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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058570
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】軸受装置及びターボ過給機
(51)【国際特許分類】
   F02B 39/00 20060101AFI20230418BHJP
   F02B 39/14 20060101ALI20230418BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20230418BHJP
   F16C 33/10 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
F02B39/00 K
F02B39/00 C
F02B39/14 B
F16C17/02 Z
F16C33/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016494
(22)【出願日】2023-02-07
(62)【分割の表示】P 2018142230の分割
【原出願日】2018-07-30
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白川 太陽
(72)【発明者】
【氏名】和田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 幸博
(72)【発明者】
【氏名】松尾 哲也
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フローティングメタルの内周面及び外周面に油を供給するための給油経路を簡素化可能な軸受装置及びターボ過給機を提供する。
【解決手段】軸受装置は、軸受ハウジングと、前記軸受ハウジングの収容孔の中に設けられ、回転シャフトが挿通される筒状のフローティングメタルと、前記回転シャフトの径方向に沿って設けられ、前記軸受ハウジングに対する前記フローティングメタルの位置決めをするための位置決めピンと、を備え、前記位置決めピンは、前記位置決めピンを貫通するように形成され、前記フローティングメタルの内周面と前記回転シャフトの外周面との間の第1空間に連通する第1給油孔と、前記フローティングメタルの外周面と前記収容孔の内周面との間の第2空間と、前記第1給油孔と、を連通させるように前記位置決めピンの内部に形成された第2給油孔と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの収容孔の中に設けられ、回転シャフトが挿通される筒状のフローティングメタルと、
前記回転シャフトの径方向に沿って設けられ、前記軸受ハウジングに対する前記フローティングメタルの位置決めをするための位置決めピンと、を備え、
前記位置決めピンは、
前記位置決めピンを貫通するように形成され、前記フローティングメタルの内周面と前記回転シャフトの外周面との間の第1空間に連通する第1給油孔と、
前記フローティングメタルの外周面と前記収容孔の内周面との間の第2空間と、前記第1給油孔と、を連通させるように前記位置決めピンの内部に形成された第2給油孔と、を有し、
前記フローティングメタルの外周側において、前記フローティングメタルの前記外周面に面して前記軸受ハウジングに設けられた環状油路をさらに備え、
前記位置決めピンの前記第2給油孔は、前記第2空間に直接連通せずに、前記環状油路を介して前記第2空間に連通し、
前記軸受ハウジングに対して前記位置決めピンを係止するための係止部をさらに備え、
前記係止部は、
前記位置決めピンに該位置決めピンの軸方向において少なくとも部分的に形成された雄ねじと、
前記軸受ハウジングに形成され、前記雄ねじと螺合された雌ねじと、
を含み、
前記環状油路及び前記第2給油孔は、前記雄ねじ及び前記雌ねじよりも前記径方向の内側に位置する
ことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記第2給油孔は、前記環状油路に開口する
ことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記第1給油孔は、前記径方向に沿って延びる半径方向孔部を含み、
前記第2給油孔は、前記半径方向孔部に接続されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記第2給油孔は、前記回転シャフトの周方向に沿って形成された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記軸受ハウジングは、前記収容孔に接続するように前記径方向に沿って設けられた径方向孔を有し、
前記フローティングメタルは、前記フローティングメタルの前記外周面から前記径方向の内側に凹んだ凹部を有し、
前記位置決めピンは、
前記径方向孔に係合する基端部と、
前記凹部に遊嵌される先端部と、
を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記径方向孔に挿入され、前記位置決めピンよりも前記径方向の外側に位置するプラグをさらに備え、
前記位置決めピンと前記プラグとは前記径方向にて互いに離間して設けられ、
前記径方向において前記プラグの径方向内側端面と前記位置決めピンの径方向外側端面との間に形成される空間を介して、前記第1給油孔に油が供給されるように構成された
ことを特徴とする請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの収容孔の中に設けられ、回転シャフトが挿通される筒状のフローティングメタルと、
前記回転シャフトの径方向に沿って設けられ、前記軸受ハウジングに対する前記フローティングメタルの位置決めをするための位置決めピンと、を備え、
前記位置決めピンは、
前記位置決めピンを貫通するように形成され、前記フローティングメタルの内周面と前記回転シャフトの外周面との間の第1空間に連通する第1給油孔と、
前記フローティングメタルの外周面と前記収容孔の内周面との間の第2空間と、前記第1給油孔と、を連通させるように前記位置決めピンの内部に形成された第2給油孔と、を有し、
前記フローティングメタルの外周側において、前記フローティングメタルの前記外周面に面して前記軸受ハウジングに設けられた環状油路をさらに備え、
前記位置決めピンの前記第2給油孔は、前記環状油路を介して前記第2空間に連通し、
前記フローティングメタルは、前記フローティングメタルの前記外周面から前記径方向の内側に凹んだ凹部を有し、
前記位置決めピンは、前記凹部に遊嵌される先端部を有し、
前記フローティングメタルは、該フローティングメタルの内部において、前記径方向に沿って延びるとともに、両端が前記凹部の底面及び前記フローティングメタルの前記内周面にそれぞれ開口するように形成された連通孔を有し、
前記第1給油孔は、前記先端部を通り、かつ、前記径方向に沿って前記位置決めピンを貫通するように設けられ、
前記第1給油孔は、前記連通孔を介して前記第1空間に連通し、
前記凹部の前記底面は、前記径方向の外側を向き、
前記先端部のうち前記径方向の最も内側に位置し、前記径方向の内側を向く先端面と、前記凹部の前記底面とが互いに対向する
ことを特徴とする軸受装置。
【請求項8】
前記連通孔の径は、前記位置決めピンの前記先端部の径よりも小さい
請求項7に記載の軸受装置。
【請求項9】
前記回転シャフトの軸方向において前記フローティングメタルの隣に位置し、前記回転シャフトとともに回転するように構成された少なくとも1つのスラストカラーをさらに備え、
前記回転シャフトの軸方向における前記フローティングメタルの端面と、前記少なくとも1つのスラストカラーとの間に、前記第1空間を介して油が供給されるように構成された
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項10】
前記軸受ハウジングの外表面に形成され、前記回転シャフトを挟んで位置決めボルトとは反対側の領域に位置する油導入口と、
前記軸受ハウジングの内部において、前記位置決めボルトの延在方向に沿って延びるように形成された供給通路と、を備え、
前記供給通路は、前記油導入口から前記第1給油孔に向けて油を供給するための通路であり、
前記供給通路は、前記回転シャフトの軸方向において前記位置決めボルトとずれて位置している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項11】
前記第2給油孔は、前記回転シャフトの径方向において前記第2空間とはずれて位置し、
前記位置決めピンには、前記第2空間に開口する孔が設けられていない
請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の軸受装置と、
前記軸受装置によって回転可能に支持される回転シャフトと、
前記回転シャフトに設けられるコンプレッサインペラ及びタービンインペラと、
を備えることを特徴とするターボ過給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置及びターボ過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸を回転可能に支持する軸受装置として、回転軸が挿通される円筒状のフローティングメタルを用いた浮動軸受が用いられることがある。このような浮動軸受装置では、フローティングメタルの内周面と回転軸との隙間に油を供給して油膜を形成し、該油膜によって回転軸を回転可能に支持するようになっている。
【0003】
特許文献1には、このような浮動軸受装置を用いたターボ過給機が開示されている。このターボ過給機は、排ガスで駆動されるタービン翼と、空気を圧縮するコンプレッサ翼とが固定された回転軸を回転可能に支持するフローティングメタルを含む軸受装置を備える。この軸受装置では、フローティングメタルに設けられた回り止め穴にハウジングに固定された回り止めピンが嵌合することにより、フローティングメタルが回転軸とともに連れ回るのを防止するようになっている。また、回り止めピンに設けられた孔を介して、フローティングメタルの内周面と回転軸との間に形成されるオイルたまり部に油が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5977118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、浮動軸受装置では、フローティングメタルの外周面と軸受ハウジングの間にも油膜を形成することがあり、この油膜により、ロータの振動を抑制する等の効果が期待できる。そして、軸受装置や該軸受装置を用いた回転機械の小型化の観点から、簡素な装置構成で上述の油膜を形成することが望まれる。
この点、特許文献1の軸受装置では、フローティングメタルの外周面と軸受ハウジングの間に油を供給すること、及び、油を供給するための構成について開示されていない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、フローティングメタルの内周面及び外周面に油を供給するための給油経路を簡素化可能な軸受装置及びターボ過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る軸受装置は、
軸受ハウジングと、
前記軸受ハウジングの収容孔の中に設けられ、回転シャフトが挿通される筒状のフローティングメタルと、
前記回転シャフトの径方向に沿って設けられ、前記軸受ハウジングに対する前記フローティングメタルの位置決めをするための位置決めピンと、を備え、
前記位置決めピンは、
前記位置決めピンを貫通するように形成され、前記フローティングメタルの内周面と前記回転シャフトの外周面との間の第1空間に連通する第1給油孔と、
前記フローティングメタルの外周面と前記収容孔の内周面との間の第2空間と、前記第1給油孔と、を連通させるように前記位置決めピンの内部に形成された第2給油孔と、を有する。
【0008】
上記(1)の構成によれば、フローティングメタルの位置決めをするための位置決めピンに、第1空間に連通する第1給油孔、及び、第2空間と第1給油孔を連通させる第2給油孔を設けたので、位置決めピンに第1給油孔及び第2給油孔を設けるとの簡素な構成で、フローティングメタルの内周面(第1空間)及び外周面(第2空間)に油を供給することができる。よって、軸受装置において油膜形成のための給油経路を簡素化し、軸受装置を小型化することができる。
また、位置決めピンは比較的容易に交換可能であるから、軸受装置に設置された位置決めピンを、該位置決めピンの第1給油孔又は第2給油孔とは異なる径の第1給油孔又は第2給油孔を有する位置決めピンに交換することで、軸受装置における第1給油孔及び/又は第2給油孔の径を容易に変更できる。よって、第1給油孔及び第2給油孔を介した軸受装置への給油量の調節が容易となる。
【0009】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記フローティングメタルの外周側において、前記フローティングメタルの前記外周面に面して前記軸受ハウジングに設けられた環状油路をさらに備え、
前記第2給油孔は、前記環状油路を介して前記第2空間に連通する。
【0010】
上記(2)の構成によれば、軸受ハウジングに、フローティングメタルの外周面に面する環状油路を設けたので、フローティングメタルの外周面に、全周にわたって油を供給しやすくなる。よって、第2空間により円滑に給油して、フローティングメタルの外周側の油膜をより確実に形成することができる。
【0011】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、
前記第1給油孔は、前記径方向に沿って延びる半径方向孔部を含み、
前記第2給油孔は、前記半径方向孔部に接続されている。
【0012】
上記(3)の構成によれば、第2給油孔が第1給油孔の半径方向孔に接続されているので、第1給油孔に供給される油を、第2給油孔を介して第2空間に円滑に供給することができる。
【0013】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、
前記第2給油孔は、前記回転シャフトの周方向に沿って形成される。
【0014】
上記(4)の構成によれば、第2給油孔を周方向に沿って形成したので、第2給油孔を介して、フローティングメタルの周りに形成される第2空間又は環状油路に円滑に油を供給することができる。
【0015】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、
前記軸受ハウジングは、前記収容孔に接続するように前記径方向に沿って設けられた径方向孔を有し、
前記フローティングメタルは、前記フローティングメタルの前記外周面から前記径方向の内側に凹んだ凹部を有し、
前記位置決めピンは、
前記径方向孔に係合する基端部と、
前記凹部に遊嵌される先端部と、
を含む。
【0016】
上記(5)の構成によれば、位置決めピンの基端部が軸受ハウジングの径方向孔に係合するとともに、位置決めピンの先端部がフローティングメタルの凹部に遊嵌されているので、フローティングメタルの軸受ハウジングに対する若干の移動を許容しながら、フローティングメタルを軸受ハウジングに対して確実に位置決めすることができる。
【0017】
(6)幾つかの実施形態では、上記(5)の構成において、
前記径方向孔に挿入され、前記位置決めピンよりも前記径方向の外側に位置するプラグをさらに備え、
前記径方向において前記プラグと前記位置決めピンとの間に形成される空間を介して、前記第1給油孔に油が供給されるように構成される。
【0018】
上記(6)の構成によれば、プラグと位置決めピンとの間の空間を油供給のための通路として利用して、該通路を介して第1給油孔に油を供給することができる。また、軸受ハウジングの径方向孔からプラグを取り外した状態とすれば、該径方向孔を介して、位置決めピンを容易に取り付け及び取り外しすることができる。よって、軸受装置のメンテナンスを容易にすることができる。
【0019】
(7)幾つかの実施形態では、上記(5)又は(6)の構成において、
前記フローティングメタルは、該フローティングメタルの内部において、前記径方向沿って延びるとともに、両端が前記凹部の底面及び前記フローティングメタルの前記内周面にそれぞれ開口するように形成された連通孔を有し、
前記第1給油孔は、前記先端部を通り、かつ、前記径方向に沿って前記位置決めピンを貫通するように設けられ、
前記第1給油孔は、前記連通孔を介して前記第1空間に連通する。
【0020】
上記(7)の構成によれば、フローティングメタルに、位置決めピンの先端部が遊嵌される凹部の底面、及び、フローティングメタルの内周面にそれぞれ開口する連通孔を設けたので、該連通孔を介して、第1給油孔からの油を第1空間に円滑に供給することができる。また、上記(7)の構成によれば、プラグと位置決めピンの間の空間、位置決めピンに形成された第1給油孔及び第2給油孔、及び、フローティングメタルに形成された連通孔を介して第1空間及び第2空間に油を供給可能である。すなわち、プラグ、位置決めピン及びフローティングメタル等の比較的容易に交換可能な部品を利用して給油経路を形成したので、これらの部品を交換することにより油量を比較的容易に調節することができる。
【0021】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)のの構成において、
前記軸受ハウジングに対して前記位置決めピンを係止するための係止部をさらに備える。
【0022】
上記(8)の構成によれば、係止部により軸受ハウジングに対して位置決めピンを係止するようにしたので、フローティングメタルを軸受ハウジングに対してより確実に位置決めすることができる。
【0023】
(9)幾つかの実施形態では、上記(8)の構成において、
前記係止部は、
前記位置決めピンに該位置決めピンの軸方向において少なくとも部分的に形成された雄ねじと、
前記軸受ハウジングに形成され、前記雄ねじと螺合された雌ねじと、
を含む。
【0024】
上記(9)の構成によれば、位置決めピンに形成された雄ねじと軸受ハウジングに形成された雌ねじを螺合させることにより、位置決めピンを軸受ハウジングに確実に係止することができる。
【0025】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(9)の何れかの構成において、
前記回転シャフトの軸方向において前記フローティングメタルの隣に位置し、前記回転シャフトとともに回転するように構成された少なくとも1つのスラストカラーをさらに備え、
前記回転シャフトの軸方向における前記フローティングメタルの端面と、前記少なくとも1つのスラストカラーとの間に、前記第1空間を介して油が供給されるように構成される。
【0026】
上記(10)の構成によれば、軸方向におけるフローティングメタルの端面とスラストカラーとの間に供給される油を介して回転機械のスラスト荷重を支持可能としたので、上述のフローティングメタルを含む軸受装置によってラジアル軸受及びスラスト軸受の両方の機能が果たされる。よって、回転機械の軸受装置をより小型化することができる。
【0027】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかの構成において、
前記軸受ハウジングの外表面に形成され、前記回転シャフトを挟んで前記位置決めピンとは反対側の領域に位置する油導入口と、
前記軸受ハウジングの内部において、前記位置決めピンの延在方向に沿って延びるように形成された供給通路と、を備え、
前記供給通路は、前記油導入口から前記第1給油孔に向けて油を供給するための通路であり、
前記供給通路は、前記回転シャフトの軸方向において前記位置決めピンとずれて位置している。
【0028】
上記(11)の構成によれば、回転シャフトを挟んで位置決めピンとは反対側の領域に位置する油導入口から第1給油孔に向けて油を供給するための供給通路を、軸方向において位置決めピンとずらして配置したので、軸方向において位置決めピンの近傍に位置する部品や油の通路(例えば、回転シャフト、フローティングメタル又は上述の環状油路等)と供給通路との干渉を回避しつつ、給油口から第1給油孔までの給油経路の長さを低減しながら、第1給油孔に油を円滑に供給することができる。
【0029】
(12)本発明の少なくとも一実施形態に係るターボ過給機は、
上記(1)乃至(11)の何れかに記載の軸受装置と、
前記軸受装置によって回転可能に支持される回転シャフトと、
前記回転シャフトに設けられるコンプレッサインペラ及びタービンインペラと、
を備える。
【0030】
上記(12)の構成によれば、フローティングメタルの位置決めをするための位置決めピンに、第1空間に連通する第1給油孔、及び、第2空間と第1給油孔を連通させる第2給油孔を設けたので、位置決めピンに第1給油孔及び第2給油孔を設けるとの簡素な構成で、フローティングメタルの内周面(第1空間)及び外周面(第2空間)に油を供給することができる。よって、軸受装置において油膜形成のための給油経路を簡素化し、軸受装置及びターボ過給機を小型化することができる。
また、位置決めピンは比較的容易に交換可能であるから、軸受装置に設置された位置決めピンを、該位置決めピンの第1給油孔又は第2給油孔とは異なる径の第1給油孔又は第2給油孔を有する位置決めピンに交換することで、軸受装置における第1給油孔及び/又は第2給油孔の径を容易に変更できる。よって、第1給油孔及び第2給油孔を介した軸受装置への給油量の調節が容易となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、フローティングメタルの内周面及び外周面に油を供給するための給油経路を簡素化可能な軸受装置及びターボ過給機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】一実施形態に係るターボ過給機の概略断面図である。
図2図1に示すターボ過給機の軸受装置の部分的な拡大図である。
図3図2のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0034】
まず、図1を参照して、一実施形態に係る軸受装置を備えたターボ過給機について説明する。図1は、一実施形態に係るターボ過給機の概略断面図である。同図に示すように、一実施形態に係るターボ過給機1は、回転シャフト2と、回転シャフト2の一端部に設けられるコンプレッサインペラ4と、回転シャフト2の他端部に設けられるタービンインペラ6と、回転シャフト2を回転可能に指示する軸受装置8と、を備えている。軸受装置8は、回転シャフト2の軸方向において、コンプレッサインペラ4と、タービンインペラ6との間に位置している。
【0035】
また、ターボ過給機1は、コンプレッサインペラ4を囲うコンプレッサハウジング10と、タービンインペラ6を囲うタービンハウジング12と、回転シャフト2の軸方向において、コンプレッサハウジング10とタービンハウジング12との間に位置する軸受ハウジング14と、を備えている。コンプレッサハウジング10と軸受ハウジング14、及び、タービンハウジング12と軸受ハウジング14は、それぞれ、ボルト(不図示)で締結されていてもよい。
【0036】
コンプレッサハウジング10は、軸方向におけるターボ過給機1の一端部において軸方向外側に向かって開口する空気入口を有するとともに、コンプレッサインペラ4の径方向外側に位置する環状流路18を形成している。
また、タービンハウジング12は、軸方向におけるターボ過給機1の他端部において軸方向外側に向かって開口する排ガス出口20を有するとともに、タービンインペラ6の径方向外側に位置する環状流路22を形成している。
【0037】
上述の構成を有するターボ過給機1は、例えば、以下のように動作する。
空気入口16を介してコンプレッサインペラ4に空気が流入し、回転シャフト2とともに回転するコンプレッサインペラ4によってこの空気が圧縮される。このようにして生成した圧縮空気は、コンプレッサインペラ4の径方向外側に形成された環状流路18を介してターボ過給機1から一旦排出され、燃焼機関(不図示)に供給される。
【0038】
燃焼機関では、上述の圧縮空気とともに燃料が燃焼され、この燃焼反応により燃焼ガスが生成される。燃焼ガスは、燃焼機関から排出される排ガスとして、タービンインペラ6の径方向外側に形成された環状流路22を介してタービンインペラ6に流入する。このように流入した排ガスの流れによってタービンインペラ6に回転力が付与され、これにより回転シャフト2が駆動される。タービンで仕事を終えた排ガスは、排ガス出口20を介して、ターボ過給機1から排出されるようになっている。
【0039】
次に、図1図3を参照して、幾つかの実施形態に係る軸受装置8についてより詳細に説明する。図2は、図1に示すターボ過給機1の軸受装置8の部分的な拡大図であり、図3は、図2のA-A断面図である。
【0040】
図1及び図2に示すように、軸受装置8は、上述した軸受ハウジング14と、軸受ハウジング14の収容孔28の中に設けられ、回転シャフト2が挿通される筒状のフローティングメタル30と、を含む。フローティングメタル30は、回転シャフト2の軸方向において、コンプレッサインペラ4と、タービンインペラ6との間に位置している。
【0041】
また、軸受装置8は、回転シャフト2に設けられたスラストカラー9A,9Bをさらに備えている。スラストカラー9A,9Bは、回転シャフト2の軸方向においてフローティングメタル30の隣に位置し、回転シャフト2とともに回転するように構成されている。
スラストカラー9A,9Bは、回転シャフト2と一体的に形成されていてもよいし、あるいは、回転シャフト2とは別体として設けられたスラストカラー9A,9Bが回転シャフト2に固定されていてもよい。
【0042】
フローティングメタル30の内周面30aと、回転シャフト2の外周面2aとの間には、第1空間32が形成されている。第1空間32は、フローティングメタル30の軸方向中央近傍に位置する油溜まり部34と、フローティングメタル30の軸方向において油溜まり部34の両側方に位置し、油溜まり部34に連通する隙間部36と、を含む。
また、フローティングメタル30の外周面30bと、収容孔28の内壁面との間には、第2空間38(隙間)が形成されている。
また、回転シャフト2の軸方向におけるフローティングメタル30の一方の端面30cとスラストカラー9Aとの間、及び、上述の軸方向におけるフローティングメタル30の他方の端面30dとスラストカラー9Bとの間には、若干の軸方向隙間31A,31Bがそれぞれ形成されている。
【0043】
フローティングメタル30は、上述の第1空間32(油溜まり部34及び隙間部36)、第2空間38、及び軸方向隙間31A,31Bに潤滑油が満たされることで、セミフローティング軸受として機能する。
すなわち、フローティングメタル30の外周面30bと収容孔28の内壁面との間の第2空間38に形成される油膜を介してフローティングメタル30が軸受ハウジング14に支持されるとともに、フローティングメタル30の内周面30aと回転シャフト2との間の第1空間32に形成される油膜を介して回転シャフト2のラジアル荷重を負担するようになっている。また、フローティングメタル30の端面30c、30dとスラストカラー9A,9Bとの間に供給される潤滑油を介して、回転シャフト2のスラスト荷重を負担するようになっている。
【0044】
軸受装置8は、回転シャフト2の径方向(以下、単に「径方向」ともいう。)に沿って設けられ、軸受ハウジング14に対するフローティングメタル30の位置決めをするための位置決めピン40を備えている。
位置決めピン40は、典型的には、回転シャフト2の軸方向において、フローティングメタル30の中央位置に設けられる。なお、位置決めピン40は、回転シャフト2の軸方向において、フローティングメタル30の中央位置からずれて設けられていてもよい。
【0045】
位置決めピン40は、軸受ハウジング14に設けられた径方向孔27に係合するとともに、フローティングメタル30に設けられた凹部42に隙間を開けた状態で嵌められている(即ち遊嵌されている)。
上述の径方向孔27は、軸受ハウジング14の収容孔28に接続するように、径方向に沿って軸受ハウジング14に設けられている。また、上述の凹部42は、フローティングメタル30の外周面30bから径方向の内側に凹むように設けられている。そして、位置決めピン40は、軸受ハウジング14の径方向孔27に係合する基端部44と、フローティングメタル30の凹部42に遊嵌される先端部46と、を含む。即ち、位置決めピン40の先端部46とフローティングメタル30の凹部42との間には隙間が空いている。
【0046】
特に図示しないが、他の実施形態では、フローティングメタル30には、上述の凹部42の代わりに、一端がフローティングメタル30の内周面30aに開口し他端が外周面30bに開口する貫通孔が設けられていてもよい。そして、位置決めピン40は、軸受ハウジング14に設けられた径方向孔27に係合するとともに、フローティングメタル30に設けられた上述の貫通孔の内壁面との間に隙間を開けた状態で、該貫通孔を貫通するように設けられていてもよい。
この場合、位置決めピン40は、軸受ハウジング14の径方向孔27に係合する基端部と、フローティングメタル30の貫通孔を貫通する先端部と、を含む。
【0047】
また、位置決めピン40は、係止部48により軸受ハウジング14に対して係止されていてもよい。例えば、図2に示すように、位置決めピン40には、該位置決めピン40の軸方向において部分的に雄ねじ50が形成されているとともに、軸受ハウジング14の径方向孔27には、雌ねじ52が形成されている。そして、位置決めピン40の雄ねじ50と軸受ハウジング14の雌ねじ52とが螺合することにより、位置決めピン40が軸受ハウジング14に係止されるようになっている。即ち、係止部48は、位置決めピン40の雄ねじ50と、軸受ハウジング14の雌ねじ52と、を含む。
【0048】
このように、位置決めピン40は、係止部48により軸受ハウジング14に対して固定されているとともに、フローティングメタル30に対しては遊嵌しているので、フローティングメタル30の回転シャフト2との連れ回りを抑制しながらフローティングメタル30の若干の移動が許容される。よって、フローティングメタル30は、セミフローティング軸受としての機能を発揮することができる。
【0049】
軸受ハウジング14の径方向孔27には、位置決めピン40よりも径方向の外側においてプラグ54が挿入されている。プラグ54の外周面には雄ねじ56が設けられており、径方向孔27に設けられた雌ねじ58に螺合されることにより、軸受ハウジング14に対する位置が固定されている。
【0050】
径方向において、プラグ54と位置決めピン40との間には、空間60が形成されている。
【0051】
位置決めピン40には、第1給油孔62、及び、第2給油孔64が形成されている。第1給油孔62は、位置決めピン40を貫通するように形成されており、後述するフローティングメタル30の連通孔66を介して第1空間32に連通している。第2給油孔64は、第2空間38と、上述の第1給油孔62とを連通させるように、位置決めピン40の内部に形成されている。
【0052】
第1給油孔62は、径方向に沿って延びる半径方向孔部を有していてもよい。この半径方向孔部は、径方向において第1給油孔62の全域に亘って延びていてもよく、あるいは、径方向において部分的に延びていてもよい。また、第1給油孔62は、径方向に対して傾斜して延びる傾斜部を有していてもよく、半径方向孔部及び傾斜部の両方を有していてもよい。
【0053】
図示する実施形態では、第1給油孔62は、径方向に沿って延びる半径方向孔部63を含んでいるとともに、第2給油孔64は、半径方向孔部63に接続されている。
図示する実施形態では、第1給油孔62は、位置決めピン40の先端部46を通り、かつ、径方向に沿って位置決めピン40を貫通するように設けられた半径方向孔部63を含む。
【0054】
なお、第1給油孔62は、必ずしも直線状の孔でなくてもよく、例えば、少なくとも部分的に、径方向に対して傾斜するように設けられていてもよい。第1給油孔62の一端又は両端は、位置決めピン40の側面に開口していてもよい。
【0055】
第2給油孔64は、回転シャフト2の周方向に沿って延在していてもよい。
また、第2給油孔64は、位置決めピン40の軸中心を中心として放射状に複数本設けられていてもよい。なお、図示する実施形態では、位置決めピン40の軸中心を中心として放射状に4本の第2給油孔64が設けられている。
【0056】
フローティングメタル30には、該フローティングメタル30の内部において径方向に沿って延びる連通孔66が形成されている。連通孔66は、凹部42の底面に開口する一端と、フローティングメタル30の内周面30aに開口する他端と、を有している。
第1給油孔62は、連通孔66を介して第1空間32に連通している。
【0057】
そして、上述の空間60、第1給油孔62、第2給油孔64、及び、連通孔66を介して、第1空間32及び第2空間38に潤滑油が供給されるようになっている。また、第1空間32を介して、フローティングメタル30の端面30c、30dとスラストカラー9A,9Bとの間に潤滑油が供給されるようになっている。
【0058】
軸受ハウジング14においてフローティングメタル30の外周側には、該フローティングメタル30の外周面30bに面する環状油路80が設けられている。環状油路80は、軸受ハウジング14の収容孔28の内周面に設けられた周方向溝82によって形成されている。図3に示すように、第2給油孔64は、上述の環状油路80を介して第2空間38に連通するようになっている。
環状油路80は、回転シャフト2の軸方向において位置決めピン40と重なる位置に設けられていてもよい。
【0059】
幾つかの実施形態では、軸受ハウジング14に潤滑油を導入するための油導入口68は、回転シャフト2を挟んで位置決めピン40とは反対側の領域において、軸受ハウジング14の外表面に形成される。図示する実施形態では、位置決めピン40は回転シャフト2の上方に設けられるとともに、油導入口68は、軸受ハウジング14の下部領域に設けられている。
【0060】
油導入口68からの潤滑油は、軸受ハウジング14の内部に形成された供給通路70を介して、上述の空間60に導かれるようになっている。すなわち、供給通路70は、油導入口68から第1給油孔62に向けて油を供給するための通路である。
供給通路70は、位置決めピン40の延在方向(図示する実施形態では上下方向)に沿って延びている。また、供給通路70は、供給通路70と空間60とを接続する接続路72とを含んでいる。図示する実施形態において、供給通路70は、水平方向に沿って延びている。
また、供給通路70は、回転シャフト2の軸方向において位置決めピン40とずれて位置している。なお、接続路72は、平面視において、回転シャフト2の軸方向に対して傾斜するように延びている。
【0061】
第1空間32、第2空間38等から漏出した潤滑油は、フローティングメタル30の下方に位置する排油空間76を通って、油排出口78から排出されるようになっている。
【0062】
以上に説明した実施形態に係る軸受装置8では、フローティングメタル30の位置決めをするための位置決めピン40に、第1空間32に連通する第1給油孔62、及び、第2空間38と第1給油孔62を連通させる第2給油孔64を設けられている。よって、位置決めピン40に第1給油孔62及び第2給油孔64を設けるとの簡素な構成で、フローティングメタル30の内周面30a(第1空間32)及び外周面30b(第2空間38)に油を供給することができる。よって、軸受装置8において油膜形成のための給油経路を簡素化し、軸受装置8を小型化することができる。
【0063】
また、位置決めピン40は比較的容易に交換可能であるから、軸受装置8に設置された位置決めピン40を、該位置決めピン40の第1給油孔62又は第2給油孔64とは異なる径の第1給油孔又は第2給油孔を有する位置決めピン40に交換することで、軸受装置8における第1給油孔62及び/又は第2給油孔64の径を容易に変更できる。よって、第1給油孔62及び第2給油孔64を介した軸受装置8への給油量の調節が容易となる。
【0064】
また、上述した実施形態では、軸受ハウジング14に、フローティングメタル30の外周面30bに面する環状油路80を設けたので、フローティングメタル30の外周面30bに、全周にわたって油を供給しやすくなる。よって、第2空間38により円滑に給油して、フローティングメタル30の外周側の油膜をより確実に形成することができる。
【0065】
また、上述した実施形態では、第2給油孔64が第1給油孔62の半径方向孔部63に接続されているので、第1給油孔62に供給される油を、第2給油孔64を介して第2空間38に円滑に供給することができる。
【0066】
また、上述の実施形態では、第2給油孔64を複数本設けたので、複数の第2給油孔64のうちの少なくともいずれかは、周方向溝82に連通した状態としやすい。よって、例えば、位置決めピン40の向きが変わった場合であっても、第2給油孔64の全てが軸受ハウジング14の径方向孔27の内壁面によって閉塞されるのを防ぐことができ、円滑に第2空間38に給油することができる。
【0067】
また、上述の実施形態では、第2給油孔64を周方向に沿って形成したので、第2給油孔64を介して、フローティングメタル30の周りに形成される第2空間38又は環状油路80に円滑に油を供給することができる。
なお、第2給油孔64を、環状油路80に接続されるように設けることで、環状油路80及び第2空間38により円滑に給油することができる。
【0068】
また、上述の実施形態では、位置決めピン40の基端部44が軸受ハウジング14の径方向孔27に係合するとともに、位置決めピン40の先端部46がフローティングメタル30の凹部42に遊嵌されている。よって、フローティングメタル30の軸受ハウジング14に対する若干の移動を許容しながら、フローティングメタル30を軸受ハウジング14に対して確実に位置決めすることができる。
【0069】
上述の実施形態では、プラグ54と位置決めピン40との間の空間60を油供給のための通路として利用して、該通路を介して第1給油孔62に油を供給することができる。また、軸受ハウジング14の径方向孔27からプラグ54を取り外した状態とすれば、該径方向孔27を介して、位置決めピン40を容易に取り付け及び取り外しすることができる。よって、軸受装置8のメンテナンスを容易にすることができる。
【0070】
また、上述の実施形態では、フローティングメタル30に、位置決めピン40の先端部46が遊嵌される凹部42の底面、及び、フローティングメタル30の内周面30aにそれぞれ開口する連通孔66を設けたので、該連通孔66を介して、第1給油孔62からの油を第1空間32に円滑に供給することができる。
【0071】
また、上述の実施形態では、プラグ54と位置決めピン40の間の空間60、位置決めピン40に形成された第1給油孔62及び第2給油孔64、及び、フローティングメタル30に形成された連通孔66を介して第1空間32及び第2空間38に油を供給可能である。すなわち、プラグ54及び位置決めピン40等の比較的容易に交換可能な部品を利用して給油経路を形成したので、これらの部品を交換することにより油量を比較的容易に調節することができる。
【0072】
また、上述の実施形態では、係止部48により軸受ハウジング14に対して位置決めピン40を係止するようにしたので、フローティングメタル30を軸受ハウジング14に対してより確実に位置決めすることができる。
【0073】
上述の実施形態では、係止部48として、位置決めピン40に形成された雄ねじ50と軸受ハウジング14に形成された雌ねじ52とを設けたので、これらの雄ねじ50と雌ねじ52を螺合させることにより、位置決めピン40を軸受ハウジング14に確実に係止することができる。
【0074】
幾つかの実施形態では、係止部48は、位置決めピン40の径方向孔27からの抜け出しを防止するためのスナップリング(不図示)と、径方向孔27の内壁面に設けられ、該スナップリングが嵌合する溝(不図示)と、を含んでいてもよい。スナップリングを用いた係止部48により、位置決めピン40を軸受ハウジング14に確実に係止することができる。
【0075】
また、上述の実施形態では、軸方向におけるフローティングメタル30の端面30c、30dとスラストカラー9A,9Bとの間に供給される油を介してターボ過給機1(回転機械)のスラスト荷重を支持可能としたので、上述のフローティングメタル30を含む軸受装置8によってラジアル軸受及びスラスト軸受の両方の機能が果たされる。よって、ターボ過給機1(回転機械)の軸受装置をより小型化することができる。
【0076】
また、上述の実施形態では、回転シャフト2を挟んで位置決めピン40とは反対側の領域に位置する油導入口68から第1給油孔62に向けて油を供給するための供給通路70を、回転シャフト2の軸方向において位置決めピン40とずらして配置したので、軸方向において位置決めピン40の近傍に位置する部品や油の通路(例えば、回転シャフト2、フローティングメタル30、油排出口78又は上述の環状油路80等)と供給通路70との干渉を回避しつつ、油導入口68から第1給油孔62までの給油経路の長さを低減しながら、第1給油孔62に油を円滑に供給することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0078】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0079】
1 ターボ過給機
2 回転シャフト
2a 外周面
4 コンプレッサインペラ
6 タービンインペラ
8 軸受装置
9A スラストカラー
9B スラストカラー
10 コンプレッサハウジング
12 タービンハウジング
14 軸受ハウジング
16 空気入口
18 環状流路
20 排ガス出口
22 環状流路
27 径方向孔
28 収容孔
30 フローティングメタル
30a 内周面
30b 外周面
30c 端面
30d 端面
31A 軸方向隙間
31B 軸方向隙間
32 第1空間
34 油溜まり部
36 隙間部
38 第2空間
40 位置決めピン
42 凹部
44 基端部
46 先端部
48 係止部
50 雄ねじ
52 雌ねじ
54 プラグ
56 雄ねじ
58 雌ねじ
60 空間
62 第1給油孔
63 半径方向孔部
64 第2給油孔
66 連通孔
68 油導入口
70 供給通路
72 接続路
76 排油空間
78 油排出口
80 環状油路
82 周方向溝
図1
図2
図3