(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005860
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】電子機器、ワイヤレス電力伝送システム、制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 50/20 20160101AFI20230111BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230111BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021108080
(22)【出願日】2021-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕也
(72)【発明者】
【氏名】河合 克敏
(72)【発明者】
【氏名】中舎 朋之
(57)【要約】
【課題】給電用の電波を用いて、被給電側の規定信号の送信周期を変更すること。
【解決手段】例えば、電子機器は、電波を送信する送信部13と、電波を受信する受信部14と、受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、自機と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定する推定部15と、推定された速度から規定信号の送信周期を決定する決定部18Aと、決定された送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する電波の中心周波数をずらした値により受信装置に指示する指示部18Bと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を送信する送信部と、
電波を受信する受信部と、
受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、自機と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定する推定部と、
推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定する決定部と、
決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示する指示部と、
を備える電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記指示部は、
現在の前記送信周期に対して、頻度を変えない場合、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数をずらすことなく、元の中心周波数でダウンリンクの給電用の電波を送信する、電子機器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器において、
前記中心周波数のずらし幅については、ワイヤレス給電用に割り当てられたチャネル内で収まる量のずれである、電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
推定された前記速度と送信する前記電波の前記中心周波数をずらす値との関係を示す管理データを記憶する記憶部を備え、
前記指示部は、決定された前記送信周期を、前記管理データに基づいて送信する前記電波の前記中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示する、電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記推定された速度と前記送信する電波の中心周波数をずらす値と値の関係を示す関係式を格納する格納部を備え、
前記指示部は、前記関係式に基づいて前記指示を行う、電子機器。
【請求項6】
電子機器と、
前記電子機器から受信した電波によって給電される被給電装置と、
を備え、
前記電子機器は、
電波を送信する送信部と、
電波を受信する受信部と、
受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、自機と前記受信装置との間の伝搬路変動の速度の少なくとも一方を推定する推定部と、
推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定する決定部と、
決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示する指示部と、
を備え、
前記被給電装置は、
前記規定信号を前記電子機器に送信する第2送信部と、
受信した前記電波の中心周波数に基づいて前記規定信号の前記送信周期を設定する第2制御部と、
を備えるワイヤレス電力伝送システム。
【請求項7】
電波を送信する送信部と電波を受信する受信部と、を備える電子機器が、
受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、自機と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定すること、
推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定すること、
決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示すること、
を含む制御方法。
【請求項8】
電波を送信する送信部と電波を受信する受信部と、を備える電子機器に、
受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、自機と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定すること、
推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定すること、
決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示すること、
を実行させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電子機器、ワイヤレス電力伝送システム、制御方法及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体の走行速度が速くなるほど光通信路側機へのアップリンク信号の送信周期を短く設定し、走行速度が遅くなるほどアップリンク信号の送信間隔を長く設定する光通信装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、アップリンク信号を送信する送信側で送信周期を変更の処理を実行するため、送信側で複雑な処理を行う構成が必要であった。このため、ワイヤレス電力伝送では、エネルギー効率の観点から、被給電装置(受信装置)から送信装置へのアップリンク信号を送信する時間や頻度を改善する余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
態様の1つに係る電子機器は、電波を送信する送信部と、電波を受信する受信部と、受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、自機と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定する推定部と、推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定する決定部と、決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示する指示部と、を備える。
【0006】
態様の1つに係るワイヤレス電力伝送システムは、電子機器と、前記電子機器から受信した電波によって給電される被給電装置と、を備え、前記電子機器は、電波を送信する送信部と、電波を受信する受信部と、受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、送信装置と前記受信装置との間の伝搬路変動の速度の少なくとも一方を推定する推定部と、推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定する決定部と、決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示する指示部と、を備え、前記被給電装置は、前記規定信号を前記電子機器に送信する第2送信部と、受信した前記電波の中心周波数に基づいて前記規定信号の前記送信周期を設定する第2制御部と、を備える。
【0007】
態様の1つに係る制御方法は、電波を送信する送信部と電波を受信する受信部と、を備える電子機器が、受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、送信装置と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定すること、推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定すること、決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示すること、を含む。
【0008】
態様の1つに係る制御プログラムは、電波を送信する送信部と電波を受信する受信部と、を備える電子機器に、受信した前記電波に含まれる規定信号から受信装置の移動の速度、及び、送信装置と前記受信装置との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定すること、推定された前記速度から前記規定信号の送信周期を決定すること、決定された前記送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する前記電波の中心周波数をずらした値により前記受信装置に指示すること、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの概要を説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る親機の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る子機の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る管理データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る親機が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る割当チャネルと中心周波数との関係を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る子機が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る管理データの他の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る親機が実行する処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願に係る電子機器、ワイヤレス電力伝送システム、制御方法及び制御プログラム等を実施するための複数の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。以下の説明において、同様の構成要素について同一の符号を付すことがある。さらに、重複する説明は省略することがある。
【0011】
図1は、実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの概要を説明するための図である。
図1に示すシステム1は、例えば、マイクロ波伝送型(空間伝送型)のワイヤレス電力伝送が可能なワイヤレス電力伝送システムを含む。ワイヤレス電力伝送は、例えば、ケーブルやプラグを用いることなく、電力を伝送することが可能な仕組みである。マイクロ波伝送型のシステム1は、エネルギー伝送として電波(マイクロ波)を使用するため、周波数を狭帯域かつ無変調波を使用する。システム1は、例えば、複数の周波数帯で電力を伝送する。複数の周波数帯は、例えば、日本では、920MHz、2.4GHz、5.7GHz等を含む。本実施形態では、システム1は、状況に適した給電効率の向上及び安全性の確保を両立することを可能とする。システム1は、例えば、宇宙太陽光発電等に適用することができる。
【0012】
図1に示す一例では、システム1は、親機10と、子機20と、を備える。親機10は、システム1において、ワイヤレスにより電力を伝送する伝送装置である。親機10は、給電用の電波を伝送可能な装置である。親機10は、電子機器の一例である。親機10は、例えば、多入力多出力(Multiple-Input Multiple-Output:MIMO)アンテナ技術を用いることができる。MIMOでは、通信回路の各端部のアンテナ素子が組み合わされて、エラーを最小限に抑え、データ速度を最適にする。以下の説明において、親機10を「自機」と表記する場合がある。
【0013】
子機20は、システム1において、給電用の電波を受信して電力を得る被給電装置である。子機20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、IoT(Internet of Things)センサ、ノート型パーソナル・コンピュータ、ドローン、電気自動車。電動自転車、ゲーム機等を含む。システム1では、子機20から親機10の方向をアップリンク、親機10から子機20の方向をダウンリンクと称する。システム1は、電波を干渉させないため、時間分割、周波数分割等で電波の使用を管理できる。
【0014】
場面C1では、子機20は、親機10との間で定められた規定信号100を送信できる。規定信号100は、例えば、ビーコン、パイロット信号等を含む。子機20は、例えば、送信周期で規定信号100を送信できる。子機20は、規定信号100を含む電波を放射することで、規定信号100を送信できる。一方、親機10は、規定信号100を受信すると、当該規定信号に基づいて子機20の位置を推定する。親機10は、推定した子機20の位置に対する送信用の重み係数を算出する。
【0015】
場面C2では、親機10は、各アンテナに重み係数を乗算して指向性制御を行い、給電用の送信信号200の電波を送信する。指向性制御は、例えば、電波の放射方向と放射強度との関係を制御することを意味する。これにより、親機10は、放射指向性を有する放射パターンで電波を放射する。親機10は、メインローブ210が子機20に向かい、サイドローブ220が子機20とは異なる方向に向かう送信信号200の電波を放射(送信)することができる。メインローブ210は、放射する送信信号200の電波のうち最も強いビームを示している。サイドローブ220は、メインローブ210以外のビームを示している。
【0016】
システム1は、アップリンクの送信周期を変更させるためには、親機10(送電装置)及び子機20(受電装置)の両装置で送信周期の変更を認識する必要がある。システム1は、電波の干渉を発生させないためにも、アップリンクの送信周期の変更指示を通信で通知する必要がある。システム1では、エネルギー効率の観点から、子機20から親機10へのアップリンクは、伝搬路推定可能な規定信号100を短時間かつ低頻度で送信することが望ましい。しかし、子機20から親機10へアップリンクの送信周期の変更指示を通知するために、規定信号100以外の情報通信を行うことは、アップリンクの使用時間が長くなるだけでなく、子機20の電力を使用することになる。また、システム1では、親機10から子機20へのダウンリンクは、給電用の電波のみを使用して送信することが望ましい。システム1では、親機10から子機20へのアップリンクの送信周期の変更指示のために変調をかけて電波を使用することは、給電用の電波の使用を一時的に停止する必要があることからエネルギー効率を下げることになる。以上により、本実施形態に係るシステム1は、親機10から子機20の規定信号100の送信周期を制御する機能を提供する。
【0017】
図2は、実施形態に係る親機10の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、親機10は、アンテナ11と、送信信号生成部12と、送信部13と、受信部14と、推定部15と、記憶部17と、制御部18と、を備える。制御部18は、送信信号生成部12、送信部13、受信部14、推定部15、記憶部17等と電気的に接続されている。本実施形態では、説明を簡単化するために、親機10は、アンテナ11が4つのアンテナ素子11Aを備える場合について説明するが、アンテナ素子11Aの数はこれに限定されない。
【0018】
アンテナ11は、指向性制御(ビームフォーミング)が可能な構成になっている。アンテナ11は、複数のアンテナ素子11Aを備えたアンテナアレイとなっている。アンテナ11は、例えば、複数のアンテナ素子11Aのそれぞれが同じ電波を放射し、それぞれの位相と電力強度を調整することで、特定の方向では電波を強め、別の方向では打ち消し合って弱めることが可能な構成になっている。アンテナ11は、送信信号200を含む電波を放射し、子機20からの信号を含む電波を受信する。アンテナ11は、受信した信号を受信部14に供給する。アンテナ11は、電波の放射が最大となる方向がメインローブ210である。アンテナ11は、メインローブ210と交わる方向がサイドローブ220である。
【0019】
送信信号生成部12は、子機20に送電する電流を電波に変換した給電用の送信信号200を生成する。送信信号200は、電力を供給可能な電波を送信するための信号である。送信信号生成部12は、電力源から電流を伝送周波数の電波に変換して送信信号200を生成する。電力源は、例えば、商用電源、直流電源、バッテリ等を含む。送信信号生成部12は、生成した送信信号200を送信部13に供給する。
【0020】
送信部13は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11Aと電気的に接続されている。送信部13は、給電用の送信信号200を含む電波をアンテナ11から放射させる。送信部13は、複数のアンテナ素子11Aで形成可能なビームに対応したウェイトを適用することで、電波を複数のアンテナ素子11Aから特定の方向に放射させる。送信部13は、制御部18が指示したウェイトを複数のアンテナ素子11Aに適用する。
【0021】
受信部14は、アンテナ11の複数のアンテナ素子11A、推定部15等と電気的に接続されている。受信部14は、アンテナ11を介して受信した子機20からの電波から受信信号を抽出する。受信信号は、例えば、上述した規定信号100等を含む。受信部14は、抽出した受信信号を推定部15、制御部18等に供給する。
【0022】
推定部15は、受信した受信信号に含まれる規定信号100から子機20(受信装置)の移動の速度、及び、親機10と子機20との間の伝搬路で変動する速度の少なくとも一方を推定する。伝搬路は、親機10と子機20との間の電波の伝送路である。推定部15は、例えば、規定信号100の周期の変動量、伝搬路の環境変化等に基づいて、子機20の移動に応じた速度を推定する。推定部15は、例えば、親機10と子機20との間の空間における電波伝搬の状況を推定する。推定部15は、受信信号から受信応答ベクトル(端末到来方向)を推定する。推定部15は、例えば、空間における電波伝搬の状況を把握するために、規定信号100の受信レベル、感度や伝搬モデル、機械学習プログラム等を用いて、電波伝搬の状況を推定する。推定部15は、規定信号100に基づく推定結果を制御部18に供給する。
【0023】
記憶部17は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶部17は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的な記憶媒体を含んでよい。記憶部17は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部17は、RAMなどの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0024】
記憶部17は、制御プログラム17A、管理データD10等を記憶できる。また、記憶部17に、推定された速度と送信する電波の中心周波数をずらす値と値の関係を示す関係式を格納する格納部17Bを備えるとしてもよい。指示部18Bは、この関係式に基づいて指示を行うとしてよい。この関係式としては、推定された速度V、送信する電波の中心周波数をずらす値をF、a,b,cを所定の定数として、F=aV+b、F=aV*V+bV+cなどの関数を採用できるが、その他の関係式であってもよい。制御プログラム17Aは、親機10の各種動作に関する処理を実現するための機能をそれぞれ提供できる。制御プログラム17Aは、ワイヤレス電力伝送に関する各機能を提供できる。管理データD10は、例えば、推定部15が推定した速度と規定信号100の送信周期との関係を識別可能なデータを有する。管理データD10の一例については、後述する。記憶部17は、例えば、システム1における規定信号100の現在の送信周期を識別可能なデータを記憶する。
【0025】
制御部18は、1又は複数の演算装置を含む。演算装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System-on-a-Chip)、MCU(Micro Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、およびコプロセッサを含むが、これらに限定されない。制御部18は、制御プログラム17Aを演算装置に実行させることにより、親機10の各種動作に関する処理を実現する。制御部18は、制御プログラム17Aにより提供される機能の少なくとも1部を専用のIC(Integrated Circuit)により実現してもよい。
【0026】
制御部18は、例えば、決定部18A、指示部18B等の機能部を有する。制御部18は、制御プログラム17Aを実行することで、決定部18A、指示部18B等の各機能部を実現する。
【0027】
決定部18Aは、推定部15によって推定された速度から規定信号100の送信周期を決定する。決定部18Aは、例えば、推定された速度と管理データD10とに基づいて、規定信号100の送信周期を決定する。決定部18Aは、例えば、推定された速度を機械学習プログラムに入力し、当該機械学習プログラムが出力した出力値を送信周期して決定してもよい。決定部18Aは、決定した送信周期を記憶部17に記憶する。
【0028】
指示部18Bは、決定部18Aによって決定された規定信号100の送信周期を、給電用に割り当てられたチャネル内にて、送信する電波の中心周波数をずらした値により受信装置に指示する。チャネルは、親機10と子機20との間でデータの送受信に必要な周波数の幅を意味する。中心周波数は、チャネルの周波数帯域における中心の周波数である。中心周波数は、電力伝送用信号が配置される給電電波の周波数である。指示部18Bは、アップリンクの送信周期を変化させる場合、給電用に割り当たられたチャネルの内部で収まるように、電波の中心周波数(給電用電波)をずらす。中心周波数のずらし幅は、例えば、ワイヤレス給電用に割り当てられたチャネル内で収まるように、僅かな量のずれとなっている。すなわち、指示部18Bは、中心周波数のずらし幅とアップリンクの送信周期のずらし量とを対応させている。中心周波数をずらすとは、給電用電波の周波数をずらすことを含む。
【0029】
指示部18Bは、例えば、規定信号100の現在の送信周期に対して、頻度を変えない場合、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数をずらすことなく、元の中心周波数でダウンリンクの給電用の電波を送信する。指示部18Bは、例えば、現在の送信周期に対して、頻度を下げる場合、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数を低い方にずらす。指示部18Bは、例えば、現在の送信周期に対して、頻度を上げる場合、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数を高い方にずらす。これにより、親機10が放射する給電用の電波は、子機20(被給電装置)に到達すると同時に、中心周波数のずれによって、アップリンクの頻度である送信周期の指示を通知することが可能である。
【0030】
以上、本実施形態に係る親機10の機能構成例について説明した。なお、
図2を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る親機10の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る親機10の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0031】
図3は、実施形態に係る子機20の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、子機20は、アンテナ21と、生成部22と、周波数検出部23と、変換部24と、バッテリ25と、記憶部26と、制御部27と、を備える。制御部27は、生成部22、周波数検出部、記憶部26等と電気的に接続されている。
【0032】
アンテナ21は、生成部22及び周波数検出部23と電気的に接続されている。アンテナ21は、例えば、規定信号100を含む電波を放射し、親機10からの信号を含む電波を受信する。アンテナ21は、受信した電波を周波数検出部23に供給する。
【0033】
生成部22は、規定信号100を生成し、該規定信号100を含む電波をアンテナ21に放射させる。生成部22は、送信周期に基づいて規定信号100を生成する。生成部22は、規定信号を前記電子機器に送信する第2送信部として機能する。生成部22は、規定信号100とは異なる信号を生成する構成としてもよい。
【0034】
周波数検出部23は、アンテナ21を介して受信した電波の給電用電波のチャネルにおける中心周波数のずれを検出する。周波数検出部23は、中心周波数のずれ量を検出して記憶部26に記憶する。周波数検出部23は、アンテナ21を介して受信した電波の信号を変換部24に供給する。
【0035】
変換部24は、周波数検出部23及びバッテリ25と電気的に接続されている。変換部24は、アンテナ21で受信した電波を直流電流に変換し、この直流電流を利用してバッテリ25を充電する。変換部24は、例えば、公知である整流回路等を用いて、電波を直流電流に変換する。
【0036】
バッテリ25は、変換部24と電気的に接続されている。バッテリ25は、充電可能な電池を含む。バッテリ25は、例えば、Qi(ワイヤレス給電の国際標準規格)に対応したバッテリを含む。バッテリ25は、蓄電された電力を子機20において電力を必要とする各部等に供給できる。
【0037】
記憶部26は、プログラム及びデータを記憶できる。記憶部26は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的な記憶媒体を含んでよい。記憶部26は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。記憶部26は、RAMなどの一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
【0038】
制御部27は、1又は複数の演算装置を含む。演算装置は、例えば、CPU、SoC、MCU、FPGA、およびコプロセッサを含むが、これらに限定されない。制御部27は、プログラムを演算装置に実行させることにより、子機20の各種動作に関する処理を実現する。制御部27は、受信した電波の中心周波数に基づいて規定信号100の送信周期を設定する機能を提供できる。制御部27は、例えば、給電用に割り当てられたチャネル内における中心周波数のずれ量に基づいて設定した送信周期で、規定信号100の送信を制御する機能を提供できる。制御部27は、第2制御部の一例である。
【0039】
以上、本実施形態に係る子機20の機能構成例について説明した。なお、
図3を用いて説明した上記の構成はあくまで一例であり、本実施形態に係る子機20の機能構成は係る例に限定されない。本実施形態に係る子機20の機能構成は、仕様や運用に応じて柔軟に変形可能である。
【0040】
図4は、実施形態に係る管理データD10の一例を示す図である。
図4に示す管理データD10は、アップリンクの頻度、すなわち規定信号100の送信周期を、子機20の移動速度に基づいて決定するためのデータを有する。管理データD10は、子機20の移動速度の推定値と規定信号100の送信周期との関係が識別可能な構造になっている。
【0041】
例えば、ワイヤレス給電システムにおいては、エネルギー効率を重視するため、子機20(被給電装置)からのアップリンクは時間的になるべく短く、一方で、親機10からのダウンリンクは時間的になるべく長く割り当てることが好ましい。また、ワイヤレス給電システムにおいては、アップリンクの頻度もなるべく少ないほうが、子機20の送信にかかる電力消費も抑えることができる。
【0042】
ワイヤレス給電システムでは、子機20が固定されており、周辺環境も停止している場合はおいては、親機10からのビームフォーミングも方向ズレがないので、アップリンクの頻度を減らしても(アップリンク周期を長くしても)、エネルギー効率への影響は少ない。一方で、子機20が移動している場合、あるいは、親機10の周辺環境が動いている場合、システム1は、親機10と子機20と間の電波伝搬特性が時々刻々と変化する。このため、システム1は、アップリンクの頻度が少ない(送信周期が長い)と親機10からのビームフォーミングの方向がずれてしまい、エネルギー効率の劣化を招く。したがって、システム1は、親機10が子機20のアップリンクの頻度(送信周期)を適切に制御する。
【0043】
図4に示す一例では、管理データD10は、移動速度の推定値が0~4km/hの場合、子機20が移動していない可能性が高いため、送信周期をA1とする。本実施形態では、システム1は、送信周期のA1を標準の周期としている。管理データD10は、移動速度の推定値が4~10km/hの場合、送信周期をA2とし、移動速度の推定値が10~30km/hの場合、送信周期A3とし、移動速度の推定値が30~60km/hの場合、送信周期A4とし、移動速度の推定値が60km/hよりも大きい場合、送信周期A5とする。送信周期A2、A3、A4、A5は、子機20の移動速度が速くなるに従って、送信周期A1よりも小さな値が順次設定されている。すなわち、管理データD10は、子機20の移動速度が速くなるに従って、送信周期の頻度が多くなる値が設定されている。管理データD10の送信周期A1から送信周期A5は、アップリンクの頻度の適切な相異なる値が設定されている。
【0044】
図5は、実施形態に係る親機10が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6は、実施形態に係る割当チャネルと中心周波数との関係を説明するための図である。
図5に示す処理手順は、親機10の制御部18が制御プログラム17Aを実行することによって実現される。
図5に示す処理手順は、例えば、アンテナ11で電波を受信した場合、電波を受信するタイミング等に、制御部18によって繰り返し実行される。
【0045】
図5に示すように、親機10の制御部18は、子機20からアップリンクにて規定信号100を受信する(ステップS101)。例えば、制御部18は、アンテナ11を介して電波の規定信号100を受信する。制御部18は、ステップS101の処理が終了すると、処理をステップS102に進める。
【0046】
制御部18は、規定信号100に基づいて子機20の移動速度を推定する(ステップS102)。例えば、制御部18は、今回の規定信号100と前回の規定信号100とを比較し、送信周期のずれ量に基づいて子機20の移動速度を推定し、推定した移動速度を記憶部17に記憶する。制御部18は、ステップS102の処理が終了すると、処理をステップS103に進める。
【0047】
制御部18は、移動速度と管理データD10に基づいて、アップリンクの送信周期を決定する(ステップS103)。例えば、制御部18は、ステップS102で推定した移動速度に対応した送信周期を管理データD10から決定し、決定した送信周期を記憶部17に記憶する。例えば、制御部18は、子機20の移動速度が速くなるに従って、送信周期を小さな値を決定する。制御部18は、ステップS103の処理が終了すると、処理をステップS104に進める。
【0048】
制御部18は、現在の送信周期よりも早くするか否かを判定する(ステップS104)。例えば、制御部18は、ステップS103で決定した送信周期が現在の送信周期よりも早い周期である場合に、現在の送信周期よりも早くすると判定する。制御部18は、現在の送信周期よりも早くすると判定した場合(ステップS104でYes)、処理をステップS105に進める。
【0049】
制御部18は、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を高い方にずらすように送信部13に指示する(ステップS105)。例えば、制御部18は、中心周波数を所定周波数分だけ周波数の高い方へずらすように送信部13に指示する。所定周波数は、例えば、システム1で予め設定された周波数である。
図6に示すように、親機10は、割当チャネルCH1及び割当チャネルCH2を含む電波をアンテナ11から放射する。割当チャネルCH1は、給電用に割り当てられたチャネルである。割当チャネルCH1の中心周波数は、給電用電波110である。割当チャネルCH2は、給電用に割り当てられていないチャネルである。制御部18は、中心周波数から給電用電波110を割当チャネルCH1の中心からずらすことで、送信周期の変更を子機20に指示する。
図6に示す一例では、制御部18は、送信周期を早くするために、中心周波数から給電用電波110を所定周波数分だけ周波数の高い方へずらしている。
図5に戻り、制御部18は、ステップS105の処理が終了すると、処理を後述するステップS109に進める。
【0050】
また、制御部18は、現在の送信周期よりも早くしないと判定した場合(ステップS104でNo)、処理をステップS106に進める。制御部18は、現在の送信周期よりも遅くするか否かを判定する(ステップS106)。例えば、制御部18は、ステップS103で決定した送信周期が現在の送信周期よりも遅い周期である場合に、現在の送信周期よりも遅くすると判定する。制御部18は、現在の送信周期よりも遅くすると判定した場合(ステップS106でYes)、処理をステップS107に進める。
【0051】
制御部18は、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を低い方にずらすように送信部13に指示する(ステップS107)。例えば、制御部18は、規定信号100の送信周期を遅くするために、中心周波数を所定周波数分だけ周波数の低い方へずらすように送信部13に指示する。
図6に示した一例では、周波数の低い方は、割当チャネルCH1における左方向である。
図5に戻り、制御部18は、ステップS107の処理が終了すると、処理を後述するステップS109に進める。
【0052】
なお、制御部18は、現在の送信周期よりも早くすると判定した場合、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を低い方にずらすように送信部13に指示し、現在の送信周期よりも遅くすると判定した場合、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を高い方にずらすように送信部13に指示するとしてもよい。さらに、制御部18は、現在の送信周期よりも早くすると判定した場合、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を、第1の所定帯域範囲である低い方にずらすように送信部13に指示し、現在の送信周期よりも遅くすると判定した場合、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を第1の所定帯域と異なる第2の所定帯域範囲である低い方にずらすように送信部13に指示するとしてもよい。制御部18は、現在の送信周期よりも早くすると判定した場合、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を、第1の所定帯域範囲である高い方にずらすように送信部13に指示し、現在の送信周期よりも遅くすると判定した場合、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数を第1の所定帯域と異なる第2の所定帯域範囲である高い方にずらすように送信部13に指示するとしてもよい。
【0053】
また、制御部18は、現在の送信周期よりも遅くしないと判定した場合(ステップS106でNo)、送信周期を変更しないので、処理をステップS108に進める。制御部18は、給電用のチャネル内において、送信する電波の中心周波数をずらさないように送信部13に指示する(ステップS108)。例えば、制御部18は、給電用のチャネルにおいて、給電用電波が中心に位置するように、送信部13に指示する。これにより、給電用電波が中心周波数からずれている場合、送信部13は、給電用電波が給電用のチャネル内の中心周波数にすることができる。制御部18は、ステップS108の処理が終了すると、処理をステップS109に進める。
【0054】
制御部18は、ダウンリンクにて給電用の電波を放射する(ステップS109)。例えば、制御部18は、給電用の送信信号200の生成を送信信号生成部12に指示することで、送信信号200を含む電波を送信部13に放射させる。この場合、送信部13は、給電用のチャネル内において、指示された周波数の給電用電波となるように電波を放射する。制御部18は、ステップS109の処理が終了すると、
図5に示す処理手順を終了させる。
【0055】
図7は、実施形態に係る子機20が実行する処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7に示す処理手順は、子機20の制御部27がプログラムを実行することによって実現される。
図7に示す処理手順は、例えば、アンテナ21で電波を受信した場合等に、制御部27によって繰り返し実行される。
【0056】
図7に示すように、子機20の制御部27は、親機10からダウンリンクにて電波を受信する(ステップS201)。例えば、制御部18は、アンテナ21を介して親機10からの電波を受信する。制御部27は、ステップS201の処理が終了すると、処理をステップS202に進める。
【0057】
制御部27は、給電用の電波の中心周波数のずれ量を検出する(ステップS202)。例えば、制御部27は、受信した電波の給電用のチャネルにおける給電用電波と中心周波数との差に基づいて中心周波数のずれ量を検出し、検出したずれ量を記憶部26に記憶する。制御部27は、ステップS202の処理が終了すると、処理をステップS203に進める。
【0058】
制御部27は、検出した中心周波数のずれ量に基づいて規定信号100の送信周期を決定する(ステップS203)。例えば、制御部27は、ステップS202で検出したすれ量が増加しているか、減少しているか、変化していないかに基づいて、送信周期を決定する。ずれ量が増加している、すなわち、電波の中心周波数を高い方にずれている場合、制御部27は、規定信号100の送信周期を早くする周期に決定する。早くする周期は、例えば、現状の送信周期から所定時間を差し引いた周期を含む。ずれ量が減少している、すなわち、電波の中心周波数を低い方にずれている場合、制御部27は、規定信号100の送信周期を遅くする周期に決定する。遅くする周期は、例えば、現状の送信周期に所定時間を加えた周期を含む。ずれ量がない、すなわち、電波の中心周波数がずれていない場合、制御部27は、規定信号100の送信周期を現状の送信周期に決定する。制御部27は、ステップS203の処理が終了すると、処理をステップS204に進める。
【0059】
制御部27は、決定した送信周期で規定信号100の送信を制御する(ステップS204)。例えば、制御部27は、前回の送信から送信周期に到達したタイミングにおいて、規定信号100の生成を生成部22に指示することで、規定信号100を含む電波をアンテナ21から送信周期で放射させる。制御部27は、ステップS204の処理が終了すると、
図7に示す処理手順を終了させる。
【0060】
実施形態に係るシステム1は、子機20が送信周期で規定信号100を親機10に送信すると、親機10が子機20の移動を推定する。システム1は、親機10が子機20の移動の速度を推定すると、当該速度に適した規定信号100の送信周期を決定する。システム1は、親機10が給電用に割り当てたチャネル内にて、送信する電波の中心周波数をずらした値により子機20に、決定した送信周期を指示する。システム1は、子機20が受信した電波の給電用の割当チャネルCH1における中心周波数に基づいて、規定信号100の送信周期を設定する。親機10は、自機に対する子機20の移動状況に応じた所望の送信周期になるまで、中心周波数をずれした電波を子機20に向けて放射する。
【0061】
親機10は、例えば、規定信号100の現在の送信周期に対して、周期を遅くする(頻度を下げる)場合は、ダウンリンクで使用する給電用電波の中心周波数を低い方にずらしてダウンリンクの給電用の電波を放射することができる。親機10は、現在の送信周期に対して、周期を早くする(頻度を上げる)場合は、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数を高い方にずらしてダウンリンクの給電用の電波を放射することができる。親機10は、現在の送信周期に対して、周期を変えない(頻度を変えない)場合は、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数もずらすことなく、元の中心周波数でダウンリンクの給電用の電波を放射することができる。
【0062】
これにより、親機10は、自機から子機20の給電に用いる電波を、中心周波数のずれによって規定信号100の送信周期の変更指示に用いることができるので、子機20への指示のために特別な情報通信を行う必要がない。親機10は、移動速度に応じたアップリンク周期を実現できるため、ワイヤレス電力伝送にて適用するビームフォーミング(指向性制御)を適切に追従させることができる。その結果、親機10は、給電用の電波のみで、子機20からのアップリンク信号を送信する時間や頻度を変更することができるので、給電効率の低下を抑制できるとともに、周波数利用効率を改善することができる。
【0063】
親機10は、現在の規定信号100の送信周期に対して、頻度を変えない場合、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数をずらすことなく、元の中心周波数でダウンリンクの給電用の電波を送信する。これにより、親機10は、送信周期の指示のために特別な情報通信をする必要がなく、給電用の電波のみで送信周期の変更を指示することができる。
【0064】
親機10は、給電用の電波の中心周波数のずらし幅が、ワイヤレス給電用に割り当てられたチャネル内で収まる量のずれである。これにより、親機10は、給電用の電波の中心周波数をずらせばよいので、給電効率の低下を抑制するとともに、周波数の利用効率の改善を図ることができる。
【0065】
システム1は、親機10が子機20で給電に用いる電波を、中心周波数のずれによって規定信号100の送信周期の変更指示に用いることで、子機20への指示のために特別な情報通信を行う必要がない。システム1は、親機10が子機20との伝搬路における速度に応じたアップリンク周期を子機20に指示するので、ワイヤレス電力伝送にて適用するビームフォーミング(指向性制御)を適切に追従させることができる。その結果、システム1は、親機10の給電用の電波のみで、子機20からのアップリンク信号を送信する時間や頻度を変更することができるので、給電効率の低下を抑制できるとともに、周波数利用効率を改善することができる。
【0066】
本実施形態では、上述した管理データD10は、移動速度の推定値と規定信号100の送信周期との関係を示す場合について説明したが、これに限定されない。例えば管理データD10は、中心周波数の周波数ずらし幅の項目を追加することができる。
【0067】
図8は、実施形態に係る管理データD10の他の一例を示す図である。
図8に示す管理データD10は、移動速度と規定信号100の送信周期と中心周波数のずらし量との関係が識別可能な構造になっている。この場合、管理データD10は、親機10の記憶部17及び子機20の記憶部26の双方に記憶される。親機10は、管理データD10に基づいて、推定した移動速度に対応する規定信号100の送信周期を決定する。子機20は、管理データD10に基づいて、電波の中心周波数のずらし量に対応する規定信号100の送信周期を決定する。
【0068】
図8に示す一例では、管理データD10は、移動速度の推定値が0~4km/hの場合、子機20が移動していない可能性が高いため、送信周期をA1とし、中心周波数のずらし量をF1とする。管理データD10は、移動速度の推定値が4~10km/hの場合、送信周期をA2とし、中心周波数のずらし量をF2とする。管理データD10は、移動速度の推定値が10~30km/hの場合、送信周期A3とし、中心周波数のずらし量をF3とする。管理データD10は、移動速度の推定値が30~60km/hの場合、送信周期A4とし、中心周波数のずらし量をF4とする。管理データD10は、移動速度の推定値が60km/hよりも大きい場合、送信周期A5とし、中心周波数のずらし量をF5とする。ずらし量F2、F3、F4、F5は、子機20の移動速度が速くなるに従って、ずらし量F1よりも小さな値が順次設定されている。管理データD10のずらし量F1からずらし量F5は、中心周波数の適切な相異なる値が設定されている。
【0069】
上述した親機10の指示部18Bは、例えば、現在の送信周期に対して、周期を変更する場合、管理データD10に基づいて移動速度に対応した中心周波数のずらし量を特定し、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数のずらし量を送信部13に指示する。また、指示部18Bは、例えば、現在の送信周期に対して、周期を変更しない場合、管理データD10に基づいて移動速度に対応した中心周波数のずらし量のF1を特定し、ダウンリンクで使用する給電用の電波の中心周波数のずらし量のF1を送信部13に指示する。
【0070】
上述した子機20の制御部27は、受信した電波の中心周波数に基づいて管理データD10から規定信号100の送信周期を特定し、当該送信周期で規定信号100の送信を制御する機能を追加する。例えば、制御部27は、受信した電波の中心周波数のずらし量がF1であった場合、管理データD10から送信周期のA1を特定し、A1の送信周期で規定信号100の送信を制御する、例えば、制御部27は、受信した電波の中心周波数のずらし量がF3であった場合、管理データD10から送信周期のA3を特定し、A3の送信周期で規定信号100の送信を制御する。
【0071】
以上のように、システム1は、親機10及び子機20の双方で管理データD10を保持し、親機10が推定した移動速度から規定信号100の送信周期を決定し、該送信周期に応じた中心周波数のずらし量となるように、給電用の電波の中心周波数をずらす。システム1は、子機20が給電用の電波の中心周波数のずらし量を検出し、管理データD10を参照して規定信号100の送信周期を決定し、決定した送信周期で規定信号100を親機10に送信する。これにより、システム1は、親機10が伝送路の速度に応じた送信周期の値を指示できるので、親機10が子機20における規定信号100の送信周期を速やかに変更することができる。その結果、システム1は、給電用の電波のみで、子機20からのアップリンク信号を送信する時間や頻度を速やかに変更することができるので、給電効率の低下を抑制できるとともに、周波数利用効率を改善することができる。
【0072】
図9は、実施形態に係る親機10が実行する処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
図9に示す処理手順は、親機10の制御部18が制御プログラム17Aを実行することによって実現される。
図9に示す処理手順は、例えば、アンテナ11で電波を受信した場合等に、制御部18によって繰り返し実行される。
【0073】
図9に示す処理手順は、ステップS101からステップS103及びステップS109の処理が、
図5に示すステップS101からステップS103及びステップS109と同一の処理である。
【0074】
図9に示すように、親機10の制御部18は、子機20からアップリンクにて規定信号100を受信する(ステップS101)。制御部18は、規定信号100に基づいて子機20の移動速度を推定する(ステップS102)。制御部18は、移動速度と管理データD10に基づいて、アップリンクの送信周期を決定する(ステップS103)。制御部18は、ステップS103の処理が終了すると、処理をステップS111に進める。
【0075】
制御部18は、給電用のチャネルにおいて、送信周期に対応した中心周波数のずれ量を送信部13に指示する(ステップS111)。例えば、制御部18は、送信周期に対応した中心周波数のずれ量を管理データD10から特定し、当該中心周波数のずれ量を送信部13に指示する。制御部18は、ステップS111の処理が終了すると、処理を既に説明したステップS109に進める。
【0076】
制御部18は、ダウンリンクにて給電用の電波を放射する(ステップS109)。これにより、送信部13は、給電用のチャネル内において、指示された中心周波数のずれ量となるように電波を放射する。制御部18は、ステップS109の処理が終了すると、
図5に示す処理手順を終了させる。
【0077】
以上のように、親機10は、中心周波数のずらし量を含む管理データD10を用いることで、規定信号100の送信周期を子機20に対して一気に指示することができる。これにより、親機10は、規定信号100の送信周期の変更に関する処理を簡単化することができる。子機20は、上述したように、
図7に示した処理手順を実行することで、親機10が決定した送信周期で、規定信号100を親機10に送信することができる。
【0078】
上述した実施形態では、システム1は、親機10が電子機器である場合について説明したが、これに限定されない。電子機器は、例えば、給電用電波を放射可能な給電装置を制御する制御装置、給電装置に内蔵されたコンピュータ等で実現してもよい。
【0079】
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成を具現化するように構成されるべきである。本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【符号の説明】
【0080】
1 システム
10 親機
11 アンテナ
12 送信信号生成部
13 送信部
14 受信部
15 推定部
17 記憶部
17A 制御プログラム
17B 格納部
18 制御部
18A 決定部
18B 指示部
20 子機
21 アンテナ
22 生成部
23 周波数検出部
24 変換部
25 バッテリ
26 記憶部
27 制御部
100 規定信号
110 給電用電波
200 送信信号
D10 管理データ