IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジーシーの特許一覧

特開2023-58538歯科補綴物用ブロック体の製造方法、歯科補綴物の製造方法
<>
  • 特開-歯科補綴物用ブロック体の製造方法、歯科補綴物の製造方法 図1
  • 特開-歯科補綴物用ブロック体の製造方法、歯科補綴物の製造方法 図2
  • 特開-歯科補綴物用ブロック体の製造方法、歯科補綴物の製造方法 図3
  • 特開-歯科補綴物用ブロック体の製造方法、歯科補綴物の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058538
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】歯科補綴物用ブロック体の製造方法、歯科補綴物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/77 20170101AFI20230418BHJP
   A61K 6/836 20200101ALI20230418BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20230418BHJP
   C03C 10/04 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61C5/77
A61K6/836
C03B32/02
C03C10/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023010814
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2020503333の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2019069330
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 克人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械加工性が良好な歯科補綴物用ブロック体の製造方法を提供する。
【解決手段】歯科補綴物とするための機械加工をする前のブロック体を製造する方法は、メタケイ酸リチウム結晶の生成温度未満のガラスブランクを、二ケイ酸リチウム結晶の生成温度以上融点未満の雰囲気に晒して主とする結晶相が二ケイ酸リチウムになるように加熱する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科補綴物とするための機械加工をする前のブロック体を製造する方法であって、
メタケイ酸リチウム結晶の生成温度未満のガラスブランクを、二ケイ酸リチウム結晶の生成温度以上融点未満の雰囲気に晒して主とする結晶相が二ケイ酸リチウムになるように加熱する工程を含む、歯科補綴物用ブロック体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は歯科補綴物用ブロック体の製造方法、及び歯科補綴物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCAD/CAM(コンピュータ支援設計/コンピュータ支援製造)技術の発達により、歯科補綴物の作製において、設計した歯科補綴物の形状を所定の形式に変換したデジタルデータで取り扱い、当該データを加工装置に送信することにより、加工装置は当該データに基づいて自動的に切削や研削等の機械加工を行って歯科補綴物を作製する。これにより迅速に歯科補綴物を提供することが可能となっている。
【0003】
このような歯科補綴物は、歯科補綴物としての基本機能である強度、硬さ、口腔内環境に対する化学的耐久性、及び天然歯と同様の審美性(色合い、質感)を有していることが求められている。
これに加えて歯科補綴物は複雑な凹凸を有しており、複雑な形状を例えばチッピング等の不具合を生じることなく短時間で機械加工することも重要である。このような短時間で加工できる材料とすることにより、さらに迅速な歯科補綴物の作製が可能となる。
【0004】
特許文献1には、所定の成分を含む歯科補綴物用材料が開示され、これにより上記基本機能及び切削性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開番号 WO2016/031399
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、機械加工性が良好な歯科補綴物用ブロック体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの態様は、歯科補綴物とするための機械加工をする前のブロック体を製造する方法であって、メタケイ酸リチウム結晶の生成温度未満のガラスブランクを、二ケイ酸リチウム結晶の生成温度以上融点未満の雰囲気に晒して主とする結晶相が二ケイ酸リチウムになるように加熱する工程を含む、歯科補綴物用ブロック体の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、機械加工性が良好な歯科補綴物用ブロック体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は歯科補綴物用ブロック体10の外観斜視図である。
図2図2は切断面の一部を拡大して結晶が見えるように表した図である。
図3図3は比率の測定の方法を説明する図である。
図4図4は比率の測定の方法を説明する他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、具体的な形態例を説明する。ただし本発明はこれら形態に限定されるものではない。
【0011】
初めに、1つの形態にかかる歯科補綴物用ブロック体の製造方法により作製される歯科補綴物用ブロック体について説明する。この歯科補綴物用ブロック体(以下、「ブロック体」と記載することがある。)は、角柱、円柱、又は、板状(ディスク状)であり、ここから切削や研削等の機械加工により変形や削り出しをして歯科補綴物とする。その中でも切削により歯科補綴物を作製する場合には角柱又は板状(ディスク状)とすることができる。角柱のブロック体は主に単品の歯科補綴物を削り出すために用いられることが多く、板状のブロック体は、1つのブロック体から複数の歯科補綴物を削り出すために用いられることがある。
【0012】
図1には角柱であるブロック体10の外観斜視図を表した。角柱の場合には、幅W、奥行きD、高さHのそれぞれが10mm以上35mm以下の範囲とすることができる。一方、板状のブロック体の場合には厚さが10mm以上35mm以下の範囲となるように構成することができる。
これにより、切削加工で歯科補綴物を作製しやすいブロック体となる。
【0013】
本形態に係るブロック体を作製するため、その材料は次の成分を含んで構成することができる。
SiOを60質量%以上80質量%以下、
LiOを10質量%以上20質量%以下、
Alを3質量%以上15質量%以下。
【0014】
上記各成分については次の通りである。
SiOの含有量が60質量%未満、又は80質量%を超えると、均質なブロック体を得ることが困難となる。より好ましくは65質量%以上75質量%以下である。
LiOの含有量が10質量%未満、又は20質量%を超えると、均質なブロック体を得ることが困難となるとともに、機械加工性が低下する傾向がある。より好ましくは12質量%以上18質量%以下である。
Alの含有量が3質量%未満であると、二ケイ酸リチウムが主とする結晶相として析出するが、機械加工性が低下する傾向がある。一方、15質量%を超えると、主とする結晶相が二ケイ酸リチウムでなくなり、強度が低下する傾向がある。より好ましくは3質量%以上7質量%以下である。
【0015】
さらに、歯科補綴物用ブロック体は、上記成分に加えて次の成分を含んでいてもよい。ただしここに表される成分は0質量%を含んでいることからもわかるように、必ずしも含まれている必要はなく、いずれかが含まれてもよいという意味である。
【0016】
溶融温度を調整するための成分を0質量%以上15質量%以下で含有させることができる。これにより後述する製造において溶融温度を適切なものとすることが可能となる。それぞれについて15質量%より多く含有させてもよいが、その効果の向上は限定的である。溶融温度を調整する成分のための材料(溶融温度調整材)として具体的には、Na、K、Ca、Sr、Ba、Mg、Rb、Cs、Fr、Be、Raの酸化物を挙げることができる。さらに好ましくは次の通りである。
NaO:2.8質量%以下
O:10質量%以下
CaO:3質量%以下
SrO:10質量%以下
BaO:10質量%以下
MgO:3質量%以下
RbO:2.8質量%以下
CsO:2.8質量%以下
FrO:2.8質量%以下
BeO:3質量%以下
RaO:10質量%以下
【0017】
また、結晶核を形成するための成分を合計で0質量%以上10質量%以下の範囲で含有させることができる。これにより二ケイ酸リチウム結晶を形成する核が効率よく生成される。ただし、これより多くの当該化合物を含有させても効果の向上は限定的であるため10質量%以下とした。ここで結晶核を形成するための成分のための材料(結晶核形成材)として機能する化合物としてはZr、P、Tiの酸化物(ZrO、P、TiO)を挙げることができる。その際には、ZrO、P、及びTiOから選ばれる少なくとも1つが含まれ、その合計が0質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
【0018】
ブロック体のための材料には、審美性を高める観点から、さらに公知の着色材を含めてもよい。これには例えばV、CeO、Er、MnO、Fe、Tbから選ばれる少なくとも1つを挙げることができる。
【0019】
次に、歯科補綴物を作製する方法の形態について説明する。ここには歯科補綴物用ブロック体を作製する方法の形態が含まれる。本形態の作製方法は、溶融工程、ガラスブランク作製工程、熱処理工程、及び加工工程を備えて構成されている。
【0020】
溶融工程は、上記説明した各成分を1100℃以上1600℃以下にて溶融する。これにより歯科補綴物用ブロック体のための溶融ガラスを得ることができる。この溶融は十分に均一な性質を得るために数時間にわたって行われることが好ましい。
【0021】
ガラスブランク作製工程は、歯科補綴物用ブロック体の形状に近い形状を有するガラスブランクを得る工程である。溶融工程で得た溶融ガラスを型に流し込み、メタケイ酸リチウム結晶の生成温度未満、好ましくは400℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは室温にまで冷却することによりガラスブランクが得られる。材料の変質や割れを防止するため当該冷却はゆっくりとした温度変化により行われる。
【0022】
熱処理工程は、ガラスブランク作製工程で得られたガラスブランクを二ケイ酸リチウム結晶の生成温度以上融点未満、より好ましくは750℃以上900℃以下の範囲内の温度にて加熱する工程である。
この工程では急加熱をすることがよいため、ガラスブランク製造工程にてメタケイ酸リチウム結晶の生成温度未満、好ましくは400℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは室温にまで冷却されたガラスブランクを、二ケイ酸リチウム結晶の生成温度以上融点未満、より好ましくは、750℃以上900℃以下の範囲の雰囲気に晒すために、例えば炉等の加熱装置に入れることにより加熱を行う。加熱時間はガラスブランク内の主とする結晶相が二ケイ酸リチウムとなるまでである。従って限定されることはないが、20分以上とすることができる。当該時間の上限は特に限定されることはないが、6時間以下とすることができる。
温度が二ケイ酸リチウム結晶の生成温度に満たないと、主とする結晶相が二ケイ酸リチウムである二ケイ酸リチウムブランクが得られなくなる虞がある。一方、二ケイ酸リチウム結晶の融点以上の温度とすると軟化する虞がある。
そしてこの急加熱の後は加熱を停止し、室温にまで冷却することにより主とする結晶相が二ケイ酸リチウムである歯科補綴物用ブロック体が得られる。この冷却は炉内で行われ炉内の自然冷却の中でゆっくりとした温度変化による徐冷で行われることが好ましい。
ここで「主とする結晶相」とは、X線回折装置による分析により観測される結晶相中、結晶析出割合が最大の結晶相を意味する。
【0023】
また、熱処理工程においては、上記の通り、所定の温度範囲内に急加熱する必要があるが、所定の温度範囲内であれば、必ずしも一定の温度に維持する必要はなく温度変化があってもよい。
【0024】
加工工程は、得られた歯科補綴物用ブロック体を機械加工して、歯科補綴物の形状に加工する工程である。機械加工の方法は特に限定されることはないが、切削や研削等が挙げられる。これにより歯科補綴物を得ることができる。
【0025】
この加工は、生産性の良い条件で行うことができる。すなわち、これまで二ケイ酸リチウムが主結晶相である歯科補綴物用のブロック体は、機械加工性が乏しいため、効率の良い切削をすることが難しかった。そのため二ケイ酸リチウムを主とする結晶相としない加工し易いブロック体(例えばメタケイ酸リチウムを主結晶相とするブロック体。)を準備してこれを機械加工し、加工後にさらに熱処理をして主結晶相を二ケイ酸リチウムに変えることで、後から強度を高める工程を経る必要があった。
これに対して本形態によれば、主とする結晶相が二ケイ酸リチウムであるブロック体であっても、主とする結晶相がメタケイ酸リチウムである加工し易いブロック体の加工と同等以上の条件で切削や研削が可能である。そして加工した後に熱処理が必要ないので形状が変わることなく機械加工の精度を維持したまま歯科補綴物とすることができる。
【0026】
本形態の製造方法により作製されたブロック体によれば次のような構造を具備している。図2に、図1に符号A1で示した点線に沿って切断したブロック体10の切断面のうち、その一部を拡大した図を表した。この図は縦(幅方向)5μm、横(奥行方向)5μmの視野で拡大した図である。このような図は走査型電子顕微鏡(SEM)画像により得ることができる。
【0027】
ブロック体10は、上記したようにその主とする結晶相が二ケイ酸リチウムである。
【0028】
そして、ブロック体10は、図2で示した視野範囲において、表れている結晶のうち0.5μm以上の長さを有する結晶の総面積が、図2で示した視野の面積(5μm×5μm)に対して21%以下の比率であることが好ましいが、必ずしも21%以下である必要はなく、本形態の製造方法により、従来の作製方法に比べてこの比率を小さくすることができればよい。前記比率は10%以下であることが好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。
なお、表れている結晶のうち、抽出すべき0.5μm以上の長さを有する結晶を、二ケイ酸リチウムによる結晶のみに限ってもよい。
これにより、主とする結晶相が二ケイ酸リチウムであるブロック体としても、従来の加工し易いブロック体(例えば主とする結晶相がメタケイ酸リチウムであるブロック体。)の加工と同等以上の条件で切削や研削が可能となる。そしてこれによれば、例えば主とする結晶相がメタケイ酸リチウムであるブロック体で必要とされる加工後の熱処理を必要としないので、形状が変わることなく機械加工の精度を維持したまま歯科補綴物とすることができる。
【0029】
このような比率は次のように得る。
図1に示したブロック体10を例にすると、最も大きい方向(図1の例では高さ方向)において、中央A、全高Hに対して端面から10%の位置の2つの端部A、及び端部Aにおける3つの切断面を得る。図3には3つの切断面のうち中央Aにおける切断面を示した。
そして中央A、端部A、端部Aにおける切断面において、点線で示した中央B、当該Bに対して幅W方向に隣り合い、全幅Wに対して端部から10%の位置の2つの端部B、及び、中央Bに対して奥行きD方向に隣り合い、全奥行きDに対して端部から10%の位置の2つの端部Bのそれぞれについて、図2のような5μm×5μmの視野で走査型電子顕微鏡画像を得る。従って、1つの切断面当たり5つ、全部で15枚の当該画像を得る。得られる画像の例を図4の上部に示した。
【0030】
次に、各画像について、図4の下部に示したように、ここに表れている結晶のうち、結晶の長さが0.5μm以上のもの(図4の下部の図のうち塗りつぶした部分)を抽出し、その結晶の面積の総和Sを求める。次に、当該面積の総和Sを画像の視野面積S(5μm×5μm)で除して百分率で表し、画像ごとに個別に比率を得る。従って全部で15個の個別の比率を得る。
そして、これら個別の比率の平均値を算出し、これを比率とする。
【0031】
ここで、歯科補綴物用ブロック体には空隙が認められないことが好ましい。ただし、若干の空隙は影響が小さいと考えられるので、上記比率を測定した15か所において、縦(幅方向)60μm×横(奥行き方向)60μmの観察範囲で空隙が占める面積が平均で2%以下であることが好ましい。
また、上記比率を測定した15か所において、倍率200倍の顕微鏡写真で着色材の粒状物が視認されないことが好ましい。
これら空隙や粒状物は、母材との界面を生じ、機械加工性に影響を与える虞がある。また、着色材の粒状物の存在は歯科補綴物の色むらの原因となる虞もある。
このような歯科補綴物用ブロック体は、粉末成型ではなく、上記のように材料の溶融によって成型することにより確実に実現が可能となる。
【0032】
以上の歯科補綴物用ブロック、及びここから加工して作製された歯科補綴物によって、歯科補綴物として基本機能である強度、硬さ、口腔内環境に対する化学的耐久性、及び天然歯と同様の審美性(色合い、質感)を備えることができる。これに加えて機械加工性も向上し、加工後の熱処理が不要であるという強度を有しているにもかかわらず、従来における切削用のセラミックによる歯科補綴物用ブロック体と同程度以上の加工条件で不具合を生じることなく機械加工することが可能となる。
【実施例0033】
実施例1乃至実施例7、及び比較例1乃至比較例6では、含まれる成分、熱処理温度を変更して上記説明した溶融成型法による作製方法でブロック体を準備し、切削加工により歯科補綴物を作製してその際の機械加工性を評価した。
なおブロック体は幅Wが14mm、奥行きDが12mm、高さHが18mmの直方体である。
【0034】
実施例1乃至実施例7、比較例5、及び、比較例6にかかるブロック体は次のように急加熱の熱処理をして作製した。
各例について、表1に示した材料をその割合に応じて混ぜて1300℃にて3時間溶融し、溶融ガラスを得た(溶融工程)。次いで得られた溶融ガラスを型に流し込み、室温まで冷却することによりガラスブランクとした(ガラスブランク作製工程)。そして、表1に記載した熱処理温度に予熱した炉にガラスブランクを投入し、同熱処理温度にて30分間維持した(急加熱による熱処理)。その後室温まで徐冷し(冷却工程)ブロック体を得た。
【0035】
一方、比較例1乃至比較例4にかかるブロック体は次のように従来の熱処理をして作製した。
各例について、表1に示した材料をその割合に応じて混ぜて1300℃にて3時間溶融し、溶融ガラスを得た(溶融工程)。次いで得られた溶融ガラスを型に流し込み、室温まで冷却することによりガラスブランクとした(ガラスブランク作製工程)。そして、得られたガラスブランクを加熱し、650℃で60分間維持し、続いて850℃に昇温して10分間維持した(従来加熱による熱処理)。その後室温まで徐冷し(冷却工程)ブロック体を得た。
【0036】
表1には成分ごとにその含有量を質量%で表した。表1からわかるように、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、及び実施例4と比較例4はそれぞれ着色材以外の成分が同じである。
また、表1には、熱処理の種類、急加熱の例では熱処理温度、得られたブロック体の主結晶相の種類(「LDS」は二ケイ酸リチウム、「LS」はメタケイ酸リチウム)、上記説明した方法により得た0.5μm以上の長さの結晶が占める比率(%)、及び、機械加工性をそれぞれ表した。なお、表1の成分の項目における空欄は0質量%を表している。
【0037】
主結晶は、X線回折装置(Empyrean(登録商標);スペクトリス株式会社製)を用いて測定し、リートベルト法による定量分析の結果、観測された結晶相中、結晶析出割合が最も高い結晶相とした。
【0038】
「比率」は上記した0.5μm以上の長さを有する結晶の比率であり、上記した方法により得た面積比率(%)である。
【0039】
「機械加工性」は、従来における加工用のブロック体を参考1、参考2として2種類準備した。それぞれ次のようなブロック体である。
(参考1)メタケイ酸リチウムを主結晶相としたブロック体であり、SiOが72.3質量%、LiOが15.0質量%、Alが1.6質量%の割合で含まれている。
(参考2)メタケイ酸リチウムの結晶相と二ケイ酸リチウムの結晶相とが概ね同じ割合で含有されたブロック体であり、SiOが56.3質量%、LiOが14.7質量%、Alが2.1質量%の割合で含まれている。
実施例及び比較例について、セラミック加工機(CEREC(登録商標) MC XL;シロナデンタルシステムズ株式会社製)で加工した際の参考1、参考2のブロック体に対する、加工時間、工具の消耗具合、及びチッピングの程度をそれぞれ評価した。参考1、参考2のブロック体と比較して加工時間、工具の消耗具合、及びチッピングのいずれについても良好であるものを「良好」、加工時間、工具の消耗具合、及びチッピングのいずれかにおいて参考1、参考2のブロック体と比較して同等未満であったものを「不良」で表した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1からわかるように、実施例の歯科補綴物用ブロック体によれば、主結晶相が二ケイ酸リチウムであるにも関わらず、機械加工性が良好である。また実施例において「比率」は比較例における比率よりも低く抑えられていた。
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例3と比較例3、及び実施例4と比較例4は着色材以外の成分が同じであるにも関わらず、製造工程が異なることで機械加工性及び比率が大きく異なることもわかる。比較例5は主結晶相として二ケイ酸リチウムを得ることができず、比較例6では軟化が生じた。
なお、実施例及び比較例のいずれのブロック体も必要な強度は具備していた。また、空隙や粒状物についても上記した好ましい条件を満たしていた。
【符号の説明】
【0042】
10 歯科補綴物用ブロック体
図1
図2
図3
図4