(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058582
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】神経芽細胞腫の治療における使用のためのオーロラAキナーゼ阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4545 20060101AFI20230418BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230418BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023016982
(22)【出願日】2023-02-07
(62)【分割の表示】P 2021529009の分割
【原出願日】2019-11-22
(31)【優先権主張番号】62/773,367
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ダウレス,ミッシェル スザンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,シュエチエン
(72)【発明者】
【氏名】スタンカト,ルイス フランク
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療を必要とする患者の神経芽細胞腫を治療するための方法、および化合物を提供する。
【解決手段】患者における神経芽細胞腫を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における神経芽細胞腫を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記化合物が(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物が(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:2-メチルプロパン-2-アミン(1:1)塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物が(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:アミン(1:1)塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
患者における神経芽細胞腫を治療する方法であって、それを必要とする患者に、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である化合物、またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤とを含む有効量の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項6】
前記組成物が、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:2-メチルプロパン-2-アミン(1:1)塩である化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:アミン(1:1)塩である化合物を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
神経芽細胞腫の治療における使用のための、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:2-メチルプロパン-2-アミン(1:1)塩である、請求項9に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:アミン(1:1)である、請求項9に記載の化合物。
【請求項13】
神経芽細胞腫の治療のための薬剤の製造のための、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項14】
前記化合物が、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記化合物が(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸2-メチルプロパン-2-アミン(1:1)塩である、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記化合物が(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸アミン(1:1)塩である、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、神経芽細胞腫の治療のためのオーロラAキナーゼ阻害剤およびその塩の使用に関する。
【0002】
神経芽細胞腫は小児で最も一般的な固形腫瘍の1つであり、北米では毎年650を超える神経芽細胞腫の症例が診断されている。神経芽細胞腫は、一般に低リスクおよび高リスクと呼ばれる、2つの定義された患者サブセットに細分することができる。低リスクの神経芽細胞腫は通常、18月齢未満の小児に見られ、疾病負荷が限られているため、予後は良好である。ただし、高リスクの神経芽細胞腫は一般に18か月以上の子供に発生し、骨組織に転移することが多く、予後不良をもたらす。マルチモーダル治療戦略の進歩により神経芽細胞腫患者の転帰は改善されたが、高リスクカテゴリーの患者の生存率は依然として低く、診断後5年での生存率は50%未満である。
【0003】
高リスク神経芽細胞腫は、N-myc癌原遺伝子タンパク質(N-MYC)をコードするMYCN遺伝子に関連している。完全には理解されていないが、N-MYCおよびオーロラAキナーゼは相互作用しているようであり、オーロラAキナーゼの発現および増幅は、N-MYCを安定化しおよび/またはその分解を遅らせ、その結果N-MYCレベルの上昇を引き起こすと考えられている。Michaelis、M,et al.,“Aurora Kinases as Targets in Drug-Resistant Neuroblastoma Cells”,PLOS One,2014,9(9)e108758.
【0004】
オーロラAキナーゼ阻害剤は当技術分野で知られている(例えば、式Iの化合物を開示するPCT特許出願公開WO2016/077191を参照されたい(下記参照)。オーロラA選択的阻害剤であるアリセルチブおよび汎オーロラ阻害剤であるトザセルチブを含む特定のオーロラキナーゼ阻害剤の使用は、容認できないほど高レベルの好中球減少症および他の毒性作用と関連している。
【0005】
神経芽細胞腫、特に高リスク神経芽細胞腫を治療するための新しいアプローチおよび薬物療法の必要性が存在する。さらに、オーロラキナーゼ、特にオーロラAキナーゼを阻害し、N-MYCの発現および/または活性を低下させる方法を提供する必要がある。本発明は、これらの必要性に対処し、神経芽細胞腫を治療する方法を提供する。
【0006】
一形態では、本発明は、治療を必要とする患者の神経芽細胞腫を治療するための方法を提供する。好ましくは、本発明は、治療を必要とする患者の高神経芽細胞腫を治療するための方法を提供する。この方法は、有効量の、(2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸(以下に、式Iとして示す)である化合物、または式Iの化合物の薬学的に許容される塩を、患者に投与することを含む。一実施形態では、式Iの化合物は、遊離酸として提供される。別の実施形態では、式Iの化合物は、塩基付加塩として提供される。1つの好ましい実施形態において、式Iの化合物は、((2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:2-メチル-2-プロパンアミン(1:1))である、2-メチルプロパン-2-アンモニウム塩(エルブミン塩またはtert-ブチルアミン塩としても知られている)として提供される。別の実施形態において、式Iの化合物は、アンモニウム塩((2R,4R)-1-[(3-クロロ-2-フルオロ-フェニル)メチル]-4-[[3-フルオロ-6-[(5-メチル-1H-ピラゾール-3-イル)アミノ]-2-ピリジル]メチル]-2-メチル-ピペリジン-4-カルボン酸:アミン(1:1)塩)として提供される。
【化1】
【0007】
別の形態において、本発明は、神経芽細胞腫の治療、好ましくは高リスクの神経芽細胞腫の治療に使用するための、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤または賦形剤のうちの1つ以上とを含む医薬組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、遊離酸である式Iの化合物を含む。別の実施形態では、組成物は、塩基付加塩、好ましくは、2-メチルプロパン-2-アンモニウム塩またはアンモニウム塩、より好ましくはメチルプロパン-2-アンモニウム塩として式Iの化合物を含む。
【0008】
さらに、本発明は、神経芽細胞腫の治療に使用するための式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。本発明は、神経芽細胞腫の治療のための薬剤を製造するための、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の使用も提供する。一実施形態では、化合物は遊離酸として提供される。別の実施形態では、式Iの化合物は、塩基付加塩として提供される。1つの好ましい実施形態において、式Iの化合物は、2-メチルプロパン-2-アンモニウム塩として提供される。さらに別の実施形態では、式Iの化合物は、アンモニウム塩として提供される。
【0009】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、神経芽細胞腫の治療を必要とする患者のための標準治療と組み合わせて使用することができる。標準治療には、腫瘍の全部または一部の手術または切除、放射線療法、幹細胞移植、化学療法剤、分化剤の投与、および免疫療法のうちの1つ以上が含まれる。
【0010】
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩と組み合わせて、またはそれと一緒に投与することができる追加の化学療法剤の例には、アルキル化剤(シクロホスファミド、テモゾロミド、および塩酸メルファラン)、白金剤(カルボプラチン、シスプラチン、およびオキサリプラチン)、アントラサイクリン(ドキソルビシン塩酸塩)、トポイソメラーゼI阻害剤(イリノテカンおよびトポテカン)、およびビンカアルカロイド(硫酸ビンクリスチン)が含まれる。分化剤にはイソトレチノイン(13-cis-レチノイン酸)が含まれ、免疫療法剤にはGD2モノクローナル抗体(ジヌツキシマブ)などのモノクローナル抗体が含まれる。式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、ならびに1つ以上の追加の化学療法剤、分化剤および/または免疫療法剤は、神経芽細胞腫を治療するために同時に、別々に、または連続して投与することができる。
【0011】
本明細書で使用される「薬学的に許容される塩」という用語は、式Iの化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩の例およびそれらの調製方法は、Stahl.P,et al.,“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use”,2nd Revised Edition,Wiley-VCH、(2011)、およびBerge,S.,M.,et al.,“Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Sciences,1977,66(1),1~19、Gould,P.L.,“Salt selection for basic drugs,International Journal of Pharmaceutics,1986,33:201~217、およびBastin,R.J.,et al.“Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities”,Organic Process Research and Development,2000,4(5)427~435に見出すことができる。
【0012】
式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、医薬組成物の一部として投与するために配合することができる。好ましい医薬組成物は、経口投与のための錠剤もしくはカプセル剤、経口投与のための溶液、または注射可能な溶液として製剤化され得る。錠剤、カプセル、または溶液は、治療を必要とする患者の神経芽細胞腫を治療するのに有効な量の、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含むことができる。好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。したがって、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される添加剤と組み合わせることができる。医薬組成物について本明細書で使用される「薬学的に許容される添加剤(複数可)」という用語は、組成物または配合物の他の添加剤と適合性であり、かつ患者に有害ではない担体、希釈剤、および賦形剤のうちの1つ以上を指す。医薬組成物およびそれらの調製のためのプロセスの例は、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Loyd,V.,et al.Eds.,22nd Ed.,Mack Publishing Co.,(2012)に見出され得る。薬学的に許容される担体、希釈剤、および賦形剤の非限定的な例には、生理食塩水、水、デンプン、糖、マンニトール、およびシリカ誘導体、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、およびポリビニルピロリドンなどの結合剤、カオリンおよびベントナイト、ならびにポリエチルグリコールが含まれる。
【0013】
「有効量」とは、研究者、獣医、医師、または他の臨床家により求められている、組織、システム、動物、哺乳動物、またはヒトの、生物学的もしくは医学的応答、または所望の治療効果を引き出す、式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩、または式Iの化合物もしくはその薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物の量を意味する。特定の実施形態において、有効量は、投与された場合、神経芽細胞腫の進行を遅らせる、停止する、もしくは逆転させるのに有効である、または患者の神経芽細胞腫細胞の成長もしくは増殖を遅らせるもしくは停止させる、式Iの化合物または薬学的に許容される塩の量を指す。
【0014】
実際に投与され、患者の組織、システム、または患者の生物学的もしくは医学的応答引き出すであろう、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量は、治療される状態、選択される投与経路、投与される本発明の実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、および応答、ならびに患者の症状の重症度を含む、関連する状況下で医師により決定される。一日当たりの用量は通常0.1~100mgの範囲内である。いくつかの例において、この範囲の下限を下回る用量レベルで十分過ぎる場合があるが、依然としてより大きな用量が用いられ得る場合もある。好ましい用量は1~80mgの範囲内であり、より好ましくは1~50mg、さらにより好ましくは1~30mgの間、なおもさらにより好ましくは1から25mgの間である。用量は、1日1回、2回、3回、またはそれ以上投与できる。一実施形態では、本発明の化合物は、1日2回(BID)経口投与される用量あたり15mgまたは25mgの用量で投与することができる。
【0015】
本明細書中で使用される場合、「患者」という用語は、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物を指す。より詳細には、「患者」という用語はヒトを指す。
【0016】
「治療する(treating)」(または「治療する(treat)」または「治療」(treatment))という用語は、神経芽細胞腫などの症状、障害、状態または疾患の進行または重症度を緩徐化すること、中断すること、阻止すること、抑制すること、低減すること、または逆転することを含むプロセスを指す。
【0017】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下に示された意味を有する。「ATCC」は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture collection)を指す。「BID」は、1日2回の投与を指す。「DMEM」は、ダルベッコの改良イーグル培地を指す。「DNA」はデオキシリボ核酸を指す。「EMEM」はイーグル最小必須培地を指す。「F12」はハムのF12媒体を指す。「FBS」はウシ胎児血清を指す。「HBSS」はハンクの平衡塩類溶液を指す。「HSRRB」は、Health Science Research Resources Bankを指す。「JCRB」は、Japanese Collection of Research Bioresourcesを指す。「MEM」は最小必須培地を指す。「NBL」は神経芽細胞腫を指す。「NEAA」は非必須アミノ酸を指す。「PBS」はリン酸緩衝生理食塩水を指す。「RPMI」とは、Roswell Park Memorial Instituteを指す。「SCID」は重症複合免疫不全症マウスを指す。
【0018】
式Iの化合物ならびに2-メチルプロパン-2-アンモニウムおよびアンモニア塩を含むその薬学的に許容される塩は、US9,637,474に開示される合成方法に従って調製することができる。
【0019】
生物学的アッセイ
単層抗増殖アッセイ
オーロラA阻害剤の効力の尺度の1つは、細胞周期の停止と分裂死による培養中の癌細胞の増殖を阻害する能力である。NBL細胞株におけるオーロラA阻害剤の抗増殖活性は、オーロラA阻害剤に対する臨床反応性を示している可能性がある。NBL腫瘍細胞株は凍結ストックから回収され、細胞培養フラスコで1~2継代培養される。NBL腫瘍細胞株には、CHP-212、GOTO、IMR-32、NB16、NH-6、SH-SY5Y、SK-N-AS、SK-N-DZ、SK-N-F1、SK-N-MC、SK-N-SHおよびTGWが含まれ、詳細を表1に示す。
【表1】
【0020】
オーロラA阻害剤の抗増殖活性は、CellTiter Glo(登録商標)アッセイで測定できる。式Iの化合物で処理する前に、細胞を完全増殖培地中で、各細胞株について所定の最適密度で、白い壁の透明な底のマイクロタイタープレートにプレーティングする。プレーティングの16時間後、式Iの化合物を添加する。化合物添加後2回の細胞倍加時間で、CellTiter-Glo(登録商標)試薬をメーカーのプロトコルに従って調製し、各ウェルに添加する。プレートを室温で10分間インキュベートした後、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイの製造元のプロトコルである、Promegaカタログ番号G7571に従って発光プレートリーダーで読み取る。
【0021】
オーロラA阻害剤の抗増殖活性は、処理後の細胞数を数えることによっても測定できる。このアッセイでは、完全増殖培地中のNBL細胞株SK-N-DZ、SK-N-F1、およびKELLYを、ウェルあたり5,000細胞で黒い壁の透明な底のマイクロタイタープレートに播種する。プレーティングの16時間後、式Iの化合物を72時間添加する。次に、細胞を3.7%ホルムアルデヒド(Sigma #F-1268)で固定し、0.1%TritonX-100(Roche #92522020)を含むPBSで10分間透過処理した後、DNAをPBSで1:5000に希釈したHoechst 33342(Mol.Probes #H-21492)で染色する。染色されたプレートを、ターゲット活性化バイオアプリケーションを使用してCellInsight NXT(登録商標)スクリーニングプラットフォーム(Thermo Fischer)でスキャンし、ウェルあたりの細胞の尺度であるフィールドあたりの核を定量化する。両方のアッセイについて、絶対EC50値は、式Iの10点段階希釈曲線から報告される。
【0022】
表2に示すように、小児NBL細胞株は、式Iの化合物によるインビトロ治療に非常に敏感である。これは、式Iの化合物がさまざまな神経芽細胞腫細胞株の細胞増殖を阻害するのに効果的であることを示している。
【表2】
【0023】
神経芽細胞腫異種移植腫瘍モデルにおける単剤の効力
式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩の効力は、神経芽細胞腫のインビボマウスモデルにおいて評価することができる。2-メチル-2-プロパンアミン塩(34.5mg/kg)としての式Iの化合物は、28日のBID投与スケジュールを使用して、細胞由来異種移植片(CDX)を有するヌードまたはC.B-17 SCIDマウスに経口投与することができる。腫瘍体積および体重は、週に2回測定することができる。
【0024】
有効薬学的成分に応答した腫瘍体積の減少を測定するために、以下のプロトコルを使用することができる。培養中のヒトNBL癌細胞を増殖させ、繰り返し採取し、HBSSとMatrigel(登録商標)の1:1溶液200μL中の5×106細胞を、雌マウス(20~24g、Charles River Laboratories)の右後部側腹部に皮下注射する。次の細胞株/マウス系統の組み合わせが使用される:無胸腺ヌードマウスのSH-SY5Y(ATCC、#CRL-2226)、C.B.-17SCIDマウスのKELLY(Sigma-#92110411)、およびC.B.-17SCIDマウスのIMR-32(ATCC、#CCL-127)。
【0025】
式Iの化合物を、pH2の25mMリン酸緩衝液中の20%の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン中の2-メチル-2-プロパンアミン塩として配合し、34.5mg/kg BIDで28日間経口投与する。体重と腫瘍体積を週に2回測定する。
【0026】
2-メチル-2-プロパンアミン塩としての式Iの化合物は、表3に提供されるような、回帰値%を有することが見出される。
【表3】
【0027】
これらの結果は、2-メチル-2-プロパンアミン塩としての式Iの化合物が、ヒトNBL異種移植モデルにおいて有意な抗腫瘍活性を示すことを示している。2-メチル-2-プロパンアミン塩としての式Iの化合物は、試験された小児NBLインビボマウスモデルの100%(3/3)において単剤として有効であり、結果は安定した疾患から完全な応答に渡る。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】