(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058593
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】動的に加硫されたポリアリーレンスルフィド組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 81/02 20060101AFI20230418BHJP
【FI】
C08L81/02
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023017314
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2017186426の分割
【原出願日】2013-04-12
(31)【優先権主張番号】61/623,618
(32)【優先日】2012-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/665,423
(32)【優先日】2012-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/678,370
(32)【優先日】2012-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/703,331
(32)【優先日】2012-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/707,314
(32)【優先日】2012-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/717,899
(32)【優先日】2012-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/739,926
(32)【優先日】2012-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】13/804,675
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500100822
【氏名又は名称】ティコナ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ,シンユー
(72)【発明者】
【氏名】グレンシ,ジョゼフ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マグレディ,クリストファー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】望ましい加工特性を維持しつつ、極端な温度環境にあっても高強度特性並びに耐崩壊性を示すポリアリーレンスルフィド組成物を提供する。
【解決手段】高強度及び柔軟性を示すポリアリーレンスルフィド組成物について記載する。ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する方法についても記載する。形成法は、ポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分散された耐衝撃性改良剤を包含するポリアリーレンスルフィド組成物の動的加硫を包含する。耐衝撃改良剤を組成物の中にくまなく分散させた後、架橋剤を組成物の他の成分と混和する。架橋剤は耐衝撃性改良剤と反応して、耐衝撃性改良剤のポリマー鎖内及びポリマー鎖間に架橋を形成する。本組成物は、極端な温度において優秀な物理的特性を示すことができ、パイプ及びホース及び繊維などの管状部材を形成するのに使用することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリーレンスルフィドと架橋耐衝撃性改良剤とを含むポリアリーレンスルフィド組成物であって、温度23℃でISO試験No.179-1に従って測定して約3kJ/m2を超えるノッチ付き
シャルピー衝撃強さと、温度-30℃でISO試験No.179-1に従って測定して約8kJ/m2を超え
るノッチ付きシャルピー衝撃強さを有する、前記ポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項2】
前記組成物が、以下の特性:
温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験No.527に従って測定して、約4.5%を超える降伏点伸び;
温度23℃でISO試験No.179-1に従って測定して、約30kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さ;
温度-30℃でISO試験No.179-1に従って測定して、約10kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さ;
23℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さと-30
℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャルピー衝撃強さの比が約3.5を超える;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約30MPaを超える引張破断応力;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約3000MPa未満の引張弾性率;
1.8MPaにおいてISO試験No.78に従って測定して約80℃を超える荷重撓み温度;
温度約40℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、23℃でISO試験No.179-1に従って測定したシャルピーノッチ付き衝撃強さの減少が約17%未満;
温度約80℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、23℃でISO試験No.179-1に従って測定したシャルピーノッチ付き衝撃強さの減少が約25%未満;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約25%を超える引張破
断歪み;
約1000ppm未満のハロゲン含有量をもつ;または
0.2ミリメートルの厚さでV-0燃焼性規格を満たす、
の少なくとも一つを有する、請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項3】
前記ポリアリーレンスルフィドがポリプロピレンスルフィドであるか、または反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドである、請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項4】
一種以上の添加剤をさらに含み、前記一種以上の添加剤が充填剤、UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤または着色剤を含む、請求項1~3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項5】
前記架橋耐衝撃性改良剤が、耐衝撃性改良剤のエポキシ官能基または耐衝撃性改良剤の無水マレイン酸官能基と架橋剤との反応生成物を含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項6】
前記ポリアリーレンスルフィド組成物が可塑剤を含まない、請求項1~5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド組成物を含む成形品。
【請求項8】
前記成形品が、押出製品、射出成形品、ブロー成形品、熱成形品、または圧縮成形品であ
る、請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
前記成形品が、SAE試験法NO.J2665に従って測定して約3g-mm/m2-日未満の燃料または燃料源に対する透過抵抗を示す、及び/または約2週間の間、温度130℃で炭化水素液体混合物に暴露した後、約25%未満の体積変化率を示す、請求項7または8に記載の成形品。
【請求項10】
前記成形品が、ケーブルハーネス、単層若しくは多層管状部材、流体操作系の部品、容器、繊維、電気部品、または航空機の部品であり、たとえば前記成形品は内層を含む多層管状部材であり、前記内層はポリアリーレンスルフィド組成物を含み、ここで前記成形品は容器であり、前記容器はバッグ、ボトル、若しくは貯蔵タンクであるか、または前記成形品は電気部品であり、前記電気部品はシーズ線若しくは外装ケーブルである、請求項7~9のいずれかに記載の成形品。
【請求項11】
ポリアリーレンスルフィド組成物の形成方法であって:
ポリアリーレンスルフィドを溶融加工装置に供給する工程;
前記溶融加工装置に耐衝撃性改良剤を供給する工程、ここで、前記溶融加工装置における前記ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤は、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布されるように混合し、前記耐衝撃性改良剤は、反応性官能基を含む;及び
前記溶融加工装置に架橋剤を供給する工程、ここで、前記架橋剤は、耐衝撃性改良剤をポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布させた後に、溶融加工装置に供給され、前記架橋剤は、耐衝撃性改良剤の反応性官能基に対して反応性である反応性官能基を含む、を含む、前記形成方法。
【請求項12】
前記溶融加工装置にジスルフィド化合物を供給する工程をさらに含み、前記ジスルフィド化合物は、ジスルフィド化合物の一つ以上の終端部に反応性官能基を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジスルフィド化合物の反応性官能基が、架橋剤の反応性官能基と同一である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ジスルフィド化合物及び架橋剤を一緒に添加する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリアリーレンスルフィド組成物を押し出すことをさらに含む、請求項11~14のいずれかに記載の方法であって、前記押出しプロセスは、以下の特徴:
約2.5:1~約4:1の間の圧縮比を使用する:
バレル長さ対バレル直径の比が約16~約24である長さ及び直径をもつバレルを使用する;
第一のゾーンの温度は約276℃~288℃であり、第二のゾーンの温度は約282℃~約299℃であり、第三のゾーンの温度は約282℃~約299℃であり、及び第四のゾーンの温度は約540℃~約580℃である、少なくとも4つのゾーンをもつ押出機を使用する;
温度が約293℃~約310℃であるダイを使用する;
約690kPa~約6900kPaのヘッド圧をもつ、
の一つ以上を含む、前記方法。
【請求項16】
反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィド及び架橋耐衝撃性改良剤を含む、ポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項17】
前記ポリアリーレンスルフィド組成物が、以下の特性:
温度23℃でISO試験No.179-1に従って測定して、約3kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピ
ー衝撃強さ;
温度-30℃でISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m2を超えるノッチ付きシャル
ピー衝撃強さ;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約4.5%を超える降伏点伸び;
温度-30℃でISO試験No.179-1に従って測定して、約10kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さ;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約3000MPa未満の引張弾性率;
1.8MPaにおいてISO試験No.78に従って測定して約80℃を超える荷重撓み温度;
温度23℃及び試験速度5mm/分でISO試験No.527に従って測定して約25%を超える引張破
断歪み;または
約1000ppm未満のハロゲン含有量、
の一つ以上をもつ、請求項16に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項18】
一種以上の充填剤、UV安定剤、熱安定剤、潤滑剤または着色剤をさらに含む、請求項16または17に記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項19】
前記架橋耐衝撃性改良剤が、耐衝撃性改良剤のエポキシ官能基または耐衝撃性改良剤の無水マレイン酸官能基と架橋剤との反応生成物を含む、請求項16~18のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィド組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2012年4月13日出願の米国仮特許出願第61/623,618号;2012年6月28日出願の米国仮特許出願第61/665,423号;2012年8月1日出願の米国仮特許出願第61/678,370号;2012年9月20日出願の米国仮特許出願第61/703,331号;2012年9月28日出願の米国仮特許出願第61/707,314号;2012年10月24日出願の米国仮特許出願第61/717,899号;及び2012年12月20日出願の米国仮特許出願第61/739,926号の出願の利益を請求する。これらは全て、本明細書中、その全体が参照として含まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]高い強度及び耐性に加えて柔軟性を示すポリマーブレンドは、商業的関心が非常に高い。そのようなブレンドは、従来、ポリオレフィンの連続相の内部で離散(discrete)または共連続相(co-continuous phase)としてエラストマーが完全且つ一様に分散される
ように、弾性成分と熱可塑性ポリオレフィンとを均一に混合することによって形成されてきた。複合材料(composite)の加硫により成分を架橋して、改善された耐熱性及び耐薬品
性を組成物に提供する。様々なポリマー成分を混和する間に加硫を実施するとき、これを動的加硫(dynamic vulcanization)という。
【0003】
[0003]ポリアリーレンスルフィドは、高温、化学薬品及び機械的応力に耐え、広範な用途で有益に使用される高性能ポリマーである。ポリアリーレンスルフィドは、他のポリマーとブレンドされて、製品組成の特性を改善することが多かった。たとえば、エラストマー性耐衝撃性改良剤(elastomeric impact modifier)は、ポリアリーレンスルフィド組成
物の物理的特性を改善する有益性が発見された。ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性ポリマーとのブレンドを含む組成物は、高性能、高温用途について検討されてきた。
【0004】
[0004]残念ながら、耐衝撃性を改良するのに有用であると一般的に考えられたエラストマー性ポリマーはポリアリーレンスルフィドと相溶性ではなく、これら二種類の組成物を形成する際に、相分離が問題となっていた。たとえば相溶化剤を使用することによって、組成物の形成を改善することが試みられてきた。しかしながら、そのような改善をする際であっても、耐衝撃性改良性ポリマーと組み合わせてポリアリーレンスルフィドを含む組成物は、特に高い耐熱性及び高い耐衝撃性の両方を必要とする用途において、やはり所望の製品性能を提供できなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005]当業界で必要とされているのは、望ましい加工特性を維持しつつ、極端な温度環境にあっても高強度特性並びに耐崩壊性(resistance to degradation)を示すポリアリー
レンスルフィド組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006]一態様において、ポリアリーレンスルフィドと架橋耐衝撃性改良剤(crosslinked
impact modifier)とを含むポリアリーレンスルフィド組成物を開示する。ポリアリーレ
ンスルフィド組成物は、高い靱性(toughness)及び良好な柔軟性とを示す。たとえば、ポ
リアリーレンスルフィド組成物は、温度23℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して約3kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さと、温度-30℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して約8kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さを示すことができる。
【0007】
[0007]また、ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する方法を開示する。本方法は、
ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び架橋剤を溶融加工装置に供給することを含むことができる。より具体的には、架橋剤は、耐衝撃性改良剤とポリアリーレンスルフィドとを混和させた後、及び耐衝撃性改良剤を前記ポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布(distribution)させた後に、溶融加工装置に供給することができる。
【0008】
[0008]これらに限定されないが、繊維及び繊維性製品並びに、たとえば単層及び多層管状部材の両方を含む管状部材などの、ポリアリーレンスルフィド組成物を有益に組み入れる(incorporate)ことができる製品も開示する。管状部材(tubular member)は、たとえば
自動車系で使用できるように、水、石油、ガス、燃料等を運搬するのに適したパイプ及びホースを包含することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れることができるような他の製品としては、外装ケーブル及びワイヤ、並びに様々な電気部品が挙げられる。製品は、極端な温度で及び/または温度が大きく変動し得る用途での使用に非常に
適合しえる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
[0009]本開示は、以下の図面を参照としてより良く理解できるだろう。
【
図1】[00010]
図1は、本明細書中に開示のポリアリーレンスルフィド組成物の形成プロセスの略図である。
【
図2】[0010]
図2は、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成し得るような単層管状部材である。
【
図3】[0011]
図3は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む部品を成形する際に使用し得るようなブロー成形プロセスを説明する。
【
図4】[0012]
図4は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む部品を成形する際に使用し得るような連続ブロー成形プロセスを説明する。
【
図5】[0013]
図5は、その一つ以上の層がポリアリーレンスルフィド組成物から成形し得るような、多層管状部材である。
【
図6】[0014]
図6は、海底から海上装置に伸長しているフレキシブルライザー・フローラインを含む石油ガス系を説明する。
【
図7】[0015]
図7は、本明細書中に記載されるポリアリーレンスルフィド組成物を含むことができる様々な種類のフローライン(flowline)を含む石油及びガス生産現場を説明する。
【
図8】[0016]
図8は、本明細書中で記載されるポリアリーレンスルフィド組成物で成形したバリヤー層を含む多層ライザー(riser)の略図である。
【
図9】[0017]
図9は、本明細書中に記載の複合(multiple)フローラインを含む束になったライザーを説明する。
【
図10A】[0018]
図10Aは、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形した一つ以上の層を含みえるようなパイプ-イン-パイプ・フローラインの側面図であり、
図10Bはその断面図である。
【
図10B】[0018]
図10Aは、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形した一つ以上の層を含みえるようなパイプ-イン-パイプ・フローラインの側面図であり、
図10Bはその断面図である。
【
図11】[0019]
図11は、ポリアリーレンスルフィド組成物の繊維を形成する際に使用し得るような延伸繊維形成法(drawn fiber formation method)を説明する。
【
図12】[0020]
図12は、ポリアリーレンスルフィド組成物のメルトブロー繊維を形成するための形成法を説明する。
【
図13】[0021]
図13は、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド繊維を組み入れられるような繊維マットを説明する。
【
図15】[0023]
図15は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含みえるようなケーブルハーネスを説明する。
【
図16A】[0024]
図16A及び
図16Bは、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む部品を組み入れられるような、大型トラック用の尿素タンクを説明する。
【
図16B】[0024]
図16A及び
図16Bは、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む部品を組み入れられるような、大型トラック用の尿素タンクを説明する。
【
図17】[0025]
図17は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む部品を組み入れられるような大型トラック用の尿素タンクの別の態様を説明する。
【
図18】[0026]
図18は、本明細書に記載されるポリアリーレンスルフィド組成物から成形し得るような一つ以上の燃料ラインを組み入れることができる燃料系の一部を説明する。
【
図19】[0027]
図19は、本明細書に記載されるポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れることができる航空機機体の略図である。
【
図20】[0028]
図20は、本明細書に記載されるポリアリーレンスルフィド組成物の溶融強度及び溶融伸び(melt elongation)を測定する際に使用されるサンプルを説明する。
【
図21】[0029]
図21は、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物のノッチ付きシャルピー衝撃強さと、比較組成物のノッチ付きシャルピー衝撃強さにおける温度変化の影響を説明する。
【
図22A】[0030]
図22は、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物(
図22B)及び比較ポリアリーレンスルフィド(
図22A)の走査電子顕微鏡写真である。
【
図22B】[0030]
図22は、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物(
図22B)及び比較ポリアリーレンスルフィド(
図22A)の走査電子顕微鏡写真である。
【
図23】[0031]
図23は、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物及び比較組成物の強度特性における硫酸暴露の影響を比較する。
【
図24】[0032]
図24は、剪断速度の関数として、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物に関して得られた複素粘度(複素粘性率:complex viscosity)の対数を提供する。
【
図25】[0033]
図25は、ヘンキー(Hencky)歪みの関数として、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物の溶融強度を提供する。
【
図26】[0034]
図26は、ヘンキー歪みの関数として、本明細書に記載のポリアリーレンスルフィド組成物の溶融伸びを提供する。
【
図27】[0035]
図27は、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形したブロー成形容器を説明する。
【
図29】[0037]
図29は、CE10燃料ブレンドに対するポリアリーレンスルフィド組成物の透過抵抗を測定する際の試験サンプルの日々の重量減少を説明する。
【
図30】[0038]
図30は、CM15A燃料ブレンドに対するポリアリーレンスルフィド組成物の透過抵抗を測定する際の試験サンプルの日々の重量減少を説明する。
【
図31】[0039]
図31は、メタノールに対するポリアリーレンスルフィド組成物の透過抵抗を測定する際の試験サンプルの日々の重量減少を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0040]当業者には、本考察が例示的な態様を記載しただけであり、本発明のより広い側面を限定するものではないと理解されるべきである。
【0011】
[0041]本開示は、一般に、優れた強度及び柔軟特性、並びに水、石油、ガス、合成または天然の化学薬品などとの接触による化学的劣化(化学的崩壊:chemical degradation)に
対する耐性を示すポリアリーレンスルフィド組成物に関する。有益には、本ポリアリーレンスルフィド組成物は、自動車用途で遭遇するような高温及び配管用途で遭遇するような低温などの極端な温度での用途で使用されるときでさえも、良好な物理的特性を維持し得る。ポリアリーレンスルフィドは、材料が極端な温度変動に暴露される条件下で良好な物理的特性も維持することもできる。
【0012】
[0042]ポリアリーレンスルフィド組成物は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とを混和(combine)して、混合物を形成(form)すること、及び前記混合物を動的加硫に
暴露することを含む溶融加工技術に従って形成することができる。より具体的には、ポリアリーレンスルフィドを耐衝撃性改良剤と混和し、この混合物を、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中に十分にくまなく分布(分散:distribute)されるように、剪断条件に暴露することができる。混合物を形成した後、多官能性(polyfunctional)架橋剤を添加することができる。多官能性架橋剤は、混合物の成分と反応して、組成物の内部で、たとえば耐衝撃性改良剤のポリマー鎖の内部及び間で架橋を形成することができる。
【0013】
[0043]特別な理論に拘束されないが、ポリアリーレンスルフィドの中にくまなく耐衝撃性改良剤を分布させた後、ポリアリーレンスルフィド組成物に多官能性架橋剤を添加することによって、溶融加工装置内部のポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤、及び架橋剤間の相互作用が改善されて、組成物の中でくまなく架橋耐衝撃性改良剤の分布が改善されると考えられる。組成物の中でくまなく架橋耐衝撃性改良剤の分布が改善されると、組成物の強度及び柔軟特性、たとえば、変形下で組成物が強度を維持する能力を改善する、並びに様々な条件下での劣化に対し優れた耐性を示すことができる製品を成形するのに使用し得る良好な加工性をもつ組成物を提供することができる。
【0014】
[0044]一態様に従って、成形プロセスは、ポリアリーレンスルフィドの官能基化(機能
化:funcionalization)を含むことができる。この態様は、耐衝撃性改良剤とポリアリー
レンスルフィドとの間の結合のために追加の場所(site)を提供することができ、これによってポリアリーレンスルフィドの中でくまなく耐衝撃性改良剤の分布をさらに改善して、さらに相分離を防ぐことができる。さらにはポリアリーレンスルフィドの官能基化は、ポリアリーレンスルフィド鎖の切断を含むことができ、これにより組成物の溶融粘度を下げて、加工性を改善することができる。これにより、優れた物理的特性及び劣化に対する高い耐性を示す低塩素組成物など、低ハロゲンであるポリアリーレンスルフィド組成物を提供することもできる。
【0015】
[0045]ポリアリーレンスルフィド組成物にさらなる改善点を提供するために、標準的な技法に従って、他の慣用の添加剤、たとえば充填剤(filler)、滑剤(lubricant)、着色料
などを含めるために組成物を形成することができる。
【0016】
[0046]ポリアリーレンスルフィド組成物の高強度及び柔軟特性は、材料の引張り、曲げ、及び/または衝撃特性を調べることによって明らかにすることができる。たとえば、ポ
リアリーレンスルフィド組成物は、23℃で、ISO試験No.179-1(ASTM D256、方法Bと技術的に同等)に従って測定して、約3kJ/m2を超える、約3.5kJ/m2を超える、約5kJ/m2を超える
、約10kJ/m2を超える、約15kJ/m2を超える、約30kJ/m2を超える、約33kJ/m2を超える、約40kJ/m2を超える、約45kJ/m2を超える、または約50kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー
衝撃強さをもつことができる。ノッチなしシャルピーサンプルは、23℃で、ISO試験No.180(ASTM D256と技術的に同等)の試験条件下で破壊しない。
【0017】
[0047]有益には、ポリアリーレンスルフィド組成物は、高温及び低温の両方を含む極端な温度でさえも良好な物理的特性を維持することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物は、-30℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m2を超える、
約9kJ/m2を超える、約10kJ/m2を超える、約14kJ/m2を超える、約15kJ/m2を超える、約18kJ/m2を超える、または約20kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことがで
き;-40℃で、ISO試験No.179-1に従って測定して、約8kJ/m2を超える、約9kJ/m2を超え
る、約10kJ/m2を超える、約11kJ/m2を超える、約12kJ/m2を超える、または約15kJ/m2を超えるノッチ付きシャルピー衝撃強さをもつことができる。
【0018】
[0048]さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物における温度変化の影響は意外にも小さくなりうる。たとえば、23℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシ
ャルピー衝撃強さ対-30℃におけるISO試験No.179-1に従って測定したノッチ付きシャル
ピー衝撃強さの比は、約3.5を超え、約3.6を超え、または約3.7を超えることができる。
従って、及び以下の実施例区分により詳細が記載されるように、温度が上昇するにつれて、ポリアリーレンスルフィド組成物の衝撃強さも予想通り上昇するが、衝撃強さの増加の割合は、特に動的に架橋された耐衝撃性改良剤を含まない組成物と比較して、非常に高い。従って、本ポリアリーレンスルフィド組成物は広い温度範囲で優秀な強度特性を示すことができる。
【0019】
[0049]ポリアリーレンスルフィド組成物は非常に良好な引張特性を示すことができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物は、約4.5%を超える、約6%を超える、約7%を超える、約10%を超える、約25%を超える、約35%を超える、約50%を超える、約70%を超え
る、約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超える降伏点引張伸び(tensile elongation at yield)をもつことができる。同様に、破断点引張伸び(tensile elongation at
break)は非常に高く、たとえば約10%を超える、約25%を超える、約35%を超える、約50%
を超える、約70%を超える、約75%を超える、約80%を超える、または約90%を超えることができる。破断点歪み(strain at break)は、約5%を超える、約15%を超える、約20%を超え
る、または約25%を超えることができる。たとえば、破断点歪みは約90%でありえる。降伏歪み(yield strain)は同様に高くなりえ、たとえば約5%を超える、約15%を超える、約20%を超える、または約25%を超える。降伏応力(yield stress)は、たとえば約50%を超えるか、または約53%を超えることができる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、約30MPaを超える、約35MPaを超える、約40MPaを超える、約45MPaを超える、または約70MPaを超える破断点引張強さ(tensile strength at break)をもつことができる。
【0020】
[0050]さらにポリアリーレンスルフィド組成物は、比較的低い引張弾性率をもつことができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、温度23℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験NO.527に従って測定して、約3000MPa未満、約2300MPa未満、約2000MPa未満、約1500MPa未満、または約1100MPa未満の引張弾性率をもつことができる。
【0021】
[0051]ポリアリーレンスルフィド組成物は、その上、アニール(annealing)後に、良好
な特性を示すことができる。たとえば、温度約230℃で約2時間のアニール後、組成物の引張弾性率は、約2500MPa未満、約2300MPa未満、または約2250MPa未満でありえる。温度23
℃及び試験速度5mm/分で、ISO試験NO.527に従って測定したアニール後の破断点引張強さ
は、約50MPaを超える、または約55MPaを超えることができる。
【0022】
[0052]ポリアリーレンスルフィド組成物は、高い温度、たとえば最高約150℃、約160℃、または約165℃の連続使用温度で、引張り強さが低下することなく、連続して使用する
こともできる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、135℃で1000時間、熱老化(熱エージング:heat aging)後に、元の引張り強さを約95%を超えて、たとえば約100%を維持することができ、且つ135℃で1000時間、熱老化後に、元の降伏点引張伸びを約95%を
超えて、たとえば約100%を維持することができる。
【0023】
[0053]引張特性は、温度23℃及び試験速度5mm/分、または50mm/分でISO試験No.527(23
℃におけるASTM D623と技術的に同等)に従って測定することができる。
【0024】
[0054]本組成物の曲げ特性は、温度23℃及び試験速度2mm/分でISO試験No.178(ASTM D790と技術的に同等)に従って測定することができる。たとえば、組成物の曲げ弾性率は、約2500MPa未満、約2300MPa未満、約2000MPa未満、約1800MPa未満、または約1500MPa未満で
ありえる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、約30MPaを超える、約35MPaを超える、約40MPaを超える、約45MPaを超える、または約70MPaを超える破断点曲げ強さ(flexural strength at break)をもつことができる。
【0025】
[0055]ポリアリーレンスルフィド組成物の荷重撓み温度(deflection temperature under load)は比較的高くなりうる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物の荷重撓み温
度は、1.8MPaにおいて、ISO試験No.75-2(ASTM D790と技術的に同等)に従って測定して、
約80℃を超える、約90℃を超える、約100℃を超える、または約105℃を超えることができる。
【0026】
[0056]ビカット軟化点(Vicat softening point)は、加熱速度50K/時間で荷重10Nを使用するときに、ビカットA試験(Vicat A test)に従って測定して、約200℃を超える、または約250℃を超えることができ、たとえば約270℃である。加熱速度50K/時間で荷重50Nを使
用するときに、ビカットB試験に関しては、ビカット軟化点は、約100℃を超える、約150
℃を超える、約175℃を超える、または約190℃を超えることができ、たとえば約200℃で
ある。ビカット軟化点は、ISO試験No.306(ASTM D1525と技術的に同等)に従って測定する
ことができる。
【0027】
[0057]ポリアリーレンスルフィド組成物は、過酷な環境条件に長期間暴露される間も、優れた安定性を示すことができる。たとえば、酸性環境に長期暴露下(under long term exposure)で、ポリアリーレンスルフィド組成物は、強度特性で殆ど減少を示さない。たとえば強酸(たとえば硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸などの強酸約5%以上の溶液)に500時間暴露した後に、ポリアリーレンスルフィド組成物は、温度約40℃で強酸溶液に約500時間暴
露した後に、約17%未満、または約16%未満のシャルピーノッチ付き衝撃強さの減少(loss)を示すことができ、温度約80℃で強酸溶液に約500時間暴露した後に、約25%未満、ま
たは約22%未満のノッチ付きシャルピー衝撃強さ(Charpy notched impact strength)の減少を示すことができる。たとえば温度約80℃に保持した10%硫酸溶液中で1000時間のより過酷な条件下でさえも、ポリアリーレンスルフィド組成物は、当初のノッチ付きシャルピー衝撃強さの約80%以上を維持することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、自動車用途で遭遇しうるように、潜在的に分解性の材料、たとえば塩、たとえば道路用の塩(road salt)に暴露された後でも所望の強度特性を維持することができる。
【0028】
[0058]透過抵抗(permeation resistance)は、たとえば燃料ライン、貯蔵タンクなどの
成形において組成物を使用する際など、ポリアリーレンスルフィド組成物の広範な用途にとって重要である。ポリアリーレンスルフィド組成物は、広範な種類の材料に対して優れた透過抵抗を示すことができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形した成形品は、約10g-mm/m2-日未満、約5g-mm/m2-日未満、約3g-mm/m2-日未満、または約2g-mm/m2-日未満の燃料または燃料源(たとえばガソリン、ディーゼル油、ジェット燃料、未精製または精製油など)に対する透過抵抗を示すことができる。たとえば、ポリアリーレン
スルフィド組成物(またはポリアリーレンスルフィド組成物で成形した製品)は、約10g-mm/m2-日未満、約3g-mm/m2-日未満、約2.5g-mm/m2-日未満、約1g-mm/m2-日未満、または約0.1g-mm/m2-日未満の、40℃においてエタノール/イソオクタン/トルエンのエタノールブレンド(重量比10:45:45)に対する透過抵抗を示すことができる。40℃における15wt%メタノール及び85wt%含酸素燃料(oxygenated fuel)のブレンド(CM15A)に対する透過抵抗は、約5g-mm/m2-日未満、約3g-mm/m2-日未満、約2.5g-mm/m2-日未満、約1g-mm/m2-日未満、約
0.5g-mm/m2-日未満、約0.3g-mm/m2-日未満、または約0.15g-mm/m2-日未満でありえる。40℃におけるメタノールに対する透過抵抗は、約1g-mm/m2-日未満、約0.5g-mm/m2-日未満、約0.25g-mm/m2-日未満、約0.1g-mm/m2-日未満、または約0.06g-mm/m2-日未満でありえる
。透過抵抗は、SAE試験法No.J2665に従って測定することができる。さらに、ポリアリー
レンスルフィド組成物は、炭化水素に長期間暴露した後に、元の密度を維持することができる。たとえば、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素または炭化水素の組み合わせに長期間(たとえば約14日を超える)暴露した後に、元の密度の約95%を超えて、元の密度の約96%を超えて維持することができ、たとえば元の密度の約99%を維持する
ことができる。
【0029】
[0059]ポリアリーレンスルフィド組成物は、材料、特に炭化水素の取り込み(hydrocarbon uptake)に対しても耐性でありえる。たとえば本組成物で成形した成形構造体は、温度130℃で約2週間の期間、炭化水素に暴露した後に、約25%未満、約20%未満、または約14%
未満の体積変化を示すことができる。
【0030】
[0060]ポリアリーレンスルフィド組成物は、良好な耐熱性及び難燃性を示すことができる。たとえば、本組成物は厚さ0.2ミリメートルでV-0燃焼性規格(flammability standard)を満たすことができる。難燃効力(flame retarding efficacy)は、“Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Devices and Appliances”、第5版、1996年10月29日のUL94垂直燃焼試験(Vertical Burn Test)手順に従って測定することができる。UL94試験に従った評価を以下の表に列記する。
【0031】
【0032】
[0061]残炎時間(afterflame time)とは、全残炎時間(試験したすべてのサンプルの総計)をサンプル数で割ることにより得られる平均値である。全残炎時間は、UL-94 VTM試験で記載したように、火炎を二回、別々に適用した後に、全サンプルが発火したままだった時間(秒)の合計である。時間が短ければ、より良好な耐燃性(難燃性:flame resistance)を示す。すなわち、火炎は早く消えた。V-0の評価に関しては、それぞれ火炎を二回適用す
る、五つ(5)のサンプルの全残炎時間は、50秒を超えてはいけない。本発明の難燃剤(flame retardant)を使用すると、物品は、厚さ0.2ミリメートルの試験片に関しては、少なく
ともV-1評価、典型的にはV-0評価を達成することができる。
【0033】
[0062]ポリアリーレンスルフィド組成物は、たとえば組成物の溶融粘度により示されるように、良好な加工特性を示すこともできる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、一定の剪断を5分間適用した後で実施した粘度測定で、316℃及び400秒-1においてキ
ャピラリーレオメーターで測定して、約2800ポアズ(poise)未満の溶融粘度をもつことが
できる。さらにはポリアリーレンスルフィド組成物は、架橋耐衝撃性改良剤を含まないポリアリーレンスルフィド組成物と比較して、長期にわたって改善された溶融安定性を示すことができる。架橋耐衝撃性改良剤を含まないポリアリーレンスルフィド組成物は、長期にわたって溶融粘度の上昇を示す傾向があり、対照的に、開示された組成物は、長期にわ
たって溶融粘度を維持するまたは、低下させることすらできる。
【0034】
[0063]ポリアリーレンスルフィド組成物は、低剪断(0.1ラジアン/秒(rad/s))及び310℃で測定して、約10kPa/秒を超える、約25kPa/秒を超える、約40kPa/秒を超える、約50kPa/秒を超える、約75kPa/秒を超える、約200kPa/秒を超える、約250kPa/秒を超える、約300kPa/秒を超える、約350kPa/秒を超える、約400kPa/秒を超える、または約450kPa/秒を超える複素粘度(complex viscosity)をもつことができる。低剪断での複素粘度の値がより高
いことは、組成物の架橋構造及びポリアリーレンスルフィド組成物のより高い溶融強度の兆候である。さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物は、より高い剪断感受性(shear sensitivity)を示し、このことは、ブロー成形及び押出加工などの成形プロセスで使用す
るのに優れた特性であることを示している。
【0035】
[0064]
図1は、ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する際に使用することができるプロセスの略図を説明する。示されているように、ポリアリーレンスルフィド組成物は、押出機100などの溶融加工装置で溶融混練することができる。押出機100は、これらに限定されないが、一軸、二軸、または多軸押出機(multi-screw extruder)、共回転若しくは反転押出機、噛み合い(intermeshing)若しくは非-噛み合い(non-intermeshing)押出機など
当業界で公知の任意の押出機でありえる。一態様において、本組成物は、多数のゾーンまたはバレルを含む押出機100で溶融加工することができる。図示された態様では、押出機100は、示されているように押出機100の長さに沿って21~30の番号がつけられた10個のバ
レルを含む。それぞれのバレル21~30は、独立して操作することができる供給ライン(feed line)14、16、ベント12、温度調節などを含むことができる。汎用スクリューデザイン
を使用して、ポリアリーレン組成物を溶融加工することができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、Coperion共回転完全噛み合い二軸押出機などの二軸押出機を使用して溶融混合することができる。
【0036】
[0065]ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する際に、ポリアリーレンスルフィドは、主供給口14で押出機100に供給することができる。たとえばポリアリーレンスルフィド
は、計量供給装置(metering feeder)により第一のバレル21で主供給口14に供給すること
ができる。ポリアリーレンスルフィドは、押出機100の中を通って前進するにつれて、融
解して、組成物の他の成分と混合することができる。耐衝撃性改良剤は、所望により主供給口14でポリアリーレンスルフィド組成物と共に(同時に:in conjunction with)または
主供給口の下流で、組成物に添加することができる。
【0037】
[0066]主供給口14の下流地点で、且つ組成物に耐衝撃性改良剤を添加した後、架橋剤を組成物に添加することができる。たとえば例示された態様では、バレル26での第二の供給ライン16を、架橋剤の添加用に使用することができる。架橋剤の添加点は特に限定されない。しかしながら、架橋剤は、耐衝撃性改良剤がポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分布されるように、ポリアリーレンスルフィドを剪断下で耐衝撃性改良剤と混合した後の時点で、組成物に添加することができる。
【0038】
[0067]ポリアリーレンスルフィドは、式(I):
【0039】
【0040】
{式中、Ar1、Ar2、Ar3、及びAr4は同一または異なり、6~18個の炭素原子のアリーレン
ユニットであり;W、X、Y、及びZは同一または異なり、-SO2-、-S-、-SO-、-CO-、-O-、-COO-または、1~6個の炭素原子のアルキレン若しくはアルキリデン基から選
択される二価の結合基(linking group)であり、ここで前記結合基の少なくとも一つは-S-であり;n、m、i、j、k、l、o、及びpは独立してゼロまたは1、2、3、または4であり、但し、その合計は2以上である}の繰り返しユニットを含むポリアリーレンチオエーテル
でありえる。アリーレンユニットAr1、Ar2、Ar3、及びAr4は、選択的に置換されるか、または非置換でありえる。好都合なアリーレン系は、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレン、アントラセン及びフェナントレンである。ポリアリーレンスルフィドは典型的には、約30モル%を超え、約50モル%を超え、または約70モル%を超えるアリーレンスルフィド(-S-)ユニットを含む。一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、少なくとも85モル%の、二つの芳香環に直接結合したスルフィド結合を含む。
【0041】
[0068]一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、その成分としてフェニレンスルフィド構造-(C6H4-S)n-(式中、nは1以上の整数である)を含むものとして、本明細書中で定義されるポリフェニレンスルフィドである。
【0042】
[0069]ポリアリーレンスルフィドは、ポリアリーレンスルフィド組成物を形成する前に合成することができるが、これはプロセスの必要条件ではない。ポリアリーレンスルフィドを形成する際に使用しえる合成技術は、一般に当業界で公知である。たとえば、ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスは、有機アミド溶媒中でアルカリ金属の硫化物(alkali metal sulfide)などの水硫化物イオン(hydrosulfide ion)を提供する材料と、ジハロ芳香族化合物(dihaloaromatic compound)とを反応させることを含みえる。
【0043】
[0070]アルカリ金属の硫化物は、たとえば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムまたはその混合物でありえる。アルカリ金属の硫化物が水和物または水性混合物(aqueous mixture)である場合、アルカリ金属の硫化物は、重
合反応に先立って脱水操作に従って処理することができる。アルカリ金属の硫化物は、現場生成することもできる。さらに少量のアルカリ金属の水酸化物を反応に含めて、アルカリ金属の硫化物と共に少量で存在するかもしれない、アルカリ金属ポリスルフィド(alkali metal polysulfide)またはチオ硫酸アルカリ金属(alkali metal thiosulfate)などの不純物を除去または反応させる(たとえば、そのような不純物を無害の物質に変える)ことができる。
【0044】
[0071]ジハロ芳香族化合物は、これらに限定されないが、o-ジハロベンゼン、m-ジハロベンゼン、p-ジハロベンゼン、ジハロトルエン、ジハロナフタレン、メトキシ-ジハロベ
ンゼン、ジハロビフェニル、ジハロ安息香酸、ジハロジフェニルエーテル、ジハロジフェニルスルホン、ジハロジフェニルスルホキシドまたはジハロジフェニルケトンでありえる。ジハロ芳香族化合物は、単独でまたはそれらの任意の組み合わせで使用することができる。具体的な代表例のジハロ芳香族化合物としては、これらに限定されないが、p-ジクロロベンゼン;m-ジクロロベンゼン;o-ジクロロベンゼン;2,5-ジクロロトルエン;1,4-ジブロモベンゼン;1,4-ジクロロナフタレン;1-メトキシ-2,5-ジクロロベンゼン;4,4'-ジクロロビフェニル;3,5-ジクロロ安息香酸;4,4'-ジクロロジフェニルエーテル;4,4'-ジクロロジフェニルスルホン;4,4'-ジクロロジフェニルスルホキシド;及び4,4'-ジクロロジフェニルケトンを挙げることができる。
【0045】
[0072]ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素でありえ、同一ジハロ-芳香
族化合物中の二つのハロゲン原子は同一または互いに異なっていてもよい。一態様において、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、p-ジクロロベンゼンまたはこれらの二つ以上の化合物の混合物をジハロ-芳香族化合物として使用する。
【0046】
[0073]当業界で公知のように、ポリアリーレンスルフィドの末端基(end group)を形成
するか、重合反応及び/またはポリアリーレンスルフィドの分子量を調整するために、ジ
ハロ芳香族化合物と組み合わせてモノハロ化合物(monohalo compound)(必ずしも芳香族化合物ではない)を使用することも可能である。
【0047】
[0074]ポリアリーレンスルフィドは、ホモポリマーでありえ、またはコポリマーでありえる。ジハロ芳香族化合物の好適な、選択的な組み合わせにより、ポリアリーレンスルフィドコポリマーは、二つ以上の異なるユニットを含んで形成することができる。たとえばp-ジクロロベンゼンをm-ジクロロベンゼンまたは4,4'-ジクロロジフェニルスルホンと組
み合わせて使用する場合、ポリアリーレンスルフィドコポリマーは、式(II):
【0048】
【0049】
の構造をもつセグメントと、式(III):
【0050】
【0051】
の構造をもつセグメント、または式(IV):
【0052】
【0053】
の構造をもつセグメントを含んで形成することができる。
【0054】
[0075]一般に、充填されたアルカリ金属の硫化物の有効量1モルあたりの(単数または複数種類の)ジハロ芳香族化合物の量は、1.0~2.0モル、1.05~2.0モル、または1.1~1.7モルでありえる。従って、ポリアリーレンスルフィドは、ハロゲン化アルキル(通常、塩化
アルキル)末端基を含みうる。
【0055】
[0076]ポリアリーレンスルフィドを製造するプロセスは、有機アミド溶媒中で重合反応を実施することを含みえる。重合反応で使用される代表的な有機アミド溶媒としては、これらに限定されないが、N-メチル-2-ピロリドン;N-エチル-2-ピロリドン;N,N-ジメチルホルムアミド;N,N-ジメチルアセトアミド;N-メチルカプロラクタム;テトラメチルウレア;ジメチルイミダゾリジノン;ヘキサメチルリン酸トリアミド及びこれらの混合物を挙げることができる。反応中で使用される有機アミド溶媒の量は、たとえばアルカリ金属の硫化物の有効量1モルあたり0.2~5キログラム(kg/mol)でありえる。
【0056】
[0077]重合は、段階的重合プロセスにより実施することができる。第一の重合段階は、ジハロ芳香族化合物を反応器に導入する、及び約180℃~約235℃、または約200℃~約230℃の温度で水の存在下、重合反応に前記ジハロ芳香族化合物を暴露する、及びジハロ芳香族化合物の転換速度(conversion rate)が理論的必要量の約50モル%以上に到達するまで
重合を継続する、各段階を含みえる。
【0057】
[0078]第二の重合段階では、重合系の水の総量が、充填したアルカリ金属の硫化物の有効量1モルあたり、約7モル、または約5モルに増加するように、水を反応スラリーに添加する。その後、重合系の反応混合物を約250℃~約290℃、約255℃~約280℃、または約260℃~約270℃の温度に加熱することができ、このようにして形成したポリマーの溶融粘度がポリアリーレンスルフィドの所望の最終レベルに上昇するまで、重合を継続することができる。第二の重合段階の持続時間は、たとえば約0.5~約20時間、または約1~約10時間でありえる。
【0058】
[0079]ポリアリーレンスルフィドは、線状、半線状(semi-linear)、分岐または架橋で
ありえる。線状ポリアリーレンスルフィドは、-(Ar-S)-の繰り返しユニットを主な構
成ユニットとして含む。通常、線状ポリアリーレンスルフィドは、この繰り返しユニット約80モル%以上を含むことができる。線状ポリアリーレンスルフィドは、少量の分岐ユニ
ットまたは架橋ユニットを含むことができるが、分岐または架橋ユニットの量はポリアリーレンスルフィドの総モノマーユニットの約1モル%未満でありえる。線状ポリアリーレンスルフィドポリマーは、上記繰り返しユニットを含むランダムコポリマーまたはブロックコポリマーでありえる。
【0059】
[0080]3つ以上の反応性官能基(reactive functional group)をもつ一つ以上のモノマーを少量、ポリマーに導入することにより提供される架橋構造または分岐構造をもちうる半線状ポリアリーレンスルフィドを使用することができる。たとえば、ポリマーの約1モル%~約10モル%は、三つ以上の反応性官能基をもつモノマーから形成することができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを製造する際に使用できる方法は、通常、当業界で公知である。たとえば、半線状ポリアリーレンスルフィドを形成する際に使用されるモノマー成分は、分岐ポリマーを製造する際に使用することができる1分子当たり2つ以上のハロゲン置換基をもつ所定量(an amount)のポリハロ芳香族化合物(polyhaloaromatic compound)を含むことができる。そのようなモノマーは、式:R'Xn{式中、Xはそれぞれ、塩素、臭
素、及びヨウ素から選択され、nは3~6の整数であり、R'は、約4個以下のメチル置換基をもつことができる価数nの多価芳香族基であり、R'中の炭素原子の総数は、6~約16の範囲内である}により表すことができる。半線状ポリアリーレンスルフィドを形成する際に使用できる1分子あたり2を超える置換ハロゲン(more than two halogens substituted per
molecule)をもつポリハロ芳香族化合物の例としては、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,3-ジクロロ-5-ブロモベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、1,2,3,5-テトラブロモベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロ-2,4,6-トリメチルベンゼン、2,2',4,4'-テトラクロロビフェニル、2,2',5,5'-テトラ-ヨードビフェニ
ル、2,2',6,6'-テトラブロモ-3,3',5,5'-テトラメチルビフェニル、1,2,3,4-テトラクロ
ロナフタレン、1,2,4-トリブロモ-6-メチルナフタレンなど、及びこれらの混合物が挙げ
られる。
【0060】
[0081]重合の後、ポリアリーレンスルフィドは液体媒体で洗浄することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドは、混合物を形成しながら、他の成分と混和する前に、水及び/または、これらに限定されないが、アセトン、N-メチル-2-ピロリドンなどのポリアリーレンスルフィドを分解しない有機溶媒、塩水(salt solution)、及び/または酢酸または塩酸などの酸性媒体で洗浄することができる。ポリアリーレンスルフィドは、通常、当業者に公知の逐次的方法で洗浄することができる。酸性溶液または塩水で洗浄すると、ナトリウム、リチウムまたはカルシウム金属イオン末端基濃度を約2000ppmから約100ppm
に削減することができる。
【0061】
[0082]ポリアリーレンスルフィドは、温水(hot water)洗浄プロセスにかけることがで
きる。温水洗浄液の温度は、約100℃以上でありえ、たとえば約120℃を超え、約150℃を
超え、または約170℃超える。
【0062】
[0083]ポリアリーレンスルフィドを形成するための重合反応装置は特に限定されないが、典型的には、高粘度流体の形成で通常使用される装置を使用するのが望ましい。そのような反応装置の例としては、様々な形状の攪拌ブレード、たとえばアンカー型、多段型、螺旋-リボン型、スクリューシャフト型など、またはそれらの修正形をもつ攪拌装置をも
つ攪拌タンク型重合反応装置を挙げることができる。そのような反応装置のさらなる例としては、混練で通常、使用される混合装置、たとえば混練機、ロールミル、バンバリーミキサーなどが挙げられる。重合後、溶融ポリアリーレンスルフィドは、典型的には所望の形状のダイがついた押出しオリフィスを通って反応器から排出され、冷却され、集めることができる。通常、ポリアリーレンスルフィドは、穿孔ダイを通って吐出されて、水浴中に引き取られるストランドを形成し、ペレット化して乾燥される。ポリアリーレンスルフィドは、ストランド、小粒または粉末の形状でもありえる。
【0063】
[0084]上記のように、ポリアリーレンスルフィドの形成は必須ではなく、ポリアリーレンスルフィドは、公知の製造業者からも購入することができる。たとえばティコナ・オブ・フローレンス(Ticona of Florence、Kentucky、USA)より入手可能なFortron(フォート
ロン)(登録商標)ポリフェニレンスルフィドは、購入することができ、ポリアリーレンス
ルフィドとして使用することができる。
【0064】
[0085]ポリアリーレンスルフィド組成物は、組成物の重量の約10wt%~約99wt%、たとえば組成物の重量の約20%wt%~約90wt%の量のポリアリーレンスルフィド成分(ポリアリーレンスルフィドのブレンドも包含する)を含むことができる。
【0065】
[0086]ポリアリーレンスルフィドは、一般に、ポリアリーレンスルフィド組成物の所望の最終用途に依存して、任意の好適な分子量及び溶融粘度でありえる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、1200s-1の剪断速度及び温度310℃で、ISO試験No.11443に従って測定して、約500ポアズ未満の溶融粘度をもつ低粘度ポリアリーレンスルフィド、約500ポアズ~1500ポアズの溶融粘度をもつ中間粘度(medium viscosity)ポリアリーレ
ンスルフィド、または約1,500ポアズを超える溶融粘度をもつ高溶融粘度ポリアリーレン
スルフィドでありうる。
【0066】
[0087]一態様に従って、ポリアリーレンスルフィドは、官能基化(機能化:functionalize)して、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤との間の結合形成をさらに促進す
ることができる。たとえばポリアリーレンスルフィドは、ポリアリーレンスルフィド上に末端官能基(functional terminal group)を提供するために、カルボキシル、酸無水物、
アミン、イソシアネートまたは他の官能基含有改質化合物(functional group-containing
modifying compound)を用いて、形成後にさらに処理することができる。たとえば、ポリアリーレンスルフィドは、メルカプト基またはジスルフィド基を含み、且つ反応性官能基も含む改質化合物(modifying compound)と反応することができる。一態様において、ポリアリーレンスルフィドは、有機溶媒中で改質化合物と反応することができる。別の態様では、ポリアリーレンスルフィドは、溶融状態で改質化合物と反応することができる。
【0067】
[0088]一態様において、所望の官能基を含むジスルフィド化合物をポリアリーレンスルフィド組成物形成プロセスに組み入れることができ、ポリアリーレンスルフィドは、組成物の形成と共に官能基化することができる。たとえば、所望の反応性官能基を含むジスルフィド化合物は、ポリアリーレンスルフィドと共に、または架橋剤を添加する前の任意の他の時点若しくは架橋剤の添加と共に、溶融押出機に添加することができる。
【0068】
[0089]ポリアリーレンスルフィドポリマーと反応的に官能基化された(reactively func
tionalized)ジスルフィド化合物との間の反応は、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度
を下げることができるポリアリーレンスルフィドポリマーの鎖切断(chain scission)を含むことができる。一態様において、低ハロゲン含有量の高溶融粘度ポリアリーレンスルフィドを出発ポリマー(starting polymer)として使用することができる。官能性(functional)ジスルフィド化合物を使用することによってポリアリーレンスルフィドポリマーを反応的に官能基化した後、低ハロゲン含有量の比較的低溶融粘度のポリアリーレンスルフィドを形成することができる。この鎖切断の後、ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度はさらなる処理に関して好適でありえ、低溶融粘度ポリアリーレンスルフィドの全体のハロゲン含有量もかなり低くなりうる。低ハロゲン含有量のポリマー材料が環境問題によりますます望ましくなっているため、低ハロゲン含有量に加えて優れた強度及び劣化抵抗性(degradation resistance)を示すポリアリーレンスルフィド組成物は好都合でありうる。一態様において、ポリアリーレンスルフィド組成物は、Parr Bomb燃焼、続いてイオンクロマト
グラフィーを使用して元素分析に従って測定して、約1000ppm未満、約900ppm未満、約600ppm未満、または約400ppm未満のハロゲン含有量を有しえる。
【0069】
[0090]ジスルフィド化合物は一般に、式:
【0070】
【0071】
{式中、R1及びR2は同一または異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を独立して含む炭化水素基である}の構造をもつことができる。たとえば、R1及びR2は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたは複素環基でありえる。R1及びR1は、ジスルフィド化合物の(
単数または複数の)末端基に反応性官能基(reactive functionality)を含むことができる
。たとえば、R1及びR2の少なくとも一つは、末端カルボキシル基、ヒドロキシル基、置換若しくは非置換アミノ基、ニトロ基などを含むことができる。通常、反応性官能基は、反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドが耐衝撃性改良剤と反応できるように選択することができる。たとえば、エポキシ末端基化(epoxy-terminated)耐衝撃性改良剤を考えるとき、ジスルフィド化合物はカルボキシル及び/またはアミノ官能基を含むことが
できる。
【0072】
[0091]本明細書において包含されるように、反応性末端基を含むジスルフィド化合物の例としては、これらに限定されないが、2,2'-ジアミノジフェニルジスルフィド、3,3'-ジアミノジフェニルジスルフィド、4,4'-ジアミノジフェニルジスルフィド、ジベンジルジ
スルフィド、ジチオサリチル酸(dithiosalicyclic acid)、ジチオグリコール酸、α,α'-ジチオ二乳酸(dithiodilactic acid)、β,β'-ジチオ二乳酸、3,3'-ジチオジピリジン、4,4'-チオモルホリン、2,2'-ジチオビス(ベンゾチアゾール)、2,2'-ジチオビス(ベンズイ
ミダゾール)、2,2'-ジチオビス(ベンゾオキサゾール)及び2-(4'-モルホリノジチオ)ベン
ゾチアゾールを含むことができる。
【0073】
[0092]ポリアリーレンスルフィドの量対ジスルフィド化合物の量の比は、約1000:1~
約10:1、約500:1~約20:1、または約400:1~約30:1でありえる。
【0074】
[0093]ポリアリーレンスルフィドポリマーに加えて、本組成物は耐衝撃性改良剤も含む。より具体的には、耐衝撃性改良剤は、オレフィン性コポリマーまたはターポリマーでありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、約4~約10個の炭素原子をもつエチレン性不飽和モ
ノマー単位を含むことができる。
【0075】
[0094]耐衝撃性改良剤は、架橋剤と反応させるために、官能基化を含むように改質(変
性)することができる。たとえば耐衝撃性改良剤は、約0.01~約0.5のモル分率(mole fraction)の、以下のもの:約3~約8個の炭素原子をもつα,β不飽和ジカルボン酸またはその塩;約3~約8個の炭素原子をもつα,β不飽和カルボン酸またはその塩;約3~約8個の炭
素原子をもつ無水物またはその塩;約3~約8個の炭素原子をもつモノエステルまたはその塩;スルホン酸またはその塩;約4~約11個の炭素原子をもつ不飽和エポキシ化合物の一
つ以上で改質することができる。そのような改質官能基化(modification functionality)としては、無水マレイン酸、フマル酸、マレイン酸、メタクリル酸、アクリル酸及びグリシジルメタクリレートが挙げられる。メタクリル酸の塩の例としては、アルカリ金属及び遷移金属塩、たとえばナトリウム、亜鉛、及びアルミニウム塩が挙げられる。
【0076】
[0095]使用しえる耐衝撃性改良剤の非限定的な例としては、エチレン-アクリル酸コポ
リマー、エチレン-無水マレイン酸コポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-
無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート-グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-メタクリル酸ターポリマー、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸ターポリマー、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸アルカリ金属塩(アイオノマー)ターポリマーなどが挙げられる。たとえば一態様において、耐衝撃性改良剤としては、エチレン、メチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのランダムターポリマーが挙げられる。ターポリマーは、約5%~約20%、た
とえば約6%~約10%のグリシジルメタクリレート含有量を有することができる。ターポリ
マーは、約20%~約30%、たとえば約24%のメチルアクリレート含有量を有することができ
る。
【0077】
[0096]一態様に従って、耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化(epoxy functionalization)、たとえば末端エポキシ基、骨格オキシランユニット(skeletal oxirane unit)及び/
またはペンダントエポキシ基を含む線状若しくは分岐、ホモポリマーまたはコポリマー(
たとえばランダム、グラフト、ブロックなど)でありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、
エポキシ官能基化を含む少なくとも一つのモノマー成分を含むコポリマーでありえる。耐衝撃性改良剤のモノマーユニットは変動し得る。一態様において、たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能性メタクリル酸モノマーユニット(epoxy-functional methacrylic monomer unit)を含むことができる。本明細書中で使用するように、「メタクリル(メタクリル酸:methacrylic)」なる用語は一般に、アクリル及びメタクリルモノマー、並びにその塩及びエステル、たとえばアクリレート及びメタクリレートモノマーを指す。耐衝撃性改良剤に組み入れることができるようなエポキシ官能性メタクリルモノマーとしては、1,2-エポキシ基を含むもの、たとえばグリシジルアクリレート及びグリシジルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適なエポキシ官能性モノマーとしては、アリルグリシジルエーテル、グリシジルエタクリレート及びグリシジルイタコネートが挙げられる。
【0078】
[0097]他のモノマーユニットは、追加としてまたはその代わりに耐衝撃性改良剤の成分でありえる。他のモノマーの例としては、たとえばエステルモノマー、オレフィンモノマー、アミドモノマーが挙げられる。一態様において、耐衝撃性改良剤としては、少なくとも一つの線状または分岐α-オレフィンモノマー、たとえば2~20個の炭素原子または2~8個の炭素原子をもつようなものが挙げられる。具体的な例としては、エチレン;プロピレン;1-ブテン;3-メチル-1-ブテン;3,3-ジメチル-1-ブテン;1-ペンテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ペンテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ヘキセン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ヘプテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-オクテン;一つ以上のメチル、エチル若しくはプロピル置換基をもつ1-ノネン;エチル、メチル、若しくはジメチル-置換1-デセン;1-ドデセン;及びスチレンが挙げられる。
【0079】
[0098]エポキシ官能基化を含む耐衝撃性改良剤に配合されるモノマーとしては、ポリマーのモノマーユニットの少なくとも一部がエポキシ官能基化されている限りは、エポキシ官能基化を含まないモノマーを含むことができる。
【0080】
[0099]一態様において、耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含むターポリマーでありえる。たとえば耐衝撃性改良剤は、エポキシ官能基化を含むメタクリル酸成分、α-オ
レフィン成分と、エポキシ官能基化を含まないメタクリル酸成分を含むことができる。たとえば耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0081】
【0082】
{式中、a、b及びcは1以上である}をもつ、ポリ(エチレン-コ-メタクリレート-コ-グリシジルメタクリレート)でありえる。
【0083】
[0100]別の態様では、耐衝撃性改良剤は、以下の構造:
【0084】
【0085】
{式中、x、y及びzは1以上である}をもつエチレン、エチルアクリレート及び無水マレ
イン酸のランダムコポリマーでありえる。
【0086】
[0101]コポリマー性(copolymeric)耐衝撃性改良剤の様々なモノマー成分の相対割合は
特に限定されない。たとえば一態様において、エポキシ官能性メタクリル酸モノマー成分は、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約1wt%~約25wt%または約2wt%~約20wt%を構成(form)しえる。a-オレフィンモノマーは、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約55wt%~約95wt%、または約60wt%~約90wt%を構成しえる。使用する際、他のモノマー成分(たとえば、非エポ
キシ官能性メタクリル酸モノマー)は、コポリマー性耐衝撃性改良剤の約5wt%~約35wt%、または約8wt%~約30wt%を構成することができる。
【0087】
[0100]一般的に当業界で公知のように、耐衝撃性改良剤は標準的な重合法に従って形成することができる。たとえば極性官能基(polar functional group)を含むモノマーをポリマー幹(backbone)にグラフトして、グラフトコポリマーを形成することができる。あるいは、公知のフリーラジカル重合法、たとえば高圧反応、チーグラー-ナッタ触媒反応系、
シングルサイト触媒(たとえばメタロセン)反応系などを使用して、官能基を含むモノマーをモノマーと共重合して、ブロックまたはランダムコポリマーを形成することができる。
【0088】
[0101]あるいは、耐衝撃性改良剤は小売市場で入手することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤として使用するのに好適な化合物は、商品名Lotader(登録商標)のもと、Arkemaから入手することができる。
【0089】
[0102]耐衝撃性改良剤の分子量は広範囲を変動しえる。たとえば、耐衝撃性改良剤は、約7,500~約250,000グラム/モル、態様によっては約15,000~約150,000グラム/モル、態
様によっては約20,000~100,000グラム/モルの数平均分子量をもつことができ、多分散性指数(polydispersity index)は通常、2.5~7である。
【0090】
[0103]通常、耐衝撃性改良剤は、組成物中に、約0.05重量%~約40重量%、約0.05重量%
~約37重量%、または約0.1重量%~約35重量%の量で存在することができる。
【0091】
[0104]
図1を参照して、耐衝撃性改良剤は、溶融加工装置の主供給口14でポリアリーレンスルフィド組成物と共に組成物に添加することができる。これは本組成物の形成プロセスの必要条件ではないが、他の態様では、耐衝撃性改良剤は主供給口の下流で添加することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤は、ポリアリーレンスルフィドが溶融加工装置に供給される地点より下流の位置であるが、それでもやはり溶融区分、すなわち、ポリアリーレンスルフィドが溶融状態になる溶融加工装置の長さより前で添加することができる。別の態様では、耐衝撃性改良剤は、ポリアリーレンスルフィドが溶融状態になる地点より下流の位置で添加することができる。
【0092】
[0105]所望により、一つ以上の分配混合部材(distributive mixing element)及び/または分散混合部材(dispersive mixing element)を溶融加工装置の内部で使用することがで
きる。一軸押出機に好適な分配ミキサーとしては、サキソン(Saxon)、ダルマージ(Dulmage)、キャビティトランスファーミキサー(Cavity Transfer mixer) などが挙げられるが、これらに限定されない。同様に、好適な分散ミキサーとしては、ブリスターリング(Blister ring)、レオリー/マドック(Leroy/Maddock)、CRDミキサーが挙げられるが、これらに
限定されない。当業界で公知のように、バスニーダー押出機(Buss Kneader extruder)、
キャビティトランスファーミキサー及びボルテックス・インターメッシング・ピンミキサー(Vortex Intermeshing Pin mixer)で使用されるもののような、ポリマー溶融物の折り
畳み及び再配向をつくりだすバレル内でピンを使用することにより、混合をさらに促進することができる。
【0093】
[0106]ポリアリーレンスルフィド及び耐衝撃性改良剤に加えて、ポリアリーレン組成物は、架橋剤を含むことができる。架橋剤は、耐衝撃性改良剤の官能基と反応して、耐衝撃性改良剤のポリマー鎖内部及びポリマー鎖間に架橋を形成できる多官能化合物またはそれらの組み合わせでありえる。通常、架橋剤は、非ポリマー性化合物(non-polymeric compound)、即ち、結合または非ポリマー性(繰り返しでない)結合成分によって結合された二つ以上の反応的に官能性末端部分(機能性末端部分:reactively functional terminal moiety)を含む分子化合物(molecular compound)でありえる。たとえば、架橋剤は、ジエポキ
シド、多官能性エポキシド、ジイソシアネート、ポリイソシアネート、多価アルコール、水溶性カルボジイミド、ジアミン、ジアミノアルカン、多官能性カルボン酸(polyfunctional carboxylic acid)、二酸ハロゲン化物(diacid halide)などが挙げられうるが、これ
らに限定されない。たとえば、エポキシ官能性耐衝撃性改良剤を考えるとき、非ポリマー性多官能性カルボン酸またはアミンを架橋剤として使用することができる。
【0094】
[0107]多官能性カルボン酸架橋剤の具体的な例としては、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、1,2-ジ(p-カルボキシフェニル)エタン、4,4'-ジカルボキシジフェニルエー
テル、4,4'-二安息香酸、1,4-または1,5-ナフタレンジカルボン酸、デカヒドロナフタレ
ンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(cisとtransの両方)、1,4-ヘキシレンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシルドデカン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸が挙げられるが、これらに限定されない。対応するジカルボン酸誘導体、たとえばアルコール基に1~4個の炭素原子をもつカルボン酸ジエステル、カルボン酸無水物またはカルボン酸ハライド(carboxylic acid halide)も使用することができる。
【0095】
[0108]架橋剤として有用な典型的なジオールとしては、脂肪族ジオール、たとえばエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオー
ル、1,4-ブト-2-エンジオール、1,3-1,5-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ジ
プロピレングリコール、2-メチル-1,5-ペンタンジオールなどが挙げられえるが、これら
に限定されない。芳香族ジオール類、たとえば、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、メチルヒドロキノン、クロロヒドロキノン、ビスフェノールA、テトラクロロビス
フェノールA、フェノールフタレインなども使用しえるが、これらに限定されない。使用
しえる典型的な脂環式ジオールは、脂環式部分を含むことができ、たとえば1,6-ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4-シクロヘキサンジメタノール(そのcis-及びtrans-異性体を含む)、トリエチレングリコール、1,10-デカ
ンジオールなどがある。
【0096】
[0109]架橋剤として使用し得る典型的なジアミンとしては、イソホロン-ジアミン、エ
チレンジアミン、1,2-、1,3-プロピレン-ジアミン、N-メチル-1,3-プロピレン-ジアミン
、N,N'-ジメチル-エチレン-ジアミン及び芳香族ジアミン、たとえば2,4-及び2,6-トルオ
イレン-ジアミン、3,5-ジエチル-2,4-及び/または-2,6-トルオイレン-ジアミン、及び第
一オルト-、ジ-、トリ-及び/またはテトラ-アルキル置換4,4'-ジアミノジフェニル-メタ
ン、(シクロ)脂肪族ジアミン、たとえばイソホロン-ジアミン、エチレンジアミン、1,2-
、1,3-プロピレン-ジアミン、N-メチル-1,3-プロピレン-ジアミン、N,N'-ジメチル-エチ
レン-ジアミン及び芳香族ジアミン、たとえば2,4-及び2,6-トルオイレン-ジアミン、3,5-ジエチル-2,4-及び/または-2,6-トルオイレン-ジアミン及び第一オルト-、ジ-、トリ-及
び/またはテトラ-アルキル置換4,4'-ジアミノジフェニルメタンが挙げられえるが、これ
らに限定されない。
【0097】
[0110]一態様において、組成物はジスルフィドを含まない(disulfide-free)架橋剤を含むことができる。たとえば架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと反応しえるジスルフィド基が全くない、カルボキシ及び/またはアミン官能基(functionality)を含むことができる。組成物を形成する間に、架橋剤によるポリアリーレンスルフィドの過剰な鎖切断を避けるために、ジスルフィドを含まない架橋剤を使用することができる。しかしながら、ジスルフィドを含まない架橋剤を使用することは、ポリアリーレンスルフィドを官能基化するために反応的に官能基化されたジスルフィド化合物を使用することをいかなる意味においても全く制限しないことを理解すべきである。たとえば一態様において、ポリアリーレンスルフィドを反応的に官能基化し得る、反応的に官能基化されたジスルフィド化合物を溶融加工装置に添加することを含むプロセスに従って組成物を形成することができる。この態様で使用される架橋剤は、耐衝撃性改良剤と、並びに反応的に官能基化されたポリアリーレンスルフィドと反応性である官能基を含むことができる、ジスルフィドを含まない架橋剤でありえる。従って、組成物は、ポリアリーレンスルフィドポリマー鎖を過剰に切断することなく、高度に架橋することができる。
【0098】
[0111]別の態様では、架橋剤及び(存在するときには)ポリアリーレンスルフィド官能基化化合物は、ポリアリーレンスルフィドの鎖切断を促進するように選択することができる
。このことは、たとえば鎖の切断が、ポリアリーレンスルフィドポリマーの溶融粘度を下げるために有益であろう。
【0099】
[0112]ポリアリーレンスルフィド組成物は、通常、ポリアリーレンスルフィド組成物の重量の約0.05wt%~約2wt%、ポリアリーレンスルフィド組成物の重量の約0.07wt%~約1.5wt%、または約0.1wt%~約1.3wt%の量で架橋剤を含むことができる。
【0100】
[0113]架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤とを混合した後に、溶融加工装置に添加することができる。たとえば、
図1に示されているように、架橋剤は、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤を(一緒にまたは個別に)溶融加工装置に添加した後に、下流の位置16で組成物に添加することができる。これによって確実に、耐衝撃性改良剤は、架橋剤を添加する前にポリアリーレンスルフィドの中にくまなく分散できるようにする。
【0101】
[0114]架橋剤を添加する前に、溶融物の中にくまなく耐衝撃性改良剤を分布させやすくするために、様々なパラメーターを選択的に制御することができる。たとえば、溶融加工装置のスクリューの長さ(L)対直径(D)の比を選択して、処理量(押出量)と耐衝撃性改良剤分布との間の最適バランスを達成することができる。たとえば、耐衝撃性改良剤が供給された地点より後の地点でL/D比を制御して、耐衝撃性改良剤の分布を促進することができ
る。特に、スクリューは、耐衝撃性改良剤とポリアリーレンスルフィドの両方が装置に供給される地点(即ち、これらの両方が一緒に供給される地点か、二つのうち後者が供給さ
れる地点)から、架橋剤が供給される地点までを画定するブレンド長さ(blending length)(LB)をもち、このブレンド長さは通常、スクリューの全長よりも短い。たとえば、全L/D
が40である溶融加工装置を考えるとき、スクリューのLB/D比は、約1~約36、態様によっ
ては約4~約20、態様によっては約5~約15でありえる。一態様において、L/LB比は、約40~約1.1、約20~約2、または約10~約5でありえる。
【0102】
[0115]架橋剤を添加した後、組成物は混合されて、組成物の中にくまなく架橋剤を分布させて、架橋剤、耐衝撃性改良剤と、一態様においてポリアリーレンスルフィドとの間の反応を促進させることができる。
【0103】
[0116]当業界で一般的に公知のように、組成物は一種以上の添加剤も含むことができる。たとえば、一種以上の充填剤はポリアリーレンスルフィド組成物に含めることができる。一種以上の充填剤は、通常、ポリアリーレンスルフィド組成物に、ポリアリーレンスルフィド組成物の重量の約5wt%~約70wt%、または約20wt%~約65wt%の量で含めることがで
きる。
【0104】
[0117]充填剤は、標準的技法に従ってポリアリーレンスルフィド組成物に添加することができる。たとえば充填剤は、溶融加工装置の下流の位置で組成物に添加することができる。たとえば、充填剤は、架橋剤の添加と共に組成物に添加することができる。しかしながら、これは形成プロセスの必要条件ではなく、充填剤は、架橋剤とは個別に、且つ架橋剤の添加地点の上流または下流のいずれかで添加することができる。さらに充填剤は、単一の供給位置で添加することができるか、または分割して、溶融加工装置に沿った多くの供給位置で添加することができる。
【0105】
[0118]一態様において、繊維充填剤をポリアリーレンスルフィド組成物に含めることができる。繊維充填剤(fibrous filler)は、これらに限定されないが、ポリマー繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、玄武岩繊維など、または繊維種の組み合わせを含む一種以上の繊維種を含むことができる。一態様において、繊維はチョップト(chopped)繊維、連
続繊維、または繊維ロービング(トウ)でありえる。
【0106】
[0119]繊維サイズは、当業界で公知のように変動しえる。一態様において、繊維は約3mm~約5mmの初期長さをもつことができる。別の態様では、たとえば引き抜きプロセスを考えるとき、繊維は連続繊維でありえる。繊維径は、使用する特定の繊維に依存して変動し得る。たとえば繊維は、約100μm未満、たとえば約50μm未満の直径を有することができ
る。たとえば繊維は、チョップトまたは連続繊維でありえ、約5μm~約50μm、たとえば
約5μm~約15μmの繊維径でありえる。
【0107】
[0120]繊維は、一般に公知のように、サイジング(sizing)で前処理することができる。一態様において、繊維は、高いイールド(yield)または小さなK値(K number)をもつことができる。トウは、イールドまたはK値により表される。たとえばガラス繊維トウは、50イ
ールド以上(yield and up)、たとえば約115イールド~約1200イールドを有しえる。
【0108】
[0121]他の充填剤を代わりに使用することができるか、繊維充填剤と共に使用することができる。たとえば、粒子状充填剤をポリアリーレンスルフィド組成物に組み入れることができる。一般に粒子状充填剤は、約750μm未満、たとえば約500μm、または約100μm未満のメジアン粒径をもつ任意の粒子状材料を包含することができる。一態様において、粒子状充填剤は、約3μm~約20μmの範囲のメジアン粒径をもつことができる。さらに、粒
子状充填剤は、公知のように中実(solid)または中空でありえる。粒子状充填剤は、当業
界で公知のように表面処理も含みえる。
【0109】
[0122]粒子状充填剤は、一種以上の無機充填剤を包含しえる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、組成物の約1wt%~約60wt%の量で一種以上の無機充填剤を含むこと
ができる。無機充填剤としては、シリカ、石英粉末、ケイ酸塩、たとえばケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、マイカ、粘土、珪藻土、珪灰石、炭酸カルシウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0110】
[0123]多様な充填剤、たとえば粒子状充填剤と繊維充填剤とを組み入れるとき、充填剤は一緒にまたは別々に溶融加工装置に添加することができる。たとえば、粒子状充填剤は、繊維充填剤を添加する前にポリアリーレンスルフィドと一緒に主供給管(main feed)に
または下流で添加することができ、繊維充填剤は、粒子状充填剤の添加点よりもさらに下流で添加することができる。一般に、繊維充填剤は、粒子状充填剤などの任意の他の充填剤の下流で添加することができるが、これは必要条件ではない。
【0111】
[0124]充填剤は、導電性充填剤(electrically conductive filler)、たとえばカーボンブラック、グラファイト、グラフェン、炭素繊維、カーボンナノチューブ、金属粉末などでありえるが、これらに限定されない。ポリアリーレンスルフィド組成物が導電性充填剤を含むそれらの態様では、たとえばポリアリーレンスルフィド組成物が燃料ラインの形成時で使用されるとき、好適な導電性充填剤は、組成物が約109オームcm(ohm cm)以下の体
積固有抵抗(volume specific resistance)をもつように含めることができる。
【0112】
[0125]一態様において、ポリアリーレンスルフィド組成物は添加剤としてUV(紫外線)安定剤を含むことができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、約0.5wt%~約15wt%、約1wt%~約8wt%、または約1.5wt%~約7wt%の量でUV安定剤を含むことができる。使
用しえる特に好適なUV安定剤は、ヒンダードアミンUV安定剤である。好適なヒンダードアミンUV安定剤化合物は、置換ピペリジン、たとえばアルキル置換ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジノン、アルコキシピペリジニル化合物などから誘導することができる。たとえばヒンダードアミンは、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニルから誘導することができる。ヒンダードアミンは、たとえば約1,000以上、態様によっては約1000~約20,000、態
様によっては約1500~約15,000、及び態様によっては約2000~約5000の数平均分子量をも
つオリゴマー性またはポリマー化合物であえりえる。そのような化合物は典型的には、ポリマー繰り返しユニット当たり、少なくとも一つの2,2,6,6-テトラアルキルピペリジニル基(たとえば1~4個)を含む。特に好適な高分子量ヒンダードアミンは、Hostavin(登録商
標)N30(数平均分子量1200)のもと、Clariantより市販されている。別の好適な高分子量ヒンダードアミンは、記号ADK STAB(登録商標)LA-63及びADK STAB(登録商標)LA-68のもと、Adeka Palmarole SASより市販されている。
【0113】
[0126]高分子量ヒンダードアミンに加えて、低分子量ヒンダードアミンも使用することができる。そのようなヒンダードアミンは、一般に本質的にモノマー性であり、約1000以下、態様によっては約155~約800、及び態様によっては約300~約800の分子量をもつ。
【0114】
[0127]他の好適なUV安定剤は、UV吸収剤、たとえばベンゾトリアゾールまたはベンゾフェノン類を含むことができ、これらはUV照射を吸収することができる。
【0115】
[0128]ポリアリーレンスルフィド組成物に含めることができる添加剤は、一般に、当業界で公知のように一種以上の着色料である。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、約0.1wt%~約10wt%、または約0.2wt%~約5wt%の一種以上の着色料を含むことができる
。本明細書中で使用されるように、「着色料(colorant)」なる用語は、一般に、材料に色を付与し得る任意の物質をさす。従って、「着色料」なる用語は、水溶液で水溶性を示す染料と、水溶液で殆どまたは全く溶解性を示さない顔料の両方を包含する。
【0116】
[0129]使用しえる染料の例としては、分散染料が挙げられるが、これらに限定されない。好適な分散染料は、カラーインデックス(the Color Index)、第三版、“Disperse Dyes”に記載されているものが挙げられえる。そのような染料としては、たとえばカルボン酸基を含まない(carboxylic acid group-free)及び/またはスルホン酸基を含まない(sulfonic acid group-free)ニトロ、アミノ、アミノケトン、ケトンイミン、メチン、ポリメチ
ン、ジフェニルアミン、キノリン、ベンズイミダゾール、キサンテン、オキサジン及びクマリン染料、アントラキノン及びアゾ染料、たとえばモノ-またはジ-アゾ染料が挙げられる。分散染料は、原色の赤色分散染料(primary red color disperse dye)、原色の青色染料及び原色の黄色染料も含むことができる。
【0117】
[0130]ポリアリーレンスルフィド組成物に組み入れることができる顔料としては、有機顔料、無機顔料、金属顔料、燐光性顔料(phosphorescent pigment)、蛍光顔料、光発色性顔料(フォトクロミック顔料:photochromic pigment)、サーモクロミック顔料(thermochromic pigment)、玉虫色顔料(iridescent pigment)及び真珠光沢顔料が挙げられえるが、
これらに限定されない。顔料の具体的な量は、製品の所望の最終色に依存して変動しえる。パステルカラーは一般に、着色顔料に二酸化チタンホワイトまたは同様の白色顔料を添加することにより達成される。
【0118】
[0131]ポリアリーレンスルフィド組成物に配合し得る他の添加剤としては、抗菌剤、滑剤、顔料若しくは他の着色料、耐衝撃性改良剤、酸化防止剤、安定剤(有機ホスファイト(organophosphite)、たとえばDoverphos(登録商標)製品、Dover Chemical Corporation製
など)、界面活性剤、流動促進剤、固体溶媒並びに、特性及び加工性を促進するために添
加される他の材料が包含されるが、これらに限定されない。そのような任意選択の材料は、主供給口でポリアリーレンスルフィド組成物に添加するなど、慣用の加工技術に従って、慣用量でポリアリーレンスルフィド組成物中に使用することができる。有益には、ポリアリーレンスルフィド組成物は、可塑剤を添加することなく所望の特徴を示すことができる。たとえば、組成物は、フタル酸エステル、トリメリット酸エステル(trimellitate)、セバシン酸エステル(sebacate)、アジピン酸エステル(adipate)、グルタル酸エステル(gluterate)、アゼライン酸エステル(azelate)、マレイン酸エステル(maleate)、安息香酸エ
ステル(benzoate)などの可塑剤を含まないようにできる。
【0119】
[0132]ポリアリーレンスルフィド組成物に全ての成分を添加した後、組成物は、押出機の(単数または複数の)区分で十分に混合され、ダイを通して押し出される。最終押出物は、所望によりペレット化されるか、成形される。たとえば最終押出物は、押出しテープまたはリボンの形状でありえる。
【0120】
[0133]ポリアリーレンスルフィド組成物から製品を成形するために、押出し、射出成形、ブロー成形、熱成形、発泡成形、圧縮成形、ホットスタンピング、紡糸など、慣用の成形プロセスを使用することができるが、これらに限定されない。成形し得る成形品としては、構造用成形部品及び非構造用成形部品、たとえば自動車工学熱可塑性アセンブリ並びに工業用途用の部品、たとえば冷却塔ポンプ、給湯器などを挙げることができる。たとえば熱成形シート、発泡基板(foamed substrate)、射出成形またはブロー成形部品などは、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。
【0121】
[0134]液体またはガス、特別な一態様では加熱された液体またはガスを運搬するのに使用され得る管状部材(tubular member)は、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。たとえば、ホース、パイプ、導管などの管状部材は、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。管状部材は、単層または多層であってもよい。管状部材を成形するために、典型的な慣用の押出または成形プロセスを使用することができる。たとえば、一軸または多軸押出機を、チューブ材料(tubing)の押出用に使用することができる。別の態様では、チューブラ中空部材(tubular hollow member)の成形にブロ
ー成形プロセスを使用することができる。
【0122】
[0135]
図2を参照して、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形された管状部材110
の一態様が示されている。示されているように、管状部材110は、多方向(multiple direction)に伸長して、比較的複雑な形状になっている。たとえばポリアリーレンスルフィド
組成物が固化するまえに、
図2に示されているように部品に角変位(angular displacement)を形成することができる。管状部材110は、112、114及び116に角変位変化を包含する。管状部材110はたとえば、車両(vehicle)の排気系で使用し得る部品を含むことができる。
【0123】
[0136]部品は、部品全体の至るところにまたは部品の一部のみにポリアリーレンスルフィド組成物を含むことができる。たとえば、大きなアスペクト比(L/D>1)をもつ部品、たとえば繊維または管状部材について考えるとき、部品は、ポリアリーレンスルフィド組成物が部品の区分(section)に沿って伸長し、且つ隣接する区分が異なる組成物、たとえば
異なるポリアリーレンスルフィド組成物で成形できるように、成形することができる。そのような部品は、成形プロセスの間に成形装置に供給される材料を変更(alter)すること
によって成形することができる。部品は異なる材料で形成される第一の区分と第二の区分との間の境界領域を表す二つの材料が混合される領域を含むことができる。部品は、所望により、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形された単一または複数の区分を含むことができる。さらには、部品の他の区分は、多くの別の材料で成形することができる。たとえば、流体管(fluid conduit)などの管状部品を考えるとき、管状部品の両端はポリアリ
ーレンスルフィド組成物で成形することができ、中心区分は柔軟性のより少ない組成物から成形することができる。従って、より柔軟性のある末端を使用して、部品を系の他の部にしっかりと固定することができる。あるいは、部品の中心区分はポリアリーレンスルフィド組成物から成形できるかもしれないが、これによりその区分で部品の柔軟性を促進して、部品の取り付けをより簡単にすることができる。
【0124】
[0137]一態様に従って、
図2に説明されている管状部材110などの管状部材は、ブロー
成形プロセスに従って成形された単層管状部材でありえる。
図3は、ポリアリーレンスル
フィド組成物から部品を成形するために使用しえる一方法を説明する。しかしながら、
図3に説明されているブロー成形プロセスは管状部材の成形を包含するが、ブロー成形方法論は、広範な種類の成形装置(shaped device)を成形する際に使用することができ、ポリ
アリーレンスルフィド組成物で成形した管状部品に限定するつもりは全くないことを理解すべきである。
【0125】
[0138]ブロー成形の間、ポリアリーレンスルフィド組成物を最初に加熱して、押出し装置につけたダイを使用してパリソン1020に押し出す。パリソン1020を成形するとき、組成物は、重力がパリソン1020の部分を不必要に引き伸ばして、不均一な壁厚及び他の欠陥を形成しないように十分な溶融強度をもたなければならない。パリソンは、三次元モールド・キャビティ(mold cavity)1026を一緒になって形成する複数の区分1028、1030、1040、1042から形成される成形装置1026に受けとられる。たとえば、ロボットアーム1024を使用
して、パリソン1020を成形装置で操作することができる。
【0126】
[0139]理解できるように、パリソン1020の成形から、パリソンが成形装置の中に噛み合って移動するまでに、一定の時間が経過する。プロセスのこの段階の間、ポリアリーレンスルフィド組成物の溶融強度は、パリソン1020が、移動の間にその形状を保持できるように十分に高くなりえる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、半流体状態のままであり、且つブロー成形が開始する前に急速に固化しない能力もある。
【0127】
[0140]一度成形装置を閉じたら、不活性ガスなどのガスをガス供給1034からパリソン1020に供給する。ガスは、パリソンがモールド・キャビティの形状に適合するように、パリソンの内部表面に対して十分な圧力を供給する。ブロー成形後、方向を示す矢印によって表されているように区分を開けることができ、次いで完成品を取り出す。一態様において、成形装置から取り出す前に、ポリアリーレンスルフィド組成物を固化させるために、成形品に冷気を注入することができる。
【0128】
[0141]
図4に説明される別の態様に従って、配管用途で有用であるように、長い管状部品などの部品を成形するために、連続ブロー成形プロセスを使用することができる。
図4は、連続ブロー成形プロセスに従って長い管状部品を成形する際に使用し得るような、一方法の略図を示す。連続プロセスでは、固定押出機(示されていない)は、溶融ポリアリーレンスルフィド組成物を可塑化して、ヘッドの中に溶融ポリアリーレンスルフィド組成物を強制的に通して、連続パリソン1601を成形する。アキュムレーター(accumulator)1605
を使用してパリソン1601を支持して、成形前にたるまないようにすることができる。パリソンは、成形コンベヤアセンブリ(mold conveyor assembly)1604上の連続パリソンと共に移動する連結区分(articulated section)1602、1603で形成される金型(mold)に供給する
ことができる。加圧下で空気をパリソンに適用して、金型内で組成物をブロー成形する。金型と組成物が一緒に移動するにつれて組成物が成形されて金型内で十分に冷却された後、金型セグメントは互いに分離して、部品の成形された区分(formed section)(たとえば
パイプ)1606はコンベヤから取り出されて、巻き取りリール(示されていない)などの上に
引き取られる。
【0129】
[0142]パイプまたはチューブなどの管状部材は、押出しプロセスに従って成形することができる。たとえば、簡単な、またはバリヤー型スクリューを使用する押出プロセスを使用することができ、一態様では、プロセスで混合先端部を使用する必要はない。押出プロセスの圧縮比は、約2.5:1~約4:1の間でありえる。たとえば、圧縮比は、約25%供給材
料、約25%移行(transition)、及び約50%計量供給である。バレル長さ対バレル径の比(L/D)は約16~約24でありえる。当業界で公知のように、押出しプロセスは、ブレーカープレ
ート、スクリーンパック、アダプター、ダイ及び真空タンクなど他の標準的な部品を使用することもできる。真空タンクは通常、サイジングスリーブ(sizing sleeve)/キャリブレ
ーションリング(calibration ring)、タンクシール(tank seals)などを包含しえる。
【0130】
[0143]押出しプロセスに従って管状部材などの製品を成形するとき、ポリアリーレンスルフィド組成物は、最初に、温度約90℃~約100℃で約3時間、乾燥することができる。
組成物の変色を避けるために、長時間の乾燥を避けるのが有益でありえる。公知のように、押出機は異なるゾーン(zone)で異なる温度を示すことができる。たとえば一態様において、押出機は少なくとも4つのゾーンを含むことができ、第一のゾーンの温度は約276℃
~約288℃であり、第二のゾーンの温度は約282℃~約299℃であり、第三のゾーンの温度
は約282℃~約299℃であり、第四のゾーンの温度は約540℃~約580℃である。その一方で、ダイの温度は約293℃~約310℃でありえ、真空タンクの水は約20℃~約50℃でありえる。
【0131】
[0144]通常、ヘッド圧(head pressure)は約100ポンド/平方インチ(pounds per square inch:psi)(約690kPa)~約1000psi(約6900kPa)でありえ、公知のように、ヘッド圧は安定な溶融流れ(melt flow)を得るために調節することができる。たとえば、ヘッド圧は、押
出機ゾーンの温度を上昇させることにより、一分当たりの押出機スクリューの回転を増加させること、スクリーンパックのメッシュサイズ及び/またはスクリーンの数を減らすこ
となどにより、下げることができる。通常、ライン速度(line speed)は約4メートル/分~約15メートル/分でありえる。もちろん、実際のライン速度は、最終製品の最終寸法、最
終製品の美的感覚及びプロセス安定性などに依存しえる。
【0132】
[0145]押出しプロセスの間のダイスウエルは、通常、無視することができる。他の加工条件に依存して、より高い引落率(draw down)は、製品の最終特性に悪影響を与えるので
、引落率約1.2~約1.7を使用することができる。ダイの目ヤニ(die drool)は通常、押出
し前に樹脂を好適に乾燥することにより、並びに約304℃未満に溶融温度を維持すること
によって避けることができる。
【0133】
[0146]一態様において、所望により組成物からより厚い壁厚をもつ管状部材を成形することができるが、ポリアリーレンスルフィド組成物から押し出した管状部材は、約0.5ミ
リメートル~約5ミリメートルの間の壁厚を有することができる。キャリブレーションリ
ングの内径は管状部材の外径を決定することができ、通常、公知のようにダイの外径よりも小さい。公知のように、管状部材の内径を使用して、マンドレルの所望の外径及びライン速度を決定することができる。
【0134】
[0147]ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れる管状部材は、多層管状部材でありえる。
図5は、管状部材の一つ以上の層にポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れられるように、多層管状部材210を示す。たとえば、少なくとも内層(inner layer)212は、
広範な温度範囲のもとで強い衝撃強さ特性を示すポリアリーレンスルフィド組成物を含むことができ、これは管状部材210の中で運ばれる材料に対して実質的に不活性である。
【0135】
[0148]外層(outer layer)214及び中間層(intermediate layer)216は、本明細書中に記
載のポリアリーレンスルフィド組成物と同一または異なるポリアリーレンスルフィド組成物を含むことができる。あるいは、多層管状部材の他の層は、異なる材料から成形することができる。たとえば一態様において、中間層216は、圧力及び機械的作用に対して高い
耐性を示すことができる。たとえば層216は、ホモポリアミド、コポリアミド、これらの
ブレンドまたは互い若しくは他のポリマーとの混合物の群由来のポリアミドから成形することができる。あるいは層216は、繊維強化樹脂複合材料などの繊維強化材料から成形す
ることができる。たとえば、ポリアラミド(たとえばケブラー(登録商標))で織ったマットを使用して、機械的攻撃に対して非常に耐性である中間層216を形成することができる。
繊維製品(textile)若しくはワイヤの螺旋にした、編んだ(knit)、若しくは組んだ(braide
)層などの中間層(later)を含むことができる。たとえば螺旋状構造体の場合、螺旋状層(spiraled layer)は二つの層を含み、それぞれは管状部材210の縦軸(longitudinal axis)に対して約54°のいわゆるロック角度(lock angle)またはニュートラル角度(neutral angle)付近で適用し、反対側は螺旋方向で適用される(with opposite spiral directions)。しかしながら、管状部材210は螺旋構造体に限定されない。中間層216は、編み、組み、巻きつけ、織り布帛(fabric)でありえる。
【0136】
[0149]外層214は、外部攻撃からの保護を提供する、並びに管状部材に絶縁または他の
所望の特徴を提供することができる。たとえば多層ホースは、高レベルの耐チッピング(chipping)性、耐候性、難燃性及び耐寒性をもつ好適な種類のゴム材料から形成した外層214を含むことができる。そのような材料の例としては、熱可塑性エラストマー、たとえば
ポリアミド熱可塑性エラストマー、ポリエステル熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン熱可塑性エラストマー及びスチレン熱可塑性エラストマーが挙げられる。外層214の好適
な材料としては、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマーゴム、エチレン-プロピレン
ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとポリ塩
化ビニルとのブレンド、アクリロニトリル-ブタジエンゴムとエチレン-プロピレン-ジエ
ンターポリマーゴムとのブレンド、塩素化ポリエチレンゴムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
[0150]あるいは外層214は、たとえばポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、若しくは高密
度ポリエチレンなどのより固い、より柔軟性の低い材料、ガラス繊維複合材料若しくは炭素繊維複合材料などの繊維強化複合材料、またはスチールジャケットなどの金属材料から形成することができる。
【0138】
[0151]もちろん、多層管状部材は三層に限定されず、二層、四層以上の別個の(distinct)層を含むことができる。多層管状部材はさらに、接着性材料、たとえばポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルエラストマー、ポリエーテルエラストマー、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエーテルポリイミド、機能性ポリオレフィンなどから成形した一種以上の接着層を含むことができる。
【0139】
[0152]多層管状材料は、たとえば共押出、ドライラミネーション(dry lamination)、サンドイッチラミネーション、共押出コーティング、ブロー成形、連続ブロー成形などの慣用プロセスで製造することができる。たとえば
図5に説明されるように三層管状部材210
を成形する際、ポリアリーレンスルフィド組成物、ポリアミド組成物及び熱可塑性エラストマー組成物は個別に三つの異なる押出機に供給することができる。それらの三つの押出機からの別々の押出溶融物(extrusion melt)を加圧下で一つのダイに導くことができる。三つの異なる管状溶融物の流れを製造しつつ、それらの溶融流れは、ポリアリーレンスルフィド組成物の溶融流れが内層212を形成し、ポリアミド組成物の溶融流れが中間層216を形成し、且つ熱可塑性エラストマー組成物の溶融流れが外層214を形成して、そのように
して混和された溶融流れがダイから共押出されて、三層管状部材を製造するような方法で、ダイの中で混合することができる。
【0140】
[0153]もちろん、上記のようなブロー成形法を含む任意の公知のチューブ成形法を使用することができる。たとえば一態様において、多層管状部材の一つ以上の層は、引き抜き成形法に従って、連続テープ、たとえば繊維強化テープまたはリボンから成形することができる。当業界で一般に公知のように、公知の実務に従って、テープを巻きつけて、管状部材または多層管状部材の層を形成することができる。
【0141】
[0154]ポリアリーレンスルフィド組成物から成形し得るような管状部材は、沖合及び海岸の石油・ガス田及び輸送機関(transport)で使用しえるように、石油及びガス用のフロ
ーラインを含むことができる。ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れるフローライン(flow line)は、単層または多層でありえる。多層フローラインを考えるとき、ポリア
リーレンスルフィド組成物を使用してフローラインの内部バリヤー層を成形することができるが、多層のフローラインのポリアリーレンスルフィド組成物層は、バリヤー層に全く限定されず、多層フローラインの一つ以上の他の層はポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れられることを理解すべきである。
【0142】
[0155]フローラインは、当業界で一般に公知のように、任意のガス及び油田施設で公知の実務に従って使用することができる。たとえば
図6は、海中施設から浮遊船(floating vessel)620へ生産流体(production fluid)を導くためのフレキシブルライザー(flexible riser)を含む典型的な沖合施設を説明する。浮遊船620は、海底640をもつ水域の上に浮遊して図示される。フレキシブルライザー610は、ヨーク(yoke)660を通してカテナリー係留ブイ650を通して海中パイプライン末端マニホールド680から浮遊船620へ生産流体を運搬
するために提供される。カテナリー係留ブイ650は、アンカーライン630により、海底640
に提供されたアンカー672に固定される。パイプライン末端マニホールド680は、複数のフローライン667により坑井(well)690に接続される。
【0143】
[0156]
図6に説明されるフレキシブルライザーは、任意の好適な形状をもつことができる。たとえばこれらは結合(bonded)または非結合(unbounded)ライザーとして設計するこ
とができ、当業界で公知のように、急勾配のS若しくはゆるいS字形状でありえるか、または急勾配の波状若しくはゆるい波状形状でありえる。標準的な浮力モジュール(buoyancy module)670をフレキシブルライザーと共に使用して、公知のような所望の形状とすることができる。ライザー610はクレードル(cradle)とブイなどを含むことができる浮力モジュ
ール670を通りすぎる。浮力モジュール670は、ライザー610を支持するためにアンカーラ
イン630に付けられて、アンカーライン360とライザー610の長さによって決定されるよう
に、所望の位置に保持することもできる。
【0144】
[0157]
図7は、複数の様々な種類のフローラインを組み入れられる典型的な産出地帯(field)を示し、その一つ以上は、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形した少なくと
もバリヤー層を含むことができる。示されるように、産出地帯は海底92からプラットフォーム95へ生産流体を運搬することができる固定ライザー91を含むことができる。産出地帯は、産出地帯の内部に生産流体、支持流体(supporting fluid)、アンビリカル(umbilical)などを運搬するフローライン93を含むことができる。さらに、ライザー91とインフィー
ルド・フローライン93の両方は、上記のように束ねられたラインであることができる。この系は、様々なフローラインが合流して、たとえば束ねられたライザーを形成する地点及び/または、個々のフローラインが、たとえば膨張によって変更され得る地点に複数の連
結装置(tie-in)94も含む。この系は、炭化水素生産流体が得られる複数のサテライト坑井98とマニホールドも含む。輸出パイプライン97は、プラットフォーム95から、海岸、貯蔵施設または輸送船へ生産流体を運搬することができる。輸出パイプライン97は、他のフローライン、たとえば別のパイプライン99を迂回するために、一つ以上の交差96も含むことができる。
【0145】
[0158]
図8を参照して、ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れられるフレキシブルライザー800の一態様が示されている。示されているように、ライザー800は幾つかの同心円層を含む。最内部層は通常、カーカス802と呼ばれ、外部圧力に対して耐性を提供す
るために、螺旋状に巻かれたステンレススチールストリップから形成することができる。カーカス802は通常、隣接するバリヤー層806を支持し、且つ操作の間に加わった圧力または荷重による破壊からライザーを保護する金属(たとえばステンレススチール)チューブである。フレキシブルライザー800のボア(穴:bore)は、ライザーによって運搬されるべき
流体に依存して変動しえる。たとえば、ライザー800は、注入流体(たとえば水及び/また
はメタノール)などの支持流体を運搬するために使用する目的では平滑なボアをもつこと
ができ、生産流体(たとえば石油及びガス)を運搬する際には粗な(rough)ボアをもつこと
ができる。存在する場合には、カーカスは、一般に厚さ約5~約10ミリメートルでありえ
る。一態様に従って、カーカスは互いに組み合って、強固な相互接続したカーカスを形成する螺旋状に巻きつけられたステンレススチールストリップにより形成することができる。
【0146】
[0159]バリヤー層806は、カーカス802のすぐ隣にある。バリヤー層は、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形され、ライザーにより運搬される流体がライザー壁を通して浸透しないようにしつつ、強度と柔軟性を提供する。さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成したバリヤー層806は、ライザーにより運搬される流体(たとえば、生産流体、注入流体など)、並びにライザーが使用される温度条件の両方による劣化に対して耐え
ることができる。バリヤー層806は一般に、厚さ約3~約10ミリメートルであり、カーカス2の上に溶融物から押し出すことができる。
【0147】
[0160]ライザー800は、外部スリーブ及び外部流体バリヤーを提供し、並びに摩耗など
による外部損傷からライザーを保護するか、環境物質に遭遇する外層822も含むだろう。
外層822は、機械的損傷と、ライザーの内層への海水の侵入の両方に耐えうるポリアリー
レンスルフィド組成物または高密度ポリエチレンなどのポリマー材料で形成することができる。一態様に従って、外層822は、強化材料、たとえば炭素繊維、カーボンスチール繊
維またはガラス繊維と共に、ポリマー材料を含む複合材料でありえる。
【0148】
[0161]フープ強度層(hoop strength layer)804は、圧力差によってライザー壁に加わった力により生じたフープ応力に耐えるライザーの能力を高めるために、バリヤー層に対して外側に配置することができる。フープ強度層は、通常、厚さ約3ミリメートル~約7ミリメートルの層を形成し得る、カーボンスチールのらせん状に巻きつけられたストリップなどから形成した金属層でありえる。フープ強度層は、ライザーの内圧と曲げの両方に耐えることができる。一態様において、フープ強度層804を形成するカーボンスチールストリ
ップは、隣接する巻線(winding)が互いに組み合って(interlock)より強い層を形成するように、インターロッキングプロフィール(interlocking profile)、たとえばS-またはZ-断面構造を画定することができる。一態様において、フープ強度層は、加えられる強度に関して複数の材料を含むことができる。たとえば設計及び圧力必要条件がより高い破裂強度を必要とする一態様では、第二の平坦な金属ストリップを、フープ強度層の組み合った金属ストリップの上にらせん状に巻きつけて、この層にさらなる強度を提供することができる。本明細書中でさらに記載する耐摩耗層などの途中にある(intervening)ポリマー層は
、同様に、場合によりフープ強度層の二つの層の間に配置することができる。
【0149】
[0162]追加の強度層(strength layer)818及び820は、らせん状に巻きつけられた金属(
一般にカーボンスチール)ストリップから形成することができる。強度層818及び820は、
ポリマー性耐摩耗層817及び819によりフープ強度層804から、並びに互いに引き離すこと
ができる。強度層818及び820は、ライザーに追加のフープ強度並びに軸方向強度を提供することができる。ライザー800は二つの強度層818、820を含むが、ライザーは、全く強度
層を含まない、一つ、二つ、三つ以上の強度層を含むなど、任意の好適な数の強度層を含むことができることは理解すべきである。通常、強度層818及び820のらせん状に巻きつけられた金属ストリップは重ねられるが、組み合わせる必要はない。従って、強度層818、820は、約1ミリメートル~約5ミリメートルの幅をもつことができる。
【0150】
[0163]途中にある(intervening)耐摩耗層817、819は、ポリアリーレンスルフィド組成
物から形成することができるか、あるいはポリアミド、高密度ポリエチレンなどの他のポリマーから形成することができる。一態様において、耐摩耗層817、819は、一方向繊維、
たとえばカーボンまたはガラス繊維を含む複合材料でありえる。たとえば耐摩耗層817、819は、互いの強度層の上に螺旋状に巻きつけられる引き抜き成形ポリマーテープまたはリボンなどの、ポリマーテープまたは繊維強化ポリマーテープから形成することができる。耐摩耗層817、819は、層を形成するストリップの動きにより生じかねない隣接する強度層の磨滅を防ぐことができる。耐摩耗層817、819は、隣接層の鳥かご型変形(birdcaging)も防ぐことができる。ライザー800の強度層818、820と同様に、耐摩耗層の数は特に限定さ
れず、ライザーは、ライザーが使用される深さ及び局所的環境、ライザーにより運搬される流体などに依存して、全く耐摩耗層を含まないか、または一つの耐摩耗層若しくは複数の耐摩耗層を含むことができる。耐摩耗層817、819は、比較的薄く、たとえば約0.2~約1.5ミリメートルでありえる。
【0151】
[0164]ライザーは、一般に当業界で公知のように追加の層を含むことができる。たとえばライザーは、外層822に対してすぐ内部に、絶縁層を含むことができる。存在するとき
には、絶縁層は、発泡体、繊維状マット、または公知のように任意の他の絶縁材料から形成することができる。たとえば、単層または多層の絶縁テープを外部強度層の上に巻きつけて、外部強度層820と外層822との間に絶縁層を形成することができる。
【0152】
[0165]上記記載は非結合(unbounded)フレキシブルライザーに関してのものであるが、
ポリアリーレンスルフィド組成物は結合(bonded)フローラインの形成で同様に使用することができると理解すべきである。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、沖合の石油及びガス施設で使用するために、バリヤー層及び、場合により結合フローラインの一つ以上の追加の層を形成する際に使用することができる。
【0153】
[0166]石油及びガス施設で使用するための他のフローライン、例えばジャンパー(jumper)、パイプライン、流体供給ラインは、
図8に説明されるようにライザー800と同一の一
般的な構成をもつことができるか、または特定の層が多層フローラインに含まれることに関しては幾らか変動することができる。たとえば、メタノール、グリコール及び/または
水などの注入流体を坑口装置(well head)に供給する注入流体供給ラインは、生産ライザ
ーと同一性能仕様に適合する必要はない。従って、このフローラインの少なくとも一部は、上記のライザーのように様々な強度強化層を全て含む必要はない。たとえば、本明細書に記載のフローラインは、フローライン仕様が上記ライザーの内部カーカス層を要求しないような態様では、最内部層としてポリアリーレンスルフィド組成物から形成したバリヤー層を含むことができる。
【0154】
[0167]当業界で公知のように、フローラインの径も変動しえる。たとえば、生産流体ライザーは通常、約5センチメートル(約2インチ)から、約60センチメートル(約24インチ)以下または、態様によってはそれ以上の比較的大きな内径を有することができ、他方、坑口装置、マニホールド、貯蔵施設などへ、またはこれらから支持流体を運搬するフローラインは、生産流体フローラインよりも大きくなることも、小さくなることもある。たとえば、注入流体フローラインは、生産流体フローラインよりも小さくなりえ、たとえば内径約5センチメートル(2インチ)~約15センチメートル(6インチ)である。
【0155】
[0168]フローラインの設計は、フローラインの長さ全体にわたって変動しえる。たとえば、沖合のフローラインはより深い深さに到達し、より遠い沖合の距離に伸長し、且つより高い圧力下で操作するので、直接または間接的に炭化水素生成物抽出を支える、井戸、マニホールドなどに支持流体を供給するフローラインは、複雑性が増大しかねない。従って、支持流体は、例えば低圧操作用に設計されたフローラインから、より極端な環境で使用するために追加の強化層を含むフローラインまで、その長さに沿って変動するフローラインを使用する装置に提供することができる。系の作動圧力(working pressure)が高くなるにつれて、供給圧力及び射出圧力も増加する。供給圧力の増加すると、系のそれらの位
置の高圧な部分の周囲でフローラインアセンブリを強化且つ設計しなおすことが必要かもしれない。従って、フローラインは、ラインの全長のいたるところで設計を変えることができる。どんな場合でも、フローラインの少なくとも一部は、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成したバリヤーを含むことができる。
【0156】
[0169]フローラインは束ねることもできる。たとえば、
図9は、束ねられたライザー129を説明する。外部ケーシング128は、多数のポリマー及び/または金属層を含む、複合ケ
ーシング(composite casing)またはスチールケーシングでありえる。束ねられたライザー129は、海底から海面装置へ炭化水素生産流体を運搬することができる、二つの生産流体
ライザー130を含む。生産流体ライザー130は、上記のように多層ライザーを含み、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成したバリヤー層を含むことができる。束ねられたライザー129も、海底に配置された操作デバイスに作動液を供給する油圧(hydraulic supply)
フローライン132と、注入流体フローライン133を含む。束ねられたライザー129は、環形
ライン(annulus line)131を含み、これは束ねられたライザー129内部の隙間(interspace)127と連通し、生産フローライン及び隙間(または環)の中を通る循環を確立するのに使用
し得る。たとえば、環形ライン131の下端は、隙間127と連通するためにサイドポート(side port)などのポートと接続することができる。環形ライン131と隙間の間の流体流を制御するために、環形ライン131の下端と隙間127との間に一つ以上のバルブを据え付けることができる。当業界で公知のように、束ねられたライザー129は、標準的な実務に従って、
任意の坑口装置上に配置されたデバイスの操作を制御するために使用しえる制御ケーブル134も含むことができる。
【0157】
[0170]
図9に説明されているように、束ねられたライザーは二つの生産流体ライザー130を含むことができるか、または単一の生産流体ライザー若しくは二つを超える生産流体
ライザーを有することができる。たとえば、そのすべてが外部ケーシングによって取り囲むことができる、中心が伸長する(centrally extending)導管またはチューブの周りに配
置された複数の生産流体ライザーを含むことができる。たとえば、生産流体ライザーは互いに接して、環を形成して、外部ケーシングの内部及び内部導管の外側を圧迫する(bear against)ので、柔軟性に影響することなく、束ねられたライザーの安定性を改善することができる。内部チューブは、記載されるように油圧フローライン(hydraulic flowline)、注入流体フローラインなどの追加のフローラインを有することができる。別の態様では、内部チューブは、ライザーに追加の浮力を提供するために浮力ラインとして機能することができる。さらに別の態様では、追加のフローラインは、生産流体ライザーと、内部チューブに対して外部との間の隙間に配置することができる。
【0158】
[0171]
図10A及び
図10Bは、ライン148、141及び142の壁の一つまたはすべてが、ポリア
リーレンスルフィド組成物から形成したバリヤー層を含みえる、側面図(
図10A)及び断面
図(
図10B)のパイプ-イン-パイプ配置140を説明する。この特別な態様では、パイプ-イン-パイプフローラインは、外部ケーシング148に包まれた内部生産流体フローライン142を含む絶縁フローラインである。この内部生産流体フローライン142は、ジャケット141にも包まれている。この特別な態様では、内部生産流体フローライン142とジャケット141との間の環形(annulus)143は、当業界で公知のような連続気泡フォーム(オープンセルフォーム
:open celled foam)などの、絶縁材料144で満たされている。ジャケット141に対して外
部であり、外部ケーシング140に対して内側の空間145は、水、メタノールなどの支持流体を運ぶことができるか、または高圧ガスで満たすことができ、これにより高圧ガスを運搬する空間145から絶縁材料144へアクセスポイント146を提供することなどによって、パイ
プ-イン-パイプフローラインの絶縁特性をさらに改善することができる。このパイプ-イ
ン-パイプ配置は、生産流体フローライン142、ジャケット142、及び外部ケーシング148の間に所望の距離を維持するために、スペーサー147も含むことができる。ピギーバック・
フローライン(piggy-back flowline)などの他の組み合わせフローラインも、本明細書中
に含まれる。
【0159】
[0172]フランジ、バルブ、バルブシート、シール、センサハウジング、サーモスタット、サーモスタットハウジング、ダイバータ(diverter)、ライニング、プロペラなど、これらに限定されないが、パイプ及びホースに加えて、流体取扱い系に組み入れられるように、ポリアリーレンスルフィド組成物はあらゆる種類の部品の成形で使用することができる。一態様において、ポリアリーレンスルフィド組成物は、使用時に極端な温度並びに大きな温度変動に暴露されえる、ホース、ベルトなどの自動車用途で使用することができる。
【0160】
[0173]ポリアリーレンスルフィド組成物は、押出し、押出しブロー成形、射出ブロー成形、延伸ブロー成形、またはそのような品物を成形するための他の慣用のプロセスにより製造できるような、バッグ、ボトル、貯蔵タンク及び他の容器などの単層または多層容器を成形するのに使用することができる。
【0161】
[0174]ポリアリーレンスルフィド組成物は、フィルム、繊維及び繊維状製品の成形に有益に使用することもできる。たとえば当業界で公知のような押出プロセスは、ポリアリーレンスルフィド組成物のフィルムまたは繊維を形成する際に使用することができる。
【0162】
[0175]繊維としては、慣用の溶融紡糸装置を使用して形成し得るような、ステープル、連続、マルチフィラメントまたはモノフィラメント繊維を挙げることができるが、これらに限定されない。たとえば
図11は、延伸繊維(drawn fiber)がポリアリーレンスルフィド
組成物から形成することができるプロセス及び系410を説明する。説明された態様に従っ
て、例えば、ペレットまたはチップの形状に、あらかじめ形成したポリアリーレンスルフィド組成物を押出機装置412に提供することができる。押出機装置412は、ポリアリーレン組成物を加熱して溶融組成物を形成し、場合により任意の追加の添加剤と混合し得る混合マニホールド411を含むことができる。所望により、溶融混合物の流体状態を確実にしや
すくするために、溶融混合物は、押出し前に濾過することができる。たとえば約325メッ
シュまたはそれより細かいフィルターを使用して溶融混合物を濾過して、混合物から細かい粒子を除去することができる。
【0163】
[0176]溶融混合物を形成した後、混合物を加圧下で押出機装置412の紡糸口金414へ運搬することができ、そこで多数の紡糸口金オリフィスの中を押し出して、一つ以上の繊維またはフィラメント409を形成する。約280℃~約340℃の範囲の押出温度、たとえば約290℃~約320℃の範囲を使用することができる。繊維またはフィラメントを形成するためにポ
リアリーレンスルフィド組成物を押し出した後、未延伸(undrawn)繊維またはフィラメン
ト409を液体浴416でクエンチし、引取りロール418により集め、例えばマルチフィラメン
ト繊維構造体または繊維束428を形成することができる。引取りロール418及びロール420
は、浴416の内部でありえ、浴416の中を通して個々の繊維またはフィラメント409と集め
られた繊維束428を運搬することができる。浴416における材料の滞留時間(休止時間:dwell time)は、ライン速度、浴温、繊維サイズなどに依存して変動しえる。クエンチ浴を出た後、繊維束428は、一連のニップロール423、424、425、426を通過して、繊維束428から過剰の液体を除去することができる。場合により、繊維束428に潤滑剤を適用することが
できる。たとえばスピン仕上げアプリケーターチェスト(spin finish applicator chest)422で、スピン仕上げを適用することができる。その後、ポリアリーレンスルフィド繊維
束は、繊維を好適な温度に加熱するために設計された延伸ゾーン(draw zone)をもつ慣用
の装置を使用して、90℃~110℃の範囲の温度で延伸することができる。たとえば
図11に
説明された態様では、繊維束428はオーブン443の中で延伸することができる。さらにこの態様では、引取りロール432、434は、一般に当業界で公知のように、オーブン443の内部
または外部のいずれであってもよい。繊維束428の延伸に続いて、熱ロール440または100
℃~約200℃の温度範囲の加熱ゾーンを使用して、形成したポリアリーレンスルフィド繊
維430を少なくとも部分的に結晶化させることができる。
【0164】
[0177]別の態様に従って、メルトブロー繊維は、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成することができる。
図12は、使用しえるようにメルトブロープロセスの一態様を説明する。メルトブロープロセスは、単一押出オリフィス528の線形配列を通して押出機527から、通常530aと530bの間に画定される高速熱風(heated air)に直接、ポリアリーレンスルフィド組成物を押し出すことを包含する。急速に移動している温風(hot air)は、繊維が
オリフィス528を離れるにつれて、繊維529を非常に細くする(attenuate)。ダイ先端部は
、穴がそれぞれの側部530a、530bから衝突している高速空気と一直線であるような方法で設計されている。典型的なダイは、1インチ当たり約20~50個で間隔を空けられた10~20
ミル(mil)(0.25~0.51mm)径の穴をもつ。衝突する高速温風はフィラメントを細くして、
所望のマイクロファイバー(微細繊維)を形成する。典型的な空気条件は約200℃~約370℃を変動する。ダイのすぐ周囲では、大量の外気が、繊維を含む熱風流の中に吸い込まれる。外気は熱いガスを冷却し、繊維を固化する。
【0165】
[0178]不連続繊維(discontinuous fiber)をローラー525、526の中を通して供給される
コンベヤまたは引取りスクリーン521の上に付着させて、ランダムな絡み合ったウエブ(entangled web)を形成することができる。繊維は配管(tubing)532を介して空気をそらせる
ファン533などを使用する、吸引装置531を使用することにより、コンベヤ521に向けるこ
とができる。正常な条件下では、繊維はレイダウン(laydawn)では幾らかまだ柔らかいだ
ろうが、繊維-繊維結合を形成する傾向がある。すなわち互いにくっつく傾向がある。繊
維の絡み合いと繊維-対-繊維の結合の組み合わせによって、通常、さらに結合させることなくウエブを取り扱うことができるように、十分な絡み合いが生み出される。ウエブは慣用の紡糸されたが、結合されていないウエブの上に置かれて、これに前者を熱的に結合する。
【0166】
[0179]ポリアリーレンスルフィド組成物から形成した繊維は、これらに限定されないが、電池セパレータ、油吸収材、ろ過材、病院-医療製品、絶縁詰め物(insulation batting)などを含む様々な用途のために様々な繊維支持体で使用することができる。たとえば、
図13は、ガスまたは液体流から微粒子を捕捉するのに使用されうるような、複数のポリアリーレンスルフィド・メルトブロー繊維614を含む繊維マット612を説明する。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物から形成した繊維を含むフィルターは、工業用煙突で使用され得るような、フィルターバッグを成形する際に、または自動車エンジンなどのエンジンで燃料、油、排気、他の流体を濾過する際に使用することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物から形成した繊維は、電気部品における絶縁紙(insulative paper)または布帛などの絶縁材料を成形する際に使用することもできる。
【0167】
[0180]さらに、本組成物は、ワイヤ、ケーブルまたはアンビリカル(umbilical)などの
電気部品などの全く異なる環境で使用することができる。たとえば及び
図14A及び14Bに説明されているように、ポリアリーレンスルフィド組成物は、保護及び包装目的のために、ワイヤ703の周囲の被覆701またはケーブル704の周囲の被覆702を形成するのに使用することができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、ワイヤまたはケーブルの周りにシース製造機(sheathing machine)を使用して押し出して、ワイヤ/ケーブルの外部表面上に保護コーティングを形成することができる。
【0168】
[0181]別の態様では、ポリアリーレンスルフィド組成物は、ケーブルハーネスまたはケーブルラップ(タイラップ(tie wrap)とも通常称される)などと共に使用するための装置を成形する際に使用することができる。たとえば、車両または他のタイプの機械で使用し得るように、ケーブルハーネスの一つ以上の部分は、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。たとえば
図15は、ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れら
れるようなケーブルハーネスを説明する。
図15を参照して、ケーブルハーネス1100は、複数の電線から形成されるワイヤ群1102を含む。コネクタ端子1103はワイヤ群1102の両端にある。ブレイドスリーブ(braid sleeve)1104は、ワイヤ群1102の外周の周りに提供される。
【0169】
[0182]ブレイドスリーブ1104は、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成した繊維をアルミニウム、銅、またはそれらの合金などの金属でめっきすることによって形成し得る複数の金属化繊維を編むことによって形成することができる。ブレイドスリーブ1104は、ブレイドスリーブ4がほどけないようにするために、両端で接着テープ1106により巻かれ
て、ワイヤ群1102に固定することができる。ブレイドスリーブ1104のそれぞれの端部1106では、ブレイドスリーブ1104を形成するために使用される金属化繊維の延長部1107を含むことができる。延長部1107によって、ケーブルハーネスを接地することができる。ケーブルハーネスは、接地部品1105も含み、ここではブレイドスリーブ1104の両端とワイヤ群1102の外部導体の両端は、電気的に並列に接続される。もちろん、当業界で通常公知のように、任意のケーブルハーネスはポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れることができる。
【0170】
[0183]ポリアリーレンスルフィド組成物は、携帯電話、小さなポータブルコンピューター(たとえば超計量コンピューター、ネットブックコンピューター、及びタブレットコン
ピューター)、腕時計デバイス、ペンダントデバイス、ヘッドフォン及びイヤーピースデ
バイス、ワイヤレスコミュニケーション能力を含むメディアプレイヤー、ハンドヘルド・コンピューター(電子手帳(personal digital assistants)と称されることもある)、遠隔
制御装置、全地球測位装置(GPS)デバイス、携帯用ゲームデバイス、バッテリーカバー、
スピーカー、カメラモジュール、集積回路(たとえばSIMカード)などの成形品を使用しえ
る様々な電気部品を成形するのに使用することができる。
【0171】
[0184]一態様において、ポリアリーレンスルフィド組成物は、車両の部品を成形するのに使用することができる。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物を使用して、大型トラック(即ち、約9000kg(約19,800ポンド)を超える車両の総重量範囲をもつ車両)用の部品を成形することができる。大型トラックは、車両それ自体並びに車両の使用性質の両方により、特有の操作条件に直面している。たとえば、特に積荷を運んでいる時、エンジンは高温で操作することが多いに違いなく、使用の間に、車両は大きな機械的応力及び環境からの攻撃に遭遇することが多い。ポリアリーレンスルフィドの優れた強度及び柔軟特性により、これらの車両の操作条件により耐えることができる大型トラック部品を提供することができる。大型トラックは、二つ、三つ、四つまたはそれ以上の車軸をもつトラックを含むことができ、トラクターによって引っ張ることができるトレイラーとトラックの両方を包含することができる。たとえば、請負トラック(contractor’s truck)、配達用トラ
ック、ダンプカー、小型トラック、輸送中に混合するトラック(mix-in-transit truck)、トラックトラクターなどは、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形した部品を含むことができる。
【0172】
[0185]ポリアリーレンスルフィド組成物から成形しえる大型トラック部品としては、ホース、ベルト、燃料ライン、冷却系部品、ブレーキ部品、連結器(coupling)などが挙げられるが、これらに限定されない。たとえばポリアリーレンスルフィド組成物は、大型トラックの尿素タンクで有益に使用することができる。
図16A及び
図16Bは、底壁314と上壁(top wall)316とを備えた容器312を含む尿素タンク310を略図で表す。上壁316には、取り付
け部品(継手:fitting)330のセットに適応するために開口部318がある。容器312はさらに、充填口317を含む。取り付け部品330のセットは、上壁316の開口部318に液密に(fluid-tightly)結合されるように配置されたヘッド332を含む。これは、開口部318の放射状フラ
ンジ320(
図16B)とヘッド332の放射状フランジ334との間のフランジ接続によるなど、多く
の様々な方法で達成することができる。ヘッド332は、開口部318の相補的ねじ筋(示され
ていない)と噛み合うように適合された内部または外部ねじ筋をもつスクリューキャップ
の形状もとることができる。多くの取り付け部品336は、ヘッド332から容器312に伸長す
る。取り付け部品336は、尿素/水溶液用の吸引管、消費されていない溶液用の戻り管、後者が低温により凍結した時に、溶液を解凍するための加熱コイル、及び容器内の溶液用レベルセンサを含むことができる。有益には、吸引管、戻り管及び加熱コイル及び/または
保護カバー340は、ポリアリーレンスルフィド組成物で形成することができる。
【0173】
[0186]ポリアリーレンスルフィド組成物の優れた強度特性は、容器312内の着氷による
有害な機械的作用から取り付け部品336部品を保護することができ、ポリアリーレンスル
フィド組成物の柔軟性により、取り付け部品336は容器312内の氷の動きによる作用(affect)に耐えることができる。
【0174】
[0187]別の例示的な尿素タンクアセンブリ1410が
図17に示されている。この尿素タンクアセンブリは、尿素溶液1416などの液体を受け、保持するために構成されているキャビティ1414をもつリザーバ1412を含む。アセンブリはさらに、中空部材の中空部分1422とリザーバキャビティとの間に流体連通を提供するためにその中を通って形成される、一つ以上、または複数の開口部1420をもつポリアリーレンスルフィド組成物で形成されえる管状部材1418を含む。アセンブリはさらに、中空部材の内部にまたはその周囲で尿素溶液を加熱するために中空部分によって形成されるか、またはそれに最も近く配置されたヒーター1424を含む。アセンブリは、キャビティ1414の内側から流体を、態様によっては中空部分の内側から流体を、その中に分配するための排ガスに汲み上げるようにするためのポンプ1426も含む。
【0175】
[0188]操作中、尿素溶液1416は、好適な尿素入口導管(input conduit)1428の中を通し
て、またはキャップ付き開口部1450などの他の手段の中を通して、キャビティ1414に汲み上げる、注入するまたは置く。尿素溶液は、ヒーター1424の中を通して加熱され、ポンプ1426の中の尿素出口導管1430を通して汲み上げられる。場合により、尿素溶液の汲み上げは、流体レベルスイッチ1432、1456によって達成することができ、加熱は温度センサ1434からの温度読み取りをベースとすることができる。尿素溶液は、エンジンから廃棄ガス導管と流体連通するポートへ、尿素出口導管に沿って移動する。ポートは、排気ガス流に、特に排気ガス処理装置から上流に運ぶための、インジェクターなどの手段を提供する。
【0176】
[0189]ポリアリーレンスルフィド組成物から成形し得るように、大型トラック部品は、尿素タンクに限定されない。たとえば、上記の管状部材は、ホースアセンブリまたは燃料ラインアセンブリを含む流体輸送系において、大型トラックで使用するために設計することができる。たとえば、部材内部で予想される流体及び環境条件に耐えることができるポリアリーレンスルフィド組成物を内部層として含む、多層管状部品(tubular component)
を成形することができる。バリヤー層は内部層に隣接することができ、ディーゼル燃料などの、管状部材によって運搬される材料に低い浸透性を示しえる材料で形成することができる。たとえば、バリヤー層は、PA6、PA11、PA12、PA66、PA610、PA46などのポリアミド並びにポリマーブレンド物で形成することができる。
【0177】
[0190]多層管状部材は、隣接する層の間を結合しやすくするタイ層(tie layer)を含む
ことができる。このタイ層は、エピクロロヒドリンゴム、ニトリルゴム、ブタジエンゴム/ポリ(塩化ビニル)ブレンド、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー、などをベー
スとするゴム組成物を含むことができる。タイ層は、上記のように接着性コーティングでもありえるだろう。
【0178】
[0191]大型トラック用途で使用するための多層管状部材は、遭遇した外部環境に耐える
ように設計された一つ以上の柔軟なエラストマー性またはプラスチック材料で形成しえるカバーを含むことができる。たとえば、カバーは、内部管(inner tube)を成形する際に使用されるポリアリーレンスルフィド組成物と同一または異なっているポリアリーレンスルフィド組成物で形成することができる。別の態様に従って、外側のカバーは、これらに限定されないが、水素化ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリクロロプレン、エピクロロヒドリンゴム、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、ポリアクリルゴム、エチ
レンアルケンコポリマー、ブタジエンゴム/ポリ(塩化ビニル)ブレンド、塩素化ポリエチ
レンなどのゴム配合物をベースとすることができ、これらはゴムコンパウンディングの公知方法に従って他の成分と共に配合することができる。上記強化層並びに追加の中間層も、多層管状部材に存在することができる。
【0179】
[0192]ポリアリーレンスルフィド組成物を含む管状部材は、優れた柔軟性及び耐熱性を示すことができ、このことは、大型トラックの給気系用の管状部材を形成する場合には有益でありえる。空気処理系で使用するための耐熱性管状部材は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む内部層と、難燃剤を含みえる管状内部層の外部周囲面に形成された外部層とを含むことができる。たとえば、外部層は、非ハロゲン難燃剤(non-halogen flame retardant)を含む材料を使用することにより形成することができる。
【0180】
[0193]給気系連結器(charge air coupling)は、コンプレッサー流入及び排出、給気ク
ーラー、及び/またはタービン流入及び排出など、これらに限定されないが、給気系の様
々な装填部品(charge component)の間の連結を提供し得るポリアリーレンスルフィド組成物で形成することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物の柔軟性及び強度は、系の部品の間のわずかな不均衡に対処し、並びに連結器の末端間での振動を遮断できる給気系連結器を提供することができる。さらに、ポリアリーレンスルフィド組成物の抵抗特性は、耐オゾン性に関して連結器を改善し、部品の耐用期間を延ばすことができる。
【0181】
[0194]ポリアリーレンスルフィド組成物は、ディーゼルエンジンの排気マニホールドからの排気を放出するための排気系(exhaust system)の部品を成形する際に有益に使用することもできる。典型的な排気系は、排気ラインを含むことができ、この排気ラインの全てまたは一部は、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形することができる。
【0182】
[0195]大型トラックの空気ブレーキ系は、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形した部品も含むことができる。たとえば、コイル(コイル巻:coiled)空気ブレーキホースアセンブリは、上記単層ホースまたは多層ホースでありえるコイルホースを含むことができ、ここで少なくとも一つの層は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む。
【0183】
[0196]大型トラックに加えて、他の車両の部品はポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。たとえば、任意のサイズの車またはトラックで使用するための自動車用燃料ラインは、ポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物は、単層燃料管または多層燃料管でありえる、燃料ラインを成形するために、標準的な成形技術に従って加工処理することができる。本明細書で包含される燃料ラインは、燃料ラインの中を通って、流体、液体、ガスまたはその混合物が通過できる、その中に中空の通路をもつ管状の形をなす部材である。たとえば
図18は、ポリアリーレンスルフィド組成物を含む燃料ラインを包含し得る燃料系(fuel system)の一部
を説明する。
図18は、一般に燃料系の取り込み部分1を説明し、燃料給油ネック42、給油管44、燃料タンク48、ベント管46及びガスキャップ44を含み、自動車ボデー46により支持されており、これはガスキャップ44を隠すために可動性カバー40を含む。給油ネック42は通常、漏斗型部材48を含む。給油ネック42は、ノズル受け器52を受けることができ、これは給油している間に燃料ノズル56を受けるために適合されたインサートである。部材48は、ガスキャップ44を受けるように適合された入口開口部50により一端で画定され、部材48
に一体的に形成されたねじ筋に直接ねじで締める。
【0184】
[0197]部材48の反対端は、出口開口部53により画定され、これは燃料ライン44の第一の端部54に結合されている。燃料ライン44は、ポリアリーレンスルフィド組成物で形成した単層の管または多層のホースでありえる。第二の端部55では、燃料ライン44は燃料タンク48に結合される。燃料タンク系は、漏斗ベント開口部57で部材48と、燃料タンク開口部58で燃料タンク48とに結合するベントライン46も含むことができる。ベントライン46によって、給油の間に燃料タンク48内で置き換わった空気を通気することができる。ベントライン46は、ポリアリーレンスルフィド組成物から形成しえる単層管または多層ホースでもありえる。
【0185】
[0198]ガソリン及びディーゼルエンジンの両方を含む車両エンジンに含まれえるように、一般に管状の形状をもち、且つラインの中を通して(即ち、管状部材の軸方向に)中空の通路を含む任意の燃料ラインは、ポリアリーレンスルフィド組成物で形成した一つ以上の層を含むことができ、燃料ラインは、
図18に示されている燃料系の取り入れ口に全く限定されないことを理解すべきである。たとえば、本明細書に包含される燃料ラインは、燃料タンクからエンジンへ燃料を運搬し、燃料フィルターの下流及び/または上流に配置され
得る燃料供給ラインを包含する。ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れられるような他の燃料ラインとしては、燃料戻りライン、燃料バイパスライン、燃料クロスオーバーライン、ブリーザーライン(breather line)、蒸発ラインなどが挙げられるが、これらに
限定されない。
【0186】
[0199]単層管の形状の燃料ラインは、例えば
図18に説明されているように、ベントライン46及び/または燃料ライン44を形成する際に使用することができる。単層管の燃料ライ
ンは一般に、約3ミリメートル未満の壁厚、たとえば約0.5~約2.5ミリメートル、または
約0.8~約2ミリメートルの壁厚を有することができる。単層管燃料ラインは一般に、約10ミリメートル未満、または一態様において約5ミリメートル未満の断面直径をもつことが
できる。単層管燃料ラインの長さは、具体的な用途に依存して変動することができ、比較的長く、例えば約1メーター長さ以上、または短くてもよく、たとえば50センチメートル
未満、または約10センチメートル未満でありえる。さらに単層管50は、波状(corrugated)表面または平滑表面をもつことができる。
【0187】
[0200]ポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れる燃料ラインは、燃料ラインの一つ以上の層にポリアリーレンスルフィド組成物を組み入れる多層管状部材でありえる。多層燃料ラインは、公知のように、二つ、三つ以上の層を含むことができる。単層燃料管と同様である、多層燃料ラインは、当業界で公知のように様々な断面及び長さの寸法をもつように形成することができる。一般に、多層燃料ラインのそれぞれの層は、約2ミリメート
ル未満、または1ミリメートル未満の壁厚をもつことができ;多層燃料ラインの内径は、
一般に約100ミリメートル未満、約50ミリメートル未満、または約30ミリメートル未満で
ありえる。
【0188】
[0201]ポリアリーレンスルフィド組成物の耐薬品特性と併せたポリアリーレンスルフィド組成物の優れたバリヤー特性によって、多層燃料ラインの内部層の形成で使用するのに適するようになる。しかしながら、ポリアリーレンスルフィド組成物は、多層燃料ラインの内部層としての利用に限定されない。優れたバリヤー特性と良好な柔軟性と組み合わせたポリアリーレンスルフィド組成物の高強度特性により、多層燃料ラインの内部層の形成に加えて、またはこれに代わるものとして、組成物が多層燃料ラインの外部層及び/また
は中間層の形成での使用に適するようになる。
【0189】
[0202]追加の層は、内部層を形成するポリアリーレンスルフィド組成物と同一または異
なる材料で形成することができる。たとえば燃料ラインの中間層、外部層及び接着層は、ポリアリーレンスルフィド組成物で形成し得るように管状部材に関して上記した材料で形成することができる。
【0190】
[0203]ポリアリーレンスルフィド組成物から成形し得るように、車両部品は、上記のもののような、ブロー成形プロセスに従って成形し得る部品を含むことができる。たとえば
図18に説明されるように、燃料給油ネック42及び/またはガソリンタンク48は、ブロー成
形プロセスに従ってポリアリーレンスルフィド組成物から成形することができる。ガソリンタンクまたは他のリザーバ(たとえば膨張タンク、流体容器など)などのブロー成形部品は、単層または多層部品でありえる。エアダクト(air duct)などの通気系部品は、これらに限定されないが、支持構造体、歩み板、支柱、グリルガード(grill guard)、柱(pillar)、フローリングなどの他の多くの部品で使用できるように、ブロー成形プロセスに従っ
て、ポリアリーレンスルフィド組成物で成形することができる。
【0191】
[0204]別の態様では、ポリアリーレンスルフィド組成物は、航空用途で使用することができる。たとえば
図19は、ポリアリーレンスルフィド組成物が航空機内部のパネルの形成などの、航空機内装で使用できる一態様を説明する。
図19は、単層通路型の航空機胴体850の断面図を説明し、ポリアリーレンスルフィド組成物は、任意のサイズ及び形状の航空
機を成形する際に有益に使用することができる。ポリアリーレンスルフィド組成物で成形し得るように、パネルとしては、これらに限定されないが、天井のラックまたは収納箱852、拡大天井パネル領域に上側に大きく開く通路上のヘッドパネル(over-aisle head panels)854、天井パネル856、側壁パネル858及び、下部壁パネル855を挙げることができる。
個々のパネルの数及びサイズは、一般に航空機毎に変動する。たとえば、胴体850をもつ
航空機のタイプの典型的な断面は、二つの収納用箱、一つの天井パネル、二つの側壁パネルと、二つの下部壁パネルを包含する。個々の部品の変動は、当業界で公知である。もちろん、ポリアリーレンスルフィド組成物は、上記のように、燃料ライン、上記の通気系の部品などの航空機の他の部品を成形するのに使用することができる。
【0192】
[0205]本開示の態様は、単に態様の説明を目的とする以下の実施例により説明され、本発明の範囲または実施し得る方法を限定するものとみなすべきではない。具体的に示さない限り、部及び百分率は重量である。
【0193】
成形及び試験法
[0206]射出成形プロセス:引張試験片は、標準ISO条件に従って、ISO527-1仕様に合わ
せて射出成形する。
【0194】
[0207]溶融粘度:全ての材料は、試験前に真空下、150℃で1.5時間乾燥する。溶融粘度は、316℃及び400秒-1でキャピラリーレオメーターで測定し、一定の剪断で5分後に粘度
測定を実施する。
【0195】
[0208]引張特性:ISO試験No.527(ASTM D638と技術的に同等)に従って、引張弾性率、降伏応力、降伏歪み、破断点強さ、降伏点伸び、破断点伸びなどを試験する。弾性率、歪み及び強度測定は、長さ80mm、厚さ10mm及び幅4mmをもつ同一試験ストリップサンプルで実
施する。試験温度は23℃であり、試験速度は5または50mm/分である。
【0196】
[0209]曲げ特性:ISO試験No.178(ASTM D790と技術的に同等)に従って、曲げ強さ及び曲げ弾性率などの曲げ特性を試験する。この試験は、64mmサポートスパン上で実施する。試験は、カットしていないISO 3167マルチパーパスバーの中心部分で実施する。試験温度は23℃であり、試験速度は2mm/分である。
【0197】
[0210]荷重撓み温度(deflection temperature under load:DTUL):荷重撓み温度は、ISO試験No.75-2(ASTM D648-07と技術的に同等)に従って測定した。特に、長さ80mm、厚さ10mm及び幅4mmの試験ストリップサンプルを、エッジワイズ三点曲げ試験(edgewise three-point bending test)にかけ、ここでは規定荷重(最大外部繊維応力)は1.8メガパスカル(Megapascal)であった。試験片をシリコン油浴中に下げ、試験片が0.25mm(ISO試験No.75-2
に関しては0.32mm)に撓むまで、温度を2℃/分で上昇させる。
【0198】
[0211]ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:ノッチ付きシャルピー特性は、ISO試験No.ISO179-1(技術的にASTM D256、方法Bと同等)に従って試験する。この試験は、タイプAノッチ(0.25mmベース半径)及びタイプ1試験片サイズ(長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mm)を使用し
て実施する。試験片は、一本歯フライス盤(single tooth milling machine)を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は、以下に報告するように、23℃、-30℃、または-40℃である。
【0199】
[0212]ノッチなしシャルピー衝撃強さ:ノッチなしシャルピー特性は、ISO試験No.180(ASTM D256と技術的に同等)に従って試験する。試験は、タイプ1試験片(長さ80mm、幅10mm、及び厚さ4mm)を使用して実施する。試験片は一本歯フライス盤を使用してマルチパーパスバーの中心から切り出す。試験温度は23℃である。
【0200】
[0213]アイゾット(Izod)ノッチ付き衝撃強さ:ノッチ付きアイゾット(Izod)特性は、ISO試験No.180(ASTM D256、方法Aと技術的に同等)に従って試験する。この試験は、タ
イプAノッチを使用して実施する。試験片は、一本歯フライス盤を使用してマルチパーパ
スバーの中心から切り出す。試験温度は23℃である。
【0201】
[0214]密度及び比重:密度は、ISO試験No.1183(ASTM D792と技術的に同等)に従って測
定した。試験片は空気中で秤量し、次いで必要により完全に試験片を沈んだままにするためにおもりとワイヤを使用して蒸留水中23℃に浸漬して秤量した。
【0202】
[0215] ビカット軟化温度(Vicat softening temperature):ビカット軟化温度は、ISO
試験No.306(ASTM D1525と技術的に同等)に記載されるように、方法Aに従って荷重10Nで、方法Bに従って荷重50Nで測定した。これらはいずれも加熱速度50K/時間を使用した。
【0203】
[0216]水分吸収は、ISO試験No.62に従って測定した。試験片は、水の吸収が本質的に停止するまで(23℃/sat)、蒸留水中、23℃で浸漬する。
【0204】
[0217]複素粘度(complex viscosity):複素粘度は、TRIOSソフトウエアを使用して、25mmSS平行プレートを備えたARES-G2(TA Instruments)試験機を使用して低剪断掃引(low shear sweep)(ARES)により測定する。LVEレジメと最適試験条件を見つけるために、周波数
掃引の前に、ペレットサンプル上で動的歪み掃引(dynamic strain sweep)を実施した。歪み掃引は、0.1%~100%、周波数6.28rad/秒で実施した。それぞれのサンプルに関する動
的周波数掃引(dynamic frequency sweep)は、500~0.1rad/秒で得られ、歪み振幅(strain
amplitude)は3%であった。間隙距離(gap distance)は、ペレットサンプルに関して1.5mmに維持した。温度は全てのサンプルに関して310℃に設定した。
【0205】
[0218]溶融強度及び溶融伸びは、EVF設備を備えたARES-G2で実施する。火炎試験片(flame bar)サンプルは、
図20に示されているように切り出した。試験サンプルの結晶化度を
保持し、重複試験での変動を最小とするために、それぞれの試験に関して火炎試験片の同一領域を使用した。一時歪み(transient strain)は、それぞれのサンプルに0.2/秒の速度で適用した。代表曲線(representative curve)を得るために、それぞれのサンプルについて少なくとも3回試験を実施した。
【0206】
[0219]透過抵抗(permeation resistance):燃料透過研究は、SAE試験法No.J2665に従ってサンプルで実施した。すべてのサンプルに関して、ステンレススチールカップを使用した。直径3インチ(7.6センチメートル)の射出成形プラークを試験サンプルとして使用した。それぞれのサンプルの厚さは6つの異なる領域で測定した。O-リングViton(登録商標)フルオロエラストマーを、カップフランジとサンプルの間の下部ガスケット(lower gasket)として使用した(McMaster-Carrより購入、カタログ番号9464K57、A75)。フラットなViton(登録商標)フルオロエラストマー(McMaster-Carrより購入、カタログ番号86075K52、1/16”厚さ、A75)を3インチ(7.6cm)ODと2.5インチ(6.35cm)IDにダイカットし、サンプルと金
属スクリーンとの間の上部ガスケットとして使用した。約200mlの燃料をカップに注ぎ、
カップ装置を組み立て、蓋を指で締めた。蒸気圧が平衡に達し、蓋がトルク15in-lbに締
められるまで、これを40℃のオーブンで1時間インキュベートした。燃料減少(fuel loss)は、最初の2週間は毎日、続いて試験期間の残りに関しては1週間に2回、重量測定法によ
りモニターした。対照試験(blank run)は、アルミニウムディスク(7.6cm直径、1.5mm厚さ)で同様に実施し、結果はサンプルから差し引いた。すべてのサンプルは二回測定した。
正規化透過速度(normalized permeation rate)は、平衡期間の後に計算した。それぞれのサンプルに関する透過速度は、日々の重量減少(weight loss)(gm/日)に合った線形回帰の傾きから得られた。正規化透過速度は、透過速度を有効透過面積で割り、試験片の平均厚さを乗じることによって計算した。平均透過速度を報告する。
【0207】
[0220]耐塩性(salt resistance):塩化亜鉛に対する耐性を試験するために、引張り試
験片サンプルを、23±2℃で、200時間、塩化亜鉛の50%溶液(重量)に浸漬した。その後、サンプルを、-30℃において、記載のようにシャルピーノッチ付き衝撃強さに関して試験した。
【0208】
[0221]塩化カルシウムに対する耐性を試験するために、引張り試験片サンプルを、60±2℃で、200時間、塩化カルシウムの50%水溶液(重量)に浸漬し、溶液から取り出して60±2℃でさらに200時間保持した。その後、サンプルを、-30℃において、記載のようにシャルピーノッチ付き衝撃強さに関して試験した。
【0209】
[0222]炭化水素体積取り込み(hydrocarbon volume uptake):吸収及び拡散試験は、供
給された引張り試験片から切り出したタブ端部(tab end)を使用して実施した。それぞれ
の材料は、ブレント原油、炭化水素/水混合物(単発試験(one-off test)では、炭化水素のみ)に浸漬した。吸収した液体の速度及び量を測定した。炭化水素液体混合物は、以下の
組成を有していた。
【0210】
【0211】
[0223]すべての暴露試験は、空気循環式オーブンを使用して、2週間の期間にわたって130℃で実施し、窒素でパージすることによって空気を試験容器から除去した。試験は、
蒸気圧で実施した。
【実施例0212】
実施例1
[0224]組成物を形成するのに使用した材料は以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0213】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840-エチレンとグリシジルメタクリレートと
のランダムコポリマー、Arkema, Inc製。
【0214】
架橋剤:テレフタル酸。
【0215】
ジスルフィド:2,2-ジチオジ安息香酸(dithiodibenzoic acid)。
【0216】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd製。
【0217】
[0225]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を融解且つ混合するとすぐに、ジスルフィドを重量測定供給機を使用してバレル6で供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。
ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0218】
[0226]サンプルの組成を以下の表1に提供する。サンプルの重量をベースとした重量百分率として量を提供する。
【0219】
【0220】
[0227]形成後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表2に提供する。
【0221】
【0222】
[0228]サンプルは230℃で2時間アニールし、物理的試験に関して再試験した。結果を以下の表3に提供する。
【0223】
【0224】
[0229]理解されるように、サンプル2は、アニール前後でより良い引張り伸び及びより
低い弾性率を示した。しかしながら、衝撃強度では改善は見られなかった。これは、ジスルフィドとポリプロピレンスルフィドとの間の鎖切断反応によると考えられる。
【0225】
実施例2
[0230]実施例1の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリッ
クスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。ジスルフィドは、重量測定供給機を使用して押出機の様々な位置:主供給口、バレル4及びバレル6で供給した。架橋剤はバレル6で供給した。材料をさらに
混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0226】
[0231]比較サンプル3及び4は、同一組成から形成し、異なるスクリュー設計を使用してコンパウンディングした。
【0227】
【0228】
[0232]形成後、引張り試験片を成形し、様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表5に提供する。
【0229】
【0230】
[0233]サンプルを230℃で2時間アニールし、物理的特性に関して再試験した。結果を以
下の表6に提供する。
【0231】
【0232】
[0234]理解されるように、サンプル10に関して、最高の引張伸びと、最高の衝撃強さが観察された。これは、加工処理の間に、架橋剤とジスルフィドの両方が同一の下流の地点で添加されたことを含む。
【0233】
[0235]
図21は、サンプル3とサンプル6に関する温度変化に対するノッチ付きシャルピー衝撃強さの関係を説明する。理解されるように、サンプル6のポリアリーレンスルフィド
組成物は、温度変化の全過程にわたって優れた特性を示し、比較材料と比較して、温度変化に関して衝撃強さの増加の割合が高い。
【0234】
[0236]
図22は、サンプル3組成物(
図22A)とサンプル6組成物(
図22B)の形成で使用したポリアリーレンスルフィドの走査電子顕微鏡画像を含む。理解されるように、
図22Bの組成
物では、ポリアリーレンスルフィドと耐衝撃性改良剤との間に明確な境界が全くない。
【0235】
[0237]サンプル3、6及び10の引張試験片を、10wt%硫酸中に40℃または80℃で500時間浸漬した。引張り特性及び衝撃特性を、酸への暴露の前後で測定した。結果を以下の表7に提供する。
【0236】
【0237】
[0238]高温において、酸溶液に暴露する間の、シャルピーノッチ付き衝撃強さにおける経時変化の結果を
図23に説明する。理解されるように、サンプル6とサンプル10の相対
損失は、比較のサンプルよりもずっと小さい。
【0238】
実施例3
[0239]実施例1に記載の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マ
トリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤は、重量測定供給機を使用して、主供給口及びバレル6で供給した。材料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。スト
ランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0239】
[0240]サンプルの組成を以下の表8に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0240】
【0241】
[0241]形成後、サンプルから成形した引張り試験片を、様々な物理的特徴に関して試験した。結果を以下の表9に提供する。
【0242】
【0243】
[0242]理解されるように、架橋剤を上流で添加したものは、組成物の衝撃特性が低下したが、下流で供給流に添加したものは、引張り伸びが118%だけ、室温における衝撃強さ
が43%だけ増加した。
【0244】
実施例4
[0243]実施例1に記載の材料を、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マ
トリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤はバレル6で重力測定供給機を使用して供給した。材
料をさらに混合し、次いでストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0245】
[0244]サンプルの組成を以下の表10に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0246】
【0247】
[0245]成形後、サンプルから成形した引張試験片を様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表11に提供する。
【0248】
【0249】
実施例5
[0246]ポリアリーレンスルフィドに関しては、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキーから入手したFortron(登録商標)0320線状ポリフェニレンスルフィドを使用した以外には、実施例1に記載の材料を使用した。材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶
融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド及び耐衝撃性改良剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。架橋剤は、バレル6で重量測定機を使
用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0250】
[0247]サンプルの組成を以下の表12に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0251】
【0252】
[0248]成形後、サンプルから成形した引張試験片を様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表13に提供する。
【0253】
【0254】
実施例6
[0249]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214、線状ポリフェニレンスルフィド
、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0255】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)4720-エチレン、エチルアクリレート及び無水マ
レイン酸のランダムターポリマー、Arkema, Inc.製。
【0256】
【0257】
架橋剤:ハイドロキノン。
【0258】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd製。
【0259】
[0250]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤は、サンプル24及び25に関しては主供給で、サンプル26及び27に関してはバレル6で、重力測定供給機を使用して供給し
た。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0260】
[0251]サンプルの組成を以下の表14に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして、重量百分率として提供する。
【0261】
【0262】
[0252]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表15に提供する。
【0263】
【0264】
実施例7
[0253]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:
PPS1-Fortron(登録商標)0203、線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0265】
PPS2-Fortron(登録商標)0205線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0266】
PPS3-Fortron(登録商標)0320線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0267】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840-エチレンとグリシジルメタクリレートと
のランダムコポリマー、Arkema, Inc製。
【0268】
架橋剤:テレフタル酸。
【0269】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0270】
[0254]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給機
を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。スト
ランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0271】
[0255]サンプルの組成を以下の表16に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0272】
【0273】
[0256]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表17に提供する。
【0274】
【0275】
実施例8
[0257]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー。
【0276】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840-エチレンとグリシジルメタクリレートと
のランダムコポリマー、Arkema, Inc.製。
【0277】
架橋剤:テレフタル酸。
【0278】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0279】
[0258]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給機
を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0280】
[0259]サンプルの組成を以下の表18に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして重量百分率として提供する。
【0281】
【0282】
[0260]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表19に提供する。サンプル39は射出成形可能ではなかった。
【0283】
【0284】
実施例9
[0261]組成物を形成するのに使用した材料は、以下のものを含んでいた:
ポリアリーレンスルフィド:Fortron(登録商標)0214線状ポリフェニレンスルフィド、Ticona Engineering Polymers of Florence、ケンタッキー製。
【0285】
耐衝撃性改良剤:LOTADER(登録商標)AX8840-エチレンとグリシジルメタクリレートと
のランダムコポリマー、Arkema, Inc.製。
【0286】
架橋剤:テレフタル酸。
【0287】
滑剤:Glycolube(登録商標)P、Lonza Group Ltd.製。
【0288】
[0262]材料は、ダイに一つを含む10個の温度制御ゾーンと、全L/Dが40のCoperion共回
転完全噛み合い二軸押出機を使用して、溶融混合した。添加剤を樹脂マトリックスにコンパウンディングするために、高剪断スクリュー設計を使用した。ポリアリーレンスルフィド、耐衝撃性改良剤及び滑剤を、重量測定供給機を使用して、第一のバレルの主供給口に供給した。上記成分を溶融及び混合するとすぐに、架橋剤はバレル6で、重力測定供給機
を使用して供給した。材料をさらに混合し、ストランドダイの中を通して押出した。ストランドは浴中で水クエンチして固化させ、ペレタイザーで造粒した。
【0289】
[0263]サンプルの組成を以下の表20に提供する。量は、サンプルの重量をベースとして
重量百分率として提供する。
【0290】
【0291】
[0264]成形後、サンプルは様々な物理的特性に関して試験した。結果を以下の表21に提供する。
【0292】
【0293】
[0265]サンプル41、42及び43は、複素粘度並びに、ヘンキー(Hencky)歪みの関数として溶融強度及び溶融伸びを測定するために試験した。比較材料として、実施例2に記載のサ
ンプル3を使用した。サンプル41、42及び43は、310℃で実施し、サンプル3は290℃で実施した。結果を
図24、
図25及び
図26に示す。
【0294】
実施例10
[0266]実施例9で記載のサンプル42を使用して、ブロー成形した1.6ガロンタンクを成形した。成形したタンクを
図27に説明する。タンクの断面図を
図28A及び
図28Bに示す。成形したタンクは、目視検査及び手触りの両方に関して良好な外表面をもつ。
図28Aに示され
ているように、一様な壁厚(約3mm)が得られ、最小量の垂れ下がり(sag)が観察された。図
28Bに示されているように、ピンチオフは優れた形状を形成した。
【0295】
実施例11
[0267]実施例9に記載のサンプル41、42及び43を試験して、CE10(10wt%エタノール、45wt%トルエン、45wt%イソオクタン)、CM15A(15wt%メタノール及び85wt%含酸素燃料)、並びにメタノールなどの様々な燃料の透過を測定した。実施例2に記載のサンプルNo.4を比較材料として使用した。それぞれの材料で二つのサンプルを試験した。
【0296】
[0268]以下の表22は、それぞれの燃料について試験したサンプルに関する平均サンプル厚さ及び有効面積を提供する。
【0297】
【0298】
[0269]それぞれの材料及びそれぞれの燃料に関する日々の重量減少を
図29~31に示す。
具体的には、
図29は、CE10の透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示し、
図30は、CM15Aの透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示し、及び
図31は
、メタノールの透過試験の間における、サンプルの日々の重量減少を示す。
【0299】
[0270]それぞれの燃料を用いるそれぞれのサンプルに関する平均透過速度を表23に提供する。サンプル43は、平衡に到達するのにより長い時間がかかったので、この材料に関しては42日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめ、他の材料に関しては32日と65日の間で線形回帰をあてはめたことに留意すべきである。メタノールに関しては、20日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめたが、サンプルNo.604に関しては、30日と65日の間のデータをベースとして線形回帰をあてはめた。サンプルによっては負の透過を示すものもあるが、これは、アルミニウムブランクに対してサンプルの重量減少が少ないためである。
【0300】
【0301】
[0271]本開示に対するこれら及び他の変形及び変更は、本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく当業者には実施をすることができる。さらに、様々な態様の側面は、その全体または一部が交換可能であることは理解すべきである。さらに、当業者は、上記記載は単なる例示であって、本開示を限定するものではないことを理解するだろう。