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特開2023-58509PCSK9遺伝子の認識配列に特異的な操作されたメガヌクレアーゼ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058509
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】PCSK9遺伝子の認識配列に特異的な操作されたメガヌクレアーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 9/22 20060101AFI20230418BHJP
   C12N 15/55 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
C12N9/22
C12N15/55 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023005733
(22)【出願日】2023-01-18
(62)【分割の表示】P 2022145178の分割
【原出願日】2018-04-20
(31)【優先権主張番号】62/516,966
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/488,403
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】508117721
【氏名又は名称】プレシジョン バイオサイエンシズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バートサビチ,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】ジャンツ,デレック
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ジェームス,ジェファーソン
(72)【発明者】
【氏名】ラペ,ジャネル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ヒトPCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断する操作されたメガヌクレアーゼを提供する。
【解決手段】第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含み、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識ハーフサイトに結合し、第1のサブユニットは、(a)特定の配列を有するアミノ酸配列と、(b)第1の超可変(HVR1)領域とを含み、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識ハーフサイトに結合し、第2のサブユニットは、(i)特定の配列を有するアミノ酸配列と、(ii)第2の超可変(HVR2)領域とを含む、特定の配列を含む認識配列を認識し切断する操作されたメガヌクレアーゼである。本発明は、医薬組成物において、及びコレステロール関連障害の症状を治療又は低減する方法において、そのような操作されたメガヌクレアーゼを使用する方法を包含する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含み、
前記第1のサブユニットは、前記認識配列の第1の認識ハーフサイトに結合し、前記第
1のサブユニットは、
(a)配列番号6~14のいずれか1つの残基7~153に対して少なくとも80%の配
列同一性を有するアミノ酸配列と、
(b)第1の超可変(HVR1)領域と
を含み、
前記第2のサブユニットは、前記認識配列の第2の認識ハーフサイトに結合し、前記第
2のサブユニットは、
(i)配列番号6~14のいずれか1つの残基198~344に対して少なくとも80%
の配列同一性を有するアミノ酸配列と、
(ii)第2の超可変(HVR2)領域と
を含む、配列番号4を含む認識配列を認識し切断する操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項2】
前記HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24~79に対応するア
ミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項3】
前記HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24、26、28、30
、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、及び77に対応する
残基を含む、請求項1又は2に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項4】
前記HVR1領域は、配列番号8の残基48、50、71、及び73に対応する残基を
更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項5】
前記HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24~79を含む、請求
項1~4のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項6】
前記HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215~270に対応す
るアミノ酸配列に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、請
求項1~5のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項7】
前記HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215、217、219
、221、223、224、229、231、233、235、237、259、261
、266、及び268に対応する残基を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の操作
されたメガヌクレアーゼ。
【請求項8】
前記HVR2領域は、配列番号12の残基258に対応する残基を更に含む、請求項6
又は7に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項9】
前記HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215~270を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項10】
前記第1のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基80に対応する残
基を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項11】
前記第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基271に対応する
残基を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項12】
前記第1のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基7~153を含む
、請求項1~11のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項13】
前記第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基198~344を
含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項14】
前記操作されたメガヌクレアーゼはリンカーを含み、前記リンカーは前記第1のサブユ
ニットと前記第2のサブユニットを共有結合する、請求項1~13のいずれか1項に記載
の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項15】
前記操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号6~14のいずれか1つのアミノ酸配列
を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の操作されたメガヌクレアーゼ。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする
核酸配列を含むポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記ポリヌクレオチドはmRNAである、請求項16に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記mRNAは、請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレア
ーゼ及び少なくとも1つの更なるポリペプチドをコードする多シストロン性mRNAであ
る、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする
核酸配列を含む、組換えDNA構築物。
【請求項20】
前記組換えDNA構築物は、プロモーターと、請求項1~15のいずれか1項に記載の
前記操作されたメガヌクレアーゼ及び少なくとも1つの更なるポリペプチドをコードする
多シストロン性核酸配列とを含むカセットを含み、前記プロモーターは、前記多シストロ
ン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に多シストロン性mRNAを産生する、請求項1
9に記載の組換えDNA構築物。
【請求項21】
前記組換えDNA構築物は、請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメ
ガヌクレアーゼをコードする前記核酸配列を含むウイルスベクターをコードする、請求項
19に記載の組換えDNA構築物。
【請求項22】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチ
ウイルスベクター、又は組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項2
1に記載の組換えDNA構築物。
【請求項23】
前記ウイルスベクターは組換えAAVベクターである、請求項21又は22に記載の組
換えDNA構築物。
【請求項24】
請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする
核酸配列を含むウイルスベクター。
【請求項25】
前記ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、レンチ
ウイルスベクター、又はAAVベクターである、請求項24に記載のウイルスベクター。
【請求項26】
前記ウイルスベクターは組換えAAVベクターである、請求項24又は25に記載のウ
イルスベクター。
【請求項27】
前記ウイルスベクターは、プロモーターと、請求項1~15のいずれか1項に記載の前
記操作されたメガヌクレアーゼ及び少なくとも1つの更なるポリペプチドをコードする多
シストロン性核酸配列とを含むカセットを含み、前記プロモーターは、前記多シストロン
性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に多シストロン性mRNAを産生する、請求項24
~26のいずれか1項に記載のウイルスベクター。
【請求項28】
薬学的に許容される担体と、
(a)請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼをコー
ドする核酸、または
(b)請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアーゼと
を含む医薬組成物。
【請求項29】
前記操作されたメガヌクレアーゼをコードする前記核酸は、請求項17又は18に記載
の前記mRNAである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記医薬組成物は、請求項19~23のいずれか1項に記載の前記組換えDNA構築物
を含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記医薬組成物は、請求項24~27のいずれか1項に記載の前記ウイルスベクターを
含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記医薬組成物は、請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレ
アーゼを含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記医薬組成物は、脂質ナノ粒子内にカプセル化された請求項17又は18に記載の前
記mRNAを含む、請求項28又は29に記載の医薬組成物。
【請求項34】
被験体のPCSK9の発現を減少させる方法であって、前記方法は、前記被験体の標的
細胞に、
(a)有効量の請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアー
ゼをコードする核酸であって、前記操作されたメガヌクレアーゼは前記標的細胞で発現さ
れる、核酸、又は
(b)有効量の請求項1~15のいずれか1項に記載の前記操作されたメガヌクレアー

を送達することを含み、前記操作されたメガヌクレアーゼは、前記標的細胞の配列番号4
を含む認識配列を認識し切断し、対照細胞と比較してPCSK9の発現を減少させる、方
法。
【請求項35】
前記被験体は、高コレステロール血症を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記被験体は、家族性高コレステロール血症を有する、請求項34又は35に記載の方
法。
【請求項37】
前記被験体は、常染色体優性家族性高コレステロール血症を有する、請求項34~36
のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記方法は、請求項28~33のいずれか1項に記載の前記医薬組成物を前記被験体に
投与することを含む、請求項34~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記医薬組成物は、請求項26に記載の前記組換えAAVベクターを含む、請求項38
に記載の方法。
【請求項40】
前記医薬組成物は、脂質ナノ粒子内にカプセル化された請求項17又は18に記載の前
記mRNAを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記標的細胞は肝細胞である、請求項34~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記肝細胞は肝実質細胞である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記被験体は、ヒト又は非ヒト霊長類である、請求項34~42のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項44】
前記細胞表面上におけるLDL受容体のディスプレイは、ベースラインLDL受容体レ
ベルと比較した場合、肝細胞において増加する、請求項34~43のいずれか1項に記載
の方法。
【請求項45】
肝細胞の前記細胞表面上のLDL受容体の前記ディスプレイは、前記肝細胞の前記ベー
スラインLDL受容体レベルと比較した場合、少なくとも約5%、10%、20%、30
%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最高100%増加
する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
血清総コレステロールレベルは、PCSK9の発現減少後、前記被験体において減少す
る、請求項34~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
血清総コレステロールレベルは、前記ベースライン血清総コレステロールレベルと比較
した場合、
(a)少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%
、80%、90%、95%、若しくは最高100%、又は
(b)5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~3
0mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、
25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、60~80mg
/dL、若しくは70~100mg/dL減少する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
血清LDLコレステロールレベルは、治療後、前記被験体において減少する、請求項3
4~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
血清LDLコレステロールレベルは、前記ベースライン血清LDLコレステロールレベ
ルと比較した場合、
(a)少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%
、80%、90%、95%、若しくは最高100%、又は
(b)5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~3
0mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、
25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、若しくは60~
80mg/dL減少する、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学及び組換え核酸技術の分野に関する。特に、本発明は、PCSK
9遺伝子内の認識配列に対して特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼに関する。こ
のような操作されたメガヌクレアーゼは、心血管疾患及び常染色体優性家族性高コレステ
ロール血症を含む高コレステロール血症を治療する方法に有用である。
【0002】
EFS-WEBを介してテキストファイルとして提出された配列リストへの参照
本願は、EFS-WEBを介してASCII形式で提出され、参照することによりその
全文が本明細書に組み込まれる配列リストを含む。2018年4月20日に作成された当
該ASCIIコピーはP109070022WO00-SEQTXT-MJTという名称
であり、89,660バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
高レベルの低比重リポタンパク質コレステロール(LDL-C)に関連した心血管疾患
は、先進国における主な死因であり、LDL-Cレベルの上昇は、冠動脈疾患(CHD)
及びアテローム斑発生の主な危険因子である。例えば、家族性高コレステロール血症(F
H)は、高いコレステロールレベル、特に高レベルのLDL-C及び早期発症型CHDの
発症を特徴とする遺伝病である。ヘテロ接合性FH患者は典型的には、総コレステロール
レベル、具体的にはLDL-Cレベルを減少させるスタチン等の脂質低下薬で治療される
。実際に、スタチンの投与はある患者集団の心血管疾患のリスクを大いに減少させた。し
かし、一部の患者集団、特にホモ接合型のFH患者集団は、高用量スタチンを含む治療に
応じて正常なLDL-Cレベルを達成できなかった。
【0004】
脂質低下分野における重要な進歩は、プロタンパク質コンバターゼであるサブチリシン
/ケキシン9型(PCSK9)を標的とする治療法の進歩であった。ヒトPCSK9遺伝
子は染色体1p32.3に局在し、長さは25,378bpsである。ヒトPCSK9遺
伝子は、692個のアミノ酸をコードする12個のエキソンを含む。PCSK9タンパク
質は、シグナルペプチド、プロドメイン、触媒ドメイン、及び3つのモジュール(M1、
M2、及びM3)から構成されるC末端システインヒスチジンリッチドメインを含む。
【0005】
PCSK9の合成、分泌、及び発現は主に肝臓で起こるが、PCSK9は胃腸管、腎臓
、及び中枢神経系(CNS)では低レベルで発現される。PCSK9前駆体タンパク質の
分子量は75kDaである。小胞体(ER)での自己触媒切断後、PCSK9プロドメイ
ンは62kDaの成熟型PCSK9タンパク質から分離される。分離されたプロドメイン
は、成熟型PCSK9タンパク質に非共有結合したままであり、PCSK9の触媒ドメイ
ンを強制的に不活性な構造にするプロセグメントPCSK9複合体を形成する。その後、
切断された複合体は、ERからゴルジ装置に輸送され、放出される。肝細胞においては、
分泌されたPCSK9は肝細胞膜上のLDL受容体に結合する。この結合は、PCSK9
の触媒ドメイン及びプロドメインがそれぞれLDL受容体の上皮成長因子様反復相同性ド
メインA(EGF-A)及びβ-プロペラドメインと相互作用することによって媒介され
る。
【0006】
LDL受容体は典型的には、細胞外液(コレステロールを含む)中の脂肪分子を細胞内
に輸送し、それにより循環LDL濃度を減少させる。PCSK9の非存在下では、LDL
受容体-リガンド複合体は、LDLの細胞内輸送及びLDL受容体の細胞表面への再利用
を可能にする構造変化を受ける。しかし、PCSK9のLDL受容体への結合は、複合体
のこの構造変化を防止し、分解のために受容体をリソソームへと案内する。その結果、細
胞表面上に存在するLDL受容体は少なくなり、血流中の循環LDLコレステロールレベ
ルが増加する。LDL受容体に加えて、PCSK9は、超低比重リポタンパク(VLDL
)受容体、アポリポタンパクE受容体2、LDL受容体関連タンパク1を含む、同じファ
ミリーの他の脂質受容体の分解を媒介することが示されている。
【0007】
PCSK9は、LDL受容体及びアポリポタンパクBをコードする遺伝子とともに、F
Hの常染色体優性型に関連する第3の遺伝子である。常染色体優性FHでは、PCSK9
遺伝子の機能獲得型変異は更に細胞表面でのLDL受容体の局在を減少させ、LDLコレ
ステロールレベルの上昇と関連する。興味深いことに、PCSK9の機能喪失型変異は、
LDLコレステロールレベルが低く、心血管系事象の発生率が大幅に低下した患者におい
て発見されることが観察されている。更に、PCSK9機能喪失患者は、スタチン療法に
対する反応が高まることが示されている。
【0008】
従って、PCSK9のターゲティングは、心血管疾患及び常染色体優性FHを含む高コ
レステロール血症の治療に対する有望な治療アプローチである。この分野の研究は、複数
の治療を用いてPCSK9とLDL受容体との相互作用を阻害することに重点を置いてき
た。こうした阻害によるアプローチとしては、アリロクマブ(REGN727/SAR2
36553)、エボロクマブ(AMG145)、及びボコシズマブ(RN316)を含む
、PCSK9に対するモノクローナル抗体の使用が挙げられる。しかし、抗体によるアプ
ローチは、過敏反応及び免疫原性をはじめとする抗体療法に特有の問題だけではなく、神
経認知的な副作用を起こしやすい。阻害によるアプローチはアドネクチン及びペプチドミ
メティクスも使用して研究されてきた。これまで、治療の観点から望ましいPCSK9小
分子阻害剤の使用の大部分は失敗している。
【0009】
推し進められてきた他のアプローチとしては、PCSK9発現の阻害が挙げられる。こ
のような戦略は、遺伝子発現をダウンレギュレーションするためのアンチセンスオリゴヌ
クレオチド又はsiRNAの使用を含む。とりわけ、PCSK9遺伝子を恒久的に変化さ
せ、タンパク質発現をノックアウトするための遺伝子編集アプローチも推し進められてき
た。例えば、Dingらは、マウス肝臓のPCSK9を標的とするアデノウイルスによる
CRISPR/Cas9システムを使用して、マウス肝臓のPCSK9の突然変異率が3
日目から4日目で50%超であり、PCSK9レベルは減少し、肝LDL受容体レベルは
上昇し、血清コレステロールレベルは35%~40%減少することを発見した(非特許文
献1)。キメラヒト肝臓を有するFah-/-Rag2-/-Il2rg-/-(FRG
KO)マウスを使用したWangらの更なる研究においては、ヒトPCSK9遺伝子を
標的とするCRISPR-Cas9を用いた治療により、PCSK9のオンターゲット突
然変異誘発が高レベルで引き起こされ、血液中のヒトPCSK9タンパク質レベルが52
%減少した(非特許文献2)。しかし、現在、PCSK9に焦点を合わせたヒト遺伝子治
療に必要である、ヒト肝臓を含む霊長類の肝臓で特異的に遺伝子を修飾及び/又はノック
アウトするためにCRISPR/Casシステムをうまく利用できるという証拠が当該技
術分野では著しく欠如している。
【0010】
I-CreI(配列番号1)は、藻類であるクラミドモナスの葉緑体染色体内の22塩
基対の認識配列を認識し切断するホーミングエンドヌクレアーゼのLAGLIDADG(
配列番号2)ファミリーのメンバーである。遺伝子選択技術を用いて、野生型I-Cre
I切断部位の好みを変更した(非特許文献3~6)。哺乳動物、酵母菌、植物、及びウイ
ルスゲノムを含む広く多様なDNA部位を標的とするI-CreI及び他のホーミングエ
ンドヌクレアーゼを包括的に再設計できるモノLAGLIDADG(配列番号2)ホーミ
ングエンドヌクレアーゼを合理的に設計する方法が記載されている(特許文献1)。
【0011】
まず特許文献2に記載されているように、I-CreI及びその操作された誘導体は通
常二量体だが、第1のサブユニットのC末端を第2のサブユニットのN末端に結合する短
いペプチドリンカーを使用して単一のポリペプチドに融合できる(非特許文献7~8)。
従って、機能的な「一本鎖」メガヌクレアーゼは、単一の転写物から発現させることがで
きる。
【0012】
操作されたメガヌクレアーゼの使用は、PCSK9遺伝子を標的とし、PCSK9発現
を減少させ、従って、コレステロール関連疾患の患者の循環LDLレベル及び総コレステ
ロールレベルを減少させるための有望なアプローチとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開WO2007/047859号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/059195号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Ding et al.(2014),Circ Res 115(5):488-492
【非特許文献2】Wang et al.(2016),Arteriosclerosis Thromb Vasc Biol 36:783-786
【非特許文献3】Sussman et al.(2004),J.Mol.Biol.342:31-41
【非特許文献4】Chames et al.(2005),Nucleic Acids Res.33:e178
【非特許文献5】Seligman et al.(2002),Nucleic Acids Res.30:3870-9
【非特許文献6】Arnould et al.(2006),J.Mol.Biol.355:443-58
【非特許文献7】Li et al.(2009),Nucleic Acids Res.37:1650-62
【非特許文献8】Grizot et al.(2009),Nucleic Acids Res.37:5405-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、部分的に、PCSK9遺伝子内のDNA配列を認識するように操作された部
位特異的レアカットエンドヌクレアーゼの開発に依存する。本発明者らは、PCSK9の
発現及び/又は活性を減でき、後に霊長類、例えば、ヒトの総コレステロールレベル及び
LDLコレステロールレベルを減少させるPCSK9遺伝子の特定の認識配列を特定した
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本明細書に開示の方法及び組成物は、被験体のコレステロール関連障害、例え
ば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症の症状を治療又は低減するのに有用で
ある。従って、本発明は、霊長類のコレステロール関連障害に対する更なる遺伝子治療ア
プローチのための当該技術分野における必要性を満たす。
【0017】
本発明は、被験体のコレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレ
ステロール血症の治療に有用な操作されたメガヌクレアーゼを提供する。本発明の操作さ
れたメガヌクレアーゼは、PCSK9遺伝子内の認識配列(配列番号3)を認識し切断す
る。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼによるそのような認識配列での切断は
、切断部位での非相同末端結合(NHEJ)によりPCSK9の発現及び/又は活性を阻
害できる。NHEJは、挿入、欠失を生じさせることができ、又は遺伝子発現と干渉し得
るフレームシフト突然変異を生じさせることができる。従って、正常な遺伝子発現を阻害
することにより、PCSK9の発現及び/又は活性が本明細書で開示される方法に従って
減少するか又はなくされる。本発明はまた、PCSK9遺伝子内に位置する認識配列に対
して特異性を有する操作されたメガヌクレアーゼを利用した、コレステロール関連障害の
治療のための医薬組成物及び方法を提供する。本発明は、総コレステロールレベル及び/
又はLDLコレステロールレベルを減少させるために、且つ/又はコレステロール関連障
害に関連する症状を減少させるために、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを
、コレステロール関連障害を有する被験体に送達する方法を更に提供する。
【0018】
従って、一態様では、本発明は、PCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断する操作
されたメガヌクレアーゼを提供する。操作されたメガヌクレアーゼは、第1のサブユニッ
ト及び第2のサブユニットを含み、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識ハーフ
サイトに結合し、第1の超可変(HVR1)領域を含み、第2のサブユニットは、認識配
列の第2の認識ハーフサイトに結合し、第2の超可変(HVR2)領域を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、認識配列は、配列番号4(即ち、PCS7-8認識配列)を
含むことができる。認識配列が配列番号4を含むいくつかの実施形態では、HVR1領域
は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24~79に対応するアミノ酸配列に対して
少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ
以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかのそのような実施
形態では、HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24、26、28、
30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、75、及び77に対応
する残基を含むことができる。ある種の実施形態では、HVR1領域は、配列番号8の残
基48、50、71、及び73に対応する残基を更に含むことができる。特定の実施形態
では、HVR1領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基24~79を含むことが
できる。
【0020】
認識配列が配列番号4を含むいくつかのそのような実施形態では、HVR2領域は、配
列番号6~14のいずれか1つの残基215~270に対応するアミノ酸配列に対して少
なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以
上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。いくつかのそのような実施形
態では、HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215、217、21
9、221、223、224、229、231、233、235、237、259、26
1、266、及び268に対応する残基を含むことができる。そのような実施形態では、
HVR2領域は、配列番号12の残基258に対応する残基を更に含むことができる。特
定の実施形態では、HVR2領域は、配列番号6~14のいずれか1つの残基215~2
70を含むことができる。
【0021】
認識配列が配列番号4を含むそのような実施形態では、第1のサブユニットは、配列番
号6~14のいずれか1つの残基7~153に対して少なくとも80%、少なくとも85
%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸
配列を含むことができ、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基
198~344に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少な
くとも95%、又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。あ
る種の実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基8
0に対応する位置にD、E、Q、N、K、R、及びS残基を含む。ある種の実施形態では
、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基271に対応する位置
にD、E、Q、N、K、R、及びS残基を含む。ある種の実施形態では、第1のサブユニ
ットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基80に対応する残基を含む。ある種の実
施形態では、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基271に対
応する残基を含む。いくつかの実施形態では、第1のサブユニットは、配列番号6~14
のいずれか1つの残基7~153を含むことができる。同様に、いくつかの実施形態では
、第2のサブユニットは、配列番号6~14のいずれか1つの残基198~344を含む
ことができる。
【0022】
認識配列が配列番号4を含むある種のこのような実施形態では、操作されたメガヌクレ
アーゼはリンカーを含むことができ、リンカーは第1のサブユニットと第2のサブユニッ
トを共有結合する。特定の実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号6~
14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むことができる。
【0023】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコー
ドする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。特定の実施形態では、ポリヌクレオ
チドはmRNAであり得る。
【0024】
更なる実施形態では、mRNAは、本明細書に記載の1又は複数の操作されたメガヌク
レアーゼをコードする多シストロン性mRNAであり得る。更なる実施形態では、本発明
の多シストロン性mRNAは、本明細書に記載の1又は複数の操作されたメガヌクレアー
ゼと、コレステロール関連障害を有する被験体において治療的に有益な効果をもたらす1
又は複数の追加のタンパク質とをコードできる。
【0025】
別の態様では、本発明は、本発明の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核
酸配列を含む組換えDNA構築物を提供する。いくつかの実施形態では、組換えDNA構
築物は、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸
配列とを含むカセットを含む。
【0026】
他の実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと多シストロン性核酸配列と
を含むカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的
細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0027】
特定の実施形態では、組換えDNA構築物は、本明細書に開示の任意の操作されたメガ
ヌクレアーゼをコードする核酸配列を含むウイルスベクターをコードする。そのような実
施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、
アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり得る。特定
の実施形態では、ウイルスベクターは組換えAAVベクターであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に記載の操作
されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。他の実施形態で
は、ウイルスベクターは、2以上のカセットを含み、各カセットは、プロモーターと本明
細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むことができる。
【0029】
他の実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを
含む1つのカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、
標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0030】
別の態様では、本発明は、本発明の任意の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核
酸配列を含むウイルスベクターを提供する。いくつかの実施形態では、ウイルスベクター
は、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又は
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであり得る。特定の実施形態では、ウイルスベク
ターは組換えAAVベクターであり得る。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは
、プロモーターと本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列と
を含むカセットを含む。
【0031】
更なる実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列と
を含む1つのカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し
、標的細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0032】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体と、(a)本明細書に記載の操作さ
れたメガヌクレアーゼをコードする核酸、又は(b)本明細書に記載の操作されたメガヌ
クレアーゼタンパク質とを含む、医薬組成物を提供し、操作されたメガヌクレアーゼは、
配列番号4等のPCSK9内の認識配列に対して特異性を有する。
【0033】
一実施形態では、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする医薬組成
物の核酸配列は、本明細書に記載のmRNAであり得る。いくつかのそのような実施形態
では、mRNAは、本明細書に記載の2以上の操作されたメガヌクレアーゼがインビボ(
in vivo)で標的細胞において発現されるような本明細書に記載の多シストロン性
mRNAであり得る。
【0034】
別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコ
ードする核酸配列を含む本明細書に記載の組換えDNA構築物を含む。いくつかのそのよ
うな実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと本発明の操作されたメガヌク
レアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。
【0035】
他の実施形態では、医薬組成物の組換えDNA構築物は、プロモーターと多シストロン
性核酸配列とを含むカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を
駆動し、本明細書に記載の2つ以上の操作されたメガヌクレアーゼが標的細胞で発現され
るように、標的細胞にインビボで本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0036】
別の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコ
ードする核酸配列を含むウイルスベクターを含む。そのような一実施形態では、ウイルス
ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、又はAAVであり得る
。特定の実施形態では、ウイルスベクターは組換えAAVベクターであり得る。
【0037】
いくつかのそのような実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に
記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。
【0038】
他のそのような実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核
酸配列とを含む1つのカセットを含み、プロモーターは、本明細書に記載の2以上の操作
されたメガヌクレアーゼが標的細胞で発現されるように、多シストロン性核酸配列の発現
を駆動し、標的細胞にインビボで本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0039】
一実施形態では、医薬組成物は、配列番号4を認識し切断する本明細書に開示の操作さ
れたメガヌクレアーゼを含むことができる。特定の実施形態では、操作されたメガヌクレ
アーゼは、配列番号6~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂質ナノ粒子内にカプセル化された本明細書
に記載の1又は複数のmRNAを含むことができる。特定の実施形態では、医薬組成物の
脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の2以上のmRNAを含むことができ、各々は、本発明
の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は
、肝臓、特に肝実質細胞内での送達及び取り込みを増強する組成を有する。
【0041】
別の態様では、本発明は、被験体のPCSK9の発現又は活性を減少させる治療方法を
提供する。同様に、本明細書では、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FH
を含む高コレステロール血症を治療するか、又はコレステロール関連障害に関連する症状
を低減する方法が提供される。本方法は、被験体の標的細胞に、(a)有効量の、標的細
胞で発現される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸、又は(b)有効量の操作
されたメガヌクレアーゼタンパク質を送達することを含み、操作されたメガヌクレアーゼ
は配列番号4等のPCSK9の認識配列に対する特異性を有する。
【0042】
本方法のいくつかの実施形態では、被験体はコレステロール関連障害を有する。特定の
実施形態では、被験体は高コレステロール血症を有する。いくつかの実施形態では、被験
体の高コレステロール血症は、家族性高コレステロール血症又は常染色体優性家族性高コ
レステロール血症である。特定の実施形態では、被験体はヒト又は非ヒト霊長類である。
【0043】
本方法の特定の実施形態では、被験体は、本明細書に開示の医薬組成物を投与される。
医薬組成物は、本明細書に開示の組換えAAVベクターを含むことができる。ある種の実
施形態では、医薬組成物は、操作されたメガヌクレアーゼをコードする本明細書に開示の
mRNAを含むことができる。特定の実施形態では、mRNAは脂質ナノ粒子内にカプセ
ル化することができる。
【0044】
本方法のいくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガ
ヌクレアーゼをコードする核酸は標的肝細胞に送達され得る。標的肝細胞は、初代肝実質
細胞等の肝実質細胞であり得る。
【0045】
本方法のいくつかの実施形態では、被験体の肝細胞の細胞表面上におけるLDL受容体
のディスプレイは、ベースラインLDL受容体レベルと比較した場合、治療により増加す
る。細胞表面上のLDL受容体のディスプレイは、ベースラインLDL受容体レベルと比
較した場合、約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80
%、90%、95%、100%、150%、250%、500%、1000%、又はそれ
以上増加し得る。
【0046】
本方法のある種の実施形態では、被験体の血清総コレステロールレベルは治療により減
少する。血清総コレステロールレベルは、ベースライン血清総コレステロールレベルと比
較した場合、(a)少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60
%、70%、80%、90%、95%、若しくは最高100%、又は(b)5~15mg
/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~30mg/dL、20~
30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、25~50mg/dL
、40~60mg/dL、50~70mg/dL、60~80mg/dL、若しくは70
~100mg/dL減少し得る。
【0047】
ある種の実施形態では、被験体の血清LDLコレステロールレベルは治療により減少す
る。血清LDLコレステロールレベルは、ベースライン血清LDLコレステロールレベル
と比較した場合、(a)少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、
60%、70%、80%、90%、95%、若しくは最高100%、又は(b)5~15
mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、15~30mg/dL、2
0~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/dL、25~50mg/
dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、若しくは60~80mg/dL減
少し得る。
【0048】
本方法の特定の実施形態では、第1の認識配列は配列番号4を含むことができる。いく
つかのそのような実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼは、配列番号4を認識し切
断する本発明の任意の操作されたメガヌクレアーゼであり得る。特定の実施形態では、操
作されたメガヌクレアーゼは、配列番号6~14のいずれか1つのアミノ酸配列を含むこ
とができる。
【0049】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための本明細書に記載の操作されたメガ
ヌクレアーゼを提供する。本発明は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性F
Hを含む高コレステロール血症を治療するか、PCSK9の活性若しくは発現を減少させ
るか、又はコレステロール関連障害に関連する症状を低減するための薬剤としての本明細
書に記載の操作されたメガヌクレアーゼの使用を更に提供する。特定の実施形態では、本
発明は、被験体の総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを減少
させるための薬剤としての本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼの使用を提供す
る。
【0050】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための単離されたポリヌクレオチドを提
供し、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを
コードする核酸配列を含む。本発明は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性
FHを含む高コレステロール血症を治療するか、PCSK9の活性若しくは発現を減少さ
せるか、又はコレステロール関連障害に関連する症状を低減するための薬剤としての単離
されたポリヌクレオチドの使用を更に提供し、単離されたポリヌクレオチドは、本明細書
に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。特定の実施形態では、本発明は、被
験体の総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを減少させるため
の薬剤としての本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする単離されたポ
リヌクレオチドの使用を提供する。
【0051】
別の態様では、本発明は、薬剤として使用するための組換えAAVベクターを提供し、
組換えAAVベクターは単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌクレオチ
ドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。本発
明は、コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症
を治療するか、PCSK9の活性若しくは発現を減少させるか、又はコレステロール関連
障害に関連する症状を低減するための薬剤としての組換えAAVベクターの使用を更に提
供し、組換えAAVベクターは単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌク
レオチドは、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む
。本発明は、被験体の総コレステロールレベル及び/又はLDLコレステロールレベルを
減少させるための薬剤としての組換えAAVベクターの使用を更に提供し、組換えAAV
ベクターは単離されたポリヌクレオチドを含み、単離されたポリヌクレオチドは、本明細
書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む。
【0052】
本発明の上記及び他の態様及び実施形態は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参
照することによってより完全に理解することができる。明確さのために別個の実施形態に
関連して記述されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせた形で提供
されてもよい。実施形態の全ての組み合わせは、本発明により具体的に包含され、あたか
もありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明示的に開示されるかのように本明細書で開示
される。逆に、簡潔さのために単一の実施形態に関連して記述されている本発明の種々の
特徴は、別個に又は任意の適した下位組み合わせの形で提供されてもよい。実施形態に列
挙される特徴の全ての下位組み合わせも、本発明により具体的に包含され、あたかもあり
とあらゆる下位組み合わせが個別にかつ明示的に本明細書で開示されるかのように本明細
書で開示される。本明細書で開示される本発明の各態様の実施形態は、必要な変更を加え
て本発明の互いの態様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】ヒトPCSK9遺伝子の操作されたメガヌクレアーゼ認識配列。本発明の操作されたメガヌクレアーゼにより標的とされる認識配列は、2つの認識ハーフサイトを含む。各認識ハーフサイトは9塩基対を含み、2つのハーフサイトは、4塩基対の中央配列によって分離される。PCS7-8認識配列(配列番号4)は、PCS7及びPCS8と呼ばれる2つの認識ハーフサイトを含む。
図2】本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、2つのサブユニットを含み、第1のサブユニットは、第1の認識ハーフサイト(例えばPCS7)に結合するHVR1領域を含み、第2のサブユニットは、第2の認識ハーフサイト(例えばPCS8)に結合するHVR2領域を含む。操作されたメガヌクレアーゼが一本鎖メガヌクレアーゼである実施形態では、HVR1領域を含む第1のサブユニットは、N末端又はC末端サブユニットのいずれかとして位置し得る。同様に、HVR2領域を含む第2のサブユニットは、N末端又はC末端サブユニットのいずれかとして位置し得る。
図3】PCS7-8認識配列を標的とした操作されたメガヌクレアーゼを評価するCHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞のレポーターアッセイの概略。本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼについては、CHO細胞株が産生され、レポーターカセットは細胞のゲノムに安定的に組み込まれる。レポーターカセットは、5’から3’の順で、SV40初期プロモーター、GFP遺伝子の5’ 2/3、本発明の操作されたメガヌクレアーゼの認識配列(例えばPCS7-8認識配列)、CHO-23/24メガヌクレアーゼの認識配列(国際公開第2012/167192号)、及びGFP遺伝子の3’ 2/3を含んでいた。このカセットを安定的にトランスフェクトされた細胞は、DNA切断誘導剤の非存在下でGFPを発現しなかった。メガヌクレアーゼは、各メガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNA又はmRNAの形質導入により導入された。DNA切断がメガヌクレアーゼ認識配列のいずれかで誘導されると、GFP遺伝子の複製領域は互いに再結合し、機能的GFPタンパク質を産生する。すると、GFP発現細胞の割合は、メガヌクレアーゼによりゲノム切断頻度の間接的な尺度として、フローサイトメトリーにより決定され得る。
図4】CHO細胞レポーターアッセイにおけるPCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断するための操作されたメガヌクレアーゼの効率。配列番号6~14に規定された操作されたメガヌクレアーゼを操作して、PCS7-8認識配列(配列番号4)を標的とし、CHO細胞レポーターアッセイにおける有効性についてスクリーニングした。示されている結果は、各アッセイにて観察されたGFP発現細胞の割合を提供し、これは、標的認識配列又はCHO-23/24認識配列を切断する各メガヌクレアーゼの有効性を示す。陰性対照(bs)を更に各アッセイに含めた。図4A図4Cは、PCS7-8認識配列を標的としたメガヌクレアーゼを示す。図4Aは、PCS7-8x.88及びPCS7-8x.66を示す。図4Bは、PCS7-8L.197、PCS7-8L.204、PCS7-8L.209、PCS7-8L.261、PCS7-8L.262、及びPCS7-8L.268を示す。図4Cは、PCS7-8L.197及びPCS7-8L.367を示す。
図5】CHO細胞レポーターアッセイにおけるヒトPCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断するための操作されたメガヌクレアーゼの効率。配列番号6~14に規定された操作されたメガヌクレアーゼを操作して、PCS7-8認識配列(配列番号4)を標的とし、ヌクレオフェクション後11日にわたる複数時点でCHO細胞レポーターアッセイにおける有効性についてスクリーニングした。示されている結果は、11日間の分析中の各アッセイにて観察されたGFP発現細胞の割合を提供し、これは、時間に応じた標的認識配列又はCHO-23/24認識配列を切断する各メガヌクレアーゼの有効性を示す。図5Aは、PCS7-8認識配列を標的とするPCS7-8x.88及びPCS7-8x.66メガヌクレアーゼを示す。図5Bは、PCS7-8認識配列を標的とするPCS7-8x.88及びPCS7-8L.197メガヌクレアーゼを示す。図5Cは、PCS7-8認識配列を標的とするPCS7-8L.367メガヌクレアーゼを示す。
図6】T7エンドヌクレアーゼI(T7E)アッセイ。T7Eアッセイを行って、PCS7-8メガヌクレアーゼがHEK293細胞のその認識部位においてindelを生じさせたかどうかを判定した。T7Eアッセイでは、PCS7-8座は、PCS7-8認識配列に隣接するプライマーを用いたPCRによって増幅された。PCS7-8座内にindel(無秩序な挿入又は欠失)があった場合、得られるPCR産物は野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子の混合物からなる。PCR産物は変性され、ゆっくりとリアニールされ得る。ゆっくりとしたリアニールにより、野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子からなるヘテロ二本鎖が形成され、ミスマッチ塩基及び/又はバルジが生じる。T7E1酵素はミスマッチ部位で切断され、ゲル電気泳動により可視化され得る切断産物が生じる。PCS7-8x.88及びPCS7-8x.66メガヌクレアーゼはヌクレオフェクションの2日後及び5日後に評価した。
図7】非ヒト霊長類における血清PCSK9タンパク質レベル。AAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHと呼ばれるAAVベクターを調製して異なる3用量で3匹のオス及び1匹のオスのアカゲザルに投与した。動物RA1866(オス)は、3×1013ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量を受けた。動物RA1857(オス)は、6×1012GC/kgの単回用量を受けた。動物RA1829(メス)及びRA2334(オス)はそれぞれ、2×1012GC/kgの単回用量を受けた。血液サンプルは、ELISAによる血清PCSK9タンパク質レベルの分析のために、-3日目及び0日目、並びに投与後168日間(低用量動物)又は280日間(中用量及び高用量動物)の間に複数の時点で採取した。
図8】総コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベルは、-3日目、0日目、及びPCS7-8x.88メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。図8Aは、各被験体の経時的に測定されたLDLレベルを示す。図8Bは、被験体RA1866の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図8Cは、被験体RA1857の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図8Dは、被験体RA1829の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図8Eは、被験体RA2334の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。
図9】アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルは、各被験体において、-3日目、0日目、及びPCS7-8x.88メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。
図10】肝細胞のPCS7-8認識配列においてインビボで観察される挿入及び欠失(indel)の頻度。AAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHベクターの投与後17日目に肝生検を行い、PCS7-8認識配列におけるindelの存在について検査した。indelは、認識配列に隣接するPCRプライマー、ゲノムの介在領域の増幅、及び得られたPCR産物のシーケンシングにより検出した。
図11】インビボでの肝細胞のPCS7-8メガヌクレアーゼmRNAを検出するためのインサイチューハイブリッド形成。AAV8.TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHベクターの投与後17日目及び129日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド形成(ISH)により検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した肝細胞中のPCS7-8x.88 mRNAに結合する。図11Aは、オリゴプローブなしで対照として行った別の被験体M11657由来の生検細胞の模擬処理を示す。図11Bは、被験体RA1866の生検サンプルを示す。図11Cは、被験体RA1857の生検サンプルを示す。図11Dは、被験体RA1829の生検サンプルを示す。図11Eは、被験体RA2334の生検サンプルを示す。
図12】非ヒト霊長類の血清PCSK9タンパク質レベル及び血清LDL。AAV8.TBG.PI.PCS7-8L.197.WPRE.bGHと呼ばれるAAVベクターを調製して6×1012遺伝子コピー/kgの用量を1匹のオス及び1匹のメスのアカゲザル(被験体RA2125及びRA2343)に投与した。血液サンプルは、ELISAによる血清PCSK9タンパク質レベルの分析のために、投与前、及び投与後の複数の時点で採取した。
図13】総コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベルは、投与前、及びPCS7-8L.197メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。図13Aは、各被験体の経時的に測定されたLDLレベルを示す。図13Bは、被験体RA2125の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。図13Cは、被験体RA2343の総コレステロールレベル、HDLレベル、LDLレベル、及びトリグリセリドレベルを示す。
図14】アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルは、各被験体において、投与前、及びPCS7-8L.197メガヌクレアーゼをコードするAAVの投与後の複数の時点で測定した。
図15】インビボでの肝細胞のPCS7-8メガヌクレアーゼmRNAを検出するためのインサイチューハイブリッド形成。AAV8.TBG.PI.PCS7-8L.197.WPRE.bGHベクターの投与後18日目及び128日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド形成(ISH)により検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した肝細胞中のPCS7-8L.197 mRNAに結合する。図15Aは、被験体RA2125の生検サンプルを示す。図15Bは、被験体RA2343の生検サンプルを示す。
図16】アンカードマルチプレックスPCR(AMP-seq)による各被験体のrhPCSK9標的化座に対するindel分析。
【発明を実施するための形態】
【0054】
配列の簡単な説明
配列番号1は、野生型I-CreIメガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0055】
配列番号2は、LAGLIDADGのアミノ酸配列を規定する。
【0056】
配列番号3は、ヒトPCSK9遺伝子の核酸配列を規定する。
【0057】
配列番号4は、PCS7-8認識配列(センス)の核酸配列を規定する。
【0058】
配列番号5は、PCS7-8認識配列(アンチセンス)の核酸配列を規定する。
【0059】
配列番号6は、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0060】
配列番号7は、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0061】
配列番号8は、PCS7-8L.367メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0062】
配列番号9は、PCS7-8L.204メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0063】
配列番号10は、PCS7-8L.209メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する
【0064】
配列番号11は、PCS7-8L.261メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する
【0065】
配列番号12は、PCS7-8L.262メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する
【0066】
配列番号13は、PCS7-8L.268メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する
【0067】
配列番号14は、PCS7-8x.66メガヌクレアーゼのアミノ酸配列を規定する。
【0068】
配列番号15は、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0069】
配列番号16は、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットの
アミノ酸配列を規定する。
【0070】
配列番号17は、PCS7-8L.367メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0071】
配列番号18は、PCS7-8L.204メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0072】
配列番号19は、PCS7-8L.209メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0073】
配列番号20は、PCS7-8L.261メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0074】
配列番号21は、PCS7-8L.262メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0075】
配列番号22は、PCS7-8L.268メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0076】
配列番号23は、PCS7-8x.66メガヌクレアーゼPCS7結合サブユニットの
アミノ酸配列を規定する。
【0077】
配列番号24は、PCS7-8L.197メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0078】
配列番号25は、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットの
アミノ酸配列を規定する。
【0079】
配列番号26は、PCS7-8L.367メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0080】
配列番号27は、PCS7-8L.204メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0081】
配列番号28は、PCS7-8L.209メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0082】
配列番号29は、PCS7-8L.261メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0083】
配列番号30は、PCS7-8L.262メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0084】
配列番号31は、PCS7-8L.268メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニット
のアミノ酸配列を規定する。
【0085】
配列番号32は、PCS7-8x.66メガヌクレアーゼPCS8結合サブユニットの
アミノ酸配列を規定する。
【0086】
配列番号33は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0087】
配列番号34は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0088】
配列番号35は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0089】
配列番号36は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0090】
配列番号37は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0091】
配列番号38は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0092】
配列番号39は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0093】
配列番号40は、PCS7-8x.88を用いた治療後のインビボで観察されたind
elの核酸配列を規定する。
【0094】
1.1 参考文献及び定義
本明細書で参照される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立している。
本明細書に引用されているGenBankデータベース配列を含む、登録済み米国特許、
認可された出願、公開された外国出願、及び参考文献は、あたかもそれぞれが具体的且つ
個々に示されて、参照により組み込まれた場合と同じ程度で参照により本明細書に組み込
まれている。
【0095】
本発明は異なる形態で実施でき、本明細書で記載される実施形態に限定されるものとし
て解釈されるべきではない。むしろ、本開示が完璧かつ完全であるように、また当業者に
完全に本発明の範囲を伝えるように、これらの実施形態が提供される。例えば、一実施形
態に関して例示した特徴を他の実施形態に組み込むことができ、特定の一実施形態に関し
て例示した特徴をその実施形態から削除することもできる。加えて、本開示に照らせば、
本明細書に示した実施形態に対する本発明から逸脱しない多くの変更及び追加が当業者に
は明白である。
【0096】
特に定義しない限り、本明細書で用いる技術的及び科学的用語は、本発明の属する分野
における当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書における本発明
の説明で使用する用語は、詳細な実施形態を説明するためのものに過ぎず、本発明を限定
することを意図していない。
【0097】
本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献はその全文が参
照することにより本明細書に組み込まれている。
【0098】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、又は「the」は1又は複数を意味する
可能性がある。例えば「細胞(a cell)」は単一の細胞又は複数の細胞を意味して
よい。
【0099】
本明細書で使用する場合、特に断りがない限り、「又は」という語は、「及び/又は」
の包含的な意味で使用されるのであって、「いずれか一方」の排他的な意味で使用される
のではない。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「ヌクレアーゼ」及び「エンドヌクレアーゼ」は同じ意
味で用いられ、ポリヌクレオチド鎖内のホスホジエステル結合を切断する、天然に存在す
るか又は操作された酵素を指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「メガヌクレアーゼ」は、12塩基対を超える認識配列
で二本鎖DNAに結合するエンドヌクレアーゼを指す。好ましくは、本発明のメガヌクレ
アーゼのための認識配列は22塩基対である。メガヌクレアーゼは、I-CreIに由来
するエンドヌクレアーゼであり得、例えばDNA結合特異性、DNA切断活性、DNA結
合親和性、又は二量体化特性に関して天然I-CreIと比較して改変されたI-Cre
Iの操作された変異体を指すことができる。I-CreIのこのような改変された変異体
を作製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えば、国際公開第200
7/047859号)。本明細書で使用されるメガヌクレアーゼは、ヘテロ二量体として
二本鎖DNAに結合する。メガヌクレアーゼは更に、一対のDNA結合ドメインがペプチ
ドリンカーを用いて単一のポリペプチドに連結された「一本鎖メガヌクレアーゼ」であっ
てもよい。用語「ホーミングエンドヌクレアーゼ」は、用語「メガヌクレアーゼ」と同義
である。本発明のメガヌクレアーゼは、本明細書に記載の方法を用いて測定した場合に、
細胞生存率に対する有害な効果又はメガヌクレアーゼ切断活性の有意な減少を観察するこ
となく、細胞において発現した場合に実質的に非毒性である。
【0102】
本明細書で使用する場合、用語「一本鎖メガヌクレアーゼ」は、リンカーによって連結
された一対のヌクレアーゼサブユニットを含むポリペプチドを指す。一本鎖メガヌクレア
ーゼは、N末端サブユニット-リンカー-C末端サブユニットという構成を有する。2つ
のメガヌクレアーゼサブユニットは、一般的に、アミノ酸配列において同一ではなく、同
一ではないDNA配列を認識する。従って、一本鎖メガヌクレアーゼは、典型的には、偽
パリンドローム又は非パリンドロームの認識配列を切断する。一本鎖メガヌクレアーゼは
、実際、二量体ではないにもかかわらず、「一本鎖ヘテロ二量体」又は「一本鎖ヘテロ二
量体メガヌクレアーゼ」と呼ばれる場合がある。明確さのために、特に指定のない限り、
用語「メガヌクレアーゼ」は二量体又は一本鎖メガヌクレアーゼを指すことができる。
【0103】
本明細書で使用する場合、用語「リンカー」は、2つのメガヌクレアーゼサブユニット
を1つのポリペプチドへと結合するために使用される外因性ペプチド配列を指す。リンカ
ーは、天然タンパク質に見出される配列を有していても、又は天然タンパク質には見出さ
れない人工配列であってもよい。リンカーは可撓性で二次構造が欠如していても、又は生
理学的条件下で特定の三次元構造を形成する性質を有していてもよい。リンカーとしては
、限定するものではないが、米国特許第8,445,251号及び米国特許第9,434
,931号に包含されるものを挙げることができる。いくつかの実施形態では、リンカー
は、配列番号6~14のいずれか1つの残基154~195を含むアミノ酸配列を有する
ことができる。
【0104】
タンパク質に関して本明細書で使用する場合、用語「組換え」又は「操作された」は、
タンパク質をコードする核酸及び当該タンパク質を発現する細胞又は生物に遺伝子工学技
術を適用した結果として変更されたアミノ酸配列を有することを意味する。核酸に関して
、用語「組換え」又は「操作された」は、遺伝子工学技術を適用した結果として変更され
た核酸配列を有することを意味する。遺伝子工学技術としては、PCR及びDNAクロー
ニング技術;トランスフェクション、形質転換及び他の遺伝子移入技術;相同組換え;部
位特異的突然変異誘発;並びに遺伝子融合が挙げられるが、これらに限定されない。この
定義に従って、天然に存在するタンパク質と同一のアミノ酸配列を有するが、異種宿主で
のクローニング及び発現によって産生されるタンパク質は、組換え体とはみなされない。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「野生型」は、同種の遺伝子の対立遺伝子集団における
最も一般的な天然に存在する対立遺伝子(即ち、ポリヌクレオチド配列)を指し、野生型
対立遺伝子によってコードされるポリペプチドがその元の機能を有する。用語「野生型」
は、野生型対立遺伝子によってコードされるポリペプチドも指す。野生型対立遺伝子(即
ち、ポリヌクレオチド)及びポリペプチドは、野生型配列に対して1又は複数の突然変異
及び/又は置換を含む突然変異体又は変異体の対立遺伝子及びポリペプチドとは区別され
る。野生型の対立遺伝子又はポリペプチドは、生物において正常な表現型を付与すること
ができるが、突然変異体又は変異体の対立遺伝子又はポリペプチドは、場合によっては、
変化した表現型を付与し得る。野生型ヌクレアーゼは、組換え体又は非天然のヌクレアー
ゼとは区別される。用語「野生型」は、特定の遺伝子の野生型対立遺伝子、又は比較目的
のために使用される細胞、生物及び/若しくは被験体を有する細胞、生物、及び/又は被
験体を指すこともできる。
【0106】
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子改変」は、細胞若しくは生物、又はそれらの祖
先において、ゲノムDNA配列が組換え技術によって故意に改変された細胞又は生物を指
す。本明細書で使用する場合、用語「遺伝子改変」は、用語「トランスジェニック」を包
含する。
【0107】
組換えタンパク質に関して本明細書で使用する場合、用語「改変」は、参照配列(例え
ば、野生型配列又は天然配列)に対する組換え配列中のアミノ酸残基の挿入、欠失、又は
置換を意味する。
【0108】
本明細書で使用する場合、用語「認識配列」又は「認識部位」は、エンドヌクレアーゼ
によって結合及び切断されるDNA配列を指す。メガヌクレアーゼの場合、認識配列は、
4つの塩基対によって分離された一対の逆位9塩基対「ハーフサイト」を含む。一本鎖メ
ガヌクレアーゼの場合、タンパク質のN末端ドメインは第1のハーフサイトに接触し、タ
ンパク質のC末端ドメインは第2のハーフサイトに接触する。メガヌクレアーゼによる切
断は、4塩基対の3’「オーバーハング」を生じる。「オーバーハング」又は「粘着末端
」は、二本鎖DNA配列のエンドヌクレアーゼ切断によって産生することができる短い一
本鎖DNAセグメントである。I?CreIに由来するメガヌクレアーゼ及び一本鎖メガ
ヌクレアーゼの場合、オーバーハングは、22塩基対認識配列の塩基10~13を含む。
【0109】
本明細書で使用する場合、用語「標的部位」又は「標的配列」は、ヌクレアーゼの認識
配列を含む細胞の染色体DNAの領域を指す。
【0110】
本明細書で使用する場合、用語「DNA結合親和性」又は「結合親和性」は、メガヌク
レアーゼが参照DNA分子(例えば、認識配列又は任意の配列)と非共有的に関連する傾
向を意味する。結合親和性は、解離定数Kによって測定される。本明細書で使用される
場合、参照認識配列に対するヌクレアーゼのKが参照ヌクレアーゼに対して統計的に有
意な量(p<0.05)だけ増加又は減少する場合、ヌクレアーゼは「変化した」結合親
和性を有する。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「特異性」は、認識配列と呼ばれる特定の塩基対の配
列でのみ、又は認識配列の特定のセットにおいてのみ、二本鎖DNA分子を認識し切断す
るメガヌクレアーゼの能力を意味する。認識配列のセットは、特定の保存された位置又は
配列モチーフを共有するが、1又は複数の位置で縮重していてもよい。高度に特異的なメ
ガヌクレアーゼは、1又は非常に少数の認識配列のみを切断することができる。特異性は
、当該技術分野において公知の任意の方法によって決定することができる。本明細書で使
用する場合、メガヌクレアーゼは、生理学的条件下で参照メガヌクレアーゼ(例えば野生
型)に結合されず切断されない認識配列に結合し切断する場合、又は認識配列の切断率が
参照メガヌクレアーゼに対して生物学的に有意な量(例えば、少なくとも2倍、又は2倍
~10倍)増加又は減少する場合、「変化した」特異性を有する。
【0112】
本明細書で使用する場合、用語「相同組換え」又は「HR」は、二本鎖DNA切断が相
同DNA配列を修復鋳型として用いて修復される、天然の細胞プロセスを指す(例えば、
Cahill et al.(2006),Front.Biosci.11:1958
-1976)。相同DNA配列は、内因性染色体配列又は細胞に送達された外因性核酸で
あってよい。
【0113】
本明細書で使用する場合、用語「非相同末端結合」又は「NHEJ」は、二本鎖DNA
切断が2つの非相同DNAセグメントの直接結合によって修復される、天然の細胞プロセ
スを指す(例えば、Cahill et al.(2006),Front.Biosc
i.11:1958-1976を参照)。非相同末端結合によるDNA修復は間違いを起
こしやすく、修復部位で鋳型と対応しないDNA配列の付加又は欠失が頻繁に起こる。場
合によっては、標的認識配列における切断は、標的認識部位にNHEJを生じる。遺伝子
のコード配列中の標的部位のヌクレアーゼ誘導切断に続くNHEJによるDNA修復によ
って、フレームシフト突然変異等、コード配列への突然変異を導入し、遺伝子機能を破壊
する可能性がある。このように、操作されたメガヌクレアーゼは、細胞集団中の遺伝子を
効果的にノックアウトするために使用することができる。
【0114】
本明細書で使用する場合、用語「減少した」は、コレステロール関連疾患の症状若しく
は重症度の低下、又はPCSK9のタンパク質発現若しくは活性の減少を指す。いずれの
状況においても、このような減少は、最高5%、10%、20%、30%、40%、50
%、60%、70%、80%、90%、95%、又は最高100%であってよい。従って
、用語「減少した」は、病態、タンパク質発現、タンパク質活性、又はLDL受容体への
PCSK9の結合の部分的な減少及び完全な減少の両方を包含する。
【0115】
本明細書で使用する場合、用語「増加した」は、細胞表面上のLDL受容体のディスプ
レイの増加を指す。このような増加は、最高5%、10%、20%、30%、40%、5
0%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、150%、250%、50
0%、1000%、又はそれ以上であってよい。LDL受容体の表面ディスプレイの増加
を測定するために、任意の方法が使用できる。
【0116】
本明細書で使用する場合、用語「高コレステロール血症」は、コレステロールレベルが
望ましいレベルを超えて上昇している状態を指す。ある種の実施形態では、LDLコレス
テロールレベルは望ましいレベルを超えて上昇している。ある種の実施形態では、血清L
DLコレステロールレベルは望ましいレベルを超えて上昇している。本明細書で使用する
場合、用語「家族性高コレステロール血症」又は「FH」は、血清中の低比重リポタンパ
ク質(LDL)関連コレステロールレベルの上昇を特徴とする遺伝病を指す。正常な患者
のLDLコレステロールレベル(例えば130mg/dL未満)と比較すると、ヘテロ接
合性FH患者のレベルは350~550mg/dLに、ホモ接合性FH患者のレベルは6
00mg/dL超まで上昇している。FHを有する患者又は被験体におけるこれらのレベ
ルでのLDLコレステロールの上昇は、組織内のコレステロール沈着及び若年での心血管
疾患リスクの増加につながる。
【0117】
アミノ酸配列及び核酸配列の両方に関して本明細書で使用する場合、用語「同一性割合
」、「配列同一性」、「類似性割合」、「配列類似性」等は、整列したアミノ酸残基又は
ヌクレオチド間の類似性を最大にする配列のアライメントに基づく、2つの配列の類似性
の程度の尺度を指し、これは配列のアライメントにおける同一又は類似の残基又はヌクレ
オチドの数、全ての残基又はヌクレオチドの数、並びにギャップの存在及び長さの関数で
ある。標準的なパラメータを使用して配列類似性を決定するための様々なアルゴリズム及
びコンピュータプログラムが利用可能である。本明細書で使用する場合、配列類似性は、
アミノ酸配列のBLASTpプログラム及び核酸配列のBLASTnプログラムを用いて
測定され、これらは両方ともNational Center for Biotech
nology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/
)を通じて利用可能であり、例えば、Altschul et al.(1990),J
.Mol.Biol.215:403?410;Gish and States(19
93),Nature Genet.3:266?272;Madden et al.
(1996),Meth.Enzymol.266:131?141;Altschul
et al.(1997),Nucleic Acids Res.25:33 89
?3402;Zhang et al.(2000),J.Comput.Biol.7
(1?2):203?14に記載されている。本明細書で使用する場合、2つのアミノ酸配
列の類似性割合は、BLASTpアルゴリズムのパラメータ、即ち、ワードサイズ=3、
ギャップオープニングペナルティ=-11、ギャップ伸長ペナルティ=-1、及びスコア
リングマトリックス=BLOSUM62に基づくスコアである。本明細書で使用する場合
、2つの核酸配列の類似性割合は、BLASTnアルゴリズムのパラメータ、すなわち、
ワードサイズ=11、ギャップオープニングペナルティ=-5、ギャップ伸長ペナルティ
=-2、マッチ報酬=1、及びミスマッチペナルティ=-3に基づくスコアである。
【0118】
2つのタンパク質又はアミノ酸配列の改変に関して本明細書で使用する場合、用語「対
応する」は、第1のタンパク質における特定の改変が第2のタンパク質における改変と同
じアミノ酸残基の置換であり、第1のタンパク質における改変のアミノ酸位置は、2つの
タンパク質が標準的な配列アライメント(例えば、BLASTpプログラムを用いて)に
供される場合に、第2のタンパク質における改変のアミノ酸位置に対応するか、又はそれ
と整列することを示すために使用される。従って、配列アライメントにおいて残基X及び
残基Yが互いに対応する場合には、第1のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残
基「X」の修飾は、第2のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残基「Y」の修飾
に対応し、残基X及び残基Yは異なる数であってもよい。
【0119】
本明細書で使用する場合、用語「認識ハーフサイト」、「認識配列ハーフサイト」、又
は単に「ハーフサイト」は、ホモ二量体若しくはヘテロ二量体メガヌクレアーゼのモノマ
ーによって、又は一本鎖メガヌクレアーゼの1つのサブユニットによって認識される、二
本鎖DNA分子中の核酸配列を意味する。
【0120】
本明細書で使用される場合、用語「超可変領域」は、比較的高い変動性を有するアミノ
酸を含むメガヌクレアーゼモノマー又はサブユニット内の局在配列を指す。超可変領域は
、約50~60個の連続残基、約53~57個の連続残基、又は好ましくは約56個の残
基を含むことができる。いくつかの実施形態では、超可変領域の残基は、配列番号6~1
4のいずれか1つの位置24~79又は位置215~270に対応し得る。超可変領域は
、認識配列中のDNA塩基に接触する1個又は複数個の残基を含むことができ、単量体又
はサブユニットの塩基選択を変化させるように改変することができる。超可変領域はまた
、メガヌクレアーゼが二本鎖DNA認識配列と関連するときにDNA骨格に結合する1個
又は複数個の残基を含むことができる。そのような残基は、DNA骨格及び標的認識配列
に対するメガヌクレアーゼの結合親和性を変化させるように改変することができる。本発
明の異なる実施形態では、超可変領域は、変動性を示す1~20個の残基を含んでよく、
塩基選択及び/又はDNA結合親和性に影響を及ぼすように改変することができる。いく
つかの実施形態では、超可変領域内の可変残基は、配列番号6~14のいずれか1つの位
置24、26、28、30、32、33、38、40、42、44、46、68、70、
75、及び77のうちの1又は複数に対応する。ある種の実施形態では、超可変領域内の
可変残基はまた、配列番号8の位置48、50、71、及び73のうちの1又は複数に対
応する。他の実施形態では、超可変領域内の可変残基は、配列番号6~14のいずれか1
つの位置215、217、219、221、223、224、229、231、233、
235、237、259、261、266、及び268のうちの1又は複数に対応する。
更なる実施形態では、超可変領域内の可変残基はまた、配列番号12の位置258に対応
してもよい。
【0121】
用語「組換えDNA構築物」、「組換え構築物」、「発現カセット」、「発現構築物」
、「キメラ構築物」、「構築物」、及び「組換えDNA断片」は、本明細書では同じ意味
で用いられ、核酸断片である。組換え構築物は、限定されるものではないが、天然には一
緒に見出されない調節配列及びコード配列を含む核酸断片の人工的な組み合わせを含む。
例えば、組換えDNA構築物は、異なる供給源に由来する調節配列及びコード配列、又は
同じ供給源に由来し、天然に見出されるものとは異なる様式で配置された調節配列及びコ
ード配列を含み得る。このような構築物は、単独で使用しても、又はベクターと組み合わ
せて使用してもよい。
【0122】
本明細書で使用する場合、「ベクター」又は「組換えDNAベクター」は、所定の宿主
細胞においてポリペプチドをコードする配列の転写及び翻訳が可能な複製系及び配列を含
む構築物であり得る。ベクターが使用される場合、ベクターの選択は、当業者に周知の宿
主細胞を形質転換するために使用される方法に依存する。ベクターとしては、プラスミド
ベクター及び組換えAAVベクター、又は本発明のメガヌクレアーゼをコードする遺伝子
を標的細胞に送達するのに適した当該技術分野で公知の任意の他のベクターを挙げること
ができるが、これらに限定されない。当業者は、本発明の単離されたヌクレオチド又は核
酸配列のいずれかを含む宿主細胞を首尾よく形質転換、選択、及び増殖させるために、ベ
クター上に存在しなければならない遺伝因子を十分に認識している。
【0123】
本明細書で使用する場合、「ベクター」は、ウイルスベクターを指すこともできる。ウ
イルスベクターとしては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウ
イルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクター(AAV)を挙げることができるが、
これらに限定されない。
【0124】
本明細書で使用する場合、「多シストロン性」mRNAは、2以上のコード配列(即ち
、シストロン)を含み、複数のタンパク質をコードする単一のメッセンジャーRNAを指
す。多シストロン性mRNAは、IRESエレメント、T2Aエレメント、P2Aエレメ
ント、E2Aエレメント、及びF2Aエレメントが挙げられるがこれらに限定されない、
同じmRNA分子から2以上の遺伝子の翻訳を可能にする当該技術分野において公知の任
意のエレメントを含むことができる。
【0125】
本明細書で使用する場合、用語「対照」又は「対照細胞」は、遺伝子改変細胞の遺伝子
型又は表現型における変化を測定するための参照点を提供する細胞を指す。対照細胞は、
例えば(a)野生型細胞、即ち、遺伝子改変細胞を生じる遺伝子変更のための出発物質と
同じ遺伝子型の細胞、(b)遺伝子改変細胞と同じ遺伝子型の細胞であるが、ヌル構築物
で形質転換された(即ち、目的の形質に対して既知の効果を有していない構築物を有する
)細胞、又は(c)遺伝子改変細胞と遺伝的に同一であるが、変化した遺伝子型又は表現
型の発現を誘導する条件又は刺激、あるいは更なる遺伝子改変に曝されていない細胞を含
んでよい。
【0126】
2つのタンパク質又はアミノ酸配列の改変に関して本明細書で使用する場合、用語「対
応する」は、第1のタンパク質における特定の改変が第2のタンパク質における改変と同
じアミノ酸残基の置換であり、第1のタンパク質における改変のアミノ酸位置は、2つの
タンパク質が標準的な配列アライメント(例えば、BLASTpプログラムを用いて)に
供される場合に、第2のタンパク質における改変のアミノ酸位置に対応するか、又はそれ
と整列することを示すために使用される。従って、配列アライメントにおいて残基X及び
残基Yが互いに対応する場合には、第1のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残
基「X」の修飾は、第2のタンパク質におけるアミノ酸「A」に対する残基「Y」の修飾
に対応し、残基X及び残基Yは異なる数であってもよい。
【0127】
本明細書で使用する場合、用語「治療」又は「被験体を治療する」は、本発明の操作さ
れたメガヌクレアーゼ又は本発明の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸を、高
レベルの脂肪及び/又は血中を循環するコレステロール値の増加を特徴とする疾患、例え
ばコレステロール関連障害を有する被験体に投与することを指す。例えば、この被験体は
、心血管疾患、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、
及び他のコレステロール関連障害を有していてもよい。治療の望ましい効果としては、疾
患の発症又は再発の防止、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の減少、
病勢悪化速度の減少、病態の改善又は一時的軽減、及び予後の緩解又は改善が挙げられる
が、これらに限定されない。従って、疾患及び/又は障害を治療することとは、疾患及び
/又は障害の進行を変化させること(例えば遅らせること)、総コレステロールレベル及
び/又は低比重リポタンパク質(LDL)コレステロールレベルを減少させること、クリ
グラー・ナジャー症候群を改善すること、鉄の取り込みを調節するためにヘプシジン及び
/又はヘモクロマトーシス2型の機能を回復させること、胆汁酸代謝を回復させること、
家族性高コレステロール血症の冠状動脈性心疾患リスクを低減すること、手及び/又は足
の過角化性斑(hyperkeratotic plaque)を治癒させ得る、過角化
性斑及び角膜混濁の防止を指す。いくつかの態様では、本発明の操作されたメガヌクレア
ーゼ、又はこれをコードする核酸は、本発明の医薬組成物の形で治療中に投与される。
【0128】
本明細書で使用する場合、「コレステロール関連疾患」としては、高コレステロール血
症、心疾患、メタボリックシンドローム、糖尿病、冠状動脈性心疾患、脳卒中、心血管疾
患、アルツハイマー病、及び一般的な脂質異常症で、例えば高血清総コレステロール、高
LDL、高トリグリセリド、VLDL、及び/又は低HDLにより顕在化可能なもののう
ちのいずれか1つ又は複数が挙げられる。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ
を単独で又は1種若しくは複数種の他の薬剤と組み合せて使用して治療できる原発性及び
続発性脂質異常症のいくつかの非限定的な例としては、メタボリックシンドローム、真性
糖尿病、家族性複合型高脂血症、家族性高トリグリセリド血症、ヘテロ接合性高コレステ
ロール血症、ホモ接合性高コレステロール血症を含む家族性高コレステロール血症、家族
性欠陥アポリポタンパク質B-100;多遺伝子性高コレステロール血症;レムナント除
去疾患、肝性リパーゼ欠乏症;食事の不摂生、甲状腺機能低下症、エストロゲン及びプロ
ゲスチン療法、ベータ遮断薬、及びチアジド系利尿薬を含む薬剤のうちの任意のものに続
発する脂質異常症;ネフローゼ症候群、慢性腎不全、クッシング症候群、原発性胆汁性肝
硬変、糖原病、肝癌、胆汁うっ滞、末端肥大症、インスリノーマ、成長ホルモン単独欠損
症及びアルコール性高トリグリセリド血症が挙げられる。本明細書に開示の操作されたメ
ガヌクレアーゼはまた、例えば、冠状動脈性心疾患、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、脳卒中
(虚血性及び出血性)、狭心症、又は脳血管疾患及び急性冠動脈症候群、心筋梗塞等のア
テローム性動脈硬化症の予防又は治療にも有用であり得る。
【0129】
用語「プロタンパク質コンバターゼスブチリシンケキシン9型」又は「PCSK9」は
、配列番号3に規定されるヒトPCSK9遺伝子(及び活性PCSK9ポリペプチドをコ
ードするその変異体)等のPCSK9遺伝子によってコードされるポリペプチド又はその
断片、並びに対立遺伝子バリアント、スプライスバリアント、誘導体バリアント、置換バ
リアント、欠失バリアント、及び/又は挿入バリアント(N末端メチオニンの付加を含む
)、融合ポリペプチド、及び種間相同体が挙げられるがこれらに限定されない関連するポ
リペプチドを指す。ある種の実施形態では、PCSK9ポリペプチドとしては、リーダー
配列残基、標的残基、アミノ末端メチオニン残基、リジン残基、タグ残基、及び/又は融
合タンパク質残基等であるがこれらに限定されない末端残基が挙げられる。「PCSK9
」は、FH3、NARC1、HCHOLA3、プロタンパク質コンバターゼサブチリシン
/ケキシン9型、及び神経アポトーシス調節コンバターゼ1とも呼ばれている。PCSK
9遺伝子は、分泌性サブチラーゼファミリーのプロテイナーゼKサブファミリーに属する
プロタンパク質コンバターゼタンパク質をコードする。用語「PCSK9」は、プロタン
パク質及びプロタンパク質の自己触媒後に産生される産物の両方を表す。自己触媒された
産物のみが引用されている場合には、タンパク質は、「成熟」、「切断された」、「プロ
セシングされた」、又は「活性な」PCSK9と呼ぶことができる。非活性形態のみが引
用されている場合には、タンパク質は、PCSK9の「非活性」、「プロ型」、又は「プ
ロセシングを受けていない」形態と呼ぶことができる。本明細書において使用される用語
「PCSK9」は、変異D374Y、S127R、及びF216L等の天然に存在する対
立遺伝子も含む。用語「PCSK9」は、グリコシル化、PEG化されたPCSK9配列
、そのシグナル配列が切断されたPCSK9配列、触媒ドメインからそのプロドメインか
ら切断されているが、触媒ドメインから分離されていないPCSK9配列等、PCSK9
アミノ酸配列の翻訳後修飾を取り込んだPCSK9分子も包含する。
【0130】
用語「PCSK9活性」は、PCSK9のあらゆる生物学的作用を含む。ある種の実施
形態では、PCSK9活性は、基質若しくは受容体と相互作用するか、又は基質若しくは
受容体に結合するPCSK9の能力を含む。いくつかの実施形態では、PCSK9活性は
、LDL受容体(LDLR)に結合するPCSK9の能力によって表される。いくつかの
実施形態では、PCSK9は、LDLRに結合し、LDLRに関与する反応を触媒する。
例えば、PCSK9活性は、LDLRの利用可能性を変化させる(例えば、低下させる)
PCSK9の能力を含む。従って、いくつかの実施形態では、PCSK9活性は、被験体
のLDL量を増加させるPCSK9の能力を含む。特定の実施形態では、PCSK9活性
は、LDLへの結合に利用可能なLDLRの量を減少させるPCSK9の能力を含む。従
って、PCSK9活性を減少させることによって、表面上にディスプレイされ、被験体の
LDLを見つけられるLDLRの量が増加する。いくつかの実施形態では、「PCSK9
活性」は、PCSK9シグナル伝達から生じるあらゆる生物活性を含む。例示的な活性と
しては、LDLRへのPCSK9の結合、LDLR又は他のタンパク質を切断するPCS
K9酵素活性、PCSK9作用を促進するLDLR以外のタンパク質へのPCSK9の結
合、APOB分泌を変化させるPCSK9(Sun et al.(2005),Hum
an Molecular Genetics 14:1161-1169、及びOug
uerram et al.(2004),Arterioscler thromb
Vasc Biol.24:1448-1453)、肝臓の再生及び神経細胞の分化にお
けるPCSK9の役割(Seidah et al.,PNAS 100:928-93
3,2003)及び肝臓のグルコース代謝におけるPCSK9の役割(Costet e
t al.(2006),J.Biol.Chem.281(10):6211-18)
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
用語「有効量」又は「治療有効量」は、有益な又は望ましい生物学的及び/又は臨床結
果を達成するのに十分な量を指す。治療有効量は、メガヌクレアーゼの配合又は組成、治
療される被験体の疾患及びその重症度、年齢、体重、健康状態、並びに反応性に依存して
変化する。特定の実施形態では、有効量の本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ
又は医薬組成物は、被験体の総コレステロール又はLDLコレステロール(即ち、血清L
DL)のレベルを減少させることによって、高コレステロール血症又はその他コレステロ
ール関連障害、及び/又は脂質異常症、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患(CVD)
、若しくは冠状動脈性心疾患のうちの少なくとも1つの症状を治療又は防止する。
【0132】
用語「脂質ナノ粒子」は、典型的には、平均直径が10~1000ナノメートルの球状
構造を有する脂質組成物を指す。いくつかの配合物では、脂質ナノ粒子は、少なくとも1
つのカチオン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質及び少なくとも1つの複合脂質
を含むことができる。mRNA等の核酸をカプセル化するのに適した当該技術分野におい
て公知の脂質ナノ粒子は、本発明中での使用が予想される。
【0133】
本明細書で使用する場合、変数の数値範囲の列挙は、本発明が、その範囲内の値のいず
れかに等しい変数で実施されてもよいと伝えることが意図されている。従って、本質的に
離散的な変数の場合、その変数は、範囲の終点を含む数値範囲内の任意の整数値に等しく
なり得る。同様に、本質的に連続する変数の場合、その変数は、範囲の終点を含む数値範
囲内の任意の実数値と等しくなり得る。限定ではなく例として、0と2の間の値を有する
と記載される変数は、変数が本質的に離散的である場合には、0、1、又は2の値をとる
ことができ、変数が本質的に連続している場合には、0.0、0.1、0.01、0.0
01、又は0以上2以下の任意の他の実数値をとることができる。
【0134】
2.1 本発明の原理
本発明は、部分的に、操作されたメガヌクレアーゼを使用して、PCSK9の発現を減
少させ、それにより血液から脂肪及び/又はコレステロールの除去を増加させることがで
きるという仮説に基づく。PCSK9の発現減少により、細胞表面上のLDL受容体のデ
ィスプレイが増加し、それにより血流からの脂質の除去を増加させることができる。従っ
て、PCSK9遺伝子の認識配列に特異的な操作されたメガヌクレアーゼを送達すること
によって、PCSK9発現を減少させることができ、これによって後に被験体の血中の総
コレステロール(例えば、血中LDL)を減少させることができる。従って、本明細書に
開示の方法及び組成物は、適切に制御されたPCSK9発現レベルと比べて、PCSK9
の発現が増加したことによって引き起こされるコレステロール関連障害の治療に特定の用
途を見出す。
【0135】
従って、本発明は、PCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断する操作されたメガヌ
クレアーゼを包含する。本発明は、医薬組成物中、及びコレステロール関連障害、例えば
、高コレステロール血症を治療する方法においてそのような操作されたメガヌクレアーゼ
を使用する方法も包含する。更に、本発明は、操作されたメガヌクレアーゼタンパク質、
又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸を含む医薬組成物と、コレステロール
関連障害、例えば、高コレステロール血症の治療のためのそのような組成物の使用とを包
含する。
【0136】
2.2 PCSK9遺伝子内の認識配列を認識し切断するためのメガヌクレアーゼ
部位特異的ヌクレアーゼは、PCSK9遺伝子に切断を導入するために使用でき、その
ような切断の修復により、活性なPCSK9遺伝子が発現しないようにNHEJを介して
遺伝子を永久的に改変することができる。従って、一実施形態では、本発明は、操作され
た組換えメガヌクレアーゼを用いて実施することができる。
【0137】
好ましい実施形態では、本発明を実施するために使用されるヌクレアーゼは一本鎖メガ
ヌクレアーゼである。一本鎖メガヌクレアーゼは、リンカーペプチドによって接合された
N末端サブユニット及びC末端サブユニットを含む。2つのドメインの各々は、認識配列
の半分(即ち、認識ハーフサイト)を認識し、DNA切断の部位は、2つのサブユニット
の界面付近の認識配列の中央にある。DNA鎖切断は、メガヌクレアーゼによるDNA切
断が4塩基対の3’一本鎖オーバーハングの対を生成するように、4塩基対によって相殺
される。
【0138】
いくつかの例では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、PCS7-8認識配列(
配列番号4)を認識して切断するように操作されている。PCS7-8認識配列は、配列
番号3に規定されるPCSK9遺伝子の中に位置する。このような操作されたメガヌクレ
アーゼは、本明細書では集合的に「PCS7-8メガヌクレアーゼ」と呼ばれる。例示的
なPCS7-8メガヌクレアーゼは、配列番号6~14に提供される。
【0139】
本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、第1の超可変(HVR1)領域を含む第1の
サブユニットと、第2の超可変(HVR2)領域を含む第2のサブユニットとを含む。更
に、第1のサブユニットは、認識配列の第1の認識ハーフサイト(例えば、PCS7ハー
フサイト)に結合し、第2のサブユニットは、認識配列の第2の認識ハーフサイト(例え
ば、PCS7ハーフサイト)に結合する。操作されたメガヌクレアーゼが一本鎖メガヌク
レアーゼである実施形態では、HVR1領域を含み、第1のハーフサイトに結合する第1
のサブユニットがN末端サブユニットとして位置し、HVR2領域を含み、第2のハーフ
サイトに結合する第2のサブユニットがC末端サブユニットとして位置するように第1の
サブユニット及び第2のサブユニットを配向できる。代替的実施形態では、HVR1領域
を含み、第1のハーフサイトに結合する第1のサブユニットがC末端サブユニットとして
位置し、HVR2領域を含み、第2のハーフサイトに結合する第2のサブユニットがN末
端サブユニットとして位置するように第1のサブユニット及び第2のサブユニットを配向
できる。本発明の例示的なPCS7-8メガヌクレアーゼを表1に示す。
【0140】
表1.PCS7-8認識配列(配列番号4)を認識して切断するように操作された例示的
な操作されたメガヌクレアーゼ
【表1】
【0141】
「PCS7サブユニット%」は、各メガヌクレアーゼのPCS7結合サブユニット領
域とPCS7-8L.197メガヌクレアーゼのPCS7結合サブユニット領域とのアミ
ノ酸配列同一性を表し、「PCS8サブユニット%」とは、各メガヌクレアーゼのPCS
8結合サブユニット領域とPCS7-8L.197メガヌクレアーゼのPCS8結合サブ
ユニット領域とのアミノ酸配列同一性を表す。
【0142】
2.3 エンドヌクレアーゼの送達及び発現方法
被験体の高コレステロール血症及び心血管疾患を治療する方法が本明細書に開示される
。同様に、薬学的に許容される担体及び本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ(
又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸)を含む医薬組成物を投与することを
含む、被験体の高コレステロール血症及び心血管疾患の症状を低減させる方法が提供され
る。本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼを被験体の標的細胞に送達することを
含む、被験体のPCSK9の発現及び/又は活性を減少させる方法もまた提供される。本
発明の方法において、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼは、標的細胞内のD
NA/RNAに送達され、且つ/又はそこから発現され得る。
【0143】
本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼは、タンパク質の形態で、又は好ましく
は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸として細胞内に送達される。このような
核酸はDNA(例えば、環状若しくは線状プラスミドDNA又はPCR産物)又はRNA
(例えば、mRNA)であってよい。操作されたメガヌクレアーゼコード配列がDNAの
形で送達される実施形態の場合、ヌクレアーゼ遺伝子の転写を促すためにプロモーターに
作動可能に連結されるべきである。本発明に適した哺乳動物プロモーターとしては、構成
型プロモーター、例えば、サイトメガロウイルス初期(CMV)プロモーター(Thom
sen et al.(1984),Proc Natl Acad Sci USA.
81(3):659-63)又はSV40初期プロモーター(Benoist and
Chambon(1981),Nature 290(5804):304-10)並び
に誘導性プロモーター、例えば、テトラサイクリン誘導性プロモーター(Dingerm
ann et al.(1992),Mol Cell Biol.12(9):403
8-45)が挙げられる。本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、合成プロモーターに
も作動可能に連結され得る。合成プロモーターとしては、JeTプロモーター(国際公開
第2002/012514号)を挙げることができるが、これに限定されない。特定の実
施形態では、本明細書で開示される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列は
、肝臓特異的プロモーター又は肝実質細胞特異的プロモーターに作動可能に連結され得る
。肝臓特異的プロモーターの例としては、限定されないが、ヒトα-1抗トリプシンプロ
モーター、ハイブリッド肝臓特異的プロモーター(ApoE遺伝子の肝臓遺伝子座制御領
域(ApoE-HCR)及び肝臓特異的α1-抗トリプシンプロモーター)、ヒトチロキ
シン結合グロブリン(TBG)プロモーター及びアポリポタンパク質A-IIプロモータ
ーが挙げられる。
【0144】
特定の実施形態では、少なくとも1つの操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸
配列は組換えDNA構築物又は発現カセットに送達される。例えば、組換えDNA構築物
は、プロモーターと、本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配
列とを含む発現カセット(即ち、「カセット」)を含むことができる。他の実施形態では
、組換えDNA構築物は、2以上のカセットを含み、各カセットは、プロモーターと本明
細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含む。特定の実施形
態では、組換えDNA構築物は、2つのカセット、3つのカセット、4つのカセット、又
はそれ以上を含むことができる。
【0145】
他の実施形態では、組換えDNA構築物は、プロモーターと多シストロン性核酸配列と
を含むカセットを含み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的
細胞に本明細書に記載の多シストロン性mRNAを産生する。
【0146】
いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼをコードするmRNAは細胞に
送達されるが、これは、このことにより操作されたメガヌクレアーゼをコードする遺伝子
が細胞のゲノムに組み込まれる可能性が低下するためである。操作されたメガヌクレアー
ゼをコードするそのようなmRNAは、インビトロ転写等の当該技術分野で公知の方法を
用いて産生することができる。いくつかの実施形態では、mRNAは、7-メチルグアノ
シン、ARCA、CleanCapを使用してキャッピングされるか、又はVaccin
iaキャッピング酵素等を使用して酵素的にキャッピングされる。いくつかの実施形態で
は、mRNAはポリアデニル化されていてもよい。mRNAは、コードされた操作された
メガヌクレアーゼの発現を促し、且つ/又はmRNA自体の安定性を高めるために、様々
な5’及び3’非翻訳配列要素を含んでいてもよい。mRNAは、プソイドウリジン、5
-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、5-メチルウリジン、又は2-チオウリジ
ン等のヌクレオシド類似体を含んでいてもよい。
【0147】
特定の実施形態では、本発明の操作されたヌクレアーゼをコードするmRNAは、細胞
内で同時に発現される2以上のヌクレアーゼをコードする多シストロン性mRNAであっ
てよい。いくつかの実施形態では、多シストロン性mRNAは、本明細書に記載の2以上
のメガヌクレアーゼと、細胞において治療的に有益な効果をもたらす少なくとも1種の更
なるタンパク質とをコードできる。本発明の多シストロン性mRNAは、IRESエレメ
ント、T2Aエレメント、P2Aエレメント、E2Aエレメント、及びF2Aエレメント
が挙げられるがこれらに限定されない、同じmRNA分子から2以上の遺伝子の翻訳を可
能にする当該技術分野において公知の任意のエレメントを含むことができる。特定の実施
形態では、多シストロン性mRNAは、本明細書に記載の2つのメガヌクレアーゼをコー
ドするバイシストロン性mRNA、本明細書に記載の3つのメガヌクレアーゼをコードす
るトリシストロン性mRNAである。
【0148】
別の特定の実施形態では、本発明のエンドヌクレアーゼをコードする核酸は、一本鎖D
NA鋳型として標的細胞に送達され得る。一本鎖DNAは、操作されたメガヌクレアーゼ
をコードする配列の上流及び/又は下流に5’及び/又は3’AAV逆方向末端反復(I
TR)を更に含むことができる。他の実施形態では、一本鎖DNAは、操作されたメガヌ
クレアーゼをコードする配列の上流及び/又は下流に5’及び/又は3’相同性アームを
更に含むことができる。
【0149】
別の特定の実施形態では、本発明のエンドヌクレアーゼをコードする遺伝子は、線状D
NA鋳型として標的細胞に送達され得る。いくつかの例において、エンドヌクレアーゼを
コードするプラスミドDNAは、標的細胞への送達前に環状プラスミドDNAが線状にな
るように、1又は複数の制限酵素により消化され得る。
【0150】
精製されたヌクレアーゼタンパク質を細胞に送達して、本明細書で以下に更に詳述する
ものを含む、当該技術分野で公知の様々な異なるメカニズムによってゲノムDNAを切断
することができる。
【0151】
本発明の操作されたメガヌクレアーゼの送達のための標的組織としては、限定されない
が、肝実質細胞、又は好ましくは初代肝実質細胞、より好ましくはヒト肝実質細胞又はヒ
ト初代肝実質細胞、HepG2.2.15又はHepG2-hNTCP細胞等の肝臓の細
胞が挙げられる。特定の実施形態では、細胞は霊長類初代肝実質細胞等の霊長類肝実質細
胞の細胞である。説明したように、本発明のメガヌクレアーゼは、精製タンパク質として
、又はメガヌクレアーゼをコードするRNA若しくはDNAとして送達することができる
。一実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はエンドヌクレアーゼをコードする
mRNA若しくはDNAベクターは、標的組織への直接の注射を介して標的細胞(例えば
、肝臓の細胞)に供給される。あるいは、メガヌクレアーゼタンパク質、mRNA、又は
DNAは、循環系を介して全身に送達することができる。
【0152】
いくつかの実施形態では、エンドヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコ
ードするDNA/mRNAは、公知の技術に従って薬学的に許容される担体中において、
全身投与するために、又は標的組織に投与するために製剤化される。例えば、Remin
gton,The Science And Practice of Pharmac
y(21st ed.2005)を参照のこと。本発明による医薬製剤の製造において、
タンパク質/RNA/mRNAは典型的には薬学的に許容される担体と混合される。担体
は、当然ながら、製剤中の他の成分と適合性があるという意味で許容されなければならず
、また患者に有害であってはならない。担体は、固体、液体、又はその両方であってよく
、1回用量製剤として化合物と共に製剤化されてもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、膜透過性ペプチド又は標的リガンドに結合し、細胞取り込み
を促す。当該技術分野で公知の膜透過性ペプチドの例としては、ポリアルギニン(Jea
rawiriyapaisarn et al.(2008)Mol Ther.16:
1624-9)、HIVウイルス由来のTATペプチド(Hudecz et al.(
2005)、Med.Res.Rev.25:679-736)、MPG(Simeon
i et al.(2003),Nucleic Acids Res.31:2717
-2724)、Pep-1(Deshayes et al.(2004),Bioch
emistry 43:7698-7706、及びHSV-1 VP-22(Desha
yes et al.(2005),Cell Mol Life Sci.62:18
39-49)が挙げられる。代替的実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメ
ガヌクレアーゼをコードするDNA/mRNAは、メガヌクレアーゼタンパク質/DNA
/mRNAが標的細胞に結合し、且つ標的細胞によって内在化されるように、標的細胞上
に発現される特異的細胞表面受容体を認識する抗体に共有結合又は非共有結合する。ある
いは、メガヌクレアーゼタンパク質/DNA/mRNAは、このような細胞表面受容体の
天然リガンド(又は天然リガンドの一部)に共有結合又は非共有結合することができる(
McCall et al.(2014),Tissue Barriers.2(4)
:e944449;Dinda et al.(2013),Curr Pharm B
iotechnol.14:1264-74;Kang et al.(2014),C
urr Pharm Biotechnol.15 (3):220-30; Qian
et al.(2014),Expert Opin Drug Metab Tox
icol.10(11):1491-508)。
【0154】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、肝臓の所望の領域内に注射又は移植するための生分解性ヒド
ロゲル内にカプセル化される。ヒドロゲルは、頻繁な注射を必要とすることなく、標的組
織の所望の領域に治療ペイロードの持続的かつ調整可能な放出を提供することができ、刺
激応答性材料(例えば温度応答性ヒドロゲル及びpH応答性ヒドロゲル)は、環境的又は
外因的に加えられる合図に応答してペイロードを放出するように設計することができる(
Kang Derwent et al.(2008),Trans Am Ophth
almol Soc.106:206-214)。
【0155】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、当該技術分野で公知の方法を用いて、ナノ粒子に共有結合す
る、好ましくは非共有結合するか、又はそのようなナノ粒子内にカプセル化される(Sh
arma et al.(2014),Biomed Res Int.2014:32
7950)。ナノ粒子は、その長さスケールが1μm未満、好ましくは100nm未満で
あるナノスケール送達システムである。そのようなナノ粒子は、金属、脂質、ポリマー、
又は生体高分子から構成されるコアを用いて設計されてもよく、メガヌクレアーゼタンパ
ク質、mRNA、又はDNAの複数のコピーをナノ粒子コアに結合させるか又はカプセル
化することができる。これは、各細胞に送達されるタンパク質/mRNA/DNAのコピ
ー数を増加させ、したがって各メガヌクレアーゼの細胞内発現を増加させて、標的認識配
列が切断される可能性を最大にする。このようなナノ粒子の表面にポリマー又は脂質(例
えば、キトサン、カチオン性ポリマー、又はカチオン性脂質)を更に修飾して、表面が追
加の官能性を付与するコアシェルナノ粒子を形成し、細胞送達及びペイロードの取り込み
を増強してもよい(Jian et al.(2012),Biomaterials
33(30):7621-30)。有利には、ナノ粒子を標的分子に更に結合させて、ナ
ノ粒子を適切な細胞型に導き、且つ/又は細胞取り込みの可能性を高めてもよい。そのよ
うな標的分子の例としては、細胞表面受容体に特異的な抗体、及び細胞表面受容体の天然
リガンド(又は天然リガンドの一部)が挙げられる。
【0156】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、カチオン性脂質を用いてリポソーム内にカプセル化又は複合
化される(例えば、LIPOFECTAMINEトランスフェクション試薬、Life
Technologies Corp.,Carlsbad、CA;Zuris et
al.(2015),Nat Biotechnol.33:73-80;Mishra
et al.(2011),J Drug Deliv.2011:863734を参
照)。リポソーム及びリポプレックス製剤は、ペイロードを分解から保護し、標的部位で
の蓄積及び保持を促進し、標的細胞の細胞膜との融合及び/又は破壊により細胞の取り込
み及び送達効率を促進することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、ポリマー足場(例えば、PLGA)内にカプセル化されるか
、又はカチオン性ポリマー(例えばPEI、PLL)を用いて複合化される(Tambo
li et al.(2011),Ther Deliv.2(4):523-536)
。ポリマー担体は、ポリマー侵食及び薬物拡散の制御によって調整可能な薬物放出速度を
提供するように設計することができ、高効率の薬物カプセル化によって、所望の標的細胞
集団への細胞内送達まで治療ペイロードの保護を提供することができる。
【0158】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又は操作されたメガヌクレア
ーゼをコードするDNA/mRNAは、ミセルに自己集合する両親媒性分子と組み合わさ
れる(Tong et al.(2007),J Gene Med.9(11):95
6-66)。ポリマーミセルは、親水性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール)で
形成されたミセルシェルを含んでもよく、親水性ポリマーは、凝集を防止し、電荷相互作
用をマスクし、非特異的相互作用を減少させることができる。
【0159】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、標的細胞への投与及び/又は送達のために、エマルジョン又
はナノエマルジョン(即ち、平均粒子直径1nm未満)に製剤化される。用語「エマルジ
ョン」は、限定すされないが、水中油型、油中水型、水中油中水型、又は油中水中油型の
分散液又は液滴を指し、水不混和相が水相と混合されると、無極性残基(例えば、長い炭
化水素鎖)を水から離れるように移動させ、極性頭部基を水に向かって移動させる疎水力
の結果として形成することができる脂質構造体を指す。これらの他の脂質構造体としては
、単層、少数層(paucilamellar)、及び多重層脂質小胞体、ミセル、並び
にラメラ相が挙げられるが、これらに限定されない。エマルジョンは、水相及び親油相(
典型的には油及び有機溶媒を含有する)から構成される。エマルジョンはまた、1種又は
複数種の界面活性剤を含有することが多い。ナノエマルジョン製剤は、例えば、米国特許
出願第2002/0045667号及び第2004/0043041号、並びに米国特許
第6,015,832号、第6,506,803号、第6,635,676号、及び第6
,559,189号に記載されているように周知であり、これらの各々は参照によりその
全体が本明細書に組み込まれる。
【0160】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼタンパク質、又はメガヌクレアーゼをコー
ドするDNA/mRNAは、多官能性ポリマー複合体、DNAデンドリマー、及びポリマ
ーデンドリマーに共有結合しているか、又は非共有結合している(Mastorakos
et al.(2015),Nanoscale 7(9):3845-56;Che
ng et al.(2008),J Pharm Sci.97(1):123-43
)。デンドリマー生成は、ペイロードの容量及びサイズを制御することができ、高い薬物
ペイロード容量を提供することができる。更に、複数の表面基のディスプレイを利用して
、安定性を改善し、非特異的相互作用を低減し、細胞特異的標的化及び薬物放出を増強す
ることができる。
【0161】
いくつかの実施形態では、メガヌクレアーゼをコードする遺伝子は、ウイルスベクター
を用いて送達される。そのようなベクターは、当該技術分野で公知であり、レトロウイル
スベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイル
ス(AAV)ベクターが挙げられる(Vannucci et al.(2013),N
ew Microbiol.36:1-22に概説されている)。いくつかの実施形態で
は、ウイルスベクターは標的組織(例えば肝組織)に直接注射される。代替的実施形態で
は、ウイルスベクターは、循環系を介して全身に送達される。当該技術分野では、異なる
AAVベクターが異なる組織に局在する傾向があることが知られている。肝標的組織では
、肝実質細胞の効果的な形質導入が、例えばAAV血清型2、8、及び9で示されている
(Sands(2011),Methods Mol Biol 807:141-15
7;国際出願公開第2003/052051号公報)。AAVベクターはまた、宿主細胞
において第2鎖DNA合成を必要としないように自己相補的であり得る(McCarty
et al.(2001),Gene Ther 8:1248-54)。
【0162】
一実施形態では、エンドヌクレアーゼ遺伝子送達に使用されるウイルスベクターは、自
己制限ウイルスベクターである。自己制限ウイルスベクターは、ベクター内の操作された
メガヌクレアーゼの認識配列の存在故に、細胞又は生物において持続時間が制限され得る
。従って、自己制限ウイルスベクターを操作して、プロモーター、本明細書に記載のエン
ドヌクレアーゼ、及びITR内のエンドヌクレアーゼ認識部位のコードを提供することが
できる。自己制限ウイルスベクターは、エンドヌクレアーゼ遺伝子を細胞、組織、又は生
物に送達することで、エンドヌクレアーゼが発現され、ゲノム内の内因性認識配列で細胞
のゲノムを切断することができるようにする。送達されたエンドヌクレアーゼはまた、自
己制限ウイルスベクター自体の中にその標的部位を見出し、この標的部位でベクターを切
断する。切断されると、ウイルスゲノムの5’及び3’末端は、エキソヌクレアーゼによ
って曝露されて分解され、それによりウイルスを殺し、エンドヌクレアーゼの産生を停止
する。
【0163】
エンドヌクレアーゼ遺伝子がDNA形態(例えばプラスミド)で、且つ/又はウイルス
ベクター(例えばAAV)を介して送達される場合、それらはプロモーターに作動可能に
連結されてよい。いくつかの実施形態では、これは、ウイルスベクター(例えば、レンチ
ウイルスベクターのLTR)又は周知のサイトメガロウイルス初期プロモーター若しくは
SV40ウイルス初期プロモーター由来の内因性プロモーター等のウイルスプロモーター
であってもよい。好ましい実施形態では、メガヌクレアーゼ遺伝子は、標的細胞において
遺伝子発現を優先的に駆動するプロモーターに作動可能に連結される。肝臓特異的プロモ
ーターの例としては、限定されないが、ヒトα-1抗トリプシンプロモーター、ハイブリ
ッド肝臓特異的プロモーター(ApoE遺伝子の肝臓遺伝子座制御領域(ApoE-HC
R)及び肝臓特異的α1-抗トリプシンプロモーター)、ヒトチロキシン結合グロブリン
(TBG)プロモーター及びアポリポタンパク質A-IIプロモーターが挙げられる。
【0164】
特定の実施形態では、ウイルスベクターは、プロモーターと本明細書に記載の操作され
たメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含むカセットを含む。ウイルスベクターは
2以上のカセットを含むこともでき、各カセットは、プロモーターと本明細書に記載の操
作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列とを含む。いくつかの実施形態では、ウ
イルスベクターは、プロモーターと多シストロン性核酸配列とを含む1つのカセットを含
み、プロモーターは、多シストロン性核酸配列の発現を駆動し、標的細胞に本明細書に記
載の多シストロン性mRNA、例えば、操作されたメガヌクレアーゼをコードする多シス
トロン性mRNAを産生する。
【0165】
コレステロール関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を有
する被験体の肝臓に本明細書に開示のメガヌクレアーゼを送達する方法及び組成物が提供
される。一実施形態では、哺乳動物から取り出された天然肝実質細胞は、操作されたメガ
ヌクレアーゼをコードするベクターを用いて形質導入され得る。あるいは、被験体の天然
肝実質細胞は、操作されたメガヌクレアーゼ及び/又は肝再生を刺激する分子、例えば肝
臓毒素をコードするアデノウイルスベクターを用いてエクスビボで形質導入され得る。好
ましくは、肝臓毒素はuPAであり、ウイルスベクターにより発現されると肝実質細胞か
らの分泌を阻害するように改変されている。別の実施形態では、ベクターは、肝実質細胞
再生を新たに刺激することができるtPAをコードする。次いで、哺乳動物から取り出さ
れた形質導入肝実質細胞を哺乳動物に戻すことができ、操作されたメガヌクレアーゼの発
現を促す条件が提供される。典型的には、形質導入肝実質細胞は、脾臓又は門脈系を通し
て注入することによって患者に戻すことができ、投与は1~5日間又はそれ以上の期間に
わたって単回又は複数回であってよい。
【0166】
本発明の方法のインビボ態様では、操作されたメガヌクレアーゼをコードし、被験体に
投与されるレトロウイルス、偽型又はアデノウイルス関連ベクターが構築される。操作さ
れたメガヌクレアーゼをコードするベクターの投与は、分泌障害肝臓毒素をコードする、
又は肝臓毒素として作用することなく肝実質細胞の再生を刺激するtPAをコードするア
デノウイルスベクターの投与を用いて行うことができる。
【0167】
適切な用量は、他の要因の中でも、使用するリポソーム製剤、選択した任意のAAVベ
クターの特異性(例えば、血清型等)、投与経路、治療される被験体(即ち、被験体の年
齢、体重、性別、及び全身状態)、及び投与方法に依存する。従って、適切な用量は患者
ごとに異なっていてもよい。適切な有効量は、当業者によって容易に決定され得る。投薬
治療は、単回投与スケジュール又は複数回投与スケジュールであってよい。更に、被験体
は、必要に応じて何回投与されてもよい。当業者は、適切な投薬回数を容易に決定するこ
とができる。代替的な投与経路を考慮するか、又は治療的利益と副作用とのバランスをと
るために、用量は調整する必要がある場合がある。
【0168】
本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガ
ヌクレアーゼをコードする核酸の被験体への送達は、コレステロール関連障害、例えば、
常染色体優性FHを含む高コレステロール血症を治療するか、又はその重症度を低下させ
ることができる。特定の実施形態では、本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ、
又は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体への送達は、コレステロール
関連障害、例えば、常染色体優性FHを含む高コレステロール血症の少なくとも1つの症
状を低減することができる。いくつかの実施形態では、操作されたメガヌクレアーゼ、又
は操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸は、有効量で被験体に送達される。本明
細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガヌクレ
アーゼをコードする核酸が送達される被験体は、任意の哺乳動物であってよい。特定の実
施形態では、被験体は、馴化動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊
長類(例えば、ヒト及び非ヒト霊長類、例えばサル)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、
マウス及びラット)である。ある種の実施形態では、被験体は、非ヒト霊長類又はヒトで
ある。いくつかの実施形態では、被験体はコレステロール関連障害を有する。例えば、被
験体は、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、又は常染色体優性家族性
高コレステロール血症を有していてもよい。特定の実施形態では、被験体は、170mg
/dL又は200mg/dL超、例えば、170~200mg/dL、又は200~25
0mg/dL、200~300mg/dL、200~350mg/dL、200~400
mg/dL、200~450mg/dL、200~500mg/dL、又は200~60
0mg/dLの総コレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態では、被験体は、
110mg/dL又は130mg/dL超、例えば、110~120mg/dL、110
~130mg/dL、130~150mg/dL、130~180mg/dL、130~
200mg/dL、130~250mg/dL、130~300mg/dL、130~3
50mg/dL、130~400mg/dL、130~450mg/dL、130~50
0mg/dL、又は130~600mg/dLのLDLコレステロールレベルを有する。
【0169】
特定の実施形態では、本明細書に開示のメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作
されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体への送達は、PCSK9の発現を減少
させ、且つ/又はPCSK9活性を減少させることができる。例えば、PCSK9の発現
又は活性は、対照細胞又はベースラインPCSK9活性と比較した場合、少なくとも約5
%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95
%、又は最高100%減少され得る。いくつかの態様では、PCSK9の発現及び/又は
活性は、対照細胞又はベースラインPCSK9活性と比較した場合、約5~10%、5~
20%、10~30%、20~40%、30~50%、40~60%、50~70%、6
0~80%、70~90%、又は80~100%減少され得る。PCSK9活性は、本明
細書の他の箇所で開示されているように、当該技術分野で公知の任意の手段によって測定
することができる。本明細書で使用する場合、対照細胞は、医薬組成物、操作されたメガ
ヌクレアーゼ、又は本明細書で開示される操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸
の送達前の被験体由来の細胞等の任意の適切な対照であり得る。特定の実施形態では、対
照細胞は、医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は本明細書で開示される操作さ
れたメガヌクレアーゼをコードする核酸が送達されていない被験体の肝臓細胞又は初代肝
実質細胞である。本明細書で使用する場合、被験体の「ベースライン」レベル(例えば、
PCSK9発現若しくは活性又は総コレステロールレベル若しくはLDLコレステロール
レベルのベースラインレベル等)は、本明細書に記載の医薬組成物を個体に投与する前の
レベルを指す。ある種の実施形態では、ベースラインは、本明細書に記載の医薬組成物の
投与前に得られた2以上の測定値の平均(mean)又は平均(average)であっ
てよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示のメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示さ
れ操作されたメガヌクレアーゼをコードする核酸の被験体の標的細胞への送達は、細胞表
面上のLDL受容体のディスプレイを増加させるか、又はLDL受容体のレベルを増加さ
せることができる。LDL受容体のレベルは、被験体の肝臓におけるLDL受容体又はア
ポリポタンパク質B(APOB)受容体のレベルを測定する等、当該技術分野で公知の方
法によって測定することができる。例えば、LDL受容体のディスプレイ又はレベルは、
対照細胞又は細胞表面上のLDL受容体のベースラインレベルと比較した場合、本明細書
に開示のメガヌクレアーゼ、又は本明細書に開示の操作されたメガヌクレアーゼをコード
する核酸を、標的細胞に送達した後に少なくとも約5%、10%、20%、30%、40
%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、100%、150%、250%
、500%、1000%、又はそれ以上増加し得る。
【0171】
本明細書に開示の医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌク
レアーゼをコードする核酸の被験体の標的細胞への送達は、送達前の被験体の総コレステ
ロールレベルと比較した場合、被験体の総コレステロールレベルを減少させ得る。例えば
、総コレステロールレベルは、治療前の被験者と比較した場合、少なくとも約5%、10
%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は
最高100%減少させることができる。特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成
物を送達された被験体の総コレステロールレベルは、最終投薬後から少なくとも2週間、
少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は3ヶ月間、医薬組成物送達前の総コレス
テロールレベルと比較して減少を維持する。
【0172】
特定の実施形態では、総コレステロールレベルは、本明細書に開示の医薬組成物を被験
体に送達する前のコレステロールレベルと比較した場合、約5mg/dL、10mg/d
L、15mg/dL、20mg/dL、25mg/dL、30mg/dL、40mg/d
L、50mg/dL、60mg/dL、70mg/dL、80mg/dL、90mg/d
L、100mg/dL、110mg/dL、5~15mg/dL、10~20mg/dL
、10~30mg/dL、15~30mg/dL、20~30mg/dL、25~35m
g/dL、25~40mg/dL、25~50mg/dL、40~60mg/dL、50
~70mg/dL、60~80mg/dL、70~100mg/dL、又はそれ以上減少
する。特定の実施形態では、被験体は、140mg/dL、150mg/dL、160m
g/dL、170mg/dL、175mg/dL、180mg/dL、185mg/dL
、190mg/dL、195mg/dL、200mg/dL、205mg/dL、210
mg/dL、215mg/dL、220mg/dL、225mg/dL、230mg/d
L、235mg/dL、240mg/dL、250mg/dL、260mg/dL、27
0mg/dL、280mg/dL、290mg/dL、300mg/dL、又はそれ以上
のベースライン総コレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態では、総コレステ
ロールレベルは、血清コレステロールレベル又は全身コレステロールレベルである。
【0173】
本明細書に開示の医薬組成物、操作されたメガヌクレアーゼ、又は操作されたメガヌク
レアーゼをコードする核酸の被験体の標的細胞への送達は、送達前の被験体のLDLコレ
ステロールレベルと比較した場合、被験体のLDLコレステロールレベルを減少させるこ
とができる。例えば、LDLコレステロールレベルは、治療前の被験体と比較した場合、
少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%
、90%、95%、又は最高100%減少され得る。特定の実施形態では、本明細書に開
示の医薬組成物を送達された被験体のLDLコレステロールレベルは、最終投薬後から少
なくとも2週間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、又は3ヶ月間、医薬組成物
送達前の総コレステロールレベルと比較して減少を維持する。
【0174】
特定の実施形態では、LDLコレステロールレベルは、本明細書に開示の医薬組成物を
被験体に送達する前のLDLコレステロールレベルと比較した場合、約5mg/dL、1
0mg/dL、15mg/dL、20mg/dL、25mg/dL、30mg/dL、4
0mg/dL、50mg/dL、60mg/dL、70mg/dL、80mg/dL、9
0mg/dL、5~15mg/dL、10~20mg/dL、10~30mg/dL、1
5~30mg/dL、20~30mg/dL、25~35mg/dL、25~40mg/
dL、25~50mg/dL、40~60mg/dL、50~70mg/dL、60~8
0mg/dL、70~100mg/dL、又はそれ以上減少する。特定の実施形態では、
被験体は、100mg/dL、110mg/dL、115mg/dL、120mg/dL
、125mg/dL、130mg/dL、135mg/dL、140mg/dL、145
mg/dL、150mg/dL、155mg/dL、160mg/dL、165mg/d
L、170mg/dL、175mg/dL、180mg/dL、185mg/dL、19
0mg/dL、195mg/dL、200mg/dL、又はそれ以上のベースラインLD
Lコレステロールレベルを有する。いくつかの実施形態では、LDLコレステロールレベ
ルは、血清LDLコレステロールレベル又は全身LDLコレステロールレベルである。
【0175】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、本明細書に開示の医薬
組成物を被験体に送達する前のアテローム斑の初期サイズと比較した場合、被験体のアテ
ローム斑のサイズを少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9
%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19
%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29
%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39
%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49
%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59
%、又は60%、又は更に多く減少させるのに有効であり得る。アテローム斑のサイズは
、約19%~24%、14%~29%、12%~35%、10~40%、8%~45%、
5%~50%、2%~60%、又は1%~70%減少され得る。
【0176】
2.4 医薬組成物
いくつかの実施形態では、本発明は、薬学的に許容される担体と本発明の操作されたメ
ガヌクレアーゼ、又は薬学的に許容される担体と本発明の操作されたメガヌクレアーゼを
コードする核酸を含むポリヌクレオチドとを含む、医薬組成物を提供する。他の実施形態
では、本発明は、薬学的に許容される担体と、標的組織に送達することができ、本明細書
に開示の操作されたメガヌクレアーゼを発現する、本発明の細胞とを含む医薬組成物を提
供する。本発明の医薬組成物は、心血管疾患、及び常染色体優性FHを含む高コレステロ
ール血症を有する被験体の治療、又はPCSK9の発現及び/若しくは活性の減少に有用
であり得る。
【0177】
そのような医薬組成物は、公知の技術に従って調製することができる。例えば、Rem
ington,The Science And Practice of Pharm
acy(21st ed.2005)を参照のこと。本発明による医薬製剤の製造におい
て、メガヌクレアーゼポリペプチド(又はそれをコードするDNA/RNA)は、典型的
には、薬学的に許容される担体と混合され、得られた組成物が被験体に投与される。担体
は、当然ながら、製剤中の他の成分と適合性があるという意味で許容されなければならず
、また被験体に有害であってはならない。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物
は、被験体における疾患の治療に有用な1種又は複数種の追加の薬剤又は生物学的分子を
更に含むことができる。同様に、追加の薬剤及び/又は生物学的分子は、別個の組成物と
して同時投与することができる。
【0178】
本発明の特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書の別の箇所に記載されている、
脂質ナノ粒子内にカプセル化された本明細書に記載の1又は複数のmRNAを含むことが
できる。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に記載の1又は複数の多シスト
ロン性mRNAを含むことができ、各多シストロン性mRNAは、2以上の本発明の操作
されたメガヌクレアーゼをコードする。特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書
に記載の2つ、3つ、又は4つの操作されたメガヌクレアーゼをコードする多シストロン
性mRNAを含むことができる。他の特定の実施形態では、脂質ナノ粒子は、本明細書に
記載の2以上の多シストロン性mRNAを含むことができ、その各々は、2以上の本発明
の操作されたメガヌクレアーゼをコードする。
【0179】
本発明中で使用するために考えられる脂質ナノ粒子の一部は、少なくとも1つのカチオ
ン性脂質、少なくとも1つの非カチオン性脂質、及び少なくとも1つの複合脂質を含む。
更なる特定の例では、脂質ナノ粒子は、約40mol%~約85mol%のカチオン性脂
質、約13mol%~約49.5mol%の非カチオン性脂質、及び約0.5mol%~
約10mol%の脂質複合体を含むことができ、非ラメラ(即ち、非二重層)形態を有す
るような方法で産生される。
【0180】
カチオン性脂質としては、例えば、パルミトイル-オレオイル-ノル-アルギニン(P
ONA)、MC3、LenMC3、CP-LenMC3、γ-LenMC3、CP-γ-
LenMC3、MC3MC、MC2MC、MC3エーテル、MC4エーテル、MC3アミ
ド、Pan-MC3、Pan-MC4、及びPan MC5、1,2-ジリノレイルオキ
シ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ
-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、2,2-ジリノレイル-4-(
2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA
;「XTC2」)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1
,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(
4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA
)、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキサン(DL
in-K6-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ-[1,3]
-ジオキソラン(DLin-K-MPZ)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノ
メチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、1,2-ジリノレイルカ
ルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジ
リノレイオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1
,2-ジリノレイオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノ
レオイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ
-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノ
レイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリ
ノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TMA.Cl)、
1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパン塩化物塩(DLin-TAP.
Cl)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLi
n-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DL
inAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオ(DOAP)、
1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(
DLin-EG-DMA)、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリ
ド(DODAC)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DO
DMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA
)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアン
モニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウ
ムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,
N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N’,N’-ジ
メチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,
2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチル
アンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミ
ン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオ
ロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、
3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)
-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)
、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ
)-3-ジメチル-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエンオキシ)プロ
パン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミ
ン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロ
パン(DOcarbDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチ
ルアミノプロパン(DLincarbDAP)、又はこれらの混合物のうちの1又は複数
を挙げることができる。カチオン性脂質は、DLinDMA、DLin-K-C2-DM
A(「XTC2」)、MC3、LenMC3、CP-LenMC3、γ-LenMC3、
CP-γ-LenMC3、MC3MC、MC2MC、MC3エーテル、MC4エーテル、
MC3アミド、Pan-MC3、Pan-MC4、Pan MC5、又はこれらの混合物
であってもよい。
【0181】
種々の実施形態では、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約40mol%~
約90mol%、約40mol%~約85mol%、約40mol%~約80mol%、
約40mol%~約75mol%、約40mol%~約70mol%、約40mol%~
約65mol%、又は約40mol%~約60mol%を占めていてもよい。
【0182】
非カチオン性脂質は、例えば、1又は複数のアニオン性脂質及び/又は中性脂質を含ん
でいてもよい。好ましい実施形態では、非カチオン性脂質は、中性脂質成分、即ち、(1
)コレステロール若しくはその誘導体;(2)リン脂質、又は(3)リン脂質とコレステ
ロールの混合物若しくはその誘導体のうちの1つを含む。コレステロール誘導体の例とし
ては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル
-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、
及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質は、ジパルミトイ
ルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC
)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイ
ル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタ
ノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルグリセロール(P
OPG)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリスト
イル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル
エタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチ
ル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミ
ン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE
)、卵ホスファチジルコリン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されな
い中性脂質であってもよい。ある種の好ましい実施形態では、リン脂質は、DPPC、D
SPC、又はこれらの混合物である。
【0183】
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質(例えば、1又は複数のリン脂質及び/又
はコレステロール)は、粒子中に存在する総脂質の約10mol%~約60mol%、約
15mol%~約60mol%、約20mol%~約60mol%、約25mol%~約
60mol%、約30mol%~約60mol%、約10mol%~約55mol%、約
15mol%~約55mol%、約20mol%~約55mol%、約25mol%~約
55mol%、約30mol%~約55mol%、約13mol%~約50mol%、約
15mol%~約50mol%、又は約20mol%~約50mol%を占めていてもよ
い。非カチオン性脂質がリン脂質とコレステロール又はコレステロール誘導体との混合物
である場合、この混合物は粒子中に存在する総脂質の最高約40、50、又は60mol
%を占めていてもよい。
【0184】
粒子の凝集を阻害する複合脂質は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)-脂質
複合体、ポリアミド(ATTA)-脂質複合体、カチオン性ポリマー-脂質複合体(CP
L)、又はこれらの混合物のうちの1又は複数を含んでいてもよい。好ましい一実施形態
では、核酸-脂質粒子は、PEG-脂質複合体又はATTA-脂質複合体のいずれかを含
む。ある種の実施形態では、PEG-脂質複合体又はATTA-脂質複合体は、CPLと
共に使用される。粒子の凝集を阻害する複合脂質は、例えば、PEG-ジアシルグリセロ
ール(DAG)、PEGジアルキルオキシプロピル(DAA)、PEG-リン脂質、PE
G-セラミド(Cer)、又はこれらの混合物等のPEG-脂質を含んでいてもよい。P
EG-DAA複合体は、PEG-ジラウリルオキシプロピル(C12)、PEG-ジミリ
スチルオキシプロピル(C14)、PEG-ジパルミチルオキシプロピル(C16)、P
EG-ジステアリルオキシプロピル(C18)、又はこれらの混合物であってもよい。
【0185】
本発明での使用に適した追加のPEG-脂質複合体としては、mPEG2000-1,
2-ジ-O-アルキル-sn3-カルボモイルグリセリド(PEG-C-DOMG)が挙
げられるが、これに限定されない。PEG-C-DOMGの合成は、PCT出願番号PC
T/US08/88676に記載されている。本発明での使用に適した更なる追加のPE
G-脂質複合体としては、1-[8’-(1,2-ジミリストイル-3-プロパノキシ)
-カルボキサミド-3’、6’-ジオキサオクタニル]カルバモイル-ω-メチル-ポリ
(エチレングリコール)(2KPEG-DMG)が挙げられるが、これに限定されない。
2KPEG-DMGの合成は、米国特許第7,404,969号に記載されている。
【0186】
場合によっては、粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、PEG-脂質複合体)は、
粒子中に存在する総脂質の約0.1mol%~約2mol%、約0.5mol%~約2m
ol%、約1mol%~約2mol%、約0.6mol%~約1.9mol%、約0.7
mol%~約1.8mol%、約0.8mol%~約1.7mol%、約1mol%~約
1.8mol%、約1.2mol%~約1.8mol%、約1.2mol%~約1.7m
ol%、約1.3mol%~約1.6mol%、約1.4mol%~約1.5mol%、
又は約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9
、又は2mol%(又はその任意の割合若しくはその範囲内)を占めていてもよい。典型
的には、そのような場合、PEG部分は約2,000ダルトンの平均分子量を有する。そ
の他の場合、粒子の凝集を阻害する複合脂質(例えば、PEG-脂質複合体)は、粒子中
に存在する総脂質の約5.0mol%~約10mol%、約5mol%~約9mol%、
約5mol%~約8mol%、約6mol%~約9mol%、約6mol%~約8mol
%、又は約5mol%、6mol%、7mol%、8mol%、9mol%、又は10m
ol%(又はその任意の割合若しくはその範囲内)を占めていてもよい。典型的には、そ
のような場合、PEG部分は約750ダルトンの平均分子量を有する。
【0187】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、肝臓、特に肝実質細胞内での送達及び取り
込みを特異的に増強する組成を有する。
【0188】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、本発明の操作さ
れたメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む本明細書に記載の組換えDNA構築物
とを含む。特定の実施形態では、そのような組換えDNA構築物は、脂質ナノ粒子内にカ
プセル化されるか、又は標的細胞(例えば、肝臓細胞、特に肝実質細胞)への送達に適し
た、当該技術分野で公知の他の送達媒体にパッケージ化され得る。
【0189】
ある種の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される担体と、本発明の操作され
たメガヌクレアーゼをコードする核酸配列を含む本明細書に記載のウイルスベクターとを
含む。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、標的細胞、特に肝実質細胞等の肝臓細
胞への送達に適したAAVベクターであってよい。このようなAAVベクターは、例えば
、AAV8、AAV2、AAV9のカプシド、又は当該技術分野で公知の他の肝臓標的化
キャプシドを有し得る。ある種の実施形態では、AAVキャプシドはAAV8キャプシド
であり、これは5’逆方向末端反復、肝臓特異的ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG
)プロモーター、イントロン、本発明の操作されたメガヌクレアーゼのコード配列、ウッ
ドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメント、及び3’逆方向末端反復を含
むカセットを含む。
【0190】
ある種の実施形態では、治療有効量の本明細書に開示の医薬組成物を別の治療薬と一緒
に投与することを含む、高コレステロール血症等のコレステロール関連障害を治療する方
法が提供される。特定の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は単独で投与される
【0191】
本発明の医薬組成物は、併用療法で、即ち他の薬剤と組み合わせて投与することができ
る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、少なくとも1つの他の治
療薬の投与前に送達される。本明細書に開示の医薬組成物は、少なくとも1つの他の治療
薬の投与と同時に送達されても、又は少なくとも1つの他の治療薬の投与後に送達されて
もよい。ある種の実施形態では、併用療法は、本明細書に開示の医薬組成物を、少なくと
も1つの抗コレステロール薬と組み合わせて含む。薬剤としては、インビトロで合成的に
調製された化学的組成物、抗体、抗原結合領域、並びにそれらの組み合わせ及び複合体が
挙げられるが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、薬剤は、アゴニスト、ア
ンタゴニスト、アロステリックモジュレーター、又は毒素として作用し得る。ある種の実
施形態では、薬剤は、その標的を阻害又は刺激するように作用し(例えば、受容体又は酵
素の活性化又は阻害)、それによりLDLRの発現増加を促進するか、又はPCSK9発
現若しくは血清コレステロールレベルを減少させる。
【0192】
治療薬(本明細書に開示の医薬組成物以外)としては、少なくとも1つの他のコレステ
ロール低下(血清及び/又は全身コレステロール)薬又は薬剤が挙げられるが、これらに
限定されない。いくつかの実施形態では、薬剤は、LDLRの発現を増加させ、血清HD
Lレベルを増加させ、LDLレベルを減少させ、又はトリグリセリドレベルを減少させる
ことが観察されている。例示的な薬剤としては、スタチン(アトルバスタチン、セリバス
タチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチ
ン、ロスバスタチン、シンバスタチン)、ニコチン酸(ナイアシン)(NIACOR、N
IASPAN(徐放性ナイアシン)、SLO-NIACIN(徐放性ナイアシン))、フ
ィブリン酸(LOPID(ゲムフィブロジル)、TRICOR(フェノフィブラート)、
胆汁酸隔離剤(QUESTRAN(コレスチラミン)、コレセベラム(WELCHOL)
、COLESTID(コレスチポール))、コレステロール吸収阻害剤(ZETIA(エ
ゼチミブ))、ニコチン酸とスタチンとの組み合わせ(ADVICOR(LOVASTA
TIN及びNIASPAN)、スタチンと吸収阻害剤との組み合わせ(VYTORIN(
ZOCOR及びZETIA)、及び/又は脂質修飾剤が挙げられるが、これらに限定され
ない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、PPARγアゴニスト
、PPARα/γアゴニスト、スクアレンシンターゼ阻害剤、CETP阻害剤、降圧剤、
抗糖尿病薬(スルホニル尿素、インスリン、GLP-1類似体、DDPIV阻害剤等)、
ApoB調節物質、MTP阻害剤、及び/又は閉塞性動脈硬化症治療と組み合わされる。
いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、スタチン、オンコスタチンM
のようなある種のサイトカイン、エストロゲン、及び/又はベルベリン等のある種の植物
成分のような、被験体中のLDLRタンパク質のレベルを増加させる薬剤と組み合わされ
る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、(ある種の抗精神病薬、
ある種のHIVプロテアーゼ阻害剤、高フルクトース、スクロース、コレステロール又は
ある種の脂肪酸等の食事要因並びにRXR、RAR、LXR、FXRに対するある種の核
受容体アゴニスト及びアンタゴニスト等)、被験体の血清コレステロールレベルを増加さ
せる薬剤と組み合わされる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、
スタチン及び/又はインスリン等の、被験体中のPCSK9のレベルを増加させる薬剤と
組み合わされる。2つの組み合わせは、他の薬剤の望ましくない副作用を本明細書に開示
の医薬組成物によって軽減させることを可能とし得る。
【0193】
ある種の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、コレステロール低下(血清及
び/又は総コレステロール)薬を用いた治療の前、同時、及び後に投与することができる
。ある種の実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、高コレステロール血症、心臓
病、糖尿病、及び/又はコレステロール関連障害のいずれかの発症を予防又は軽減するた
めに、予防的に投与することができる。ある種の実施形態では、本明細書に開示の医薬組
成物は、既存の高コレステロール血症症状の治療のために投与することができる。いくつ
かの実施形態では、本明細書に開示の医薬組成物は、コレステロール関連障害に伴う障害
及び/又は症状の発症を遅延させる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の医薬組
成物は、コレステロール関連障害のいずれか1つの任意の症状がない被験体に提供される
【0194】
2.5 組換えAAVベクターの産生方法
いくつかの実施形態では、本発明は、本発明の方法において使用するための組換えAA
Vベクターを提供する。組換えAAVベクターは、典型的には、HEK-293等の哺乳
動物細胞株で産生される。ウイルスのcap遺伝子及びrep遺伝子は、その自己複製に
よって治療遺伝子(例えば、メガヌクレアーゼ遺伝子)が送達される余地を作ることを防
ぐためにベクターから除去されるため、パッケージング細胞株においてトランスで供給す
る必要がある。更に、複製を支持するために必要な「ヘルパー」(例えば、アデノウイル
ス)成分を提供することが必要である(Cots D,Bosch A,Chillon
M(2013)Curr.Gene Ther.13(5):370-81)。しばし
ば、組換えAAVベクターは、「ヘルパー」成分をコードする第1のプラスミドと、ca
p遺伝子及びrep遺伝子を含む第2のプラスミドと、ウイルスにパッケージングされる
介在DNA配列を含有するウイルスITRを含む第3のプラスミドとで細胞株がトランス
フェクトされる、三重トランスフェクション(triple transfection
)を用いて産生される。キャプシドに包まれたゲノム(目的のITR及び介在遺伝子)を
含むウイルス粒子は、その後、凍結融解サイクル、超音波処理、界面活性剤、又は当該技
術分野で公知の他の手段によって細胞から単離される。次いで、塩化セシウム密度勾配遠
心分離又は親和性クロマトグラフィーを用いて粒子を精製し、続いて細胞、組織、又はヒ
ト患者等の生物の目的の遺伝子に送達する。
【0195】
組換えAAV粒子は、典型的には細胞中に産生(製造)させるため、部位特異的メガヌ
クレアーゼがパッケージング細胞中で発現しないことを確実にするように、本発明を実施
する際に注意を払わなければならない。本発明のウイルスゲノムは、メガヌクレアーゼの
認識配列を含むため、パッケージング細胞株で発現する任意のメガヌクレアーゼは、ウイ
ルスゲノムがウイルス粒子にパッケージングされる前にウイルスゲノムを切断することが
できる。このことは、パッケージング効率の低下及び/又は断片化したゲノムのパッケー
ジングをもたらす。以下を含むいくつかのアプローチを使用して、パッケージング細胞に
おけるメガヌクレアーゼ発現を防止することができる。
1.メガヌクレアーゼを、パッケージング細胞において活性ではない組織特異的プロモ
ーターの制御下に置くことができる。例えば、筋組織にメガヌクレアーゼ遺伝子を送達す
るためにウイルスベクターを開発する場合、筋特異的プロモーターを使用することができ
る。筋特異的プロモーターの例としては、C5-12(Liu et al.(2004
),Hum Gene Ther.15:783-92)、筋特異的クレアチンキナーゼ
(MCK)プロモーター(Yuasa、et al.(2002),Gene Ther
.9:1576-88)、又は平滑筋22(SM22)プロモーター(Haase et
al.(2013),BMC Biotechnol.13:49-54)が挙げられ
る。CNS(ニューロン)特異的プロモーターの例としては、NSE、シナプシン、及び
MeCP2プロモーターが挙げられる(Lentz et al.(2012),Neu
robiol Dis.48:179-88)。肝臓特異的プロモーターの例としては、
アルブミンプロモーター(Palb等)、ヒトα1-抗トリプシン(Pa1AT等)、及
びヘモペキシン(Phpx等)が挙げられる(Kramer et al.(2003)
,Mol.Therapy 7:375-85)。眼特異的プロモーターの例としては、
オプシン、及び角膜上皮特異的K12プロモーターが挙げられる(Martin et
al.(2002),Methods(28):267-75)(Tong et al
.(2007),J Gene Med、9:956-66)。これらのプロモーター又
は当該技術分野で公知の他の組織特異的プロモーターは、HEK-293細胞において高
度に活性ではなく、従って、本発明のウイルスベクターに組み込まれた場合に、パッケー
ジング細胞において有意なレベルのメガヌクレアーゼ遺伝子発現を生じることは期待され
ない。同様に、本発明のウイルスベクターは、不適合組織特異的プロモーター(即ち、周
知のHeLa細胞株(ヒト上皮細胞)及び肝臓特異的ヘモペキシンプロモーターを用いる
)の使用と共に他の細胞株を使用することを企図している。組織特異的プロモーターの他
の例としては、滑膜肉腫PDZD4(小脳)、C6(肝臓)、ASB5(筋肉)、PPP
1R12B(心臓)、SLC5A12(腎臓)、コレステロール調節APOM(肝臓)、
ADPRHL1(心臓)、及び一遺伝子性奇形症候群TP73L(筋肉)が挙げられる(
Jacox E et al.(2010),PLoS One 5(8):e1227
4)。
2.別の方法として、ベクターは、メガヌクレアーゼが発現されにくい異なる種に由来
する細胞にパッケージングすることができる。例えば、ウイルス粒子は、非哺乳動物パッ
ケージング細胞において活性ではない、周知のサイトメガロウイルス初期プロモーター又
はSV40ウイルス初期プロモーター等の哺乳動物プロモーターを用いて、微生物、昆虫
、又は植物細胞中に産生させることができる。好ましい実施形態では、Gaoらによって
記載されているようなバキュロウイルス系を用いてウイルス粒子を昆虫細胞中に産生させ
る(Gao et al.(2007),J.Biotechnol.131(2):1
38-43)。哺乳動物プロモーターの制御下にあるメガヌクレアーゼは、これらの細胞
中で発現する可能性は低い(Airenne et al.(2013),Mol.Th
er.21(4):739-49)。更に、昆虫細胞は、哺乳動物細胞とは異なるmRN
Aスプライシングモチーフを利用する。したがって、ヒト成長ホルモン(HGH)イント
ロン又はSV40ラージT抗原イントロン等の哺乳動物イントロンをメガヌクレアーゼの
コード配列に組み込むことが可能である。これらのイントロンは昆虫細胞のプレmRNA
転写物から効率的にスプライシングされないため、昆虫細胞は機能的メガヌクレアーゼを
発現せず、全長ゲノムをパッケージングする。対照的に、得られた組換えAAV粒子が送
達される哺乳動物細胞は、プレmRNAを適切にスプライシングし、機能的メガヌクレア
ーゼタンパク質を発現する。Haifeng Chenは、HGH及びSV40ラージT
抗原イントロンを使用して、昆虫パッケージング細胞中の毒性タンパク質バルナーゼ及び
ジフテリア毒素断片Aの発現を減弱させ、これらの毒素遺伝子を担持する組換えAAVベ
クターの産生を可能にすることを報告した(Chen(2012),Mol Ther
Nucleic Acids.1(11):e57)。
3.メガヌクレアーゼ遺伝子は、メガヌクレアーゼ発現のために小分子誘導物質が必要
とされるように、誘導性プロモーターに作動可能に連結され得る。誘導性プロモーターの
例としては、Tet-Onシステム(Clontech;Chen et al.(20
15),BMC Biotechnol.15(1):4))及びRheoSwitch
システム(Intrexon;Sowa et al.(2011),Spine 36
(10):E623-8)が挙げられる。両方のシステム及び当該技術分野で公知の類似
のシステムは、小分子アクチベーター(それぞれドキシサイクリン又はエクジソン)に応
答して転写を活性化するリガンド誘導性転写因子(それぞれTetリプレッサー及びエク
ジソン受容体の変異体)に依存する。このようなリガンド誘導性転写アクチベーターを用
いて本発明を実施することは、1)対応する転写因子に応答するプロモーターの制御下に
メガヌクレアーゼ遺伝子を配置することであって、メガヌクレアーゼ遺伝子が(a)転写
因子の結合部位を有することと、2)パッケージングされたウイルスゲノム中の転写因子
をコードする遺伝子を含むこととを含む。転写アクチベーターが同じ細胞にも供給されな
い場合、組換えAAV送達後に標的細胞又は組織中にメガヌクレアーゼが発現しないため
、後者のステップが必要である。次いで、転写アクチベーターは、コグネイト小分子アク
チベーターで処理された細胞又は組織中にのみメガヌクレアーゼ遺伝子発現を誘導する。
このアプローチは、小分子誘導因子がいつ、どの組織に送達されるかを選択することによ
って、メガヌクレアーゼ遺伝子発現を空間時間的に調節することができるため有利である
。しかしながら、担持能力が著しく制限されたウイルスゲノムに誘導因子を含める必要性
は、このアプローチの欠点を作り出す。
4.別の好ましい実施形態では、組換えAAV粒子は、メガヌクレアーゼの発現を妨げ
る転写リプレッサーを発現する哺乳動物細胞株に産生される。転写リプレッサーは当該技
術分野で公知であり、Tetリプレッサー、Lacリプレッサー、Croリプレッサー、
及びLambdaリプレッサーが挙げられる。エクジソン受容体等の多くの核内ホルモン
受容体は、それらのコグネイトのホルモンリガンドの非存在下で転写リプレッサーとして
も作用する。本発明を実施するために、パッケージング細胞は、転写リプレッサーをコー
ドするベクターでトランスフェクション/形質導入され、ウイルスゲノム中のメガヌクレ
アーゼ遺伝子(パッケージングベクター)は、プロモーターに作動可能に結合され、この
プロモーターは、リプレッサーがプロモーターをサイレンシングするように、リプレッサ
ーのための結合部位を含むように改変されている。転写リプレッサーをコードする遺伝子
は、種々の位置に配置することができる。この遺伝子は、別のベクターにコードすること
ができ、ITR配列の外側のパッケージングベクターに組み込むことができ、cap/r
epベクター又はアデノウイルスヘルパーベクターに組み込むことができ、又は最も好ま
しくは、構成的に発現されるようにパッケージング細胞のゲノムに安定的に組み込むこと
ができる。転写リプレッサー部位を組み込むために一般的な哺乳動物プロモーターを改変
する方法は、当該技術分野で公知である。例えば、Chang and Roninso
nは、強力な構成的CMV及びRSVプロモーターをLacリプレッサーのオペレーター
を含むように改変し、改変プロモーターからの遺伝子発現がリプレッサーを発現する細胞
で大きく減弱したことを示した(Chang及びRoninson(1996),Gen
e 183:137-42)。非ヒト転写リプレッサーの使用は、メガヌクレアーゼ遺伝
子の転写が、リプレッサーを発現するパッケージング細胞においてのみ抑制され、得られ
る組換えAAVベクターで形質導入される標的細胞又は組織においては抑制されないこと
を確実にする。
【0196】
2.6 操作されたメガヌクレアーゼ変異体
本発明の実施形態は、本明細書に記載の操作されたメガヌクレアーゼ及びその変異体を
包含する。本発明の更なる実施形態は、本明細書に記載のメガヌクレアーゼをコードする
核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチド及びそのようなポリヌクレオチドの変異体を
包含する。
【0197】
本明細書で使用する場合、「変異体」は、実質的に類似の配列を意味することを意図す
る。「変異体」ポリペプチドは、天然のタンパク質の1若しくは複数の内部部位における
1個若しくは複数個のアミノ酸の欠失若しくは付加、及び/又は天然のポリペプチドの1
若しくは複数の部位における1個以上のアミノ酸の置換によって、「天然の」ポリペプチ
ド由来のポリペプチドを意味することを意図する。本明細書で使用する場合、「天然の」
ポリヌクレオチド又はポリペプチドは、変異体が由来する親配列を含む。実施形態によっ
て包含される変異体ポリペプチドは生物学的に活性である。即ち、それらは天然のタンパ
ク質の所望の生物学的活性、即ち、例えば、PCS7-8認識配列(配列番号4)を含む
、PCSK9遺伝子の認識配列を認識し切断する能力を保持し続けている。そのような変
異体は、例えばヒトの操作から生じ得る。実施形態の天然のポリペプチドの生物学的に活
性な変異体(例えば、配列番号6~14)、又は本明細書に記載のサブユニットを結合す
る認識ハーフサイトの生物学的に活性な変異体は、本明細書の他の箇所に記載されている
配列アライメントプログラム及びパラメータによって決定されるように、天然のポリペプ
チド又は天然のサブユニットのアミノ酸配列に対して少なくとも約40%、約45%、約
50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約
90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約
98%、又は約99%の配列同一性を有する。実施形態のポリペプチド又はサブユニット
の生物学的に活性な変異体は、そのポリペプチド又はサブユニットと、わずか約1~40
個のアミノ酸残基、わずか約1~20個、わずか約1~10個、わずか約5、わずか4、
3、2個、又は更には1個のアミノ酸残基だけが異なっていてもよい。
【0198】
実施形態のポリペプチドは、アミノ酸の置換、欠失、切断、及び挿入を含む様々な方法
で変化させることができる。そのような操作のための方法は、当該技術分野において一般
的に公知である。例えば、アミノ酸配列変異体は、DNA中の突然変異によって調製する
ことができる。突然変異誘発及びポリヌクレオチド変更の方法は、当該技術分野において
周知である。例えば、Kunkel(1985),Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA 82:488-492;Kunkel et al.(1987),Met
hods in Enzymol.154:367-382;米国特許第4,873,1
92号;Walker and Gaastra編(1983)Techniques
in Molecular Biology(MacMillan Publishin
g Company,New York)及びそれらに引用されている参考文献を参照の
こと。目的のタンパク質の生物学的活性に影響を及ぼさない適切なアミノ酸置換に関する
ガイダンスは、参照により本明細書に組み込まれているDayhoff et al.(
1978)Atlas of Protein Sequence and Struc
ture(Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,D
.C.)に記載されているだろう。あるアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸と交
換する等の保存的置換が最適であり得る。
【0199】
いくつかの実施形態では、本発明の操作されたメガヌクレアーゼは、本明細書に開示の
HVR1領域及びHVR2領域の変異を含むことができる。親HVR領域は、例えば例示
された操作されたメガヌクレアーゼの残基24~79又は残基215~270を含むこと
ができる。従って、変異HVR領域が操作されたメガヌクレアーゼの生物活性(即ち、認
識配列に結合し切断する)を維持するように、本明細書で例示された操作されたメガヌク
レアーゼの残基24~79又は残基215~270に対応するアミノ酸配列に対して少な
くとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上
の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。更に、本発明のいくつかの実施
形態では、変異HVR1領域又は変異HVR2領域は、親HVR内の特定の位置で見出さ
れるアミノ酸残に対応する残基を含むことができる。本文脈中、「対応する」とは、変異
HVRのアミノ酸残基が、同じ相対位置で(即ち、親配列の残りのアミノ酸に対して)親
HVR配列中に存在する同じアミノ酸残基(即ち、別個の同一残基)であることを意味す
る。例として、親HVR配列が位置26にセリン残基を含む場合、残基26「に対応する
残基を含む」変異HVRは、親位置26に相対的な位置にもセリンを含む。
【0200】
野生型I-CreIメガヌクレアーゼのDNA認識ドメインに対するかなりの数のアミ
ノ酸修飾が以前に同定されており(例えば、米国特許第8,021,867号)、これは
単独で又は組み合わせて、DNA認識配列ハーフサイト内の個々の塩基において特異性が
変更された組換えメガヌクレアーゼを生じることで、得られる合理的に設計されたメガヌ
クレアーゼは、野生型酵素とは異なるハーフサイト特異性を有するようになる。表2は、
認識ハーフサイトの各ハーフサイト位置(-1~-9)に存在する塩基に基づいて、特異
性を増強するために操作されたメガヌクレアーゼモノマー又はサブユニットにてなされ得
る潜在的置換を提供する。
【0201】
【表2】
【0202】
太字の項目は野生型の接触残基であり、本明細書で使用される「改変」を構成しない。
星印は、残基がアンチセンス鎖上の塩基と接触することを示す。
【0203】
ポリヌクレオチドについて、「変異体」は、天然のポリヌクレオチド内の1又は複数の
部位で1又は複数のヌクレオチドの欠失及び/又は付加を含む。当業者は、実施形態の核
酸の変異体が、オープンリーディングフレームが維持されるように構築されることを認識
するであろう。ポリヌクレオチドの場合、保存的変異体には、遺伝コードの縮重故に、実
施形態のポリペプチドの1つのアミノ酸配列をコードする配列が含まれる。変異体ポリヌ
クレオチドとしては、例えば、部位特異的突然変異誘発を用いて生成されるが、実施形態
の操作されたメガヌクレアーゼを依然としてコードするような、合成由来のポリヌクレオ
チドが挙げられる。一般に、実施形態の特定のポリヌクレオチドの変異体は、本明細書の
他の箇所に記載されている配列アライメントプログラム及びパラメータによって決定され
るように、その特定のポリペプチドに対して少なくとも約40%、約45%、約50%、
約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、
約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、
約99%、又はそれ以上の配列同一性を有する。実施形態の特定のポリヌクレオチドの変
異体(即ち、参照ポリヌクレオチド)は、変異体ポリヌクレオチドによってコードされる
ポリペプチドと参照ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドとの間の配列同
一性割合を比較することによって評価することもできる。
【0204】
本明細書に包含されるタンパク質配列の欠失、挿入、及び置換は、ポリペプチドの特徴
において根本的な変化を生じることは期待されない。しかし、置換、欠失、又は挿入の正
確な効果をそれに先立って予測することが困難な場合、当業者は、ヒトPCSK9遺伝子
内の認識配列を優先的に認識し切断する能力についてポリペプチドをスクリーニングする
ことによって、その効果が評価されることを理解するであろう。
【実施例0205】
本発明を以下の実施例によって更に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するも
のと解釈されるべきではない。当業者であれば、日常的な実験を用いて、本明細書に記載
の特定の物質及び手順に対する多数の等価物を認識し、又は確認することができるであろ
う。そのような等価物は、以下の実施例に従う特許請求の範囲に包含されることが意図さ
れる。
【0206】
実施例1
PCSK9認識配列を認識し切断するメガヌクレアーゼの特性評価
1.PCS7-8認識配列を認識し切断するメガヌクレアーゼ
本明細書で「PCS7-8メガヌクレアーゼ」と集合的に呼ばれる操作されたメガヌク
レアーゼ(配列番号6~14)は、PCS1-2認識配列(配列番号4)を認識し切断す
るように操作され、PCS1-2認識配列(配列番号4)は、PCSK9遺伝子内に位置
する。操作されたPCS7-8メガヌクレアーゼの各々は、SV40に由来するN末端ヌ
クレアーゼ局在化シグナルと、第1のメガヌクレアーゼサブユニットと、リンカー配列と
、第2のメガヌクレアーゼサブユニットとを含む。各PCS7-8メガヌクレアーゼの第
1のサブユニットは配列番号4のPCS7認識ハーフサイトに結合し、第2のサブユニッ
トはPCS8認識ハーフサイトに結合する(図2参照)。
【0207】
PCS7結合サブユニット及びPCS8結合サブユニットは、それぞれHVR1及びH
VR2と呼ばれる56塩基対の超可変領域を含む。PCS7結合サブユニットは、HVR
1領域の外側で高度に保存されている。同様に、PCS8結合サブユニットも、HVR2
領域の外側で高度に保存されている。配列番号6~14のPCS7結合領域は、それぞれ
配列番号15~23として提供される。配列番号15~23の各々は、メガヌクレアーゼ
PCS7-8L.197(配列番号6)のPCS7結合領域である配列番号15と少なく
とも90%の配列同一性を共有する。配列番号6~14のPCS8結合領域は、それぞれ
配列番号24~32として提供される。配列番号24~32の各々は、メガヌクレアーゼ
PCS7-8L.197(配列番号6)のPCS8結合領域である配列番号24と少なく
とも90%の配列同一性を共有する。
【0208】
2.CHO細胞レポーターアッセイにおけるPCSK9認識配列の切断
PCS7-8メガヌクレアーゼがその対応する認識配列(配列番号4)を認識し切断で
きるかどうかを決定するために、先に記載されたCHO細胞レポーターアッセイを用いて
各操作されたメガヌクレアーゼを評価した(国際公開第2012/167192号及び図
3を参照)。アッセイを行うために、細胞のゲノムに組み込まれた非機能的緑色蛍光タン
パク質(GFP)遺伝子発現カセットを担持するCHO細胞レポーター株を産生させた。
各細胞株のGFP遺伝子は、メガヌクレアーゼによるいずれかの認識配列の細胞内切断が
機能的GFP遺伝子をもたらす相同組換え事象を刺激するように、一対の認識配列によっ
て割り込まれた。
【0209】
この研究のために開発したCHOレポーター細胞株において、GFP遺伝子に挿入され
た1つの認識配列は、PCS7-8認識配列(配列番号4)であった。GFP遺伝子に挿
入された第2の認識配列は、「CHO-23/24」と呼ばれる対照メガヌクレアーゼに
よって認識され切断されるCHO-23/24認識配列であった。PCS7-8認識配列
及びCHO-23/24認識配列を含むCHOレポーター細胞を「PCS7-8細胞」と
呼ぶ。
【0210】
CHOレポーター細胞を、その対応する操作されたメガヌクレアーゼをコードするプラ
スミドDNAでトランスフェクトするか(例えば、PCS7-8細胞を、PCS7-8メ
ガヌクレアーゼをコードするプラスミドDNAでトランスフェクトした)、又はCHO-
23/34メガヌクレアーゼをコードするプラスミドでトランスフェクトした。各アッセ
イにおいて、4e CHOレポーター細胞を、製造者の指示に従ってLipofect
amine 2000(ThermoFisher)を用いて96ウェルプレートにて5
0ngのプラスミドDNAでトランスフェクトした。トランスフェクションの48時間後
、細胞をフローサイトメトリーによって評価し、トランスフェクトされていない陰性対照
(PCS bs)と比較したGFP陽性細胞の割合を決定した。図4A図4Cに示すよ
うに、全PCS7-8メガヌクレアーゼは、対応する認識配列を含む細胞株において陰性
対照を有意に超える頻度でGFP陽性細胞を産生することが見出された。
【0211】
CHOレポーター細胞にメガヌクレアーゼを導入した後、PCS7-8メガヌクレアー
ゼの有効性も時間依存的に測定した。この研究では、製造者の指示に従ってBioRad
Gene Pulser Xcellを使用して、PCS7-8細胞(1.0×10
個)に、細胞ごとに1×10コピーのメガヌクレアーゼmRNAをエレクトロポレーシ
ョンした。トランスフェクション後の指定された時点で、細胞をフローサイトメトリーに
よって評価し、GFP陽性細胞の割合を決定した。CHO-23/24メガヌクレアーゼ
も、陽性対照として各時点で含めた。
【0212】
図5A図5Cに示すように、異なるPCS7-8メガヌクレアーゼによって産生され
た%GFPは、各研究の時間経過にわたって比較的一貫しており、細胞における持続的な
切断活性及び実質的な毒性の欠如を示している。
【0213】
3.結論
これらの研究は、本発明に包含されるPCS7-8メガヌクレアーゼが、細胞中の対応
する認識配列を効率的に標的とし切断できることと、この効果は時間経過にわたって一貫
していることと、ヌクレアーゼは細胞に対して非毒性であることとを実証した。
【0214】
実施例2
HEK293細胞におけるPCS7-8認識配列の切断
1.実験プロトコル及びT7Eアッセイ
この研究は、本発明に包含されるPCS7-8メガヌクレアーゼがHEK293細胞に
おけるPCS7-8認識配列を切断できることを実証した。
【0215】
2e 293細胞に、製造者の指示に従ってBioRad Gene Pulser
Xcellを使用して、2.7ugの所与のPCSメガヌクレアーゼmRNAをエレク
トロポレーションした。トランスフェクションの2日後及び5日後に、ゲノムDNA(g
DNA)を細胞から回収し、T7エンドヌクレアーゼI(T7E)アッセイを行って内因
性PCS7-8認識配列における遺伝子改変を評価した(図6)。T7Eアッセイでは、
PCS7-8座は、PCS7-8認識配列に隣接するプライマーを用いたPCRによって
増幅された。PCS7-8座内にindel(無秩序な挿入又は欠失)があった場合、得
られるPCR産物は野生型対立遺伝子及び突然変異対立遺伝子の混合物からなる。PCR
産物は変性され、ゆっくりとリアニールされ得る。ゆっくりとしたリアニールにより、野
生型及び突然変異対立遺伝子からなるヘテロ二本鎖が形成され、ミスマッチ塩基及び/又
はバルジが生じる。T7E1酵素はミスマッチ部位で切断され、ゲル電気泳動により可視
化され得る切断産物が生じる。
【0216】
2.結果
トランスフェクションの2日後及び5日後に、低分子量DNA断片がPCS7-8x.
66及びPCS7-8x.88を受け取った細胞で観察されたが、GFP対照のみをコー
ドするmRNAで模擬トランスフェクト又はトランスフェクトされた細胞は、全長PCR
産物を示した(図6)。これらの低分子量DNA断片は、PCS認識部位でのメガヌクレ
アーゼの活性により起こるミスマッチDNAにおけるT7エンドヌクレアーゼI切断によ
って産生される。
【0217】
3.結論
T7エンドヌクレアーゼIアッセイは、PCS7-8メガヌクレアーゼで処理されたH
EK293細胞内のPCS7-8メガヌクレアーゼ認識部位周辺におけるindelの存
在を検出し、標的部位の切断及び非相同末端結合(NHEJ)により当該部位の誤りがち
な修復を示す。
【0218】
実施例3
PCS7-8認識配列におけるindelを観察するためのディープシーケンシング
1.ディープシーケンシングプロトコル
目的のPCS7-8メガヌクレアーゼ標的部位における挿入又は欠失を直接観察するた
めに、ディープシーケンシングプロトコルを用いた。2e HEK293細胞に、製造
者の指示に従ってBioRad Gene Pulser Xcellを使用して、5u
gのPCS7-8メガヌクレアーゼmRNAをエレクトロポレーションした。模擬エレク
トロポレーションはmRNAなしでも行った。トランスフェクションの48時間後、ゲノ
ムDNA(gDNA)を細胞から回収した。PCS7-8座は、PCS7-8認識配列に
隣接するプライマーを用いたPCRによって増幅された。このアンプリコンは、目視によ
る確認のためにアガロースゲルで行い、Macherey-Nagel社製Nucleo
spin Gel and PCR Clean-upキットを用いて抽出し、New
England Biolabs社製のIllumina用NEBNext Ultra
II DNA Library Kitを使用してシーケンシングライブラリーを調製
した。ペアエンドシーケンシングライブラリーは、Illumina社製Miseq D
NAシーケンサで読み取った。シーケンスシングデータはカスタムスクリプトを用いて分
析した。全長アンプリコンの25bp内にない始点又は終点を含むリードは除いた。in
delを含むリードの割合は、認識配列の中間8bpのうちの少なくとも1つを組み込ん
だindelを持つ全長リードの数を全長リードの総数で除して計算した。
【0219】
2.結果
表3に示すように、ディープシーケンシングにより評価されたPCS7-8メガヌクレ
アーゼの各々は、模擬処理と比較して、その目的の認識部位におけるindelの割合の
少なくとも100倍の増加を示した。
【0220】
【表3】
【0221】
3.結論
これらの実験は、本発明のPCS7-8メガヌクレアーゼがHEK293細胞内のその
目的とする標的部位(即ち、PCS7-8認識配列)を切断し、非相同末端結合による誤
りがちな修復を介したindelの出現を誘導する能力をはっきりと実証している。
【0222】
実施例4
PCS7-8メガヌクレアーゼを用いた霊長類肝臓のインビボ遺伝子編集
1.方法及び材料
実験を行って、PCS7-8メガヌクレアーゼが非ヒト霊長類モデルの肝臓細胞をイン
ビボでPCS7-8認識部位編集する能力を評価し、被験体のPCSK9の血清レベルに
対するそのような編集の効果を決定した。
【0223】
PCS7-8x.88メガヌクレアーゼは組換えAAVベクターを介して導入された。
AAVベクターはAAV8キャプシドを有し、5’から3’へ、5’逆方向末端反復、肝
臓特異的ヒトチロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、イントロン、PCS7
-8x.88メガヌクレアーゼのコード配列、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転
写後調節エレメント、及び3’逆方向末端反復を含んでいた。このベクターをAAV8.
TBG.PI.PCS7-8x.88.WPRE.bGHと呼ぶ。
【0224】
AAVベクターは、医薬組成物で調製され、0日目に各々の体重が約6.5kgの4匹
の異なるアカゲザルに単回注入として投与した。動物(オス)RA1866は、3×10
13GC/kgの単回用量を受けたが、これはこれらの研究において評価される最高用量
を表す。動物RA1857(オス)は、6×1012ゲノムコピー(GC)/kgの単回
用量を受けた。動物RA1829(メス)動物RA2334(オス)はそれぞれ、2×1
12ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量を受けた。血液サンプルは、ELISAに
よる血清PCSK9タンパク質レベルの分析、総コレステロール、HDL、LDL、及び
トリグリセリドの分析、並びにアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)レベルの分
析のために、-3日目及び0日目、並びに投与後168日間(低用量動物)又は280日
間(高用量及び中用量動物)の間に複数の時点で採取した。加えて、PCS7-8認識配
列における挿入及び欠失(indel)のPCR分析、並びにインサイチューハイブリッ
ド形成(ISH)による肝細胞におけるPCS7-8x.88メガヌクレアーゼ発現の分
析のために、肝生検サンプルを投与後17日目に得た。
【0225】
2.血清PCSK9タンパク質レベルの変化
血清PCSK9タンパク質レベルは、-3日目、0日目、及びAAVベクターの投与後
の複数の時点にてELISAにより測定した。高用量及び中用量動物は、投与後280日
間追跡調査したが、低用量動物は168日間追跡調査された。
【0226】
図7に示すように、0日目でのメガヌクレアーゼAAVの単回投与は、7日目までに被
験体RA1866、RA1857、及びRA1829において、14日目までには全群に
おいて血清PCSK9レベルの劇的な用量依存性の増加を引き起こした。高用量の3×1
13GC/kgを受けた被験体RA1866は、7日目までに約84%の減少、20日
目までには約91%の減少を示した。6×1012GC/kgの用量を受けた被験体RA
1857は、7日目までに約46%の減少、20日目までには約77%の減少を示した。
2×1012GC/kgを受けた被験体RA1829は、7日目までに約35%の減少、
20日目までには約70%の減少を示した。更に2×1012GC/kgを受けた被験体
RA2334は、14日目までに約35%の減少を示したが、20日目までにはベースラ
イン付近へ戻り、ここでは約10%の減少が観察された。
【0227】
更なる時点を評価して、研究の全期間を通じてタンパク質阻害の一貫性を評価した。血
清PCSK9レベルの用量依存性の減少は、測定した最終時点を通じて引き続き観察され
た。両方の低用量動物(RA1829及びRA2334)において、約25%の減少が1
68日目にも引き続き観察された。中用量動物(RA1857)において、約50%の減
少が280日目にも引き続き観察された。高用量動物(RA1866)において、約85
%の減少が280日目にも引き続き観察された。全体的に見て、観察期間を通じた血清P
CSK9レベルの減少は用量依存性であると思われ、減少は各被験体について研究終了ま
で持続した。
【0228】
3.血清コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベ
ルの変化
血清コレステロールレベル、LDLレベル、HDLレベル、及びトリグリセリドレベル
に対するPCS7-8メガヌクレアーゼ治療の効果は、-3日目、0日目、及びAAVベ
クターの投与後の複数の時点にも測定した。
【0229】
重要なことには、総LDLレベルは、PCS7-8メガヌクレアーゼを用いた治療によ
り全4匹の動物において減少した(図8A)。全4匹の動物は、20日目までに血清LD
Lのかなりの減少を示し、減少は用量依存的に研究の期間全体を通じて持続した。動物R
A2334は、168日目まで約25%の減少を示し、もう一方の低用量動物RA182
9は同じ時点で約35%のより大きな減少を示した。動物RA1857(中用量)及びR
A1866(高用量)はそれぞれ、研究268日目に測定したときに約70%の減少を示
した。
【0230】
とりわけ、LDLレベルの一時的な増加が各動物において研究28日目及び42日目に
観察された。これは、同じ時点で観察されたALTレベルの変化と一致し(図9)、メガ
ヌクレアーゼ又はベクターキャプシドに対するT細胞の活性から生じたものであり得る。
【0231】
図8B図8Eにおいて、各動物についての研究期間中の総コレステロール、HDL、
LDL、及びトリグリセリドの変化を示す。示されているように、総コレステロールレベ
ルは、高用量動物(RA1866)及び中用量動物(RA1857)では明らかに減少し
たが、低用量動物ではより穏やかな効果が観察された。HDLも高用量の動物ではいくら
か減少したが、他の3匹においては比較的安定している。各動物についてトリグリセリド
レベルの一時的な変化が研究期間中に観察されたが、測定した最後の時点ではほぼベース
ラインレベルのままであった。
【0232】
4.メガヌクレアーゼ発現及び肝細胞のインビボ遺伝子編集
17日目に肝生検を行い、PCS7-8認識配列における挿入又は欠失(indel)
の存在について検査した。indelは、認識配列に隣接するPCRプライマー、ゲノム
の介在領域の増幅、及び得られたPCR産物のシーケンシングにより検出した。種々のi
ndel、即ち、異なった長さの挿入及び欠失の両方がPCS7-8認識配列にて種々の
頻度で検出された。図10は、被験体RA1857及びRA1866において最も頻繁に
観察された8つのindelとその対応する頻度を示す。これら8つのindelは、被
験体RA1857で観察されるindelの73%、被験体RA1866で観察されるi
ndelの66%を占めていた。
【0233】
PCS7-8x.88メガヌクレアーゼは肝細胞にてインビボで実際に発現されたかを
確認するために、17日目及び129日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッ
ド形成(ISH)で検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検し
た肝細胞中のPCS7-8x.88 mRNAに結合する。対照として別の被験体M11
657由来の生検細胞の模擬処理をオリゴプローブなしで行った。図11に示すように、
模擬処理細胞では蛍光シグナルは観察されなかった(図11A)。しかし、治療済みの被
験体の肝細胞(図11B図11E)では17日目にかなりの蛍光が観察された。従って
、PCS7-8x.88メガヌクレアーゼmRNAは、indel形成が観察され、血清
PCSK9及び血清脂質の減少が検出された早い時点で治療済みの被験体においては強く
発現されたことが明らかである。図11は、メガヌクレアーゼmRNAの発現が、2回目
の肝生検材料を得た研究の129日目では観察されなくなったことを更に示す。
【0234】
5.PCS7-8L.197メガヌクレアーゼを用いた治療
更なる研究を行って、最適化された第2世代PCS7-8L.197メガヌクレアーゼ
の有効性を決定した。研究プロトコルは前述したものと同様であった。PCS7-8L.
197メガヌクレアーゼは組換えAAVベクターを介して導入された。AAVベクターは
AAV8キャプシドを有し、5’から3’へ、5’逆方向末端反復、肝臓特異的ヒトチロ
キシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、イントロン、PCS7-8L.197メ
ガヌクレアーゼのコード配列、ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP)転写後調節エレメ
ント、及び3’逆方向末端反復を含んでいた。AAVベクターは、医薬組成物で調製され
、0日目に各々の体重が約6.5kgの1匹のオスと1匹のメスのアカゲザルに6×10
12ゲノムコピー(GC)/kgの単回用量で単回注入として投与した。初期の血液サン
プルは、ELISAによる血清PCSK9タンパク質レベルの分析及び総LDLレベルの
分析のために、0日目及び投与後7日目に採取した。
【0235】
図12に示すように、PCSK9血清レベルは、研究7日目までに両被験体において急
速かつ劇的に減少した。被験体RA2125では、PCSK9レベルは0日目の約180
ng/mLから7日目の約55ng/mLに減少した(約70%の減少)。被験体RA2
343では、PCSK9レベルは0日目の約245ng/mLから7日目の約125ng
/mLに減少した(約49%の減少)。PCSK9レベルの減少は、メガヌクレアーゼA
AVの投与後182日目まで持続し、各被験体は約60%の減少を示し続けた。
【0236】
図13Aは、血清PCSK9レベルの減少が、治療の7日以内に血清LDLレベルのか
なり減少を伴ったことを示す。被験体RA2125では、血清LDLレベルは、0日目の
約40mg/dLから7日目の約25mg/dLに減少した(約38%の減少)。被験体
RA2343では、血清LDLレベルは0日目の約75mg/dLから7日目の約55m
g/dLに減少した(約27%の減少)。血清LDLレベルは引き続き21日目から28
日目まで減少し続け、ベースラインと比較して約65%減少した。血清LDLの減少は、
研究168日目まで持続し、その時点では被験体RA2125及びRA2343はそれぞ
れ約35%及び50%の大幅に安定した減少を示した。
【0237】
図13B及び図13Cにおいて、各動物についての研究期間中の総コレステロール、H
DL、LDL、及びトリグリセリドの変化を示す。示されているように、総コレステロー
ルレベルは、各被験体において研究期間を通じて穏やかに減少したが、被験体RA234
3ではより穏やかな減少であった。HDLレベル及びトリグリセリドレベルは、各被験体
において研究期間を通じて本質的に変化していない。PCS7-8x.88 AAVの投
与と同様に、28日目から42日目までの間に被験体RA2125では血清脂質の一時的
な増加が観察され、これはALTの上昇と一致し(図14)、メガヌクレアーゼ又はAA
Vキャプシドに応答したT細胞活性化に起因し得る。
【0238】
PCS7-8L.197メガヌクレアーゼが肝細胞にてインビボで発現されたことを確
認するために、18日目及び129日目で得た肝生検材料をインサイチューハイブリッド
形成(ISH)で検査した。蛍光標識オリゴプローブを設計し、各被験体由来の生検した
肝細胞中のPCS7-8L.197 mRNAに結合する。図15に示すように、治療済
みの被験体の肝細胞では18日目にかなりの蛍光が観察された。従って、PCS7-8L
.197メガヌクレアーゼmRNAは、血清PCSK9及び血清脂質の減少が検出された
早い時点で治療済みの被験体において強く発現されたことが明らかである。図15は、メ
ガヌクレアーゼmRNAの発現が、2回目の肝生検材料を得た研究の128日目では観察
されなくなったことを更に示す。
【0239】
6.オンターゲットゲノム編集の分子評価
肝生検サンプルから単離したDNAを、アンカードマルチプレックスPCRシーケンシ
ング(AMP-seq)により生じたアンプリコンのディープシーケンシングによる指定
したrhPCSK9エキソン7標的部位でのオンターゲット編集のために特性決定した。
AMPアンプリコンは、入れ子状の遺伝子座特異的プライマーを用いて産生されるが、フ
ォワードプライマーは、標的とされるメガヌクレアーゼ切断部位の50bp上流の固定位
置にハイブリダイズし、アンプリコンの3’末端は、増幅前のゲノムDNAのランダムシ
ェアリング後にDNA断片の長さによって画定される。
【0240】
全ての肝臓サンプルにおいて、AMPシーケンシングによって観察される短い挿入及び
欠失の頻度は、陰性対照(即ち、ナイーブ動物由来のPBMCサンプル)で観察されるよ
りも高いことが見出された(図16)。PCS7-8x.88メガヌクレアーゼについて
は、129日目にAMP-seqによって検出されたindelの頻度は、高用量で46
%であり、低用量では用量に比例して13%(平均、n=2)に減少した。AAV8血清
型及びTBGプロモーターの使用により初代肝実質細胞のみが選択的に編集されることを
考慮すると、AMP-seqは、未編集の混入非実質細胞が肝生検サンプル中に存在する
ため、オンターゲットゲノム編集の合計頻度を少なく見積もりすぎる可能性が高い。編集
事象の総数は、2つの時点(即ち、17日目及び129日目)の間で、増加した高用量を
除いて全ての動物で僅かに減少した。挿入の総数は各サンプルの欠失の総数を超えたが、
時間の経過に応じて程度は変化した。欠失の頻度は、高用量動物と中用量動物の両方で経
時的に増加し、低用量動物では経時的に減少することが判明したが、分析される各サンプ
ルについて、挿入は経時的に一貫して減少した。PCS7-8L.197 AAVで治療
された被験体から得たサンプルの同様のオンターゲット分子分析は、中用量のAAVを受
けた被験体RA1857で観察されたようなindelのスペクトル及び頻度を示した。
【0241】
7.結論
これらの研究から、ISHで観察されるように、PCS7-8メガヌクレアーゼは霊長
類肝細胞においてインビボで首尾良く発現され、その後、PCS7-8認識配列に切断部
位を生ずることが明らかになった。切断部位における誤りがちな非相同末端結合は、その
後、当該部位のPCR分析及びAMP-seq分析で観察されるように多数のindel
を生じさせ、これにより、ELISAで観察されるようにPCSK9タンパク質発現を阻
害する。これらの研究は、本発明者らに公知の霊長類肝臓における遺伝子編集の最初の報
告された観察である。更に、これは霊長類におけるPCSK9遺伝子の遺伝子編集の最初
の観察であり、これは血清PCSK9タンパク質レベル、血清LDLレベル、及び総コレ
ステロールレベルのかなりの持続的な減少を伴った。本発明者らは、これらの実験で投与
されたAAVの用量が比較的多いことを認め、有効性及び安全性プロファイルの両方を決
定するために、追加のPCS7-8メガヌクレアーゼを用いた更なる実験を大幅に少ない
用量で実施する。総コレステロールレベル、血清LDLレベル、及び肝細胞LDLレベル
の更なる分析も、コレステロールを減少させるこの方法の前臨床検証のために実施する。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
【配列表】
2023058509000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のサブユニット及び第2のサブユニットを含み、
前記第1のサブユニットは、前記認識配列の第1の認識ハーフサイトに結合し、前記第1のサブユニットは、
(a)配列番号6~14のいずれか1つの残基7~153に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、
(b)第1の超可変(HVR1)領域と
を含み、
前記第2のサブユニットは、前記認識配列の第2の認識ハーフサイトに結合し、前記第2のサブユニットは、
(i)配列番号6~14のいずれか1つの残基198~344に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、
(ii)第2の超可変(HVR2)領域と
を含む、配列番号4を含む認識配列を認識し切断する操作されたメガヌクレアーゼ。
【外国語明細書】