(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023058605
(43)【公開日】2023-04-25
(54)【発明の名称】下肢痙縮の治療
(51)【国際特許分類】
A61M 5/00 20060101AFI20230418BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230418BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230418BHJP
C07K 14/33 20060101ALN20230418BHJP
【FI】
A61M5/00 500
A61K38/16 ZNA
A61P21/02
C07K14/33
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023017689
(22)【出願日】2023-02-08
(62)【分割の表示】P 2019572212の分割
【原出願日】2018-07-27
(31)【優先権主張番号】62/537,567
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517340507
【氏名又は名称】イプセン バイオファーム リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IPSEN BIOPHARM LIMITED
(71)【出願人】
【識別番号】519457487
【氏名又は名称】パール,ドナルド
【氏名又は名称原語表記】PEARL, DONALD
(71)【出願人】
【識別番号】519457498
【氏名又は名称】サントス,アヤンナ
【氏名又は名称原語表記】SANTOS, AYANNA
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パール,ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】サントス,アヤンナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】対象、特に、18歳以下であるものにおいて下肢痙縮を治療する方法を提供する。
【解決手段】対象、特に、18歳以下であるものにおいて下肢痙縮を治療する方法であって、対象に、有効量のボツリヌス神経毒を投与することを含む方法。ボツリヌス神経毒を含む、患者における下肢痙縮の治療において使用するための組成物。対象に投与されるべき活性薬剤の投与量の決定において使用するためのツール。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下肢痙縮の治療用途のために18歳以下の対象に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量の決定において使用するためのツールであって、
当該ツールは第1のメンバーを含み、これは、
対象の体重を示す数字の第1列と、対象の単一脚に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量を示す数字の第2列とを有し、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦にまたは放射状に整列しており、
脚の腓腹筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量を示す数字の第3列と、脚のヒラメ筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量を示す数字の第4列とを有し、特定の体重を有する対象の筋肉に投与されるべき特定の投与量を示す第3列及び第4列中の数字が、その特定の体重を示す第1列中の対応する数字と長手方向にまたは放射状に整列しており、
当該ツールは第2のメンバーを含み、
第1および第2のメンバーが、互いに、個々の体重を有する対象に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量並びに当該対象の腓腹筋及びヒラメ筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある、ツール。
【請求項2】
対象の単一脚に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量が、対象の総体重のキログラムあたり5~15単位の量である、請求項1に記載のツール。
【請求項3】
対象の単一脚に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量が、対象の総体重のキログラムあたり10~15単位の量である、請求項2に記載のツール。
【請求項4】
対象の脚の腓腹筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量が、対象の総体重のキログラムあたり6~9単位の量である、請求項1~3のいずれか一項に記載のツール。
【請求項5】
対象の脚のヒラメ筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量が、対象の総体重のキログラムあたり4~6単位の量である、請求項1~4のいずれか一項に記載のツール。
【請求項6】
第1および第2のメンバーが両方とも、互いに長手方向にスライドする配置にある平面であり、特定の体重を示す第1列中の数が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦に整列しており、第2のメンバーが第1のメンバーを覆い、第1のメンバー上の列が見られることを可能にする1つの開口部を含有するか、または各開口部が第1のメンバー上の1つの列が見られることを可能にする2つ以上の開口部を含み、一方のメンバーをもう一方のメンバーとの関係でスライドすることができ、数字を開口部(単数または複数)を通して見ることができ、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示す、請求項1に記載のツール。
【請求項7】
第1のメンバーが平面であり、第2のメンバーが、第1のメンバーに関して長手方向にスライドする配置にあるカーソルであり、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦に整列しており、カーソルを、それが、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示すように第1のメンバーに沿ってスライドさせることができる、請求項1に記載のツール。
【請求項8】
第1のメンバーが円形平面であり、第2のメンバーが第1のメンバーの中心点を中心に旋回するダイアルであり、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と放射状に整列しており、カーソルを、それが特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示すように旋回することができる、請求項1に記載のツール。
【請求項9】
指標が、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を覆うカーソル上の線によって示される、請求項7または8に記載のツール。
【請求項10】
指標が、第1のメンバー上の列が見られることを可能にするカーソル中の1つの開口部または各開口部が第1のメンバー上の1つの列が見られることを可能にする2つ以上の開口部によって示され、開口部(単数または複数)を通して見ることができる数字が、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示す、請求項7または8に記載のツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象、特に、18歳以下、例えば、2~17歳の間の対象において下肢痙縮を治療する方法であって、対象に、有効量のボツリヌス神経毒を投与することを含む方法に関する。本発明はまた、患者における下肢痙縮の治療において使用するためのボツリヌス神経毒を含む組成物に関する。さらに、本発明は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量の決定において使用するためのツールに関する。
【背景技術】
【0002】
痙縮は、1つ以上の筋肉において、その動きを干渉し得る筋緊張または硬直の異常な増大がある状態である。痙縮は、通常、筋肉の動きを制御する脳または脊髄における神経経路への損傷によって引き起こされ、脳性麻痺、脊髄損傷、多発性硬化症、卒中および脳または頭部外傷と関連して起こり得る。
【0003】
下肢痙縮は、一般に、ふくらはぎに位置する腓腹筋およびヒラメ筋複合体の痙縮を含む。これらのふくらはぎの筋肉は、足首-関節での足の主要な伸筋である。歩行では、それらは地面から踵を挙げるように働く。
【0004】
痙縮の症状は、筋緊張の増大、急速な筋肉収縮、過剰深部腱反射および/または筋痙攣を含み得る。痙縮の程度は、軽度筋硬直から重度有痛性および制御できない筋痙攣まで多様である。
【0005】
ボツリヌス神経毒を使用して成人において痙縮を治療することが知られている。本出願人は、18歳以下の対象、例えば、2から17歳の間の対象においてボツリヌス神経毒を使用して、下肢痙縮を治療できることを見い出した。
【0006】
ボツリヌス神経毒は、ボツリヌス神経毒自体及びこれと複合体形成している幾つかのアクセサリータンパク質とからなる大きなタンパク質複合体の形態でクロストリジウム・ボツリヌス(Clostridium botulinum)によって生成される。現在、7つの異なるクラスのボツリヌス神経毒、すなわち、ボツリヌス神経毒血清型A、B、C、D、E、FおよびGがあり、そのすべてが、同様の構造および作用様式を共有する。異なるBoNT血清型は、特異的中和抗血清による不活性化に基づいて区別することができ、血清型によるこのような分類は、アミノ酸レベルでの配列同一性パーセンテージと相関する。所与の血清型のボツリヌス神経毒タンパク質は、アミノ酸配列同一性パーセンテージに基づいて異なるサブタイプにさらに分けられる。
【0007】
ボツリヌス毒素A型は、Ipsen(Dysport(登録商標)、Ipsen Limited、英国、スラウ)およびAllergan(BOTOX(登録商標)、Allergan Inc.、米国、カリフォルニア州、アーバイン)から主に市販されているが、ボツリヌス毒素B型は、Elan(Myobloc(登録商標)/Neurobloc(登録商標)、Solstice Neurosciences Inc.、米国、カリフォルニア州、サンディエゴ)によって販売されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、部分的に、対象、特に、18歳以下、例えば、2から17歳の間の対象において下肢痙縮を治療する方法であって、対象に、有効量のボツリヌス神経毒を投与することを含む方法に関する。また、下肢痙縮を治療する方法であって、18歳以下の対象に有効量のボツリヌス神経毒を投与することを含む方法において使用するためのボツリヌス神経毒ならびに18歳以下の対象において下肢痙縮を治療するための医薬の製造におけるボツリヌス神経毒の使用も包含される。
【0009】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒は、A、B、C、D、E、Fおよび/またはG型のものである。
【0010】
個々の実施形態では、ボツリヌス神経毒は、A型のものである。
【0011】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、片側性に投与する。個々の実施形態では、ボツリヌス神経毒は、個々の脚に対象の総体重のキログラムあたり10~15単位の量で投与する。
【0012】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、両側性に投与する。個々の実施形態では、対象の各脚に、対象の総体重のキログラムあたり10~15単位を用いて個々に投与する。
【0013】
一実施形態では、治療セッションあたり対象に投与するボツリヌス神経毒の総量は、1000単位以下である。
【0014】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、任意の単一筋肉において1つより多い部位で投与する。
【0015】
一実施形態では、0.5mL以下のDysport(登録商標)を任意の単一部位に投与する。
【0016】
一実施形態では、その後の治療セッションは、別の治療セッションの12週間以内に行われない。個々の実施形態では、その後の治療セッションは、別の治療セッションの16~22週間後に行う。
【0017】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり少なくとも約5単位の量で対象に投与する。好ましくは、ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり少なくとも約10単位の量で対象に投与する。対象に投与されるボツリヌス神経毒の量は、対象の総体重のキログラムあたり約15単位未満(例えば、対象の総体重のキログラムあたり約12単位未満)であり得る。好ましくは、この段落において開示される値は、対象の脚あたりに投与される単位数に関連する。
【0018】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、腓腹筋-ヒラメ筋複合体に投与する。
【0019】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり10~15単位の量で片側性に投与し、好ましくは、前記ボツリヌス神経毒を対象の腓腹筋-ヒラメ筋複合体に投与する。別の個々の実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり20~30単位の量で両側性に投与し、好ましくは、前記ボツリヌス神経毒を対象の腓腹筋-ヒラメ筋複合体に投与する。
【0020】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象の腓腹筋に投与する。個々の実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり6~9単位の量で個々の腓腹筋に投与する。ある特定の実施形態では、対象の各腓腹筋は、このような量を用いて投与される。
【0021】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象のヒラメ筋に投与する。個々の実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり4~6単位の量で個々のヒラメ筋に投与する。ある特定の実施形態では、対象の各ヒラメ筋は、このような量を用いて投与される。
【0022】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、注射によって筋肉に投与する。個々の実施形態では、腓腹筋に最大4回の注射を行う。別の個々の実施形態では、ヒラメ筋に最大2回の注射を行う。一実施形態では、注射部位は、触診によって、または筋電図検査もしくは電気刺激などの注射ガイド技術の使用によって決定する。
【0023】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、部分的に、対象の体重、投与が片側性であるべきか、もしくは両側性であるべきか、投与が腓腹筋および/もしくはヒラメ筋に対するものとなるか、痙縮の重症度、痙縮によってどの筋肉が影響を受けているか、局所筋力低下が存在するか、ならびに/またはボツリヌス神経毒を用いる治療を用いた対象の病歴がどのようなものであるかに基づいて決定された投与量で投与する。
【0024】
個々の実施形態では、方法は、(A)対象の体重を得るステップと、(B)片側性または両側性投与を選択するステップと、(C)患者の体重および投与が片側性であるべきか、もしくは両側性であるべきかに基づいて、対象に投与するボツリヌス神経毒の量を決定するステップと、(D)ボツリヌス神経毒を、このような治療を必要とする対象にこのような量で投与するステップとを含む。
【0025】
本発明はまた、部分的に、対象に投与する活性薬剤、例えば、ボツリヌス神経毒の量の決定において使用するためのツールに関する。
【0026】
一実施形態では、ツールは、
(A)対象の体重を示す数字第1列および対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す第2列を有する第1のメンバーであって、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦にまたは放射状に整列している第1のメンバーと、
(B)第2のメンバー
とを含み、
第1および第2のメンバーは、互いに、個々の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある。
【0027】
一実施形態では、第1および第2のメンバーは両方とも互いに長手方向にスライドする配置にある平面であり、第2のメンバーは、第1のメンバーを覆い、第1のメンバー上の列が見られることを可能にする開口部(単数または複数)を有する。
【0028】
別の実施形態では、第1のメンバーは平面であり、第2のメンバーは、第1のメンバーに関して長手方向にスライドする配置にあるカーソルである。
【0029】
別の実施形態では、第1のメンバーは、円形平面であり、第2のメンバーは、第1のメンバーの中心点を中心に旋回するダイアルである。
【0030】
対象において下肢痙縮を治療する前記の方法の一実施形態では、上記のツールを使用して投与されるべき投与量を決定する。
【0031】
本発明はさらに、部分的に、対象、特に、18歳以下、例えば、2~17歳の間の対象における下肢痙縮の治療において使用するための組成物に関する。組成物は、有効量のボツリヌス神経毒を含む。
【0032】
一実施形態では、組成物は、ボツリヌス神経毒が投与されるべき各脚に対し対象の総体重のキログラムあたり10~15単位のボツリヌス神経毒を含む。
【0033】
一実施形態では、組成物は、対象の個々の腓腹筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の量を含み、量は、対象の総体重のキログラムあたり6~9単位である。
【0034】
一実施形態では、組成物は、対象の個々のヒラメ筋に投与されるべきボツリヌス神経毒の量を含み、量は、対象の総体重のキログラムあたり4~6単位である。
【0035】
一実施形態では、組成物は、凍結乾燥粉末の形態である。
【0036】
一実施形態では、組成物を、ボツリヌス神経毒を含む凍結乾燥粉末を、塩化ナトリウム溶液中で再構成することによって形成する。個々の実施形態では、組成物は、300~500単位のボツリヌス神経毒を含む。
【0037】
一実施形態では、組成物は、ボツリヌス神経毒およびヒト血清アルブミンを含む。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、本発明のツールの一実施形態を表す図である。ツールは、(A)対象の体重を示す数字第1列(2)と、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字第2列(3)と、対象の脚の腓腹筋に投与されるべき投与量を示す1つの列(9)および対象の脚のヒラメ筋に投与されるべき投与量を示す別の列(10)を有するさらなる数字の列(8)とを有する第1のメンバー(1)と、(B)第2のメンバー(4)とを含む。第1および第2のメンバーの両方とも平面であり、互いに、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある。第2のメンバーは、第1のメンバーを覆い、第1のメンバー上の列が見られることを可能にする1つの開口部(5)を含有する。第2のメンバー上の第1のマーキング(11)は、対象の体重を示す数字の列(2)と合わせられ、第2のメンバー上の第2のマーキング(12)は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列(3)と合わせられ、第2のメンバー上の第3(13)および第4のマーキング(14)は、それぞれ、対象の脚の腓腹筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す列(9)および対象の脚のヒラメ筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す列(10)と合わせられる。
【0039】
【
図2】
図2は、本発明のツールの別の実施形態を表す図である。ツールは、(A)対象の体重を示す数字第1列(2)と、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字第2列(3)と、対象の脚の腓腹筋に投与されるべき投与量を示す1つの列(9)および対象の脚のヒラメ筋に投与されるべき投与量を示す別の列(10)を有するさらなる数字の列(8)とを有する第1のメンバー(1)と、(B)第2のメンバー(4)とを含む。第1および第2のメンバーは両方とも平面であり、互いに、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある。第2のメンバーは、第1のメンバーを覆い、第1のメンバー上の列が見られることを可能にする開口部(6)を含有する。第2のメンバー上の第1のマーキング(11)は、対象の体重を示す数字の列(2)と合わせられ、第2のメンバー上の第2のマーキング(12)は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列(3)と合わせられ、第2のメンバー上の第3(13)および第4のマーキング(14)は、それぞれ、対象の脚の腓腹筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す列(9)および対象の脚のヒラメ筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す列(10)と合わせられる。
【0040】
【
図3】
図3は、本発明のツールのさらに別の実施形態を表す図である。ツールは、(A)対象の体重を示す数字第1列(2)と、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字第2列(3)とを有する第1のメンバー(1)と、(B)第2のメンバー(4)とを含む。第1のメンバーは、平面であり、第2のメンバーは、カーソルである。第2のメンバーは、第1のメンバーと、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関してユーザーが指標を提供できるように長手方向にスライドする関係にある。カーソルは、透明な材料で作られている。第2のメンバー上の第1のマーキング(11)は、対象の体重を示す数字の列(2)と合わせられ、第2のメンバー上の第2のマーキング(12)は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列(3)と合わせられる。数字は、表示(15)上に現れる。線(7)は、特定の体重および特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量の指標を提供するようにカーソル上に存在する。
【0041】
【
図4】
図4は、本発明のツールのさらなる実施形態を表す図である。ツールは、(A)対象の体重を示す数字第1列(2)と、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字第2列(3)とを有する第1のメンバー(1)と、(B)第2のメンバー(4)とを含む。第1のメンバーは、平面であり、第2のメンバーは、カーソルである。第2のメンバーは、第1のメンバーと、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関してユーザーが指標を提供できるように長手方向にスライドする関係にある。第2のメンバー上の第1のマーキング(11)は、対象の体重を示す数字の列(2)と合わせられ、第2のメンバー上の第2のマーキング(12)は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列(3)と合わせられる。数字は、表示(15)に現れる。カーソルは、ユーザーが、特定の体重量および特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を見ることを可能にする開口部(5)を含有する。
【0042】
【
図5】
図5は、本発明のツールのなおさらなる実施形態を表す図である。ツールは、(A)対象の体重を示す数字第1列(2)と、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字第2列(3)とを有する第1のメンバー(1)と、(B)第2のメンバー(4)とを含む。第1のメンバーは、円形平面であり、第2のメンバーは、特定の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関してユーザーが指標を提供できるように第1のメンバーの中心点を中心に旋回するダイアルである。カーソルは、ユーザーが、特定の体重量および特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を見ることを可能にする開口部(5)を含有する。第2のメンバー上の第1のマーキング(11)は、対象の体重を示す数字の列(2)と合わせられ、第2のメンバー上の第2のマーキング(12)は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列(3)と合わせられる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、本明細書において記載される実施形態に制限されないということは理解されるべきである。実際、本発明から逸脱することなく、多数の変法、変更および置換が当業者に直ちに思い浮かぶであろう。本発明の実施において、本明細書において記載される本発明の実施形態に対する種々の代替法が使用されるであろうということは理解されなければならない。
【0044】
本発明の記載において、実施形態に関して、値の範囲が提供される場合には、それぞれの挟まれる値は、実施形態内に包含されるということは理解される。
【0045】
本発明は、部分的に、対象、特に、18歳以下、例えば、2~17歳の間の対象において下肢痙縮を治療する方法であって、対象に有効量のボツリヌス神経毒を投与することを含む方法に関する。「対象」とは、本明細書において、下肢痙縮の治療を必要とする哺乳動物、特に、ヒトを指す。例えば、対象は、このような治療を必要とするヒト患者であり得る。
【0046】
ボツリヌス神経毒は、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)によって生成されるタンパク質である。これらのタンパク質は、神経毒として働く。それらは、神経終末でエンドサイトーシスによって選択的に取り込まれると、シナプス小胞の放出を遮断する。ボツリヌス神経毒の7種の既知血清型、具体的には、血清型A、B、C、D、E、FおよびGがある。本明細書において、「ボツリヌス神経毒」とは、その高純度形態を含む天然に存在するボツリヌス神経毒、および、野生型ボツリヌス神経毒と同様またはそれより良好な特性を有するように野生型ボツリヌス神経毒と比較して修飾を含有するもの(例えば、そのアミノ酸配列において)を含む組換え改変ボツリヌス神経毒を指す。ボツリヌス毒素A型は、A1、A2およびA3を含むボツリヌス毒素A型のすべての型を含む。ボツリヌス毒素C型は、C1またはC2を含むボツリヌス毒素C型のすべての型を含む。同じことが、変更すべきところは変更して、毒素のその他の血清型に当てはまる。
【0047】
「高純度ボツリヌス神経毒」とは(A、B、C、D、E、FまたはG型に関わらず)、その他のタンパク質との複合体を含まないボツリヌス神経毒を指す。
【0048】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒は、A、B、C、D、E、Fおよび/もしくはG型のものまたはA、B、C、D、E、FもしくはG型のボツリヌス神経毒のアミノ酸配列に対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%もしくは99%の配列同一性(好ましくは、少なくとも90%の配列同一性)を有するアミノ酸配列を有する組換え改変ボツリヌス神経毒である。
【0049】
A、B、C、D、E、FおよびG型のボツリヌス神経毒の例示的アミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1~7として提示されている。
【0050】
2つまたはそれより多い核酸またはアミノ酸配列間の「配列同一性パーセント」は、配列によって共有される同一位置の数の関数である。したがって、同一性%は、ヌクレオチド/アミノ酸の総数によって除し、100を乗じた同一ヌクレオチド/アミノ酸の数として算出することができる。配列同一性%の算出もまた、2つまたはそれより多い配列のアラインメントを最適化するために導入される必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れることができる。2つまたはそれより多い配列間の配列比較および同一性パーセントの決定は、当業者が精通するであろうBLASTなどの特定の数学的アルゴリズムを使用して実施することができる。
【0051】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒は、ボツリヌス神経毒Aとしても知られるA型のものである。ボツリヌス神経毒Aは、Ipsen Biopharmaceuticals、Inc.(ニュージャージー州、バスキングリッジ)によってDysport(登録商標)として、およびAllergan、Inc.(ニュージャージー州、パーシッパニートロイヒルズ)によってBotox(登録商標)として販売されている。
【0052】
ボツリヌス神経毒は、片側性に投与してもよい。用語「片側性」およびその変形は、投与に関して本明細書において使用される場合、ボツリヌス神経毒の対象の一方の脚への投与を指す。
【0053】
したがって、一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象に、対象の総体重のキログラムあたり少なくとも約5単位の量で片側性に投与する。好ましくは、ボツリヌス神経毒を、対象に、対象の総体重のキログラムあたり少なくとも約10単位の量で片側性に投与する。対象に片側性に投与されるボツリヌス神経毒の量は、対象の総体重のキログラムあたり約15単位未満(例えば、対象の総体重のキログラムあたり約12単位未満)であり得る。
【0054】
一実施形態では、ボツリヌス経毒を、対象の総体重のキログラムあたり10~15単位の量で片側性に投与する。本明細書において、用語「単位」とは、マウスにおけるDysport(登録商標)の中央値腹膜内LD50用量を指す、Dysport(登録商標)の単位用量を指す。異なる医薬品は異なって製造されるので、マウスにおけるDysport(登録商標)の中央値腹膜内LD50用量は、Botox(登録商標)などの別のボツリヌス神経毒含有製品の中央値腹膜内LD50用量と必ずしも同一ではないということは留意される。例えば、本技術分野において記載されるようなBotox(登録商標)の単位は、Dysport(登録商標)の単位である本発明の単位と同一ではない。
【0055】
Dysport(登録商標)は、BoNT-Aを生成するクロストリジウム属(Clostridium)の細菌から単離および精製されるボツリヌス毒素A型(BoNT-A)の注射用形態である。凍結乾燥粉末として供給される。Dysport(登録商標)は、緊張および痙縮を改善するために、頸部ジストニア(CD)を有する成人の治療、成人患者における上肢痙縮(ULS)の治療および小児における下肢痙縮の治療のために米国において承認された治療適応症を有する。医薬は、その他の使用のために1990年に米国において最初に登録され、8種の異なる適応症において80を超える国において認可され、1,300を超えるピアレビューされた刊行物を有する。
【0056】
ボツリヌス神経毒はまた、両側性に投与してもよい。用語「両側性」およびその変形は、投与に関して本明細書において使用される場合、ボツリヌス神経毒の対象の両脚への投与を指す。
【0057】
したがって、一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、対象に脚あたり対象の総体重のキログラムあたり少なくとも約5単位の量で両側性に投与する。好ましくは、ボツリヌス神経毒を、対象に脚あたり対象の総体重のキログラムあたり少なくとも約10単位の量で両側性に投与する。対象に両側性に投与されるボツリヌス神経毒の量は、脚あたり対象の総体重のキログラムあたり約15単位未満(例えば、脚あたり対象の総体重のキログラムあたり約12単位未満)であり得る。
【0058】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、脚あたり対象の総体重のキログラムあたり10~15単位、11~14単位または12~13単位の量で対象の各脚に両側性に投与する。
【0059】
一実施形態では、治療セッションあたり対象に投与されるボツリヌス神経毒の総量は、1000単位以下、900単位以下、800単位以下、700単位以下、600単位以下または500単位以下である。
【0060】
一実施形態では、ボツリヌス神経毒を用いる先行する治療後のボツリヌス神経毒を用いる後続する治療は、先行する治療の12週間以内に行わない。例えば、後続する治療は、先行する治療の16~22週間後に行うことができる。
【0061】
本発明は、任意の手段によって、例えば、非経口的に、筋肉内に、皮下に、皮内に、または経皮的に投与され得るボツリヌス神経毒の投与を考慮する。一実施形態では、投与は、筋肉への注射によるものであり得る。
【0062】
投与は、例えば、腓腹筋-ヒラメ筋複合体の筋肉への投与であり得る。例えば、ボツリヌス神経毒を、対象の腓腹筋に投与してもよい。一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、個々の腓腹筋に対象の総体重のキログラムあたり6~9単位または7~8単位の量で投与する。ある特定の実施形態では、対象の各腓腹筋は、このような量を用いて投与される。ボツリヌスはまた、あるいは、対象のヒラメ筋に投与してもよい。一実施形態では、ボツリヌス神経毒を、個々のヒラメ筋に対象の総体重のキログラムあたり4~6単位または約5単位の量で投与する。ある特定の実施形態では、対象の各ヒラメ筋は、このような量を用いて投与される。
【0063】
投与はまた、任意の単一筋肉において1を超える部位で行ってもよい。一実施形態では、任意の単一部位で0.5mL、0.25mLまたは0.1mL以下のDysport(登録商標)を投与する。
【0064】
投与されるべきボツリヌス神経毒の量は、例えば、部分的に、対象の体重、投与が片側性であるべきか、もしくは両側性であるべきか、投与が腓腹筋および/もしくはヒラメ筋に対するものとなるか、対象の痙縮の重症度、痙縮によってどの筋肉が影響を受けているか、局所筋力低下が存在するか、および/またはボツリヌス神経毒を用いる治療を用いた対象の病歴はどのようなものであるか、などの因子に基づいて決定することができる。
【0065】
例えば、投与が片側性である場合には、10~15単位/対象の総体重の1kgの総投与量を投与してもよい。そのようなものとして、10kgの総体重を有する患者に100~150単位を投与してもよく、20kgの総体重を有する患者に200~300単位を投与してもよく、30kgの総体重を有する患者に300~450単位を投与してもよく、40kgの総体重を有する患者に400~600単位を投与してもよく、50kgの総体重を有する患者に500~750単位を投与してもよく、60kgの総体重を有する患者に600~900単位を投与してもよく、70kgの総体重を有する患者に700~1,050単位を投与してもよい。
【0066】
投与が両側性である場合には、例えば、20~30単位/対象の総体重の1kgの総投与量を投与してもよい。そのようなものとして、10kgの総体重を有する患者に200~300単位を投与してもよく、20kgの総体重を有する患者に400~600単位を投与してもよく、30kgの総体重を有する患者に600~900単位を投与してもよく、40kgの総体重を有する患者に800~1200単位を投与してもよく、50kgの総体重を有する患者に1000~1500単位を投与してもよく、60kgの総体重を有する患者に1200~1800単位を投与してもよく、70kgの総体重を有する患者に1400~2100単位を投与してもよい。
【0067】
対象の腓腹筋が、痙縮によって影響を受けている場合には、ボツリヌス神経毒の投与は、例えば、腓腹筋への投与であり得る。
【0068】
投与が片側性である実施形態では、ヒラメ筋への投与は、例えば、6~9単位/対象の総体重の1kgであり得る。例えば、10kgの総体重を有する患者に60~90単位を投与してもよく、20kgの総体重を有する患者に120~180単位を投与してもよく、30kgの総体重を有する患者に180~270単位を投与してもよく、40kgの総体重を有する患者に240~360単位を投与してもよく、50kgの総体重を有する患者に300~450単位を投与してもよく、60kgの総体重を有する患者に360~540単位を投与してもよく、70kgの総体重を有する患者に420~630単位を投与してもよい。投与が両側性である実施形態では、上記の量を、各脚の腓腹筋に上記の量で個別に投与してもよい。
【0069】
対象のヒラメ筋が痙縮によって影響を受けている場合には、ボツリヌス神経毒の投与は、例えば、ヒラメ筋への投与であり得る。投与が片側性である実施形態では、ヒラメ筋への投与は、例えば、4~6単位/対象の総体重の1kgであり得る。例えば、10kgの総体重を有する患者に40~60単位を投与してもよく、20kgの総体重を有する患者に80~120単位を投与してもよく、30kgの総体重を有する患者に120~180単位を投与してもよく、40kgの総体重を有する患者に160~240単位を投与してもよく、50kgの総体重を有する患者に200~300単位を投与してもよく、60kgの総体重を有する患者に240~360単位を投与してもよく、70kgの総体重を有する患者に280~420単位を投与してもよい。投与が両側性である実施形態では、上記の量を、各脚のヒラメ筋に上記の量で個別に投与してもよい。
【0070】
対象は、尖足、脳性麻痺、脊髄損傷、多発性硬化症、卒中、脳の外傷、頭部外傷またはそれらの組合せと関連して痙縮を有する対象であり得る。一実施形態では、対象は、尖足を有する。好ましくは、対象は、痙縮および尖足を有する。尖足は、動的尖足(例えば、動的尖足足部変形)であり得る。
【0071】
患者の痙縮のレベルは、例えば、受動的軟部組織伸展の際の抵抗の増大のレベルを測定するアシュワーススケール変法(Modified Ashworth Scale)(MAS)を使用して測定できる。0のMASスコアは、筋緊張の増大なしを示す。1のスコアは、影響を受けた部分(複数可)が屈曲または伸展において動かされる時に、引っかかりと消失または可動域の終わりでの最小抵抗によって示される筋緊張のわずかな増大を示す。1+のスコアは、引っかかりと、それに続く、可動域の残部(半分未満)にわたる最小抵抗によって示される筋緊張のわずかな増大を示す。2のスコアは、可動域のほとんどにわたる筋緊張のより顕著な増大を示すが、影響を受けた部分(複数可)は容易に動かされる。3のスコアは、受動的な筋緊張の相当な増大を示し、運動が困難である。4のスコアは、影響を受けた部分が、屈曲または伸展において硬直であることを示す。
【0072】
一実施形態では、対象に投与される単位の量は、対象の痙縮のレベルに直接比例し得る。
【0073】
例えば、対象がその腓腹筋において、3以上のMASスコアによって示されるような重度痙縮を患っている場合には、投与は、例えば、脚あたり7.5~9単位/対象の総体重の1kg(すなわち、片側性投与のためには7.5~9単位/kgおよび両側性投与のためには15~18単位/kg)であり得る。その他の実施形態では、投与は、脚あたり8~9単位/kg、脚あたり8.5~9単位/kgまたは脚あたり8.75~9単位/kgであり得る。
【0074】
例えば、対象がそのヒラメ筋において、3以上のMASスコアによって示されるような重度痙縮を患っている場合には、投与は、脚あたり5~6単位/対象の総体重の1kg(すなわち、片側性投与のためには5~6単位/kgおよび両側性投与のためには10~12単位/kg)であり得る。その他の実施形態では、投与は、脚あたり5.5~6単位/kgまたは脚あたり5.75~6単位/kgであり得る。
【0075】
対照的に、対象がその腓腹筋において、あまり重度ではないまたは軽度痙縮を患っている場合には、投与は、例えば、脚あたり6~7.5単位/対象の総体重の1kg(すなわち、片側性投与のためには6~7.5単位/kgおよび両側性投与のためには12~15単位/kg)であり得る。その他の実施形態では、投与は、脚あたり6~7単位/kg、脚あたり6~6.5単位/kgまたは脚あたり6~6.25単位/kgであり得る。
【0076】
対象がそのヒラメ筋において、あまり重度ではないまたは軽度痙縮を患っている場合には、投与は、例えば、脚あたり4~5単位/対象の総体重の1kg(すなわち、片側性投与のためには4~5単位/kgおよび両側性投与のためには8~10単位/kg)であり得る。その他の実施形態では、投与は、脚あたり4~4.5単位/kgまたは脚あたり4~4.25単位/kgであり得る。
【0077】
さらに、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療後に有害作用を示していた、またはボツリヌス神経毒が投与されようとしている筋肉において局所筋力低下を示す場合には、より低い用量を投与してもよい。有害作用の例として、気道感染、上咽頭炎、インフルエンザ、咽頭炎、咳、発熱、気管支炎、鼻炎、水痘、耳感染症、胃腸炎、嘔吐、悪心、中咽頭痛、四肢の疼痛、筋力低下、痙攣およびてんかんが挙げられる。このようなより低い用量の例として、脚あたり10~12.5単位/対象の総体重の1kg(すなわち、片側性投与のためには10~12.5単位/kgおよび両側性投与のためには20~25単位/kg)がある。その他の例として、脚あたり10~12、10~11.5、10~11および10~10.5単位/対象の総体重の1kgが挙げられる。腓腹筋への投与のためには、投与量は、例えば、脚あたり6~7.5単位/kg、6~7単位/kgまたは6~6.5単位/kgであり得る。ヒラメ筋への投与のためには、投与量は、例えば、脚あたり4~5単位/kgまたは4~4.5単位/kgであり得る。
【0078】
あるいは、対象が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療に対して所望の応答を示さなかった場合には、より高い用量を投与してもよい。対象の応答は、例えば、治療に対する応答の医師総合評価(Physician’s Global Assessment)(PGA)を使用して測定できる。PGAは、-4~+4のスケールで応答を測定し、応答が著しく悪いことを示す-4から、変化なしを示す0、応答が著しく改善されたことを示す+4を有する。例えば、所望の応答は、0.25以上、0.5以上、1以上、2以上、3以上または4の治療後のPGAスコアであり得る。
【0079】
このようなより高い用量の例として、脚あたり12.5~15単位/対象の総体重の1kg(すなわち、片側性投与のためには12.5~15単位/kgおよび両側性投与のためには25~30単位/kg)がある。その他の例として、脚あたり13~15、13.5~15、14~15および14.5~15単位/対象の総体重の1kgが挙げられる。腓腹筋への投与のためには、投与量は、脚あたり、例えば、7.5~9単位/kgであり得る。ヒラメ筋への投与のためには、投与量は、例えば、5~6単位/kg/脚であり得る。
【0080】
個々の筋肉における局所筋力低下の事象では、投与は、異なる筋肉への投与であり得る。例えば、対象が、腓腹筋において局所筋力低下を患っている場合には、投与は、対象のその他の腓腹筋へ、またはヒラメ筋へ、または幾つかのその他の適当な筋肉への投与であり得る。同様に、対象が、ヒラメ筋において局所筋力低下を患っている場合には、投与は、対象のその他のヒラメ筋へ、または腓腹筋へ、または幾つかのその他の適当な筋肉への投与であり得る。
【0081】
投与が、片側性であるべきか、両側性であるべきかは、患者の痙縮によって影響を受けた筋肉、対象の痙縮の重症度、局所筋力低下の存在および/またはボツリヌス神経毒を用いる治療を用いた対象の病歴を含む種々の因子に応じて変わる。例えば、投与は、一方の脚のみが痙縮によって影響を受ける場合には片側性であり、両脚が影響を受ける場合には両側性であり得る。また、対象は、一方の脚のみに痙縮を有し得るが、痙縮が、両側性投与が適当であり得るほど十分に重度である場合もある。対照的に、対象は、両脚に痙縮を有し得るが、一方の脚における局所筋力低下が、もう一方の脚のみへの片側性投与が適当であることを意味する場合もある。また、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療に起因する有害作用を有していた場合には、両側性ではなく片側性投与が適当である場合もあり、対象が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの片側性および/またはより低い用量の治療後に所望の応答を示していなかった場合には、片側性ではなく両側性投与が適当である場合もある。
【0082】
一実施形態では、下肢痙縮のために対象を治療する方法は、(A)対象の体重を得るステップと、(B)片側性または両側性投与を選択するステップと、(C)患者の体重および投与が片側性であるべきか、もしくは両側性であるべきかに基づいて、対象に投与するボツリヌス神経毒の量を決定するステップと、(D)ボツリヌス神経毒を、対象にこのような量で投与するステップとを含む。ボツリヌス神経毒の適当な量の決定では、方法はまた、投与が腓腹筋へおよび/またはヒラメ筋へとなるか、対象の痙縮の量、痙縮によってどの筋肉が影響を受けているか、局所筋力低下の存在、ボツリヌス神経毒を用いる治療を用いた対象の病歴、対象の年齢、対象の身長、対象の体表面積および/または対象の性別を考慮することを含み得る。適当な投与量の決定では、上記の因子を鑑みて上記のように調整を行うことができる。
【0083】
本発明はまた、部分的に、対象に投与するための活性薬剤、例えば、ボツリヌス神経毒の量の決定において使用するためのツールに関する。
【0084】
一実施形態では、ツールは、(A)対象の体重を示す数字第1列(2)と、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の第2列(3)とを有する第1のメンバー(1)と、(B)第2のメンバー(4)を含む。第2列中の数字が、特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示し、特定の体重を示す第1列中の対応する数字と長手方向にまたは放射状に整列している。第1および第2のメンバーは、互いに、個々の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある。
【0085】
幾つかの実施形態では、第1のメンバー(1)および第2のメンバー(4)は両方とも平面であり、互いに長手方向にスライドする配置にある。第1列中の数字(2)は、第2列中の対応する数字(3)と縦に整列している。第2のメンバーは、第1のメンバーを覆い、第1のメンバー上の列が見られることを可能にする1つの開口部(5)を含有する。ある特定の実施形態では、第2のメンバーは、2つ以上の開口部(6)を含有し、各開口部は、第1のメンバー上の1つの列が見られることを可能にする。一方のメンバーを、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示す開口部(単数または複数)によって見ることができる数字を有するもう一方のメンバーとの関係でスライドさせることができる。ある特定の実施形態では、第1の平面は、第2の平面の周りを包み、それを囲む。
【0086】
その他の実施形態では、第1のメンバー(1)は平面であり、第2のメンバー(4)は、第1のメンバーに関して長手方向にスライドする配置にあるカーソルである。第1列中の数字(2)は、第2列中の対応する数字(3)と縦に整列している。カーソルを、それが、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示すように第1のメンバーに沿ってスライドさせることができる。指標は、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を覆うカーソル上の線(7)によって示してもよい。このような実施形態では、カーソルは、例えば、ユーザーが線の下の数字を見ることを可能にするように透明または半透明であり得る。あるいは、カーソルは、第1のメンバー上の数字がユーザーによって見られることを可能にする開口部(単数(5)または複数(6))を含有し得る。
【0087】
なおその他の実施形態では、第1のメンバー(1)は、円形平面であり、第2のメンバー(4)は、第1のメンバーの中心点を中心に旋回するダイアルである。第1列中の数字(2)は、第2列中の対応する数字(3)と放射状に整列している。カーソルは、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示すように旋回することができる。指標は、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を覆うカーソル上の線(7)によって示してもよい。このような実施形態では、カーソルは、例えば、ユーザーが線の下の数字を見ることを可能にするように透明または半透明であり得る。あるいは、カーソルは、第1のメンバー上の数字がユーザーによって見られることを可能にする開口部(単数(5)または複数(6))を含有し得る。
【0088】
ツールのある特定の実施形態では、第1のメンバー(1)は、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す上記の第2列の数字(3)の代わりに、またはそれに加えて、対象の個々の筋肉に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す1以上の数字の列(8)を含有する。特定の体重を有する対象の筋肉に投与されるべき特定の投与量を示す列(単数または複数)中の数字は、その特定の体重を示す第1列中の対応する数字と長手方向にまたは放射状に整列している。対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す上記の第2列の数字(3)に加えて、これらの列(8)がある実施形態では、第2列の数字は、対象に投与されるべき総投与量を表す。
【0089】
一実施形態では、1つの数字の列は、脚の腓腹筋に投与されるべき活性薬剤の投与量(9)を示し、別の列は、脚のヒラメ筋に投与されるべき活性薬剤の投与量(10)を示す。
【0090】
第2のメンバー中に1つの開口部(5)または2つ以上の開口部(6)を含有するツールの実施形態では、開口物が透明もしくは半透明材料で作られている窓を含有し得る。
【0091】
第2のメンバーが、2つ以上の開口部(6)を含有する実施形態では、各開口部は、第1のメンバー上の特定の列と対応し得る。例えば、1つの開口部は第1列の数字(2)が見られることを可能することができ、別の開口部は第2列の数字(3)が見られることを可能にすることができ、第3および第4の開口部は、さらなる列の数字(8)が見られることを可能にすることができる。
【0092】
第2のメンバー(4)が、第1のメンバー(1)上の列の数字が見られることができる開口部(単数(5)または複数(6))を含有し、第2のメンバーが、透明または半透明である実施形態では、第2のメンバーは、対象の体重を示す数字の列(2)と合わせられた第1のマーキング(11)と、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列(3)と合わせられた第2のマーキング(12)と、それぞれ、対象の脚の腓腹筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す列(9)および対象の脚のヒラメ筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す列(10)と合わせられた第3(13)および第4のマーキング(14)とを含有し得る。マーキングは、各列をそれぞれ、例えば、「対象の総体重」、「対象に投与されるべき脚あたりの薬剤の量」、「対象の腓腹筋に脚あたり投与されるべき薬剤の量」および「対象のヒラメ筋に脚あたり投与されるべき薬剤の量」として同定し得る。第2のメンバーが透明または半透明である実施形態では、マーキングは、より良好な視覚度を確実にするために表示(15)上であり得る。
【0093】
対象において下肢痙縮を治療する上記の方法の一実施形態では、投与されるべき投与量を、上記のツールを使用して決定する。
【0094】
本発明はさらに、部分的に、対象、特に、18歳以下の対象、例えば、2~17歳の間であるものにおける下肢痙縮の治療において使用するための組成物に関する。組成物は、有効量のボツリヌス神経毒を含む。ある特定の実施形態では、組成物は、希釈剤、例えば、塩化ナトリウム溶液を含む。溶液は、例えば、0.9%塩化ナトリウム溶液であり得る。
【0095】
ある特定の実施形態では、組成物は、1~1,000単位、1~750単位、1~500単位、1~400単位、1~300単位または1~200単位のボツリヌス神経毒を含む。
【0096】
一実施形態では、組成物は、500単位の量のボツリヌス神経毒および1~5mLの塩化ナトリウム溶液、例えば、1、2、2.5および5mLの溶液を含む。個々の実施形態では、組成物は、500単位および2.5mLの溶液を含む。
【0097】
別の実施形態では、組成物は、300単位の量のボツリヌス神経毒および1~3mLの塩化ナトリウム溶液、例えば、1、1.5、2.5および3mLの溶液を含む。
【0098】
一実施形態では、組成物は、凍結乾燥ボツリヌス神経毒を溶液、例えば、上記の塩化ナトリウム溶液に再構成することによって形成する。再構成後、組成物は、2~8℃の冷蔵下で、光から保護して貯蔵することができる。
【0099】
対象、特に、18歳以下の対象、例えば、2から17歳の間の対象において下肢痙縮を治療する上記方法の一実施形態では、上記のような組成物を対象に投与する。投与される組成物の量は、上記のように適当であると決定された量であり得る。例えば、2.5mLの溶液に希釈された500単位を含む組成物について、組成物の各0.1mLは、20単位を含有するであろう。そのようなものとして、片側性治療において対象に投与されるべき組成物の量は、対象の総体重の1kgあたり0.05~0.075mL(10~15単位を含有する)。したがって、50kgの体重の対象のために、2.5~3.75mLの組成物を投与してもよい。両側性治療において対象に投与されるべき組成物の量は、対象の総体重の1kgあたり0.1~0.15mL(20~30単位を含有する)であり得る。50kgの体重の対象のために、5~7.5mLの組成物を投与してもよい。
【0100】
一実施形態では、組成物は、ヒト血清アルブミンをさらに含む。例えば、1~100mg/ml、1~50mg/ml、1~25mg/mlまたは25mg/ml。
【0101】
一実施形態では、組成物は、賦形剤をさらに含む。賦形剤は、例えば、増量剤、結合剤、崩壊剤、抗接着剤、溶媒、緩衝剤、防腐剤または保湿剤であり得る。増量剤の例として、セルロース、ラクトース、スクロース、グルコース、マンノースおよびソルビトールが挙げられる。組成物は、例えば、10mg/mlのラクトースを含み得る。結合剤の例として、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリドン、デンプンおよびスクロースが挙げられる。崩壊剤の例として、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。保存料の例として、パラベンが挙げられる。溶媒の例として、水、オイル、グリセロール、プロピレングリコールおよびエタノールが挙げられる。緩衝剤の例として、リン酸、炭酸、クエン酸および乳酸が挙げられる。保湿剤の例として、グリセロール、エチレングリコールおよびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。
【0102】
治療方法の局面に関連して本明細書において記載される実施形態は、使用するためのボツリヌス神経毒、使用、および使用局面のための組成物に等しく当てはまる(逆もまた同様)。
【0103】
配列表
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【実施例0111】
[実施例1]
【0112】
下肢痙縮の治療におけるボツリヌス神経毒の有効性を、二重盲検、プラセボ対照多施設研究で、動的尖足足部変形を引き起こす脳性麻痺による痙縮を患っている2~17歳の患者において評価した。
【0113】
足関節底屈筋で等級2以上のアシュワース変法スコア(Modified Ashworth Score)を有する合計235人の毒素未処置または未処置ではない患者を、Dysport(登録商標)またはプラセボを受け取るように登録した。
【0114】
79人の患者が10単位/kg/脚を受け取り、79人の患者が15単位/kg/脚を受け取り、77人の患者が、プラセボを受け取った。投与は、腓腹筋およびヒラメ筋中に注射によって行った。患者の41パーセント(n=66)が両側性に治療され、20単位/kg(n=37)または30単位/kg(n=29)のいずれかの総Dysport(登録商標)用量を受け取った。
【0115】
【0116】
治療後のMASスコアにおける患者の変化および治療のPGAスコアを測定した。上記で示されたように、ボツリヌス神経毒を用いる治療は、プラセボと比較して足関節底屈筋筋緊張においてMASを有意に低減した。ボツリヌス神経毒を用いる治療はまた、プラセボと比較して有意に大きい平均PGAスコアをもたらした。
【0117】
[実施例2]
【0118】
バイアル中で、500単位の凍結乾燥Dysport(登録商標)を、2.5mLの防腐剤不含0.9%塩化ナトリウム溶液と穏やかに混合し、最初のDysport(登録商標)溶液を形成する。さらなる2.5mLの防腐剤不含0.9%塩化ナトリウム溶液を、5mLのシリンジ中に引き入れる。次いで、このシリンジを使用して、上記のDysport(登録商標)溶液を反転せずにバイアルから引き出す。得られた溶液を、シリンジ中で穏やかに混合して、10単位/0.1mLの注射用溶液を形成する。溶液を、2~8℃の冷蔵庫中、シリンジ中で保存し、光から保護する。組成物は、24時間以内に使用し、使用しない場合には、廃棄する。
【0119】
[実施例3]
【0120】
バイアル中で、300単位の凍結乾燥Dysport(登録商標)を、1.5mLの防腐剤不含0.9%塩化ナトリウム溶液と穏やかに混合し、最初のDysport(登録商標)溶液を形成する。さらなる1.5mLの防腐剤不含0.9%塩化ナトリウム溶液を3mLのシリンジ中に引き入れる。次いで、このシリンジを使用して、上記のDysport(登録商標)溶液を反転せずにバイアルから引き出す。得られた溶液を、シリンジ中で穏やかに混合して、10単位/0.1mLの注射用溶液を形成する。溶液を、2~8℃の冷蔵庫中、シリンジ中で保存し、光から保護する。組成物は、24時間以内に使用し、使用しない場合には、廃棄する。
【0121】
[実施例4]
【0122】
左ヒラメ筋における重度下肢痙縮(3のMASスコア)について10歳の患者を治療する医師は、患者の体重を最初に得る。体重は、30kgであるとわかる。患者が左足のヒラメ筋に痙縮を示しているので、医師は、投与は左脚のヒラメ筋へ片側性であるべきであると決定する。投薬ツールで調べて、120~180単位の用量が適当であると決定される。次いで、患者の病歴を再検討する。患者が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療から有害作用を有しておらず、痙縮のレベルが重度であったことがわかるので、180単位が投与されるべきであると決定される。
【0123】
実施例2に記載されるように、シリンジ中に10単位/0.1mLの注射用Dysport(登録商標)溶液を調製する。患者のヒラメ筋への注射によって、1.8mLの溶液を投与する。シリンジを、その中の溶液の残部とともに廃棄する。
【0124】
上記のステップを16週で反復する。
【0125】
[実施例5]
【0126】
左右両方の腓腹筋における軽度下肢痙縮(1+のMASスコア)について12歳の患者を治療する医師は、患者の体重を最初に得る。体重は、40kgであるとわかる。患者が両脚の腓腹筋に痙縮を示しているので、医師は、投与は両脚の腓腹筋へ両側性であるべきであると決定する。投薬ツールで調べて、各脚への240~360単位の用量が適当であると決定される。次いで、患者の病歴を再検討する。患者が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療から有害作用を有しており、痙縮のレベルが軽度であったことがわかるので、240単位が各脚に投与されるべきであると決定される。
【0127】
実施例2に記載されるように、シリンジ中に10単位/0.1mLの注射用Dysport(登録商標)溶液を調製する。患者の脚の各々の腓腹筋中へ注射によって、2.4mLの溶液を投与する。シリンジを、その中の溶液の残部とともに廃棄する。
【0128】
上記のステップを18週で反復する。
【0129】
[実施例6]
【0130】
左のヒラメ筋および右の腓腹筋における軽度下肢痙縮(1のMASスコア)について8歳の患者を治療する医師は、患者の体重を最初に得る。体重は、20kgであるとわかる。医師は、投与は左脚のヒラメ筋へ片側性に、および右足の腓腹筋へ片側性にであるべきであると決定する。投薬ツールで調べて、左ヒラメ筋へ80~120単位および右腓腹筋へ120~180単位の用量が適当であると決定される。次いで、患者の病歴を再検討する。患者が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療から有害作用を有しておらず、痙縮のレベルが平均的であったことがわかるので、左ヒラメ筋に100単位が投与されるべきであり、右腓腹筋に150単位が投与されるべきであると決定される。
【0131】
実施例2に記載されるように、シリンジ中に10単位/0.1mLの注射用Dysport(登録商標)溶液を調製する。左ヒラメ筋へ注射によって1ミリリットルの溶液を投与し、右腓腹筋へ注射によって1.5mLを投与する。
【0132】
上記のステップを17週で反復する。
【0133】
[実施例7]
【0134】
左ヒラメ筋および右腓腹筋における軽度下肢痙縮(1のMASスコア)について8歳の患者を治療する医師は、患者の体重を最初に得る。体重は、20kgであるとわかる。医師は、投与は、左脚のヒラメ筋へ片側性に、および右脚の腓腹筋へ片側性にであるべきであると決定する。投薬ツールで調べて、左ヒラメ筋へ80~120単位および右腓腹筋へ120~180単位の用量が適当であると決定される。次いで、患者の病歴を再検討する。患者は、右腓腹筋において局所筋力低下を示した。しかし、患者は、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療から有害作用を有しておらず、痙縮のレベルが平均的であったことがわかるので、左ヒラメ筋に100単位が投与されるべきであり、筋力低下のために、右腓腹筋に120単位が投与されるべきであると決定される。
【0135】
実施例2に記載されるように、シリンジ中に10単位/0.1mLの注射用Dysport(登録商標)溶液を調製する。左ヒラメ筋へ注射によって1ミリリットルの溶液を投与し、右腓腹筋へ注射によって1.2mLを投与する。
【0136】
上記のステップを17週で反復する。
【0137】
[実施例8]
【0138】
左および右腓腹筋の両方における軽度下肢痙縮(1+のMASスコア)について12歳の患者を治療する医師は、患者の体重を最初に得る。体重は、40kgであるとわかる。患者は、両脚の腓腹筋において痙縮を示しているので、医師は、投与は、両脚の腓腹筋へ両側性であるべきであると決定する。投薬ツールで調べて、各脚へ240~360単位の用量が適当であると決定される。次いで、患者の病歴を再検討する。患者が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療から有害作用を有していなかったが、このような治療は所望の結果を達成しなかった(PGAは0であった)ことがわかる。これおよび痙縮の重症度が平均的であったことを考慮して、各脚に360単位が投与されるべきであると決定される。
【0139】
実施例2に記載されるように、シリンジ中に10単位/0.1mLの注射用Dysport(登録商標)溶液を調製する。患者の脚の各腓腹筋へ注射によって3.6mLの溶液を投与する。シリンジを、その中の溶液の残部とともに廃棄する。
【0140】
上記のステップを17週で反復する。
【0141】
[実施例9]
【0142】
左右両方の腓腹筋における軽度下肢痙縮(1のMASスコア)について12歳の患者を治療する医師は、患者の体重を最初に得る。体重は、40kgであるとわかる。患者は、両脚の腓腹筋において痙縮を示しているので、医師は、投与は両脚の腓腹筋へ両側性であるべきであると決定する。投薬ツールで調べて、各脚へ240~360単位の用量が適当であると決定される。次いで、患者の病歴を再検討する。患者が、ボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療から有害作用を有していないが、このような治療は所望の結果を達成しなかった(PGAは0.03であった)ことがわかる。これおよび痙縮の重症度が平均的であったことを考慮して、各脚に360単位が投与されるべきであると決定される。
【0143】
実施例2に記載されるように、シリンジ中に10単位/0.1mLの注射用Dysport(登録商標)溶液を調製する。患者の脚の各々の腓腹筋へ注射によって3.6mLの溶液を投与する。シリンジを、その中の溶液の残部とともに廃棄する。
【0144】
上記のステップを17週で反復する。
【0145】
[項目1]
下肢痙縮を治療する方法であって、18歳以下の対象に、有効量のボツリヌス神経毒を投与するステップを含む、方法。
[項目2]
下肢痙縮を治療する方法において使用するためのボツリヌス神経毒であって、方法が、18歳以下の対象に、有効量のボツリヌス神経毒を投与するステップを含む、ボツリヌス神経毒。
[項目3]
18歳以下の対象において下肢痙縮を治療する医薬の製造における、ボツリヌス神経毒の使用。
[項目4]
18歳以下の対象における下肢痙縮の治療において使用するための組成物であって、有効量のボツリヌス神経毒を含む、組成物。
[項目5]
対象が2歳から17歳の間である、項目1に記載の方法、項目2に従う使用のためのボツリヌス神経毒、項目3に従う使用または項目4に従う使用のための組成物。
[項目6]
ボツリヌス神経毒が、血清型A、B、C、D、E、FもしくはGのものまたは血清型A、B、C、D、E、FもしくはGのボツリヌス神経毒のアミノ酸配列(配列番号1~7)に対して少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する組換え改変ボツリヌス神経毒である、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目7]
ボツリヌス神経毒が、血清型Aのものである、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目8]
ボツリヌス神経毒を、片側性に、または両側性に投与する、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目9]
ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり10~15単位の量で対象の脚に投与する、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目10]
ボツリヌス神経毒を、対象の脚の腓腹筋および/またはヒラメ筋に投与する、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目11]
ボツリヌス神経毒を、対象の総体重のキログラムあたり6~9単位の量で対象の脚の腓腹筋に、および/または対象の総体重のキログラムあたり4~6単位の量で投与する、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目12]
対象に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量が、以下の因子: 投与が片側性であるか、両側性であるか、対象の体重、痙縮の量、痙縮によってどの筋肉が影響を受けているか、対象がボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療後に有害作用を示したか否か、対象が局所筋力低下を示すか否か、対象がボツリヌス神経毒を用いるこれまでの治療に対して所望の応答を示していたか否か、対象の年齢、対象の身長、対象の体表面積および対象の性別のうち1以上に基づいて決定される、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目13]
(a)対象の体重を得るステップと、
(b)片側性または両側性投与を選択するステップと、
(c)患者の体重および片側性投与が選択されるか、両側性投与が選択されるかに基づいて、対象に投与するボツリヌス神経毒の量を決定するステップと、
(d)ボツリヌス神経毒を、対象に決定された量で投与するステップと
を含む、前記の項目のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。
[項目14]
対象に投与されるべき活性薬剤の投与量の決定において使用するためのツールであって、
対象の体重を示す数字の第1列と、対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の第2列とを有する第1のメンバーであって、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦にまたは放射状に整列している第1のメンバーと、
第2のメンバーと
を含み、
第1および第2のメンバーが、互いに、個々の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある、ツール。
[項目15]
第1および第2のメンバーが両方とも、互いに長手方向にスライドする配置にある平面であり、特定の体重を示す第1列中の数が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦に整列しており、第2のメンバーが第1のメンバーを覆い、第1のメンバー上の列が見られることを可能にする1つの開口部を含有するか、または各開口部が第1のメンバー上の1つの列が見られることを可能にする2つ以上の開口部を含み、一方のメンバーをもう一方のメンバーとの関係でスライドすることができ、数字を開口部(単数または複数)を通して見ることができ、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示す、項目14に記載のツール。
[項目16]
第1のメンバーが平面であり、第2のメンバーが、第1のメンバーに関して長手方向にスライドする配置にあるカーソルであり、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦に整列しており、カーソルを、それが、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示すように第1のメンバーに沿ってスライドさせることができる、項目14に記載のツール。
[項目17]
第1のメンバーが円形平面であり、第2のメンバーが第1のメンバーの中心点を中心に旋回するダイアルであり、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と放射状に整列しており、カーソルを、それが特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示すように旋回することができる、項目14に記載のツール。
[項目18]
指標が、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を覆うカーソル上の線によって示される、項目16または17に記載のツール。
[項目19]
指標が、第1のメンバー上の列が見られることを可能にするカーソル中の1つの開口部または各開口部が第1のメンバー上の1つの列が見られることを可能にする2つ以上の開口部によって示され、開口部(単数または複数)を通して見ることができる数字が、特定の体重およびその特定の体重を有する対象に投与されるべき投与量を示す、項目16または17に記載のツール。
[項目20]
第1のメンバーが、対象の個々の筋肉に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の列をさらに有し、特定の体重を有する対象の筋肉に投与されるべき特定の投与量を示す列中の数字が、その特定の体重を示す第1列中の対応する数字と長手方向にまたは放射状に整列している、項目14から19のいずれか一項に記載のツール。
[項目21]
第1のメンバーが、各列が患者の異なる筋肉に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の2つの列をさらに有し、特定の体重を有する対象の筋肉に投与されるべき特定の投与量を示す列中の数字が、その特定の体重を示す第1列中の対応する数字と長手方向にまたは放射状に整列している、項目14から19のいずれか一項に記載のツール。
[項目22]
第2列が、対象の単一脚に投与されるべき活性薬剤の総投与量を示し、第1のメンバーが、数字の2つのさらなる列をさらに有し、1つの列が、脚の腓腹筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示し、別の列が脚のヒラメ筋に投与されるべき活性薬剤の投与量を示し、特定の体重を有する対象の筋肉に投与されるべき特定の投与量を示す列中の数字が、その特定の体重を示す第1列中の対応する数字と長手方向にまたは放射状に整列している、項目14から19のいずれか一項に記載のツール。
[項目23]
対象に投与されるべきボツリヌス神経毒の投与量が、ツールを使用して決定され、ツールが、
対象の体重を示す数字の第1列および対象に投与されるべき活性薬剤の投与量を示す数字の第2列を有する第1のメンバーであって、特定の体重を示す第1列中の数字が、その特定の体重を有する対象に投与されるべき特定の投与量を示す第2列中の対応する数字と縦にまたは放射状に整列している第1のメンバーと、
第2のメンバーと
を含み、
第1および第2のメンバーが、互いに、個々の体重を有する対象に投与されるべき活性薬剤の投与量に関して指標を提供するように一方のメンバーがユーザーによって動かされることができるような関係にある、項目1から13のいずれか一項に記載の方法、使用のためのボツリヌス神経毒、使用、または使用のための組成物。