大径円筒部(第1リング部)
25b 小径円筒部(第2リング部)
25c 接続板部
26 プレス加工装置
26a ダイス
26a1 大径部
26a2 小径部
26a3 段差面
26a3a 平坦面部
26a3b 面取り成形部
26b 押圧パンチ
26c 打ち抜きパンチ
27 第2中間素材(第2ピース)
27a 大径円筒部(第3リング部)
27b 小径円筒部(第4リング部)
27c 接続板部
28 プレス加工装置
28a ダイス
28a1 大径部
28a2 小径部
28a3 段差面
28b 内側押圧パンチ(第2部材)
28b1 面取り成形部
28c 外側押圧パンチ(第1部材)
28d 押えパンチ
28e 内側カウンタパンチ(第4部材)
28e1 面取り成形部
28f 外側カウンタパンチ(第3部材)
29 プレス加工装置
29a ダイス
29b スリーブ
29c シェービングカッター
29c1 刃部
30 第1中間素材(第1ピース)
30a 大径円筒部(第1リング部)
30b 小径円筒部(第2リング部)
30c 接続板部
31 プレス加工装置
31a ダイス
31b 押えパンチ
31b1 小径部
31b2 大径部
31b3 段差面
31c 打ち抜きパンチ
32 第2中間素材(第1ピース、第2ピース)
32a 大径円筒部(第1リング部、第3リング部)
32b 小径円筒部(第2リング部、第4リング部)
32b1 余肉部
32c 接続板部
33 第3中間素材(第2ピース)
33a 大径円筒部(第3リング部)
33b 小径円筒部(第4リング部)
33c 接続板部
33d 余肉部
34 プレス加工装置
34a ダイス
34a1 大径部
34a2 小径部
34a3 面取り成形部
34b マンドレル(第4部材)
34b1 小径部
34b2 大径部
34b3 段差面
34c スリーブ(第3部材)
34d 押圧パンチ(第1部材)
34e 扱きパンチ(第2部材)
35 プレス加工装置
35a ダイス
35a1 小径部
35a2 大径部
35a3 段差面
35b 押えパンチ
35c 打ち抜きパンチ
35d シェービングカッター
36 プレス加工装置
36a ダイス
36a1 大径部
36a2 小径部
36a3 段差面
36a3a 面取り成形部
36b 押えパンチ
36c 押圧パンチ
36d シェービングカッター
36e カウンタパンチ
37 第2中間素材
37a 大径円筒部
37b 小径円筒部
37c 接続板部
38 第1中間素材(第2ピース)
38a 大径円筒部(第3リング部)
38b 小径円筒部(第4リング部)
38c 接続板部
39 第1中間素材(第1ピース)
39a 側板部
39b 大径円筒部(第1リング部)
39c 小径円筒部(第2リング部)
40 第2中間素材(第2ピース)
40a 大径円筒部(第3リング部)
40b 小径円筒部(第4リング部)
40c 接続板部
40d 隔壁部
41 第3予備中間素材
41a 大径円筒部
41b 小径円筒部
41c 接続板部
42 第2中間素材
42a 大径円筒部
42b 小径円筒部
42c 接続板部
43 第3中間素材
43a 大径円筒部
43b 小径円筒部
43c 接続板部
44 第1予備大径円筒部材
44a 大径円筒部
44b 内向鍔部
45 第2予備大径円筒部材
45a 大径円筒部
45b 内向鍔部