(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058591
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20230418BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230418BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20230418BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230418BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20230418BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20230418BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230418BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20230418BHJP
【FI】
A61K39/395 M
A61P1/00 ZNA
A61K9/30
A61K47/32
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/14
A61K47/12
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/44
A61P1/04
C07K16/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017273
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2018551137の分割
【原出願日】2017-03-31
(31)【優先権主張番号】16163178.3
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.BRIJ
3.TRITON
4.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】521555823
【氏名又は名称】ソリッソ ファーマシューティカルズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】スコット クロエ
(72)【発明者】
【氏名】マイク ウエスト
(72)【発明者】
【氏名】ケビン ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】ティム カールトン
(72)【発明者】
【氏名】ルアナ マッジョーレ
(72)【発明者】
【氏名】マリオン キュービット
(72)【発明者】
【氏名】ゲーリー ワール
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ワフリクフ
(72)【発明者】
【氏名】マイク フロッドシャム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】腸管の領域に医薬活性結合ポリペプチドを経口投与により送達するための固体医薬組成物を提供する。
【解決手段】圧縮コアを含む固体医薬組成物であって、該圧縮コアが:
(i)コアの重量に対して40~75重量%存在する単一免疫グロブリン鎖可変ドメイン抗体を含む、医薬活性結合ポリペプチド、
(ii)コアの重量に対して20~55重量%存在する1以上の圧縮助剤、
(iii)1以上の崩壊剤、を含み、
該圧縮コアが、pH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、固体医薬組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮コアを含む、腸管の領域への経口投与により腸管の疾患の治療において使用するた
めの固体医薬組成物であって、該圧縮コアが:
(i) 該コアの重量に対して40~75重量%存在する医薬活性結合ポリペプチド、
(ii) 該コアの重量に対して20~55重量%存在する1以上の圧縮助剤、
(iii) 1以上の崩壊剤、を含み、
該圧縮コアが、pH感受性腸溶性コーティングでコーティングされており、かつ該医薬活
性結合ポリペプチドが、単一免疫グロブリン鎖可変ドメイン抗体を含む、前記固体医薬組
成物。
【請求項2】
前記1以上の崩壊剤が、前記コアの重量に対して2~6重量%存在する、請求項1記載の
固体医薬組成物。
【請求項3】
前記pH感受性腸溶性コーティングが、0.5~3.5のpHへの2時間以上の曝露の後に初めて
溶解する、請求項1又は2記載の固体医薬組成物。
【請求項4】
前記pH感受性腸溶性コーティングが、小腸又は大腸の領域に曝露された際に前記医薬活
性結合ポリペプチドを放出する、請求項1~3のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項5】
前記1以上の圧縮助剤が、クロスポビドンなどの合成ポリマー、スクロース、グルコー
ス、ラクトース、及びフルクトースなどの糖、マンニトール、キシリトール、マルチトー
ル、エリスリトール、ソルビトールなどの糖アルコール、結晶性セルロース、微結晶性セ
ルロース、粉末化セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルセルロースの
ようなセルロースなどの水溶性多糖、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコ
ール酸ナトリウム、クロスポビドンなどの合成ポリマー、並びに炭酸カルシウムなどの無
機化合物からなるリストから選択される、請求項1~4のいずれか1項記載の固体医薬組成
物。
【請求項6】
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメ
ロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース、カルボキ
シメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、コメデンプン、コムギデン
プン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、及び部分アルファ化デンプンなどの
デンプンからなるリストから選択される1以上の崩壊剤を含む、請求項1~5のいずれか1項
記載の固体医薬組成物。
【請求項7】
ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;ステアリ
ン酸亜鉛などのステアリン酸塩、鉱油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウ
ム、ステアリルフマル酸ナトリウム、トウモロコシデンプン;バレイショデンプン;アル
ファ化デンプン;タピオカデンプン;コムギデンプンなどのデンプン、ステアリン酸、タ
ルク、植物油、及びステアリン酸亜鉛からなるリストから選択される1以上の滑沢剤をさ
らに含む、請求項1~6のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項8】
前記1以上の滑沢剤が、前記コアの重量に対して0.1~2重量%、例えば約1重量%存在す
る、請求項7記載の固体医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬活性結合ポリペプチドが、前記コアの重量に対して約50重量%~60重量%存在
する、請求項1~8のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項10】
前記pH感受性腸溶性コーティングが、10~300μmの厚さを有している、請求項1~9のい
ずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項11】
前記pH感受性腸溶性コーティングが、1以上の可塑剤、粘着防止剤、及び界面活性剤と
一緒にpH感受性腸溶性ポリマーコートを含み、又はこれらからなる、請求項1~10のいず
れか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬活性結合ポリペプチドの分子量が5~200 kDであり、及び/又は
前記医薬活性結合ポリペプチドが、10 mg/mL超、例えば30 mg/mL超の水溶性を有する、
請求項1~11のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項13】
前記単一免疫グロブリン鎖可変ドメイン抗体が、VH又はVHHである、請求項1~12のいず
れか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項14】
前記単一免疫グロブリン鎖可変ドメイン抗体が、10~50キロダルトン(kDa)の分子量
を含む、請求項1~13のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬活性結合ポリペプチドが、配列番号:1~28のいずれか一つのものを含む、請求
項1~14のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬活性結合ポリペプチドが、配列番号: 1~28のいずれか一つのものからなる、
請求項15記載の固体医薬組成物。
【請求項17】
薬局方収載の腸溶性コーティング試験でアッセイする際に、前記医薬組成物が2時間後
に前記医薬活性結合ポリペプチドを10重量%未満放出し、
薬局方収載の溶解性試験でアッセイする際に、前記医薬組成物が、
(i) 30分後に前記医薬活性結合ポリペプチドの10~40重量%を、
(ii) 60分後に該医薬活性結合ポリペプチドの30~60重量%を、及び
(iii) 120分後に該医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を放出する、又は
動的溶解性試験でアッセイする際に、前記医薬組成物の放出の開始が90~210分で起こ
り、該医薬組成物が、
(i) 放出の開始から60分後に前記医薬活性結合ポリペプチドの10~30重量%を、
(ii) 放出の開始から120分後に該医薬活性結合ポリペプチドの40~70重量%を、及び
(iii) 放出の開始から180分後に該医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を放出す
る、請求項1~16のいずれか1項記載の固体医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は腸管の領域に医薬活性結合ポリペプチドを、経口投与することにより送達する
ことを目的とする固体医薬組成物に関する。これらの組成物は有利な放出プロファイルか
ら利益を得るものであり、腸管の疾患の治療において使用することができる。また、本発
明は経口投与により腸管の領域へ医薬活性結合ポリペプチドを送達する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
炎症性腸疾患などの疾患は、腸管の様々な領域、例えば小腸の領域において現れる。全
身投与した際に炎症性腸疾患の治療に効果的となる医薬活性結合ポリぺプチドが存在する
。例えば、抗TNF-α抗体は、炎症性腸疾患の治療に有効であることが実証されている。し
かしながら、これらの抗体は一般的に注射(すなわち、静脈内、皮下、又は筋肉内)によ
って送達され、かつTNF-αを全身で中和するため、それらの使用は結核の再活性化及び悪
性腫瘍の長期リスクを含む深刻な副作用と関連付けられ得る。さらに、投与が非経口経路
であり、かつ必要となる用量が大きいことにより、これらの抗体療法は高価となり、患者
にとって利用し難いものとなる。
【0003】
そのようなポリペプチドの腸管の標的領域における局所効果のための経口投与は、例え
ばこの剤形の費用の低さ及び利便性のために、好ましいであろう。さらに、経口投与は非
経口剤形と比較して免疫原性の低下をもたらし、かつポリペプチドへの不必要な全身曝露
を低下させ又はなくすことができる。
【0004】
この目的を達成するためには、好適な放出プロファイルが達成されなくてはならない。
すなわち、ポリペプチドの活性は胃及び好適には十二指腸を含む上部腸管を通過した後に
維持されなくてはならず、活性ポリペプチドの所望の投薬量が腸管の所望の位置に送達さ
れなくてはならない。
【0005】
少なくともいくつかの実施態様において、本発明の医薬組成物は、先行技術の医薬組成
物と比較して以下の利点:
(i) 持続放出プロファイル、
(ii) 遅延放出プロファイル、
(iii) 腸管の1以上の領域への標的化放出、
(iv) 十二指腸から肛門管までの腸管の全ての領域への実質的にむらのない放出(すな
わち、「用量ダンピング」を回避する)
(v) 非経口投与と比較した送達ポリペプチドに対する宿主免疫反応の低下、
(vi) 医薬活性薬剤への全身曝露の低下、
(vii) 治療効果に要求される投薬量の低下、
(viii) 生産費用の低下、
(ix) ポリペプチドの熱安定性の維持又は向上、の1以上を有する。
【0006】
(先行技術)
WO2014/030049(D1)では、単一可変ドメイン、及び単一可変ドメインを、特に胃及び
腸などのプロテアーゼに富む環境において安定化させる手段としてのカモスタットメシル
酸塩を含む組成物を開示している。D1では、マウスの胃腸管へと直接注入する液体組成物
が例示されている。
【0007】
US2010/260857(D2)では、コーティングされた消化酵素調製物を開示している。D2で
は、脂質でコーティングされ、サシェ剤又はカプセル剤中に詰められる自由流動する消化
酵素粒子が例示されている。
【0008】
WO2008/122965(D3)では、可溶性液体形態のシクロスポリン組成物を開示している。
【0009】
US2006/057197(D4)では、非ポリペプチド性低分子の医薬剤形を開示している。D4に
おける全ての例示は、バクロフェンの送達及びその後の血漿プロファイルのモニタリング
に関する。
【0010】
Hussanらの文献、2012 IOSR Journal of Pharmacy 2(6):5-11(D5)は、腸溶性コーテ
ィングの最近の進歩の総説である。
【0011】
Harmsenらの文献、2006 Applied Microbiology and Biotechnology 72(3):544-551(D6
)では、経口免疫療法のためのタンパク質分解に安定なラマ単一ドメイン抗体断片の選択
及び最適化を開示している。D6では固体剤形に関する情報が提供されない。
【0012】
Hussackらの文献、2011 PLOS ONE 6(11):e28218(D7)では、プロテアーゼ抵抗性及び
熱安定性が高い操作された単一ドメイン抗体を開示している。D7では、固体剤形に関する
情報が提供されない。
【0013】
上記のいずれも、医薬活性結合ポリペプチドの持続的な腸への送達が可能な圧縮コアを
含む固体組成物を開示しない。
【発明の概要】
【0014】
(発明の概要)
本発明者らは驚くべきことに、腸管の領域に医薬活性結合ポリペプチドを経口投与によ
って送達するために好適な、有利な固体医薬製剤を生産した。これらの医薬製剤はそれら
の遅延及び/又は持続放出プロファイルのために特に有利である。これらの医薬製剤は腸
管の疾患、例えば自己免疫性及び/若しくは炎症性腸疾患などの炎症性疾患の予防若しく
は治療、又は腸管の常在性病原性微生物感染の予防若しくは治療において特に有用である
と期待できる。
【0015】
本発明は、圧縮コアを含む、腸管の領域に医薬活性結合ポリペプチドを経口投与により
送達するための固体医薬組成物であって、該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプチドを含み
、かつ該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、前記固体医
薬組成物を提供する。
【0016】
また、圧縮コアを含む、腸管の領域への経口投与により腸管の疾患の治療において使用
するための固体医薬組成物であって、該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプチドを含み、か
つ該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、前記固体医薬組
成物も提供する。
【0017】
また、腸管の領域へ医薬活性結合ポリペプチドを送達する方法であって、圧縮コアを含
む固体医薬組成物を経口投与することを含み、ここで該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプ
チドを含み、かつ該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、
前記方法も提供する。
【0018】
また、固体医薬組成物のための圧縮コアであって、該組成物が経口投与により腸管の領
域に医薬活性結合ポリペプチドを送達するためのものであり、かつ該圧縮コアが局所治療
効果のための医薬活性結合ポリペプチドを含む、前記圧縮コアも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
(図面の説明)
【
図1】薬局方収載の溶解性試験での医薬活性結合ポリぺプチドの溶解率(%)(個別のデータ点)。
【
図2】薬局方収載の溶解性試験での医薬活性結合ポリぺプチドの溶解率(%)(データ点の平均)。
【
図3】動的溶解性試験で使用される絶食条件に対する胃及び腸のシミュレートされたpHプロファイル。
【
図4】動的溶解性試験での医薬活性結合ポリペプチドの溶解率(%)(バッチA)。
【
図5】動的溶解性試験での医薬活性結合ポリペプチドの溶解率(%)(バッチB)。
【
図6】医薬活性結合ポリペプチドのTmへの賦形剤の影響を示す熱シフトアッセイ。
【
図7】カニクイザル胃腸管区画における管腔[抗TNF ICVD]の計算値。
【
図8】カニクイザル胃腸管からの抗TNF ICVDの総回収率(%)。
【
図9】ヒュミラ競合ELISAのOD450のデータ。
【
図10】カニクイザル糞便プール中の抗TNF ICVD濃度。
【
図11】カニクイザル糞便プールから回収された抗TNF ICVDの計算値。
【
図12】噴霧乾燥した出発物質及び凍結乾燥させた出発物質と比較する動的溶解性試験。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(配列の記載)
配列番号:1―Q62E10のポリペプチド配列
配列番号:2―Q65F2のポリペプチド配列
配列番号:3―Q65F3のポリペプチド配列
配列番号:4―Q62F2のポリペプチド配列
配列番号:5―Q65G1のポリペプチド配列
配列番号:6―Q65H6のポリペプチド配列
配列番号:7―Q65F1のポリペプチド配列
配列番号:8―Q65D1のポリペプチド配列
配列番号:9―Q65C7のポリペプチド配列
配列番号:10―Q65D3のポリペプチド配列
配列番号:11―Q65B1のポリペプチド配列
配列番号:12―Q65F6のポリペプチド配列
配列番号:13―Q65F11のポリペプチド配列
配列番号:14―Q65E12のポリペプチド配列
配列番号:15―Q65C12のポリペプチド配列
配列番号:16―Q65A6のポリペプチド配列
配列番号:17―Q65A3のポリペプチド配列
配列番号:18―Q62F10のポリペプチド配列
配列番号:19―ID7F-EVのポリペプチド配列
配列番号:20―ID8F-EVのポリペプチド配列
配列番号:21―ID9F-EVのポリペプチド配列
配列番号:22―ID13F-EVのポリペプチド配列
配列番号:23―ID14F-EVのポリペプチド配列
配列番号:24―ID15F-EVのポリペプチド配列
配列番号:25―Q62E10-DVQLVのポリペプチド配列
配列番号:26―ID34Fのポリペプチド配列
配列番号:27―ID37Fのポリペプチド配列
配列番号:28―ID38Fのポリペプチド配列
【0021】
(発明の詳細な説明)
(放出プロファイル)
医薬活性結合ポリペプチドを含む組成物の放出プロファイルは、組成物から放出され、
従って経時的にその標的と自由に結合する医薬活性結合ポリペプチドの量である。本件出
願は胃から直腸までの腸管における固体医薬組成物の放出プロファイルに関する。放出プ
ロファイルは、胃から直腸までを通過する間にインビボで達成される放出プロファイル、
又は胃から直腸までの通過のインビトロモデルにおいて達成される放出プロファイルを指
し得る。放出プロファイルは以下に記載する放出プロファイルのように、好適な溶解装置
を用いる溶解性試験によってインビトロで試験することができる。より好適には、本件出
願は十二指腸から直腸までの、より好適には空腸から直腸までの腸管中の固体医薬組成物
の放出プロファイルに関する。
【0022】
欧州医薬品庁の節「3.2.規格設定」の下の「経口修飾放出製品の質に関する指針(Guid
eline on quality of oral modified release products)」では、胃内耐性製品のインビ
トロ溶解性に関して少なくとも2つの点:酸性媒体中での放出の余地をなくす(2時間後に
10%未満溶解)早い時点、及び活性物質の大部分が(ほぼ)中性媒体中で確実に放出され
る別の時点を仕様書に含めるべきであると明言されている。
【0023】
「遅延放出」は、医薬活性結合ポリペプチドを含む組成物が、(a) 外部環境(例えば、
酸性pH)から医薬活性結合ポリペプチドを保護し、かつ(b) 組成物が腸管の所望の領域に
到達するまでに一切の医薬活性結合ポリペプチドを外部環境に放出しない能力を指す。遅
延放出は、pH感受性腸溶性コーティングのおかげで達成される。pH感受性腸溶性コーティ
ングが完全性を長く維持するほど、遅延放出の期間は長くなる。放出がさらに遅延し得る
ように(例えば、組成物が十二指腸を通過して空腸に入るまで、医薬活性結合ポリペプチ
ドが確実に放出されないようにするために)、pH感受性腸溶性コーティングの特性を適応
させることができる。あるいは、放出が進行し得るように(例えば、医薬活性結合ポリペ
プチドが、胃を出た後依然として十二指腸の内部にある間にのみ確実に放出されるように
)、pH感受性腸溶性コーティングの特性を適応させることができる。
【0024】
「持続放出」は、医薬活性結合ポリペプチドを含む組成物が、腸管の所望の領域(1つ
又は複数)を通過する間に、所望の、理想的には実質的に一定の速度で、外部環境へと医
薬活性結合ポリペプチドを放出する能力を指す。
【0025】
本発明の組成物は、好適には遅延放出及び持続放出の両方を達成する。
【0026】
薬局方において総合的に規定される遅延及び持続放出の公定のインビトロ試験が存在す
る。錠剤溶解法は剤形からの薬物放出速度を測定するための規格化された方法である。イ
ンビトロ溶解試験を使用して、インビボでの薬物の溶解性を予測することができる。好適
なインビトロ溶解性試験を、以下に詳述する。
【0027】
(遅延放出:腸溶性コーティングの放出プロファイル)
(遅延放出の測定:薬局方収載の腸溶性コーティング試験)
腸溶性コーティングを試験する好適かつ広く使用されている標準的方法は、欧州薬局方
8.0「2.9.3 固体剤形の溶解性試験」(米国薬局方及び日本薬局方の対応するテキストと
調和する)によって提供される方法であり、本明細書では、「薬局方収載の腸溶性コーテ
ィング試験」と呼ぶ。この腸溶性コーティング試験は以下のように実施する。
1. 試験すべき組成物をUSP2装置中の900mLの0.1M HClに加える(カプセル中に提示する
場合、バンドおもり(band sinkers)とともに)。
2. 組成物及び酸を100 rpmで2時間撹拌する。
【0028】
2時間後に溶解媒体を採取して、分析する。好適には、医薬組成物は2時間後に医薬活性
結合ポリペプチドの10重量%未満を放出する。より好適には、医薬組成物は2時間後に医
薬活性結合ポリペプチドの5重量%未満を放出する。より好適には、医薬組成物は2時間後
に医薬活性結合ポリペプチドの1重量%未満を放出する。より好適には、医薬組成物は2時
間後に医薬活性結合ポリペプチドを放出しない。
【0029】
2時間後に医薬活性結合ポリペプチドの10重量%未満を放出することは、腸溶性コーテ
ィングが腸管の所望の領域への送達に先立ってポリペプチドに適切な保護を提供すること
を示す。この放出プロファイルを有する組成物は、遅延放出を達成する。
【0030】
所望の場合、薬局方収載の腸溶性コーティング試験は、2時間超にわたって実行し続け
るように改変することができる。これにより、pH感受性腸溶性コーティングが無傷であり
続ける最大の時間を分析することが可能となる。少量の組成物を使用する場合、試験の正
確さは使用するHClの分量を低下させることにより高めることができる。
【0031】
外観試験に基づいて組成物が内容物の流出を可能とする崩壊又は亀裂の徴候を示さない
場合、pH感受性腸溶性コーティングは「無傷」であると言われる(欧州薬局方8.0 2.9.3
に略述されている)。あるいは、組成物が存在する溶解媒体中に1%以下、より好適には0
.5%以下の医薬活性結合ポリペプチドが検出できるか、又はより好適には医薬活性結合ポ
リペプチドが検出できない場合に、pH感受性腸溶性コーティングは「無傷である」と言う
ことができる。好適には、pH感受性腸溶性コーティングは、薬局方収載の腸溶性コーティ
ング試験の間、少なくとも2時間、より好適には少なくとも3時間、より好適には少なくと
も4時間、より好適には少なくとも5時間、より好適には少なくとも6時間無傷であり続け
る。
【0032】
(持続放出:コアの放出プロファイル)
持続放出特性は、好適には組成物を、先に詳述した薬局方収載の腸溶性コーティング試
験を使用して遅延放出特性について試験した直後に試験する。このような場合、遅延放出
試験が完了した後、組成物を0.1 M HClから篩別し、新鮮な0.1 M HClで洗浄し、その後最
終的に、組成物を以下に記載した持続放出試験において記載された溶解媒体(リン酸緩衝
液)に移すべきである。
【0033】
(持続放出の測定:薬局方収載の溶解性試験)
溶解性を試験する好適かつ広く使用されている標準的方法は、欧州薬局方8.0「2.9.3
固体剤形の溶解性試験」(米国薬局方及び日本薬局方の対応するテキストと調和する)に
よって提供される方法である。この溶解性試験を本明細書では「薬局方収載の溶解性試験
」と呼ぶ。この溶解性試験は以下のように実施する。
1. 試験すべき組成物をUSP2装置中の900mLの0.05 Mリン酸緩衝液 pH 7.4に加える(カ
プセル中に提示する場合、バンドおもりとともに)。
2. 組成物及び緩衝液を100 rpmで2時間撹拌する。
3. 組成物及び緩衝液を続いて200 rpmで30分間撹拌する。
【0034】
溶解媒体を5、10 15、30、45、60、90、及び120分後に(100 rpmの撹拌を行う期間中に
)、及び150分後に(200 rpmの撹拌を行う期間中に)採取して、分析してもよい。
【0035】
好適には、薬局方収載の溶解性試験でアッセイする際に、本発明の医薬組成物は:
(i) 30分後に医薬活性結合ポリペプチドの10~40重量%、
(ii) 60分後に医薬活性結合ポリペプチドの30~60重量%、及び
(iii) 120分後に医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、放出する。
【0036】
図2は、薬局方収載の溶解性試験において、実施例1の組成物によって達成される溶解率
(%)プロファイルを示す。上記溶解性の範囲を
図2において矢印で示す。
【0037】
より好適には、薬局方収載の溶解性試験でアッセイする際に、本発明の医薬組成物は:
(i) 30分後に医薬活性結合ポリペプチドの10~25重量%、
(ii) 60分後に医薬活性結合ポリペプチドの30~50重量%、及び
(iii) 120分後に医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、放出する。
【0038】
より好適には、薬局方収載の溶解性試験でアッセイする際に、本発明の医薬組成物は:
(i) 30分後に医薬活性結合ポリペプチドの13~20重量%、
(ii) 60分後に医薬活性結合ポリペプチドの35~45重量%、及び
(iii) 120分後に医薬活性結合ポリペプチドの65重量%以上を、放出する。
【0039】
(遅延及び持続放出:統合した腸溶性コーティング及びコアの放出プロファイル)
(動的溶解性試験)
あるいは、又は上記薬局方収載の試験に加えて、腸溶性コーティング及びコアの放出プ
ロファイルを統合して試験する好適な方法を、本明細書において「動的溶解性試験」と呼
ぶ。
【0040】
図3は、動的溶解性試験において使用される絶食条件に対するシミュレートされたpHプ
ロファイルを示す。この試験のさらなる情報は、主にGarbaczらの文献、2014並びにまた
、Faddaらの文献、2009、Merchantらの文献、2014、及びGoyanesらの文献、2015において
取得可能である。この試験は以下のように実施する。
1. 試験すべき組成物をUSP2装置中の900mLの0.1 M HClに加える。
2. 組成物及び酸を50 rpmで2時間撹拌する。
【0041】
この0.1 M HCl中での2時間の期間を
図3の点線に先行する領域に示す。
【0042】
溶解媒体を2時間後に採取し、分析する。好適には医薬組成物は、2時間後に医薬活性結
合ポリペプチドの10重量%未満を放出する。より好適には医薬組成物は、2時間後に医薬
活性結合ポリペプチドの5重量%未満を放出する。より好適には医薬組成物は、2時間後に
医薬活性結合ポリペプチドの1重量%未満を放出する。より好適には医薬組成物は、2時間
後に医薬活性結合ポリペプチドを放出しない。
【0043】
2時間後に医薬活性結合ポリペプチドの10重量%未満が放出されることは、腸溶性コー
ティングにより腸管の所望の領域に送達する前にポリペプチドの適切な保護が提供される
ことを示している。この放出プロファイルを有する組成物は遅延放出を達成する。
【0044】
この試験の次の段階では、胃腸管に沿って存在する変化するpHプロファイルを通過する
間に組成物が溶解することを確認する。
図3(点線に続く曲線)は、使用される絶食条件
に対してシミュレートされたpHプロファイルを示す。試験のこの段階は、以下のように実
施される。
1. 試験する組成物をUSP2装置中の900mLのpH 5.79のハンクス炭酸水素緩衝液(詳細を
以下の表1に示す)に移す(ハンクス緩衝液に移す時点を
図3中に点線によって示す)。
2. 組成物及び緩衝液を16時間(
図3によると、溶解媒体のpHはこの時間にわたって変化
する)50 rpmで撹拌する。溶解媒体のpHの変化量は、気体として存在する二酸化炭素(pH
を下げるため)又は気体として存在する窒素(pHを上げるため)への曝露によって変化し
得る。pHプロファイルは、小腸通過のpHの中央値のプロファイル並びに絶食時の結腸通過
のモデルpHプロファイルをシミュレートする。
3. 組成物及び緩衝液を続いて200rpmで2時間撹拌する。
【0045】
【0046】
放出された医薬活性結合ポリペプチドの量の分析のための試験の持続期間にわたり、10
分毎に試料を採取してもよい。
【0047】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドの放出の開始は、組成物のハンクス緩衝液への追
加から90分~210分で起こる。本明細書で使用される「放出の開始」は、動的溶解性試験
において、ハンクス緩衝液への追加後に1%超の医薬活性結合ポリペプチドがコアから放
出される最初の時点を指す。
【0048】
好適には、動的溶解性試験においてアッセイする際に、医薬組成物は:
(i) 放出の開始から60分後に医薬活性結合ポリペプチドの10~30重量%、
(ii) 放出の開始から120分後に医薬活性結合ポリペプチドの40~70重量%、及び
(iii) 放出の開始から180分後に医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、放出す
る。
【0049】
好適には、動的溶解性試験においてアッセイする際に、医薬組成物は:
(i) 放出の開始から60分後に医薬活性結合ポリペプチドの10~30重量%、
(ii) 放出の開始から120分後に医薬活性結合ポリペプチドの40~60重量%、及び
(iii) 放出の開始から180分後に医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、放出す
る。
【0050】
より好適には、動的溶解性試験においてアッセイする際に、医薬組成物は:
(i) 放出の開始から60分後に医薬活性結合ポリペプチドの12~25重量%、
(ii) 放出の開始から120分後に医薬活性結合ポリペプチドの45~58重量%、及び
(iii) 放出の開始から180分後に医薬活性結合ポリペプチドの65重量%以上を、放出す
る。
【0051】
時折、ハンクス緩衝液に加えてすぐに尚早に少量のポリペプチドの放出が起こり、続い
てそのすぐ後に実質的な放出が開始する場合がある。従って「実質的な放出の開始」は、
医薬活性結合ポリペプチドの1%超が放出された時点として定義され、医薬活性結合ポリ
ペプチドの放出量の段階的な増加がその後10、20、及び30分の各時点で起こる。
【0052】
好適には、動的溶解性試験においてアッセイする際に、医薬組成物は:
(i) 実質的な放出の開始から60分後に医薬活性結合ポリペプチドの10~30重量%を、
(ii) 実質的な放出の開始から120分後に医薬活性結合ポリペプチドの40~70重量%を、
及び
(iii) 実質的な放出の開始から180分後に医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を
、放出する。
【0053】
(放出された医薬活性結合ポリペプチドの量の測定(溶解率(%))
上記試験における医薬活性結合ポリペプチドの溶解率(%)の測定は、例えば溶解媒体
のUV又はHPLC分析によって実施することができる。好適には、上記試験において、医薬活
性結合ポリペプチドの溶解率(%)の測定は、溶解媒体のUV分析によって実施する。好適
には、UV路長10 mm及び分光光度計波長279 nmを使用する。既知の量のポリペプチドを含
む標準溶液の吸光度を測定して標準曲線を作成し、続いて医薬活性結合ポリペプチドの放
出率(%)をこの標準曲線から確認する。あるいは、この曲線は線形であると仮定するこ
とができ、標準の一点測定をすることができる。
【0054】
理論によって拘束されることなく、医薬組成物の水性環境との接触によって引き起こさ
れるゲル化現象は、本発明の組成物中に組み込まれる医薬活性結合ポリペプチドの持続放
出プロファイルに寄与し、その結果ポリペプチドが水溶性の高い化合物から予測されより
も遅く、むらのない速度で溶解媒体又はインビボ環境中に放出されると考えられている。
【0055】
(腸内通過時間)
小腸の各領域を通る絶食状態でのおよそのヒト腸通過時間(時間)は、以下の通り:
十二指腸の通過 0.3
空腸の通過 1.7
回腸の通過 1.3
である。
【0056】
満腹状態の通過時間は、上記通過時間と同様である。これらの通過時間を考慮すると、
インビトロでポリペプチドが比較的pHの高い緩衝液環境に入ってからおよそ18分後に放出
され始めるように製剤化されたpH感受性腸溶性コーティングを有する組成物は、インビボ
において最初に空腸においてポリペプチドを放出すると予想され得る。同様に、インビト
ロでポリペプチドが比較的pHの高い緩衝液環境に入ってからおよそ120分後に放出され始
めるように製剤化されたpH感受性腸溶性コーティングを有する組成物は、インビボにおい
て最初に回腸においてポリペプチドを放出すると予想され得る。組成物が腸管の残りの下
部領域を通過する間に、放出は持続し、続いて安定水準に達する。
【0057】
(錠剤成分)
(医薬活性結合ポリペプチド)
ポリペプチドは、相互に結合して鎖状になった多数のアミノ酸残基からなる有機ポリマ
ーである。本明細書で使用する「ポリペプチド」は、「タンパク質」及び「ペプチド」と
互換的に使用する。ポリペプチドが標的抗原上のエピトープに親和性(本明細書でさらに
記載するように、好適にはKd値、Ka値、kon速度、及び/又はkoff速度と表される)をもっ
て結合することができる抗原結合部位を形成する、1以上のアミノ酸残基のストレッチを
含む場合、それらが結合ポリペプチドであると言う。「結合ポリペプチド」及び「抗原結
合ポリペプチド」は、本明細書中で同義に使用する。結合ポリペプチドが対象への投与に
際し、有益な薬理学的作用を及ぼすことが可能である場合、結合ポリペプチドは医薬活性
がある。好適にはポリペプチドは医薬活性結合ポリペプチドであり、その結果生体標的(
典型的には受容体、イオンチャネル、酵素、構造タンパク質、又はサイトカインなどのタ
ンパク質)と結合し、より好適にはこれと拮抗し、又はこれを中和する。いくつかの実施
態様において、医薬活性結合ポリペプチドは生体標的(例えば、受容体)を刺激し得る。
医薬活性結合ポリペプチドは、抗体(以下にさらに記載する)、追加の結合領域を含むよ
うに修飾された抗体、抗体ミメティクス、及び抗原結合抗体断片(以下にさらに記載する
)などのポリペプチドを含み得る。さらなる医薬活性結合ポリペプチドには、DARPin(Bi
nzらの文献、Journal of Molecular Biology 332(2):489-503)、Affimers(商標)、Fyn
omers(商標)、センチリン(Centyrins)、Nanofitins(登録商標)、及び環状ペプチド
を含み得る。
【0058】
従来の抗体又は免疫グロブリン(Ig)は、4つのポリペプチド鎖:2つの重(H)鎖及び2
つの軽(L)鎖を含むタンパク質である。各々の鎖は定常領域及び可変ドメインに分けら
れる。重鎖可変ドメインは本明細書においてVHCと略記し、軽(L)鎖可変ドメインは本明
細書においてVLCと略記する。これらのドメイン、それらに関係するドメイン、及びそれ
らに由来するドメインを、本明細書において免疫グロブリン鎖可変ドメイン(「ICVD」)
と呼ぶ。VHC及びVLCドメインは「フレームワーク領域」(「FR」)と呼ばれるより保存さ
れた領域が散在している、「相補性決定領域」(「CDR」)と呼ばれる高頻度可変領域へ
とさらに細分され得る。フレームワーク領域及び相補性決定領域は、厳密に定義されてい
る(本明細書においてその全体が参照により組み込まれている、Kabatらの文献、1991)
。従来の抗体において、各々のVHC及びVLCはアミノ末端からカルボキシ末端へと以下:FR
1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4の順番で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成
される。従来の2つの重免疫グロブリン鎖及び2つの軽免疫グロブリン鎖でできた抗体四量
体は、例えばジスルフィド結合によって相互接続された重及び軽免疫グロブリン鎖、並び
に同様に接続された重鎖で形成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2、及びC
H3を含む。軽鎖定常領域は1つのドメインCLから構成される。重鎖の可変ドメイン及び軽
鎖の可変ドメインは、抗原と相互作用する結合ドメインである。抗体の定常領域は、典型
的には抗体の免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1
成分(C1q)を含む宿主組織又は因子との結合を仲介する。抗体という用語は、型IgA、Ig
G、IgE、IgD、IgM(並びにそれらの亜型)の免疫グロブリンを含み、ここで免疫グロブリ
ンの軽鎖はκ又はλ型であり得る。2つの同一の重(H)鎖及び2つの同一の軽(L)鎖ポリ
ペプチドから組立てられる免疫グロブリン-γ(IgG)抗体の全体構造は、十分に確証され
ており、哺乳動物において高度に保存されている(Padlan 1994)。
【0059】
従来の抗体構造の例外は、ラクダ科動物の血清において見出される。従来の抗体に加え
、これらの血清は特殊なIgG抗体を保有する。これらのIgG抗体は重鎖抗体(HCAb)として
知られており、L鎖ポリペプチドを欠いており、第1定常ドメイン(CH1)が欠落している
。そのN末端領域において、ホモ二量体タンパク質のH鎖はVHHと呼ばれる専門化した免疫
グロブリン鎖可変ドメインを含み、これはその同種抗原(cognate antigen)と結合する
機能を果たす(本明細書においてそれらの全体が参照により組み込まれている、Muylderm
ansの文献、2013、Hamers-Castermanらの文献、1993、Muyldermansらの文献、1994)。
【0060】
本明細書で使用する抗原結合抗体断片(又は「抗体断片」、「免疫グロブリン断片」、
又は「抗原結合断片」)は、標的と特異的に結合する抗体の一部を指す(例えば、1以上
の免疫グロブリン鎖が全長ではないが、標的と特異的に結合する分子)。抗原結合抗体断
片という用語に包含される断片の例には:
(i) Fab断片(VLC、VHC、CL、及びCH1ドメインからなる一価の断片);
(ii) F(ab')2断片(ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を
含む二価の断片);
(iii) Fd断片(VHC及びCH1ドメインからなる);
(iv) Fv断片(抗体の単一アームのVLC及びVHCドメインからなる);
(v) scFv断片(組換え法を使用して、VLC及びVHC ドメインを、VLC及びVHC領域が対と
なって一価の分子を形成する単一のタンパク質鎖とすることが可能な合成リンカーによっ
て結合されたVLC及びVHCドメインからなる)
(vi) VH(VHCドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン(Wardらの文献、1989)
);
(vii) VL(VLCドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイン);
(viii) V-NAR(軟骨魚綱IgNAR由来のVHCドメインからなる免疫グロブリン鎖可変ドメイ
ン(本明細書においてそれらの全体が参照により組み込まれている、Rouxらの文献、1998
及びGriffithsらの文献、2013))
(xi) VHH、がある。
【0061】
医薬活性結合ポリペプチド中のアミノ酸残基の総数は、50~3000、より好適には100~1
500、より好適には100~1000、より好適には100~500、より好適には100~200の範囲にあ
り得る。VHH又はVH中のアミノ酸残基の総数は、110~140、好適には112~130、かつより
好適には115~125の範囲にあり得る。
【0062】
本明細書で提供する実施例は、免疫グロブリン鎖可変ドメインそれ自体を含む組成物に
関する。しかしながら、本明細書で開示する発明の原理は、任意の医薬活性結合ポリペプ
チドを含む、本発明による組成物に等しく適用することができる。例えば、本明細書で開
示する実施例において特色となっている抗TNF-α免疫グロブリン鎖可変ドメインを、ポリ
ペプチド、例えば全長抗体に組み込むことができる。そのようなアプローチは、二量体コ
ンストラクトとして発現され、ヒトFc領域(ヒンジ、CH2、及びCH3ドメインを含む)との
融合体として操作された抗HIV VHHを提供しているMcCoyらの文献、2014によって実証され
ている。
【0063】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドは免疫グロブリン鎖可変ドメインからなる。好適
には、医薬活性結合ポリペプチドは抗体又は抗体断片である。好適には、抗体断片はVHH
、VH、VL、V-NAR、Fab断片、VL、又はF(ab')2断片(例えばVHH又はVH、最も好適にはVHH
)である。
【0064】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドの分子量は1~200kD、より好適には5~200 kDa、
より好適には10~200 kDa、より好適には10~180 kDa、より好適には10~150 kDa、より
好適には10~100 kDa、より好適には10~50 kDa、より好適には10~20 kDa、より好適に
は12~15 kDa、より好適には約13 kDaである。
【0065】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドは、1 mg/mL超、より好適には5 mg/mL超、より好
適には10 mg/mL超、より好適には15 mg/mL超、より好適には20 mg/mL超、より好適には25
mg/mL超、より好適には30 mg/mL超の水溶性を有する。
【0066】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドの等電点は6~8、より好適には6.5~7.5、より好
適には6.7~6.9、より好適には約6.8である。
【0067】
配列番号:1~28は、本発明による例示的な医薬活性結合ポリペプチドである特定のICV
Dのポリペプチド配列である。好適には、医薬活性結合ポリペプチドは、配列番号:1~28
のうちの任意の1以上を含み、又はより好適にはこれらからなる。
【0068】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドは腸管領域への局所送達のためのものである。好
適には、医薬活性結合ポリペプチドは、局所治療効果のためのものである。「局所治療効
果」は、医薬活性結合ポリペプチドが最初に送達された領域においてのみ発生し、又は評
価可能となる有益な生物学的効果として定義される。局所治療効果からは、全身作用(有
益でも、そうでなくても)を除外する。例えば、TNF-αを標的とする医薬活性結合ポリペ
プチドは、本発明の組成物中で送達される場合、好適にはそれが最初に放出される腸管領
域(複数可)中に存在するTNF-αと結合し、その作用を中和する。しかしながら、この医
薬活性結合ポリペプチドは体の他の領域中の顕著な量のTNF-αとの有意義な結合をせず、
従って顕著な全身作用を有さない。
【0069】
本発明の医薬組成物は、医薬活性結合ポリペプチドが腸管の標的領域中に放出されるま
で、胃、及び好適にはまた十二指腸を通過する間、医薬活性結合ポリペプチドへの保護を
提供する。従って、特に好適な医薬活性結合ポリペプチドは、胃及び/又は十二指腸に曝
露された際に実質的に不活化され、従って本発明の組成物のpH感受性腸溶性コーティング
によって不活化から保護される医薬活性結合ポリペプチドである。
【0070】
ポリペプチドの粗製試料が不純物(例えば、不活性ポリペプチド)を含み、その結果ポ
リペプチド試料の一部のみが医薬活性結合ポリペプチドとなり得る可能性がある。
【0071】
医薬活性結合ポリペプチドは医薬として許容し得る塩の形態とし得る。好適には、医薬
活性結合ポリペプチドは、インスリンではない。好適には、医薬活性結合ポリペプチドは
、顆粒内にある。
【0072】
医薬活性結合ポリペプチドは、例えばGreen及びSambrookの文献、2012に開示されてい
る技術を使用して取得し、操作することができる。例えば、免疫グロブリン鎖可変ドメイ
ンは、核酸合成技術を使用して免疫グロブリン鎖可変ドメインをコードする核酸を調製し
、それに続きこのようにして取得された核酸を発現させることにより、取得することがで
きる。
【0073】
(特異性及び親和性)
特異性とは、特定の抗原結合ポリペプチドが結合することができる異なる種類の抗原又
は抗原決定基の数を指す。抗原結合ポリペプチドの特異性は、抗原結合ポリペプチドが特
定の抗原を固有の分子実体として認識し、それを別の抗原から識別する能力である。
【0074】
親和性は、抗原の抗原結合ポリペプチドとの解離平衡定数(Kd)によって表され、抗原
決定基及び抗原結合ポリペプチド上の抗原結合部位の間の結合力の基準である:Kdの値が
小さいほど、抗原決定基及び抗原結合ポリペプチドの間の結合力は強くなる(あるいはま
た、親和性は1/Kdである親和性定数(Ka)として表すこともできる)。親和性は公知の方
法によって決定することができ、対象とする特異的抗原に応じて決まる。
【0075】
好ましくは、医薬活性結合ポリペプチドは、少なくとも1x10-6 M、より好適には少なく
とも1x10-7 M、より好適には少なくとも1x10-8 M、より好適には少なくとも1x10-9 Mの解
離定数(Kd)で結合する。
【0076】
10-6未満の任意のKd値は、結合を示すと考えられる。医薬活性結合ポリペプチドの抗原
又は抗原決定基への特異的結合は、例えばスキャッチャード分析、並びに/又は競合的結
合アッセイ、例えば放射免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)、及びサンドイ
ッチ競合アッセイ、並びに当技術分野で公知のそれらの様々な変法を含む任意の好適な公
知の方法で決定することができる。
【0077】
抗標的ポリペプチド、標的と相互作用するポリペプチド、又は標的に対するポリペプチ
ドは全て、効果的に標的と結合するポリペプチドである。ポリぺプチドは、線状又はコン
フォメーションエピトープと結合することができる。
【0078】
好適には、医薬活性抗原結合ポリペプチドは、腸管内の標的、例えば腸管の1以上の領
域における標的、例えばインターロイキン(IL-1、IL-1ra、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL
-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-18、及びIL-23など)、イン
ターロイキン受容体(IL-6R及びIL-7Rなど)、転写調節因子(NF-κBなど)、サイトカイ
ン(TNF-α、IFN-γ、TGF-β、及びTSLPなど)、膜貫通タンパク質(gp130及びCD3など)
、表面糖タンパク質(CD4、CD20、CD40など)、可溶性タンパク質(CD40Lなど)、インテ
グリン(a4b7及びαEβ7など)、接着分子(MAdCAMなど)、ケモカイン(IP10及びCCL20
など)、ケモカイン受容体(CCR2及びCCR9など)、抑制性タンパク質(SMAD7など)、キ
ナーゼ(JAK3など)、Gタンパク質共役受容体(スフィンゴシン-1-P受容体など)、及び
胃腸病原体の生産物と結合する。
【0079】
(リンカー及び多量体)
医薬活性結合ポリペプチドは、複数のポリペプチドを含むコンストラクトとすることが
でき、従って好適には多価とすることができる。そのようなコンストラクトは、少なくと
も2つの同一のポリペプチドを含むことができる。あるいは、コンストラクトは少なくと
も2つの異なるポリペプチドを含むことができる。コンストラクトは、多価及び/又は多重
特異性とすることができる。多価コンストラクト(例えば、二価コンストラクト)は、2
以上の結合ポリペプチドを含み、従って1以上の抗原との結合が起こり得る2以上の部位を
提示する。多重特異性コンストラクト(例えば、二重特異性コンストラクト)は、(a) 2
以上の異なる抗原との結合が起こり得るか、又は(b) 同じ抗原上の2以上の異なる2以上の
エピトープとの結合が起こり得る2以上の部位を提示する2以上の異なる結合ポリペプチド
を含む。多重特異性コンストラクトは、多価である。
【0080】
コンストラクト中のポリペプチドは、互いに直接(すなわち、リンカーを使用せずに)
、又はリンカーを介して連結することができる。好適には、リンカーはプロテアーゼに対
して不安定であるか、又はプロテアーゼに対して不安定でないリンカーである。リンカー
は好適にはポリペプチドであり、ポリペプチドがそれらのエピトープと結合することが可
能となるように選択する。治療目的で使用する場合、リンカーは、好適にはポリペプチド
を投与する対象において免疫原性でない。好適には、ポリペプチドは全てプロテアーゼに
対して不安定でないリンカーによって接続されている。好適には、プロテアーゼに対して
不安定でないリンカーは、(G4S)xのフォーマットを有する。好適にはxは1~10であり、最
も好適にはxは6である。好適には、プロテアーゼに対して不安定なリンカーは、[-(GaS)x
-B-(GbS)y-]zのフォーマットを有し、ここでaは1~10であり;bは1~10であり;xは1~10
であり;yは1~10であり、zは1~10であり、かつBはK又はRである。好適にはaは2~5であ
り、より好適にはaは4である。好適にはbは2~5であり、より好適にはbは4である。好適
にはxは1~5であり、より好適にはxは1である。好適にはyは1~5であり、より好適にはy
は1である。好適にはzは1~3であり、より好適にはzは1である。好適にはBはKである。上
記一節における大文字は、一文字アミノ酸コードを指す。
【0081】
(pH感受性腸溶性コーティング)
本発明の医薬組成物は、pH感受性腸溶性コーティングとともに提供する。腸溶性コーテ
ィングに使用される材料には、脂肪酸、ワックス、シェラック、プラスチック、及び植物
繊維がある。好適にはpH感受性腸溶性コーティングは、腸管の領域に曝露された際に医薬
活性結合ポリペプチドを放出する。好適には腸管の領域は、小腸及び/又は大腸の領域、
例えば十二指腸、空腸、回腸、盲腸、結腸、直腸、及び肛門管のうちの少なくとも1つか
ら選択される領域である。より好適には、領域は十二指腸、空腸、及び回腸のうちの少な
くとも1つから選択される。
【0082】
pH感受性腸溶性コーティングの厚さは、コーティングが胃腸管を通過する間の所望の期
間、特にコートの溶解をもたらすpHへの曝露に続く所望の期間にわたって無傷であり続け
るように、選択する。好適には、pH感受性腸溶性コーティング(例えば、ポリ(メタクリ
ル酸-コ-メタクリル酸メチル)1:1を含むpH感受性腸溶性コーティング)の厚さは10~300
um、例えば50~200 um、例えば70~170 um、例えば100~170 umである。
【0083】
好適には、本発明の組成物において使用されるpH感受性腸溶性コーティングの量は、全
体としての組成物の10~30%、より好適には15~26%、より好適には17~23%、より好適
には18~22%、より好適には約20% w/w存在する。好適にはこれらの量は、直径3 mmの圧
縮コアの状況にある。
【0084】
好適には、本発明の組成物において使用されるpH感受性腸溶性コーティングの量は、コ
アの15~35%、より好適には20~30%、より好適には22~28%、より好適には24~26%、
より好適には約25% w/w存在する。好適にはこれらの量は、直径3 mmの圧縮コアの状況に
ある。
【0085】
あるいは、本発明の組成物中で使用されるpH感受性腸溶性コーティングの量は、pH感受
性腸溶性コーティングの追加に際し、圧縮コア(又は好適にはサブコーティングされた圧
縮コア)の重量%が増えることによって規定され得る。実施例において、pH感受性腸溶性
コーティングの25% w/wの重量増加により、動的溶解性試験の間におよそ2時間後にコー
ティングが取れ、pH感受性腸溶性コーティングの17% w/wの重量増加により、動的溶解性
試験の間におよそ90分後にコーティングが取れることが実証されている。従って、pH感受
性腸溶性コーティングによるコーティングに際し、14%~30%、又はより好適には17%~
27%、又はより好適には20~27%の範囲の重量が増加することにより、小腸における溶解
に最適なコーティングが提供されるはずである。さらに、より具体的には、かつ所望の場
合、pH感受性腸溶性コーティングによるコーティングに際し、17%~20%の重量が増加す
ることにより、十二指腸における溶解に最適なコーティングが提供されるはずであり、又
はpH感受性腸溶性コーティングによるコーティングに際し、20%~27%の重量が増加する
ことにより、回腸における溶解に最適なコーティングが提供されるはずである。好適には
、これらの量は直径3 mmの圧縮コアの状況にある。
【0086】
圧縮コアが円筒状の外形を有する場合(例えば、円筒状小型錠剤)、厚さの測定値は好
適には小型錠剤を軸方向及び半径方向の両方にスライスすることによって得られる(錠剤
のへりのコーティングの厚さは無視する)。
【0087】
(pH感受性腸溶性ポリマーコート)
pH感受性腸溶性コーティングは、pH感受性腸溶性ポリマーコートを含み得る。pH感受性
腸溶性ポリマーコートはpH感受性腸溶性コートに含まれ、かつ胃、及びまた好適には、十
二指腸の低いpHからポリペプチドを保護するバリアとして作用するポリマーである。pH感
受性腸溶性ポリマーコートは胃に見出される高度に酸性のpHで不溶性であるが、より低い
酸性度のpHで速やかに溶解する。従って、好適にはpH感受性腸溶性ポリマーコートは胃の
酸性分泌液(pH 1.5~4)中で溶解しないが、小腸(pH 6以上)又は結腸(pH 7.0以上)
中に存在するより高いpH環境中では溶解する。pH感受性腸溶性ポリマーコートは投薬が小
腸、特に十二指腸、空腸、及び回腸に概ね到達した際に;最も好適には投薬が空腸に到達
した際にポリペプチドが放出され始めるように選択する。好適にはpH感受性腸溶性ポリマ
ーコートは、0.5~3.5、より好適には0.6~3.0、より好適には0.7~2.5、より好適には0.
8~2.0、より好適には0.9~1.5、より好適には約又はちょうど1のpHへの2時間以上(好適
には少なくとも6時間、より好適には2~4時間、より好適には2~3時間)の曝露の後に初
めて溶解する。当業者であれば、プロトンポンプ阻害剤、H2阻害剤及び酸中和剤を用いる
と胃のpHをおよそ4又はそれ以上にさえ高めることができ、従って同時にプロトンポンプ
阻害剤を服用するならば、より高いpHで溶解するpH感受性腸溶性ポリマーコートを本発明
の組成物中で適切に使用することができることを認識するであろう。同様に、当業者であ
れば、例えば塩酸欠乏症に罹患する対象が、上昇した胃のpH(5より高い)を有し、従っ
てそのような状態に罹患する対象に投与する場合、より高いpHで溶解するpH感受性腸溶性
ポリマーコートを、本発明の組成物において適切に使用することができることを認識する
であろう。
【0088】
好適には、pH感受性腸溶性ポリマーコートは:アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリ
マー、酢酸コハク酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸
コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エ
ステル)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリ
マー、アルギン酸ナトリウム、及びステアリン酸の1以上を含む。より好適には、pH感受
性腸溶性ポリマーコートは、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルをベースとするアニオ
ン性コポリマーを含み、又はこれからなる。より好適には、pH感受性腸溶性ポリマーコー
トは、ポリ(メタクリル酸-コ-メタクリル酸メチル)1:1(例えば、Eudragit L100/L12.5)
又はポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル)1:1(例えば、Eudragit L100-55 / L30-D5
5);最も好適にはポリ(メタクリル酸-コ-メタクリル酸メチル)1:1を含むか、又はこれら
からなる。
【0089】
本発明の組成物において使用されるpH感受性腸溶性ポリマーコートの量は、pH感受性腸
溶性コーティングのパーセンテージw/wとして表すことができる(すなわち、pH感受性腸
溶性コーティングの全固体)。好適には、pH感受性腸溶性ポリマーコートは、pH感受性腸
溶性コーティングに対して相対的に40~70重量%、より好適には55~65重量%存在する。
【0090】
本発明の組成物において使用されるpH感受性腸溶性ポリマーコートの量はまた、全体と
しての組成物のパーセンテージw/wとして表すこともできる。好適には、本発明の組成物
において使用されるpH感受性腸溶性ポリマーコートの量は、全体としての組成物の10-30
%、より好適には約12% w/w存在する。
【0091】
混合水性及び有機溶媒法とは対照的に、完全に水性のコーティング法を使用して本発明
の組成物を生産する場合、同等の放出プロファイルを達成するためには、pH感受性腸溶性
ポリマーコーティングの量を水性及び有機溶媒法において使用される量に対して相対的に
増加させるべきである。
【0092】
(pH感受性腸溶性コートのさらなる可能な成分)
好適には、pH感受性腸溶性コーティングは、任意に可塑剤、粘着防止剤、及び界面活性
剤のうちの1以上と一緒にpH感受性腸溶性ポリマーコートを含むか、又はこれらからなる
。より好適には、pH感受性腸溶性コーティングはpH感受性腸溶性ポリマーコート、可塑剤
、粘着防止剤、及び界面活性剤からなる。
【0093】
好適には、pH感受性腸溶性コーティングは可塑剤を含み、ここで可塑剤はクエン酸トリ
エチルであり、粘着防止剤はタルクであり、かつ/又は界面活性剤はラウリル硫酸ナトリ
ウムである。好適には、可塑剤はpH感受性腸溶性コーティングに対して相対的に5~20重
量%存在し、かつ/又は粘着防止剤はpH感受性腸溶性コーティングに対して相対的に20~4
0重量%存在し、かつ/又は界面活性剤はpH感受性腸溶性コーティングに対して相対的に0.
05~0.5重量%存在する。
【0094】
好適には、pH感受性腸溶性コーティングは全てpH感受性腸溶性コーティングの重量に対
して相対的に以下:50~70重量%の1以上のpH感受性腸溶性ポリマーコート、7~17重量%
の1以上の可塑剤、20~40重量%の1以上の粘着防止剤、及び0.05~0.2重量%の界面活性
剤を含み、これらから実質的になり、又はこれらからなる。
【0095】
好適には、本発明の組成物は圧縮コア及びpH感受性腸溶性コーティングの間にサブコー
ティングを含み得る。そのようなサブコーティングは、コアへのpH感受性腸溶性コーティ
ングの接着性を向上させ得る。好適には、サブコーティングはヒドロキシプロピルメチル
セルロースを含み、又はこれからなる。
【0096】
(賦形剤)
本発明の医薬組成物は、好適には少なくとも1つの賦形剤を含む。好適には少なくとも1
つの賦形剤は、(i) 1以上の圧縮助剤、(ii) 1以上の崩壊剤、(iii) 1以上の滑沢剤、(iv)
1以上の流動促進剤、(v)1以上の希釈剤、及び(vi) 1以上の結合剤、のうちの1以上か
ら選択される。これらの賦形剤は、以下のように詳述する。以下に表される%値は、圧縮
コアの重量%として表す。
【0097】
(圧縮助剤)
圧縮助剤はコアの成分を相互に結合し、形状及び機械的強度を付与する役割を果たす。
好適には、1以上の圧縮助剤は顆粒内及び顆粒外である。
【0098】
好適には、本発明の組成物は1以上の圧縮助剤を含む。好適には、1以上の圧縮助剤は、
クロスポビドンなどの合成ポリマー、スクロース、グルコース、ラクトース、及びフルク
トースなどの糖、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソルビ
トールなどの糖アルコール、結晶性セルロース、微結晶性セルロース、粉末化セルロース
、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルセルロースのようなセルロースなどの水溶
性多糖、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポ
ビドンなどの合成ポリマー、並びに炭酸カルシウムなどの無機化合物からなるリストから
選択される。
【0099】
好適には、1以上の圧縮助剤は、コアの重量に対して相対的に、20~55重量%、例えば3
0~40重量%存在する。
【0100】
驚くべきことに、マンニトールは実施例1において詳述する医薬活性結合ポリペプチド
の熱安定性を向上させることが見出された(実施例6参照)。従って、好適には1以上の圧
縮助剤はマンニトールである。
【0101】
(結合剤)
結合剤は機能において圧縮助剤と類似している。好適には、本発明の組成物のコアは、
1以上の結合剤を含む。好適には、1以上の結合剤は顆粒内及び顆粒外である。好適には、
1以上の結合剤は、アラビアゴム、アルギン酸、アンモニアメタクリル酸コポリマー、ア
ンモニアメタクリル酸コポリマー分散物、カルボマーコポリマー、カルボマーホモポリマ
ー、カルボマー共重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース
、コポビドン、スクロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、
グアーガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロメロース
酢酸エステルコハク酸エステル(hydromellose acetate succinate)、マルトデキストリ
ン、マルトース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポビドン、トウモロコシデ
ンプン;バレイショデンプン;アルファ化デンプン;タピオカデンプン;コムギデンプン
などのデンプンからなるリストから選択される。
【0102】
好適には1以上の結合剤は、コアの重量に対して相対的に、20~55重量%、例えば30~4
0重量%存在する。好適には、1以上の結合剤及び圧縮助剤は、コアの重量に対して相対的
に、20~55重量%、例えば30~40重量%存在する。
【0103】
(崩壊剤)
崩壊剤は、胃腸管におけるコアの分散を補助して、医薬活性結合ポリペプチドの放出を
支援し、かつ表面積を増加させて溶解性を高める機能を果たす。崩壊剤には、超崩壊剤を
含む。好適には、本発明の組成物のコアは、1以上の崩壊剤を含む。好適には、1以上の崩
壊剤は、顆粒外である。
【0104】
崩壊剤は、ポリペプチドのゲル化作用を中和することが可能であり、崩壊剤はそのよう
なものとして使用され、本発明の組成物の放出プロファイルを精細に調節することができ
る。
【0105】
好適には、1以上の崩壊剤は、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロ
ースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロー
スなどのセルロース、カルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプ
ン、コメデンプン、コムギデンプン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分
アルファ化デンプンなどのデンプンからなるリストから選択される。好適には、崩壊剤は
クロスカルメロースナトリウムである。好適には、1以上の崩壊剤は、コアの重量に対し
て相対的に、2~6重量%、例えば約4重量%存在する。
【0106】
驚くべきことに、クロスカルメロースナトリウムは、実施例1において詳述する医薬活
性結合ポリペプチドの熱安定性を向上させることが見出された(「D」、実施例6参照)。
従って好適には、1以上の崩壊剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0107】
(流動促進剤)
流動促進剤は、粒子間の摩擦及び接着を低下させることにより、錠剤の製造の間の粉末
の流れを改善する。本発明の組成物のコアは、1以上の流動促進剤を含み得る。存在する
場合、流動促進剤は、顆粒内又は顆粒外とし得る。好適には、1以上の流動促進剤は、存
在する場合、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド性二酸化ケイ素、及びタ
ルクからなるリストから選択される。最も好適には、1以上の流動促進剤は、存在する場
合、コロイド性二酸化ケイ素である。好適には、1以上の流動促進剤は、存在する場合、
コアの重量に対して相対的に、0.1~1.0重量%、より好適には約0.5重量%存在する。
【0108】
(滑沢剤)
滑沢剤は、流動促進剤と類似した作用を有する。滑沢剤は主に打錠の間に、金型におけ
る打ち抜き材料(punches)の粘着を防ぐために加える。また、滑沢剤は崩壊及び溶解を
減速させることができる。好適には、本発明の組成物のコアは、1以上の滑沢剤を含む。
好適には、滑沢剤は顆粒内及び顆粒外である。好適には、1以上の滑沢剤は、ベヘン酸グ
リセリル、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;ステアリン酸亜鉛など
のステアリン酸塩、鉱油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリ
ルフマル酸ナトリウム、トウモロコシデンプン;バレイショデンプン;アルファ化デンプ
ン;タピオカデンプン;コムギデンプンなどのデンプン、ステアリン酸、タルク、植物油
、及びステアリン酸亜鉛からなるリストから選択される。
【0109】
好適には、コアは、コアの重量に対して相対的に0.1~2重量%、例えば約1重量%存在
する1以上の滑沢剤を含む。
【0110】
驚くべきことに、ステアリン酸マグネシウムは、実施例1において詳述する医薬活性結
合ポリペプチドの熱安定性を向上させることが見出された(「E」、実施例6参照)。従っ
て好適には、1以上の滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウムである。
【0111】
(他の成分)
本発明の組成物の有利な放出プロファイルは、従来の医薬活性結合ポリペプチドの放出
を遅延させ、又は医薬活性結合ポリペプチドを保護する物質、例えばヒドロゲルを追加す
ることなく達成できる。ヒドロゲルは、かなりの量の水を吸収し、かつ個々のポリマー鎖
の物理的又は化学的架橋の結果としてのゲル様マトリックスを形成する親水性ポリマーを
含む、3次元網様ネットワークである。好適には、本発明の組成物は1重量%未満、より好
適には0.5重量%未満、より好適には0.1重量%未満のヒドロゲルを含み、より好適には、
本発明の組成物はヒドロゲルを含まない。さらに、本発明の組成物の有利な放出プロファ
イルは、組成物の圧縮コア中にアルギン酸塩、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HP
MC)、及び/又はメタクリル酸及びメタクリル酸メチルをベースとするコポリマーを含め
ることなく達成できる。本発明の組成物の有利な放出プロファイルは、さらに好適には、
持続放出コーティング(例えば、活性薬剤の拡散を許容し、pH感受性腸溶性コート及び圧
縮コアの間に配置することができるコート)を追加することなく達成される。同様に、本
発明の組成物は好適には、活性成分の吸収を達成するために製剤に加えることができる以
下の成分:浸透性/透過性増強剤(細胞浸透性ペプチド又は膜修飾物質を含む);担体シ
ステム(ナノ粒子、シクロデキストリン、ポリマー担体、又は脂質ベースのシステムを含
む);粘膜修飾、粘着性、若しくは浸透性賦形剤;又は糖質マイクロニードルのいずれか
1以上を含まない。
【0112】
(提示の形態及び構造)
本発明の医薬組成物は、様々な形態で提示することができる。これらには、錠剤又は小
型錠剤などのpH感受性腸溶性コーティング及び圧縮コアを含む固体経口剤形がある。
【0113】
小型錠剤は、丸い円筒状の錠剤とするか、又は円盤様の形状とすることができる。小型
錠剤は好適には、直径1~5 mm、より好適には直径1~4 mm、より好適には直径1~3 mm、
より好適には直径2~3 mm、より好適には直径約3 mm、より好適には直径約2 mmである。
小型錠剤は、典型的には圧縮によって生産する。小型錠剤は、例えば従来の打ち抜きコー
ティングパン(perforated coating pans)又は流動床装置を使用する腸溶性コーティン
グの滑らかな基体を提供する。小型錠剤は、カプセル剤又はサシェ剤内で送達することが
できるという点で、完成した剤形の柔軟性を提供する。
【0114】
そのような小型錠剤は、カプセル剤中で提示することができる。カプセル剤は、典型的
にはゼラチン又はHPMC(最も好適には、HPMC)を使用して作製され、乾燥粉末化成分又は
例えば、押出し若しくは球状化の過程によって作製されるミニチュアペレットを含む、硬
質シェルカプセル剤とすることができる。これらは2つの半分の部分:充填され、続いて
より径の大きい「キャップ」を使用して密封される、径の小さい「ボディ」でできている
。あるいは、カプセル剤は軟質シェルカプセル剤とすることができる。これらのクラスの
カプセル剤は両方とも、ゲル化剤、例えば動物タンパク質(主にゼラチン)若しくは植物
多糖、又はそれらの誘導体(例えばカラギーナン及び修飾形態のデンプン及びセルロース
)の水性溶液からできている。
【0115】
本発明の医薬組成物は、医薬活性結合ポリペプチドを含む圧縮コア及びpH感受性腸溶性
コーティングを含む。
【0116】
本明細書で使用する「圧縮された」とは、物質が圧縮(compression)、すなわち圧搾
又は圧縮(pressing)を受けたことを指す。
【0117】
好適には、圧縮コアは1以上の圧縮助剤;1以上の崩壊剤;1以上の滑沢剤、及び医薬活
性結合ポリペプチドから実質的になり、又はこれらからなる。
【0118】
好適には、圧縮コアの硬度は20~110 N、より好適には40~100 N、最も好適には60~90
Nである。
【0119】
好適には、圧縮コアは、全てコアの重量に対して相対的に、以下:20~55重量%の1以
上の圧縮助剤(例えば、マンニトール及び微結晶性セルロース);2~6重量%の1以上の
崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム);0.1~2重量%の1以上の滑沢剤(例
えば、ステアリン酸マグネシウム)、及び40~80重量%の医薬活性結合ポリペプチド(例
えば、免疫グロブリン鎖可変ドメイン)を含み、これらから実質的になり、又はこれらか
らなる。より好適には、圧縮コアは、全てコアの重量に対して相対的に、以下:30~40重
量%の1以上の圧縮助剤(例えば、マンニトール及び微結晶性セルロース);3~5重量%
の1以上の崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム);0.5~1.5重量%の1以上の
滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、及び50~70重量%の医薬活性結合ポリペ
プチド(例えば、免疫グロブリン鎖可変ドメイン)を含み、これらから実質的になり、又
はこれらからなる。
【0120】
好適には、医薬活性結合ポリペプチドは、コアの重量に対して相対的に、30~80重量%
、例えば40~75重量%、例えば約50重量%~60重量%存在する。
【0121】
(治療上の使用及び送達)
本発明の医薬組成物は、好適にはヒトへの投与のためのものである。本発明の医薬組成
物の治療上有効な量は、対象への単一又は複数用量の投与に際し、対象における疾患の治
療又は予防に有効な量である。治療上有効な量は、疾患状態、個体の年齢、性別、及び体
重、並びに医薬組成物の個体において所望の反応を誘発する能力などの因子に従って変化
し得る。また、治療上有効な量は、治療有益効果が、医薬組成物のあらゆる毒性又は有害
効果を上回る量である。
【0122】
本発明の医薬組成物は、経口送達用に製剤化する。経口送達に伴う重要な課題は、十分
な医薬活性結合ポリペプチドを、それを要求する腸管領域へと確実に到達させることであ
る。ポリペプチドが、それが要求される腸管の領域に到達することを妨げる因子には、ポ
リペプチドを分解し得る消化分泌液中のプロテアーゼの存在がある。好適には、ポリペプ
チドは、ポリペプチド自体の固有の特性により、1以上のそのようなプロテアーゼの存在
下で実質的に安定である。好適には、ポリペプチドは腸管の領域に曝露される際に実質的
に安定である。あるいは、高用量のポリペプチドを投与して、腸管内で分解され始めるポ
リペプチドの量を補償することができる。
【0123】
回腸に直接送達されたタンパク質は免疫原性となり得るのに対し、経口的に送達され、
胃及び十二指腸での消化を受けた同じタンパク質は、免疫寛容を誘導することが知られて
いる(Michael 1989を参照されたい)。本発明の組成物は腸溶性コーティングを施されて
おり、経口投与に際しては、回腸などの腸管の領域に放出されて初めて、医薬活性結合ポ
リペプチドが対象の免疫系に曝露される。当業者であれば、そのような送達法を、回腸へ
の直接送達と免疫学的に等価であるとみなし得る。従って、経口投与された本発明の組成
物に関して免疫寛容反応が観察されたことは、驚くべきことであり、かつ非常に有利であ
る。
【0124】
また、界面活性剤を医薬組成物に追加して、ポリペプチドの凝集を低下させ、かつ/又
は製剤中での微粒子の形成を最小化し、かつ/又は吸着を低下させることができる。例示
的な界面活性剤には、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween)、ポリオ
キシエチレンアルキルエーテル(Brij)、アルキルフェニルポリオキシエチレンエーテル
(Triton-X)、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー(ポロキサマー、P
luronic)、及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)がある。好適なポリオキシエチレンソル
ビタン脂肪酸エステルの例は、ポリソルベート20及びポリソルベート80である。界面活性
剤の例示的濃度は、約0.001%~約10% w/vの範囲とし得る。
【0125】
医薬活性結合ポリペプチドは、凍結乾燥することができる。凍結乾燥保護剤(lyoprote
ctant)は、ポリペプチドを凍結乾燥プロセスの間の不安定化条件から保護するために加
えることができる。例えば、公知の凍結乾燥保護剤には、糖(グルコース、スクロース、
マンノース、及びトレハロースを含む);ポリオール(マンニトール、ソルビトール、及
びグリセロールを含む);並びにアミノ酸(アラニン、グリシン、及びグルタミン酸を含
む)がある。凍結乾燥保護剤は、約10 mM~500 mMの量を含み得る。
【0126】
あるいは、医薬活性結合ポリペプチドは、噴霧乾燥することができる。
【0127】
本発明の医薬組成物の投与のための投薬量範囲は、所望の治療効果を生じる投薬量範囲
である。要求される投薬量範囲は、医薬組成物の厳密な性質、患者の年齢、患者の状態の
性質、程度、又は重症度、あるとしたならば、禁忌、及び主治医の判断に応じて決まる。
これらの投薬レベルの変動は、最適化のための標準的な経験的定型法を使用して調節する
ことができる。
【0128】
医薬活性結合ポリペプチドの好適なヒトへの投薬量は、10 mg~5000 mg、例えば50 mg
~1500 mg、例えば100 mg~500 mgの範囲である。医薬活性結合ポリペプチドの体重1 kg
当たりの好適な投薬量は、1 mg~500 mg、例えば5 mg~150 mg、例えば10 mg~50 mgの範
囲である。ヒトへの用量又は体重1 kg当たりの用量は、毎日、又はより高頻度に、例えば
1日に2、3、若しくは4回、又はより低頻度に、例えば1日おきに、若しくは週1回、2週に1
回、若しくは月に1回投与することができる。より好適には、用量を1日3回投与する。
【0129】
本発明の一態様において、腸管の自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患の治療のための
医薬の製造における医薬組成物の使用を提供する。本発明のさらなる態様において、腸管
の自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患を治療する方法であって、それを必要とする人物
に医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0130】
語「治療」は、予防並びに治療的処置を包含することを意図する。また、疾患の治療は
、その悪化の治療を包含し、かつまた、疾患の症状の再発を予防するための疾患の症状か
らの寛解にある患者の治療を包含する。
【0131】
(腸管の疾患)
好適には、本発明の医薬組成物は腸管の疾患の治療又は予防における使用のためのもの
である。腸管の疾患は、小腸及び大腸を冒す疾患と関係する。小腸及び大腸は、感染性、
自己免疫性、及び他の種類の疾患によって冒される場合がある。
【0132】
(腸管(IT)の自己免疫性疾患及び/又は炎症性疾患)
慢性炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、及び潰瘍性大腸炎は、子供と成人の両方を悩
ませ、ITの自己免疫性疾患及び炎症性疾患の例となる(本明細書においてその全体が参照
により組み込まれているHendricksonらの文献、2002)。潰瘍性大腸炎は、炎症性反応及
び形態的変化が結腸に限定され続ける状態として定義されている。95%の患者では、直腸
が関与する。炎症は概して粘膜に限定され、潰瘍、浮腫、及び出血を伴い、結腸の長さ方
向に沿って重症度が変化する連続的な病変部からなる(本明細書においてその全体が参照
により組み込まれているHendricksonらの文献、2002)。潰瘍性大腸炎は、通常糞便に混
じった血液及び粘液の存在によって顕在化し、排便の腸運動の間に最も重度となる下腹部
疝痛を伴う。臨床上、血液及び粘液を含む下痢の存在により、潰瘍性大腸炎は出血のない
過敏性腸症候群から区別される。潰瘍性大腸炎とは異なり、クローン病の出現は通常微妙
であり、そのために診断は遅くなる。病変の位置、程度、及び重症度などの因子により、
胃腸症状の程度が決定される。回腸から結腸にかけての病変を有する患者は、通常食後の
腹痛を経験し、右下四半部の圧痛及び時折の炎症性腫瘤を伴う。胃から十二指腸にかけて
のクローン病に関連する症状には、早期の満腹、吐き気、嘔吐、上胃部痛、又は嚥下障害
がある。肛門ポリープ、深部肛門裂傷、及び瘻孔を伴う肛門周囲の疾患が好発する(本明
細書においてその全体が参照により組み込まれているHendricksonらの文献、2002)。
【0133】
好適には、本発明のポリペプチド、医薬組成物、又はコンストラクトは、クローン病、
潰瘍性大腸炎、過敏性腸疾患、2型糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、シェーグレン
症候群、セリアック病、及び薬物又は放射線誘発性粘膜炎;より好適にはクローン病、潰
瘍性大腸炎、過敏性腸疾患、セリアック病、及び薬物又は放射線誘発性粘膜炎;より好適
にはクローン病、潰瘍性大腸炎、及び過敏性腸疾患;最も好適にはクローン病からなるリ
ストから選択される、ITの自己免疫性及び/又は炎症性疾患の治療における使用のための
ものである。
【0134】
(併用療法)
自己免疫性疾患の治療において通常使用される他の認知された治療法の補助として、又
はそれらと併用しての、自己免疫性疾患の治療のための治療方法における本発明の医薬組
成物の使用は、本発明の範囲内にある。
【0135】
IBD(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)の治療のために、考え得る組合わせには
、例えば:5-アミノサリチル酸又はそのプロドラッグ(例えば、スルファサラジン、オル
サラジン、又はビサラジド(bisalazide));コルチコステロイド(例えば、プレドニゾ
ロン、メチルプレドニゾロン、又はブデソニド);免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン
、タクロリムス、メトトレキサート、アザチオプリン、又は6-メルカプトプリン);抗IL
-6R抗体(例えば、トシリズマブ)、抗IL-6抗体、抗TNF-α抗体(例えば、インフリキシ
マブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、又はゴリムマブ);抗IL12/IL23抗体(例
えば、ウステキヌマブ);抗IL6R抗体、又は低分子IL12/IL23阻害剤(例えば、アピリモ
ド);抗α-4-β-7抗体(例えば、ベドリズマブ);MAdCAM-1遮断薬(例えば、PF-005476
59);細胞接着分子α-4-インテグリンに対する抗体(例えば、ナタリズマブ);IL2受容
体αサブユニットに対する抗体(例えば、ダクリズマブ又はバシリキシマブ);JAK3阻害
剤(例えば、トファシチニブ又はR348);Syk阻害剤及びそのプロドラッグ(例えば、フ
ォスタマチニブ及びR-406);ホスホジエステラーゼ-4阻害剤(例えば、テトミラスト)
;HMPL-004;プロバイオティクス;デルサラジン;セマピモド/CPSI-2364;及びタンパク
質キナーゼC阻害剤(例えば、AEB-071)を含むリストから選択される1以上の活性薬剤と
の組合わせがある。最も好適な併用薬剤は、トシリズマブ、インフリキシマブ、アダリム
マブ、セルトリズマブペゴル、又はリムマブである。
【0136】
従って本発明の別の態様では、本発明の医薬組成物を、1以上のさらなる活性薬剤、例
えば1以上の先に記載の活性薬剤と組合わせて提供する。
【0137】
本発明のさらなる態様において、医薬組成物を先のリストから選択される少なくとも1
つの活性薬剤と逐次的に、同時に、又は別個に投与する。
【0138】
同様に、本発明の別の態様では:
(A) 本発明の医薬組成物;及び
(B) 1以上の他の活性薬剤、を含む組合わせ製品であって、成分(A)及び(B)の各々は医
薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体と混合して製剤化される、前記組合
わせ製品を提供する。本発明のこの態様において、組合わせ製品は単一(組合わせ)製剤
又は部品組キット(kit-of-parts)のいずれかとし得る。従って、本発明のこの態様は、
医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体と混合した本発明の医薬組成物及
び別の治療薬剤を含む組合わせ製剤を包含する。
【0139】
また、本発明は、成分:
(i) 医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体と混合した本発明の医薬組
成物;及び
(ii) 医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は担体と混合した1以上の他の活
性薬剤を含む製剤、を含み、その成分(i)及び(ii)が他のものと併用した投与に好適な形
態で各々提供される、部品組キットを包含する。
【0140】
従って部品組キットの成分(i)は、医薬として許容し得るアジュバント、希釈剤、又は
担体と混合した先の成分(A)である。同様に、成分(ii)は、医薬として許容し得るアジュ
バント、希釈剤、又は担体と混合した先の成分(B)である。1以上の他の活性薬剤(すなわ
ち、先の成分(B))は、例えば自己免疫性疾患、例えばIBD(例えば、クローン病及び/又
は潰瘍性大腸炎)の治療と関連して先に言及した薬剤のいずれかとすることができる。成
分(B)が2以上のさらなる活性薬剤である場合、これらのさらなる活性薬剤は、互いに製剤
化し、又は成分(A)とともに製剤化されるか、又はそれらを別個に製剤化することができ
る。一実施態様において、成分(B)は1つの他の治療薬剤である。別の実施態様において、
成分(B)は2つの他の治療薬剤である。本発明のこの態様の組合わせ製品(組合わせ調製品
又は部品組キットのいずれか)は、自己免疫性疾患(例えば、本明細書で言及される自己
免疫性疾患)の治療又は予防において使用することができる。
【0141】
好適には、本発明の医薬組成物は医薬としての使用のため、より好適には自己免疫性疾
患及び/又は炎症性疾患の治療における使用のためのものである。
【0142】
(調製方法)
乾式造粒とそれに続く圧縮あるいは直接圧縮は、圧縮コアの製造に使用することができ
る。よく混合され得る粉末は造粒を必要とせず、直接圧縮により錠剤へと圧縮され得る。
これらの方法は、本発明の組成物が錠剤、例えば小型錠剤として送達されることとなる場
合に特に適切である。
【0143】
造粒のプロセスでは、低圧下での粉末混合物の弱い圧縮によって顆粒を製造する。この
ようにして形成された圧粉体を穏やかに分割して、顆粒を生産する(集塊物)。このプロ
セスは、造粒すべき製品が水分及び熱に反応しやすい場合に使用されることが多い。乾式
造粒は、スラグ化機械設備を使用する打錠機で、又はローラー圧縮機と呼ばれるロールプ
レスで実施することができる。圧力は、適切な緻密化及び顆粒形成を達成するために変化
し得る。
【0144】
成分が顆粒外又は顆粒内となるように、製造の間に成分を医薬組成物に加えることがで
きる。コアを形成する錠剤圧縮のさらに前の、造粒に先立って成分を他の成分と混合する
場合、成分は顆粒へと組み込まれ、従って顆粒内となる。コアを形成するための錠剤圧縮
の前に、成分を形成された乾燥顆粒と混合する場合、成分は顆粒外となる。
【0145】
圧縮コアは、打錠機に適合するパンチ及び金型による直接圧縮、射出成形若しくは圧縮
成形、造粒とそれに続く圧縮、又はペーストの形成及びペーストの型への押出し、又は押
出し物の短い長さへの切断、及び任意にスフェロナイザーを使用してこのように形成され
た長さの端を角取りする(round)ことによって製造できる。好適には、圧縮コアを調製
するために使用されるプロセスは、成分混合物の乾式造粒とそれに続く、好ましくは小型
錠剤への圧縮である。好適には、圧縮はシングルパンチ機(例えば、Manesty F3)又は回
転式打錠機(例えば、好適にはトップカム圧縮力の設定として29を使用するManesty Tech
nipress)などの打錠機を使用して実施する。
【0146】
本発明の医薬組成物の生産において、好適には医薬活性結合ポリぺプチドは乾式造粒し
て、顆粒を形成させる。より好適には、医薬活性結合ポリペプチド(例えば、免疫グロブ
リン鎖可変ドメイン)及び1以上の圧縮助剤(例えば、マンニトール)は、一緒に造粒す
る。より好適には、医薬活性結合ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖可変ドメイン
)、1以上の圧縮助剤(例えば、マンニトール)、及び1以上の滑沢剤(例えば、ステアリ
ン酸マグネシウム)は、一緒に造粒する。従って、これらの成分は顆粒内となる。このよ
うにして生産された顆粒を、好適には続いて圧縮して、圧縮コアを形成させることができ
る。
【0147】
あるいは、造粒後、好適には1以上の圧縮助剤(例えば、微結晶性セルロース)、1以上
の崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)、及び1以上の滑沢剤(例えば、ス
テアリン酸マグネシウム)を顆粒と混合させて、続いて圧縮して圧縮コアを形成させる。
【0148】
本明細書で使用する「顆粒内」は、顆粒内に(圧縮前)存在することを意味し、「顆粒
外」は、顆粒間に(圧縮後)存在することを意味する。
【0149】
本発明の一態様において、本発明の医薬組成物を生産する方法であって、(i) 医薬活性
結合ポリペプチド、1以上の圧縮助剤、及び1以上の滑沢剤を一緒に乾式造粒して顆粒を形
成させ(医薬活性結合ポリペプチドは免疫グロブリン鎖可変ドメインであり、1以上の圧
縮助剤はマンニトールであり、かつ1以上の滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである)
、続いて(ii) 1以上の圧縮助剤、1以上の崩壊剤、及び1以上の滑沢剤を顆粒と混合し(1
以上の圧縮助剤は微結晶性セルロースであり、1以上の崩壊剤はクロスカルメロースナト
リウムであり、かつ1以上の滑沢剤はステアリン酸マグネシウムである)、続いて(iii)
混合物を圧縮して圧縮コアを形成させ(圧縮コアは、全てコアの重量に対して相対的に、
20~55重量%のマンニトール及び微結晶性セルロース;2~6重量%のクロスカルメロース
ナトリウム;0.1~2重量%のステアリン酸マグネシウム、並びに40~75重量%の免疫グロ
ブリン鎖可変ドメインからなる)、続いて(iv) 圧縮コアをpH感受性腸溶性コーティング
でコーティングする、前記方法を提供する。本発明のさらなる態様において、先の方法に
よって取得可能な医薬組成物を提供する。
【0150】
pH感受性腸溶性コーティングは有機溶媒を使用して、水性溶液を使用して、又は有機溶
媒及び水の混合物を使用して適用され得る。より多くの量のpH感受性腸溶性ポリマーコー
トを、完全に水性の溶液コーティングプロセスを使用する際に含めるべきである。
【0151】
本発明の一態様に従い、本発明による医薬組成物を作製する方法であって、医薬活性結
合ポリペプチド及び1以上の賦形剤の混合物を圧縮してコアを形成し、続いてpH感受性腸
溶性コーティングでコアをコーティングすることを含む、前記方法を提供する。好適には
、コアをサブコート中でコーティングし、その後pH感受性腸溶性コーティングでコーティ
ングする。
【0152】
ここで本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明することとする。
【実施例0153】
(実施例)
(実施例1:製剤)
本発明による固体医薬組成物を、乾式造粒及び圧縮により小型錠剤の形態で生産した。
続いて小型錠剤を異なる提示において提示し、ここで各提示には異なるサイズのカプセル
中に異なる量の小型錠剤を含めた。以下に詳述する実施例において使用した主な提示は、
15の腸溶性コーティングされた小型錠剤を含むサイズ00のHPMCカプセルとした(合計185
mgの医薬活性結合ポリペプチド)。小型錠剤のコアは3 mmの直径(コーティングの厚さは
除く)及びおよそ90 Nの硬度を有していた。
【0154】
各小型錠剤中、従ってカプセル中に含まれる15の小型錠剤中に含まれる組成物を、以下
の表2に列記する。
【0155】
【0156】
組成物中の全ポリペプチドはおよそ70~90%の純度を有し、その結果225 mgのポリペプ
チドは185 mgの医薬活性結合ポリペプチドを含む。
【0157】
実施例全体を通じて使用される医薬活性結合ポリペプチドは、配列番号:1~28に記載
されたICVDのうちの1つである。これは、115アミノ酸、12.6 kDaのポリペプチドである。
ポリペプチドのpIは6.8であり、ポリペプチドは30 mg/mL超の水溶性を有する。ICVDはヒ
ト及びカニクイザルTNF-αと高い親和性で結合し、かつこれらに対する強力な中和活性を
有する。
【0158】
小型錠剤は、以下の方法論によって生産した。
【0159】
凍結乾燥ポリペプチドをマンニトール及びステアリン酸マグネシウムのポーションと混
合し、乾燥スラグ化してその密度を増加させた。続いてこの材料をふるいに通し、他の小
型錠剤賦形剤(微結晶性セルロース、クロスカルメロースナトリウム、及び残存するステ
アリン酸マグネシウム)と混合し、圧縮して小型錠剤を生産した。続いて小型錠剤をエタ
ノール:水80:20中の5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース溶液でコーティングし、乾
燥させて溶媒を除去し、サブコート及びより滑らかな表面を生じさせた。続いて小型錠剤
を、イソプロピルアルコール及び水中の有機溶液としてのクエン酸トリエチル、タルク、
及びラウリル硫酸ナトリウムと合わせたEudragit(登録商標)L100ポリマーでコーティン
グし、乾燥させてpH感受性腸溶性コートを生じさせた。その結果、各小型錠剤の重量は25
%増加した。結果として得られた直径およそ3 mmの小型錠剤を、続いて用量を先に与えた
カプセル中に充填した。
【0160】
2つの別個の小型錠剤のバッチを異なる時に生産した。これらのバッチを本明細書にお
いてバッチA及びバッチBと呼ぶ。両方のバッチが表1に列記された同一の量の成分を含む
。バッチAのpH感受性腸溶性コーティングは100~170 umの厚さを有し、一方バッチBのpH
感受性腸溶性コーティングは70~170 umの厚さを有していた。
【0161】
(実施例2:薬局方収載の腸溶性コーティング試験)
先行研究(示さない)では、サブコーティングされた圧縮コアが、最適な放出のタイミ
ングのためにpH感受性腸溶性コーティングを追加する際に、17%超の追加の重量を増加さ
せる必要があることが確証されている。
【0162】
バッチA由来の小型錠剤を含む実施例1の6つのカプセル剤を、容器当たり1カプセルで薬
局方収載の腸溶性コーティング試験に付した。
【0163】
0.0206 mg/mL及び0.206 mg/mLのICVDを含む参照標準を調製した。
【0164】
カプセル剤は予想通り即座に溶解し、酸性環境へと小型錠剤を放出した。
【0165】
小型錠剤が2時間の試験の間にICVDの10%未満を放出することが見出された(データは
示さない)。従って、組成物は欧州薬局方8.0, 2.9.3「固体剤形の溶解性試験」に記載さ
れた、経口投与される遅延放出固体剤形の溶解のための要件に適合する。
【0166】
繰り返し試験をする間、組成物が2時間超撹拌を継続しながら試験媒体中に残っている
際に、腸溶性コートが6時間以上にわたり完全性を維持していることが目視検査により(
及びUV280nmの増加が存在しないことにより)確証された。
【0167】
(実施例3:薬局方収載の溶解性試験)
実施例2に詳述した薬局方収載の腸溶性コーティング試験において6つの容器の各々から
の小型錠剤を試験した後、6つの容器の各々からの小型錠剤を続いて先に詳述した通りに
薬局方収載の溶解性試験を使用して試験した。試験結果を表3、
図1(個々の容器1~6に対
するデータ点)、及び
図2(容器1~6の平均、溶解性の範囲は先の「持続放出の測定:薬
局方収載の溶解性試験」に記載されている(矢印で示してある))に示す。
【0168】
【0169】
要約すると、医薬活性結合ポリペプチドの持続放出が達成されたことが認められる。持
続放出はおよそ2~2.5時間の経過にわたり、達成された。この放出プロファイルはインビ
ボでは理想的な持続放出プロファイルへと転換されると予想された。この予想は以下に詳
述するインビボ実験によって確認された。
【0170】
(実施例4:動的溶解性試験)
実施例1で先に詳述した固体医薬組成物を、動的溶解性試験を使用して試験した。各試
料がバッチAからの15の小型錠剤を含む6つの試料、及び各試料がバッチBからの11の小型
錠剤を含む6つの試料を試験した。15のバッチAの小型錠剤の各試料に対して使用した条件
は、先に詳述した動的溶解性試験に合わせた。11のバッチBの小型錠剤の各試料に対して
使用した条件は、試料当たり800 mLの0.1M HClを使用した点で動的溶解性試験から変更し
た。
【0171】
小型錠剤からのICVDの溶解は、バッチA(
図4、曲線は2時間の時点より先に始まる)又
はバッチB(
図5、曲線は2時間の時点より先に始まる)のいずれの試料についても酸性段
階の間は起こらなかった。
【0172】
これらの同じ小型錠剤を、続いて動的溶解性試験に従いハンクス緩衝液へと移した。ハ
ンクス緩衝液への移行(2時間の時点)を
図3、4、及び5において垂直な点線によって示す
。
【0173】
ストック及び作業溶液を調製した。ストック溶液を798.5 mLの予め馴化したハンクス炭
酸水素緩衝溶液(pH 5.79)で満たした溶解容器中で、1.50 mLのICVD標準溶液(ICVDの量
及び濃度は既知)を加えることにより調製した。溶解媒体の試料を採取する間に1 μmの
多孔可塑フィルター(PES, Dissolution Accessories, Amsterdam, Netherlands)を通し
て濾過し、さらに前処理することなく測定した。溶解した薬物の量を紫外可視分光光度計
(Agilent 8453, Agilent Technologies, Santa Clara, USA)によって閉ループモードで
決定した。吸光度を、279(シグナル)及び450~550 nm(範囲を通じてバックグラウンド
を減算)での差次的モードで光路を10 mmとし、石英のフロースルーセル(Hellma, Mullh
eim, Germany)を使用して測定した。
【0174】
溶解したICVDの量を以下に与える等式:
溶解したICVD = A×V×F
(式中:
A―測定した試料の吸光度
V―補正体積
F―標準溶液の吸光度に基づいて取得した較正係数)
により、平均標準吸光度に基づいて個別に計算した。
【0175】
試料及び標準溶液の体積補正は、個別に実施した。標準および試験溶液の溶解媒体の体
積は、試験の最後に測定した。蒸発による体積の低下は経時的に線形であると仮定し、試
料及び標準溶液の体積は、各試料採取の時点で個別に計算し、従って計算においてこれら
を考慮した。
【0176】
バッチAの小型錠剤料を試験する場合、最初にハンクス緩衝液に移してから1.67時間後
に、1%超のポリペプチドがまず放出され始めることが見出された(
図4、2時間の時点で
ハンクス緩衝液に移してからの領域を参照されたい)。バッチBを試験する場合、最初に
ハンクス緩衝液に移してから3.17時間後に、1%超のポリペプチドがまず放出され始める
ことが見出された(
図5、2時間の時点でハンクス緩衝液に移してからの領域を参照された
い)。
【0177】
この時点では、1%超の医薬活性結合ポリペプチドがまず放出され始め、これは「放出
の開始」となる。放出の開始を
図4及び5において矢印で示す。両バッチについてのこれら
の期間は遅延放出製品に好適である。
【0178】
続いて、放出の開始に続くICVDの溶解率(%)を記録した。バッチAについての結果を
図4に示し(2時間の時点で最初にハンクス緩衝液に移してから1.67時間後の放出開始に続
く領域)及びバッチBについての結果を
図5に示す(2時間の時点で最初にハンクス緩衝液
に移してから3.17時間後の放出開始に続く領域)。
【0179】
放出開始から60、120、及び180分後の時点でのICVDの溶解率(%)の概要を、以下の表
4に与える。
【0180】
【0181】
胃から出た後、十二指腸及び空腸の通過には、およそ2時間を要する(上記「腸の通過
時間」を参照されたい)。従って、上記インビトロ放出プロファイルは、インビボ持続放
出プロファイルへと転換され、ここで放出は遠位空腸付近で起こり始め、結腸において実
質的に完全な放出が達成されると予想される。続いて放出される全てのICVDは、腸管の残
りの下位領域を移動すると予想される。この予想は以下のインビボ実施例によって確認し
た。
【0182】
(実施例5:賦形剤の適合性)
ICVDの融解温度(Tm)での組成物中に使用される賦形剤の効果を調べた。
【0183】
熱シフトアッセイ(TSA)は、溶質のタンパク質構造への効果を調べるタンパク質生化
学において使用される一般的な方法である。特定の溶質(塩、賦形剤など)はタンパク質
と相互作用し、タンパク質の安定化又は不安定化をもたらし得る。この効果は、タンパク
質の融解温度(Tm)を対象とする化合物あり又はなしで比較することによって評価するこ
とができる。Tmの増加は安定化、すなわちタンパク質の形状を保持する力の強化を示す。
Tmの低下はその逆を示す。
【0184】
このアッセイにおいては、タンパク質を疎水性色素シプロオレンジと混合し、漸次25℃
から98℃へと加熱する。タンパク質が融解(アンフォールディング、別称変性)するにつ
れ、それらの疎水性コアが曝露され、シプロオレンジが疎水性相互作用を介してこれらの
残基と結合する。シプロオレンジはタンパク質と結合した際にのみ蛍光を放出し、タンパ
ク質のアンフォールディングをこの様式で、qPCR機器においてレーザーによりリアルタイ
ムで測定する。機器からのデータをボルツマン曲線フィッティングを使用して、Graphpad
Prismにおいて処理する。Tmをボルツマン曲線の変曲点からとる。賦形剤を1×PBS、pH 7
.4又は水中で、ボルテックスにかけることにより混合した。あらゆる不溶性物質を遠心分
離により除去し、上清をアッセイのために採取した。
【0185】
以下の賦形剤を試験した(ラベルは
図6の説明文を参照)。
A - (-0.1℃) 8.88 uM ICVD; 1(1×PBS pH 7.4)中の対照
B - (0.1℃) 8.88 uM ICVD; 1(1×PBS pH 7.4)中の17 mg/ml Avicel PH102
C - (0.5℃) 8.88 uM ICVD; 1(1×PBS pH 7.4)中の17 mg/mlマンニトール
D - (0.6℃) 8.88 uM ICVD; 1(1×PBS pH 7.4)中の8 mg/ml AcDiSol
E - (1.2℃) 8.88 uM ICVD; 1(1×PBS pH 7.4)中の2 mg/mlステアリン酸マグネシウム
F - (0.2℃) 8.88 uM ICVD; 1(1×PBS pH 7.4)中の17 mg/ml Avicel PH112
【0186】
Avicel PH102及びAvicel PH112は微結晶性セルロースの種類であり、AcDiSolはクロス
カルメロースナトリウムの種類である。
【0187】
結果を
図6に示す。要約すると、賦形剤への曝露を伴って作成されたほとんどのTm曲線
は対照と実質的に同じままであったため、これらの賦形剤はタンパク質のTmに影響を及ぼ
さない(有害でなく、そうでなくても不利でない)ことが見出された(対照をTm曲線「A
」として示す)。驚くべきことに、タンパク質の熱安定性の小さな向上がマンニトール、
(+0.5℃)、AciDiSol(+0.6℃)、及びステアリン酸マグネシウム(+1.2℃)への曝
露の際に達成されたことが認められた。
【0188】
(実施例6:カニクイザルへの投与:異なる腸管区画及び糞便中のポリペプチド濃度)
(6.1 異なる腸管区画中のポリペプチド濃度)
カニクイザルに経口投与した際の組成物の放出プロファイルが、腸管領域を通過する実
施例1のバッチAと同様であるかどうかを評価するために、試験を実施した。放出プロファ
イルを、異なる腸管区画中のポリペプチド濃度の分析により評価した。
【0189】
11の小型錠剤を含む単一のカプセル剤を3頭のカニクイザル(これらのサルをM234、M23
6、及びM238と呼ぶ)の各々に経口投与した。小型錠剤組成物は、各小型錠剤が追加の1 m
gのメチレンブルー(色素)及び141 mgの用量のICVDを含む点で実施例1の組成物と異なっ
ていた。また、小型錠剤の内の8つには0.7 mgのイソプレナリンを含めた。メチレンブル
ー色素は胃腸(GI)管を通って溶解した小型錠剤の分布の視覚的分析のためのものであり
(本明細書では論じない)、イソプレナリンは心拍数をモニタリングする試験(本明細書
では論じない)において使用するためのものであった。
【0190】
経口投薬から4時間後、動物を選別した。胃腸管を注意深く摘出し、異なるGI区画を結
紮し、続いて切断して管腔内容物及び洗浄液を回収した。溶解していない小型錠剤及び部
分的に溶解した小型錠剤の数を記録し、これらの小型錠剤を除去した。続いて試料をホモ
ジェナイズし、分析まで凍結させた。初めにスラリーを5000 rpm、10℃で5分間遠心分離
した後、1 mlの上清を各試料から取り出して微量遠心管に入れ、13300 rpm、同じ温度で5
分間遠心分離した。続いて上清を20分間行うことを除いて同じ条件で再度遠心分離し、そ
の後それらを標準的なヒュミラ競合ELISAを使用して分析した(ヒュミラはアダリムマブ
としても知られる抗TNF-α抗体である)。試料の全希釈物及びヒュミラ及びICVD標準を1
% BSA、0.6M NaCl、1%ヒトAB血清、0.05% Tween 20、及び2×プロテアーゼ阻害剤を含
むPBS中で調製した。ICVD濃度をGraphPad Prismで4パラメータ非線形曲線フィッティング
方程式を使用した標準曲線から内挿した。非希釈GI管試料及び0~4時間での糞便上清中の
ICVD濃度を最もよく内挿されたデータに上清希釈係数を乗じたものの平均をとることによ
り導いた。
【0191】
M236又はM238のいずれの胃、十二指腸、空腸、又は回腸においても無傷の小型錠剤は見
出されなかった。M234では、無傷な小型錠剤が胃に4個、十二指腸に1個、空腸に1個見出
された。いずれのサルのいずれのGI管領域においても部分的に溶解した小型錠剤は見出さ
れなかった。
【0192】
スラリー上清の調製には、多量の緩衝液を加え、必然的にICVDを希釈することが必要と
なる。
図7では、予想された管腔内ICVD濃度を提示する。管腔GI管内容物の比重が1である
と仮定し、上清ICVD濃度に緩衝液の追加に際する希釈倍率を乗じることにより、これらを
計算した。示されているように、非常に高いICVD(0.1→1 mM)が一部のサルGI管区画の
管腔で生じる見込みがある。
【0193】
ICVDは1頭のカニクイザル(M234)の胃の内容物中にのみ検出された。また、ICVDは全
てのサルの回腸、盲腸、及び上部結腸の内容物中に高濃度で見出された。さらに、M234及
びM238は空腸の内容物中に高濃度で検出された(
図7参照)。
【0194】
最後に、4時間後の実際の用量が溶解した小型錠剤のみによって送達されたと仮定して
、ICVDの回収率(%)を計算した。
図8に示すように、ICVDの用量の51.5~74.9%を占め
ていた。
【0195】
この試験により、医薬活性結合ポリペプチドは高濃度でカニクイザル下部GI管に送達さ
れ得ることが示された。一部の小型錠剤が投薬から4時間後に無傷のままであることの知
見から、用量がある期間にわたって送達され、曝露を延長する可能性を提供することが示
唆される。抗TNF-α結合ポリペプチドを使用する場合、これらの知見がIBD患者の治療に
おいても反映されるならば、下部GI管に曝露される抗TNF-αポリペプチドの濃度は有効な
TNF-αの中和に適切な濃度よりも高くなると予想することが合理的である。
【0196】
(6.2 糞便中のポリペプチド濃度)
11の小型錠剤を含む単一のカプセル剤を3頭のカニクイザルの各々に経口投与した。各
小型錠剤が追加の1 mgのメチレンブルー(色素)を含み、かつまた、8個の小型錠剤が0.7
mgのイソプレナリンを含む点で、小型錠剤組成物は実施例1のものとは異なる。メチレン
ブルー色素は糞便中の小型錠剤の溶解性の視覚的分析のためのものとし、イソプレナリン
は心拍数をモニタリングする試験(本明細書では論じない)で使用するためのものとした
。
【0197】
サルからのプールされた糞便を8、12、20、24、及び36時間後に回収した(16時間後に
は試料を回収しなかった)。いずれの糞便試料中にも小型錠剤は見出されなかった。これ
らを1 g糞便/4 ml緩衝液で抽出緩衝液(PBS中0.1% BSA、0.6 M NaCl、0.05% Tween 20
、1×プロテアーゼ阻害剤、5 mM EDTA)と混合し、続いてホモジェナイズし、スラリーを
分析前の保存のために-80℃で凍結した。視覚的試験により、12時間、20時間、24時間、
及び36時間でのスラリーが青く着色することが明らかにされた。事前のインビトロ実験(
示さない)により、小型錠剤の溶解に際するメチレンブルー濃度の増加は、ICVD濃度と密
接に相関することが実証されている。
【0198】
スラリーを解凍し、4,000 rpm(3,200g)で5分間遠心分離して、微粒子状物質の塊を除
去した。約1 mlの各上清をエッペンドルフチューブに移し、微量遠心管に入れて13.5K、1
0℃で5分間遠心分離し、その後上清を新しいチューブに入れて10℃で20分間遠心分離した
。続いて上清をすぐにヒュミラ競合ELISAを使用するICVDの測定に使用した。
【0199】
様々な糞便上清のELISA OD450読取り値を
図9に示す。データは、36時間での上清を受け
入れられる例外として(最低希釈物では視認できるわずかな活性が存在し得るが)、全て
の時点でICVDが糞便上清試料中に存在することを明らかに示している。
【0200】
1 gの糞便が1 mLの液体分量に相当し、ポリペプチドが糞便中に均一に分布していると
いう仮定を使用すると、GraphPad Prismを使用してICVDの標準曲線に対してこれらのデー
タを内挿し、加えた緩衝液の希釈係数を乗じることにより、各糞便試料中のICVD濃度が得
られる。これらを
図10に示す。
【0201】
スラリーの体積を使用して(糞便1 g=1 ml+抽出用緩衝液の体積に基づいて計算した
)、各試料中のICVDのμg量を決定した(
図11)。
【0202】
要約すると、医薬活性結合ポリペプチドの持続的実質濃度は、カニクイザル腸管の全体
を通じて8時間超にわたり達成された。
【0203】
(実施例7:ヒトへの投与:回腸盲腸接合部及び糞便中のポリペプチド濃度)
(7.1 回腸盲腸接合部でのポリペプチド濃度)
本試験の目的は、実施例1の組成物中に組み込まれている医薬活性結合ポリペプチドが
、多くの患者の腸におけるクローン病の主要部位及びクローン病病変部の近位部位である
ヒト回腸盲腸接合部へと高濃度で送達されることを実証することであった。
【0204】
末端イレオストミーバッグを装着した4名のヒトボランティアの各々に、サイズ00のカ
プセル内部の小型錠剤へと製剤化された単一経口用量のICVD 1665 mg(全部で9個のカプ
セル)を与えた。これらのそれ以外では健康な個体において、末端回腸の全内容物は取り
外し可能な外部バッグへと流出する。投薬後1時間ごとの各時点で、全回腸流出物を含む
、装着したバッグを取り外し、凍結させて新しいバッグを装着させた。投薬後12時間の期
間にわたり1時間ごとにイレオストミー試料をこの様式で回収した。この時間に続き、投
薬後4時間ごとに、24時間後までイレオストミー試料を回収した。投薬前試料(第-1日)
も対照として採取した。完全に可溶性のICVDのみが分析されるように、バッグ中に観察さ
れる全ての部分的に溶解した小型錠剤を分析前に除去した。ICVDを回腸液から抽出し、1
gの回腸液が1 mLの液体体積に相当すると仮定して、活性ICVDの濃度を機能性ELISAによっ
て決定した。
【0205】
データから、イレオストミーバッグ中には200 nMから最大1 mMの範囲の高濃度の活性IC
VDが存在することが明らかとなった。さらに、高い濃度は各対象について数時間のバッグ
交換にわたって観察された(表5を参照されたい)。
【0206】
表5
【表5】
ICVDは全ての対象由来の投薬前(第-1日)試料のいずれにおいても検出されなかった。
【0207】
要約すると、これらのヒトボランティアの回腸盲腸接合部では、持続的かつ高濃度の医
薬活性結合ポリペプチドが達成された。
【0208】
(7.2 糞便中のポリペプチド濃度)
18~45歳の健常男性対象に単一用量の62、555、1665、又は4995 mgのICVDを、実施例1
に詳述した組成物を使用して経口投薬した。対象当たりの各単一用量は、第1日の8:30~1
2:00の間に投与した。糞便試料を投薬前(第-1日、又は第1日の投薬前のいずれかに)及
び投薬後第4日の朝(試験の終了時)までの全ての利用可能な時点で回収した。ICVDを糞
便から抽出し、活性ICVDの濃度を、1 gの糞便が1 mLの液体体積に相当するという仮定の
下、機能的ELISAによって決定した。
【0209】
180 nM~724 μMの範囲の高濃度が、対象の糞便中で得られた(表6を参照されたい)。
【0210】
【0211】
クローン病を治療するために臨床上使用されている抗TNF薬剤、例えばアダリムマブ(
ヒュミラ)及びインフリキシマブ(レミケード)を静脈内注入又は皮下注射のいずれかに
よって投与する。Ungarらの文献、(2016) Clin Gastroenterol Hepatol. 14(4):550-557
では、アダリムマブについては56~83 nM(8~12 μg/mL)の、及びインフリキシマブに
ついては42~70 nM(6~10 μg/mL)のトラフ血清レベルが、IBDを有する患者の80%~90
%の粘膜回復を達成するのに要求され、これは「治療域」であると考えることができるこ
とが明言されている。また、これらのトラフ血清レベルは先に項目6.1で確証されたカニ
クイザル胃腸管区画において計算された管腔抗TNF-α ICVD濃度について
図7に示されてい
る。
【0212】
7.1及び7.2に詳述された臨床研究の間に回腸盲腸接合部へと送達され、ヒトボランティ
アの糞便で回収された抗TNF-α ICVDの濃度は、これらのレベルより有意に高かったこと
から、クローン病の治療として有効であると予測される。このことから、抗TNF-α ICVD
の腸管腔濃度が腸粘膜及び粘膜下層への到達/浸透に関して上市された抗TNF薬剤の血清濃
度と同等であると仮定される。しかしながら、さらなる実験的研究(示さない)において
は本発明のこの抗TNF-α ICVDをDSS腸炎マウスにおいて経口投薬すると、固有層へ浸透す
ることができ、マウスにおいて標的(TNF)との結合がないにもかかわらず、そこに数時
間滞留することが実証されている。
【0213】
先の7.1で提示されたデータと併せて考えると、これらの結果は回腸盲腸接合部から肛
門への治療レベルのICVDの送達に成功したことを実証する。
【0214】
(実施例8:ヒトへの投与:免疫原性試験)
治療用抗体を含むタンパク質医薬は、患者における抗体反応を誘発する場合がある。患
者において産生されるタンパク質医薬のエピトープを認識する(複数のIgクラスの)抗体
は、抗薬物抗体(ADA)と命名される。ADAが存在すると、薬物の有効性/効能が失われる
か、又は患者への有害作用がもたらされ得る(van Schieらの文献、2015)。
【0215】
ヒトにおける本発明の組成物の持続的経口投薬によりADA反応が誘発されるかどうかを
評価するため、試験を試みた。18~45歳の健常男性対象に、実施例1による小型錠剤へと
製剤化された1665 mgのICVD又はプラセボを含むカプセルを14日間にわたり、1日3回(1日
当たり合計4995 mg)経口投薬した。投薬前、投薬後第7日及び14日、並びに最後に第28日
(治療停止から14日後)に、対象から血清試料を採取した。これらの試料をICVD抗薬物抗
体(ADA)の存在についてサンドイッチELISAによって分析した。この分析から低力価では
あるが、4名のボランティアからのADA陽性血清が明らかとなり、そのうちの2名はプラセ
ボを与えられていた。これらの全ての個人において、ADAはICVD投薬の前に多少のレベル
で存在していた(事前に存在するADA)。
【0216】
TNF-TNFR2 ELISAにおけるICVDの効能の分析により、TNF-αに対するICVD活性は、5%で
の全ADA陽性ヒト血清試料の存在によって影響を受けないことが明らかになった。従って
、いずれの時点でも、いずれのボランティアの血清中でもICVDを中和するADAの証拠は見
出されなかった(表7を参照されたい)。
【0217】
【0218】
(実施例9:凍結乾燥の代替としての噴霧乾燥)
試験を実施して本発明の組成物に組み込む前に、例示的組成物中で使用されるICVDを、
凍結乾燥ではなく噴霧乾燥によって最初に調製できることが確認された。
【0219】
噴霧乾燥を実施するために、ICVDを含む溶液をアトマイザーに通して霧状物を生成し、
これを好適なガス流に曝露して急速蒸発を促進させる。十分な液体量が蒸発したら、残り
の滴状の固体材料は個別の粒子を形成し、これを続いてフィルター又はサイクロンを使用
してガス流から分離する。
【0220】
3,000 mLのICVD溶液試料を噴霧乾燥プロセスに使用した。これは、20 mM酢酸ナトリウ
ム中のおよそ22 mg/mLのICVD溶液からなっていた(20 mM酢酸ナトリウム(MWt 82.0)3,0
00 mLは、固体4.92 gに対応する。3000 mLの22 mg/mL ICVDは66gに対応する。従って全固
体=70.92 gの内93.1%はICVDである。)。この少量の緩衝液成分は、噴霧乾燥プロセス
又は原薬の特性に影響を及ぼすとは考えられなかった。
【0221】
使用する処理条件の詳細を以下の表8に提供する。噴霧乾燥した水分含有量4.4%の材料
80.4 gを回収した。そのため、これは76.86 gの乾燥材料(およそ66 gのICVD、4.92 gの
酢酸ナトリウム+微量の塩、炭水化物、及び宿主細胞タンパク質からなる)を含んでいた
。
【0222】
表8
【表8】
ノズルの詳細:Spraying Systems 1/4 J Series, 1650/64 Liquid Cap/Air Cap。
【0223】
噴霧乾燥材料からの小型錠剤の製造は、凍結乾燥材料に関して先に論じた標準的プロセ
スに従って行った。利用可能な噴霧乾燥材料の量は少なく、従って生産される小型錠剤の
数も少ないため、これらは同程度の大きさのプラセボ小型錠剤で嵩増ししなくてはならな
かった。プラセボ小型錠剤は茶色に着色されており、噴霧乾燥錠剤から識別されていた。
まずHPMC基剤でコーティングし、続いてEudragit腸溶性コートでコーティングする際に、
プラセボの茶色い着色は差異が十分でないことが立証された。これによりプラセボを活性
薬剤から識別することが困難になる。結果として、これらが「過剰コート」されないこと
を保証するため、およそ18%の重量増加(標的の25%の重量増加に対して)が達成された
ら、腸溶性コーティングを終了した。
【0224】
噴霧乾燥材料から生産した15の小型錠剤を不透明なサイズ00のピンク色のHPMCカプセル
へと充填し、嵩増し用のプラセボ小型錠剤を伴う名目上の用量185 mgのICVDを得た。
【0225】
これらの小型錠剤に対する試験を実施した。結果を以下の表9で詳述する。
【0226】
【0227】
さらに、動的溶解性試験を実施した。噴霧乾燥材料を使用して生産された小型錠剤の溶
解プロファイルを、凍結乾燥材料を使用する先に生産した小型錠剤のものと比較した(図
12)。
【0228】
噴霧乾燥材料についての溶解性データは予想通り、一度媒体のpHが上昇してコートが取
れる前は最適遅延期間を満たさなかった。これは、これらの小型錠剤表面の標的コートよ
りもコートが薄いためであった。これを理由として、
図12の曲線を凍結乾燥試料及び噴霧
乾燥試料の両方について、両方の例でT=0が放出の始点となるように、差分処理を行った
(off-set)。一度コートが取れると、噴霧乾燥によって調製された小型錠剤コアからのI
CVDの放出プロファイルは、凍結乾燥によって調製された小型錠剤コアからのICVDと本質
的に同等となった。
【0229】
要約すると、小型錠剤を作製するためにスラグ化及び圧縮の工程で効果的に処理された
噴霧乾燥材料及び特に、結果として生じる乾燥粒状化材料が、良好な流動特性を有すると
結論付けられた。さらに、噴霧乾燥材料から生産された小型錠剤の動的溶解性プロファイ
ルの薬物放出部分は、凍結乾燥材料から生産された小型錠剤のものと本質的に同等であっ
た。
【0230】
本明細書及び以下の特許請求の範囲の全体を通じて、文脈によりそうでないことが要求
されない限り、単語「含む(comprise)」、並びに「含む(comprises)」及び「含んで
いる(comprising)」などの変形は、明言された整数、工程、整数群、又は工程群の包含
を暗示するが、任意の他の整数、工程、整数群、又は工程群の排除を暗示しないことが理
解されよう。本発明の明細書の全体を通じて言及される全ての特許及び特許出願は、それ
らの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は好ましい群及びより好ましい群
、並びに好適な群及びより好適な群、並びに先に詳述された群の実施態様の全ての組合わ
せを包含する。
【0231】
(参考文献)
【化1】
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
圧縮コアを含む、腸管の領域に医薬活性結合ポリペプチドを経口投与により送達するた
めの固体医薬組成物であって、該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプチドを含み、かつ該圧
縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、前記固体医薬組成物。
(構成2)
圧縮コアを含む、腸管の領域への経口投与により腸管の疾患の治療において使用するた
めの固体医薬組成物であって、該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプチドを含み、かつ該圧
縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、前記固体医薬組成物。
(構成3)
圧縮コアを含む、腸管の領域への経口投与により腸管の疾患の治療において使用するた
めの固体医薬組成物であって、該圧縮コアが:
(i) 該コアの重量に対して相対的に40~75重量%存在する医薬活性結合ポリペプチド、
(ii) 1以上の圧縮助剤、
(iii) 1以上の崩壊剤、を含み、かつ該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコー
ティングされている、前記固体医薬組成物。
(構成4)
圧縮コアを含む、腸管の領域への経口投与により腸管の疾患の治療において使用するた
めの固体医薬組成物であって、該圧縮コアが:
(iv) 該コアの重量に対して相対的に40~75重量%存在する医薬活性結合ポリペプチド
、
(v) 該コアの重量に対して相対的に20~55重量%存在する1以上の圧縮助剤、
(vi) 該コアの重量に対して相対的に2~6重量%存在する1以上の崩壊剤、を含み、かつ
該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、前記固体医薬組成
物。
(構成5)
腸管の領域に医薬活性結合ポリペプチドを経口投与により送達するための1以上の小型
錠剤を含むカプセル剤であって、該小型錠剤が圧縮コアを含み、該圧縮コアが医薬活性結
合ポリペプチドを含み、かつ該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングさ
れている、前記カプセル剤。
(構成6)
腸管の領域へ医薬活性結合ポリペプチドを送達する方法であって、圧縮コアを含む固体
医薬組成物を経口投与することを含み、ここで該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプチドを
含み、かつ該圧縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされている、前記方
法。
(構成7)
前記pH感受性腸溶性コーティングが腸管の領域に曝露された際に医薬活性結合ポリペプ
チドを放出する、構成1~6のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、
カプセル剤、又は方法。
(構成8)
前記腸管の領域が、小腸及び/又は大腸の領域、例えば十二指腸、空腸、回腸、盲腸、
結腸、直腸、及び肛門管のうちの少なくとも1つから選択される領域である、構成1~7の
いずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成9)
前記圧縮コア及び前記pH感受性腸溶性コーティングの間にサブコーティングをさらに含
む、構成1~8のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、
又は方法。
(構成10)
前記サブコーティングがヒドロキシプロピルメチルセルロースを含み、又はこれからな
る、構成9記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成11)
前記圧縮コアが少なくとも1つの賦形剤を含む、構成1、2、又は5~10のいずれか1項記
載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成12)
前記少なくとも1つの賦形剤が:
(i) 1以上の圧縮助剤、
(ii) 1以上の崩壊剤、
(iii) 1以上の滑沢剤、
(iv) 1以上の流動促進剤、
(v) 1以上の希釈剤、及び
(vi) 1以上の結合剤、のうちの1以上から選択される、構成11記載の医薬組成物、使用
のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成13)
クロスポビドンなどの合成ポリマー、スクロース、グルコース、ラクトース、及びフル
クトースなどの糖、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、ソル
ビトールなどの糖アルコール、結晶性セルロース、微結晶性セルロース、粉末化セルロー
ス、ヒドロキシプロピルセルロース、及びメチルセルロースのようなセルロースなどの水
溶性多糖、デンプン、ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロス
ポビドンなどの合成ポリマー、並びに炭酸カルシウムなどの無機化合物からなるリストか
ら選択される1以上の圧縮助剤を含む、構成12記載の医薬組成物、使用のための医薬組成
物、カプセル剤、又は方法。
(構成14)
前記コアの重量に対して相対的に20~55重量%、例えば30~40重量%存在する1以上の
圧縮助剤を含む、構成12又は13記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤
、又は方法。
(構成15)
顆粒内又は顆粒外である1以上の圧縮助剤を含む、構成12~14のいずれか1項記載の医薬
組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成16)
カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメ
ロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース、カルボキ
シメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、コメデンプン、コムギデン
プン、バレイショデンプン、トウモロコシデンプン、部分アルファ化デンプンなどのデン
プンからなるリストから選択される1以上の崩壊剤を含む、構成12~15のいずれか1項記載
の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成17)
前記コアの重量に対して相対的に2~6重量%、例えば約4重量%存在する1以上の崩壊剤
を含む、構成12~16のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセ
ル剤、又は方法。
(構成18)
顆粒内又は顆粒外である、1以上の崩壊剤を含む、構成12~17のいずれか1項記載の医薬
組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成19)
ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;ステアリ
ン酸亜鉛などのステアリン酸塩、鉱油、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウ
ム、ステアリルフマル酸ナトリウム、トウモロコシデンプン;バレイショデンプン;アル
ファ化デンプン;タピオカデンプン;コムギデンプンなどのデンプン、ステアリン酸、タ
ルク、植物油、及びステアリン酸亜鉛からなるリストから選択される1以上の滑沢剤を含
む、構成12~18のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤
、又は方法。
(構成20)
前記コアの重量に対して相対的に、0.1~2重量%、例えば約1重量%存在する1以上の滑
沢剤を含む、構成12~19のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カ
プセル剤、又は方法。
(構成21)
顆粒外である1以上の滑沢剤を含む、構成12~20のいずれか1項記載の医薬組成物、使用
のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成22)
前記医薬活性結合ポリペプチドが、前記コアの重量に対して相対的に、30~80重量%、
例えば40~75重量%、例えば約50重量%~60重量%存在する、構成1、2、又は5~21のい
ずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成23)
前記圧縮コアが、全て前記コアの重量に対して相対的に、以下:
20~55重量%の1以上の圧縮助剤;
2~6重量%の1以上の崩壊剤;
0.1~2重量%の1以上の滑沢剤、及び
40~75重量%の医薬活性結合ポリペプチド、
を含み、これらから実質的になり、又はこれらからなる、構成1、2、又は5~22のいずれ
か1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成24)
ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド性二酸化ケイ素、及びタルクからな
るリストから選択される1以上の流動促進剤を含む、構成12~23のいずれか1項記載の医薬
組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成25)
炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシ
ウム、微結晶性セルロース、粉末化セルロース、デキストレート、デキストリン、デキス
トロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクチトール、無水ラクトース、ラクトース
一水和物、マルチトール、マルトデキストリン、マルトース、マンニトール、ソルビトー
ル、トウモロコシデンプン;バレイショデンプン;アルファ化デンプン;タピオカデンプ
ン;コムギデンプンなどのデンプン、及びスクロースからなるリストから選択される1以
上の希釈剤を含む、構成12~24のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成
物、カプセル剤、又は方法。
(構成26)
アラビアゴム、アルギン酸、アンモニアメタクリル酸コポリマー、アンモニアメタクリ
ル酸コポリマー分散物、カルボマーコポリマー、カルボマーホモポリマー、カルボマー共
重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶性セルロース、コポビドン、ス
クロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアーガム、低置
換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロメロース酢酸エステルコハ
ク酸エステル、マルトデキストリン、マルトース、メチルセルロース、ポリエチレンオキ
シド、ポビドン、トウモロコシデンプン;バレイショデンプン;アルファ化デンプン;タ
ピオカデンプン;コムギデンプンなどのデンプンからなるリストから選択される1以上の
結合剤を含む、構成12~25のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、
カプセル剤、又は方法。
(構成27)
前記pH感受性腸溶性コーティングが、10~300 umの厚さを有している、構成1~26のい
ずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成28)
前記pH感受性腸溶性コーティングが、任意に1以上の可塑剤、粘着防止剤、及び界面活
性剤と一緒にpH感受性腸溶性ポリマーコートを含み、又はこれらからなる、構成1~27の
いずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成29)
前記pH感受性腸溶性ポリマーコートが:アクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、
酢酸コハク酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、酢酸コハク
酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステル
)、酢酸フタル酸ポリビニル(PVAP)、メタクリル酸メチル-メタクリル酸コポリマー、
アルギン酸ナトリウム、及びステアリン酸のうちの1以上を含む、構成28記載の医薬組成
物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成30)
前記pH感受性腸溶性ポリマーコートが、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルをベース
とするアニオン性コポリマーを含み、又はこれからなる、構成29記載の医薬組成物、使用
のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成31)
前記pH感受性腸溶性ポリマーコートが、ポリ(メタクリル酸-コ-メタクリル酸メチル) 1
:1又はポリ(メタクリル酸-コ-アクリル酸エチル) 1:1を含み、又はこれらからなる、構成
30記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成32)
前記pH感受性腸溶性ポリマーコートが、前記pH感受性腸溶性コーティングに対し相対的
に40~70重量%存在する、構成28~31のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医
薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成33)
前記pH感受性腸溶性ポリマーコートが、0.5~3.5のpHに2時間以上曝露されて初めて溶
解する、構成28~32のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセ
ル剤、又は方法。
(構成34)
前記pH感受性腸溶性コーティングが可塑剤を含み、ここで該可塑剤がクエン酸トリエチ
ルであり、前記粘着防止剤がタルクであり、かつ/又は前記界面活性剤がラウリル硫酸ナ
トリウムである、構成28~33のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物
、カプセル剤、又は方法。
(構成35)
前記可塑剤が前記pH感受性腸溶性コーティングに対し相対的に5~20重量%存在し、か
つ/又は前記粘着防止剤が該pH感受性腸溶性コーティングに対し相対的に20~40重量%存
在し、かつ/又は前記界面活性剤が該pH感受性腸溶性コーティングに対し相対的に0.05~0
.5重量%存在する、構成28~34のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成
物、又は方法。
(構成36)
前記医薬活性結合ポリペプチドの分子量が5~200 kDである、構成1~35のいずれか1項
記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成37)
前記医薬活性結合ポリペプチドが、10 mg/mL超、例えば30 mg/mL超の水溶性を有する、
構成1~36のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、又は方法。
(構成38)
前記医薬活性結合ポリペプチドの用量が、1日当たり3回の100~500 mgである、構成1~
37のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成39)
前記組成物が小型錠剤の形態で提示される、構成1~4又は6~38のいずれか1項記載の医
薬組成物、使用のための医薬組成物、又は方法。
(構成40)
前記組成物がカプセル剤の中に含まれる、構成1~4又は6~39のいずれか1項記載の医薬
組成物、使用のための医薬組成物、又は方法。
(構成41)
前記組成物が1以上のリンカーによって接続された2以上の医薬活性結合ポリペプチドを
含む、構成1~40のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤
、又は方法。
(構成42)
前記1以上のリンカーが1以上のプロテアーゼに対して不安定である、構成41記載の医薬
組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成43)
前記リンカーが1以上のプロテアーゼに対して不安定ではない、構成41記載の医薬組成
物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成44)
前記医薬活性結合ポリペプチドが免疫グロブリン、好ましくはドメイン抗体である、構
成1~43のいずれか1項記載の医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成45)
前記医薬活性結合ポリペプチドがICVD、例えばVH又はVHHである、構成44記載の医薬組
成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成46)
前記医薬活性結合ポリペプチドが局所治療効果のためのものである、構成1~45のいず
れか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成47)
薬局方収載の腸溶性コーティング試験でアッセイする際に、前記医薬組成物が2時間後
に前記医薬活性結合ポリペプチドを10重量%未満放出する、構成1~46のいずれか1項記載
の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成48)
前記pH感受性腸溶性コートが、少なくとも6時間後に無傷である、構成47記載の医薬組
成物、使用のための医薬組成物、カプセル剤、又は方法。
(構成49)
薬局方収載の溶解性試験でアッセイする際に、前記医薬組成物が:
(i) 30分後に前記医薬活性結合ポリペプチドの10~40重量%を、
(ii) 60分後に該医薬活性結合ポリペプチドの30~60重量%を、及び
(iii) 120分後に該医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、
放出する、構成1~48のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセ
ル剤、又は方法。
(構成50)
動的溶解性試験でアッセイする際に:
前記医薬組成物の放出の開始が90~210分で起こり、
該医薬組成物が:
(i) 放出の開始から60分後に前記医薬活性結合ポリペプチドの10~30重量%を、
(ii) 放出の開始から120分後に該医薬活性結合ポリペプチドの40~70重量%を、及び
(iii) 放出の開始から180分後に該医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、
放出する、構成1~49のいずれか1項記載の医薬組成物、使用のための医薬組成物、カプセ
ル剤、又は方法。
(構成51)
圧縮コアを含む、腸管の領域への経口投与により腸管の疾患の治療において使用するた
めの固体医薬組成物であって、該圧縮コアが医薬活性結合ポリペプチドを含み、かつ該圧
縮コアがpH感受性腸溶性コーティングでコーティングされており;
該医薬活性結合ポリペプチドが局所治療効果のためのものであり;
該医薬活性結合ポリペプチドがICVDであり;
薬局方収載の腸溶性コーティング試験でアッセイする場合、該医薬組成物が2時間後に
該医薬活性結合ポリペプチドを10重量%未満放出し;
薬局方収載の溶解性試験でアッセイする場合、該医薬組成物が:
(i) 30分後に該医薬活性結合ポリペプチドの10~40重量%、
(ii) 60分後に該医薬活性結合ポリペプチドの30~60重量%、及び
(iii) 120分後に該医薬活性結合ポリペプチドの60重量%以上を、
放出する、前記固体医薬組成物。
(構成52)
前記医薬活性結合ポリペプチドを圧縮して前記圧縮コアを形成し、続いて該コアをpH感
受性腸溶性コーティングでコーティングすることを含む、構成1~51のいずれか1項記載の
医薬組成物の作製方法。
(構成53)
前記医薬活性結合ポリペプチド(例えば、免疫グロブリン鎖可変ドメイン)を1以上の
賦形剤と混合し、かつ粒状化させて顆粒を形成させ、続いて任意に該顆粒を1以上の賦形
剤と混合し、続いて該顆粒を圧縮して前記圧縮コアを形成させ、続いて該コアをpH感受性
腸溶性コーティングでコーティングする、構成52記載の方法。
(構成54)
粒状化工程の賦形剤が、1以上の圧縮助剤(例えば、マンニトール)及び1以上の滑沢剤
(例えば、ステアリン酸マグネシウム)から選択される、構成53記載の方法。
(構成55)
粒状化の後、圧縮して前記圧縮コアを形成する前に、前記顆粒を1以上の圧縮助剤(例
えば、微結晶性セルロース)、1以上の崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム
)、及び1以上の滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)から選択される1以上の賦
形剤と混合する、構成53又は54記載の方法。
(構成56)
構成52~55のいずれか1項記載の方法によって取得可能な医薬組成物。
(構成57)
固体医薬組成物のための圧縮コアであって、該組成物が経口投与により腸管の領域に医
薬活性結合ポリペプチドを送達するためのものであり、かつ該圧縮コアが局所治療効果の
ための医薬活性結合ポリペプチドを含む、前記圧縮コア。